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JP6486639B2 - 金属錯体およびこれを含有する抗癌剤 - Google Patents

金属錯体およびこれを含有する抗癌剤 Download PDF

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Description

本発明は金属錯体およびこれを含有する抗癌剤に関する。
下記式:
で表されるシスプラチンまたはオキサリプラチン等の白金抗癌剤は、腎毒性等の副作用が強いにもかかわらず広範囲の癌によく効くため、多剤治療のペアとしてよく用いられている。また、白金抗癌剤は転移癌等の悪性腫瘍に対してよく用いられている。そのため、将来にわたって、白金抗癌剤は使われ続ける可能性が高い。しかし、シスプラチンは耐性ができやすいために使い続けることはできない。また、シスプラチンは、高い腎毒性のために、その投与前に多量の生理食塩水およびブドウ糖を点滴する必要がある。そのため、新しい白金抗癌剤が求められている。
近年、白金抗癌剤は企業でほとんど開発されていない。これは、シスプラチン改良による白金抗癌剤は既に開発されつくしたと企業が思い込んでいるためであると推定される。しかし、本発明者らは既存の白金抗癌剤を見直し、シスプラチンよりも抗癌活性に優れ、且つ副作用が低減された金属錯体を開発してきた(特許文献1)。
国際公開2011/125911号
本発明の目的は、従来使用されてきたシスプラチンおよびオキサリプラチンに比べて抗癌剤としてより効果的な金属錯体を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の金属錯体は、従来使用されてきたシスプラチンおよびオキサリプラチンに比べて抗癌剤としてより効果的であることを見出した。この知見に基づく本発明は以下の通りである。
[1] myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−ヘキサキスホスフェート誘導体であって、式(1):
(式中、mおよびnは、それぞれ独立に1または2であり、m+nは3である。)
で表される金属錯体。
[2] 式(1−1):
で表される金属錯体、および/または
式(1−2):
で表される金属錯体を含む前記[1]に記載の金属錯体。
[3] 式(1−3):
で表される金属錯体、および/または
式(1−4):
で表される金属錯体を含む前記[1]に記載の金属錯体。
[4] 式(1−5):
で表される金属錯体、および/または
式(1−6):
で表される金属錯体を含む前記[1]に記載の金属錯体。
[5] 式(1−7):
で表される金属錯体、および/または
式(1−8):
で表される金属錯体を含む前記[1]に記載の金属錯体。
[6] 式(2):
(式中、Rは、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、
は、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではなく、
ArおよびArは、それぞれ独立に、式(2a):
で表される基であり、*は結合位置を示し、
〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、
kは、2または3であり、
p、q、rおよびsは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
で表される金属錯体。
[7] Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜R17が水素原子であり、kが3である、前記[6]に記載の金属錯体。
[8] Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、前記[6]に記載の金属錯体。
[9] Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、前記[6]に記載の金属錯体。
[10] Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが2である、前記[6]に記載の金属錯体。
[11] Rが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、前記[6]に記載の金属錯体。
[12] Rが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、前記[6]に記載の金属錯体。
[13] 式(3):
(式中、R〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、
18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子またはC1−3アルキル基であるか、または互いに結合してC5−7炭化水素環を形成する。)
で表される金属錯体。
[14] R〜R19が水素原子である、前記[13]に記載の金属錯体。
[15] R〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である、前記[13]に記載の金属錯体。
[16] R〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である、前記[13]に記載の金属錯体。
[17] R〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RおよびRがメチル基である、前記[13]に記載の金属錯体。
[18] R〜R17が水素原子であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成する、前記[13]に記載の金属錯体。
[19] R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成する、前記[13]に記載の金属錯体。
[20] R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成する、前記[13]に記載の金属錯体。
[21] R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RおよびRがメチル基であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成する、前記[13]に記載の金属錯体。
[22] 前記[1]〜[21]のいずれか一つに記載の金属錯体を含有する抗癌剤。
本発明の金属錯体は、従来使用されてきたシスプラチンおよびオキサリプラチンに比べて抗癌剤としてより効果的である。
試験例1−2でシスプラチンを投与したddYマウスの各臓器中のPt量を示すグラフである。 試験例1−2でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naを投与したddYマウスの各臓器中のPt量を示すグラフである。 試験例1−3でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の腫瘍体積の変化を示すグラフである。 試験例1−3でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の体重比の変化を示すグラフである。 試験例1−3でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の足刺激への反応性を示すグラフである。 試験例1−4でoxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6NaまたはoxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の腫瘍体積の変化を示すグラフである。 試験例1−4でoxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6NaまたはoxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の体重比の変化を示すグラフである。 試験例1−4でoxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6NaまたはoxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の足刺激への反応性を示すグラフである。 試験例1−5でcisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の腫瘍体積の変化を示すグラフである。 試験例1−5でcisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の体重比の変化を示すグラフである。 試験例1−5でcisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の足刺激への反応性を示すグラフである。 試験例1−6でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)における血液尿素窒素(BUN)の変動を示すグラフである。 試験例1−6でcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)におけるクレアチニンの変動を示すグラフである。 試験例2−2で算出したPt(5−MP)(AtC3)ClおよびPt(5−MP)(2At−Spm)Clのlog(ヒト癌細胞39種類の平均IC50値)からのlog(各細胞のIC50値)の変動を示すグラフである。 試験例2−3でPt(5−MP)(AtC3)Clを投与したddYマウスの各臓器中のPt量を示すグラフである。なお、図中の「C3」は「Pt(5−MP)(AtC3)Cl」を表す。 試験例2−3でPt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与したddYマウスの各臓器中のPt量を示すグラフである。なお、図中の「Spm」は「Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl」を表す。 試験例2−4でPt(5−MP)(2At−Spm)Clまたはスニチニブを投与したACHN腎臓移植ヌードマウス、または薬剤無投与のACHN腎臓移植ヌードマウス(コントロール)の腫瘍体積比の変化を示すグラフである。 試験例2−4でPt(5−MP)(2At−Spm)Clまたはスニチニブを投与したACHN腎臓移植ヌードマウス、または薬剤無投与のACHN腎臓移植ヌードマウス(コントロール)の体重比の変化を示すグラフである。 試験例2−5で金属錯体を投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)における血液尿素窒素(BUN)の変動を示すグラフである。なお、図中の「Spm」は「Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl」を表し、「N3」は「Pt(5−MP)(AtN3)Cl」を表し、「N4」は「Pt(5−MP)(2At−N4)Cl」を表し、「cisPt」は「シスプラチン」を表す。 試験例2−5で金属錯体を投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)におけるクレアチニンの変動を示すグラフである。なお、図中の「Spm」は「Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl」を表し、「N3」は「Pt(5−MP)(AtN3)Cl」を表し、「N4」は「Pt(5−MP)(2At−N4)Cl」を表し、「cisPt」は「シスプラチン」を表す。 試験例2−6でPt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の腫瘍体積の変化を示すグラフである。 試験例2−6でPt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の体重比の変化を示すグラフである。 試験例2−6でPt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与した骨転移モデルラット、または金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の足刺激への反応性を示すグラフである。 試験例3−3で金属錯体を投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)における血液尿素窒素(BUN)の変動を示すグラフである。なお、図中の「cisPt」は「シスプラチン」を表し、「(At−1,4−dach)」は「Pt(5−MP)(At−1,4−dach)Cl」を表し、「(AtC4)」は「Pt(5−MP)(AtC4)Cl」を表す。 試験例3−3で金属錯体を投与した雄性ICRマウス、または金属錯体無投与の雄性ICRマウス(コントロール)におけるクレアチニンの変動を示すグラフである。なお、図中の「cisPt」は「シスプラチン」を表し、「(At−1,4−dach)」は「Pt(5−MP)(At−1,4−dach)Cl」を表し、「(AtC4)」は「Pt(5−MP)(AtC4)Cl」を表す。
まず、式中の基について説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
アルキル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。C1−6アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチルが挙げられる。C1−3アルキル基としては、前記C1−6アルキル基の例示の中で、炭素数が1〜3であるものが挙げられる。
アルコキシ基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。C1−6アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
5−7炭化水素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環が挙げられる。
次に、式(1):
で表される金属錯体について説明する。なお、以下では「式(1)で表される金属錯体」等を「金属錯体(1)」等と略称することがある。金属錯体(1)は、myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−ヘキサキスホスフェート(myo-inositol-1,2,3,4,5,6-hexakisphosphate)誘導体であって、シスプラチン構造とオキサリプラチン構造とを合計で三つ有する三核白金錯体である。この金属錯体(1)はリン酸基(−OPO 2−)を多く有しており、骨のヒドロキシアパタイトと強く吸着する。そのため金属錯体(1)は骨へのドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用することが期待できる。
金属錯体(1)は、抗癌作用および強力な疼痛抑制作用を併せ持つ(後述の試験例1−3参照)。このような抗癌作用および強力な疼痛抑制作用を併せ持つ抗癌剤はこれまで報告されていない。例えば、特許文献1に記載の下記式:
で表される(Pt(NH・Pt(dach))IP6・8Naは、ほとんど疼痛抑制作用を示さない。
金属錯体(1)としては、例えば、上述の金属錯体(1−1)〜金属錯体(1−8)が挙げられる。金属錯体(1)は、1種のみでもよく、2種以上の混合物でもよい。好ましい金属錯体(1)は、好ましくは、金属錯体(1−1)および金属錯体(1−2)の組合せ、金属錯体(1−3)および金属錯体(1−4)の組合せ、金属錯体(1−5)および金属錯体(1−6)の組合せ、または金属錯体(1−7)および金属錯体(1−8)の組合せを含み、より好ましくは、金属錯体(1−1)および金属錯体(1−2)の組合せを含む。
金属錯体(1)に含まれるカウンターカチオン(即ち、金属錯体(1)の塩の形態)に特に限定されないが、金属錯体(1)は薬学的に許容し得る塩の形態であることが好ましい。カウンターカチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、プロトン等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオンイオンがより好ましい。
次に、式(2):
で表される金属錯体について説明する。金属錯体(2)は、特許文献1に記載の下記式:
で表されるPt(5−MP)(AtC3)Cl等のアントラセン環を有するジアミン構造の配位子(AtC3)に替えて、癌細胞の増殖に必要なポリアミン構造の配位子を導入することにより、癌細胞への更なる取込み増進を図ったものである。この金属錯体(2)の抗癌活性は、特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Cl等と同様のプロテアソーム阻害作用、および新たに導入したポリアミン構造に起因するポリアミン代謝(輸送)阻害作用により達成されると推定される。
特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Cl等は体内に投与されると、非特異的に各臓器に取り込まれる。これに対して本発明の金属錯体(2)は、特に腎臓、肝臓、膵臓、骨および筋肉に集積する傾向がある(後述の試験例2−3参照)。そのため金属錯体(2)は、腎臓、肝臓および骨へのドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用することが期待できる。
式(2)中のRは、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、Arは、上記式(2a)で表される基である。
式(2)中のpは、1〜4の整数、好ましくは2〜4の整数、より好ましくは3または4である。
式(2)中のRは、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、Arは、上記式(2a)で表される基である。但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではない。
式(2)中のq、rおよびsは、それぞれ独立に、1〜4の整数、好ましくは2〜4の整数、より好ましくは3または4である。
式(2)中のR〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、好ましくは水素原子、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子またはC1−3アルキル基、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
式(2)中のkは、2または3である。
好ましい金属錯体(2)としては、
が、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、
が、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではなく、
〜RおよびR〜R17が、水素原子であり、
およびRが、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基であり、
p、q、rおよびsが、それぞれ独立に、好ましくは2〜4の整数であり、
kが、2または3である
ものが挙げられる。
より好ましい金属錯体(2)としては、
が、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、
が、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではなく、
〜RおよびR〜R17が、水素原子であり、
が、水素原子またはC1−6アルキル基であり、
p、q、rおよびsが、それぞれ独立に、好ましくは3または4であり、
kが、2または3である
ものが挙げられる。
別のより好ましい金属錯体(2)としては、
が、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、
が、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではなく、
〜RおよびR〜R17が、水素原子であり、
が、水素原子またはC1−6アルキル基であり、
p、q、rおよびsが、それぞれ独立に、好ましくは3または4であり、
kが、2または3である
ものが挙げられる。
さらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜R17が水素原子であり、kが3であるものが挙げられる。
別のさらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(特に好ましくはC1−3アルキル基、最も好ましくはメチル基)であり、kが3であるものが挙げられる。
別のさらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(特に好ましくはC1−3アルキル基、最も好ましくはメチル基)であり、kが3であるものが挙げられる。
別のさらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(特に好ましくはC1−3アルキル基、最も好ましくはメチル基)であり、kが2であるものが挙げられる。
別のさらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(特に好ましくはC1−3アルキル基、最も好ましくはメチル基)であり、kが3であるものが挙げられる。
別のさらに好ましい金属錯体(2)としては、Rが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(特に好ましくはC1−3アルキル基、最も好ましくはメチル基)であり、kが3であるものが挙げられる。
金属錯体(2)に含まれるカウンターアニオン(即ち、金属錯体(2)の塩の形態)に特に限定されないが、金属錯体(2)は薬学的に許容し得る塩の形態であることが好ましい。カウンターアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化物イオンおよび炭酸イオンが好ましく、塩化物イオンおよび炭酸イオンがより好ましく、塩化物イオンがさらに好ましい。
次に、式(3):
で表される金属錯体について説明する。金属錯体(3)は、疎水性を向上させて細胞膜を透過しやすくすることを目的として、Pt原子とキレート環を形成するジアミンの窒素原子間の炭素原子数を、特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Cl等の3から4に増加させた金属錯体である。
式(3)中のR〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、好ましくは水素原子、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子またはC1−3アルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。
式(3)中のR18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子またはC1−3アルキル基であるか、または互いに結合してC5−7炭化水素環を形成する。R18およびR19は、好ましくは水素原子であるか、または互いに結合してシクロヘキサン環を形成する。
好ましい金属錯体(3)としては、
〜RおよびR〜R17が水素原子であり、
およびRが、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基(より好ましくは水素原子またはC1−3アルキル基、さらに好ましくは水素原子またはメチル基)であり、
18およびR19が、水素原子であるか、または互いに結合してシクロヘキサン環を形成する
ものが挙げられる。
上述の好ましい金属錯体(3)に含まれるものとしては、
〜R19が水素原子であるもの、
〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であるもの、
〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であるもの、
〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RおよびRが、それぞれ独立にC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であるもの、
〜R17が水素原子であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成するもの、
〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成するもの、
〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成するもの、
〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RおよびRが、それぞれ独立にC1−6アルキル基(より好ましくはC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基)であり、R18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成するもの
が挙げられる。
金属錯体(3)に含まれるカウンターアニオン(即ち、金属錯体(3)の塩の形態)に特に限定されないが、金属錯体(3)は薬学的に許容し得る塩の形態であることが好ましい。カウンターアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
本発明の金属錯体は、いずれも、市販の出発原料または公知の合成法によって得られる出発原料を使用して、後述する合成例に記載の方法またはそれに準ずる方法によって製造することができる。また、本発明の金属錯体は、公知の手段、例えば、濃縮、溶媒抽出、再結晶などによって単離・精製することができる。
本発明の金属錯体は、水和物、無水和物、溶媒和物、無溶媒和物のいずれであってもよい。また、本発明の金属錯体は、結晶であってもよく、結晶形が単一のものでも、結晶形混合物であっても本発明の金属錯体に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法によって製造することができる。
本発明は、上述の金属錯体を含有する抗癌剤を提供する。本発明の抗癌剤の適用対象である癌に特に限定されない。癌としては、例えば、白血病、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、消化器癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、真性多血症、神経芽腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、皮膚付属器癌、皮膚転移癌、皮膚黒色腫等が挙げられる。
金属錯体(1)および金属錯体(2)は腎臓、肝臓および骨に集積する傾向があるため、これら錯体を含有する抗癌剤は、腎臓癌、肝臓癌、骨髄腫、骨肉腫の治療に有用である。
本発明の抗癌剤の投与形態としては、経口投与でもよく、静脈内、筋肉内、皮下または皮内等への注射、直腸内投与、経粘膜投与等の非経口投与でもよい。経口投与に適する製剤形態としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられる。また、非経口投与に適する製剤形態としては、例えば、注射剤、点滴剤、点鼻剤、噴霧剤、吸入剤、坐剤等の外用製剤、または軟膏、クリーム、粉状塗布剤、液状塗布剤、貼付剤等の経皮吸収製剤等が挙げられる。好ましい投与形態や製剤形態等は、患者の年齢、性別、体質、症状、処置時期等に応じて、医師によって適宜選択される。
本発明の抗癌剤は、錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤等の固形製剤でもよい。この固形製剤は、常法に従って、本発明の金属錯体と固形製剤用の原料とを適宜混合することによって製造することができる。固形製剤用の原料としては、例えば、乳糖、ショ糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルロースカルシウム、カルボシキメチルセルロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤等が挙げられる。必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、酸化チタン等を用いて、錠剤等である本発明の抗癌剤に、糖衣、ゼラチン、腸溶被覆、フイルムコーティング等を施してもよい。
本発明の抗癌剤は、注射剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤、噴霧剤、ローション剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の液状製剤でもよい。この液状製剤は、常法に従って、本発明の金属錯体と液状製剤用の原料とを適宜混合することによって製造することができる。液状製剤用の原料としては、例えば、精製水、リン酸緩衝液、生理的食塩水、リンゲル溶液、ロック溶液、カカオバター、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、エタノール等の有機溶媒、コレステロール等の乳化剤、アラビアゴム等の懸濁剤、分散助剤、浸潤剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリエチレングリコール系等の界面活性剤、リン酸ナトリウム等の溶解補助剤、糖、糖アルコール、アルブミン等の安定化剤、パラベン等の保存剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、吸着防止剤、保湿剤、酸化防止剤、着色剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等が挙げられる。本発明の抗癌剤が注射剤である場合、そのpHは6〜8程度であることが好ましい。
本発明の抗癌剤は、ローション剤、クリーム剤、軟膏等の半固形製剤でもよい。この半固形製剤は、常法に従って、本発明の金属錯体と半固形製剤用の原料とを適宜混合することによって製造することができる。半固形製剤用の原料としては、例えば、脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤等が挙げられる。
本発明の抗癌剤中の上記金属錯体の含有量は、投与形態、重篤度や所望の投与量等に応じて変動しうるが、一般的には0.001〜80重量%程度、好ましくは0.1〜50重量%程度である。
本発明の抗癌剤の投与量は、例えば患者の年齢、性別、体重、症状、および投与経路等の条件に応じて適宜定められる。成人一日あたりの有効成分の投与量は、一般的に1μg/kg〜1,000mg/kg程度であり、好ましくは10μg/kg〜10mg/kg程度である。本発明の抗癌剤は、一日一回で投与されてもよいし、一日数回(例えば、2〜4回程度)に分けて投与されてもよい。本発明の抗癌剤の投与は、既知の化学療法、外科的治療法、放射線療法、温熱療法や免疫療法等と併用してもよい。
以下、合成例および試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の合成例および試験例によって制限を受けるものではない。なお、以下の合成例および試験例における成分濃度の「%」は、特段の記載が無い限り「重量%」を意味する。
以下の合成例および試験例で使用した原料等の略号の意味は以下の通りである。
BOC:tert−ブトキシカルボニル
dach:1R,2R−1,2−シクロヘキサンジアミン
1,4−dach:cis−1,4−シクロヘキサンジアミン
DMA:ジメチルアセトアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
IP6:myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−ヘキサキスホスフェートアニオン(組成式:C24
phen:1,10−フェナントロリン
5−MP:5−メチル−1,10−フェナントロリン
5,6−DMP:5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン
TSP:トリメチルシリルプロパン酸
合成した金属錯体は、元素分析、H−NMR、31P−NMRにより同定した。使用した機器を以下に記載する。
元素分析:Leco CHN 900
H−NMR:JEOL−ECA400(25℃、SIM、NON、400Hz)
31P−NMR:JEOL−ECA600(25℃、243MHz)
合成例1−1:Pt(NHの合成
PtCl(2.0g、4.8mmol)を水(20ml)に溶解させ、この溶液にKI(3.3g、19.8mmol)を加えて、50℃の湯浴で温めながら溶液を5分間撹拌した。この溶液を、28%アンモニア水(0.584g、9.6mmol)に加え、3時間静置後、沈殿物をろ取し、熱水、エタノール、ジエチルエーテルの順で洗浄後、真空乾燥して、Pt(NHを黄色粉末として得た(収量:2.06g、収率:89%)。
元素分析:HPt
計算値:C,0.00;H,1.25;N,5.80.
実測値:C,0.05;H,0.99;N,5.42.
合成例1−2:Pt(dach)Iの合成
PtCl(2.0g、4.8mmol)を水(20ml)に溶解させ、この溶液にKI(3.3g、19.8mmol)を加えて、50℃の湯浴で温めながら、この溶液を5分間撹拌した。この溶液を、dach(0.55g、4.8mmol)を含む溶液に加え、3時間静置した後、沈殿物をろ取し、熱水、エタノール、ジエチルエーテルの順で洗浄後、真空乾燥して、Pt(dach)Iを黄色粉末として得た(収量:2.66g、収率:98%)。
元素分析:C14Pt
計算値:C,12.79;H,2.49;N,4.97.
実測値:C,12.38;H,2.40;N,4.74.
合成例1−3:Pt(NHIP6の合成
硝酸銀(0.68g、4.0mmol)を水(80ml)に溶解させ、この溶液にPt(NH(0.96g、2.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(10ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。この溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、IP6・12Na・14HO(2.35g、2.0mmol)を含む水溶液(5ml)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールを加え、茶色沈殿物をろ取し、真空乾燥して、Pt(NHIP6・10Naを得た(収量:2.40g、収率:82%)。
元素分析:Pt(NHIP6・10Na・8H
計算値:C,5.76;H,2.24;N,2.24.
実測値:C,6.14;H,2.18;N,1.90.
合成例1−4:(Pt(NH・Pt(dach))IP6の合成
硝酸銀(0.34g、2.0mmol)を水(20ml)に溶解させ、この溶液にPt(dach)I(0.56g、1.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(5ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。この溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、Pt(NHIP6(1.47g、1.0mmol)を含む水溶液(5ml)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液をろ過して、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えた後、茶色沈殿物をろ取し、真空乾燥して、(Pt(NH・Pt(dach))IP6・8Naを得た(収量:1.63g、収率:82%)。
た。
元素分析:(Pt(NH・Pt(dach))IP6・8Na・17H
計算値:C,8.59;H,3.58;N,3.34.
実測値:C,8.79;H,5.57;N,3.16.
合成例1−5:Pt(dach)IP6の合成
硝酸銀(0.68g、4.0mmol)を水(80ml)に溶解させ、Pt(dach)I(1.12g、2.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(10ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、IP6・12Na・14HO(2.35g、2.0mmol)を含む水溶液(5ml)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールを加え、白色沈殿物をろ取し、真空乾燥して、Pt(dach)IP6・10Naを得た(収量:2.31g、収率:75%)
元素分析:Pt(dach)IP6・10Na・20H
計算値:C,9.31;H,3.88%;N,1.81.
実測値:C,9.71;H,3.69%;N,1.35.
合成例1−6:(Pt(dach)・Pt(dach))IP6の合成
硝酸銀(0.34g、2.0mmol)を水(20ml)に溶解させ、Pt(dach)I(0.56g、1.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(5ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。この溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、Pt(dach)IP6・10Na(1.55g、1.0mmol)を含む水溶液(5ml)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールを加え、白色沈殿物をろ取し、真空乾燥して、(Pt(dach)・Pt(dach))IP6・8Naを得た(収量:1.45g、収率:83%)。
元素分析:(Pt(dach)・Pt(dach))IP6・8Na・17H
計算値:C,12.3;H,3.87%;N,3.19.
実測値:C,12.0;H,3.39%;N,2.79.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):+6.96(2P),+2.86(1P),+2.10(1P),+1.77(1P),+1.35(1P)
合成例1−7:Pt(dach)・Pt(NH)IP6の合成
硝酸銀(0.17g、1.0mmol)を水(20ml)に溶解させ、Pt(NH(0.24g、0.5mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(2.5ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。この溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、Pt(dach)IP6・10Na(0.58g、0.5mmol)を含む水溶液(20ml)を加え、室温で3日間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールを加え、沈殿物をろ取して、(Pt(dach)・Pt(NH)IP6・8Naを茶色粉末として得た(収量:0.47g、収率:60%)。
元素分析:(Pt(dach)・Pt(NH)IP6・8Na・CHOH・20H
計算値:C,8.85;H,3.97;N,3.17.
実測値:C,8.89;H,4.02;N,2.89.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):+1.99(1P),+1.33(1P),+1.02(2P),+0.70(1P),+0.40(1P)
合成例1−8:金属錯体(1−1)および金属錯体(1−2)の混合物(cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt)の合成
硝酸銀(0.255g、1.5mmol)を水(30ml)に溶解させ、この溶液にPt(dach)I(0.42g、0.75mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(3.75ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、(Pt(NH・Pt(dach))IP6・8Na・17HO(1.257g、0.75mmol)を含む水溶液(4ml)を加え、50℃で二日間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えた後、沈殿物をろ取し、真空乾燥して、ナトリウム塩の形態である金属錯体(1−1)および金属錯体(1−2)の混合物(cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Na)を黒色粉末として得た(収量:1.35g、収率:71%)。
元素分析:(Pt(NH・2Pt(dach))IP6・6Na・0.25DMA・14H
計算値:C,11.95;H,3.68;N,4.59.
実測値:C,11.57;H,3.23;N,4.24.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):7.85(0.5P),7.58(0.5P),7.17(0.5P),6.15(0.5P),5.04(0.5P),4.87(0.5P),3.63(3P)
合成例1−9:金属錯体(1−3)および金属錯体(1−4)の混合物(oxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt)の合成
硝酸銀(0.34g、2.0mmol)を水(15ml)に溶解させ、この溶液にPt(NH(0.6g、1.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(3ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、(Pt(dach)・Pt(dach))IP6・8Na・10.5HO(1.6336g、1.0mmol)を含む水溶液(4ml)を加え、60℃で三日間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えた後、沈殿物をろ取し、真空乾燥して、ナトリウム塩の形態である金属錯体(1−3)および金属錯体(1−4)の混合物(oxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Na)を黒色粉末として得た(収量:1.48g、収率:73%)。
元素分析:(Pt(NH・2Pt(dach))IP6・6Na・18H
計算値:C,10.68;H,3.36;N,4.15.
実測値:C,10.33;H,3.31;N,3.76.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):7.85(1P),6.52(1P),1.99(1P),1.2(1P),0.81(2P)
合成例1−10:金属錯体(1−5)および金属錯体(1−6)の混合物(oxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt)の合成
硝酸銀0.34g(2.0mmol)を水(10ml)に溶解させ、この溶液にPt(dach)I(0.56g、1.0mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(3ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、(Pt(dach)・Pt(NH)IP6・8Na・15HO(1.638g、1.0mmol)を含む水溶液(4ml)を加え、60℃で三日間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えた後、沈殿物をろ取し、真空乾燥して、ナトリウム塩の形態である金属錯体(1−5)および金属錯体(1−6)の混合物(oxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt・6Na)を黒色粉末として得た(収量:1.548g、収率:72.4%)。
元素分析:(Pt(NH・2Pt(dach))IP6・6Na・20HO・3CHOH
計算値:C,11.79;H,4.31;N,3.93.
実測値:C,11.68;H,4.28;N,3.67.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):+0.80(2P),+0.40(4P)
合成例1−11:金属錯体(1−7)および金属錯体(1−8)の混合物(cisPt−oxaliPt−IP6−cisPt)の合成
硝酸銀(0.068g、0.4mmol)を水(8ml)に溶解させ、この溶液にPt(NH(0.096g、0.2mmol)を溶解させたジメチルアセトアミド溶液(1.0ml)を加えて遮光し、室温で一晩撹拌した。溶液をろ過してヨウ化銀を除去し、(Pt(NH・Pt(dach))IP6・8Na・17HO(0.335g、0.2mmol)を含む水溶液(1ml)を加え、50℃で三日間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣にメタノールを加えた後、沈殿物をろ取し、真空乾燥して、ナトリウム塩の形態である金属錯体(1−7)および金属錯体(1−8)の混合物(cisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Na)を黒色粉末として得た(収量:0.29g、収率:78%)。
元素分析:(Pt(NH・Pt(dach)・Pt(NH)IP6・6Na・0.25DMA・0.25CHOH・15H
計算値:C,8.58;H,3.52;N,4.72.
実測値:C,8.17;H,3.08;N,4.54.
31P−NMR(DO、85%HPO基準)
δ(ppm):7.80(0.5P),7.55(0.5P),7.20(0.5P),6.15(0.5P),5.01(0.5P),4.85(0.5P),3.60(3P)
合成例2−1:Pt(phen)Clの合成
1,10−フェナントロリン(0.612g、3.4mmol)をDMSO(1ml)に溶解させ、この溶液を、水(24ml)にKPtCl(1.38g3.3mmol)を加えた懸濁液と混合した。得られた混合液を80℃で3時間加熱撹拌し、その後、室温で2時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、水で洗浄後、乾燥して、Pt(phen)Clを黄色粉末として得た(収量1.4686g、収率99.7%)。
元素分析:C12PtCl
計算値:C,32.28;H,1.79;N,6.28.
実測値:C,32.54;H,1.74;N,6.21.
合成例2−2:Pt(5−MP)Clの合成
5−MP(0.66g、3.4mmol)をDMSO(1ml)に溶解させ、この溶液を、水(24ml)にKPtCl(1.38g、3.3mmol)を加えた懸濁液と混合した。得られた混合液を80℃で3時間加熱撹拌し、その後室温で2時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、水で洗浄後、乾燥して、Pt(5−MP)Clを黄色粉末として得た(収量1.4836g、収率96.1%)。
元素分析:C1310PtCl・1/2H
計算値:C,33.26;H,2.35;N,5.97.
実測値:C,33.21;H,2.59;N,5.68.
合成例2−3:AtN3の合成
クロロホルム(40ml)とメタノール(10ml)の混合溶媒に、3,3’−ジアミノジプロピルアミン(5ml、35.4mmol)と9−アントラセンカルボアルデヒド(2.06g、10mmol)を加え、1時間撹拌した。その後、この混合液に水素化ホウ素ナトリウム(1.13g、30mmol)を少しずつ加え、室温で一晩撹拌した。混合液をエバポレートし、得られた濃縮液に6N塩酸を加えて酸性にし、得られた酸性溶液に10N水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性にした。得られたアルカリ性溶液をクロロホルム(50ml)で抽出し、1%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で3回洗浄後、有機層を分離した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートし、残渣をエタノール(40ml)に溶解させた後10分間撹拌し、この溶液に35%塩酸を加えて撹拌することで、AtN3・3HClを得た(収量3.747g、収率65.8%)。
元素分析:C2127・3HO・3HCl・HBO
計算値:C,44.76;H,6.93;N,7.46.
実測値:C,44.48;H,6.89;N,7.48.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:8.803(s,1H),8.363(d,2H),8.248(d,2H),7.768(dd,2H),7.663(dd,2H),5.375(s,2H),3.387(t,2H),3.136(d,2H),3.117(d,2H),3.088(d,2H),2.181(m,2H),2.064(m,2H)
合成例2−4:2At−N4の合成
クロロホルム(5ml)とメタノール(5ml)の混合溶媒に、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン0.5ml(2.7mmol)と9−アントラセンカルボアルデヒド(1.33g、6.45mmol)を加え、1時間撹拌した。その後、この混合液に水素化ホウ素ナトリウム(0.59g16mmol)を少しずつ加え、室温で一晩撹拌した。混合液をエバポレートし、得られた濃縮液に6N塩酸を加えて酸性にし、得られた酸性溶液に10N水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性にした。得られたアルカリ性溶液をクロロホルム(50ml)で抽出し、1%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で3回洗浄後、有機層を分離した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートし、残渣をエタノール(40ml)に溶解させた後10分間撹拌し、この溶液に35%塩酸を加えて撹拌することで、2At−N4・4HClを得た(収量0.321g、収率22.4%)。
元素分析:C3842・4HCl(0HOM=7004HClM’=838)
計算値:C,63.01;H,7.64;N,6.68.
実測値:C,63.35;H,8.04;N,6.92.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:8.30(d,1H),7.72(dd,1H),7.60(dd,1H),8.10(d),8.10(d,1H),7.60(dd,1H,7.72(dd,1H),8.30(d,1H),8.65(s,1H),5.23(s,2H),2.75(d,2H),1.88(t,2H),2.67(d,2H),3.26(t,2H)
合成例2−5:2At−Spmの合成
クロロホルム(40ml)とメタノール(10ml)の混合溶媒に、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン四塩酸塩(0.4g、1.14mmol)を懸濁させ、その懸濁液に、6当量のトリエチルアミン(964μl、6.84mmol)を加えて懸濁物を溶解させた。この溶液に、クロロホルム(10ml)に溶解させた9−アントラセンカルボアルデヒド(0.60g、2.8mmol)を加え、3時間撹拌した。その後、この混合液に、メタノールに溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.06g、17.2mmol)を少しずつ加え、室温で一晩撹拌した。混合液をエバポレートし、得られた濃縮液に6N塩酸を加えて酸性にし、得られた酸性溶液に10N水酸化ナトリウム水溶液を加えて、アルカリ性にした。得られたアルカリ性溶液をクロロホルム(50ml)で抽出し、1%炭酸ナトリウム水溶液(50ml)で3回洗浄後、有機層を分離した。分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートし、残渣を20mlのエタノールに溶解させた後10分間撹拌し、この溶液に35%塩酸を加えて撹拌することで、2At−Spm・4HClを得た(収量0.715g、収率81.61%)。
元素分析:C4046・3HO・4HCl
計算値:C,61.05;H,7.52;N,7.34.
実測値:C,61.38;H,7.16;N,7.16.
H−NMR(DO、TSP基準)
8.282(d,1H),7.733(dd,1H),7.623(dd,1H),8.162(d,1H),8.162(d,1H),7.623(dd,1H),7.733(dd,1H),8.282(d,1H),8.717(s,1H),5.320(s,2H),3.118(dd,2H),2.159(d,2H),3.375(t,2H),3.095(dd,2H),1.747(s,2H)
合成例2−6:金属錯体(2−1)(Pt(phen)(AtN3))の合成
Pt(phen)Cl(0.23g、0.5mmol)を水(5ml)に懸濁させた。その懸濁液に、水(5ml)に溶解させたAtN3・3HCl(0.30g、0.65mmol)および炭酸ナトリウム(0.08g、0.75mmol)を加えた。混合液を80℃で3時間加熱撹拌させた後、混合液をろ過し、得られたろ液を1〜2mlになるまでエバポレートし、得られた残渣をアセトンで再沈澱し、沈殿物を吸引ろ過でろ取し、洗浄および乾燥して、Pt(phen)(AtN3)Clを黄色粉末として得た(収量0.119g、収率31.0%)。このPt(phen)(AtN3)Clは、式(2)中のRが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜R17が水素原子であり、kが3である金属錯体である。
元素分析:C3328PtCl・2HO・3NaCl
計算値:C,40.47;H,3.99;N,7.15.
実測値:C,40.66;H,4.50;N,6.95.
H−NMR(DO、TSP基準)
(1)フェナントロリン環
δ:9.078(d,1H),8.155(q,1H),8.682(d,1H),8.102(d,1H),8.102(d,1H),7.418(dd,1H),7.355(q,1H),8.223(dd,1H)
(2)アントラセン環
δ:8.581(d,1H),8.223(dd,1H),7.418(dd,1H),8.351(d,1H),6.972(d,1H),6.972(d,1H),7.130(dd,1H),7.130(dd,1H),6.863(s,1H)
(3)トリアミン部分
δ:3.035(m,1H),2.046(s,1H),3.200(m,1H),2.739(m,1H),3.530(m,1H),3.200(m,1H),1.862(m,1H),1.715(m,1H),3.013(m,1H),2.739(m,1H)
合成例2−7:金属錯体(2−2a)および金属錯体(2−2b)の混合物(Pt(5−MP)(AtN3))の合成
Pt(5−MP)Cl(0.50g、1.0mmol)を水(10ml)に懸濁させた。その懸濁液に、水(10ml)に溶解させたAtN3・3HCl(0.592g、1.3mmol)および炭酸ナトリウム(0.16g、1.3mmol)を加えた。混合液を80℃で3時間加熱撹拌させた後、混合液をろ過し、得られたろ液を1〜2mlになるまでエバポレートし、得られた残渣をアセトンで再沈澱し、沈殿物を吸引ろ過でろ取し、得られた粉末を洗浄および乾燥して、塩化物の形態である金属錯体(2−2a)および金属錯体(2−2b)の混合物(Pt(5−MP)(AtN3)Cl)を黄色粉末として得た(収量0.4557g、収率58.3%)。金属錯体(2−2a)は、式(2)中のRが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基であり、kが3である金属錯体であり、金属錯体(2−2b)は、式(2)中のRが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基であり、kが3である金属錯体であり、これら金属錯体は異性体の関係にある。
元素分析:C3437PtCl・5/2HO・3/2COH・NaCl
計算値:C,46.56;H,5.35;N,7.34.
実測値:C,46.48;H,5.40;N,7.45.
H−NMR(DO、TSP基準)
(1)フェナントロリン環
δ:8.634(d,1H),8.553(d,1H),8.189(q,1H),8.064(q,1H),9.131(d,1H),8.922(d,1H),3.209(s,1H),2.934(s,1H)
8.064(s,1H),7.974(s,1H),7.418(d,1H),7.405(d,1H),7.393(q,1H),7.321(q,1H),8.243(d,1H),8.171(d,1H)
(2)アントラセン環
δ:8.553(d,1H),8.420(d,1H),8.064(s,1H),8.064(d,1H),6.976(d,1H),7.160(d,1H),7.135(d,1H),7.147(s,1H),7.123(s,1H),7.405(dd,1H),7.393(dd,1H),7.393(d,1H),7.321(d,1H),6.891(s,1H),6.855(s,1H)
(3)トリアミン部分
δ:3.047(s,1H),3.029(s,1H),2.056(s,1H),2.774(m,1H),3.573(m,1H),3.235(m,1H),1.926(m,1H),1.770(m,1H),3.047(s,1H)
合成例2−8:金属錯体(2−3)(Pt(5−MP)(2At−N4))の合成
Pt(5−MP)Cl(0.08g、0.18mmol)を水(5ml)に懸濁させた。その懸濁液に、エタノール(5ml)に溶解させた2At−N4・4HCl(0.15g、0.21mmol)、水(5ml)に溶解させた炭酸ナトリウム(0.02g、0.21mmol)を加えた。混合液を80℃で2日間加熱撹拌させた後、混合液をろ過し、得られたろ液を1〜2mlになるまでエバポレートし、得られた残渣をアセトンで再沈澱し、沈殿物を吸引ろ過でろ取し、洗浄および乾燥して、Pt(5−MP)(2At−N4)Clを黄色粉末として得た(収量0.037g、収率17.4%)。Pt(5−MP)(2At−N4)Clは、式(2)中のRが−(CH−NH−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基であり、kが2である金属錯体である。
元素分析:C5152PtCl・3HO・3NaCl
計算値:C,49.21;H,4.66;N,6.75.
実測値:C,49.62;H,5.06;N,6.87.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:8.99(d,2H),8.79(d,2H),8.36(s,1H),833(m,1H),8.22(m,27H),8.03(s,2H),7.74(m,5H),7.49(m,41H),7.28(m,19H),5.22(m,8H),3.28(m,6H),3.15(m,2H),3.09(m,5H),3.01(s,2H),2.84(m,2H),2.71(m,6H),2.52(m,3H),1.94(m,3H),1.85(m,3H).
合成例2−9:金属錯体(2−4a)および金属錯体(2−4b)の混合物(Pt(5−MP)(2At−Spm))の合成
Pt(5−MP)Cl(0.092g、0.2mmol)を水(10ml)に懸濁させた。その懸濁液に、エタノール(10ml)に溶解させた2At−Spm・4HCl(0.146g、0.2mmol)、および水(10ml)に溶解させた炭酸ナトリウム(0.0212g、0.2mmol)を加えた。混合液を80℃で2日間加熱撹拌させた後、混合液をろ過し、得られたろ液を1〜2mlになるまでエバポレートし、得られた残渣をアセトンで再沈澱させ、沈殿物を吸引ろ過でろ取し、洗浄および乾燥して、塩化物の形態である金属錯体(2−4a)および金属錯体(2−4b)の混合物(Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl)を黄色粉末として得た(収量0.048g、収率17.4%)。金属錯体(2−4a)は、式(2)中のRが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である金属錯体であり、金属錯体(2−4b)は、式(2)中のRが−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である金属錯体であり、これら金属錯体は異性体の関係にある。
元素分析:C5356PtCl・14HO・1.5HCl
計算値:C,47.28;H,6.35;N,6.24.
実測値:C,47.15;H,6.34;N,6.23.
H−NMR(DMSO−d
δ:9.73(d,2H),9.63(d,2H),9.11(d,2H),8.94(d,2H),8.58(s,2H),8.46(d,6H),8.23(dd,4H),8.16(s,10H),8.03(m,4H),7.59(m,8H),7.47(m,8H),4.67(m,8H),2.89(s,14H),2.76(s,10H),2.61(m,6H),2.12(s,4H),1.75(s,6H).
合成例3−1:BOC−1,4−dachの合成
氷冷したメタノール(5.1ml)に1,4−dach(1.14g、10mmol)を溶解させ、6N塩酸(1.7ml、10mmol)を加えて、室温で15分間撹拌した。その後、混合液を室温で45分間撹拌した後、メタノール(7ml)に溶解させた(BOC)O(3.2g、15mmol)を10分間かけてゆっくり加えた。その後、混合液を室温で1時間撹拌した。エバポレートし、混合液からメタノールを除去した後、ジエチルエーテル(15ml)を加えて未反応の(BOC)Oを除去した。2N水酸化ナトリウム水溶液(8ml)を加えて、混合液がアルカリ性になったことを確認した後、ジクロロメタン(15ml)で3回抽出した。有機層を飽和食塩水(15ml)で洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、乾燥した有機層をエバポレートすることによって、BOC−1,4−dachを得た(収量2.85g、収率66.78%)。
合成例3−2:At−1,4−dachの合成
クロロホルム(20ml)とメタノール(5ml)の混合溶媒に、BOC−1,4−dach(1.06g、5mmol)と9−アントラセンカルボアルデヒド(1.03g、5mmol)をゆっくりと加え、60℃で加熱しながら3時間撹拌した。その後、この混合液に水素化ホウ素ナトリウム(0.66g、15mmol)を少しずつ加え、室温で一晩撹拌した。エバポレートすることで混合液の溶媒を除去し、6N塩酸(23ml)を加えて混合液を酸性にした後、室温で30分間撹拌した。ジエチルエーテル(20ml)を加えて未反応の9−アントラセンカルボアルデヒドを除去した後、混合液に10N水酸化ナトリウム水溶液(20ml)を加えてアルカリ性にした。クロロホルム(25ml)で抽出し、1%NaCO(25ml)で3回洗浄後、有機層を分離した。分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートすることで、At−1,4−dachを得た(収量1.96g、収率54.5%)。
合成例3−3:AtC4の合成
クロロホルム(20ml)とメタノール(5ml)の混合溶媒に、1,4−ブタンジアミン(NH(CHNH)(0.88g、10mmol)と9−アントラセンカルボアルデヒド(2.06g、10mmol)をゆっくりと加え、60℃で加熱しながら3時間撹拌した。その後、この混合液に、水素化ホウ素ナトリウム(1.32g、10mmol)を少しずつ加え、室温で一晩撹拌した。エバポレートすることで混合液の溶媒を除去し、6N塩酸(23ml)を加えて混合液を酸性とした後、室温で30分間撹拌した。ジエチルエーテル(20ml)を加えて未反応の9−アントラセンカルボアルデヒドを取り除き、混合液に10N水酸化ナトリウム水溶液(20ml)を加えてアルカリ性にした。クロロホルム(25ml)で抽出し、1%炭酸ナトリウム水溶液(25ml)で3回洗浄後、有機層を分離した。分離した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートすることで、AtC4を得た(収量2.77g、収率87%)。
合成例3−4:Pt(5,6−DMP)Clの合成
特許文献1に記載の方法により、Pt(5,6−DMP)Clを得た。
合成例3−5:金属錯体(3−1)(Pt(phen)(AtC4))の合成
Pt(phen)Cl(0.44g、1.0mmol)をエタノール:水=1:1(体積比)の溶媒(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAtC4(0.09g、0.25mmol)を加え、80℃で一晩加熱撹拌した。反応液をエバポレートして液量を減らした後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。アセトンで洗浄し、乾燥させて、Pt(phen)(AtC4)Clを得た(収量0.417g、収率56%)。このPt(phen)(AtC4)Clは、式(3)中のR〜R19が水素原子である金属錯体である。
元素分析:C3130PtCl・H
計算値:C,50.19;H,4.57;N,7.61.
実測値:C,49.87;H,4.29;N,7.51.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:1.85(2H),2.00(2H),2.10(2H),2.23(2H),3.04(1H),3.36(1H),6.47(1H),6.55(1H),6.65(1H),6.97(1H),7.14(1H),7.43(1H),7.45(1H),7.71(1H),7.74(1H),7.84(1H),7.86(1H),7.98(1H),8.00(1H),8.18(1H),8.44(1H),8.74(1H),8.81(1H)
合成例3−6:金属錯体(3−2a)および金属錯体(3−2b)の混合物(Pt(5−MP)(AtC4))の合成
Pt(5−MP)Cl(0.46g、1.0mmol)を水(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAtC4(0.36g、1.0mmol)を加え、80℃で一晩加熱撹拌した。反応液をエバポレートして液量を減らした後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。ろ取した析出物をアセトンで洗浄し、乾燥させて、塩化物の形態である金属錯体(3−2a)および金属錯体(3−2b)の混合物(Pt(5−MP)(AtC4)Cl)を得た(収量0.303g、収率87%)。金属錯体(3−2a)は、式(3)中のR〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である金属錯体であり、金属錯体(3−2b)は、式(3)中のR〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である金属錯体であり、これら金属錯体は異性体の関係にある。
元素分析:C3234PtCl・2COH・H
計算値:C,48.92;H,5.02;N,6.53.
実測値:C,49.30;H,5.16;N,6.57.
H−NMR(DO、TSP基準)
(1)フェナントロリン環
δ:8.41(d,1H),7.84(dd,1H),8.68(d,1H),7.38(s,1H),7.17(d,1H),6.33(dd,1H),7.22(d,1H)
(2)アントラセン環
δ:7.49(d,1H),7.47(dd,1H),8.04(dd,1H),8.08(d,1H),7.74(d,1H),7.48(dd,1H),6.71(dd,1H),7.41(d,1H),7.53(s,1H)
合成例3−7:金属錯体(3−3)(Pt(5,6−DMP)(AtC4))の合成
Pt(5,6−DMP)Cl(0.11g、0.25mmol)をエタノール:水=1:1(体積比)の溶媒(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAtC4(0.09g、0.25mmol)を加え、80℃で一晩加熱撹拌した。反応液をエバポレートして液量を減らした後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。ろ取した析出物をアセトンで洗浄し、乾燥させて、Pt(5,6−DMP)(AtC4)Clを得た(収量0.115g、収率58.6%)。このPt(5,6−DMP)(AtC4)Clは、式(3)中のR〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RおよびRがメチル基である金属錯体である。
元素分析:C3536PtCl・3H
計算値:C,50.48;H,5.04;N,6.73.
実測値:C,50.96;H,4.78;N,6.87.
H−NMR(DO、TSP基準)
(1)フェナントロリン環
δ:8.75(d,1H),7.92(dd,1H),8.8(d,1H),6.87(d,1H),6.59(dd,1H),6.97(d,1H)
(2)アントラセン環
δ:7.52(d,1H),7.65(dd,1H),8.27(dd,1H),8.36(d,1H),7.80(d,1H),6.43(dd,1H) ,6.70(dd,1H),7.46(d,1H),7.33(s,1H)
合成例3−8:金属錯体(3−4)(Pt(phen)(At−1,4−dach))の合成
Pt(phen)Cl(0.11g、0.25mmol)をエタノール:水=1:1(体積比)の溶媒(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAt−14−dach(0.09g、0.25mmol)を加え、30分撹拌後、80℃で一晩加熱撹拌した。反応液を熱時ろ過し、エバポレートして濃縮後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。ろ取した析出物をアセトンで洗浄し、乾燥させて、Pt(phen)(At−1,4−dach)Clを得た(収量0.125g、収率78%)。このPt(phen)(At−1,4−dach)Clは、式(3)中のR18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成し、R〜R17が水素原子である金属錯体である。
元素分析:C3332PtCl・3/2COH・2H
計算値:C,51.95;H,6.05;N,5.94.
実測値:C,51.82;H,6.41;N,5.92.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:8.97(1H),8.90(1H),8.80(1H),8.76(1H),8.54(1H),8.52(1H),8.22(1H),8.12(1H),8.09(1H),7.96(1H),7.95(1H),7.86(1H),7.75(1H),7.32(1H),6.98(1H),6.64(1H),6.55(1H),3.06(1H),2.91(1H),2.23(2H),2.09(2H),1.96(2H),1,86(4H)
合成例3−9:金属錯体(3−5a)および金属錯体(3−5b)の混合物(Pt(5−MP)(At−1,4−dach))の合成
Pt(5−MP)Cl(0.23g、0.5mmol)をエタノール:水=1:1(体積比)の溶媒(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAt−1,4−dach(0.18g、0.5mmol)を加え、60℃で一晩加熱撹拌した。反応液をエバポレートして液量を減らした後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。ろ取した析出物をアセトンで洗浄し、乾燥させて、塩化物の形態である金属錯体(3−5a)および金属錯体(3−5b)の混合物(Pt(5−MP)(At−1,4−dach)Cl)を得た(収量0.303g、収率87%)。金属錯体(3−5a)は、式(3)中のR18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成し、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基である金属錯体であり、金属錯体(3−5b)は、式(3)中のR18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成し、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、Rがメチル基である金属錯体であり、これら金属錯体は異性体の関係にある。
元素分析:C3434PtCl・2.5H
計算値:C,49.82;H,5.12;N,6.67.
実測値:C,50.18;H,4.79;N,6.89.
H−NMR(DO、TSP基準)
δ:1.88(4H),1.98(2H),2.12(2H),2.25(2H),2.86(1H),2.94(1H),3.74(3H),6.99(1H),7.21(1H),7.36(1H),7.54(1H),7.62(1H),7.79(1H),8.18(1H),8.37(1H),8.42(1H),8.46(1H),8.50(1H),8.76(1H),8.83(1H),8.90(1H),8.98(1H),9.09(1H)
合成例3−10:金属錯体(3−6)(Pt(5,6−DMP)(At−1,4−dach))の合成
Pt(5,6−DMP)Cl(0.23g、0.5mmol)をエタノール:水=1:1(体積比)の溶媒(20ml)に懸濁させ、この懸濁液にDMA(5ml)に溶解させたAt−14dach(0.18g、0.5mmol)を加え、60℃で一晩加熱撹拌した。反応液をエバポレートして液量を減らした後、アセトンを添加して、析出物をろ取した。ろ取した析出物をアセトンで洗浄し、乾燥させて、Pt(5,6−DMP)(At−1,4−dach)Clを得た(収量0.178g、収率55%)。このPt(5,6−DMP)(At−1,4−dach)Clは、式(3)中のR18およびR19が互いに結合してシクロヘキサン環を形成し、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RおよびRがメチル基である金属錯体である。
元素分析:C3536PtCl・5HO・3NaCl
計算値:C,39.86;H,4.37;N,5.32.
実測値:C,39.63;H,4.59;N,5.24.
試験例1−1(ヒト癌細胞を用いたin vitro細胞増殖抑制評価)
ヒト癌細胞39種類を用いて、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Na等の金属錯体のin vitroにおける抗癌活性について検討した。詳しくは、癌細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、検体溶液(5doses、10−4から10−8まで1log間隔)を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。測定結果をコンピューターに入力し、データ処理した。各金属錯体の50%細胞増殖抑制濃度(IC50)(ヒト癌細胞39種類の平均値)を表1に示す。
なお、使用したヒト癌細胞39種類は乳癌(HBC−4、BSY−1、HBC−5、MCF−7、MDA−MB−231)、中枢神経系腫瘍(U251、SF−268、SF−295、SF−539、SNB−75、SNB−78)、大腸癌(HCC2998、KM−12、HT−29、HCT−15、HCT−116)、肺癌(NCI−H23、NCI−H226、NCI−H522、NCI−H460、A549、DMS273、DMS114)、メラノーマ(LOX−IMVI)、卵巣癌(OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、SK−OV−3)、腎臓癌(RXF−631L、ACHN)、胃癌(St−4、MKN1、MKN7、MKN28、MKN45、MKN74)、前立腺癌(DU−145、PC−3)である。
表1に示すように、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6NaおよびcisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naはシスプラチンおよびオキサリプラチンよりも高い抗癌活性を示した。
試験例1−2(Pt組織分布)
cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6NaまたはシスプラチンをddYマウス(雄性、6週齢)に尾静脈投与し、投与2、24、48時間後の各臓器を25%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(骨は60%硝酸)で可溶化し、各臓器中のPt量を誘導結合プラズマ原子発光分析法(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry、ICP−AES)により測定した。結果を図1および図2に示す。
図2に示すように、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naは、他の臓器と比較して脾臓、腎臓、肝臓および骨へ集積する傾向を示した。また、骨に集積したcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naは48時間後においても排泄されない傾向が見られた。さらに、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Na(図2)はシスプラチン(図1)と比較して骨により多く集積した。このことから、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naは骨へのドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用することが期待できる。
試験例1−3(骨転移モデルを用いた腫瘍増殖阻害、副作用および疼痛緩和の評価)
骨転移モデルラット(ラット数n=3〜4)にcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与し(投与量:8.25μmol/kg)、投与前後における腫瘍体積、体重比および足刺激への反応性(癌を植えていない右足と癌を植えた左足の反応性との反応性の比、右足/左足比(R/L))を測定することにより、それぞれ腫瘍増殖阻害効果、副作用および疼痛緩和効果を評価した。腫瘍の大きさはノギスを用いて測定した。体重比は薬剤投与直前のラットの体重を1として算出した。足刺激への反応性は von frey filament を用いて測定した。結果を図3〜図5に示す。なお、図3〜図5には、金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の結果も示す。
図3に示すように、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naはラット骨癌に対してシスプラチンと同程度の骨腫瘍増殖阻害能を示した。また、図4に示すように、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naを投与しても顕著な体重変化は認められなかった。また、図5に示すように、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naは、最初の検査時(7日後)から強い疼痛緩和効果を示した。この点、癌を植えていない右足と癌を植えた左足の反応性との反応性の比が1に近いことは疼痛を感じていないことを意味する。
試験例1−4(骨転移モデルを用いた腫瘍増殖阻害、副作用および疼痛緩和の評価)
ラット数nを3としたこと、およびoxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naの投与量を16.5μmol/kgとしたこと以外は試験例1−3と同様にして、oxaliPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6NaおよびoxaliPt−cisPt−IP6−oxaliPt・6Naの投与前後における腫瘍体積、体重比および足刺激への反応性を測定することにより、それぞれ腫瘍増殖阻害効果、副作用および疼痛緩和効果を評価した。結果を図6〜図8に示す。なお、図6〜図8には、金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の結果も示す。
試験例1−5(骨転移モデルを用いた腫瘍増殖阻害、副作用および疼痛緩和の評価)
ラット数nを3としたこと、およびcisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naの投与量を4.125μmol/kgとしたこと以外は試験例1−3と同様にして、cisPt−oxaliPt−IP6−cisPt・6Naの投与前後における腫瘍体積、体重比および足刺激への反応性を測定することにより、それぞれ腫瘍増殖阻害効果、副作用および疼痛緩和効果を評価した。結果を図9〜図11に示す。なお、図9〜図11には、金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の結果も示す。
試験例1−6(in vivo腎毒性評価)
雄性ICRマウスにcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naまたはシスプラチンを投与し、腎機能の指標となる血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンの投与前後における変動を調べた。結果を図12および図13に示す。
図12および図13に示すように、シスプラチン投与群は、金属錯体無投与のコントロール群に対しBUNの上昇が観察され、腎毒性が確認された。一方、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Na投与群ではBUNおよびクレアチニンともに値の上昇は認められなかった。
試験例1−7(ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害活性評価)
組換えヒトHDAC1(クラスI)、ヒトHDAC6(クラスII)を用いてcisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Naの酵素阻害活性を測定した。詳しくは、精製したヒトHDAC1、HDAC6に基質としてアセチル化した蛍光標識ペプチドを加え、37℃で30分間反応させた。その後トリプシンを添加し、このとき遊離した蛍光物質(アミノメチルクマリン)を定量することで酵素活性を測定し、50%細胞増殖抑制濃度(IC50)を求めた。なお、阻害活性の陽性対照としてはトリコスタチンAを用いた。
HDAC1のIC50は0.8μMであり、HDAC6のIC50は0.2μMであり、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6NaはHDAC6に対して特異的に強い阻害作用を示す。このことから、HDAC6が痛み遺伝子発現を引き起こしており、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6NaがHDAC6阻害により痛み遺伝子を発現させないようにすることによって、疼痛緩和がもたらされると推定される。
試験例2−1(ヒト癌細胞を用いたin vitro細胞増殖抑制評価1)
ヒト癌細胞39種類を用いて、Pt(phen)(AtN3)Cl等の金属錯体のin vitroにおける抗癌活性について検討した。詳しくは、癌細胞を96ウェルプレートに播種し、翌日、検体溶液(5doses、10−4から10−8まで1log間隔)を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。測定結果をコンピューターに入力し、データ処理した。各金属錯体の50%細胞増殖抑制濃度(IC50)(ヒト癌細胞39種類の平均値)を表2に示す。
なお、使用したヒト癌細胞39種類は乳癌(HBC−4、BSY−1、HBC−5、MCF−7、MDA−MB−231)、中枢神経系腫瘍(U251、SF−268、SF−295、SF−539、SNB−75、SNB−78)、大腸癌(HCC2998、KM−12、HT−29、HCT−15、HCT−116)、肺癌(NCI−H23、NCI−H226、NCI−H522、NCI−H460、A549、DMS273、DMS114)、メラノーマ(LOX−IMVI)、卵巣癌(OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、SK−OV−3)、腎臓癌(RXF−631L、ACHN)、胃癌(St−4、MKN1、MKN7、MKN28、MKN45、MKN74)、前立腺癌(DU−145、PC−3)である。
表2に示すように、Pt(phen)(AtN3)Cl、Pt(5−MP)(AtN3)Cl、Pt(5−MP)(2At−N4)ClおよびPt(5−MP)(2At−Spm)Clは、いずれもシスプラチンおよびオキサリプラチンよりも高い抗癌活性を示した。
試験例2−2(ヒト癌細胞を用いたin vitro細胞増殖抑制評価2)
ヒト癌細胞39種類を用いて試験例2−1と同様にして、特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Clおよび本発明のPt(5−MP)(2At−Spm)Clの50%細胞増殖抑制濃度(IC50)を測定し、log(各細胞のIC50値)およびlog(ヒト癌細胞39種類の平均IC50値)を算出した。log(ヒト癌細胞39種類の平均IC50値)からのlog(各細胞のIC50値)の変動を図14に示す。なお図14では、グラフの真ん中の0がlog(ヒト癌細胞39種類の平均IC50値)に対応する。
図14に示すように、Pt(5−MP)(AtC3)Clでは変動が少ないが、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clでは変動が大きい。このことから、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clは細胞間での感受性が異なることが分かる。
試験例2−3(Pt組織分布)
特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Clまたは本発明のPt(5−MP)(2At−Spm)ClをddYマウス(雄性、7週齢)に尾静脈投与し、投与2、24および48時間後の各臓器中のPt量を測定した。これらの結果を示すグラフを図15および図16に示す。なお、これらのグラフは金属錯体の投与量で補正されている。また、図15および図16中の略号の意味は以下の通りである。
C3:Pt(5−MP)(AtC3)Cl
Spm:Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl
図16に示すSpmはポリアミンを導入したことによって、図15に示すC3よりも臓器への取り込み量(臓器中のPt量)が増加した。また、図15および図16に示す24時間後までのPt量において、C3では各臓器中のPt量が一様であるのに対して、Spmでは腎臓、肝臓、膵臓、骨および筋肉へのPtの集積が観察された。
試験例2−4(ACHN腎臓移植ヌードマウスを用いたin vivo抗癌実験)
以下のようにしてPt(5−MP)(2At−Spm)Clのin vivoにおける抗癌活性について検討した。
1.ヒト腎臓癌由来細胞ACHNの継代実験
まず、ヒト腎臓癌由来細胞ACHNを用いて担癌ヌードマウスを作製し、ACHNの培養実験を行った。以下に継代実験の操作手順を示す。
(1)COインキュベーターの準備
COボンベをインキュベーターに接続し、5%、37℃に調節した。インキュベーター内部には滅菌水を入れたバットを設置した。
(2)クリーンベンチの用意
クリーンベンチの殺菌灯を消し、70%エタノールを手に吹き付け、エタノールを染み込ませたキムワイプでクリーンベンチ内を拭き、殺菌した。
(3)培地の作製
840mlのミリQ水(ミリポア製の超純粋製造装置から得られた超純水)に Eagle’s minimum essential medium 9.6gを加え撹拌した。そこにペニシリン−ストレプトマイシン混合液をペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100mg/μlとなるように加えた。さらに、炭酸水素ナトリウム2.0gとウシ胎児血清(FBS、PAA社)100mlを加え撹拌し、全量が1000mlになるようにミリQ水を加えた。その後、クリーンベンチ内でオートクレーブ済みのメディウム瓶に滅菌ろ過し、以下の培養実験の培地として使用した。
(4)PBSの作製
ミリQ水1000mlに Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline 9.6gを加えて撹拌し、溶解後、121℃、20分間オートクレーブで滅菌処理した。
(5)細胞培養と継代
サンプル容器にディープフリーザーで凍結保存していたヒト腎臓癌由来細胞ACHNを37℃で急速に溶解し、クリーンベンチ内で25mlの培地を入れた皿に移した。1日後、培地を除去し、10mlのPBSで洗浄後、5倍希釈した0.5%−Trypsin/5.3mM−EDTA溶液5mlを加え、37℃で5分間インキュベートした。細胞がすべて剥がれたのを確認後、培地5mlを加え、継代を行った。2日後同様の操作を行った。
(6)細胞数の計測
剥がした細胞を計数板にとり、トリパンブルーで染色した細胞浮遊液をのせ、上からカバーガラスをかけた。光学顕微鏡で計数板の計8か所のカウンター部に存在する細胞数を数え、1か所に存在する平均細胞数を算出し、希釈前の細胞浮遊液中の細胞数を計算した。
(7)細胞浮遊液の調整と注射
培地100μlあたり3.0×10個の細胞数になるように細胞浮遊液を調整した。調整済みの細胞浮遊液を1匹あたり100μl×2、マウスの両肩付近の皮下に注射した。
2.薬剤投与と腫瘍サイズの測定
ヌードマウスに腫瘍を注射した日を0日目とし、15日目、19日目、22日目、26日目、29日目、33日目、36日目、40日目に蒸留水(コントロール)、Pt(5−MP)(2At−Spm)Cl、スニチニブ(ポジティブコントロール)を投与した。蒸留水は100μl/20g、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clは8.25μmol/kg、スニチニブは体重×0.08μl/100ml生理食塩水となるように投与した。また、15日目、19日目、22日目、26日目、29日目、33日目、36日目、40日目、43日目に体重および腫瘍体積を測定した。それぞれの群はn=6とした。なお、(length×width)についてはUrology. 2001, 57, 188-192 を参考した。腫瘍体積比および体重比の変動を示すグラフを図17および図18に示す。腫瘍体積比および体積比は、それぞれ、薬剤投与直前(即ち、ヌードマウスに腫瘍を植えてから15日目)の腫瘍体積およびヌードマウスの体重を1として算出した。
図17に示すように、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clは、腎臓癌の第一選択薬であるスニチニブよりも良好な腫瘍サイズの減少を示し、コントロール(無投与)に対して有意な差を得た。一方、図18に示すように、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与しても体重減少は見られなかった。
試験例2−5(in vivo腎毒性評価)
絶食16時間後の雄性ICRマウス(6週齢、n=4)に、Pt(5−MP)(AtN3)Cl、Pt(5−MP)(2At−Spm)Clを8.25μmol/kgまたは16.5μmol/kg、Pt(5−MP)(2At−N4)Clを33μmol/kg静脈内投与した。56時間後、再度絶食を開始し、絶食16時間後に頸静脈付近からの採血(100μl)を行い、アイ・スタットカートリッジにより、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンの値を測定した。コントロールとして蒸留水100μl/匹、ポジティブコントロール(n=3)としてシスプラチン(16.5μmol/kg)を静脈内投与した。結果を図19および図20に示す。
図19に示すように、Pt(5−MP)(AtN3)Cl、Pt(5−MP)(2At−Spm)ClおよびPt(5−MP)(2At−N4)Clでは、腎毒性の指標であるBUNに大きな変化は無く、これら金属錯体は副作用が少ないことが分かった。
試験例2−6(骨転移モデルを用いた腫瘍増殖阻害、副作用および疼痛緩和の評価)
骨転移モデルラット(ラット数n=3)にPt(5−MP)(2At−Spm)Clを投与し(投与量:8.25μmol/kg)、投与前後における腫瘍体積、体重比および足刺激への反応性(癌を植えていない右足と癌を植えた左足の反応性との反応性の比、右足/左足比(R/L))を測定することにより、それぞれ腫瘍増殖阻害効果、副作用および疼痛緩和効果を評価した。腫瘍の大きさはノギスを用いて測定した。体重比は薬剤投与直前のラットの体重を1として算出した。足刺激への反応性は von frey filament を用いて測定した。結果を図21〜図23に示す。なお、図21〜図23には、金属錯体無投与の骨転移モデルラット(コントロール)の結果も示す。図23に関して、癌を植えていない右足と癌を植えた左足の反応性との反応性の比が小さいほど、疼痛を感じていないことを意味する。
試験例3−1(分配係数logPの測定)
1.試薬の調製
1−オクタノール100mlと蒸留水100mlをナス型フラスコに入れて24時間以上撹拌した。翌日分液ロートで分離して、水飽和1−オクタノール溶液および1−オクタノール飽和水溶液を調製した。また、メタノール500mlにテトラメチルアンモニウムクロリド(TMA)2.74gを溶解させ、TMAメタノール溶液(0.05mol/L)を調製した。
2.分配係数logPの測定
特許文献1に記載のPt(5−MP)(AtC3)Clまたは本発明のPt(5−MP)(AtC4)Cl(1mg)をガラス製サンプル管に秤りとり、これに、水飽和1−オクタノール溶液3ml、1−オクタノール飽和水溶液3mlを加え、このガラス製サンプル管を23℃の水浴に垂直にたて、5分間振とうさせた。次いで、23℃および1200rpmで金属錯体を含むサンプルを20分間遠心分離した後、上層および下層それぞれ1mlを秤りとり、サンプル1(水飽和1−オクタノール溶液)およびサンプル2(1−オクタノール飽和水溶液)とした。サンプル1およびサンプル2にTMAメタノール溶液9mlを加えてよく撹拌し、23℃でUV測定を行った。1cmセルを使用し、ブランクはサンプル1に対してはTMAメタノール溶液:水飽和1−オクタノール溶液=9:1(体積比)、サンプル2に対してはTMAメタノール溶液:1−オクタノール飽和水溶液=9:1(体積比)を使用して、波長200〜500nmの吸光度を測定した。測定した吸光度を使用して次式から分配係数logPを計算した。
上記式中、Conc(オクタノール)はTMAメタノール溶液および水飽和1−オクタノール溶液の混合溶液(以下「オクタノール溶液」と略称する)中の金属錯体の濃度であり、Conc(水)はTMAメタノール溶液および1−オクタノール飽和水溶液の混合溶液(以下「水溶液」と略称する)中の金属錯体の濃度である。また、ABS(オクタノール)およびABS(水)は、それぞれ、金属錯体のオクタノール溶液および水溶液の波長264nmおよび252nmにおける吸光度の平均値である。
上記のようにして測定したPt(5−MP)(AtC3)ClのlogPは−0.53であり、Pt(5−MP)(AtC4)ClのlogPは0.68であった。Pt(5−MP)(AtC3)ClのlogPはマイナスの値であり、親水性である。これに対して、Pt(5−MP)(AtC4)ClのlogPはプラスの値であり、Pt(5−MP)(AtC3)Clに比べて疎水性が大幅に増大している。
試験例3−2(ヒト癌細胞を用いたin vitro細胞増殖抑制評価)
前立腺癌DU−145細胞を用いて、細胞増殖抑制実験(MTTアッセイ)を行った。詳しくは、培養し、細胞数を計測した前立腺癌DU−145細胞に3.0×10cell/100μLとなるようにRPIM−1450培地を加え、96穴ウェルに1穴100μLずつ細胞を播種し、37℃で一晩インキュベートした。培地を吸い、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄後に各濃度の金属錯体入り培地を加え(各濃度n=3)、24時間または48時間インキュベートした。培地を吸い、PBSで2回洗浄した後にMTT(0.5mg/mL)含有培地を100μL加え、3時間インキュベートした。培地を吸い、DMSOを100μL加え、570nmの吸光度を測定した。各金属錯体の50%細胞増殖抑制濃度(IC50)を表3に示す。
表3に示すように、Pt(phen)(At−1,4−dach)Cl、Pt(5−MP)(At−1,4−dach)Cl、Pt(5,6−DMP)(At−1,4−dach)ClおよびPt(5−MP)(AtC4)Clはシスプラチンよりも高い抗癌活性を示した。
試験例3−3(in vivo腎毒性評価)
絶食16時間後の雄性ICRマウス(6週齢)に、水(コントロール)、金属錯体(シスプラチン、Pt(5−MP)(At−1,4−dach)ClまたはPt(5−MP)(AtC4)Cl)16.5μmol/kg、cisPt−oxaliPt−IP6−oxaliPt・6Na 16.5μmol/kgを尾静脈より投与した。その56時間後、絶食を開始し、さらに16時間後、頚骨後ろに位置する静脈からアニマルランセットを用いて採血を行い、i−STAT1 AnalyzerとカートリッジCHEM8+を用いて血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンの値を測定した。結果を図24および図25に示す。
図24に示すように、BUNにおいては、Pt(5−MP)(At−1,4−dach)Clはコントロールとほぼ同じ値を示し、シスプラチンとの有意な差がはっきり認められ、腎毒性がないことが分かる。一方、Pt(5−MP)(AtC4)Clはコントロールよりも高く、シスプラチンよりも低い値を示し、腎毒性が軽減されていることが分かる。
本発明の金属錯体は、従来使用されてきたシスプラチンおよびオキサリプラチンに比べて抗癌剤としてより効果的である。具体的には、本発明の金属錯体は、シスプラチンおよびオキサリプラチンに比べ、優れた腫瘍増殖阻害効果、副作用低減効果、および/または疼痛緩和効果を示す。

Claims (26)

  1. myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−ヘキサキスホスフェート誘導体であって、式(1):

    (式中、mおよびnは、それぞれ独立に1または2であり、m+nは3である。)
    で表されるアニオンと、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはプロトンであるカウンターカチオンとを含む金属錯体。
  2. 式(1−1):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  3. 式(1−2):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  4. 式(1−3):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  5. 式(1−4):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  6. 式(1−5):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  7. 式(1−6):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  8. 式(1−7):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  9. 式(1−8):

    で表されるアニオンを含む請求項1に記載の金属錯体。
  10. 式(2):

    (式中、Rは、−CH−Arまたは−(CH−NH−CH−Arであり、
    は、水素原子、−(CH−NH−CH−Arまたは−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、但し、Rが−CH−Arであるとき、Rは水素原子ではなく、
    ArおよびArは、それぞれ独立に、式(2a):

    で表される基であり、*は結合位置を示し、
    〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、
    kは、2または3であり、
    p、q、rおよびsは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
    で表されるカチオンと、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオンまたは過塩素酸イオンであるカウンターアニオンとを含む金属錯体。
  11. が−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜R17が水素原子であり、kが3である、請求項10に記載の金属錯体。
  12. が−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、請求項10に記載の金属錯体。
  13. が−(CH−NH−CH−Arであり、Rが水素原子であり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、請求項10に記載の金属錯体。
  14. が−(CH−NH−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが2である、請求項10に記載の金属錯体。
  15. が−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、請求項10に記載の金属錯体。
  16. が−CH−Arであり、Rが−(CH−NH−(CH−NH−CH−Arであり、R〜RおよびR〜R17が水素原子であり、RがC1−6アルキル基であり、kが3である、請求項10に記載の金属錯体。
  17. 式(3):

    (式中、R〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基であり、
    18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子またはC1−3アルキル基である。)
    で表されるカチオンと、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオンまたは過塩素酸イオンであるカウンターアニオンとを含む金属錯体。
  18. 〜R19が水素原子である、請求項17に記載の金属錯体。
  19. 〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である、請求項17に記載の金属錯体。
  20. 〜RおよびR〜R19が水素原子であり、Rがメチル基である、請求項17に記載の金属錯体。
  21. 〜RおよびR〜R19が水素原子であり、RおよびRがメチル基である、請求項17に記載の金属錯体。
  22. 請求項2に記載の金属錯体および請求項3に記載の金属錯体を含む混合物。
  23. 請求項4に記載の金属錯体および請求項5に記載の金属錯体を含む混合物。
  24. 請求項6に記載の金属錯体および請求項7に記載の金属錯体を含む混合物。
  25. 請求項8に記載の金属錯体および請求項9に記載の金属錯体を含む混合物。
  26. 請求項1〜21のいずれか一項に記載の金属錯体または請求項22〜25のいずれか一項に記載の混合物を含有する抗癌剤。
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