以下、図面を参照しつつ、本発明に係る種々の実施の形態について説明する。なお、図面において同一符号を付された構成要素は、同一機能及び同一構成を有するものとする。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1のレーザレーダ装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。このレーザレーダ装置1は、トリガ制御信号Tcの供給に応じて一定周期で基準トリガ信号Tgを出力する基準トリガ発生部20と、基準トリガ信号Tgと同期して動作するスキャナ駆動部32と、このスキャナ駆動部32により駆動されるスキャナ31と、基準トリガ信号Tgの供給に応じてパルス状のレーザ光すなわちレーザパルスを連続的に出射するレーザ光源21と、当該レーザパルスをファンビーム状のレーザパルスに変換する送信光学系22と、この送信光学系22の出射光を導光してスキャナ31に入射させる反射ミラー23,24と、スキャナ31で反射された送信用レーザパルスを外部空間へ透過させる窓部10とを備えている。ここで、スキャナ31とスキャナ駆動部32とで光走査部30が構成される。なお、ファンビームは、扇状の拡がりを持つビームをいう。
窓部10は、レーザパルスを透過させるとともに、レーザレーダ装置1の内部に塵及び水分などの異物が侵入することを防止する機能を有する。図2(A)は、Y軸負方向側から視たときの窓部10の構成例を概略的に示す図である。図2(A)に示されるように、窓部10は、レーザパルスLPに対して互いに異なる反射率を有するリファレンス領域11A,11B,11Cと、スキャナ31から入射するレーザパルスLPを外部空間へ透過させる光透過領域16とを有する。光透過領域16は、レーザパルスLPを透過させる板状の材料で構成されればよい。
リファレンス領域11A,11B,11Cは、レーザパルスLPの走査方向Xにおける窓部10の右方の出射端近傍に配置され、且つ、走査方向Xに沿って配列されている。各リファレンス領域は、ファンビーム状のレーザパルスLPに対して一つの反射率特性を有するように構成されており、レーザパルスLPの1ショット毎に一つの反射率特性を示す。
なお、図2(A)に示される窓部10に代えて、図2(B)に示される窓部10Mを使用してもよい。図2(B)に示される窓部10Mは、レーザパルスLPを透過させる光透過領域17と、走査方向Xにおける窓部10の右方の出射端近傍に配置されたリファレンス領域11A,11B,11Cと、走査方向Xにおける窓部10の左方の出射端近傍に配置されたリファレンス領域12A,12B,12Cとを有する。これらリファレンス領域11A〜11C,12A〜12Cは、レーザパルスLPに対して互いに異なる反射率を有するように構成可能である。
また、図1に示されるように、レーザレーダ装置1は、受信光学系41と、この受信光学系41からの出射光を受光する受光部42とを備える。レーザパルスLPは、外部空間内のターゲットまたはリファレンス領域11A〜11Cに照射された後、当該ターゲットまたはリファレンス領域11A〜11Cで反射されてスキャナ31に入射する。スキャナ31は、入射する受信レーザ光を受信光学系41の方向へ反射させる。受信光学系41は、スキャナ31から入射する受信レーザ光を受光部42の受光面に集光させる。受光部42は、入射する受信レーザ光を受光して受信信号Rsを出力することができる。
更に、レーザレーダ装置1は、基準トリガ信号Tgと同期した時間計測を実行して計測値データVRを出力する時間測定部43と、受信信号Rsに基づいて、レーザパルスLPの照射を受けた物体の反射強度を示す強度値データVIを出力する強度測定部44と、計測値データVRの強度値データVIへの依存関係を示す特性データCiを算出する強度依存特性算出部45と、特性データCiを格納するメモリである特性データ記憶部46と、計測値データVR及び強度値データVIに基づいて外部空間内のターゲットまでの距離を測定する測距部47と、信号処理ユニット50とを備えている。
信号処理ユニット50は、トリガ制御信号Tc及びゲート信号Gtを生成する測定制御部51と、強度値データVIに基づいて、レーザパルスLPが照射された物体の反射強度を示す強度画像を生成する強度画像生成部52と、測距部47から供給された測距値データLdに基づいてターゲットの3次元情報を示す距離画像を生成する距離画像生成部53と、走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給して当該スキャナ駆動部32の動作を制御する走査制御部54とを有している。
上記した強度依存特性算出部45、測距部47及び信号処理ユニット50は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの半導体集積回路で構成されてもよいし、あるいは、CPU(Central Processing Unit)を含むマイクロコンピュータの一種であるワンチップマイコンで構成されてもよい。特性データ記憶部46は、不揮発性メモリで構成することができる。
以下、本実施の形態のレーザレーダ装置1の構成について詳細に説明する。図1に示される送信光学系22から出射されるファンビーム状のレーザパルスは、図面に垂直なZ軸方向に拡がり、且つZ軸方向に対して垂直なY軸方向に狭い幅を有するものである。この送信光学系22は、たとえば、シリンドリカルレンズまたはシリンドリカルミラーと、コリメータレンズとを用いて構成することができる。送信光学系22は、受光部42の受光視野に合わせて、入射レーザパルスをファンビーム状のレーザパルスに変換するように設計されている。
スキャナ31は、反射ミラー24から入射するレーザパルスを窓部10の方向へ反射させる単一または複数の反射面を有している。スキャナ駆動部32は、走査制御信号Scに従ってスキャナ31の反射面の傾きを変化させることにより、当該反射面で反射されたレーザパルスで窓部10をX軸方向(Y軸方向及びZ軸方向の双方に垂直な方向)に走査する。スキャナ31は、走査時に、送信光学系22から反射ミラー23,24を介して入射するレーザパルスと、窓部10から入射する受信レーザ光とが共に受光可能となるように設計されている。スキャナ31としては、たとえば、ガルバノミラーまたはMEMS(Micro−Electro−Mechanical System)ミラーデバイスを使用することが可能である。
受信光学系41は、受信視野中心に対して外部空間から伝搬した受信レーザ光(散乱光を含む。)を受光部42に集光させる。なお、図1では、説明の便宜上、反射ミラー23,24の近傍に受信光学系41が配置されているが、これに限定されるものではない。受信レーザ光が反射ミラー23,24などの送信用の光学部品と干渉しないように受信光学系41を配置すればよい。
図3は、受光部42、時間測定部43及び強度測定部44のそれぞれの構成を概略的に示す図である。図3に示されるように、受光部42は、線状に分布する受信レーザ光を受光するためにZ軸方向に配列されたN個の受光素子422,…,422からなる受光素子アレイ421と、これら受光素子422,…,422のN個の出力を増幅する増幅器423とを有する。増幅器423は、受光素子422,…,422のN個の出力にそれぞれ増幅処理を施すN個のトランスインピーダンスアンプ424,…,424で構成されている。各受光素子422は、PD(Photo Diode)またはAPD(Avalanche Photo Diode)などの光電変換素子からなり、受信レーザ光を電流信号に変換することができる。トランスインピーダンスアンプ424は、その電流信号をインピーダンス変換し且つ増幅して電圧信号を生成する。結果として、受光部42は、N個の受光素子422,…,422にそれぞれ対応するN系統の電圧信号Rs(1),…,Rs(N)を受信信号Rsとして並列に出力する。この受信信号Rsは、時間測定部43及び強度測定部44にそれぞれ供給される。
時間測定部43は、基準トリガ信号Tgの入力に応じてリセット信号Rstを生成する制御回路431と、電圧信号Rs(1),…,Rs(N)をそれぞれ入力とする時間測定回路4321,…,432Nとで構成されている。時間測定回路4321〜432Nの各々は、たとえば、アナログROIC(Read Out Integrated Circuit)またはTDC(Time to Digital Converter)で構成可能である。アナログROICが採用される場合は、時間測定部43に基準トリガ信号Tgが入力された時刻を時間原点として用いることができる。また、経過時間に比例して一定の率で増加するランプ電圧を時間標準信号として用いることができる。一方、TDCが採用される場合は、内蔵カウンタのディジタル出力値を時間標準信号として用いることができる。
図4は、アナログROICを有する時間測定回路432n(nは1〜Nのうちのいずれかの整数)の構成例を示す概略図であり、図5は、時間測定回路432nを構成するピーク検出器433の回路構成例を示す概略図である。
図4に示されるように時間測定回路432nは、電圧信号Rs(n)の信号波形の強度ピークを検出するピーク検出器433と、当該強度ピークの検出に応じてランプ電圧をサンプリングする時間検出器437とで構成される。図5に示されるように、ピーク検出器433は、差動増幅器434、トリガ生成回路435、定電流源436、コンデンサC1及びスイッチSW1,SW2を有する。電圧信号Rs(n)は、差動増幅器434の非反転入力端子(+)に入力される。差動増幅器434の反転入力端子(−)には、コンデンサC1の一端により電圧が入力される。コンデンサC1の他端は電気的に接地されている。また、コンデンサC1の一端には、スイッチSW2が並列に接続されている。スイッチSW2には、後述する信号処理ユニット50の測定制御部51からゲート信号Gtが供給される。このスイッチSW2は、ゲート信号Gtの電圧レベルが高レベルのときにオフとなる。一方、ゲート信号Gtの電圧レベルが低レベルのときには、スイッチSW2はオンとなってコンデンサC1の電極間電圧をゼロにする。
電圧信号Rs(n)の強度すなわち電圧レベルが、差動増幅器434の反転入力端子の電圧レベル以下となる場合、差動増幅器434は、低レベル信号をトリガ生成回路435に出力する。受光部42が受信レーザ光を受光すると、電圧信号Rs(n)の強度は上昇する。この電圧信号Rs(n)の強度が、差動増幅器434の反転入力端子の電圧レベルよりも高い場合、差動増幅器434は、高レベル信号をトリガ生成回路435に出力する。トリガ生成回路435は、差動増幅器434から高レベル信号が入力される間のみ、スイッチSW1をオンにする高レベル電圧を出力する。スイッチSW1がオンにされると、定電流源436は、当該スイッチSW1を介してコンデンサC1へ電流を供給し、これにより差動増幅器434の反転入力端子の電圧が上昇する。電圧信号Rs(n)の強度がピークを越えると、差動増幅器434の出力レベルは、高レベルから低レベルへ切り替えられる。これに応じて、トリガ生成回路435の出力レベルも、高レベルから低レベルに切り替えられる。この結果、トリガ生成回路435は、信号レベルが高レベルから低レベルに遷移するトリガ信号Pdを、時間検出器437のサンプルホールド回路439へ出力する。
図4を参照すると、時間検出器437は、定電流源438、コンデンサC2、サンプルホールド回路439及びスイッチSW3,SW4を有している。コンデンサC2の一端は、スイッチSW4とサンプルホールド回路439の入力端とにそれぞれ接続され、コンデンサC2の他端は、電気的に接地されている。また、コンデンサC2の一端には、スイッチSW3が並列に接続されている。図3に示した制御回路431は、基準トリガ信号Tgが入力されると、リセットパルスRstをスイッチSW3に供給する。スイッチSW3は、このリセットパルスRstが供給されたときにオンとなり、コンデンサC2の電極間電圧をゼロにして当該コンデンサC2をリセットする。
スイッチSW4は、供給されるゲート信号Gtの電圧レベルが低レベルのときにオフとなり、ゲート信号Gtの電圧レベルが高レベルのときはオンとなる。定電流源438は、スイッチSW3がオフで且つスイッチSW4がオンのときに、当該スイッチSW4を介してコンデンサC2に電流を供給する。このとき、サンプルホールド回路439の入力端電圧は、経過時間とともに一定の率で上昇するランプ電圧となる。サンプルホールド回路439は、トリガ信号Pdの電圧レベルの立ち下がりに応じて当該ランプ電圧をサンプリングし、当該サンプリングされたホールド電圧Vr(n)を計測値として出力する。この計測値Vr(n)は、距離電圧とも呼ばれる。
図6は、ランプ電圧の一例を示す概略図である。時刻tGは、ゲート信号Gtの電圧レベルが低レベルから高レベルへ立ち上がる測定開始時刻である。時刻tは、トリガ信号Pdの電圧レベルの立ち下がりに応じてサンプルホールド回路439がランプ電圧をサンプリングした時刻である。図6に示されるランプ電圧の増加率すなわち比例係数をC1とすると、次式(1)が成立する。
Vr(n)=C1×(t−tG) (1)
この式(1)に基づいて、測定開始時刻tGから、電圧信号Rs(n)の強度ピークが検出される時刻tまでの遅延時間T(=Vr(n)/C1)を算出することが可能である。比例定数C1及び測定開始時刻tGを調整することで測定可能な時間間隔を最適化することができる。
一方、強度測定部44は、図3に示されるように、電圧信号Rs(1),Rs(2),…,Rs(N)をそれぞれ入力とする強度測定回路4411,4412,…,441Nを有している。各強度測定回路441n(nは1〜Nのうちのいずれか)は、電圧信号Rs(n)の信号波形の強度ピークを検出し、当該検出された強度ピークを示す強度電圧Vi(n)を受信強度として出力する。これら強度測定回路4411〜441Nは、時間測定回路4321〜432Nと同様に、アナログROICで構成することができる。
ところで、時間測定部43の応答時間特性が受信信号Rsの強度に依存する場合がある。図7に示されるように、反射率の高いターゲットから伝搬した受信レーザ光の受光強度分布W1のピーク値は高く、反射率の低いターゲットから伝搬した受信レーザ光の受光強度分布W2のピーク値は低くなる。このように互いに異なる反射率を有する複数のターゲットまでの実際の距離が同一であっても、時間測定部43の応答時間特性が受信信号Rsの強度に依存すると、ターゲット間で計測値(ホールド電圧値)が異なるという課題がある。図5に示したピーク検出器433の場合、差動増幅器434の出力波形の立ち下がり時間が電圧信号Rs(n)の強度に依存して変化することがある。この変化に応じて、トリガ信号Pdの電圧レベルの立ち下がり時間も変化する。これにより、サンプルホールド回路439におけるサンプリングのタイミングが変化し、測定精度を劣化させる。
この課題を解決するために、本実施の形態のレーザレーダ装置1には、計測値データVRの強度値データVIへの依存関係を示す特性データCiを取得する動作モード(以下「特性測定モード」という。)が用意されている。測定制御部51は、この特性測定モードと、特性データCiを用いて強度画像及び距離画像を取得する動作モード(以下「第1撮像モード」という。)とのうちの一方から他方へ切り替えることができる。
レーザレーダ装置1が特性測定モードで動作するとき、測定制御部51は、ゲート信号Gtの波形が低レベルから高レベルへ立ち上がる時刻を、基準トリガ信号Tgの発生時刻t0よりも早くする。これにより、時間測定部43の測定開始時刻tGは、レーザ光源21からのレーザパルスの出射前の時刻に設定される。また、レーザ光源21は、基準トリガ信号Tgの供給を受けて、窓部10のリファレンス領域11A〜11C(図2(A))を照射するための参照用レーザパルスを出射する。光走査部30は、送信光学系22及び反射ミラー23,24を経て入射する参照用レーザパルスをリファレンス領域11A〜11Cの方向へ反射させてリファレンス領域11A,11B,11Cを走査する。これらリファレンス領域11A,11B,11Cで反射した参照用レーザパルスは、スキャナ31及び受信光学系41を経て受光部42で受光される。
図8(A),(B)は、特性測定モード時におけるゲート信号Gtの波形と、レーザパルス信号の受信波形との間の関係を示すタイミングチャートである。図8(A),(B)に示されるように、レーザパルス信号の受信波形は、測定開始時刻tGから遅延時間Tだけ遅れて現れる。遅延時間Tは、時刻tGから時刻t0までの期間である。
測定制御部51は、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻tGを段階的に変化させることにより、遅延時間Tを切り替えることができる。図9(A)〜(E)は、ゲート信号Gt1〜Gt5と、リファレンス領域11A〜11Cで反射したレーザパルスLPの受信波形との間の関係を示すタイミングチャートである。図9(A)〜(E)には、遅延時間T1,T2,T3,T4,T5にそれぞれ対応するゲート信号Gt1,Gt2,Gt3,Gt4,Gt5のパルス波形が示されている。このとき、強度依存特性算出部45は、計測値データVR、強度値データVI及び遅延時間T1〜T5に基づき、回帰分析を実行して特性データCiを算出することができる。
以下、遅延時間T1,T2,T3,T4,T5が与えられたときの特性データCiの算出方法の例を説明する。
強度測定部44は、リファレンス領域11Aで反射した参照用レーザパルスから得られる受信強度Vi1を出力するものとする。この受信強度Vi1は、遅延時間Tに依存しない一定の値である。同様に、強度測定部44は、リファレンス領域11Bで反射した参照用レーザパルスから得られる受信強度Vi2を出力し、リファレンス領域11Cで反射した参照用レーザパルスから得られる受信強度Vi3を出力するものとする。これら受信強度Vi2,Vi3もそれぞれ遅延時間Tに依存しない一定の値である。
一方、時間測定部43は、遅延時間Tに対して、リファレンス領域11Aで反射した参照用レーザパルスから得られる計測値Vr1[T]を出力し、リファレンス領域11Bで反射した参照用レーザパルスから得られる計測値Vr2[T]を出力し、リファレンス領域11Cで反射した参照用レーザパルスから得られる計測値Vr3[T]を出力するものとする。
強度依存特性算出部45は、リファレンス領域11Aについて、計測値Vr1[T1],Vr1[T2],Vr1[T3],Vr1[T4],Vr1[T5]に基づき、最小自乗法により、次式(2)に示す回帰直線を得ることができる。
Vr1=a1・T+b1 (2)
ここで、a1は、回帰直線の傾き(単位:ボルト/秒)であり、b1は、オフセット値(単位:ボルト)である。
同様に、強度依存特性算出部45は、リファレンス領域11Bについて、計測値Vr2[T1]〜Vr2[T5]に基づき、最小自乗法により、次式(3)に示す回帰直線を得るとともに、リファレンス領域11Cについて、計測値Vr3[T1]〜Vr3[T5]に基づき、最小自乗法により、次式(4)に示す回帰直線を得ることができる。
Vr2=a2・T+b2 (3)
Vr3=a3・T+b3 (4)
ここで、a2,a3は、回帰直線の傾き(単位:ボルト/秒)であり、b2,b3は、オフセット値(単位:ボルト)である。
図10は、回帰直線の例を示すグラフである。図10において、グラフの横軸は遅延時間Tを示し、グラフの縦軸は計測値を示し、実線は回帰直線の例を表している。図10に示されるように、受信強度Vi1の場合に得られる上式(2)の回帰直線と、受信強度Vi2の場合に得られる上式(3)の回帰直線と、受信強度Vi3の場合に得られる上式(4)の回帰直線とは、互いに異なることが分かる。すなわち、回帰直線は受信強度に依存して変わりうる。よって、計測値Vrが次式(5)を満たすと考えることができる。
Vr=a(Vi)・T+b(Vi) (5)
ここで、傾きa(Vi)及びオフセット値b(Vi)は、それぞれ、受信強度Viに関する連続関数である。この式(5)は、Vi=Vi1のときは上式(2)と一致し、Vi=Vi2のときは上式(3)と一致する。更に、式(5)は、Vi=Vi3のときは上式(4)と一致する。
先ず、Vr1≧Vr>Vr2の範囲内で、受信強度Viに対してオフセット値b(Vi)のみが変化する場合を考える。この場合、a(Vi)=a1=a2、となる。このとき、上式(2),(5)の組、及び、上式(2),(3)の組からそれぞれ次式(1a),(2a)を導出することができる。
Vr−Vr1=b(Vi)−b1 (1a)
Vr2−Vr1=b2−b1 (2a)
ここで、b(Vi=Vi1)=b1,b(Vi=Vi2)=b2,である。オフセット値b(Vi)を1次式で線形近似すると、式(1a),(2a)から次式(6)を導出することができる。
b(Vi)=(b2−b1)(Vi−Vi1)/(Vi2−Vi1)+b1 (6)
次に、Vr1≧Vr>Vr2の範囲内で、強度電圧Viに対して傾きaのみが変化する場合を考える。この場合は、b(Vi)=b1=b2、となる。このとき、上式(2),(5)の組、及び、上式(2),(3)の組からそれぞれ次式(1b),(2b)を導出することができる。
Vr−Vr1=(a(Vi)−a1)T (1b)
Vr2−Vr1=(a2−a1)T (2b)
ここで、a(Vi=Vi1)=a1,a(Vi=Vi2)=a2,である。傾きa(Vi)を1次式で線形近似すると、式(1b),(2b)に基づいて次式(7)を導出することができる。
a(Vi)=(a2−a1)(Vi−Vi1)/(Vi2−Vi1)+a1 (7)
同様に、Vr2≧Vr≧Vr3の範囲内では、次式(8),(9)を導出することが可能である。
b(Vi)=(b3−b2)(Vi−Vi2)/(Vi3−Vi2)+b2 (8)
a(Vi)=(a3−a2)(Vi−Vi2)/(Vi3−Vi2)+a2 (9)
よって、Vr1≧Vr>Vr2の範囲内では、上式(6),(7)を用いてa(Vi),b(Vi)を算出することができ、Vr2≧Vr≧Vr3の範囲内では、上式(8),(9)を用いてa(Vi),b(Vi)を算出することができる。上式(5)を変形すれば、次式(10)が得られる。
T=(Vr−b(Vi))/a(Vi) (10)
したがって、受信強度Vi及び計測値Vrが与えられたとき、式(10)により遅延時間Tを算出することができる。
強度依存特性算出部45は、上式(6),(7),(8),(9),(10)を特定するデータを特性データCiとして特性データ記憶部46に格納する。
なお、本実施の形態では、強度依存特性算出部45は、リファレンス領域11A,11B,11Cの各々について5点の実測値を用いて回帰直線を算出しているが、6点以上の実測値を用いて回帰直線を算出してもよい。また、回帰直線に限定されず、回帰曲線が算出されてもよい。また、強度依存特性算出部45は、2変量T,Vrに基づく回帰分析を実行しているが、これに限定されるものではない。強度依存特性算出部45は、3変量T,Vr,Viに基づく重回帰分析を実行して回帰平面もしくは回帰曲面を算出し、当該回帰平面または回帰曲面を特定する特性データCiを特性データ記憶部46に格納してもよい。
次に、レーザレーダ装置1が第1撮像モードで動作するときは、測定制御部51は、ゲート信号Gtの波形が立ち上がる測定開始時刻tGを、基準トリガ信号Tgの発生時刻t0以後とする。レーザ光源21は、基準トリガ信号Tgの供給を受けて、窓部10の光透過領域16(図2(A))を走査するための送信用レーザパルスを出射する。光走査部30は、送信光学系22及び反射ミラー23,24を経て入射する送信用レーザパルスを光透過領域16の方向へ反射させて光透過領域16を走査する。外部空間内のターゲットで反射した送信用レーザパルスは、光透過領域16、スキャナ31及び受信光学系41を経て受光部42で受光される。
このとき、測距部47には、計測値データVR及び強度値データVIが供給される。測距部47は、特性データ記憶部46から特性データCiを取得し、当該特性データCiを用いて上式(10)により遅延時間Tを算出することができる。更に、測距部47は、ターゲットまでの距離Lを次式(11)により算出することができる。
L=c・T/2 (11)
ここで、cは、光速度である。
次に、図11及び図12を参照しつつ、上記レーザレーダ装置1の動作について説明する。
図11は、特性測定モード時における特性測定処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この特性測定処理は、強度依存特性算出部45及び信号処理ユニット50により実行される。図12は、第1撮像モード時における撮像処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この撮像処理は、測距部47及び信号処理ユニット50により実行される。
まず、図11を参照しつつ、特性測定処理について説明する。測定制御部51は、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ特性測定用の初期値に初期設定する(ステップST10)。ここで、測定開始時刻tGの初期値は、図9(A)に示した遅延時間T1を与える値に設定される。次に、走査制御部54は、窓部10のリファレンス領域11A,11B,11Cが参照用レーザパルスで照射されるようにスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST11)。ここでは、スキャナ31の振れ角(機械角ともいう。)の範囲が走査範囲として設定されればよい。走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51は、レーザ光源21に参照用レーザパルスを出射させる(ステップST12)。具体的には、測定制御部51は、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて参照用レーザパルスを出射する。その後、強度依存特性算出部45には、時間測定部43及び強度測定部44からそれぞれ計測値データVR及び強度値データVIが測定値として入力される。強度依存特性算出部45は、時間測定部43及び強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST13)。
次に、測定制御部51は、図9(A)〜(E)に示される遅延時間T1〜T5の全てについて測定値の取得が完了したか否かを判定する(ステップST14)。測定値の取得が完了していない場合(ステップST14のNO)、測定制御部51は、測定開始時刻tGを変更して遅延時間を切り替える(ステップST15)。その後は、ステップST12,ST13が実行される。
一方、測定値の取得が完了していると判定された場合(ステップST14のYES)、強度依存特性算出部45は、当該測定値に基づいて特性データCiを算出し(ステップST16)、当該特性データCiを、メモリである特性データ記憶部46に格納する(ステップST17)。以上で特性測定処理は終了する。
次に、図12を参照しつつ、撮像処理について説明する。まず、測定制御部51は、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ測距用の最適値に初期設定する(ステップST20)。たとえば、200m離れたターゲットまでの距離を測定しようとする場合、ゲート信号Gtのパルスの時間間隔すなわち測定時間間隔は、約1.3マイクロ秒以上の値に設定される。次に、走査制御部54は、窓部10の光透過領域16が送信用レーザパルスで照射されるようにスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST21)。ここでは、スキャナ31の振れ角の範囲が走査範囲として設定されればよい。走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51は、レーザ光源21に送信用レーザパルスを出射させる(ステップST22)。具体的には、測定制御部51は、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて送信用レーザパルスを出射する。その後、測距部47には、時間測定部43及び強度測定部44から計測値データVR及び強度値データVIが測定値として入力される。並行して、信号処理ユニット50には、強度測定部44から強度値データVIが測定値として入力される。測距部47及び信号処理ユニット50は、時間測定部43及び強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST23)。
次に、測距部47は、特性データCiを利用するか否かを判定する(ステップST24)。たとえば、特性データCiが未だに特性データ記憶部46に記憶されていないとき、測距部47は、特性データCiを利用しないと判定する(ステップST24のNO)。この場合、測距部47は、通常の方法で距離値を算出する(ステップST25)。ここで、測距部47は、計測値データVRに基づき、上記の式(1)により遅延時間Tを算出し、上式(11)により距離値Lを算出することができる。
一方、特性データCiを利用すると判定したとき(ステップST24のYES)、測距部47は、特性データ記憶部46から特性データCiを取得する(ステップST27)。次いで、測距部47は、強度値データVI及び計測値データVRに基づき、当該特性データCiを用いて上式(10)により遅延時間Tを算出し、上式(11)により距離値Lを算出する(ステップST28)。当該距離値Lを示す測距値データLdは、信号処理ユニット50に与えられる。
その後、距離画像生成部53は、測距値データLdに基づいて外部空間内のターゲットの3次元情報を示す距離画像を生成する(ステップST30)。また、強度画像生成部52は、強度値データVIに基づいて外部空間内のターゲットの反射強度を示す強度画像を生成する(ステップST31)。以上で撮像処理は終了する。
上記した特性測定モードと第1撮像モードとは、互いに独立して実行されてよいし、あるいは、交互に実行されてもよい。
図13は、走査制御信号Scの制御電圧の波形の例を示す図である。この制御電圧は、窓部10におけるリファレンス領域11A〜11Cと光透過領域16とを交互にレーザパルスLPで走査させるものである。駆動電圧が一定の率で増加する走査期間ST1,ST3では、レーザパルスLPは、窓部10の左方一端から右方他端まで窓部10を走査する。一方、駆動電圧が一定の率で下降する走査期間ST2,ST4では、レーザパルスLPは、窓部10の右方他端から左方一端まで当該窓部10を走査する。走査期間ST1,ST2間の境界付近のリファレンス期間MT1と、走査期間ST3,ST4間の境界付近のリファレンス期間MT2とは、それぞれ、リファレンス領域11A〜11Cが走査される期間である。レーザレーダ装置1は、リファレンス期間MT1,MT2では特性測定モードで動作し、リファレンス期間MT1,MT2以外の期間では第1撮像モードで動作してもよい。このとき、リファレンス期間ごとに異なる遅延時間Tを設定することができる。
以上に説明したように実施の形態1によれば、特性測定モードでは、測定制御部51は、時間測定部43の測定開始時刻tGをレーザパルスの出射前の時刻に設定し、リファレンス領域11A〜11Cで反射したレーザパルスに対して遅延時間Tを形成する。強度依存特性算出部45は、当該遅延時間Tに応じて生成された計測値データVRと強度値データVIとを取得し、当該計測値データVRの強度値データVIへの依存関係を示す特性データCiを算出する。第1撮像モードでは、測距部47は、計測値データVR及び強度値データVIに基づき、特性データCiを用いてターゲットまでの距離を測定することができる。よって、時間測定部43の応答時間特性がレーザパルスの受光強度に依存していたとしても、正確な測距値データLdを算出することができる。また、レーザ光に対するターゲットの反射率の違いに依らずに、当該ターゲットまでの正確な距離をリアルタイムに測定することができる。したがって、測距精度の向上が可能となる。
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図14は、本発明に係る実施の形態2のレーザレーダ装置2の概略構成を示すブロック図である。
図14に示されるように、レーザレーダ装置2は、上記実施の形態1のレーザレーダ装置1と同様に、基準トリガ発生部20、レーザ光源21、送信光学系22、反射ミラー23,24、光走査部30、受信光学系41、受光部42、時間測定部43、強度測定部44、強度依存特性算出部45、特性データ記憶部46及び測距部47を備えている。また、レーザレーダ装置2の信号処理ユニット50Aは、上記実施の形態1の信号処理ユニット50と同様に、強度画像生成部52、距離画像生成部53及び走査制御部54を有する。これら構成要素20〜24,30,41〜47,52〜54の構成及び機能は、上述した通りである。
レーザレーダ装置2は、上述した特性測定モード及び第1撮像モードで動作することができる(図11及び図12)。信号処理ユニット50Aに含まれる測定制御部51Aは、上記実施の形態1の測定制御部51と同様に、特性測定モードと第1撮像モードとを制御することが可能である。更に、本実施の形態のレーザレーダ装置2は、補正パラメータ算出モードと撮像補正モードという2種類の動作モードで動作することができる。測定制御部51Aは、補正パラメータ算出モードと撮像補正モードとを制御することが可能である。補正パラメータ算出モード及び撮像補正モードの詳細については後述する。
また、図14に示されるように、レーザレーダ装置2は、窓部10Aを備えている。窓部10Aは、レーザパルスを透過させるとともに、レーザレーダ装置2の内部に塵及び水分などの異物が侵入することを防止する機能を有する。図15は、Y軸負方向側から視たときの窓部10Aの構成例を概略的に示す図である。図15に示されるように、窓部10Aは、レーザパルスLPに対して互いに異なる反射率を有するリファレンス領域13A,13B,13C,13D,13E,13Fと、スキャナ31から入射するレーザパルスLPを外部空間へ透過させる光透過領域18とを有する。光透過領域18は、レーザパルスLPを透過させる板状の材料で構成されればよい。リファレンス領域13A〜13Fは、レーザパルスLPの走査方向Xと直交する方向Zにおける窓部10Aの一方の出射端近傍に配置され、且つ、走査方向Xに沿って配列されている。
レーザレーダ装置2が特性測定モードで動作するとき、測定制御部51Aは、上記測定制御部51と同様に、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻tGを段階的に変化させることにより、遅延時間Tを切り替えることができる(図9(A)〜(E))。また、レーザ光源21は、基準トリガ信号Tgの供給を受けて、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13F(図15)を照射するための参照用レーザパルスを出射する。光走査部30は、送信光学系22及び反射ミラー23,24を経て入射する参照用レーザパルスをリファレンス領域13A〜13Fの方向へ反射させてリファレンス領域13A〜13Fを走査する。これらリファレンス領域13A〜13Fで反射した参照用レーザパルスは、スキャナ31及び受信光学系41を経て受光部42で受光される。強度依存特性算出部45は、実施の形態1の場合と同様に、計測値データVR、強度値データVI及び遅延時間に基づき、回帰分析を実行して特性データCiを算出することができる。この特性データCiは、特性データ記憶部46に格納される。レーザレーダ装置2が第1撮像モードで動作するときは、測距部47は、特性データ記憶部46から特性データCiを取得し、当該特性データCiを用いてターゲットまでの距離を算出することができる。
一方、図14に示されるように、信号処理ユニット50Aは、強度画像に現れるリファレンス領域13A,13B,13C,13D,13E,13Fの各々の画像歪みを検出する歪み検出部61と、当該検出された画像歪みを補正する歪み補正部62とを備えている。
次に、リファレンス領域13A〜13Fの強度画像に歪みが発生する理由について説明する。図16は、スキャナ駆動部32に供給される走査制御信号Scの制御電圧の波形を示す図である。この制御電圧は、窓部10AのX軸方向における一端と他端との間をレーザパルスLPで走査させるものである。図13の場合と同様に、制御電圧が一定の率で増加する走査期間ST1,ST3では、レーザパルスLPは、窓部10Aの左方一端から右方他端までリファレンス領域13F〜13A及び光透過領域18を走査する。一方、制御電圧が一定の率で下降する走査期間ST2,ST4では、レーザパルスLPは、窓部10Aの右方他端から左方一端までリファレンス領域13A〜13F及び光透過領域18を走査する。各走査期間において窓部10Aの全体が1回走査される。たとえば、走査期間ST1,ST2の境界付近ではリファレンス領域13Aを含む帯状領域がレーザパルスLPで照射され、走査期間ST2,ST3の境界付近ではリファレンス領域13Fを含む帯状領域がレーザパルスLPで照射される。
窓部10Aに対するレーザパルスLPの走査速度は、制御電圧の上昇または下降に応じて一定となることが理想である。しかしながら、実際には、隣り合う走査期間の境界付近で制御電圧が上昇から下降へ転じる際、あるいは、隣り合う走査期間の境界付近で制御電圧が下降から上昇へ転じる際に、スキャナ31の振れ角が最大角または最小角となる。この振れ角の最大角付近または最小角付近で、走査速度が遅くなり、スキャナ31の非線形動作が生ずる。このとき、図16に示される波形を持つ制御電圧が実際に供給された場合でも、図17(A)に示される波形Wa,Wb,Wcを持つ制御電圧が供給された場合と同様の結果となる。これにより、強度画像及び距離画像の走査方向両端部が局所的に歪むという課題がある。図17(B)は、窓部10Aの強度画像70の例を示す概略図である。この強度画像70は、リファレンス領域13A〜13Fを示すリファレンス領域画像71A〜71Fと、光透過領域18を示す光透過領域画像72とからなる。強度画像70の水平方向両端部付近のリファレンス領域画像71A,71Fは、水平方向に引き延ばされて歪んでいる。
窓部10Aでは、図15に示したように、互いに反射率の異なる複数のリファレンス領域13A〜13FがレーザパルスLPの走査方向Xに沿って配置されている。本実施の形態では、リファレンス領域ごとに反射率が異なる特性を活かして、強度画像及び距離画像の歪みを補正することができる。
前述の画像歪みを補正するための補正パラメータを算出する動作モードが「パラメータ算出モード」である。レーザレーダ装置2は、この補正パラメータを格納するデータ記憶部63を備えている。また、この補正パラメータを用いて強度画像及び距離画像を補正する動作モードが「撮像補正モード」である。測定制御部51Aは、この補正パラメータ算出モード、撮像補正モード及び他の動作モードのうちの或る動作モードから他の動作モードへ切り替えることができる。
図18(A)は、パラメータ算出モード時に得られた強度画像におけるリファレンス領域画像71A〜71Fの例を示す図である。また、図18(B)は、これらリファレンス領域画像71A〜71Fに対して設定されたリファレンス点73,…,73を示し、各リファレンス点の位置を示す画素数と強度電圧(受信強度)との間の関係を示すグラフである。リファレンス点73,…,73は、リファレンス領域画像71A〜71Fの全体に対して、水平方向に沿って等間隔で設定されている。このため、画像歪みを有する両端部のリファレンス領域画像71A,71Fは、他のリファレンス領域画像71B〜71Eと比べて多数のリファレンス点を含むことが分かる。
今、リファレンス領域画像71A〜71F全体の水平方向の総画素数をPHとし、リファレンス領域画像71A〜71Fの総個数をxRとする。図18(A)の例では、xR=6、である。また、両端部付近のリファレンス領域画像71A,71Fの合計個数をNsとし、リファレンス領域画像71A,71Fの各々の水平方向の画素数をPcとし、他のリファレンス領域画像71B〜71Eの合計個数をNtとし、当該他のリファレンス領域画像71B〜71Eの各々の水平方向の画素数をPdとする。図18(A)の例では、Ns=2,Nt=4、である。このとき、次式(12),(13)が成立する。
PH=Ns×Pc+Nt×Pd (12)
xR=Ns+Nt (13)
一方、図19(A)は、画像歪みが補正されたと仮定した場合の強度画像におけるリファレンス領域画像71A〜71Fの例を示す図であり、図19(B)は、補正後のリファレンス領域画像71A〜71Fに対して設定されたリファレンス点73,…,73を示し、各リファレンス点73の位置を示す画素数と強度電圧(受信強度)との間の関係を示すグラフである。
今、画像歪みが補正された後の両端部付近のリファレンス領域画像71A,71Fの各々の画素数をPc’とし、他のリファレンス領域画像71B〜71Eの水平方向の画素数をPd’とする。リファレンス領域画像71A〜71F全体の水平方向の総画素数PHは、補正の前後で変化しない。このとき、次式(14)が成立する。
PH=Ns×Pc’+Nt×Pd’ (14)
また、リファレンス領域画像71A〜71Fの総個数xRは、補正の前後で変化しない。補正後のリファレンス領域画像71A〜71Fの各々の水平方向の画素数をPRとすると、次式(15)が成立する。
PR=PH/xR (15)
水平方向の総画素数PHとリファレンス領域画像71A〜71Fの総個数xRが固定値であるので、式(15)により、補正後のリファレンス領域画像個々の水平方向の画素数PRを算出することができる。
リファレンス領域画像71A,71Fの水平方向の画素数Pc(Pc>Pc’)に対する補正量をαとし、リファレンス領域画像71B〜71Eの水平方向の画素数をPd(Pd<Pd’)に対する補正量をβとする。このとき、次式(16a),(16b)が成立する。
Pc’=Pc−α (16a)
Pd’=Pd+β (16b)
ここで、次式(17)の条件を満たす必要がある。
Ns×α=Nt×β (17)
歪み検出部61は、パラメータ算出モード時に強度画像を解析して補正パラメータα,βを算出し、これら補正パラメータα,βをデータ記憶部63に格納することができる。
一方、歪み補正部62は、撮像補正モード時に、データ記憶部63から補正パラメータα,βを取得し、これら補正パラメータα,βを用いて強度画像及び距離画像の画像歪みを補正する。たとえば、歪み補正部62は、図18(A)に示した画像両端部のリファレンス領域画像71A,71Fの各々を変形率Zα(=Pc’/Pc)で水平方向に縮小し、他のリファレンス領域画像71B〜71Eの各々を変形率Zβ(=Pd’/Pd)で水平方向に拡大することができる。
ところで、上記した信号処理ユニット50A及び測距部47は、FPGAまたはASICなどの半導体集積回路で構成されてもよいし、あるいは、CPUを含むマイクロコンピュータの一種であるワンチップマイコンで構成されてもよい。データ記憶部63は、不揮発性メモリで構成することができる。
次に、図20及び図21を参照しつつ、上記レーザレーダ装置2の動作について説明する。
図20は、パラメータ算出モード時におけるパラメータ算出処理の手順を概略的に示すフローチャートである。このパラメータ算出処理は、信号処理ユニット50Aによって実行される。図21は、撮像補正モード時における撮像補正処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この撮像補正処理は、測距部47及び信号処理ユニット50Aによって実行される。
まず、図20を参照しつつ、パラメータ算出処理について説明する。測定制御部51Aは、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ最適値に初期設定する(ステップST40)。次に、走査制御部54は、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13Fが参照用レーザパルスで照射されるようにスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST41)。ここでは、スキャナ31の振れ角の範囲が走査範囲として設定されればよい。走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51Aは、レーザ光源21に参照用レーザパルスを出射させる(ステップST42)。具体的には、測定制御部51Aは、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて参照用レーザパルスを出射する。その後、信号処理ユニット50Aには、強度測定部44から強度値データVIが測定値として入力される。信号処理ユニット50Aは、強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST43)。
その後、強度画像生成部52は、内部メモリから強度値データVIを読み出し、当該強度値データVIに基づいてリファレンス領域13A〜13Fの反射強度を示す強度画像を生成する(ステップST44)。
次に、歪み検出部61は、強度画像に現れるリファレンス領域13A〜13Fの各々の画像歪みの検出を試みる(ステップST45)。歪み検出部61は、リファレンス領域画像71A〜71Fの各々の水平方向画素数が同一(上式(15)の画素数PRと一致)となれば、画像歪みが存在しないと判定することができる(ステップST46のNO)。一方、図18(A),(B)に示したように、リファレンス領域画像71A〜71Fの各々の水平方向画素数が同じでなければ、画像歪みが存在すると判定することができる(ステップST46のYES)。
画像歪みが存在すると判定された場合は(ステップST46のYES)、歪み検出部61は、上記した補正パラメータα,βを算出し(ステップST47)、これら補正パラメータα,βをデータ記憶部63に格納する(ステップST48)。以上でパラメータ算出処理は終了する。
上記パラメータ算出処理は、たとえば、レーザレーダ装置2の初回動作時もしくはユーザ指定のタイミングで実行されればよい。
次に、図21を参照しつつ、撮像補正処理について説明する。まず、測定制御部51Aは、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ最適値に初期設定する(ステップST50)。次に、走査制御部54は、窓部10Aの光透過領域18が送信用レーザパルスで照射されるようにスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST51)。ここでは、スキャナ31の振れ角の範囲が走査範囲として設定されればよい。走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51Aは、レーザ光源21に送信用レーザパルスを出射させる(ステップST52)。具体的には、測定制御部51Aは、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて参照用レーザパルスを出射する。その後、測距部47には、時間測定部43から計測値データVRが測定値として入力される。並行して、信号処理ユニット50Aには、強度測定部44から強度値データVIが測定値として入力される。測距部47及び信号処理ユニット50Aは、時間測定部43及び強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST53)。
その後、測距部47は、計測値データVRに基づいて距離値を算出する(ステップST54)。当該距離値を示す測距値データLdは、信号処理ユニット50Aに与えられる。
次に、距離画像生成部53は、測距値データLdに基づいて外部空間内のターゲットの3次元情報を示す距離画像を生成する(ステップST55)。また、強度画像生成部52は、強度値データVIに基づいて外部空間内のターゲットの反射強度を示す強度画像を生成する(ステップST56)。
次に、歪み補正部62は、データ記憶部63から補正パラメータα,βを取得し(ステップST57)、これら補正パラメータα,βを用いて強度画像及び距離画像をそれぞれ局所的に拡大または縮小することにより、これら強度画像及び距離画像の歪みを補正する(ステップST58)。以上で撮像補正処理は終了する。
なお、上記したパラメータ算出モードと撮像補正モードとは、互いに独立して実行されてよいし、あるいは、同時並行に実行されてもよい。
以上に説明したように実施の形態2のレーザレーダ装置2は、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13Fを用いる特性測定モード及び第1撮像モードで動作することができる。したがって、レーザ光に対するターゲットの反射率の違いに依らずに、当該ターゲットまでの正確な距離をリアルタイムに測定することができる。また、リファレンス領域ごとの反射率が異なる特性を活かして、強度画像及び距離画像の歪みを適正に補正することができる。特に、強度画像に基づいて補正パラメータα,βが算出されるので、レーザレーダ装置2の温度変化があったとしても、適正な補正パラメータα,βを算出することができる。よって、正確な距離画像を得ることができ、これにより測距精度の向上が可能となる。
なお、上記実施の形態2では、上記窓部10Aの代わりに、図22に示す窓部10Bが使用されてもよい。図22は、Y軸負方向側から視たときの窓部10Bの構成例を概略的に示す図である。図22に示されるように、窓部10Bは、上記実施の形態1のリファレンス領域11A〜11Cと、上記リファレンス領域13A〜13Fと、スキャナ31から入射するレーザパルスLPを外部空間へ透過させる光透過領域19とを有するものである。光透過領域19は、レーザパルスLPを透過させる板状の材料で構成されればよい。この場合、リファレンス領域11A〜11Cを、上記した特性測定モード時に使用し、リファレンス領域13A〜13Fを、上記したパラメータ算出モード時に使用することができる。
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図23は、実施の形態3のレーザレーダ装置3の概略構成を示す機能ブロック図である。
図23に示されるように、このレーザレーダ装置3は、上記実施の形態1のレーザレーダ装置1と同様に、基準トリガ発生部20、レーザ光源21、送信光学系22、反射ミラー23,24、光走査部30、受信光学系41、受光部42、時間測定部43、強度測定部44、強度依存特性算出部45、特性データ記憶部46及び測距部47を備えている。また、レーザレーダ装置3の信号処理ユニット50Cは、上記実施の形態1の信号処理ユニット50と同様に、強度画像生成部52、距離画像生成部53及び走査制御部54を有する。これら構成要素20〜24,30,41〜47,52〜54の構成及び機能は、上述した通りである。
レーザレーダ装置3は、上述した実施の形態1に係る特性測定モード及び第1撮像モードで動作することができる(図11及び図12)。信号処理ユニット50Cに含まれる測定制御部51Cは、上記実施の形態1の測定制御部51と同様に、特性測定モードと第1撮像モードとを制御することが可能である。更に、本実施の形態のレーザレーダ装置3は、光走査部30の走査範囲を調整するための動作モード(以下「走査範囲調整モード」という。)で動作することができる。測定制御部51Cは、この走査範囲調整モードを制御することが可能である。走査範囲調整モードの詳細については後述する。
また、レーザレーダ装置3は、上記実施の形態2と同様に、図15に示した窓部10Aを備えている。レーザレーダ装置3が特性測定モードで動作するとき、測定制御部51Cは、上記測定制御部51と同様に、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻tGを段階的に変化させることにより、遅延時間Tを切り替えることができる(図9(A)〜(E))。また、レーザ光源21は、基準トリガ信号Tgの供給を受けて、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13F(図15)を照射するための参照用レーザパルスを出射する。光走査部30は、送信光学系22及び反射ミラー23,24を経て入射する参照用レーザパルスをリファレンス領域13A〜13Fの方向へ反射させてリファレンス領域13A〜13Fを走査する。これらリファレンス領域13A〜13Fで反射した参照用レーザパルスは、スキャナ31及び受信光学系41を経て受光部42で受光される。強度依存特性算出部45は、実施の形態1の場合と同様に、計測値データVR、強度値データVI及び遅延時間に基づき、回帰分析を実行して特性データCiを算出することができる。この特性データCiは、特性データ記憶部46に格納される。レーザレーダ装置3が第1撮像モードで動作するときは、測距部47は、特性データ記憶部46から特性データCiを取得し、当該特性データCiを用いてターゲットまでの距離を算出することができる。
一方、本実施の形態のレーザレーダ装置3は、窓部10Aのリファレンス領域ごとに反射率が異なる特性を活かして、光走査部30の走査範囲を最適化することにより、上述したスキャナ31の非線形動作に起因する画像歪みの発生を未然に防止することができる。このために、信号処理ユニット50Cは、走査範囲調整モードで動作する走査範囲調整部65を備えている。この走査範囲調整部65は、強度画像に現れる複数のリファレンス領域13A〜13Fの各々の画素数が予め定められた画素数と一致するように光走査部30の走査範囲を調整することができる。レーザレーダ装置3は、当該調整された走査範囲を示す調整データを格納する調整データ記憶部66を備えている。測定制御部51Cは、この走査範囲調整モード及び他の動作モードのうちの或る動作モードから他の動作モードへ切り替えることが可能である。
上記した測距部47及び信号処理ユニット50Cは、FPGAまたはASICなどの半導体集積回路で構成されてもよいし、あるいは、CPUを含むマイクロコンピュータの一種であるワンチップマイコンで構成されてもよい。調整データ記憶部66は、不揮発性メモリで構成することができる。
次に、図24及び図25を参照しつつ、上記レーザレーダ装置3の動作について説明する。
図24は、走査範囲調整モード時における走査範囲調整処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この走査範囲調整処理は信号処理ユニット50Cによって実行される。図25は、実施の形態3に係る撮像モード(以下「第2撮像モード」と呼ぶ。)時における撮像処理の手順を概略的に示すフローチャートである。この撮像処理は、測距部47及び信号処理ユニット50Cによって実行される。
まず、図24を参照しつつ、走査範囲調整処理について説明する。測定制御部51Cは、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ最適値に初期設定する(ステップST60)。次に、走査制御部54は、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13Fが参照用レーザパルスで照射されるようにスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST61)。ここでは、スキャナ31の振れ角の範囲が走査範囲として設定されればよい。走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51Cは、レーザ光源21に参照用レーザパルスを出射させる(ステップST62)。具体的には、測定制御部51Cは、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて参照用レーザパルスを出射する。その後、信号処理ユニット50Cには、強度測定部44から強度値データVIが測定値として入力される。信号処理ユニット50Cは、強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST63)。
その後、強度画像生成部52は、内部メモリから強度値データVIを読み出し、当該強度値データVIに基づいてリファレンス領域13A〜13Fの反射強度を示す強度画像を生成する(ステップST64)。
次に、走査範囲調整部65は、強度画像を解析して当該強度画像に現れるリファレンス領域13A〜13Fの各々の画像歪みの検出を試みる(ステップST65)。たとえば、走査範囲調整部65は、上記実施の形態2の歪み検出部61と同様に、リファレンス領域画像71A〜71Fの各々の水平方向画素数が同一(上式(15)の画素数PRと一致)となれば、画像歪みが存在しないと判定することができる(ステップST66のNO)。一方、図18(A),(B)に示したように、リファレンス領域画像71A〜71Fの各々の水平方向画素数が同じでなければ、画像歪みが存在すると判定することができる(ステップST66のYES)。
画像歪みが存在すると判定された場合は(ステップST66のYES)、走査範囲調整部65は、スキャナ31の振れ角が拡大するように走査範囲を変更し(ステップST67)、当該変更された走査範囲を示す調整データを調整データ記憶部66に格納する(ステップST68)。この結果、走査制御部54は、当該変更された走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。その後、走査範囲調整部65は、走査範囲調整処理の手順をステップST62に移行させる。そして、ステップST62〜ST66が再度実行される。最終的に、画像歪みが存在しないと判定されたとき(ステップST66のNO)、走査範囲調整処理は終了する。
ステップST67での走査範囲の変更については、走査範囲調整部65は、たとえば、リファレンス領域画像71A〜71Fのそれぞれの水平方向画素数が等しくなるように、走査範囲を変更すればよい。リファレンス領域画像71A〜71Fのそれぞれの水平方向画素数が等しくなったとき、走査範囲調整部65は、走査制御部54にスキャナ31の振れ角を固定させることができる。
本実施の形態でも、図13に示したような走査制御信号Scの制御電圧波形を使用することができる。図26は、この場合の当該制御電圧の三角波を示す関数f(t)(tは時間)を例示するグラフである。関数f(t)の振幅は電圧値(単位:ボルト)を示している。図26の点線で囲まれた領域Daは、スキャナ31の非線形動作が生ずる部分を示している。上述したように、制御電圧が上昇から下降へ転じる際、あるいは、隣り合う走査期間の境界付近で制御電圧が下降から上昇へ転じる際に、スキャナ31の振れ角が最大角または最小角となる。この振れ角の最大角付近または最小角付近で、走査速度が遅くなり、スキャナ31の非線形動作が生ずる。したがって、図26の領域Daでは、t=0で振幅値+Aを持つ制御電圧が供給された場合でも、+Aよりも低い振幅値を持つ制御電圧が供給された場合と同様の結果が生ずる。関数f(t)は、次式(18a),(18b)で表される。
f(t)=−(4A/K)t+A (−K/2≦t<0) (18a)
f(t)=+(4A/K)t+A (0≦t≦+K/2) (18b)
走査範囲調整部65は、スキャナ31の振れ角を拡大してリファレンス領域画像71A〜71Fのそれぞれの水平方向画素数を等しくすることができる。このときの制御電圧の三角波を示す関数は、図27に示されるような関数f’(t)となる。この関数f’(t)は、次式(19a),(19b)で表される。
f’(t)=−(4B/K)t+B (−K/2≦t<0) (19a)
f’(t)=+(4B/K)t+B (0≦t≦+K/2) (19b)
ここで、B>A>0、である。
図27の点線で囲まれた領域Dbは、スキャナ31の非線形動作が生ずる部分を示している。この領域Dbでは、t=0で振幅値+Bを持つ制御電圧が供給された場合でも、振幅値+A以上の振幅値を持つ制御電圧を供給することができる。スキャナ31の非線形動作が生ずる部分に対応する画像は撮像されないので、ほぼ画像歪みの無い撮像画像(強度画像及び距離画像)を得ることができる。
次に、図25を参照しつつ、撮像処理について説明する。まず、測定制御部51Cは、ゲート信号Gtのパルスの立ち上がり時刻である測定開始時刻tGと測定時間間隔とをそれぞれ測距用の最適値に初期設定する(ステップST70)。次に、走査範囲調整部65は、調整データ記憶部66から調整データを取得し、この調整データを走査制御部54に与える(ステップST71)。走査制御部54は、当該調整データに基づいてスキャナ31の走査範囲を設定する(ステップST72)。この結果、走査制御部54は、当該走査範囲を走査させる走査制御信号Scをスキャナ駆動部32に供給する。
その後、測定制御部51Cは、レーザ光源21に送信用レーザパルスを出射させる(ステップST73)。具体的には、測定制御部51Cは、トリガ制御信号Tcを基準トリガ発生部20に供給して一定周期で基準トリガ信号Tgを発生させる。レーザ光源21は、その基準トリガ信号Tgの供給に応じて送信用レーザパルスを出射する。その後、測距部47には、時間測定部43から計測値データVRが測定値として入力される。並行して、信号処理ユニット50Cには、強度測定部44から強度値データVIが測定値として入力される。測距部47及び信号処理ユニット50Cは、時間測定部43及び強度測定部44から入力された測定値を内部メモリに一時記憶する(ステップST74)。
その後、測距部47は、計測値データVRに基づいて距離値を算出する(ステップST75)。当該距離値を示す測距値データLdは、信号処理ユニット50Cに与えられる。
次に、距離画像生成部53は、測距値データLdに基づいて外部空間内のターゲットの3次元情報を示す距離画像を生成する(ステップST76)。また、強度画像生成部52は、強度値データVIに基づいて外部空間内のターゲットの反射強度を示す強度画像を生成する(ステップST77)。以上で撮像処理は終了する。
なお、上記した走査範囲調整モードと第2撮像モードとは、互いに独立して実行されてよいし、あるいは、同時並行に実行されてもよい。
以上に説明したように実施の形態3のレーザレーダ装置3は、窓部10Aのリファレンス領域13A〜13Fを用いる特性測定モード及び第1撮像モードで動作することができる。したがって、レーザ光に対するターゲットの反射率の違いに依らずに、当該ターゲットまでの正確な距離をリアルタイムに測定することができる。また、リファレンス領域画像71A〜71Fの画像歪みが発生しないように光走査部30の走査範囲を調整することができるので、歪みの無い強度画像及び距離画像を出力することができる。よって、正確な距離画像を得ることができ、これにより測距精度の向上が可能となる。
なお、上記実施の形態3では、上記窓部10Aの代わりに、図22に示した窓部10Bが使用されてもよい。この場合、リファレンス領域11A〜11Cを、上記した特性測定モード時に使用し、リファレンス領域13A〜13Fを、上記した走査範囲調整モード時に使用することができる。
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態1〜5について述べたが、これら実施の形態は本発明の例示であり、これら実施の形態以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、上記実施の形態1〜5では、スキャナ31は、ファンビーム状のレーザパルスで対象領域を1次元方向に走査するので、結果として面状の領域を走査している。これに代えて、ペンシルビーム状のレーザパルスで対象領域を2次元方向に走査できるように各実施の形態の構成を変更してもよい。
本発明の範囲内において、上記実施の形態1〜5の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。