以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
(実施の形態1)
<改善の検討>
特許文献1に記載された技術では、加速度に対して、静電容量が増減する一対の可変容量素子を使用し、各可変容量素子に逆位相の正弦信号(入力信号)を印加している。これにより、特許文献1に記載された技術では、加速度が印加された際に生じる容量変化に基づいて、この容量変化をCV変換部で電圧信号に変換して最終的に加速度に対応する検出信号を得ている。ところが、この特許文献1に記載された技術では、入力信号に外部ノイズが含まれている場合、この外部ノイズが検出信号に悪影響を及ぼすおそれがある。
そこで、例えば、外部ノイズによる悪影響を抑制する技術として、以下に示す特許文献2で示される関連技術がある。以下に、この関連技術について説明する。
図1は、例えば、特許文献2に示される関連技術における加速度センサのセンサ部とCV変換部との構成例を示す模式的な回路図である。図1において、関連技術における加速度センサは、入力端子IN1と入力端子IN2とを有している。そして、入力端子IN1と入力端子IN2との間には、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2とが直列接続されている。同様に、入力端子IN1と入力端子IN2との間には、固定容量素子FCAP1と固定容量素子FCAP2とが直列接続されている。
このとき、可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2は、外部から印加される加速度によって、静電容量が変化するように構成されており、MEMS(Micro Electrical Mechanical Systems)構造体で形成されたMEMS容量である。一方、固定容量素子FCAP1および固定容量素子FCAP2は、例えば、CMOSプロセスで形成された集積回路の一部として、半導体チップに形成されている。
そして、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2との間の中間ノードAは、CV変換部を構成する完全差動オペアンプ(全差動オペアンプ)FDAMPの反転入力端子と接続されている。一方、固定容量素子FCAP1と固定容量素子FCAP2との間の中間ノードBは、完全差動オペアンプFDAMPの非反転入力端子と接続されている。
図1に示すように、完全差動オペアンプFDAMPの反転入力端子と非反転出力端子との間には、帰還容量素子Cf1とスイッチSW1とが並列接続されている。一方、図1に示すように、完全差動オペアンプFDAMPの非反転入力端子と反転出力端子との間には、帰還容量素子Cf2とスイッチSW2とが並列接続されている。
このように構成されている関連技術では、例えば、図1に示すように、入力端子IN1と入力端子IN2とに互いに逆位相の入力電圧が印加される。ここで、例えば、入力端子IN1に入力される入力電圧に外部ノイズ(Vz)が加わる場合を考える。可変容量素子VCAP1の静電容量と固定容量素子FCAP1の静電容量とが同じ「C」である場合、図1に示すMEMS容量の可変容量素子VCAP1に外部ノイズに起因する電荷(CVz)が加わる一方、関連技術の構成では、図1に示す固定容量素子FCAP1にも外部ノイズに起因する電荷(CVz)が加わる。このとき、関連技術では、可変容量素子VCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(CVz)と固定容量素子FCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(CVz)とがキャンセルされ、完全差動オペアンプFDAMPの反転出力端子からの出力信号と非反転出力端子からの出力信号のいずれにも、外部ノイズの主要項である「CVz」項が含まれなくなる。したがって、関連技術の構成によれば、外部ノイズに影響の受けにくい加速度センサを提供することができると考えられる。
ところが、例えば、可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2は、MEMS構造体に形成される一方、固定容量素子FCAP1および固定容量素子FCAP2は、集積回路が形成された半導体チップに形成される。ここで、MEMS構造体の加工精度と半導体チップに形成される集積回路の加工精度が大幅に異なる。このことから、設計上では、例えば、可変容量素子VCAP1の静電容量と固定容量素子FCAP1の静電容量とを同じ静電容量「C」に設計しても、実際の製品では、加工精度の相違(ばらつき)から、可変容量素子VCAP1の静電容量と固定容量素子FCAP1の静電容量とが相違する可能性が大きくなる。例えば、可変容量素子VCAP1の静電容量が「C1」であり、固定容量素子FCAP1の静電容量が「C2」であるとして、上述したように、入力端子IN1に入力される入力電圧に外部ノイズ(Vz)が加わる場合を考える。
この場合、図1に示すMEMS容量の可変容量素子VCAP1には、外部ノイズに起因する電荷(C1Vz)が加わる一方、図1に示す固定容量素子FCAP1には、外部ノイズに起因する電荷(C2Vz)が加わる。したがって、関連技術では、加工精度の相違によって、可変容量素子VCAP1の静電容量と固定容量素子FCAP1の静電容量とが相違する場合、可変容量素子VCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(C1Vz)と固定容量素子FCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(C2Vz)とが完全にキャンセルされないことになる。このことは、関連技術において、完全差動オペアンプFDAMPからの出力信号に外部ノイズの悪影響が及ぶことを意味する。したがって、関連技術では、加工ばらつきの相違を考慮すると、外部ノイズの影響を抑制する観点から改善の余地が存在することがわかる。
そこで、本実施の形態1では、上述した関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について、図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1における加速度センサの回路構成>
図2は、本実施の形態1における加速度センサの模式的な回路構成を示す図である。図2に示すように、本実施の形態1における加速度センサは、入力端子IN1と入力端子IN2とを有する。そして、入力端子IN1と入力端子IN2との間には、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2とが直列接続されている。同様に、入力端子IN1と入力端子IN2との間には、可変容量素子VCAP4と可変容量素子VCAP3とが直列接続されている。
このとき、可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2は、外部から印加される加速度によって、静電容量が変化するように構成されており、MEMS(Micro Electrical Mechanical Systems)構造体で形成されたMEMS容量1である。同様に、可変容量素子VCAP3および可変容量素子VCAP4は、外部から印加される加速度によって、静電容量が変化するように構成されており、MEMS構造体で形成されたMEMS容量2である。
ここで、本実施の形態1における加速度センサに特定方向の加速度が印加された場合、例えば、MEMS容量1においては、入力端子IN1に接続された可変容量素子VCAP1の静電容量が増加すると、入力端子IN2に接続された可変容量素子VCAP2の静電容量が減少するように構成されている。一方、この場合、MEMS容量2においては、入力端子IN1に接続された可変容量素子VCAP4の静電容量が減少し、入力端子IN2に接続された可変容量素子VCAP3の静電容量が増加するように構成されている。
すなわち、MEMS容量1に着目すると、可変容量素子VCAP1の静電容量の変化と、可変容量素子VCAP2の静電容量の変化が逆特性となっている。同様に、MEMS容量2に着目しても、可変容量素子VCAP3の静電容量の変化と、可変容量素子VCAP4の静電容量の変化が逆特性となっている。また、MEMS容量1とMEMS容量2との間の関係に着目すると、MEMS容量1において入力端子IN1に接続されている可変容量素子VCAP1の静電容量の変化と、MEMS容量2において入力端子IN1に接続されている可変容量素子VCAP4の静電容量の変化とが逆特性となっている。同様に、MEMS容量1において入力端子IN2に接続されている可変容量素子VCAP2の静電容量の変化と、MEMS容量2において入力端子IN2に接続されている可変容量素子VCAP3の静電容量の変化とが逆特性となっている。
次に、図2に示すように、MEMS容量1を構成する可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2との間の中間ノードAは、CV変換部10と接続され、かつ、MEMS容量2を構成する可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4との間の中間ノードBも、CV変換部10と接続されている。
具体的に、MEMS容量1の中間ノードAは、例えば、シングルエンドオペアンプから構成されるチャージアンプCAMP1の反転入力端子と接続されている。そして、チャージアンプCAMP1の非反転入力端子には、固定電位VB(0.6V)が印加される。さらに、チャージアンプCAMP1の反転入力端子と出力端子との間には、帰還容量素子Cf1と高抵抗HRとが並列接続されている。
一方、MEMS容量2の中間ノードBは、例えば、シングルエンドオペアンプから構成されるチャージアンプCAMP2の反転入力端子と接続されている。そして、チャージアンプCAMP2の非反転入力端子には、固定電位VB(0.6V)が印加される。さらに、チャージアンプCAMP2の反転入力端子と出力端子との間には、帰還容量素子Cf1と高抵抗HRとが並列接続されている。
続いて、図2に示すように、CV変換部10の後段(出力)には、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部11が接続されており、このAD変換部11の後段(出力)には、差動検出部12が接続されている。さらに、差動検出部12の後段(出力)には、同期検波部13が接続されており、この同期検波部13の後段(出力)には、LPF(ローパスフィルタ)14が接続されている。そして、LPF14は、出力端子OUTと接続されている。
<実施の形態1における加速度センサの動作>
本実施の形態1における加速度センサは、上記のように構成されており、以下に、その動作について、図2を参照しながら説明する。
まず、図2に示すように、入力端子IN1と入力端子IN2に、それぞれ180°位相の異なる逆位相の変調信号が印加される。例えば、原理的には、変調信号を印加しなくても加速度に起因する可変容量素子での容量変化を検出することにより、加速度を検出することは可能である。ただし、加速度に対応した可変容量素子での容量変化に基づく検出信号は、低周波信号であるため、1/fノイズの影響を受けやすくなる。すなわち、加速度に対応した可変容量素子での容量変化に基づく検出信号をそのまま使用する構成では、1/fノイズが大きくなる結果、S/N比が劣化して、加速度センサの検出感度が低下することになる。そこで、本実施の形態1では、変調信号を使用している。この場合、加速度に対応した可変容量素子での容量変化に基づく検出信号が変調信号で変調されて高周波信号となるため、1/fノイズを受けにくくなるのである。つまり、高周波信号では、低周波信号よりも1/fノイズが小さくなることから、S/N比を向上できる結果、加速度センサの検出感度を向上することができるのである。このような理由から、本実施の形態1では、入力端子IN1と入力端子IN2とに変調信号を印加している。
続いて、入力端子IN1と入力端子IN2とに互いに逆位相の変調信号を印加する理由について説明する。図2において、MEMS容量1に着目し、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2の静電容量を「C」とする。そして、加速度が印加された場合、可変容量素子VCAP1の静電容量が「C+ΔC」に増加する一方、可変容量素子VCAP2の静電容量が「C−ΔC」に減少するとする。この場合、入力端子IN1と入力端子IN2とに互いに逆位相の変調信号が印加されている場合、可変容量素子VCAP1には、Q1=(C+ΔC)Vの電荷が蓄積される一方、可変容量素子VCAP2には、Q2=−(C−ΔC)Vの電荷が蓄積される。したがって、MEMS容量1での電荷移動量は、(C+ΔC)V−(C−ΔC)V=2ΔCVとなる。つまり、入力端子IN1と入力端子IN2とに互いに逆位相の変調信号が印加されている場合には、可変容量素子VCAP1の静電容量「C」と可変容量素子VCAP2の静電容量を「C」とがキャンセルされて、電荷移動量には、加速度に起因する容量変化(ΔC)の成分だけ含まれることになる。この結果、電荷移動量において、加速度に起因する容量変化(ΔC)とは無関係な静電容量「C」がキャンセルされる結果、容量変化(ΔC)に対応する電荷移動量が取り出されるため、加速度センサの検出感度を向上することができるのである。このような理由から、本実施の形態1では、入力端子IN1と入力端子IN2とに互いに逆位相の変調信号を印加するように構成している。
以上のことを前提として、本実施の形態1における加速度センサの動作について説明する。図2において、入力端子IN1と入力端子IN2に、それぞれ180°位相の異なる逆位相の変調信号を印加する。ここで、加速度が加わることにより、MEMS容量1の可変容量素子VCAP1の静電容量が「C+ΔC」に増加する一方、MEMS容量2の可変容量素子VCAP2の静電容量が「C−ΔC」に減少するとする。この場合、MEMS容量2の可変容量素子VCAP4の静電容量が「C−ΔC」に減少する一方、MEMS容量2の可変容量素子VCAP3の静電容量が「C+ΔC」に増加する。
この結果、まず、MEMS容量1での電荷移動量は、(C+ΔC)V−(C−ΔC)V=2ΔCVとなり、帰還容量素子Cf1の静電容量を「Cf」とすると、CV変換部10から「2ΔCV/Cf」で示される第1アナログ電圧信号が出力される。
同様に、MEMS容量2での電荷移動量は、(C−ΔC)V−(C+ΔC)V=−2ΔCVとなり、帰還容量素子Cf1の静電容量を「Cf」とすると、CV変換部10から「−2ΔCV/Cf」で示される第2アナログ電圧信号が出力される。
そして、第1アナログ電圧信号は、AD変換部11で第1デジタル電圧信号に変換され、第2アナログ電圧信号は、AD変換部11で第2デジタル電圧信号に変換される。その後、差動検出部12で第1デジタル電圧信号と第2デジタル電圧信号の差分が演算され、同期検波部13で復調信号が抽出される。続いて、同期検波部13で復調された復調信号は、LPF(低周波数帯域通過フィルタ)14を通過することにより、最終的に、加速度に対応した加速度信号(検出信号)が出力端子OUTから出力されることになる。
以上のようにして、本実施の形態1における加速度センサによれば、特定方向の加速度を検出することができる。
<変形例>
図3は、図2に示す回路構成の変形例を示す図である。図3では、CV変換部10の構成要素として、完全差動オペアンプFDAMPを使用している。つまり、図2に示す回路構成では、シングルエンドオペアンプから構成されるチャージアンプCAMP1およびチャージアンプCAMP2からCV変換部10を構成している。これに対し、図3に示す回路構成では、1つの完全差動オペアンプFDAMPからCV変換部10を構成している。このように本実施の形態1における加速度センサでは、図2に示す回路構成からCV変換部10を構成することもできるし、これに限らず、図3に示す回路構成からCV変換部10を構成することもできる。
<実施の形態1における特徴>
続いて、本実施の形態1における特徴点について説明する。図2において、本実施の形態1における第1特徴点は、入力端子IN1と入力端子IN2との間に、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2とからなるMEMS容量1を設けるとともに、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4とからなるMEMS容量2を設ける点にある。つまり、本実施の形態1における加速度センサでは、加速度に起因して静電容量が変化するMEMS構造体から構成される2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を設けている点に特徴点がある。これにより、2組のMEMS容量が、ともにMEMS構造体から構成されるため、いずれのMEMS容量もMEMS構造体の加工精度で形成することができるため、2組のMEMS容量間の製造ばらつきを小さくすることができる。この結果、本実施の形態1における加速度センサによれば、外部ノイズによる悪影響を低減することができる効果が得られる。
以下に、この点について説明する。例えば、上述した関連技術においては、図1に示すように、入力端子IN1と入力端子IN2との間に、MEMS容量と固定容量とが形成されている。この場合、MEMS容量は、MEMS構造体から構成されており、MEMS構造体の加工精度で形成される一方、固定容量は、集積回路が形成された半導体チップに形成されており、CMOSプロセスの加工精度で形成される。この点に関し、MEMS構造体の加工精度とCMOSプロセスの加工精度とは大幅に異なるため、関連技術においては、MEMS容量と固定容量の製造ばらつき(加工精度)が大きく異なることになる。
このことから、関連技術では、MEMS容量と固定容量との加工精度の相違によって、例えば、図1に示す可変容量素子VCAP1の静電容量と固定容量素子FCAP1の静電容量とが相違することになる。具体的に、可変容量素子VCAP1の静電容量が「C1」となり、固定容量素子FCAP1の静電容量が「C2」になるとする。この状況下において、例えば、入力端子IN1に入力される変調信号に外部ノイズ(Vz)が加わると、可変容量素子VCAP1に外部ノイズに起因した電荷(C1Vz)が加わる一方、固定容量素子FCAP1に外部ノイズに起因した電荷(C2Vz)が加わる。このとき、「C1」と「C2」とは異なることから、可変容量素子VCAP1に加わる電荷(C1Vz)と、固定容量素子FCAP1に加わる電荷(C2Vz)とは相違することになる。すなわち、関連技術においては、MEMS容量と固定容量との製造方法が相違することによって、MEMS容量と固定容量の製造ばらつき(加工精度)が大きくなる結果、固定容量を設けたとしても、可変容量素子VCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(C1Vz)と固定容量素子FCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(C2Vz)とが完全にキャンセルされないことになる。このことは、関連技術においては、CV変換部10からの出力信号に外部ノイズの悪影響が及ぶことを意味する。したがって、関連技術では、加工ばらつきの相違(加工精度の相違)を考慮すると、外部ノイズの影響を充分に排除することができないことになる。そして、外部ノイズの影響が大きくなると、シグナル(信号)に対するノイズの大きさが大きくなることになる。このことは、関連技術においては、S/N比が劣化することを意味し、これによって、加速度の検出感度が低下することになる。
これに対し、本実施の形態1における加速度センサでは、関連技術のように、入力端子IN1と入力端子IN2との間に、MEMS容量と固定容量とを設けるのではなく、MEMS構造体から構成される2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を設けている。これにより、本実施の形態1における加速度センサにおいては、2組のMEMS容量が、ともにMEMS構造体から構成されるため、いずれのMEMS容量もMEMS構造体の加工精度で形成することができるため、2組のMEMS容量間の製造ばらつきを小さくすることができる。すなわち、本実施の形態1によれば、関連技術のように、大幅に加工精度の異なる技術で形成されたMEMS容量と固定容量とを採用するのではなく、互いに同一加工精度の技術で形成された2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を採用しているため、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)間における製造ばらつきの相違を小さくすることができるのである。
そして、たとえ、MEMS容量に製造ばらつきが生じても、同一加工精度の技術を使用していることから、2組のMEMS容量において、静電容量も同程度にずれると考えることができる。この場合、外部ノイズの影響は小さくなる。具体的には、同一の加工精度の技術を使用していることから、たとえ、静電容量の設計値からのずれが生じても、同程度のずれが生じると考えられる。つまり、例えば、可変容量素子VCAP1の静電容量が設計値「C」から「C1」となる場合には、可変容量素子VCAP4の静電容量も設計値「C」から同じ「C1」となると想定される。この状況下において、入力端子IN1に入力される変調信号に外部ノイズ(Vz)が加わると、可変容量素子VCAP1に外部ノイズに起因した電荷(C1Vz)が加わる一方、可変容量素子VCAP4にも外部ノイズに起因した電荷(C1Vz)が加わる。このとき、可変容量素子VCAP1の静電容量「C1」と可変容量素子VCAP4の静電容量「C1」とが等しいことから、可変容量素子VCAP1に加わる電荷(C1Vz)と、可変容量素子VCAP4に加わる電荷(C1Vz)とが等しくなる。すなわち、本実施の形態1においては、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)の加工に同一加工精度の製造技術を使用することによって、2組のMEMS容量間の製造ばらつき(加工精度)が小さくなる。この結果、本実施の形態1における加速度センサによれば、静電容量値が設計値からずれる状況下において、外部ノイズ(Vz)が加わったとしても、可変容量素子VCAP1に加わる外部ノイズに起因する電荷(C1Vz)に基づく出力信号成分と可変容量素子VCAP4に加わる外部ノイズに起因する電荷(C1Vz)に基づく出力信号成分とがキャンセルされることになる。このことは、本実施の形態1においては、外部ノイズの影響を低減できることを意味する。
したがって、本実施の形態1における加速度センサは、加工ばらつきが存在しても、外部ノイズの影響を充分に排除することができる。言い換えれば、本実施の形態1によれば、外部ノイズに対する耐性の高い優れた加速度センサを提供することができるということができる。そして、外部ノイズの影響が小さくなるということは、シグナル(信号)に対するノイズの大きさが小さくなることを意味し、これによって、本実施の形態1によれば、S/N比が高い高感度の加速度センサを実現することができる。
次に、本実施の形態1における第2特徴点は、図2に示すように、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を設けることにより、CV変換部10から出力される信号(シグナル)が大きくなる点にある。
例えば、図2においては、入力端子IN1と入力端子IN2との間に、MEMS容量1と、MEMS容量2の替わりに固定容量(図1参照)とが設けられている場合を考える。この場合、加速度が印加されると、まず、MEMS容量1の静電容量が変化する。具体的には、例えば、可変容量素子VCAP1の静電容量が「C+ΔC」となり、可変容量素子VCAP2の静電容量が「C−ΔC」となる。この結果、MEMS容量1全体で、(C+ΔC)V−(C−ΔC)V=2ΔCVの電荷移動量が発生し、これによって、CV変換部10からは、帰還容量素子の静電容量を「Cf」とすると、2ΔCV/Cfの第1出力信号(第1電圧信号)が出力されることになる。一方、加速度が印加されても、固定容量の静電容量は変化しない。この結果、固定容量の電荷移動量が「0」であり、これによって、CV変換部10からは、帰還容量素子の静電容量を「Cf」とすると、「0」の第2出力信号(第2電圧信号)が出力されることになる。このことから、MEMS容量2の替わりに固定容量を使用した場合には、第1出力信号−第2出力信号=2ΔCV/Cfとなる。
これに対し、本実施の形態1では、図2に示すように、入力端子IN1と入力端子IN2との間に、MEMS容量1とMEMS容量2とが設けられている。この場合、加速度が印加されると、まず、MEMS容量1の静電容量が変化する。具体的には、例えば、可変容量素子VCAP1の静電容量が「C+ΔC」となり、可変容量素子VCAP2の静電容量が「C−ΔC」となる。この結果、MEMS容量1全体で、(C+ΔC)V−(C−ΔC)V=2ΔCVの電荷移動量が発生し、これによって、CV変換部10からは、帰還容量素子の静電容量を「Cf」とすると、2ΔCV/Cfの第1出力信号(第1電圧信号)が出力されることになる。同様に、MEMS容量2の静電容量も変化する。具体的には、例えば、可変容量素子VCAP4の静電容量が「C−ΔC」となり、可変容量素子VCAP3の静電容量が「C+ΔC」となる。この結果、MEMS容量2全体で、(C−ΔC)V−(C+ΔC)V=−2ΔCVの電荷移動量が発生し、これによって、CV変換部10からは、帰還容量素子の静電容量を「Cf」とすると、−2ΔCV/Cfの第2出力信号(第2電圧信号)が出力されることになる。このことから、本実施の形態1のように、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を設ける場合、第1出力信号−第2出力信号=4ΔCV/Cfとなる。
したがって、本実施の形態1における加速度センサによれば、MEMS容量2の替わりに固定容量を設ける場合に比べて、CV変換部10から出力される信号(第1出力信号−第2出力信号)の大きさが大きくなる。このことは、本実施の形態1によれば、加速度に起因する出力信号(シグナル)が大きくなることを意味し、これによって、S/N比を高くすることができる。
以上のことから、本実施の形態1における加速度センサによれば、上述した第1特徴点によって、外部ノイズを小さくできる点と、上述した第2特徴点によって、シグナル(信号)の大きさを大きくできる点との相乗効果によって、S/N比を向上することができる。この結果、本実施の形態1によれば、S/N比が高い高感度の加速度センサを実現することができることになる。
本実施の形態1においては、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)の加工に同一加工精度の製造技術を使用することによって、2組のMEMS容量間の製造ばらつき(加工精度)を小さくしている。さらに、本実施の形態1では、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)の加工ばらつきを低減するために、MEMS容量1とMEMS容量2とが形成されるMEMS構造体(センサエレメント)のデバイス構造に対する工夫を施している。以下では、まず、2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)が形成されたセンサエレメントのデバイス構造について説明し、その後、本実施の形態1におけるセンサエレメントのデバイス構造の特徴点について説明する。
<実施の形態1におけるセンサエレメントのデバイス構造>
図4は、本実施の形態1における加速度センサのセンサエレメントSEのデバイス構造を示す断面図である。図4において、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEは、z方向の加速度に対して変位する質量体MSを備えている。この質量体MSは、可動部VU1と、可動部VU1と電気的に分離された可動部VU2と、可動部VU1と可動部VU2とを機械的に接続する機械的接合部MCUとを有している。
そして、質量体MSは、絶縁層ILと絶縁層ILの表面上に形成された導体層CL1と絶縁層ILの裏面上に形成された導体層CL2とからなるSOI層に形成されている。例えば、導体層CL1および導体層CL2は、シリコンからなる半導体層から形成され、絶縁層ILは、酸化シリコン膜から形成されている。
具体的に、可動部VU1は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VEL1と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VEL2とを含む。つまり、可動電極VEL1と可動電極VEL2とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG1によって、可動電極VEL1と可動電極VEL2とは電気的に接続されていることになる。
同様に、可動部VU2は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VEL3と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VEL4とを含む。つまり、可動電極VEL3と可動電極VEL4とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG2によって、可動電極VEL3と可動電極VEL4とは電気的に接続されていることになる。
SOI層の導体層CL1には、エッチングにより導体層CL1の一部分を除去することにより、分離部ISU1が形成されている。これにより、導体層CL1に形成された可動部VU1の可動電極VEL1と、導体層CL1に形成された可動部VU2の可動電極VEL3とは、分離部ISU1によって分離される。
一方、SOI層の導体層CL2には、エッチングにより導体層CL2の一部分を除去することにより、分離部ISU2および分離部ISU3が形成されている。これにより、導体層CL2に形成された可動部VU1の可動電極VEL2と、導体層CL2に形成された可動部VU2の可動電極VEL4とは、分離部ISU2および分離部ISU3によって分離される。そして、SOI層の導体層CL2には、分離部ISU2と分離部ISU3とに挟まれるように導体層CL2で形成された機械的接合部MCUが形成されている。これにより、SOI層に形成されている可動部VU1と可動部VU2とは、分離部ISU1と分離部ISU2と分離部ISU3で電気的に分離されながら、機械的接合部MCUによって、機械的に接続されていることになる。このとき、図4に示すように、断面視において、機械的接合部MCU上に分離部ISU1が形成され、機械的接合部MCUは、分離部ISU1を内包している。また、機械的接合部MCUは、分離部ISU2と分離部ISU3で挟まれるように設けられている。この機械的接合部MCUは、z方向と直交するx方向に分離された可動部VU1と可動部VU2とを機械的に接続している。
続いて、図4に示すように、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEは、可動部VU1と可動部VU2と機械的接合部MCUとが形成されたSOI層を空間を介して囲むようにキャップ部およびベース部からなる固定部FUが形成されている。そして、この固定部には、固定電極FEL1と、固定電極FEL2と、固定電極FEL3と、固定電極FEL4とが形成されている。具体的には、図4に示すように、固定電極FEL1は、可動部VU1の可動電極VEL1と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極FEL2は、可動部VU1の可動電極VEL2と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。同様に、固定電極FEL3は、可動部VU2の可動電極VEL3と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極FEL4は、可動部VU2の可動電極VEL4と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。これにより、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEでは、可動部VU1と固定電極FEL1とによって可変容量素子VCAP1が形成され、かつ、可動部VU1と固定電極FEL2とによって可変容量素子VCAP2が形成される。同様に、可動部VU2と固定電極FEL3とによって可変容量素子VCAP3が形成され、かつ、可動部VU2と固定電極FEL4とによって可変容量素子VCAP4が形成される。
ここで、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEでは、質量体MSがz方向に変位した場合、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2のうち、一方の可変容量素子の静電容量は増加するのに対し、他方の可変容量素子の静電容量は減少する。同様に、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4のうち、一方の可変容量素子の静電容量は増加するのに対し、他方の可変容量素子の静電容量は減少する。
例えば、図4において、質量体MSが+z方向に変位した場合、可変容量素子VCAP1を構成する可動電極VEL1と固定電極FEL1との電極間距離は狭まるので、可変容量素子VCAP1の静電容量は増加する一方、可変容量素子VCAP2を構成する可動電極VEL2と固定電極FEL2との電極間距離は広がるので、可変容量素子VCAP2の静電容量は減少する。同様に、図4において、質量体MSが+z方向に変位した場合、可変容量素子VCAP3を構成する可動電極VEL3と固定電極FEL3との電極間距離は狭まるので、可変容量素子VCAP3の静電容量は増加する一方、可変容量素子VCAP4を構成する可動電極VEL4と固定電極FEL4との電極間距離は広がるので、可変容量素子VCAP4の静電容量は減少する。このように、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEにおいては、同一のSOI層を加工することにより、互いに電気的に分離され、かつ、機械的に接合された可動部VU1と可動部VU2とを含む質量体MSが形成されていることになる。
なお、図2と図4からわかるように、図4に示す固定電極FEL1と固定電極FEL4とは電気的に接続されて、図2に示す入力端子IN1に接続される。一方、図4に示す固定電極FEL2と固定電極FEL3とは電気的に接続されて、図2に示す入力端子IN2に接続される。この結果、図2および図4から、入力端子IN1と接続されている固定電極FEL1と入力端子IN2と接続されている固定電極FEL2には、互いに逆位相の電圧信号が入力される。同様に、入力端子IN1と接続されている固定電極FEL4と入力端子IN2と接続されている固定電極FEL3には、互いに逆位相の電圧信号が入力される。さらに、図4では図示されないが、可動部VU1は、第1出力部(図2の中間ノードA)と電気的に接続され、可動部VU2は、第2出力部(図2の中間ノードB)と電気的に接続される。そして、図2において、第1出力部は、CV変換部10のチャージアンプCAMP1の反転入力端子に接続され、第2出力部は、CV変換部10のチャージアンプCAMP2の反転入力端子に接続される。
以上のようにして、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEが構成されている。以下では、このように構成されている本実施の形態1におけるセンサエレメントSEの特徴点について説明する。
<実施の形態1におけるセンサエレメントの特徴>
本実施の形態1におけるセンサエレメントSEの第1特徴点は、質量体MSを構成する可動部VU1と可動部VU2とをMEMS構造体の製造技術を使用して形成することを前提として、同一のSOI層を加工することにより形成されている点にある。これにより、まず、前提事項によって、可動部VU1と可動部VU2のいずれもMEMS構造体として形成されるため、可動部VU1と可動部VU2との間の製造ばらつき(加工精度)を小さくすることができる。さらに、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEでは、同一のSOI層を加工することにより、可動部VU1と可動部VU2とが形成されている。したがって、可動部VU1と可動部VU2とを別々の層を加工して形成する場合よりも、さらに、可動部VU1と可動部VU2との製造ばらつきを小さくすることができる。この点が本実施の形態1におけるセンサエレメントSEの第1特徴点であり、本実施の形態1によれば、上述した前提事項と第1特徴点との相乗効果によって、可動部VU1と可動部VU2との間の製造ばらつきを小さくすることができる。この結果、本実施の形態1によれば、例えば、図2に示すMEMS容量1の静電容量とMEMS容量2の静電容量とのずれ(「不一致」)を抑制することができる。
続いて、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEの第2特徴点は、可動部VU1と可動部VU2とを同一のSOI層に形成する第1特徴点を前提として、さらに、可動部VU1と可動部VU2とを電気的に分離しながらも、機械的接合部MCUによって、機械的に接続している点にある。これにより、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEによれば、さらに、図2に示すMEMS容量1の静電容量とMEMS容量2の静電容量とのずれ(「不一致」)を抑制することができる。
例えば、図4に示すように、可動部VU1と可動部VU2とが機械的接合部MCUで接続されている場合、互いに電気的に分離されながらも可動部VU1と可動部VU2とが機械的に一体的に形成されていることになる。このことは、図4において、可動部VU1の可動電極VEL1と固定電極FEL1との間の電極間距離と、可動部VU2の可動電極VEL3と固定電極FEL3との間の電極間距離とがほぼ等しくなるように、可動部VU1と可動部VU2とが形成されることを意味している。言い換えれば、図4において、可動部VU1の可動電極VEL2と固定電極FEL2との間の電極間距離と、可動部VU2の可動電極VEL4と固定電極FEL4との間の電極間距離とがほぼ等しくなるように、可動部VU1と可動部VU2とが形成されることも意味している。
このことから、本実施の形態1におけるセンサエレメントSEによれば、可変容量素子VCAP1の静電容量と可変容量素子VCAP3の静電容量とをほぼ等しくすることができ、かつ、可変容量素子VCAP2の静電容量と可変容量素子VCAP4の静電容量とをほぼ等しくすることができる。これにより、本実施の形態1によれば、上述した前提事項と第1特徴点と第2特徴点との相乗効果によって、例えば、図2に示すMEMS容量1の静電容量とMEMS容量2の静電容量とのずれ(「不一致」)を大幅に抑制することができる。
以上のことから、本実施の形態1によれば、入力端子IN1と入力端子IN2との間に2組のMEMS容量(MEMS容量1とMEMS容量2)を設けるという回路構成上の工夫点(図2参照)と、同一のSOI層に形成された可動部VU1と可動部VU2とを電気的に分離しながら機械的接合部MCUによって機械的に接合するというデバイス構造上の工夫点(図4参照)を有する。この結果、本実施の形態1によれば、回路構成上の工夫点とデバイス構造上の工夫点との相乗効果によって、S/N比が高い高感度の加速度センサを実現することができる。
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2における加速度センサについて説明する。図5は、本実施の形態2における加速度センサの模式的な構成の一例を示す図である。図5において、本実施の形態2における加速度センサは、加速度を検出するセンサエレメントと、センサエレメントから出力される電気信号を処理する電子回路とから構成されている。このとき、センサエレメントは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造体から構成され、電子回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)から構成されている。以下に、本実施の形態2における加速度センサを構成するMEMS構造体およびASICについて説明する。
<MEMS構造体(センサエレメント)の構成>
図5に示すように、MEMS構造体は、枠体に固定された固定部と所定方向に変位可能な質量体MSとを有するセンサエレメントから構成され、このセンサエレメントには、加速度を静電容量の変化として捉える検出容量部が形成されている。具体的に、この検出容量部は、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2からなる一対の容量対と、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4からなるもう一対の容量対とから構成されている。このとき、例えば、図5において、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2は、質量体MSの所定方向の変位に対して、一方の可変容量素子の静電容量は増加する一方、他方の可変容量素子の静電容量は減少するように構成されている。同様に、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4も、質量体MSの所定方向の変位に対して、一方の可変容量素子の静電容量は増加する一方、他方の可変容量素子の静電容量は減少するように構成されている。この構成は、前記実施の形態1と同様であり、本実施の形態2においても、加速度に起因して静電容量が変化する2組の容量対が設けられていることになる。これにより、2組の容量対が、ともにMEMS構造体から構成されることになるため、いずれの容量対もMEMS構造体の加工精度で形成することができる。このため、2組の容量対間の製造ばらつきを小さくすることができる。この結果、本実施の形態2における加速度センサによれば、前記実施の形態1で説明した理由によって、外部ノイズによる悪影響を低減することができる効果が得られる。
さらに、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、2組の容量対を設け、かつ、1組の容量対の構成要素である可変容量素子VCAP1と、もう1組の容量対の構成要素である可変容量素子VCAP4には、同相の第1変調信号を印加している。そして、1組の容量対の他の構成要素である可変容量素子VCAP2と、もう1組の容量対の他の構成要素である可変容量素子VCAP3には、上述した第1変調信号とは逆相の第2変調信号を印加している。これにより、本実施の形態2においても、前記実施の形態1で説明した理由によって、加速度に対応した電気信号(シグナル)を大きくすることができる。
以上のことから、本実施の形態2における加速度センサによっても、前記実施の形態1と同様に、外部ノイズを小さくできる点と、シグナル(電気信号)の大きさを大きくできる点との相乗効果を得ることができ、これによって、S/N比を向上することができる。この結果、本実施の形態2によっても、S/N比の高い高感度な加速度センサを実現することができることになる。
続いて、本実施の形態2におけるセンサエレメントには、加速度に起因する質量体MSの変位を打ち消す静電気力を発生させるサーボ電圧が印加されるサーボ容量部が形成されている。言い換えれば、このサーボ容量部は、サーボ電圧の印加によって、検出容量部の静電容量の変化を打ち消す静電気力を発生させる機能を有しているということもできる。このとき、サーボ電圧は、直流電圧成分と交流電圧成分とを含んでおり、例えば、直流電圧成分は、重力加速度を打ち消す成分であり、交流電圧成分は、微小振動加速度を打ち消す成分である。そして、サーボ電圧が直流電圧成分と交流電圧成分から構成されていることに対応して、本実施の形態2におけるサーボ容量部は、サーボ電圧の直流電圧成分が印加される容量部と、サーボ電圧の交流電圧成分が印加される容量部から構成されている。具体的に、本実施の形態2におけるサーボ容量部は、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS2からなる1組のDCサーボ容量対と、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS4からなるもう1組のDCサーボ容量対とを有している。さらに、本実施の形態2におけるサーボ容量部は、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2からなる1組のACサーボ容量対と、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS4からなるもう1組のACサーボ容量対とを有している。つまり、本実施の形態2におけるセンサエレメントには、2組のDCサーボ容量対と2組のACサーボ容量対とからなるサーボ容量部が形成されていることになる。
このように本実施の形態2におけるセンサエレメントには、サーボ容量部が形成されており、このサーボ容量部にサーボ電圧を印加することにより発生するクーロン力(静電気力)によって、加速度に基づく質量体MSの変位を打ち消すように構成されている。これにより、センサエレメントに加速度が印加されても、質量体MSは、ほとんど変位しないが、サーボ容量部には、加速度の大きさに比例したサーボ電圧が印加されることになるから、このサーボ電圧を出力することにより、結果的に、センサエレメントに印加された加速度を検出することができる。
このサーボ容量部を設ける利点は、質量体MSに変位させることなく、加速度を検出することができる点にある。すなわち、サーボ容量部によるサーボ機構を設けることにより、センサエレメントに大きな加速度が印加された場合、質量体MSの想定外の変位によって、質量体MSと枠体とが接触することを防止することができる。
以上のようにして、MEMS構造体からなるセンサエレメントが構成されており、以下に、このセンサエレメントと電気的に接続されるASICの構成について説明する。
<ASICの構成>
図5において、本実施の形態2におけるASICは、ドライバDRV1、DRV2と、チャージアンプ101a、101bと、アンプ102と、アナログフィルタ103と、A/D変換器104と、DCサーボ制御部105と、復調器106と、ACサーボ制御部107と、1ビット量子化器108と、1ビットD/A変換器109と、ローパスフィルタ(DLPF)110とを有している。
ドライバDRV1は、センサエレメントの可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP4とに電気的に接続されており、変調クロックに基づいて、可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP4に同相の第1変調信号を印加するように構成されている。一方、ドライバDRV2は、センサエレメントの可変容量素子VCAP2と可変容量素子VCAP3と電気的に接続されており、逆相の変調クロックに基づいて、可変容量素子VCAP2および可変容量素子VCAP3に第1変調信号とは逆相の第2変調信号を印加するように構成されている。
チャージアンプ101aは、オペアンプと、オペアンプの入出力間に並列接続された帰還容量および高抵抗素子とからなり、C/V変換部(容量/電圧変換部)を構成している。具体的に、チャージアンプ101aは、センサエレメントの可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2と電気的に接続されており、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2とを合わせた静電容量の変化(2ΔC)を電圧値(2ΔCV/Cf)の電圧信号に変換する機能を有している。
同様に、チャージアンプ101bは、オペアンプと、オペアンプの入出力間に並列接続された帰還容量および高抵抗素子とからなり、C/V変換部を構成している。具体的に、チャージアンプ101bは、センサエレメントの可変容量素子VCAP3および可変容量素子VCAP4と電気的に接続されており、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4とを合わせた静電容量の変化(−2ΔC)を電圧値(−2ΔCV/Cf)の電圧信号に変換する機能を有している。
次に、アンプ102は、入力がチャージアンプ101aおよびチャージアンプ101bと電気的に接続されており、チャージアンプ101aから出力された電圧値(2ΔCV/Cf)の電圧信号と、チャージアンプ101bから出力された電圧値(−2ΔCV/Cf)の電圧信号との差動を出力する機能を有している。したがって、アンプ102からは、電圧値(2ΔCV/Cf)−電圧値(−2ΔCV/Cf)=差動電圧値(4ΔCV/Cf)に基づく電圧信号が出力されることになる。
続いて、アナログフィルタ103は、アンプ102から出力された差動電圧値(4ΔCV/Cf)の電圧信号に含まれる雑音成分を除去する機能を有している。そして、A/D変換部104は、アナログフィルタ103で雑音成分が除去された電圧信号(アナログ信号)を電圧信号(デジタル信号)に変換する機能を有している。
DCサーボ制御部105は、A/D変換部104で変換された電圧信号(デジタル信号)を入力して、センサエレメントの2組のDCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2、DCS3、DCS4)に印加するサーボ電圧の直流電圧成分を決定し、この決定したサーボ電圧の直流電圧成分を2組のDCサーボ容量対に印加するように構成されている。これにより、2組のDCサーボ容量対のそれぞれに、重力加速度を打ち消す静電気力が発生することになる。
一方、復調器106は、A/D変換器104で変換された電圧信号(デジタル信号)と、変調クロックとを入力することにより、A/D変換部104から入力した電圧信号(デジタル信号)を復調する機能を有している。これにより、A/D変換部104から入力した電圧信号(デジタル信号)から微小振動加速度に対応した信号が抽出される。そして、ACサーボ制御部107は、復調器106で復調された微小振動加速度に対応する信号を入力して、センサエレメントの2組のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2、ACS3、ACS4)に印加するサーボ電圧の交流電圧成分を決定するように構成されている。
次に、1ビット量子化器108は、ACサーボ制御部107で決定されたサーボ電圧の交流電圧成分を1ビットに量子化する機能を有している。ここで、1ビット量子化器108の出力は、ローパスフィルタ(DLPF)110に出力され、ローパスフィルタ110によって、1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分から高周波成分(量子化誤差)が除去される。これにより。最終的に加速度センサから1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分が出力され、この出力に基づいて、センサエレメントに印加されている微小振動加速度が算出されることになる。
また、1ビット量子化器108の出力は、1ビットD/A変換器109に入力される。この1ビットD/A変換器109は、1ビット量子化器108で1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分をアナログ電圧(例えば、±5V、あるいは、0V/10V)に変換して、このアナログ電圧を2組のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2、ACS3、ACS4)に印加するように構成されている。これにより、2組のACサーボ容量対のそれぞれに、微小振動加速度を打ち消す静電気力が発生することになる。以上のようにして、センサエレメントに印加される加速度(重力加速度+微小振動加速度)を打ち消す静電気力がセンサエレメントの質量体MSに加わるサーボ機構が働き、これによって、加速度に起因する質量体MSの変位が抑制されることになる。
<加速度センサの動作>
本実施の形態2における加速度センサは、上記のように構成されており、以下にその動作について、図5を参照しながら説明する。
まず、ドライバDRV1によって、センサエレメントの可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP4に同相の第1変調信号が印加される。一方、ドライバDRV2によって、センサエレメントの可変容量素子VCAP2および可変容量素子VCAP3に第1変調信号とは逆相の第2変調信号が印加される。
この状態において、センサエレメントに加速度が印加されたとする。この場合、センサエレメントに加速度が印加されることに起因して、センサエレメントの構成要素である質量体MSが変位する。この結果、センサエレメントの可変容量素子VCAP1〜VCAP4のそれぞれの静電容量が変化する。
具体的には、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2からなる容量対においては、可変容量素子VCAP1の静電容量の変化が+ΔCの場合、可変容量素子VCAP2の静電容量の変化は−ΔCとなる。そして、可変容量素子VCAP1には、第1変調信号が印加され、かつ、可変容量素子VCAP2には、第1変調信号とは逆相の第2変調信号が印加されていることを考慮すると、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2からなる容量対の全体では、ΔC−(−ΔC)=2ΔCの静電容量の変化が生じる。
一方、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4からなる容量対においては、可変容量素子VCAP3の静電容量の変化が+ΔCとなり、可変容量素子VCAP4の静電容量の変化は+ΔCとなる。そして、可変容量素子VCAP3には、第2変調信号が印加され、かつ、可変容量素子VCAP4には、第2変調信号とは逆相の第1変調信号が印加されていることを考慮すると、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4からなる容量対の全体では、−ΔC−(+ΔC)=−2ΔCの静電容量の変化が生じる。
次に、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2からなる容量対の静電容量の変化(2ΔC)は、チャージアンプ101aによって、電圧値(2ΔCV/Cf)の電圧信号に変換される。同様に、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4からなる容量対の静電容量の変化(−2ΔC)は、チャージアンプ101bによって、電圧値(−2ΔCV/Cf)の電圧信号に変換される。
その後、アンプ102によって、電圧値(2ΔCV/Cf)の電圧信号と電圧値(−2ΔCV/Cf)の電圧信号との差分が取られて、アンプ102から電圧値(4ΔCV/Cf)の電圧信号が出力される。このアンプ102から出力された電圧信号は、アナログフィルタ103に入力して、雑音成分が除去される。そして、アナログフィルタ103で雑音成分が除去された電圧信号は、A/D変換器104でデジタル電圧信号に変換される。
このデジタル電圧信号は、DCサーボ制御部105に入力し、DCサーボ制御部105において、センサエレメントの2組のDCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2、DCS3、DCS4)に印加するサーボ電圧の直流電圧成分が決定され、この決定されたサーボ電圧の直流電圧成分が2組のDCサーボ容量対に印加される。これにより、2組のDCサーボ容量対のそれぞれに、重力加速度を打ち消す静電気力が発生することになる。
また、A/D変換器104でA/D変換されたデジタル電圧信号は、復調器106に入力し、復調器106において、デジタル電圧信号と変調クロックとに基づいて、デジタル電圧信号の復調処理が行なわれる。これにより、A/D変換部104から入力したデジタル電圧信号から微小振動加速度に対応した信号が抽出される。そして、ACサーボ制御部107は、この微小振動加速度に対応する信号を入力し、ACサーボ制御部107によって、センサエレメントの2組のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2、ACS3、ACS4)に印加するサーボ電圧の交流電圧成分が決定される。
その後、1ビット量子化器108によって、ACサーボ制御部107で決定されたサーボ電圧の交流電圧成分が1ビットに量子化される。そして、1ビット量子化器108の出力は、ローパスフィルタ(DLPF)110に出力され、ローパスフィルタ110によって、1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分から高周波成分(量子化誤差)が除去される。これにより、最終的に加速度センサから1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分が出力され、この出力に基づいて、センサエレメントに印加されている微小振動加速度が算出されることになる。
また、1ビット量子化器108の出力は、1ビットD/A変換器109に入力される。そして、この1ビットD/A変換器109によって、1ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分がアナログ電圧(例えば、±5V、あるいは、0V/10V)に変換される。そして、このアナログ電圧は、2組のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2、ACS3、ACS4)に印加される。
このようにして、2組のACサーボ容量対のそれぞれに、微小振動加速度を打ち消す静電気力が発生することになる。この結果、センサエレメントに印加される加速度(重力加速度+微小振動加速度)を打ち消す静電気力がセンサエレメントの質量体MSに加わり、これによって、加速度に起因する質量体MSの変位が抑制されることになる。
以上のことから、本実施の形態2における加速度センサによれば、センサエレメントの検出容量部によって、加速度を静電容量の変化として捉える検出動作を実施しながら、サーボ容量部にサーボ電圧を印加するサーボ動作が行なわれることになる。つまり、本実施の形態2における加速度センサによれば、加速度の検出動作と、質量体MSの変位を打ち消すサーボ動作とを同時に動作させることができる。
<実施の形態2における特徴>
次に、本実施の形態2における特徴点について説明する。本実施の形態2における第1特徴点は、質量体MSに検出容量部(可変容量素子VCAP1〜VCAP4)を設けるとともに、質量体MSに検出容量部とは別の構成要素として、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4)を設けている点にある(図5参照)。これにより、上述したように、加速度の検出動作と、質量体MSの変位を打ち消すサーボ動作とを同時に動作させることができる。
例えば、加速度センサには、検出容量部とサーボ容量部とを兼用する容量素子を設けることにより、加速度センサの小型化を図る技術がある。この技術では、検出容量部とサーボ容量部とを共用しているため、検出容量部およびサーボ容量部として機能する容量素子に対して、時分割処理によって、検出動作とサーボ動作を交互に繰り返す必要がある。さらには、時分割処理として、検出動作とサーボ動作との間にリセット動作を挟む技術もある。ところが、検出容量部およびサーボ容量部として機能する容量素子を設け、この容量素子に対し、時分割処理によって、検出動作とサーボ動作を繰り返す技術では、以下に示す改善の余地が存在することを本発明者は新たに見出したので、この点について説明する。
(1)すなわち、時分割処理を行なう場合、検出動作の信号処理帯域を維持しようとすると、検出動作とサーボ動作とを交互に繰り返す技術では、加速度センサの内部動作速度が2倍となり、さらには,リセット動作を加える技術では、加速度センサの内部動作速度が4倍となる。このことは、アンプやフィルタやA/D変換器などのアナログ回路と論理回路とサーボ制御部の消費電力が増加することを意味する。つまり、時分割処理を行なう技術では、検出容量部およびサーボ容量部の両方として機能する容量素子を設けることにより、加速度センサの小型化を図ることができる一方、同等の性能を維持しようとすると、加速度センサの消費電力が増加することになるのである。
(2)次に、時分割処理では、検出動作とサーボ動作とを切り換える必要があるため、検出動作とサーボ動作を切り換えるスイッチング動作が必要となる。このことは、時分割処理を行なう技術では、スイッチング動作に起因するサンプリング雑音(kT/C雑音、kはボルツマン定数)が不可避的に存在することを意味し、これによって、雑音密度が増加することになる。つまり、時分割処理を行なう技術では、必然的にサンプリング雑音が不可避的に存在し、これによって、加速度センサの雑音の増大を招くことになる。言い換えれば、時分割処理を行なう技術では、ノイズのレベルが大きくなることから、S/N比が劣化しやすく、加速度の検出精度が低下するおそれがある。
(3)さらに、時分割処理を行なう場合、実効的な静電気力を確保するために、サーボ電圧を高めるか、あるいは、容量素子の静電容量を増加させる必要がある。この点に関し、サーボ電圧を高めるためには、高電圧低雑音回路を使用する必要があるが、この高電圧低雑音回路の設計が困難であり、また、そもそも、高電圧低雑音回路を構成するMOSFETの耐圧を確保することが困難となる。一方、容量素子の静電容量を増加させるということは、容量素子の電極面積を増加させることを意味し、このことは、そもそも、時分割処理によって、検出容量部とサーボ容量部とを兼用することにより、容量素子の小型化を図るという設計思想と逆行するものであり、検出容量部とサーボ容量部とを共用することによる小型化のメリットが失われてしまうことになる。
以上のことから、検出容量部およびサーボ容量部の両方として機能する容量素子を設け、この容量素子に対し、時分割処理によって、検出動作とサーボ動作を繰り返す技術では、上述したような改善の余地が存在するのである。
これに対し、本実施の形態2における加速度センサでは、例えば、図5に示すように、質量体MSに検出容量部とは別の構成要素として、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4)を設けている(第1特徴点)。これにより、本実施の形態2における加速度センサによれば、加速度の検出動作と、質量体MSの変位を打ち消すサーボ動作とを同時に動作させることができる。すなわち、本実施の形態2における加速度センサによれば、質量体MSに検出容量部とは別の構成要素として、サーボ容量部を設けているという第1特徴点によって、検出動作とサーボ動作の同時動作が可能となり、検出動作とサーボ動作を時分割処理で行なう必要がなくなることになる。この結果,本実施の形態2における加速度センサによれば、時分割処理を採用することに起因する改善の余地の顕在化を抑制することができる。つまり、本実施の形態2における加速度センサによれば、時分割処理に起因する(1)消費電力の増加や(2)加速度の検出精度の低下を抑制することができ、この結果、消費電力の増加を招くことなく、S/N比の高い高感度な加速度センサを提供することができる。
特に、本実施の形態2では、例えば、図5に示すように、質量体MSに検出容量部とは別の構成要素として、サーボ容量部を設けているだけでなく、サーボ容量部を直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4とに分離して構成している。これにより、本実施の形態2によれば、サーボ容量部を直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4とに独立別個の電圧を印加することができる。このことから、本実施の形態2によれば、サーボ電圧の直流電圧成分とサーボ電圧の交流電圧成分とを個別に制御することができる。このように、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4を独立分離することにより、微小振動加速度に対応したサーボ電圧の交流電圧成分にオフセット電圧を印加する必要がなくなる。このことは、1ビットD/A変換器109からの出力電圧を低減することができるとともに、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4の静電容量を低減することができることを意味する。したがって、本実施の形態2によれば、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4の充放電に費やす消費電力を低減することができる。このことから、本実施の形態2によれば、サーボ容量部を直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS4とに分離して構成している点と、消費電力が増加する時分割処理を採用しない点との相乗要因によって、本実施の形態2における加速度センサによれば、大幅な消費電力の低減を図ることができる。
続いて、本実施の形態2における第2特徴点は、センサエレメントに形成されている検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されている点にある。具体的には、図5に示すように、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2とは、チャージアンプ101aの入力(反転入力)と電気的に接続されている。一方、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2は、互いに電気的に接続され、かつ、端子TE1に接続されている。つまり、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2は、チャージアンプ101aの入力と電気的に接続されていない。言い換えれば、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2は、チャージアンプ101aの入力と電気的に分離(絶縁)されている。したがって、検出容量部(可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2)と、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2)とは、電気的に分離(絶縁)されていることになる。
同様に、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4とは、チャージアンプ101bの入力(反転入力)と電気的に接続されている。一方、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4は、互いに電気的に接続され、かつ、端子TE2に接続されている。つまり、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4は、チャージアンプ101bの入力と電気的に接続されていない。言い換えれば、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4は、チャージアンプ101bの入力と電気的に分離(絶縁)されている。したがって、検出容量部(可変容量素子VCAP3および可変容量素子VCAP4)と、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4)とは、電気的に分離(絶縁)されていることになる。
これにより、本実施の形態2によれば、以下に示す利点を得ることができるので、この利点について説明する。すなわち、検出容量部には、変調信号が印加されているが、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されている場合、この変調信号がサーボ容量部を介して、図5に示すDCサーボ制御部105や1ビットD/A変換器109側へ漏洩するおそれがある。つまり、サーボ容量部は、容量素子から構成されており、容量素子は、交流信号を通過させることから、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されている場合には、検出容量部に印加される変調信号の一部がサーボ容量部を介して、ASICの回路内に漏洩することになる。この場合、漏洩した変調信号はノイズの原因となり、これによって、加速度の検出感度が低下するおそれがある。
この点に関し、本実施の形態2では、センサエレメントに形成されている検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されている(第2特徴点)。したがって、本実施の形態2によれば、検出容量部に印加されている変調信号がサーボ容量部を介して、ASIC内に漏洩することを抑制することができる。このことは、変調信号の漏洩に起因するノイズの発生を抑制できることを意味し、この結果、本実施の形態2によれば、高いS/N比を維持できることになり、加速度の検出感度の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態2における第2特徴点によれば、以下に示す利点も得ることができる。例えば、加速度が印加されて、質量体MSが変位すると、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP1および可変容量素子VCAP2の静電容量が変化するとともに、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2の静電容量も変化する。したがって、検出容量部(可変容量素子VCAP1、VCAP2)とサーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2)とが電気的に接続されていると、チャージアンプ101aには、検出容量部の静電容量の変化に基づく電荷量の移動だけでなく、サーボ容量部の静電容量の変化に基づく電荷量の移動も生じる。このことは、チャージアンプ101aで変換される電圧信号には、検出容量部の静電容量の変化に基づくシグナル成分(2ΔCV/Cf)とともに、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N1)も重畳されることになる。
同様に、加速度が印加されて、質量体MSが変位すると、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP3および可変容量素子VCAP4の静電容量が変化するとともに、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4の静電容量も変化する。したがって、検出容量部(可変容量素子VCAP3および可変容量素子VCAP4)とサーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4)とが電気的に接続されているとする。この場合、チャージアンプ101bには、検出容量部の静電容量の変化に基づく電荷量の移動だけでなく、サーボ容量部の静電容量の変化に基づく電荷量の移動も生じることになる。このことは、チャージアンプ101bで変換される電圧信号には、検出容量部の静電容量の変化に基づくシグナル成分(−2ΔCV/Cf)とともに、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N2)も重畳されることになる。
ここで、本実施の形態2においても、前記実施の形態1と同様に、アンプ102によって、チャージアンプ101aから出力される電圧信号と、チャージアンプ101bから出力される電圧信号との差分を取る差分構成が採用されている。したがって、チャージアンプ101aから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(N1)と、チャージアンプ101bから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(N2)とは引き算される。このとき、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2)と、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4)とが、ほぼ同等の構成をしていると考えられる。このことから、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2)の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N1)と、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4)の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N2)とは同相で等しいと考えられる。したがって、上述した差分構成が採用されていると、チャージアンプ101aから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(N1)と、チャージアンプ101bから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(N2)とはキャンセルされる。つまり、上述した差分構成が採用されている場合、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されていても、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分はキャンセルされるため、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分が大きく問題点として顕在化する可能性は低い。
ただし、例えば、加工精度のばらつきなどによって、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1〜DCS2および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1〜ACS2)と、サーボ容量部(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3〜DCS4および交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3〜ACS4)とが、多少なりとも異なる構成をしていると考えることが現実的である。この場合、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されていると、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分が重畳されることになるが、一般的に、一方のサーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N1)と、他方のサーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分(N2)とは異なる値になると考えられる。したがって、たとえ、上述した差分構成を採用したとしても、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されていると、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分は完全にはキャンセルされないため、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分が問題点として顕在化する可能性がある。
この点に関し、本実施の形態2では、センサエレメントに形成されている検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されている(第2特徴点)。したがって、本実施の形態2によれば、そもそも、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されていることから、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分は、チャージアンプの出力には重畳しないことになる。すなわち、本実施の形態2によれば、第2特徴点により、サーボ容量部の静電容量の変化に起因する電荷量の移動がチャージアンプの入力に混入することはなく、この結果、チャージアンプから出力される電圧信号には、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分が重畳しないのである。このため、本実施の形態2によれば、たとえ、加工精度のばらつきなどによって、一方のサーボ容量部と、他方のサーボ容量部とが、多少なりとも異なる構成をしていても、サーボ容量部の静電容量の変化に基づくノイズ成分が問題点として顕在化することを抑制することができるのである。これにより、本実施の形態2における加速度センサによれば、高いS/N比を維持できることになり、加速度の検出感度の向上を図ることができるのである。
本実施の形態2における第2特徴点によれば、さらに、以下に示す利点を得ることができる。例えば、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されている場合、必然的に、サーボ容量部がチャージアンプの入力と電気的に接続されることになる。この場合、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧が、チャージアンプの入力に混入することを意味し、これによって、チャージアンプから出力される電圧信号に、サーボ電圧の混入に起因するノイズ成分が重畳することになる。
したがって、一方のチャージアンプ101aから出力される電圧信号に、サーボ電圧の混入に起因するノイズ成分(NS1)が含まれ、かつ、他方のチャージアンプ101bから出力される電圧信号に、サーボ電圧の混入に起因するノイズ成分(NS2)が含まれる。ただし、上述した差分構成を採用している場合には、一方のチャージアンプ101aから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(NS1)と、他方のチャージアンプ101bから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(NS2)とが引き算される。
このとき、一方のサーボ容量部と、他方のサーボ容量部とが、ほぼ同等の構成をしていると考えられる場合には、一方のサーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分(NS1)と、他方のサーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分(NS2)とは同相で等しいと考えることができる。したがって、上述した差分構成が採用されていると、チャージアンプ101aから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(NS1)と、チャージアンプ101bから出力される電圧信号に含まれるノイズ成分(NS2)とはキャンセルされる。
ただし、例えば、加工精度のばらつきなどによって、一方のサーボ容量部と、他方のサーボ容量部とが、多少なりとも異なる構成をしていると考えることが現実的である。この場合、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されていると、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分が重畳されることになるが、一般的に、一方のサーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分(NS1)と、他方のサーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分(NS2)とは異なる値になると考えられる。したがって、たとえ、上述した差分構成を採用したとしても、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に接続されていると、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分は完全にはキャンセルされないため、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分が問題点として顕在化する可能性がある。
この点に関し、本実施の形態2では、センサエレメントに形成されている検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されている(第2特徴点)。したがって、本実施の形態2によれば、そもそも、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されていることから、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分は、チャージアンプの出力には重畳しないことになる。すなわち、本実施の形態2によれば、第2特徴点により、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧がチャージアンプの入力に混入することはなく、この結果、チャージアンプから出力される電圧信号には、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分が重畳しないのである。このため、本実施の形態2によれば、たとえ、加工精度のばらつきなどによって、一方のサーボ容量部と、他方のサーボ容量部とが、多少なりとも異なる構成をしていても、サーボ容量部に印加されるサーボ電圧の混入に基づくノイズ成分が問題点として顕在化することを抑制することができるのである。これにより、本実施の形態2における加速度センサによれば、高いS/N比を維持できることになり、加速度の検出感度の向上を図ることができるのである。
<実施の形態2におけるセンサエレメントのデバイス構造>
次に、本実施の形態2におけるセンサエレメントのデバイス構造について説明する。
図6は、本実施の形態2における加速度センサのセンサエレメントSE1のデバイス構造を示す断面図である。図6において、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1は、キャビティCAVの内部に、z方向の加速度に対して変位する質量体MSを備えている。この質量体MSは、互いに電気的に分離された可動部VU1、VU2、VU3、VU4と、可動部VU1と可動部VU2とを機械的に接続する機械的接合部MCU1と、可動部VU2と可動部VU3とを機械的に接続する機械的接合部MCU2と、可動部VU3と可動部VU4とを機械的に接続する機械的接合部MCU3とを有している。
そして、質量体MSは、絶縁層ILと絶縁層ILの表面上に形成された導体層CL1と絶縁層ILの裏面上に形成された導体層CL2とからなるSOI層に形成されている。例えば、導体層CL1および導体層CL2は、シリコンからなる半導体層から形成され、絶縁層ILは、酸化シリコン層から形成されている。
具体的に、可動部VU1は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VEL1と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VEL2とを含む。つまり、可動電極VEL1と可動電極VEL2とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG1によって、可動電極VEL1と可動電極VEL2とは電気的に接続されていることになる。
可動部VU2は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VSEL1と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VSEL2とを含む。つまり、可動電極VSEL1と可動電極VSEL2とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG2によって、可動電極VSEL1と可動電極VSEL2とは電気的に接続されていることになる。
可動部VU3は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VEL3と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VEL4とを含む。つまり、可動電極VEL3と可動電極VEL4とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG3によって、可動電極VEL3と可動電極VEL4とは電気的に接続されていることになる。
可動部VU4は、導体層CL1を加工して形成された可動電極VSEL3と、導体層CL2を加工して形成された可動電極VSEL4とを含む。つまり、可動電極VSEL3と可動電極VSEL4とに挟まれるように絶縁層ILが形成されており、この絶縁層ILを貫通するプラグPLG4によって、可動電極VSEL3と可動電極VSEL4とは電気的に接続されていることになる。
SOI層の導体層CL1には、エッチングにより導体層CL1の一部分を除去することにより、分離部ISU11が形成されている。これにより、導体層CL1に形成された可動部VU1の可動電極VEL1と、導体層CL1に形成された可動部VU2の可動電極VSEL1とは、分離部ISU11によって分離されることになる。
一方、SOI層の導体層CL2には、エッチングにより導体層CL2の一部分を除去することにより、分離部ISU12および分離部ISU13が形成されている。これにより、導体層CL2に形成された可動部VU1の可動電極VEL2と、導体層CL2に形成された可動部VU2の可動電極VSEL2とは、分離部ISU12および分離部ISU13によって分離される。そして、SOI層の導体層CL2には、分離部ISU12と分離部ISU13とに挟まれるように導体層CL2で形成された機械的接合部MCU1が形成されている。これにより、SOI層に形成されている可動部VU1と可動部VU2とは、分離部ISU11と分離部ISU12と分離部ISU13で電気的に分離されながらも、機械的接合部MCU1によって、機械的に接続されていることになる。このとき、図6に示すように、断面視において、機械的接合部MCU1上に分離部ISU11が形成され、機械的接合部MCU1は、分離部ISU11を内包している。また、機械的接合部MCU1は、分離部ISU12と分離部ISU13で挟まれるように設けられている。この機械的接合部MCU1は、z方向と直交するx方向に分離された可動部VU1と可動部VU2とを機械的に接続している。
SOI層の導体層CL1には、エッチングにより導体層CL1の一部分を除去することにより、分離部ISU21が形成されている。これにより、導体層CL1に形成された可動部VU2の可動電極VSEL1と、導体層CL1に形成された可動部VU3の可動電極VEL3とは、分離部ISU21によって分離されることになる。
一方、SOI層の導体層CL2には、エッチングにより導体層CL2の一部分を除去することにより、分離部ISU22および分離部ISU23が形成されている。これにより、導体層CL2に形成された可動部VU2の可動電極VSEL2と、導体層CL2に形成された可動部VU3の可動電極VEL4とは、分離部ISU22および分離部ISU23によって分離される。そして、SOI層の導体層CL2には、分離部ISU22と分離部ISU23とに挟まれるように導体層CL2で形成された機械的接合部MCU2が形成されている。これにより、SOI層に形成されている可動部VU2と可動部VU3とは、分離部ISU21と分離部ISU22と分離部ISU23で電気的に分離されながらも、機械的接合部MCU2によって、機械的に接続されていることになる。このとき、図6に示すように、断面視において、機械的接合部MCU2上に分離部ISU21が形成され、機械的接合部MCU2は、分離部ISU21を内包している。また、機械的接合部MCU2は、分離部ISU22と分離部ISU23で挟まれるように設けられている。この機械的接合部MCU2は、z方向と直交するx方向に分離された可動部VU2と可動部VU3とを機械的に接続している。
SOI層の導体層CL1には、エッチングにより導体層CL1の一部分を除去することにより、分離部ISU31が形成されている。これにより、導体層CL1に形成された可動部VU3の可動電極VEL3と、導体層CL1に形成された可動部VU4の可動電極VSEL3とは、分離部ISU31によって分離されることになる。
一方、SOI層の導体層CL2には、エッチングにより導体層CL2の一部分を除去することにより、分離部ISU32および分離部ISU33が形成されている。これにより、導体層CL2に形成された可動部VU3の可動電極VEL4と、導体層CL2に形成された可動部VU4の可動電極VSEL4とは、分離部ISU32および分離部ISU33によって分離される。そして、SOI層の導体層CL2には、分離部ISU32と分離部ISU33とに挟まれるように導体層CL2で形成された機械的接合部MCU3が形成されている。これにより、SOI層に形成されている可動部VU3と可動部VU4とは、分離部ISU31と分離部ISU32と分離部ISU33で電気的に分離されながらも、機械的接合部MCU3によって、機械的に接続されていることになる。このとき、図6に示すように、断面視において、機械的接合部MCU3上に分離部ISU31が形成され、機械的接合部MCU3は、分離部ISU31を内包している。また、機械的接合部MCU3は、分離部ISU32と分離部ISU33で挟まれるように設けられている。この機械的接合部MCU3は、z方向と直交するx方向に分離された可動部VU3と可動部VU4とを機械的に接続している。
可動部VU1と機械的接合部MCU1は、x方向およびy方向において、オーバーラップする領域がある。本実施の形態2では、そのオーバーラップする領域に、xy面に広がる絶縁層ILが配置されている。これにより、可動部VU1と機械的接合部MCU1とは、機械的に連結されて、電気的に分離されている。
可動部VU2と機械的接合部MCU1は、x方向およびy方向において、オーバーラップする領域がある。本実施の形態2では、そのオーバーラップする領域に、xy面に広がる絶縁層ILが配置されている。これにより、可動部VU2と機械的接合部MCU1とは、機械的に連結されて、電気的に分離されている。
以上のことから、可動部VU1と可動部VU2とは、分離部ISU11で電気的に分離されながら、機械的接合部MCU1で機械的に接続されている。そして、可動部VU1と機械的接合部MCU1の間には、絶縁層ILが介在し、かつ、可動部VU2と機械的接合部MCU2の間にも、絶縁層ILが介在することから、可動部VU1と機械的接合部MCU1とは、絶縁物質を介して機械的に接続されているということができるとともに、可動部VU2と機械的接合部MCU1も、絶縁物質を介して機械的に接続されているということができる。同様に、可動部VU2と機械的接合部MCU2とは、絶縁物質を介して機械的に接続され、かつ、可動部VU3と機械的接合部MCU2も、絶縁物質を介して機械的に接続されている。さらに、可動部VU3と機械的接合部MCU3とは、絶縁物質を介して機械的に接続され、かつ、可動部VU4と機械的接合部MCU3も、絶縁物質を介して機械的に接続されている。
続いて、図6に示すように、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1は、可動部VU1〜VU4と機械的接合部MCU1〜MCU3とが形成されたSOI層を空間(キャビティ)を介して囲むようにキャップ部およびベース部からなる固定部FUが形成されている。そして、この固定部FUには、固定電極FEL1と、固定電極FEL2と、固定電極FEL3と、固定電極FEL4と、固定電極DSEL1と、固定電極DSEL2と、固定電極DSEL3と、固定電極DSEL4と、固定電極ASEL1と、固定電極ASEL2と、固定電極ASEL3と、固定電極ASEL4とが形成されている。
具体的には、図6に示すように、固定電極FEL1は、可動部VU1の可動電極VEL1と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極FEL2は、可動部VU1の可動電極VEL2と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。固定電極FEL3は、可動部VU3の可動電極VEL3と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極FEL4は、可動部VU3の可動電極VEL4と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。同様に、固定電極DSEL1と固定電極ASEL1は、可動部VU2の可動電極VSEL1と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極DSEL2と固定電極ASEL2は、可動部VU2の可動電極VSEL2と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。固定電極DSEL3と固定電極ASEL3は、可動部VU4の可動電極VSEL3と対向するように固定部FUのキャップ部に配置され、かつ、固定電極DSEL4と固定電極ASEL4は、可動部VU4の可動電極VSEL4と対向するように固定部FUのベース部に配置されている。
これにより、本実施の形態2おけるセンサエレメントSE1では、可動部VU1と固定電極FEL1とによって、容量検出部を構成する可変容量素子VCAP1が形成され、かつ、可動部VU1と固定電極FEL2とによって、容量検出部を構成する可変容量素子VCAP2が形成される。同様に、可動部VU3と固定電極FEL3とによって、検出容量部の可変容量素子VCAP3が形成され、かつ、可動部VU3と固定電極FEL4とによって、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP4が形成される。
このとき、センサエレメントSE1に加速度が印加されて、質量体MSは変位する場合、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2のうち、一方の静電容量は増加する一方、他方の静電容量は減少するように構成されている。同様に、センサエレメントSE1に加速度が印加されて、質量体MSは変位する場合、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4のうち、一方の静電容量は増加する一方、他方の静電容量は減少するように構成されている。
また、可動部VU2と固定電極DSEL1とによって、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1が形成され、かつ、可動部VU2と固定電極DSEL2とによって、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS2が形成される。同様に、可動部VU4と固定電極DSEL3とによって、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3が形成され、かつ、可動部VU4と固定電極DSEL4とによって、サーボ容量部を構成する直流電圧印加用サーボ容量素子DCS4が形成される。さらに、可動部VU2と固定電極ASEL1とによって、サーボ容量部を構成する交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1が形成され、かつ、可動部VU2と固定電極ASEL2とによって、サーボ容量部を構成する交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2が形成される。同様に、可動部VU4と固定電極ASEL3とによって、サーボ容量部を構成する交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3が形成され、かつ、可動部VU4と固定電極ASEL4とによって、サーボ容量部を構成する交流電圧印加用サーボ容量素子ACS4が形成される。
以上のようにして、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1が構成されている。以下では、このように構成されている本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1の特徴点について説明する。
<実施の形態2におけるセンサエレメントの特徴>
本実施の形態2における第3特徴点は、質量体MSを構成する可動部VU1〜VU4をMEMS構造体の製造技術を使用して形成することを前提として、同一のSOI層を加工することにより形成している点にある。これにより、まず、前提事項によって、可動部VU1〜VU4のいずれもMEMS構造体として形成されるため、可動部VU1〜VU4の間の製造ばらつき(加工精度)を小さくすることができる。
さらに、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1では、同一のSOI層を加工することにより、可動部VU1〜VU4を形成している。したがって、可動部VU1〜VU4を別々の層として加工する場合よりも、可動部VU1〜VU4の製造ばらつきを小さくすることができる。
この点が本実施の形態2における第3特徴点であり、本実施の形態2によれば、上述した前提事項と第3特徴点との相乗効果によって、可動部VU1〜VU4の間の製造ばらつきを小さくすることができる。この結果、本実施の形態2によれば、例えば、図6に示す可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2からなる検出容量対の静電容量と、可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4からなる検出容量対の静電容量とのずれ(「不一致」)を抑制することができる。
さらに、本実施の形態2によれば、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS2からなるサーボ容量対の静電容量と、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS4からなるサーボ容量対の静電容量とのずれ(「不一致」)を抑制することができる。
同様に、本実施の形態2によれば、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2からなるサーボ容量対の静電容量と、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS4からなるサーボ容量対の静電容量とのずれ(「不一致」)を抑制することができる。
以上のことにより、本実施の形態2における加速度センサによれば、質量体MSを構成する可動部VU1〜VU4の製造ばらつきに起因する静電容量のずれ(「不一致」)を抑制することができ、静電容量のずれに起因するノイズを抑えることができる。この結果、本実施の形態2によれば、ノイズが少なく、高いS/N比を有する高感度な加速度センサを提供することができることになる。
続いて、本実施の形態2における第4特徴点は、可動部VU1〜VU4を同一のSOI層に形成する第3特徴点を前提として、さらに、可動部VU1〜VU4とを電気的に分離しながらも、機械的接合部MCU1〜MCU3によって、機械的に接続している点にある。これにより、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1によれば、図6に示す一方の検出容量対(可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2)の静電容量と、他方の検出容量対(可変容量素子VCAP3と可変容量素子VCAP4)の静電容量との間のずれ(「不一致」)を抑制することができる。さらに、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1によれば、図6に示す一方のDCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS2)の静電容量と、他方のDCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3と直流電圧印加用サーボ容量素子DCS4)の静電容量との間のずれ(「不一致」)を抑制することができる。同様に、本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1によれば、図6に示す一方のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2)の静電容量と、他方のACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS4)の静電容量との間のずれ(「不一致」)を抑制することができる。
例えば、図6に示すように、可動部VU1〜VU4が機械的接合部MCU1〜MCU3で接続されている場合、互いに電気的に分離されながらも可動部VU1〜VU4が機械的に一体的に形成されていることになる。これは、外部から慣性力が印加された場合でも、可動部VU〜VU4の導体層CL1に配置された可動電極(VEL1、VSEL1、VEL3、VSEL3)と、固定部FUのキャップ部に配置された固定電極(FEF1、DSEL1、ASEL1、FEL3,DSEL3、ASEL3)との間の電極間距離が、ほぼ等しくなるように、可動部VU1〜VU4が形成されることを意味する。同様に、可動部VU1〜VU4の導体層CL2に配置された可動電極(VEL2、VSEL2、VEL4、VSEL4)と固定部FUのベース部に配置された固定電極(FEL2、DSEL2、ASEL2、FEL4、DSEL4,ASEL4)との間の電極間距離が、ほぼ等しくなるように、可動部VU1〜VU4とが形成される。
本実施の形態2におけるセンサエレメントSE1には、加速度を静電容量の変化として捉える検出容量部と、サーボ電圧が印加されるサーボ容量部とが形成され、かつ、検出容量部とサーボ容量部とは、絶縁物質を介して機械的に接続されていることになる。つまり、本実施の形態2において、検出容量部とサーボ容量部とは、絶縁物質を介して機械的に接続されていることから、基本的に、検出容量部とサーボ容量部とは、電気的に分離されているということができる。ただし、検出容量部とサーボ容量部との間に絶縁物質が介在しているということは、検出容量部とサーボ容量部との間に寄生容量が形成されることを意味し、この結果、厳密に言えば、検出容量部とサーボ容量部とは、直流的には電気的に分離されていると言えるが、交流的には、寄生容量を介して繋がっているという解釈も可能である。しかし、本実施の形態2において、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているという趣旨は、設計思想的に検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されていることを意味するものであって、不可避的に存在する寄生容量の影響は無視して考えるものとする。つまり、たとえ、不可避的に寄生容量が存在する場合であっても、寄生容量が無視できるレベルであれば、本実施の形態2では、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているというものとする。例えば、本実施の形態2では、検出容量部の静電容量やサーボ容量部の静電容量は、10pF程度である一方、寄生容量の静電容量は、0.25pF程度である。したがって、寄生容量の静電容量は、検出容量部の静電容量やサーボ容量部の静電容量に比べて無視できる程度のレベルであり、検出容量部に印加される変調信号の周波数レベルでは、検出容量部とサーボ容量部とは、電気的に分離されているとみなすことができる。以上のことから、本実施の形態2における検出容量部とサーボ容量部とは、絶縁物質を介して機械的に接続され、電気的に分離されていることになる。
<変形例>(シーソ構造)
次に、本変形例におけるセンサエレメントSE2のデバイス構造について説明する。図7は、本変形例におけるセンサエレメントSE2のデバイス構造を示す図である。特に、図7(a)は、本変形例におけるセンサエレメントSE2のデバイス構造を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のA−A線での断面図であり、図7(c)は、図7(a)のB−B線での断面図である。
まず、図7(a)に示すように、本変形例におけるセンサエレメントSE2は、キャビティCAVを囲む固定部FUを有し、この固定部FUの内部に、質量体MS1が設けられている。この質量体MS1は、矩形形状の可動部VU1と、矩形形状の可動部VU2と、可動部VU1と可動部VU2に挟まれた可動部VU3とから構成されている。そして、可動部VU1と可動部VU2と可動部VU3は、電気的に分離されながら、機械的接合部によって機械的に接合されている。
図7(a)において、可動部VU1は、出力部(出力電極)OEL1と梁BM1を介して接続され、可動部VU2は、出力部(出力電極)OEL2と梁BM2を介して接続されている。さらに、可動部VU3は、端子TEと梁BM3を介して接続されている。
具体的に、図7(a)に示すように、平面視において、出力部OEL1は、可動部VU1の中央部に配置され、可動部VU1の左側部の質量と可動部VU1の右側部の質量とは相違するように構成されている。つまり、可動部VU1は、左側部に形成された可動部VU1(L)と右側部に形成された可動部VU1(R)から構成されている。また、平面視において、出力部OEL2は、可動部VU2の中央部に配置され、可動部VU2の左側部の質量と可動部VU2の右側部の質量とは相違するように構成されている。つまり、可動部VU2は、左側部に形成された可動部VU2(L)と右側部に形成された可動部VU2(R)から構成されている。同様に、平面視において、端子TEは、可動部VU3の中央部に配置され、可動部VU3の左側部の質量と可動部VU3の右側部の質量とは相違するように構成されている。つまり、可動部VU3は、左側部に形成された可動部VU3(L)と右側部に形成された可動部VU3(R)から構成されている。
図7(b)に示すように、可動部VU1(図7(a)参照)は、出力部OEL1を中心として、右側に配置される可動部VU1(R)と、左側に配置される可動部VU1(L)から構成されている。このとき、可動部VU1(R)および可動部VU1(L)は、絶縁層ILと導体層CL1と導体層CL2とからなるSOI層に形成されている。そして、可動部VU1(R)と可動部VU1(L)の両方とも、導体層CL1と導体層CL2とを加工することにより形成されているが、図7(b)に示すように、可動部VU1(L)のサイズは、可動部VU1(R)のサイズよりも小さくなるように加工されている。この結果、可動部VU1(R)の質量と可動部VU1(L)の質量とが相違することになる。具体的には、可動部VU1(L)の質量は、可動部VU1(R)の質量よりも軽くなる。このようにして、本変形例におけるセンサエレメントSE2では、中心部に配置された出力部OEL1を中心にして左右の可動部VU1(R)と可動部VU1(L)の質量とが相違する「シーソ構造」のセンサエレメントSE2が実現される。そして、可動部VU1(L)と対向するように固定電極FEL1が配置され、可動部VU1(R)と対向するように固定電極FEL2が配置されている。これにより、可動部VU1(L)の可動電極VEL1と固定電極FEL1によって、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP1が形成され、可動部VU1(R)の可動電極VEL2と固定電極FEL2によって、検出容量部を構成する可変容量素子VCAP2が形成される。
次に、図7(c)に示すように、可動部VU1(L)と可動部VU3(L)とは、電気的に分離されながら、機械的接合部MCU13によって接続され、可動部VU3(L)と可動部VU2(L)とは、電気的に分離されながら、機械的接合部MCU23によって接続されている。このとき、可動部VU1(L)には、可動電極VEL1が形成されている一方、固定部FUには、可動電極VEL1と対向するように固定電極FEL1が形成されている。これにより、可動部VU1(L)の可動電極VEL1と固定電極FEL1によって、可変容量素子VCAP1が形成されることになる。同様に、可動部VU2(L)には、可動電極VEL3が形成されている一方、固定部FUには、可動電極VEL3と対向するように固定電極FEL3が形成されている。これにより、可動部VU2(L)の可動電極VEL3と固定電極FEL3によって、可変容量素子VCAP3が形成されることになる。
また、可動部VU3(L)には、可動電極VSELが形成されている一方、固定部FUには、可動電極VSELと対向するように固定電極FSELが形成されている。これにより、可動部VU3(L)の可動電極VELと固定電極FSELによって、サーボ容量部を構成するサーボ容量素子SCAPが形成されることになる。以上のようにして、本変形例におけるセンサエレメントSE2が構成されていることになる。
本変形例におけるセンサエレメントSE2は、z方向に加速度が印加されると、質量体MS1はz方向に変位する。例えば、図7(b)において、−z方向と+z方向に振動する加速度が印加されると、可動部VU1(L)と可動部VU1(R)とがシーソ動作をする。このシーソ動作によって、例えば、可動部VU1(L)の可動電極VEL1と固定電極FEL1との電極間距離が狭まると、可動電極VU1(R)の可動電極VEL2と固定電極FEL2との電極間距離が広がることになる。一方、例えば、可動部VU1(L)の可動電極VEL1と固定電極FEL1との電極間距離が広がると、可動電極VU1(R)の可動電極VEL2と固定電極FEL2との電極間距離が狭まることになる。この結果、本変形例におけるセンサエレメントSE2によれば、可変容量素子VCAP1の静電容量の変化と、可変容量素子VCAP2の静電容量の変化とを逆特性にすることができる。
さらに、本変形例におけるセンサエレメントSE2では、可動部VU3にサーボ容量部が形成されている。したがって、本変形例によれば、センサエレメントSE2に印加される加速度を打ち消す静電気力をセンサエレメントSE2の質量体MS1に加えることができ、これによって、加速度に起因する質量体MS1の変位が抑制されることになる。
以上のことから、本変形例における加速度センサによれば、センサエレメントSE2の検出容量部によって、加速度を静電容量の変化として捉える検出動作を実施しながら、サーボ容量部にサーボ電圧を印加するサーボ動作が行なわれることになる。つまり、本変形例における加速度センサによっても、加速度の検出動作と、質量体MS1の変位を打ち消すサーボ動作とを同時に動作させることができる。
本変形例におけるセンサエレメントSE2に特有の利点としては、固定部FUのキャップ部側にだけ固定電極を設ければよい点と、SOI層にプラグを設けなくてもよい点を挙げることができる。この結果、本変形例におけるセンサエレメントSE2の構造が簡素化されることになり、これによって、本変形例によれば、センサエレメントSE2の製造が容易となる利点を得ることができる。
(実施の形態3)
図8は、本実施の形態3における加速度センサの構成を示す図である。図8において、本実施の形態3における加速度センサは、別々の質量体MS1と質量体MS2とを備えている点が、前記実施の形態2における加速度センサとの相違点である。
本実施の形態3において、質量体MS1には、可変容量素子VCAP1、VCAP2からなる検出容量部と、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2からなるサーボ容量部が形成されている。このとき、本実施の形態3においても、検出容量部とサーボ容量部とは、電気的に分離されている。すなわち、質量体MS1に設けられている検出容量部は、チャージアンプ101aの入力と電気的に接続されている一方、質量体MS1に設けられているサーボ容量部は、端子TE1と電気的に接続され、チャージアンプ101aの入力とは電気的に接続されていない。
同様に、質量体MS2には、可変容量素子VCAP3、VCAP4からなる検出容量部と、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3、DCS4と交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3、ACS4からなるサーボ容量部が形成されている。このとき、本実施の形態3においても、検出容量部とサーボ容量部とは、電気的に分離されている。すなわち、質量体MS2に設けられている検出容量部は、チャージアンプ101bの入力と電気的に接続されている一方、質量体MS2に設けられているサーボ容量部は、端子TE2と電気的に接続され、チャージアンプ101bの入力とは電気的に接続されていない。
以上のように構成されている本実施の形態3における加速度センサにおいても、前記実施の形態2と同様に、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているため、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプへの混入が抑制される。この結果、本実施の形態3における加速度センサにおいても、検出感度の向上を図ることができる。特に、本実施の形態3では、質量体MS1と質量体MS2とが分離されているため、質量体MS1に形成されている構成要素と質量体MS2に形成されている構成要素との間での寄生容量がほとんど存在しなくなることから、この観点からも、本実施の形態3における加速度センサによれば、検出感度の向上を図ることができる。
(実施の形態4)
図9は、本実施の形態4における加速度センサの構成を示す図である。図9において、本実施の形態4における加速度センサは、完全差動アンプからなるチャージアンプ101cを使用している点が、前記実施の形態2における加速度センサとの相違点である。すなわち、図5に示す前記実施の形態2における加速度センサでは、シングルエンドオペアンプからなるチャージアンプ101a、101bを使用している。これに対し、本実施の形態4における加速度センサでは、完全差動アンプからなるチャージアンプ101cを使用している。この構成であっても、本実施の形態4によれば、前記実施の形態2と同様に、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているため、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプへの混入が抑制される。この結果、本実施の形態4における加速度センサにおいても、検出感度の向上を図ることができる。特に、本実施の形態4によれば、C/V変換部として、1つの完全差動アンプからなるチャージアンプ101cを使用しているため、C/V変換部として、2つのシングルオペアンプを使用する前記実施の形態2の構成よりも消費電力を低減する観点から有利である。
(実施の形態5)
図10は、本実施の形態5における加速度センサの構成を示す図である。図10において、本実施の形態5における加速度センサは、前記実施の形態3の構成と前記実施の形態4の構成とを組み合わせた構成をしている。すなわち、本実施の形態5における加速度センサは、図10に示すように、別々の質量体MS1と質量体MS2とを有するとともに、完全差動アンプからなるチャージアンプ101cを使用している。
このように構成されている本実施の形態5における加速度センサにおいても、前記実施の形態2と同様に、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているため、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプ101cへの混入が抑制される。この結果、本実施の形態5における加速度センサにおいても、検出感度の向上を図ることができる。
特に、本実施の形態5では、前記実施の形態3と同様に、質量体MS1と質量体MS2とが分離されているため、質量体MS1に形成されている構成要素と質量体MS2に形成されている構成要素との間での寄生容量がほとんど存在しなくなることから、この観点からも、本実施の形態5における加速度センサによれば、検出感度の向上を図ることができる。さらに、本実施の形態5では、前記実施の形態4と同様に、C/V変換部として、1つの完全差動アンプからなるチャージアンプ101cを使用しているため、C/V変換部として、2つのシングルオペアンプを使用する前記実施の形態2の構成よりも消費電力を低減する観点から有利である。
(実施の形態6)
図11は、本実施の形態6における加速度センサの構成を示す図である。図11において、本実施の形態6における加速度センサは、多値量子化器111と多値D/A変換器112とを使用している点が、前記実施の形態2における加速度センサとの相違点である。すなわち、図5に示す前記実施の形態2における加速度センサでは、1ビット量子化器108と1ビットD/A変換器109とを使用しているのに対し、本実施の形態6における加速度センサでは、多値量子化器111と多値D/A変換器112とを使用している。これにより、質量体MSには、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1a、ACS1bと交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2a、ACS2bからなる一方のACサーボ容量対と、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3a、ACS3bと交流電圧印加用サーボ容量素子ACS4a、ACS4bからなる他方のACサーボ容量対とが形成される。
例えば、上述した一方のACサーボ容量対に着目し、多値量子化器111によって、ACサーボ制御部107で決定されたサーボ電圧の交流電圧成分が2ビットに量子化される場合を考える。この場合、多値量子化器111の出力は、多値D/A変換器112に入力される。そして、この多値D/A変換器112によって、2ビットに量子化されたサーボ電圧の交流電圧成分がアナログ電圧に変換される。例えば、2ビット(「00」、「01」、「10」、「11」)に対応して、上位のビットが「1」の場合、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1aに第1交流電圧成分を印加し、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2aに逆位相の第1交流電圧成分(逆位相)を印加する。一方、下位のビットが「1」の場合、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1bに第2交流電圧成分を印加し、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS2bに逆位相の第2交流電圧成分(逆位相)を印加する。
これにより、本実施の形態6によれば、センサエレメントに印加される微小振動加速度を打ち消す静電気力の大きさをきめ細やかに制御することができる。
なお、例えば、本実施の形態6では、図11に示すように、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2と端子TE1aが電気的に接続され、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1a、ACS2aと端子TE1bが電気的に接続されている。また、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1b、ACS2bと端子TE1cが電気的に接続されている。
そして、端子TE1aと端子TE1bと端子TE1cとは、互いに電気的に分離されている。このことから、DCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2)と、ACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1a、ACS2a)と、ACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1b、ACS2b)とは、互いに電気的に分離されていることになる。
同様に、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3、DCS4と端子TE2aが電気的に接続され、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3a、ACS4aと端子TE2bが電気的に接続されている。また、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3b、ACS4bと端子TE2cが電気的に接続されている。
そして、端子TE2aと端子TE2bと端子TE2cとは、互いに電気的に分離されている。このことから、DCサーボ容量対(直流電圧印加用サーボ容量素子DCS3、DCS4)と、ACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3a、ACS4a)と、ACサーボ容量対(交流電圧印加用サーボ容量素子ACS3b、ACS4b)とは、互いに電気的に分離されていることになる。
以上のことから、本実施の形態6では、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているだけでなく、サーボ容量部を構成する構成要素同士も電気的に分離されていることになる。この結果、本実施の形態6によれば、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプへの混入が抑制されるだけでなく、サーボ容量部の構成要素同士間での信号の混入も抑制することができる。これにより、本実施の形態p6における加速度センサによれば、検出動作の精度とともにサーボ動作の精度も高めることができ、これによって、加速度の検出感度を向上することができる。
(実施の形態7)
図12は、本実施の形態7における加速度センサの構成を示す図である。図12において、本実施の形態7における加速度センサは、別々の質量体MS1と質量体MS2とを備えている点が、前記実施の形態6における加速度センサとの相違点である。
以上のように構成されている本実施の形態7における加速度センサにおいても、前記実施の形態6と同様に、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているだけでなく、サーボ容量部を構成する構成要素同士も電気的に分離されていることになる。この結果、本実施の形態6によれば、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプへの混入が抑制されるだけでなく、サーボ容量部の構成要素同士間での信号の混入も抑制することができる。さらに、本実施の形態7では、質量体MS1と質量体MS2とが分離されているため、質量体MS1に形成されている構成要素と質量体MS2に形成されている構成要素との間での寄生容量がほとんど存在しなくなることから、この観点からも、本実施の形態7における加速度センサによれば、さらなる加速度の検出感度を向上することができる。
(実施の形態8)
図13は、本実施の形態8における加速度センサの構成を示す図である。図13において、本実施の形態8における加速度センサでは、検出容量部が、可変容量素子VCAP1と可変容量素子VCAP2から構成され、サーボ容量部が、直流電圧印加用サーボ容量素子DCS1、DCS2からなるDCサーボ容量対と、交流電圧印加用サーボ容量素子ACS1、ACS2からなるACサーボ容量対から構成されている。
このように構成されている本実施の形態8における加速度センサにおいても、検出容量部とサーボ容量部とが電気的に分離されているため、サーボ容量部に起因するノイズのチャージアンプ101aへの混入が抑制される。この結果、本実施の形態8における加速度センサにおいても、検出感度の向上を図ることができる。特に、本実施の形態8における加速度センサは、差動検出を行なわない単純なシングル構造となっているため、加速度センサの低消費電力化や小型化を図ることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
前記実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、さらには、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、前記実施の形態では、サーボ容量部を構成するサーボ容量対として、DCサーボ容量対とACサーボ容量対とを有する構成を説明したが、本発明は、これに限らず、ACサーボ容量対だけを有する構成にも適用可能である。この場合、例えば、DCサーボ制御部は不要となり、ACサーボ制御部等を有すればよい。ACサーボ容量対とACサーボ制御部によって、入力加速度信号の直流電圧成分と交流電圧成分にまとめて対応することができる。
なお、前記実施の形態では、物理量を静電容量の変化として捉え、静電容量の変化を打ち消す静電気力を発生させるサーボ電圧に基づいて、物理量を検出する慣性センサとして、加速度を検出する加速度センサを例に挙げて説明したが、本発明の技術的思想は、これに限らず、例えば、角速度を検出する角速度センサにも適用することができる。