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JP6474876B2 - 豆乳含有水中油滴型乳化物及びその製造方法 - Google Patents

豆乳含有水中油滴型乳化物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、生クリーム(コンパウンドクリーム)やホイップドクリームなどの乳製品の代替品として利用できる豆乳含有水中油滴型乳化物及びその製造方法に関する。
従来から、製菓、製パン、調理加工などに利用される生クリーム(コンパウンドクリーム)などの水中油滴型乳化組成物としては、牛乳、乳脂肪、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清ミネラル、乳糖などの乳成分を含む組成物(乳製品)が主流であった。しかし、近年の健康志向に伴って、動物性である乳成分の代わりに、植物性である豆乳を含む水中油滴型乳化組成物も提案されている。
特開昭60−153757号公報(特許文献1)には、大豆無脂固形分を豆乳中に1.5〜5重量%含む豆乳50〜70重量%と、乳化剤を0.5〜5重量%含み、融点20〜40℃の油脂組成物50〜30重量%とを混合、均質化した豆乳ホイップドクリームが開示されている。この文献の実施例では、前記油脂としては、硬化菜種油及び硬化ヤシ油に乳化剤を混合融解した油脂組成物(融点34℃)が調製されている。
しかし、この組成物では、レトルト、ボイル、冷凍(解凍)などの加熱処理や保存処理を施すと、凝集、分離、離水、風味低下、褐変などの品質劣化が生じる。特に、豆乳は、低温での安定性が低いため、冷凍及び解凍処理による凝集や油脂分離、離水などの品質劣化が激しい。また、この文献には、生クリームは開示されていない。
特許第4210644号公報(特許文献2)には、豆乳と、HLB12以上、グリセリンの重合度5〜10及び構成脂肪酸がオレイン酸及び/又は炭素数12〜14の飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルとを含むコーヒーホワイトナーが開示されている。
しかし、このコーヒーホワイトナーでは、大豆由来の青臭さが残存する上に、乳成分を含むコーヒーホワイトナーのようなコクや風味がなかった。また、この文献にも、生クリームは開示されていない。
特開昭60−153757号公報(特許請求の範囲、実施例) 特許第4210644号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、乳成分の代わりに豆乳を含んでいても、コク及び風味に優れ、過酷な条件で処理や保存しても、品質劣化を抑制できる水中油滴型乳化物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、豆乳を含んでいても青臭さが低減され、冷凍保存しても、凝集や油脂分離、離水などを抑制でき、乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、豆乳に、25〜35℃の融点を有し、かつヤシ油及びパーム油を含む油脂類を配合することにより、乳成分の代わりに豆乳を含んでいても、コク及び風味に優れ、過酷な条件で処理や保存しても、品質劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の水中油滴型乳化物は、豆乳(A)及び油脂類(B)を含む水中油滴型乳化物であって、前記油脂類(B)が、25〜35℃の融点を有し、かつヤシ油及びパーム油を含む。本発明の水中油滴型乳化物において、油滴の平均径は5〜200μm程度である。本発明の水中油滴型乳化物は、乳成分を含まなくてもよい。前記豆乳(A)の大豆固形分の割合は15重量%未満であってもよい。前記豆乳(A)と前記油脂類(B)との重量比は、豆乳(A)/油脂類(B)=95/5〜50/50程度である。本発明の水中油滴型乳化物は、乳化剤(C)をさらに含んでいてもよい。この乳化剤(C)の割合は、油脂類(B)100重量部に対して0.01〜2重量部程度である。本発明の水中油滴型乳化物は、製菓、製パン又は調理加工に利用されるコンパウンドクリームの代替品であってもよい。コンパウンドクリームの代替品では、前記豆乳(A)と前記油脂類(B)との重量比は、豆乳(A)/油脂類(B)=88/12〜70/30程度であってもよい。また、本発明の水中油滴型乳化物は、ホイップクリームであってもよい。ホイップクリームでは、豆乳(A)と油脂類(B)との重量比は、豆乳(A)/油脂類(B)=80/20〜50/50程度であってもよい。
本発明には、豆乳(A)と油脂類(B)とを混合して乳化させることにより水中油滴型乳化物を調製する乳化工程を含む前記水中油滴型乳化物の製造方法も含まれる。
本発明では、豆乳に融点25〜35℃の特定の油脂類が配合されているため、乳成分の代わりに豆乳を含んでいても、コク及び風味を向上でき、冷凍保存、ボイル殺菌、レトルト殺菌(加圧加熱殺菌又はオートクレーブ処理)など、過酷な条件で処理や保存しても、品質劣化を抑制できる。特に、豆乳を含んでいても青臭さ(豆臭さ)が低減され、冷凍保存しても、凝集や油脂分離、離水などを抑制でき、乳化安定性を向上できる。
[水中油滴型乳化物]
本発明の水中油滴型乳化物(又はクリーム)は、豆乳(A)及び特定の油脂類(B)を含む。
(A)豆乳
豆乳(A)としては、特に限定されず、JAS(日本農林規格)で分類されている慣用の豆乳などを利用できる。
豆乳(A)中の大豆固形分の割合は、特に限定されず、豆乳(A)は、15重量%以上(例えば15〜20重量%)の濃縮豆乳であってもよく、15重量%未満の汎用の豆乳であってもよい。乳化物の粘性やコクが重要な用途では、濃縮豆乳であってもよいが、乳化安定性や風味などのバランスに優れる点から、汎用の豆乳が好ましい。
汎用の豆乳中の大豆固形分の割合は15重量%未満であればよく、例えば8〜14.5重量%、好ましくは10〜14重量%、さらに好ましくは11〜13重量%(特に11.5〜12.5重量%)程度である。大豆固形分の割合が少なすぎると、コク及び風味が低下する虞がある。また、大豆固形分割合が多すぎても、乳化安定性が低下する虞がある。
大豆固形分の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して、例えば1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%(特に8〜12重量%)程度である。
水の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して、例えば50〜90重量%、好ましくは55〜85重量%、さらに好ましくは60〜80重量%(特に65〜75重量%)程度である。必要であれば、豆乳(A)由来の水に加えて、新たに水を添加して水の割合を調整してもよい。
(B)油脂類
油脂類(B)は、25〜35℃の融点を有し、かつヤシ油及びパーム油を含んでいればよく、本発明では、正確なメカニズムは不明であるが、マイルドな風味を有する低融点の植物油であるヤシ油及びパーム油を混合状態で加熱融解し、その後冷却されたときに再結晶化するタイミングでそれぞれの油脂結晶同士のパッキング効果により安定な結晶構造を形成し易くなるためか、マスキング性が高く、豆乳を含んでいても、青臭さを低減でき、かつコク及び風味を向上できる上に、乳化安定性に優れ、過酷な条件で処理又は保存しても、品質劣化を抑制できる。
油脂類(B)の融点は25〜35℃であれば、特に限定されないが、マスキング性及び乳化安定性に優れる点から、例えば25〜34℃、好ましくは26〜33℃、さらに好ましくは27〜32℃(特に28〜31℃)程度である。融点が高すぎると、マスキング性及び乳化安定性が低下し、低すぎても、油脂類が酸化劣化したり、乳化安定性が低下する虞がある。
油脂類(B)は、ヤシ油及びパーム油を含んでいればよく、ヤシ油及びパーム油は、ジグリセリドを含む油脂であってもよい。ヤシ油とパーム油との重量割合は、ヤシ油/パーム油=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜30/70(例えば90/10〜50/50)、さらに好ましくは80/20〜60/40(特に75/25〜65/35)程度である。このような割合でヤシ油とパーム油とを組み合わせると、前述のように、詳細なメカニズムは不明であるが、乳化物の乳化安定性及び風味を向上できる。
油脂類(B)は、他の油脂類をさらに含んでいてもよい。他の油脂類としては、天然油脂が汎用され、例えば、ヤシ油及びパーム油以外の植物油(大豆油、綿実油、あまに油、ひまし油、紅花油、米油、コーン油、ゴマ油、向日葵油、米糖油、アサミ油、菜種油、落花生油、パーム核油、カポック油、扁桃油、オリーブ油、トール油、エノ油、キリ油など)、動物油(牛脂、豚脂、羊脂、山羊脂、馬脂、鯨油、鶏脂、七面鳥脂など)、魚油(ニシン油、カレイ油、タラ油、シタビラメ油、ハリバ油、コイ油、マス油、ナマズ油など)などが挙げられる。これらの油脂類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これら他の油脂類は、ジグリセリドを含む油脂であってもよい。また、これら他の油脂類は、硬化油、エステル交換油又は分別油であってもよい。
他の油脂類のうち、比較的風味のあっさりした植物油が好ましく、紅花油、エゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、コーン油、ゴマ油、向日葵油、大豆油、米油、胚芽米油、キャノーラ油などの菜種油、落花生油、ヤシ油、パーム油などの植物油が汎用される。そのため、本発明の水中油滴型乳化物では、動物油だけでなく、生クリームなどのコンパウンドクリームで汎用される乳成分を配合しなくてもよい。
油脂類(B)中の植物油(特にヤシ油及びパーム油)の割合は、50重量%以上(例えば80重量%以上)であってもよく、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上(特に99重量%以上)であってもよく、植物油のみ(特に、ヤシ油及びパーム油のみ)であってもよい。植物油(特にヤシ油及びパーム油)の割合が少なすぎると、乳化物のコクや風味が低下する虞がある。
油脂類(B)の割合は、水中油滴型乳化物の用途に応じて選択できる。水中油滴型乳化物が生クリーム(コンパウンドクリーム)の場合、豆乳(A)と油脂類(B)との重量比は、豆乳(A)/油脂類(B)=99/1〜30/70程度の範囲から選択でき、例えば95/5〜50/50、好ましくは90/10〜60/40、さらに好ましくは88/12〜70/30(特に85/15〜75/25)程度である。油脂類(B)の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して1〜70重量%程度の範囲から選択でき、例えば5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは12〜30重量%(特に15〜25重量%)程度である。油脂類(B)の割合は、水100重量部に対して、例えば10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、さらに好ましくは25〜30重量部程度である。油脂類(B)の割合が少なすぎると、マスキング性及び乳化安定性が低下する虞があり、逆に多すぎると、油脂類の臭気が強くなり、乳化安定性も低下する虞がある。
水中油滴型乳化物がホイップクリームの場合、豆乳(A)と油脂類(B)との重量比は、例えば、豆乳(A)/油脂類(B)=80/20〜50/50、好ましくは75/25〜55/45、さらに好ましくは70/30〜60/40程度である。油脂類(B)の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して、例えば20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは30〜40重量%程度である。油脂類(B)の割合が少なすぎると、ホイップ性が低下する虞があり、逆に多すぎると、油脂類の臭気が強くなり、乳化安定性も低下する虞がある。
(C)乳化剤
本発明の水中油滴型乳化物は、乳化安定性を向上させるために、乳化剤(C)をさらに含んでいてもよい。乳化剤(C)としては、水中油滴型(O/W型)エマルジョンを形成できれば、特に限定されず、慣用の乳化剤、例えば、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
乳化剤は、例えば、大豆レシチン(辻製油(株)製、商品名「SLP−ペースト」)、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名「エマルジーMS」、「エマルジーOL」)、グリセリン脂肪酸クエン酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名「ポエムK−37V」)、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(阪本薬品工業(株)製、商品名「CRS−75」)、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名「リョートーシュガーエステルS−1170」、「リョートーシュガーエステルS−270」、「リョートーシュガーエステルER−290」)などの市販品を使用してもよい。
これらの乳化剤のうち、マスキング性及び乳化安定性の点から、親水性−親油性バランス(HLB)が6以下(例えば1〜6、好ましくは1.5〜5、さらに好ましくは2〜4程度)の親油性乳化剤が好ましく、レシチンなどのリン脂質(特に大豆レシチン)が特に好ましい。大豆レシチンなどの親油性乳化剤がマスキング性及び乳化安定性に優れるメカニズムは明確ではないが、乳化力が強すぎると、コクや風味が低下する傾向があるため、前記HLBを有する大豆レシチンが適度な乳化力を発現し、両特性のバランスを実現していると推定できる。
乳化剤(C)の割合は、油脂類(B)100重量部に対して、例えば0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.3〜3重量部(特に0.5〜1.5重量部)程度である。水中油滴型乳化物全体に対して0.01〜10重量%程度の範囲から選択でき、例えば0.015〜3重量%、好ましくは0.02〜2重量%(例えば0.03〜1重量%)、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%(特に0.1〜0.3重量%)程度である。乳化剤(C)の割合が少なすぎると、乳化安定性の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、コクや風味が低下する虞がある。
(D)日持ち向上剤
本発明の水中油滴型乳化物は、保存性を向上させるために、日持ち向上剤(D)をさらに含んでいてもよい。日持ち向上剤(D)の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して0.01〜10重量%程度の範囲から選択でき、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%(特に0.3〜0.7重量%)程度である。日持ち向上剤(D)の割合が少なすぎると、保存安定性の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、コクや風味が低下する虞がある。
(E)他の添加剤
本発明の水中油滴型乳化物は、他の添加剤(E)として慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、pH調整剤(重曹、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどの無機塩など)、デンプン類(デキストリンの分解物など)、タンパク質変性防止剤(トレハロースなどの糖類など)、膨張剤又は発泡剤、増粘安定剤又は保水乳化安定剤(ペクチンなど)、保存料(防腐剤、抗菌剤など)、ビタミン類、消泡剤、調味料、着香料、着色料、酸化防止剤、光安定剤、醸造用剤などが挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、pH調整剤は、水中油滴型乳化物を生クリームなどとして調理する際に添加してもよく、ホイップクリームに添加してもよい。
他の添加剤(E)の合計割合は、水中油滴型乳化物全体に対して、例えば0.01〜10重量%(例えば0.1〜10重量%)、好ましくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度である。pH調整剤の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して、例えば0.01〜1重量%(例えば0.03〜0.5重量%)、好ましくは0.05〜0.2重量%、さらに好ましくは0.08〜0.15重量%程度である。
(F)水中油滴型乳化物の特性
本発明の水中油滴型乳化物は、連続相である水相に対して、分散相である油相として油滴が略均一に分散しており、油滴の平均径は500μm以下(例えば1〜500μm)程度の範囲から選択でき、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは15〜50μm(特に20〜40μm)程度である。油滴の平均径が大きすぎると、乳化物から油脂類や水分が分離する虞がある。
本明細書及び特許請求の範囲において、油滴の平均径は、例えば、市販のUSB接続式デジタルマイクロスコープを用いて、撮影した画像に映った油滴の中から任意に選択した20個の平均値として求めることができ、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の水中油滴型乳化物は、豆乳(A)及び油脂類(B)を含むことにより、コク及び風味を向上できるため、乳成分を含まなくてもよい。乳成分の割合は、水中油滴型乳化物全体に対して10重量%以下であってもよく、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であり、乳成分を含まない乳化物が特に好ましい。
[水中油滴型乳化物の製造方法]
本発明の水中油滴型乳化物の製造方法は、豆乳(A)と融点35℃以下の油脂類(B)とを混合して乳化させることにより水中油滴型乳化物(O/W型エマルジョン)を調製する乳化工程を含む。本発明の水中油滴型乳化物の製造方法は、前記乳化工程を含んでいればよいが、用途に応じて適宜調整してもよく、例えば、コンパウントクリーム及びホイップクリームは、それぞれ以下の製造方法であってもよい。
(コンパウンドクリームの製造方法)
コンパウンドクリーム(コンパウンドクリームの代替品)の場合、乳化工程において、混合方法は、特に限定されず、3種以上の成分を添加する場合、各成分を一括して添加して混合する方法であってもよいが、水中油滴型乳化物を調製し易い点から、任意の成分を分割して添加してもよい。例えば、豆乳(A)及び油脂類(B)に加えて、乳化剤(C)及び日持ち向上剤(D)を含む場合、乳化工程は、豆乳(A)及び日持ち向上剤(D)を加熱して混合する第1の混合工程を経た後、加熱した油脂類(B)及び乳化剤(C)を添加して混合する第2の混合工程を含んでいてもよい。
前記第1の混合工程において、加熱温度は、例えば50〜90℃、好ましくは60〜85℃、さらに好ましくは70〜80℃程度である。第2の混合工程に供される油脂類(B)及び乳化剤(C)の加熱温度は、油脂類(B)及び乳化剤(C)の融点以上であればよく、例えば50〜90℃、好ましくは60〜80℃、さらに好ましくは70〜75℃程度である。
前記成分を混合する方法は、慣用の攪拌手段、例えば、攪拌棒などを用いた手攪拌であってもよく、機械的攪拌手段(攪拌子や攪拌翼を備えた手段)、超音波分散機などが利用できる。これらのうち、機械的攪拌手段が汎用される。機械的攪拌手段としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンミキサー、V型ミキサー、インラインミキサーなどの慣用のミキサーなどが挙げられる。
機械的攪拌手段の回転速度は、処理量に応じて適宜選択できるが、例えば、ホモミキサーを用いる場合、例えば1000〜20000rpm、好ましくは3000〜15000rpm、さらに好ましくは4000〜10000rpm(特に5000〜8000rpm)程度である。攪拌時間(複数の工程を含む場合は合計時間)は1分以上(特に4分以上)であってもよく、例えば1〜60分、好ましくは3〜30分、さらに好ましくは4〜20分(特に5〜10分)程度である。
第2の混合工程では、攪拌速度を段階的に変えて混合してもよく、低回転速度(例えば3000〜5000rpm程度)で1〜10分(特に3〜7分)攪拌した後、前記低回転速度に対して1.2〜2倍(特に1.3〜1.7倍)程度の高回転速度(例えば5000〜8000rpm程度)で0.5〜5分(特に1〜3分)攪拌してもよい。
得られた水中油滴型乳化物は、油脂類の結晶状態を安定化させ、適度な粘度に調整するため、熟成(エージング)処理する熟成工程に供してもよい。熟成処理では、チルド条件(例えば1〜10℃、好ましくは2〜8℃、さらに好ましくは3〜7℃)で、例えば1時間〜10日、好ましくは3時間〜5日、さらに好ましくは6時間〜3日(特に8〜24時間)程度静置してもよい。
得られた水中油滴型乳化物(コンパウンドクリーム)は、冷凍保存や殺菌処理しても、品質劣化を抑制できる。冷凍保存の温度としては、0℃未満であればよく、例えば−30℃〜−3℃(特に−20℃〜−5℃)程度であり、保存期間は1時間以上(例えば1時間〜100日)程度であってもよい。
殺菌処理は、加熱及び/又は加圧処理であってもよい。具体的な殺菌処理としては、加熱処理としてボイル処理などが挙げられ、加熱及び加圧処理としてオートクレーブ処理などが挙げられる。加熱温度は60〜150℃程度の範囲から選択でき、ボイル処理では、例えば70〜100℃(特に80〜90℃)程度であり、オートクレーブ処理では、例えば100〜150℃(特に110〜130℃)程度である。オートクレーブ処理における加圧処理の圧力は、例えば0.01〜0.2MPa(特に0.05〜0.15MPa)程度である。
(ホイップクリームの製造方法)
ホイップクリームの製造方法も、前記コンパウンドクリームと同様に、乳化工程を含む。ホイップクリームにおいても、コンパウンドクリームの製造方法で例示された機械的攪拌手段を用いて各成分を混合できるが、ホイップクリームでは、ホモミキサーなどを用いて各成分を予備乳化した後、ホモジナイザーを用いて均質化処理するのが好ましい。
予備乳化において、加熱温度は、例えば50〜90℃、好ましくは60〜85℃、さらに好ましくは70〜80℃程度である。予備乳化における機械的攪拌手段の回転速度は、処理量に応じて適宜選択できるが、例えば、ホモミキサーを用いる場合、例えば1000〜20000rpm、好ましくは3000〜15000rpm、さらに好ましくは4000〜10000rpm(特に5000〜8000rpm)程度である。攪拌時間は1分以上(特に4分以上)であってもよく、例えば1〜60分、好ましくは3〜30分、さらに好ましくは4〜20分(特に5〜15分)程度である。
均質化処理において、ホモジナイザーの圧力は、例えば0.1〜10MPa、好ましくは1〜5MPa、さらに好ましくは2〜4MPa(特に2.5〜3.5MPa)程度である。加圧方式、特に限定されず、蒸気で加圧してもよい。圧力が低すぎると、均質化が低下する虞があり、圧力が高すぎると、比重が大きくなったり、食感が低下する虞がある。
前記乳化工程を経て得られた水中油滴型乳化物は、さらにホイップ工程に供することによりホイップドクリーム(ホイップ後のホイップクリーム)を調製できる。ホイップ工程では、乳化工程で形成された乳化物が部分的に解乳化するとともに、組成物が抱気することにより、ホイップドクリームが得られる。
ホイップ工程では、前記乳化工程で得られた水中油型乳化物をそのまま攪拌してもよいが、さらに慣用の添加剤を配合してもよい。慣用の添加剤としては、乳化工程で配合される添加剤などが例示でき、ホイップ工程では、調味料、着香料、着色料などが配合される場合が多く、特に、糖類(白糖などの砂糖、ブドウ糖や麦芽糖などの澱粉糖、乳糖、蜂蜜、ソルビトールなどの糖アルコールなど)、人工甘味料、ラム酒、バニラエッセンスなどの調味料を配合するのが好ましい。調味料の割合は、水中油型乳化物100重量部に対して1〜30重量部、さらに好ましくは5〜25重量部、好ましくは10〜20重量部程度である。
ホイップ工程においても、乳化工程の項で例示された慣用の攪拌手段や市販の家庭用ミキサーなどを利用できる。ホイップ工程における機械的攪拌手段の回転速度は、例えば、市販の卓上型ミキサーを用いる場合、例えば150〜700rpm、好ましくは250〜600rpm、さらに好ましくは300〜500rpm程度である。攪拌時間は、例えば0.5〜10分、好ましくは1〜5分、さらに好ましくは2〜4分(特に2.5〜3.5分)程度である。
ホイップ工程での混合温度は、油脂類の融点よりも低い温度(例えば30℃未満)である必要があり、撹拌で温度上昇する危険を防止し、さらには衛生面も向上できる点から、15℃以下であってもよく、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは3〜10℃(特に5〜8℃)程度である。混合温度が高すぎると、乳化安定性が低下し、ホイップによる解乳化がうまく進行せず、ホイップドクリームのオーバーランが低下したり、保形性を損なう虞がある。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料及び製造機械の詳細は以下の通りであり、得られた水中油滴型乳化物の比重は、以下の方法で評価した。
[原料]
(豆乳)
豆乳:大豆固形分12重量%。
(油脂類)
パーム油A:花王(株)製「エコナLS(M)」、乳化剤(大豆レシチン)0.02重量%含有、融点38℃
パーム油B:(株)カネカ製「食用精製パーム油」、融点36℃
ヤシ・パーム混合油:(株)カネカ製「ローザンアイスVS」、ヤシ油/パーム油=7/3(重量比)、乳化剤(大豆レシチン)0.03重量%含有、融点30℃
サラダ油:日清オイリオ(株)製「日清キャノーラ油」、融点0℃以下
調製ラード:(株)カネカ製「調製ラード」、融点43℃
パーム分別油:(株)カネカ製「プライモール100」、融点20℃。
(乳化剤)
大豆レシチン:辻製油(株)製「SLPペースト」、HLB約3。
(他の添加剤)
日持ち向上剤:ウエノフードテクノ(株)製「SM−G」(グリシン、酢酸ナトリウム製剤)
重曹:丸紅商会(株)製「炭酸水素ナトリウム」
リン酸塩:MCフードスペシャリティーズ(株)製、無水リン酸三ナトリウム
グラニュー糖:三井製糖(株)製。
[製造機械]
ホモミキサー:特殊機化工業(株)製「TKホモミキサーMarkII」
乳化機:(株)アースシステム21製「TKミキサー」
ホモジナイザー:三和機械(株)製「H20型」。
[豆乳クリームの評価]
得られた豆乳クリーム(コンパウンドクリーム)について、以下の条件で各種処理(冷凍保存、ボイル殺菌、レトルト殺菌)した後、乳化の状態を目視で観察し、さらに風味について官能評価した結果を以下の基準で総合評価した。
(各種処理の条件)
冷凍保存:−20℃、48時間保存
ボイル殺菌:85℃、30分処理
レトルト殺菌(オートクレーブ処理):120℃、大気圧+0.1MPa、30分間
(総合評価の基準)
◎:コンパウンドクリームとして極めて良好
○:コンパウンドクリームとして良好
△:コンパウンドクリームとして使用できるが、コクや風味がない
×:コンパウンドクリームとして不適。
[豆乳クリームの分散径]
豆乳クリームの分散径は、市販のUSB接続式デジタルマイクロスコープで観察し、撮影し、印刷した顕微鏡写真に基づいて、油滴20か所の平均値を算出した。
[ホイップドクリームの比重]
90g容量のカップにホイップドクリームを完全に充填した(90g容量のカップに対して、すりきり満タンにホイップドクリームを入れた)際の重量を測定し、下記式に基づいて算出した。
比重=ホイップ後の重量 ÷ カップ容量(90g)。
[ホイップドクリームの食感]
ホイップドクリームの食感として、ホイップ後の口溶け感、濃厚感などについて評価した。
[トッピングしたホイップドクリームの保形性]
ホイップしたホイップドクリームを絞り袋に詰め、口金を用いて、高さが約3cm程度となるように、ホイップドクリームをバットの上に絞り出した。その後、バットの一方を高さ5cmまで手で上げた後に離し、落下した衝撃に対する型崩れの状態を観察し、さらにその状態で冷蔵(10℃)して1日経過した状態を観察した。
比較例1
豆乳100gを75℃に加熱し、ホモミキサーを用いて、日持ち向上剤5gを添加しながら、6000rpmの回転速度で1分間攪拌し、豆乳クリームを製造した。
比較例2
豆乳950gを75℃に加熱し、ホモミキサーを用いて、日持ち向上剤5gを添加しながら、6000rpmの回転速度で1分間攪拌した。その後、回転速度を4000rpmに減速し、別途準備した温度73℃のパーム油A50gを添加し、5分間攪拌した。さらに、回転速度を6000rpmに上げて2分間攪拌した。得られた乳化物を冷水で冷却した後、5℃で12時間保存し、豆乳クリームを得た。
比較例3
豆乳及びパーム油Aの配合量を豆乳800g及びパーム油A200gに変更する以外は比較例2と同様にして豆乳クリームを得た。
比較例4
豆乳及びパーム油Aの配合量を豆乳650g及びパーム油A350gに変更する以外は比較例2と同様にして豆乳クリームを得た。
比較例1〜4で得られた豆乳クリームの評価結果を表1に示す。
Figure 0006474876
比較例5〜7
パーム油Aをパーム油Bに変更する以外は比較例2〜4と同様にして豆乳クリームを得た。比較例5〜7で得られた豆乳クリームの評価結果を表2に示す。
Figure 0006474876
実施例1〜3
パーム油Aをヤシ・パーム混合油に変更する以外は比較例2〜4と同様にして豆乳クリームを得た。実施例1〜3で得られた豆乳クリームの評価結果を表3に示す。
Figure 0006474876
実施例1で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、29.4μmであった。油滴の状態は、油滴の数、分散具合にバラツキがあり、油滴は少なかった。
実施例2で得られた豆乳クリームの冷凍保存後の油滴の平均径を測定したところ、126.9μmであった。油滴の状態は、形状が球状ではなく、いびつであり、大きさも大きかった。一方、実施例2で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、30.3μmであった。油滴の状態は、大きさがほぼ均一であり、万遍なく綺麗に分散しており、形状も綺麗な球状であった。
実施例3で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、36.4μmであった。油滴の状態は、綺麗に分散しているが、油滴も比較的大きく、大きさにも差があった。
比較例8〜10
パーム油Aをサラダ油に変更する以外は比較例2〜4と同様にして豆乳クリームを得た。比較例8〜10で得られた豆乳クリームの評価結果を表4に示す。
Figure 0006474876
表1〜4の結果から明らかなように、各種処理の条件については、冷凍保存すると、粘度が上昇し、分離というよりはタンパクが変性し凝集している状態だった。一方、ボイル処理及びレトルト処理では、レトルト処理では熱で焼け、褐変し、外観が少しくすんだ豆乳クリームもあった。最も状態が良かったのはボイル処理であった。
油脂類については、添加量を上げれば上げる程、状態の良い豆乳クリームと凝集している豆乳クリームとの差が大きかった。状態の変化が少なかった添加量は20重量%であった。油脂類の種類では、パーム油はタンパク質の変性が激しく、サラダ油は乳化状態が崩壊し、水分と油との分離が激しかった。一方、ヤシ・パーム混合油は分離・凝集が少なく良好であった。
総合評価としては、20〜35重量%のヤシ・パーム混合油を含む豆乳クリームが好ましかった。
比較例11
豆乳及びパーム油Aの配合量を豆乳800g及び調製ラード200gに変更する以外は比較例2と同様にして豆乳クリームを得た。
比較例12
豆乳及びパーム油Aの配合量を豆乳600g及び調製ラード400gに変更する以外は比較例2と同様にして豆乳クリームを得た。
比較例11〜12で得られた豆乳クリームの評価結果を表5に示す。
Figure 0006474876
実施例4〜5
調製ラードをヤシ・パーム混合油に変更する以外は比較例11〜12と同様にして豆乳クリームを得た。実施例4〜5で得られた豆乳クリームの評価結果を表6に示す。
Figure 0006474876
実施例4で得られた豆乳クリームの冷凍保存後の油滴の平均径を測定したところ、339.8μmであった。滴の状態は、形状が球状ではなく、いびつであり、大きさも大きかった。一方、実施例4で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、36μmであった。油滴の状態は、大きさがほぼ均一であり、万遍なく綺麗に分散しており、形状も綺麗な球状であった。
実施例5で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、37.9μmであった。油滴の状態は、綺麗に分散しているが、油滴が大きく、差がある上に、形状も少しいびつな油滴があった。
比較例13〜14
調製ラードをサラダ油に変更する以外は比較例11〜12と同様にして豆乳クリームを得た。比較例13〜14で得られた豆乳クリームの評価結果を表7に示す。
Figure 0006474876
表5〜7の結果から明らかなように、各種の処理条件については、表1〜4と同様に、冷凍保存における分離及び凝集が激しかった。色については、レトルト処理の方がボイル処理及び冷凍保存よりも白っぽく仕上がっていた。粘度についても、ボイル処理とレトルト処理とを比較するとレトルト処理の方が粘度が上がっていた。
油脂類については、添加量を上げれば上げる程、状態の変化の差が大きかった。液油では添加量が少ない方が分離が少なく、固体脂では多い方が分離、凝集が少ない傾向であった。しかし、固体脂の添加量が多いタイプでは液状ではなく、固体になっていた。油脂類の種類では、ヤシ・パーム混合油が好ましく、調製ラードでは固体化や液体と固体が分離した状態の豆乳クリームもあった。サラダ油では冷凍時の変性が激しく、ボイル及びレトルト処理では油脂の分離が起きていた。
総合評価としては、20重量%のヤシ・パーム混合油を含む豆乳クリームが、分離及び凝集がなく、液体であるため、作業性にも優れ、豆乳クリームに向いていた。
実施例6
豆乳950gを75℃に加熱し、ホモミキサーを用いて、日持ち向上剤5gを添加しながら、6000rpmの回転速度で1分間攪拌した。その後、回転速度を4000rpmに減速し、別途準備した温度73℃のヤシ・パーム混合油50g及び大豆レシチン2gを添加し、5分間攪拌した。さらに、回転速度を6000rpmに上げて2分間攪拌した。得られた乳化物を冷水で冷却した後、5℃で12時間保存し、豆乳クリームを得た。
実施例7
豆乳及びヤシ・パーム混合油の配合量を豆乳800g及びヤシ・パーム混合油200gに変更する以外は実施例6と同様にして豆乳クリームを得た。
実施例8
豆乳及びヤシ・パーム混合油の配合量を豆乳500g及びヤシ・パーム混合油500gに変更する以外は実施例6と同様にして豆乳クリームを得た。
実施例6で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、23μmであった。油滴の状態は、油滴の数、分散具合にバラツキがあり、油滴の数も少なく、小さかった。
実施例7で得られた豆乳クリームの冷凍保存後の油滴の平均径を測定したところ、29μmであった。油滴の状態は、形が変形している油滴もあるが、大きさは小さく、少し凝集しているものの、概ね分散していた。一方、実施例7で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、38μmであった。油滴の状態は、所々に大きな油滴があったものの、大きさはほぼ均一であり、万遍なく綺麗に分散していた。また、実施例7で得られた豆乳クリームのレトルト処理後の油滴の平均径を測定したところ、25μmであった。油滴の状態は、油滴が球状で小さく、万遍なく分散していた。
実施例8で得られた豆乳クリームのボイル処理後の油滴の平均径を測定したところ、44μmであった。油滴の状態は、殆ど油滴で見た目は真っ白であり、各油滴も大きい上に、大きさにも差があった。
比較例15
ヤシ・パーム混合油をパーム分別油に変更する以外は実施例7と同様にして豆乳クリームを得た。
実施例6〜8及び比較例15で得られた豆乳クリームの評価結果を表8に示す。
Figure 0006474876
表8の結果から明らかなように、各種の処理条件については、冷凍保存では全て粘度が上昇し、分離というよりはタンパク質が変性し、凝集している状態だった。ボイル及びレトルト処理での差はあまりなかった。
油脂類については、添加量では冷凍の場合、添加量が少ないと凝集がひどく、多いと凝集が少なかった。また、ボイル及びレトルト処理では添加量が多い程、油脂、水分(豆乳)が分離している豆乳クリームも多かった。種類では、全ての加熱・冷凍条件において、ヤシ・パーム混合油の方が凝集・分離も少なく、状態が良かった。さらに、実施例6〜8の豆乳クリームでは、実施例1〜5の豆乳クリームと比べて、乳化剤の配合により状態が向上していた。
総合評価としては、ヤシ・パーム混合油が豆乳クリームに向いている。添加量については5重量%では凝集が見られ、50%重量ではボイル及びレトルト処理で分離、冷蔵で固くなるため、20重量%が良い結果となった。
実施例9
豆乳26kgを75℃に加熱し、乳化機を用いて、別途準備した温度73℃のヤシ・パーム混合油13.9kg及び大豆レシチン0.08kgを添加しながら、7200rpmの回転速度で1分間攪拌し、予備乳化した。得られた予備乳化物をホモジナイザーのタンクに移し、圧力3MPaで均質化処理した。得られた水中油滴型乳化物の状態(原液状態)は、とろみのあるクリーム状であった。得られた水中油滴型乳化物を袋に充填し、真空包装した後、90℃で90分間ボイル殺菌した。さらに、ボイル殺菌した水中油滴型乳化物を約3℃の冷却水で120分以上冷却した。得られた水中油滴型乳化物を5℃で3日間冷蔵した。
冷蔵後の水中油滴型乳化物200gに、グラニュー糖30gを添加し、5℃の温度下、卓上型ミキサーを用いてホイッピング操作を行い、硬さなどの状態を確認しながら、最適点でホイップを停止し(ホイップ時間2分55秒)、比重0.55のホイップドクリームを調製した。
実施例10
予備乳化におけるホモジナイザーの圧力を4MPaに変更し、かつ水中油滴型乳化物の冷蔵時間を2日に変更する以外は実施例9と同様の方法で均質化処理した。得られた水中油滴型乳化物の状態(原液状態)は、とろみのあるクリーム状であった。得られた水中油滴型乳化物を実施例9と同様の方法でボイル殺菌及び冷却した後、ホイップし、比重0.63のホイップドクリームを調製した。得られたホイップドクリームは、5℃で2日間冷蔵した。
実施例11
豆乳25.84kgを75℃に加熱し、乳化機を用いて、別途準備した温度73℃のヤシ・パーム混合油13.9kg及び大豆レシチン0.08kgと、さらに別途準備した温度50℃のリン酸塩0.04kg及び水0.16kgとを添加しながら、7200rpmの回転速度で1分間攪拌し、予備乳化した。得られた予備乳化物をホモジナイザーのタンクに移し、圧力3MPaで均質化処理した。得られた水中油滴型乳化物の状態(原液状態)は、トロトロの液状であった。得られた水中油滴型乳化物を実施例10と同様の方法でボイル殺菌及び冷却・冷蔵した後、ホイップし、比重0.49のホイップドクリームを調製した。
実施例12
水中油滴型乳化物の冷蔵時間を7日に変更し、かつホイップ時間を2分40秒に変更する以外は実施例9と同様の方法で比重0.61のホイップドクリームを調製した。
実施例13
水中油滴型乳化物の冷蔵時間を7日に変更し、かつホイップ時間を2分15秒に変更する以外は実施例10と同様の方法で比重0.65のホイップドクリームを調製した。
実施例14
水中油滴型乳化物の冷蔵時間を8日に変更し、かつホイップ時間を3分15秒に変更する以外は実施例11と同様の方法で比重0.48のホイップドクリームを調製した。
実施例9〜14で得られたホイップドクリームの食感を評価した結果を表9に示す。
Figure 0006474876
表9の結果から、均質化処理における圧力は、比重や食感の点から、4MPaよりも3MPaの方が良かった。
また、市販の乳製品のホイップドクリームに比べると、比重は大きく、ホイップ時間は短いが、乳製品のホイップクリーム製品の中でも乳脂肪分が多い純生クリームの状態に近いことが分かった。
さらに、リン酸塩を添加すると、比重が軽くなってふんわり食感になり、ホイップ時間が長くなった。そのため、乳製品のホイップドクリームの状態に近づいたと言える。しかし、保形性の部分は少し問題があることが分かった。
なお、実施例9及び11で得られたホイップドクリームの保形性について評価した結果、実施例9で得られたホイップドクリームは、衝撃付与後及び冷蔵保存1日後のいずれに対しても型崩れはなかったが、実施例11で得られたホイップドクリームは、衝撃付与後の型崩れはなかったものの、冷蔵保存1日後は、実施例9と比較すると、比重が軽いため、全体が少し広がり、やや型崩れしていた。
本発明の水中油滴型乳化物は、製菓(ケーキ、ゼリー、生チョコレート、生キャラメルなど)、製パン、パスタやスープなどの調理加工に利用される生クリーム(コンパウンドクリーム)の代替品やホイップドクリームなどに利用できる。なかでも、乳成分の代わりに豆乳を含んでいても、コク及び風味に優れ、安定性にも優れる点から、コンパウンドクリームの代替品として、特に有効に利用できる。

Claims (4)

  1. 豆乳(A)油脂類(B)及び乳化剤(C)を含み、乳成分を含まず、かつ油滴の平均径が5〜200μmである水中油滴型乳化物からなるコンパウンドクリームの代替品であって、
    前記豆乳(A)の大豆固形分の割合が8〜14.5重量%であり、
    前記油脂類(B)が、25〜35℃の融点を有し、かつヤシ油及びパーム油を含むとともに、
    前記ヤシ油と前記パーム油との重量比が、ヤシ油/パーム油=99/1〜60/40であり、
    前記豆乳(A)と前記油脂類(B)との重量比が、豆乳(A)/油脂類(B)=90/10〜60/40であり、
    前記乳化剤(C)の割合が、水中油滴型乳化物全体に対して0.01〜0.3重量%である、コンパウンドクリームの代替品。
  2. 製菓、製パン又は調理加工に利用されるコンパウンドクリームの代替品である請求項1記載のコンパウンドクリームの代替品。
  3. 豆乳(A)と油脂類(B)との重量比が、豆乳(A)/油脂類(B)=88/12〜70/30である請求項1又は2記載のコンパウンドクリームの代替品。
  4. 豆乳(A)と油脂類(B)とを混合して乳化させることにより水中油滴型乳化物を調製する乳化工程を含む請求項1〜のいずれかに記載のコンパウンドクリームの代替品の製造方法。
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