発明の詳細な説明
本願に従って、当該技術の範囲内で従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA法を使用することができる。このような技法は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al, 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」 (1989);「Current Protocols in Molecular Biology」 Volumes I-III [Ausubel, R. M., ed. (1994)]; 「Cell Biology: A Laboratory Handbook」 Volumes I-III [J. E. Celis, ed. (1994))];「Current Protocols in Immunology」 Volumes I-III [Coligan, J. E., ed. (1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J. Gait ed. 1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)];「Transcription And Translation」[B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984)];「Animal Cell Culture」[R.I. Freshney, ed. (1986)]; 「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press, (1986)]; B. Perbal, 「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照されたい。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。
抗体用語
本明細書で使用する「抗体」という用語は、天然であるか、部分的または完全に合成により作製されているかに関係なく免疫グロブリン(Ig)を指す。この用語はまた、抗原結合ドメインであるか、または抗原結合ドメインと相同である結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質も含む。さらに、この用語は、「抗原結合断片」および下記のような類似する結合断片についての他の同義の用語を含む。相補性決定領域(CDR)グラフト化抗体ならびに他のヒト化抗体(CDR改変およびフレームワーク領域改変を含む)も、この用語によって意図される。
天然抗体および天然免疫グロブリンは、通常、2本の同一の軽鎖(L)および2本の同一の重鎖(H)で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は通常、1個のジスルフィド共有結合によって重鎖と連結しているのに対して、様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でジスルフィド結合の数は異なる。それぞれの重鎖および軽鎖にはまた、一定の間隔をあけて鎖内ジスルフィド架橋がある。それぞれの重鎖には、一端に、可変ドメイン(「VH」)があるのに続いて多くの定常ドメイン(「CH」)がある。それぞれの軽鎖には、一端に可変ドメイン(「VL」)およびその反対の末端に定常ドメイン(「CL」)がある。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと並んでおり、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの境界面を形成すると考えられている。
本明細書で使用する「合成ポリヌクレオチド」、「合成遺伝子」、または「合成ポリペプチド」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列もしくはその一部またはアミノ酸配列もしくはその一部が、等価な天然配列と比較して設計されている、または新たに合成されている、または改変されている配列から得られていることを意味する。合成ポリヌクレオチド(抗体もしくは抗原結合断片)または合成遺伝子は、核酸配列またはアミノ酸配列の化学合成を含むが、これに限定されない当技術分野において公知の方法によって調製することができる。合成遺伝子は、典型的には、アミノ酸レベルもしくはポリヌクレオチドレベル(またはその両方)で天然遺伝子と異なり、典型的には、合成発現制御配列の状況の中で配置される。例えば、合成遺伝子配列は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの交換、欠失、または付加によって変えられているアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を含んでもよく、それによって、元の配列と異なる抗体アミノ酸配列またはポリヌクレオチドコード配列を提供する。合成遺伝子ポリヌクレオチド配列は、必ずしも、天然遺伝子と比較してアミノ酸が異なるタンパク質をコードするとは限らない。例えば、合成遺伝子ポリヌクレオチド配列は、異なるコドンを組み込んでいるが、同じアミノ酸をコードする合成ポリヌクレオチド配列も包含する(すなわち、このヌクレオチド変化はアミノ酸レベルではサイレント変異である)。
抗体について「可変ドメイン」という用語は、特定の各抗体の特定の抗原に対する結合および特異性において用いられる抗体可変ドメインを指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分散していない。もっと正確に言うと、可変性は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方で超可変領域と呼ばれる(CDRとも知られる)3つのセグメントに集中している。可変ドメインの高度に保存されている部分は「フレームワーク領域」または「FR」と呼ばれる。改変されていない重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRが点在する、βシート立体配置を主にとる4つのFR(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含み、3つのCDRは、βシート構造、場合によってはβシート構造の一部を接続するループを形成する。各鎖のCDRはFRによって至近距離で結び付けられ、他の鎖からのCDRと一緒になって抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991), 647-669頁を参照されたい)。
「超可変領域」および「CDR」という用語は本明細書において用いられる場合、抗原結合を担う抗体アミノ酸残基を指す。CDRは、抗原と相補的に結合し、VH鎖およびVL鎖それぞれについてCDR1、CDR2、およびCDR3として知られる3つの配列領域に由来するアミノ酸残基を含む。Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))によれば、軽鎖可変ドメインのCDRは典型的には残基約24-34(CDRL1)、50-56(CDRL2)、および89-97(CDRL3)に対応し、重鎖可変ドメインのCDRは典型的には残基約31-35(CDRH1)、50-65(CDRH2)、および95-102(CDRH3)に対応する。様々な抗体のCDRが挿入を含む場合があり、従って、アミノ酸ナンバリングが異なる場合があることが理解される。Kabatナンバリングシステムは、このような挿入を、特定の残基に取り付けた文字を用いて(例えば、軽鎖にあるCDRL1の27A、27B、27C、27D、27E、および27F)、様々な抗体間の挿入を番号で示すナンバリング方式によって説明する。または、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196: 901-917 (1987))によれば、軽鎖可変ドメインのCDRは典型的には残基約26-32(CDRL1)、50-52(CDRL2)、および91-96(CDRL3)に対応し、重鎖可変ドメインのCDRは典型的には残基約26-32(CDRH1)、53-55(CDRH2)、および96-101(CDRH3)に対応する。
本明細書で使用する「フレームワーク領域」または「FR」とは、抗原結合ポケットまたは溝の一部となるフレームワークアミノ酸残基を指す。一部の態様において、フレームワーク残基は、抗原結合ポケットまたは溝の一部であるループを形成し、ループ中のアミノ酸残基は抗原と接触してもよく、接触しなくてもよい。一般的に、フレームワーク領域はCDR間の領域を構成する。Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))によれば、軽鎖可変ドメインのFRは典型的には残基約0-23(FRL1)、35-49(FRL2)、57-88(FRL3)、および98-109に対応し、重鎖可変ドメインのFRは典型的には残基約0-30(FRH1)、36-49(FRH2)、66-94(FRH3)、および103-133に対応する。軽鎖についてKabatナンバリングを用いて前述したように、重鎖も同様に挿入を説明する(例えば、重鎖にあるCDRH1の35A、35B)。または、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196: 901-917 (1987))によれば、軽鎖可変ドメインのFRは典型的には残基約0-25(FRL1)、33-49(FRL2)、53-90(FRL3)、および97-109(FRL4)に対応し、重鎖可変ドメインのFRは典型的には残基約0-25(FRH1)、33-52(FRH2)、56-95(FRH3)、および102-113(FRH4)に対応する。
FRのループアミノ酸は、抗体重鎖および/または抗体軽鎖の三次元構造を検査することによって評価および決定することができる。溶媒接近可能なアミノ酸の位置は抗体可変ドメイン中でループを形成する、および/または抗原と接触する可能性が高いので、三次元構造のこのような位置を分析することができる。溶媒接近可能な位置の一部はアミノ酸配列多様性を容認することができ、その他(例えば、構造位置)は概して多様性が低い。抗体可変ドメインの三次元構造は結晶構造またはタンパク質モデリングから得ることができる。
抗体の定常ドメイン(Fc)は抗体と抗原との結合に直接関与しないが、例えば、Fc受容体(FcR)との相互作用を介して、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。Fcドメインはまた、対象に投与された後に循環中の抗体バイオアベイラビリティも高めることができる。
重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメイン(Fc)は、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
あらゆる脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパすなわち(「κ」)およびラムダすなわち(「λ」)と呼ばれる2つのはっきりと異なるタイプの1つに割り当てることができる。
「抗体の抗原結合部分」、「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗体断片」、または「抗体の機能的断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片を指すために本明細書において同義に用いられる。このような用語に含まれる抗体断片の非限定的な例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含有する二価断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の1本のアームのVLドメインおよびVHドメインを含有するFv断片、(v)VHドメインを含有する、dAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341: 544546);ならびに(vi)単離されたCDRが含まれるが、これに限定されない。さらに、この定義には、1本の重鎖および1本の軽鎖を含む「1/2」抗体が含まれる。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も本明細書において包含される。
「F(ab')2」および「Fab'」部分は、Igをペプシンおよびパパインなどのプロテアーゼで処理することによって作製することができ、2本の重鎖それぞれにあるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合付近で免疫グロブリンを消化することによって生じる抗体断片を含む。例えば、パパインは、2本の重鎖それぞれにあるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の上流側でIgGを切断して、VLおよびCL(軽鎖定常領域)で構成される軽鎖ならびにVHおよび重鎖定常領域にあるCHγ1(γ1)領域で構成される重鎖断片が、これらのC末端領域でジスルフィド結合を介して接続されている2つの相同な抗体断片を生じる。これらの2つの相同な抗体断片はそれぞれFab'と呼ばれる。ペプシンも、2本の重鎖それぞれにあるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の下流側でIgGを切断して、2つの前述したFab'がヒンジ領域で接続している断片よりわずかに大きな抗体断片を生じる。この抗体断片はF(ab')2と呼ばれる。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含めて、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されている点でFab断片と異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'の本明細書における名称である。F(ab')2抗体断片は、最初は、Fab'断片間にヒンジシステインを有するFab'断片対として作製された。抗体断片の他の化学結合も公知である。
「Fv」とは、完全な抗原認識・抗原結合部位を含む抗体断片を指す。この領域は、しっかりと非共有結合または共有結合により会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる(ジスルフィド結合したFvは当技術分野、Reiter et al. (1996) Nature Biotechnology 14:1239-1245において記載されている)。この立体配置にあるとき、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を規定する。ひとまとまりになって、VH鎖およびVL鎖それぞれのCDRの1つまたは複数の組み合わせが抗原結合特異性を抗体に付与する。例えば、レシピエント抗体またはその抗原結合断片のVH鎖およびVL鎖に移されたときに、抗原結合特異性を抗体に付与するためにCDRH3およびCDRL3で十分な場合があり、本明細書に記載の任意の技法を用いて、CDRのこの組み合わせの結合、親和性などを試験できることが理解されるだろう。シングル可変ドメイン(すなわち、抗原に特異的なCDRを3つしか含まない、Fvの半分)でも抗原を認識し、抗原に結合することができるが、もう1つの可変ドメインと組み合わされたときより低い親和性で抗原を認識し、抗原に結合する可能性が高い。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VLおよびVH)は別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、2つのドメインを1本のタンパク質鎖とするのを可能にする合成リンカーでつなぐことができる。この場合、VLおよびVH領域は対になって、一価分子(単鎖Fv(scFv)と知られる; Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; および Osbourn et al. (1998) Nat. Biotechnol. 16:778)を形成する。このようなscFvもまた抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含されると意図される。完全なIg(例えば、IgG)分子または他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作製するために、特定のscFvの任意のVH配列およびVL配列をFc領域cDNAまたはゲノム配列に連結することができる。VHおよびVLもまた、タンパク質化学または組換えDNA技術を用いたFab、Fv、または他のIg断片の作製において使用することができる。
「単鎖Fv」または「sFv」抗体断片は抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖になって存在する。一部の態様では、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvsの総説については、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
「AVIMER(商標)」という用語は、抗体および抗体断片と無関係であり、A-ドメイン(クラスAモジュール、相補型反復(complement type repeat)、またはLDL-受容体クラスAドメインとも呼ばれる)と呼ばれる、数個のモジュール方式の再利用可能な結合ドメインで構成される、ヒト由来の治療用タンパク質のクラスを指す。それらは、インビトロエキソンシャッフリングおよびファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインから開発された(Silverman et al., 2005, Nat. Biotechnol. 23:1493-1494; Silverman et al., 2006, Nat. Biotechnol. 24:220)。結果として生じるタンパク質は、シングルエピトープ結合タンパク質と比較して改善した(場合によっては、nM以下の)親和性および特異性を示すことができる複数の独立した結合ドメインを含むことができる。例えば、米国特許出願公開第2005/0221384号、同第2005/0164301号、同第2005/0053973号および同第2005/0089932号、同第2005/0048512号、ならびに同第2004/0175756号を参照されたい。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
既知の217個のヒトA-ドメインはそれぞれ約35アミノ酸(約4kDa)を含む。これらのドメインは、長さが平均5アミノ酸のリンカーによって隔てられている。天然のA-ドメインは、主としてカルシウム結合およびジスルフィド形成を介して均一で安定した構造に素早くかつ効率的に折り畳まれる。この共通構造には、たった12アミノ酸からなる保存スキャフォールドモチーフが必要とされる。最終結果は複数のドメインを含有する1本のタンパク質鎖であり、複数のドメインはそれぞれ別々の機能に相当する。タンパク質の各ドメインは独立して結合し、各ドメインのエネルギー的寄与は相加的である。これらのタンパク質は、アビディティ多量体(avidity multimer)の名を取って「AVIMER(商標)」と命名された。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指す。この断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)の中に軽鎖可変ドメイン(VL)と接続した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。短すぎて、同じ鎖上にある2つのドメインが対形成できないリンカーを使用することによって、これらのドメインは別の鎖の相補ドメインと強制的に対形成し、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、例えば、EP404,097; WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444 6448 (1993)においてさらに詳しく説明される。
抗原結合ポリペプチドには、重鎖二量体、例えば、ラクダ科およびサメに由来する抗体も含まれる。ラクダ科およびサメ抗体は、V様ドメインおよびC様ドメインの2本の鎖(どちらも軽鎖がない)からなるホモ二量体対からなる。ラクダ科にある重鎖二量体IgGのVH領域は軽鎖と疎水性相互作用する必要がないので、通常、軽鎖と接触する重鎖内のこの領域はラクダ科では親水性アミノ酸残基に変化している。重鎖二量体IgGのVHドメインはVHHドメインと呼ばれる。サメIg-NARは、1つの可変ドメイン(V-NARドメインと呼ばれる)および5つのC様定常ドメイン(C-NARドメイン)からなるホモ二量体を含む。ラクダ科では、抗体レパートリーの多様性は、VH領域またはVHH領域にあるCDR1、2、および3によって決定される。ラクダVHH領域にあるCDR3は平均16アミノ酸の比較的長い長さによって特徴付けられる(Muyldermans et al., 1994, Protein Engineering 7(9): 1129)。これは、多くの他の種の抗体のCDR3領域とは対照的である。例えば、マウスVHのCDR3の平均は9アミノ酸である。ラクダ科の可変領域のインビボ多様性を維持しているラクダ科由来抗体可変領域ライブラリーは、例えば、米国特許出願第20050037421号に開示される方法によって作製することができる。
「ヒト化」型非ヒト(例えば、マウス)抗体には、非ヒトIgに由来する最小配列を含有するキメラ抗体が含まれる。大部分は、ヒト化抗体は、レシピエントのCDRの1つまたは複数が、望ましい特異性、親和性、および結合機能を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種抗体(ドナー抗体)に由来するCDRによって置換されているヒトIgG(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒトIgの1つまたは複数のFRアミノ酸残基は、対応する非ヒトアミノ酸残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含有することができる。これらの改変は、必要であれば、抗体性能を改良するために加えることができる。ヒト化抗体は、少なくとも1つ、場合によっては2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでもよく、この場合、超可変領域の全てもしくは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FRの全てもしくは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含んでもよい。詳細については、Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Reichmann et al., Nature 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照されたい。
ヒト化抗体はまた、重鎖および軽鎖のCDRの一部または全てが非ヒトモノクローナル抗体に由来し、可変領域の残りの部分の実質的に全てがヒト可変領域に由来し(重鎖および軽鎖両方とも)、定常領域がヒト定常領域に由来する抗体も含む。一態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域は非ヒト抗体に由来する。さらに別の態様において、重鎖および軽鎖の少なくとも1つのCDR(例えば、CDR3)は非ヒト抗体に由来する。CDR1、CDR2、およびCDR3の様々な組み合わせが非ヒト抗体に由来してもよく、本明細書において意図される。非限定的な一例では、重鎖および軽鎖それぞれのCDR1、CDR2、およびCDR3領域の1つまたは複数は、本明細書において提供される配列に由来する。
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、可能性のある自然変異以外は同一である。モノクローナル抗体は、1つの抗原部位に対して作られているので高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して作られた異なる抗体を含み得る従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原にある1つの決定基に対して作られている。修飾語「モノクローナル」は、抗体が実質的に均一な抗体集団から得られているという特徴を示し、特定の方法による抗体作製を必要すると解釈してはならない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に述べられたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ある特定の態様では、モノクローナル抗体は、例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記載の技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
抗体は、飽和硫安沈殿、真性グロブリン沈殿法、カプロン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52)、あるいは抗IgカラムまたはプロテインA、G、もしくはLカラム、例えば、下記で詳述するものを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、上述の培養上清または腹水から単離および精製することができる。
本明細書に記載の組成物および方法において使用するための例示的な抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子、例えば、ヒト化抗体もしくは抗原結合部位(すなわち、パラトープ)を含有するヒト化Ig分子部分、またはFab、Fab'、F(ab)'、F(ab')2、Fd、scFv、可変重鎖ドメイン、可変軽鎖ドメイン、可変NARドメイン、二重特異性scFv、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、ならびに単鎖結合ポリペプチド、および抗原結合断片とも呼ばれる、その他として当技術分野において公知の部分を含む、1本の重鎖および1本の軽鎖である。免疫グロブリン分子またはその断片を構築するとき、本明細書に記載の任意の抗体またはその断片を作製するために、可変領域またはその一部は1つまたは複数の定常領域またはその一部と融合されてもよく、接続されてもよく、別の方法でつながれてもよい。これは、分子クローニング法または前記分子をコードする核酸の直接合成を含むが、これに限定されない当技術分野において公知の様々なやり方で成し遂げることができる。これらの分子を構築する例示的な非限定的な方法も本明細書に記載の実施例において見出される。
二重特異性抗体または他の多重特異性抗体を作製するための方法は当技術分野において公知であり、化学的架橋結合、ロイシンジッパーの使用(Kostelny et al., J.Immunol.148:1547-1553,1992);ダイアボディ技術(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48, 1993); scFv二量体[Gruber et al., J. Immunol. 152: 5368, 1994]、直鎖抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8:1057-62, 1995);およびキレート化(chelating)組換え抗体(Neri et al., J Mol Biol. 246:367-73, 1995)を含む。
「直鎖抗体」は、一対の抗原結合領域を形成する、一対の直列Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖抗体は二重特異性でもよく、単一特異性でもよい(Zapata et al. Protein Eng. 8:1057-62 (1995))。
さらに、本明細書において開示された抗ヘプシジン抗体はまた多価型に折り畳まれるように構築することができる。多価型は、結合親和性、特異性を改善する、および/または血中半減期を延ばす可能性がある。多価型抗ヘプシジン抗体は当技術分野において公知の技法によって調製することができる。
二重特異性抗体または多重特異性抗体は、架橋した抗体または「ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの中にある抗体の一方はアビジンと結合してもよく、他方はビオチンと結合してもよい。ヘテロコンジュゲート抗体は任意の便利な架橋結合方法を用いて作製することができる。適切な架橋結合剤は当技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号と多数の架橋結合法において開示される。scFvのC末端にストレプトアビジンコード配列を付加することによって四量体を作製する別の方法が設計されている。ストレプトアビジンは4つのサブユニットで構成され、そのため、scFv-ストレプトアビジンが折り畳まれると、4つのサブユニットは会合して四量体を形成する(Kipriyanov et al., Hum Antibodies Hybridomas 6(3): 93-101 (1995)。この開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
二重特異性抗体を作製するための別のアプローチによれば、一対の抗体分子間の境界面を操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体パーセントを最大にすることができる。一方の境界面は、少なくとも、抗体定常ドメインのCH3ドメインの一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の境界面からの1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖が大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と交換される。大きなアミノ酸側鎖を小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)と交換することによって、第2の抗体分子の境界面に、大きな側鎖に同一なまたは類似するサイズの補償的な「空洞」が作り出される。これは、ヘテロ二量体の収率をホモ二量体などの他の不要な最終生成物より多く増やすための機構となる。1996年9月6日に公開されたWO96/27011を参照されたい。
抗体断片から二重特異性抗体または多重特異性抗体を作製するための技法は当技術分野において従来から公知である。例えば、二重特異性抗体または三重特異性抗体は化学的連結を用いて調製することができる。Brennan et al., Science 229:81 (1985)は、インタクトな抗体をタンパク分解により切断してF(ab') 2断片を生じる手順について説明している。ビシナルジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を阻止するために、これらの断片をジチオール錯化剤(dithiol complexing agent)である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元する。次いで、生じたFab'断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。次いで、メルカプトエチルアミンを用いた還元によって、Fab'-TNB誘導体の1つをFab'-チオールに再変換し、等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。生成した二重特異性抗体を、選択的な酵素固定化用の薬剤として使用することができる。Better et al., Science 240: 1041-1043 (1988)は細菌からの機能的抗体断片の分泌を開示している(例えば、Better et al., Skerra et al. Science 240: 1038-1041 (1988)を参照されたい)。例えば、Fab'-SH断片を大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992); Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992))。
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体断片または多重特異性抗体断片を作製および単離するための様々な技法が当技術分野において従来から公知である。例えば、ロイシンジッパー、例えば、GCN4を用いて二重特異性抗体が作製されている(大まかには、Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい)。FosおよびJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドを2つの異なる抗体のFab'部分と遺伝子融合によって連結した。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、次いで、再度、酸化して、抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は抗体ホモ二量体作製にも利用することができる。
本明細書で使用する「ミニボディ(minibody)」とは、Olafsen, et al., Protein Eng Des Sel. April 2004; 17(4):315-23に記載されている、ペプチドリンカー(ヒンジレス)を介して、またはIgGヒンジを介してCH3と融合したscFvを指す。
本明細書で使用する「マキシボディ(maxibody)」とは、免疫グロブリンのFc領域に共有結合的に取り付けた二価scFvを指す。例えば、Fredericks et al., Protein Engineering, Design & Selection, 17:95-106 (2004)およびPowers et al., Journal of Immunological Methods, 251:123-135 (2001)を参照されたい。
本明細書で使用する「細胞内抗体(intrabody)」とは、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作することができる単鎖抗体を指す(Biocca, et al., EMBO J. 9:101-108, 1990; Colby et al., Proc Natl Acad Sci USA. 101:17616-21, 2004)。細胞内抗体は、細胞内領域において抗体構築物を保持する細胞シグナル配列を含み、Mhashilkar et al., (EMBO J 14:1542-51, 1995)およびWheeler et al. (FASEB J. 17:1733-5. 2003)に記載のように作製することができる。トランスボディは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が単鎖可変断片(scFv)抗体と融合している細胞透過性抗体である。Heng et al., (Med Hypotheses. 64:1105-8, 2005)。
さらに、標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体が本明細書において意図される。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を果たすのに必要な免疫グロブリンドメインと融合した抗原結合ドメインを含む単鎖ポリペプチドである。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、WO03/041600、米国特許出願公開第20030133939号、および米国特許出願公開第20030118592号を参照されたい。
抗体およびその抗原結合断片のヒト化は、当技術分野において公知の様々な方法および本明細書に記載の様々な方法を介して達成することができる。同様に、ヒト化抗体の作製も、当技術分野において公知の方法および本明細書に記載の方法を介して達成することができる。
例示的な一態様において、本願は、本明細書に記載のエピトープに結合する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を有し、任意で、免疫グロブリンFc領域を有する、単鎖結合ポリペプチドを意図する。このような分子は、任意で、免疫グロブリンFc領域の存在によってエフェクター機能を有するか、または半減期の長い単鎖可変断片(scFv)である。単鎖結合ポリペプチドを産生する方法は当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願第2005/0238646号)。
「生殖系列遺伝子セグメント」または「生殖系列配列」という用語は、生殖系列(半数体配偶子、および半数体配偶子を形成する二倍体細胞)に由来する遺伝子を指す。生殖系列DNAは、1本のIg重鎖または軽鎖をコードする複数の遺伝子セグメントを含有する。これらの遺伝子セグメントは生殖細胞に入れられて運ばれるが、機能的遺伝子に並べられるまで重鎖および軽鎖に転写および翻訳することができない。骨髄内でB細胞が分化している間に、これらの遺伝子セグメントは、108を超える特異性を生じることができる動的な遺伝的システムによってランダムにシャッフルされる。これらの遺伝子セグメントの大部分は生殖系列データベースによって公開および収集されている。
抗体またはその抗原結合断片の結合親和性および/またはアビディティはフレームワーク領域を改変することによって改善される場合がある。フレームワーク領域を改変するための方法は当技術分野において公知であり、本明細書において意図される。変更する1つまたは複数の関連フレームワークアミノ酸位置の選択は様々な判断基準に左右される。変更する関連フレームワークアミノ酸を選択する判断基準の1つは、ドナー分子とアクセプター分子との間のアミノ酸フレームワーク残基の相対的差違でもよい。このアプローチを用いた、変更する関連フレームワーク位置の選択には、残基決定における主観的な偏りまたは残基によるCDR結合親和性寄与における、あらゆる偏りが回避されるという利点がある。
本明細書で使用する「免疫反応性の」とは、他のペプチド/タンパク質と交差反応することがあっても、ヒト投与に使用するために製剤化されるレベルでは毒性がない、アミノ酸残基からなる配列(「結合部位」または「エピトープ」)に特異的な抗体またはその抗原結合断片を指す。「結合」という用語は、2分子間の直接的な会合、例えば、生理学的条件下での共有結合相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、およびイオン相互作用、および/または水素結合相互作用による2分子間の直接的な会合を指し、塩橋および水橋(water bridge)などの相互作用ならびに他の任意の従来の結合手段を含む。「優先的に結合する」という用語は、結合物質が、無関係のアミノ酸配列に結合するより高い親和性で結合部位に結合することを意味する。好ましくは、このような親和性は、無関係のアミノ酸配列に対する結合物質の親和性より少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも6倍高い、少なくとも7倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも9倍高い、10倍高い、少なくとも20倍高い、少なくとも30倍高い、少なくとも40倍高い、少なくとも50倍高い、少なくとも60倍高い、少なくとも70倍高い、少なくとも80倍高い、少なくとも90倍高い、少なくとも100倍高い、または少なくとも1000倍高い。「免疫反応性の」および「優先的に結合する」という用語は本明細書において同義に用いられる。
本明細書で使用する「親和性」という用語は、2種類の薬剤の可逆的結合の平衡定数を指し、Kdで表される。一態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、1×10-6M以下の範囲で、または10-16M以下までの(例えば、約10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、10-14、10-15、10-16M、もしくはそれより低い)範囲でヘプシジンのKD(平衡解離定数)によって測定されたときに結合親和性などの望ましい特徴を示す。平衡解離定数はBIAcoreおよび/またはKinExAを用いて溶液平衡アッセイにおいて求めることができる。本明細書で使用する「アビディティ」という用語は、希釈後の解離に対する2種類以上の薬剤からなる複合体の抵抗性を指す。見かけの親和性は、酵素結合免疫測定法(ELISA)などの方法または当業者によく知られている他の任意の技法によって求めることができる。アビディティは、スキャッチャード分析または当業者によく知られている他の任意の技法によって求めることができる。
「エピトープ」とは、抗体の可変領域結合ポケットと結合相互作用を形成することができる、抗原または他の高分子の部分を指す。このような結合相互作用は、1つまたは複数のCDRの1つまたは複数のアミノ酸残基との分子間接触として現れることができる。抗原結合は、例えば、VH鎖およびVL鎖のCDR3またはCDR3対、場合によっては、最大6個全てのCDRの相互作用が関与する場合がある。エピトープは直鎖ペプチド配列(すなわち、「連続」)でもよく、非連続アミノ酸配列(すなわち、「コンホメーション」または「不連続」)で構成されてもよい。ある1つの抗体が1つまたは複数のアミノ酸配列を認識する場合があり、従って、ある1つのエピトープが複数の別個のアミノ酸配列を規定する場合がある。抗体が認識するエピトープは、ペプチドマッピングおよび当業者に周知の配列分析法によって決定することができる。結合相互作用はCDRの1つまたは複数のアミノ酸残基との分子間接触として現れる。
「特異的な」という用語は、抗体が認識するエピトープを含有する抗原以外の分子との有意な結合を抗体が全く示さない状況を指す。この用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多数の抗原が有する、ある特定のエピトープに特異的である場合にも適用することができる。この場合、抗原結合ドメインを有する抗体またはその抗原結合断片は、前記エピトープを有する様々な抗原に結合することができる。「優先的に結合する」または「特異的に結合する」という用語は、抗体またはその断片が、無関係のアミノ酸配列に結合するより高い親和性でエピトープに結合し、エピトープを含有する他のポリペプチドと交差反応することがあっても、ヒト投与に使用するために製剤化されるレベルでは毒性がないことを意味する。一局面において、このような親和性は、無関係のアミノ酸配列に対する抗体またはその断片の親和性より少なくとも1倍高い、少なくとも2倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも6倍高い、少なくとも7倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも9倍高い、10倍高い、少なくとも20倍高い、少なくとも30倍高い、少なくとも40倍高い、少なくとも50倍高い、少なくとも60倍高い、少なくとも70倍高い、少なくとも80倍高い、少なくとも90倍高い、少なくとも100倍高い、または少なくとも1000倍高い。「免疫反応性の」、「結合する」、「優先的に結合する」、および「特異的に結合する」という用語は本明細書において同義に用いられる。「結合」という用語は、2分子間の直接的な会合、例えば、生理学的条件下での共有結合相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、およびイオン相互作用、および/または水素結合相互作用による2分子間の直接的な会合を指し、塩橋および水橋などの相互作用、ならびに他の任意の従来の結合手段を含む。
抗体は結合親和性について、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Current Protocols in Molecular Biology (1999) John Wiley & Sons, NYに記載のゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる共分画(co-fractionation)、共沈、架橋結合、ELISAなどを含むが、これに限定されない当技術分野において公知の方法によってスクリーニングされる場合がある。
標的抗原上にある望ましいエピトープに結合する抗体は、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載のような日常的なクロスブロッキングアッセイにおいてスクリーニングされる場合がある。標的と本発明の標的特異的抗体との結合を阻害する能力によって未知の抗体が特徴付けられる日常的な競合的結合アッセイも用いられる場合がある。インタクトな抗原、その断片、例えば、細胞外ドメイン、または直鎖エピトープを使用することができる。エピトープマッピングはChampe et al., J. Biol. Chem. 270: 1388-1394 (1995)に記載されている。
ヒトヘプシジン活性を阻害または中和する抗体は、ヘプシジンを抗体と接触させ、試験抗体の存在下および非存在下でヘプシジン活性を比較し、抗体の存在によってヘプシジン活性が減少するかどうか確かめることによって特定される場合がある。ある特定の抗体または抗体の組み合わせの生物学的活性は、本明細書に記載の任意の動物モデルを含む適切な動物モデルを用いてインビボで評価される場合がある。
一態様において、標的ヘプシジンの生物学的活性と相互作用するか、またはこれを阻害する抗体を特定するハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイが本明細書において提供される。HTSアッセイによって多数の化合物を効率的にスクリーニングすることが可能になる。
「保存的アミノ酸置換」という句は、ある特定の共通特性に基づいたアミノ酸のグループ分けを指す。1つ1つのアミノ酸の間で共通特性を規定する機能的な手法は、相同な生物の対応するタンパク質間で、基準化されたアミノ酸変化頻度を分析する手法である(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。このような分析に従って、グループ内のアミノ酸が優先的に相互交換し、従って、タンパク質構造全体に及ぼす影響の点で互いに最も似ているアミノ酸グループを規定することができる(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag)。このように規定されたアミノ酸グループの例は、以下:
(i)GluおよびAsp、Lys、ArgおよびHisからなる荷電グループ、
(ii)Lys、Arg、およびHisからなる正荷電グループ、
(iii)GluおよびAspからなる負荷電グループ、
(iv)Phe、Tyr、およびTrpからなる芳香族グループ、
(v)HisおよびTrpからなる窒素環グループ、
(vi)Val、Leu、およびIleからなる大きな脂肪族非極性グループ、
(vii)MetおよびCysからなる、わずかに極性のあるグループ、
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln、およびProからなる小さな残基グループ、
(ix)Val、Leu、Ile、Met、およびCysからなる脂肪族グループ、ならびに
(x)SerおよびThrからなる小さなヒドロキシルグループ
を含む。
上記で示したグループに加えて、各アミノ酸残基は独自のグループを形成してもよく、1つ1つのアミノ酸によって形成されるグループは、単に、前記のように当技術分野において一般的に用いられるアミノ酸の1文字略語および/または3文字略語によって言及されることがある。
「保存残基」は、ある範囲の類似するタンパク質全体にわたって比較的変化しないアミノ酸である。多くの場合、「保存的アミノ酸置換」について前述したように、保存残基は類似するアミノ酸との交換でしか変化しない。
本明細書においてアミノ酸配列中に用いられる文字「x」または「xaa」は、特に定めのない限り、この位置に20種類の標準アミノ酸の全てを配置できると示すことが意図される。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性および同一性はそれぞれ、比較目的でアラインメントされ得る各配列にある位置を比較することによって確かめることができる。同じ塩基またはアミノ酸が比較配列中の等価な位置を占めるのであれば、これらの分子はその位置において同一である。同じまたは類似する(例えば、立体的および/または電子的な性質が類似する)アミノ酸残基が等価な部位を占めるのであれば、これらの分子はその位置において相同(類似する)と呼ぶことができる。相同性/類似性または同一性のパーセントとしての表示は、比較配列が共有する位置における同一のアミノ酸または類似するアミノ酸の数の関係を指す。「無関係の」または「非相同の」配列は本発明の配列と40%未満の同一性を有するが、好ましくは、25%未満の同一性を有する。同様に、2つ配列を比較した際に残基(アミノ酸もしくは核酸)が存在しなければ、または余分な残基が存在すれば同一性および相同性/類似性は低下する。
「相同性」という用語は、機能またはモチーフが似ている遺伝子またはタンパク質を特定するために用いられる、配列類似性の数学に基づいた比較について説明している。本発明の核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)配列およびアミノ酸(タンパク質)配列は、公的データベースと突き合わせて検索して、例えば、他のファミリーメンバー、関連配列、またはホモログを特定するための「クエリー配列」として使用される場合がある。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長(wordlength)=12を用いてBLASTヌクレオチド検索を行うことができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いてBLASTアミノ酸検索を行うことができる。比較目的でギャップ付アラインメントを得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載のようにGapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用したときに、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
本明細書で使用する「同一性」とは、配列マッチングが最大になるように、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮して2つ以上の配列がアラインメントされたときに、2つ以上の配列の対応する位置にある同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセントを意味する。同一性は、(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991;およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載の方法を含むが、これに限定されない公知の方法によって容易に計算することができる。同一性を求める方法は、試験配列間で最大マッチを生じるように設計される。さらに、同一性を求める方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を求めるコンピュータプログラム法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(1): 387 (1984)) 、BLASTP、BLASTN、およびFASTA (Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990)およびAltschul et al. Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))が含まれるが、これに限定されない。BLASTXプログラムがNCBIおよび他の情報源から公的に利用可能である(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)。同一性を求めるために、周知のスミス・ウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムも用いられる場合がある。
「単離された」(「実質的に純粋な」または「精製された」と同義に用いられる)とはポリペプチドに適用されたときに、その起源または操作によって、(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞に存在するポリペプチドもしくはその一部、または(ii)天然で連結されているもの以外のタンパク質もしくは他の化学的部分に連結されているポリペプチドもしくはその一部、または(iii)天然では生じないポリペプチドもしくはその一部、例えば、天然では見出されない形をとるように、タンパク質に少なくとも1つの疎水性部分を付けることによって、もしくは付加することによって化学的に操作されたタンパク質であることを意味する。さらに、「単離された」とは、(i)化学合成されたタンパク質、または(ii)宿主細胞内で発現され、関連するタンパク質および汚染タンパク質から精製されたタンパク質タンパク質を意味する。この用語は、一般的に、天然で一緒に生じる他のタンパク質および核酸から分離されているポリペプチドを意味する。好ましくは、ポリペプチドはまた、ポリペプチドを精製するために用いられた物質、例えば、抗体またはゲルマトリックス(ポリアクリルアミド)からも分離される。
「宿主免疫応答を誘導する」とは、対象が、病気の徴候または症状の緩和または軽減を経験したことを意味し、具体的には、生存期間の延長を含むが、それに限定されるわけではない。
遺伝子工学によって、ヒト化抗体を含むヒト化免疫グロブリンが構築されている。以前に述べられた、ほとんどのヒト化免疫グロブリンは、ある特定のヒト免疫グロブリン鎖(すなわち、アクセプターまたはレシピエント)のフレームワークと同一のフレームワーク、および非ヒト(すなわち、ドナー)免疫グロブリン鎖に由来する3個のCDRを含んでいた。本明細書に記載のように、ヒト化免疫グロブリン鎖を含む抗体の親和性を高めるためには、ヒト化はまた、ヒト化免疫グロブリン鎖フレームワーク中の限られた数のアミノ酸がアクセプター内ではなくドナー内の位置にあるアミノ酸と同じになるように特定および選択される判断基準を含んでもよい。
ヒト化抗体の親和性を高めることが望ましい場合、変換された抗体のCDR内の残基は他のアミノ酸でさらに置換されてもよい。典型的に、重鎖CDR2以外は、CDR内の4個以下のアミノ酸残基が変えられ、最も典型的には、CDR内の2個以下の残基が変えられる。重鎖CDR2では、10個と多くの残基が変えられてもよい。親和性の変化は、本明細書に記載の方法(例えば、Biacore)などの従来法によって測定することができる。
抗体を「超ヒト化(superhumanize)」する方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,881,557号においてさらに詳細に説明される。
ヒト化抗体および抗原結合断片は、当技術分野において公知の従来の技法を用いて構築および産生することができる。さらに、組換えにより調製された抗体は、特に、高レベル発現ベクターを利用したときに大量産生できる場合が多い。
抗体は、当技術分野において公知の従来の技法を用いて配列決定することができる。一局面において、ヒト対象を非ヒト抗体で処置する有害な副反応を限定することができるヒト抗体を作り出すために、CDRの1つまたは複数のアミノ酸配列が、合成配列、例えば、ヒト抗体(またはその抗原結合断片)フレームワークの合成配列に挿入される。ヒト対象に投与するための構築物を作り出すために、CDRの1つまたは複数のアミノ酸配列は、合成配列、例えば、AVIMER(商標)などの結合タンパク質の合成配列に挿入することもできる。このような技法は、処置しようとする動物の種に応じて変更することができる。例えば、獣医学的用途の場合、非ヒト(例えば、霊長類、ウシ、ウマなど)を投与するための抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質を合成することができる。
別の局面において、当技術分野において認められている技法、例えば、本明細書において提供される技法および本明細書に組み入れられる技法を用いて、CDRの1つまたは複数のアミノ酸配列をコードするヌクレオチドを、例えば、組換え法によって、抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質をコードする既存のポリヌクレオチドの制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。
発現の場合、発現系は、選択マーカーとしてグルタミン合成酵素遺伝子を用いるGS系(Lonza)を利用する発現系である。簡単に述べると、CHO細胞において、選択マーカーとしてグルタミン合成酵素遺伝子を用いるGS系(Lonza)を使用するエレクトロポレーション(250V)によってトランスフェクションを行う。野生型CHO細胞を、10%透析済ウシ胎仔血清(FCS)と2mMグルタミンを含有するDMEM(Sigma)中で増殖させる。エレクトロポレーションによって、6x107個のCHO細胞を300μgの直線化DNAを用いてトランスフェクトする。エレクトロポレーション後に、細胞を、グルタミンを含むDMEMに再懸濁し、36x96ウェルプレート(50μl/ウェル)にプレートし、37℃、5%CO2でインキュベートする。翌日、150μl/ウェルの選択培地(グルタミンを含まないDMEM)を添加する。約3週間後に、コロニーを、負の対照として無関係の抗体を用いたELISAによってスクリーニングする(下記を参照されたい)。>20μg/mlを生じた全コロニーを24ウェルプレートに拡大し、次いで、全く同じ2つのT25フラスコに拡大する。
高レベル産生の場合、最も広く用いられている哺乳動物発現系は、ジヒドロ葉酸(dehydrofolate)還元酵素欠損(「dhfr-」)チャイニーズハムスター卵巣細胞によって提供される遺伝子増幅手順を利用する哺乳動物発現系である。この系は当業者に周知である。この系は、ジヒドロ葉酸からテトラヒドロ葉酸への変換を触媒するDHFR酵素をコードするジヒドロ葉酸還元酵素「dhfr」遺伝子をベースとする。高生産を実現するために、dhfr-CHO細胞は、機能的DHFR遺伝子と、望ましいタンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターでトランスフェクトされる。この場合、望ましいタンパク質は組換え抗体の重鎖および/または軽鎖である。
競合的DHFR阻害剤であるメトトレキセート(MTX)の量を増やすことによって、組換え細胞はdhfr遺伝子を増幅することによって耐性を生じる。標準的な場合、使用される増幅ユニットはdhfr遺伝子のサイズよりかなり大きく、結果として、抗体重鎖は同時増幅される。
抗体鎖などの前記タンパク質の大量生産が望ましい場合、使用されている細胞の発現レベルおよび安定性が両方とも考慮される。長期培養では、組換えCHO細胞集団は親シングルクローンから生じるが、増幅中に特異的抗体の生産性に関して均一性を失う。
本願は、本明細書に記載の抗体または抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド(核酸)、このようなポリヌクレオチドを含有するベクター、ならびにこのようなポリヌクレオチドを転写し、ポリペプチドに翻訳するための宿主細胞および発現系を提供する。
本願はまた、前述の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、プラスミド、ベクター、転写カセット、または発現カセットの形をした構築物を提供する。
本願はまた、前述の1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。そのものとして提供される、本明細書に記載の任意の抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸は本願の一局面をなし、同様に、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸からの発現を含む、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を産生する方法も本願の一局面をなす。発現は、都合よく、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって成し遂げることができる。発現による産生後に、抗体または抗原結合断片を任意の適切な技法を用いて単離および/または精製し、次いで、適宜、使用することができる。
本明細書に記載の特異的抗体、抗原結合断片、ならびにコード核酸分子およびベクターは、単離および/または精製された形で、例えば、天然環境から単離および/または精製された形で、実質的に純粋または均一な形で提供することができる。核酸の場合、必要な機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸または遺伝子起源を含まないか、または実質的に含まない。核酸はDNAを含んでもよく、RNAを含んでもよく、完全または部分的に合成されてもよい。精製方法は当技術分野において周知である。
様々な異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングおよび発現するための系が周知である。適切な宿主細胞には、細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、およびバキュロウイルス系が含まれるが、これに限定されない。異種ポリペプチドを発現するための当技術分野において利用可能な哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウスミエローマ細胞、およびその他の多くの哺乳動物細胞株が含まれる。一般的な細菌宿主は大腸菌である。
大腸菌などの原核細胞における抗体または抗体断片の発現は当技術分野において十分に確立している。総説については、例えば、Pluckthun, A. Bio/Technology 9: 545-551 (1991)を参照されたい。真核培養細胞における発現もまた、本明細書に記載の抗体および抗原結合断片を産生するための選択肢として当業者に利用可能である。最近の総説については、例えば、Raff, M.E. (1993) Curr. Opinion Biotech. 4: 573-576; Trill J.J. et al. (1995) Curr. Opinion Biotech 6: 553-56を参照されたい。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および適宜、他の配列を含む適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルスベクター、例えば、ファージベクターまたはファージミドベクターでもよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質分析において核酸を操作するための多くの公知の技法およびプロトコールが、Short Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992において詳述されている。SambrookらおよびAusubelらの方法の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられ、当技術分野において周知である。
従って、さらなる局面は、本明細書において開示された核酸を含有する宿主細胞を提供する。なおさらなる局面は、このような核酸を宿主細胞に導入する工程を含む方法を提供する。導入は任意の利用可能な技法を使用することができる。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、リポソームを介したトランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えば、ワクシニアを用いた形質導入が含まれ、昆虫細胞の場合、バキュロウイルスが含まれ得る。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、およびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれ得る。
導入後に、例えば、遺伝子発現条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸から発現を引き起こす、または発現を可能にすることができる。
一態様では、前記核酸は宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。標準的な技法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって組込みを促進することができる。発現を最大にするために、必要に応じてIg強化を初期化することができる。
本願はまた、前述の抗体またはその抗原結合断片を発現するために、前述した構築物を発現系において使用する工程を含む方法を提供する。
本願はまた、本明細書に記載の抗体または抗原結合配列をコードする、単離された核酸、例えば、組換えDNA分子もしくはクローニングされた遺伝子、またはその縮重変種、その変異体、類似体、もしくは断片に関する。
一局面において、本願は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
さらなる態様において、本明細書に記載の抗体または抗原結合断片の組換えDNA分子またはクローニングされた遺伝子の完全DNA配列は、適切な宿主に導入することができる発現制御配列に機能的に連結することができる。従って、本願は、抗体のVHおよび/もしくはVLまたはその一部をコードするDNA配列を含むクローニングされた遺伝子または組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主にも及ぶ。
別の特徴は、本明細書において開示されたDNA配列の発現である。当技術分野において周知のように、DNA配列は、適切な発現ベクター内でDNA配列を発現制御配列に機能的に連結し、その発現ベクターを用いて適切な単細胞宿主を形質転換することによって発現することができる。
DNA配列と発現制御配列のこのような機能的連結には、もちろん、すでにDNA配列の一部ではないが、DNA配列の上流側に正しい読み枠で開始コドンATGの配置が含まれる。
ポリヌクレオチドおよびベクターは単離および/または精製された形で提供することができる(例えば、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド以外の起源のポリヌクレオチドを含まない、または実質的に含まない)。本明細書で使用する、「実質的に純粋な」および「実質的に含まない」とは、「純粋な」および「含まない」とは言えない、例えば、約20%以下の異物、約10%以下の異物、約5%以下の異物、約4%以下の異物、約3%以下の異物、約2%以下の異物、または約1%以下の異物を含有する溶液または懸濁液を指す。
本発明DNA配列を発現する際に多種多様な宿主/発現ベクターの組み合わせを使用することができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、および合成DNA配列のセグメントからなってもよい。適切なベクターには、SV40および公知の細菌プラスミドの誘導体、例えば、大腸菌プラスミドcol El、Pcr1、Pbr322、Pmb9、およびその誘導体、プラスミド、例えば、RP4;ファージDNA、例えば、非常に多くのファージλ誘導体、例えば、NM989、ならびに他のファージDNA、例えば、M13および線維状一本鎖ファージDNA;酵母プラスミド、例えば、2uプラスミドまたはその誘導体;真核細胞において有用なベクター、例えば、昆虫または哺乳動物細胞において有用なベクター;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、例えば、ファージDNAまたは他の発現制御配列を使用するように改変されているプラスミドなどが含まれるが、これに限定されない。
1つまたは複数のポリヌクレオチド構築物を含む組換え宿主細胞も本明細書において提供される。本明細書において提供される抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは本願の一局面をなし、同様に、前記ポリヌクレオチドからの発現を含む、前記抗体またはその抗原結合断片を産生する方法も本願の一局面をなす。発現は、例えば、前記ポリヌクレオチドを含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって成し遂げることができる。次いで、抗体または抗原結合断片を任意の適切な技法を用いて単離および/または精製し、適宜、使用することができる。
これらのベクター内に、任意の多種多様な発現制御配列-機能的に連結されたDNA配列の発現を制御する配列-を用いてDNA配列を発現することができる。このような有用な発現制御配列には、例えば、SV40、CMV、ワクシニア、ポリオーマ、またはアデノウイルスの初期プロモーターまたは後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージλの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母α-接合因子のプロモーター、ならびに原核細胞または真核細胞またはそのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列、ならびに様々なその組み合わせが含まれる。
様々な異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングおよび発現するための系が周知である。適切な宿主細胞には、細菌、哺乳動物細胞、酵母、およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現するための当技術分野において利用可能な哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウスミエローマ細胞、およびその他の多くの哺乳動物細胞株が含まれる。一般的な細菌宿主は、例えば、大腸菌でもよい。
大腸菌などの原核細胞における抗体または抗原結合断片の発現は当技術分野において十分に確立している。総説については、例えば、Pluckthun, A. Bio/Technology 9: 545-551 (1991)を参照されたい。真核培養細胞における発現も当業者に利用可能である(Raff, M.E. (1993) Curr. Opinion Biotech. 4: 573-576; Trill J.J. et al. (1995) Curr. Opinion Biotech 6: 553-560)。
DNA配列を発現する際に多種多様な単細胞宿主細胞も有用である。これらの宿主には、周知の真核生物宿主および原核生物宿主、例えば、大腸菌株、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、酵母などの菌類、および動物細胞、例えば、CHO、YB/20、NS0、SP2/0、Rl.l、B-WおよびL-M細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、ならびに組織培養中のヒト細胞および植物細胞が含まれる。
全てのベクター、発現制御配列、および宿主がDNA配列を発現するために等しく十分に機能するとは限らないことが理解されるだろう。また、全ての宿主が同じ発現系と等しく十分に機能するとは限らない。しかしながら、当業者は、本願の範囲から逸脱することなく望ましい発現を成し遂げるために、過度の実験なく適切なベクター、発現制御配列、および宿主を選択することができるだろう。例えば、ベクターは宿主内で機能しなければならないので、ベクターを選択する際には宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによってコードされる他の任意のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現も考慮される。当業者は、本願の範囲から逸脱することなく、望ましい発現を成し遂げるために適切なベクター、発現制御配列、および宿主を選択することができる。例えば、ベクターは宿主内で機能するので、ベクターを選択する際には宿主が考慮される。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによってコードされる他の任意のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現も考慮される場合がある。
本願はまた、前述の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、本明細書の他の場所で説明したプラスミド、ベクター、転写カセット、または発現カセットの形をした構築物も提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー、および適宜、他の配列を含む適切な制御配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルスベクター、例えば、ファージベクター、ファージミドベクターなどでもよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質分析において核酸を操作するための多くの公知の技法およびプロトコールが、Short Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992において詳述されている。SambrookらおよびAusubelらの方法および開示は参照により本明細書に組み入れられる。
発現制御配列を選択する際に、通常、様々な要因が考慮される。これらの要因には、例えば、系の相対的な強さ、系の制御可能性、および系と、発現しようとする特定のDNA配列または遺伝子との適合性、特に、潜在的な二次構造についての適合性が含まれる。適切な単細胞宿主は、例えば、選択されたベクターとの適合性、分泌特徴、タンパク質を正しく折り畳む能力、および発酵の必要条件、ならびに宿主に対する、発現しようとするDNA配列によってコードされる産物の毒性、および発現産物の精製の容易さを考慮することによって選択される。
さらなる局面は、本明細書において開示された1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。なおさらなる局面は、任意の利用可能な技法を用いて、このような1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する方法を提供する。真核細胞の場合、適切な技法には、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEDextran、エレクトロポレーション、リポソームを介したトランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス(例えば、ワクシニア)を用いた形質導入が含まれ、昆虫細胞の場合、バキュロウイルスが含まれ得る。細菌細胞の場合、適切な技法には、例えば、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、およびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれ得る。
導入後に、例えば、1つまたは複数のポリヌクレオチドから1つまたは複数のポリペプチドを発現するための条件下で宿主細胞を培養することによって、1つまたは複数のポリヌクレオチドから発現を引き起こす、または発現を可能にすることができる。誘導系を使用することができ、アクチベーターを添加することによって発現を誘導することができる。
一態様では、前記ポリヌクレオチドを宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込むことができる。標準的な技法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって、組込みを促進することができる。別の態様では、前記核酸は宿主細胞内にあるエピソームベクター上に維持される。
ある特定のポリペプチドを発現するために、前述した構築物を発現系において使用する工程を含む方法が本明細書において提供される。
これらの要因および他の要因を考慮すると、当業者は、発酵時に、または大量動物培養中にDNA配列を発現する様々なベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを構築することができるだろう。
抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、クローニングに加えて、またはクローニングではなく組換え/合成により調製することができる。抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質に適したコドンを用いてポリヌクレオチドを設計することができる。一般的に、前記配列が発現に用いられるのであれば、意図された宿主に好ましいコドンが選択される。標準的な方法によって調製した重複オリゴヌクレオチドから完全ポリヌクレオチドを組み立て、完全コード配列に組み立てることができる。例えば、Edge, Nature, 292:756 (1981); Nambair et al., Science, 223:1299 (1984); Jay et al., J. Biol. Chem., 259:6311 (1984)を参照されたい。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
非天然アミノ酸をタンパク質に部位特異的に組み込むための一般的方法は、Noren et al., Science, 244:182-188 (April 1989)に記載されている。この方法を用いて、非天然アミノ酸を有する類似体を作り出すことができる。
前述のように、抗体またはその抗原結合断片をコードするDNA配列はクローニングではなく合成によって調製することができる。抗体または抗原結合断片のアミノ酸配列に適したコドンを用いてDNA配列を設計することができる。一般的に、前記配列が発現に用いられるのであれば、意図された宿主に好ましいコドンが選択される。標準的な方法によって調製した重複オリゴヌクレオチドから完全配列が組み立てられ、完全コード配列に組み立てられる。
抗体またはその抗原結合断片は、様々な目的で、当技術分野において公知の技法を用いて、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を付加することによって改変することができる。PEG改変(ペグ化)は、循環期間の改善、溶解度の改善、タンパク質分解に対する耐性の改善、抗原性および免疫原性の低下、バイオアベイラビリティの改善、毒性の低下、安定性の改善、および製剤化の容易化の1つまたは複数につながることができる(総説については、Francis et al., International Journal of Hematology 68:1-18, 1998を参照されたい)。
Fc部分を含有しない抗原結合断片の場合、例えば、対象に投与されたときに血液循環中での抗原結合断片の半減期を延ばすために、Fc部分を断片に(例えば、組換えにより)付加することができる。適切なFc領域およびこのような断片を組み込む方法の選択は当技術分野において公知である。循環半減期を延ばすが、生物学的活性を失わないようにするために、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,096,871号に記載のように当技術分野において公知の従来の技法を用いて、IgGのFc領域を関心対象のポリペプチドに組み込むことができる。対象に投与されたときに血液循環中での抗原結合断片の半減期を延ばすために、抗体のFc部分をさらに改変することができる。改変は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,217,798号に記載のように当技術分野における従来の手段を用いて確かめることができる。
循環中での抗体ベース融合タンパク質の半減期を改善する他の方法もまた、例えば、米国特許第7,091,321号および同第6,737,056号に記載のように公知である。米国特許第7,091,321号および同第6,737,056号はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。さらに、複合N-グリコシド結合糖鎖にフコースを含有しないように、抗体およびその抗原結合断片を産生または発現することができる。複合N-グリコシド結合糖鎖からフコースを除去すると、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を含むが、これに限定されない、抗体および抗原結合断片のエフェクター機能を高めることが知られている。同様に、エピトープに結合することができる抗体またはその抗原結合断片のC末端を、任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgE、IgD、およびIgM、ならびに任意のアイソタイプサブクラス、特に、IgG1、IgG2b、IgG2a、IgG3、およびIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全てまたは一部に取り付けることができる。
さらに、本明細書に記載の抗体または抗原結合断片はまた血液脳関門を通過できるように改変することができる。本明細書に記載の抗体または抗原結合断片がこのように改変されると、多形性神経膠芽腫(GBM)などの脳疾患の処置が可能になる。抗体または抗原結合断片などのタンパク質が血液脳関門を通過するのを可能にする例示的な改変は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2007/0082380号に記載されている。
免疫グロブリンのグリコシル化は、エフェクター機能、構造安定性、および抗体産生細胞からの分泌速度に大きな影響を及ぼすことが示されている(Leatherbarrow et al., Mol. Immunol. 22:407 (1985))。一般的に、これらの特性を担う炭水化物基は抗体の定常(C)領域に取り付けられる。例えば、補体依存性細胞溶解の古典的経路を活性化するIgGの全能力を得るためには、CH2ドメインのアスパラギン297においてIgGがグリコシル化されることが必要である(Tao and Morrison, J. Immunol. 143:2595 (1989))。抗体の正しい組み立ておよび細胞溶解活性のためには、CH3ドメインのアスパラギン402においてIgMがグリコシル化されることが必要である(Muraoka and Shulman, J. Immunol. 142:695 (1989))。IgA抗体のCH1およびCH3ドメインの位置162および419にあるグリコシル化部位が除去されると細胞内分解が引き起こされ、分泌の少なくとも90%が阻害される(Taylor and Wall, Mol. Cell. Biol. 8:4197 (1988))。さらに、複合N-グリコシド結合糖鎖にフコースを含有しないように、抗体およびその抗原結合断片を産生または発現することができる。複合N-グリコシド結合糖鎖からフコースを除去すると、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を含むが、これに限定されない、抗体および抗原結合断片のエフェクター機能を高めることが知られている。これらの「脱フコシル」抗体および抗原結合断片は、複合N-グリコシド結合糖鎖にフコースを含めるのに必要な酵素および生化学経路をもはや含まないように遺伝子操作されているトランスジェニック動物、トランスジェニック植物、または細胞株(フコシルトランスフェラーゼノックアウト動物、植物、または細胞とも知られる)を含むが、これに限定されない、当技術分野において公知の分子クローニング法を利用して様々な系を介して産生することができる。フコシルトランスフェラーゼノックアウト細胞になるように操作することができる細胞の非限定的な例には、CHO細胞、SP2/0細胞、NS0細胞、およびYB2/0細胞が含まれる。
免疫グロブリンの可変(V)領域におけるグリコシル化も観察されている。SoxおよびHoodは、ヒト抗体の約20%がV領域においてグリコシル化されることを報告した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 66:975 (1970))。Vドメインのグリコシル化はV領域配列にN結合型グリコシル化シグナルAsn-Xaa-Ser/Thrが偶然に発生したことから生じたと考えられ、免疫グロブリン機能において役割を果たしていると当技術分野において認められていなかった。
可変ドメインフレームワーク残基におけるグリコシル化によって、抗体と抗原との結合相互作用を変えることができる。本発明は、抗体の親和性を高めるために、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワークまたはCDRにある限られた数のアミノ酸が(例えば、残基の置換、欠失、または付加によって)変異するように選択される判断基準を含む。
抗体またはFc含有ポリペプチドのFc領域においてシステイン残基が除去または導入され、それによって、この領域にある鎖間ジスルフィド結合形成が排除される、または増加する場合がある。このような方法を用いて作製されたホモ二量体の特異的結合物質または抗体は、内部移行能力の改善ならびに/または補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)の増加を示す可能性がある。Caron et al., J. Exp Med. 176: 1191-1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)を参照されたい。
CDR内の配列によって、抗体はMHCクラスIIに結合し、不要なヘルパーT細胞応答を誘発できることが示されている。保存的置換によって、抗体は結合活性を保持するが、不要なT細胞応答を誘発する能力を低減することが可能になる場合がある。一態様において、重鎖または軽鎖の20個のN末端アミノ酸の1つまたは複数が除去されてもよい。
一部の態様において、改善したADCC活性を示す、フコシル化が存在しないか、またはフコシル化が低減した抗体分子を含む、炭水化物構造が変化し、その結果、エフェクター活性が変化した抗体分子が産生される場合がある。これを成し遂げるために様々なやり方が当技術分野において公知である。例えば、ADCCエフェクター活性は抗体分子とFcγRIII受容体との結合によって媒介され、CH2ドメインのAsn-297にあるN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、この受容体に高親和性で結合し、FcγRIIIを介したエフェクター機能を天然フコシル化抗体より効率的に誘発する。一部の宿主細胞株、例えば、Lec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、フコシル化レベルの低い抗体を天然で産生する。Shields et al., J Biol Chem. Jul. 26, 2002;277(30):26733-40; Shinkawa et al., J Biol Chem. Jan. 31, 2003;278(5):3466-73。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞内で抗体を組換えにより産生することによる、分岐した(bisected)炭水化物のレベルの増加もADCC活性を増やすことが確かめられている。Umana et al., Nat Biotechnol. February 1999;17(2):176-80。ADCC活性を増やすには、2個のフコース残基のうち1つを無くすことだけで十分な可能性があると予測されている(Ferrara et al., J Biol Chem. Dec. 5, 2005)。
抗体の共有結合改変も本明細書に含まれる。抗体の共有結合改変は抗体の化学合成によって加えられてもよく、該当する場合は抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって加えられてもよい。選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と、標的化アミノ酸残基を反応させることによって、他のタイプの共有結合改変が導入されてもよい。
カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得るために、システイニル残基を、最も一般的には、α-ハロアセテート(および対応するアミン)、例えば、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドと反応させる。システイニル残基はまた、ブロモトリフロオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロ第二水銀安息香酸、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールと反応することで誘導体化される。
ヒスチジル残基を、pH5.5〜7.0でジエチルピロカルボネートと反応させることによって誘導体化することができる。なぜなら、この薬剤はヒスチジル側鎖に比較的特異的だからである。パラ-臭化ブロモフェナシルも有用である。この反応はpH6.0で0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われてもよい。
リジニルおよびアミノ末端残基をコハク酸無水物または他のカルボン酸無水物と反応させることができる。これらの薬剤による誘導体化には、リジニル残基の電荷を逆転させる効果がある。α-アミノ含有残基を誘導体化するための他の適切な試薬には、イミドエステル、例えば、ピコリンイミド酸メチル、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド(chloroborohydride)、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシル酸を用いたトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。
アルギニル残基を、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンなどの1種類または数種類の従来の試薬と反応させることによって改変することができる。アルギニン残基を誘導体化するには、グアニジン官能基のpKaが高いため反応がアルカリ条件下で行われることが必要である。さらに、これらの試薬は、リジンならびにアルギニンのε-アミノ基のグループと反応し得る。
芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンと反応させることによってチロシル残基にスペクトル標識を導入することに特別の関心をもって、チロシル残基の特異的改変を加えることができる。最も一般的には、N-アセチルイミジゾール(acetylimidizole)およびテトラニトロメタンを用いて、それぞれ、O-アセチルチロシル種および3-ニトロ誘導体を形成することができる。ラジオイムノアッセイにおいて使用するための標識タンパク質を調製するために、チロシル残基は125Iまたは131Iを用いてヨウ素化される。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)はカルボジイミド(R―N=C=N―R')と反応することによって選択的に改変される。式中、RおよびR'は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基はアンモニウムイオンと反応することによってアスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基を、それぞれ、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミドすることができる。これらの残基は中性条件または塩基性条件下で脱アミドされる。
他の改変には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
別のタイプの共有結合改変は、グリコシドと、特異的結合物質または抗体との化学的または酵素的なカップリングを伴う。これらの手順は、N結合型グリコシル化またはO結合型グリコシル化のためにグリコシル化能を有する宿主細胞内でポリペプチドまたは抗体を産生することを必要としない点で有利である。使用するカップリング形式に応じて、糖を、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインの遊離スルフヒドリル基、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、スレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に取り付けることができる。これらの方法は、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
ポリペプチドまたは抗体に存在するいかなる炭水化物部分も化学的または酵素的に除去することができる。化学的脱グリコシルは、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物への抗体の曝露を伴う。この処理によって、抗体は完全な状態のままで、結合糖(linking sugar)(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどの糖または全ての糖が切断される。化学的脱グリコシルは、Hakimuddin, et al. Arch. Biochem. Biophys. 259: 52 (1987) およびEdge et al. Anal. Biochem., 118: 131 (1981)に記載されている。抗体にある炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al. Meth. Enzymol. 138: 350 (1987)に記載のように様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって成し遂げることができる。
ヘプシジン活性の別のタイプの共有結合改変は、抗体を様々な非タンパク質ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、または多糖ポリマー、例えば、デキストランに連結する工程を含む。このような方法は当技術分野において公知である。例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、同第4,179,337号、同第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、同第4,609,546号、またはEP315456を参照されたい。
所定のポリペプチド抗原を結合するための親和性は、一般的に、1つまたは複数の変異を、V領域フレームワーク、典型的には、1つもしくは複数のCDRに隣接する領域および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域にあるV領域フレームワークに導入することによって調整することができる。典型的に、このような変異は、グリコシル化部位配列を破壊するか、または作り出すが、ポリペプチドのヒドロパシー構造特性に実質的に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換の導入を伴う。典型的に、プロリン残基を導入する変異は回避される。抗体およびその抗原結合断片のグリコシル化は、グリコシル化に関して本明細書において参照により組み入れられる米国特許第6,350,861号においてさらに説明される。
抗ヘプシジン抗体
ヘプシジンに結合するヒト化抗体およびその抗原結合断片が本明細書において提供される。
ヘプシジンは鉄ホメオスタシスの調節に関与する。ヘプシジンはフェロポーチンに結合し、フェロポーチンを細胞表面から内部に取り入れ、分解することによってフェロポーチンの機能活性を減少させる。
高レベルのヒトヘプシジンは鉄レベルを下げることができ、逆もまた同じである。ヘプシジン活性を無くすヘプシジン遺伝子変異は、重篤な鉄過剰症疾患である若年性ヘモクロマトーシスに関連する。マウスでの研究から、正常な鉄ホメオスタシスの制御におけるヘプシジンの役割が証明されている。
ヘプシジンはまた炎症中の鉄イオン封鎖(sequestration)に関与している可能性がある。ヘプシジン遺伝子発現は、脊椎動物の自然免疫系の急性期応答を誘導する炎症刺激、例えば、感染の後に強くアップレギュレートされることが観察されている。ヘプシジン遺伝子発現は、リポ多糖(LPS)、テルペンチン、フロイント完全アジュバント、不完全アジュバント、アデノウイルス感染、および炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)によってアップレギュレートされる可能性がある。ヘプシジン発現と炎症性貧血との強い相関関係はまた、細菌感染、真菌感染、およびウイルス感染を含む慢性炎症性疾患のある患者においても見出された。
ヒトヘプシジンは、抗菌活性および鉄調節活性を有する25アミノ酸のペプチドである。ヒトヘプシジンはLEAP-1(肝臓で発現される抗菌ペプチド)とも呼ばれたことがある。その後に、鉄によって調節される肝臓特異的遺伝子を探索する中で、マウスにおいて83アミノ酸プレプロペプチドをコードするヘプシジンcDNAならびにラットおよびヒトにおいて84アミノ酸プレプロペプチドをコードするヘプシジンcDNAが特定された。最初に、24残基のN末端シグナルペプチドが切断されてプロヘプシジンを生じ、次いで、プロヘプシジンはさらに処理されて、血液および尿の両方に見出される成熟ヘプシジンを生じる。ヒト尿中にある最も優勢な型は25アミノ酸を含有するが、ある特定の疾患では、さらに短い22アミノ酸ペプチドおよび20アミノ酸ペプチドも検出不可能な濃度または非常に低い濃度で存在する。
ヘプシジン活性を調整し、それによって鉄ホメオスタシスを調節する、ヘプシジンに対するモノクローナル抗体(MAb)が産生されている。以後、「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語への言及は、本明細書に記載の抗原結合断片を全て含むと考えなければならない。これらの用語は該当する場合は同義でなければならない。
これらの抗体およびその抗原結合断片は、様々な状態および疾患の診断および処置ならびにヘプシジンの精製および検出に有用である。
抗体または抗原結合断片とヘプシジンとの結合は、部分的に(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、もしくはこの中の任意の数)または完全にヘプシジンを調整することができる。抗体または抗原結合断片の活性は、当技術分野において認められているアッセイ、例えば、本明細書に記載のアッセイまたはそうでなければ当技術分野において公知のアッセイを用いてインビトロアッセイを用いて、および/またはインビボで確かめることができる。
一局面において、前記の抗体のいずれか一つの抗原結合断片は、本明細書に記載のようなFab、Fab'、Fd、F(ab')2、Fv、scFv、単鎖結合ポリペプチド(例えば、Fc部分を有するscFv)、または他の任意のその機能的断片である。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、必要に応じて望ましい機能を保持しながら抗体の特定の特性を変えるようにさらに改変することができる。例えば、一態様において、前記化合物は、インビボ安定性、溶解度、バイオアベイラビリティ、または半減期などの前記化合物の薬物動態学的特性を変えるように改変することができる。
抗体またはその抗原結合断片は、注射を含むが、これに限定されない、対象への任意の適切な投与経路用に製剤化することができる。注射には、例えば、皮下注射、腹膜注射、または静脈内注射が含まれる。投与は、1ヶ所、2ヶ所、3ヶ所、4ヶ所、5ヶ所、6ヶ所、7ヶ所、またはそれより多い注射部位で行われてもよい。一態様において、投与は6ヶ所の注射部位を介して行われる。
このような方法を用いて作製された、ヘプシジンに結合する抗体、抗原結合断片、および結合タンパク質は、これらの結合親和性、アビディティ、および調整能力の1つまたは複数について試験することができる。下記で詳述されるような状態、疾患、または障害を予防、阻害、管理、または処置するために、有用な抗体および抗原結合断片を対象に投与することができる。
ヘプシジンに結合する抗体またはその抗原結合断片を特定するために従来法が用いられる場合がある。抗体および抗原結合断片は、結合親和性、会合速度、解離速度、およびアビディティの1つまたは複数について評価することができる。一局面において、抗体は、ヘプシジン、またはヘプシジン結合配列(エピトープ)が存在するポリペプチドの活性を調整する能力について評価することができる。結合親和性、会合速度、解離速度、およびアビディティの測定は、酵素結合免疫測定法(ELISA)、スキャッチャード分析、BIACORE分析など、ならびに一般的に用いられ、当業者に公知の他のアッセイ(表面プラズモン共鳴)を含むが、これに限定されない、当技術分野において認められているアッセイを用いて成し遂げることができる。
抗体とヘプシジンとの結合の測定値ならびに/または抗体およびその抗原結合断片の能力は、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、競合的結合アッセイ、ELISPOTアッセイ、または当技術分野において公知の他の任意の有用なアッセイを用いて確かめることができる。これらのアッセイは一般的に用いられ、当業者に周知である。
非限定的な一態様では、ELISAアッセイを用いて、ヘプシジンに結合する特異的な抗体または抗原結合断片の結合能力を測定することができる。
ELISAなどのアッセイはまた、他の抗体またはその抗原結合断片と比較してヘプシジンに対して高い特異性を示す抗体またはその抗原結合断片を特定するのにも使用することができる。ELISAなどのアッセイはまた、1つまたは複数のポリペプチドにまたがるエピトープおよび1つまたは複数のヘプシジン種にまたがるエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片を特定するのにも使用することができる。特異性アッセイは、ヘプシジンに結合する抗体またはその抗原結合断片を特定するために、ヘプシジンエピトープを含有するポリペプチドの様々な種にある1つまたは複数のエピトープに結合する能力について、試験抗体またはその抗原結合断片が別々のアッセイチャンバー内で並行してスクリーニングされる並列ELISAを行うことによって実施することができる。当業者がよく知っている、見かけの結合親和性を測定するための別の技法は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE 2000システムで分析した)(Liljeblad, et al., Glyco. J. 2000, 17:323-329)である。標準的な測定法および従来の結合アッセイは、Heeley, R. P., Endocr. Res. 2002, 28:217-229に記載されている。
当技術分野において公知の方法および本明細書に記載の方法を含むが、これに限定されない様々なインビトロ方法およびインビボ方法を用いて、抗体およびその抗原結合断片の様々な機能を試験することができる。
ヘプシジンに結合する抗体およびその抗原結合断片が本明細書において提供される。一局面において、ヘプシジンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、以下:
(i)SEQ ID NO:55〜57のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR1、
(ii)SEQ ID NO:58〜60のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR2、および
(iii)SEQ ID NO:61〜63のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR3
を含み、前記軽鎖可変領域が、以下:
(i)SEQ ID NO:64〜66のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR1、
(ii)SEQ ID NO:67〜69のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR2、および
(iii)SEQ ID NO:70〜72のいずれか一つのアミノ酸配列を有するCDR3
を含む、抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。
一局面において、ヘプシジンまたはヘプシジンペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、以下:
(i)SEQ ID NO:1〜3のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR1、
(ii)SEQ ID NO:4〜6のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR2、および
(iii)SEQ ID NO:7〜9のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR3
を含み、
前記軽鎖可変領域が、以下:
(i)SEQ ID NO:10〜12のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR1、
(ii)SEQ ID NO:13〜15のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR2、および
(iii)SEQ ID NO:16〜18のいずれか一つによってコードされるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。一局面において、以下の配列表に示した重鎖可変領域フレームワーク領域;および軽鎖可変領域フレームワーク領域を含み、Kabatナンバリングを用いて、フレームワーク領域に、SEQ ID NO:1〜18または55〜72のいずれか一つに特定されるCDRが挿入されている、抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。
一局面において、げっ歯類(すなわち、マウス、ラット、またはウサギ)に、SEQ ID NO:19〜27のいずれか一つのアミノ酸配列を有するペプチドを注射することによって調製された、ヘプシジンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。別の態様において、前記ペプチドは、担体(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))またはアジュバント(完全フロイントアジュバント(CFA)もしくは不完全フロイントアジュバント(IFA))と結合体化される。一態様において、ヘプシジンの残基1-9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。別の態様において、ヘプシジンのアミノ酸残基1-7に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。
抗体またはその抗原結合断片が結合するヘプシジンペプチドはSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有してもよい。
Hep-5、Hep-9、Hep-20、Hep22、およびHep-25のいずれか一つのアミノ酸配列を含むエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。これらのペプチドの配列を配列表に示した。
一態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、Hep-20(SEQ ID NO:22)、Hep-22(SEQ ID NO:23)およびHep-25(SEQ ID NO:19)のアミノ酸配列を含むエピトープに特異的に結合する。
一態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、Hep-5(SEQ ID NO:25)またはHep-9(SEQ ID NO:24)を含むエピトープに特異的に結合する。別の態様において、ヘプシジンの残基1-9を含むエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。別の態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、ヘプシジンのアミノ酸残基1-9を含むエピトープの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個のアミノ酸残基に特異的に結合する。
別の態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:55によってコードされる重鎖CDR1、SEQ ID NO:58によってコードされる重鎖CDR2、SEQ ID NO:61によってコードされる重鎖CDR3、SEQ ID NO:64によってコードされる軽鎖CDR1、SEQ ID NO:67によってコードされる軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:70によってコードされる軽鎖CDR3を含むモノクローナル抗体である。
別の態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:56によってコードされる重鎖CDR1、SEQ ID NO:59によってコードされる重鎖CDR2、SEQ ID NO:61によってコードされる重鎖CDR3、SEQ ID NO:65によってコードされる軽鎖CDR1、SEQ ID NO:68によってコードされる軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:71によってコードされる軽鎖CDR3を含むモノクローナル抗体である。
別の態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:57によってコードされる重鎖CDR1、SEQ ID NO:60によってコードされる重鎖CDR2、SEQ ID NO:63によってコードされる重鎖CDR3、SEQ ID NO:66によってコードされる軽鎖CDR1、SEQ ID NO:69によってコードされる軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:72によってコードされる軽鎖CDR3を含むモノクローナル抗体である。
前記抗体は、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体でもよい。一態様において、ヒト化可変重鎖はSEQ ID NO:40として示したアミノ酸配列を含む。別の態様において、ヒト化可変軽鎖はSEQ ID NO:38として示したアミノ酸配列を含む。
一局面において、以下の配列表に示した重鎖可変領域フレームワーク領域;および軽鎖可変領域フレームワーク領域を含み、Kabatナンバリングを用いて、フレームワーク領域にSEQ ID NO:1〜18または55〜72のいずれか一つに特定されるCDRが挿入されている、抗体またはその抗原結合断片が本明細書において提供される。
抗原結合断片は、例えば、本明細書に記載のFab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fv断片、scFv断片、単鎖結合ポリペプチド、Fd断片、可変重鎖、可変軽鎖、dAb断片、または他の任意のタイプの断片でもよい。抗原結合断片は、例えば、AVIMER、ダイアボディ、または重鎖二量体でもよい。重鎖二量体は、例えば、ラクダ科またはサメの重鎖構築物でもよい。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片の解離定数(Kd)は、約1〜約10pM、約10〜約20pM、約1〜約29pM、約30〜約40pM、約10〜約100pM、または約20〜約500pMでもよい。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片の解離定数(Kd)は、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約75pM未満、約50pM未満、約30pM未満、約25pM未満、約20pM未満、約18pM未満、約15pM未満、約10pM未満、約75.pM未満、約5pM未満、約2.5pM未満、または約1pM未満でもよい。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片のヘプシジンまたはヘプシジンペプチドに対する親和性は、約10-9〜約10-14、約10-10〜約10-14、約10-11〜約10-14、約10-12〜約10-14、約10-13〜約10-14、約10-10〜約10-11、約10-11〜約10-12、約10-12〜約10-13、または10-13〜約10-14でもよい。
抗体または抗原結合断片および許容される担体または賦形剤を含む組成物が本明細書において提供される。組成物は以下でさらに詳細に説明する。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も本明細書において提供される。調節制御配列に機能的に連結された、前記核酸分子を含む発現ベクターも本明細書において提供される。本明細書において提供されるベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞も本明細書において提供される。核酸が発現して抗体を産生するような適切な条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、抗体を産生するために前記宿主細胞を使用する方法も本明細書において提供される。
組成物
本明細書に記載の化合物はそれぞれ、許容される担体または賦形剤と組み合わされたときに組成物として使用することができる。このような組成物は、インビトロ分析もしくはインビボ分析、または開示された化合物によって対象を処置するためのインビボまたはエクスビボでの対象への投与に有用である。
従って、薬学的組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、または当業者に周知の他の材料を含んでもよい。このような材料は無毒でなければならず、活性成分の効力を妨害してはならない。担体または他の材料が厳密にどういったものであるかということは投与経路に左右されるだろう。
本明細書に記載の方法によって特定される関心対象のタンパク質、例えば、抗体または抗原結合断片を含む薬学的製剤は、望ましい程度の純度を有する前記タンパク質を生理学的に許容される最適な担体、賦形剤、または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形で保管するために調製することができる。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒の担体、賦形剤、または安定剤であり、緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
許容される担体とは、投与される対象に生理学的に許容され、一緒に/中に入れられて投与される化合物の治療的特性を保持するものである。許容される担体およびその製剤は、例えば、Remington'pharmaceutical Sciences (18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA 1990)に概説されている。一つの例示的な担体は生理食塩水である。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」という句は、臓器もしくは身体の一部の投与部位から別の臓器もしくは身体の一部への本化合物の運搬もしくは輸送またはインビトロアッセイ系に関与する、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料を意味する。それぞれの担体は、製剤の他の成分と適合し、担体が投与される対象を傷つけないという意味で許容される。同様に、許容される担体は本化合物の比活性を変えてはならない。
一局面において、薬学的投与と適合する、溶媒(水性または非水性)、溶液、エマルジョン、分散媒、コーティング、等張剤および吸収促進剤または吸収遅延剤を含む、薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される組成物が本明細書において提供される。従って、薬学的組成物または薬学的製剤とは、対象における薬学的使用に適した組成物を指す。薬学的組成物および薬学的製剤は、ある量の本明細書に記載の化合物および薬学的または生理学的に許容される担体を含む。
組成物は、特定の投与経路(すなわち、全身経路または局所経路)と適合するように製剤化することができる。従って、組成物は、様々な経路による投与に適した担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
別の態様において、前記組成物は、必要に応じて、組成物中の化合物の安定性を改善するために、および/または組成物の放出速度を制御するするために、許容される添加物をさらに含んでもよい。許容される添加物は本化合物の比活性を変えない。例示的な許容される添加物には、糖、例えば、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトース、およびその混合物が含まれるが、これに限定されない。許容される添加物は、デキストロースなどの許容される担体および/または賦形剤と組み合わせることができる。または、例示的な許容される添加物には、ペプチドの安定性を高め、溶液のゲル化を減らす界面活性剤、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80が含まれるが、これに限定されない。界面活性剤は、溶液の0.01%〜5%の量で組成物に添加することができる。このような許容される添加物を添加すると保管中の組成物の安定性が高まり、半減期が延びる。
一態様において、組成物は、張性増加および安定化を行う張性剤(tonicity agent)、例えば、ポリオール、ソルビトール、スクロース、または塩化ナトリウムと組み合わせて、等張性緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、またはTRIS緩衝液を含有してもよい。張性剤は約5%の量で組成物に存在してもよい。
別の態様において、前記組成物は、例えば、凝集を阻止するために、および安定化のために、0.01〜0.02%wt/volの界面活性剤を含んでもよい。
別の態様において、前記組成物のpHは4.5〜6.5または4.5〜5.5でもよい。
抗体用の薬学的組成物の他の代表的な説明は、例えば、US2003/0113316および米国特許第6,171,586号において見られる場合がある。US2003/0113316および米国特許第6,171,586号はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書の組成物はまた、必要に応じて、処置されている特定の適応症に合わせて複数種の活性化合物、例えば、互いに悪影響を及ぼさない相補活性を有する活性化合物を含有してもよい。例えば、処置方法は免疫抑制剤をさらに提供してもよい。このような分子は、所期の目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。
活性成分は、例えば、コアセルベーション法によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルの中に、もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルの中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)の中に、またはマクロエマルジョンの中に封入されてもよい。このような技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. (ed.)(1980)に開示される。
抗体の懸濁液および結晶型も本明細書において意図される。懸濁液および結晶型を作製する方法は当業者に公知である。
インビボ投与に用いられる組成物は滅菌されていなければならない。一部の態様において、本発明の組成物は従来の周知の滅菌法によって滅菌することができる。例えば、滅菌は滅菌濾過膜で濾過することによって容易に達成することができる。結果として生じた溶液は使用のために包装されてもよく、無菌条件下で濾過し、凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌溶液と組み合わされる。
例えば、ポリペプチドが液体組成物中で比較的不安定な場合、長期保管のためにポリペプチドを安定化するために凍結乾燥が用いられてもよい。凍結乾燥サイクルは、通常、3つの工程:凍結、一次乾燥、および二次乾燥からなる。Williams and Polli, Journal of Parenteral Science and Technology, Volume 38, Number 2, 48-59頁 (1984)。凍結工程では、溶液は十分に凍結するまで冷却される。この段階で、溶液中のバルク水は氷を形成する。一次乾燥段階において氷は昇華する。一次乾燥段階は減圧を用いてチャンバー圧力を氷の蒸気圧より低く下げることによって行われる。最後に、二次乾燥段階において、吸着または結合している水は低いチャンバー圧および高い貯蔵温度(shelf temperature)の下で除去される。このプロセスによって、凍結乾燥ケークとして知られる材料が生成される。その後、ケークを使用前に再構成することができる。凍結乾燥材料を再構成する標準的なやり方は、ある体積の純水(典型的には、凍結乾燥中に除去された体積に等しい)を添加することであるが、非経口投与用の薬を生産する際には薄い抗菌剤溶液が用いられる時もある。Chen, Drug Development and Industrial Pharmacy, Volume 18, Numbers 11 and 12, 1311-1354頁 (1992)。
例えば、ポリオール(マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含む);糖(グルコースおよびスクロースを含む);ならびにアミノ酸(アラニン、グリシン、およびグルタミン酸を含む)などの賦形剤の中にはフリーズドライ製品用の安定剤として作用し得るものもある。例えば、Carpenter et al., Developments in Biological Standardization, Volume 74, 225-239頁 (1991)を参照されたい。ポリオールおよび糖はまた、凍結および乾燥により引き起こされる損傷からポリペプチドを保護し、乾燥状態で保管中の安定性を強化するために使用することができる。糖は凍結乾燥プロセスおよび保管中の両方に有効な場合がある。凍結乾燥された生成物の安定剤として、単糖および二糖を含む他のクラスの分子ならびにPVPなどのポリマーも報告されている。
注射の場合、組成物および/または医用薬剤は、前記の適切な溶液を用いた再構成に適した粉末でもよい。これらの例には、フリーズドライ、回転乾燥、または噴霧乾燥された粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿物、または粒子が含まれるが、これに限定されない。注射の場合、前記組成物は、任意で、安定剤、pH調節剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調節剤、およびこれらの組み合わせを含有してもよい。
持効性調製物が調製されてもよい。持効性調製物の適切な例には、前記抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。このマトリックスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形をとる。持効性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(例えば、米国特許第3,773,919号を参照されたい)、L-グルタミン酸およびyエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、Lupron Depot(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドからなる注射用マイクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日以上にわたって放出することができるのに対して、ある特定のヒドロゲルは、これより短い期間にわたってタンパク質を放出する。カプセルに入れられた抗体は長期間、体内に留まるが、37℃で水分に曝露した結果として変性または凝集し、それによって、生物学的活性の消失および可能性のある免疫原変化が引き起こされる場合がある。関与する機構に応じて、安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を介した分子間S―S結合形成であると発見されたら、安定化は、スルフヒドリル残基を改変することによって、酸性溶液から凍結乾燥することによって、適切な添加物を用いて含水量を制御することによって、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって成し遂げられてもよい。
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のように短時間作用性、急速作用性、長時間作用性、または持効性になるように設計されてもよい。一態様において、前記組成物は制御放出されるように、またはゆっくりと放出されるように製剤化されてもよい。
薬学的組成物は、例えば、皮下注射、硝子体内注射、皮内注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、脳脊髄内注射、または筋肉内注射を含むが、これに限定されない注射によって投与することができる。各注射タイプ用の組成物の製剤において使用するための賦形剤および担体が本明細書において意図される。以下の説明は例にすぎず、前記組成物の範囲を限定することが意図されない。注射用組成物には、水溶液(水溶性の場合)または分散液ならびに滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれるが、これに限定されない。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒でもよい。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合、必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。抗菌剤および抗真菌剤には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールが含まれる。前記組成物には、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マニトール(manitol)、ソルビトール、および塩化ナトリウムが含まれてもよい。結果として生じた溶液は使用のためにそのままで包装されてもよく、凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥された調製物は投与の前に滅菌溶液と後で組み合わせることができる。静脈内注射または苦痛部位での注射の場合、活性成分は、発熱物質を含まず、かつ適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形をとる。当業者は、例えば、等張性ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、乳酸加リンガー液を用いて適切な溶液を上手に調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、酸化防止剤、および/または他の添加物を含めることができる。滅菌注射液は、必要とされる量の活性成分を、必要に応じて、前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと適切な溶媒に入れて混ぜ、その後に、濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性成分を、基本分散媒および前記で列挙された成分からの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに混ぜることによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌した散剤の場合、好ましい調製方法は、活性成分と任意のさらなる望ましい成分の予め濾過滅菌された溶液から、活性成分と任意のさらなる望ましい成分の散剤をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。
組成物は、硝子体内に、皮下に、または硝子体内移植片を介して従来通り投与することができる。
組成物は、例えば、単位用量を注射することによって従来通り静脈内投与することができる。注射の場合、活性成分は、実質的に発熱物質を含まず、かつ適切なpH、等張性、および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形をとってもよい。例えば、等張性ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー液、乳酸加リンガー液を用いて適切な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、酸化防止剤、および/または他の添加物を含めることができる。さらに、エアロゾル化を介して組成物を投与することができる(Lahn et al., Aerosolized Anti-T-cell-Receptor Antibodies Are Effective against Airway Inflammation and Hyperreactivity, Int. Arch. Allergy Immuno., 134: 49-55 (2004))。
一態様において、前記組成物は、例えば、保管中の貯蔵寿命を延ばすために凍結乾燥される。前記組成物が医用薬剤での使用または本明細書において提供される任意の方法について考慮される場合、ヒト対象に投与されたときに炎症反応または安全でないアレルギー反応を引き起こさないように、発熱物質を実質的に含まない場合があることが意図される。発熱物質について組成物を試験することと、発熱物質を実質的に含まない組成物を調製することは当業者に十分に理解され、市販のキットを用いて成し遂げることができる。
許容される担体は、吸収またはクリアランスを安定化する、増やす、または遅らせる化合物を含有してもよい。このような化合物には、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストラン;低分子量タンパク質;ペプチドのクリアランスもしくは加水分解を低減する組成物;あるいは賦形剤または他の安定剤および/もしくは緩衝液が含まれる。吸収を遅らせる薬剤には、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが含まれる。リポソーム担体を含む薬学的組成物の吸収を安定化する、または増やす、もしくは減らすために界面活性剤も使用することができる。消化から保護するために、前記化合物は、酸性加水分解および酵素的加水分解に対する耐性を高める組成物と複合体を形成してもよく、リポソームなどの適切な耐性のある担体に入れて複合体を形成してもよい。消化から化合物を保護する手段は当技術分野において公知である(例えば、治療剤の経口送達用の脂質組成物について述べている、Fix (1996) Pharm Res. 13:1760 1764; Samanen (1996) J. Pharm. Pharmacol. 48:119 135;および米国特許第5,391,377号を参照されたい)
。
「薬学的に許容される」という句は、生理学的に容認することができ、かつヒトに投与されたときにアレルギー反応または同様の有害な反応、例えば、胃痛、めまいなどを通常、生じない分子的実体および組成物を指す。
「単位用量」という用語は治療用組成物に関して用いられた場合、ヒトへの単位投与として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、必要とされる希釈剤;すなわち、担体またはビヒクルに結合して望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の活性材料を含有する。
前記組成物は、投与製剤と適合するやり方で、かつ治療的有効量で投与することができる。投与される量は、処置しようとする対象、対象の免疫系が活性成分を利用する能力、および望ましい結合能力の程度に左右される。投与するのに必要な活性成分の正確な量は専門家の判断に左右され、個人個人に特有のものである。初回投与および追加免疫注射に適したレジメン(regime)も変えることができるが、典型的には、初回投与の後に、1時間またはさらに長い時間の間隔を開けて後の注射または他の投与によって反復投与が行われる。または、血中濃度を維持するのに十分な連続静脈内注入が意図される。
一態様は、本明細書に記載の状態、疾患、または障害を処置するための医用薬剤を作製するための本明細書に記載の組成物の使用を意図する。医用薬剤は、処置を必要とする対象の身体的特徴に基づいて製剤化されてもよく、状態、疾患、または障害の段階に基づいて1つまたは複数の製剤にして製剤化されてもよい。医用薬剤は、病院および診療所に配布するための適切なラベルの付いた適切な包装容器に入れて包装されてもよい。このラベルは、本明細書に記載の疾患を有する対象を処置することを表示するためのものである。医用薬剤は1つまたは複数の単位として包装されてもよい。前記組成物を投薬および投与するための説明書を下記のように包装容器と一緒に含めることができる。さらに、本発明は、前記の抗ヘプシジン抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体の医用薬剤に関する。
ヘプシジンに結合する抗体およびその抗原結合断片の組成物が本明細書において提供され、本明細書の他の場所に記載のような組成物を含む。本明細書に記載のヘプシジンに結合する抗体およびその抗原結合断片は、鉄ホメオスタシスに関連する様々な疾患および状態の処置に使用することができる。
処置される状態に応じて、組成物(本明細書に記載の抗体または抗原結合断片)は単独で投与されてもよく、第2の組成物と組み合わせて同時にまたは連続して投与されてもよい。一態様において、第2の治療的処置は赤血球形成刺激物質である。2種類以上の組成物が投与される場合、組み合わせて(連続してまたは同時に)投与されてもよい。組成物は単回投与で投与されてもよく、複数回投与で投与されてもよい。
ヒト対象に投与するために製剤化された場合、前記組成物は発熱物質を含まないように製剤化される場合がある。発熱物質について組成物を試験し、発熱物質を含まない薬学的組成物を調製することは当業者に十分理解される。
一態様は、本発明の障害を処置するための医用薬剤を作製するための本発明の任意の組成物の使用を意図する。医用薬剤は、処置を必要とする対象の身体的特徴に基づいて製剤化されてもよく、障害に基づいて1つまたは複数の製剤にして製剤化されてもよい。本発明の医用薬剤は、病院および診療所に配布するための適切なラベルの付いた適切な薬学的な包装容器に入れて包装されてもよい。このラベルは、対象において本明細書に記載の障害を処置することを表示するためのものである。医用薬剤は1つまたは複数の単位として包装されてもよい。本発明の薬学的組成物を投薬および投与するための説明書を薬の包装容器と一緒に含めることができる。
診断法
ヘプシジン関連障害を診断する方法であって、(a)前記障害を有するのではないかと疑われる対象に由来する生物学的試料を本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片と、前記抗体またはその抗原結合断片がヘプシジンに結合する条件下で接触させる工程;ならびに(b)前記抗体またはその抗原結合断片に結合したヘプシジンを検出および/または定量する工程であって、(b)において定量されたときに、閾値レベルより多い試料中ヘプシジン量がヘプシジン関連障害の存在を示し、閾値レベルより少ない試料中ヘプシジン量がヘプシジン関連障害の非存在を示す工程を含む、方法が本明細書において提供される。
炎症性疾患を非炎症性疾患と区別する方法であって、(a)前記障害を有するのではないかと疑われるヒトに由来する生物学的試料を本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片と、前記抗体またはその抗原結合断片がヘプシジンに結合する条件下で接触させる工程;ならびに(b)前記抗体またはその抗原結合断片に結合したヘプシジンを検出および/または定量する工程であって、(b)において定量されたときに、閾値レベルより多いヘプシジン量が炎症性疾患の存在を示し、閾値レベルより少ないヘプシジン量が炎症性疾患の非存在を示す工程を含む、方法。
一態様において、前記抗体または抗原結合断片は検出可能な部分をさらに含む。検出はインビトロ、インビボ、またはエクスビボで行うことができる。前記抗体またはその抗原結合断片を用いてヘプシジンを検出および/または測定(定量化、定性化など)するためのインビトロアッセイには、例えば、ELISA、RIA、およびウエスタンブロットが含まれるが、これに限定されない。ヘプシジンのインビトロ検出、診断、またはモニタリングは、対象から試料(例えば、血液試料)を入手し、例えば、標準的なELISAアッセイにおいて試料を試験することによって行うことができる。例えば、96ウェルマイクロタイタープレートを本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片でコーティングし、洗浄し、非特異的結合を阻害するためにPBS-Tween/BSAでコーティングすることができる。血液試料を連続希釈し、連続希釈したヘプシジン検量線と比較して1個または2個のウェルに入れることができる。ウェルをインキュベートおよび洗浄した後に、ビオチンで標識した抗ヘプシジン抗体を添加し、その後に、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼを添加することができる。ウェルを洗浄し、基質(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を添加してプレートを発色することができる。従来のプレートリーダーおよびソフトウェアを用いてプレートを読み取ることができる。
検出がインビボで行われた場合、接触は、従来の任意の手段、例えば、本明細書の他の場所に記載の手段を用いて抗体または抗原結合断片を投与することによって行われる。このような方法では、試料または対象におけるヘプシジン検出を用いて、活性に関連した、または活性と相関関係のある疾患または障害、例えば、本明細書に記載の疾患および障害を診断することができる。
ヘプシジンのインビボ検出、診断、またはモニタリングでは、対象に、検出可能な部分に結合している、ヘプシジンに結合する抗体または抗原結合断片が投与される。検出可能な部分は、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,096,289号、米国特許第7,115,716号、米国特許第7,112,412号、米国特許出願第20030003048号、および米国特許出願第20060147379号に記載のように、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光、ラジオイメージング、内視鏡、腹腔鏡、または血管内カテーテルによって供給される光源(すなわち、光活性剤の検出を介する)、フォトスキャニング、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャニング、全身核磁気共鳴法(NMR)、ラジオシントグラフィー、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、標的化近赤外領域(targeted near infrared region)(NIR)スキャニング、X線、超音波などがあるが、これに限定されない当技術分野において認められている方法を用いて視覚化することができる。このような方法を用いて化合物を検出するための標識も当技術分野において公知であり、このような特許および出願に記載されており、参照により本明細書に組み入れられる。検出可能な部分を視覚化することによって、ヘプシジンに関連する状態または疾患を検出、診断、および/またはモニタリングすることができる。
望ましい標的タンパク質、すなわち、ヘプシジンに特異的な抗体を利用する、さらなる診断アッセイが当技術分野において公知であり、これもまた本明細書において意図される。
インビトロ検出方法の場合、対象から得られる試料には、血液、組織生検試料、および組織生検試料からの流体が含まれるが、これに限定されない。
従って、本発明は、疾患または障害に関連し、潜在的に、治療的処置の必要性を示す、ヘプシジンレベルを検出または診断するのに有用な、ヘプシジンに対するヒト化抗体およびその抗原結合断片を提供する。ある特定の態様において、前記抗体は、本明細書に記載のヒト化抗ヘプシジン抗体を含む。他の態様において、前記抗体は第2の剤をさらに含む。このような剤は、分子または部分、例えば、レポーター分子または検出可能な標識でもよい。このような検出方法のための検出可能な標識/部分は当技術分野において公知であり、以下でさらに詳細に説明される。レポーター分子は、アッセイを用いて検出することができる任意の部分である。ポリペプチドと結合体化されたことのあるレポーター分子の非限定的な例には、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、ルミネセンス分子、光親和性分子、着色した粒子またはリガンド、例えば、ビオチンが含まれる。検出可能な標識には、特定の機能特性および/または化学特徴により検出することができる化合物および/または要素が含まれる。検出可能な標識を使用すると、取り付けられているポリペプチドを検出することが可能になり、および/または、さらに、所望であれば定量することが可能になる。多くの適切な検出可能な(画像化)剤が当技術分野において公知であり、同様に、ポリペプチドに検出可能な(画像化)剤を取り付けるための方法も当技術分野において公知である(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,021,236号;同第4,938,948号;および同第4,472,509号を参照されたい)。
抗体などのポリペプチドを検出可能な部分とつなぐ方法は当技術分野において公知であり、例えば、融合タンパク質を形成する組換えDNA技術および結合体化(例えば、化学的結合体化)を含む。化学的結合体化または組換え操作によって融合タンパク質を調製するための方法は当技術分野において周知である。成分を共有結合的におよび非共有結合的に連結する方法も当技術分野において公知である。例えば、Williams (1995) Biochemistry 34:1787 1797; Dobeli (1998) Protein Expr. Purif. 12:404-414;およびKroll (1993) DNA Cell. Biol. 12: 441-453を参照されたい。
場合によっては、標識または部分と、本明細書に記載の抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質の1つまたは複数の部分との間に、定まった形のないポリペプチドリンカー領域を導入することが必要な場合がある。リンカーは高屈曲性を容易にすることができる、および/または任意の2個の断片間の立体障害を減らすことができる。リンカーはまた、各断片の適切な折り畳みが起こるを容易にすることもできる。リンカーは、天然に由来するもの、例えば、タンパク質の2個のドメイン間にランダムコイルで存在することが確かめられている配列でもよい。リンカー配列の1つは、RNAポリメラーゼaサブユニットのC末端ドメインとN末端ドメインとの間に発見されたリンカーである。天然リンカーの他の例には、1CIおよびLexAタンパク質において発見されたリンカーが含まれる。
リンカー内のアミノ酸配列は、経験的に確かめられた、またはモデリングによって明らかにされたリンカーの特徴に基づいて変更することができる。リンカーを選択する際の考慮すべき事項には、リンカーの屈曲性、リンカーの電荷、および天然サブユニットにおけるリンカーのいくつかのアミノ酸の存在が含まれる。リンカーはまた、リンカー内の残基がデオキシリボース核酸(DNA)と接触し、それによって、結合親和性もしくは特異性に影響を及ぼすように、または他のタンパク質と相互作用するように設計することもできる。サブユニット間でさらに長い距離に及ぶことが必要な場合、またはドメインがある特定の立体配置に保たれなければならない場合など場合によっては、リンカーは、任意で、折り畳まれたさらなるドメインを含んでもよい。一部の態様において、リンカーの設計は、リンカーが比較的短い距離、例えば、約10オングストローム(Å)未満にまたがることを必要とするドメイン配置を伴ってもよい。しかしながら、ある特定の態様において、リンカーは約50オングストロームまでの距離に及ぶ。
リンカー内のアミノ酸配列は、経験的に確かめられた、またはモデリングによって明らかにされたリンカーの特徴に基づいて変更することができる。リンカーを選択する際の考慮すべき事項には、リンカーの屈曲性、リンカーの電荷、および天然サブユニットにおけるリンカーのいくつかのアミノ酸の存在が含まれる。リンカーはまた、リンカー内の残基がDNAと接触し、それによって、結合親和性もしくは特異性に影響を及ぼすように、または他のタンパク質と相互作用するように設計することもできる。サブユニット間でさらに長い距離に及ぶことが必要な場合、またはドメインがある特定の立体配置に保たれなければならない場合など場合によっては、リンカーは、任意で、折り畳まれたさらなるドメインを含んでもよい。
ポリペプチド(遊離または細胞結合性)をビーズにカップリングするための方法は当技術分野において公知である。カップリングされた、ポリペプチドまたはポリペプチドを示す細胞を選択するための方法も当技術分野において公知である。簡単に述べると、官能基で改変されている微粒子表面、または様々な抗体もしくはリガンド、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、もしくはビオチンでコーティングされている微粒子表面に、ペプチドをカップリングする常磁性ポリスチレン微粒子が市販されている(Spherotech, Inc., Libertyville, IL; Invitrogen, Carlsbad, CA)。
微粒子の常磁特性によって、磁石を用いて微粒子を溶液から分離することが可能になる。微粒子を磁石から取り出したときに容易に再懸濁することができる。ポリペプチドを、チューブの中で、ポリウレタン層でコーティングした常磁性ポリスチレン微粒子にカップリングすることができる。塩化p-トルエンスルホニル(toluensulphonyl)と反応させることによって、微粒子表面にあるヒドロキシ基を活性化する(Nilsson K and Mosbach K. 「p-Toluenesulfonyl chloride as an activating agent of agarose for the preparation of immobilized affinity ligands and proteins.」 Eur. J. Biochem. 1980:112: 397-402)。または、表面カルボン酸を含有する常磁性ポリスチレン微粒子をカルボジイミドで活性化した後に、ポリペプチドとカップリングして、ポリペプチドの第1級アミノ基と微粒子表面にあるカルボン酸基との間に安定したアミド結合を生じることができる(Nakajima N and Ikade Y, Mechanism of amide formation by carbodiimide for bioconjugation in aqueous media, Bioconjugate Chem. 1995, 6(1): 123-130; Gilles MA, Hudson AQ and Borders CL Jr, Stability of water-soluble carbodiimides in aqueous solution, Anal Biochem. 1990 Feb 1;184(2):244-248; Sehgal D and Vijay IK, a method for the high efficiency of water-soluble carbodiimide-mediated amidation, Anal Biochem. 1994 Apr; 218(1):87-91; Szajani B et al, Effects of carbodiimide structure on the immobilization of enzymes, Appl Biochem Biotechnol. 1991 Aug; 30(2): 225-231)。別の選択肢は、ストレプトアビジン単層と共有結合的に連結された表面を有する常磁性ポリスチレン微粒子に、ビオチン化ポリペプチドをカップリングすることである(Argarana CE, Kuntz ID, Birken S, Axel R, Cantor CR. Molecular cloning and nucleotide sequence of the streptavidin gene. Nucleic Acids Res. 1986;14(4):1871-82; Pahler A, Hendrickson WA, Gawinowicz Kolks MA, Aragana CE, Cantor CR. Characterization and crystallization of core streptavidin. J Biol Chem 1987:262(29):13933-13937)。
ポリペプチドは、多種多様な蛍光色素、クエンチャーおよびハプテン、例えば、フルオレセイン、R-フィコエリトリン、ならびにビオチンと結合体化されてもよい。結合体化はポリペプチド合成中に行われてもよく、ポリペプチドが合成および精製された後に行われてもよい。ビオチンは、アビジンおよびストレプトアビジンタンパク質と高親和性で結合し、ほとんどのペプチドと、その生物学的活性を変えることなく結合体化することができる小さな(244キロダルトン)ビタミンである。ビオチン標識ポリペプチドは、固定化ストレプトアビジンおよびアビジンアフィニティゲルを用いて非標識ポリペプチドから容易に精製される。例えば、ELISA、ドットブロット、またはウエスタンブロット応用例では、ストレプトアビジンまたはアビジンに結合体化されたプローブを用いてビオチン化ポリペプチドを検出することができる。ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルが最も一般的に用いられるタイプのビオチン化剤である。N-ヒドロキシスクシンイミド活性化ビオチンは生理学的緩衝液中で第1級アミノ基と効率的に反応して、安定したアミド結合を形成する。ポリペプチドにはN末端に第1級アミンがあり、リジン残基側鎖にも、N-ヒドロキシスクシンイミド活性化ビオチン試薬で標識するための標的として利用可能な数個の第1級アミンがある場合がある。特性およびスペーサーアーム長が異なる、ビオチンのいくつかの異なるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Pierce, Rockford, IL)が利用可能である。スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル試薬は水溶性であり、このため有機溶媒の非存在下で反応を行うことができる。
ビオチン:ポリペプチドのモル:モル比は、当技術分野において認められている技法を用いた2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)アッセイを用いて概算することができる(Green, NM, (1975)「Avidin. In Advances in Protein Chemistry」Academic Press, New York. 29, 85-133; Green, NM, (1971)「The use of bifunctional biotinyl compounds to determine the arrangement of subunits in avidin」Biochem J. 125, 781-791; Green, NM., (1965)「A spectrophotometric assay for avidin and biotin based on binding of dyes by avidin」Biochem. J. 94: 23c-24c)。数個のビオチン分子をポリペプチドと結合体化することができる。ビオチン1分子につきアビジン1分子が結合することができる。ビオチン-アビジン結合形成は有機溶媒、極端なpH、および変性試薬中で極めて速く、かつ安定している。ビオチン化を定量化するためには、ビオチン化ポリペプチドを含有する溶液を、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)およびアビジンの混合物に添加する。ビオチンはアビジンに対して高親和性を有するので、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)に取って代わり、500ナノメートルでの吸光度はその分だけ減少する。ビオチン含有ペプチド添加の前後に2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)-アビジン溶液の吸光度を測定することによって、溶液中のビオチン量を1個のキュベット内で定量化することができる。吸光度の変化は、2-(4'-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸)-アビジン複合体の吸光率によって試料中のビオチン量と関係づけられる。
または、抗体、抗原結合断片、または結合タンパク質は、蛍光部分(例えば、R-フィコエリトリン、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)など)を有する蛍光部分結合体化ポリペプチドと結合体化されてもよい。これは、例えば、Glazer, AN and Stryer L. (1984). Trends Biochem. Sci. 9:423-7; Kronick, MN and Grossman, PD (1983) Clin. Chem. 29:1582-6; Lanier, LL and Loken, MR (1984) J. Immunol., 132:151-156; Parks, DR et al. (1984) Cytometry 5:159-68; Hardy, RR et al. (1983) Nature 306:270-2; Hardy RR et al. (1984) J. Exp. Med. 159:1169-88; Kronick, MN (1986) J. Immuno. Meth. 92:1-13; Der-Balian G, Kameda, N and Rowley, G. (1988) Anal. Biochem. 173:59-63に記載の当技術分野において認められている技法を用いて成し遂げることができる。
非限定的な一態様では、抗体抗原結合断片は、インビトロおよび/またはインビボで抗体とヘプシジンとの結合を視覚化するために使用することができる、ヘプシジン免疫検出用の検出可能な標識、例えば、放射性核種、鉄関連化合物、色素、画像化用剤、または蛍光剤と結合(結合体化)されてもよい。
放射標識の非限定的な例には、例えば、32P、33P、43K、52Fe、57Co、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、77Br、81Rb/81MKr、87MSr、90Y、97Ru、99Tc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb、121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、および213Biが含まれる。放射標識は、抗体画像化分野において公知の従来の化学を用いて化合物に取り付ることができる。放射標識化合物はインビトロ診断法、およびインビボラジオイメージング法、および放射免疫療法において有用である。
一態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は治療部分および検出可能な部分の両方と結合体化されてもよい。抗体またはその抗原結合断片はアフィニティタグ(例えば、精製タグ)と結合体化されてもよく、アフィニティタグ(例えば、精製タグ)によって組換えにより操作されてもよい。例えば、His6タグ(SEQ ID NO:28)などのアフィニティタグが当技術分野において従来よりある。
本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片は、治療部分および/または画像化部分もしくは検出可能な部分および/またはアフィニティタグと結合体化または連結できるような抗体またはその抗原結合断片である。ポリペプチドを結合体化または連結するための方法は当技術分野において周知である。化合物と標識との会合(結合)は、共有結合および非共有結合の相互作用、化学的結合体化、ならびに組換え法を含むが、これに限定されない当技術分野において公知の任意の手段を含む。
処置方法
ヘプシジンに結合する抗体またはその抗原結合断片の組成物を対象に投与することによって、対象(ヒトまたは非ヒト)において応答を誘導する方法が本明細書において提供される。抗体が結合する結合部位は連続エピトープでもよく、コンホメーションエピトープ/不連続エピトープでもよい。一態様において、前記抗体またはその抗原結合断片は、ヘプシジンのアミノ酸残基1-9を含むエピトープに特異的に結合する。別の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、ヘプシジンのアミノ酸残基1-9を含むエピトープの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個のアミノ酸残基に特異的に結合する。さらに別の態様において、抗体またはその抗原結合断片はHep-20、Hep-22、およびHep-25に特異的に結合する。
ヘプシジンは、例えば、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有してもよい。ヘプシジンペプチドは、例えば、SEQ ID NO:20〜25のいずれか一つのアミノ酸配列を有してもよい。さらに別の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、SEQ ID NO:19〜27を含む、本明細書に記載のペプチド SEQ ID NOのいずれか一つに示したアミノ酸配列に結合する。
本発明の有効な応答は、対象が病気の徴候または症状の部分的または完全な緩和または軽減を経験したときに実現し、具体的には、生存期間の延長を含むが、それに限定されるわけではない。予想無増悪生存期間は、再発の回数、疾患の病期、および他の因子を含む予後因子に応じて数ヶ月〜数年で測定され得る。生存期間の延長には、少なくとも1ヶ月(月)、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年などが含まれるが、それに限定されるわけではない。全生存期間も数ヶ月〜数年で測定することができる。または、有効な応答は、対象の症状が全く変化しないような応答でもよい。さらに、処置の適応症を以下でさらに詳細に説明する。
本明細書に記載の抗体および抗原結合断片の組成物を非治療剤(例えば、アフィニティ精製剤)として使用することができる。一般的に、このような一態様では、当技術分野において公知の従来法を用いて、関心対象のタンパク質が、Sephadex樹脂または濾紙などの固相上に固定化される。固定化されたタンパク質は、精製しようとする関心対象の標的(またはその断片)を含有する試料と接触され、その後に、支持体は、固定化抗体に結合している標的タンパク質を除いて、試料中にある実質的に全ての材料を除去する適切な溶媒を用いて洗浄される。最後に、支持体は、標的タンパク質を放出する別の適切な溶媒、例えば、グリシン緩衝液、pH5.0を用いて洗浄される。精製に加えて、組成物は、本明細書に記載の疾患および障害の検出、診断、および療法に使用することができる。
本明細書で使用する「接触させる」という用語は、化合物の溶液または組成物と、生物に由来するポリペプチド、細胞、組織、または臓器が入っている液体培地を一緒に添加することを指す。または、「接触させる」とは、化合物の溶液または組成物と、生物に由来する液体、例えば、血液、血清、または血漿を一緒に混合することを指す。インビトロ用途の場合、組成物はジメチルスルホキシド(DMSO)などの別の成分も含んでよい。DMSOは前記化合物の取り込みまたは前記化合物の溶解を容易にする。試験化合物を含む溶液は、ピペットベースの装置または注射器ベースの装置などの送達器具を利用することによって、細胞、組織、または臓器が入っている培地に添加されてもよく、血液などの別の液体と混合されてもよい。インビボ用途の場合、接触は、例えば、任意の適切な手段によって組成物を対象に投与することによって行うことができる。薬学的に許容される賦形剤および担体を含む組成物は上記でさらに詳細に説明されている。
本願の一態様による「対象」(例えば、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、霊長類、げっ歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなど)は、本明細書に記載の疾患または障害の1つまたは複数の臨床所見および/または症状を示す哺乳動物である。
本明細書に記載の組成物は、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、ヘプシジンに関連する可能性のある疾患または障害、例えば、本明細書に記載の疾患または障害を阻害することによって、なんらかの望ましい治療効果を生じるのに有効な治療的有効量で対象に投与することができる。本発明の組成物をヒト対象に投与する場合、この組成物は当業者に公知の方法によって製剤化することができる。治療的有効量とは、少なくとも部分的に、臓器または組織において望ましい治療効果または予防効果を実現する量である。疾患または障害の予防的処置および/または治療的処置を引き起こすのに必要な抗ヘプシジン抗体またはその抗原結合断片の量はそれ自体では決まっていない。投与される抗ヘプシジン抗体またはその抗原結合断片の量は、疾患のタイプ、疾患の広範性、および疾患または障害に罹患している哺乳動物のサイズよって異なる場合がある。一態様において、本明細書に記載の2種類以上の抗ヘプシジン抗体は対象に組み合わされて投与される。組み合わせには、抗体が同時投与されること、または続いて投与されることが含まれる。
「投与する」とは、前記組成物が対象の体内にあるように前記組成物を対象に提供する手段と本明細書において定義される。このような投与は、局所的、局部的、または全身に、皮下投与、硝子体内投与、皮内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、脳脊髄内投与、または筋肉内投与(例えば、注射)を含むが、それに限定されるわけではない任意の経路でもよい。「並行投与」とは、比較的短い期間内で互いの投与が行われることを意味する。このような期間は2週間未満、7日未満、1日未満でもよく、それどころか同時投与することもできる。
前記組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、対象への毒性が無く、特定の対象、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、処置期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている対象の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む様々な要因に左右される。
本明細書に記載の抗体および抗原結合断片は、様々な投与量で、かつ様々な時間枠にわたって対象に投与されてもよい。非限定的な用量には、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、約175mg/kg、約200mg/kg、またはこれらの間の任意の整数が含まれる。さらに、前記用量の抗体または抗原結合断片は、週2回、毎週、2週間ごとに、3週間ごとに、4週間ごとに、6週間ごとに、8週間ごとに、12週間ごとに、またはこれらの中の任意の週の組み合わせで投与することができる。例えば、抗体またはその抗原結合断片が4週間にわたって週1回または週2回投与された後に、療法なしで2週間あけるなどの投与サイクルも意図される。例えば、本明細書に記載の用量および週サイクルの様々な組み合わせを含む、さらなる投与サイクルも本発明の範囲内であると考えられる。
組成物の治療的有効量は異なってもよく、疾患の重篤度ならびに処置されている対象の体重および全身状態に左右されるが、一般的に、1回の適用につき約1.0μg/kg〜約100mg/kg体重、または約10μg/kg〜約30mg/kg、または約0.1mg/kg〜約10mg/kg、または約1mg/kg〜約10mg/kgである。投与は、毎日、隔日、毎週、1ヶ月に2回、毎月、または必要に応じて障害もしくは状態に対する応答および療法に対する対象の耐性によって、それより多い頻度もしくは少ない頻度でもよい。障害症状の望ましい抑制が起こるまで、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、10週間、もしくは12週間またはそれより長い期間などの長期間にわたる維持量が必要とされる場合がある。必要に応じて、投与量が調節される場合がある。この療法の進行は従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
特定の投与量は、対象の疾患の状態、年齢、体重、身体全体の健康状態、性別、および食事、投与間隔、投与経路、排出速度、ならびに薬物の組み合わせに応じて調節される場合がある。有効量を含有する上記剤形は全て日常的な実験の十分に範囲内にあり、従って、本発明の十分に範囲内にある。
一部の態様において、本発明の特異的結合物質または抗体は、生理学的溶液に溶解して0.01mg/kg〜100mg/kgの用量で、毎日〜毎週〜毎月の頻度(例えば、毎日、1日おきに、2日おきに、または週に2回、3回、4回、5回、もしくは6回)で、好ましくは、0.1〜45mg/kg、0.1〜15mg/kg、または0.1〜10mg/kgの用量で週に2回または3回、あるいは45mg/kgまで1ヶ月に1回の頻度で静脈内投与される。
「接触させる」とは、本明細書において提供される組成物を、本明細書に記載の細胞、臓器、組織、または流体と物理的に接近させる手段として本明細書において定義される。接触させるとは、本明細書において提供される任意の組成物の全身投与または局所投与を包含し、インビトロ、インビボ、および/またはエクスビボの手順および方法を含むが、それに限定されるわけではない。「組み合わせる」および「接触させる」は本明細書において同義に用いられ、同じように定義されると意図される。
本明細書に記載の抗体は、全身または局所に、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、脳脊髄内投与、肺内投与、および鼻腔内投与、所望であれば局所処置、病巣内投与を介した手段を含む任意の適切な手段によって投与することができる。非経口経路には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、硬膜外投与、くも膜下腔内投与が含まれる。さらに、特異的結合物質または抗体は、パルス注入、特に、漸減用量の特異的結合物質または抗体を用いたパルス注入によって適切に投与される。一態様において、組成物は、一つには投与が短時間または長時間かどうかに応じて、注射によって投与され、与えられてもよい。局部投与、特に、経皮投与、経粘膜投与、直腸投与、経口投与、または局所投与、例えば、望ましい部位付近に留置されたカテーテルを通した局所投与を含む、投与方法の他の形式が意図される。
応答は、対象が病気の徴候または症状の部分的または完全な緩和または軽減を経験したときに実現し、具体的には、生存期間の延長を含むが、それに限定されるわけではない。予想無増悪生存期間は、再発の回数、疾患の病期、および他の因子を含む予後因子に応じて数ヶ月〜数年で測定することができる。生存期間の延長には、少なくとも1ヶ月(月)、少なくとも約2ヶ月(月)、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、またはそれより長い期間が含まれるが、それに限定されるわけではない。全生存期間も数ヶ月〜数年で測定することができる。対象の症状は全く変化しなくてもよく、軽減してもよい。
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる組成物の有効量(ED50)を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、前記組成物において用いられる化合物の用量を、望ましい治療効果を実現するのに必要とされる用量より低いレベルから開始し、望ましい効果が実現するまで投与量を段々と増やすことができる。または、用量は一定のままでもよい。
組成物は、前記のような任意の便利な経路によって対象に投与することができる。選択された投与経路に関係なく、適切な水和型で使用することができる本発明の化合物および/または前記組成物は、下記のような許容される剤形に、または当業者に公知の他の従来法によって製剤化される。
抗体および/または他の薬剤は同時にまたは連続して投与するために別々の組成物で組み合わされてもよい。一態様において、同時投与は、同時に、または互いに30分以内に投与される1種類または複数種の組成物を含む。投与は同じ部位で行われてもよく、異なる部位で行われてもよい。
このような成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を確かめるための標準的な薬学的手順によって確かめることができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表すことができる。毒性副作用を示す化合物が用いられる場合があるが、健常細胞への潜在的な損傷を最小化し、それによって、副作用を軽減するために、注意して、このような化合物を罹患組織部位に標的化する送達系を設計しなければならない。
ヒトにおいて使用するための、ある範囲の投与量を製剤化する際に、細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどなく、または全くなく、ED50を含む、ある範囲の循環濃度の中にある。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変化する場合がある。本発明の方法において用いられる全ての化合物について、治療的に有効な用量を最初は細胞培養アッセイから概算することができる。細胞培養において求められたIC50(すなわち、最大半量阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲(arrange)に達するように用量を動物モデルにおいて製剤化することができる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。このような情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量をさらに正確に求めることができる。
本明細書で使用する抗体またはその抗原結合断片はヘプシジン活性アンタゴニストでもよい。ヘプシジン活性アンタゴニストとはヘプシジンの鉄調節活性を阻害する物質を意味する。
一局面において、ヘプシジン活性アンタゴニストは、例えば、ヘプシジンとフェロポーチンとの結合を阻害することによって、ヘプシジンによって制御される細胞鉄保持を阻害することによって、またはフェロポーチン依存性鉄輸送を促進することによってヘプシジン機能を阻害する物質でもよい。ヘプシジン活性アンタゴニストには、ヘプシジンに結合し、その活性を阻害する抗体またはその抗原結合断片が含まれる。抗体またはその抗原結合断片は、場合によっては、フェロポーチンに結合してもよいが、フェロポーチン鉄輸送を活性化しない。
さらに他の態様では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は、インビトロでおよび/またはインビボでもヘプシジンの鉄調節活性を阻害(または中和)する場合がある。このようなヘプシジン中和抗体は、ヘプシジン関連障害または鉄ホメオスタシス障害に治療上有用である。ヘプシジン中和活性は、例えば、フェリチン/鉄レベル、赤血球数、赤血球の特徴(血色素量および/もしくは細胞容積)、初期赤血球の特徴(網状赤血球の数、血色素量、もしくは細胞容積)、フェロポーチン内部移行、または鉄輸送などの多数のマーカーによって測定される場合がある。非限定的な一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は約10-8M以下のEC50で細胞内鉄濃度を減少させる、および/または循環鉄濃度を増やす。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片はヒトヘプシジンの効果に拮抗するか、またはヘプシジンの鉄調節活性を阻害する場合がある。一部の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片は約1×10-8M以下、または約1×10-7M以下のEC50で効果を発揮する。例えば、抗体は、約1×10-8M以下のEC50で細胞内の細胞内鉄レベルを減少する場合があり、フェリチンアッセイによって確かめられたときに約1×10-8M以下のEC50でフェリチン発現を低減する場合がある。他の態様において、本明細書に記載の抗体は、対照抗体と比較して、またはプラセボと比較して、遊離血清中ヘプシジンレベルを少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低減する場合がある。他の態様において、本明細書に記載の抗体は赤血球数(数)、赤血球の平均細胞容積、もしくは赤血球の血色素量を増やす場合がある、ヘモグロビンを増やす場合がある、ヘマトクリットを増やす場合がある、%Tsatを増やす場合がある、循環(もしくは血清)鉄レベルを増やす場合がある、および/または網状赤血球数、網状赤血球の平均細胞容積、網状赤血球の血色素量、もしくは網状赤血球数を増やす、もしくは正常化する場合がある。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を利用する診断方法が本明細書において提供される。本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片はまた精製目的で用いられてもよい。
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を利用する治療方法も本明細書において提供される。このような抗体またはその抗原結合断片はヘプシジン関連障害を処置するために用いられてもよい。前記方法が適用され得るヘプシジン関連障害、炎症性疾患、および鉄ホメオスタシスの疾患もしくは障害には、アフリカ鉄過剰症(African iron overload)、αサラセミア、アルツハイマー病、貧血、癌の貧血、慢性疾患の貧血、炎症性貧血、動脈硬化症もしくはアテローム性動脈硬化症(冠状動脈疾患、脳血管疾患、もしくは末梢閉塞性動脈疾患を含む)、運動失調、鉄に関連する運動失調、無トランスフェリン血症、癌、セルロプラスミン欠乏症、化学療法誘発性貧血、末期腎臓病もしくは慢性腎不全/腎臓不全を含む慢性腎疾患/腎臓病(ステージI、II、III、IV、もしくはV)、急性腎障害(AKI)、肝硬変、古典的ヘモクロマトーシス、コラーゲン誘発関節炎(CIA)、ヘプシジン過剰(ヘプシジン上昇)のある状態、先天性赤血球異形成貧血、うっ血性心不全、クローン病、セリアック病、炎症性腸疾患(IBD)、糖尿病、鉄生体内分布障害、鉄ホメオスタシス障害、鉄代謝障害、フェロポーチン疾患、フェロポーチン変異ヘモクロマトーシス、葉酸欠乏症、フリートライヒ運動失調、索性脊髄症、グラシル(gracile)症候群、H.ピロリ(H.pylori)感染もしくは他の細菌感染、ハラーフォルデン・シュパッツ(Hallervordan Spatz)病、ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2変異に起因するヘモクロマトーシス、異常血色素症、肝炎、肝炎(ブロック(Brock))、C型肝炎、肝細胞癌、ヘプシジン欠乏症、遺伝性ヘモクロマトーシス、HIVもしくは他のウイルス病、ハンチントン病、高フェリチン血症、低色素性小球性貧血、低鉄血症、インスリン抵抗性、鉄欠乏貧血、鉄欠乏障害、鉄過剰障害、ヘプシジン過剰のある鉄欠乏状態、若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)、多発性硬化症、トランスフェリン受容体2、HFE、ヘモジュベリン、フェロポーチン、TMPRSS6(IRIDA)、もしくは他の鉄代謝遺伝子の変異、新生児ヘモクロマトーシス、鉄に関連する神経変性疾患、骨減少、骨粗鬆症、膵炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、パーキンソン病、ペラグラ、異食症、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、偽脳炎(pseudoencephalitis)、肺ヘモジデリン沈着、赤血球障害、慢性関節リウマチ、敗血症、鉄芽球性貧血、全身性エリテマトーデス、サラセミア、中等症サラセミア、輸血後鉄過剰症、腫瘍、脈管炎、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、および/またはウィルソン病が含まれるが、これに限定されない。
本明細書で使用する「処置」または「処置する」とは、疾患もしくは障害のリスクがあるか、または疾患もしくは障害の素因のある対象の予防的処置と、疾患もしくは障害に罹患している対象の治療的処置を両方とも指す。
予防方法における治療剤の投与は、望ましくない疾患もしくは障害が予防されるように、またはその進行が遅れるように、望ましくない疾患もしくは障害の症状が顕在化する前に行われてもよい。従って、予防方法と一緒に用いられる場合、「治療的に有効な」という用語は、処置後に、望ましくない疾患もしくは障害を発症する、または症状の重篤度が進行する対象の数が(平均して)少なくなることを意味する。
対象が疾患または障害の症状を顕在化した後に治療剤が投与されることを含む治療方法と一緒に用いられる場合、「治療的に有効な」という用語は、処置後に、疾患または障害の1つまたは複数の徴候または症状が寛解すること、または無くなることを意味する。
本明細書で使用する「ヘプシジン関連障害」とは、鉄ホメオスタシスを破壊する異常なレベルのヘプシジン(例えば、貧血または貯蔵鉄の程度に関係するヘプシジン過剰またはヘプシジン欠乏症)によって引き起こされる、またはそれに関連する状態を指す。次に、鉄ホメオスタシスの破壊は、貧血などの二次疾患の原因となることがある。急性炎症状態または慢性炎症状態はヘプシジン発現アップレギュレーションの原因となることがあり、ヘプシジン発現アップレギュレーションは循環鉄レベル減少の原因となることがあり、循環鉄レベル減少は貧血の原因となるか、または既にある貧血を悪化させることがある。例示的なヘプシジン関連炎症性疾患には、癌の貧血、慢性疾患の貧血、炎症性貧血、化学療法誘発性貧血、慢性腎臓病(ステージI、II、III、IV、またはV)、末期腎臓病、慢性腎不全うっ血性心不全、癌、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、H.ピロリ感染または他の細菌感染、C型肝炎、HIV、および他のウイルス病、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、肝硬変、膵炎、敗血症、脈管炎、鉄欠乏症、低色素性小球性貧血、およびヘプシジン過剰のある状態が含まれる。
本明細書で使用する「鉄ホメオスタシスの疾患(または障害)」という句は、対象の鉄レベルが調整を必要とする状態を指す。「鉄ホメオスタシスの疾患(または障害)」は、ヘプシジン関連障害;高いレベルのヘプシジンに関連しないが、それにもかかわらずヘプシジン活性阻害から利益を得る状態、例えば、ヘプシジンが原因でない鉄ホメオスタシスの破壊;異常な鉄吸収、再利用、代謝、または排出によって、正常な鉄血中濃度または組織分布の破壊を引き起こす疾患;鉄調節不全が、炎症、癌、または化学療法などの別の疾患または状態の結果である疾患;異常な鉄血中濃度または組織分布に起因する疾患または障害;および鉄レベルまたは分布を調整することによって処置することができる疾患または障害を含む。このような鉄ホメオスタシスの疾患または障害、ヘプシジン関連障害、およびヘプシジン過剰の原因となり得る炎症性状態の非限定的な例には、アフリカ鉄過剰症、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)、αサラセミア、アルツハイマー病、貧血、癌の貧血、慢性疾患の貧血、炎症性貧血、動脈硬化症もしくはアテローム性動脈硬化症(冠状動脈疾患、脳血管疾患、もしくは末梢閉塞性動脈疾患を含む)、運動失調、鉄に関連する運動失調、無トランスフェリン血症、癌、セルロプラスミン欠乏症、化学療法誘発性貧血、末期腎臓病もしくは慢性腎不全/腎臓不全を含む慢性腎疾患/腎臓病(ステージI、II、III、IV、もしくはV)、急性腎障害(AKI)、心肺バイパス術関連AKI、薬物もしくは毒素関連AKI、肝硬変、古典的ヘモクロマトーシス、コラーゲン誘発関節炎(CIA)、ヘプシジン過剰(ヘプシジン上昇)のある状態、先天性赤血球異形成貧血、うっ血性心不全、クローン病、セリアック病、炎症性腸疾患(IBD)、糖尿病、鉄生体内分布障害、鉄ホメオスタシス障害、鉄代謝障害、フェロポーチン疾患、フェロポーチン変異ヘモクロマトーシス、葉酸欠乏症、フリートライヒ運動失調、索性脊髄症、グラシル症候群、H.ピロリ感染もしくは他の細菌感染、ハラーフォルデン・シュパッツ病、遺伝性ヘモクロマトーシス、後天性ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2変異に起因するヘモクロマトーシス、異常血色素症、肝炎、肝炎(ブロック)、C型肝炎、肝細胞癌、HIVもしくは他のウイルス病、ハンチントン病、高フェリチン血症、低色素性小球性貧血、低鉄血症、インスリン抵抗性、鉄欠乏貧血、鉄欠乏障害、鉄過剰障害、ヘプシジン過剰のある鉄欠乏状態、若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)、多発性硬化症、トランスフェリン受容体2、HFE、ヘモジュベリン、フェロポーチン、もしくは他の鉄代謝遺伝子の変異、新生児ヘモクロマトーシス、鉄に関連する神経変性疾患、骨減少、骨粗鬆症、膵炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、パーキンソン病、ペラグラ、異食症、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、偽脳炎、肺ヘモジデリン沈着、赤血球障害、慢性関節リウマチ、敗血症、鉄芽球性貧血、全身性エリテマトーデス、サラセミア、中等症サラセミア、輸血後鉄過剰症、腫瘍、脈管炎、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、および/またはウィルソン病が含まれる。
鉄調節の破壊に結びつけられる非炎症状態には、ビタミンB6欠乏症、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ペラグラ、索性脊髄症、偽脳炎、パーキンソン病(Fasano et al., J. Neurochem. 96:909 (2006)およびKaur et al., Ageing Res. Rev., 3:327 (2004))、アルツハイマー病、冠状動脈性心疾患、骨減少および骨粗鬆症(Guggenbuhl et al., Osteoporos. Int. 16:1809 (2005))、異常血色素症および赤血球代謝障害(Papanikolaou et al., Blood 105:4103 (2005))、ならびに末梢閉塞性動脈疾患が含まれるが、これに限定されない。
一局面において、鉄ホメオスタシスの障害の処置を必要とする対象において鉄ホメオスタシスの障害を処置する方法であって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。別の局面において、ヘプシジン活性の調整を必要とする対象においてヘプシジン活性を調整する方法であって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、鉄ホメオスタシスの障害の処置を必要とする対象において鉄ホメオスタシスの障害を処置するための方法あって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、ヘモクロマトーシスの処置を必要とする対象においてヘモクロマトーシスを処置する方法あって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、高いレベルのヘプシジンを有する対象を処置する方法であって、本明細書に記載の薬学的組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、貧血の処置を必要とする対象において貧血を処置する方法であって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、炎症性疾患の処置を必要とする対象において炎症性疾患を処置する方法であって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。さらに別の局面において、感染の処置を必要とする対象において感染を処置する方法であって、本明細書に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法が本明細書において提供される。感染は、例えば、細菌感染、真菌感染、またはウイルス感染でもよい。
このような方法は全て、場合によっては、エリスロポエチン、エリスロポエチン変種、およびエリスロポエチンに結合する抗体からなる群より選択される赤血球形成刺激物質を前記対象に投与する工程をさらに含んでもよい。一態様において、ヘプシジンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片および前記赤血球形成刺激物質は並行または連続して投与される。本明細書で使用する「赤血球形成活性」という用語は、インビボアッセイ、例えば、過低酸素赤血球増加症(exhypoxic polycythemic)マウスアッセイにおいて証明されるような赤血球形成を刺激する活性を意味する。例えば、Cotes and Bangham, Nature 191:1065 (1961)を参照されたい。
一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片および赤血球形成刺激物質は貧血患者の処置を改善するために用いられる場合がある。別の態様において、赤血球形成刺激物質療法、例えば、特に、エリスロポエチンまたはその類似体(エポエチンα、エポエチンβ、ダルベポエチンα)に対して無応答性を含む低応答性の患者はヘプシジン活性アンタゴニストまたはヘプシジン発現阻害剤による同時処置から利益を得る可能性がある。別の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片および赤血球形成刺激物質は、輸血依存性鉄過剰症に付随する鉄過剰障害の患者、またはフリードライヒ失調症などの鉄不均等分布障害を有する患者の処置を改善するために用いられる場合がある。
本明細書で使用する「赤血球形成刺激物質」とは、例えば、エリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を二量体化することによって、または内因性エリスロポエチン発現を刺激することによってエリスロポエチン受容体を直接的または間接的に活性化する化合物を指す。赤血球形成刺激物質には、エリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を活性化するエリスロポエチンおよびその変種、類似体、もしくは誘導体;エリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を活性化する抗体;またはエリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を活性化するペプチド;またはエリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を活性化する小さな、任意で、分子量約1000ダルトン未満の有機化合物が含まれる。赤血球形成刺激物質には、エポエチンα、エポエチンβ、エポエチンδ、エポエチンω、エポエチンι、エポエチンζ、およびその類似体、ペグ化エリスロポエチン、カルバミル化エリスロポエチン、ミメティックペプチド(EMP1/ヘマタイドを含む)、ミメティック抗体、ならびにHIF阻害剤が含まれるが、これに限定されない(米国特許出願公開第2005/0020487号を参照されたい。この開示はその全体が参照により組み入れられる)。例示的な赤血球形成刺激物質には、エリスロポエチン、ダルベポエチン、エリスロポエチンアゴニスト変種、およびエリスロポエチン受容体に結合し、エリスロポエチン受容体を活性化するペプチドまたは抗体(米国特許出願公開第2003/0215444号および同第2006/0040858号に報告された化合物を含む。これらのそれぞれの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)、ならびにそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、以下の特許または特許出願:米国特許番号4,703,008;5,441,868;5,547,933;5,618,698;5,621,080;5,756,349;5,767,078;5,773,569;5,955,422;5,830,851;5,856,298;5,986,047;6,030,086;6,310,078;6,391,633;6,583,272;6,586,398;6,900,292;6,750,369;7,030,226;7,084,245;7,217,689;PCT公開番号WO91/05867;WO95/05465;WO99/66054;WO00/24893;WO01/81405;WO00/61637;WO01/36489;WO02/014356;WO02/19963;WO02/20034;WO02/49673;WO02/085940;WO03/029291;WO2003/055526;WO2003/084477;WO2003/094858;WO2004/002417;WO2004/002424;WO2004/009627;WO2004/024761;WO2004/033651;WO2004/035603;WO2004/043382;WO2004/101600;WO2004/101606;WO2004/101611;WO2004/106373;WO2004/018667;WO2005/001025;WO2005/001136;WO2005/021579;WO2005/025606;WO2005/032460;WO2005/051327;WO2005/063808;WO2005/063809;WO2005/070451;WO2005/081687;WO2005/084711;WO2005/103076;WO2005/100403;WO2005/092369;WO2006/50959;WO2006/02646;WO2006/29094;および米国特許出願公開番号US2002/0155998;US2003/0077753;US2003/0082749;US2003/0143202;US2004/0009902;US2004/0071694;US2004/0091961;US2004/0143857;US2004/0157293;US2004/0175379;US2004/0175824;US2004/0229318;US2004/0248815;US2004/0266690;US2005/0019914;US2005/0026834;US2005/0096461;US2005/0107297;US2005/0107591;US2005/0124045;US2005/0124564;US2005/0137329;US2005/0142642;US2005/0143292;US2005/0153879;US2005/0158822;US2005/0158832;US2005/0170457;US2005/0181359;US2005/0181482;US2005/0192211;US2005/0202538;US2005/0227289;US2005/0244409;US2006/0088906;US2006/0111279に開示されるエリスロポエチン分子またはその変種もしくは類似体が含まれる。
一態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片および体内の鉄貯蔵を再分配する鉄キレート剤も意図される。鉄キレート剤は、鉄に結合することができ、組織または循環から鉄を除去することができる薬剤である。例には、デフェロキサミン(Desferal(登録商標))およびデフェラシロクス(Exjade(登録商標))、およびデフェリプロン(1,2-ジメチル-3-ヒドロキシピリジン-4-オン)が含まれる。
本明細書における組成物の投与は、注射を含むが、これに限定されない任意の適切な手段によるものでもよい。一態様において、注射は、例えば、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射でもよい。
包装容器、キット、および予め充填した容器
1種類または複数種の前記化合物を含むキットも本明細書において提供される。キットは、適切な容器手段の中に、ヘプシジンに結合する抗体またはその抗原結合断片を含んでもよい。
キットの容器手段には、一般的に、少なくとも1種類のポリペプチドを入れることができる、および/または好ましくは適切に分注することができる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、アンプル、注射器、静注用(IV)バッグ、および/または他の容器手段が含まれる。本明細書に記載の組成物を含む容器手段が本明細書において提供される。
キットは、市販のために、少なくとも1種類の融合タンパク質、検出可能な部分、レポーター分子、および/または他の任意の試薬容器を密に収容するための手段を備えてもよい。このような容器は、望ましいバイアルが保持される、射出成形および/または吹き込み成形により製造されたプラスチック容器を備えてもよい。キットはまた、キットにある材料を使用するための印刷物を備えてもよい。
包装容器およびキットは、薬学的製剤中に緩衝剤、防腐剤、および/または安定化剤をさらに備えてもよい。キットの各成分は個別容器の中に封入されてもよく、様々な容器が全て1個の包装容器の中にあってもよい。本発明のキットは冷蔵または室温保管用に設計されてもよい。
さらに、前記調製物は、キットの貯蔵寿命を延ばすために安定剤を含有してもよく、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含んでもよい。前記組成物が凍結乾燥される場合、キットは、凍結乾燥された調製物を再構成するために溶液のさらなる調製物を備えてもよい。許容される再構成溶液は当技術分野において周知であり、例えば、薬学的に許容されるリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。
包装容器およびキットは、アッセイ用、例えば、ELISAアッセイ用の1つまたは複数の構成要素をさらに含んでもよい。本願において試験される試料には、例えば、血液、血漿、および組織切片、ならびに分泌液、尿、リンパ液、ならびにその生成物が含まれる。包装容器およびキットは、試料を収集するための1つまたは複数の構成要素(例えば、注射器、カップ、スワブなど)をさらに備えてもよい。
包装容器およびキットは、例えば、製品の説明、投与方法、および/または処置の適応症を示したラベルをさらに備えてもよい。本明細書において提供される包装容器は、本明細書に記載の任意の組成物を含んでもよい。疾患(例えば、IBD)、慢性関節リウマチ、変形性関節症、ある種の癌およびその転移。
「包装材料」という用語は、キットの成分を収納する物理的構造を指す。包装材料は成分を無菌に維持することができ、このような目的で一般に用いられている材料(例えば、紙、段ボール(corrugated fiber)、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)で作ることができる。ラベルまたは包装挿入物には、適切な書面による説明書が含まれ得る。従って、キットは、本発明の任意の方法においてキット成分を使用するためのラベルまたは説明書をさらに備えてもよい。キットは、包みまたはディスペンサーの中に入っている化合物と、本明細書に記載の方法において化合物を投与するための説明書を備えてもよい。
なおさらなる態様において、キットは赤血球形成刺激物質用の容器手段をさらに備えてもよい。
説明書は、処置方法を含む本明細書に記載の任意の方法を実施するための説明書を含んでもよい。さらに、説明書は、満足の行く臨床エンドポイントもしくは起こり得る任意の有害な症状の表示、またはヒト対象に使用するための規制当局、例えば、米食品医薬品局により求められている追加情報を含んでもよい。
説明書は、「印刷物」、例えば、キットの中にある、もしくはキットに貼られた紙もしくはボール紙、あるいはキットもしくは包装材料に貼られたラベル、またはキットの構成要素を含むバイアルもしくはチューブに付けられたラベルにあるものでもよい。さらに、説明書は、コンピュータ可読媒体、例えば、フラッシュ/クラウドドライブ、ディスク(フロッピーディスケットまたはハードディスク)、光学CD、例えば、CD-またはDVD-ROM/RAM、磁気テープ、電気的記憶媒体、例えば、RAMおよびROM、ICチップ、ならびにこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光学記憶媒体に入れられてもよい。
本明細書に記載の組成物を含む容器手段が本明細書において提供される。容器手段は、バイアル、注射器、瓶、静注用(IV)バッグ、またはアンプルを含むが、これに限定されない、液体または凍結乾燥組成物を収納し得る任意の適切な容器でよい。注射器は、0.5cc、1cc、2cc、5cc、10cc、またはそれより多い体積を含むが、これに限定されない、対象への注射に適した任意の体積の液体を入れることができる場合がある。
本明細書に記載の組成物を備えるキットが本明細書において提供される。一局面において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片および赤血球形成刺激物質を備える、高ヘプシジンレベルに関連する障害または鉄ホメオスタシスの障害を処置するためのキットが本明細書において提供される。
別の局面において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片、および前記抗体またはその抗原結合断片と赤血球形成刺激物質との使用について説明する、容器に取り付けられた、または容器に同梱されたラベルを備える、高ヘプシジンレベルに関連する障害または鉄ホメオスタシスの障害を処置するためのキットが本明細書において提供される。
別の局面において、赤血球形成刺激物質、および赤血球形成刺激物質と本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片との使用について説明する、容器に取り付けられた、または容器に同梱されたラベルを備える、高ヘプシジンレベルに関連する障害を処置するためのキットが本明細書において提供される。
本願は、本願の例示的な態様として示された以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに深く理解することができる。以下の実施例は、態様をさらに詳しく例示するために提示されるが、決して、本願の広範な範囲を限定すると解釈してはならない。
実施例1.ヒトヘプシジンに対するモノクローナル抗体開発および抗原設計
背景
ヘプシジンは、鉄ホメオスタシスを調節する25アミノ酸ペプチドホルモンである。遺伝的または後天的なヘプシジン欠乏またはヘプシジン過剰は、主要な鉄調節疾患の主な原因または寄与する原因である。体内鉄貯蔵の一次欠乏または一次過剰によって鉄ホメオスタシスが妨害される他の疾患では、血中ヘプシジン濃度は一次障害に対する生理学的応答を反映している。臨床医学においてヘプシジン-25に向けた療法が潜在的に重要であるのにもかかわらず、初期第1相臨床試験に進んだヒト化モノクローナル抗体は1つしかない。
成熟ヘプシジンのアミノ酸配列、特に、N末端は哺乳動物間で高度に保存されている。マウスおよびラットのヘプシジンはそれぞれヒトヘプシジンと76%および64%同一である。ヘプシジンの特徴的な構造は進化的に高度に保存されており、5個のN末端アミノ酸がFpn結合と内部移行およびリソゾーム(lysozome)内での分解に直接関与しているのでインビトロでの生理活性に絶対必要である(Nemeth et al., 2006)。
分子レベルでは、これはヘプシジンによって行われる。ヘプシジンは、その受容体であり、唯一のヒト鉄チャンネルであるフェロポーチンの分解を引き起こし、フェロポーチンが発現している肝臓細胞、マクロファージ、および腸を裏打ちする細胞の内部に鉄を閉じ込める。血漿中鉄レベルが減少するとき、ヘプシジンレベルは減少し、フェロポーチンが産生され、細胞膜に輸送されている。これにより正常な鉄吸収および再利用が行われ、造血に必要な鉄が供給される。ヘプシジン-フェロポーチン鉄-調節軸(regulatory axis)は、現在、前臨床試験および第I相臨床試験中の、いくつかの新規治療薬開発取り組みの標的である。しかしながら、初期第I相臨床試験において現在評価されている、ヘプシジンに対して作られたヒト化MAbは1つしかない。
インビトロ細胞ベースのアッセイにおいてフェロポーチンの生物学的性質を研究するために、マウスフェロポーチン-GFP融合タンパク質(Ec:R50-GFPと名付けられた)の高レベル発現を促進するポネステロン(ponesterone)誘導性プロモーターによって、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)が安定にトランスフェクトされている。
ヘプシジン-25に対する抗体の作製がよく知られているように難しいことは、ヘプシジン-25の形状が緻密なことと、進化的に高度に保存されているため、特に、MAb開発の取り組みのために用いられているものを含めて、哺乳動物ではペプチドN末端領域が進化的に高度に保存されているためである。
ヘプシジン-25の成熟C末端領域に由来する直鎖ペプチド(ヘプシジン(10-25))[SEQ ID NO:27]に対して抗体を他社が作製している。これは、生物学的に活性なヘプシジン-25のELISA検出に有用でなく、治療用途において効果があると期待されない(例えば、Geacintov et al., US2004/0096990 A1を参照されたい)。
本発明者らが開発した抗体
ヘプシジン-25のアミノ末端が重要であり、その免疫原性が低いという本発明者らの知識を用いて、本発明者らは、生物学的に活性なヘプシジン-25に対するモノクローナル抗体を作製するために一揃いの抗原を設計し、BALB/cマウス群を免疫化した。
本発明者らの抗原設計は、ヘプシジン-25 N末端および完全長酸化ヘプシジン-25ペプチドに対するMAbを作製することに向けられた。本明細書に記載の3つの機能的MAbにつながった、設計された抗原の例を図1および図6に示した。
多数のペプチド抗原の免疫原性をBALB/cマウスにおいてインビボで試験し、ハプテン(例えば、DNP、PamCys)および免疫原性担体タンパク質(例えば、KLH、mKLH、アルブミン、または担体タンパク質)を付加する多数の合成法を用いて、ヘプシジン-25に特異的なMAbを作製した。適切な抗原はほとんどないことが分かった(図5および図6)。
実施例2:ハイブリドーマプロトコール
抗体価計算後に、市販の融合キット(Hy-Clone)を用いて、またはKohler and Milstein(同上)に記載の従来法を用いてハイブリドーマを調製した。
本実施例の目的は、免疫化後にリンパ節(LN)および/または脾臓(S)からマウスリンパ球を単離し、ハイブリドーマ細胞を作製し、抗原特異的抗体を分泌するポジティブクローンを作製および選択することによるモノクローナル抗体作製について説明することである。
手順
ミエローマ細胞の調製
融合の2週間前に、Sp2/0ミエローマ細胞株を、10%FCS、8-アザグアニン、およびPen-Strepを含むDEME培地中で増殖させる。細胞融合の1週間前に、細胞を8-アザグアニンなしで培養し、1日おきに細胞を分ける。融合のための細胞密度は2×105/mlであり、これらの細胞100mlが必要とされる。融合の前日に細胞を分け、細胞生存率を求める。生存率は95%超になることが期待される。
SP2/0細胞を遠心分離によって300×gで10分間、収集し、30mlのClonaCell-HY-Fusion培地Bを添加することによって3回洗浄した。2x107個の生細胞を含有するように、細胞ペレットを25mlの培地Bに再懸濁した。再懸濁後に、細胞を室温(RT)に保った。この工程はリンパ球調製と同時に行われてもよく、リンパ球調製後に行われてもよい。
マウスリンパ節、脾臓、およびリンパ球の単離
37℃まで予熱することによって、融合のためにPEGおよび培地(培地A、B、C)を調製した。
ハイブリドーマ融合のために、抗原としてヘプシジン-25を用いた標準的な血清力価分析によって確かめたときに免疫化に応答したマウスだけを選択する。選択した抗原による最終追加免疫の3日後にハイブリドーマ融合を行った。
窒息および頸椎脱臼を用いて各マウスを屠殺し、75%エタノールを噴霧した。マウスを腹側を上にして解剖台(dissection board)に置き、四肢を解剖台に固定した。無菌法を用いて全解剖法を行った。脾臓およびリンパ節(LN)を取り出すために、解剖の工程ごとに、異なる滅菌した器具(ハサミ、ピンセット)のセットを使用した。
LN(および/または脾臓)を、2mlの培地Aを含有する6ウェルプレートの1ウェルに入れ、脂肪および結合組織を切り落とした。本発明者らは、1個の使い捨てセルストレーナーを50mlコニカル遠心チューブの上部に置き、LN(または脾臓)をストレーナーの中に移し、滅菌したハサミを用いてLN(または脾臓)を小さな断片に切断し、滅菌した3mL注射器のプランジャーを使用し、5〜10mlの培地Bをストレーナーに通して組織をすりつぶした。本発明者らは、組織をもう1回すりつぶし、10mlの培地Bでリンスした(スクリーニング時には膜だけが残っているはずである)。リンパ球をやさしくピペットで取り、反転することで混合し、400×gで7分間、遠心分離した。上清を捨て、細胞を10mlの培地Bに再懸濁した。次いで、血球計を用いて適切な細胞希釈液を計数した。
融合
50mlチューブの中でリンパ球およびミエローマ細胞を4:1比(約8x107個のリンパ球と2x107個のミエローマ細胞)で混合した。リンパ球およびミエローマ細胞の比は10:1〜1:1でもよい。融合した細胞を400×gで10分間、1回、遠心分離し、細胞混合物を30mlの培地Bに再懸濁し、優れた粘着性を獲得し、細胞の融合を促進するために800g×5分で遠心分離した。
培地を細胞ペレットから完全に吸引し、最適に融合するためにはペレットを破壊しなければならないのでチューブの底をやさしくタップした。攪拌することなく、1mlピペットを用いて1分かけて1mLのPEG溶液をペレットにゆっくりと滴下した。もう1分かけて、チューブの底を連続して、やさしくタップした。
4分間にわたって前のように連続してタップしながら、4mlの培地Bを融合混合物にゆっくりと添加した。
10mlの培地Bを細胞にゆっくりと添加し、37℃に設定した水浴に入れて15分間インキュベートした。
30mlの培地Aをゆっくりと添加し、細胞を400×gで7分間、遠心分離した。上清を捨て、確実にPEGが全て除去されるように、細胞を40mlの培地Aで洗浄した。
細胞ペレットを10mlのClonacell-HY Hybridoma Recovery Medium(培地C)にゆっくりと再懸濁し、20mlの培地C(総体積=30ml)を含有するT-75cm2組織培養フラスコに移した。細胞を、37℃、5%CO2雰囲気の加湿インキュベーターに入れて一晩インキュベートした。
選択およびクローニング
融合の前日に、ClonaCell-Hy Hybridoma Selection Medium (培地D)を2〜8℃に置き、一晩解凍した。融合日に、培地Dを勢いよく振盪して内容物をよく混合し、室温まで温めた。
次いで、融合細胞懸濁液を50mlコニカルチューブに移し、400×g、RTで10分間、遠心分離した。上清を除去し、捨てた。総体積10mLになるように細胞を培地Cに再懸濁した。
10mLの細胞懸濁液を90mLの培地Dに移し、瓶をやさしく、数回、反転することによって徹底的に混合した。次いで、ハイブリドーマ細胞懸濁液を使い捨て試薬リザーバーに移し、泡が上まで上がって消散するようにRTで15分間、放置した。
マルチチャンネルピペットおよび滅菌ピペットチップを用いて、ハイブリドーマ細胞を含有するClonaCell(登録商標)-HY培地Dを96ウェルプレートに1ウェルあたり60〜80μLの体積で分注した。典型的には、これにより、プレートされる体積に応じて10〜16枚のプレートが得られた。プレートを加湿5%CO2インキュベーターに入れて37℃でインキュベートした。8日間、そのままインキュベートした後に、ウェルをコロニーの存在について調べた。コロニーの存在に関係なく、各ウェルの半固体培地上に150μLの予熱したClonaCell(登録商標)-HY培地Eをやさしくオーバーレイした。全ウェルに対して分析を行った。
プレートを加湿5%CO2インキュベーターに入れて、さらに2〜4日間、37℃でインキュベートした。確実に低発現ハイブリドーマを検出するために、オーバーレイインキュベーション時間をさらに延ばしてもよい。
半固体培地中のコロニーを乱すことなく、100μLのオーバーレイされたClonaCell(登録商標)-HY培地Eを注意深く除去した。関与する抗原に適したアッセイ系、例えば、Neutravidin ELISA, Mouse Mab Isotypingなどを用いて、上清を特異的抗体について試験した。
抗体の試験結果が陽性であったウェルの内容物をやさしく再懸濁し、ハイブリドーマを増殖させるために1mLのClonaCell(登録商標)-HY培地Eを含有する24ウェルプレートのウェルに移した。陽性ウェルがシングルコロニーより多くのコロニーを含有しているときには、クローンを別々に収集し、どのクローンが関心対象の抗体を産生するかを確かめるために増殖および再試験のために1つ1つのウェルに移した。
ハイブリドーマの凍結
細胞を1バイアルあたり2x106個の細胞の濃度で凍結保存した。
胎仔ウシ血清(FBS)に溶解した20%DMSO溶液を50mLコニカルチューブに入れ、氷上で冷却した。適切な体積のDMSOをゆっくりと添加し、よく混合し、0.2μmフィルターを用いて濾過滅菌し、氷上に保った。
細胞を収集し、冷FBSで2回再懸濁して、望ましい最終細胞濃度にする(例えば、1個のクリオバイアル(cryovial)につき2x106個の細胞で凍結保存する細胞については、4x106細胞/mLで懸濁する)。
凍結保存の場合、添加中は連続して混合しながら、細胞を含有するチューブに、FBS/20%DMSO溶液を1:1の比でゆっくりと添加した。凍結培地に溶解した細胞1mLを各クリオバイアルに移した。10%DMSOを含有する90%FBSに溶解して最終細胞懸濁液を計算した。
クリオバイアルを冷凍用容器にすぐに入れ、次いで、-80℃冷凍庫に一晩、移動した。翌日、冷凍用容器から凍結したバイアルを取り出し、液体窒素に入れて保管する。
実施例3:抗ヘプシジン抗体についてハイブリドーマをスクリーニングする
融合後にそのまま8日間インキュベートした後に、抗ヒトヘプシジン抗体を分泌するマウスハイブリドーマを特定するために全ウェルをスクリーニングした。簡単に述べると、スクリーニングの1日前に、コーティング用炭酸緩衝液(pH9.6)に溶解して調製したニュートラアビジン100μl(200ng/ウェル)を酵素イムノアッセイ(EIA)プレートの各ウェルに入れ、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄し、緩衝液に溶解した1%BSAでブロックし、1ngのK18-ビオチンヘプシジン-25トレーサーを各ウェルに添加した。1時間インキュベートした後に、プレートを洗浄し、100μlのハイブリドーマ組織培養上清を各ウェル中で50μlの1%BSA/TBSTと組み合わせ、プレートをロータリーシェーカー(240rpm)に置いて1.5時間インキュベートした。プレートを洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG(H+L)鎖検出用抗体を添加し、インキュベーションをもう1時間続けた。プレートを洗浄し、基質を適用し、反応物を10分間、発色させた後に、1N H2SO4を用いて止め、吸光度を450nMで読み取った。この1回目のスクリーニングの一例から、図2に図示したように8x12マトリックスのOD値が得られた。OD>2.0を生じたハイブリドーマを特定し、2回目スクリーニングの前にさらに増殖させた。
2回目のスクリーニングは、ヘプシジン-25に対する各ハイブリドーマの特異性を試験することを伴った。簡単に述べると、96ウェルEIAプレートをヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体(1/2,500希釈)で一晩コーティングし、翌日、プレートを洗浄し、ブロックし、100μlの組織培養上清を各ウェルに入れ、室温で1時間インキュベートした。Fc領域によって捕捉した、組織培養上清に存在するマウス抗体の能力を、1ngのK18-ビオチンヘプシジン-25トレーサーを各ウェルに添加し、ロータリープレートシェーカーに置いて1.5時間インキュベートすることによって試験した。洗浄後、HRP標識ストレプトアビジン(SA-HRP)をウェルに添加し、1時間インキュベートし、洗浄し、抗体によって捕捉されたトレーサーの存在を、TMB基質を10分間添加することによって検出した。酸を添加することによって反応を止め、吸光度を450nMで読み取った。図3に図示したように、OD>0.4を生じたハイブリドーマを特定し、さらに特徴付けするためにサブクローニングした。本発明者らの経験から、この2回目のスクリーニングにおいて2.0を超えるODを生じたハイブリドーマは、さらに特徴付けするための強力な候補であることが分かった。
ハイブリドーマの機能活性を試験するために、2回目スクリーニングにおいて特定したクローンをサブクローニングし、約70%コンフルエンシーまで増殖させ、2回目スクリーニングについて説明したようにスクリーニングした。簡単に述べると、96ウェルプレートをヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体でコーティングし、翌日、プレートを洗浄し、ブロックし、組織培養上清を各ウェルに入れ、1時間インキュベートした。
ヘプシジン原液を調製するために、約1mgの凍結乾燥ヘプシジンを秤量し、最終濃度2mg/mlとなるように0.5mlの0.016%HCl(滅菌した組織培養グレードの水で調製した)に溶解して再構成する。
溶液中のヘプシジン濃度を正確に求めるために、分光光度計によって215nmおよび225nmでの吸光度を測定する。
試料を測定するために、溶液を1:20希釈する(10μlの原液を190μlの滅菌水に入れる)。10%の0.016%HCl(10μlの0.016%HClを190μlの滅菌水に入れる)を用いて、分光光度計においてブランクをとる。215nmおよび225nmで吸光度を測定し、ペプチド濃度を求める以下の式を用いてヘプシジン濃度を計算する。
mg/ml単位でヘプシジン-25濃度を求める計算式は[ヘプシジン-25mg/ml]=(A215-A225)x0.144x20(20は希釈率)である。
ヘプシジン-25原液を保管するために、100μl体積の溶液を、滅菌した0.5ml微量遠心チューブに分注し、-80℃で保管した。ヘプシジンストックを便利な作業用溶液までさらに希釈するために、高濃度ストックを、滅菌した組織培養グレードの水で500μg/ml(作業用溶液)まで希釈する。
調製された溶液中のペプチド濃度を確かめるために、215nmおよび225nmで吸光度を測定する。測定のために、溶液を1:10に希釈する。25μlの体積を滅菌した0.5mlスクリューキャップ付微量遠心チューブに分注する。
合成ヒトヘプシジン-25がMAb結合部位においてK18-ビオチンヘプシジン-25トレーサーと競合する能力を、前述のように調製した100ngのヘプシジン-25をトレーサー溶液に添加することによって試験した。このうち100μlを各ウェルに添加し、1.5時間インキュベートした。洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを添加し、1時間インキュベートし、洗浄し、TMB基質を添加することによって、結合したトレーサーの存在を検出した。酸を添加することによって反応を止め、吸光度を450nMで読み取った。ハイブリドーマ上清の機能活性スクリーニングの一例を図4に示した。トレーサーのみで生じたODと比較してトレーサー+ヘプシジン-25ウェルにおけるODが低いことで、機能活性を示すハイブリドーマが特定された(例えば、ハイブリドーマ5A3;後で5A3の名称を「MAb583」に変更した)。
マウスMAbを作製する難しさの一例を図5に示した。様々な典型的な抗原および免疫化アプローチから、(血清力価に基づいて)免疫化に応答する様々な数のマウスと、首尾良い融合をもたらす組織を得ることができる。使用する抗原に関係なく、機能的ヘプシジン-25特異的マウスMAbのパーセントは一貫して0.06%未満である。(図5)。同様に、ヘプシジン-25に特異的な3種類のマウスMAbの発見に必要とされる取り組みの一例として、本発明者らは8種類の抗原を試験し、11,845個のハイブリドーマをスクリーニングした。成功率は0.025%であった(図6)。
実施例4:マウスMAbの精製
多量のMAb583およびMAb1B1を市販のCellMax中空糸バイオリアクター(10,000cm2表面積(Spectrum Labs, Inc.)1つ1つに播種し、次いで、5%CO2雰囲気中で37℃でインキュベートすることによって作製した。各MAbから約2〜3リットルの総細胞培養上清を約100mlバッチで集した。各バッチを遠心分離し、精製するまで-20℃で凍結した。
精製の場合、上清を解凍し、再遠心分離し、免疫グロブリンを、5ml HiTrapプロテインGカラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって製造業者の説明書に従って精製した。精製は、BioLogic Maximizer、QuadTec UV-VIS検出器、およびBioFracフラクションコレクターを備えたBioRad Biologic DuoFlow中圧クロマトグラフィーシステムを用いて行った。SDS-PAGE分析の場合、MAb583およびMAb1B1を含有する免疫グロブリンの2つの以前の精製物からのフロースルー画分をプールし、HiPrep26/10脱塩カラム(GE Healthcare)を用いて緩衝液交換を行った。ビシンコニン酸(BCA, Thermo Scientific)を用いてタンパク質濃度を求め、アリコートを-20℃で凍結して保管した。
標準的な還元条件下で行ったクーマシー染色SDS-PAGEゲル(12%アクリルアミド)を用いて、MAb581およびMAb1B1(ロット3)精製の一例が確かめられた(図7)。図7に図示したように、正しい分子量(それぞれ、約50kDaおよび25kDa)の重鎖および軽鎖タンパク質が両方存在することで証明されたように、MAb583および1B1 IgG(レーン8、9)の精製調製物をそれぞれのハイブリドーマ培養上清(レーン2〜5)から得た。さらに、精製マウスMAbはマウスIgG対照(レーン10)と電気泳動的に等しかった。無血清組織培養培地(レーン6)は負の対照として役立った。この方法から、さらなる結合親和性研究(例えば、Biacore)および特異性研究に適した精製MAbが一貫して得られるだろう。
バイオリアクター生産および精製収率の均一性を評価するために、MAb583抗体の連続した精製ロットごとに結合活性を評価するMAb活性を特徴付ける方法を開発した。MAb583抗体の精製ロットをそれぞれ、図7に示したようにゲル電気泳動によって評価した。この同じ方法をMAb1B1精製に適用した(データ示さず)。
本発明者らは、抗体活性を評価するためにマイクロウェルプレートELISAを使用した。バイオリアクター上清からの連続した各精製ロット(1ロットあたり約100ml)からの精製MAb583の段階希釈液をプレート(0〜100ng)にコーティングし、ブロックした。0.25%Blottoを含有するTBST、pH8に溶解して、1ng/ウェルのNT-ビオチンヘプシジン-25トレーサーをプレート全体に添加した。トレーサーを2時間結合させ、ウェルを、Blottoを含まないTBST、pH8で洗浄した。SA-HRPを1:2500で30分間、添加し、ウェルをTBSTで洗浄し、TMB基質を10分間、添加した。停止緩衝液を添加し、450nmでのODを分光光度計によって定量した。OD 4は吸光度が分光光度計(spectrophotomer)の分析範囲を超えていることを示している。
以下の表は、5回連続したMAb583精製について結合活性特徴を確かめるための確立されているELISA法の一例である。
データから、ロット全体にわたって精製MAb583の結合活性はロット3後に増加し、実施した最初の4回の精製にわたって精製プロトコールが最適化された後にロット4〜7を通じて一定だったことが分かる。6.25ngの精製MAb583でコーティングしたウェルから、450nmでの光学密度はロット4〜7を通じて2.7〜4であったことが証明された。次の希釈度(3.12ng/ウェル)では、ODは1.5〜2.3であった。本実施例は、バイオリアクター上清からのMAb583抗体を精製するための確立かつ検証されているプロトコールが確立されており、MAb583および1B1両方の数十もの精製ロットにわたって首尾一貫していると示されたことを証明する。
実施例5:ヘプシジン-25およびヘプシジンペプチドに対するMAb特異性の特徴付け
MAb583は、溶液ベースの特異性アッセイにおいてヘプシジン-25に対して素晴らしく、かつ優れた特異性を示す。例えば、ヘプシジン-25を無水マレイン酸プレート上でコーティングし、標準的な方法を用いて非占有の結合部位をクエンチした。並行して、20ng MAb583を低タンパク質結合96ウェルプレート内で漸増濃度のヘプシジン-25(0〜8ng/ウェル)と混合し、1時間反応させる。次いで、このMAb混合物を無水マレイン酸プレートに移し、2時間反応させ後に、洗浄し、プレートに共有結合しているヘプシジン-25に結合したMAb583の存在を、HRP-ヤギ抗マウスIgG二次抗体を用いて確かめる。さらにインキュベートおよび洗浄した後に、基質を添加し、酸を用いて発色を止め、OD 450nMを求める。図8は、ヘプシジン-25が溶解状態でMAb583上の結合部位を用量依存的にブロックできることを示す。
ヘプシジン-20、ヘプシジン-22、およびヘプシジン-25、ならびにプロテグリンに対するMAb583特異性の別の例を、標準的な電気泳動およびイムノブロット条件を用いる非還元トリシンSDS-PAGE(10〜20%アクリルアミド)分析などがあるが、これに限定されない膜ベースのアッセイを用いて証明した(図9)。クーマシー染色画像に図示したように、ヘプシジン-20、-22、および-25(レーン2、3、4)ならびにプロテグリン(レーン5)は全て約3kDaの類似した分子量を有する。対照的に、MAb583でプローブしたウエスタンブロットから、MAb583はヘプシジン-20、ヘプシジン-22、およびヘプシジン-25を特異的に認識するが、プロテグリンを認識しないことが分かった。
ヘプシジン-22およびヘプシジン-25、ならびにNT-ビオチンヘプシジン-25トレーサー、K18-ビオチンヘプシジン-25トレーサー、およびK24-ビオチンヘプシジン-25トレーサーに対するMAb583およびMAb1B1の特異性をさらに例示するために、還元SDS-PAGE(12%アクリルアミド)分析およびウエスタンイムノブロットを標準的な電気泳動およびイムノブロッティング法の下で行った(図10)。クーマシー染色SDS-PAGE分析から、ヘプシジン-20およびヘプシジン-25(レーン2、3)ならびに3種類のビオチン標識トレーサー(レーン4、5、6)は両方とも同一の分子量を有することが分かる。MAb583またはMAb1B1でプローブしたウエスタンブロットから、これらのMAbは、ヘプシジン-20、ヘプシジン-25、および3種類のビオチン標識ヘプシジン-25トレーサーペプチドを特異的に認識することが分かった。まとめると、本発明者らの溶液ベースの研究および膜ベースの研究から、MAb583およびMAb1B1は3種類全てのビオチン化ヒトヘプシジン-25トレーサー分子に対して独特の特異性を有することが証明された。
実施例6:MAb583および1B1のBIAcore表面プラズモン共鳴(SPR)分析
本実施例は、SPRを用いた、MAb583および1B1とヘプシジン-25との相互作用の結合親和定数および解離定数の分析について説明する。
SPRを、Biacore 3000 System(BIAcore, Piscataway, NJ)においてCM5センサーチップを用いて行った。CM5チップマトリックスは、金表面に共有結合により取り付けられたカルボキシメチル化デキストランからなる。全測定を25℃で行った。
ニュートラアビジン(Sigma, St. Louis, MO)を、アミン-カップリングプロトコールによって5000〜10000反応単位(RU)のレベルでCM5センサーチップ(フローセル1〜4)上に固定化した。このアミンカップリングプロトコールには、0.4M 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)および0.1M N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の1:1混合物を用いた、センサーチップ表面上にあるデキストランマトリックスの活性化と、それに続く、10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4に溶解したニュートラアビジンの注入が含まれる。
ニュートラアビジン固定化後に、次の工程をHBS-EP緩衝液(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.005% surfactantP20)中で行った。
ビオチン化ヘプシジンペプチド(NT-ビオチン-ヘプシジン-25、K18-ビオチン-ヘプシジン-25、およびK24-ビオチン-ヘプシジン-25)を、200μg/mlの濃度の個々のペプチドを5μl/minの流速で20分間、注入することによってフローセル2〜4(1フローセルあたり1ペプチド種)に固定化した。
ビオチン-ヘプシジン-25類似体をチップ上に捕捉した後に、HBS-EP緩衝液に溶解した24μg/mlの濃度の抗ヘプシジンMAb583または1B1をフローセル1〜4に50μl/minの流速で3分間、注入した。3分後に、注入を止め、その後に解離を6分間、追跡した。10mMグリシンHCl、pH1.5を10μl/minの流速で1分間、注入することによって再生を行った。
共鳴シグナルを、対照フローセル(セル1)のシグナルを差し引くことによって非特異的結合について補正し、BIAevaluation4.1ソフトウェア(Biacore)を用いて分析した。
第1のSPR実験では、MAb583を、前記のように調製したBiacoreチップに24μg/mlの濃度で適用した。MAb583と3種類のビオチン-ヘプシジン-25類似体との速い結合および非常に遅い解離速度が観察された(図11)。図11に示したSPR実験からのデータを以下の表に示した。優れた結合親和定数(Ka)および解離定数(Kd)がMAb583とNT-ビオチンヘプシジン-25について観察され、約1log低い親和定数および解離定数が、K18-ビオチンヘプシジン-25およびK24-ビオチンヘプシジン-25それぞれについて観察された。
本発明者らは、かなり低い抗体モル比でMAb583を評価するために約1/5のMAb583濃度(5μg/ml)を用いて、2つの最良のビオチン化ヘプシジン-25抗原であるNT-ビオチンヘプシジン-25およびK18-ビオチンヘプシジン-25に対して、図11に示したBiacore実験を繰り返した(図12)。Biacoreプロットから、MAb583は、このBiacore実験において評価したK18-ビオチンヘプシジン-25およびNT-ビオチンヘプシジン-25ペプチドから優れた結合親和性と非常に遅い解離を有することが分かる。図12からのBiacore結果を図13に示した。
Biacoreデータから、MAb583は、K18-ビオチンヘプシジン-25に高親和性および低いピコモル解離定数(Kd)=約7.5pMで結合することが分かる。MAb583は、NT-ビオチン-ヘプシジン-25に対して高いがわずかに低い結合親和性およびKd=約18pMで低いピコモル解離定数を有する。
これらのBiacore実験および結果から、MAb583はヘプシジン-25に素早く、かつ高い親和性で結合し、ヘプシジン-25からゆっくりと、かつ低いpM解離定数で解離することは裏付けられた。MAb583に対するエピトープは9個のN末端アミノ酸であり、このうち最初の5個のN末端アミノ酸(SEQ25)が、鉄輸送体および受容体であるフェロポーチンへのヘプシジン-25の結合ならびにヘプシジン-25がフェロポーチンを内部移行および分解する能力に絶対必要である。ヘプシジン-25のN末端に対するMAb583の優れた特異性、親和性、アビディティ、およびpM Kdから、MAb583はインビトロおよびインビボにおいて中和抗体であり、治療用途のためにヒト化するのに適していることが分かる。MAb1B1を用いたBiacore実験の例を図14〜15に示した。MAb1B1を用いてSPR分析を行うために、MAb583について説明したものと同じ条件を用いて2つの試みを行った。いずれの場合にも、ヘプシジン-25抗原からの1B1の解離速度は非常に遅いので、BIAevaluation 4.1ソフトウェアが使用したBiacore 3000機器は、20分間の実験にわたって、ヘプシジン-25抗原からの1B1の解離を全く検出することができなかった。この理由から、前記実験から、図14〜15に示したBiacore実験について、図13にMAb583について示したように統計情報を得ることができなかった。
これらの実験条件下でのSPR分析から、マウスMAb1B1はヘプシジン-25ペプチドに対して並外れた親和性を有し、≦10-12〜10-13M)の親和定数(KD)を有する可能性があることが分かる。これらの特徴は、ヒト化と、ヘプシジン-25特異的MAbとしての前臨床評価に適している可能性がある。
実施例7:MAb583および1B1を用いたヘプシジン特異性および結合実験
583および1B1の特異性および相対結合親和性を一連のマイクロタイタープレート競合実験において評価した。アッセイは、MAb583またはMAb1B1でコーティングした96ウェル-マイクロタイタープレートを用いて2回または3回繰り返して行った。
MAb583を、40mM Tris-HCl(pH7.3)、100mM NaClを含有するTris緩衝食塩水(TBS)で1:4000に希釈し、ピペットで取ってマイクロタイタープレートに入れた。
室温(RT)で1時間インキュベートした後に、マイクロタイタープレートをTBST(0.05%TWEEN(登録商標)20を含むTBS)で洗浄し、様々な量の合成ペプチドおよびビオチンヘプシジン-25類似体(1〜2ng/ウェル)を含有する標準的な試料100mlを各ウェルに添加し、RTで1時間インキュベートした。
競合を、ストレプトアビジン-HRPと基質テトラメチルベンジジンによって検出した。発色反応を0.5N H2SO4を用いて止め、溶液の光学密度を450nm波長で読み取った。
ヘプシジン-25、ヘプシジン-22、およびヘプシジン-20と、マイクロタイタープレートにコーティングしたMAb583抗体との結合の分析。ビオチン化ヘプシジン-25類似体の結合と、結合したNT-ビオチンヘプシジン-25の検出を用いて、ヘプシジン-25と比べた各ヘプシジンペプチドの相対的な結合程度を検出した(図16)。NT-ビオチンヘプシジン-25とヘプシジンペプチドアイソマーであるヘプシジン-22およびヘプシジン-20を用いた競合曲線は類似している。このことから、ヘプシジンアイソマーはMAb583に結合するが、ヘプシジン-25からヘプシジン-22、ヘプシジン-20へと回帰曲線が右にシフトすることから証明されるように、ヘプシジンアイソマーのサイズが減少するにつれてEC50値(親和性)は減少することが分かる。
本発明者らは、MAb583および1B1それぞれに対するヘプシジン上の結合エピトープを評価するために、前述と同じ方法を用いて、C末端酸化ペプチドに対するMAb583および1B1の相対結合親和性を調べた。ヘプシジン(10-25)などのカルボキシ末端ペプチドは米国特許第7,320,894号および同第7,411,048号に記載されている。これらの特許はそれぞれ前記ペプチドに関して参照により本明細書に組み入れられる。
図17および図18に示したように、NT-ビオチンヘプシジン-25を用いて、ヘプシジン(10-25)ペプチドとMAb583または1B1は2000ng/mlの試験濃度まで結合しなかった。このELISA実験では、合成ヘプシジン-25による優れた競合的結合と比較して、MAb583とマウスヘプシジン-25(マウスヘプシジン-1)との間の結合もプロテグリンとの間の結合も観察されなかった(図17)。これらの実験から、MAb583および1B1は、ヘプシジン-25のC末端16アミノ酸に見出されるいかなるエピトープ(ヘプシジン(10-15))にも結合せず、従って、N末端エピトープに結合することがはっきりと分かる。
カチオン性抗菌ペプチドであるプロテグリンおよびマウスヘプシジン-25、(マウスヘプシジン-1)は構造が類似し、マウスヘプシジン-1はヒトヘプシジン-25と76%アミノ酸同一性を有する。本発明者らは、これらのペプチドを使用して、MAb583と同じアッセイにおいてMAb583と類似ペプチドとの交差反応性を試験した。ELISA実験においてはっきりと示されたように、本発明者らは、583と、これらの構造が類似するペプチドとの明らかな結合を見出さなかった(図17)。
図18に示した類似実験では、本発明者らは、ELISA実験においてトレーサーとして使用したK18-ビオチンヘプシジン-25を用いて行った類似実験においてヘプシジン(10-25)とMAb1B1との結合を観察しなかった(図19)。このことは、1B1に重要なエピトープである9個のN末端アミノ酸をさらに裏付けるものである。重要なことに、これらのデータから、MAb583および1B1は両方ともヘプシジン-25のN末端に対して優れた親和性および特異性を有することが分かる。両方とも、インビトロおよびインビボで、フェロポーチン受容体および鉄チャンネルに対するヘプシジン生理活性の中和抗体であり、ヒト化されたら治療剤開発の候補になると予測されるだろう。
実施例8:フェロポーチン-GFP蛍光分析による細胞ベースのアッセイにおけるインビトロでのヘプシジン-25に対する中和活性についてのMAb583の分析
インビトロ細胞ベースのアッセイ
本発明者らは、ヒトヘプシジン-25(SEQ ID NO.19)に対するMAb583の中和活性を評価するために、Nemeth et al.(2006)に記載のようにフローサイトメトリープロトコールを用いた細胞ベースの蛍光アッセイにおいてインビトロでのMAb583中和活性を評価した。ヘプシジンの5個のN末端アミノ酸[SEQ ID NO. 25]はフェロポーチンと相互作用し、ヘプシジン生物学的活性に必要とされる。これにより、N末端から1つ1つのアミノ酸が欠失すると、フェロポーチン分解活性によって定義されるヘプシジン生物学的活性が低下する(図20〜23)。
ポナステロン誘導性マウスフェロポーチン構築物(Fpn-GFP)を含有するヒトHEK細胞を、10mMポナステロンと共に、または10mMポナステロンを伴わずに24時間インキュベートした。1×ダルベッコPBSで3回、洗浄した後に、細胞を、プロテインAアフィニティ精製された既知量のMAb583抗体および既知濃度の生物学的に活性な合成ヒトヘプシジン-25または対照緩衝液によって連続してもう24時間、処理した。
細胞をTrypLE Express(Invitrogen)を用いてはがし、1x106細胞/mlの濃度で培地に再懸濁した。緑色蛍光強度をフローサイトメトリー用いて測定した。
バックグラウンド蛍光を排除するために、Fpn-GFPを発現しない細胞(ポナステロンなし)を用いてゲート(ベースライン)を設けた。結果は、式(Fx-Fhep)/(Funtreated-Fhep)に従って未処理細胞のGFP強度に対する割合として表した。式中、Fは、ゲーティングされた緑色蛍光の平均を表す。
MAb583で処理したFpn-GFP細胞のフローサイトメトリー
最初の実験では、マウスFpn-GFP発現を誘導するために、細胞をポナステロンによって一晩誘導した。翌日、ポナステロンを洗浄によって除去し、ヘプシジン-25および583抗体を24時間添加した(図20および図21)。
ヘプシジン-25を100ng/ml濃度(37nM)で使用した。MAb583を、ヘプシジン濃度の10倍、2倍、または1/3の相対モル濃度(370nM、74nM、および10nM)で添加した。
対照MAbは、ELISAによってインビトロでスクリーニングした時に失敗した抗ヘプシジンモノクローナル抗体であり、最高濃度(370nM)で使用した。この実験では、10nM MAb583は37nMヘプシジン-25を完全中和し、FPN-GFPのヘプシジン-25分解を抑制した。
本発明者らは、これらの細胞ベースのMAb583生物学的活性アッセイにおいて、ヘプシジン-25のモル濃度の1/3、1/6、1/12、および1/24で添加したMAb583を用いて実験を繰り返した(図22および図23)。
この実験では、2.5nM MAb583は、生物学的に活性なヘプシジン-25のモル比の1/12で、37nMヘプシジン-25およびFPN-GFPに対するその生物学的活性を有意に中和した(約23%減少させた)(図22、23)。
本発明者らはまた、細胞ベースの蛍光アッセイと同様に、MAb583抗体およびヘプシジン-25ビオチン化ペプチドの濃度を含む同一プロトコールを用いた2つの追加実験において、対照Fpn-GFP細胞ならびに様々な濃度のMAb583およびヘプシジンで処理した細胞からの細胞内フェリチン測定値を得ることによってMAb583中和活性も評価した(図24〜26)。
細胞内フェリチン濃度を得るために、総細胞タンパク質を、製造業者の説明書(Roche, Indianapolis, IN)に従ってプロテアーゼインヒビターカクテルを添加したRIPA緩衝液(Boston BioProducts, Ashland, MA)を用いて抽出した。
フェリチンレベルは、製造業者の説明書に従って酵素結合免疫測定法(ELISA; Ramco Laboratories, Stafford, TX)と各試料中の基準化された総タンパク質濃度を用いて求めた。総タンパク質濃度は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce, Rockford, IL)を用いて求めた。
図24〜26は、MAb583が、フェロポーチンに対するヘプシジン-25の生物学的活性を中和する能力を評価するように設計された、これらのアッセイの結果を示す。
本明細書に記載の蛍光アッセイにおいて観察された結果と同様に、2.5〜10nM MAb583はインビトロで37nMヘプシジン-25およびその生物学的活性を有意に中和し、それによって、FPN-GFP分解が減少し、鉄に結合している細胞内フェリチンが保持された(図24〜26)。
実施例9.C57BL/6マウスにおけるMAb583のインビボ中和活性
MAb583のインビボ中和特徴を評価するために、本発明者らは、簡単であるが、ロバストな動物試験を行った。本発明者らは、インビボでMAb583抗体が生物学的に活性なヘプシジン-25をブロックできるかどうか、アフィニティ精製した583抗体を用いて2種類の投与計画を調べた。本発明者らは、腹膜内注射を介した、MAb583の単回投与、および24時間あけて連続して適用した2回のMAb583の50%投与を試験した。
インビボMAb583実験を開始するために、40匹のC57BL/6雄マウス(6週齢)を、本発明者らの建物内にある商業的動物施設に収容し、鉄の少ない飼料(20ppm全鉄、Teklad Custom Research Diet, Harlan Laboratories)を17日間、与えた。1日目に、40匹のマウスを8匹からなる5つの実験群に無作為化し、各群を下記のように処置した。群1にはPBSのみを与えた。群2および群3には、それぞれ、1.0mgおよび0.5mgのMAb583を与えた。群4には対照Mab(ELISAに適さない抗ヘプシジンMAb)を与えた。群5にはPBSを与えた。24時間後に、群3の各マウスに0.5mgの追加MAb583を与えた。さらに24時間のインキュベーション期間の後に、群1〜4にPBSに溶解した50μgヘプシジン-25を与え、群5(対照群)のマウスには2回目のPBS投与を行った(図27)。
処置して2時間後に心臓穿刺によってマウスを採血し、血液を30分間、凝固させ、その血清中鉄レベルを市販の分光光度法(Iron-SL Assay, Genzyme Diagnostics)を用いて評価した。
データの統計解析から、データはシャピロ・ウィルク正規性検定(P=0.216)によって正規分布していたことが分かる。
データの等分散性(Equal Variance)検定は群全体にわたって等しい分散性を示した(P=0.360)。
ANOVAを実施し、処置群間で血清中鉄濃度の平均値に統計的に有意な差(P=0.008)があることが示された(図28)。図27は、これらの結果と、PBS対照と、ヘプシジン-25を含むPBSで処置したか、または0.5mg MAb583を含むPBSの2回投与と組み合わせて処置したマウスとの間の有意差を図表で示す(図28)。
α=0.050で実施した検定の検出力: 0.748。
多重比較対対照群(ホルム・シダク法)から全有意水準=0.05が得られた。
PBS対照群と、PBSに溶解した50μgヘプシジン-25を投与したマウス群または24時間にわたって0.5mg MAb583を2回投与したマウス群との間で血漿中鉄濃度に有意差が観察された。PBSに溶解した50μgヘプシジン-25の後に1.0mgの対照抗ヘプシジンMAb(偽MAb)を投与した群はPBS+ヘプシジン-25対照群と共に有意差に近づいた(P=0.054;図28)。
これらの結果は有望であり、MAb583およびヘプシジン-25が雄C57BL/6マウスに連続してIP注射されたときに、MAb583には、インビボでヘプシジン-25の生物学的活性を抑制する中和活性があることを示している。このインビボ実験において使用した50μg用量のヒトヘプシジン-25は、C57BL\6マウスにおいて72時間までに重篤な低鉄血症を誘発することが以前に示されている。従って、この用量はMAb583中和活性の厳しい試験を表している(Rivera et al. 2005)。
実施例10.ヒト-マウスキメラ抗体
マウス抗ヘプシジンMAB583の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを合成し、全く改変することなく、知的財産権によって保護されている哺乳動物発現ベクターにクローニングした。軽鎖可変ドメインを分泌シグナルおよびヒトκ軽鎖定常ドメインとインフレームでクローニングした。重鎖可変ドメインを分泌シグナルおよびヒトIgG1定常ドメインとインフレームでクローニングした。結果として生じたクローンであるBAP070-01を配列検証した。下記ではシグナル配列に下線を引いたことに留意のこと。
CHO細胞を6ウェルプレートに播種し、知的財産権によって保護されているトランスフェクションプロトコールを用いてBAP070-01(組換えキメラ)または空のベクターのみ(BAP070)でトランスフェクトし、10%血清を含むDMEM中で37℃で培養した。トランスフェクションの48時間後に上清を収集した。上清中のIgG濃度をBioAtlaの定量用ELISAを用いて求めた。組換えBAP070-01濃度は定量用ELISAによって3650ng/mlであると確かめられた。
BAP070-01 MAb583キメラを用いた本発明者らの最初の実験は、ヘプシジン-25との結合活性についてMAb583キメラをマウスMAb583と比較するために設計された。600ng/mlから始まる2倍希釈系列、次いで、3倍希釈系列のBAP070-1 CHO細胞上清またはマウスMAb583(ロット10, 0.5mg/ml)をマイクロウェルプレート中で、無水マレイン酸活性化ウェルに共有結合している100ngのヘプシジン-25とインキュベートした。BAP070-01上清について、抗体結合をHRP結合抗ヒトIgG(H+L)(1:2500)によって検出した。精製MAb583対照による抗体結合を、同じ希釈度のウサギ抗マウスIgG(H+L)を用いて検出した。TMBをウェルに添加して5分後に反応を1N HClで止め、すぐに読み取った。反応のOD450nm値を、Molecular Device SPECTRAmax Plusを用いて測定した(図29)。以下の表および図29に示したOD結果から、BAP070-01キメラMAb583および精製MAb583対照による優れた結合が証明された。このことから、BAP070-01キメラクローンは正しく構築され、マウス重鎖CDRおよび軽鎖CDRはヒトIgGフレームワークに関連して正しく機能したことが分かった。これらのデータから、クローニング、CHO細胞培養物におけるBAP070-01の発現、およびキメラ結合活性はヒト化プロトコールを続けるのに十分にロバストであることが裏付けられた。本発明者らは初期観察を裏付けるために追加実験を行った。
この実験では、MAb583キメラBAP070-01は、連続希釈した精製マウスMAb583より大きな程度でヘプシジン-25にはっきりと結合した。このことから、キメラ抗体の特異性および機能性は親マウスMAb583に匹敵することが裏付けられた(図29)。
この初回結合アッセイは、比較のためにヒト-マウスキメラMAb583の細胞培養上清と精製マウスMAb583が関与するのでBAP070-01キメラの半定量評価であった。細胞培養上清中のキメラ抗体濃度を、BCAを用いて、知的財産権によって保護されている免疫学的方法および精製MAb583を用いて定量した。この異なるアッセイによって、潜在的に、ELISA比較において、等しくない量の抗体、従って、シグナルを比較することができる。これらの警告(caveat)にもかかわらず、MAb583およびBAP070-01キメラは両方とも、この比較について予測されたように抗体増加と共にシグナル増加を示す。
ヘプシジン-25コーティングプレートによる583キメラの力価測定
BAP070-01および空のベクターの結合活性を比較するために、BAP070をELISAによって確かめた。簡単に述べると、ヒトヘプシジン-25(100ng/ウェル)を無水マレイン酸活性化マイクロウェルプレートに一晩、共有結合させ、残っている非結合活性化部位を製造業者の説明書に従ってブロックした。MAb583キメラであるBAP070-01を含有する連続希釈培養上清または空のベクターBAP070をマイクロウェルプレートに添加し、室温(RT)で2時間インキュベートした。結合したキメラMAb583抗体を、抗ヒトIgG-HRPと基質としてTMBを用いて検出した。結果を図30に示した。
データから、このアッセイにおいて、BAP070-01ヒト-マウスキメラMAbは優れた親和性でヒトヘプシジン-25を特異的に認識するが、BAP070 CHO上清はヘプシジン-25に結合しないことがはっきりと分かった(図30)。図29および図30に示したデータから、精製MAb583およびBAP070-01キメラMAb583の非常に良好な比較と、BAP070-01キメラのヘプシジン-25特異的結合が証明された。BAP070-01キメラ上清を負の対照BAP070空のベクターを比較した、予想されたELISA結果は、検出のために機能的ヒトIgG抗体を捕捉するヘプシジン-25コーティングプレートおよび抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いて証明された(図30)。
BAP070-01 583キメラ用のプロテインGコーティングC-ELISA
BAP070-01キメラとプロテインGとの結合および合成ヘプシジン-25によるBAP070-01 MAb583中和の程度を評価するために、本発明者らはトレーサーとしてNT-ビオチンヘプシジン-25を用いてC-ELISAアッセイを行った(図31)。このC-ELISA形式は、NT-ビオチンヘプシジン-25トレーサーとBAP070-01キメラとの結合を試験し、キメラMAb583との結合においてヘプシジン-25と競合させるのにも有用であった。BAP070-01キメラ抗体を捕捉するために、本発明者らは、マイクロウェルプレートを、コーティング用炭酸緩衝液に溶解したプロテインG(150ng/ウェル)で一晩コーティングした。
プレートをTBSTで洗浄し、BAP070-01 MAb583キメラを含有するCHO細胞上清(150ng/ウェル)を添加し、RTで1時間、プロテインGに結合させた。
プレートをTBSTで洗浄し、1(1)ng/ウェルのNT-ビオチンヘプシジン-25を、TBST、0.25%BLOTTOに溶解した様々な量(0〜100ng)の合成ヘプシジン-25標準と混合し、プレートに添加して競合結合させた。プレートをTBSTで洗浄し、SA-HRP(1:2500)を添加して、1時間結合させた。
プレートをTBSTで洗浄し、TBS基質を添加し、10分後に停止溶液を用いて反応を止めた。450nmでの吸光度を分光光度計によって測定した。
BAP070-01のC-ELISA吸光度(OD
450)を以下の表に示した。
上記の表および図31にある結果から、合成ヘプシジン-25はBAP070-10キメラ結合部位において競合的に競合し、キメラMAb583抗体はヘプシジン-25およびNT-ビオチンヘプシジン-25に特異的であることが証明された。図31に示した検量線は、4パラメータロジスティック回帰(Graphpad Prism; San Diego, CA)を用いて作成した。本発明者らはPrismを用いて、ヘプシジン-25とBAP070-01との結合のEC50を計算し、EC50=54ng/mlを求めた(図31)。BAP070-01が粗上清に由来し、EC50が≦5.0ng/mlである精製MAb583ではないことを考えると(図16)、このEC50は非常によい。
BAP070-01 583キメラに対するニュートラアビジンC-ELISA
BAP070-01キメラMAb583の別の評価を、マイクロウェルプレートをコーティング用炭酸緩衝液中でニュートラアビジン(150ng/ウェル)で一晩コーティングすることによって行った。プレートをTBSTで洗浄した。1ng/ウェルのNT-ビオチンヘプシジン-25トレーサーを様々な濃度のヘプシジン-25(0〜100ng/ウェル)と共に添加し、RTで1時間結合させた。このC-ELISA分析では、抗ヒトIgG(H+L)-HRPを用いて、結合したBAP070-01 MAb583キメラを検出した。
以下の表は、ヘプシジン-25濃度に対しての複製物両方のOD
450値および平均OD
450値を示す。結果から、ヒトヘプシジン-25はBAP070-01キメラ上の結合部位をはっきりと中和し、NT-ビオチンヘプシジン-25トレーサー(ヘプシジン類似体)は効率的に結合することが分かった。
図32は、BAP070-01キメラとNT-ビオチンヘプシジン-25との競合的結合について上記の表に示した結果を図示する図形データを示す。予想通り、全ての競合アッセイにおいて、非標識抗原(例えば、ヘプシジン-25)濃度が増加するにつれて低シグナルが観察された。図32は、それぞれの漸増濃度のヘプシジン-25に対する2つの複製物のOD450値および平均OD450値を示した。
累積的に、本発明者らが実施例10において提示したデータから、BAP070-01キメラMab583は親マウスMAb583抗体として高い親和性および特異性特徴を保持しており、天然マウスMAb583抗体の完全ヒト化によって前臨床試験およびヒトでの臨床試験に適した治療抗体候補が得られることが証明された。
本発明の態様の特定の態様が示され、本明細書において説明されたが、このような態様は単に一例として示されたことが当業者に明らかであろう。今や、態様から逸脱することなく、非常に多くの変化、変更、および置換が当業者の頭に浮かぶだろう。本明細書に記載の態様の態様の様々な代案が態様の実施において用いられ得ることが理解されるはずである。以下の特許請求の範囲は態様の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲の範囲内にある方法および構造ならびにその均等物は特許請求の範囲に含まれることが意図される。
配列
ヘプシジンMAb H32、583、および1B1の可変重鎖および可変軽鎖のCDR-1、CDR-2、およびCDR-3領域のヌクレオチドアラインメント。CDRに下線を引いた。フレームワーク領域には下線を引いていない。
ヒトヘプシジンペプチド(ヘプシジン-25、hep-25、Hep-25、hHepcidin-25):
マウスヘプシジン-1ペプチド(mhepcidin-1、mhep-1、mHep-1、mHepcidin-1):
ラットヘプシジンペプチド(rhepcidin、rhep、rHep、rHepcidin):
ヒトヘプシジン-20ペプチド(ヘプシジン-20、hep-20、Hep-25、hHepcidin-20):
ヒトヘプシジン22ペプチド(ヘプシジン-22、hep-22、Hep-22、hHepcidin-22):
ヒトヘプシジン-9ペプチド(ヘプシジン-9、hep-9、Hep-9、hHepcidin-9):
ヒトヘプシジン-5ペプチド(ヘプシジン-5、hep-5、Hep-5、hHepcidin-5): SEQ ID NO:25(5aa) DTHFP
ヒトヘプシジン10-25ペプチド(ヘプシジン10-25、hep10-25、Hep10-25、hHepcidin10-25):
DNP-ヒトヘプシジン-9 KLHペプチド(DNP-ヘプシジン-9-KLH、DNP-hep-9-KLH、DNP-Hep-9-KLH、DNP-hHepcidin-9-KLH): SEQ ID NO:27 DNP-DTHFPIC(KLH-SMCC)-IF
IgG1重鎖可変領域[ホモ・サピエンス(Homo sapiens)]GenBank: AAK62671.1
IgG1重鎖可変領域[ホモ・サピエンス] GenBank: AAK19936.1
IgG1[ハツカネズミ(Mus musculus)] GenBank: BAA23565.1
免疫グロブリンκ軽鎖可変領域[ハツカネズミ] GenBank: ABE03823.1
免疫グロブリンκ軽鎖可変領域[ハツカネズミ] GenBank: ABE03821.1
免疫グロブリンIgG1軽鎖可変領域[ホモ・サピエンス] GenBank: AAK62672.1
ヘプシジンMAb H32、583、および1B1の可変重鎖および可変軽鎖の核酸配列およびアミノ酸配列
H32 VH
ヘプシジン MAb H32、583、および1B1の可変重鎖および可変軽鎖のCDR-1、CDR-2、およびCDR-3ポリヌクレオチド配列
可変重鎖