以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
本願明細書において,「長手方向」とは,基本的に,吸収性物品の前身頃と後身頃を結ぶ方向(Y軸方向)であり,「幅方向」とは,この長手方向に平面的に直交する方向(X軸方向)である。
また,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
図1は,本発明の一実施形態に係る吸収性物品100を,肌対向面側からみた平面図である。本発明に係る吸収性物品100は,例えば,使い捨ておむつや,尿パッド,パンティーライナー,軽失禁パッド,生理用ナプキンに用いることができる。図1では,吸収性物品100の内部構造を模式的に示している。図1に示されるように,吸収性物品100は,トップシート10と,バックシート20と,吸収体30を含む。トップシート10は,吸収体30の肌対向面側に配置され,着用者の肌に直接接するシートである。また,バックシート20は,吸収体30の肌非対向面側に配置される。図1に示されるように,トップシート10とバックシート20は,吸収体30の周囲において,互いに接合されていることとしてもよい。このようにして,トップシート10とバックシート20の間には,吸収体30が封入される。
トップシート10は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体30に透過させるための部材である。このため,トップシート10は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。液透過性材料とは,例えば,標準の大気圧下において,常温の水を5mlその上に載せた場合に,1分未満の時間で水を透過する材料を意味する。トップシート10を構成する液透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
バックシート20は,トップシート10を透過し吸収体30に吸収された液体が,外部に漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート20は,液不透過性材料によって構成される。液不透過性材料とは,例えば,標準の大気圧下において,常温の水を5mlその上に載せた場合に,1分以上経過してもその水を透過しない材料を意味する。バックシート20を構成する液不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
吸収体30は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体30は,液透過性のトップシート10と,液不透過性のバックシート20の間に配置される。吸収体30は,尿などの液体を吸収する機能を有する吸収性材料により構成される。吸収体30を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用できる。吸収性材料としては,例えば,粉砕パルプ(フラッフパルプ),高吸収性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成されて用いられる。
吸収性物品100は,長手方向と幅方向を有する。本願の図において,吸収性物品100の長手方向はY軸方向で示され,吸収性物品100の幅方向はX軸方向で示されている。
図1に示されるように,トップシート10は,複数枚のシート部材を積層して貼り合わせることで形成されている。トップシート10を構成するシート部材の枚数は,2枚以上であればよく,例えば2〜5枚とすることができる。図1に示された実施形態において,トップシート10は,上層シート11と下層シート12の2枚のシート部材を貼り合わせることで構成されている。上層シート11は,肌対向面側に位置しており,下層シート12は,肌非対向面側に位置している。このため,着用者の肌に直接接するシート部材は,上層シート11となる。
上層シート11と下層シート12は,それぞれ,織布,不織布,又は多孔性フィルムなどの液透過性材料で形成することができる。特に,上層シート11及び下層シート12としては,不織布を用いることが好ましい。不織布としては,公知の繊維からなるものを用いることができる。例えば,不織布としては,エアースルー不織布や,ヒートボンド不織布,スパンボンド不織布,メルトブローン不織布,スパンレース不織布,及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また,上層シート11と下層シート12とを熱融着によって接合する場合には,不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては,PET/PE,PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また,不織布には,界面活性剤等を用いた親水化処理を施すことが好ましい。
図1に示されるように,上層シート11と下層シート12は,エンボス加工によって互いに接合されている。エンボス加工とは,例えば,外周面に所定パターンの凸状のエンボス突起が設けられたエンボスロールと,平滑面を有するプレーンロールとの間で,2枚の熱可塑性のシート部材を加熱しながら挟み込むことにより接合させる加工方法である。エンボス加工を施すことにより,エンボスロールのエンボス突起が接触した位置において,トップシート10に複数の凹状の接合部40が形成され,各接合部40において上層シート11と下層シート12が融着する。また,一般的に,上層シート11と下層シート12がエンボス加工によって接合されることで,接合部40おいては,上層シート11の厚さが薄くなる。このため,接合部40が形成されていない非接合部50では,相対的に上層シート11が相対的に盛り上がった状態となる。このように,トップシート10は,複数のシート部材をエンボス加工によって熱融着することにより形成される。
続いて,トップシート10に形成されるエンボスパターンについて詳しく説明する。図2は,エンボスパターンの第1の拡大図であり,図1において符号A1で示した点線の枠内を拡大して示している。また,図3は,エンボスパターンのうち,一つの非接合部50を構成する要素を抽出して示したさらなる拡大図である。
図2及び図3に示されるように,トップシート10のエンボスパターンは,上層シート11と下層シート12を接合する複数の接合部40と,複数の接合部40によって囲われた複数の非接合部50とによって構成されている。複数の接合部40は,間隔を空けて,規則的に配置されている。具体的には,同一の形状,大きさ,及び向きを有する複数の接合部40が,長手方向に一定の間隔をあけて列状に並べて配置されているとともに,この接合部40の列が幅方向に向かって複数列形成されている。また,隣接する接合部40の列では,各接合部40が長手方向に互い違いに並べられており,いわゆる千鳥状の配置となっている。また,各接合部40は,長手方向及び幅方向に沿って一直線上に並べられている。接合部40では,上層シート11と下層シート12とが熱融着されている。このため,接合部40では,上層シート11が凹状に窪んでいる。他方,非接合部50は,複数の接合部40によって囲われた領域であり,すなわち上層シート11と下層シート12とが接合されていない領域である。このため,非接合部50は,接合部40と比較して,上層シート11が着用者の肌に接触する方向に向かって,凸状に隆起している。図1〜図3に示されるように,本発明のトップシート10は,接合部40及び非接合部50の形状が,従来にはない斬新な形状となっている。
図2及び図3に示されるように,非接合部50は,その一部が一方向に向かって延出した形状となっている。例えば,非接合部50の形状は,電球状,鍵穴状,ひょうたん状,又は洋なし状などと表すこともできる。具体的には,非接合部50は,比較的面積の大きい大領域51と,この大領域51から一方向にのみに向かって延出した比較的面積の小さい小領域52とから構成されている。大領域51と小領域52の間に境はなく,両者は一体に繋がっている。つまり,大領域51と小領域52の間には,接合部40は形成されていない。図に示されるように,大領域51と小領域52は,異なる形状となっている。例えば,大領域51は,ほぼ正円形状の領域となっている。また,小領域52は,非接合部50から正円形状の大領域51を除いた残りの領域である。図に示した例において,小領域52は,およそ長方形の領域として考えることができる。このため,図に示した好ましい形態において,非接合部50は,円形の大領域51と方形の小領域52とを一体的に組み合わせた形状を呈しているといえる。
大領域51と小領域52の面積を正確に測定することは難しい。ただし,図3に示されるように,非接合部50内において,まず正円形状の大領域51を画定し,その残りの部分に長方形の小領域52を画定した場合に,両者の幅(X軸方向の幅)を比較すると,明らかに,大領域51の幅の方が,小領域の幅よりも広くなる。同様に,非接合部50内において,まず正円形状の大領域51を画定し,その残りの部分に長方形の小領域52を画定した場合に,両者の長さ(Y軸方向の長さ)を比較すると,大領域51の長さの方が,小領域の長さよりも長くなる。このように,面積の大きい大領域51とは,小領域52と比較して,幅及び長さが大きくなる領域であるとしてもよい。同様に,面積の小さい小領域52とは,大領域51と比較して,幅及び長さが小さくなる領域であるとしてもよい。小領域52の幅と長さは,それぞれ,大領域51の幅と長さの半分(1/2)以下であることが好ましい。
また,図2に示されるように,トップシート10のエンボスパターンには,実質的に同一の形状の非接合部50が規則的に複数形成される。さらに,各非接合部50は,大領域51から小領域52が延出する方向が,すべて同じ方向となっている。このため,トップシート10の表面には,統一性のある規則的な模様が表れ,見た目的に美しいものとなる。
上記した特殊な形状の非接合部50は,複数の特殊な形状の接合部40によって形成される。図1〜図3に示されるように,本発明において,接合部40は,3本の線部41〜43が異なる三方向に分岐した形状であることが好ましい。図1〜図3に示した例において,各接合部40は,“λ”のような形状を呈している。また,トップシート10のエンボスパターンは,同じ形状(λ状)の接合部40によって形成することができる。
図3を参照して,接合部40の形状と配置について詳しく説明する。図3に示されるように,接合部40は,第1線部41,第2線部42,第3線部43が,それらの連結部44から異なる方向に向かって分岐した形状となっている。言い換えると,第1線部41,第2線部42,及び第3線部43の基端(一端)は連結部44において連結しており,第1線部41,第2線部42,及び第3線部43の先端(他端)は,それぞれが異なる方向を向いている。また,少なくとも,第1線部41と第2線部42は,円弧状に湾曲した形状,若しくは1点以上の屈折点で屈曲した形状であることが好ましい。図3に示した例では,第1線部41と第2線部42は,円弧状に湾曲している。また,図3に示されるように,円弧状の第1線部41と第2線部42は,弧が膨らむ方向(弧が反っている方向)が互いに反対方向であることが好ましい。つまり,第1線部41と第2線部42とが連結することで,緩やかなS字状をなしている。また,第3線部43は,第1線部41と第2線部42と同様に円弧状であってもよいし,直線状とすることもできる。また,第1線部41と第2線部42が延びる方向と,第3線部43が延びる方向は,およそ直交していることが好ましい。例えば,図1〜図3に示した例では,第1線部41と第2線部42は,およそ長手方向(Y軸方向)に向かって延びているのに対し,第3線部43は,およそ幅方向(X軸方向)に向かって延びている。なお,第1線部41と第2線部42の延びる方向は,およそ反対方向である。例えば,第1線部41がY軸の正方向(図の上方)に向かって延びているのに対し,第2線部42がY軸の負方向(図の下方)に向かって延びている。このような意味において,第1線部41と第2線部42が延びる方向と,第3線部43が延びる方向は,およそ直交している。なお,第1線部41と第2線部42が,幅方向(X軸方向)に向かって延び,第3線部43が,長手方向(Y軸方向)に向かって延びていてもよい。
また,図3に示されるように,第1線部41,第2線部42,及び第3線部43は,それぞれ長さが異なっていてもよい。図3に示した例では,第1線部41が,第2線部42よりも長く,第2線部42が第3線部43よりも長くなっている(第1線部41>第2線部42>第3線部43)。また,各線部41〜43がすべて円弧状に形成されている場合,各線部41〜43の曲率(又は曲率半径)は,異なっていてもよいし同じであってもよい。図に示した例では,各線部41〜43の曲率はすべて同じ値となっている。
図3に示されるように,ある一つの非接合部50の周囲には,3つの接合部40が位置している。ある一つの非接合部50の周囲に位置する3つの接合部40を,それぞれ,第1接合部40a,第2接合部40b,及び第3接合部40cと定義する。この場合に,ある一つの非接合部50は,以下の(i)〜(vi)の要素によって,周囲を画定されている。
(i)第1接合部40aの第1線部41と第2線部42
(ii)第2接合部40bの第2線部42と第3線部43
(iii)第3接合部40cの第3線部43と第1線部41
(iv)第1接合部40aの第1線部41と第2接合部40bの第3線部43の間の第1間隙61
(v)第2接合部40bの第2線部42と第3接合部40cの第1線部41の間の第2間隙62
(vi)第3接合部40cの第3線部43と第1接合部40aの第2線部42の間の第3間隙63
つまり,図3に示されるように,まず,第1接合部40aの第1線部41の先端と,第2接合部40bの第3線部43の先端とが,突き合うように(近くなるように)接合部40を形成する。その間に,第1間隙61が形成される。また,第2接合部40bの第2線部42の先端と,第3接合部40cの第1線部41の先端とが,突き合うように(近くなるように)接合部40を形成する。その間に,第2間隙62が形成される。さらに,第3接合部40cの第3線部43の先端と,第1接合部40aの第2線部42の先端とが,突き合うように(近くなるように)接合部40を形成する。その間に第3間隙63が形成される。なお,第1間隙61,第2間隙62,及び第3間隙63は,0.1mm〜20mm程度の距離とすればよい。このような法則に従って,複数の接合部40を配置していき,規則的なエンボスパターンを形成する。
図3に示されるように,上記(i)〜(vi)の要素によって周囲を画定された非接合部50には,円形の大領域51と方形の小領域52とが形成される。円形の大領域51の周囲は,第1接合部40aの第1線部41,第2接合部40bの第2線部42・第3線部43,第1間隙61,及び第2間隙62によって画定される。ここで,第1接合部40aの第1線部41と,第2接合部40bの第2線部42・第3線部43は,非接合部50(大領域51)の外側に向かって膨らむように湾曲している。このため,大領域51は,ほぼ円形となって,その面積が大きくなる。他方,方形の小領域52の周囲は,第1接合部40aの第2線部42,第3接合部40cの第1線部41・第3線部43,及び第3間隙63によって画定される。ここで,第1接合部40aの第2線部42と,第3接合部40cの第1線部41・第3線部43は,非接合部50(小領域52)の内側に向かって膨らむように湾曲している。このため,小領域52はその面積が小さくなる。
また,図2及び図3に示されるように,複数の非接合部50は,それぞれ,接合部40によって区分された独立した領域となっており,他の非接合部50と繋がっていないといえる。ただし,厳密に言うと,間隙61〜63の隙間を通じて非接合部50同士が繋がっているとも捉えることもできる。しかし,図3に示されるように,間隙61〜63は,3つの接合部40の線部の先端が突き合った領域であることから,上層シート11と下層シート12を実際に接合すると,この間隙61〜63も,接合部40と同程度に凹状に窪むこととなる。少なくとも,間隙61〜63は,凸状に隆起しない。具体的には,ある一つの非接合部50の周囲に位置する間隙61〜63のそれぞれは,3つの接合部40の第1線部41,第2線部42,及び第3線部43の先端が突き合った領域となる。このため,3つの接合部40が形成された結果,この間隙61〜63は,3つの接合部40とともに潰れる,若しくは隆起が抑制される。従って,隣接した凸状の非接合部50は,間隙61〜63を通じて繋がるということはなく,実質的には,凸状の各非接合部50は,独立したものとなる。また,図2及び図3に示されるように,各接合部40の第3線部43は,長手方向(Y方向)に隣接する非接合部50同士が繋がらないように区分けしている。この点において,接合部40の第3線部43は重要な意味を持つ。
続いて,図4を参照して,エンボスパターンの設計方法の一例について説明する。図4に示されるように,まず前提として,ある程度の幅のある複数の仮想的な正円が,互いの幅部分が重畳するように接して配置された格子状のパターンを想定する。つまり,格子状のパターンとは,ある仮想正円が90度間隔で他の仮想正円に接するように配置されたパターンである。複数の仮想正円は,すべて同じ半径(r)で形成されている。仮想円の半径(r)は,1.0mm〜11.0mmの範囲であることが好ましく,より好ましくは2.0mm〜5.0mmである。なお,仮想正円の幅は,接合部40の幅に一致する。
この場合に,まず,接合部40の第1線部41は,ある仮想正円の円周に沿って湾曲する円弧状に形成される。第1線部41の長さL1は,[式]L1=2πr×(θ1/360)で求められる。ここで,“r”は,仮想正円の半径である。また,“θ1”は,第1線部41の先端と基端をそれぞれ仮想正円の中心と直線で結んだときに,各直線のなす角(つまり扇形の角度)である。例えば,θ1は,60〜100度,70度〜90度,又は75度〜85度とすればよい。
また,接合部40の第2線部42と第3線部43は,上記した第1線部41とは別の仮想正円の円周に沿って形成される。つまり,第2線部42と第3線部43は,第1線部41が形成された仮想正円に隣接する仮想正円の円周上に位置する。このため,各線部41〜43の連結部44は,隣接する2つの仮想正円の境界に位置する。また,第2線部42と第3線部43は,同じ仮想正円の円周上に位置している。従って,第2線部42と第3線部43は,一体として,一つの円弧状を形成している。このため,各接合部40は,第1線部41がなす円弧と,第2線部42と第3線部43とがなす円弧との,2つの円弧を組み合わせた形状であるともいえる。
第2線部42の長さL2は,[式]L2=2πr×(θ2/360)で求められる。“θ2”は,第2線部42の先端と基端をそれぞれ仮想正円の中心と直線で結んだときに,各直線のなす角(つまり扇形の角度)である。例えば,θ2は,45〜85度,50度〜80度,又は55度〜70度とすればよい。また,第3線部43の長さL3は,[式]L3=2πr×(θ3/360)で求められる。“θ3”は,第3線部43の先端と基端をそれぞれ仮想正円の中心と直線で結んだときに,各直線のなす角(つまり扇形の角度)である。例えば,θ2は,5度〜45度,10度〜40度,又は20度〜35度とすればよい。また,図4に示されるように,θ2とθ3の和は,90度(±5度)となることが好ましい。
このようにすれば,特殊な形状の接合部40を比較的簡単に設計することができる。また,各接合部40の配置は,格子状に配置された仮想正円のパターンを基礎としたものであるため,各接合部40を規則的に配置することができる。なお,各線部41〜43の先端にはR加工を施して,滑らかな曲線とすることが好ましい。また,第1線部41と第3線部43の連結箇所には,鋭角が形成されることとなるため,この連結箇所にもR加工を施して曲線とすることが好ましい。
図5は,トップシート10の断面を模式的に示している。図5(b)は,図5(a)に示したY−Y線における断面図であり,図5(c)は,図5(a)に示したX−X線における断面図である。図5(b)及び図5(c)に示されるように,複数の接合部40によって囲まれた非接合部50は,それぞれ,一つの大領域51と一つの小領域52のみからなる。また,上層シート11は,大領域51と小領域52において,凸状に隆起している。そして,大領域51において上層シート11が隆起する高さは,小領域52において上層シート11が隆起する高さよりも高くなっている。例えば,小領域52の高さH1を100%としたときに,大領域51の高さH2は,120%〜300%,130%〜250%,又は140%〜200%であることが好ましい。
また,図5(b)及び図5(c)に示されるように,非接合部50の大領域51及び小領域52は,内部に空間を保持したドーム状に形成されている。つまり,大領域51及び小領域52において,上層シート11は,下層シート12から離れて凸状に隆起している。このため,上層シート11と下層シート12の間に空間が形成される。この空間は,上層シート11や下層シート12を構成する繊維によって満たされてはいない。
大領域51及び小領域52をドーム状に形成するためには,上層シート11と下層シート12とを重ね合わせる前に,大領域51及び小領域52に相当する部位において,上層シート11を肌非対向面側(裏面側)から押圧して上層シート11を凸状に隆起させればよい。若しくは,大領域51及び小領域52に相当する部位において,上層シート11を肌対向面側(表面側)から吸引して上層シート11を凸状に隆起させることもできる。そして,その後,上層シート11と下層シート12とを重ね合わせて,各接合部40において両シートを接合することで,大領域51及び小領域52において,上層シート11と下層シート12の間に空間が形成される。このようにすれば,図5に示されるように,大領域51及び小領域52において,上層シート11を下層シート12から解離させて,内部に空間が保持された状態を形成できる。また,本実施形態では,大領域51の方が小領域52よりも高く隆起しており,その分,大領域51に形成される空間の方が,小領域に52に形成される空間よりも広くなっている。例えば,大領域51と小領域52を形成する際に,上層シート11を肌非対向面側から押圧する高さを調節することで,大領域51を比較的高く隆起させ小領域52を比較的低く隆起させるといった調整が可能となる。若しくは。上層シート11を肌対向面側から吸引する吸引力を調節することで,大領域51を比較的高く隆起させ小領域52を比較的低く隆起させることも可能である。
上記のように,大領域51と小領域52の高さを異ならせるとともに,これら両領域内に空間を形成することで,トップシート10に液体が接触したときに,その液体を大領域51から小領域52へと素早く移行させることができる。つまり,液体は,高さの高い大領域51から,高さの低い小領域52へと流れ落ちる。また,液体は,空間の広い大領域51よりも,空間の狭い小領域52へと吸い寄せられる。このため,液体が触れることで湿潤した場合であっても,大領域51の頂部が素早く乾燥するようになる。大領域51は,その面積が大きく,また高さが高いものであるため,着用者の肌に触れやすい。従って,大領域51の頂部の乾燥時間を短縮することで,着用者の肌に液体が触れている時間を短くすることができ,不快感を与えることを防止できる。他方,小領域52には,大領域51から移行された液体が一時的に貯留される。このため,小領域52は,大領域51と比較して完全に乾燥するまでに時間がかかるといえる。ただし,小領域52は,面積が小さく高さが低いものであるため,着用者の肌に触れにくい。このため,小領域52が乾燥するのに時間がかかったとしても,着用者に不快感を与えにくいといえる。また,小領域52に空間を形成しておくことで,小領域52の乾燥時間を短縮することができる。また,本発明のトップシート10は,一つの大領域51に対して,小領域52が一箇所にのみ設けられている。このため,大領域51に接した液体は,その大領域51から延出する小領域52に向かって一方向にのみ移動する。つまり,本発明のトップシート10では,液体が大領域51の周囲に四方八方に分散して,液体を一時貯留する部位が多くなり過ぎてしまうということがない。液体を貯留する部位が大領域51の周囲に多数(二箇所以上)存在していると,着用者の肌が,その液体貯留部位に触れる可能性が高まるというデメリットがある。また,着用者の肌に触れる液体貯留部位の数が増加するおそれがある。このため,着用者に対して不快感を与えてしまう。これに対し,本発明のように,液体を貯留するための小領域52を一つの大領域51に対して一箇所のみとすることで,液体貯留部位の数を最小限に抑えることができる。従って,本発明よれば,着用者に不快感を生じさせないように,液体の一時貯留部位を適切にコントロールできる。
また,図5に示されるように,大領域51と小領域52のそれぞれを,空間を保持したドーム状としておくことで,大領域51と小領域52とで押圧に対する反発力を同程度とすることができる。これに対し,例えば,大領域51と小領域52のいずれか一方の内部が繊維によって満たされた状態であると,これらの両領域の間の反発力に大きな差異が生じ,反発力の大きい部位と小さい部位とがトップシート10上に細かく分散されることとなる。このため,トップシート10全体がデコボコとした触感となり,肌触りが損なわれるという懸念がある。そこで,本実施形態のように,大領域51と小領域52の両方に空間を形成し,両領域の反発力を同程度とするか緩やかな差異に留めることで,トップシート10全体の触感がより柔軟になるものと期待される。
図6(a)は,エンボスパターンの第2の拡大図であり,図1において符号A2で示した点線の枠内を拡大して示している。図1に示されるように,図6(a)は,トップシート10の幅方向の外側の領域を拡大して示している。また,図6(b)は,図6(a)に示したB−B線における断面図である。
図6(a)に示されるように,トップシート10の幅方向外側の領域には,複数の圧潰点53が形成されている。圧潰点53は,トップシート10に形成された複数の非接合部50の幾つかに形成される。具体的には,圧潰点53は,非接合部50のうちの大領域51に形成される。図6(b)に示されるように,この圧潰点53は,非接合部50の大領域51を厚み方向に押圧することによって形成されたものである。このため,圧潰点53が形成された大領域51の隆起高さは低くなっていると同時に,大領域51内の空間が狭くなるか,若しくは空間が無くなる。圧潰点53は,大領域51において,上層シート11を押圧することのみによって形成されたものであってもよいし,上層シート11と下層シート12とを接合することによって形成されたものであってもよい。少なくとも,圧潰点53において,上層シート11と下層シート12とが接触していることが好ましい。特に,圧潰点53を維持するために,この圧潰点53において上層シート11と下層シート12とを接合することが好ましい。上層シート11と下層シート12は,ヒートシールや超音波シールなどによって熱融着するようにすればよい。
また,図6(a)に示されるように,圧潰点53が形成された非接合部50は,一定方向に沿って連続的に形成されている。言い換えると,圧潰点53が形成された非接合部50は,一定方向に隣接している。本実施形態において,圧潰点53の形成された非接合部50が連続する方向は,吸収性物品の長手方向(Y軸方向)及び幅方向(X軸方向)ではない方向であり,具体的には,この長手方向及び幅方向に対して所定角度傾斜した方向となっている。例えば,図6(a)に示されるように,連続して形成された圧潰点53同士を仮想的な直線で繋いだときに,この直線が長手方向(Y軸方向)に対して傾く角度(θ)は,15度〜75度,30度〜60度,40度〜50度,又は45度とすればよい。
図6(a)に示されるように,圧潰点53が形成された非接合部50は,圧潰点53が形成されていない非接合部50のパターンの中に配置される。つまり,圧潰点53が形成された非接合部50の周囲には,少なくとも2つ以上の圧潰点53の形成されていない非接合部50が存在する。具体的に説明すると,図6(a)に示したエンボスパターンにおいて,ある1つの非接合部50の周囲には,6つの非接合部50が隣接して存在している。ここで,圧潰点53が形成された非接合部50を中心に見てみると,その周囲には,1つ又は2つの圧潰点53が形成された非接合部50が存在し,残りの5つ又は4つの非接合部50には圧潰点53は形成されていない。このように,圧潰点53が形成された非接合部50の周囲には,少なくとも2つ以上の圧潰点53の形成されていない非接合部50が隣接して存在していることが好ましい。
このように,凸状に隆起する非接合部50のうちの幾つかに圧潰点53を形成し,この圧潰点53が形成された非接合部50を一方向に沿って連続的に配置することで,この圧潰点53が連続する方向に従って,液体の流路を形成することができる。また,非接合部50を押圧することで,この非接合部50内の空間が狭くなるため,毛細管現象により,圧潰点53を繋ぐ一定方向に沿って液体が誘導されるようになる。これにより,圧潰点53が連続する方向に沿って,尿などの液体を導くことができる。従って,この圧潰点53が形成された非接合部50の列を,トップシート10の幅方向外側などに形成しておくことで,トップシート10の側縁近傍に尿の排泄がなされた場合であっても,尿の拡散方向を横漏れが発生しない方向にコントロールできる。このように,圧潰点53を利用して尿の拡散方向を適切にコントロールすることで,尿の横漏れを防止することが可能になる。
また,図6(b)に示されるように,隣接する圧潰点53同士の間には,接合部40が形成されていることが好ましい。具体的には,圧潰点53を繋ぐ仮想的な直線を引いたときに,その直線上において,圧潰点53同士の間には必ず接合部40の一部が位置している。なお,隣接する圧潰点53同士の間に接合部40が形成されていない部位は存在しない。このため,圧潰点53を繋ぐ直線に沿った断面図では,図6(b)に示すように,圧潰点53と接合部40が交互に形成されるようになる。この場合,圧潰点53と接合部40との間には,上層シート11が小さく隆起した小壁部54が形成される。この小壁部54内には,空間が保持されていてもよい。この小壁部54の隆起高さ(H3)は,圧潰点53が形成されていない非接合部50の大領域51の隆起高さ(H2)よりも低くなる。例えば,小壁部54の隆起高さH3は,通常の大領域51の隆起高さH2に対して,20%〜80%であることが好ましく,特に30%〜70%であることが好ましい。
このように,小壁部54を形成することで,小壁部54を形成せず上層シート11を完全に押し潰した場合と比較して,上層シート11のクッション性を維持することができる。また,小壁部54を形成することで,一方向に連なった圧潰点53に沿って流れる液体の速度を適度に遅くすることができるため,この圧潰点53の周囲においても効果的に液体を吸収できる。すなわち,圧潰点53の間に接合部40が設けられていない場合,圧潰点53同士の間は平坦又は溝が形成される可能性がある。そうすると,液体が圧潰点53上を素早く流れて,この圧潰点53付近を素通りしてしまう可能性がある。そこで,上述したとおり,圧潰点53の周囲に小壁部54を設けて,この圧潰点53の周囲にある程度液体が貯留されるようにし,トップシート10全体の吸収性能を効率的に活用することが好ましい。
また,図6(a)には,圧潰点53の形成された非接合部50が連続する方向に沿って液体が流れる方向が破線の矢印で示されている。この矢印に示されるように,液体は,接合部40同士の第1間隙61と第2間隙62とを通るように流れると考えられる(図3参照)。第1間隙61と第2間隙62を繋ぐ方向は,圧潰点53の形成された非接合部が連続する方向と平行になるため,第1間隙61と第2間隙62を通すことで液体を適切に拡散させることができる。
なお,図6(a)に示されるように,一方向に沿って連続的に形成する圧潰点53の数は,適宜調整すればよい。例えば,連続する圧潰点53の数は,3以上であることが好ましく,3〜15又は5〜10とすればよい。
続いて,図7及び図8を参照して,上記したトップシート10の製造方法について説明する。図7及び図8は,トップシート10を構成する上層シート11と下層シート12のうち,上層シート11に凸状の隆起部分を形成し,その後,上層シート11と下層シート12とを所定のエンボスパターンで接合する方法を示している。図7及び図8に示されるように,トップシート10の製造装置は,ピンロール110と,エンボスロール120と,プレーンロール130とを備える。ただし,図7は,これらピンロール110,エンボスロール120,プレーンロール130のうち,圧潰点53を有しない非接合部50を形成する部分の断面構造を示している。他方,図8は,ピンロール110,エンボスロール120,プレーンロール130のうち,圧潰点53を有する非接合部50を形成する部分の断面構造を示している。
まず,図7に示されるように,ピンロール110は,その周面を構成する平坦面111の複数箇所に,凸状に突起した突起部112を有している。ピンロール110の突起部112は,主に,トップシート10の上層シート11に,凸状に隆起した大領域51を形成するためのものである。このため,突起部112は,上層シート11の大領域51となる予定の部位と接触する位置に設けられる。
エンボスロール120は,その周面を構成する平坦な丘部121と,この丘部121に所定パターンで配置された複数の凸状のエンボス突起122と,丘部121の間に位置する複数の凹状の窪み部123とを有している。エンボス突起122は,トップシート10の上層シート11と下層シート12とを所定のエンボスパターンで接合するためのものである。エンボスロール120のエンボス突起122は,加熱装置(図示省略)によって加熱されていてもよい。また,窪み部123は,ピンロール110の周面に設けられた複数の突起部112と対応した位置に設けられ,この突起部112を収めることができる形状となっている。このため,エンボスロール120の窪み部123は,ピンロール110の突起部112と協働して,上層シート11に凸状に隆起した大領域51を形成する。なお,エンボスロール120のエンボス突起122は,窪み部123が設けられている箇所には形成されていない。
また,図7に示されるように,エンボスロール120の回転方向において,2つの窪み部123の間に,丘部121が設けられている。このとき,本実施形態において,エンボス突起122は,丘部121のうち,回転方向前側の窪み部123に寄った位置に形成されている。つまり,エンボス突起122は,回転方向前側の窪み部123と回転方向後側の窪み部123のうち,回転方向前側の窪み部123に寄った位置に形成されている。このため,丘部121には,エンボス突起122と回転方向後側の窪み部123との間に,中段領域121aが存在することとなる。この中段領域121aは,エンボスロール120の径方向に見て,窪み部123よりも高い位置に存在するものの,エンボス突起122よりは低い位置に存在している領域である。このため,中段領域121aは,その高さが,窪み部123がエンボス突起122の間となる。この中段領域121は,トップシート10の上層シート11に,凸状に隆起した小領域52を形成するためのものである。従って,中段領域121は,上層シート11に大領域51を形成するための窪み部123に隣接した位置に設けられる。なお,図7に示した例では,エンボス突起122は,丘部121のうち,回転方向前側の窪み部123に寄った位置に形成されている。ただし,エンボス突起122は,丘部121のうち,回転方向後側の窪み部123に寄った位置に形成することも可能である。
また,図7に示されるように,エンボスロール120は,吸引装置124に連結されていることが好ましい。吸引装置124は,ファンなどによって空気を吸引する公知のものを採用することができる。また,図7に示されるように,この吸引装置124の吸引孔125は,エンボスロール120の窪み部123の底部に連通している。このため,ピンロール110の突起部112によってエンボスロール120の窪み部123内へと押し込まれた上層シート11は,部分的に,吸引孔125を介して吸引装置124によって吸引されることとなる。このように,吸引装置124を利用して,窪み部123に押し込まれた上層シート11の一部を吸引することで,上層シート11に形成される大領域51をより高く隆起させることが可能になる。
プレーンロール130は,その周面が平滑面となっている。プレーンロール130は,エンボスロール120のエンボス突起122との間で,トップシート10の上層シート11と下層シート12とを挟み込み,加圧及び加熱して,両シートを熱融着させるためのものである。プレーンロール130の周面は,金属製であってもよいしラバー製であってもよい。また,プレーンロール130の周面は,加熱装置(図示省略)によって加熱されていてもよい。
図7に示されるように,ピンロール110とエンボスロール120は対向して配置され,これら両ロールの間に,上層シート11が導入される。また,エンボスロール120とプレーンロール130が対向して配置され,これらの両ロールの間に,上層シート11と下層シート12とが重なり合った状態で導入される。
続いて,製造装置の動作について説明する。図7に示されるように,原反ロール(図示省略)から繰り出された上層シート11は,一又は複数のガイドロール(図示省略)を経由して,ピンロール110とエンボスロール120の間に導入される。上層シート11は,肌非対向面(着用者の肌に直接触れない面)がピンロール110に接し,肌対向面(着用者の肌に直接触れる面)がエンボスロール120に接する。このとき,上層シート11は,ピンロール110の突起部112に押圧されながら,エンボスロール120の窪み部123に嵌り込む。これと同時に,窪み部123に嵌り込んだ上層シート11の一部は,窪み部123の底部に設けられた吸引孔125を介して,吸引装置124によって吸引される。これにより,窪み部123に嵌り込んだ上層シート11の一部が凸状に隆起する。このようにして,上層シート11には,肌対向面側に向かってドーム状に隆起する部分,すなわち非接合部50の大領域51が形成される。その後,上層シート11は,エンボスロール120の周面に当接したまま,エンボスロール120とプレーンロール130の間に導入される。
他方,他の原反ロール(図示省略)から繰り出された下層シート12は,一又は複数のガイドロール(図示省略)を経由して,エンボスロール120とプレーンロール130の間に導入される。エンボスロール120とプレーンロール130の間において,上層シート11と下層シート12とが重なり合う。このとき,上層シート11の肌対向面側がエンボスロール120に接し,下層シート12の肌非対向面側がプレーンロール130に接する。上層シート11と下層シート12は積層した状態で,エンボスロール120とプレーンロール130の間に挟み込まれて,加熱及び加圧されることで互いに熱融着する。このとき,上層シート11と下層シート12は,エンボスロール120の周面に形成された複数のエンボス突起122のエンボスパターンに応じて熱融着されることとなる。これにより,トップシート10には,肌非対向面側に向かって窪む凹状の接合部40が複数形成される。一方,エンボスロール120のうち,エンボス突起122と窪み部123との間に位置する中段領域121aに相当する部位において,上層シート11は,下層シート12には接合されない。ただし,中段領域121aに相当する部位において,上層シート11は,エンボスロール120の窪み部123には嵌り込むこともない。このため,中段領域121aに相当する部位において,上層シート11は,接合部40よりも高く隆起するものの,非接合部50の大領域51よりは低い状態となる。従って,中段領域121aに相当する部位に,肌対向面側に向かってドーム状に小さく隆起する部分,すなわち非接合部50の小領域52が形成される。このようにして,上層シート11と下層シート12は,エンボスロール120のエンボス突起122に接触した部位が接合部40となり,複数の接合部40によって周囲を囲われた領域が非接合部50の大領域51又は小領域52となる。このように,上層シート11をピンロール110によって押圧した後,上層シート11と下層シート12とをエンボスロール120で接合することで,非接合部50の大領域51と小領域52とを,内部に空間を保持するドーム状とすることができる。
次に,図8を参照して,圧潰点53を有する非接合部50の形成方法について説明する。図7と図8は実質的に同じ装置を示すものであるが,図8の断面図は,当該装置のうち,図7とは異なる部分の断面を示したものである。図8に示されるように,非接合部50の大領域51の中に圧潰点53を形成する場合には,図7に示されていたエンボスロール120の窪み部123を一部無くして丘部121とし,そこに圧潰点53を形成するための圧潰点用突起126を設ける。つまり,圧潰点53を形成するには,大領域51を隆起させるための窪み部123に代えて丘部121を形成して,その窪み部123に代わり設けられた丘部121に圧潰点用突起126を設ける。また,窪み部123に代わり丘部121を設けたことで,ピンロール110の突起部112が一部不要になる。
エンボスロール120の周面に形成された圧潰点用突起126は,プレーンロール130の平滑面との間で上層シート11と下層シート12を挟み込み,この上層シート11を下層シート12側に向かって押圧する。このとき,圧潰点用突起126は,エンボス突起122同様に,上層シート11と下層シート12とを接合(熱融着)するものであってもよい。また,圧潰点用突起126は,上層シート11と下層シート12とを接合せずに,単に押圧するだけでもよい。これにより,圧潰点用突起126によって,トップシート10の非接合部50の大領域51の中に,上層シート11と下層シート12とが押圧又は接合された圧潰点53が形成される。上述したとおり,圧潰点53が形成されると,上層シート11の隆起が抑制されるため,通常であれば非接合部50の大領域51に形成されるはずであった空間が狭くなるか,若しくはこの空間が無くなる。また,圧潰点53の周囲においては,不織布等からなる上層シート11の形状が復元して膨らむこととなるため,その圧潰点53の周囲に小壁部54が形成される(図6参照)。このように,図8に示した装置によれば,上層シート11と下層シート12に対してエンボス用の接合部40を形成すると同時に,液体の拡散方向をコントロールするための圧潰点53を形成することが可能になる。
続いて,再び図1を参照して,本発明のトップシート10の好ましい形態について説明する。図1に示されているように,トップシート10には,接合部40が形成されている領域の間に,幅方向全体に亘って接合部40が形成されていない接合部不形成領域70が設けられている。この幅方向に延びる帯状の接合部不形成領域70では,接合部40のパターンが途切れている。例えば,接合部不形成領域70の長手方向(Y軸方向)の長さは,上述した接合部40の第1線部41の長さ(L1)以上であることが好ましい。例えば,接合部不形成領域70の長手方向(Y軸方向)の長さは,3mm〜10mm,又は4mm〜9mm程度であることが好ましい。また,接合部不形成領域70は,二箇所以上に設けることもできる。
また,接合部不形成領域70において,トップシート10は,着用者の肌に当接する方向に向かって凸状に隆起していることが好ましい。このように,接合部不形成領域70を隆起させることで,液体を塞き止めることができるため,液体の漏出を防止できる。
また,接合部不形成領域70において,トップシート10は,着用者の肌に当接しない方向に向かって凹状に窪んでいてもよい。このように,接合部不形成領域70を窪ませることで,液体をトップシート10の裏側に位置する吸収体30へと素早く移行するため,液体の漏出を防止できる。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。