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JP6443442B2 - 糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、有機化合物の製造方法、および微生物の培養方法 - Google Patents

糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、有機化合物の製造方法、および微生物の培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖類を含む溶液(糖液)の処理方法、および該処理方法により得られる処理糖液に関する。また処理糖液の製造方法、前記処理糖液を用いた有機化合物の製造方法、および微生物の培養方法に関する。
糖類を原料とした有機化合物の発酵生産プロセスは、広く利用されており、また前記各プロセスを経て得られた生産物は、種々の工業原料として利用されている。
これら発酵生産プロセスおよび化学変換プロセスの原料として使用される糖として、現在はサトウキビ、デンプン、テンサイ、とうもろこし、いも、キャッサバ、サトウカエデなどの可食原料に由来するものが挙げられる。
しかしこれらの可食原料由来の糖は、今後の世界人口増加による可食原料価格の高騰、および天候不順や気候変動による可食原料の供給不足といった懸念がある。また食料不足の際に、可食原料を食用用途と競合して工業原料に利用することに対する倫理上の批判等の懸念もある。そこで、非可食原料や、不純物を含有する、より低純度の糖類などから、効率的に糖液を製造するプロセス、あるいは得られた糖液を発酵生産原料として、効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が今後の課題となっている。
非可食原料から糖液を得る方法としては、非可食原料中のセルロースやヘミセルロースを、濃硫酸を用いてグルコースに代表されるヘキソースや、キシロースに代表されるペントースといった単糖まで加水分解する方法(特許文献1)や、非可食原料の反応性を向上させる前処理を施した後に、酵素反応により加水分解する方法(特許文献2)、または亜臨界や超臨界水による加水分解方法等が挙げられる。
しかし、これらの手法を用いた場合、非可食原料中のセルロース、ヘミセルロースが加水分解され、グルコースやキシロースといった糖が得られると共に、これらの糖の分解反応も進行する。糖の分解反応により、副生成物として、糖類以外のカルボニル化合物が生成し、具体的には例えば、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、グリコールアルデヒド、シリンガアルデヒド、蟻酸等のアルデヒド化合物や、ジヒドロキシアセトンやベンゾキノン等のケトン化合物などのカルボニル化合物が生成する。
糖類以外のカルボニル化合物のうち、フルフラールやヒドロキシメチルフルフラール等のアルデヒド化合物等は、微生物を利用した発酵生産プロセスでは、反応を阻害する性質を有し、具体的には微生物の増殖阻害や発酵生産阻害を引き起こし、発酵生産の収率が低下させる。そのため、これらの化合物は、発酵阻害物質と呼ばれ、非可食原料の糖液を発酵原料として利用する際の大きな課題となる。
これに対し、生成したフルフラール等の発酵阻害物質の除去方法が検討され、例えば活性炭等の各種吸着剤等を用いて吸着除去する方法が提案されている(例えば特許文献3、非特許文献1)。しかし吸着による方法は、選択的に発酵阻害物質だけを除去することは困難であり、また糖類の吸着による糖濃度の低下や、吸着剤の生産や再生にコストがかかるといった問題がある。発酵阻害物質を除去する別の方法として、次亜硫酸ナトリウム等の還元剤を用いた還元除去方法(非特許文献2〜4、特許文献4)や、合成樹脂を用いた除去方法(特許文献5)等が提案されている。
日本国特表平11−506934号公報 日本国特開2001−95594号公報 日本国特開2005−270056号公報 国際公開第2011/080129号 日本国特開2011−78327号公報
Biotechnology Letters vol.5 No.3, P175, 1983 Biotechnology and Bioengineering, vol.108, No11, P2592, 2011 Cavka A et al.,Bioresource Technology, vol.102, P1254, 2011 Bioresource Technology, vol.102, P1254, 2011
還元剤を用いた前記還元除去方法は、発酵阻害物質の除去能力が高く、特に他の方法では除去困難な水溶性アルデヒドを含む各種アルデヒド化合物全般の除去が可能であるため有効な方法である。
一方、糖液は発酵生産プロセスに供する前に、目的以外の反応を引き起こす微生物を殺滅もしくは除去するため、通常、滅菌処理を行なう。特に非可食原料から得られた糖液は、微生物の生育に必要な栄養素が多く含有されている場合が多いため、滅菌処理なしで発酵生産プロセスに供した場合、目的生成物の収率の著しい低下を招く場合があるため、滅菌処理を行なうことが好ましいとされている。
そして一般的に行われ、簡便で効率のよい滅菌処理方法としては、通常、糖液を加熱する加熱滅菌処理が行われる。
ところが、前記糖液に対し、前記還元剤処理と加熱滅菌処理とを併用した場合、目的生成物の収率が向上せず、各処理方法により期待される効果が発揮されないことがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、糖類を原料として各種の有機化合物を製造する際に、化学品の発酵生産プロセス及び化学変換プロセスに供され、生産効率に優れ、かつ、プロセス設計を容易にすることができる糖液の処理方法、および該方法により得られる糖液を用いた有機化合物の製造方法を提供することを第1の課題とする。
また、非可食原料から得られた糖液に含まれるアルデヒド化合物が強い発酵阻害の原因となることに加えて、非可食原料から得られた糖液から化学変換プロセスを経て有機化合物を生産する場合、糖類以外のカルボニル化合物を糖液中に含有するため、生成物が着色するといった問題があった。そのため、糖液中に含まれる、糖類以外のカルボニル化合物の含有量は極力減らすことが望まれる。
しかし、木質系炭化物や活性炭を用いた除去方法では、選択的に糖類以外のカルボニル化合物だけを除去することは困難であり、また糖類の吸着による糖濃度の低下や、木質系炭化物や活性炭の生産や再生にコストがかかるといった問題もある。また、合成樹脂剤を用いた除去方法では、クロマトグラフ方式での除去となるため、プロセス設計に制約が生じる問題がある。
そしてこれらの除去方法では、上記アルデヒド化合物のうち、グリコールアルデヒド等の水溶性のアルデヒド化合物の除去が困難であり、糖液中の、糖以外のカルボニル化合物の含有量が下がらないという問題がある。
還元剤を用いてアルデヒド化合物を還元除去する方法は、水溶性アルデヒド化合物を含むアルデヒド化合物全般の除去が可能である。しかし、この方法は還元剤として亜硫酸類や次亜硫酸類等の金属塩を用いるため、アルデヒド化合物の還元除去後、糖液中の金属塩の含有量が増加する。特に非可食原料の糖液中には、通常金属塩が元来多く含まれるため、前記の還元除去により金属塩の含有量がさらに増加する。そのためこれら金属塩由来の金属が、後続する発酵プロセスや発酵液精製プロセス等に混入するため、発酵生成物を蒸留精製するにあたって金属量を低減することが求められる場合には、プロセス全体において金属塩除去の負荷が上がるといった問題があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、糖類を原料として各種の有機化合物を製造する際に、化学品の発酵生産プロセス並びに化学変換プロセスに供される糖液中の糖類以外のカルボニル化合物を十分に除去し、生産効率に優れ、プロセス設計を容易にすることができる糖液の精製方法、および該方法により得られる糖液を用いた有機化合物の製造方法を提供することを第2の課題とする。
発明者らの検討の結果、一定の手順での滅菌処理と還元剤処理とを組み合わせることにより、上記第1の課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の第1の要旨は、下記の糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、処理糖液、有機化合物の製造方法、培養方法に存する。
[1−1]糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)の処理方法であって、該糖液を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程と、前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程と、を含む糖液の処理方法。
[1−2]単糖および/または二糖を主成分とする糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)の処理方法であって、該糖液を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程と、前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程と、を含む糖液の処理方法。
[1−3]前記還元処理工程における前記糖液のpHが、2以上、8以下である上記[1−1]または[1−2]に記載の糖液の処理方法。
[1−4]前記還元処理工程における前記糖液の温度が、20℃以上、70℃以下である上記[1−1]〜[1−3]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[1−5]前記還元剤が亜硫酸化合物、次亜硫酸化合物及びチオ硫酸化合物から選ばれる少なくとも1つである上記[1−1]〜[1−4]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[1−6]前記還元剤の使用量が、前記糖液に含まれる糖の質量に対して、0.05質量%以上、2.0質量%以下である上記[1−1]〜[1−5]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[1−7]前記加熱処理工程における前記糖液の加熱時間が1分以上、20時間以下である上記[1−1]〜[1−6]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[1−8]糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)を処理して処理糖液を製造する方法であって、前記処理方法が上記[1−1]〜[1−7]のいずれか1に記載の糖液の処理方法である、処理糖液の製造方法。
[1−9]上記[1−1]〜[1−7]のいずれか1に記載の糖液の処理方法で処理して得られる処理糖液または上記[1−8]に記載の製造方法により得られる処理糖液。
[1−10]糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程、
前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程、および
前記還元処理工程を経た糖液を含有する有機原料に有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る、有機物生産工程を含む有機化合物の製造方法。
[1−11]上記[1−9]に記載の処理糖液を含有する有機原料に、有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る、有機物生産工程を有する有機化合物の製造方法。
[1−12]有機物生産能力を有する微生物の培養方法であって、上記[1−9]に記載の処理糖液を炭素源として用いる微生物の培養方法。
本発明者らは、上記第2の課題を解決すべく鋭意検討した結果、糖液に、特定の範囲の酸化数を有する硫黄と、アンモニウムイオンとを含む還元剤を作用させ、該糖液中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物を還元する処理を行うことで、上記第2の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明の第2の要旨は、下記の糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、還元処理糖液、有機化合物の製造方法、培養方法に存する。
[2−1]還元剤を用いた糖液の処理方法であって、前記還元剤がイオン化合物であり、該イオン化合物が、−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンと、アンモニウムイオンとを含み、かつ、前記還元剤が、前記糖液に含まれる糖類以外のカルボニル化合物を還元することを特徴とする糖液の処理方法。
[2−2]前記アニオンが、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、次亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、及び硫化物イオンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする上記[2−1]に記載の糖液の処理方法。
[2−3]前記糖類以外のカルボニル化合物に対する前記還元剤のモル比が、0.05以上、2.0以下である上記[2−1]又は[2−2]に記載の糖液の処理方法。
[2−4]前記糖類が、炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖類である上記[2−1]〜[2−3]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[2−5]前記糖液が、非可食原料由来の糖液である上記[2−1]〜[2−4]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[2−6]前記カルボニル化合物が、アルデヒド化合物およびケトン化合物から選ばれる少なくとも1つである上記[2−1]〜[2−5]のいずれか1に記載の糖液の処理方法。
[2−7]還元剤を用いて糖液を処理する処理糖液の製造方法であって、
前記還元剤がイオン化合物であり、
該イオン化合物が、−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンと、アンモニウムイオンとを含み、
かつ、前記還元剤が、前記糖液に含まれる糖類以外のカルボニル化合物を還元する処理糖液の製造方法。
[2−8]上記[2−1]〜[2−6]のいずれか1に記載の糖液の処理方法で処理して得られる還元処理糖液または上記[2−7]に記載の製造方法により得られる還元処理糖液。
[2−9]反応液中で、上記[2−8]に記載の還元処理糖液を含有する有機原料に有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る工程(以下「有機物生産工程」という。)を有する有機化合物の製造方法。
[2−10]前記有機化合物がアルコール類、アミン類、カルボン酸類、およびフェノール類から選ばれる少なくとも1つである上記[2−9]に記載の有機化合物の製造方法。
[2−11]前記有機化合物が、炭素数2〜10の脂肪族アルコールである上記[2−9]又は[2−10]に記載の有機化合物の製造方法。
[2−12]前記有機化合物が、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸である上記[2−9]又は[2−10]に記載の有機化合物の製造方法。
[2−13]有機物生産能力を有する微生物の培養方法であって、上記[2−8]に記載の還元処理糖液を炭素源として用いる微生物の培養方法。
本発明の第1の糖液の処理方法によれば、滅菌状態を維持しつつ、糖類以外のカルボニル化合物の含有量を減少させることができるため、得られる糖液を、微生物を利用した発酵生産プロセスで用いれば、目的とする有機化合物の収率を向上させることができる。
また本発明の第1の処理糖液であれば、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させることができる。
また、本発明の第1の有機化合物の製造方法であれば、比較的簡単な処理により、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。
また、本発明の第1の培養方法であれば、発酵生産プロセスにおける糖類以外のカルボニル化合物等の含有量を減少させることができるため、微生物の増殖量と増殖速度を向上させ、発酵生産性を向上させることができる。
本発明の第2の糖液の処理方法によれば、糖液中の金属含有量を増加させることなく、糖類以外のカルボニル化合物の含有量を減少させることができるため、得られる糖液を、微生物を利用した発酵生産プロセスで用いれば、目的とする有機化合物の収率を向上させることができる。また、糖液の処理で金属含有量を増加させないことに加え、熱分解などで還元剤として用いたイオン化合物を分解して、金属塩を除去する工程の負荷を軽減することができる。
また本発明の第2の還元処理糖液であれば、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させ、また化学変換プロセスに利用した際に生成物である有機化合物の着色を抑制することができる。
また、本発明の第2の有機化合物の製造方法であれば、比較的簡単な処理により、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。
また、本発明の第2の培養方法であれば、発酵生産プロセスにおける糖類以外のカルボニル化合物含有量を減少させることができるため、微生物の増殖量と増殖速度を向上させ、発酵生産性を向上させることができる。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。また、以下において「有機化合物」と「有機物」は同一のものを指す。
≪発明1≫
以下、本発明1の糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、処理糖液、有機化合物の製造方法、培養方法について詳述する。
<第1−1の発明:糖液の処理方法>
本発明の第1−1の発明は、糖類を含有する液(以下、「糖液」。)を100℃以上180℃以下の温度で加熱する工程(加熱処理工程)と、前記加熱した糖液に還元剤を作用させる工程(還元処理工程)とを含むことを特徴とする。
第1−1の発明における糖液、並びに後述する第1−2の発明、第1−3の発明、および第1−4の発明(第1−1ないし第1−4の発明をまとめて「本発明1」ということがある。)で用いられる「糖液」とは、糖類を含有する液を意味し、好ましくは糖類を含有する水溶液である。以下、糖液中に含まれる糖類から順に説明する。
(糖類)
本発明1で用いる糖液に含まれる糖類は、特に限定はされず、いわゆる糖類一般を用いることができるが、微生物が炭素源として活用することができる糖が好ましい。具体的にはグリセルアルデヒド等の炭素数3の単糖(トリオース);エリトロース、トレオース、エリトルロース等の炭素数4の単糖(テトロース);リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、デオキシリボース、キシルロース、リブロース等の炭素数5の単糖(ペントース);アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フコース、フクロース、ラムノース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等の炭素数6の単糖(ヘキソース);セドヘプツロース等の炭素数7の単糖(ヘプトース);スクロース、ラクトース、マルトース、トレハノース、ツラノース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナオリゴ糖などのオリゴ糖類;デンプン、デキストリン、セルロース、ヘミセルロース、グルカン、ペントサン等の多糖類;等が挙げられる。
本発明1で用いる糖液は、上記の糖類1種類を単独で含有していてもよいし、2種類以上を含有していてもよい。
本発明1で用いる糖液は、上記のうち単糖および/または二糖を主成分とすることが好ましい。すなわち、本発明1で用いられる糖液とは、単糖および/または二糖を主成分とする糖類を含有する液であることが好ましい。ここで、「主成分とする」とは、糖液に含まれる糖類の総量のうち50mol%以上であることを意味し、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上であり、上限は100mol%である。
本発明1で用いる糖類のうち、炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖類が好ましい。炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む糖とは、炭素数3以上7以下の単糖、および炭素数3以上7以下の単糖を構成成分として含む二糖類や多糖類を指す。中でも、ヘキソース、ペントース、およびこれらを構成成分とする二糖類がより好ましい。これらは自然界、植物の構成成分となっていることから豊富に存在し、原料の入手が容易であるためである。
上記ヘキソースとしては、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。ペントースとしてはキシロース、アラビノースが好ましく、キシロースがより好ましい。二糖類としてはスクロースが好ましい。グルコース、キシロース、スクロースは、自然界、植物の主な構成成分となっているため、原料の入手が容易である点が挙げられる。
(糖液の由来、製法)
本発明1で用いる糖液の製造方法は、特に限定はされないが、例えば上記の糖類の1種類以上を水に溶解して製造する方法や、上記の糖類を構成成分として含む原料(以下、「糖原料」ということがある。)を、その構成単位である糖類まで分解して製造する方法が挙げられる。糖原料は、特に限定されないが、具体的には、セルロース、ヘミセルロース、デンプン等の多糖類や、多糖類を構成成分とする植物等が挙げられる。また澱粉糖化液または糖蜜なども使用され、具体的にはサトウキビ、甜菜またはサトウカエデ等の植物から搾取した糖液が挙げられる。
前記糖原料は、食用にできるか否かの観点で、「可食原料」と「非可食原料」に分類することができる。
可食原料としては、サトウキビ、デンプン、テンサイ、とうもろこし、いも、キャッサバ、サトウカエデ等が挙げられる。
非可食原料としては、具体的には、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、稲わら、麦わら、米ぬか、樹木、木材、植物油カス、ササ、タケ、パルプ類、古紙、食品廃棄物、水産物残渣、家畜廃棄物等が挙げられる。
このうち、非可食原料は、可食原料と異なり、食用用途と競合せず、また通常であれば廃棄、焼却処理をされるものが多いため、安定的な供給、資源の有効利用が図れる点で好ましい。
前記糖原料から糖類を得る方法は、特に限定されないが、例えばデンプン水溶液に希硫酸を加えて加水分解する方法、デンプン水溶液に種々の酵素を用いて、酵素分解して製造する方法、セルロースやヘミセルロースを、濃硫酸を用いてグルコースに代表されるヘキソースや、キシロースに代表されるペントースといった単糖まで加水分解する方法、糖原料の反応性を向上させる前処理を施した後に、酵素反応、亜臨界水、超臨界水等により加水分解する方法等が挙げられる。また、砂糖の製造工程で発生する糖蜜から砂糖を回収した後に残る廃糖蜜も糖液として使用可能である。
本発明で用いる糖液は、上述の方法で、糖原料に含まれる多糖類を加水分解して得られた糖液であることが好ましい。このようにして得られた糖液に含まれる糖液は、単糖および/または二糖を主成分とすることが好ましく、単糖を主成分とすることがより好ましい。
本発明1で用いる糖液は、一部、多糖やオリゴ糖などが分解せずに残存して含まれている場合もある。
本発明1における糖液中に含まれる糖類の濃度は、糖液の由来や、含有する糖の種類等によって大きく変動し、特に限定されないが、発酵生産プロセスおよび化学変換プロセスの生産性を考慮すると、糖類が単糖および/または二糖を主成分とする場合は、例えば、単糖および二糖からなる糖類の合計濃度で、通常0.1質量%以上、好ましくは2質量%以上、通常60質量%以下が好ましく、好ましくは50質量%以下である。
本発明1で用いる糖液は、上記糖類を含有する液であり、好ましくは水溶液であり、水と糖類以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、特に限定されないが、例えば糖原料から単糖および/または二糖を主成分とする糖類を得た際に生じる、糖類以外の副生成物や不純物を含んでいてもよい。具体的には、後述する糖類以外のカルボニル化合物、脂肪族共役アルコール等のアルコール化合物;リグニン由来のフェノール化合物;や、アルカリ金属塩等のアルカリ金属化合物;アルカリ土類金属塩等のアルカリ土類金属化合物;窒素化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、硫酸イオン等が挙げられる。
なお、本発明1で用いる糖液は、上述した糖類を含有する液であれば特に制限はないが、リグニン由来等の固形分に関しては、濾過や吸着等を用いて除去することが好ましい。また、本発明1で用いられる糖液は、使用する目的に応じて水で希釈して糖濃度を下げて用いたり、糖類の追添加や濃縮により糖濃度を高めて用いたりすることができる。
(糖類以外のカルボニル化合物)
本発明1で用いる糖液には、糖液を製造する工程および保管した際に生成する、糖類以外のカルボニル化合物が通常含まれている。カルボニル化合物としては、構造内にカルボニル基を有するものであれば特に限定はされず、脂肪族カルボニル化合物でも、芳香族基を有するものであってもよい。好ましくは炭素数1以上、好ましくは炭素数20以下、より好ましくは炭素数16以下、さらに好ましくは炭素数12以下のカルボニル化合物である。上記範囲のカルボニル化合物は水溶性が比較的高く、糖液、特に糖を含む水溶液中に含まれることが多いためである。このようなカルボニル化合物の具体例としては、例えばフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、蟻酸、グリコールアルデヒド、グリオキサール、ヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、バニリン、イソバニリン、オルトバニリン、コニフェニルアルデヒド等のアルデヒド化合物;1,4−ベンゾキノン等のケトン化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の不飽和エステル化合物、好ましくは不飽和共役エステル化合物;等が挙げられる。これらの化合物は、後述する第1−3の発明および第1−4の発明において、強い発酵阻害を発現することがある。
上記のアルデヒド化合物のうち、グリコールアルデヒドやグリオキサール等は、水溶性のアルデヒド化合物であり、物理吸着等での除去が困難であるため、これらを多く含む糖液を用いる場合に、本発明1の方法は特に有用である。
なお以下で糖液中の糖類以外のカルボニル化合物を、単に「カルボニル化合物」ということがある。
本発明者らは、前記糖類以外のカルボニル化合物が、糖液を原料とした有用化合物を発酵生産する工程において、有用化合物の生産量、蓄積量、および生産速度の低下減少を引き起こすことを見出した。なお以下で、前記のような作用を及ぼす物質を総称し、「発酵阻害物質」という。また前記発酵阻害物質を含有した糖液は、微生物の培養工程において、増殖量や増殖速度の低下が起こる。
(加熱処理工程)
本発明1の第1−1の発明は、糖液を加熱する工程(加熱処理工程)と、前記工程で加熱した糖液に還元剤を作用させる工程(還元処理工程)とを含む。以下、前記各工程について述べる。
前記加熱処理工程は、通常、本発明1で得られる糖液を発酵生産プロセスに用いた際、その目的以外の反応を引き起こす微生物等を殺滅または除去するため、すなわち滅菌処理を行なうための工程である。加熱処理工程は、特定の加熱温度で糖液を保持することで実施する。
前記加熱処理工程の加熱温度は、100℃以上、180℃以下である。下限として好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上であり、上限として好ましくは160℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下である。前記範囲内の温度で加熱することにより、滅菌効果を十分に得ることができ、かつ加熱による糖の分解を抑制し、発酵阻害物質の増加を抑制できるためである。また前記範囲内であれば、滅菌処理の効果が十分に得られる加熱温度を適宜選択することができる。特に、上限値以下とすることで、糖液に含まれる単糖および二糖が分解されてヒドロキシメチルフルフラール(HMF)やカルボン酸等に変換されてしまうことがないため、好ましい。
加熱条件は滅菌処理の効果が十分に得ることができれば特に制限されず、単一の温度で加熱しても複数の温度で加熱してもよく、複数の温度で加熱する場合の各温度間の高低や温度勾配は任意である。
また、加熱処理を行う前に、糖液のpHを調整することが好ましい。好ましいpHの範囲は6〜8であり、適宜、塩酸や硫酸等の酸やアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を添加して上記範囲に調整することが好ましい。上記範囲であれば、糖の分解が促進されず糖濃度を維持することができる点で好ましい。
前記加熱処理工程の処理時間は、前記滅菌処理の効果が得られれば、特に制限はされないが、通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常20時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは1時間以下である。前記範囲内であれば、十分な滅菌処理の効果が得られるためである。前記処理時間は、前記滅菌処理の効果が十分に得られる条件を適宜選択することができる。
糖液を加熱する手段は、前記の加熱温度に加熱できれば特に限定されず、糖液の処理量や組成に応じ適宜選択することができる。具体的には、タンク等を使用して糖液を回分式で加熱する方法や、連続殺菌器等を使用して糖液を通液しながら連続式で加熱する方法がある。また、加熱の方法としては、熱媒体、例えば蒸気をタンクや連続殺菌器等の装置内に直接導入して糖液を加熱する方法や、装置内に備えた熱交換器を使用して熱媒体、例えば蒸気などと間接的に接触させることで糖液を加熱する方法などがある。このうち大量処理をする際には連続式で加熱する方法が処理の効率が良い点で好ましい。
前述の通り、加熱工程に供する糖液は、糖原料に含まれる多糖類を加水分解して得られたものであることが好ましいが、これは、加熱工程に続けて還元処理工程を行うことが好ましいからである。本発明者らの検討に拠れば、加熱工程を行った後に、多糖類を加水分解する工程や長期保管などを行うと、加熱工程によりなし得た原料の滅菌状態を十分に保つことができず、結果として、目的の微生物による有機化合物の発酵生産効率が低下してしまうことが明らかとなった。これは、保管状態でpH等の調整を行って滅菌状態を維持する工夫を行ったとしても十分でないことが分かっている。そのため、加熱工程と還元処理工程は続けて行うことが好ましい。例えば、加熱工程後、1〜2日以内に還元処理工程を実施することが好ましい。
(還元処理工程)
前記還元処理工程は、前記加熱処理工程を経た糖液に、還元剤を作用させることで、通常、糖液中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物の含有量を低減させることを目的とする工程である。
前記還元処理工程を経ることで、糖液中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物は、通常、前記カルボニル化合物よりも発酵阻害の小さな物質に変換されると推定される。具体的には、前記カルボニル化合物と、後述する還元剤との反応付加物(以下、「還元処理体」ということがある)が形成されていると推定される。
具体的な還元処理体としては、例えば、アルデヒド化合物を、還元剤として亜硫酸塩や次亜硫酸塩を用いて前記還元処理工程に供した場合、α−ヒドロキシスルホン酸塩に変換されているものと推定される。
前記糖液を、前記加熱処理工程及び前記還元処理工程に供することで、前記糖液を滅菌し、かつ糖液中の発酵阻害物質を低減することができ、有機化合物の発酵生産プロセス、及び微生物の培養工程で増殖速度や増殖量を低減させることなく、発酵プロセスを実施することができる。
前記還元処理工程で使用する還元剤は、前記カルボニル化合物の含有量を低減することができる限りにおいて特に限定はされないが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水等の亜硫酸化合物;次硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、次亜硫酸カルシウム、次亜硫酸アンモニウム等の次亜硫酸化合物;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウム、硫化アンモニウム等の硫化物;アスコルビン酸、システイン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の還元性を有する有機物;等が挙げられる。
これらの中でも、入手及び取扱いが容易の観点で亜硫酸化合物、次亜硫酸化合物及びチオ硫酸化合物が好ましい。
前記還元剤は、本発明1の効果を妨げない限り、1種類を用いても、2種類以上の還元剤を組み合わせて用いてもよく、その際に使用する比率も限定されない。
前記還元処理の条件は、加熱処理工程の後に還元処理工程が行われ、前記加熱処理にて滅菌処理された状態を維持しながら、糖液中の前記カルボニル化合物の含有量を低減することができる限りにおいて、特に限定されない。
カルボニル化合物等の発酵阻害物質は、還元剤と反応付加物、すなわち還元処理体を形成することで糖液から除去されると考えられる。ところが前記還元処理体は、高温条件下で不安定であるため、糖液の滅菌処理を行う際の加熱条件での分解等が起こると考えられる。
本願発明の製造方法により、滅菌状態を維持しつつ、発酵阻害をもたらすカルボニル化合物を除去することができるため、糖液、好ましくは非可食由来のカルボニル化合物を多く含む糖液からでも、有機化合物を効率よく製造することが可能になるものと考えられる。
なお前記糖液中に含まれる糖類もアルデヒド基等のカルボニル基を有しているため、前記カルボニル化合物と同様、前記還元剤と反応する。すなわち糖と、前記還元剤の反応生成物が生成することがあるが、後述する有機化合物を発酵生産する工程や、微生物の培養工程において問題がない限りは、前記還元処理条件は限定されない。そのため糖類以外のカルボニル化合物の含有量が低減でき、かつグルコースやキシロースなどの糖類が本発明1の還元剤と反応しにくい、選択的な反応条件を選択することが好ましい。
本発明1の還元処理工程の処理温度は、特に限定されないが、通常20℃以上、100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。前記還元処理工程を前記温度範囲内で行うことにより、還元剤や還元処理体の分解が抑制でき、糖類を還元剤と反応させることなく、発酵阻害物質である糖類以外のカルボニル化合物の含有量を低減することが可能となる。
前記還元処理工程における前記糖液のpHは、特に限定されないが、前記還元剤や前記還元処理体の分解が抑制でき、前記カルボニル化合物等の発酵阻害物質の含有量を低減させる観点から、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、通常8以下、好ましくは7以下である。前記加熱処理終了後にpHは酸性、具体的にはpH=3〜6程度を呈することがある。その際、適宜、塩酸や硫酸等の酸やアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を添加してpHを調整してもよいが、上記範囲であれば還元剤の分解が促進されず、還元処理が効率よく行われる点で好ましい。
前記還元処理工程で使用する還元剤の量は、糖液中の発酵阻害物質濃度、具体的には前記カルボニル化合物の濃度、使用する還元剤の種類、反応温度、反応様式、糖液の処理量といった諸条件と発酵阻害物質の除去効率、糖と還元剤の反応抑制、未反応の還元剤量低減など所望する反応成績で決定されるものであり、特に限定されない。
還元剤の使用量は、通常、前記糖液中に含まれる糖の質量に対して、0.05質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、通常2.0質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以下である。
前記還元処理工程の処理時間は、糖液中の前記発酵阻害物質の含有量及び濃度、具体的には前記カルボニル化合物の濃度、使用する還元剤の種類、反応温度、反応様式、糖液の処理量といった諸条件と発酵阻害物質の除去効率、糖と還元剤の反応抑制など所望する反応成績で決定されるものであり、特に限定されるものではない。
具体的には、還元剤を加えて、前記糖液の温度が、前記処理温度になってから、通常、1分以上であり、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。上限は、発酵阻害物質が十分に除去されれば特に制限されないが、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下である。
処理時間が前記範囲内であることにより、前記カルボニル化合物等の発酵阻害物質の含有量を十分に低減させることができ、また糖と還元剤の反応生成物の生成も抑制できる。
前記還元処理工程では、溶媒を使用することができ、その種類は特に限定されるものではないが、通常は水が使用される。また有機溶媒を共溶媒として使用してもよいが、水相に有機溶媒が混入することで発酵阻害を引き起こす可能性があるため、発酵生産や微生物の培養工程に供する際に有機溶媒を分離する工程が必要となるため、糖液は水溶液のまま還元処理工程に供することが望ましい。
<第1−2の発明:処理糖液>
前記第1−1の発明における加熱処理及び還元処理によって、糖液は滅菌され、かつ糖液に含有される糖類以外のカルボニル化合物の含有量が、低減されるため、得られる糖液中の前記カルボニル化合物の濃度は、通常、最初の糖液中の濃度より低い。なお、前記加熱処理工程及び還元処理工程に供した後の糖液を、以下「処理糖液」ということがある。
前記カルボニル化合物を、本発明1の還元剤と作用させることにより、後述する発酵プロセスにおいて、微生物の増殖や有用化合物の発酵生産の効率を向上させることができる。
第1−2の発明の処理糖液は、前記カルボニル化合物と還元剤の反応生成物を含んでいてもよく、具体的には、前記カルボニル化合物がアルデヒド化合物である場合、対応するα−ヒドロキシスルホン酸塩等を含んでいてもよい。
また、第1−2の発明の処理糖液は、必要に応じて、適宜、イオン交換樹脂、活性炭、合成樹脂、水素添加等の手法でさらに処理しても構わない。
<第1−3の発明:有機化合物の製造方法>
前記第1−2の発明の処理糖液は、有機物生産能力を有する微生物を作用させることにより、各種の有機化合物を製造することができる。
(有機物生産能力を有する微生物)
第1−3の発明で用いる微生物は、有機物生産能力を有する微生物であれば、特に限定はされない。
なお第1−3の発明における「有機物生産能力を有する微生物」とは、該微生物を培地中で培養したときに、該培地中に有機物を生成蓄積することができる微生物をいう。
(有機化合物)
微生物が生産する有機化合物としては、微生物が培地中に生成蓄積することができる有機化合物であれば限定されないが、具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等のアルコール類;1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン等のアミン類;酢酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、シス−アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、2−オキソグルタル酸、2−オキソイソ吉草酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、レブリン酸、キナ酸、シキミ酸、アクリル酸、メタクリル等のカルボン酸類;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、メチオニン、ヒスチジン、システイン、セリン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン等のアミノ酸類;フェノール、カテコール、ハイドロキノン等のフェノール類;安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸類;イノシン、グアノシン等のヌクレオシド類、イノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド;イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
これらの中でも、発酵生産として公知の方法を採用でき、かつ、樹脂原料として使用可能であることから、アルコール類、アミン類、カルボン酸類、フェノール類が好ましく、炭素数2〜10の脂肪族アルコール類や、炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸類がより好ましい。中でも、発酵生産性の観点から、エタノール、ブタンジオール、コハク酸がさらに好ましい。
(微生物)
第1−3の発明で用いる微生物は、有機物生産能力を有する微生物であれば特に限定されないが、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選択される微生物であることが好ましい。
その中でも、コリネ型細菌、大腸菌、アナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌、アクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌、マンヘミア(Mannheimia)属細菌、バスフィア(Basfia)属細菌、ザイモバクター(Zymobacter)属細菌、糸状菌、および酵母菌からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、より好ましくはコリネ型細菌、大腸菌、酵母菌であり、特に好ましくはコリネ型細菌である。
上記コリネ型細菌は、これに分類されるものであれば特に制限されないが、コリネバクテリウム属に属する細菌、ブレビバクテリウム属に属する細菌、アースロバクター属に属する細菌などが挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)またはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に分類される細菌である。
第1−3の発明で使用可能なコリネ型細菌の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネスATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC31831、およびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl W, Ehrmann M, Ludwig W, Schleifer KH, Int J Syst Bacteriol., 1991, Vol.41, p255-260)、本発明1においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、およびその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株およびMJ−233 AB−41株と同一の株とする。
上記ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP−1497の受託番号で寄託されている。
第1−3の発明で使用可能な大腸菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等が挙げられる。また、第1−3の発明で使用可能なアナエロビオスピリラム(Anaerobiospirillum)属細菌としては、アナエロビオスピリラム・サクシニシプロデュセン(Anaerobiospirillum succiniciproducens)等が挙げられる。
また、第1−3の発明に使用可能なアクチノバチルス(Actinobacillus)属細菌としては、アクチノバチルス・サクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)等が挙げられる。また第1−3の発明に使用可能なマンヘミア(Mannheimia)属細菌としては、バスフィア・サクシニシプロデュセン(Mannheimia succiniciproducens)等が挙げられる。
また第1−3の発明で使用可能なバスフィア(Basfia)属細菌としては、バスフィア・サクシニシプロデュセン(Basfia succiniciproducens)等が挙げられる。また、第1−3の発明で使用可能なザイモモナス(Zymomonas)属細菌としては、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)等が挙げられる。また、第1−3の発明で使用可能なザイモバクター(Zymobacter)属細菌としては、ザイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)等が挙げられる。
また第1−3の発明で使用可能な糸状菌としては、Aspergillus属、Penicillium属、Rhizopus属等が挙げられる。このうち、Aspergillus属では、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)等が挙げられ、Penicillium属では、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・シンプリシシマム(Penicillium simplicissimum)等が挙げられる。また、Rhizopus属では、リゾパス・オリゼー(Rhizopus oryzae)等が挙げられる。
また、第1−3の発明で使用可能な酵母菌としては、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)、チゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)が挙げられる。
上記サッカロミセス属(Saccharomyces)としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・バイアヌス(Saccharomyces bayanus)等が挙げられる。また、上記シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。また、上記カンジダ属(Candida)としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)等が挙げられる。また、上記ピキア属(Pichia)としては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)等が挙げられる。
また上記クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)としては、クルイウェロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイウェロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイウェロマイセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)等が挙げられる。また上記ヤロウィア属(Yarrowia)としては、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)等が挙げられる。また上記チゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)としては、チゴサッカロミセス・バイリイ(Zygosaccharomyces bailii)、チゴサッカロミセス・ロウキシ(Zygosaccharomyces rouxii)等が挙げられる。
上記微生物は、野生株だけでなく、UV照射やNTG処理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合若しくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。
また上記微生物は、本来的に有機物生産能力を有する微生物であるが、育種により有機物生産能力を付与したものであってもよい。
育種により有機物生産能力を付与する手段としては、変異処理や遺伝子組換え処理などが挙げられ、有機物生合成経路における酵素遺伝子の発現強化や副生物生合成経路における酵素遺伝子の発現低減など、公知の方法を採用することができる。例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸生産能を付与する場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減するような改変やピルビン酸カルボキシラーゼ活性を増強するような手段などが挙げられる。エタノール、ブタノール、ブタンジオール等のアルコール生産能を付与する場合は、後述するようなラクテートデヒドロゲナーゼ活性を低減するような改変やアルコールデヒドロゲナーゼ活性を増強するような手段などが挙げられる。
上記ラクテートデヒドロゲナーゼ(以下、LDHという)活性を低減させるような改変方法としては、特に限定はされないが、上述した微生物を親株として用い、N−メチル−N’−ニトローN−ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、LDH活性が低減した株を選択することによってそれぞれ得ることができる。また、LDHをコードする遺伝子を用いて改変してもよい。具体的には、染色体上のldh遺伝子の破壊や、プロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変等により達成される。
LDH活性が低減した株の具体的な作製方法としては、染色体への相同組換えによる方法(日本国特開平11−206385号公報等参照)や、sacB遺伝子を用いる方法(Schafer A, Tauch A, Jager W, Kalinowski J, Thierbach G, Puhler A, Gene 1994 Vol.145(1), p69-73)等が挙げられる。
上記ピルビン酸カルボキシラーゼ(以下、PCとも呼ぶ)活性が増強するような改変方法としては、特に限定されないが、上述した微生物を親株として用い、N−メチル−N’−ニトローN−ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、PC活性が増強した株を選択することによってそれぞれ得ることができる。また、PCをコードする遺伝子を用いて改変してもよい。具体的には、pc遺伝子のコピー数を高めることによって達成でき、コピー数を高めることは、プラスミドを用いたり、公知の相同組換え法によって染色体上で多コピー化させたりすることなどによって達成できる。なお、PC活性の増強は、染色体上またはプラスミド上でpc遺伝子のプロモーターへの変異導入、より強力なプロモーターへの置換などによって高発現化させることによっても達成できる。
PC活性の増強に用いるpc遺伝子としては、PC活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。さらに、コリネ型細菌以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のpc遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のpc遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてPC活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
上記のようにして単離されたPCをコードする遺伝子を公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、PC発現ベクターが提供される。この発現ベクターで形質転換することにより、PC活性増強株を得ることができる。あるいは、相同組換えなどによって、宿主微生物の染色体DNAにPCをコードするDNAを発現可能に組み込むことによってもPC活性増強株を得ることができる。なお、形質転換、相同組換えは当業者に知られた通常の方法に従って行うことができる。
染色体上またはプラスミド上にPC遺伝子を導入する場合には、適当なプロモーターを該遺伝子の5’−側上流に、より好ましくはターミネーターを3’−側下流にそれぞれ組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターであれば特に限定されず、pc遺伝子自身のプロモーターおよびターミネーターであってもよいし、他のプロモーターおよびターミネーターに置換してもよい。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーターおよびターミネーターなどに関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
本発明1において用いられる微生物に、育種によりアルコール生産能を付与する場合としては、カルボン酸生産能を付与する場合と同様の方法で、LDH活性を低減するよう改変された微生物を利用することができる。
上記アルコールデヒドロゲナーゼ(以下、ADHとも呼ぶ)活性が増強するように改変された微生物は、上述のPC活性を増強する方法と同様にして作製することができる。
ADH活性の増強に用いるadh遺伝子としては、ADH活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のadhB遺伝子、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のadhE2遺伝子を挙げることができる。さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のadh遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のadh遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてADH活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
なお、本発明1に用いる微生物は、有機物生産能力を付与するための改変のうちの2種類以上の改変を組み合わせて得られる微生物であってもよい。複数の改変を行う場合、その順番は問わない。
第1−3の発明で用いる微生物は、有機物生産能力を有し、且つペントース利用能を有する微生物であってもよく、ペントース利用能を有する微生物が好ましい。本発明1において、「ペントース利用能」とは、該微生物がペントースを炭素源として利用し、増殖または有機物生産することができることをいう。
微生物が炭素源として利用するペントースとしては、炭素源として利用可能であれば特に限定されない。具体例としては、キシロース、アラビノース、リボース、リキソース等のアルドペントース類、リブロース、キシルロース等のケトペントース等が挙げられる。これらの中でも、アルドペントース類が好ましく、非可食原料として利用されるヘミセルロース系バイオマスに含まれるキシロース、アラビノースがより好ましい。中でも、ヘミセルロース系バイオマス中の含有量が多いキシロースが特に好ましい。
ここで、ペントース利用能を有する微生物は、本来的にペントース利用能を有する微生物であってもよいし、育種によりペントース利用能を付与したものでもよい。
育種によりペントース利用能を付与する手段としては、遺伝子組換え処理などが挙げられ、ペントース代謝経路の酵素遺伝子を導入など公知の方法を採用することができる。例えば、キシロース利用能を付与する場合は、後述するようなキシロースイソメラーゼ遺伝子を導入する方法、またはキシロースリダクターゼ遺伝子およびキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を導入する方法などが挙げられる。アラビノース利用能を付与する場合は、後述するようなアラビノースイソメラーゼ遺伝子およびリブロキナーゼ遺伝子およびリブロース5リン酸エピメラーゼ遺伝子を導入する方法などが挙げられる。
以下、育種によりペントース利用能を付与する具体例として、キシロース利用能の付与に関する改変例とアラビノース利用能の付与に関する改変例について説明する。
キシロース利用能を付与された微生物は、上述した微生物を親株として用い、該親株にキシロースイソメラーゼ(以下、XylAとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入することによって得ることができる。
ここで、「XylA活性」とは、キシロースを異性化してキシルロースを生成する反応を触媒する活性(EC:5.3.1.5)をいう。XylA活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばGaoらの方法(Gao Q, Zhang M, McMillan JD, Kompala DS, Appl. Biochem. Biotechnol., 2002, Vol.98(100), p341-55)により、XylA活性を測定することによって確認することができる。
XylA活性が付与または増強された株の具体的な作製方法としては、xylA遺伝子のプラスミドによる導入や、公知の相同組換え法による染色体上への導入などによって達成できる。
XylA活性の付与または増強に用いるxylA遺伝子としては、XylA活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、大腸菌以外の細菌または他の微生物、動植物由来のxylA遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のxylA遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてXylA活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
上記のようにして単離されたXylAをコードする遺伝子を公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、XylA発現ベクターが提供される。この発現ベクターで形質転換することにより、XylA活性が付与または増強された株を得ることができる。あるいは、相同組換えなどによって、宿主微生物の染色体DNAにXylAをコードするDNAを発現可能に組み込むことによってもXylA活性が付与または増強された株を得ることができる。なお、形質転換、相同組換えは当業者に知られた通常の方法に従って行うことができる。
染色体上またはプラスミド上にXylA遺伝子を導入する場合には、適当なプロモーターを該遺伝子の5’−側上流に、より好ましくはターミネーターを3’−側下流にそれぞれ組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターであれば特に限定されず、xylA遺伝子自身のプロモーターおよびターミネーターであってもよいし、他のプロモーターおよびターミネーターに置換してもよい。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーターおよびターミネーターなどに関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
また、キシロース利用能の付与においては、XylA活性の付与または増強に加えて、キシルロキナーゼ(以下、XylBとも呼ぶ)活性を付与または増強するように改変された微生物であってもよい。
ここで、「XylB活性」とは、キシルロースをリン酸化してキシルロース5リン酸を生成する反応を触媒する活性(EC:2.7.1.17)をいう。XylB活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばEliassonらの方法(Eliasson A, Boles E, Johansson B, Otensterberg M, Thevelein JM, Spencer-Martins I, Juhnke H, Hahn-Hatengerdal B, Appl. Microbiol. Biotechnol., 2000, Vol.53, p376-82)により、XylB活性を測定することによって確認することができる。
XylB活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。
XylB活性の付与または増強に用いるxylB遺伝子としては、XylB活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のxylB遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のxylB遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてXylB活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
XylA活性およびXylB活性を付与または増強する場合、導入するxylA遺伝子とxylB遺伝子は同じ遺伝子座上に存在していてもよく、それぞれ別の遺伝子座上に存在していてもよい。2つの遺伝子が同じ遺伝子座上に存在している例としては、例えば、それぞれの遺伝子が連結して形成されたオペロンなどが挙げられる。
キシロース利用能を付与された微生物は、上述した微生物を親株として用い、該親株にキシロースリダクターゼ(以下、XRとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子およびキシリトールデヒドロゲナーゼ(以下、XDHとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入することによって得ることもできる。
ここで、「XR活性」とは、キシロースを還元してキシリトールを生成する反応を触媒する活性(EC:1.1.1.21)をいう。XR活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばSasakiらの方法(Sasaki M, Jojima T, Inui M, Yukawa H, Appl Microbiol Biotechnol., 2010, Vol.86(4), p1057-66)により、XR活性を測定することによって確認することができる。
XR活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。XR活性の付与または増強に用いるxr遺伝子としては、XR活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)由来のXYL1遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の微生物または動植物由来のxr遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のxr遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてXR活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
次に、「XDH活性」とは、キシリトールを脱水素化してキシルロースを生成する反応を触媒する活性(EC:1.1.1.9)をいう。XDH活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばRizziらの方法(Rizzi M, Harwart K, Erlemann P, Bui-Thahn NA, Dellweg H, J Ferment Bioeng., 1989, Vol.67, p20-24)により、XDH活性を測定することによって確認することができる。
XDH活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。XDH活性の付与または増強に用いるxdh遺伝子としては、XDH活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)由来のXYL2遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の微生物または動植物由来のxdh遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のxdh遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてXDH活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
また、キシロース利用能の付与においては、XDH活性およびXR活性の付与または増強に加えて、XylB活性を付与または増強するように改変された微生物であってもよい。XylB活性の付与または増強に関しては上述の通りである。
アラビノース利用能を付与された微生物は、上述した微生物を親株として用い、該親株にアラビノースイソメラーゼ(以下、AraAとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子およびリブロキナーゼ(以下、AraBとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子およびリブロース5リン酸エピメラーゼ(以下、AraDとも呼ぶ)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を導入することによって得ることができる。
ここで、「AraA活性」とは、アラビノースを異性化してリブロースを生成する反応を触媒する活性(EC:5.3.1.4)をいう。AraA活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばPatrickらの方法(Patrick JW, Lee N, J. Biol. Chem., 1968, Vol.243, p4312-19)により、AraA活性を測定することによって確認することができる。
AraA活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。AraA活性の付与または増強に用いるaraA遺伝子としては、AraA活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のaraA遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のaraA遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてAraA活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
次に、「AraB活性」とは、リブロースをリン酸化してリブロース5リン酸を生成する反応を触媒する活性(EC:2.7.1.16)をいう。AraB活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばLeeらの方法(Lee N, Englesberg E, Proc. Natl. Acad. Sci., 1962, Vol.48, p335-48)により、AraB活性を測定することによって確認することができる。
AraB活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。AraB活性の付与または増強に用いるaraB遺伝子としては、AraB活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のaraB遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のaraB遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてAraB活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
さらに、「AraD活性」とは、リブロース5リン酸を異性化してキシルロース5リン酸を生成する反応を触媒する活性(EC:5.1.3.4)をいう。AraD活性が付与または増強されたことは、公知の方法、例えばDeandaらの方法(Deanda K, Zhang M, Eddy C, Picataggio S, Appl Environ Microbiol., 1996, Vol.62(12), p4465-70)により、AraD活性を測定することによって確認することができる。
AraD活性が付与または増強された株は、上述のXylA活性を付与または増強する方法と同様にして作製することができる。AraD活性の付与または増強に用いるaraD遺伝子としては、AraD活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来の遺伝子を挙げることができる。
さらに、上記以外の細菌、または他の微生物、動植物由来のaraD遺伝子を使用することもできる。微生物または動植物由来のaraD遺伝子は、既にその塩基配列が決定されている遺伝子、ホモロジー等に基づいてAraD活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を微生物、動植物等の染色体より単離し、塩基配列を決定したものなどを使用することができる。また、塩基配列が決定された後には、その配列に従って合成した遺伝子を使用することもできる。これらはハイブリダイゼーション法やPCR法により、そのプロモーターおよびORF部分を含む領域を増幅することによって取得することができる。
AraA活性およびAraB活性およびAraD活性を付与または増強する場合、導入するaraA遺伝子、araB遺伝子、およびaraD遺伝子は同じ遺伝子座上に存在していてもよく、それぞれ別の遺伝子座上に存在していてもよい。2つまたは3つの遺伝子が同じ遺伝子座上に存在している例としては、例えば、それぞれの遺伝子が連結して形成されたオペロンなどが挙げられる。
なお、第1−3の発明に用いる微生物は、ペントース利用能を付与するための改変のうちの2種類以上の改変を組み合わせて得られる細菌であってもよい。複数の改変を行う場合、その順番は問わない。
また、第1−3の発明に用いる微生物は、有機物生産能力を付与するための改変とペントース利用能を付与するための改変を組み合わせて得られる微生物であってもよい。複数の改変を行う場合、その順番は問わない。
(有機物生産工程)
第1−3の発明は、本発明1−2の処理糖液を含有する有機原料に、後述する水性媒体中で、有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る工程(以下、有機物生産工程、ということがある)を含むものである。中でも、処理糖液を含有する有機原料に前記微生物を作用させることにより有機化合物を生成させ、これを回収することが好ましい。製造し得る有機化合物の種類および好ましい有機化合物の例は上述した通りである。なお「水性媒体」とは、水、または水を主成分とする水溶液及びゲル(寒天)等と、糖液を含有する有機原料と、有機物生産能力を有する微生物、並びに有機原料中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物の還元剤付加物のほか、微生物の培養に必要な成分を含む液体を意味し、溶解していない液体・固体が分散したものも含まれる。
第1−3の発明で前記微生物を用いるに当たっては、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直接用いても良いが、必要に応じて上記微生物を予め液体培地で培養したものを用いてもよい。すなわち、前記微生物を予め増殖させておいた上で、前記微生物に有機化合物を生産させてもよい。後述する種培養や本培養を行なうことで、前記微生物を予め増殖させることができるが、このときに使用する有機原料としては、処理糖液を用いてもよいし、その他の有機原料を用いてもよい。
なお、種培養または本培養した微生物を水性媒体中で増殖させながら、処理糖液を含有する有機原料と反応させることによって有機化合物を製造してもよいし、予め種培養または本培養を行なうことで増殖させた菌体を、処理糖液を含有する有機原料を含む水性媒体中で有機原料と反応させることによって有機化合物を製造してもよい。
また、第1−3の発明において用いられる微生物としては、上記微生物のほか、微生物の処理物を使用することもできる。微生物の処理物としては、例えば、微生物の菌体をアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した固定化菌体、菌体を破砕した破砕物、その遠心分離上清、またはその上清を硫安処理等で部分精製した画分等が挙げられる。
第1−3の発明では処理糖液を含有する有機原料を使用するが、必要に応じて、その他の有機原料を添加してもよい。有機化合物製造方法において使用する処理糖液以外の有機原料としては、前記微生物が資化して有機化合物を生成させうる炭素源であれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプンまたはセルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトールまたはリビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、スクロースまたはフルクトースが好ましく、特にグルコースまたはスクロースが好ましい。
また、前記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液または糖蜜なども処理糖液以外の有機原料として使用することができ、具体的にはサトウキビ、甜菜またはサトウカエデ等の植物から搾取した糖液であるものが好ましい。
これらの有機原料は、単独で添加してもよいし、組み合わせて添加してもよい。
前記有機原料の使用濃度は特に限定されないが、有機化合物の生成を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利であり、水性媒体に対して、通常50g/L以上、好ましくは100g/L以上であり、一方、通常300g/L以下、好ましくは200g/L以下である。また、反応の進行に伴う前記有機原料の減少にあわせ、有機原料の追加添加を行ってもよい。
(水性媒体)
第1−3の発明において用いられる「水性媒体」は特に限定されず、は窒素源や無機塩などを含む水溶液であることが好ましい。ここで、窒素源としては、第1−3の発明で用いる微生物が資化して有機化合物を生成させうる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。また、反応時の発泡を抑えるために、前記水性媒体には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
また、前記水性媒体は、例えば上述した有機原料、窒素源、無機塩などのほかに、炭酸イオン、重炭酸イオンおよび二酸化炭素ガス(炭酸ガス)から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。炭酸イオンまたは重炭酸イオンは、中和剤としても用いることのできる炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウムなどから供給されるが、必要に応じて、炭酸若しくは重炭酸またはこれらの塩或いは二酸化炭素ガスから供給することもできる。炭酸または重炭酸の塩の具体例としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられる。
前記水性媒体中における炭酸イオンまたは重炭酸イオンの濃度は、通常1mM以上、好ましくは2mM以上、さらに好ましくは3mM以上であり、また、通常500mM以下、好ましくは300mM以下、さらに好ましくは200mM以下である。二酸化炭素ガスを含有させる場合は、水性媒体1L当たり通常50mg以上、好ましくは100mg以上、さらに好ましくは150mg以上の二酸化炭素ガスを含有させることが好ましく、一方、水性媒体1L当たり通常25g以下、好ましくは15g以下、さらに好ましくは10g以下の二酸化炭素ガスを含有させることが好ましい。
前記水性媒体のpHは、用いる微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されることが好ましい。具体的には、コリネ型細菌を用いる場合には、水性媒体のpHを、通常5.5以上、好ましくは6以上、より好ましくは6.6以上、さらに好ましくは7.1以上であり、一方、通常10以下、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下とすることが好ましい。
前記水性媒体のpHは、生産される有機化合物が酸性物質である場合には、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア(水酸化アンモニウム)、またはそれらの混合物等を添加することによって調整することができる。生産される有機化合物が塩基性物質である場合には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、それらの混合物等を添加すること、または二酸化炭素ガスを供給することによって調整することができる。
(有機物生産工程の反応条件)
第1−3の発明で用いる微生物の菌体量は、特に限定されないが、湿菌体質量として、通常1g/L以上、好ましくは10g/L以上、より好ましくは20g/L以上であり、一方、通常700g/L以下、好ましくは500g/L以下、さらに好ましくは400g/L以下である。
第1−3の発明における有機物生産工程の反応時間は、特に限定はされないが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上であり、一方、通常168時間以下、好ましくは72時間以下である。
第1−3の発明における有機物生産工程の反応温度は、用いる前記微生物の生育至適温度と同じ温度で行ってもよいが、生育至適温度より高い温度で行うことが有利であり、通常生育至適温度より2℃以上、好ましくは7℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上高い温度で行う。具体的には、コリネ型細菌の場合には、通常35℃以上、好ましくは37℃以上、さらに好ましくは39℃以上であり、一方、通常45℃以下、好ましくは43℃以下、さらに好ましくは41℃以下である。有機化合物生産反応の間、常に35℃〜45℃の範囲とする必要はないが、全反応時間の50%以上、好ましくは80%以上の時間において、上記温度範囲にすることが望ましい。
第1−3の発明における有機物生産工程は、通気、攪拌して行ってもよいが、通気せず、酸素を供給しない嫌気的雰囲気下で行なうことが好ましい。ここでいう嫌気的雰囲気下は、例えば容器を密閉して無通気で反応させる、窒素ガス等の不活性ガスを供給して反応させる、二酸化炭素ガス含有の不活性ガスを通気する等の方法によって得ることができる。
第1−3の発明における有機物生産工程は、特段の制限はないが、回分反応、半回分反応または連続反応のいずれにも適用することができる。
(その他の工程)
第1−3の発明は、上記の有機物生産工程により有機化合物が生成し、水性媒体中に蓄積させることができる。前記有機物生産工程で蓄積させた有機化合物は、常法に従って、前記水性媒体より回収する工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、例えば、蓄積させた有機化合物がコハク酸、フマル酸、リンゴ酸等のカルボン酸である場合には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、回収することができる。
また第1−3の発明においては、前記の精製する工程で得られたものを精製する工程をさらに含んでいてもよい。具体的には前記水性媒体から回収した溶液を結晶化(晶析)またはカラムクロマトグラフィーにより精製して、カルボン酸を得ることができる。蓄積させた有機化合物がエタノール、ブタノール、ブタンジオール等のアルコールである場合には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、蒸留等で濃縮し、その溶液を膜脱水するなどして、アルコールを精製することができる。
<第1−4の発明:微生物の培養方法>
第1−4の発明の培養方法は、本発明1−2の処理糖液を含有する有機原料を炭素源として用いて、有機物生産能力を有する微生物を培養させる。本発明1−4の培養方法によって得られた微生物は、その後、有機原料に作用させることによって有機化合物を生成させ、これを回収することができる。このときの有機原料としては、前記処理糖液を用いてもよいし、処理糖液中にその他の有機原料を含んでいてもよい。製造し得る有機化合物の種類および好ましい有機化合物の例は上述した通りである。
第1−4の発明の培養方法では、処理糖液を含む寒天培地等の固体培地で培養してもよいし、処理糖液を含む液体培地で培養してもよい。後述する種培養や本培養を行なうことで、有機化合物生産反応に供する前記微生物を増殖させることができる。
(種培養)
種培養は、本培養に供する前記微生物の菌体を調製するために行なうものである。種培養に用いる培地は、微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができるが、窒素源や無機塩などを含む培地であることが好ましい。ここで、窒素源としては、本微生物が資化して増殖できる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。さらに、必要に応じて、前記培地に炭素源として処理糖液を添加してもよいし、グルコース等の有機原料を添加してもよい。
種培養は、一般的な生育至適温度で行なうことが好ましい。一般的な生育至適温度とは、有機化合物の生産に用いられる条件において最も生育速度が速い温度のことを言う。具体的な培養温度としては、通常25℃〜40℃であり、30℃〜37℃が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常25℃〜35℃であり、28℃〜33℃がより好ましく、約30℃が特に好ましい。
種培養は、一般的な生育至適pHで行なうことが好ましい。一般的な生育至適pHとは、有機化合物の生産に用いられる条件において最も生育速度が速いpHのことを言う。具体的な培養pHとしては、通常pH4〜10であり、pH6〜8が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常pH6〜9であり、pH6.5〜8.5が好ましい。
また、種培養の培養時間は、一定量の菌体が得られる時間であれば特段の制限はないが、通常6時間以上96時間以下である。また、種培養においては、通気や攪拌等により、酸素を供給することが好ましい。
種培養後の菌体は、後述する本培養に用いることができるが、種培養については省略してもよく、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直接本培養に用いてもよい。また、必要に応じて、種培養を何度か繰り返し行ってもよい。
(本培養)
本培養は、後述する有機化合物生産反応に供する前記微生物菌体を調製するために行なうものであり、主として菌体量を増やすことを目的とする。上述の種培養を行う場合は、種培養により得られた菌体を用いて本培養を行う。
本培養に用いる培地は、微生物の培養に用いられる通常の培地を用いることができるが、窒素源や無機塩などを含む培地であることが好ましい。ここで、窒素源としては、本微生物が資化して増殖できる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げられる。無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等の金属塩が用いられる。また、ビオチン、チアミン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。また、培養時の発泡を抑えるために、培地には市販の消泡剤を適量添加しておくことが好ましい。
また、本培養においては、炭素源として処理糖液を含有する有機原料を使用する。必要に応じて、その他の有機原料を添加してもよい。本培養において使用する処理糖液以外の有機原料としては、前記微生物が資化して増殖し得るものであれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、スクロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、スクロース、またはフルクトースが好ましく、特にグルコースまたはスクロースが好ましい。
これらの有機原料は、単独で添加してもよいし、2種類以上を任意の組み合わせで添加してもよい。
前記有機原料の使用濃度は特に限定されないが、増殖を阻害しない範囲で添加するのが有利であり、培養液に対して、通常1〜100g/L、好ましくは5〜50g/Lの範囲内で用いることができる。また、増殖に伴う前記有機原料の減少にあわせ、有機原料の追加添加を行ってもよい。
また、本培養は、一般的な生育至適温度で行なうことが好ましい。具体的な培養温度としては、通常25℃〜40℃であり、30℃〜37℃が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常25℃〜35℃であり、28℃〜33℃がより好ましく、約30℃が特に好ましい。
また、本培養は、一般的な生育至適pHで行なうことが好ましい。具体的な培養pHとしては、通常pH4〜10であり、pH6〜8が好ましい。コリネ型細菌の場合は、通常pH6〜9であり、pH6.5〜8.5が好ましい。
また、本培養の培養時間は、一定量の菌体が得られる時間であれば特段の制限はないが、通常6時間以上96時間以下である。また、本培養においては、通気や攪拌等により、酸素を供給することが好ましい。
また、本培養においては、より有機化合物の製造に適した菌体の調製方法として、日本国特開2008−259451号公報に記載の炭素源の枯渇と充足を短時間で交互に繰り返すように培養を行う方法も用いることができる。
本培養後の菌体は、前述の有機化合物生産反応に用いることができるが、培養液を直接用いてもよいし、遠心分離、膜分離等によって菌体を回収した後に用いてもよい。
≪発明2≫
以下、本発明2の糖液の処理方法、処理糖液の製造方法、還元処理糖液、有機化合物の製造方法、培養方法について詳述する。
<第2−1の発明:糖液の処理方法>
本発明2の第2−1の発明は、糖液を、−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンと、アンモニウムイオンとを含むイオン化合物を還元剤として還元処理に供し、該糖液中の糖類以外のカルボニル化合物を還元することを特徴とする。
第2−1の発明における糖液、並びに後述する第2−2の発明、第2−3の発明、および第2−4の発明(第2−1ないし第2−4の発明をまとめて「本発明2」ということがある。)で用いられる「糖液」とは、糖類を含有する水溶液をいう。また第2−1の発明に−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンと、アンモニウムイオンとを含むイオン化合物を「本発明2の還元剤」ということがある。以下、糖液中に含まれる糖類から順に説明する。
(糖類)
本発明2で用いる糖液に含まれる糖類は、特に限定はされず、いわゆる糖類一般を用いることができる。具体的には、前述の<第1−1の発明>の項で説明した(糖類)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
(糖液の由来、製法)
本発明2で用いる糖液の製法は、特に限定はされないが、例えば上記の糖類の1種類以上を水に溶解して製造する方法や、上記の糖類を構成成分として含む原料(以下、「糖原料」ということがある。)を、その構成単位である糖類まで分解して製造する方法が挙げられる。具体的には、前述の<第1−1の発明>の項で説明した(糖の由来、製法)と同一のものおよび方法が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
(糖類以外のカルボニル化合物)
本発明2で用いる糖液には、糖液を製造する工程および保管した際に生成する、糖類以外のカルボニル化合物が通常含まれている。このようなカルボニル化合物の具体例としては、具体的には、前述の<第1−1の発明>の項で説明した(糖類以外のカルボニル化合物)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
本発明者らは、前記糖類以外のカルボニル化合物が、糖液を原料とした有用化合物を発酵生産する工程において、有用化合物の生産量、蓄積量、および生産速度の低下減少を引き起こすことを見出した。なお以下で、前記のような作用を及ぼす物質を総称し、「発酵阻害物質」という。また前記発酵阻害物質を含有した糖液は、微生物の培養工程において、増殖量や増殖速度の低下が起こり、また化学変換プロセスを経て有機化合物を生産する工程において、カルボニル化合物の反応性の高さから生成物の着色を起こすことを見出した。
(還元処理)
第2−1の発明では、上記の糖液中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物を、前記本発明2の還元剤を用いて還元処理する。これにより前記カルボニル化合物は、発酵阻害の小さな物質に変換されることで、その含有量を低減させることができる。なお、第2−1の発明における「還元処理」とは、上記の糖液中に含まれる糖類以外のカルボニル化合物を、前記本発明2の還元剤と反応した物質(以下、「還元処理体」ということがある)に変換する処理をいう。
上記還元処理体として、糖液中の糖以外のカルボニル化合物のカルボニル基と還元剤とが反応していると推定される。例えば、アルデヒド化合物を、還元剤として亜硫酸塩や次亜硫酸塩を用いて還元処理をした場合、α−ヒドロキシスルホン酸塩に変換されているものと推定される。前記カルボニル化合物は、アルデヒド化合物およびケトン化合物から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの化合物は、後述する第2−3の発明および第2−4の発明において、高い発酵阻害性を有することが多いためである。
上記の還元処理に糖液を供することで、有機化合物の発酵生産における阻害効果が低減され、また微生物の培養工程でも増殖速度や増殖量を低減させることなく、糖液の発酵プロセスを実施することができる。また、化学変換プロセスにおいても反応性が高いカルボニル基が変換されることで、生成物の着色等を抑えることができる。
(還元剤)
第2−1の発明における還元処理は、前記本発明2の還元剤の存在下で行なう。本発明2で用いる還元剤は、イオン化合物である。前記イオン化合物は、−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンを含む。また前記イオン化合物は、そのカチオンとしてアンモニウムイオンを含む。
前記のイオン化合物を還元剤として用いることで、糖液中のカルボニル化合物、好ましくは水溶性のアルデヒド化合物の含有量を減少させることができ、後述する発酵生産プロセスでの有機化合物の収率を向上させることができる。また、金属塩を使用しないため、還元剤由来の金属が後段の発酵プロセスや発酵液精製プロセス等に混入せず、金属塩除去の負荷を低減することができる。
前記イオン化合物のアニオンは、−2価、+2価、+3価、及び+4価から選ばれるいずれかの酸化数を有する硫黄を1種以上含有するアニオンである。
ここで、硫黄の酸化数は、還元剤中の電子をある一定の方法で各原子に割り当てた時、硫黄原子がもつ荷電を表す値である。一定の方法は以下記載(a)〜(e)の通りであり、本手法を用いることで還元剤中に含まれる硫黄の酸化数は一義的に決定される。(a)イオン結合性化合物中の単原子イオンの酸化数はその荷電数に等しい。(b)単体中の原子の酸価数は0とする。(c)共有結合性化合物中では、共有電子対をその共有原子の電気陰性度の大きな原子の方にすべて割り当てた時、各原子に残る荷電数を酸化数とする。(d)化合物内に、同一元素が2つ以上存在する場合は、等分する。(e)水素の酸化数を+1、酸素の酸化数を−2として求める。
具体的に、酸化数が−2価の硫黄を含むアニオンとして、硫化物イオン等が挙げられる。また酸化数が+2価の硫黄を含むアニオンとして、チオ硫酸イオン等が挙げられる。また酸化数が+3価の硫黄を含むアニオンとして、次亜硫酸イオン等が挙げられる。また酸化数が+4価の硫黄を含むアニオンとして、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン等が挙げられる。
さらに具体的には、亜硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、次亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、硫化物イオンから選ばれる少なくとも1つのアニオンが好ましく、入手及び取扱いが容易な観点から、亜流酸イオン、次亜硫酸イオンがより好ましい。
これらのアニオンを含むイオン化合物を用いることで、糖液中のカルボニル化合物の含有量の低減が可能である。
本発明2で用いるイオン化合物は、上記のアニオンとアンモニウムイオンを含むイオン化合物であれば、特に限定はされず、具体的には、ジアンモニウム塩、モノアンモニウム塩等が挙げられる。
具体的なイオン化合物としては、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩、次亜硫酸アンモニウム等の次亜硫酸塩、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、硫化アンモニウム等の硫化物が挙げられるが、亜硫酸アンモニウム、次亜硫酸アンモニウムが、入手及び取扱いが容易の点で好ましい。
上記の還元剤は、本発明2の効果を妨げない限り、1種類を用いても、2種類以上の還元剤を用いてもよく、使用する比率も制限されない。
(還元処理条件)
第2−1の発明における還元処理の条件は、糖液中の糖類以外のカルボニル化合物の含有量が低減されれば特に限定されない。
糖液中に含まれる糖類もアルデヒド基等を有しており、これらが、前記カルボニル化合物と同様に本発明2の還元剤と反応する。すなわち糖の還元剤の反応生成物が生成しても、後述する有用化合物を発酵生産する工程や、微生物の培養工程において問題がない限りは、還元処理条件は限定されない。そのため糖類以外のカルボニル化合物の含有量が低減でき、かつグルコースやキシロースなどの糖類が本発明2の還元剤と反応しにくい、選択的な反応条件を選択することが好ましい。
第2−1の発明における還元処理の処理温度は特に限定されないが、通常20℃以上、100℃以下、好ましくは80℃以下である。還元処理を前記温度範囲内で行うことにより、還元剤や還元処理体の分解が抑制でき、糖類を還元剤と反応させることなく、発酵阻害成分である糖類以外のカルボニル化合物の含有量を低減することが可能となる。
第2−1の発明における還元処理で使用する還元剤の量は、糖液中の発酵阻害成分濃度、使用する還元剤の種類、反応温度、反応様式、糖液の処理量といった諸条件と発酵阻害成分の除去効率、糖と還元剤の反応抑制、未反応の還元剤量低減など所望する反応成績で決定されるものであり、特に限定されない。
通常、糖液中に含まれる、前記糖類以外のカルボニル化合物の含有量に対する還元剤のモル比で、0.05以上、好ましくは、0.2以上であり、通常2.0以下であり、好ましくは1.5以下である。
第2−1の発明における還元処理の処理時間は、糖液中の前記カルボニル化合物の含有量及び濃度、使用する還元剤の種類、反応温度、反応様式、糖液の処理量といった諸条件と発酵阻害成分の除去効率、糖と還元剤の反応抑制など所望する反応成績で決定されるものであり、特に限定されるものではない。
反応時間が短いとカルボニル化合物の含有量の低減が十分に進行しない可能性があり、反応時間が長いと糖と還元剤の反応生成物量が増大するなどの問題がある。
第2−1の発明における還元処理には、溶媒を使用することができ、その種類は特に限定されるものではないが、通常は水が使用される。有機溶媒を共溶媒として使用してもよいが、水相に有機溶媒が混入することで発酵阻害を引き起こす可能性があるため、発酵生産や微生物の培養工程に供する際に有機溶媒を分離する工程が必要となるため、糖液は水溶液のまま還元処理することが望ましい。
<第2−2の発明:還元処理糖液>
前記第2−1の発明における還元処理によって、糖液に含有される糖類以外のカルボニル化合物の含有量が、低減されるため、得られる糖液中の前記カルボニル化合物の濃度は、通常、最初の糖液中の濃度より低い。なお、上記の還元処理反応に供した後の糖液を、以下「還元処理糖液」ということがある。
前記のカルボニル化合物を、本発明2の還元剤と作用させることにより、後述する発酵プロセスにおいて、微生物の増殖や有用化合物の発酵生産の効率を向上させることができる。
第2−2の発明の還元処理糖液は、前記カルボニル化合物と還元剤の反応生成物を含んでいてもよく、具体的には、前記カルボニル化合物がアルデヒド化合物である場合、対応するα−ヒドロキシスルホン酸塩等を含んでいてもよい。
また、第2−2の発明の還元処理糖液は、必要に応じて、適宜、イオン交換樹脂、活性炭、合成樹脂、水素添加等の手法でさらに処理しても構わない。
<第2−3の発明:有機化合物の製造方法>
前記第2−2の発明の還元処理糖液は、有機物生産能力を有する微生物を作用させることにより、各種の有機化合物を製造することができる。
(有機物生産能力を有する微生物)
第2−3の発明で用いる微生物は、有機物生産能力を有する微生物であれば、特に限定はされない。
なお第2−3の発明における「有機物生産能力を有する微生物」とは、該微生物を培地中で培養したときに、該培地中に有機物を生成蓄積することができる微生物をいう。
(有機化合物)
微生物が生産する有機化合物としては、微生物が培地中に生成蓄積することができる有機化合物であれば限定されない。具体的には、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(有機化合物)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
(微生物)
第2−3の発明で用いる微生物は、有機物生産能力を有する微生物であれば特に限定されない。具体的には、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(微生物)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
(有機物生産工程)
第2−3の発明は、反応液中で、本発明2−2の還元処理糖液を含有する有機原料に、有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る工程(以下、有機物生産工程、ということがある)を含むものである。中でも、還元処理糖液を含有する有機原料に前記微生物を作用させることにより有機化合物を生成させ、これを回収することが好ましい。製造し得る有機化合物の種類および好ましい有機化合物の例は上述した通りである。
第2−3の発明で前記微生物を用いるに当たっては、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直接用いても良いが、必要に応じて上記微生物を予め液体培地で培養したものを用いてもよい。すなわち、前記微生物を予め増殖させておいた上で、前記微生物に有機化合物を生産させてもよい。後述のように種培養や本培養を行なうことで、前記微生物を予め増殖させることができるが、このときに使用する有機原料としては、還元処理糖液を用いてもよいし、その他の有機原料を用いてもよい。
なお、種培養または本培養した微生物を反応液中で増殖させながら、還元処理糖液を含有する有機原料と反応させることによって有機化合物を製造してもよいし、予め種培養または本培養を行なうことで増殖させた菌体を、還元処理糖液を含有する有機原料を含む反応液中で有機原料と反応させることによって有機化合物を製造してもよい。
また、第2−3の発明において用いられる微生物としては、上記微生物のほか、微生物の処理物を使用することもできる。微生物の処理物としては、例えば、微生物の菌体をアクリルアミド、カラギーナン等で固定化した固定化菌体、菌体を破砕した破砕物、その遠心分離上清、またはその上清を硫安処理等で部分精製した画分等が挙げられる。
第2−3の発明では還元処理糖液を含有する有機原料を使用するが、必要に応じて、その他の有機原料を添加してもよい。有機化合物製造方法において使用する還元処理糖液以外の有機原料としては、前記微生物が資化して有機化合物を生成させうる炭素源であれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプンまたはセルロース等の炭水化物;グリセロール、マンニトール、キシリトールまたはリビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、スクロースまたはフルクトースが好ましく、特にグルコースまたはスクロースが好ましい。
また、前記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液または糖蜜なども使用され、具体的にはサトウキビ、甜菜またはサトウカエデ等の植物から搾取した糖液であるものが好ましい。
これらの有機原料は、単独で添加してもよいし、組み合わせて添加してもよい。
前記有機原料の使用濃度は特に限定されないが、有機化合物の生成を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利であり、反応液に対して、通常50g/L以上、好ましくは100g/L以上であり、一方、通常300g/L以下、好ましくは200g/L以下である。また、反応の進行に伴う前記有機原料の減少にあわせ、有機原料の追加添加を行ってもよい。
(反応液)
第2−3の発明で用いる反応液は特に限定されず、例えば、微生物を培養するための培地であってもよいし、リン酸緩衝液等の緩衝液であってもよいが、反応液は窒素源や無機塩などを含む水溶液であることが好ましい。ここで、窒素源としては、第2−3の発明で用いる微生物が資化して有機化合物を生成させうる窒素源であれば特に限定されない。具体的には、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(水性媒体)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
また、前記反応液は、例えば上述した有機原料、窒素源、無機塩などのほかに、炭酸イオン、重炭酸イオンおよび二酸化炭素ガス(炭酸ガス)から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。具体的には、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(水性媒体)と同一のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。また、炭酸イオンまたは重炭酸イオンの濃度、反応液のpHについても前述の<第1−3の発明>の項で説明した(水性媒体)と同様の範囲が好ましい。なお、ここでは前述の(水性媒体)の項で説明した事項は「水性媒体」を「反応液」と読み替えて適用できる。
(有機物生産工程の反応条件)
第2−3の発明で用いる微生物の菌体量、反応温度、酸素供給条件、および反応様式は、特に限定されないが、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(有機物生産工程の反応条件)と同様の範囲が好ましい。
(その他の工程)
第2−3の発明は、上記の有機物生産工程により有機化合物が生成し、反応液中に蓄積させることができる。よって、前述の<第1−3の発明>の項で説明した(その他の工程)と同様の工程を更に含んでいてもよい。
<第2−4の発明:微生物の培養方法>
第2−4の発明の培養方法は、本発明2−2の還元処理糖液を含有する有機原料を炭素源として用いて、有機物生産能力を有する微生物を培養させる。本発明2−4の培養方法によって得られた微生物は、その後、有機原料に作用させることによって有機化合物を生成させ、これを回収することができる。このときの有機原料としては、前記還元処理糖液を用いてもよいし、還元処理糖液中にその他の有機原料を含んでいてもよい。製造し得る有機化合物の種類および好ましい有機化合物の例は上述した通りである。
第2−4の発明の培養方法では、還元処理糖液を含む寒天培地等の固体培地で培養してもよいし、還元処理糖液を含む液体培地で培養してもよい。前述の<第1−4の発明>の項で説明した(種培養)の方法で実施することができ、同様の範囲が好ましい。
(本培養)
本培養は、後述する有機化合物生産反応に供する前記微生物菌体を調製するために行なうものであり、主として菌体量を増やすことを目的とする。上述の種培養を行う場合は、種培養により得られた菌体を用いて本培養を行う。
本培養に用いる培地は、前述の<第1−4の発明>の項で説明した(本培養)と同様の範囲が好ましい。
また、本培養においては、炭素源として還元処理糖液を含有する有機原料を使用する。必要に応じて、その他の有機原料を添加してもよい。本培養において使用する還元処理糖液以外の有機原料およびその濃度は、前述の<第1−4の発明>の項で説明した(本培養)と同一のものが挙げられ、これと同様の範囲が好ましい。
また、本培養の培養時間、酸素供給条件、菌体の調製方法、有機化合物生産反応への適用は、特に限定されないが、前述の<第1−4の発明>の項で説明した(本培養)と同様の範囲が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<分析条件>
(液相クロマトグラフ(LC)分析)
以下の製造例、実施例及び比較例の糖液中の各含有成分の存在量は、液相クロマトグラフ(LC)分析により、絶対検量線法を用いて求めた。分析条件は以下の通りである。
(LC測定条件1:糖、ギ酸、グリコールアルデヒド(GAL)、エタノール、コハク酸の分析条件)
カラム :ULTRON PS−80H 8.0ID×300mm(信和化工社製)
カラム温度 :40℃、または60℃
溶離液 :0.11質量%過塩素酸溶液 1.0mL/分
検出方法 :UV(210nm)、またはRI
注入量 :10μL
(LC測定条件2:フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラールの分析条件)
カラム :Develosil C30 長さ100mm×4.6mm、粒子径3μm(野村化学社製)
溶離液 :A液 0.054質量%過塩素酸水溶液
B液 アセトニトリル
A液/B液=95/5(体積/体積)からB液100体積%、20分間でグラジエント分析
流速 :1.0mL/分
検出方法 :UV(210nm)
注入量 :5μL
(LC測定条件3:培養上清に含まれる糖の分析条件)
カラム:COSMOSIL Sugar―D Packed Column 4.6mml.D.×250mm (ナカライテスク社製)
カラム温度:30℃
溶離液:75vol%アセトニトリル 1.0mL/分
検出方法:RI
注入量:10μL
<実施例1−1〜1−10、比較例1−1〜1−5>
(製造例1−1)
非可食原料として、バガスを使用した。まずバガスに硫酸及び水を加えて混合し、バガス混合物を得た。硫酸の添加量は、バガスの乾燥質量に対し2質量%であり、水の添加量は、前記バガス混合物の合計質量に対する含水率が60質量%となるように調製した。次にドラムミキサー(杉山重工株式会社製)にて前記バガス混合物を20分間混合、撹拌の後に取り出し、希硫酸処理混合物を得た。前記希硫酸処理混合物を加水分解装置(株式会社ヤスジマ製)にて、蒸気を投入し、180℃で15分間蒸煮処理した。得られた蒸煮処理物の含水率は64.6質量%であった。前記蒸煮処理物を乾燥質量200g/Lとなるように糖化装置に仕込み、10N−NaOH水溶液を添加し、pHを6.0に調整した。そこに糖化酵素として15FPU分のCTec2(novozyme社製)を添加し、温度50℃、攪拌速度200rpmにて72時間攪拌しながら、加水分解を行った。その後、遠心分離(10000g、10分間)を行い、未分解セルロース及びリグニンを分離除去し、バガス糖化液を作成した。得られたバガス糖化液の組成を表1に示した。
前記バガス糖化液を、遠心分離(8000×g、10分間)を行ない、前記バガス糖化液中に含まれる固形分を除き、続いて保留粒子径1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液1を作製した。
Figure 0006443442
(製造例1−2)
48質量%NaOH水溶液を用いて製造例1−1で得た濾液1のpHを8に調整し、さらに121℃で20分間加熱して糖化液1−1を作製した。
前述のLC測定条件1および2にて前記糖化液1−1のLC分析を行ったところ、グルコース7.4質量%、フルクトース0.7質量%、キシロース3.6質量%、フルフラール524ppm、ヒドロキシメチルフルフラール443ppmであった。
(実施例1−1)
製造例1−2と同様にして加熱を行って調製した糖化液1−1に、前記糖化液1−1が含有するグルコース、フルクトース、キシロースの合計質量に対して0.6質量%の亜硫酸ナトリウムを40℃で加えた。
引き続き糖化液1−1を40℃のまま1時間攪拌し、処理糖液を得た(以下これを、「処理糖液1−1」という。)。前記処理糖液1−1を、前記糖化液1−1と同条件でLC分析を実施し、各成分の存在量を確認したところ、グルコース7.4質量%、フルクトース0.7質量%、キシロース3.6質量%、フルフラール513ppm、ヒドロキシメチルフルフラール426ppmであった。測定結果を表2に示した。
(実施例1−2)
用いる還元剤を亜硫酸水素ナトリウムに変更した以外は、実施例1−1と同様に糖化液1−1を処理し、処理糖液1−2を得た。この処理糖液1−2を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.5質量%、フルクトース0.7質量%、キシロース3.4質量%、フルフラール474ppm、ヒドロキシメチルフルフラール431ppmであった。測定結果を表2に示した。
(実施例1−3)
使用した亜硫酸水素ナトリウムの量をグルコース、フルクトース、キシロースの合計質量に対して0.4質量%に変更した以外は、実施例1−2と同様に糖化液1−1を処理し、処理糖液1−3を得た。この処理糖液1−3を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.8質量%、フルクトース0.6質量%、キシロース3.3質量%、フルフラール486ppm、ヒドロキシメチルフルフラール434ppmであった。測定結果を表2に示した。
(実施例1−4)
還元剤処理時間を2時間に変更した以外は、実施例1−3と同様に糖化液1−1を処理し、処理糖液1−4を得た。この処理糖液1−4を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.6質量%、フルクトース0.7質量%、キシロース3.4質量%、フルフラール533ppm、ヒドロキシメチルフルフラール457ppmであった。測定結果を表2に示した。
(実施例1−5)
用いる還元剤を50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液とし、50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液の量をグルコース、フルクトース、キシロースの合計質量に対して1.1質量%に変更した以外、実施例1−1と同様に糖化液1−1を処理し、処理糖液1−5を得た。この処理糖液1−5を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.6質量%、フルクトース0.7質量%、キシロース3.4質量%、フルフラール489ppm、ヒドロキシメチルフルフラール445ppmであった。結果を表2に示す。
(比較例1−1)
製造例1−1で調製した濾液1に、前記濾液1が含有するグルコース、フルクトース及びキシロースの合計質量に対して0.6質量%の亜硫酸ナトリウムを40℃で加え、40℃のまま1時間攪拌した後、25℃まで冷却した。その後、48質量%NaOH水溶液を用いてpHを8に調整し、121℃で20分間加熱して処理糖液1−6を作製した。この処理糖液1−6を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.4質量%、フルクトース0.6質量%、キシロース3.6質量%、フルフラール487ppm、ヒドロキシメチルフルフラール441ppmであった。測定結果を表2に示す。
(比較例1−2)
使用した還元剤を亜硫酸水素ナトリウムに変更した以外は、比較例1−1と同様に前記濾液1を処理した後、48質量%NaOH水溶液を用いてpHを8に調整し、121℃で20分間加熱して処理糖液1−7を作製した。この処理糖液1−7を、実施例1−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.12質量%、フルクトース0.75質量%、キシロース3.31質量%、フルフラール482ppm、ヒドロキシメチルフルフラール445ppmであった。測定結果を表2に示す。
Figure 0006443442
(製造例1−3)
<キシロースイソメラーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子導入株の作製>
本発明の第1−3の発明に用いる微生物として、コハク酸を製造する微生物を製造し用いた。
コハク酸を製造する微生物としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株を改変して得られたブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDHを用いた。
この微生物は、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株を、ラクテートデヒドロキナーゼ破壊株(ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH)とした後、ピルビン酸カルボキシナーゼ増強株(ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH)とし、さらにキシロースイソメラーゼ遺伝子及びキシルロキナーゼ遺伝子を導入した株である。
このうちブレビバクテリウム・フラバムMJ233株から、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株を製造する方法については、日本国特開2015−29471号公報に記載の方法に基づき行った。
以下、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDHから、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDHを製造する方法を具体的に示す。
(A)大腸菌ゲノムDNAの抽出
大腸菌(Escherichia coli)JM109株をTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L]10mLで対数増殖期後期まで培養し、集菌した。得られた菌体を10mg/mLの濃度のリゾチームを含む緩衝液[20mM Tris−HCl pH8.0、10mM NaCl、1mM EDTA・2Na]0.15mLに懸濁した。次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5質量%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロホルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取した。酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合し、遠心分離(15000×g、2分間)により回収した沈殿物を70体積%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAにTE緩衝液[10mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA・2Na]5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)キシロースイソメラーゼ−キシルロキナーゼ遺伝子オペロンのクローニング
大腸菌JM109株のxylABオペロンの取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大腸菌K12−MG1655株の該オペロン周辺の配列(GenBank Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA:5’−AAAGGATCCATCACCCGCGGCATTACCTG−3’(配列番号1)および5’−TTTGGGCCCGTCGACTGAGATATATAGATGTGAATTATCC−3’(配列番号2)を用いたPCRによって行った。
鋳型DNA 1μL、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM 各々プライマー、1mM MgSO、0.25μM dNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で3分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は2分、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.9質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.0kbの断片を検出した。得られたxylABオペロンのDNA断片はChargeSwitch PCR Clean−Up Kit(Invitrogen)を用いて精製後、制限酵素BamHIおよびApaIで切断した。これによって生じた約2.9kbのDNA断片は0.9質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することで検出し、Zymoclean Gel DNA Recovery Kit(Zymo Research)を用いてゲルから回収した。このDNA断片を、pTZ4を制限酵素BamHIおよびApaIで切断して調製したDNAと混合し、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いて連結した。得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換し、50μg/mLカナマシンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で生育したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](50μg/mLカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素BamHIおよびApaIにより切断した結果、約2.9kbの挿入断片が確認され、これをpXylAB1と命名した。
(C)キシロースイソメラーゼ−キシルロキナーゼ遺伝子オペロン導入用プラスミドの構築
大腸菌由来XylABオペロンをブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株(日本国特開2015−29471号公報)の染色体上ldh遺伝子欠損部位に導入するため、ldh遺伝子のクローニングを行った。ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株のldh遺伝子の取得は、上記製造例1−3の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の該遺伝子周辺の配列(GenBank Accession No.BA000036)を基に設計した合成DNA:5’−CGAGGGGTCGAGGATTCTGGGGAGGATCGAGTGGATTC−3’(配列番号3)および5’−TCTAGAGTCGAGGATGGTGA CCATGATGCAGGATGGAG−3’(配列番号4)を用いたPCRによって行った。
鋳型DNA 1μL、Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM 各々プライマー、1mM MgSO、0.25μM dNTPsを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で2分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は2分、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.9質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2.1kbの断片を検出した。得られたldh遺伝子のDNA断片はChargeSwitch PCR Clean−Up Kit(Invitrogen)を用いて精製し、In−Fusion Cloning Kit(タカラバイオ)を用いてpKMB1(日本国特開2005−95169号公報)のXbaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を25μg/mLカナマイシンおよび25μg/mL X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](25μg/mLカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAを制限酵素XhoIおよびBglIにより切断した結果、約2.2kbの挿入断片が確認され、これをpKB−LDH2と命名した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来で構成的に高発現するTZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンの取得は、プラスミドpXylAB1を鋳型とし、合成DNA:5’−GTACCTGCAGGATGAGCGGGCT−3’(配列番号5)および5’−CACCCGGTCAGGCAGGGGATAAC−3’(配列番号6)に記載の合成DNAを用いたPCRによって行った。
鋳型DNA 1μL、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(Invitrogen) 0.5μL、1倍濃度添付バッファー、0.4μM 各々プライマーを混合し、全量を50μLとした。反応温度条件は、DNAサーマルサイクラーPTC−200(MJ Research)を用い、94℃で15秒、55℃で20秒、72℃で45秒からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、0.7質量%アガロースゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.2kbの断片を検出した。得られたTZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンのDNA断片はT4 Polynucleotide Kinase(タカラバイオ)により5’末端をリン酸化した後、DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ)を用いてpKB−LDH2のEcoRV部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌DH5α株を形質転換した。このようにして得られた組換え大腸菌を25μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育したクローンをTB培地[Terrific Broth 47g/L、Glycerol 5g/L](25μg/mLカナマイシンを含む)により液体培養した後、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを調製した。こうして得られたプラスミドDNAの挿入断片の塩基配列はBigDye Terminator v3 Cycle Sequencing Kitおよび塩基配列解読装置377XL(Applied Biosystems)を用いて決定した。その結果得られた塩基配列(XylABオペロン)は、大腸菌K12−MG1655株のゲノム配列と完全に一致し、XylABオペロンに変異が入っていないことを確認し、これをpXylAB3と命名した。
(D)キシロースイソメラーゼ−キシルロキナーゼ遺伝子オペロン導入株の作製
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pXylAB3を用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,1970,53,159)により形質転換した大腸菌JM110株から再調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC−4/ΔLDH株の形質転換は電気パルス法(Res. Microbiol.,1993,144,p181-5)によって行い、得られた形質転換体を25μg/mLカナマイシンを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、および寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pXylAB3がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのldh遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組換えを起こした結果、ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組換え株を25μg/mLカナマイシンを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10質量%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組換えによりsacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株を数十個得た。
この様にして得られた株の中には、そのldh遺伝子欠損部位にpXylAB3に由来するTZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたものと親株と同じ配列に戻ったものが含まれる。TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたか否かの確認は、LBG培地にて培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンの検出を行うことによって容易に確認できる。TZ4プロモーターおよびXylABオペロンをPCR増幅するためのプライマー:5’−AATCAGGAAGTGGGATCGAAAATG−3’(配列番号7)および5’−CCGCCAACTAGACACCAAAGATTC−3’(配列番号8)を用いて分析すると、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入されたクローンでは4,196bpのDNA断片を認めるはずである。上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、TZ4プロモーターと連結されたXylABオペロンが挿入された株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDHと命名した。
(実施例1−6)
<処理糖液の発酵生産評価>
(A)種培養
以下の組成の培地[尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・5水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、蒸留水1,000mLに溶解](以下、培地(A)という)1,000mLを、121℃、20分間で加熱し、室温まで冷やした後、200mLの三角フラスコに15mL入れ、あらかじめ滅菌した50質量%グルコース水溶液を600μL添加した。製造例1−3の(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株を接種して30℃で5.2時間振とう培養した。
(B)本培養
500mLの三角フラスコに100mLのA培地を入れ、あらかじめ滅菌した50質量%グルコース水溶液を4mL添加した後、上記培地(A)の種培養で得られた培養液を、O.D.(660nm)が0.02となるように接種し、30℃で、22.4時間振とう培養した。
(C)コハク酸生産反応
上記(B)の本培養で得られた培養液を遠心分離(5000×g、7分間)により集菌し、菌体懸濁液[硫酸マグネシウム・7水和物:320mg、硫酸第一鉄・7水和物:13mg、硫酸マンガン・5水和物:13mg、リン酸(85質量%):410mg、水酸化カリウム(48質量%):540mg、蒸留水1000mLに溶解]にO.D.(660nm)が60になるように懸濁して菌体溶液を調製した。続いて、実施例1−1で作製した処理糖液1−1:56g、蒸留水:9g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作成した。基質溶液に炭酸水素アンモニウム:960mg、菌体溶液を加え、嫌気的雰囲気下において40℃で反応させた。なお、中和剤[アンモニア水(28質量%):97g、炭酸水素アンモニウム:32g、蒸留水250mLに溶解]を加えることでpHは7.3に維持した。その結果、前述のLC測定条件1にて培養上清のLC分析を行ったところ、19.1時間後のコハク酸濃度は36.9g/L、グルコース濃度は0.0g/L、キシロース濃度は15.2g/Lであり、24.4時間後のコハク酸濃度は39.1g/L、グルコース濃度は0.0g/L、キシロース濃度は13.3g/Lであった。結果を表3に示す。
(比較例1−3)
コハク酸生産反応において、製造例1−2で作製した糖化液1−1:56g、蒸留水:9g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、19.1時間後のコハク酸濃度は27.2g/L、グルコース濃度は16.0g/L、キシロース濃度は15.9g/Lであり、24.4時間後のコハク酸濃度は30.4g/L、グルコース濃度は11.6g/L、キシロース濃度は14.5g/Lであった。
(比較例1−4)
コハク酸生産反応において、比較例1−1で作製した処理糖液1−6:56g、蒸留水:9g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、19.1時間後のコハク酸濃度は29.1g/L、グルコース濃度は13.8g/L、キシロース濃度は15.9g/Lであり、24.4時間後のコハク酸濃度は32.6g/L、グルコース濃度は9.3g/L、キシロース濃度は14.8g/Lであった。結果を表3に示す。
Figure 0006443442
表3より、実施例1−6の糖液では、19.1時間経過時点で比較例1−3に対してコハク酸濃度が36%、比較例1−4に対してコハク酸濃度が27%それぞれ向上した。また24.4時間の時点で比較例1−3に対してコハク酸濃度が29%、比較例1−4に対してコハク酸濃度が20%それぞれ向上した。
以上の結果より、糖液を加熱した後に還元剤を作用させることで発酵阻害が低減し、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。これは還元剤を作用させた後に加熱した場合には得られない効果である。
(実施例1−7)
コハク酸生産反応において、実施例1−2で作製した処理糖液1−2:56g、蒸留水:9g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、18.9時間後のコハク酸濃度は32.0g/L、グルコース濃度は8.3g/L、キシロース濃度は14.9g/Lであり、25.1時間後のコハク酸濃度は36.1g/L、グルコース濃度は2.2g/L、キシロース濃度は13.6g/Lであった。結果を表4に示した。
(比較例1−5)
コハク酸生産反応において、比較例1−2で作製した処理糖液1−7:58g、蒸留水:7g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、18.9時間後のコハク酸濃度は23.7g/L、グルコース濃度は24.6g/L、キシロース濃度は15.0g/Lであり、25.1時間後のコハク酸濃度は26.0g/L、グルコース濃度は20.9g/L、キシロース濃度は13.1g/Lであった。結果を表4に示した。
Figure 0006443442
表4より、実施例1−7では、18.9時間経過時点で比較例1−3に対してコハク酸濃度が18%、比較例1−5に対してコハク酸濃度が35%それぞれ向上した。また25.1時間の時点で比較例1−3に対してコハク酸濃度が19%、比較例1−5に対してコハク酸濃度が39%それぞれ向上した。
以上の結果より、糖液を加熱した後に還元剤を作用させることで発酵阻害が低減し、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。これは還元剤を作用させた後に加熱した場合には得られない効果である。
(実施例1−8)
コハク酸生産反応において、実施例1−3で作製した処理糖液1−3:56g、蒸留水:10g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、18.3時間後のコハク酸濃度は32.2g/L、グルコース濃度は7.1g/L、キシロース濃度は16.1g/Lであり、25.6時間後のコハク酸濃度は37.3g/L、グルコース濃度は0.1g/L、キシロース濃度は14.1g/Lであった。
(実施例1−9)
コハク酸生産反応において、実施例1−4で作製した処理糖液1−4:56g、蒸留水:9g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、18.3時間後のコハク酸濃度は30.9g/L、グルコース濃度は9.1g/L、キシロース濃度は16.5g/Lであり、25.6時間後のコハク酸濃度は36.2g/L、グルコース濃度は2.1g/L、キシロース濃度は14.7g/Lであった。
(実施例1−10)
コハク酸生産反応において、実施例1−5で作製した処理糖液1−5:56g、蒸留水:10g、菌体懸濁液:1mL、D−ビオチン水溶液(100mg/L):133mg、塩酸チアミン水溶液(100mg/L):133mgを混合して、基質溶液を作製したこと以外は、実施例1−6と同様に行った。その結果、実施例1−6と同条件でLC分析したところ、18.3時間後のコハク酸濃度は36.6g/L、グルコース濃度は0.0g/L、キシロース濃度は15.4g/Lであり、25.6時間後のコハク酸濃度は39.4g/L、グルコース濃度は0.0g/L、キシロース濃度は12.8g/Lであった。
実施例1−8〜1−10及び比較例1−3の測定結果を表5に示す。
Figure 0006443442
表5より、実施例1−8の糖液では18.3時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が18%向上した。実施例1−9の糖液では18.3時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が14%向上した。実施例1−10の糖液では18.3時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が35%向上した。また実施例1−8の糖液では25.6時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が23%向上した。実施例1−9の糖液では25.6時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が19%向上した。実施例1−10の糖液では25.6時間時点で、比較例1−3に対してコハク酸濃度が30%向上した。
<実施例1−11〜1−14、比較例1−6〜1−10>
(製造例1−4)
超純水365mLに、グルコース135.61g、フルフラール2.70g、ギ酸0.18gを溶解させ、糖液を作成した。以下、これを「糖液A」とする。
前記糖液Aを、前述のLC測定条件1および2にてLC分析を行ったところ、グルコース26.4質量%、フルフラール6042ppmだった。結果を表6に示す。
(製造例1−5)
製造例1−4で調製した糖液A 44.08gを100mL容のメディウム瓶に入れ、48質量%NaOH水溶液を用いてpHを8に調整し、121℃、20分で加熱滅菌処理を行った。これを「加熱糖液B」という。製造例1−4と同様にして加熱糖液BのLC分析を実施したところ、グルコース24.6質量%、フルクトース0.9質量%、フルフラール2898ppm、pHは2.81であった。結果を表6に示す。
(実施例1−11)
製造例1−4で調製した糖液Aについて、製造例1−5と同様にして加熱滅菌処理を行って加熱糖液Bを得た。室温まで冷却した後、加熱前の糖液Aに含まれるフルフラールに対して1当量の還元剤が作用するように、加熱糖液B 44.01gに対して、49質量%亜硫酸アンモニウム水溶液0.5856gを加え、40℃で1時間撹拌し、処理糖液1−8を得た。前述のLC測定条件1および2にて前記処理糖液1−8のLC分析を実施したところ、グルコース23.6質量%、フルクトース1.9質量%、フルフラール1652ppmであり、pHは3.40であった。結果を表6に示す。
(実施例1−12)
製造例1−4で調製した糖液Aについて、製造例1−5と同様にして加熱滅菌処理を行って加熱糖液Bを得た。室温まで冷却した後、加熱前の糖液Aに含まれるフルフラールに対して0.5当量の還元剤が作用するように、加熱糖液B 44.03gに対して、亜硫酸ナトリウム0.1558gを加え、40℃で1時間撹拌し、処理糖液1−9を得た。実施例1−11と同様にして前記処理糖液1−9のLC分析を実施したところ、グルコース24.4質量%、フルクトース1.4質量%、フルフラール2898ppmであり、pHは2.96であった。結果を表6に示す。
(比較例1−6)
製造例1−4で調製した糖液Aを100mL容のメディウム瓶に入れ、糖液Aに含まれるフルフラールに対して1当量の還元剤が作用するように、糖液A 43.97gに対して、49質量%亜硫酸アンモニウム水溶液0.5858gを加え、40℃で1時間撹拌し、還元処理を実施した。その後、48質量%NaOH水溶液を用いてpHを8に調整し、121℃、20分で加熱滅菌処理を行った。室温まで冷却し処理糖液1−10を得た。実施例1−11と同様にして前記処理糖液1−10のLC分析を実施したところ、グルコース24.8質量%、フルクトース1.1質量%、フルフラール2845ppmであり、pHは7.80であった。結果を表6に示す。
(比較例1−7)
製造例1−4で調製した糖液Aを100mL容のメディウム瓶に入れ、糖液Aに含まれるフルフラールに対して0.5当量の還元剤が作用するように、糖液A 44.02gに対して、亜硫酸ナトリウム0.1562gを加え、40℃で1時間撹拌し、還元処理を実施した。その後、48質量%NaOH水溶液を用いてpHを8に調整し、121℃、20分で加熱滅菌処理を行った。室温まで冷却し処理糖液1−11を得た。実施例1−11と同様にして処理糖液1−11のLC分析を実施したところ、グルコース19.2質量%、フルクトース6.2質量%、フルフラール3015ppmであり、pHは7.80であった。結果を表6に示す。
Figure 0006443442
(実施例1−13)
<処理糖液のエタノール発酵生産評価>
(A)種培養
酵母エキス60gを蒸留水1000mLに溶解し、121℃、20分で加熱滅菌し室温まで冷やした後(以下、培地(B)という)、200mL容の三角フラスコに10mL入れ、あらかじめ滅菌した42.5質量%グルコース水溶液と蒸留水をそれぞれ12mLと8mL加えた。ここにサッカロミセス・セレビシエ PE−2株(NCYC3233)を接種し、30℃で23.4時間振とう培養した。
(B)本培養(エタノール発酵生産)
実施例1−11で調製した処理糖液1−8を200mL容フラスコに20mL入れ、上記培地(B)を10mL添加した。ここに1mol/L硫酸を添加してpHを4.5に調整し、本培養培地を作製した。上記(A)の種培養で得られた培養液を遠心分離(1000×g、5分間)により集菌し、菌体湿重量で0.1gの菌体を本培養培地に接種、30℃で振とう培養した。その結果、培養20時間目のOD(660nm)は44.8であり、前述のLC測定条件1および3にて培養上清のLC分析を行ったところ、エタノール濃度は74.5g/Lであり、グルコース濃度は1.2g/L、フルクトース濃度は2.3g/Lであった。結果を表7に示す。
(比較例1−8)
エタノール発酵において、製造例1−5で調製した加熱糖液Bを使用したこと以外は実施例1−13と同様に行った。その結果、培養20時間目のOD(660nm)は19.7であり、実施例1−13と同様にしてLC分析を行ったところ、エタノール濃度は27.8g/Lであり、グルコース濃度は123.6g/L、フルクトース濃度は4.4g/Lであった。結果を表7および表8に示す。
(比較例1−9)
エタノール発酵において、比較例1−6で調製した処理糖液1−10を使用したこと以外は実施例1−13と同様に行った。その結果、培養20時間目のOD(660nm)は32.1であり、実施例1−13と同様にしてLC分析を行ったところ、エタノール濃度は55.3g/Lであり、グルコース濃度は58.7g/L、フルクトース濃度は4.1g/Lであった。結果を表7に示す。
Figure 0006443442
表7より、実施例1−13では20時間経過時点で生育は比較例1−8に対して127%、比較例1−9に対しては40%、それぞれ向上した。また、エタノール濃度は比較例1−8に対して168%、比較例1−9に対しては35%、それぞれ向上した。以上の結果より、糖液を加熱した後に還元剤を作用させることで生育阻害や発酵阻害が低減し、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。これは還元剤を作用させた後に加熱した場合には得られない効果である。
(実施例1−14)
エタノール発酵において、実施例1−12で調製した処理糖液1−9を使用したこと以外は実施例1−13と同様に行った。その結果、培養20時間目のOD(660nm)は39.6、エタノール濃度は68.2g/Lであり、グルコース濃度は22.5g/L、フルクトース濃度は3.9g/Lであった。結果を表8に示す。
(比較例1−10)
エタノール発酵において、比較例1−7で調製した処理糖液1−11を使用したこと以外は実施例1−13と同様に行った。その結果、培養20時間目のOD(660nm)は26.7、エタノール濃度は52.5g/Lであり、グルコース濃度は43.7g/L、フルクトース濃度は23.3g/Lであった。結果を表8に示す。
Figure 0006443442
表8より、実施例1−14では20時間経過時点で生育は比較例1−8に対して101%、比較例1−10に対しては48%、それぞれ向上した。また、エタノール濃度は比較例1−8に対して145%、比較例1−10に対しては30%、それぞれ向上した。以上の結果より、糖液を加熱した後に還元剤を作用させることで生育阻害や発酵阻害が低減し、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。これは還元剤を作用させた後に加熱した場合には得られない効果である。
以上の結果より、糖液を加熱したのちに還元剤を作用させることで発酵阻害が低減し、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。

本発明の還元処理を実施するに際し、FRLを含有するモデル液を用いた場合、25〜60℃の温度条件においてFRL量を低減することができ、該処理糖液を使用することで、有機化合物の生産速度が向上することが明らかとなった。一方、バガス等を用いた実際の糖化液では、現在測定しているFRLやHMF以外にグリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の水溶性アルデヒドの含有量が高いことが多く、これらがFRLやHMFよりも優先的に還元剤と反応し低減することで、糖化液を用いた場合にはFRLやHMFの低減幅以上の発酵成績回復が見られていると考えられる。
前記カルボニル化合物等の発酵阻害物質は、還元剤と反応付加物を形成することで糖液から除去されると考えられるが、これらの反応付加物は、高温条件下で不安定であり、糖液の滅菌処理を行う際の加熱条件で分解するため、還元処理工程の後に加熱処理を行った場合に比べ、加熱処理工程を還元処理工程の前に行うことが有効であることがわかった。
本願発明の製造方法により、滅菌状態を維持しつつ、前記カルボニル化合物等の発酵阻害物質を除去することができるため、糖液、好ましくは非可食由来のような前記カルボニル化合物等の発酵阻害物質を多く含む糖液からでも、有機化合物を効率よく製造することが可能になるものと考えられる。
<実施例2−1〜2−16、比較例2−1>
(製造例2−1)
超純水453mLに、グルコース39.98g、キシロース5.02g、フルフラール0.51g、グリコールアルデヒドダイマー1.50g、ギ酸0.21gを溶解させ、糖液を作製した。以下これを「糖液2−1」とする。
前記糖液2−1を、前述のLC測定条件1および2でLC分析を行ったところ、グルコース7.96質量%、キシロース1.01質量%、グリコールアルデヒドダイマー3120ppm、フルフラール822ppm、ギ酸400ppmであり、pHは2.79だった。
(実施例2−1)
製造例2−1で調製した糖液2−1、60.04gに対して、糖類以外のカルボニル成分に対して0.08当量の還元剤が作用するように、50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液0.079gを40℃で加えた。40℃のまま30分間攪拌し、還元処理糖液を得た(以下これを、「処理糖液2−1」という。)。処理糖液2−1を、前記糖液2−1と同条件でLC分析を実施し、各成分の存在量を確認したところ、グルコース7.98質量%、キシロース1.01質量%、グリコールアルデヒドダイマー2758ppm、フルフラール818ppm、ギ酸416ppmであり、pHは3.55だった。結果を表9に示す。
(実施例2−2)
使用した50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液が、糖類以外のカルボニル成分に対して0.23当量の還元剤が作用するように変更した以外は、実施例2−1と同様の手法で還元処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−2」)を得た。この処理糖液2−2を、実施例2−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.94質量%、キシロース1.01質量%、グリコールアルデヒドダイマー2057ppm、フルフラール808ppm、ギ酸395ppmであり、pHは6.49だった。結果を表9に示す。
(実施例2−3)
使用した50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液が、糖類以外のカルボニル成分に対して0.53当量の還元剤が作用するように変更した以外は、実施例2−1と同様の手法で還元処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−3」)を得た。この処理糖液2−3を、実施例2−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.94質量%、キシロース1.01質量%、グリコールアルデヒドダイマー831ppm、フルフラール727ppm、ギ酸406ppmであり、pHは7.85だった。結果を表9に示す。
(実施例2−4)
使用した50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液が、糖類以外のカルボニル成分に対して1.02当量の還元剤が作用するように変更した以外は、実施例2−1と同様の手法で還元処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−4」)を得た。この処理糖液2−4を、実施例2−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.84質量%、キシロース1.12質量%、グリコールアルデヒドダイマー112ppm、フルフラール226ppm、ギ酸367ppmであり、pHは7.82だった。結果を表9に示す。
(実施例2−5)
使用した50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液が、糖類以外のカルボニル成分に対して1.52当量の還元剤が作用するように変更した以外は、実施例2−1と同様の手法で還元処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−5」)を得た。この処理糖液2−5を実施例2−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.77質量%、キシロース1.02質量%、グリコールアルデヒドダイマー34ppm、フルフラール548ppm、ギ酸355ppmであり、pHは7.64だった。結果を表9に示す。
(実施例2−6)
使用した50質量%亜硫酸アンモニウム水溶液が、糖類以外のカルボニル成分に対して2.05当量の還元剤が作用するように変更した以外は、実施例2−1と同様の手法で還元剤処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−6」)を得た。この処理糖液2−6を実施例2−1と同条件でLC分析したところ、グルコース7.67質量%、キシロース0.95質量%、グリコールアルデヒドダイマー24ppm、フルフラール660ppm、ギ酸349ppmであり、pHは7.57だった。結果を表9に示す。
(実施例2−7)
処理温度を25℃に変更した以外は、実施例2−4と同様の手法で還元処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−7」)を得た。この処理糖液2−7をLC分析したところ、グルコース7.80質量%、キシロース1.11質量%、グリコールアルデヒドダイマー58ppm、フルフラール416ppm、ギ酸393ppmであり、pHは7.85だった。結果を表9に示す。
(実施例2−8)
処理温度を60℃に変更した以外は、実施例2−4と同様の手法で還元剤処理を実施し、還元処理糖液(以下、「処理糖液2−8」)を得た。この処理糖液2−8をLC分析したところ、グルコース7.84質量%、キシロース1.04質量%、グリコールアルデヒドダイマー184ppm、フルフラール174ppm、ギ酸429ppmであり、pHは7.76だった。結果を表9に示す。
Figure 0006443442
表9より、本発明の処理方法により、グリコールアルデヒド、フルフラール、ギ酸等のカルボニル化合物を除去できることがわかった。本発明の還元剤を用いることで、糖類以外のカルボニル化合物を効率よく除去できること、及び本発明の処理方法は広い温度範囲で有効に糖類以外のカルボニル化合物を除去可能であることが明らかとなった。
(製造例2−2)
製造例1−3と同様にしてキシロースイソメラーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子導入株を作製した。
(実施例2−9)
<糖液の発酵生産評価>
(A)種培養
A培地[尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・5水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、蒸留水1,000mLに溶解]1,000mLを、121℃、20分間で加熱滅菌し、室温まで冷やした後、200mLの三角フラスコに15mL入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を600μl添加した。製造例2−2の製造例1−3(D)に対応する工程にて作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/XylAB/PC−4/ΔLDH株を接種して30℃で4.8時間振とう培養した。
(B)本培養
500mLの三角フラスコに100mLのA培地を入れ、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL添加した後、上記(A)の種培養で得られた培養液を、O.D.(660nm)が0.05となるように接種し、30℃で、20.0時間振とう培養した。
(C)コハク酸生産反応
上記(B)の本培養で得られた培養液を5,000×g、7分の遠心分離により集菌し、菌体懸濁液[硫酸マグネシウム・7水和物:1g、硫酸第一鉄・7水和物:40mg、硫酸マンガン・5水和物:40mg、D−ビオチン:400μg、塩酸チアミン:400μg、リン酸一アンモニウム:0.8g、リン酸二アンモニウム:0.8g、塩化カリウム:1g、蒸留水1000mLに溶解]にO.D.(660nm)が20になるように懸濁した。続いて、実施例2−1で作製した処理糖液2−1を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製した。5mL反応器に前記菌体懸濁液0.5mLと、基質溶液0.5mLを混合し、嫌気条件下において40℃で反応させた。その結果、前述のLC測定条件1および2にて培養上清のLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は7.6g/L、グルコース濃度は5.3g/L、キシロース濃度は1.9g/Lであった。結果を表10に示した。
(比較例2−1)
コハク酸生産反応において、製造例2−1で作製した糖液2−1を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は7.1g/L、グルコース濃度は5.8g/L、キシロース濃度は1.9g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−10)
コハク酸生産反応において、実施例2−2で作製した処理糖液2−2を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は8.2g/L、グルコース濃度は4.3g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−11)
コハク酸生産反応において、実施例2−3で作製した処理糖液2−3を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は9.0g/L、グルコース濃度は2.9g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−12)
コハク酸生産反応において、実施例2−4で作製した処理糖液2−4を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は9.2g/L、グルコース濃度は2.4g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−13)
コハク酸生産反応において、実施例2−5で作製した処理糖液2−5を2.3mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.7mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は8.3g/L、グルコース濃度は3.1g/L、キシロース濃度は1.9g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−14)
コハク酸生産反応において、実施例2−6で作製した処理糖液2−6を2.3mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.7mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は7.4g/L、グルコース濃度は4.7g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−15)
コハク酸生産反応において、実施例2−7で作製した処理糖液2−7を2.2mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.8mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は9.2g/L、グルコース濃度は2.6g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
(実施例2−16)
コハク酸生産反応において、実施例2−8で作製した処理糖液2−8を2.3mL、炭酸水素アンモニウムを0.3g、および蒸留水2.7mLを混合して、基質溶液を調製したこと以外は、実施例2−9と同様に行った。その結果、実施例2−9と同様にLC分析を行ったところ、6時間後のコハク酸蓄積濃度は9.3g/L、グルコース濃度は2.0g/L、キシロース濃度は2.0g/Lであった。結果を表10に示した。
Figure 0006443442
表10より、実施例2−1の処理糖液2−1を使用した実施例2−9では、製造例2−1の糖液2−1を使用した比較例2−1に対してコハク酸濃度が6%向上した。
同様に実施例2−2の処理糖液2−2を使用した実施例2−10では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が15%向上した。
また実施例2−3の処理糖液2−3を使用した実施例2−11では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が27%向上した。
また実施例2−4の処理糖液2−4を使用した実施例2−12では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が29%向上した。
また実施例2−5の処理糖液2−5を使用した実施例2−13では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が16%向上した。
また実施例2−6の処理糖液2−6を使用した実施例2−14では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が4%向上した。
本発明の還元剤処理を実施してグリコールアルデヒド等が大幅に除去された糖液を使用することで、コハク酸生産速度が向上することが明らかとなった。
さらに実施例2−7の処理糖液2−7を使用した実施例2−15では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が29%向上した。
また実施例2−8の処理糖液2−8を使用した実施例2−16では、比較例2−1に対してコハク酸濃度が31%向上した。
本発明の還元処理を実施するに際し25〜60℃の温度条件においてグリコールアルデヒド等が大幅に除去することができ、該処理糖液を使用することで、コハク酸生産速度が向上することが明らかとなった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2014年3月13日出願の日本特許出願(特願2014−050704)、2014年7月10日出願の日本特許出願(特願2014−142566)、及び2014年12月4日出願の日本特許出願(特願2014−246140)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明1の糖液の処理方法によれば、糖液中の発酵阻害物質の含有量を減少させることができるため、得られる糖液を、微生物を利用した発酵生産プロセスで用いれば、高い収率で目的とする有機化合物の収率を得ることができる。
また本発明1の処理糖液は、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させることができる。
また、本発明1の有機化合物の製造方法は、比較的簡単な処理により、高い生産効率で所望の有機化合物を製造することができる。
また、本発明1の培養方法であれば、発酵生産プロセスにおける発酵阻害物質量を減少させることができるため、微生物の増殖量と増殖速度を向上させ、もって発酵生産性を向上させることができる。
本発明2の糖類の処理方法によれば、糖液中の糖類以外のカルボニル化合物の含有量を効率的に減少させることができるため、得られる糖液を、微生物を利用した発酵生産プロセスで用いれば、効率よく目的とする有機化合物が得られ、その収率を向上させることができる。
また本発明2の還元処理糖液は、発酵生産による有機化合物の製造における微生物の生産効率を向上させ、また化学変換プロセスに利用した際に生成物である有機化合物の着色を抑制することができる。

Claims (10)

  1. 非可食原料由来の糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)の処理方法であって、該糖液を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程と、前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程と、を含む糖液の処理方法。
  2. 単糖および/または二糖を主成分とする非可食原料由来の糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)の処理方法であって、該糖液を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程と、前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程と、を含む糖液の処理方法。
  3. 前記還元処理工程における前記糖液のpHが、2以上、8以下である請求項1または2に記載の糖液の処理方法。
  4. 前記還元処理工程における前記糖液の温度が、20℃以上、70℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖液の処理方法。
  5. 前記還元剤が亜硫酸化合物、次亜硫酸化合物及びチオ硫酸化合物から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜4のいずれか1項に記載の糖液の処理方法。
  6. 前記還元剤の使用量が、前記糖液に含まれる糖の質量に対して、0.05質量%以上、2.0質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の糖液の処理方法。
  7. 前記加熱処理工程における前記糖液の加熱時間が1分以上、20時間以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の糖液の処理方法。
  8. 非可食原料由来の糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)を処理して処理糖液を製造する方法であって、前記処理方法が請求項1〜7のいずれか1項に記載の糖液の処理方法である、処理糖液の製造方法。
  9. 糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)を100℃以上180℃以下の温度で加熱する、加熱処理工程、
    前記加熱処理工程で加熱した前記糖液に還元剤を作用させる、還元処理工程、および
    前記還元処理工程を経た糖液を含有する有機原料に有機物生産能力を有する微生物を作用させて有機化合物を得る、有機物生産工程を含む有機化合物の製造方法。
  10. 有機物生産能力を有する微生物の培養方法であって、
    非可食原料由来の糖類を含有する液(以下、「糖液」という。)を100℃以上180℃以下の温度で加熱して加熱された糖液を得、
    前記加熱された糖液に還元剤を作用させて処理糖液を得、
    前記処理糖液を炭素源として用いる微生物の培養方法。
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