以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る手動変速機1の動力伝達系の構成を示す。この手動変速機1は、車両に搭載された、前進6速及び後退1速の手動変速機であって、該車両の乗員の踏み込み操作により切断状態とされるクラッチ4を介してエンジン2の出力軸2a(クランク軸)に連結されかつ車幅方向に延びるプライマリシャフト10と、該プライマリシャフト10に平行に配置されたセカンダリシャフト20とを備える。プライマリシャフト10及びセカンダリシャフト20は、不図示の変速機ケース内おいて該変速機ケースに回転可能に支持されている。尚、図1中、6は、プライマリシャフト5を回転可能に支持する軸受であり、7は、セカンダリシャフト20を回転可能に支持する軸受ある。
セカンダリシャフト20は、差動装置70を介して、図示を省略する駆動輪(本実施形態では、前輪)に連結されている。具体的には、セカンダリシャフト20のエンジン2側の端部に出力ギヤ28が設けられており、この出力ギヤ28が差動装置70の入力ギヤであるデフリングギヤ71と噛み合っている。このデフリングギヤ71は、内部に差動機構72を収容するデフケース73に該デフケース73と一体回転するように設けられている。デフリングギヤ71及びデフケース73は、軸受74により、左右の車軸75と同軸に回転するように支持されている。そして、セカンダリシャフト20の回転が、デフリングギヤ71及び差動機構72を介して各車軸75に伝達され、さらに、この各車軸75から、該車軸75に連結された上記駆動輪に伝達される。
プライマリシャフト10とセカンダリシャフト20との間には、エンジン2側から順に、1速用ギヤ列G1、リバース用ギヤ列GR、2速用ギヤ列G2、5速用ギヤ列G5、6速用ギヤ列G6、3速用ギヤ列G3、及び4速用ギヤ列G4が配設されている。
1速用ギヤ列G1及び2速用ギヤ列G2は、それぞれ、プライマリシャフト10に固定された1速用及び2速用プライマリギヤ11,12と、セカンダリシャフト20に遊嵌合された1速用及び2速用セカンダリギヤ21,22とで構成されている。また、3〜6速用ギヤ列G3〜G6は、それぞれ、プライマリシャフト10に遊嵌合された3〜6速用プライマリギヤ13〜16と、セカンダリシャフト20に固定された3〜6速用セカンダリギヤ23〜26とで構成されている。
セカンダリシャフト20上における1速用セカンダリギヤ21と2速用セカンダリギヤ22との間には1−2速用同期装置40が配設されている。また、プライマリシャフト10上における3速用プライマリギヤ13と4速用プライマリギヤ14との間には、3−4速用同期装置50が配設され、同じくプライマリシャフト10上における5速用プライマリギヤ15と6速用プライマリギヤ16との間には、5−6速用同期装置60が配設されている。
上記車両の乗員が操作するチェンジレバー(図示せず)により前進変速段へのシフト操作が行われると、上記同期装置40,50,60のうち、シフト操作された変速段に対応する1つの同期装置のみが作動し、これにより、前進変速段用ギヤ列G1〜G6のうち、シフト操作された変速段のギヤ列のみが選択的に動力伝達状態となる。
例えば、上記チェンジレバーにより1速又は2速へのシフト操作が行われると、これに連動して、1−2速用同期装置40のスリーブ41がセカンダリシャフト20上をエンジン2側(1速へのシフト操作時)又は反エンジン2側(2速へのシフト操作時)へスライドし、スライドされた側の遊嵌合ギヤ(1速用又は2速用セカンダリギヤ21,22)がセカンダリシャフト20に固定され、シフト操作された変速段のギヤ列(1速用又は2速用ギヤ列G1,G2)が動力伝達状態となる。
また、チェンジレバーにより3速又は4速へのシフト操作が行われると、これに連動して、3−4速用同期装置50のスリーブ51がプライマリシャフト10上をエンジン2側(3速へのシフト操作時)又は反エンジン2側(4速へのシフト操作時)へスライドし、スライドされた側の遊嵌合ギヤ(3速用又は4速用プライマリギヤ13,14)がプライマリシャフト10に固定され、シフト操作された変速段のギヤ列(3速用又は4速用ギヤ列G3,G4)が動力伝達状態となる。
さらに、チェンジレバーにより5速又は6速へのシフト操作が行われると、これに連動して、5−6速用同期装置60のスリーブ61がプライマリシャフト10上をエンジン2側(5速へのシフト操作時)又は反エンジン2側(6速へのシフト操作時)へスライドし、スライドされた側の遊嵌合ギヤ(5速用又は6速用プライマリギヤ15,16)がプライマリシャフト10に固定され、シフト操作された変速段のギヤ列(5速用又は6速用ギヤ列G5,G6)が動力伝達状態となる。
一方、リバース用ギヤ列GRは、選択摺動式のギヤ列であって、プライマリシャフト10に固定されたリバースプライマリギヤ17と、セカンダリシャフト20に固定されたリバースセカンダリギヤ27と、プライマリシャフト10及びセカンダリシャフト20に平行に延びるリバースアイドルシャフト30に軸方向に摺動可能に嵌合されたリバースアイドルギヤ37とで構成されている。
尚、リバースセカンダリギヤ27は、セカンダリシャフト20に直接固定されておらず、1−2速用同期装置40のスリーブ41に設けられている。このスリーブ41は、同期装置40において、セカンダリシャフト20に固設されたハブ42にスプライン嵌合している。そのため、厳密に言えば、スリーブ41に設けられたリバースセカンダリギヤ27は、セカンダリシャフト20に対して回転方向には固定されているが、軸方向には移動可能となっている。
上記チェンジレバーのリバースシフト操作が行われると、これに連動して、リバースアイドルギヤ37が、リバースプライマリギヤ17及びリバースセカンダリギヤ27に噛み合っていない中立位置から、リバースアイドルシャフト30の軸方向の反エンジン2側へ摺動して(図1で二点鎖線で示すリバースアイドルギヤ37を参照)、リバースプライマリギヤ17とリバースセカンダリギヤ27とに噛み合う噛合位置に移動し、これにより、リバース用ギヤ列GRが動力伝達状態となる。リバースアイドルギヤ37の上記噛合位置への移動は、後に詳細に説明するように、リバースレバー131(図4参照)によって行われる。このようにリバースレバー131は、上記チェンジレバーのリバースシフト操作により、手動変速機1をリバース状態にするためのレバーである。プライマリシャフト10の軸方向から見たときの、リバースアイドルギヤ37、リバースプライマリギヤ17及びリバースセカンダリギヤ27の位置関係は、図4に示すような位置関係になっており、リバースアイドルギヤ37は、リバースプライマリギヤ17の斜め下側でかつリバースセカンダリギヤ27の側方に位置する。尚、図4では、リバースアイドルギヤ37は、リバースプライマリギヤ17及びリバースセカンダリギヤ27に対して図4の紙面の奥側の位置である上記中立位置に位置するので、リバースプライマリギヤ17及びリバースセカンダリギヤ27と噛み合っていない。
本実施形態では、上記チェンジレバーは、図2に示すシフトパターンに沿って操作される。このシフトパターンは、車幅方向(図2の左右方向)をセレクト方向として、相互に所定間隔をあけて平行に並ぶ3列の前進変速段用シフトレーン(車両左側から順に、1−2速用シフトレーンr1、3−4速用シフトレーンr2及び5−6速用シフトレーンr3)と、セレクト方向一側(左側)の端部に位置するように、1−2速用シフトレーンr1の左隣に隣接して設けられた後退速用シフトレーンr4とからなっている。これらのシフトレーンr1〜r4に沿う方向がシフト方向であり、そのシフト方向の操作が、シフト操作である。図2中、r5は、チェンジレバーをセレクト方向に操作するセレクト操作が行われるニュートラルレーン(セレクトレーンとも呼ばれる)である。ニュートラル位置は、このニュートラルレーンr5と3−4速用シフトレーンr2との交点上にある。上記チェンジレバーは、ニュートラルレーンr5におけるニュートラル位置から外れた位置にあるときには、不図示の付勢手段によってニュートラル位置に戻るように付勢されており、これにより、チェンジレバーは、シフト操作を行っていない状態では、ニュートラル位置に位置する。
次に、手動変速機1の変速操作機構90について、図3〜図7により説明する。尚、図3では、左側がエンジン2側であり、右側が反エンジン側である。
変速操作機構90は、上記変速機ケース内におけるプライマリシャフト10の上側位置において、プライマリシャフト10及びセカンダリシャフト20に平行に延びるコントロールロッド100を備えている。このコントロールロッド100は、その軸方向の移動を規制された状態で、コントロールロッド100の軸心回りに回動可能に上記変速機ケースに支持されている。詳細な構成は省略するが、コントロールロッド100は、上記車両の乗員による上記チェンジレバーのセレクト操作に連動して、コントロールロッド100の軸心回りに回動するように構成されている。
コントロールロッド100上には、シフト部材101が設けられている。このシフト部材101は、コントロールロッド100の周囲に設けられた筒状の本体部101aを有している。シフト部材101(本体部101a)は、コントロールロッド100と共にコントロールロッド100の軸心回りに回動するとともに、コントロールロッド100上をコントロールロッド100の軸方向に摺動可能(移動可能)になされている。詳細な構成は省略するが、シフト部材101(本体部101a)は、上記乗員による上記チェンジレバーのシフト操作に連動して、コントロールロッド100上をコントロールロッド100の軸方向に移動するように構成されている。
コントロールロッド100とプライマリシャフト10との間の高さ位置には、1−2速用シフトロッド105、3−4速用シフトロッド106及び5−6速用シフトロッド107が、コントロールロッド100に平行に延びるように配設されている。各シフトロッド105〜107は、該各シフトロッド105〜107の軸方向にスライド可能に上記変速機ケースに支持されている。
1−2速用シフトロッド105には、1−2速用シフトエンド部材110がボルト115により固定され、3−4速用シフトロッド106には、3−4速用シフトエンド部材111がボルト116により固定され、5−6速用シフトロッド107には、5−6速用シフトエンド部材112がボルト117により固定されている。これら3つのシフトエンド部材110〜112は、前進変速段用のシフトエンド部材である。
1−2速用シフトロッド105がその軸方向にスライドすると、1−2速用シフトロッド105に設けられた不図示の1−2速用シフトフォーク部材を介して、1−2速用同期装置40のスリーブ41がセカンダリシャフト20上をエンジン2側または反エンジン2側へスライドするようになっている。また、3−4速用シフトロッド106がその軸方向にスライドすると、3−4速用シフトロッド106に設けられた不図示の3−4速用シフトフォーク部材を介して、3−4速用同期装置50のスリーブ51がプライマリシャフト10上をエンジン2側又は反エンジン2側へスライドするようになっている。さらに、5−6速用シフトロッド107がその軸方向にスライドすると、5−6速用シフトロッド107に設けられた不図示の5−6速用シフトフォーク部材を介して、5−6速用同期装置60のスリーブ61がプライマリシャフト10上をエンジン2側又は反エンジン2側へスライドするようになっている。
各シフトエンド部材110〜112は、それが固定されたシフトロッド105〜107からコントロールロッド100の側に向かって延びており、その先端部が、コントロールロッド100の軸方向に二股状に分岐してなる係合端部110a,111a,112aとされている。3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112aは、コントロールロッド100の軸方向において同じ位置に位置しているとともに、コントロールロッド100の周囲(本実施形態では、シフト部材101の本体部101aの周囲)にてコントロールロッド100の周方向に並ぶように配設されている。すなわち、図4で時計回りの順に、1−2速用シフトエンド部材110の係合端部110a、3−4速用シフトエンド部材111の係合端部111a及び5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112aが並んでいる。
シフト部材101の本体部101aには、第1フィンガ部101bが本体部101aの径方向外側に突出するように設けられている。第1フィンガ部101bは、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112a(詳細には、係合端部110a,111a,112aの二股の間)とコントロールロッド100の軸方向において同じ位置に位置している。第1フィンガ部101bは、上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作により、上記3つのシフトエンド部材110〜112のうちの1つのシフトエンド部材の係合端部と選択的に係合する。
具体的には、上記チェンジレバーがニュートラル位置にあるとき(上記チェンジレバーの3速又は4速セレクト操作が行われたとき)には、図4に示すように、第1フィンガ部101bは、3−4速用シフトエンド部材111の係合端部111aと係合する。上記ニュートラル位置から上記チェンジレバーの1速又は2速セレクト操作(1−2速用シフトレーンr1の位置へのセレクト操作)が行われたときには、シフト部材101がコントロールロッド100と共に、図4で反時計回りに回動し、これにより、第1フィンガ部101bは、1−2速用シフトエンド部材110の係合端部110aと係合することになる。また、上記ニュートラル位置から上記チェンジレバーの5速又は6速セレクト操作(5−6速用シフトレーンr3の位置へのセレクト操作)が行われたときには、シフト部材101がコントロールロッド100と共に、図4で時計回りに回動し、これにより、第1フィンガ部101bは、5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112aと係合することになる。
このように上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作により、第1フィンガ部101bが上記3つのシフトエンド部材110〜112のうちの1つのシフトエンド部材の係合端部と係合する。その前進変速段セレクト操作の後、上記チェンジレバーの前進変速段シフト操作が行われたときには、係合端部が第1フィンガ部101bと係合しているシフトエンド部材が、第1フィンガ部101bによってコントロールロッド100の軸方向に押圧され、これにより、該シフトエンド部材が固定されたシフトロッドが、該シフトエンド部材と共に該シフトロッドの軸方向にスライドする。このシフトロッドの軸方向のスライドにより、3つの同期装置40,50,60のうち、該シフトロッドに設けられたシフトフォーク部材に対応する同期装置が作動することになる。
コントロールロッド100には、コントロールロッド100及びシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸心回りに回動する第1インターロック部材121が設けられている。この第1インターロック部材121は、コントロールロッド100においてシフト部材101の本体部101aに対してコントロールロッド100の軸方向両側の部分に固定されており、コントロールロッド100の軸方向には移動しない。
第1インターロック部材121は、第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の周方向の両側にそれぞれ位置する規制部121aを有している。これら規制部121aは、第1フィンガ部101bが上記3つのシフトエンド部材110〜112のうちの1つのシフトエンド部材の係合端部と係合しているときには、他のシフトエンド部材の係合端部(延いては他のシフトエンド部材)がシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸方向に移動するのを阻止するとともに、第1フィンガ部101bが上記3つのシフトエンド部材110〜112のいずれのシフトエンド部材の係合端部とも係合していないときには、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112a(延いては3つのシフトエンド部材110〜112)がシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸方向に移動するのを阻止する。したがって、第1インターロック部材121は、第1インターロック手段を構成する。
例えば、図4に示すように、第1フィンガ部101bが3−4速用シフトエンド部材111の係合端部111aと係合しているときには、2つの規制部121aが、1−2速用シフトエンド部材110の係合端部110a及び5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112aとそれぞれ係合して、1−2速用シフトエンド部材110の係合端部110a及び5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112a(延いては1−2速用シフトエンド部材110及び5−6速用シフトエンド部材112)がシフト部材101と共にコントロールロッドの軸方向に移動するのを阻止する。また、シフト部材101が図4の状態から反時計回りに回動して第1フィンガ部101bが1−2速用シフトエンド部材110の係合端部110aと係合しているときには、2つの規制部121aのうちの一方の規制部121aが、3−4速用シフトエンド部材111の係合端部111a及び5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112aと係合して、3−4速用シフトエンド部材111の係合端部111a及び5−6速用シフトエンド部材112の係合端部112a(延いては3−4速用シフトエンド部材111及び5−6速用シフトエンド部材112)がシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸方向に移動するのを阻止する。
シフト部材101が図4で更に反時計回りに回動して第1フィンガ部101bが3つのシフトエンド部材110〜112のいずれのシフトエンド部材の係合端部とも係合していないとき(図6参照)、つまり上記チェンジレバーのリバースセレクト操作が行われたときには、2つの規制部121aのうちの上記一方の規制部121aが、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112aと係合して、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112a(延いては3つのシフトエンド部材110〜112)がシフト部材101と共にコントロールロッドの軸方向に移動するのを阻止する。
本体部101aには、第1フィンガ部101bとは周方向の異なる位置で、セレクターピン101cが本体部101aの径方向外側に突出するように設けられている。このセレクターピン101cは、ガイドプレート125に形成されたガイド孔125aに挿入されている。このガイドプレート125は、その両端部で、コントロールロッド100に支持されているが、コントロールロッド100がその軸心回りに回動しても、コントロールロッド100と共に回動せず、上記変速機ケースに固定されている。
上記ガイド孔125aは、上記シフトパターンと同様の形状をなしている。そして、シフト部材101(本体部101a)に設けられたセレクターピン101cは、上記チェンジレバーのセレクト操作及びシフト操作に対応してガイド孔125a内で移動するが、そのときに、セレクターピン101cが、各変速段において、コントロールロッド100の軸方向及び周方向の所定位置に位置するように、ガイド孔125aを形成する側壁部によって、セレクターピン101cの動きを規制する。これにより、各変速段において、シフト部材101(本体部101a)の、コントロールロッド100の軸方向及び周方向における位置が正確に決まる。
上記リバースレバー131は、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112a及び第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置に位置する。リバースレバー131は、コントロールロッド100に対して垂直な水平方向から見て(図3で見て)、コントロールロッド100に対して垂直な方向(上下方向)に延びている。尚、図3では、リバースレバー131の上端部に設けられた後述のリバース係合端部131cのみを示す(図5及び図7も同様)。
図4に示すように、リバースレバー131は、コントロールロッド100に対して垂直でかつ水平方向に延びる支軸132に回動可能に支持されている。この支軸132は、その両端部で、ブラケット133を介して上記変速機ケースに固定されている。そして、リバースレバー131は、その支軸132の周囲の部分から上側に延びる上側延設部131aと、下側に延びる下側延設部131bとを有している。上側延設部131aは、支軸132の周囲の部分からコントロールロッド100の側方の位置にまで延びて、その先端部(上端部)が、リバース係合端部131cとされている。このリバース係合端部131cも、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112aと同様に、コントロールロッド100の軸方向に二股状に分岐してなる。リバース係合端部131cは、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112a及び第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置に位置することになる。
下側延設部131bは、支軸132の周囲の部分からリバースアイドルシャフト30の側方(セカンダリシャフト20側の側方)位置にまで延び、その先端部が、リバースアイドルギヤ37の中心部に回転一体に設けられかつ支軸132が貫通するボス部38の外周面に全周に亘って形成された凹溝部38aに嵌められて係合するギヤ係合部131dとされている。
上記チェンジレバーのリバースシフト操作により、リバース係合端部131cは、後述の第2フィンガ部101eによって、コントロールロッド100の軸方向のエンジン2側(図4の紙面の奥側)へ移動する。これにより、リバースレバー131が支軸132の回りに回動して、ギヤ係合部131dは、コントロールロッド100の軸方向の反エンジン2側(図4の紙面の手前側)に移動する。このギヤ係合部131dの移動により、リバースアイドルギヤ37が、上記中立位置からリバースアイドルシャフト30の軸方向の反エンジン2側へ摺動して、リバースプライマリギヤ17とリバースセカンダリギヤ27とに噛み合う噛合位置に移動することになる(手動変速機1がリバース状態になる)。
ここで、車両が前進走行状態から停車した直後にリバースシフト操作が行われたときには、ギヤ鳴りと呼ばれる騒音が発生することがある。これは、クラッチ4を切断して停車する際、クラッチ4の切断直後はプライマリシャフト10が慣性で回転し続けており、このプライマリシャフト10と共に回転しているリバースプライマリギヤ17にリバースアイドルギヤ37を噛み合わせようとするときに、これら両ギヤの歯が干渉するためである。尚、セカンダリシャフト20は、駆動輪(前輪)に常時駆動連結されているため、停車状態では駆動輪と共に停止している。
本実施形態では、上記ギヤ鳴りを防止するために、上記チェンジレバーのリバースシフト操作の前半に、リバースレバー131の回動を利用して、所定の前進変速段用同期装置(ここでは、5−6速用同期装置60)を同期作動させるプレボーク機構が設けられており、このプレボーク機構の作動により、5−6速用同期装置60のスリーブ61がプライマリシャフト10上をエンジン2側(5速用ギヤ列G5を動力伝達状態とする側)へスライドすることで、プライマリシャフト10の慣性による回転が制動され、この結果、リバースプライマリギヤ17がリバースプライマリギヤ17及びリバースセカンダリギヤ27に噛み合う前に、プライマリシャフト10及びリバースプライマリギヤ17の回転が停止して、その噛み合う際の上記ギヤ鳴りが防止される。
上記プレボーク機構の具体的な構成は、上記特許文献1に開示されているプレボーク機構と同様であるので、ここでは省略する。図4には、上記プレボーク機構の構成要素であるプレボークピン141及び捩りコイルバネ142のみが記載されている。プレボークピン141は、支軸132に回動可能に支持されている。捩りコイルバネ142の両端部は、プレボークピン141とリバースレバー131とにそれぞれ掛けられており、この捩りコイルバネ142によって、プレボークピン141は、リバースレバー131がリバースアイドルギヤ37を上記噛合位置へ移動させるために回動する方向とは反対方向に回動するように付勢されている。この捩りコイルバネ142によるプレボークピン141の回動は、プレボークピン141に設けられた押し当てアーム部141aが、リバースレバー131に設けられた規制部131eに当接することで、規制される。上記チェンジレバーのリバースシフト操作により、リバースレバー131がリバースアイドルギヤ37を上記噛合位置へ移動させるために回動したときには、押し当てアーム部141aが規制部131eに押し当てられて、プレボークピン141がリバースレバー131と共に支軸132の回りに回動することになる。このプレボークピン141の回動により、5−6速用同期装置60のスリーブ61がプライマリシャフト10上をエンジン2側へスライドして、プライマリシャフト10の慣性による回転が制動される。
リバースレバー131は、支軸132が延びる方向において、プレボークピン141に対してプライマリシャフト10とは反対側(図4の左側)に位置する。これにより、上側延設部131aの、支軸132が延びる方向の曲げ量を出来る限り小さくしている。また、上側延設部131a及び下側延設部131bの、コントロールロッド100の軸方向の曲げは殆どない。
シフト部材101は、上記本体部101aに加えて、該本体部101aからコントロールロッド100の軸方向のリバース係合端部131c側に延設された延設部101dを有する。この延設部101d(詳細には、延設部101dの先端部)に、上記チェンジレバーのリバースセレクト操作により、リバース係合端部131cと係合する第2フィンガ部101eが設けられている。すなわち、第2フィンガ部101eは、シフト部材101において第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置(コントロールロッド100の軸方向においてリバース係合端部131cと同じ位置)に設けられている。
上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作完了時には、図4及び図5に示すように、第2フィンガ部101eは、リバース係合端部131cと係合しておらず、リバース係合端部131cの上側位置に位置している。上記チェンジレバーのリバースセレクト操作が行われると、シフト部材101がコントロールロッド100と共に、図4及び図6で反時計回りに(図5及び図7では、時計回りに)回動して、リバースセレクト操作の完了時(上記チェンジレバーが後退速用シフトレーンr4に位置したとき)には、図6及び図7に示すように、第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと係合している(リバース係合端部131cの二股の間に位置する)。そして、上記チェンジレバーのリバースシフト操作が行われると、上記のようにリバースレバー131が支軸132の回りに回動して、手動変速機1がリバース状態になる。
このリバース状態から、上記チェンジレバーがリバースシフト操作の開始位置にまで戻されると、リバース係合端部131cが、第2フィンガ部101eにより、コントロールロッド100の軸方向の反エンジン2側へ移動し、これにより、リバースレバー131が支軸132の回りに、リバースシフト操作時とは反対方向に回動して、ギヤ係合部131dが、コントロールロッド100の軸方向のエンジン2側に移動する。このギヤ係合部131dの移動により、リバースアイドルギヤ37が、上記噛合位置から上記中立位置に戻ることになる。
コントロールロッド100の軸方向においてリバース係合端部131c及び第2フィンガ部101eと同じ位置には、第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと係合していないときに、リバース係合端部131cがシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸方向に移動するのを阻止する(延いては、リバースレバー131が支軸132の回りに回動するのを阻止する)ための第2インターロック手段としての第2インターロック部材151が設けられている。
具体的に、この第2インターロック部材151は、図5に示すように、コントロールロッド100の周囲に固定された筒状部151aと、該筒状部151aからその径方向外側に突出し、リバース係合端部131cの上記移動(リバースレバー131の上記回動)を阻止するべく該リバース係合端部131cと係合可能な係合突出部151bとを有する。筒状部151aは、第1インターロック部材121と同様に、コントロールロッド100及びシフト部材101と共にコントロールロッド100の軸心回りに回動するが、コントロールロッド100の軸方向には移動しない。本実施形態では、筒状部151aは、第1インターロック部材121と一体結合されている。
そして、第2フィンガ部101e及び係合突出部151bは、上記チェンジレバーのリバースセレクト操作により第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと係合しかつ係合突出部151bがリバース係合端部131cと非係合となるとともに、上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作により係合突出部151bがリバース係合端部131cと係合しかつ第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと非係合となるように、筒状部151aの周方向に並んで配置されている。
すなわち、上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作により、図4及び図5に示すように、第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと非係合となり、係合突出部151bがリバース係合端部131cと係合する。この係合により、リバース係合端部131cは、シフト部材101と共にコントロールロッド100の軸方向に移動する(つまり、リバースレバー131が支軸132の回りに回動する)ことはできない。
一方、上記チェンジレバーのリバースセレクト操作により、図6及び図7に示すように、係合突出部151bがリバース係合端部131cと非係合となって、第2フィンガ部101eがリバース係合端部131cと係合することになる。この係合により、上記チェンジレバーのリバースシフト操作により、リバースレバー131が支軸132の回りに回動して、手動変速機1がリバース状態になる。
したがって、本実施形態では、リバースレバー131にリバース係合端部131cが設けられ、このリバース係合端部131cが、3つのシフトエンド部材110〜112の係合端部110a,111a,112aに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置に位置し、シフト部材101に、第1フィンガ部101bと第2フィンガ部101eとが設けられ、第1フィンガ部101bが、上記チェンジレバーの前進変速段セレクト操作により、3つのシフトエンド部材110〜112のうちの1つのシフトエンド部材の係合端部と選択的に係合し、第2フィンガ部101eが、シフト部材101において第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置(コントロールロッド100の軸方向においてリバース係合端部131cと同じ位置)に設けられていて、上記チェンジレバーのリバースセレクト操作により、リバース係合端部131cと係合するように構成されているので、上記特許文献1で使用されているようなリバース用シフトエンド部材をなくすことができ、上記チェンジレバーのリバースシフト操作時におけるシフト部材101の、コントロールロッド100の軸方向の移動により、リバース用シフトエンド部材を介さずに、第2フィンガ部101eによりリバースレバー131を直接動かして、リバースアイドルギヤ37をコントロールロッド100の軸方向に移動させるようにすることができる。また、リバースレバー131のリバース係合端部131cとギヤ係合部131dとを、コントロールロッド100の軸方向において略同じ位置に位置させることができ、この結果、リバースレバー131にこじれが生じるのを防止することができる。よって、変速操作機構90のコスト及び重量を低減することができるとともに、上記チェンジレバーのリバースシフト操作の際の操作力を低減することができる。
また、本実施形態では、シフト部材101において、第1フィンガ部101bに加えて、第2フィンガ部101eを設ける必要があるが、第2フィンガ部101eは、本体部101aから延設された延設部101dに設けることで、第1フィンガ部101bに対してコントロールロッド100の軸方向にずれた位置に容易に設けることができ、シフト部材101が複雑になることはなく、簡単な構成を維持することができる。さらに、第2フィンガ部101eの、コントロールロッド100の軸方向の位置は、リバースレバー131の位置に合わせて自由に変更することができるので、選択摺動式のリバース用ギヤ列の配置の自由度を向上させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。