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JP6357923B2 - ガス拡散電極、その製造方法および製造装置 - Google Patents

ガス拡散電極、その製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

燃料電池は、水素と酸素を反応させて水が生成する際に生起するエネルギーを電気的に取り出す機構であり、エネルギー効率が高く、排出物が水しかないことから、クリーンエネルギーとして期待されている。本発明は、燃料電池に用いられるガス拡散電極、その製造方法および製造装置に関し、特に、燃料電池の中でも燃料電池車などの電源として使用される高分子電解質型燃料電池に用いるガス拡散電極、その製造方法および製造装置に関する。
高分子電解質型燃料電池に使用される電極は、高分子電解質型燃料電池において2つのセパレータで挟まれてその間に配置されるもので、高分子電解質膜の両面において、高分子電解質膜の表面に形成される触媒層と、この触媒層の外側に形成されるガス拡散層とからなる構造を有する。電極でのガス拡散層を形成するための個別の部材として、ガス拡散電極が流通している。そして、このガス拡散電極に求められる性能としては、例えばガス拡散性、触媒層で発生した電気を集電するための導電性、および触媒層表面に発生した水分を効率よく除去する排水性などがあげられる。このようなガス拡散電極を得るため、一般的に、ガス拡散能および導電性を兼ね備えた導電性多孔質基材が用いられる。
導電性多孔質基材としては、具体的には、炭素繊維からなるカーボンフェルト、カーボンペーパーおよびカーボンクロスなどが用いられ、中でも機械的強度などの点からカーボンペーパーが最も好ましいとされる。
また、燃料電池は水素と酸素が反応し水が生成する際に生じるエネルギーを電気的に取り出すシステムであるため、電気的な負荷が大きくなると、即ち電池外部へ取り出す電流を大きくすると多量の水(水蒸気)が発生し、この水蒸気が低温では凝縮して水滴になり、ガス拡散電極の細孔を塞いでしまうと、ガス(酸素あるいは水素)の触媒層への供給量が低下し、最終的に全ての細孔が塞がれてしまうと、発電が停止することになる(この現象をフラッディングという)。
このフラッディングを可能な限り発生させないように、逆に言うとフラッディングを起こす電流値を出来る限り大きくするために、ガス拡散電極には排水性が求められる。この排水性を高める手段として、通常、導電性多孔質基材に撥水処理を施したガス拡散電極基材を用いて撥水性を高めている。
また、上記のような撥水処理された導電性多孔質基材をそのままガス拡散電極として用いると、その繊維の目が粗いため、水蒸気が凝縮すると大きな水滴が発生し、フラッディングを起こしやすい。このため、撥水処理を施した導電性多孔質基材の上に、カーボンブラックなどの導電性微粒子を分散した塗液を塗布し乾燥焼結することにより、微多孔層と呼ばれる層(マイクロポーラスレイヤーともいう)を設ける場合がある。この微多孔層にも撥水性を付与するため、撥水材としてフッ素系樹脂を含有させることが知られている(特許文献1、2、3)。微多孔層の役割としては、上記の他、触媒層が目の粗いガス拡散電極基材に貫入することを防ぐ(特許文献4)、また、導電性多孔質基材の粗さを電解質膜に転写させないための化粧直し効果がある。
撥水材は極力撥水性が高いほうが好ましいため、フッ素系樹脂が好適に用いられる。そのなかでも特に高い撥水性が得られるPTFE,FEPなどが好ましく用いられる。これらのフッ素系樹脂は、通常水系の分散媒に界面活性剤で分散させたディスパージョンの状態で市販されている。環境負荷低減の意味でも、水系塗布が好ましい。
一方、燃料電池車用の燃料電池などでは、高温での運転条件での発電性能も求められる。高温では、電解質膜が乾燥(この現象をドライアップと言う)しやすく、このため電解質膜のイオン導電性が低下し、発電性能が低下する。
このドライアップを防ぐための技術として、特許文献5には、上記微多孔層の表面に、より空隙率の低く、また厚みが小さい第2の微多孔層をさらに積層し、この第2の微多孔層によって水の透過性を抑制する技術を開示している。
特許第3382213号公報 特開2002−352807号公報 特開2000−123842号公報 特許第3773325号公報 特開2008−277093号公報
しかし、上記の特許文献1〜4で開示される技術では、耐フラッディング性と耐ドライアップ性の両立を図ることは困難であり、また特許文献5では、空隙率の低い第2の微多孔層の水蒸気透過抑制効果を十分発揮させるための条件が十分検討されているとは言えず、また、工業的な量産を効率よく行なうための手法も検討されていなかった。したがって、特許文献5に開示される技術のままでは、燃料電池車に搭載するような大出力を要求される用途において、意図したとおりに広い温度領域において、高性能を得ることは困難であった。
本発明は、このような従来技術の欠点を克服し、耐ドライアップ性と耐フラッディング性を両立し、ガス拡散電極としての発電性能の良好なガス拡散電極を提供するとともに、斯かるガス拡散電極を生産性高く低コストで量産可能な製造方法および製造装置を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明のガス拡散電極は、次のような手段を採用するものである。すなわち、導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置された、燃料電池に用いられるガス拡散電極であって、導電性多孔質基材は、厚みが150μm以下、空隙率が80%以上、細孔径が10μm以上100μm以下、滑落角が40°以下であり、
第1の微多孔層は、空隙率が70%以上、細孔径が0.1μm以上10μm未満であり、
第2の微多孔層は、厚みが0.1μm以上μm以下、空隙率が40%以上70%未満、細孔径が0.1μm未満であり、さらに、微多孔層の合計の厚みは40μm以下である、ガス拡散電極である。
また、上記の課題を解決するため、本発明のガス拡散電極の製造方法は、次のような手段を採用するものである。すなわち、導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置された、燃料電池に用いられるガス拡散電極を製造する方法であって、導電性多孔質基材の片面に、粘度が5000mPa・s以上20Pa・s以下の第1の微多孔層塗液を塗布し、その第1の微多孔層塗液を実質的に乾燥させずに、粘度が第1の微多孔層塗液よりさらに低く、10Pa・s以下である第2の微多孔層塗液を塗布した後、第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を一括して乾燥してガス拡散電極を得る、ガス拡散電極の製造方法である。
さらに、上記の課題を解決するため、本発明のガス拡散電極の製造装置は、次のような手段を採用するものである。すなわち、導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置された、燃料電池に用いられるガス拡散電極を連続的に製造する装置であって、ロール状に巻いた長尺の導電性多孔質基材を巻き出すための巻き出し機、巻き出し機により巻き出された導電性多孔質基材に第1の微多孔層塗液を塗布するための第1の塗工機、第1の微多孔層塗液が塗布され、実質的に乾燥されていない導電性多孔質基材に第2の微多孔層塗液を塗布するための、第1の塗工機が配置された基材面側と同じ面側に配置された第2の塗工機、第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液が塗布された導電性多孔質基材を乾燥するための乾燥機、および、得られたガス拡散電極を巻き取る巻き取り機から構成される、ガス拡散電極の製造装置である。
本発明のガス拡散電極を用いることにより、ガス拡散性が高く、排水性も良好で、耐フラッディング性と耐ドライアップ性の両立が図れるため、広い温度領域において発電性能の高い燃料電池を提供することができる。
また、本発明の製造方法および製造装置を用いることにより、上記のガス拡散電極を、生産性高く、ロスが少なく低コストで生産することができる。
本発明のガス拡散電極の構成を示す概略図。 本発明におけるガス拡散電極の製造装置の好ましい態様例を示す概略配置図。 本発明におけるガス拡散電極の製造装置のもう一つの好ましい態様例を示す概略配置図。 実施例、比較例において用いた撥水処理装置の概略配置図。
本発明のガス拡散電極は、導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置されている。
まず、導電性多孔質基材について説明する。電極基材として、導電性多孔質基材を用いるが、通常、導電性多孔質基材にはフッ素樹脂を付与して電極基材となす。
固体高分子型燃料電池において、ガス拡散電極は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すため、高い導電性が必要である。このため、ガス拡散電極には、導電性を有し、平均細孔径が通常10μm以上100μm以下の多孔体からなる基材である導電性多孔質基材を電極基材として用いる。細孔径については、水銀ポロシメーターによる細孔径分布測定により求めることができる。導電性多孔質基材の細孔径は、導電性多孔質基材を直接用いて測定してもよいし、ガス拡散電極を用いて測定してもよい。ガス拡散電極を用い、ガス拡散電極の面直断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により各層構造を確認し、SEM像の細孔部分の径を概略求めておき、水銀ポロシメーターによって得られる各層の細孔径ピークと対応付けながら各層の細孔径を決めれば、導電性多孔質基材の細孔径、第1の微多孔層の細孔径、第2の微多孔層の細孔径を効率良く求めることができる。
導電性多孔質基材としては、具体的には、例えば、炭素繊維織物、炭素繊維抄紙体、炭素繊維不織布、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素繊維を含む多孔質基材、発砲焼結金属、金属メッシュ、エキスパンドメタルなどの金属多孔質基材を用いることが好ましい。中でも、耐腐食性が優れることから、炭素繊維を含むカーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの多孔質基材を用いることが好ましく、さらには、電解質膜の厚み方向の寸法変化を吸収する特性、すなわち「ばね性」に優れることから、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材、すなわちカーボンペーパーを用いることが好適である。
本発明においては、ガス拡散電極のガス拡散性を高めて燃料電池の発電性能を極力高めるため、導電性多孔質基材の空隙率は80%以上、好ましくは85%以上とする。空隙率の上限としては多孔質基材がその構造を保ちうる限界として95%程度である。
基材の空隙率については、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製 IM4000型およびその同等品が使用可能)により厚み方向の面直断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。断面に接した空隙部と非空隙部を2値化し、全体の面積に対する空隙部の面積の面積率を空隙率(%)とすることにより定義できる。導電性多孔質基材の空隙率は、導電性多孔質基材を直接用いて測定してもよいし、ガス拡散電極を用いて測定してもよい。ガス拡散電極を用い、その面直断面において、導電性多孔質基材、第1の微多孔層、第2の微多孔層のそれぞれの領域について空隙率を測定すれば、導電性多孔質基材の空隙率、第1の微多孔層の空隙率、第2の微多孔層の空隙率を効率良く求めることができる。
また、導電性多孔質基材の厚みを薄くすることでもガス拡散性を高めることができるので、厚みは150μm以下とする。好ましくは120μm以下であるが、余り薄くすると機械的強度が弱くなり、製造工程でのハンドリングが難しくなるので、通常70μmが下限である。
このような基材を用いてガス拡散電極を効率よく製造するためには、このような基材を長尺に巻いた状態のものを巻き出して、巻き取るまでの間に連続的に加工することが好ましい。
本発明において、電極基材は、通常、導電性多孔質基材にフッ素樹脂を付与して撥水処理が施されて形成されている。フッ素樹脂は撥水材として作用する。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)(たとえば“テフロン”(登録商標))、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂)、ETFA(エチレン四フッ化エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)等が挙げられるが、強い撥水性を発現するPTFE、あるいはFEPが好ましい。
撥水材の量は特に限定されないが、導電性多孔質基材に対して0.1質量%以上20質量%以下程度が適切である。0.1質量%より少ないと撥水性が十分に発揮されず、20質量%を越えるとガスの拡散経路あるいは排水経路となる細孔を塞いでしまう、あるいは電気抵抗が上がる可能性があり好ましくない。
本発明においては、たとえば撥水処理によって、導電性多孔質基材の滑落角を70°以下にする必要がある。この滑落角は、撥水性の指標であり、これが70°を越えるようだと、燃料電池を低温において高出力で発電させるような運転条件において(燃料電池車を起動するような場合に相当)、電池内部で発生する凝縮水を十分排水できず、高出力が得られない可能性がある。滑落角は好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下である。滑落角は、協和界面科学株式会社製 自動接触角計DM501あるいはその同等品の滑落角測定モードを用い、水平なステージのうえに置いた機材上に所定量(例えば10μリットル)の水滴を滴下し、ステージを水平の状態から段階的に傾斜を増していき、水滴が滑落する角度を測定することにより評価できる。
撥水処理の方法は一般的に知られている撥水材ディスパージョンに浸漬する処理技術のほか、ダイコート、スプレーコートなどの塗布技術も適用可能である。また、フッ素樹脂のスパッタリングなどのドライプロセスによる加工も適用できる。しかし、滑落角を70°以下に収めるには、導電性多孔質基材内部に均一に撥水材を撒布する必要があり、このためにはダイコートによる撥水材ディスパージョンの塗布、スプレーによる撥水材ディスパージョンの塗布あるいはスパッタリングによる撥水材のコーティングが望ましい。なお、撥水処理の後、必要に応じて乾燥工程、さらには焼結工程を加えても良い。
次いで、微多孔層について説明する。本発明では、導電性多孔質基材の片面に、微多孔層を配置するが、その際、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層の順で積層して配置する。まず、微多孔層について共通的な事項について説明する。
微多孔層は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のチョップドファイバー、グラフェン、黒鉛などの導電性微粒子を含んでなる。カーボンブラックとしては、不純物が少なく触媒の活性を低下させにくいという点でアセチレンブラックが好適に用いられる。また、微多孔層には、導電性、ガス拡散性、水の排水性、あるいは保湿性、熱伝導性といった特性、さらには燃料電池内部のアノード側での耐強酸性、カソード側での耐酸化性が求められるため、微多孔層には、導電性微粒子に加えて、フッ素樹脂をはじめとする撥水性樹脂を含んでいるのが良い。微多孔層に用いられるフッ素樹脂としては、電極基材で用いられるフッ素樹脂と同様、PTFE、FEP、PFA、ETFA等が上げられる。撥水性が特に高いという点でPTFE、あるいはFEPが好ましい。
ガス拡散電極に微多孔層を設けるためには、電極基材に、微多孔層を形成するための塗液、すなわち微多孔層塗液で塗工することが一般的である。微多孔層塗液は通常、前記した導電性微粒子と水やアルコールなどの分散媒を含んでなり、導電性微粒子を分散するための分散剤として、界面活性剤などが配合されることが多い。また、微多孔層に撥水性樹脂を含ませる場合には、微多孔層塗液には予め撥水性樹脂を配合しておくことが好ましい。
微多孔層塗液における導電性微粒子の濃度は生産性の点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。粘度、導電性粒子の分散安定性、塗液の塗布性などが適性であれば濃度に上限はないが、実際的には50質量%を越えると塗液としての適性が損なわれる可能性がある。特に導電性微粒子としてアセチレンブラックを用いた場合には、本発明者らの検討では水系塗液の場合、25質量%程度が上限であり、これを越える濃度になると、アセチレンブラック同士が再凝集し、いわゆるパーコレーションが発生し、急激な粘度増加で塗液の塗布性が損なわれる。
微多孔層の役割としては、(1)触媒の保護、(2)目の粗い導電性多孔質基材の表面が電解質膜に転写しないようにする化粧直し効果、(3)カソードで発生する水蒸気を凝縮防止の効果などである。上記のうち、化粧直し効果を発現するためにはある程度の厚みが必要となる。
本発明では、微多孔層として、少なくとも第1の微多孔層と第2の微多孔層とを有しているが、微多孔層の全体の厚みについては、現状の導電性多孔質基材の粗さを考慮すれば、乾燥膜厚で10μm以上60μm未満であることが必要である。微多孔層の全体の厚みが、10μm未満であると前記した化粧直し効果が不足し、60μm以上になるとガス拡散電極自体のガス拡散性(透過性)が低下したり、電気抵抗が高くなる。ガス拡散性を高める、あるいは電気抵抗を下げるという観点からは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。
なお、ここでいう微多孔層の全体の厚みとは、第1の微多孔層および第2の微多孔層が配された導電性多孔質基材の片面での微多孔層の全体の厚みをいい、導電性多孔質基材の両面に微多孔層が配されている場合でも、第1の微多孔層および第2の微多孔層が配された導電性多孔質基材の片面だけでの微多孔層を対象とする。
基材(ガス拡散電極または導電性多孔質基材)の厚みについては、マイクロメーターなどを用い、基材に0.15MPaの荷重を加えながら測定を行なうことで得ることができる。また、微多孔層の厚みについては、ガス拡散電極の厚みから導電性多孔質基材の厚みを差し引いて求めることができる。さらに、第2の微多孔層の厚みについては、図1に示すように、第1の微多孔層を塗布した導電性多孔質基材の上に第2の微多孔層を塗布する際に、第2の微多孔層が塗布されている部分と第2の微多孔層が塗布されていない部分との差を第2の微多孔層の厚みとすることができる。
なお、導電性多孔質基材、第1の微多孔層、第2の微多孔層を積層したガス拡散電極の状態で、各層の厚みを求める場合には、(株)日立ハイテクノロジーズ製IM4000などのイオンミリング装置でガス拡散電極を厚み方向にカットし、その面直断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したSEM像から算出する方法が採用できる。
微多孔層塗液は、前記したように導電性微粒子を分散媒(水系の場合には水)に通常、分散剤を用いて分散して調製する。導電性微粒子を分散させるためには導電性微粒子の含有量に対して0.1質量%ないし高々5質量%も分散剤を添加すれば良い。しかし、この分散を長時間安定させて塗液粘度の上昇を防ぎ、液が分離したりしないようにするために、分散剤の添加量を増量することが有効である。
また、前記したように微多孔層の全体の厚みを乾燥塗膜で10μm以上にする場合、塗液の粘度を少なくとも1000mPa・s以上に保つことが好ましい。粘度がこれより低いと、塗液が電極基材表面上で流れてしまい、また導電性多孔質基材の細孔に塗液が流入して裏抜けを起こしてしまう。逆に、あまり高粘度になると塗布性が悪くなるため、上限は25Pa・s程度である。好ましい粘度の範囲としては、3000mPa・s以上、20Pa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以上、15Pa・s以下である。本発明において、第1の微多孔層を形成した後、次いで、第2の微多孔層塗液を塗布して第2の微多孔層を形成するが、その際、第2の微多孔層塗液の粘度は、さらに低く、10Pa・s以下であることが望ましい。
上記のように塗液の粘度を高粘度に保つためには、増粘剤を添加することが有効である。
ここで用いる増粘剤は一般的に良く知られたもので良い。例えば、メチルセルロース系、ポリエチレングリコール系、ポリビニルアルコール系などが好適に用いられる。
これらの分散剤や増粘剤は同じ物質に二つの機能を持たせても良く、またそれぞれの機能に適した素材を選んでも良い。ただし、増粘剤と分散剤を別個に選定する場合には、導電性微粒子の分散系および撥水材であるフッ素樹脂の分散系を壊さないものを選ぶ必要がある。上記分散剤と増粘剤はここでは界面活性剤と総称する。本発明の範囲においては、界面活性剤の総量は導電性微粒子の添加質量の50質量%以上が好ましく、より好ましくは100質量%以上、さらに好ましくは200質量%以上である。界面活性剤の添加量の上限としては、通常導電性微粒子の添加質量の500質量%以下であり、これを越えるようだと後の焼結工程において多量の蒸気や分解ガスが発生し、安全性、生産性を低下させる可能性がある。
微多孔層塗液の電極基材への塗工は、市販されている各種の塗工装置を用いて行うことができる。塗工方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗工、バー塗工、ブレード塗工、コンマコーター塗工などが使用できるが、導電性多孔質基材の表面粗さによらず塗工量の定量化を図ることができるため、ダイコーター塗工が好ましい。また、燃料電池にガス拡散電極を組み込んだ場合に触媒層との密着を高めるため塗布面の平滑性を求める場合にはブレードコーター、コンマコーターが好適に用いられる。以上例示した塗工方法はあくまでも例示のためであり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
微多孔層塗液を塗布した後、必要に応じ、塗液の分散媒(水系の場合は水)を乾燥除去する。乾燥の温度は水系の場合、室温(20℃前後)から150℃以下が望ましく、さらに好ましくは60℃以上120℃以下が好ましい。この分散媒(たとえば水)の乾燥は後の焼結工程において一括して行なっても良い。
微多孔層塗液を塗布した後、微多孔層塗液に用いた界面活性剤を除去する目的および撥水性樹脂を一度溶解して導電性微粒子を結着させる目的で、焼結を行なうことが一般的である。
焼結の温度は、添加されている界面活性剤の沸点あるいは分解温度にもよるが、250℃以上、400℃以下で行なうことが好ましい。焼結の温度が250℃未満では界面活性剤の除去が十分に達成し得ないかあるいは完全に除去するために膨大な時間がかかり、400℃を越えると撥水性樹脂の分解が起こる可能性がある。
焼結時間は生産性の点からできるかぎり短時間、好ましくは20分以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内であるが、あまり短時間に焼結を行なうと界面活性剤の蒸気や分解性生物が急激に発生し、大気中で行なう場合には発火の危険性が生じる。
焼結の温度と時間は、前述の導電性多孔質基材の撥水性の指標である滑落角にも影響するので、撥水性樹脂の融点あるいは分解温度と界面活性剤の分解温度に鑑みて最適な温度、時間を選択する。なお、乾燥や焼結は、第1の微多孔層塗液の塗布後、第2の微多孔層塗液の塗布後の、それぞれに行ってもよいが、後述するように、第1の微多孔層塗液の塗布および第2の微多孔層塗液の塗布後に、一括して行うのが好ましい。
本発明においては、上記の導電性多孔質基材の上に設けられる微多孔層を、導電性多孔質基材の少なくとも片面に、少なくとも2層以上積層する。導電性多孔質基材に接する微多孔層を第1の微多孔層、導電性多孔質基材側から見て第1の微多孔層の外側に積層される微多孔層を第2の微多孔層と称する。
微多孔層に関して図1を用いてより詳細に説明する。
第1の微多孔層201は、電極基材に、第1の微多孔層を形成するための塗液である第1の微多孔層塗液を直接塗布して設けられる。第1の微多孔層は、ガス拡散性高く、また排水性高くするため、空隙率を高く、また細孔径を比較的大きくする必要がある。具体的には、空隙率は70%以上が必要であり、好ましくは75%以上である。空隙率は高ければ高いほど良いが、燃料電池に組み込んだときに微多孔層の構造を維持できる上限は95%程度である。細孔径については、水銀ポロシメーターでの分布のピーク値により定義することができ、ガス拡散性を高いレベルにするため、0.1μm以上を必要とする。しかし導電性多孔質基材の細孔径より大きくなってしまうと、第1の微多孔層の内部で水蒸気が凝縮し、水滴が発生してガス拡散を阻害する可能性があるため、10μm未満とする。
第1の微多孔層の厚みについては、導電性多孔質基材の粗さの化粧直し効果を発現させるために、微多孔層全体の厚みとして10μm以上となるように設定すればよいが、好ましくは第1の微多孔層の厚みだけで9.9μm以上、より好ましくは10μm以上とするのがよい。ただし、後述する空隙率の低い第2の微多孔層が上に積層されても、ガス拡散性を確保する必要性から、第1の微多孔層の厚みは50μm未満である必要がある。
第2の微多孔層202は、導電性多孔質基材側から見て第1の微多孔層の外側に、第2の微多孔層を形成するための塗液である第2の微多孔層塗液を塗布することにより形成される。微多孔層が第1の微多孔層と第2の微多孔層の2層のみからなる場合には、第2の微多孔層塗液が第1の微多孔層の表面に塗布される。第2の微多孔層の役割は、燃料電池に組み込んだときに触媒層に接して、カソードにおいては触媒層で発生する水分(水蒸気)の透過を抑制し、アノードにおいてはカソード側からアノード側に逆拡散してくる水分の透過を抑制して、電位改質膜の乾燥(ドライアップ)を防ぐことである。このため、第2の微多孔層の空隙率は第1の微多孔層よりも小さく、70%未満であることが必要であり、ガス拡散性を低下させないという観点から40%以上であることが必要である。また、第2の微多孔層の細孔径も第1の微多孔層微多孔層より小さく、0.1μm未満、好ましくは0.09μm以下、より好ましくは0.08μm以下とする。第2の微多孔層の厚みについては、0.1μm以上、10μm以下であることが必要である。第2の微多孔層の厚みが、0.1μm未満では、水蒸気の透過の抑制効果が得られず、また10μmを越えるようだとガス拡散性が低下してしまう。好ましくは、7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
第1の微多孔層の空隙率の制御については、第1の微多孔層塗液に配合する導電性微粒子の分散度を低く調整する、導電性微粒子として、最長径と最短径の比率、即ちアスペクト比の高い非球形のものを用いる、乾燥や焼結工程で蒸発あるいは分解して消失してしまう物質を添加しておくなどして空隙率を高めることが可能である。ここでアスペクト比の値としては、30〜5000が好ましく、より好ましくは40〜1000である。またアスペクト比の高い導電性微粒子として、気相成長炭素繊維((株)昭和電工製の“VGCF”(登録商標)や“VGCF−S”(登録商標)など)、カーボンナノチューブなどがあげられる。第2の微多孔層では、第2の微多孔層塗液に配合する導電性微粒子の分散度を高く調整して緻密な塗膜を形成させる、導電性微粒子の粒子径を小さいものを使うなどして、空隙率を低く緻密な塗膜を形成させる。導電性微粒子としてカーボンブラックを使用する場合、一次粒子径までは分散できないので、二次粒子径(ある程度粒子が凝集した状態の径)をどこまで細かく分散できるかによって塗膜の空隙率が低くなる。
上記したように、本発明の基本形は、導電性多孔質基材(厚み150μm以下、細孔径10μm以上100μm以下、空隙率80%以上、滑落角70°以下)の上に第1の微多孔層(厚み50μm未満、細孔径0.1μm以上10μm未満、空隙率70%以上)および第2の微多孔層(厚み0.1μm以上10μm以下、細孔径0.1μm未満、空隙率40%以上70%未満)をこの順に積層し、導電性多孔質基材の片面での微多孔層全体の厚み(微多孔層が第1の微多孔層と第2の微多孔層の2層のみからなる場合には、第1の微多孔層の厚みと第2の微多孔層の厚みの合計)を10μm以上60μm未満としたものである。このようなガス拡散電極とすることにより、この積層体全体の垂直方向のガス拡散性を30%以上とできる。
第1の微多孔層あるいは第2の微多孔層は各層の空隙率に傾斜をつけたり、第1の微多孔層を一度に厚く塗れないような場合に、2層以上に分けて塗設することも可能である。微多孔層を3層以上の個別の微多孔層を積層して形成する場合は、上記第1の微多孔層と第2の微多孔層の間に該当する他の微多孔層を設け、それらの層は、細孔径、空隙率は第1の微多孔層または第2の微多孔層と同等ないしは、それらの中間の値を取るようにすることが好ましい。また、導電性多孔質基材の片面での微多孔層全体の厚みは、60μm以上とならないことが必要である。このような場合にも、ガス拡散電極としての垂直方向のガス拡散性は30%以上であることが好ましい。
ガス拡散電極のガス拡散性については、次のようにして定義される。西華産業製水蒸気ガス水蒸気透過拡散評価装置(MVDP−200C)などの水蒸気ガス水蒸気透過拡散評価装置を用い、ガス拡散電極の一方の面側(1次側)に拡散性を測定したいガスを流し、他方の面側(2次側)に窒素ガスを流す。1次側と2次側の差圧を0Pa近傍(0±3Pa)に制御しておき(即ち圧力差によるガスの流れはほとんどなく、分子拡散によってのみガスの移動現象が起こる)、2次側のガス濃度計により、平衡に達したときのガス濃度を測定し、この値(%)をガス拡散性の指標とする。
本発明においては、電極基材の表面に第1の微多孔層塗液を塗布し、その上に第2の微多孔層塗液を、第2の微多孔層の厚みが10μm以下となるように塗布する。このような薄膜を均一に塗布するためには、第1の微多孔層塗液を基材上に塗布した後、乾燥させずに連続して第2の微多孔層塗液を塗布するWet on Wetの重層技術を適用することが有効である。導電性多孔質基材の表面は一般的に粗く、凹凸の差が10μm近くにもなる場合がある。このように凹凸の大きい表面に第1の微多孔層塗液を塗布しても、乾燥後は完全にはその凹凸を解消しきれない。第2の微多孔層は10μm以下という薄膜なため、塗液の粘度はある程度低くする必要がある。そのような低粘度の塗液で上記のような凹凸のある面の上に薄膜を形成しようとすると、凹凸の凹部には液が溜まりやすく(即ち厚膜になる)、凸部には液が乗らずに、極端な場合には第2の微多孔層の薄膜が形成できない。これを防ぐために、乾燥する前に、第1の微多孔層塗液と第2の微多孔層塗液を重ねてしまい、後から一括して乾燥させることにより、第1の微多孔層の表面に均一に第2の微多孔層の薄膜を形成することができる。
このように、多層塗布の際に各層の塗布後に乾燥せず、多層塗布完了後に一括して乾燥することは、乾燥機が一つで済み、塗布工程も短くなるので、設備コストや生産スペースの節約にもなる。また、工程が短くなることで、工程における、一般的に高価な導電性多孔質基材のロスを低減することも可能となる。
上記の多層塗布においては、第1の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行い、さらに第2の微多孔層塗液の塗布もダイコーターで行う方法、第1の微多孔層塗液の塗布を各種のロールコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法、第1の微多孔層塗液の塗布をコンマコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法、第1の微多孔層塗液の塗布をリップコーターで行い、第2の微多孔層塗液の塗布をダイコーターで行なう方法、スライドダイコーターを用いて、基材に塗布する前に第1の微多孔層塗液と第2の微多孔層塗液を重ねてしまう方法などが適用できる。特に、高粘度の塗液を均一に塗布するためには、第1の微多孔層塗液の塗布をダイコーターまたはコンマコーターで行なうことが好ましい。
上記ダイコーター、コンマコーターの塗工方法については、「コンバーティングのすべて」((株)加工技術研究会編)など、既存の多数の文献に記載されている。ダイコーターとはあらかじめ計量された塗液を幅方向に均一に分配するためのダイを経由して基材上に塗布する形式である。また、コンマコーターとは、ナイフコーターと同じようにあらかじめ厚く盛っておいた塗液を一定の高さに設定したロールナイフで削ぎ落して基材の凹凸に関わらず塗布面を平滑にする塗布方式である。
本発明で重要なことは、まず第一に、第2の微多孔層のような表層を、0.1μm以上10μm以下という薄膜に可能な限り均一に形成することであるが、触媒が両面に塗布された電解質膜とガス拡散電極の密着性(触媒層表面とガス拡散電極の微多孔層表面との接触面積)を出来る限り大きくすることが望ましい。そのためには、できるかぎり、ガス拡散電極の微多孔層表面を平滑にすることが望ましい。また、ガス拡散電極側に触媒インクを塗布する方法も一般的に知られている(GDE法)が、この場合にも、触媒インクを均一に塗布するために、ガス拡散電極の微多孔層の表面は、できるかぎり平滑にしておくことが望ましい。このように、平滑性が求められる場合には、コンマコーターなどで第1の微多孔層塗液を塗布して、一旦基材の粗さをならした上で、ダイコーターで第2の微多孔層塗液を塗布すると、より高い平滑性が得られる。平滑性の指標としては、表面粗さRaが用いられ、第2の微多孔層表面は、このRaの値が6μm以下であることが望ましく、より好ましくは4μm以下である。Raが6μmより大きいと触媒層との密着性が悪く、また、触媒インクを微多孔層表面に塗布する場合などを考慮すると、表面粗さRaの下限としては、0.1μm程度が限界と考えられる。
表面粗さの測定には各種の表面粗さ計が適用できるが、微多孔層表面は比較的脆弱であるので、非接触タイプの計測器を用いるのが好ましい。非接触タイプの測定器の例としてはキーエンス社のレーザー顕微鏡VX−100などがある。
前記したように、本発明のガス拡散電極を製造する方法としては、導電性多孔質基材の片面に、第1の微多孔層塗液を塗布し、その第1の微多孔層塗液を実質的に乾燥させずに、第2の微多孔層塗液を塗布した後、第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を一括して乾燥してガス拡散電極を得ることが有効である。すなわち、導電性多孔質基材に(a)第1の微多孔層塗液を塗布する工程、第1の微多孔層塗液を乾燥させる前に、(b)第1の微多孔層塗液の上に第2の微多孔層塗液を塗り重ねる工程、(c)第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を塗布した基材を一括して乾燥する工程、を採用するのである。さらに、第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を一括して乾燥して後、焼結を行なって、ガス拡散電極を得てもよい。焼結工程は、(d)第1の微多孔層塗液,第2の微多孔層塗液に含まれる界面活性剤などの有機物を熱処理により除去する工程(熱処理1とする)であっても、(e)第1の微多孔層塗液,第2の微多孔層塗液に含まれる撥水材樹脂や導電性微粒子を結着させるために熱処理を行なう工程(熱処理2とする)のいずれであってもよく、また、工程(d)と工程(e)をまとめて行なうこともできる。なお、「実質的に乾燥させない」とは、昇温された状態の乾燥機などの熱処理機で積極的に乾燥しないという意味であり、ごく短時間(30秒以内、好ましくは20秒以内、さらに好ましくは10秒以内)自然乾燥することは差し支えない。
導電性多孔質基材は、それが長尺に巻かれた巻回体として入手することができるので、本発明における製造工程においては、量産の効率を上げるため、前記工程(a)の前に、巻回体から導電性多孔質基材を巻き出す巻き出し工程(A)を配置して、第1の微多孔層塗液を塗布するための導電性多孔質基材が、長尺の導電性多孔質基材をロール状に巻いた巻回体から巻き出す巻き出し工程から供給されるにするとともに、工程(c)の後に、巻き取り機などにより巻き取る巻き取り工程(B)を配置して、得られたガス拡散電極を巻き取る巻き取り工程を含むようにし、巻き出し工程から巻き取り工程までを連続的に行なう、いわゆるロール トゥ ロールでの加工を行うことが望ましい。それにより連続した工程とすることができ、量産性を高めることができる。さらに好ましくは工程(c)の後、工程(B)の前に、工程(d)ないし(e)を組み込むことである。
本発明のガス拡散電極を製造するに好適な製造装置は、ロール状に巻いた長尺の導電性多孔質基材を巻き出すための巻き出し機、巻き出し機により巻き出された導電性多孔質基材に第1の微多孔層塗液を塗布するための第1の塗工機、第1の微多孔層塗液が塗布され、実質的に乾燥されていない導電性多孔質基材に第2の微多孔層塗液を塗布するための、第1の塗工機が配置された基材面側と同じ面側に配置された第2の塗工機、第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液が塗布された導電性多孔質基材を乾燥するための乾燥機、および、得られたガス拡散電極を巻き取る巻き取り機から構成される。
図2および3には、本発明における特に好ましい製造装置が例示してある。
図2に示す製造装置においては、巻き出し機2から長尺の導電性多孔質基材1が巻き出され、ガイドロール3で適宜支持されながら搬送され、第1の塗工機である第1のダイコーター4により、導電性多孔質基材の片面に第1の微多孔層塗液が塗布される。このとき第1の微多孔層塗液は通常、塗液タンク12から送液ポンプ13によりダイコーターに供給される。好ましくはフィルター14によりろ過する。第1のダイコーター4と同じ基材面側に設置された、第2の塗工機である第2のダイコーター5により、第2の微多孔層塗液が第1の微多孔層塗液の塗布面上に塗布された後、一括して乾燥機7で乾燥が行われ、ガス拡散電極は巻き取り機9で巻き取られる。なお、第2の微多孔層塗液も通常、塗液タンク12から送液ポンプ13によりダイコーターに供給される。好ましくはフィルター14によりろ過する。また、図2で示すように、乾燥機7の後に焼結機8を設置してインラインで焼結することが好ましい。また、ダイコーターによる微多孔層塗液の塗布に際しては、バックロール6を用いてもよいし、巻き取りに際しては塗布面保護のため、合い紙の巻き出し機11から巻き出された合い紙10を製品と共巻きにしてもよい。
図3に示す製造装置においては、図2における第1のダイコーター4の替わりにコンマコーター40を設置してある。コンマコーターで塗布する場合には、液ダム42に塗材を供給しながら基材を搬送させ、ナイフロール41にて所望の塗布量になるように塗材を掻き取る。
図2あるいは3に示すように、複数の層を基材の上に設ける際にそれらの複数の層の乾燥を一括して行なってしまうことで、乾燥機を簡略化でき、また巻き出しから巻き取りまでの工程を短くできるため、生産性が高く、基材が破断した際にもロスが少なくてすむ。
本発明のガス拡散電極は、触媒層を両面に設けた電解質膜の両側に触媒層とガス拡散電極が接するように圧着し、さらに、セパレータなどの部材を組みこんで単電池を組み立てて燃料電池として使用される。その際、第2の微多孔層が、触媒層と接するように組み立てるとよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた材料、導電性多孔質基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
<材 料>
A:導電性多孔質基材
・厚み100μm、空隙率85%のカーボンペーパーを以下のように調製して得た。
東レ(株)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T300−6K(平均単繊維径:7μm、単繊維数:6,000本)を6mmの長さにカットしアラバラリバー社製広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)クラフトマーケットパルプ(ハードウッド)と共に、水を抄造媒体として連続的に抄造し、さらにポリビニルアルコールの10質量%水溶液に浸漬し、乾燥する抄紙工程を経て、ロール状に巻き取って、炭素短繊維の目付けが15g/mの長尺の炭素繊維紙を得た。炭素繊維紙100質量部に対して、添加したパルプの量は40質量部、ポリビニルアルコールの付着量は20質量部に相当する。
(株)中越黒鉛工業所製鱗片状黒鉛BF−5A(平均粒子径:5μm、アスペクト比:15)、フェノール樹脂およびメタノール(ナカライテスク(株)製)を2:3:25の質量比で混合した分散液を用意した。上記炭素繊維紙に、炭素短繊維100質量部に対してフェノール樹脂が78質量部である樹脂含浸量になるように、上記分散液を連続的に含浸し、90℃の温度で3分間乾燥する樹脂含浸工程を経た後、ロール状に巻き取って樹脂含浸炭素繊維紙を得た。フェノール樹脂には、荒川化学工業(株)製レゾール型フェノール樹脂KP−743Kと荒川化学工業(株)製ノボラック型フェノール樹脂“タマノル”(登録商標)759とを1:1の質量比で混合したものを用いた。このフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の混合物)の炭化収率は43%であった。
(株)カワジリ製100tプレスに熱板が互いに平行になるようにセットし、下熱板上にスペーサーを配置して、熱板温度170℃、面圧0.8MPaでプレスの開閉を繰り返しながら上下から離型紙で挟み込んだ樹脂含浸炭素繊維紙を間欠的に搬送しつつ、同じ箇所がのべ6分間加熱加圧されるよう圧縮処理した。また、熱板の有効加圧長LPは1200mmで、間欠的に搬送する際の前駆体繊維シートの送り量LFを100mmとし、LF/LPを0.08とした。すなわち、30秒の加熱加圧、型開き、炭素繊維の送り(100mm)、を繰り返すことによって圧縮処理を行い、ロール状に巻き取った。
圧縮処理をした炭素繊維紙を前駆体繊維シートとして、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、加熱炉内を連続的に走行させながら、約500℃/分(650℃までは400℃/分、650℃を越える温度では550℃/分)の昇温速度で焼成する炭化工程を経た後、ロール状に巻き取ってカーボンペーパーを得た。得られたカーボンペーパーは、密度0.25g/cm、空隙率85%であった。
・炭化後の厚みが150μmとなるように炭素繊維の目付け量、圧縮処理の際のスペーサーの厚みを調整した以外は、厚み100μm、空隙率85%のカーボンペーパーと同様にして、厚み150μm、空隙率85%のカーボンペーパーを得た。
・さらに比較用に炭素繊維の目付け量、圧縮処理の際のスペーサーの厚みを調整し炭化後の厚みが180μmのカーボンペーパーを得た。
B:アスペクト比が30〜5000の範囲内である導電性微粒子
・気相成長炭素繊維“VGCF”(登録商標)(昭和電工(株)製、平均直径:0.15μm、平均繊維長:8μm、アスペクト比:50、線状カーボンの一種)
・気相成長炭素繊維“VGCF−S”(登録商標)(昭和電工(株)製、平均直径:0.10μm、平均繊維長:11μm、アスペクト比:110、線状カーボンの一種)
・多層カーボンナノチューブ(チープ チューブス社製、平均直径:0.015μm、平均繊維長:20μm、アスペクト比:1300、線状カーボンの一種)
・薄片グラファイト“xGnP”(登録商標)グレードM(XG サイエンス社製、平均粒子径:5μm、平均厚さ:0.006μm、アスペクト比:830)
C:アスペクト比が30〜5000の範囲内に含まれない導電性微粒子
・アセチレンブラック“デンカブラック”(登録商標)(電気化学工業(株)製、平均粒子径:0.035μm、アスペクト比:1、カーボンブラックの一種)
D:撥水材
・“ポリフロン”(登録商標)PTFEディスパージョンD−210C(PTFE樹脂、ダイキン工業(株)製)
・“ポリフロン”(登録商標)FEPディスパージョンN−110(PTFE樹脂、ダイキン工業(株)製)
E:界面活性剤
・“TRITON”(登録商標)X−100(ナカライテスク(株)製)
<基材および微多孔層の厚みの測定>
基材(ガス拡散電極および導電性多孔質基材)の厚みについては、(株)ニコン製デジタル厚み計“デジマイクロ”を用い、基材に0.15MPaの荷重を加えながら測定を行った。微多孔層の厚みについては、ガス拡散電極の厚みから導電性多孔質基材の厚みを差し引いて測定した。すなわち、第1の微多孔層の厚みについては、第1の微多孔層のみを塗布した基材の厚みと導電性多孔質基材の厚みとの差によって、第1の微多孔層の厚みとした。また、第2の微多孔層の厚みについては、図1に示すように、第1の微多孔層を塗布した導電性多孔質基材の上に第2の微多孔層を塗布する際に、第2の微多孔層が塗布されている部分と第2の微多孔層が塗布されていない部分との差によって、第2の微多孔層の厚みとした。
<塗液の粘度測定>
スペクトリス社製ボーリン回転型レオメーターの粘度測定モードにおいて、直径40mm、傾き2°の円形コーンプレートを用いプレートの回転数を増加させながら(シェアレートを上昇)応力を測定していく。このとき、シェアレート0.17(/s)における粘度の値を塗液の粘度とした。
<空隙率の測定>
走査型電子顕微鏡として(株)日立製作所製S−4800を用い、ガス拡散電極の面直断面から、導電性多孔質基材、第1の微多孔層、第2の微多孔層のそれぞれの領域において、無作為に異なる20箇所を選び、20000倍程度で拡大して写真撮影を行い、それぞれの画像で空隙部と非空隙部を2値化して空隙率を計測した平均値を求めた。ガス拡散電極の断面の作製に際しては、(株)日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM4000を用いた。
<細孔径測定>
導電性多孔質基材、微多孔層の細孔径は、水銀圧入法により、測定圧力6kPa〜414MPa(細孔径30nm〜400μm)の範囲で測定して得られる細孔径分布のピーク径を求めた。なお、近い細孔径領域に複数のピークが現れる場合は、最も高いピークのピーク径を採用した。測定装置としては、島津製作所社製オートポア9520を用いた。
導電性多孔質基材に第1の微多孔層、第2の微多孔層を積層したガス拡散電極の各層の細孔径をそれぞれ求めるために、ガス拡散電極の面直断面のSEM観察により各層構造を確認し、SEM像の細孔部分の径を概略求めておき、水銀ポロシメーターによって得られる各層の細孔径ピークと対応付けながら各層の細孔径を決めた。本発明のガス拡散電極の場合には、0.1μ未満の領域に小さいピーク、0.1μm以上、10μm未満の領域に比較的ブロードなピーク、10μm以上100μm以下の領域に大きく明確なピークが現れる。
<表面粗さ測定>
測定すべきガス拡散電極の微多孔層表面について、(株)キーエンス製レーザー顕微鏡VK−X100を用い、対物レンズ10倍、カットオフなしで粗さ測定を行い、算術平均粗さRaを求め、1視野について平均して表面粗さの値とした。
<導電性多孔質基材の滑落角>
協和界面科学株式会社製 自動接触角計DM501の滑落角測定モードを用い、試料上に10μリットルの水滴を滴下し、試料ステージを水平の状態から段階的に傾斜を増していき(1°/秒で傾斜、1秒間停止、これを繰り返す)、水滴が滑落して、測定画面から消え去る角度を滑落角とした。
<ガス拡散性>
西華産業製水蒸気ガス水蒸気透過拡散評価装置(MVDP−200C)を用い、ガス拡散電極の一方の面側(1次側)に拡散性を測定したいガスを流し、他方の面側(2次側)に窒素ガスを流す。1次側と2次側の差圧を0Pa近傍(0±3Pa)に制御しておき(即ち圧力差によるガスの流れはほとんどなく、分子拡散によってのみガスの移動現象が起こる)、2次側のガス濃度計により、平衡に達したときのガス濃度を測定し、この値(%)をガス拡散性の指標とした。
<発電性能評価>
得られたガス拡散電極を、電解質膜・触媒層一体化品(日本ゴア製の電解質膜“ゴアセレクト”(登録商標)に、日本ゴア製触媒層“PRIMEA”(登録商標)を両面に形成したもの)の両側に、触媒層と微多孔層が接するように挟み、ホットプレスすることにより、膜電極接合体(MEA)を作製した。この膜電極接合体を燃料電池用単セルに組み込み、電池温度40℃、燃料利用効率を70%、空気利用効率を40%、アノード側の水素、カソード側の空気をそれぞれ露点が75℃、60℃となるように加湿して発電させ、電流密度を高くしていって発電が停止する電流密度の値(限界電流密度)を耐フラッディング性の指標とした。また、電池温度80℃で同様に測定を行い、耐ドライアップ性の指標とした。さらに、通常の運転条件(電池温度70℃)での発電性能も測定した。
(実施例1)
ロール状に巻き取られた厚み100μm、空隙率85%のカーボンペーパーを図4に示す巻き取り式の搬送装置を用いて、巻き出し機2からカーボンペーパーを巻き出し、ガイドロール3を渡して搬送しながら、フッ素樹脂濃度を2質量%になるように水に分散した撥水材ディスパージョンを満たした浸漬槽15に浸漬して撥水処理を行い、100℃に設定した乾燥機7で乾燥して巻き取り機9で巻き取って、撥水処理した導電性多孔質基材を得た。撥水材ディスパージョンとして、FEPディスパージョン ND−110を水でFEPが2質量%濃度になるように薄めたものを用いた。この基材の焼結後の滑落角は34°であった。
次に、図2に概略を示すように、巻き出し機2、ガイドロール3、バックロール6、合い紙巻き出し機11、巻き取り機9を備えた搬送装置に2基のダイコーター(4,5)、乾燥機7および焼結機8を備えた巻き取り式の連続コーターを用意した。
前記撥水処理した導電性多孔質基材として、厚み100μm、空隙率85%、幅約400mmのカーボンペーパーを400mロール状に巻いた原反を巻き出し機2にセットした。
巻き出し部、巻き取り部、コーター部に設置された駆動ロールにより原反を搬送した。まず、第1のダイコーター4を用いて第1の微多孔層塗液を塗布した後、連続して第2のダイコーター5により第2の微多孔層塗液を塗布し、乾燥機7において100℃の熱風により水分を乾燥、さらに温度を350℃に設定した焼結機8において、焼結を行なった後、巻き取り機9にて巻き取った。
なお、微多孔層塗液は以下のように調製した。
第1の微多孔層塗液:
気相成長炭素繊維“VGCF”(登録商標)7質量部、FEPディスパージョン(“ポリフロン”(登録商標)ND−110)2.5質量部、界面活性剤(“TRITON”(登録商標)X−100)15質量部、精製水 80.5質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。この時の塗液粘度は、6Pa・sであった。
第2の微多孔層塗液:
アセチレンブラック“デンカブラック”(登録商標)7.7質量部、FEPディスパージョン(“ポリフロン”(登録商標)ND−110)2.5質量部、界面活性剤(“TRITON”(登録商標) X−100)5質量部、精製水 75.8質量部をプラネタリーミキサーで混練し、塗液を調製した。プラネタリーミキサーでの混練時間は第1の微多孔層塗液の場合の2倍の時間をかけ、導電性微粒子の分散度を上げた。この時の塗液粘度は、3.6Pa・sであった。
第1の微多孔層塗液の塗布にあたっては、焼結後の微多孔層の目付け量が13g/mとなるように調整した。このとき、第1の微多孔層の厚みは25μmであった。さらに、第2の微多孔層塗液の塗布にあたっては、第2の微多孔層の厚みが5μmとなるよう調製した。
また、上記のように調製したガス拡散電極を、触媒層を両面に設けた電解質膜の両側に、微多孔層と触媒層が接するように熱圧着し、燃料電池の単セルに組み込み、40℃と70℃の温度で発電性能(限界電流密度)評価を行った。
(実施例2)
実施例1において、導電性多孔質基材として空隙率85%、厚み150μmのカーボンペーパーを用いた以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(比較例1)
実施例1において、導電性多孔質基材として空隙率85%、厚み180μmのカーボンペーパーを用いた以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(実施例3)
実施例1において、第2の微多孔層塗液を、次のものに変更し、さらに、第2の微多孔層塗液の塗布にあたっては、第2の微多孔層の厚みが0.8μmとなるよう調製した以外は全て、実施例1と同様にして、ガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
第2の微多孔層塗液:
“デンカブラック”(登録商標)7.7質量部、FEPディスパージョン(“ポリフロン”(登録商標)ND−110)2.5質量部、界面活性剤(“TRITON”(登録商標)X−100)2質量部、精製水 75.8質量部とし、プラネタリーミキサーで混練時間を第1の微多孔層の塗液の場合の3倍の時間をかけて、導電性微粒子の分散度を上げた。この時の塗液粘度は、0.9Pa・sであった。
(実施例4)
図2の装置において、実施例1で得た、撥水処理した導電性多孔質基材(厚み100μm、空隙率85%、幅約400mmのカーボンペーパーを400mロール状に巻いた原反)を巻き出し機2にセットした。
巻き出し部、巻き取り部、コーター部に設置された駆動ロールにより原反を搬送した。まず、第1のダイコーター4を用いて第1の微多孔層塗液を塗布した後、乾燥機7において100℃の熱風により水分を乾燥したのち、一旦巻き取り機にて巻き取った。この第1の微多孔層塗液が塗布された基材を再び巻き出し機2にセットしなおし、第2の微多孔層塗液を第2のダイコーター5によって塗布し、乾燥機7において100℃の熱風により水分を乾燥、さらに温度を350℃に設定した焼結機において、焼結を行なった後、巻き取り機9にて巻き取った。これ以外は全て、実施例3と同様にして、ガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
実施例4においては、第1の微多孔層塗液を乾燥させたことにより、第1の微多孔層の表面がカーボンペーパーの表面の凹凸をトレースしている状態で薄膜の第2の微多孔層塗液が塗布されたため、第2の微多孔層の膜厚がバラツキ、第1の微多孔層の凹凸の凸部においては第2の微多孔層にほとんど覆われない部分もあった。このことにより、水蒸気のバリアー効果は局所的に薄れ、高温(80℃)での発電評価において、ドライアップが発生し発電性能が若干低下したものと考えられる。
(比較例2)
実施例1において、第1の微多孔層の厚みを50μm、第2の微多孔層の厚みを10μm、微多孔層総厚みを60μmとなるよう塗液の塗布量を変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(比較例3)
実施例1において、第2の微多孔層の厚みを10μm、微多孔層総厚みを35μmとなるよう塗液の塗布量を変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(比較例4)
実施例1において、第1の微多孔層の厚みを30μmとなるよう塗液の塗布量を変更し、第2の微多孔層を塗布しなかったこと以外は全て実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(比較例5)
実施例1において、基材の撥水処理に用いる撥水材ディスパージョンを、PTFEディスパージョン(“ポリフロン”(登録商標)D−210C)を水でPTFEが0.1質量%濃度になるように薄めたものに変更した以外は全て、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。この基材の滑落角は90°以上であった。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(比較例6)
実施例1において、第2の微多孔層塗液を第1の微多孔層塗液として用いたものと同じ塗液に変更したこと以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(実施例5)
図3に示す装置を用い、実施例1において、第1の微多孔層塗液の塗布をダイコーターに替えてコンマコーター40を用いて行なった以外は、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
(実施例6)
実施例5において、コンマコーター40で第1の微多孔層塗液を塗布したあと、第2の微多孔層塗液は塗布せずに乾燥を行い(焼結せずに)巻き取り、再び巻き出し機に基材をセットして、コンマコーターの液ダム42の塗布液を第2の微多孔層塗液に変更し、コンマコーター40によって第2の微多孔層塗液を塗布し、乾燥および焼結を行い、最後に巻き取った以外は実施例5と同様にしてガス拡散電極を得た。このガス拡散電極を実施例1と同様に燃料電池用単セルに組み込み、発電性能評価を行なった。
実施例5、6においては、図3における液ダム42に第1の微多孔層用の塗布液を満たして塗布を行なったが、カーボンペーパー内部への塗布液の滲み込みがやや多く(厚みを25μmとするのにダイコートに比べ目付けを増やさなければならなかった)、カーボンペーパー内部でのガス拡散性がやや損なわれ、発電性能は低温(40℃)および中温(70℃)でやや低下が見られた。しかし、微多孔層表面の平滑性(表面粗さRa)はダイコート塗布品よりも小さく、平滑にすることができた。
表1に各実施例、比較例における主要条件および発電性能評価の結果を示す。本発明の製造方法により作成したガス拡散電極を用いた燃料電池は、従来技術により作成したものに比べ、いずれも発電性能が良いことが分かる。なお、表中、W/Wは、WET ON WET(塗膜を乾燥させずに上に別の塗材を積層すること)を、W/DはWET ON DRY(塗膜を乾燥させたあとに上に別の塗材を積層すること)を意味する。
1 導電性多孔質基材
2 巻き出し機
3 ガイドロール(非駆動)
4 第1のダイコーター
5 第2のダイコーター
6 バックロール
7 乾燥機
8 焼結機
9 巻き取り機(駆動)
10 合い紙
11 巻き出し機(合い紙用)
12 塗液タンク
13 送液ポンプ
14 フィルター
15 浸漬槽
40 コンマコーター
41 ナイフロール
42 液ダム
201 第1の微多孔層
202 第2の微多孔層

Claims (8)

  1. 導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置された、燃料電池に用いられるガス拡散電極であって、
    導電性多孔質基材は、厚みが150μm以下、空隙率が80%以上、細孔径が10μm以上100μm以下、滑落角が40°以下であり、
    第1の微多孔層は、厚みが10μm以上、空隙率が70%以上、細孔径が0.1μm以上10μm未満であり、
    第2の微多孔層は、厚みが0.1μm以上μm以下、空隙率が40%以上70%未満、細孔径が0.1μm未満であり、
    さらに、微多孔層の合計の厚みは40μm以下である、ガス拡散電極。
  2. 第2の微多孔層は、厚みが0.8μm以上7μm以下である、請求項1に記載のガス拡散電極。
  3. 垂直方向のガス拡散性が30%以上である、請求項1または2に記載のガス拡散電極。
  4. 第2の微多孔層は、その表面粗さが6μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散電極。
  5. 導電性多孔質基材の片面に、導電性多孔質基材に接する第1の微多孔層と、第2の微多孔層とが順に配置された、燃料電池に用いられるガス拡散電極を製造する方法であって、
    導電性多孔質基材の片面に、粘度が5000mPa・s以上20Pa・s以下の第1の微多孔層塗液を塗布し、その第1の微多孔層塗液を実質的に乾燥させずに、粘度が10Pa・s以下であり、第1の微多孔層塗液よりさらに低い第2の微多孔層塗液を塗布した後、
    第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を一括して乾燥してガス拡散電極を得る、
    ガス拡散電極の製造方法。
  6. 第1の微多孔層塗液の塗布を、ダイコーターまたはコンマコーターで行なう、請求項に記載のガス拡散電極の製造方法。
  7. 第1の微多孔層塗液および第2の微多孔層塗液を一括して乾燥して後、焼結を行なって、ガス拡散電極を得る、請求項5または6に記載のガス拡散電極の製造方法。
  8. 第1の微多孔層塗液を塗布するための導電性多孔質基材は、長尺の導電性多孔質基材をロール状に巻いた巻回体から巻き出す巻き出し工程から供給されるとともに、得られたガス拡散電極を巻き取る巻き取り工程を含み、巻き出し工程から巻き取り工程までを連続的に行なう、請求項5〜7のいずれかに記載のガス拡散電極の製造方法。
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