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JP6348422B2 - プロピレン系重合体組成物およびこれを用いた射出成形体 - Google Patents

プロピレン系重合体組成物およびこれを用いた射出成形体 Download PDF

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Description

本発明は、プロピレン系重合体組成物およびこれを用いた射出成形体に関する。
プロピレン系重合体は、優れた剛性、硬度、および耐熱性を有するため、射出成形によりフェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバー等の自動車外装用途や自動車内装用途、各種容器用途等に広く利用されている。
近年、環境負荷の低減が強く要請される中、各種用途において、成形品の薄肉化による軽量化が望まれており、これを実現させつつ、かつ十分な強度を有する成形品を得るためには、高流動性、剛性−耐衝撃性バランスのより向上された(すなわち、剛性および耐衝撃性のいずれにも優れる)プロピレン系重合体または該重合体を含んでなる組成物の開発が望まれている。さらに、プロピレン系重合体を用いた成形体の製造にあっては、成形サイクルの短縮が望まれている。
特許文献1には、剛性および耐衝撃性に優れ、かつフローマーク外観にも優れたプロピレン系ブロック共重合体が提案されている。該プロピレン系ブロック共重合体は、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)5〜80重量%と室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)20〜95重量%から構成され、所定の要件を満たすものである。また、非特許文献1には、高流動性、剛性、および耐衝撃性のいずれにも優れたプロピレン系ブロック重合体を含む組成物から得られる広口容器等が提案されている。
特許文献2および特許文献3に、分子量分布の広くないポリプロピレン樹脂における反りの解決法として、特定の核剤を用いることが提案されている。
国際公開第2010/032793号 特開2010−248438号公報 特開平11−349776号公報
公開技法2011−504369
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載のプロピレン系ブロック共重合体は、射出成形において成形品が薄い場合に、成形品の反り変形が発生しやすいことが新たに判明した。反りは成形条件を改良することにより、ある程度は改善することができることが予測されたが、成形条件幅が狭くなってしまい、生産性を低下させるという問題があった。また、反りの原因は成形収縮の異方性と考えられた。
また、特許文献2に記載のプロピレン系成形品や特許文献3に記載のプロピレン系重合体組成物には、薄肉容器の成形のために高流動性を付与すべく分子量分布の広いポリプロピレンを使用した場合の反り変形の修正方法については未解決のままである。特に、特許文献2には、有機リン酸塩系核剤を使用した場合には成形後の収縮率が異なる現象、すなわち異方性が発生するとの報告がなされているように、プロピレン系重合体の反り変形の修正方法として、有機リン酸塩系核剤の適用は一般的ではなかった。
このように、成形外観、剛性−耐衝撃性のバランス、射出成形流動性、薄肉成形品における反りの発生を抑えたプロピレン系樹脂組成物の更なる改良が求められている。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、剛性−耐衝撃性のバランスに優れ、成形加工性が良好で、薄肉成形体における反りの少ない、プロピレン系重合体組成物およびこれを用いた射出成形体を提供することにある。
本発明者は、プロピレン系重合体の反り変形の修正方法について検討してきた。その過程で、薄肉成形体における反りが少なく、剛性−耐衝撃性のバランスに優れたプロピレン系重合体組成物およびこれを用いた射出成形体を見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決するための本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、下記の要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体と、異方性を有する有機金属塩である核剤とを含むプロピレン系重合体組成物であって、前記核剤が、前記プロピレン系重合体に対して150ppm以上3000ppm以下含むことを特徴とする。
[1]室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)が0重量%以上80重量%以下、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)が20重量%以上100重量%以下(ただし、DsolとDinsolの合計量は100重量%である)、
[2]Dinsolのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上30以下、かつMz/Mwが6.0以上25以下、
[3]Dinsolのペンタド分率(mmmm)が93%以上、
[4]Dinsolの示差走査熱量計で測定された融点(Tm)が140℃以上。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、前記プロピレン系重合体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、30g/10分以上であることが好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、前記核剤が、有機リン酸塩であることが好ましい。上記課題を解決するための射出成形体は、上記記載のプロピレン系重合体組成物を含んでなることを特徴とする。本発明に係る射出成形体は、薄肉成形体であることが好ましい。
本発明によれば、成形時の成形加工性が良好であり、外観に優れ、剛性−耐衝撃性のバランスに優れた成形品が得られる。また、薄肉成形体したときに反りの発生が抑えられるとともに、成形サイクルが短縮される。
以下に、本発明に係るプロピレン系重合体組成物およびこれを含む射出成形体について詳細に説明する。
本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、所定要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体と、異方性を有する有機金属塩である核剤とを含む。
〔プロピレン系重合体組成物〕
プロピレン系重合体組成物は、所定要件を同時に満たすプロピレン系重合体と、核剤とを含む組成物であって、該核剤は、異方性を有する有機金属塩であり、プロピレン系重合体に対して150ppm以上3000ppm以下含む。核剤の濃度の下限値は好ましくは200ppm、より好ましくは400ppm、上限値は好ましくは2500ppm、より好ましくは2000ppmである。
核剤の濃度が上記範囲内にあると、反りを抑える効果に優れ、成形品の剛性・耐衝撃性に優れ、また両者のバランスにも優れる。また、成形加工性が良好で外観に優れるとともに、コスト面においても有利である。
[プロピレン系重合体]
プロピレン系重合体が同時に満たすべき要件[1]〜[4]について説明する。
要件[1]は、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)が0重量%以上80重量%以下、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)が20重量%以上100重量%以下である(ただし、DsolとDinsolの合計量は100重量%である)。
Dsolの下限値は好ましくは10重量%、上限値は好ましくは50重量%、より好ましくは30重量%である。Dinsolの下限値は好ましくは50重量%、より好ましくは70重量%、上限値は好ましくは90重量%である。Dsolが下限値以上含まれることにより、プロピレン系重合体の耐衝撃性が優れ、Dsolが上限値以下含まれることにより、プロピレン系重合体の剛性、耐熱性に優れる。
「室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)」とは、実施例において後述するように、プロピレン系重合体のうち、n−デカン中150℃で2時間加熱溶解後に23℃まで降温後にn−デカン溶液側に溶解している部分を示す。また、以下の説明において、「室温n−デカンに可溶な部分」を「n−デカン可溶部」と略称する場合がある。
室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)は、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンとからなるプロピレン系共重合体ゴムを主成分(50重量%より大きく、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%)とする。該プロピレン系共重合体ゴムに含まれるエチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンは、後述するプロピレン系重合体に含まれる当該オレフィンよりも高含有量である。
「室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)」とは、実施例において後述するように、プロピレン系重合体のうち、n−デカン中150℃で2時間加熱溶解後に23℃まで降温後にn−デカン溶液側に溶解していない部分を示す。また、以下の説明において、「室温n−デカンに不溶な部分」を「n−デカン不溶部」と略称する場合がある。
室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)は、結晶性プロピレン系(共)重合体を主成分(50重量%より大きく、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%)とする。該結晶性プロピレン系(共)重合体は、結晶性プロピレン単独重合体、もしくは、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを1.5mol%以下含有する結晶性プロピレン系共重合体を示す。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。共重合体中のエチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンに起因する骨格を構成するオレフィンとしては、エチレンまたは炭素原子数4〜10のα−オレフィンが好ましく、さらに好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンであり、1種以上用いることがより好ましい。
要件[2]は、Dinsolのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布(Mw/Mn)が、7.0以上30以下であり、Mz/Mwが6.0以上25以下である。
Mw/Mnについては、高剛性化と耐衝撃性の保持の観点から、下限値は好ましくは8.0、上限値は好ましくは25、より好ましくは20、特に好ましくは15である。Mz/Mwについては、高分子量成分の含有比率の観点から、下限値は好ましくは6.5、より好ましくは7、上限値は好ましくは23、より好ましくは20である。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体のn−デカン不溶部(Dinsol)は、Mw/Mn値が上記範囲内にあることから、充分に広い分子量分布を示し、成形性に優れるとともに剛性に優れる。また、プロピレン系ブロック共重合体は、上述のように高いMz/Mw値を示すため、高分子量の成分を多く含んでおり、溶融張力(MT)が高く成形性に優れる。
プロピレン系ブロック共重合体のn−デカン不溶部(Dinsol)は、多段階の重合や、複数種のポリプロピレンの混合によっても製造することもできるが、1段階の重合により得ることが好ましい。プロピレン系ブロック共重合体のデカン不溶部(Dinsol)が、1段階の重合により得られる場合には、重合体製造装置をよりシンプルにすることができ、経済的である上、プロピレン系ブロック共重合体中の高分子量成分が、凝集せずにより微分散した状態となるため好ましい。
プロピレン系ブロック共重合体のn−デカン不溶部(Dinsol)は、Mw/Mn値が高く、且つMz/Mw値が高い高分子量成分を多く含むため、成形時にはプロピレン系ブロック共重合体中の高分子量成分が核剤として作用し、充填剤粉末や樹脂粉末などの核剤を添加しなくても、結晶化度の高い成形体が得られる。特に、該高分子量体が微分散していると核剤などの作用が高まる傾向があるので好ましい。
なお、要件[2]は、後述するオレフィン重合用触媒の存在下、プロピレン98.5〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィン0〜1.5mol%を(共)重合することにより得られる。
要件[3]は、Dinsolのペンタド分率(mmmm)が93%以上である。ペンタド分率(mmmm)の下限値は、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上である。上限値は好ましくは100%以下、より好ましくは99.8%以下、さらに好ましくは99.5%以下である。
ペンタド分率(mmmm)が93%未満であると、剛性が低下したり、フィルム等の製品分野で耐熱性が要求特性を担保しきれない分野があるので好ましくない。例えば、三塩化チタン触媒で重合されたプロピレン系重合体は、特開昭47−34478号公報に記載され、広分子量分布化による効果はあるが、デカン不溶部のペンタド分率は91〜92%程度と極めて低いため、自動車材などの高剛性を必要とする射出成型用途等では使用できない。
なお、要件[3]が満たされるのは、後述するオレフィン重合用触媒中に電子供与体として環状エステル化合物(a)と環状エステル化合物(b)が含まれることに起因する。要件[4]は、Dinsolの示差走査熱量計で測定された融点(Tm)が140℃以上である。融点(Tm)の下限値は、好ましくは145℃以上である。上限値は、好ましくは150℃以下、より好ましくは170℃以下である。融点(Tm)がこの範囲にあると、耐熱性、剛性が優れる。
Dinsolの融点(Tm)を上記範囲内にするには、後述するプロピレン系重合体の製造方法において、共重合体ゴム部製造量の調整、結晶性プロピレン系重合体製造時の分子量の調整により可能である。
プロピレン系重合体のメルトフローレート(ASTM1238、230℃、2.16kg荷重)が、30g/10分以上であることが好ましい。より好ましくは、30〜100g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあると、流動性の観点から好ましい。
本発明に係るプロピレン系重合体は、上記の要件[1]〜[4]に加え、次の要件[5]〜[7]を満たすことが好ましい。
要件[5]:本発明に係るプロピレン系重合体のn−デカン可溶部(Dsol)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められる重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mn値が6.0〜30である。Mw/Mn値は、高流動性と高溶融張力の両立化の観点から、好ましくは6.5〜20であり、より好ましくは7.0〜18である。
本発明に係るプロピレン系重合体は、n−デカン可溶部(Dsol)のMw/Mnが高いため、高分子量の共重合体ゴム成分を多く含んでいるという特徴がある。このような特徴により、本発明のプロピレン系重合体では、広分子量分布プロピレン系重合体のMFRが高くても、高分子量共重合体ゴム成分により溶融弾性を高くすることができるため、高流動性と高溶融張力の両立化を図る上で有利である。
プロピレン系重合体の流動性が高いと、大型製品の射出成形や射出成形サイクルの短縮が可能である。また、プロピレン系ブロック共重合体の溶融弾性が高いと、射出成形品の外観が良好になり、ブロー成形性、発泡成形性が良好になるなど、成形加工性の付与が可能である。
また、要件[5]は、後述するオレフィン重合用触媒の存在下、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを共重合することにより得ることができる。
なお、要件[5]は、既存のオレフィン重合用触媒であっても、重合段数を複数段とすることで達成することが可能であるが、本発明では、後述するオレフィン重合用触媒を用いることにより1段階の重合であっても所望の要件を満たす共重合体を得ることが可能となる。これより、得られた共重合体ゴム成分が、プロピレン系ブロック共重合体中に凝集せず、より微分散化しやすい利点がある。また、重合体製造装置をよりシンプルにすることができ、経済面、省エネルギー化の観点でも有利である。ここで、「1段階の重合」とは、共重合体ゴムを製造する工程が反応器1段で構成されており、さらにその反応器内において重合条件を一切変更しない状態を指す。
要件[6]:
本発明に係るプロピレン系重合体のデカン可溶部(Dsol)の極限粘度[η](dl/g)は、1.5〜10.0である。極限粘度[η](dl/g)は、耐衝撃性、高流動性、高溶融弾性のバランスを最適化させる観点から、好ましくは2.0〜7.0、さらに好ましくは2.5〜4.0である。極限粘度[η](dl/g)が、1.5dl/gよりも低下すると、プロピレン系ブ重合体の耐衝撃性が、低下するおそれがあるため、好ましくない。また、極限粘度[η](dl/g)が10dl/gよりも高いと、流動性の低下や、フィッシュアイが発生しやすくなるため、大型射出成形品やフィルムへの適用が難しくなる場合がある。
なお、デカン可溶部(Dsol)の極限粘度[η](dl/g)が高いプロピレン系共重合体ゴムを後添加することで、耐衝撃性、高流動性、高溶融弾性等の効果を発現させることができる。しかし、この場合、フィッシュアイの発生がしやすいという問題があり、成形品外観の悪化の観点で、工業化することが困難である。一方、本発明のようにデカン可溶部(Dsol)を連続して重合することにより得られるプロピレン系ブロック共重合体は、共重合体ゴムが共重合体全体に微分散するため、上記のような不具合は発生せず、耐衝撃性、高流動性、高溶融弾性等の効果に加えて、フィッシュアイの発生が抑えられた成形品を得ることができる。
要件[7]:
本発明に係るプロピレン系重合体のデカン不溶部(Dinsol)のMz/Mn値は、70〜300である。Mz/Mn値は、好ましくは80〜250であり、より好ましくは100〜200である。Mz/Mn値が高いポリプロピレンでは、分子量の高い成分の含有比率が高いことを表しており、溶融張力が高く、成形性や剛性に優れる可能性が高いことが予想される。
Mz/Mn値については、例えば、三塩化チタン触媒で重合されたプロピレン系重合体は、特開昭47−34478号公報に記載があるように、広分子量分布化による効果はあるが、広分子量分布化したのは、低分子量の重合体が増加したことによるところが大きいため、三塩化チタン触媒で重合されたプロピレン系重合体のMz/Mn値は、大きくても40程度の数値にしかならない。したがって、本発明のように高分子量の重合体が多いことによる効果、すなわち、自動車材などの高剛性を必要とする射出成型用途などには適していない。
上記の要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体は、以下のオレフィン重合用触媒を用いて製造されることが好ましい。
(オレフィン重合用触媒)
本発明に係るプロピレン系重合体は、固体状チタン触媒成分(I)と、周期表の第1族、第2族および第13族から選ばれる金属原子を含む有機金属化合物(II)と、必要に応じて電子供与体(III)とを含むオレフィン重合用触媒の存在下、重合して得られたものであることが好ましい。
具体的には、国際公開2010/032793号パンフレットに記載されたものを例示することができる。以下、オレフィン重合用触媒に係る各成分について説明する。
固体状チタン触媒成分(I)
本発明に係る前記固体状チタン触媒成分(I)は、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記式(1)で特定される環状エステル化合物(a)と下記式(2)で特定される環状エステル化合物(b)を含む。
これらのうち、プロピレン系ブロック共重合体の広分子量分布化に寄与していると考えられる環状エステル化合物(a)と環状エステル化合物(b)について、以下に具体的に用いられる好適な化合物を列記する。なお、チタン、マグネシウム、ハロゲンの各成分については、上記公報を含め、公知の方法により得られる。
(環状エステル化合物(a))
環状エステル化合物(a)は、複数のカルボン酸エステル基を有し、下記式(1)で表される。
Figure 0006348422
式(1)において、nは、5〜10の整数、好ましくは5〜7の整数であり、より好ましくは6である。またCaおよびCbは、炭素原子を表わす。
2およびR3は、それぞれ独立にCOOR1またはRであり、R2およびR3のうちの少なくとも1つはCOOR1である。環状骨格中の炭素原子間結合は、すべてが単結合であることが好ましいが、環状骨格中の、Ca−Ca結合およびR3がRである場合のCa−Cb結合以外の、いずれかの単結合は、二重結合に置き換えられていてもよい。すなわち、環状骨格中の、C−Cb結合、R3がCOOR1である場合のCa−Cb結合、およびC−C結合(nが6〜10の場合)は、二重結合に置き換えられていてもよい。
複数個あるR1は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、特に好ましくは4〜8、さらに好ましくは4〜6の1価の炭化水素基である。この炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられ、中でもn−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基が好ましく、さらにはn−ブチル基、イソブチル基が、分子量分布の広いプロピレン系ブロック共重合体を製造できることからより好ましい。
複数個あるRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、ハロゲン含有基およびケイ素含有基から選ばれる原子または基であるが、少なくとも1つのRは水素原子ではない。
水素原子以外のRとしては、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましく、この炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基、オクチル基などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基がより好ましい。
またRは、互いに結合して環を形成していてもよく、Rが互いに結合して形成される環の骨格中には、二重結合が含まれていてもよく、該環の骨格中に、COOR1が結合したCaを2つ以上含む場合は、該環の骨格をなす炭素原子の数は5〜10である。
このような環の骨格としては、ノルボルナン骨格、テトラシクロドデセン骨格などが挙げられる。また複数個あるRは、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、シロキシ基、アルデヒド基やアセチル基などのカルボニル構造含有基であってもよく、これらの置換基には、炭素原子数1〜20の炭化水素基1個以上を含んでいることが好ましい。
このような環状エステル化合物(a)としては、国際公開2006/077945号パンフレットに記載がある。上記のようなジエステル構造を持つ化合物には、式(1)における複数のCOOR1基に由来するシス、トランス等の異性体が存在するが、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果を有するが、よりトランス体の含有率が高いのが好ましい。トランス体の含有率が高い方が、分子量分布を広げる効果だけでなく、活性や得られる重合体の立体規則性がより高い傾向がある。
環状エステル化合物(a)としては、下記式(1−1)〜(1−6)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006348422
Figure 0006348422
Figure 0006348422
Figure 0006348422
Figure 0006348422
Figure 0006348422
〔上記式(1−1)〜(1−6)中の、R1およびRは式(1)での定義と同様である。
上記式(1−1)〜(1−3)において、環状骨格中の単結合(ただしCa−Ca結合およびCa−Cb結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。上記式(1−4)〜(1−6)において、環状骨格中の単結合(ただしCa−Ca結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。また、上記式(1−3)および(1−6)においてnは7〜10の整数である。〕
環状エステル化合物(a)としては、特に、下記式(1a)で表わされる化合物が好ましい。
Figure 0006348422
〔式(1a)中の、n、R1およびRは式(1)での定義と同様であり、環状骨格中の単結合(ただしCa−Ca結合およびCa−Cb結合を除く。)は、二重結合に置き換えられていてもよい。すなわち、環状骨格中のC−C結合(nが6〜10の場合)、Ca−C結合およびCb−C結合は、二重結合に置き換えられていてもよい。〕
上記式(1a)で表わされる化合物として具体的には、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−ヘキシル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジn−オクチルが好ましい例示として挙げられる。これらの化合物はDielsAlder反応を利用して製造できる。
上記のようなジエステル構造を持つ環状エステル化合物(a)には、シス、トランス等の異性体が存在し、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果を有するが、トランス体の含有率が高い方が、分子量分布を広げる効果だけでなく、活性や得られる重合体の立体規則性がより高い傾向があるため特に好ましい。シス体およびトランス体のうちのトランス体の割合は、好ましくは51%以上であることが好ましい。より好ましい下限値は55%であり、さらに好ましくは60%であり、特に好ましくは65%である。一方、好ましい上限値は100%であり、より好ましくは90%であり、さらに好ましくは85%であり、特に好ましくは79%である。
(環状エステル化合物(b))
環状エステル化合物(b)は、複数のカルボン酸エステル基を有し、下記式(2)で表される。
Figure 0006348422
式(2)において、nは、5〜10の整数、好ましくは5〜7の整数であり、特に好ましくは6である。またCaおよびCbは、炭素原子を表わす。
環状骨格中の炭素原子間結合は、すべてが単結合であることが好ましいが、環状骨格中の、Ca−Ca結合およびR5が水素原子である場合のCa−Cb結合以外のいずれかの単結合は、二重結合に置き換えられていてもよい。すなわち、環状骨格中の、C−Cb結合、R5がCOOR1である場合のCa−Cb結合、およびC−C結合(nが6〜10の場合)は、二重結合に置き換えられていてもよい。
また、R4およびR5はそれぞれ独立にCOOR1または水素原子であり、R4およびR5のうちの少なくとも1つはCOOR1であり、R1はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の1価の炭化水素基である。
複数個あるR1は、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは4〜8、特に好ましくは4〜6の1価の炭化水素基である。この炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などが挙げられ、中でもn−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基が好ましく、さらにはn−ブチル基、イソブチル基が、分子量分布の広いプロピレン系ブロック共重合体を製造できることから特に好ましい。
上記のようなジエステル構造を持つ化合物には、シス、トランス等の異性体が存在するが、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果を有する。シス体およびトランス体のうちのトランス体の割合は、51%以上であることが好ましい。より好ましい下限値は55%であり、さらに好ましくは60%であり、特に好ましくは65%である。一方、好ましい上限値は100%であり、より好ましくは90%であり、さらに好ましくは85%であり、特に好ましくは79%である。この理由は不明であるが、後述する立体異性体のバリエーションが、広分子量分布化に適した領域にあると推測される。
上記式(2)において、n=6であるシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルのトランス純度は上記の範囲である。トランス純度が51%未満であると広分子量分布化の効果、活性、立体特異性等が不充分となることがある。また、トランス純度が79%を超えると広分子量分布化の効果が不充分となることがある。すなわち、トランス純度が上記の範囲内であれば、得られる重合体の分子量分布を広げる効果と、触媒の活性や得られる重合体の高い立体規則性とを高いレベルで両立する上で有利なことが多い。
環状エステル化合物(b)としては、下記式(2a)で表わされるシクロアルカン−1,2−ジカルボン酸ジエステル構造またはシクロアルケン−1,2−ジカルボン酸ジエステル構造を有する化合物が好ましい。
Figure 0006348422
〔式(2a)中の、n、R1は前記同様(すなわち、式(2)での定義と同様)であり、環状骨格中の単結合(ただしCa−Ca結合およびCa−Cb結合を除く。すなわち、C−Ca結合、C−Cb結合およびC−C結合(nが6〜10の場合))は、二重結合に置き換えられていてもよい。〕
上記式(2a)で表わされる化合物として具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジへプチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、が好ましい例示として挙げられる。その理由は、触媒性能だけでなく、これらの化合物がDielsAlder反応を利用して比較的安価に製造できる点にある。
環状エステル化合物(a)および(b)は、各々単独で用いてもよく各2種以上を組み合わせて用いてもよい。環状エステル化合物(a)と環状エステル化合物(b)の組合せモル比(環状エステル化合物(a)/(環状エステル化合物(a)+環状エステル化合物(b))×100(モル%))は10モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%である。好ましい上限値は99モル%、好ましくは90モル%。より好ましくは85モル%、さらに好ましくは80モル%である。
本発明の固体状チタン触媒成分(I)は、広範囲の環状エステル化合物(a)の組合せモル比の条件で、即ち固体状チタン触媒成分(I)の環状エステル化合物(a)の含有量が低くても、極めて分子量分布の広いオレフィン重合体を与えることができる。この効果の要因は明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
環状エステル化合物(a)は置換基Rの存在により環状エステル化合物(b)に比して形成し得る立体構造のバリエーションが極めて多いことは自明である。このため、分子量分布については環状エステル化合物(a)の影響が支配的になり、組合せモル比が低くても極めて広い分子量分布のオレフィン重合体を与えることができると考えられる。
一方、環状エステル化合物(a)と環状エステル化合物(b)とは比較的構造が似ているので、活性、立体規則性などの基本性能には互いの化合物の効果に影響を与え難い(構造が異なる化合物を用いた場合、活性や立体規則性等が激変することや、一方の化合物の効果が支配的になる例が多くある)。
このため、本発明で使用する固体状チタン触媒成分(I)は、環状エステル化合物(a)の含有率が低くても極めて広い分子量分布かつ高い立体規則性を有するオレフィン重合体を高い活性で与えることができる。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、分子量分布の広い重合体である。この理由は現時点では明らかでないが、以下のような原因が推定される。
環状炭化水素構造は、イス型、舟型など多彩な立体構造を形成することが知られている。さらに、環状構造に置換基を有すると、取りうる立体構造のバリエーションはさらに増大する。また、環状エステル化合物の環状骨格を形成する炭素原子のうちの、エステル基(COOR1基)が結合した炭素原子とエステル基(COOR1基)が結合した他の炭素原子との間の結合が単結合であれば、取りうる立体構造のバリエーションが広がる。この多彩な立体構造を取りうることが、固体状チタン触媒成分(I)上に多彩な活性種を形成することに繋がる。その結果、固体状チタン触媒成分(I)を用いてオレフィンの重合を行うと、多様な分子量のオレフィン重合体を一度に製造することができる、即ち分子量分布の広いプロピレン系ブロック共重合体を製造することができる。
本発明において、環状エステル化合物(a)および(b)は、固体状チタン触媒成分(I)を調製する過程で形成されてもよい。例えば、固体状チタン触媒成分(I)を調製する際に、環状エステル化合物(a)および(b)に対応する無水カルボン酸やカルボン酸ジハライドと、対応するアルコールとが実質的に接触する工程を設けることで、環状エステル化合物(a)および(b)を固体状チタン触媒成分中に含有させることもできる。
本発明で使用する固体状チタン触媒成分(I)の調製には、上記の環状エステル化合物(a)および(b)の他、マグネシウム化合物およびチタン化合物が用いられる。また、本発明の目的を損なわない限り、後述する触媒成分(d)とを組み合わせて用いてもよい。
(マグネシウム化合物)
固体状チタン触媒成分(I)の調製に用いられるマグネシウム化合物として具体的には、ハロゲンを含有するマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン化マグネシウム、特に塩化マグネシウムが好ましく用いられる。
(チタン化合物)
固体状チタン触媒成分(I)の調製に用いられるチタン化合物としては、例えば一般式;
Figure 0006348422
(Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。より具体的には、TiCl4、TiBr4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(O−n−C49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(O−isoC49)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(O−n−C493Cl、Ti(OC253Brなどのモノハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(OC494、Ti(O−2−エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタンなどを挙げることができる。
これらの中で好ましいものは、テトラハロゲン化チタンであり、特に四塩化チタンが好ましく用いられる。これらのチタン化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のようなマグネシウム化合物およびチタン化合物としては、例えば特開平5−170843号公報、特開平3−7703号公報などに詳細に記載されている化合物も挙げることができる。
固体状チタン触媒成分(I)の調製には、環状エステル化合物(a)および(b)を使用する他は、公知の方法を制限無く使用することができる。具体的には、例えば国際公開2010/032793号パンフレットに詳細に記載された方法を採用することができる。
(芳香族カルボン酸エステルおよび/または複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物)
固体状チタン触媒成分(I)は、さらに、芳香族カルボン酸エステルおよび/または複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下、「触媒成分(d)」ともいう。)を含んでいてもよい。固体状チタン触媒成分(I)が触媒成分(d)を含んでいると触媒活性を向上させたり、立体規則性を高めたり、分子量分布をより広げることができる場合がある。
触媒成分(d)としては、従来オレフィン重合用触媒に好ましく用いられている公知の芳香族カルボン酸エステルやポリエーテル化合物、たとえば特開平5−170843号公報や特開2001−354714号公報などに記載された化合物を制限無く用いることができる。
芳香族カルボン酸エステルとしては、芳香族多価カルボン酸エステルが好ましく、フタル酸エステル類がより好ましい。このフタル酸エステル類としては、フタル酸エチル、フタル酸n−ブチル、フタル酸イソブチル、フタル酸ヘキシル、フタル酸へプチル等のフタル酸アルキルエステルが好ましく、フタル酸ジイソブチルが特に好ましい。
また、ポリエーテル化合物として具体的な化合物としては、1,3−ジエーテル類が好ましく、特に、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンが好ましい。
これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の固体状チタン触媒成分(I)において、ハロゲン/チタン(原子比)(すなわち、ハロゲン原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜90である。
環状エステル化合物(a)/チタン(モル比)(すなわち、環状エステル化合物(a)のモル数/チタン原子のモル数)および環状エステル化合物(b)/チタン(モル比)(すなわち、環状エステル化合物(b)のモル数/チタン原子のモル数)は、0.01〜100、好ましくは0.2〜10である。
ここで、環状エステル化合物(a)と環状エステル化合物(b)の好ましい比率としては、100×環状エステル化合物(a)/(環状エステル化合物(a)+環状エステル化合物(b))の値(モル%)の下限値が5モル%、好ましくは25モル%、より好ましくは40モル%であり、特に好ましくは50モル%である。上限値は99モル%、好ましくは90モル%、より好ましくは85モル%、特に好ましくは80モル%である。
マグネシウム/チタン(原子比)(すなわち、マグネシウム原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜50である。また、前述した環状エステル化合物(a)および(b)以外に含まれても良い成分、例えば触媒成分(c)および触媒成分(d)の含有量は、好ましくは、環状エステル化合物(a)および(b)100重量%に対して20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
固体状チタン触媒成分(I)のより詳細な調製条件として、環状エステル化合物(a)および(b)を使用する以外は、例えばEP585869A1(欧州特許出願公開第0585869号明細書)や特開平3−7703号公報等に記載の条件を好ましく用いることができる。
有機金属化合物触媒成分(II)
有機金属化合物触媒成分(II)としては、周期表の第1族、第2族および第13族から選ばれる金属原子を含む有機金属化合物が挙げられる。具体的には、第13族金属を含む化合物、例えば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物などを用いることができる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。有機金属化合物触媒成分(II)として具体的には、前記EP585869A1等の公知の文献に記載された有機金属化合物触媒成分を好ましい例として挙げることができる。
電子供与体(III)
オレフィン重合用触媒は、上記の有機金属化合物触媒成分(II)と共に、必要に応じて電子供与体(III)を含んでいてもよい。電子供与体(III)として好ましくは、有機ケイ素化合物が挙げられる。この有機ケイ素化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。
国際公開第2004/016662号パンフレットに記載されているアルコキシシラン化合物も前記有機ケイ素化合物の好ましい例である。化合物の具体例として、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジメチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、エチル−iso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
前記有機ケイ素化合物の他の例として具体的には、(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。また、電子供与体(III)として他に有用な化合物としては、前記触媒成分(d)として定義した、芳香族カルボン酸エステルおよび/または複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物(ポリエーテル化合物)も好ましい例として挙げられる。
なお、オレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にも必要に応じてオレフィン重合に有用な他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、シリカなどの担体、帯電防止剤等、粒子凝集剤、保存安定剤などが挙げられる。粒子凝集剤として、例えば塩化マグネシウムとエタノールを用いて粒子を生成する際、ソルビタンジステアレートなどが好ましい化合物として使用される。
(プロピレン系重合体の製造方法)
本発明に係るプロピレン系重合体は、要件[1]〜[4]を同時に満たす限り製造方法が限定されるものではない。
本発明に係るプロピレン系重合体の製造方法では、上述したオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを予備重合(prepolymerization)させて得られる予備重合触媒の存在下で、本重合(polymerization)を行うことが可能である。当該製造方法の詳細については、国際公開2010/032793号パンフレットに記載された方法を用いることができる。予備重合は、オレフィン重合用触媒1g当り0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの量でオレフィンを予備重合させることにより行われる。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりも高い濃度の触媒を用いることができる。
予備重合における固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で、通常、0.001〜200ミリモル、好ましくは0.01〜50ミリモル、より好ましくは0.1〜20ミリモルの範囲である。
予備重合における有機金属化合物触媒成分(II)の量は、固体状チタン触媒成分(I)1g当り0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500gの重合体が生成するような量であればよく、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常、約0.1〜300モル、好ましくは0.5〜100モル、より好ましくは1〜50モルである。
予備重合では、必要に応じて前記電子供与体(III)等を用いることもでき、この際これらの成分は、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、0.1〜50モル、好ましくは0.5〜30モル、より好ましくは1〜10モルの量で用いられる。
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィンおよび上記の触媒成分を加え、温和な条件下に行うことができる。この場合、用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
これらの不活性炭化水素媒体のうち、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。このように、不活性炭化水素媒体を用いる場合、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。
一方、オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともできるし、また実質的に溶媒のない状態で予備重合することもできる。この場合には、予備重合を連続的に行うのが好ましい。
予備重合で使用されるオレフィンは、後述する本重合で使用されるオレフィンと同一であっても、異なっていてもよいが、プロピレンであることが好ましい。予備重合の際の温度は、通常、−20〜+100℃であり、好ましくは−20〜+80℃、より好ましくは0〜+40℃の範囲である。
次に、予備重合を経由した後に、あるいは予備重合を経由することなく実施される本重合(polymerization)について説明する。本重合(polymerization)は、結晶性プロピレン系(共)重合体を製造する工程および共重合体ゴムを製造する工程に分けられが、そのいずれの工程において使用される(すなわち、重合される)オレフィンとしては、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンが挙げられる。炭素原子数4〜20のα−オレフィンの具体例として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、これらの中でも、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。これより、好ましいオレフィンの組み合わせとしては、プロピレン・エチレン、プロピレン・1−ブテン、プロピレン・1−ペンテン、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン、プロピレン・エチレン・1−ブテン、プロピレン・エチレン・1−ペンテン、プロピレン・エチレン・4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。また、剛性の高い樹脂において分子量分布の広い重合体のメリットが発現し易い観点から、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが共重合体の構成として含まれるものが特に好ましい。
これらのα−オレフィンと共に、スチレン、アリルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン等の脂環族ビニル化合物;を用いることもできる。さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンなどの環状オレフィン;イソプレン、ブタジエンなどの共役ジエン;非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を重合原料として用いることもできる。これらの化合物を1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい(以下、上記のエチレンおよび炭素原子数が4〜20のα−オレフィンと共に用いられるオレフィンを「他のオレフィン」ともいう)。
他のオレフィンの中では、芳香族ビニル化合物が好ましい。また、オレフィンの総量100重量%のうち、少量、例えば10重量%以下、好ましくは5重量%以下の量であれば、他のオレフィンが併用されてもよい。
本発明では、予備重合および本重合は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施できる。本重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素を用いることもできるし、反応温度・圧力において液体であるオレフィンを用いることもできる。
本発明のプロピレンブロック共重合体の製造方法における本重合においては、前記固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜0.5ミリモル、好ましくは約0.005〜0.1ミリモルの量で用いられる。また、前記有機金属化合物触媒成分(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、通常、約1〜2000モル、好ましくは5〜500モルとなるような量で用いられる。電子供与体(III)は、使用される場合であれば、前記有機金属化合物触媒成分(II)1モルに対して、0.001〜50モル、好ましくは0.01〜30モル、より好ましくは0.05〜20モルの量で用いられる。
本重合を水素の存在下に行えば、得られる重合体の分子量を調節する(下げる)ことができ、メルトフローレートの大きい重合体が得られる。本重合において、オレフィンの重合温度は、通常、約20〜200℃、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。圧力(ゲージ圧)は、通常、常圧〜100kgf/cm2(9.8MPa)、好ましくは2〜50kgf/cm2(0.20〜4.9MPa)に設定される。本発明のプロピレンブロック共重合体の製造方法においては、重合を、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに重合を、反応条件を変えて二段以上に分けて行うこともできる。このような多段重合を行えば、オレフィン重合体の分子量分布をさらに広げることが可能である。
本発明にかかるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法についてさらに詳細に説明する。本発明者の別の知見に拠れば、本発明のプロピレン系ブロック共重合体を構成するn−デカン不溶部(Dinsol)は、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムポリマー(エチレンおよび炭素原子数4以上のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンに起因する骨格を1.5mol%を超えない量で含有するプロピレン系重合体)、またはこれらの二種以上の混合体と実質的に同一である。
一方、n−デカン可溶部(Dsol)は、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体またはこれら二種以上の混合体と実質的に同一である(なお、「共重合体」にはランダムポリマーも含まれる)。したがって、本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、大きくは次のいずれかの製造方法によって製造が可能となる。
方法A
次の二つの重合工程(重合工程1および重合工程2)を連続的に実施することによって、要件[1]〜要件[3]、および好ましくは要件[4]および/または[5]を満たすプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法(以下、この方法を「直重法」と呼び、この方法によって得られるプロピレン系ブロック共重合体を、「プロピレン系ブロック共重合体(A)」と呼ぶ場合がある)。
[重合工程1]:
プロピレン、必要に応じてエチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを固体状チタン触媒成分の存在下で(共)重合体を製造する工程(結晶性プロピレン系(共)重合体製造工程)である。
[重合工程2]:
プロピレン並びに、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを固体状チタン触媒成分の存在下で共重合体を製造する工程(共重合体ゴム製造工程)である。
方法B
方法Aの重合工程1で生成する(共)重合体と、前記方法Aの重合工程2で生成する共重合体を、固体状チタン触媒成分の存在下で個別に製造した後に、これらを物理的手段によりブレンドする方法(以下、この方法を「ブレンド法」と呼び、この方法によって得られるプロピレン系ブロック共重合体を、「プロピレン系共重合体(B)」と呼ぶ場合がある)。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、前述したオレフィン重合用触媒の存在下、方法Aに記載の通り、重合工程1においてプロピレンの媒体中でプロピレンの単独重合またはエチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンに起因する骨格を1.5mol%を超えない量で含有するプロピレン系共重合の製造を行い、重合工程2でプロピレンとエチレンおよび炭素原子数が4〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとの共重合を行う。その結果、最終的に得られたプロピレン系ブロック共重合体が室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)5〜80重量%と室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)20〜95重量%から構成されることを特徴としている。
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いてプロピレンの単独重合を行うと、デカン不溶成分含有率が70重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは重量90%以上である立体規則性の高い、すなわち結晶性成分含有量の多いプロピレン系ブロック共重合体が得られる。
さらに、このような本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法によれば、本発明のオレフィン重合用触媒の作用により、多段重合を行わなくても、少ない段数の重合、例えば単段重合でも、分子量分布の広いプロピレン重合体を得ることができる。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法によれば、特に、メルトフローレート(MFR)が同等である従来のオレフィン重合体よりも、分子量の高い成分の比率が高く、かつ分子量の低い成分の比率が低いオレフィン重合体が得られる場合が多いことが特徴である。この特徴は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により確認することができ、Mw/Mn値およびMz/Mw値の両方が高い重合体を得ることができる。
従来のマグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含む固体状チタン触媒成分を用いて得られるポリプロピレンは、例えば、MFRが1〜10g/10分の領域では、GPC測定で求められる分子量分布の指標であるMw/Mn値が6以下、Mz/Mw値が4未満となることが一般的であったが、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を用いると、上記の同様の重合条件でMw/Mn値が7〜30、好ましくは8〜20のプロピレン系ブロック共重合体を得ることができる。
また、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法によれば、Mz/Mw値、の高い重合体が得られることがわかっており、Mz/Mw値は6.0〜25、好ましくは6.5〜23、より好ましくは7.0〜20である。さらに、Mz/Mn値の上限値は、好ましくは300、より好ましくは250、特に好ましくは200である。下限値は、好ましくは70、より好ましくは100、特に好ましくは120である。特に、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法では、Mz/Mw値、Mz/Mn値の高い重合体が得られる。
Mw/Mn値が高いプロピレン重合体は、成形性や剛性に優れる。一方、Mz/Mw値が高いことは、分子量の高い成分の含有比率が高いことを表しており、得られるプロピレン重合体の溶融張力が高く、成形性に優れる可能性が高い。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を用いれば、多段重合を行わなくても分子量分布の広い、すなわちMw/Mn値の高い重合体を得ることができるので、重合体製造装置等がシンプルな形で、成形性や剛性に優れたプロピレン重合体を得る事ができる可能性がある。また、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて、従来の多段重合法により重合を行うと、さらに分子量分布の広い重合体を製造することができ、溶融張力や成形性により優れた重合体となることが予想される。
さらに、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法を用いれば、高分子量成分含有量の多い、すなわちMz/Mw値、Mz/Mn値の高い重合体を得ることができるので高流動性と高溶融張力の両立化が図られた重合体が得られ、大型製品の射出成形や射出成形サイクルの短縮が可能となり、また、射出成形品の外観が良好になり、ブロー成形性、発泡成形性が良好になるなど、成形加工性の付与が可能となる。
分子量分布の広い重合体を得る他の方法としては、分子量の異なる重合体を溶解混合や、溶融混練する方法もあるが、これらの方法により得られる重合体は、作業が比較的煩雑な割には、溶融張力や成形性の向上が充分でない場合がある。これは分子量の異なる重合体は基本的に混ざり難いためと推定されている。一方、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法で得られる重合体は、触媒レベル、即ちナノレベルで、極めて広い範囲の分子量の異なる重合体が混合しているので、溶融張力が高く、成形性に優れていることが予想される。
本発明に係るプロピレン系重合体は、高活性触媒を使用する故に触媒に由来する金属残渣が少ないという特徴がある。広分子量分布化可能な触媒として良く知られている三塩化チタン系触媒を用いて得られたプロピレン系重合体は、低活性故に重合体中の金属残渣が多い。用途によっても異なるが、金属残渣が多い場合、外観や樹脂物性を低下させる、あるいは樹脂に色が付くなど悪影響をもたらすことが多いと言われている。そのため、一般的にはアルコールや酸などを用いて熱をかけて脱灰処理を行い、重合体に残存した触媒由来の金属分を除去する。三塩化チタン系触媒の場合、脱灰前の重合体中に含まれるチタン金属が30〜200ppmであるが、脱灰処理することで2〜50ppmまで下げることができる。一方、本発明のプロピレン系ブロック重合体を得るのに用いた高活性触媒の場合は、脱灰前のチタン金属成分は、重合体中に1〜30ppm、脱灰処理することで0.1〜2ppmに下げることが可能である。
[核剤]
核剤は、異方性を有する有機金属塩核剤である。異方性を有するとは、その核剤を使用した場合、使用しなかった場合と比較してTD方向(成形加工時の樹脂の流動方向と直角方向)の収縮率が大きいことを意味する。
これは、その核剤を使用した場合、プロピレン系樹脂組成物中で、核剤がMD方向(成形加工時の樹脂の流動方向)に配向し、プロピレン樹脂の結晶ラメラはその垂直方向に成長するため、MD方向(流れ方向)とTD方向(直角方向)において収縮率差が生じることに起因すると推定される。
本発明のプロピレン系重合体組成物は、下記の要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体と、有機金属塩である核剤とを含むプロピレン系重合体組成物であって、前記核剤が、前記プロピレン系重合体に対して150ppm以上3000ppm以下含むことを特徴とするものである。
[1]室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)が0重量%以上80重量%以下、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)が20重量%以上100重量%以下(ただし、DsolとDinsolの合計量は100重量%である)
[2]Dinsolのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上30以下、かつMz/Mwが6.0以上25以下
[3]Dinsolのペンタド分率(mmmm)が93%以上
[4]Dinsolの示差走査熱量計で測定された融点(Tm)が140℃以上
そして、前記核剤は有機リン酸塩であることを特徴としている。なかでも、「アデカスタブNA−11」「アデカスタブNA−21」「アデカスタブNA−25」(いずれも株式会社アデカ製)が望ましい。
有機リン酸塩であることを特徴とする核剤を含む本発明のプロピレン系重合体組成物を射出成形体に用いるのは本発明の好ましい態様である。
さらに、本発明のプロピレン系重合体組成物は薄肉成形体にも用いられる。
具体的に、異方性を有する有機金属塩核剤としては、有機リン酸塩系造核剤、 カルボン酸の金属塩造核剤、ロジン系造核剤が挙げられる。この中で、好ましいのは有機リン酸であり、例えばビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩
、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2’−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸塩リチウム、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビス−(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩等が挙げられる。これらは、市販されているものを用いてもよい。例えば、ADEKA社から販売されている「アデカスタブNA−11」、「アデカスタブNA−21」、「アデカスタブNA−25」等が挙げられる。
本発明のプロピレン重合体組成物において、その必須成分であるプロピレン系重合体は、後述するように広分子量分布であることに起因し、高分子量の重合体を多く含んでいる。そのために射出成形においてMD方向(成形時の流れ方向)の結晶配向が強く残り、成形収縮率の異方性が発生し、成形体のそり変形を引き起こすものと考えられる。しかし上記特定の核剤が加わることで、核剤がMD方向に配向し、この核剤を核としてプロピレン樹脂がTD方向(MDと垂直方向)に結晶成長が促され、その結果、成形収縮率の異方性が打ち消されることにより、そり変形が効果的に抑制できるものと考えられる。
[プロピレン樹脂組成物に含まれる安定剤、その他の成分]
本発明に係るプロピレン樹脂組成物は、以下に示す各種添加剤、好ましくは無機充填剤及び/又はエラストマーを含むことができる。
本発明で用いられる安定剤は、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、塩化吸収剤、充填剤、軟化剤等の公知の安定剤を制限無く用いることができる。例えば、公知のフェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、無機酸化物、ガラス繊維などが挙げられる。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物には、さらに、他の耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを含んでもよい。
また、本発明に係るプロピレン樹脂組成物は、耐衝撃性を付与する目的で、エラストマー成分を添加しても良い。エラストマーとしては、本発明のプロピレン系ブロック共重合体とは異なる、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体、水素添加プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体およびその他の弾性重合体ならびにこれらの混合物などが挙げられる。これらのエラストマー成分は、特に限定されないが、好ましくは、本発明のプロピレン系ブロック共重合体100重量部に対して、1〜100重量部、より好ましくは3〜60重量部である。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、発明の効果が損なわれない範囲で、他のプロピレン重合体成分を添加しても良い。さらに、本発明に係るプロピレン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グフファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維等の無機充填剤、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、炭素繊維等の有機充填剤を含んでいてもよい。これらの充填剤は、特に限定されないが、好ましくは、本発明のプロピレン系ブロック共重合体100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは3〜60重量部である。本発明においてそり変形を改良するために用いられる結晶性核剤は、リン酸金属塩、カルボン酸金属塩が挙げられる。特に、リン酸金属塩が好ましい。
〔射出成形体〕
本発明に係る射出成形体は、上述したプロピレン重合体組成物を用いて製造される。該プロピレン重合体組成物に含まれるプロピレン系重合体は、上述の要件[1]〜[4]を同時に満たすことから、剛性−耐衝撃性バランスがよく、さらには、広分子量分布であることに起因し、溶融流動性が高く、高分子量の重合体を多く含んでおり、それに基づき高分子量重合体が結晶核剤としての効果を発現することにより、結晶化速度が速くなるとの特徴がある。このような特徴から、剛性−耐衝撃性のバランスに優れ、成形時の金型への流動性が高く、さらには結晶化速度が速いことから成形サイクルが短縮できるという特徴を有する。さらに、前述の通り特定の核剤を含むことによって、薄肉射出成形体におけるそり変形が抑制され、成形外観が良好である。
したがって、本発明に係る射出成形体は用途が限定されることはないが、自動車外装部品、自動車内装部品、その他自動車部品、家電部品、食品容器、飲料容器、医療容器、コンテナ等に好適に使用することができる。
特に、薄肉の射出成形体においてそり変形抑制の効果が高いことから、食品容器、医療容器等における薄肉容器に特に好適に使用できる。本発明において、薄肉の射出成形体とは、厚さ3mm未満の成形体を指す。好ましくは0.3mm以上2.0mm以下においてそり変形抑制効果が高い。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。プロピレン系重合体またはプロピレン系重合体組成物の物性測定、機械物性評価、成形性評価は、下記の方法により行った。
(1)室温n−デカン可溶(不溶)成分量(〔wt%〕)
ガラス製の測定容器にプロピレン系ブロック共重合体約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この重量を、下式においてb(g)と表した。)、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系ブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得、この重量を10-4gの単位まで測定した(この重量を、下式においてa(g)と表した)。この操作の後、デカン可溶成分量を下記式によって決定した。
室温n−デカン可溶成分(Dsol)含有率=100×(500×a)/(100×b)
室温n−デカン不溶成分(Dinsol)含有率=100−100×(500×a)/(100×b)
(2)分子量分布
液体クロマトグラフ: Waters製AllianceGPC2000型(示差屈折計検出器一体型)を用いた。
カラム:東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続した。
移動相媒体:o−ジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
測定温度:140℃
検量線の作成方法:標準ポリスチレンサンプルを使用した。
サンプル濃度:0.15%(w/v)
サンプル溶液量:500μl
の条件で測定し、得られたクロマトグラムを公知の方法によって解析することでMw/Mn値を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
(3)ペンタド分率(mmmm:〔%〕)
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べた。ペンタド分率(mmmm,%)は、プロピレン重合体においてMacromolecules8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、日本電子製EX−400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
(4)融点(Tm)
パーキンエルマー社製DiamondDSCを用いた。
サンプル重量:5mmg
材質がアルミニウムで底が平坦なサンプルパンを用い、サンプルは0.5mm厚みのプレスシートを用い、サンプルパンの中でサンプルが重ならないようにした。230℃に昇温後(昇温速度500℃/min)、10分間その温度を保持し、降温速度10℃/minで30℃まで冷却した後、1分間30℃で保持した。その後、昇温速度10℃/minで230℃まで昇温し、もっとも融解ピーク高さが高いピークのピーク温度を融点とした。
(5)エチレンに由来する骨格の含量
Dsol中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。
プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
プロピレン(mol%)=(PP+1/2EP)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)
エチレン(mol%)=(1/2EP+EE)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)
なお、本実施例におけるDsolのエチレン量単位は、重量%に換算して標記した。また、Dsolにおいて、CSDは、下式(i)に従って算出した。
Figure 0006348422
(式(i)中、[EE]はDsol中のエチレン連鎖のモル分率、[PP]はDsol中のプロピレン連鎖のモル分率、[PE]はプロピレン−エチレン連鎖のモル分率である。)に従って測定した。
(6)メルトフローレート(MFR:〔g/10分〕)
ASTMD1238Eに準拠し、2.16kg荷重で測定した。測定温度は230℃とした。
(7)引張弾性率
型締め力80トンの電動射出成形機(東洋機械金属社製Si−80III)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度40℃の条件で、引張弾性率用試験片ISOテストピース型(タイプA型)を射出成形し、引張弾性率測定用の試験片を得た。
引張弾性率は、ISO527−2に定められた引張弾性率試験法に従って測定した。なお、引張測定温度は23℃、0℃、試験速度は1mm/minとした。
(8)シャルピー衝撃試験
(JIS小型試験片)
シャルピー衝撃試験(〔kJ/m2〕)は、JISK7111に従って、下記の試験条件で測定した。
温度:23℃、0℃
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
ノッチ:機械加工
(9)スパイラルフロー
厚さ1mm、幅10mmのスパイラル上の流路を持つ樹脂流動長測定用金型を用いた。下記のスパイラルフロー測定射出成形条件で測定した。
射出成形機:ファナック社製オートショットTシリーズモデル100D
シリンダー温度:230℃
金型温度:40℃
射出時間:5秒(保圧設定無し)
(10)そり試験
そり変形を測定する方法は、型締め力100トンの電動射出成形機(ファナック社製オートショットTシリーズモデル100D)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度20℃、射出スピード20mm/sec、射出時間3.5sec、冷却時間3sec条件で、センターゲートの円盤、直径250mm、厚さ2mmの円盤試験片を作成した。
これら試験片を用いて、そり変形を測定した。円盤試験片を水平面に置き、1点を指で押さえた状態で、水平面から最も浮き上がっている部分の浮き上がり高さを測定した。すなわち、数値が大きいほど、そり変形が大きい。
(11)冷却時間、落球試験
射出成形機として、ファナック社製オートショットTシリーズモデル100Dを使用した。肉厚3mm、底部直径75mm、上部直径80mm、高さ80mmの広口カップ金型を用い、成形温度230℃、金型温度50℃、冷却時間20秒の条件で成形を開始し、冷却時間を短縮していき、金型から成形品を突き出す際に、成形品の変形が発生する冷却時間を測定した。
また、肉厚0.5mm、底部直径49mm、上部直径63mm、高さ110mm、上部の円周に沿って幅4mm、肉厚0.5mmのフランジを有する飲料カップ金型を用いて、成形温度230℃、金型温度20℃、冷却時間8秒の条件で成形を行い、成形体を得た。次いで、当該成形体に試験温度5℃で、直径30mm、重量130gの鉄球を落下させて、フランジ部の割れが発生する高さを測定した。
[製造例1]
(固体状チタン触媒成分の調製)
内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製(TKホモミクサーM型))を充分窒素置換した後、この装置に精製デカン700ml、市販塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよび商品名レオドールSP−S20(花王(株)製ソルビタンジステアレート)3gを入れ、この懸濁液を撹拌しながら系を昇温し、懸濁液を120℃にて800rpmで30分撹拌した。次いでこの懸濁液を、沈殿物が生じないように高速撹拌しながら、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め−10℃に冷却された精製デカン1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移した。移液により生成した固体を濾過し、精製n−ヘプタンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。この固体状付加物をデカンで懸濁状にして、マグネシウム原子に換算して23ミリモルの上記固体状付加物を、−20℃に保持した四塩化チタン100ml中に、攪拌下、導入して混合液を得た。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、80℃に達したところで、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を、固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.0875モルの割合の量で添加し、40分間で110℃まで昇温した。110℃に到達したところで更にシクロヘキサン1,2−ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.06モルの割合の量で添加し、温度を110℃で90分間攪拌しながら保持することによりこれらを反応させた。
90分間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を100mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、昇温して110℃に達したところで、45分間撹拌しながら保持することによりこれらを反応させた。45分間の反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよびヘプタンで、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分(α2)はデカン懸濁液として保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(α2)の組成はチタン3.2質量%,マグネシウム17質量%,3,6−ジメチルシクロヘキサン1,2−ジカルボン酸ジイソブチル10.9質量%、シクロヘキサン1,2−ジカルボン酸ジイソブチル8.5質量%およびエチルアルコール残基0.6質量%であった。
(固体状チタン触媒成分の予備重合)
次に、窒素で置換した内容積200ミリリットルの攪拌機付きの三つ口フラスコに、脱水したヘキサンを加え、トリエチルアルミニウム0.75ミリモル、さらに上記の固体状チタン触媒成分(α2)の懸濁液をチタン原子換算で0.25ミリモル投入、全量を50ミリリットルとした。これを攪拌下、20℃を維持して60分間プロピレンを所定量吸収させた。その後、残留プロピレンを窒素で置換して、ヘキサンを用いて充分洗浄を行い、予備重合触媒成分を得た。
(重合)
内容積17リットルのオートクレーブにプロピレン3キログラム、水素270リットルを装入し、60℃に昇温した後、トリエチルアルミニウムを15ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを5ミリモル、および前記予備重合触媒成分をチタン原子換算で0.05ミリモル装入した。次いで70℃に昇温した後、これを30分保持してプロピレンのホモ重合を行い、終了後に未反応のプロピレンなどのガスをパージするため、ベントバルブを開け、常圧まで脱圧した。
圧力が常圧になった後、引き続き、エチレンとプロピレンとの共重合を行った。すなわちエチレンを毎時450リットル、プロピレンを毎時750リットル、水素を毎時5.8リットル供給し、ベントバルブの開度を調整して、圧力を1MPaに120分保持した。この際、温度は70℃とした。
所定時間終了後、少量のエタノールをオートクレーブに装入して重合を停止し、未反応のガスをベントバルブを開けることでパージした。次いで、オートクレーブ内の白色粒子を80℃、減圧下で乾燥して約2.5kgの重合体粒子を得た。この操作を3度繰り返して、プロピレン系重合体(A−1)を得た。プロピレン系重合体の評価結果を表1に示した。
[実施例1]
製造例1で得たプロピレン系重合体(A−1)100重量部に対して、耐熱安定剤IRGANOX1010(商標、チバジャパン(株))0.1重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商標、チバジャパン(株))0.1重量部、耐熱安定剤IRGANOX1076(商標、チバジャパン(株))0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、結晶性核剤アデカスタブNA−11(商標、ADEKA)0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて溶融混合してペレット状のプロピレン系重合体組成物を得た。得られたプロピレン系重合体組成物の評価結果を表2に示す。
[実施例2]
結晶性核剤を0.05重量部にした以外は実施例1と同様に試験、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
結晶性核剤を使用しない以外は実施例1と同様に試験、評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
プロピレン系重合体として、プライムポリマー社製、J709QG(表1参照)を使用した以外は実施例1と同様に試験、評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006348422
Figure 0006348422

Claims (3)

  1. 下記の要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体と、異方性を有する有機金属塩である核剤とを含むプロピレン系重合体組成物であって、前記核剤が、成形体のTD方向の収縮率を大きくできるという異方性を有し、かつ有機リン酸塩からなり、前記プロピレン系重合体に対して150ppm以上2500ppm以下で含む組成物を含んでなり、厚さが0.3mm以上2.0mm以下の薄肉成形体を射出成形しうるプロピレン系重合体組成物;
    [1]室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)が10重量%以上80重量%以下、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)が20重量%以上90重量%以下(ただし、DsolとDinsolの合計量は100重量%である)、
    [2]Dinsolのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上30以下、かつMz/Mwが6.0以上25以下、
    [3]Dinsolのペンタド分率(mmmm)が93%以上、
    [4]Dinsolの示差走査熱量計で測定された融点(Tm)が140℃以上。
  2. 前記プロピレン系重合体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、30g/10分以上であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
  3. 下記の要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系重合体と、異方性を有する有機金属塩である核剤とを含むプロピレン系重合体組成物であって、前記核剤が、成形体のTD方向の収縮率を大きくできるという異方性を有し、かつ有機リン酸塩からなり、前記プロピレン系重合体に対して150ppm以上2500ppm以下で含む組成物を含んでなり、厚さが0.3mm以上2.0mm以下の薄肉成形体であることを特徴とする、射出成形体
    [1]室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)が10重量%以上80重量%以下、室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)が20重量%以上90重量%以下(ただし、DsolとDinsolの合計量は100重量%である)、
    [2]Dinsolのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上30以下、かつMz/Mwが6.0以上25以下、
    [3]Dinsolのペンタド分率(mmmm)が93%以上、
    [4]Dinsolの示差走査熱量計で測定された融点(Tm)が140℃以上。
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