以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1〜図3は、一実施形態によるペースト混合器10を示す図、図4〜図12は、ペースト混合器10の構成要素を示す図である。図示のペースト混合器10は、図示しないペースト供給装置から供給された互いに異なる2種類のペースト状物質をハウジング内で混合して外部に放出できるものである。しかし本発明に係るペースト混合器は、互いに異なる3種類以上のペースト状物質を混合して放出する構成にも適用できる。
図1〜図3に示すように、ペースト混合器10は、中空のハウジング12と、ハウジング12に回動可能に収容される混練部材14と、ハウジング12に着脱自在に取り付けられるキャップ16とを備える。ハウジング12は、ペースト出口18と、ペースト出口18とは別の開口部20とを有する。この実施形態におけるハウジング12は、図4〜図6に示すように、開口部20を有する第1部分22と、ペースト出口18を有する第2部分24とを備える。第2部分24は、ハウジング12の長手軸線12aに沿って延長され、第1部分22は、第2部分24に対し長手軸線12aを中心として外方へ拡張される。混練部材14をハウジング12に収容した状態で、ハウジング12の長手軸線12aは混練部材14の回動軸線14aに合致して配置される(図3参照)。
さらに詳述すると、ハウジング12の第1部分22は、長手軸線12aに略平行に延長される円筒状のキャップ取付部分22aと、キャップ取付部分22aの前端(図6で下端)からキャップ取付部分22aに対し同心配置で徐々に縮径して前方(図6で下方)へ延長される円錐台状の上流域部分22bとを有する。開口部20は、円形輪郭を有して、キャップ取付部分22aの後端(図6で上端)に形成される。第1部分22はさらに、開口部20に隣接して、キャップ取付部分22aの外周面から長手軸線12aに略直交する方向へ突設される環状のフランジ26を有する。
ハウジング12の第2部分24は、上流域部分22bの前端(図6で下端)から上流域部分22bに対し同心配置で長手軸線12aに略平行に前方(図6で下方)へ延長される円筒状の中流域部分24aと、中流域部分24aの前端(図6で下端)から中流域部分24aに対し同心配置で徐々に縮径して前方(図6で下方)へ延長される円錐台状の下流域部分24bとを有する。ペースト出口18は、下流域部分24bの前端(図6で下端)から下流域部分24bに対し同心配置で長手軸線12aに略平行に前方(図6で下方)へ延長される円筒状要素として形成される。ペースト出口18は、その前端(図6で下端)に、円形輪郭の出口開口部18aを有する。
ハウジング12は、第1部分22及び第2部分24を含む全体が、例えば樹脂材料から射出成形により一体に形成されることができる。ハウジング12の素材は、ペースト混合器10の使用対象となるペースト状物質に対して化学的に安定な物性を有することが好ましい。例えば、ペースト状物質がメチルアルコールを含有する物質である場合、ハウジング12の素材はポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂であることができる。またハウジング12は、ペースト状物質の混合時の混練部材14の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗して自己形状を保持し得る剛性を有する。
混練部材14は、撹拌羽根28、30を有する。この実施形態における混練部材14は、図7〜図9に示すように、軸部32と、軸部32の外周面34に突設される第1の複数の撹拌羽根28と、軸部32の外周面34に突設される第2の複数の撹拌羽根30とを有する。さらに詳述すると、軸部32は、回動軸線14aに略平行に延長される円柱状の主部分32aと、主部分32aの前端(図9で下端)から主部分32aに対し同心配置で徐々に縮径して延長される円錐台状の末端部分32bと、主部分32aの後端(図9で上端)から主部分32aに対し同心配置で回動軸線14aに略平行に延長される円筒状の基端部分32cとを有する。
主部分32aと基端部分32cとの間には、軸部32の外周面34から僅かに突出して周方向へ環状に延びるフランジ36が形成される。フランジ36は、基端部分32cに隣接する側に、回動軸線14aに略直交する方向へ延びる環状の端面36aを有する。また、基端部分32cには、後端(図9で上端)で開口する有底の連結穴38が形成される。連結穴38は、回動軸線14aに略平行に延長されて、主部分32aに幾分入り込んだ位置に底面を有する。連結穴38は、図示しないペースト供給装置が有する駆動軸を着脱自在に受容して、混練部材14を駆動軸に着脱自在に連結できる。この実施形態では、連結穴38は六角穴の形状を有するが、駆動軸との連結形態に応じた様々な穴形状を採用できる。
第1の撹拌羽根28は、フランジ36に隣接して軸部32の主部分32aに形成される略直角三角形の平板状要素である。第1の撹拌羽根28は、フランジ36の端面36aと共面で回動軸線14aに略直交する方向へ延びる略矩形の端面28aを有するとともに、最大表面積を呈する略直角三角形の表裏一対の主平面28bを回動軸線14aに略平行する方向に向けて配置される。さらに詳述すると、第1の撹拌羽根28は、端面28aを有する領域で軸部32の外周面34からフランジ36よりも十分に大きく外方へ突出し、端面28aから遠ざかるに従い外周面34からの突出量を徐々に減少させて三角形の斜辺に相当する縁面28cを形成し、端面28aから回動軸線14a方向へ所定距離離れた位置で縁面28cを回動軸線14aに略平行に向けた後に終端する。この実施形態では、回動軸線14aに関して線対称の位置に、一対の第1の撹拌羽根28が形成される。またこの実施形態では、回動軸線14aに対する撹拌羽根28の縁面28cの角度は、ハウジング12の長手軸線12aに対する第1部分22の上流域部分22bの角度に対応する。
第2の撹拌羽根30は、フランジ36から離隔して軸部32の主部分32aに形成される略扇形の刃状要素である。第2の撹拌羽根30は、回動軸線14aに略平行する方向へ延びる端面30aを有するとともに、最外面となる弧状面30bを回動軸線14aの周りで周方向に向けて配置される。さらに詳述すると、第2の撹拌羽根30は、端面30aを有する領域で、軸部32の外周面34からフランジ36よりも僅かに大きくかつ第1の撹拌羽根30の最大突出領域よりも小さく外方へ突出し、端面30aから遠ざかるに従い外周面34からの突出量を徐々に減少させて弧状面30bを形成し、端面30aから周方向へ所定距離離れた位置で終端する。この実施形態では、第1の撹拌羽根28から軸部32の長手方向へ略等間隔で離隔した3箇所のそれぞれにおいて、回動軸線14aに関して4回対称の位置に、4個の第2の撹拌羽根30が形成される。さらに、一対の第1の撹拌羽根28に対し周方向へ等間隔の位置(したがって回動軸線14aに関して線対称の位置)に、一対の第2の撹拌羽根30が形成される。
混練部材14は、第1及び第2の撹拌羽根28、30と軸部32とを含む全体が、例えば樹脂材料から射出成形により一体に形成されることができる。混練部材14の素材は、ペースト混合器10の使用対象となるペースト状物質に対して化学的に安定な物性を有することが好ましい。例えば、ペースト状物質がメチルアルコールを含有する物質である場合、混練部材14の素材はポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂であることができる。また混練部材14は、ペースト状物質の混合時の混練部材14自体の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗して自己形状を保持し得る剛性を有する。
キャップ16は、開口部20を覆うようにハウジング12に取り付けられて、混練部材14の撹拌羽根28、30が撹拌動作する混合室40を、ハウジング12と協働して画定する(図3参照)。キャップ16は、複数種類(この実施形態では2種類)のペースト状物質を個別に混合室40に導入するための複数(この実施形態では一対)のペースト入口42、44を有する。この実施形態では、図10〜図12に示すように、第1のペースト入口42は、両端の入口開口部42a、42bと、それら入口開口部42a、42bの間をキャップ16の中心軸線16aに略平行な方向へ延びる内壁面42cとを有する。また、第2のペースト入口44は、両端の入口開口部44a、44bと、それら入口開口部44a、44bの間をキャップ16の中心軸線16aに略平行な方向へ延びる内壁面44cとを有する。
さらに詳述すると、キャップ16は、全体として円盤状の要素であり、中心軸線16aの周りでいずれも中心軸線16aに略直交する方向へ延びる環状の表面16b及び裏面16cを有する。表面16bには、中心軸線16aの周りで軸線方向へ凹設される複数の凹所46が形成され、裏面16cには、中心軸線16aの周りでそれら凹所46を画定するいずれも円筒状の内壁46a及び外壁46b並びに環状平板状の底壁46cが形成される。裏面16cにはさらに、キャップ16の外周縁に沿って、中心軸線16aに略平行な方向へ延びる円筒状の外周壁48が形成される。キャップ16の外壁46bの最大外径は、ハウジング12のキャップ取付部分22aの最小内径に略等しいか僅かに小さく設定され、キャップ16の外周壁48の最小内径は、ハウジング12のフランジ26の最大外径に略等しいか僅かに大きく設定される。
この実施形態では、第1及び第2のペースト入口42、44は、中心軸線16aに関して線対称の位置に、表面16bと裏面16cとの間を貫通するように形成される。第1のペースト入口42は、表面16bから中心軸線16aに略平行な方向へ突出する円筒状の突壁50を有し、突壁50の先端(図12で上端)に円形輪郭の入口開口部42aが形成される。第1のペースト入口42はまた、突壁50に対応する位置で裏面16cから中心軸線16aに略平行な方向へ突出する円弧状の突壁52を有する。突壁52は、内壁46a、外壁46b及び底壁46cと協働して凹所46を画定し、底壁46cに接続する突壁52の先端(図12で下端)に、円弧輪郭の入口開口部42bが形成される。突壁52は、外壁46bに接続する部位に、入口開口部42bに連続して開口する補助開口部42dを画定する。第2のペースト入口44は、表面16bから中心軸線16aに略平行な方向へ突出する円筒状の突壁54を有し、突壁54の先端(図12で上端)に円形輪郭の入口開口部44aが形成される。第2のペースト入口44はまた、突壁54に対応する位置で裏面16cから中心軸線16aに略平行な方向へ突出する円弧状の突壁56を有する。突壁56は、内壁46a、外壁46b及び底壁46cと協働して凹所46を画定し、底壁46cに接続する突壁56の先端(図12で下端)に、円弧輪郭の入口開口部44bが形成される。突壁56は、外壁46bに接続する部位に、入口開口部44bに連続して開口する補助開口部44dを画定する。
第1のペースト入口42では、突壁50及び突壁52のそれぞれの内周面が互いに段差無く接続されて、円筒状(一部円弧状)の内壁面42cが形成される。また、第2のペースト入口44では、突壁54及び突壁56のそれぞれの内周面が互いに段差無く接続されて、円筒状(一部円弧状)の内壁面44cが形成される。第1のペースト入口42の、内壁面42cに直交する方向の開口面積は、第2のペースト入口44の、内壁面44cに直交する方向の開口面積よりも大きくなっている(図11)。また、第1のペースト入口42の、表面16bを基準とした突壁50の高さは、第2のペースト入口44の、表面16bを基準とした突壁54の高さよりも大きくなっている(図12)。
キャップ16の内壁46aは、混練部材14の軸部32の基端部分32cを回動自在に挿通できる略円形輪郭の挿通穴58を画定する。挿通穴58は、第1及び第2のペースト入口42、44の間の位置で中心軸線16aに同心に配置され、両端の開口部58a、58bの間に、中心軸線16aに略平行な方向へ延長される略円筒状の内周面58cを有する。この実施形態では、挿通穴58の内周面58cは、底壁46cに隣接する部位で段差を介して縮径され、一方(図12で上方)の開口部58aが他方(図12で下方)の開口部58bよりも大径になっている。
図3に示すように、混練部材14を収容したハウジング12にキャップ16を取り付けた状態で、キャップ16の中心軸線16aは、ハウジング12の長手軸線12a及び混練部材14の回動軸線14aに合致して配置される。この状態で、第1及び第2のペースト入口42、44は、ハウジング12のキャップ取付部分22aと協働して、混合室40のペースト導入方向上流側に、蛇行及び斜行することなく混練部材14の回動軸線14aに平行な方向へ延びるペースト導入路60、62を、それぞれに形成する(図3(a))。各ペースト導入路60、62は、対応のペースト入口42、44の内壁面42c、44cの、中心軸線16aに平行な方向への最大寸法に相当する軸線方向寸法を有する。この実施形態では、第1のペースト入口42によって形成される第1のペースト導入路60は、第2のペースト入口44によって形成される第2のペースト導入路62よりも、大きな内径を有する。
キャップ16は、第1及び第2のペースト入口42、44を含む全体が、例えば樹脂材料から射出成形により一体に形成されることができる。キャップ16の素材は、ペースト混合器10の使用対象となるペースト状物質に対して化学的に安定な物性を有することが好ましい。例えば、ペースト状物質がメチルアルコールを含有する物質である場合、キャップ16の素材はポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂であることができる。またキャップ16は、ペースト状物質の混合時の混練部材14の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗して自己形状を保持し得る剛性を有する。
ペースト混合器10はさらに、キャップ16をハウジング12に取り付けた状態に着脱自在に保持する保持機構64を備える(図3)。この実施形態における保持機構64は、図13に示すように、ハウジング12のフランジ26とキャップ16の外周壁48とに形成される嵌め合い構造を有する。さらに詳述すると、ハウジング12のフランジ26には、その外周面に沿って、周方向へ環状に連続する凸部66が開口部20に近接した側に形成されるとともに、凸部66に並んで環状に連続する凹部68が開口部20から離れた側に形成される(図13(a))。また、キャップ16の外周壁48には、その内周面に沿って、周方向へ環状に連続する凹部70が裏面16cに近接した側に形成されるとともに、凹部70に並んで環状に連続する凸部72が裏面16cから離れた側に形成される(図13(b))。ハウジング12のフランジ26の凸部66とキャップ16の外周壁48の凹部70とは、互いに嵌合可能な形状及び寸法を有しする。また、ハウジング12のフランジ26の凹部68とキャップ16の外周壁48の凸部72とは、互いに嵌合可能な形状及び寸法を有する。
保持機構64を構成する凸部66及び凹部68は、例えば樹脂材料から射出成形によりハウジング12を一体成形する間に、フランジ26に一体に形成されることができる。また、保持機構64を構成する凹部70及び凸部72は、例えば樹脂材料から射出成形によりキャップ16を一体成形する間に、外周壁48に一体に形成されることができる。なお、この実施形態において、凸部66及び凹部68という名称、並びに凹部70及び凸部72という名称は、相対的な形象を表現するものである。つまり、互いに段差を介して隣接する二面が存在する場合に、高い方の面を有する部分は低い方の面を基準とすれば「凸部」(凸部66及び凸部72)であり、低い方の面を有する部分は高い方の面を基準とすれば「凹部」(凹部68及び凹部70)である。なお変形例として、凸部66と凹部68との間、並びに凹部70と凸部72との間に、凹凸を明確に区別する肩面を設けることもできる。
キャップ16をハウジング12に取り付ける際には、キャップ16の裏面16cをハウジング12の開口部20に対向させて、キャップ16の内壁46a、外壁46b及び底壁46cをハウジング12のキャップ取付部分22aに挿入する。キャップ16の外周壁48の凸部72がハウジング12のフランジ26の凸部66に衝突した時点で、キャップ16をハウジング12に対し強制的に押し付けることにより、外周壁48の一部分を含むキャップ16の所望部分を弾性的に撓ませて、両凸部72、66を互いに乗り越えさせる。それにより、キャップ16の外周壁48の凸部72がハウジング12のフランジ26の凹部68にスナップ式に嵌合し、同時に、ハウジング12のフランジ26の凸部66がキャップ16の外周壁48の凹部70にスナップ式に嵌合する。この相補的嵌合作用により、キャップ16がハウジング12に取り付けられた状態に保持される(図13(c))。
キャップ16をハウジング12から取り外す際には、ハウジング12から離脱する方向への力をキャップ16に加えることにより、外周壁48の一部分を含むキャップ16の所望部分を弾性的に撓ませて、キャップ16の凸部72をハウジング12の凹部68から脱離させると同時にハウジング12の凸部66をキャップ16の凹部70から脱離させ、両凸部72、66を互いに乗り越えさせる。このようにして、キャップ16をハウジング12から、互いの損傷を生ずること無く安全に取り外すことができる。
ハウジング12に対するキャップ16の上記した脱着作業は、使用者が手作業で、また手工具等を用いることなく、実行できる。この実施形態では、キャップ16の外周壁48に沿った所望部位に、手作業を容易にするためのタブ74が形成されている(図10、図13)。使用者は、特にキャップ16をハウジング12から取り外す際に、ハウジング12から離脱する方向への力をタブ74に集中して加えることができ、タブ74を力点としてキャップ16を比較的容易に撓ませることができる。なお、上記した嵌め合い構造を有する保持機構64は、ペースト状物質の混合時の混練部材14の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗してキャップ16をハウジング12に取り付けた状態に保持できる一方で、使用者が手作業でキャップ16をハウジング12から取り外すことができる程度の保持強度を有する。このような保持機能を発揮する保持機構は、後述するように、上記した嵌め合い構造以外の様々な構造によって実現できる。
混練部材14を収容したハウジング12に保持機構64を介してキャップ16を取り付けると、混練部材14の軸部32の基端部分32cは、キャップ16の中心の挿通穴58に回動自在に挿通され、その先端が挿通穴58の開口部58aから外方に突出する(図13(c))。このとき、混練部材14の基端部分32cは、その外周面が、キャップ16の挿通穴58の内周面58cに対し接触するか僅かな隙間を空けて配置される。この状態で、混練部材14の軸部32の主部分32a及び末端部分32bは、ハウジング12内部に画定される混合室40に収容される(図3参照)。またこの状態で、軸部32の主部分32aとハウジング12の上流域部分22b及び中流域部分24aとの間、並びに軸部32の末端部分32bとハウジング12の下流域部分24bとの間には、第1及び第2の撹拌羽根28、30によって撹拌され混練される2種類のペースト状物質を流動させるための空間が形成される。
さらに詳述すると、図3に示すように、混練部材14を収容したハウジング12にキャップ16を取り付けた状態で、混練部材14の第1の撹拌羽根28は、混合室40の、ハウジング12の第1部分22に対応する領域40aに、第1及び第2のペースト入口42、44に隣接して収容され、混練部材14の第2の撹拌羽根30は、混合室40の、ハウジング12の第2部分24に対応する領域40bに収容される。この状態で、混練部材14のフランジ36の端面36a及び第1の撹拌羽根28の端面28aは、キャップ16の底壁46cに対し接触するか僅かな隙間を空ける位置に配置される(図3(b))。また、第1の撹拌羽根28の縁面28cは、ハウジング12の上流域部分22bに対し接触するか僅かな隙間を空ける位置に配置され、第2の撹拌羽根30の弧状面30bは、外周面34からの最大突出領域で、ハウジング12の中流域部分24aに対し接触するか僅かな隙間を空ける位置に配置される(図3(b))。
混練部材14が回動するに従い、第1の撹拌羽根28の端面28aは、第1及び第2のペースト入口42、44の各々の入口開口部42b、44bを、その一縁から他縁に向かって部分的に塞ぎながら通過する。一対の撹拌羽根28及び一対のペースト入口42、44の前述した線対称配置により、一方の第1の撹拌羽根28の端面28aが第1のペースト入口42の入口開口部42bを部分的に塞いでいるときに、同時に、他方の第1の撹拌羽根28の端面28aが第2のペースト入口44の入口開口部44bを同様に部分的に塞ぐ。
この実施形態では、混練部材14が一回転する間に、第1及び第2のペースト入口42、44の各々の入口開口部42b、44bは、一対の第1の撹拌羽根28の端面28aによって計2回、上記したように部分的に塞がれる。換言すると、混練部材14が一回転する間に、一対の第1の撹拌羽根28が計2回、第1及び第2のペースト入口42、44の各々の入口開口部42b、44bを通過する。この実施形態では、第1の撹拌羽根28の各々が各入口開口部42b、44bを通過する間、第1の撹拌羽根28の端面28aは、入口開口部42b、44bの開口面積に対して、例えば約50%以上、約100%以下の領域、或いは約90%以上、約100%以下の領域を通る軌跡を描くように構成される。端面28aが入口開口部42b、44bに対しこのような軌跡を描くように第1の撹拌羽根28並びに第1及び第2のペースト入口42、44の形状、寸法、配置等を設定することにより、後述するように各ペースト入口42、44に連続的に供給されるペースト状物質を、第1の撹拌羽根28が入口開口部42b、44bで効率良く掻き寄せることができる。
また、混練部材14が回動するに従い、第1の撹拌羽根28の各々は、一方の主平面28bを移動方向前端面として、混合室40の、ハウジング12の第1部分22に対応する領域40a(特に上流域部分22bに対応する領域。以下、予備混合領域40aと称する。)を、周方向へ循環するように移動する。この実施形態では、混練部材14が一回転する間に、一対の第1の撹拌羽根28が計2回、予備混合領域40a内の特定位置を通過する。またこの実施形態では、一対の第1の撹拌羽根28は、双方の移動方向前端の主平面28bにおいて、予備混合領域40aの、軸部32の主部分32aとハウジング12の上流域部分22bとの間(つまり、軸部32とハウジング12の第1部分22とキャップ16との間)の空間を、実質的に塞ぐように配置される(図3(b))。また、混練部材14が回動するに従い、第2の撹拌羽根30の各々は、端面30aを移動方向前端面として、混合室40の、ハウジング12の第2部分24に対応する領域40b(特に中流域部分24aに対応する領域。以下、主混合領域40bと称する。)を、周方向へ循環するように移動する。この実施形態では、混練部材14が一回転する間に、第1の撹拌羽根28から軸部32の長手方向へ略等間隔で離隔した3箇所のそれぞれにおいて、4個の第2の撹拌羽根30が計4回、主混合領域40b内の特定位置を通過する。
ペースト混合器10は、ハウジング12と混練部材14とキャップ16とを上記したように組み合わせた状態で、図示しないペースト供給装置に着脱自在に装着される。図14は、ペースト供給装置が有する駆動軸76及び一対のペースト供給管78、80に、ペースト混合器10を装着した状態を示す。駆動軸76は、図示しない電動機等の駆動源によって軸線76aの周りを所定方向へ所定速度で回転駆動される。第1のペースト供給管78は、図示しないペースト供給源から与えられた所定種類の第1のペースト状物質を、所定流量で連続的に吐出できる。第2のペースト供給管80は、図示しないペースト供給源から与えられた、第1のペースト状物質とは異なる種類の第2のペースト状物質を、所定流量で連続的に吐出できる。図示の実施形態では、第1のペースト供給管78は、第2のペースト供給管80よりも大きな内径を有する。
図14に示すように、ペースト混合器10は、混練部材14の軸部32の連結穴38に駆動軸76を連結し、キャップ16の第1のペースト入口42に第1のペースト供給管78を接続し、キャップ16の第2のペースト入口44に第2のペースト供給管80を接続した状態で、ペースト供給装置に装着される。駆動軸76は、先端の連結部76bで、混練部材14の連結穴38に圧入されて固定される。連結穴38が六角穴の場合、連結部76bは対応する六角柱形状を有する。第1のペースト供給管78は、第1のペースト入口42の突壁50に嵌入されて固定的に保持される。それにより、第1のペースト供給管78のペースト供給方向下流側に、ペースト導入路60の一部分60aが確保される。また、第2のペースト供給管80は、第2のペースト入口44の突壁54に嵌入されて固定的に保持される。それにより、第2のペースト供給管80のペースト供給方向下流側に、ペースト導入路62の一部分62aが確保される。
上記した装着状態で、ハウジング12の長手軸線12a、混練部材14の回動軸線14a及びキャップ16の中心軸線16aは、駆動軸76の軸線76aに合致して配置される。前述したように、図示実施形態によるペースト混合器10は、第1のペースト入口42によって形成される第1のペースト導入路60の内径が、第2のペースト入口44によって形成される第2のペースト導入路62の内径よりも大きい。したがってペースト供給装置は、第1のペースト供給管78からペースト混合器10に供給する第1のペースト状物質の流量を、第2のペースト供給管80からペースト混合器10に供給する第2のペースト状物質の流量よりも多くすることができる。
ペースト混合器10をペースト供給装置に装着した状態で、駆動軸76を作動させて混練部材14を所定方向へ所定速度で回転させながら、第1のペースト供給管78から第1のペースト状物質を所望の一定流量で第1のペースト入口42に連続的に供給し、同時に、第2のペースト供給管80から第2のペースト状物質を所望の一定流量で第2のペースト入口44に連続的に供給する。第1のペースト入口42に供給された第1のペースト状物質は、所定の軸線方向寸法(後述する)を有する第1のペースト導入路60から、混合室40の、ハウジング12の上流域部分22bに対応する予備混合領域40aに導入され、混練部材14が一回転する間に入口開口部42bを計2回通過する一対の第1の撹拌羽根28(図3(b))により、予備混合領域40a内で直ちに撹拌される。同時に、第2のペースト入口44に供給された第2のペースト状物質は、所定の軸線方向寸法(後述する)を有する第2のペースト導入路62から、混合室40の、ハウジング12の上流域部分22bに対応する予備混合領域40aに導入され、混練部材14が一回転する間に入口開口部44bを計2回通過する一対の第1の撹拌羽根28(図3(b))により、予備混合領域40a内で直ちに撹拌される。
ハウジング12の上流域部分22bは、前述したように、ハウジング12の前方(図14で下方)に向かって徐々に縮径するので、混合室40の予備混合領域40aに導入された第1及び第2のペースト状物質は、中流域部分24aに対応する主混合領域40bに迅速には流れ込まず、予備混合領域40aに滞留しようとする。そして、一対の第1の撹拌羽根28の上記した同時撹拌作用により、第1及び第2のペースト状物質は、混合室40の予備混合領域40a内で、互いに予備的かつ部分的に混練される。第1のペースト供給管78から供給される第1のペースト状物質の流量が、第2のペースト供給管80から供給される第2のペースト状物質の流量より多い場合であっても、予備混合領域40aにおけるこのような滞留作用により、第1のペースト状物質だけが先に主混合領域40bに流れ込むことを可及的に防止できる。なお、この実施形態では、一対の第1の撹拌羽根28に対し周方向へ等間隔に配設された一対の第2の撹拌羽根30が、予備混合領域40a内での第1及び第2のペースト状物質の撹拌及び予備的混練作用を補助することができる。
予備混合領域40a内で部分的に混合した第1及び第2のペースト状物質は、混練部材14が連続して回転する間、第1及び第2のペースト供給管78、80からの後続する第1及び第2のペースト状物質の供給圧力の下で、上流域部分22bの小径端側から、混合室40の、ハウジング12の中流域部分24aに対応する主混合領域40b内に、少しずつ流入する。主混合領域40bに流入した部分混合形態の第1及び第2のペースト状物質は、第1の撹拌羽根28から軸部32の長手方向へ略等間隔で離隔した3箇所のそれぞれにおいて混練部材14が一回転する間に同領域内の特定位置を計4回通過する4個の第2の撹拌羽根30により、主混合領域40b内で同時に剪断作用を受けて撹拌される。軸部32の長手方向3箇所のそれぞれにおける4個の第2の撹拌羽根30のこのような同時撹拌作用により、部分混合形態の第1及び第2のペースト状物質は、その混合度合いを高めながら十分に混練されて、主混合領域40b内を流動する。
主混合領域40b内を流動する混合形態の第1及び第2のペースト状物質は、第1及び第2のペースト供給管78、80からの後続する第1及び第2のペースト状物質の供給圧力の下で、ハウジング12の下流域部分24bに向かう方向へ少しずつ流動する。そして、主混合領域40b内で互いに十分に混合した第1及び第2のペースト状物質は、ハウジング12の下流域部分24bに対応する領域に流れ込み、ペースト出口18からハウジング12の外部に放出される。十分に混合した第1及び第2のペースト状物質を所望量だけハウジング12の外部に放出した後、ペースト供給装置の作動を停止し、ペースト供給装置からペースト混合器10を離脱する。ペースト混合器10は、再利用のために、キャップ16がハウジング12から取り外され、混練部材14がハウジング12から引き抜かれて、ハウジング12内に残留する混合形態のペースト状物質が除去され、各部品が清掃される。
このように、ペースト混合器10は、ハウジング12に取り付けられるキャップ16を備えるとともに、保持機構64によってキャップ16をハウジング12に取り付けた状態に着脱自在に保持するように構成したから、ペースト供給装置から供給される複数種類のペースト状物質を混合室40内で混合して所望量放出した後に、ペースト混合器10を分解、清掃して再利用することができる。しかも、キャップ16にペースト入口42、44を設けたから、ペースト供給装置から供給されるペースト状物質を混合する間、キャップ16によって、混合室40内のペースト状物質をペースト供給装置の構成部品(ペースト入口42、44に接続されるペースト供給管78、80の先端部分を除く)から隔離することができる。したがって、ペースト状物質の混合が完了した後、ペースト混合器10をペースト供給装置から脱離したときに、ペースト供給装置の構成部品がペースト状物質に汚損されている状況を回避でき、ペースト供給装置の構成部品の清掃を不要とすることができる。
ペースト混合器10では、各ペースト入口42、44が、両端の入口開口部42a、42b、44a、44bの間をキャップ16の中心軸線16aに平行に延びる内壁面42c、44cを有して構成されているから、キャップ16の構造を簡略化でき、ペースト混合器10の製造コストを低減できる。また、ハウジング12に取り付けられたキャップ16の各ペースト入口42、44によって、混合室40のペースト導入方向上流側に、内壁面42c、44cの軸線方向最大寸法に相当する軸線方向寸法を有するペースト導入路60、62が形成される構成であるから、ペースト供給装置から供給されるペースト状物質を混合室40内で混合する間、混合室40からペースト供給管78、80に逆流しようとするペースト状物質を、ペースト導入路60、62(特に部分60a、62a(図14))で受け止めることができる。したがって、ペースト供給管78、80へのペースト状物質の逆流が防止され、ペースト供給装置に逆流防止用の逆止弁を設ける必要が無い。なお、ペースト入口42、44がハウジング12のキャップ取付部分22aと協働してペースト導入路60、62を形成する図示構成に代えて、キャップ16の裏面16c側に設けられるペースト入口42、44の円弧状の突壁52、56を表面16b側の突壁50、54と同様の円筒形状に改変することで、ペースト入口42、44自体がペースト導入路を形成する構成とすることもできる。
図15は、第1及び第2のペースト入口42、44と第1及び第2のペースト供給管78、80との接続箇所を、拡大して示す。この実施形態において、第1及び第2のペースト導入路60、62の軸線方向寸法L1は、例えば、約2mm以上であり、約10mm以下である。第1及び第2のペースト入口42、44の突壁50、54の高さL2は、例えば、約2mm以上であり、約5mm以下である。第1及び第2のペースト入口42、44と第1及び第2のペースト供給管78、80との接続長さL3は、例えば、約1mm以上であり、約9mm以下である。第1及び第2のペースト供給管78、80に接続していない第1及び第2のペースト導入路60、62の一部分60a、62aの軸線方向寸法L4は、例えば、約1mm以上であり、約9mm以下である。L1〜L4の上限値はいずれも、ペースト混合器10及びペースト供給管78、80の全体寸法や素材等の設計上の観点で、経験的に又は実験から妥当と考えられる値である。また、L1〜L4の下限値はいずれも、ペースト入口42、44とペースト供給管78、80との接続信頼性を確保する観点、及び混合室40からペースト供給管78、80へのペースト状物質の逆流を防止する観点で、経験的に又は実験から妥当と考えられる値である。
ペースト混合器10では、混練部材14の第1の撹拌羽根28が、混合室40の、ハウジング12の第1部分22(特に上流域部分22b)に、ペースト入口42、44に隣接して収容されているから、第1及び第2のペースト入口42、44にそれぞれ供給された第1及び第2のペースト状物質を、混練部材14が回転する間に入口開口部42b、44bを通過する第1の撹拌羽根28により、第1部分22に対応する領域(予備混合領域40a)内で直ちに撹拌することができる。ハウジング12の第1部分22は第2部分24に対し外方へ拡張されているから、第1部分22に対応する領域(予備混合領域40a)に導入された第1及び第2のペースト状物質は、第2部分24に対応する領域(主混合領域40b)に迅速には流れ込まず、第1の撹拌羽根28の撹拌作用により、第1部分22に対応する領域(予備混合領域40a)内で互いに予備的かつ部分的に混練される。第1及び第2のペースト入口42、44に供給される第1及び第2のペースト状物質の流量が互いに異なる場合であっても、第1部分22に対応する領域(予備混合領域40a)におけるこのような滞留作用により、流量の大きいペースト状物質だけが先に第2部分24に対応する領域(主混合領域40b)に流れ込むことを防止できる。部分的に混合した第1及び第2のペースト状物質は、混練部材14が連続して回転する間、後続する第1及び第2のペースト状物質の供給圧力の下で、混合室40の、第2部分24(特に中流域部分24a)に対応する領域(主混合領域40b)内に流入して、第2の撹拌羽根30により撹拌され、その混合度合いを高めながら十分に混練されて、第2部分24に対応する領域(主混合領域40b)内を流動する。
ペースト混合器10では、混練部材14が回転する間に、第1の撹拌羽根28の端面28aが各ペースト入口42、44の入口開口部42b、44bに対し前述した所定割合の領域を通る軌跡を描くように構成することにより、各ペースト入口42、44に連続的に供給されるペースト状物質を、第1の撹拌羽根28が入口開口部42b、44bで効率良く掻き寄せることができる。それにより、第1及び第2のペースト入口42、44に連続的に供給される第1及び第2のペースト状物質を、予備混合領域40a内で第1の撹拌羽根28により効率良く撹拌して混練することができる。この場合、一対の第1の撹拌羽根28が、第1及び第2のペースト入口42、44の入口開口部42b、44bで同時に第1及び第2のペースト状物質を掻き寄せる構成とすることで、撹拌及び混練の効率を向上させることができる。予備混合領域40a内での撹拌及び混練の効率を向上させることにより、第1及び第2のペースト入口42、44に供給される第1及び第2のペースト状物質の流量が互いに異なる場合であっても、流量の大きいペースト状物質だけが先に主混合領域40bに流れ込むことを防止できる。
ペースト混合器10では、混練部材14が回転する間に、一対の第1の撹拌羽根28がそれぞれの移動方向前端の主平面28bにおいて、軸部32の主部分32aとハウジング12の上流域部分22bとの間の空間を実質的に塞ぐように構成したから、第1及び第2のペースト入口42、44に連続的に供給される第1及び第2のペースト状物質を、予備混合領域40a内で一対の第1の撹拌羽根28により効率良く撹拌して混練することができる。特に、予備混合領域40a内で第1の撹拌羽根28が単位時間当りに移動する容積を、各ペースト入口42、44に供給されるペースト状物質の流量(すなわち各ペースト供給管78、80からのペースト状物質の単位時間当りの吐出量)よりも大きくすることで、第1の撹拌羽根28により第1及び第2のペースト状物質を安定して混練することができる。この場合、一対の第1の撹拌羽根28が、第1及び第2のペースト入口42、44の入口開口部42b、44bで同時に第1及び第2のペースト状物質を掻き寄せる構成とすることで、撹拌及び混練の効率を向上させることができる。予備混合領域40a内での撹拌及び混練の効率を向上させることにより、第1及び第2のペースト入口42、44に供給される第1及び第2のペースト状物質の流量が互いに異なる場合であっても、流量の大きいペースト状物質だけが先に主混合領域40bに流れ込むことを防止できる。
ペースト混合器10では、混練部材14の回動中、一対の第1の撹拌羽根28の各々の端面28aが、一対のペースト入口42、44の各々の入口開口部42b、44bを部分的に塞ぎながら通過するように構成されているから、第1及び第2のペースト導入路60、62から混合室40に導入される第1及び第2のペースト状物質の円滑な流動が第1の撹拌部材28により妨げられることは回避される。なお、第1及び第2のペースト状物質の粘性等の条件によっては、第1の撹拌羽根28の個数を3個以上にすることもできる。また、第2の撹拌羽根30の個数も、条件に応じて適宜に増減できる。ペースト入口42、44の個数は、混合対象となるペースト状物質の種類の数に応じて、3個以上とすることができる。また、混合対象となるペースト状物質の種類によっては、第1のペースト入口42の開口面積と第2のペースト入口44の開口面積とを互いに同一にすること、すなわち第1のペースト導入路60の内径と第2のペースト導入路62の内径とを互いに同一にすることができる。この場合、ペースト供給装置の第1のペースト供給管78の内径と第2のペースト供給管80の内径とを互いに同一にして、互いに同一流量の第1及び第2のペースト状物質をペースト混合器10に供給するように構成できる。
ペースト混合器10では、保持機構64が嵌め合い構造を有するので、安全な保持機能を発揮する保持機構64を簡易に作製でき、ペースト混合器10の製造コストを低減できる。嵌め合い構造を有する保持機構64に代えて、図16に変形例として示すように、ねじ構造を有する保持機構82を備えることもできる。図16においては、図1〜図13に示すペースト混合器10の構成要素に対応する構成要素を、参照符号に´(ダッシュ)を付して示している。
図16に示す変形例では、ハウジング12´は、フランジ26(図13)に代えて、キャップ取付部分22a´の外周面から長手軸線12a´に略直交する方向へ張り出す環状の張出部分26´を有する。張出部分26´の内側には、キャップ16´を支持する環状の底面84aを有する凹所84が形成される。キャップ取付部分22a´の内周面には、凹所84に隣接する所定位置に、周方向へ所定長さを有して長手軸線12a´に対し斜めに延びる突条86が形成される(図16(a))。突条86は、キャップ取付部分22a´の内周面の回転対象(例えば2回対称)位置に設けられる。また、キャップ16´は、外周壁48(図13)を有さず、裏面16c´に設けられる外壁46b´の周りで表面16b´と裏面16c´との間の厚みがキャップ16に比べて増加している。外壁46b´の外周面には、所定位置に、周方向へ所定長さを有して中心軸線16a´に対し斜めに延びる肩面88と、肩面88を介して外壁46b´から中心軸線16a´に向かって凹む凹部90とが形成される(図16(b))。肩面88及び凹部90は、外壁46b´の外周面の回転対象(例えば2回対称)位置に設けられる。ハウジング12´の突条86とキャップ16´の肩面88とは、互いにねじ式に係合可能な形状及び寸法を有する。
キャップ16´の裏面16c´には、外周面に沿って環状に延びる局部的な隆起92が形成される(図16(c))。隆起92は、後述するように、保持機構82が有するねじ構造に軸線方向圧力を付加する機能を有する。環状の隆起92に代えて、複数の点状の隆起を形成することもできる。保持機構82を構成する突条86及び隆起92は、例えば樹脂材料から射出成形によりハウジング12´を一体成形する間に、キャップ取付部分22a´に一体に形成されることができる。また、保持機構82を構成する肩面88は、例えば樹脂材料から射出成形によりキャップ16´を一体成形する間に、外壁46b´に一体に形成されることができる。
キャップ16´をハウジング12´に取り付ける際には、キャップ16´の裏面16c´をハウジング12´の開口部20´に対向させるとともに、キャップ16´の外壁46b´の凹部90をハウジング12´の突条86に位置合わせして、キャップ16´の内壁46a´、外壁46b´及び底壁46c´をハウジング12´のキャップ取付部分22a´に挿入する。キャップ16´の裏面16c´の隆起92がハウジング12´の凹所84の底面84aに衝突した時点で、キャップ16´をハウジング12´に対し中心軸線12a´の周りで所定方向へ回転させることにより、肩面88を突条86に係合させる。肩面88と突条86との係合が進行するに伴い、隆起92の周辺でキャップ16´が僅かに撓み、肩面88と突条86との間に、両者の係合状態を摩擦保持するための軸線方向圧力が生じる。キャップ16´の肩面88とハウジング12´の突条86とのこのようなねじ式の係合作用により、キャップ16´がハウジング12´に取り付けられた状態に保持される(図16(c))。
キャップ16´をハウジング12´から取り外す際には、キャップ16´をハウジング12´に対し中心軸線12a´の周りで上記とは逆の方向へ回転させることにより、肩面88を突条86から解離させる。キャップ16´の外壁46b´の凹部90がハウジング12´の突条86に対応する位置に達した時点で、キャップ16´をキャップ取付部分22a´から引き抜く。このようにして、キャップ16´をハウジング12´から、互いの損傷を生ずること無く安全に取り外すことができる。
ハウジング12´に対するキャップ16´の上記した脱着作業は、使用者が手作業で、また手工具等を用いることなく、実行できる。例えば、使用者は、キャップ16´の第1及び第2のペースト入口42´、44´の突壁50´、54´の少なくとも一方に指を掛けることにより、キャップ16´を回転させる力を突壁50´、54´に集中して加えることができる。なお、上記したねじ構造を有する保持機構82は、ペースト状物質の混合時の混練部材14´の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗してキャップ16´をハウジング12´に取り付けた状態に保持できる一方で、使用者が手作業でキャップ16´をハウジング12´から取り外すことができる程度の保持強度を有する。
図17及び図18は、一実施形態によるディスペンサ100を示す。ディスペンサ100は、図1〜図13に示すペースト混合器10と、ペースト混合器10が着脱自在に装着されるペースト供給装置102とを備える。ペースト供給装置102は、図14及び図15に示す駆動軸76及び一対のペースト供給管78、80と、駆動軸76を回転駆動する電動機等の駆動源(図示せず)と、第1のペースト供給管78を有する第1のペースト供給源104と、第2のペースト供給管80を有する第2のペースト供給源106と、ペースト混合器10をペースト供給装置102に装着した状態に保持する固定部材108とを備える。固定部材108は、矩形板状の要素であって、その長手方向一端に、第1及び第2のペースト供給源104、106に対して固定部材108を回転可能に連結する連結部110を有するとともに、長手方向他端に、ペースト混合器10に係合可能な一対の係合腕112を有する。
ペースト混合器10をペースト供給装置102に装着する際には、固定部材108を、図18に示す非作用位置に配置する。この状態で、図14を参照して説明したように、混練部材14の軸部32の連結穴38に駆動軸76を連結し、キャップ16の第1のペースト入口42に第1のペースト供給管78を接続し、キャップ16の第2のペースト入口44に第2のペースト供給管80を接続することにより、ペースト混合器10をペースト供給装置102に装着する。さらに、固定部材108を、連結部110を中心に図18の非作用位置から図17の作用位置に回動させて、一対の係合腕112を、ペースト混合器10のキャップ16の外周壁48に係合させる。このようにして、ペースト供給装置102へのペースト混合器10の装着が完了する。この装着完了状態で、固定部材108は、ペースト混合器10におけるペースト状物質の混合時の混練部材14の回動動作やペースト状物質の流動圧力に抗して、ペースト混合器10をペースト供給装置102に装着した状態に保持する。
ペースト混合器10をペースト供給装置102から離脱する際には、一対の係合腕112とペースト混合器10のキャップ16との係合を解除して、固定部材108を、図17の作用位置から図18の非作用位置に回動する。次いで、ペースト混合器10を、駆動軸76並びに第1及び第2のペースト供給管78、80から取り外す。このとき、ペースト混合器10が奏する前述した効果により、ペースト混合器10を再利用することができるとともに、ペースト供給装置102の構成部品がペースト状物質に汚損されている状況が回避され、ペースト供給装置102の構成部品の清掃が不要となる。
上記した実施形態によるペースト混合器10及びディスペンサ100は、例えば、歯科用印象材の混合及び供与システムに適用できる。この適用では、例えば、歯科用印象材の成分である基剤及び硬化剤を、それぞれ第1のペースト状物質及び第2のペースト状物質として取り扱うことができる。