JP6322000B2 - 熱可塑性樹脂組成物、その成形体、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、意匠性の高い外観が求められる一方で、揮発性有機化合物(VOC)の排出による環境汚染やコストが高い等の問題により、塗装工程を行わないようにしたいという要望も高まってきている。
また、PC/ABSは、成形時に生じるウェルド部が意匠面で目立ってしまうウェルド外観不良の問題も有している。
さらに、PC/ABSは、成形収縮率が高く、寸法安定性が低いという問題を有している。
ここで、前記ウェルド外観不良とは、多点ゲートや穴や窓がある成形体を製造する場合、ファウンテンフローが起こる流動末端が合流した部分は、その他の部分と樹脂流れが異なるため、意匠面にラインを形成してしまう現象を言う。このウェルド外観不良があると、材料として色味に優れていたとしても製品としての高級感は失われてしまうという問題を生じる。
上述したことから、無塗装で高外観性を実現でき、かつ耐衝撃性及び耐熱性等の機械物性も併せ持つ材料が強く求められてきている。
一方、グラフト共重合体のグラフト率を特定の範囲に限定することで、分散相の屈折率を高め、連続相の屈折率へ近づけることにより、高い発色性と耐傷付性とを得ようとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、PCやPMMA/ABSのように透明性の高い樹脂は、染顔料を含有させることによりピアノブラック(漆黒)のような高品位な外観を得ることができるが、PCは流動性、PMMA/ABSは耐衝撃性と耐熱性に劣るという欠点を有しており、これまで耐熱性、耐衝撃性、及び高品位な外観をすべて満足する材料は得られていない。
すなわち、本発明は以下の通りである。
グラフト共重合体(A)からなる分散相と、
連続相(B)と、
を、含み、
前記グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマー
にグラフト重合したグラフト鎖と、を有し、
前記グラフト鎖は、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共
重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、
前記グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分にお
ける前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、
前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0
質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、
前記第1のピークとは異なるピークの1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含
有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであ
り、
前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求め
られる加重平均値を代表値としたとき、
前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の
代表値との差が10質量%以上であり、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃以上であり、120〜140℃の
範囲内に、一以上のガラス転移点を有する、熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記熱可塑性樹脂組成物は、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃〜150℃の範囲内にあり、12
0〜140℃の範囲内に、一以上のガラス転移点がある、前記〔1〕に記載の熱可塑性樹
脂組成物。
〔3〕
前記熱可塑性樹脂組成物は、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は二つであり、120〜140℃の範囲内に一つ、10
0〜115℃の範囲内に一つ有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物
。
〔4〕
前記連続相(B)が、非晶性熱可塑性樹脂を含有する、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれ
か一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前記連続相(B)が、少なくともシアン化ビニル系単量体を含有する、前記〔1〕乃至
〔4〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔6〕
前記連続相(B)が、芳香族ポリカーボネート残基、及び2,2,4,4−テトラメチ
ル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基を含有する、前記〔1〕乃至〔5〕
のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔7〕
前記グラフト共重合体(A)のグラフト率が150〜200%である、前記〔1〕乃至
〔6〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔8〕
前記グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分にお
ける前記シアン化ビニル系単量体由来の成分の含有率の分布の内、
前記第2のピークのピークトップが、25質量%以上40質量%以下のシアン化ビニル
単量体単位含有率の範囲内にある、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の熱可塑性
樹脂組成物。
〔9〕
着色剤をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組
成物。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
〔11〕
前記成形体が無塗装である、前記〔10〕に記載の成形体。
〔12〕
前記成形体が自動車内装材である、前記〔10〕又は〔11〕に記載の成形体。
〔13〕
前記〔10〕乃至〔12〕のいずれか一に記載の成形体の製造方法であって、
成形時の金型温度を120℃以上として成形する工程を有する、成形体の製造方法。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
グラフト共重合体(A)からなる分散相と、
連続相(B)と、
を、含み、
前記グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を有し、
前記グラフト鎖は、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、
前記グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる、前記グラフト鎖由来の成分における前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、
前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、
前記第1のピークとは異なる1つ以上のピークが、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであり、
前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を代表値としたとき、
前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の代表値との差が10質量%以上であり、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃以上であり、120〜140℃の範囲内に、一以上のガラス転移点を有する、熱可塑性樹脂組成物。
本実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖と、を含む、分散相であるグラフト共重合体(A)(以下、グラフト共重合体(A)、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)を含有する。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体からなる群より選ばれる1種以上のゴム質重合体が、耐衝撃性の観点から好ましい。
これらの各構成単位の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により確認できる。
分散したゴム質重合体を有する分散相の形状は、特に限定されず、例えば、不定形、棒状、平板状及び粒子状が挙げられる。これらの中では、耐衝撃性の点から、粒子状が好ましい。
分散相は、後述する連続相(B)中に、1つ1つ独立して分散してもよく、いくつかの分散相が凝集した集合体の状態で分散してもよいが、耐衝撃性の観点から、1つ1つが独立して分散した方が好ましい。
グラフト共重合体(A)の質量平均粒子径は、より好ましくは0.10〜0.60μmであり、さらに好ましくは0.10〜0.35μmである。
グラフト共重合体(A)の質量平均粒子径の分布は、目的とする物性に応じて、単分散、多分散、あるいは二山分布の各種分散形態をとることができる。なお、ここで、グラフト共重合体(A)の粒子径とは、グラフト共重合体(A)の形状が球状の場合は、その直径に相当し、球状でない場合は、最長径と最短径との平均値とする。
例えば、グラフト共重合体(A)の内部で樹脂成分が相分離した、オクルージョンを含んだ構造のように、ゴム成分と樹脂成分とを含む不均一な構造体である場合があるが、当該オクルージョンを含んだ構造を有する場合のグラフト共重合体(A)の質量平均粒子径は、オクルージョンを含めた状態で測定する。
まず、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形体から超薄切片を製造し、その超薄切片を四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム等の染色剤にて染色処理する。
その後、染色処理した超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、超薄切片の任意の範囲(15μm×15μm)について、画像解析することにより求めることができる。
画像は、例えば画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて解析することができる。
グラフト共重合体(A)において、シアン化ビニル系単量体単位は、少なくとも一部が、これと共重合可能な1種以上の単量体単位と共重合している。
前記シアン化ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等のアクリル酸類;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中で、強度及び耐熱性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートが好ましく、強度の観点から、スチレンがより好ましく、耐熱性の観点から、N−フェニルマレイミドがより好ましい。
当該2つ以上のピークのうち1つ以上が、0質量%以上10質量%未満のVCN単位含有率の範囲内にピークトップを有するピーク(以下、「第1のピーク」という。)であり、前記2つ以上のピークのうち、前記第1のピークとは異なる1つ以上のピークが、前記VCN単位含有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有するピーク(以下、「第2のピーク」という。)である。
また、第2のピークのピークトップは、耐衝撃性及びより優れた漆黒を得る観点から、10質量%以上55質量%未満のVCN単位含有率の範囲内にあるものとする。
第2のピークのピークトップは、15質量%以上50質量%以下のVCN単位含有率の範囲内にあることが好ましく、20質量%以上45質量%以下のVCN単位含有率の範囲内にあることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下のVCN単位含有率の範囲内にあることがさらに好ましい。
ここで、前記第1のピーク及び第2のピークの各々が示すVCN単位含有率の代表値とは、第2のピーク及び第2のピークの、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を意味する。
図1においては、上述した第1のピーク及び第2のピークが、それぞれ1つである場合を示している。
図1中、横軸はVCN単位含有率(質量%)、縦軸はピーク強度を示しており、このピーク強度は、グラフト鎖由来の成分の存在比を示す指標である。
VCN単位含有率の分布は、後述する所定の前処理によって熱可塑性樹脂組成物から得られるグラフト鎖由来の成分を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定して得られるクロマトグラムに基づいて求められる。
このVCN単位含有率の分布は、VCN単位含有率に対する、そのVCN単位含有率を有するグラフト鎖の総量(質量基準)として得られるものである。詳細は後述する。
なお、VCN単位含有率の分布において、ピークであるか否かの判断は、HPLCの検出器(例えば、島津製作所製紫外可視光検出器、商品名「SPD−20A」)におけるノイズレベルの範囲内か否かによって決定される。
また、VCN単位含有率の分布が、複数の第1のピーク及び/又は複数の第2のピークを有する場合も、第1のピークが示すVCN単位含有率の代表値は、第1のピーク全体の積分値から求められる加重平均の値を意味し、第2のピークが示すVCN単位含有率の代表値は、第2のピーク全体の積分値から求められる加重平均の値を意味する。
また、複数のピークが一部重複する場合(ショルダーピークが存在する場合も含む。)は、重複したピークがそれぞれ正規分布であるとみなして分離処理することにより得られたピークに基づいて、各上記事項を判断する。
これに対して、グラフト重合させる各単量体の仕込み比を、連続的に又は段階的に変化させることによって、グラフト共重合体(A)のグラフト鎖由来の成分における各構成単位の含有率、例えば、VCN単位含有率の分布を制御することができ、本実施形態においては、特に、前記VCN単量体単位の含有率が0質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークがあり、10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークがあるものとする。
具体的には、ゴム質重合体に、シアン化ビニル系単量体以外の単量体をグラフト重合させ、次いで、シアン化ビニル系単量体を含む2種以上の単量体をグラフト重合させることにより、VCN単位の含有率の分布を制御する方法が挙げられ、この方法が好ましい。
なお、VCN単位の含有率の分布において、それぞれのピークは、単分散及び多分散のいずれであってもよい。
酸化分解の方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オゾン分解、オスミウム酸分解などを用いることができる。具体的には、高分子論文集(井手文雄ら、vol.32、No.7、PP.439−444(July.1975))に記載の方法を用いることができる。この文献において、単離された枝ポリマーが、本実施形態におけるグラフト鎖由来の成分に相当する。
まず、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をクロロホルムに溶解し、クロロホルム可溶分とクロロホルム不溶分とに分離する。このクロロホルム不溶分(例えば0.5g)に四酸化オスミウム(例えば0.0046g)、t−ブチルアルコール(例えば10.7g)、有機過酸化物(例えば、「パーブチルH−69」(日油株式会社商品名)9.2g)を加えて、例えば30分間、還流させた後、溶媒除去により濃縮して、クロロホルムに溶解させる。これにメタノールを添加することで沈殿物が得られるので、その沈殿物を分離・乾燥する。これを(例えば0.03g)秤量して、(例えば10mLの)テトラヒドロフランに溶解させ、測定試料とする。
上記とは別に、窒素分析によって、シアン化ビニル系単量体単位の含有率が既知である標準試料(ポリマー)を用いて、シアン化ビニル系単量体単位の含有率とHPLCにおけるリテンションタイムとの関係の検量線を作成しておく。
上記測定試料を、HPLCで測定してクロマトグラムを得た後、そのクロマトグラムにおけるリテンションタイムから、上記検量線を用いて、VCN単位含有率の分布を求める。
条件は下記のとおりである。
測定装置:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)
サンプル濃度:サンプル30mg/THF10mL
カラム:シリカ系シアノプロピル処理品(島津製作所製、商品名「Shim−Pak CLC−CN」)
展開溶剤:テトラヒドロフラン/n−ヘキサン(2液グラジエント測定)
検出器:紫外線(254nm)
グラフト率の測定法は、下記のとおりである。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をクロロホルムに溶解し、クロロホルム可溶分とクロロホルム不溶分とに分離する。
この時、クロロホルムに不溶な成分は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、その幹ポリマーにグラフト重合したグラフト鎖であり、本実施形態におけるグラフト共重合体(A)を含むものである。
クロロホルムに可溶な成分は、後述する連続相(B)を含むものである。
クロロホルムに不溶な成分を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により分析することによって、幹ポリマー及びグラフト鎖の構成比が得られ、その結果を元にして、前記グラフト率を求めることができる。
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体の含有割合が上記下限値以上及び上記上限値以下であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から好ましい。
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体の含有割合は、グラフト共重合体(A)に対する幹ポリマーの割合で定義される。よって、上記グラフト率の測定方法で得られる幹ポリマーの割合から求めることができる。
前記グラフト鎖の還元粘度を0.05dL/g以上とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、高い耐衝撃性や強度が得られ、還元粘度を1.50dL/g以下とすることにより、実用上十分な成形性を得ることができる。
前記還元粘度は、上述したように、クロロホルムに不要な成分であるグラフト共重合体(A)を酸化分解し、その後、メタノールにて再沈させ、当該沈殿物成分0.50gを2−ブタノン100mLにて溶解した溶液を、30℃以下の温度条件下でCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することにより得ることができる。
さらに、第2のピークが示すVCN単位含有率の代表値と、前記ゴム質重合体以外の全単量体単位(100質量%)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有割合との差は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、0質量%を超え20質量%未満であることが好ましく、より好ましくは4質量%を超え20質量%未満であり、さらに好ましくは4質量%を超え15質量%未満である。
先ず、グラフト共重合体(A)に含まれるゴム質重合体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。これらのうち、粒子形状のゴム質重合体が得られ、その粒子径の制御が容易であることから、乳化重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法が好ましく用いられる。
乳化重合にてゴム質重合体を製造する場合、熱によりラジカルを発生する熱分解型の開始剤や、レドックス型の開始剤を用いることができる。
また、別途乳化重合により得たゴム質重合体を用い、さらにビニル単量体をグラフト重合させる方法等を用いてもよい。
ここで得られたグラフト鎖としては、連続相(B)と相溶性の良いものが、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の点から好ましい。相溶性が悪いと、分散相と連続相の界面強度が不足し、求められる衝撃性を得ることができない。
なお、粒子状のゴム質重合体を製造した後、同一の反応器で連続的に上記グラフト重合を行ってもよく、ゴム質重合体を一旦ゴムラテックスとして単離したのち、改めてグラフト重合を行ってもよい。
上記1種以上の単量体としては、例えば、スチレン及びアクリロニトリル;スチレン及びメタクリル酸メチル;スチレン;メタクリル酸メチル;及びアクリロニトリルが挙げられる。
特に、ゴム質重合体にグラフト重合する単量体が2種以上である場合、各単量体の仕込み比を連続的に又は段階的に変化させることにより、グラフト共重合体(A)におけるグラフト鎖の単量体の含有率の分布を制御することが好ましい。
また、ゴム質重合体は、各単量体の仕込み比を一定にした合成で得られた重合体であってもよいし、各単量体の仕込み比を変化させた合成で得られた重合体であってもよいし、各単量体の仕込み比を連続的に変化させた合成で得られた重合体であってもよい。
グラフト共重合体(A)は、例えば、特開平7−258501号公報に記載の製造方法に準じて、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、懸濁塊状重合、溶液重合等の公知の方法によって製造することができる。
後述する〔実施例〕においては、グラフト共重合体(A)は、グラフトした共重合体であるが、グラフト未反応成分は、連続相(I−B−1)〜(I−B−6)となって、グラフト共重合体(I−A−1)〜(I−A−6)とともに、「樹脂組成物」を形成している。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、連続相(B)(以下、連続相(B)、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)を含有する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成する連続相(B)の樹脂成分は、重量平均分子量(Mw)が10,000〜200,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜60,000、さらにより好ましくは20,000〜50,000、よりさらに好ましくは2,000〜40,000の範囲である。
連続相(B)の樹脂成分の重量平均分子量を10,000以上とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、耐衝撃性とMD(モールドデポジット)のない高外観を得ることができ、200,000以下とすることにより、成形加工性が良好となる。
連続相(B)の樹脂成分として熱可塑性樹脂を二種以上混合したものを用いる場合には、当該樹脂の混合物の重量平均分子量が上記範囲であることが好ましく、低重量平均分子量の成分と、高重量平均分子量の成分とを混合することもできる。
連続相(B)の樹脂成分の重量平均分子量の測定方法は、以下の通りである。すなわち、上記の通り、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からクロロホルムで抽出した連続相(B)の樹脂成分をクロロホルムを溶媒として、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ)(HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)により測定してクロマトグラムを得た後、そのクロマトグラムにおけるリテンションタイムから、単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線から換算し、算出することができる。条件は下記のとおりである。
カラム ;超高速SEC用カラム(東ソー株式会社製)
試料濃度;1mg/ml(クロロホルム)
検出器 ;RI
非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、シアン化ビニル系単量体を含む共重合体やメチルメタクリレート単量体を含む共重合体、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリエステル、芳香族ポリエーテル樹脂などが挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体単位は、少なくとも一部が、これと共重合可能な1種以上の単量体単位と共重合していてもよい。
メチルメタクリレート単量体は、単独又は、これと共重合可能な1種以上の単量体単位と共重合していてもよい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中で、強度及び耐熱性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートは好ましく、強度の観点から、スチレンが好ましく、耐熱性の観点から、N−フェニルマレイミドが好ましい。
アクリル酸エステル系単量体を含む場合、アクリル酸エステル系単量体の含有量は、耐熱性の観点から、(B)成分を100質量%としたとき5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
ここで使用する「残基」とは、対応するモノマーから重縮合及び/又はエステル化反応によってポリマー中に組み入れられた任意の有機構造を意味する。従って、例えば、ジカルボン酸残基はジカルボン酸モノマー若しくはその関連酸ハライド、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物に由来することができる。
非晶性ポリエステルを構成するジオール残基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)又はそれらの混合物が挙げられる。
また、非晶性ポリエステルを構成するジカルボン酸残基としては、芳香族ジカルボン酸残基が好ましく、例えば、テレフタル酸や、テレフタル酸とそのエステルとの混合物、イソフタル酸、イソフタル酸とそのエステルとの混合物が挙げられる。
より好ましくは、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート、非晶性ポリエステルの3種のブレンド物が、耐衝撃性、耐熱性、漆黒、ウェルド外観の観点から、より好ましく用いられる。
スチレン−アクリロニトリル共重合体におけるシアン化ビニル系単量体の含有量を前記範囲とすることで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において、優れた漆黒及びウェルド部外観を得ることができる。
前記その他のシアン化ビニル系単量体やメチルメタクリレート単量体と共重合可能な単量体として、アクリル酸ブチルやメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単量体を含む場合、これらの含有量は、耐熱性の観点から少量であることが好ましい。
さらに、ジカルボン酸残基が、ジカルボン酸の総モル%を100モル%としたとき、テレフタル酸残基を好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基を好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、さらに好ましくは0〜10モル%、炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基を好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜1モル%含むことが好ましい。これにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において、高耐熱性及び高耐衝撃性を得ることができる。前記ジオール成分は、シス型、トランス型のいずれでもよく、これらの混合物も用いることができる。
本実施形態における連続相(B)の樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート残基及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基を有することが好ましく、核磁気共鳴装置(1H−NMR)にて測定した際に、芳香族ポリカーボネート残基中のベンゼン環中のプロトンピーク(1)(7.1〜7.3ppmの間に存在)と2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基中のメチル基のプロトンピーク(2)(1.28〜1.34ppmの間に存在)の積分値比率((1)/(2))が、2.0〜10.0の範囲にあることが好ましい。さらに2.5〜8.0の範囲にあることがより好ましい。さらにより好ましくは3.0〜5.5の範囲にあることである。
(1)/(2)は、連続相(B)中の芳香族ポリカーボネートとジオール残基として2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ジカルボン酸残基としてテレフタル酸残基を有する非晶性ポリエステルの配合比率を示すものであり、これにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物及び成形体において、高耐熱性および漆黒、ウェルド部外観に優れるものを得ることができる。
連続相(B)をクロロホルム溶媒として、1H−NMR(JOEL−ECA500、日本電子株式会社製)により測定してスペクトル、及び(1)および(2)の積分値を得、そこから(1)/(2)を算出することができる。
条件は下記のとおりである。
観測核 ;1H(500MHz)
スキャン回数 ;500回
測定温度 ;室温
サンプル ;75mg(クロロホルム溶解濃度;100mg/ml)
連続相(B)は1種の熱可塑性樹脂により形成されていてもよく、2種以上を組み合わせたブレンド物であってもよい。
2種以上を組み合わせたブレンド物とは、シリンダー温度を連続相(B)に含まれる熱可塑性樹脂の溶融温度以上に設定された押出機にて、溶融混練されたものを意味する。
前記シアン化ビニル系単量体を含む共重合体は、特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が挙げられる。芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びアクリル系単量体からなる群より選ばれる2種以上の単量体の共重合体を製造するには、ラジカル重合により製造するのが好ましい。また、シアン化ビニル系単量体を含む共重合体は、グラフト共重合体(A)を製造する際に併せて製造されてもよい。例えば、グラフト共重合体(A)を製造する際にゴム質重合体にグラフト重合させるために添加する単量体自体が重合して、シアン化ビニル系単量体を含む共重合体を形成してもよい。
前記ポリカーボネート樹脂は、二官能フェノール系化合物にアルカリ金属の水酸化物及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法や、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法、二酸化炭素とアルコールから炭酸ジエチルを得て、炭酸ジエチルと芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて芳香族炭酸エステルを得る方法等、種々の方法を適用できる。
ここで、前記二官能フェノール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。特に、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕等をベースとし、これに硬さを付与しうる官能基が導入された構造を有する化合物が好ましい。
前記二官能フェノール系化合物は、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、上記各種方法により製造された芳香族ポリカーボネートを、一種のみ単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体(A)からなる分散相、連続相(B)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂は、グラフト共重合体(A)からなる分散相、連続相(B)の合計100質量%に対して、25質量%を超えない範囲であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下である。
その他の樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステル、ジオール残基がシクロ環を有する非晶性ポリエステルが挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における、上述した分散相であるグラフト共重合体(A)、連続相(B)の含有量について、以下に説明する。
分散相であるグラフト共重合体(A)と連続相(B)の合計を100質量%としたとき、グラフト共重合体(A)の含有割合は好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。
グラフト共重合体(A)の含有割合を10質量%以上とすることにより、高い耐衝撃性が得られる。一方、グラフト共重合体(A)の含有割合を50質量%以下とすることにより、高い耐熱性が得られる。
また、連続相(B)の樹脂成分として、非晶性ポリエステルとポリカーボネートとその他の樹脂のブレンド物を用いる場合、当該連続相(B)全体を100質量%とした場合、前記ポリカーボネートの含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、前記非晶性ポリエステルの含有割合は、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。この含有割合とすることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、優れた耐衝撃性、耐熱性、漆黒、及びウェルド部外観が得られる。
さらに、グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体以外の構成単位の組成(構成単位の種類及び含有割合を意味する。以下同様とする。)と、連続相(B)の組成とを制御して相溶性を高めると、ゴム質重合体の分散状態を更に良好なものとすることができ、成形体の耐衝撃性、漆黒、ウェルド部外観、成形収縮率のバランスを一層向上させることができる。上記相溶性を高めるには、例えば、グラフト共重合体(A)中のゴム質重合体以外の構成単位の種類と、連続相(B)の構成単位の種類を同一のものにしたり、それぞれの構成単位の含有割合を近づけたり、それぞれの相溶性パラメーターを近づける方法が挙げられるが、特に、同一のものにする方法が好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した成分(A)、(B)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を、含有してもよい。
添加剤としては、例えば、可塑剤、滑剤、摺動剤、着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤等が挙げられる。
これらの添加剤の含有量は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に対して、それぞれ10質量%を超えない範囲であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下である。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において高品位な外観を得るためには、着色剤として染料を使用することが好ましく、当該染料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料が挙げられる。これら染料は数種を併用することが好ましく、例えば、赤、青、紫、黄、緑から選ばれる二種以上を併用することが好ましい。
さらに、優れた外観性を付与する目的で、本実施形態の成形体は、例えば、無機顔料、有機系顔料、メタリック顔料(パール顔料を含む)を染料と共に併用することが好ましい。
前記無機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料が挙げられる。
前記有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が挙げられる。
前記メタリック顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したものが挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも120〜140℃の間に一つのガラス転移点を有することが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス転移点が上記範囲を満たす熱可塑性樹脂一種を単独で用いてもよく、また、上記範囲を満たさない熱可塑性樹脂であっても、その他一種以上の樹脂と相溶させることで、ガラス転移点を上記範囲へ制御した樹脂を用いてもよい。
また、本実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃以上である。また、20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃〜150℃の範囲内にあり、120〜140℃の間に、一つ以上のガラス転移点があることが好ましい。
さらに、20℃以上のガラス転移点は二つであり、120〜140℃の間に一つ、100〜115℃の間に一つ有することがより好ましい。
20℃未満のガラス転移点は、−60℃以下にあることが好ましく、より好ましくは−80℃以下にあることが好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点を上記範囲とすることで、本実施形態において高い耐熱性と耐衝撃性と優れた漆黒の外観を得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を予備乾燥させたサンプルをDSC(示差走査熱量計)(DSC8500、PerkinElmer社製)の測定パンへ入れ、下記条件にて測定を行う。得られた2ndScanのチャートより、ガラス転移点が求められる。
また、本実施形態におけるガラス転移点とは、中間点ガラス転移温度を指し示す。
昇温降温速度 ;10℃/min
温度条件 ;−120℃から180℃まで昇温(1stScan)
180℃から−120℃まで降温(3min保持)
−120℃から180℃まで昇温(2ndScan)
雰囲気 ;窒素気流中(50ml/min)
測定試料 ;10mg
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を、以下に説明する。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、以下に限定されるものではないが、例えば、オープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機、押出機等の混和機を用いた溶融混練方法により製造することができる。押出機としては、単軸又は二軸の押出機のいずれも用いることもできる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法の例を、以下の(1)〜(6)に示す。例えば、
(1)(A)、(B)成分を一括して二軸押出機に供給し溶融混練する方法、
(2)上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(B)成分を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(A)成分を供給し溶融混練する方法、
(3)上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)成分と(B)成分の一部を供給し溶融混練した後、下流側供給口より(B)成分の残りを溶融混練する方法、
(4)先ず、(B)成分を二軸押出機に供給し溶融混練した後、さらに(A)成分と、一旦溶融混練した(B)成分を一括して二軸押出機にて溶融混練する方法、
(5)先ず、(B)成分を二軸押出機に供給し溶融混練した後、さらに上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より一旦溶融混練した(B)成分を供給し再度溶融混練した後、下流側供給口より(A)成分を供給し溶融混練する方法、
(6)先ず、(B)成分を二軸押出機に供給し溶融混練した後、さらに上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口より(A)成分と、一旦溶融混練した(B)成分の一部を供給し再度溶融混練した後、下流側供給口より(B)成分の残りを供給し溶融混練する方法、
等が挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、前記(1)、(2)、及び(3)の方法がより好ましい。
また、押出機のバレル設定温度は240℃〜300℃であることが好ましい。この範囲とすることで、上述した海島形態のモルフォロジーを得ることができ、本発明の効果を確実に得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分を配合することによって、高い耐熱性と耐衝撃性、漆黒、ウェルド部外観、成形収縮率の、相反する特性を併せ持つことができる。
本実施形態の成形体は、上述した熱可塑性樹脂組成物を用い、成形することにより得られる。
成形体の製造方法としては、射出成形、シート成形、真空成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、Tダイ成形、プレス成形、押出成形、発泡成形、流延法による成形等、公知の方法を適用できる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の特徴は、塗装することなく成形のみで、高品位な外観を持つ成形体を製造することができるところにあり、本実施形態の成形体の一形態として無塗装の成形体が挙げられる。
特に、射出成形法により、外観の良い成形体が得られる。
射出成形体は、例えば、射出成形機を用いて、シリンダー温度=240℃〜320℃、とし、一般的な射出成形法や、金型が加熱/冷却を繰り返すヒートアンドクール成形を実施することにより得られるが、高外観の射出成形体を得るためには、ヒートアンドクール成形がより好ましい。
本実施形態の成形体は、成形時の金型温度を100℃以上として成形することが好ましい。これにより外観特性の良い成形体が得られる。成形時の金型温度は100℃〜180℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、140〜180℃がさらに好ましい。ヒートアンドクール成形時の際の金型温度は、加熱時は上記の通りとし、冷却時は80℃〜50℃が好ましい。
射出速度はより速い方が好ましく、射出圧力は高すぎない方が好ましい。
射出速度が速い方が、成形体表面の状態を均一にすることができ、射出圧力を調整することによって成形体表層のゴム質重合体の偏平度を制御することができ、より漆黒度の高い高品位な成形体を得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体は、無塗装で、成形のみで高い耐熱性と耐衝撃性、高品位な外観を併せ持ち、意匠性と耐衝撃性が求められる各種筐体材料や、自動車内装材料、各種自動車内装部品等として好適である。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形品の1種である筐体は、機械や電気など何らかの機能を有する機器の外装(カバー)であり、それらの機器に付属する外装であってもよい。
筐体が用いられる機器としては、例えば、家電機器、OA機器、住設機器及び車両機器が挙げられる。
家電機器としては、例えば、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、電器ポット、電話機、コーヒーメーカー、液晶やプラズマなどのテレビ、ビジュアルレコーダー、オーディオステレオ、スマートフォンを含む携帯電話、据置型ゲーム機、携帯型ゲーム機、リモコンが挙げられる。
OA機器としては、例えば、ファックスやコピーなどの複合機器、液晶モニター、プリンター、パソコンが挙げられる。
住設機器としては、例えば、システムキッチン、洗面台、システムバスが挙げられる。
車両機器としては、例えば、自動車の内装のガーニッシュカバー、具体的にはシフトレバーインジケーターカバー、ドアハンドル枠、パワーウィンドウスイッチ枠、センタークラスター、カーステレオやカーナビ枠、センターピラーカバーが挙げられる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体の形状や大きさは、特に限定されるものではなく、形状としては、例えば、板状のような薄い形状から、3次元的な厚みがある形状までのものが挙げられ、コーナーが角張った多角形型の形状、曲面の多い形状であってもよい。大きさは、10×10×10mmの範囲に含まれる小さなものから、それよりも大きく300×100×100mmの範囲に含まれる大きなものが挙げられる。
(樹脂組成物I−1〜I−6の製造)
後述する実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物の原料となる樹脂組成物I−1〜I−6を製造した。
樹脂組成物I−1〜I−6は、下記のようにして製造されるゴムラテックスを用いて製造した。
なお、樹脂組成物I−1〜I−6は、後述するようにゴムラテックス(ゴム質重合体)に所定の単量体単位がグラフト重合されたグラフト共同重合体(A)と、グラフトされずに連続相(B)となった単量体やその重合体を含むものとする。
<分散相であるグラフト共重合体(A);アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)となるゴムラテックスの製造>
ブタジエン18質量部、アクリロニトリル2質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)160質量部、ロジン酸カリウム0.067質量部、オレイン酸カリウム0.033質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、水酸化ナトリウム0.03質量部、過硫酸ナトリウム0.075質量部、重炭酸ナトリウム0.10質量部を、真空に脱気した撹拌機を装備した耐圧容器に収納して、温度を室温から65℃まで上昇させ、重合を開始した。
重合開始から2.5時間経過後、さらに5時間かけて、ブタジエンモノマー80質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.3質量部、不均化ロジン酸カリウム0.67質量部、オレイン酸カリウム0.33質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部、水酸化ナトリウム0.05質量部、重炭酸ナトリウム0.15質量部、脱イオン水50質量部を連続的に添加した後、系を80℃まで昇温し、重合開始から14時間経過後に冷却して重合を終了した。
得られた重合液中、固形分(ゴムラテックス:ゴム質重合体)は41.8質量%であり、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(商品名:nanotrac150)にて測定した固形分の質量平均粒子径は165nmであった。
上記により得られたゴムラテックス(ゴム質重合体)40質量部(固形分)に、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)95質量部を添加し、気相部を窒素置換し、そこに、脱イオン水20質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0786質量部、硫酸第一鉄0.0036質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.0408質量部を溶解してなる水溶液を添加した(以上、表1中、「初添」と示す。)その後、70℃に昇温した。
続いて、1.5時間かけて、スチレン18質量部とクメンハイドロパーオキシド0.129質量部とからなる単量体混合液、及び、脱イオン水10.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0392質量部を溶解してなる水溶液を添加した(以上、表1中、「1段目追添」と示す。)。
続いて、3.5時間かけて、アクリロニトリル14.7質量部、スチレン27.3質量部とクメンハイドロパーオキシド0.14質量部とからなる単量体混合液、及び脱イオン水24.5質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.0914質量部を溶解してなる水溶液を添加した(以上、表1中、「2段目追添」と示す。)。
それらの添加終了後に、クメンハイドロパーオキシド0.02質量部を、更に添加した後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させ、そこにロジン酸カリウム0.5質量部を添加した(表1中、「ショット」と示す。)。このようにしてグラフト共重合体(A)を含有するABSゴムラテックスを得た。
前記ABSゴムラテックス100質量部に、シリコーン樹脂製消泡剤0.07質量部、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン0.6質量部を添加した後、固形分濃度が10質量%となるように脱イオン水を加えて調整し、70℃に加温した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、スクリュープレス機にて固液分離を行った。この時の含水率は10質量%であった。
これを乾燥させて樹脂組成物(I−1)を得た。
この樹脂組成物(I−1)は、グラフト共重合体(I−A−1)からなる分散相と、連続相である熱可塑性樹脂(I−B−1)を有し、分散相であるグラフト共重合体(I−A−1)の含有割合は79.6質量%、連続相である熱可塑性樹脂(I−B−1)の含有割合は20.4質量%であった。
下記表1に示す組成に従い、その他の条件は、上述した樹脂組成物(I−1)と同様にして、樹脂組成物(I−2)〜(I−6)を製造した。
樹脂組成物の材料及び仕込み比、並びにクロロホルム不溶分、クロロホルム可溶分の含有割合、クロロホルム可溶分の還元粘度を表1に示す。
なお、表1中の「3段目追添」は、2段目追添の後、ショットの前に、2段目追添と同様の操作により各材料を添加した。
(連続相となる熱可塑性樹脂(B−7)の製造)
アクリロニトリル38.5質量部、スチレン31.0質量部、エチルベンゼン30.5質量部、α−メチルスチレンダイマー0.3質量部、及び下記式(1)で表される繰返し単位7個を有する過酸化物(10時間半減期:63.5℃)1.05質量部からなる単量体混合物を、空気と接触させない状態で調製し、連続的に撹拌機を装備した反応器に供給し、重合した。
重合温度は120℃に調整した。
撹拌機の撹拌回転数は95回転に設定して十分に混合し、そのP/V値は4.0kw/m3であった。平均滞留時間は4.0時間とした。
上記のようにして得られた重合率55%、ポリマー濃度50質量%の重合混合物を、連続的に反応器から抜き出して第一分離槽へ移送した。
前記第一分離槽において、熱交換器にて160℃に重合混合物を加熱し、真空度60Torrで脱揮して、重合混合物中のポリマー濃度を65質量%に調整した後、前記第一分離槽から排出して第二分離槽へ移送した。
前記第二分離槽において、熱交換器にて260℃に重合混合物を加熱し、真空度32Torrで脱揮して、重合混合物中の揮発性成分の含有割合を0.7質量%、ポリマー濃度を99.4質量%に調整した後、排出してペレット状の熱可塑性樹脂(B−7)を得た。
当該熱可塑性樹脂(B−7)における各単量体単位の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR、日本分光株式会社製、品番:FT/IR−7000。以下同様。)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル単位が39.5質量%、スチレン単位が60.5質量%であった。
商品名「Tritan TX2000(インヘレント粘度;0.64dL/g、Tg;131℃、ジオール成分;TMCD残基36モル%、CHDM残基64モル%、ジカルボン酸成分;炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基100モル%)」、EASTMAN社製を用いた。
商品名「EASTAR GN001(PET−G)、(インヘレント粘度;0.75dL/g、Tg;85℃、ジオール成分;エチレングリコール(EG)残基30モル%、CHDM残基70モル%、ジカルボン酸成分;炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基100モル%)」EASTMAN社製、を用いた。
前記インヘレント粘度は、ISO1628−1:1998の規定に従い、25℃において60/40(wt/wt)のフェノール/テトラクロロエタン中で0.5g/dLの濃度で測定した。
商品名「WONDERLITE(登録商標) PC−110(重量平均分子量;42,000)」奇美社製、を用いた。
前記重量平均分子量は、クロロホルムに溶解させ、単分散ポリスチレンを標準サンプルとして、GPCを用いて算出した。
物性の評価方法を下記に示す。
<(1)ノッチ付シャルピー衝撃強度の測定>
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で、ISO179に準じて、厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。
縦8cm×横1cm、厚さ4mmの試験片を切り出した後、評価した。
10点の測定値の加算平均値を算出し、ノッチ付シャルピー衝撃強度とした。
ノッチ付シャルピー衝撃強度が35kJ/m2以上で、家電、ゲーム機、自動車の内装材等で実用上問題なく使用できるため、ノッチ付シャルピー衝撃強度が35kJ/m2未満のものを不可、35kJ/m2以上を優良として評価した。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形機により、シリンダー温度=250℃、金型温度=60℃の条件で、ISO294に準じて、厚み4mmの多目的試験片A型(長さ150mm、狭い部分の幅10.0mm)を成形した。
得られた試験片を80×10×4mmの形状に加工し、ISO75に準じて荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
2点の測定値の加算平均値を算出し、荷重たわみ温度とした。
荷重たわみ温度が90℃以上で、家電、ゲーム機、自動車の内装材等で実用上問題なく使用できるため、荷重たわみ温度が90℃未満のものを不可、90℃以上を優良として評価した。
高品位な外観の指標として、漆黒を評価した。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物に、各色(赤・黄・青・緑)染料を合計1質量%練り込んだ後、射出成形機を用いて、シリンダー温度=270℃、金型温度=70℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。
染料は、赤染料「C.I.;Solvent Red 179」、黄染料「C.I.;DisperseYellow 160」、青染料「C.I.;Solvent Blue 97」、緑染料「C.I.;Solvent Green 3」の四種を用いた。
得られた平板を、多光源分光測色計「CM−2002」(コニカミノルタ(株)製)用いて、SCE(正反射光を除く)、D65光源/10°視野の条件で、L*a*b*表色系にて、L*を測定した。
2点の測定値の加算平均値を算出し、L*値とした。
数値が小さいほど明度が低くより漆黒で、高品位な外観が得られたことを意味し、3.0以下で、家電、ゲーム機、自動車の内装材等で高品位な外観を保持できるため、漆黒が3.0を超えたものを不可、3.0以下を優良として評価した。
この漆黒の判定数値は、0.1の違いであっても人間の目で良し悪しを判断できる程度のものであるため、例えば、L*が3.5の材料とL*が2.5材料とを比較した場合、この0.5の差というのは、大きな効果であると判断できた。
寸法安定性の指標として、成形収縮率を評価した。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物に各色(赤・黄・青・緑)染料を合計1質量%練り込んだ後、射出成形機を用いて、シリンダー温度=270℃、金型温度=70℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。
染料は、赤染料「C.I.;Solvent Red 179」、黄染料「C.I.;DisperseYellow 160」、青染料「C.I.;Solvent Blue 97」、緑染料「C.I.;Solvent Green 3」の四種を用いた。
得られた平板の、縦及び横の寸法を測定し、金型寸法から成形収縮率を算出した。
3点の測定値の加算平均値を算出し、成形収縮率とした。
成形収縮率が0.5%未満であると、より寸法安定性が良好となる。
成形収縮率が0.5%以上を不可、0.5%未満を優良とした。
高品位な外観の指標として、ウェルド部の外観を評価した。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物に、各色(赤・黄・青・緑)染料を合計1質量%練り込んだ後、射出成形機を用いて、シリンダー温度=280℃、金型温度=130℃(加熱時)/80℃(冷却時)とし、ヒートアンドクール成形を行い、縦mm×横mm×厚み2mmの両点ゲートを持つ箱型薄肉形状の成形品を射出成型した。
染料は、赤染料「C.I.;Solvent Red 179」、黄染料「C.I.;DisperseYellow 160」、青染料「C.I.;Solvent Blue 97」、緑染料「C.I.;Solvent Green 3」の四種を用いた。
得られた成形体のウェルド部を目視で観察し、以下の判断基準に基づいて、判定した。
○;ウェルドラインが見えない。
△;ウェルドラインがかすかにうっすらと観察される。
×;ウェルドラインがはっきり観察される。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物を、クロロホルムに溶解し、クロロホルム可溶分とクロロホルム不溶分とに分離した。
このクロロホルム不溶分(0.5g)に四酸化オスミウム(0.0046g)、t−ブチルアルコール(10.7g)、有機過酸化物(「パーブチルH−69」(日油株式会社商品名)9.2g)を加えて、30分間、還流させた後、溶媒除去により濃縮して、クロロホルムに溶解させた。
これをメタノールに添加し、沈殿物を得、その沈殿物を分離・乾燥した。これを(0.03g)秤量して、(10mLの)テトラヒドロフランに溶解させ、測定試料とした。
上記とは別に、窒素分析によって、シアン化ビニル系単量体単位の含有率が既知である標準試料(ポリマー)を用いて、シアン化ビニル系単量体単位の含有率とHPLCにおけるリテンションタイムとの関係の検量線を作成しておいた。
上記測定試料を、HPLCで測定してクロマトグラムを得た後、そのクロマトグラムにおけるリテンションタイムから、上記検量線を用いて、VCN単位含有率の分布を求めた。
条件は下記のとおりである。
測定装置:高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)
サンプル濃度:サンプル30mg/THF10mL
カラム:シリカ系シアノプロピル処理品(島津製作所製、商品名「Shim−Pak CLC−CN」)
展開溶剤:テトラヒドロフラン/n−ヘキサン(2液グラジエント測定)
検出器:紫外線(254nm)
得られたVCN分布図において、第1のピークが示すVCN単位含有率の代表値と、第2のピークが示すVCN単位含有率の代表値との差=(|(第1のピーク)−(第2のピーク)|)を算出した。
ここで、前記第1のピーク及び第2のピークの各々が示すVCN単位含有率の代表値とは、第2のピーク及び第2のピークの、それぞれのピーク全体の積分値から求められる加重平均値を意味する。
後述する実施例1〜7、比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物を、予備乾燥させたサンプルをDSC(示差走査熱量計)(DSC8500、PerkinElmer社製)の測定パンへ入れ、下記条件にて測定を行った。
得られた2ndScanのチャートより、ガラス転移点を求めた。
また、本実施形態におけるガラス転移点とは、中間点ガラス転移温度を指し示す。
昇温降温速度 ;10℃/min
温度条件 ;−120℃から180℃まで昇温(1stScan)
180℃から−120℃まで降温(3min保持)
−120℃から180℃まで昇温(2ndScan)
雰囲気 ;窒素気流中(50ml/min)
測定試料 ;10mg
2軸押出機(東芝機械製「TEM−58SS」)を用いて、以下のとおりに熱可塑性樹脂組成物を製造した。
供給口は、上流側に1ヶ所とし、十分に乾燥して水分除去を行った樹脂組成物(I−1)、熱可塑性樹脂(B−7)、(B−8)、及び(B−10)を供給した。
その際の押出機のシリンダー温度は、全段250℃に設定した。
また、この時の混練物の吐出量は300kg/時間、スクリュー回転数は250rpmであった。
この時の原材料の種類、配合割合を下記表2に示す。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、上述の各評価を行った結果を、下記表2に示す。
上記樹脂組成物(I−1)に替えて、材料及び仕込み比、並びにクロロホルム不溶分、クロロホルム可溶分の含有割合、クロロホルム可溶分の還元粘度、追添回数を変更した(I−2)〜(I−6)を用いた。
その他の条件は、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて上述の各評価を行った結果を下記表2に示す。
(B−7)成分を添加せず、配合比率を変更した以外は、実施例2と同様にしてペレットを得た。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表2に示す。
熱可塑性樹脂組成物に対する(B−7)、(B−8)、(B−10)の合計成分量、及び(I−2)の仕込み量を変更した。
その他の条件は、実施例2と同様にしてペレットを得た。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表2に示す。
連続相(B−8)、(B−9)、(B−10)の種類及び配合割合を変更した。
その他の条件は、実施例1と同様にしてペレットを得た。
この時の原材料の種類、配合割合を表2に示す。
得られたペレットを用いて上述の各評価を行った結果を表2に示す。
グラフト共重合体(I−A−1)の、「グラフト75」とは、(I−A−1)成分のグラフト率が75%であることを意味する。
グラフト共重合体(I−A−2)〜(I−A−6)も同様である。
グラフト共重合体(I−A−1)の「VCN34」とは、スチレンとアクリロニトリルの合計量中の、アクリロニトリルの割合を意味する。
グラフト共重合体(I−A−2)〜(I−A−6)も同様である。
グラフト共重合体(I−A−4)の「ピーク二つ」とは、第2のピークのピークトップが二つであることを意味する。
(I−B−1)の「VCN24」とは、アクリロニトリル・スチレン共重合体であって、アクリロニトリル単位を24質量%含有することを意味する。
(I−B−2)〜(I−B−6)、(B−7)も同様である。
例えば、意匠性と耐衝撃性、耐熱性の求められる各種筐体材料や自動車内装部品等として産業上利用可能性を有する。
Claims (13)
- グラフト共重合体(A)からなる分散相と、
連続相(B)と、
を、含み、
前記グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体からなる幹ポリマーと、当該幹ポリマー
にグラフト重合したグラフト鎖と、を有し、
前記グラフト鎖は、シアン化ビニル系単量体単位と、そのシアン化ビニル系単量体と共
重合可能な1種以上の単量体単位と、を有し、
前記グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分にお
ける前記シアン化ビニル系単量体単位の含有率の分布が、2つ以上のピークを有し、
前記2つ以上のピークのうち1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含有率が0
質量%以上10質量%未満の範囲内にピークトップを有する第1のピークであり、
前記第1のピークとは異なるピークの1つ以上が、前記シアン化ビニル単量体単位の含
有率が10質量%以上55質量%未満の範囲内にピークトップを有する第2のピークであ
り、
前記第1のピーク及び第2のピークにおける、それぞれのピーク全体の積分値から求め
られる加重平均値を代表値としたとき、
前記第1のピークが示す前記含有率の代表値と、前記第2のピークが示す前記含有率の
代表値との差が10質量%以上であり、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃以上であり、120〜140℃の
範囲内に、一以上のガラス転移点を有する、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記熱可塑性樹脂組成物は、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は、いずれも100℃〜150℃の範囲内にあり、12
0〜140℃の範囲内に、一以上のガラス転移点がある、請求項1に記載の熱可塑性樹脂
組成物。 - 前記熱可塑性樹脂組成物は、
20℃未満と20℃以上にそれぞれガラス転移点を一つ以上有し、
前記20℃以上のガラス転移点は二つであり、120〜140℃の範囲内に一つ、10
0〜115℃の範囲内に一つ有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記連続相(B)が、非晶性熱可塑性樹脂を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項
に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記連続相(B)が、少なくともシアン化ビニル系単量体を含有する、請求項1乃至4
のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記連続相(B)が、芳香族ポリカーボネート残基、及び2,2,4,4−テトラメチ
ル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)残基を含有する、請求項1乃至5のいず
れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記グラフト共重合体(A)のグラフト率が150〜200%である、請求項1乃至6
のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記グラフト共重合体(A)の酸化分解を経て得られる前記グラフト鎖由来の成分にお
ける前記シアン化ビニル系単量体由来の成分の含有率の分布の内、
前記第2のピークのピークトップが、25質量%以上40質量%以下のシアン化ビニル
単量体単位含有率の範囲内にある、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂
組成物。 - 着色剤をさらに含有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物
。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
- 前記成形体が無塗装である、請求項10に記載の成形体。
- 前記成形体が自動車内装材である、請求項10又は11に記載の成形体。
- 請求項10乃至12のいずれか一項に記載の成形体の製造方法であって、
成形時の金型温度を120℃以上として成形する工程を有する、成形体の製造方法。
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