以下、本発明の実施形態について説明する。
図1,2に示した電池モジュール1は、その筐体11の内部に複数の単電池2を有する。本実施形態では、4つの単電池2が直列に(例えば2並列2直列に、または4直列に)接続されている。詳しく図示しないが、単電池2は、正極と負極をそれらの間にセパレータを介して捲回または積層してなる電極群と、その電極群を収容する外装体とを備える。外装体の内部の密閉空間には、電極群が電解液とともに収容されている。単電池2の外装体には、アルミラミネート箔などのラミネートフィルムが用いられるが、これに代えて円筒型または角型の金属缶を使用してもよい。
この電池モジュール1は、電動車両用の電源として使用され得るリチウムイオン二次電池であり、車両には電池パックの形態で搭載される。電池パックでは、直列に接続された複数の電池モジュール1が、コントローラなどの諸般の機器と共に筐体内に収容される。電池パックの筐体は、車載に適した形状に、例えば車両の床下形状に合わせた形状に形成される。なお、本発明において、密閉型二次電池は、リチウムイオン電池などの非水系電解液二次電池に限られず、ニッケル水素電池などの水系電解液二次電池であっても構わない。
図2に示すように、密閉型二次電池には変形検出センサが取り付けられ、その変形検出センサは高分子マトリックス層3と検出部4とを備えている。高分子マトリックス層3は、単電池2の表面(外装体の外面)に貼り付けられ、その貼付には必要に応じて接着剤や接着テープが用いられる。高分子マトリックス層3はシート状に形成されていて、二次電池における間隙内、例えば互いに隣り合う単電池2の間隙内や、図3のような単電池2とそれを収容する筐体11との間に配置される。高分子マトリックス層3を折り曲げるようにして、単電池2や筐体11の角部に貼り付けることも可能である。
高分子マトリックス層3は、その高分子マトリックス層3の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有する。検出部4は、その外場の変化を検出する。検出部4は、外場の変化を検出可能な程度で高分子マトリックス層3から離して配置され、好ましくは単電池2の膨れによる影響を受けにくい比較的堅固な箇所に貼り付けられる。本実施形態では、筐体11の外面に検出部4を貼り付けているが、これに限られず、筐体11の内面や電池パックの筐体に検出部4を貼り付けても構わない。これらの筐体は、例えば金属またはプラスチックにより形成され、電池モジュールの筐体にはラミネートフィルムが用いられる場合もある。
図2で示した高分子マトリックス層3は、間隙内挟まれて圧縮状態で装着されている。その高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、それが配置される間隙G1よりも大きく、高分子マトリックス層3は厚み方向に圧縮されている。図3に示した高分子マトリックス層3もまた、間隙内で挟まれて圧縮状態で装着されており、この例では単電池2と筐体11との間隙内で挟まれて圧縮状態で装着されている。その高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、それが配置される間隙G2よりも大きく、この高分子マトリックス層3も厚み方向に圧縮されている。
単電池2が膨れると、それに応じて高分子マトリックス層3が変形し、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化が検出部4によって検出される。検出部4から出力された検出信号は不図示の制御装置に送られ、設定値以上の外場の変化が検出部4により検出された場合には、その制御装置に接続された不図示のスイッチング回路が通電を遮断し、充電電流または放電電流を停止する。このようにして、単電池2の膨れによる二次電池の変形が高感度に検出され、二次電池の破裂が未然に防止される。この変形検出センサは、二次電池の容積を圧迫せず、位置ずれが抑えられることでセンサ特性が安定する。
図2,3の例では、それぞれ高分子マトリックス層3と検出部4を1つずつ示しているが、二次電池の形状や大きさなどの諸条件に応じて、それらを複数使用してもよい。その際、図2のように装着された高分子マトリックス層3と、図3のように装着された高分子マトリックス層3とが併存しても構わない。更に、複数の高分子マトリックス層3を同じ単電池2に貼り付けたり、複数の検出部4によって同じ高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出するように構成したりしてもよい。
本実施形態では、高分子マトリックス層3が上記フィラーとしての磁性フィラーを含有し、検出部4が上記外場としての磁場の変化、つまり磁束密度変化量を検出する。この場合、高分子マトリックス層3は、エラストマー成分からなるマトリックスに磁性フィラーが分散してなる磁性エラストマー層であることが好ましい。
磁性フィラーとしては、希土類系、鉄系、コバルト系、ニッケル系、酸化物系などが挙げられるが、より高い磁力が得られる希土類系が好ましい。磁性フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、柱状および不定形のいずれであってよい。磁性フィラーの平均粒径は、好ましくは0.02〜500μm、より好ましくは0.1〜400μm、更に好ましくは0.5〜300μmである。平均粒径が0.02μmより小さいと、磁性フィラーの磁気特性が低下する傾向にあり、平均粒径が500μmを超えると、磁性エラストマー層の機械的特性が低下して脆くなる傾向にある。
磁性フィラーは、着磁後にエラストマー中に導入しても構わないが、エラストマーに導入した後に着磁することが好ましい。エラストマーに導入した後に着磁することで、磁石の極性の制御が容易となり、磁場の検出が容易になる。
本発明に係る変形検出センサを構成する高分子マトリックスは、厚み方向で外側の二次電池側領域の弾性率に比して、厚み方向の内側領域の弾性率が高くなる点が特徴である。高分子マトリックス層が前記の如く設計されているため、本発明に係る変形検出センサは、正常時に見られる小変形は感知せず、異常時に見られる大変形のみを感度良く検出できる。特に、高分子マトリックス層は、厚み方向の内側領域の弾性率が、厚み方向の両外側領域の弾性率よりも高いことが好ましく、高分子マトリックス層は、厚み方向で外側の二次電池側領域の弾性率に比して、厚み方向の内側領域の弾性率が1MPa以上高いものであることがより好ましい。
高分子マトリックス層の厚み方向で外側の二次電池側領域の弾性率に比して、厚み方向の内側領域の弾性率が高くなるように、高分子マトリックス層を設計する方法として、好適には、例えば、高分子マトリックス層を、少なくとも2枚の高分子マトリックス層を有する積層構造体で構成し、かつ少なくとも2枚の高分子マトリックス層を、いずれも着磁されたものとし、さらにそれらの磁極の向きが同じになるように積層する方法が挙げられる。つまり、例えば着磁された一方の高分子マトリックス層のN極と、着磁された他方の高分子マトリックス層のS極とが互いに向き合うように積層しても良いし、着磁された一方の高分子マトリックス層のS極と、着磁された他方の高分子マトリックス層のN極とが互いに向き合うように積層しても良い。磁極の向きが同じになるように、着磁された少なくとも2枚の高分子マトリックス層を積層することにより、特性安定性に優れた変形検出センサとすることができる。
また、正常時にはセンシングせず、大変形を伴う異常発生時のみセンシングする機能が向上した変形検出センサとするためには、厚み方向にフィラーが偏在するものであって、厚み方向の内側領域に比して、厚み方向の両外側領域でのフィラー濃度が低い高分子マトリックス層を使用することが好ましい。このような高分子マトリックス層は、例えば、厚み方向において、一方の領域に比して他方の領域でのフィラー濃度が高い、2枚の高分子マトリックス層を、フィラーの濃度が高い領域同士が向き合うように積層することにより形成可能である。
上記において、1枚の高分子マトリックス層中、フィラー濃度の高い領域でのフィラー偏在率は、好ましくは50を超え、より好ましくは60以上であり、更に好ましくは70以上である。この場合、フィラー濃度の低い領域でのフィラー偏在率は50未満となる。フィラー濃度の高い領域でのフィラー偏在率は最大で100であり、フィラー濃度の低い領域でのフィラー偏在率は最小で0である。一方、2枚の高分子マトリックス層を積層した場合は、積層体全体のフィラー偏在率を100とした時、フィラー濃度の高い領域でのフィラー偏在率の好ましい範囲は30〜50である。フィラーの偏在には、エラストマー成分にフィラーを導入した後、室温あるいは所定の温度で静置し、そのフィラーの重さにより自然沈降させる方法を使用でき、静置する温度や時間を変化させることでフィラー偏在率を調整できる。遠心力や磁力のような物理的な力を用いて、フィラーを偏在させてもよい。
フィラー偏在率は、以下の方法により測定される。即ち、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて、高分子マトリックス層の断面を60倍で観察する。その断面の厚み方向全体の領域と、その断面を厚み方向に四等分した4つの領域に対し、それぞれ元素分析によりフィラー固有の金属元素(本実施形態の磁性フィラーであれば例えばFe元素)の存在量を求める。この存在量について、厚み方向全体の領域に対する一方側の領域の比率を算出し、それを一方側の領域でのフィラー偏在率とする。他方側の領域でのフィラー偏在率も、これと同様である。
高分子マトリックス層3は、フィラー濃度の低い領域が、気泡を含有する発泡体で形成されている構造でも構わない。これにより、高分子マトリックス層が更に変形しやすくなってセンサ感度が高められる。また、フィラー濃度の低い領域とともにフィラー濃度の高い領域が発泡体で形成されていてもよく、その場合の高分子マトリックス層は全体が発泡体となる。このような厚み方向の少なくとも一部が発泡体である高分子マトリックス層は、上記の如く、複数の層(例えば、フィラーを含有する無発泡層と、フィラーを含有しない発泡層)からなる積層体により構成されていても構わない。発泡体で構成された高分子マトリックス層については後述する。
なお、厚み方向にフィラーが偏在するものであって、厚み方向の内側領域に比して、厚み方向の両外側領域でのフィラー濃度が低くなるように、かつ磁極の向きが同じになるように、着磁された少なくとも2枚の高分子マトリックス層が積層された高分子マトリックス層は、厚み方向にフィラーが偏在した、着磁された2枚の高分子マトリックス層を使用し、以下の方法により製造可能である。
磁性フィラーを熱硬化性エラストマー前駆体と混合して混合液を調製する第1工程、前記混合液をシート状に成形する第2工程、前記磁性フィラーを前記熱硬化性エラストマー前駆体中で偏在させる第3工程、前記熱硬化性エラストマー前駆体を加熱して硬化させる第4工程、前記磁性フィラーを着磁して前記磁性フィラーが偏在した高分子マトリックス層を形成する第5工程、前記磁性フィラーが偏在した前記高分子マトリックス層を少なくとも2枚積層させる第6工程を含む製造方法。なお、第6工程においては、磁極の向きが同じとなるように、着磁された2枚の高分子マトリックス層を積層することが好ましく、かつ厚み方向において、一方の領域に比して他方の領域でのフィラー濃度が高い、2枚の高分子マトリックス層を、フィラーの濃度が高い領域同士が向き合うように積層することが好ましい。
さらに、第6工程において、高分子マトリックス層同士を積層させる際、70〜130℃で0.5〜3時間加熱することにより、自己接着させる場合、高分子マトリックス層の柔軟性が損なわれず、感度の低下が防止できるため好ましい。
高分子マトリックスとしては、例えばエラストマー成分を使用することができ、エラストマー成分としては、任意のものを使用可能である。エラストマー成分としては、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーまたはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、熱硬化性エラストマーとしては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、および天然ゴム等を挙げることができる。このうち好ましいのは熱硬化性エラストマーであり、これは電池の発熱や過負荷に伴う磁性エラストマーのへたりを抑制できるためである。更に好ましくは、ポリウレタンゴム(ポリウレタンエラストマーともいう)またはシリコーンゴム(シリコーンエラストマーともいう)である。
ポリウレタンエラストマーは、活性水素含有化合物とイソシアネート成分とを反応させることにより得られる。ポリウレタンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、活性水素含有化合物と磁性フィラーとを混合し、ここにイソシアネート成分を混合させて混合液を得る。また、イソシアネート成分に磁性フィラーを混合し、活性水素含有化合物を混合させることで混合液を得ることも出来る。その混合液を離型処理したモールド内に注型し、その後硬化温度まで加熱して硬化することにより、磁性エラストマーを製造することができる。また、シリコーンエラストマーをエラストマー成分として用いる場合、シリコーンエラストマーの前駆体に磁性フィラーを入れて混合し、型内に入れ、その後加熱して硬化させることにより磁性エラストマーを製造することができる。なお、必要に応じて溶剤を添加してもよい。
ポリウレタンエラストマーに使用できるイソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、イソシアネート成分は、ウレタン変性、アロファネート変性、ビウレット変性、及びイソシアヌレート変性等の変性化したものであってもよい。好ましいイソシアネート成分は、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジシソシアネート、より好ましくは2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートである。
本発明においては活性水素含有化合物として、ポリウレタンの分野において公知の化合物を使用できる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いで得られた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール等の高分子量ポリオールを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性水素含有化合物として上述した高分子量ポリオール成分の他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール成分、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン成分を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトライソプロピルジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類を混合することもできる。好ましい活性水素含有化合物は、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、3−メチル−1,5−ペンタンアジペート、より好ましくはポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体である。
ポリウレタンエラストマーを用いる場合、そのNCO indexは、好ましくは0.3〜1.2、より好ましくは0.35〜1.1、更に好ましく0.4〜1.05である。NCO indexが0.3より小さいと、磁性エラストマーの硬化が不十分になる傾向にあり、NCO indexが1.2より大きいと、弾性率が高くなり、センサ感度が低下する傾向にある。
磁性エラストマー中の磁性フィラーの量は、エラストマー成分100重量部に対して、好ましくは1〜450重量部、より好ましくは2〜400重量部である。これが1重量部より少ないと、磁場の変化を検出することが難しくなる傾向にあり、450重量部を超えると、磁性エラストマー自体が脆くなる場合がある。
磁場の変化を検出する検出部4には、例えば、磁気抵抗素子、ホール素子、インダクタ、MI素子、フラックスゲートセンサなどを用いることができる。磁気抵抗素子としては、半導体化合物磁気抵抗素子、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)が挙げられる。このうち好ましいのはホール素子であり、これは広範囲にわたって高い感度を有する検出部4として有用なためである。
高分子マトリックス層3の非圧縮状態での厚みは、好ましくは300〜3000μm、より好ましくは400〜2000μm、更に好ましくは500〜1500μmである。上記の厚みが300μmよりも小さいと、所要量のフィラーを添加しようとした際に脆くなってハンドリング性が悪化する傾向にある。一方、上記の厚みが3000μmよりも大きいと、上記の如き間隙内に配置する際に高分子マトリックス層3が過度に圧縮されて変形しにくくなり、センサ感度が低下する場合がある。
高分子マトリックス層3は、気泡を含まない無発泡体であっても構わないが、安定性やセンサ感度を高める観点から、更には軽量化の観点から、上記の如く気泡を含有する発泡体であってもよい。その発泡体には、一般の樹脂フォームを用いることができるが、圧縮永久歪などの特性を考慮すると熱硬化性樹脂フォームを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂フォームとしては、ポリウレタン樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォームなどが挙げられ、このうちポリウレタン樹脂フォームが好適である。ポリウレタン樹脂フォームには、上掲したイソシアネート成分や活性水素含有化合物を使用できる。
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる触媒としては、公知の触媒を限定なく使用することができるが、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、N,N,N’,N’‐テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン触媒、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の金属触媒を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記触媒の市販品として、東ソー社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王社製の「カオーライザー NO.1」、「カオーライザー NO.30P」、エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、東栄化工社製の「BTT−24」、日本化学産業社製の「プキャット25」などが挙げられる。
ポリウレタン樹脂フォームに用いられる整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤など、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造に用いられるものを使用することができる。上記シリコーン系整泡剤やフッ素系整泡剤として用いられるシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤は、分子内に、ポリウレタン系に可溶な部分と、不溶な部分とが存在し、上記不溶な部分がポリウレタン系材料を均一に分散し、ポリウレタン系の表面張力を下げることによって、気泡を発生させやすく、割れにくくするものであり、もちろん、上記表面張力を下げ過ぎると気泡が発生しにくくなる。本発明の樹脂フォームにおいては、例えば、上記シリコーン系界面活性剤を用いる場合、上記不溶な部分としてのジメチルポリシロキサン構造によって、気泡径を小さくしたり、気泡数を多くしたりすることが可能となるのである。
上記シリコーン系整泡剤の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「SF−2962」、「SRX 274DL」、「SF−2965」、「SF−2904」、「SF−2908」、「SF−2904」、「L5340」、エボニック・デグサ社製の「テゴスターブ(TegostabR) B8017、B−8465,B−8443」などが挙げられる。また、上記フッ素系整泡剤の市販品としては、例えば、3M社製の「FC430」、「FC4430」、大日本インキ化学工業社製の「FC142D」、「F552」、「F554」、「F558」、「F561」、「R41」などが挙げられる。
上記整泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜12質量部である。整泡剤の配合量が1質量部未満であると発泡が十分ではなく、15質量部を超えるとブリードアウトする可能性がある。
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の気泡含有率は、20〜80体積%であることが好ましい。気泡含有率が20体積%以上であると、高分子マトリックス層3が柔軟で変形しやすくなり、センサ感度を良好に高められる。また、気泡含有率が80体積%以下であると、高分子マトリックス層3の脆化が抑えられ、ハンドリング性や安定性が高められる。気泡含有率は、JIS Z−8807−1976に準拠して比重測定を行い、この値と無発泡体の比重の値から算出される。
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の平均気泡径は、好ましくは50〜300μmである。また、その発泡体の平均開口径は、好ましくは15〜100μmである。平均気泡径が50μm未満または平均開口径が15μm未満であると、整泡剤量の増大に起因してセンサ特性の安定性が悪化する傾向にある。また、平均気泡径が300μmを超え、または平均開口径が100μmを超えると、検出対象である単電池などとの接触面積が減少し、安定性が低下する傾向にある。平均気泡径及び平均開口径は、高分子マトリックス層の断面をSEMにより60倍の倍率で観察し、得られた画像について画像解析ソフトを用いて上記断面の任意範囲内に存在する全ての気泡の気泡径、及び全ての連続気泡の開口径を測定し、その平均値から算出される。
高分子マトリックス層3を形成する発泡体の独立気泡率は、5〜70%であることが好ましい。これにより、高分子マトリックス層3の圧縮されやすさを確保しつつ、優れた安定性を発揮できる。また、高分子マトリックス層3を形成する発泡体に対するフィラー(本実施形態では磁性フィラー)の体積分率は、1〜30体積%であることが好ましい。
上述したポリウレタン樹脂フォームは、磁性フィラーを含有すること以外は、通常のポリウレタン樹脂フォームの製造方法により製造できる。その磁性フィラーを含有するポリウレタン樹脂フォームの製造方法は、例えば以下の工程(i)〜(v)を含む。
(i)ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成する工程
(ii)該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌する一次撹拌工程
(iii)更に活性水素成分を加えて、二次撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する工程
(iv)該気泡分散ウレタン組成物を所望の形状に成形し、硬化して、磁性フィラーを含むウレタン樹脂フォームを作製する工程
(v)該ウレタン樹脂フォームを着磁して磁性ウレタン樹脂フォームを形成する工程
ポリウレタン樹脂フォームの製造方法としては、水などの反応型発泡剤を用いる化学的発泡法が知られているが、上記工程(ii)、(iii)のような、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを含有する混合物と、活性水素成分とを、非反応性気体雰囲気下で機械的撹拌する機械的発泡法を用いることが好ましい。機械的発泡法によれば、化学的発泡法に比べて成形操作が簡便であり、発泡剤として水を用いないので、微細な気泡を有する強靭で反発弾性(復元性)などに優れた成形体が得られる。
まず、上記工程(i)のように、ポリイソシアネート成分および活性水素成分からイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成し、上記一次撹拌工程(ii)のように、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、整泡剤、触媒および磁性フィラーを混合、予備撹拌して、非反応性気体雰囲気下で、気泡を取り込むように激しく撹拌し、上記二次撹拌工程(iii)のように、更に該活性水素成分を加えて激しく撹拌して、磁性フィラーを含む気泡分散ウレタン組成物を調製する。上記工程(i)〜(iv)のように、ポリイソシアネート成分、活性水素成分および触媒を含有するポリウレタン樹脂フォームにおいて、予めイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを形成してからポリウレタン樹脂フォームを形成する方法は当業者に公知であり、製造条件は配合材料によって適宜選択することができる。
上記工程(i)の形成条件としては、まず、ポリイソシアネート成分および活性水素成分の配合比率は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と活性水素成分中の活性水素基との比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.5〜5、好ましくは1.7〜2.3となるように選択する。また、反応温度は60〜120℃が好ましく、反応時間は3〜8時間が好ましい。更に、従来公知のウレタン化触媒、有機触媒、例えば東栄化工株式会社から商品名「BTT−24」で市販されているオクチル酸鉛、東ソー株式会社製の「TEDA−L33」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の「NIAX CATALYST A1」、花王株式会社製の「カオーライザー NO.1」、「エアプロダクツ社製の「DABCO T−9」、などを用いてもよい。上記工程(i)に用いられる装置としては、上記のような条件で上記材料を撹拌混合して反応させることができるものであれば使用でき、通常のポリウレタン製造に用いられるものを使用することができる。
上記工程(ii)の一次撹拌を行う方法としては、液状樹脂とフィラーを混合することができる一般的な混合機を用いる方法が挙げられ、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサなどが挙げられる。
上記工程(ii)において、整泡剤をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー側に加えて撹拌(一次撹拌)し、上記工程(iii)において、更に上記活性水素成分を加えて二次撹拌することによって、反応系内に取り込んだ気泡が抜けにくくなり、効率的な発泡を行うことができるため好ましい。
上記工程(ii)における非反応性気体としては可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、これらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用が最も好ましい。また、上記一次撹拌および二次撹拌、特に一次撹拌の条件についても、通常の機械的発泡法によるウレタンフォーム製造時の条件を用いることができ、特に限定されないが、撹拌翼または撹拌翼を備えた混合機を用いて、回転数1000〜10000rpmで1〜30分間激しく撹拌する。そのような装置として、例えばホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機などが挙げられる。
上記工程(iv)において、上記気泡分散ウレタン組成物をシート状など所望の形状に成形する方法も特に限定されず、例えば、上記混合液を離型処理したモールド内に注入し、硬化させるバッチ式成形方法、離型処理した面材上に上記気泡分散ウレタン組成物を連続的に供給し硬化させる連続成形方法を用いることができる。また、上記硬化条件も、特に限定されず、60〜200℃で10分間〜24時間が好ましく、硬化温度が高すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化温度が低すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。また、硬化時間が長すぎると上記樹脂フォームが熱劣化してしまい機械的強度が悪化し、硬化時間が短すぎると上記樹脂フォームの硬化不良が生じてしまう。
上記工程(v)において、磁性フィラーの着磁方法は特に限定されず、通常用いられる着磁装置、例えば電子磁気工業株式会社製の「ES−10100−15SH」、株式会社玉川製作所製の「TM−YS4E」などを用いて行うことができる。通常、磁束密度1〜3Tを有する磁場を印加する。磁性フィラーは、着磁後に磁性フィラー分散液を形成する上記工程(ii)において添加してもよいが、途中の工程での磁性フィラーの取り扱い作業性などの観点から、上記工程(v)において着磁することが好ましい。
本実施形態では、既述の通り、図2のように互いに隣り合う単電池2の間で、または図3のように単電池2とそれを収容する筐体11との間で挟むようにして高分子マトリックス層3を圧縮状態で装着する。そして、単電池2が膨れて高分子マトリックス層3が変形した場合には、その高分子マトリックス層3の変形に伴う外場の変化を検出し、それに基づいて二次電池の変形を検出する。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
前述の実施形態では、高分子マトリックス層は、その高分子マトリックス層の変形に応じて外場に変化を与えるフィラーを分散させて含有するものである例を示した。しかしながら本発明においては、例えばシート状の永久磁石層や、固形状の永久磁石を熱硬化性エラストマーで挟み込んだ積層体を高分子マトリックス層として使用しても良い。
前述の実施形態では、高分子マトリックス層3が、互いに隣り合う単電池2の間隙内で挟まれる例(図2参照)と、単電池2と筐体11との間隙内で挟まれる例(図3参照)を示したが、これに限定されない。例えば、電池パックに含まれる電池モジュールの筐体とその隣の電池モジュールの筐体との間で、即ち互いに隣り合う電池モジュールの筐体の間隙内で、高分子マトリックス層が挟まれてもよく、特にラミネートフィルム型の電池モジュールにおいて有用である。或いは、電池モジュールの筐体と電池パックの筐体との間隙内で、高分子マトリックス層が挟まれるものでもよい。
前述の実施形態では、磁場の変化を利用した例を示したが、電場などの他の外場の変化を利用する構成でもよい。例えば、高分子マトリックス層がフィラーとして金属粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性フィラーを含有し、検出部が外場としての電場の変化(抵抗および誘電率の変化)を検出する構成が考えられる。
本発明においては、高分子マトリックス層の柔軟性を損ねない程度に封止材を設けても良い。封止材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはそれらの混合物を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、エチレン・アクリル酸エチルコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリブタジエン等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
高分子マトリックス層となる磁性ポリウレタンエラストマーの製造には、以下の原料を用いた。
TDI−80:トルエンジイソシアネート(三井化学社製、2,4−体=80%、コスモネートT−80)
ポリオールA:グリセリンを開始剤にプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレングリコール、OHV56、官能基数3(旭硝子社製、EX−3030)
ネオジム系フィラー:MF−15P(平均粒径:133μm,愛知製鋼社製)
オクチル酸ビスマス:プキャット25(日本化学産業社製)
オクチル酸鉛:BTT−24(東栄化工社製)
また、プレポリマーには、表1に示すプレポリマーAを用いた。
実施例1
反応容器に、ポリオールAを85.2重量部入れ、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。次いで、反応容器にTDI−80を14.8重量部添加して、反応容器内の温度を80℃に保持しながら5時間反応させて、イソシアネート末端プレポリマーA(NCO%=3.58%)を合成した。
次に、ポリオールA189.4重量部およびオクチル酸ビスマス(日本化学産業社製、プキャット25)0.35重量部の混合液にネオジム系フィラー(愛知製鋼株式会社製、MF−15P)675.3重量部を添加し、フィラー分散液を調製した。また、プレポリマーA 100.0重量部を前記フィラー分散液に添加し、自転・公転ミキサー(シンキー社製)にて混合、および脱泡を行った。この反応液を0.75mmのスペーサーを有する離型処理したPETフィルム上に滴下し、ニップロールにて厚み0.75mmに調整した。その後、室温で所定時間(表2に記載の偏在処理時間)だけ静置し、80℃で1時間硬化を行って、磁性フィラーを含有するポリウレタンエラストマーを得た。得られたポリウレタンエラストマーを着磁装置(電子磁気工業株式会社製)にて2.0Tで着磁することにより、磁性ポリウレタンエラストマーを得た。配合および製造条件を表2に示す。
得られた2枚の磁性ポリウレタンエラストマーを使用し、磁極の向きが同じになるように、かつ厚み方向の両外側がいずれも磁性フィラー濃度が低い領域となるように積層することにより、高分子マトリックス層を構成した(図4)。図4に示す積層高分子マトリックス層3において、上側の磁性ポリウレタンエラストマー31は、(1)側がN極であって、かつ(1)側に磁性フィラーが低濃度に偏在し、(2)側がS極であって、かつ(2)側の磁性フィラー濃度が高濃度となるように積層されている。一方、下側の磁性ポリウレタンエラストマー32は、(4)側がS極であって、かつ(4)側に磁性フィラーが低濃度に偏在し、(3)側がN極であって、かつ(3)側の磁性フィラー濃度が高濃度となるように積層されている。
実施例2〜5、比較例1
表2の配合および製造条件に基づき、実施例1と同様にして磁性ポリウレタン樹脂を得た。なお、実施例5に関しては、磁性フィラーを含有するポリウレタンエラストマーの厚みが1.5mmである単層体を使用し、積層品としなかったこと以外は、実施例4と同様の構成とした。積層された高分子マトリックス層3の(1)〜(4)それぞれの領域における磁極およびフィラーの偏在率を表2に示す。
(フィラー偏在率)
作製した磁性ポリウレタン樹脂の断面(厚み1.5mm)を、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製S−3500N、EDS:堀場製作所製EMAX モデル7021−H)を用いて、加速電圧25kV、真空度50Pa、WD15mmの条件にて60倍で観察した。そして、その断面の厚み方向全体と、その断面を厚み方向に四等分した4つの領域に対し、それぞれ元素分析により磁性フィラー固有のFe元素の存在量を求めた。この存在量について、厚み方向全体の領域に対する各領域の比率を算出した。
上記と同様の方法にて作製した厚み25.0mmの磁性ポリウレタン樹脂をバンドソーにより2つに裁断した。この裁断した磁性ポリウレタン樹脂をJIS K−7312に準拠し、オートグラフAG−X(島津製作所社製)を用いて、室温下で、圧縮速度1mm/minにて圧縮試験を行った。試験片には厚さ12.5mm、直径29.0mmの直円柱形のサンプルを用いた。なお、2.4%〜2.6%歪みにおける応力値から圧縮弾性率を求めた。
(センサ特性の評価)
ステンレス板に検出部であるホール素子(旭化成エレクトロニクス社製、EQ−430L)を両面テープで貼り付けた。この上面から作製した磁性ポリウレタン樹脂(サイズ:5mm×5mm)を貼り付け、10mm×10mmの面圧子を用いて圧力を印加し、所定の歪み量における、初期値に対する磁束密度の変化を測定した。この値が小さいほど、微少歪みに対して、磁束密度の変化が小さいことを示す。なお、試験数はn=10とした。表には5%歪み時の磁束密度変化と、次式に基づき算出した特性安定性を示す。
安定性(%)=(最大磁束密度変化−最小磁束密度変化)/平均磁束密度変化×100
表2の結果から、実施例1〜5で得られた高分子マトリックス層を備える密閉型二次電池の変形検出センサでは、5%歪み程度の、二次電池の正常時に見られる程度の小変形時には、磁束密度変化が小さく、かつ安定性も優れていることがわかる。一方、比較例1で得られた高分子マトリックス層を備える密閉型二次電池の変形検出センサでは、5%歪み程度の小変形時において、既に磁束密度の変化が大きく、かつ安定性にも劣るため、誤作動なく異常時のみを検出するという本願発明の目的を達成し得ないことがわかる。