<1.キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアとしては銅箔を使用する。キャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば12μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。
<2.中間層>
銅箔キャリア上には中間層を設ける。中間層は、モリブデン−ニッケル合金、またはモリブデン−コバルト合金、またはモリブデン−鉄合金で構成されている。中間層がモリブデンを含むことによって、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層との界面で良好に剥離するようになる。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
中間層を構成するモリブデン−ニッケル合金、またはモリブデン−コバルト合金、またはモリブデン−鉄合金層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。
中間層において、中間層のモリブデンの付着量が50〜10000μg/dm2、中間層にニッケルを含む場合はニッケルの付着量が50〜40000μg/dm2、中間層にコバルトを含む場合はコバルトの付着量が50〜10000μg/dm2、中間層に鉄を含む場合は鉄の付着量が50〜10000μg/dm2である。モリブデン量が増えるにつれてピンホールの量が多くなる傾向にあるが、この範囲であればピンホールの数も抑制される。極薄銅層をムラなく均一に剥離する観点、及び、ピンホールを抑制する観点からは、モリブデン付着量は80〜5000μg/dm2とすることが好ましく、100〜1000μg/dm2とすることがより好ましい。ニッケル付着量は100〜20000μg/dm2とすることが好ましく、1000〜15000μg/dm2とすることがより好ましい。コバルト付着量は80〜5000μg/dm2とすることが好ましく、100〜1000μg/dm2とすることがより好ましい。鉄付着量は80〜5000μg/dm2とすることが好ましく、100〜1000μg/dm2とすることがより好ましい。
キャリアと中間層との間に、ニッケルまたはニッケル合金から形成された拡散防止層を備えても良い。当該位置に設ける拡散防止層にはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
中間層のモリブデン−ニッケル合金、またはモリブデン−コバルト合金、またはモリブデン−鉄合金は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。
<3.ストライクめっき>
中間層の上には極薄銅層を設ける。その前に極薄銅層のピンホールを低減させるために銅−リン合金によるストライクめっきを行ってもよい。ストライクめっきにはピロリン酸銅めっき液などが挙げられる。
<4.極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には2〜5μmである。
<5.粗化処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成してもよく、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ例えば2層以上、3層以上などの複数の層で形成されてもよい。
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることが出来る。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%〜99wt%、亜鉛を50wt%〜1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5〜1000mg/m2、好ましくは10〜500mg/m2、好ましくは20〜100mg/m2であってもよい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5〜10であることが好ましい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m2〜500mg/m2であることが好ましく、1mg/m2〜50mg/m2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル−亜鉛合金を含む層である場合、スルーホールやビアホール等の内壁部がデスミア液と接触したときに銅箔と樹脂基板との界面がデスミア液に浸食されにくく、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m2〜100mg/m2、好ましくは5mg/m2〜50mg/m2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m2〜80mg/m2、好ましくは5mg/m2〜40mg/m2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル−モリブデン、ニッケル−亜鉛、ニッケル−モリブデン−コバルトのいずれか一種により構成されてもよい。また、耐熱層および/または防錆層は、ニッケルまたはニッケル合金とスズとの合計付着量が2mg/m2〜150mg/m2であることが好ましく、10mg/m2〜70mg/m2であることがより好ましい。また、耐熱層および/または防錆層は、[ニッケルまたはニッケル合金中のニッケル付着量]/[スズ付着量]=0.25〜10であることが好ましく、0.33〜3であることがより好ましい。当該耐熱層および/または防錆層を用いるとキャリア付銅箔をプリント配線板に加工して以降の回路の引き剥がし強さ、当該引き剥がし強さの耐薬品性劣化率等が良好になる。
なお、シランカップリング処理に用いられるシランカップリング剤には公知のシランカップリング剤を用いてよく、例えばアミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤を用いてよい。また、シランカップリング剤にはビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4‐グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐3‐(4‐(3‐アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いてもよい。
前記シランカップリング処理層は、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
ここで言うアミノ系シランカップリング剤とは、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(3‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、4‐アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリス(2‐エチルヘキソキシ)シラン、6‐(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3‐(1‐アミノプロポキシ)‐3,3‐ジメチル‐1‐プロペニルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、ω‐アミノウンデシルトリメトキシシラン、3‐(2‐N‐ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N‐ジエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものであってもよい。
シランカップリング処理層は、ケイ素原子換算で、0.05mg/m2〜200mg/m2、好ましくは0.15mg/m2〜20mg/m2、好ましくは0.3mg/m2〜2.0mg/m2の範囲で設けられていることが望ましい。前述の範囲の場合、基材樹脂と表面処理銅箔との密着性をより向上させることが出来る。
<6.キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア/中間層/極薄銅層の断面から、この順番でこれらを全て含む範囲で50〜1000nm長STEM線分析を行ったとき、モリブデン濃度の最大値が1〜70質量%である。当該モリブデン濃度の最大値は好ましくは3〜70質量%、より好ましくは3〜55質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらにより好ましくは10〜45質量%である。
このように、本発明のキャリア付銅箔は、キャリア/中間層/極薄銅層の断面から、この順番でこれらを全て含む範囲で50〜1000nm長STEM線分析を行ったときモリブデン濃度の最大値が1〜70質量%に制御されている。このため、剥離性が良好であり、極薄銅層側表面におけるピンホールの発生が良好に抑制される。また、熱圧着後のキャリア付銅箔においても、銅箔キャリアを極薄銅層から剥離させたときの中間層の最表面にモリブデンが一定量で存在している。このため、極薄銅層側表面におけるピンホールの発生が良好に抑制される。また、モリブデンの濃度が上記の好ましい範囲にある場合、加熱した際に発生するフクレ個数は低減される場合がある。
また、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させたときに、銅箔キャリア/中間層/極薄銅層の断面から、この順番でこれらを全て含む範囲で50〜1000nm長STEM線分析を行ったとき、モリブデン濃度の最大値が1〜60質量%になるのが好ましい。当該モリブデン濃度の最大値はより好ましくは3〜55質量%、さらにより好ましくは5〜50質量%、さらにより好ましくは10〜45質量%である。
本発明のキャリア付銅箔は、銅箔キャリア/中間層/極薄銅層の断面から、この順番でこれらを全て含む範囲で50〜1000nm長STEM線分析を行ったとき、ニッケル濃度の最大値が50〜95質量%であり、モリブデン濃度が最大値で5〜60質量%存在するのが好ましい。このような構成によれば、ニッケルまたはニッケル合金が極薄銅層とキャリア間の拡散防止層となり、絶縁基板のプレス後の剥離強度がより適切な値に安定する。当該ニッケル濃度の最大値はより好ましくは55〜90質量%、さらにより好ましくは60〜85質量%、さらにより好ましくは65〜80質量%である。当該モリブデン濃度の最大値はより好ましくは8〜55質量%、さらにより好ましくは10〜50質量%、さらにより好ましくは15〜45質量%である。
本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させたときに、銅箔キャリア/中間層/極薄銅層の断面から、この順番でこれらを全て含む範囲で50〜1000nm長STEM線分析を行ったとき、モリブデンと、ニッケル及び/またはコバルト及び/または鉄と、銅とが共存する部分における銅濃度最小値が10〜65質量%となるのが好ましい。このような構成によれば、中間層中に適切な濃度の銅が存在することで、剥離強度が極端に高くなったり低くなったりすることがなく、適切な強度で剥離できる。当該銅濃度最小値はより好ましくは15〜60質量%、さらにより好ましくは18〜55質量%、さらにより好ましくは20〜50質量%である。
モリブデン、コバルト、鉄のめっき処理での電流密度を低くし、キャリアの搬送速度を遅くするとモリブデン、コバルト、鉄を含む層の密度が高くなる。モリブデン、コバルト、鉄を含む層の密度が高くなると、キャリアの銅及びニッケルを含む層のニッケルが拡散し難くなり、モリブデン、コバルト、鉄の濃度を制御することができる。ニッケルの電流密度を高く設定して単位時間あたりの電着速度を高めるほど、またキャリアの搬送速度を速くするほど、ニッケルを含む層の密度が低下する。ニッケルを含む層の密度が低下すると、キャリア銅箔の銅がニッケル層に拡散しやすくなり、ニッケル中の銅の濃度を制御することができる。モリブデン、コバルト、鉄のめっき処理での電流密度を高く設定して単位時間あたりの電着速度を高めるほど、またキャリアの搬送速度を速くするほど、モリブデン、コバルト、鉄を含む層の密度が低下する。モリブデン、コバルト、鉄を含む層の密度が低下すると、キャリア銅箔の銅がモリブデン、コバルト、鉄を含む層に拡散しやすくなり、モリブデン、コバルト、鉄を含む層中の銅の濃度を制御することができる。また、銅の濃度を制御することによって、モリブデン、コバルト、鉄の濃度も制御することができる。また、モリブデン、コバルト、鉄のめっき処理液中のモリブデンの濃度を高くし、電流密度を高くすることで中間層中のモリブデンの濃度を制御することができる。
本発明のキャリア付銅箔は、大気中、220℃の条件下で4時間加熱したときの、キャリア/極薄銅層間のフクレの個数が0個/dm2であるのが好ましい。また、大気中、400℃の条件下で10分間加熱したときの、キャリア/極薄銅間のフクレの個数が10個/dm2以下であるのが好ましい。キャリア付銅箔を加熱すると、キャリア/極薄銅層間に発生する水蒸気等の気体によって気泡(フクレ)が発生することがある。このようなフクレが発生すると、回路形成に用いる極薄銅層が陥没し、回路形成性に悪影響を及ぼすという問題が生じる。これに対し、上述のように所定の熱処理後のフクレの発生が抑制されていると、このような問題が生じ難くなる。
キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がして銅張積層板とし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。
また、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に中間層が積層され、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔は、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群から選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、マレイミド系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、多価カルボン酸の無水物などを含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。また、前記樹脂層がブロック共重合ポリイミド樹脂層を含有する樹脂層またはブロック共重合ポリイミド樹脂とポリマレイミド化合物を含有する樹脂層であってもよい。また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記多価カルボン酸の無水物はエポキシ樹脂の硬化剤として寄与する成分であることが好ましい。また、前記多価カルボン酸の無水物は、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロキシ無水フタル酸、ヘキサヒドロキシ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロキシ無水フタル酸、ナジン酸、メチルナジン酸であることが好ましい。
また、前記樹脂層を形成するための樹脂組成物は多価カルボン酸の無水物、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂を含有してもよい。前記酸無水物は、フェノキシ樹脂に含有される水酸基1molに対して0.01mol〜0.5mol含有するものであることが好ましい。前記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールと2価のエポキシ樹脂との反応により合成されるものを用いることができる。前記フェノキシ樹脂の含有量は、前記樹脂組成物の全量を100重量部としたときに3重量部〜30重量部含有するものであってもよい。前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂であってもよい。なお、前記樹脂組成物は、多価カルボン酸の無水物とフェノキシ樹脂とを反応させ、フェノキシ樹脂の水酸基に対して多価カルボン酸を開環付加した後に、エポキシ樹脂を添加して得ることができる。
前記ビスフェノールとしてビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、HCA(9,10−Dihydro−9−Oxa−10−Phosphaphenanthrene−10−Oxide)とハイドロキノン、ナフトキノン等のキノン類との付加物として得られるビスフェノール等を使用することができる。
また、前記熱可塑性樹脂はエポキシ樹脂と重合可能なアルコール性水酸基以外の官能基を有する熱可塑性樹脂であってもよい。
前記樹脂層の組成は樹脂成分総量に対してエポキシ樹脂50〜90重量%、ポリビニルアセタール樹脂5〜20重量%、ウレタン樹脂0.1〜20重量%を含有し、該エポキシ樹脂の0.5〜40重量%がゴム変成エポキシ樹脂であってもよい。
また、前記ポリビニルアセタール樹脂は酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有してもよい。前記樹脂層に用いられる樹脂組成物の総量100重量部に対し、エポキシ樹脂配合物40〜80重量部、マレイミド化合物10〜50重量部、水酸基および水酸基以外のエポキシ樹脂またはマレイミド化合物と重合可能な官能基を有するポリビニルアセタール樹脂5〜30重量部からであってもよい。また、前記ポリビニルアセタール樹脂が分子内にカルボキシル基、アミノ基または不飽和二重結合を導入したものであってもよい。
また、前記樹脂層は、20〜80重量部のエポキシ樹脂(硬化剤を含む)、20〜80重量部の溶剤に可溶な芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、及び、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤からなる樹脂組成物を用いて形成したものであってもよい。また、前記樹脂層は、5〜80重量部のエポキシ樹脂(硬化剤を含む)、20〜95重量部の溶剤に可溶な芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、及び、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤からなる樹脂組成物を用いて形成したものであってもよい。前記樹脂層の形成に用いる樹脂組成物の構成に用いる芳香族ポリアミド樹脂ポリマーは、芳香族ポリアミドとゴム性樹脂とを反応させることで得られるものであってもよい。前記樹脂層は、誘電体フィラーを含有したものであってもよい。前記樹脂層は、骨格材を含有したものであってもよい。
ここで、前記芳香族ポリアミド樹脂ポリマーとしては、芳香族ポリアミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮重合により合成されるものである。このときの芳香族ジアミンには、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシレンジアミン、3,3’−オキシジアニリン等を用いる。そして、ジカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸等を用いる。
そして、前記芳香族ポリアミド樹脂と反応させる前記ゴム性樹脂とは、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、形成する誘電体層の耐熱性を確保する際には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、芳香族ポリアミド樹脂と反応して共重合体を製造するようになるため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。特に、CTBN(カルボキシ基末端ブタジエンニトリル)を用いることが有用である。
芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを構成することとなる芳香族ポリアミド樹脂とゴム性樹脂とは、芳香族ポリアミド樹脂が25wt%〜75wt%、残部ゴム性樹脂という配合で用いることが好ましい。芳香族ポリアミド樹脂が25wt%未満の場合には、ゴム成分の存在比率が大きくなりすぎ耐熱性に劣るものとなり、一方、75wt%を越えると芳香族ポリアミド樹脂の存在比率が大きくなりすぎて、硬化後の硬度が高くなりすぎ、脆くなるのである。この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーは、銅張積層板に加工した後の銅箔をエッチング加工する際に、エッチング液によりアンダーエッチングによる損傷を受けないことを目的に用いたものである。
この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーには、まず溶剤に可溶であるという性質が求められる。この芳香族ポリアミド樹脂ポリマーは、20重量部〜80重量部の配合割合で用いる。芳香族ポリアミド樹脂ポリマーが20重量部未満の場合には、銅張積層板の製造を行う一般的プレス条件で硬化しすぎて脆くなり、基板表面にマイクロクラックを生じやすくなるのである。一方、80重量部を越えて芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを添加しても特に支障はないが、80重量部を越えて芳香族ポリアミド樹脂ポリマーを添加してもそれ以上に硬化後の強度は向上しないのである。従って、経済性を考慮すれば、80重量部が上限値であると言えるのである。
「必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤」とは、3級アミン、イミダゾール、尿素系硬化促進剤等である。本件発明では、この硬化促進剤の配合割合は、特に限定を設けていない。なぜなら、硬化促進剤は、銅張積層板製造の工程での生産条件性等を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めて良いものであるからである。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物はビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の3種のエポキシ樹脂を溶剤に溶解させ、そこに硬化剤、微粉砕シリカ、三酸化アンチモン等の反応触媒を添加した樹脂組成物であってもよい。このときの硬化剤に関しては前記と同様である。この樹脂組成も、良好な銅箔と基材樹脂との密着性を示すのである。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物はポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパンを溶剤に溶解させたポリフェニレンエーテル−シアネート系の樹脂組成物であってもよい。この樹脂組成も、良好な銅箔と基材樹脂との密着性を示すのである。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物はシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を溶剤で溶解させたシロキサン変性ポリアミドイミド系の樹脂組成物であってもよい。この樹脂組成も、良好な銅箔と基材樹脂との密着性を示すのである。
(誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層の場合)
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO3、SrTiO3、Pb(Zr−Ti)O3(通称PZT)、PbLaTiO3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi2Ta2O9(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
誘電体(誘電体フィラー)は粉状であってもよい。誘電体(誘電体フィラー)が粉状である場合、この誘電体(誘電体フィラー)の粉体特性は、まず粒径が0.01μm〜3.0μm、好ましくは0.02μm〜2.0μmの範囲のものである必要がある。ここで言う粒径は、粉粒同士がある一定の2次凝集状態を形成しているため、レーザー回折散乱式粒度分布測定法やBET法等の測定値から平均粒径を推測するような間接測定では精度が劣るものとなるため用いることができず、誘電体(誘電体フィラー)を走査型電子顕微鏡(SEM)で直接観察し、そのSEM像を画像解析し得られる平均粒径を言うものである。本件明細書ではこの時の粒径をDIAと表示している。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される誘電体(誘電体フィラー)の粉体の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。
更に、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積粒径D50が0.2μm〜2.0μmであり、且つ、体積累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が4.5以下である略球形の形状をしたペロブスカイト構造を持つ誘電体粉末であることが求められる。
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積粒径D50とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積50%における粒径のことであり、この体積累積粒径D50の値が小さいほど、誘電体(誘電体フィラー)粉の粒径分布の中で微細な粉粒の占める割合が多いことになる。本件発明では、この値が0.2μm〜2.0μmであることが求められる。即ち、体積累積粒径D50の値が0.2μm未満の場合には、どのような製造方法を採用した誘電体(誘電体フィラー)粉であれ、凝集の進行が著しく以下に述べる凝集度を満足するものとはならないのである。一方、体積累積粒径D50の値が2.0μmを越える場合には、本件発明の目的とするところであるプリント配線板の内蔵キャパシタ層形成用の誘電体(誘電体フィラー)としての使用が不可能となるのである。即ち、内蔵キャパシタ層を形成するのに用いる両面銅張積層板の誘電体層は、通常10μm〜25μmの厚さのものであり、ここに誘電体フィラーを均一に分散させるためには2.0μmが上限となるのである。
本件発明における体積累積粒径D50の測定は、誘電体(誘電体フィラー)粉をメチルエチルケトンに混合分散させ、この溶液をレーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(日機装株式会社製)の循環器に投入して測定を行った。
ここで凝集度という概念を用いているが、以下のような理由から採用したものである。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる体積累積粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではないと考えられる。殆どの誘電体粉を構成する粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集して集合した状態になっているからである。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、体積累積粒径を算出していると言えるからである。
これに対して、走査型電子顕微鏡を用いて観察される誘電体粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子が確実に捉えられることになり、反面には粉粒の凝集状態の存在を全く反映させていないことになる。
以上のように考えると、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の体積累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの銅粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。
このとき、D50の値は、誘電体(誘電体フィラー)粉の粉粒の凝集状態が全くなくなるとすれば、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無くなった単分散粉と言えるのである。但し、現実には、凝集度が1未満の値を示す場合もある。理論的に考え真球の場合には、1未満の値にはならないのであるが、現実には、粉粒が真球ではないために1未満の凝集度の値が得られることになるようである。
本件発明では、この誘電体(誘電体フィラー)粉の凝集度が4.5以下であることが好ましい。この凝集度が4.5を越えると、誘電体フィラーの粉粒同士の凝集レベルが高くなりすぎて、上述した樹脂組成物との均一混合が困難となるのである。
誘電体(誘電体フィラー)粉の製造方法として、アルコキシド法、水熱合成法、オキサレート法等のいずれの製造方法を採用しても、一定の凝集状態が不可避的に形成されるため、上述の凝集度を満足しない誘電体フィラー粉が発生し得るものである。特に、湿式法である水熱合成法の場合には、凝集状態の形成が起こりやすい傾向にある。そこで、この凝集した状態の粉体を、一粒一粒の粉粒に分離する解粒処理を行うことで、誘電体フィラー粉の凝集状態を、上述の凝集度の範囲とすることが可能なのである。
単に解粒作業を行うことを目的とするのであれば、解粒の行える手段として、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置等種々の物を用いることが可能である。ところが、誘電体(誘電体フィラー)粉と樹脂組成物との混合性及び分散性を確保するためには、以下に述べる誘電体(誘電体フィラー)含有樹脂溶液としての粘度低減を考えるべきである。誘電体(誘電体フィラー)含有樹脂溶液の粘度の低減を図る上では、誘電体(誘電体フィラー)の粉粒の比表面積が小さく、滑らかなものとすることが求められる。従って、解粒は可能であっても、解粒時に粉粒の表面に損傷を与え、その比表面積を増加させるような解粒手法であってはならないのである。
このような認識に基づいて、本件発明者等が鋭意研究した結果、二つの手法が有効であることが見いだされた。この二つの方法に共通することは、誘電体(誘電体フィラー)の粉体の粉粒が装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することを最小限に抑制し、凝集した粉粒同士の相互衝突を行わせることで、解粒が十分可能な方法という点である。即ち、装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することは粉粒の表面を傷つけ、表面粗さを増大させ、真球度を劣化させることにつながり、これを防止するのである。そして、十分な粉粒同士の衝突を起こさせることで、凝集状態にある粉粒を解粒し、同時に、粉粒同士の衝突による粉粒表面の平滑化の可能な手法を採用できるのである。
その一つは、凝集状態にある誘電体(誘電体フィラー)粉を、ジェットミルを利用して解粒処理するのである。ここで言う「ジェットミル」とは、エアの高速気流を用いて、この気流中に誘電体(誘電体フィラー)粉を入れ、この高速気流中で粉粒同士を相互に衝突させ、解粒作業を行うのである。
また、凝集状態にある誘電体(誘電体フィラー)粉を、そのストイキメトリを崩すことのない溶媒中に分散させたスラリーを、遠心力を利用した流体ミルを用いて解粒処理するのである。ここで言う「遠心力を利用した流体ミル」を用いることで、当該スラリーを円周軌道を描くように高速でフローさせ、このときに発生する遠心力により凝集した粉粒同士を溶媒中で相互に衝突させ、解粒作業を行うのである。このようにすることで、解粒作業の終了したスラリーを洗浄、濾過、乾燥することで解粒作業の終了した誘電体(誘電体フィラー)粉が得られることになるのである。以上に述べた方法で、凝集度の調整及び誘電体フィラー粉の粉体表面の平滑化を図ることができるのである。
以上述べてきた樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを混合して、プリント配線板の内蔵キャパシタ層形成用の誘電体(誘電体フィラー)含有樹脂とするのである。なお、誘電体(誘電体フィラー)と混合するための樹脂組成物に用いる樹脂として、前記樹脂層に用いることができる樹脂を挙げることができる。このときの、樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)との配合割合は、誘電体(誘電体フィラー)の含有率が75wt%〜85wt%、残部樹脂組成物とすることが望ましい。
誘電体(誘電体フィラー)の含有率が75wt%未満の場合には、市場で現在要求されている比誘電率20を満足できず、誘電体(誘電体フィラー)の含有率が85wt%を越えると、樹脂組成物の含有率が15wt%未満となり、誘電体(誘電体フィラー)含有樹脂とそこに張り合わせる銅箔との密着性が損なわれ、プリント配線板製造用としての要求特性を満足する銅張積層板の製造が困難となるのである。
なお、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、誘電体(誘電体フィラー)、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および硬化促進剤を含む樹脂組成物を用いて形成されてもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤を含む樹脂組成物重量を100重量部としたとき、エポキシ樹脂を25重量部〜60重量部含有する樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤を含む樹脂組成物重量を100重量部としたとき、活性エステル樹脂を28重量部〜60重量部含有する樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤を含む樹脂組成物重量を100重量部としたとき、エポキシ樹脂と活性エステル樹脂との合計含有量が78重量部〜95重量部含有する樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤を含む樹脂組成物重量を100重量部としたとき、ポリビニルアセタール樹脂を1重量部〜20重量部含有する樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤を含む樹脂組成物重量を100重量部としたとき、硬化促進剤を0.01重量部〜2重量部含有する樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、当該樹脂層を構成する樹脂組成物重量を100重量部としたとき、当該樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、硬化促進剤の各成分の合計量が70重量部以上である樹脂組成物と誘電体(誘電体フィラー)とを用いて形成したものであってもよい。
また、前記誘電体を含む樹脂層は、当該誘電体(誘電体フィラー)を含有する樹脂重量を100wt%としたとき、誘電体(誘電体フィラー)を65wt%〜85wt%の範囲で含有するものであることが好ましい。
なお、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および硬化促進剤には公知のエポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および硬化促進剤または本願明細書に記載のエポキシ樹脂、活性エステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および硬化促進剤を用いることができる。
また、前記誘電体(誘電体フィラー)を含む樹脂層は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%未満であることが好ましい。
なお、硬化促進剤、エポキシ樹脂としては公知のものまたは本願明細書に記載の硬化促進剤、エポキシ樹脂を用いることができる。また、硬化促進剤としては公知のイミダゾール化合物または、本願明細書に記載のイミダゾール化合物を用いることができる。
そして、この誘電体(誘電体フィラー)としては、現段階に置いて、粉体としての製造精度を考慮すると、ペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の内、チタン酸バリウムを用いることが好ましい。このときの誘電体(誘電体フィラー)には、仮焼したチタン酸バリウム又は未仮焼のチタン酸バリウムのいずれをも用いることが出来る。高い誘電率を得ようとする場合には仮焼したチタン酸バリウムを用いることが好ましいのであるが、プリント配線板製品の設計品質に応じて選択使用すればよいものである。
また更に、チタン酸バリウムの誘電体フィラーが、立方晶の結晶構造を持つものであることが最も好ましい。チタン酸バリウムのもつ結晶構造には、立方晶と正方晶とが存在するが、立方晶の構造を持つチタン酸バリウムの誘電体(誘電体フィラー)の方が、正方晶の構造のみを持つチタン酸バリウムの誘電体(誘電体フィラー)を用いた場合に比べて、最終的に得られる誘電体層の誘電率の値が安定化するのである。従って、少なくとも、立方晶と正方晶との双方の結晶構造を併有したチタン酸バリウム粉を用いる必要があると言えるのである。
上述の実施の形態により、当該内層コア材の内層回路表面と誘電体を含む樹脂層との密着性を向上させ、低い誘電正接を備えるキャパシタ回路層を形成するための誘電体を含む樹脂層を有するキャリア付銅箔を提供することができる。
また、前記樹脂層は銅箔側(すなわちキャリア付銅箔の極薄銅層側)から順に硬化樹脂層(「硬化樹脂層」とは硬化済みの樹脂層のことを意味するとする。)と半硬化樹脂層とを順次形成した樹脂層であってもよい。前記硬化樹脂層は、熱膨張係数が0ppm/℃〜25ppm/℃のポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、これらの複合樹脂のいずれかの樹脂成分で構成されてもよい。
また、前記硬化樹脂層上に、硬化した後の熱膨張係数が0ppm/℃〜50ppm/℃の半硬化樹脂層を設けてもよい。また、前記硬化樹脂層と前記半硬化樹脂層とが硬化した後の樹脂層全体の熱膨張係数が40ppm/℃以下であってもよい。前記硬化樹脂層は、ガラス転移温度が300℃以上であってもよい。また、前記半硬化樹脂層は、マレイミド系樹脂を用いて形成したものであってもよく、前記マレイミド系樹脂は、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂であってもよく、前記マレイミド系樹脂は、分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂と芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物であってもよい。また、前記半硬化樹脂層は、当該半硬化樹脂層を100重量部としたとき、マレイミド系樹脂を20重量部〜70重量部含有するものであってもよい。前記半硬化樹脂層を形成するための樹脂組成物は、マレイミド系樹脂、エポキシ樹脂、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを必須成分をとすることが好ましい。そして、マレイミド系樹脂には、芳香族マレイミド樹脂と芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物を用いることもできる。また、半硬化樹脂層には必要に応じて、マレイミド系樹脂と反応性を有するシアノエステル樹脂やエポキシ樹脂を添加してもよい。エポキシ樹脂は公知のエポキシ樹脂または本願明細書に記載のエポキシ樹脂を用いることができる。
また、前記架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、水酸基、カルボキシル基等のエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する官能基を備えることが好ましい。そして、この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶であることが好ましい。ここで言う官能基を有する線状ポリマーを具体的に例示すると、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等である。この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の配合割合で用いられることが好ましい。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、樹脂流れが大きくなる場合がある。この結果、製造した銅張積層板の端部から樹脂粉の発生が多く見られる場合があり、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性も改善出来ない場合がある。一方、30重量部を超えても、樹脂流れが小さい場合があり、製造した銅張積層板の絶縁層内にボイド等の欠陥を生じやすくなる場合がある。
ここで言うマレイミド系樹脂としては、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン等の使用が可能である。マレイミド系樹脂の含有量が20重量部未満の場合には、硬化後の半硬化樹脂層の熱膨張係数を低下させる効果が得られない場合がある。一方、マレイミド系樹脂の含有量が70重量部を超えると、半硬化樹脂層が硬化すると脆い樹脂層になる場合があり、当該樹脂層にクラックが生じやすくなる場合があり、プリント配線板の絶縁層としての信頼性が低下する場合がある。
分子内に2個以上のマレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂と芳香族ポリアミンとを重合させた重合付加物を形成させる場合には、芳香族ポリアミンとして、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3−メチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、1,3−ビス[4−アミノフェノキシ]ベンゼン、3−メチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジクロロ−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(2,3−ジメチル−4−アミノフェニル)フェニルエタン、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン等を、樹脂組成物に添加して用いて樹脂層を形成することが好ましい。
そして、エポキシ樹脂硬化剤を必要とする場合には、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン等のアミン類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA等のフェノール類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のノボラック類、無水フタル酸等の酸無水物等を用いる。このときのエポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂硬化剤の添加量は、それぞれの当量から自ずと導き出されるものであるから、特段の添加量限定は行っていない。
また、立体成型プリント配線板製造用途に適した、樹脂層を有するキャリア付銅箔を提供する場合、前記硬化樹脂層は硬化した可撓性を有する高分子ポリマー層であることが好ましい。前記高分子ポリマー層は、はんだ実装工程に耐えられるように、150℃以上のガラス転移温度をもつ樹脂からなるものが好適である。前記高分子ポリマー層は、ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、アラミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂のいずれか1種又は2種以上の混合樹脂からなることが好ましい。また、前記高分子ポリマー層の厚さは3μm〜10μmであることが好ましい。
また、前記高分子ポリマー層は、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂のいずれか1種又は2種以上を含むことが好ましい。また、前記半硬化樹脂層は厚さが10μm〜50μmのエポキシ樹脂組成物で構成されていることが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂組成物は以下のA成分〜E成分の各成分を含むものであることが好ましい。
A成分: エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂。
B成分: 高耐熱性エポキシ樹脂。
C成分: リン含有エポキシ系樹脂、フォスファゼン系樹脂のいずれか1種又はこれらを混合した樹脂であるリン含有難燃性樹脂。
D成分: 沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶な性質を備える液状ゴム成分で変成したゴム変成ポリアミドイミド樹脂。
E成分: 樹脂硬化剤。
A成分は、エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂である。ここで、ビスフェノール系エポキシ樹脂を選択使用しているのは、後述するD成分(ゴム変成ポリアミドイミド樹脂)との相性が良く、半硬化状態での樹脂膜に適度なフレキシビリティの付与が容易だからである。そして、エポキシ当量が200を超えると、樹脂が室温で半固形となり、半硬化状態でのフレキシビリティが減少するので好ましくない。更に、上述のビスフェノール系エポキシ樹脂であれば、1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。しかも、2種以上を混合して用いる場合には、その混合比に関しても特段の限定はない。
このエポキシ樹脂は、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の配合割合で用いることが好ましい。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、熱硬化性を十分に発揮せず内層フレキシブルプリント配線板とのバインダーとしての機能も、樹脂付銅箔としての銅箔との密着性も十分に果たせなくなる。一方、30重量部を越えると、他の樹脂成分とのバランスから樹脂ワニスとしたときの粘度が高くなり、樹脂付銅箔を製造するとき、銅箔表面へ均一な厚さでの樹脂膜の形成が困難となる。しかも、後述するD成分(ゴム変成ポリアミドイミド樹脂)の添加量を考慮すると、硬化後の樹脂層として十分な靭性が得られなくなる。
B成分は、所謂ガラス転移点Tgの高い「高耐熱性エポキシ樹脂」である。ここで言う「高耐熱性エポキシ樹脂」は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。そして、このB成分は、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の範囲で用いることが好ましい。B成分が3重量部未満の場合には、樹脂組成物の高Tg化が不十分となる傾向があるので好ましくない。一方、B成分が30重量部を超える場合には、硬化後の樹脂が脆くなり、フレキシビリティが損なわれるためフレキシブルプリント配線板用途として好ましくない。より好ましくは、B成分は、10重量部〜20重量部の範囲で用いることで、樹脂組成物の高Tg化と硬化後の樹脂の良好なフレキシビリティとを安定して両立できる。
C成分は、所謂ハロゲンフリー系の難燃性樹脂であり、リン含有エポキシ系樹脂、フォスファゼン系樹脂のいずれか1種又はこれらを混合した樹脂であるリン含有難燃性樹脂を用いる。まず、リン含有エポキシ系樹脂とは、エポキシ骨格の中にリンを含んだエポキシ樹脂の総称である。そして、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物のリン原子含有量を、当該エポキシ樹脂組成物重量を100重量%としたとき、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲とできるリン含有エポキシ系樹脂であれば、いずれの使用も可能である。しかしながら、上述のリン含有エポキシ系樹脂の中でも、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有エポキシ系樹脂を用いると、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。参考のために、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドの構造式を下記に示す。
更に、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有エポキシ系樹脂の具体例として、化2に示す構造式を備える化合物を示す。この化2に示す構造式を備える化合物を使用すると、半硬化状態での樹脂品質の安定性により一層優れ、同時に難燃性効果が高くなるので、好ましい。
また、C成分のリン含有エポキシ系樹脂として、以下に示す化3に示す構造式を備える化合物も好ましい。化2に示すリン含有エポキシ系樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
更に、C成分のリン含有エポキシ系樹脂として、以下に示す化4に示す構造式を備える化合物も好ましい。化2及び化3に示すリン含有エポキシ系樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、以下の化5(HCA−NQ)又は化6(HCA−HQ)に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有難燃性樹脂としたものが挙げられる。
ここで、リン含有難燃性樹脂として、リン含有エポキシ系樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、リン含有エポキシ系樹脂の1種類を単独で用いても、2種類以上のリン含有エポキシ系樹脂を混合して用いても構わない。但し、C成分としてのリン含有難燃性樹脂の総量を考慮して、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物重量を100重量%としたとき、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲となるように添加量を定めることが好ましい。リン含有エポキシ系樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有するリン原子量が異なる。そこで、上述のようにリン原子の含有量を、C成分の添加量に優先させて設計することが可能である。
次に、リン含有難燃性樹脂として、フォスファゼン系樹脂を用いる場合を説明する。フォスファゼン系樹脂は、リン及び窒素を構成元素とする二重結合を持つフォスファゼンを含む樹脂である。フォスファゼン系樹脂は、分子中の窒素とリンの相乗効果により、難燃性能を飛躍的に向上させることができる。また、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体と異なり、樹脂中で安定して存在し、マイグレーションの発生を防ぐ効果が得られる。
また、リン含有難燃性樹脂として、フォスファゼン系樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、フォスファゼン系樹脂の1種類を単独で用いても、2種類以上のフォスファゼン系樹脂を混合して用いても構わない。但し、C成分としてのリン含有難燃性樹脂の総量を考慮して、半硬化樹脂層を構成するフォスファゼン系樹脂組成物重量を100重量%としたとき、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲となるように添加量を定めることが好ましい。このことは、C成分として、リン含有エポキシ系樹脂とフォスファゼン系樹脂を混合して用いる場合も同様である。
そして、C成分としてのリン含有難燃性樹脂は、リン含有エポキシ系樹脂、フォスファゼン系樹脂のいずれか一種またはこれらを混合したものを用いれば良い。リン含有難燃性樹脂としてリン含有エポキシ系樹脂を単独で用いる場合は、リン含有エポキシ系樹脂は、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物を100重量部としたとき、5重量部〜50重量部の範囲で用いられることが好ましい。リン含有エポキシ系樹脂からなるC成分が5重量部未満の場合には、他の樹脂成分の配合割合を考慮すると、C成分由来のリン原子が不足し、難燃性を得ることが困難になる。一方、リン含有エポキシ系樹脂からなるC成分が50重量部を超えるようにしても、難燃性向上効果も飽和すると同時に、硬化後の樹脂層が脆くなるため好ましくない。
また、リン含有難燃性樹脂として、フォスファゼン系樹脂を単独で用いる場合は、フォスファゼン系樹脂は、半硬化樹脂層を構成するエポキシ樹脂組成物を100重量部としたとき、2重量部〜18重量部の範囲で用いられることが好ましい。フォスファゼン系樹脂からなるC成分が2重量部未満の場合には、他の樹脂成分の配合割合を考慮すると、C成分由来のリン原子が不足し、難燃性を得ることが困難になる。一方、フォスファゼン系樹脂からなるC成分が18重量部を超えると、樹脂組成物のガラス転移点Tg、半田耐熱性、ピール強度が不十分となる傾向があるので好ましくない。
上述の硬化樹脂の「高Tg化」と「フレキシビリティ」とは、一般的に反比例する特性である。このときリン含有難燃性樹脂は、硬化後の樹脂のフレキシビリティの向上に寄与するもの、高Tg化に寄与するものが存在する。従って、1種類のリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いるよりは、「高Tg化に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」と「フレキシビリティの向上に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」とをバランス良く配合して用いることで、フレキシブルプリント配線板用途で好適な樹脂組成とすることが可能である。
D成分は、沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶で、液状ゴム成分で変成されたゴム変成ポリアミドイミド樹脂である。このゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものである。ここで言う、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて用いるのは、ポリアミドイミド樹脂そのものの柔軟性を向上させる目的で行う。すなわち、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させ、ポリアミドイミド樹脂の酸成分(シクロヘキサンジカルボン酸等)の一部をゴム成分に置換するのである。ゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムを含み、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、耐熱性を確保する観点からは、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、ポリアミドイミド樹脂と反応して共重合体を製造するようになるため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。特に、カルボキシル基を有するCTBN(カルボキシ基末端ブタジエンニトリル)を用いることが有用である。なお、上記ゴム成分は、1種のみを共重合させても、2種以上を共重合させても構わない。更に、ゴム成分を用いる場合には、そのゴム成分の数平均分子量が1000以上のものを用いることが、当該フレキシビリティの安定化の観点から好ましい。
ゴム変成ポリアミドイミド樹脂を重合させる際に、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂との溶解に使用する溶剤には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等を、1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。そして、重合反応を起こさせるには、80℃〜200℃の範囲の重合温度を採用することが好ましい。これらの重合に沸点が200℃を超える溶剤を用いた場合には、その後、用途に応じて沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に溶媒置換することが好ましい。
ここで、前記沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤とは、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤が挙げられる。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しくなり、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態が得られにくくなる。一方、沸点が200℃を超える場合には、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、バブリングが起こりやすくなるため、良好な半硬化樹脂膜を得にくくなる。
エポキシ樹脂組成物で用いるゴム変成ポリアミドイミド樹脂の中で、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂の重量を100重量%としたとき、ゴム成分の共重合量は0.8重量%以上であることが好ましい。当該共重合量が0.8重量%未満の場合には、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂としても、本件発明に言うエポキシ樹脂組成物を用いて形成した樹脂層を硬化させたときのフレキシビリティが欠如し、銅箔との密着性も低下するため好ましくない。なお、より好ましくは、当該ゴム成分の共重合量は3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上がより好ましい。経験的に40重量%を超えてゴム成分の添加量を向上させても、特段の問題はない。しかし、当該硬化後の樹脂層のフレキシビリティの向上効果は飽和するために資源の無駄となり好ましくない。
以上に述べてきたゴム変成ポリアミドイミド樹脂には、溶剤に可溶であるという性質が求められる。溶剤に可溶でなければ、樹脂ワニスとしての調製が困難だからである。このゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、10重量部〜40重量部の配合割合で用いることが好ましい。ゴム変成ポリアミドイミド樹脂が10重量部未満の場合には、硬化後の樹脂層のフレキシビリティは向上させ得ず脆くなり、樹脂層へのマイクロクラックを生じやすくなる。一方、40重量部を越えてゴム変成ポリアミドイミド樹脂を添加しても特に支障はないが、それ以上に硬化後の樹脂層のフレキシビリティは向上せず、硬化後の樹脂の高Tg化が図れない。従って、経済性を考慮すれば、40重量部が上限値であると言える。
E成分の樹脂硬化剤に関して述べる。ここで言う樹脂硬化剤は、ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の1種又は2種以上を用いることが好ましい。この樹脂硬化剤の添加量は、硬化させる樹脂に対する反応当量から自ずと導き出されるものであり、特段の量的な限定を要するものではない。しかしながら、本件発明に用いるエポキシ樹脂組成物の場合には、当該エポキシ樹脂組成物を100重量部としたとき、E成分を20重量部〜35重量部の範囲で用いることが好ましい。このE成分が20重量部未満の場合には、上記樹脂組成を考慮すると、十分な硬化状態を得ることが出来なくなり、硬化後の樹脂としてフレキシビリティを得ることが出来なくなる。一方、E成分が35重量部を超える場合には、硬化した後の樹脂層の耐吸湿特性が劣化する傾向にあり、好ましくない。
以上に示した樹脂組成物に溶剤を加えて樹脂ワニスとして用い、プリント配線板の接着層として熱硬化性樹脂層を形成する。当該樹脂ワニスは、上述の樹脂組成物に溶剤を加えて、樹脂固形分量が30wt%〜70wt%の範囲に調製し、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜の形成が可能なことを特徴とする。ここで言う溶剤には、沸点が50℃〜200℃の範囲であり、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。上述のように良好な半硬化樹脂膜を得るためである。そして、ここに示した樹脂固形分量の範囲が、銅箔の表面に塗布したときに、最も膜厚を精度の良いものに制御できる範囲である。樹脂固形分が30wt%未満の場合には、粘度が低すぎて、銅箔表面への塗布直後に流れて膜厚均一性を確保しにくい。これに対して、樹脂固形分が70wt%を越えると、粘度が高くなり、銅箔表面への薄膜形成が困難となる。なお、レジンフローが、5%未満の場合には、内層コア材の表面にある内層回路の凹凸部等にエアーの噛み込み等を起こすため好ましくない。一方、当該レジンフローが、35%を超える場合には、レジンフローが大きくなりすぎて、樹脂層を有するキャリア付銅箔の樹脂層を用いて形成する絶縁層の厚さが不均一になる。
キャリア付銅箔に前記硬化樹脂層および、半硬化樹脂層を設けた場合、立体成型プリント配線板製造用途に適した、樹脂層を有するキャリア付銅箔を提供することができる。
また、前記樹脂層は前記半硬化絶縁層の片面に引き剥がし可能な保護フィルムを備えることが好ましい。前記保護フィルムには公知の絶縁フィルムや樹脂フィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、金属箔等を前記保護フィルムに用いることができる。
なお、前記樹脂層は硬化剤および/または硬化促進剤を含んでもよい。
前記樹脂層はMIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%以内である樹脂組成物で形成された樹脂層であってもよい。
前記樹脂層は5重量部〜50重量部のエポキシ樹脂(硬化剤を含む)、50重量部〜95重量部の溶剤に可溶なポリエーテルサルホン、及び、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤からなる樹脂組成物を用いて構成したものであってもよい。
また、前記樹脂層は以下に示す成分A〜成分Dを、下記含有量(但し、エポキシ樹脂
硬化剤を除き、樹脂組成物を100重量部としたときの重量部として記載)の範囲で含む
樹脂組成物で形成したものであってもよい。
成分A: 25℃における引張強度200MPa以上のポリアミドイミド樹脂 10重量
部〜20重量部
成分B: 25℃における引張強度100MPa以下のポリアミドイミド樹脂 20重量
部〜40重量部
成分C: エポキシ樹脂
成分D: エポキシ樹脂硬化剤
前記樹脂層は半硬化樹脂層であってもよい。
前記成分Aは、25℃における引張強度200MPa以上のポリアミドイミド樹脂である。ここで言う「引張強度200MPa以上のポリアミドイミド樹脂」とは、例えば、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物及びビトリレンジイソシアネートをN−メチル−2−ピロリドン又は/及びN,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤中で加熱することで得られる樹脂等である。ここで、上限値を記載していないがポリイミドアミド樹脂の引張強度を考慮すると、このポリアミドイミド樹脂の引張強度の上限は、500MPa程度である。なお、本件発明における成分A及び成分Bに係るポリアミドイミド樹脂の引張強度は、ポリアミドイミド樹脂溶液から、JIS K7113に定めるフィルム状の2号試験片(全長115mm、チャック間距離80±5mm、平行部長さ33±2mm、平行部幅6±0.4mm、フィルム厚1〜3mm)を用いて、引張試験機で測定した値である。
前記成分Bは、25℃における引張強度100MPa以下のポリアミドイミド樹脂である。ここで言う「引張強度100MPa以下のポリアミドイミド樹脂」とは、例えば、トリメリット酸無水物、ジフェニルメタンジイソシアネート及びカルボキシル基末端アクリロニトリル−ブタジエンゴムをN−メチル−2−ピロリドン又は/及びN,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤中で加熱することで得られるものである。
前記成分C(エポキシ樹脂)の含有量は、樹脂組成物を100重量部としたとき、40重量部〜70重量部であってもよい。なお、エポキシ樹脂としては前述のエポキシ樹脂を用いることができる。前記成分D(エポキシ樹脂硬化剤)の含有量は、樹脂組成物に対して、エポキシ樹脂の硬化可能な程度のイミダゾール化合物を含有させるものであることが好ましい。前記半硬化樹脂層は、前記樹脂組成物で形成した揮発分が1wt%未満の半硬化状態の樹脂層であることが好ましい。上記含有量を満たした場合、樹脂層を有するキャリア付銅箔をロール状で保管又は輸送しても、樹脂層を有するキャリア付銅箔の樹脂層からキャリア付銅箔への有機溶剤の転写が無く、しかも、耐熱性、キャリア付銅箔との接着性の各特性に優れる樹脂層を備えるキャリア付銅箔を得ることができる。
ここで、イミダゾール化合物は、公知のものを用いることができ、例えば、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられ、これらを単独若しくは混合して用いることができる。
なお、添加すべき硬化剤の量は、エポキシ樹脂の量、工程で要求する硬化速度等に応じて必然的に定まるものである。敢えて硬化剤としてのイミダゾール化合物の添加量を記載すると、樹脂組成物100重量部としたとき(但し、この場合は、成分A〜成分D全ての樹脂組成物を100重量部としたときの重量部として記載)、当該樹脂組成物中に0.01重量部〜2重量部の範囲で配合して用いる。そして、イミダゾール化合物の配合量は、0.02重量部〜1.5重量部がより好ましく、更に好ましくは、0.03重量部〜1.0重量部である。このイミダゾール化合物の配合量が0.01重量部未満の場合には、上記エポキシ樹脂の含有量を考慮すると硬化が不十分となる場合があり、樹脂層を有するキャリア付銅箔の樹脂層同士を張り合わせる際の接着強度が低下する。一方、イミダゾール化合物の配合量が2重量部を超える場合には、エポキシ樹脂の硬化反応が速くなり、硬化後の樹脂層が脆くなり、硬化樹脂フィルムの強度、樹脂付銅箔の樹脂層同士を張り合わせる際の接着性が低下する場合がある。
なお、成分Cのエポキシ樹脂、成分Dのエポキシ樹脂硬化剤には公知の成分Cのエポキシ樹脂、成分Dのエポキシ樹脂硬化剤または本願明細書に記載の成分Cのエポキシ樹脂、成分Dのエポキシ樹脂硬化剤を用いることができる。
前記樹脂層は半硬化状態における耐吸湿特性を備える樹脂組成物であって、当該樹脂組成物は、以下のA成分〜E成分を含み、樹脂組成物重量を100重量%としたときリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有した樹脂組成物を用いて形成されてもよい。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上。
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマー。
C成分: 架橋剤。
D成分: イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤。
E成分: リン含有エポキシ樹脂。
前記B成分である官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶なポリマー成分であることが好ましい。具体的にはポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等である。前記架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の配合割合で用いられることが好ましい。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、樹脂流れが大きくなる場合がある。この結果、製造した銅張積層板の端部から樹脂粉の発生が多く見られる場合があり、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性も改善出来ない場合がある。一方、30重量部を超えても、樹脂流れが小さい場合があり、製造した銅張積層板の絶縁層内にボイド等の欠陥を生じやすくなる場合がある。
また、ここで言う沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤である。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しく、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態が得られにくくなる場合がある。一方、沸点が200℃を超える場合には、半硬化状態で溶剤が残りやすい場合がある。そして、通常要求される揮発速度を満足せず、工業生産性を満足しない可能性がある。
C成分は、B成分とエポキシ樹脂との架橋反応を起こさせるための架橋剤である。この架橋剤には、ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。この架橋剤は、B成分の混合量に応じて添加されるものであり、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。しかしながら、樹脂組成物を100重量部としたとき、10重量部以下の配合割合で用いる事が好ましい。10重量部を超えて、ウレタン系樹脂であるC成分が存在すると、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性が劣化し、硬化後の樹脂層が脆くなるからである。
D成分は、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤である。本件発明に係る樹脂組成物で、半硬化状態の樹脂層の耐吸湿性を向上させるという観点からイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を選択的に用いる事が好ましい。中でも、以下の化7に示す構造式を備えるイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を用いる事が好ましい。この化7に示す構造式のイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を用いることで、半硬化状態の樹脂層の耐吸湿性を顕著に向上でき、長期保存安定性に優れる。なお、エポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂硬化剤の添加量は、反応当量から計算するのではなく、実験上得られる最適量を採用することが好ましい。イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化に際して触媒的な働きを行うものであり、硬化反応の初期段階において、エポキシ樹脂の自己重合反応を引き起こす反応開始剤として寄与するからである。
前記E成分であるリン含有エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドの構造式は下記の通りである。
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、以下の化9(HCA−NQ)又は化10(HCA−HQ)に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有エポキシ樹脂としたものである。
上述の化合物を原料として得られた前記E成分であるリン含有エポキシ樹脂は、以下に示す化11〜化13のいずれかに示す構造式を備える化合物の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いためである。
前記樹脂組成物は樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、樹脂組成物重量を100重量%としたときリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲となるようにE成分の重量部を定める樹脂組成物であることが好ましい。
前記樹脂層は、以下のA成分〜F成分の各成分を含む樹脂組成物を用いて形成してもよい。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上。
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマー。
C成分: 架橋剤(但し、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可。)。D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン。
E成分: 難燃性エポキシ樹脂。
F成分: 多官能エポキシ樹脂。
G成分: 硬化促進剤。
前記B成分である架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、ポリビニルアセタール樹脂又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
前記C成分である架橋剤は、ウレタン系樹脂であることが好ましい。
前記E成分である難燃性エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られる化14に示す構造式を備える臭素化エポキシ樹脂、以下に示す化15に示す構造式を備える臭素化エポキシ樹脂の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。
前記E成分である難燃性エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
前記E成分である難燃性エポキシ樹脂は、以下に示す化16〜化18のいずれかに示す構造式を備えるリン含有エポキシ樹脂の1種又は2種を混合して用いることが好ましい。
前記F成分の多官能エポキシ樹脂としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が3重量部〜10重量部(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)、D成分が5重量部〜20重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲含有するようにE成分の重量部を定めることが好ましい。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が3重量部〜10重量部(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)、D成分が5重量部〜20重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、 樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲含有するようにE成分の重量部を定めるものであることが好ましい。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物はG成分として硬化促進剤を含むことが好ましい。
前記樹脂層は 以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスをキャリア付銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで5μm〜100μmの平均厚さの半硬化樹脂膜を形成してされることが好ましい。
工程a: 前記A成分、B成分、C成分(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可)、D成分、E成分、F成分、G成分の内、A成分〜F成分を必須成分とした樹脂組成物の重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲又はリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように各成分を混合して樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25重量%〜50重量%の樹脂ワニスとする。
前記樹脂層は以下のA成分〜E成分の各成分を含む樹脂組成物を用いて形成されることが好ましい。
A成分: エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂。
B成分: 高耐熱性エポキシ樹脂。
C成分: リンを含有した難燃性エポキシ樹脂。
D成分: 沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶な性質を備える液状ゴム成分で変成したゴム変成ポリアミドイミド樹脂。
E成分: ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の1種又は2種以上からなる樹脂硬化剤。
前記樹脂層は前記A成分〜E成分の各成分に加えて、更にF成分としてエポキシ樹脂との反応性を有さないリン含有難燃剤を含む樹脂組成物を用いて形成されることが好ましい。
A成分は、エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂である。ここで、ビスフェノール系エポキシ樹脂を選択使用しているのは、後述するD成分(ゴム変成ポリアミドイミド樹脂)との相性が良く、半硬化状態での樹脂膜に適度なフレキシビリティの付与が容易だからである。そして、エポキシ当量が200を超えると、樹脂が室温で半固形となり、半硬化状態でのフレキシビリティーが減少するので好ましくない。更に、上述のビスフェノール系エポキシ樹脂であれば、1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。しかも、2種以上を混合して用いる場合には、その混合比に関しても特段の限定はない。
このエポキシ樹脂は、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜20重量部の配合割合で用いることが好ましい。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、熱硬化性を十分に発揮せず内層フレキシブルプリント配線板とのバインダーとしての機能も、樹脂付銅箔としての銅箔との密着性も十分に果たし難くなる。一方、20重量部を超えると、他の樹脂成分とのバランスから樹脂ワニスとしたときの粘度が高くなり、樹脂付銅箔を製造するとき、銅箔表面へ均一な厚さでの樹脂膜の形成が困難となる。しかも、後述するD成分(ゴム変成ポリアミドイミド樹脂)との添加量を考慮すると、硬化後の樹脂層として十分な靭性が得られなくなる。
B成分は、所謂ガラス転移点の高い「高耐熱性エポキシ樹脂」である。ここで言う「高耐熱性エポキシ樹脂」は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。そして、このB成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の範囲で用いることが好ましい。B成分が3重量部未満の場合には、樹脂組成物の高Tg化が全く図れない。一方、B成分が30重量部を超える場合には、硬化後の樹脂が脆くなり、フレキシビリティが完全に損なわれるためフレキシブルプリント配線板用途として好ましくない。より好ましくは、B成分は、10重量部〜20重量部の範囲で用いることで、樹脂組成物の高Tg化と硬化後の樹脂の良好なフレキシビリティとを安定して両立できる。
C成分としては、所謂ハロゲンフリー系の難燃性エポキシ樹脂であり、リン含有難燃性エポキシ樹脂を用いる。リン含有難燃性エポキシ樹脂とは、エポキシ骨格の中にリンを含んだエポキシ樹脂の総称である。そして、本件出願に係る樹脂組成物のリン原子含有量を、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲とできるリン含有難燃性エポキシ樹脂であれば、いずれの使用も可能である。しかしながら、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いることが、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。参考のために、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドの構造式を化19に示す。
そして、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有難燃性エポキシ樹脂を具体的に例示すると、化20に示す構造式を備える化合物の使用が好ましい。半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。
また、C成分のリン含有難燃性エポキシ樹脂として、以下に示す化21に示す構造式を備える化合物も好ましい。化20に示すリン含有難燃性エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
更に、C成分のリン含有難燃性エポキシ樹脂として、以下に示す化22に示す構造式を備える化合物も好ましい。化20及び化21に示すリン含有難燃性エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、以下の化23(HCA−NQ)又は化24(HCA−HQ)に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有難燃性エポキシ樹脂としたものが挙げられる。
ここでリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、C成分としてのリン含有難燃性エポキシ樹脂の1種類を単独で用いても、2種類以上のリン含有難燃性エポキシ樹脂を混合して用いても構わない。但し、C成分としてのリン含有難燃性エポキシ樹脂の総量を考慮して、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲となるように添加することが好ましい。リン含有難燃性エポキシ樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有するリン原子量が異なる。そこで、上述のようにリン原子の含有量を規定して、C成分の添加量に代える事が可能である。但し、C成分は、通常、樹脂組成物を100重量部としたとき、5重量部〜50重量部の範囲で用いられる。C成分が5重量部未満の場合には、他の樹脂成分の配合割合を考慮すると、C成分由来のリン原子を0.5重量%以上とすることが困難になり、難燃性を得ることが出来ない。一方、C成分が50重量部を超えるようにしても、難燃性向上効果も飽和すると同時に、硬化後の樹脂層が脆くなるため好ましくない。
上述の硬化樹脂の「高Tg化」と「フレキシビリティ」とは、一般的に反比例する特性である。このときリン含有難燃性エポキシ樹脂は、硬化後の樹脂のフレキシビリティの向上に寄与するもの、高Tg化に寄与するものが存在する。従って、1種類のリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いるよりは、「高Tg化に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」と「フレキシビリティの向上に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」とをバランス良く配合して用いることで、フレキシブルプリント配線板用途で好適な樹脂組成とすることが可能である。
D成分は、沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶で、液状ゴム成分で変成されたゴム変成ポリアミドイミド樹脂である。このゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものである。ここで言う、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて用いるのは、ポリアミドイミド樹脂そのものの柔軟性を向上させる目的で行う。即ち、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させ、ポリアミドイミド樹脂の酸成分(シクロヘキサンジカルボン酸等)の一部をゴム成分に置換するのである。ゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、耐熱性を確保する観点からは、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、ポリアミドイミド樹脂と反応して共重合体を製造するようになるため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。特に、カルボキシル基を有するCTBN(カルボキシ基末端ブタジエンニトリル)を用いることが有用である。なお、上記ゴム成分は、1種のみを共重合させても、2種以上を共重合させても構わない。更に、ゴム成分を用いる場合には、そのゴム成分の数平均分子量が1000以上のものを用いることが、当該フレキシビリティの安定化の観点から好ましい。
ゴム変成ポリアミドイミド樹脂を重合させる際に、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂との溶解に使用する溶剤には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等を、1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。そして、重合反応を起こさせるには、80℃〜200℃の範囲の重合温度を採用することが好ましい。これらの重合に沸点が200℃を超える溶剤を用いた場合には、その後、用途に応じて沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に溶媒置換することが好ましい。
ここで、前記沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤としては、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤が挙げられる。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しくなり、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態が得られにくくなる。一方、沸点が200℃を超える場合には、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、バブリングが起こりやすくなるため、良好な半硬化樹脂膜が得られ難くなる。
本件発明に係る樹脂組成物で用いるゴム変成ポリアミドイミド樹脂の中で、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂の重量を100重量%としたとき、ゴム成分の共重合量は0.8重量%以上であることが好ましい。当該共重合量が0.8重量%未満の場合には、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂としても、本件発明に言う樹脂組成物を用いて形成した樹脂層を硬化させたときのフレキシビリティが欠如し、銅箔との密着性も低下するため好ましくない。なお、より好ましくは、当該ゴム成分の共重合量は3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上がより好ましい。経験的に40重量%を超えてゴム成分の添加量を向上させても、特段の問題はない。しかし、当該硬化後の樹脂層のフレキシビリティの向上効果は飽和するために資源の無駄となり好ましくない。
以上に述べてきたゴム変成ポリアミドイミド樹脂には、溶剤に可溶であるという性質が求められる。溶剤に可溶でなければ、樹脂ワニスとしての調製が困難だからである。このゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、10重量部〜40重量部の配合割合で用いる。ゴム変成ポリアミドイミド樹脂が10重量部未満の場合には、硬化後の樹脂層のフレキシビリティは向上させ難く、また脆くなり、樹脂層へのマイクロクラックを生じやすくなる。一方、40重量部を超えてゴム変成ポリアミドイミド樹脂を添加しても特に支障はないが、それ以上に硬化後の樹脂層のフレキシビリティは向上せず、硬化後の樹脂の高Tg化が図れない。従って、経済性を考慮すれば、40重量部が上限値であると言える。
E成分の樹脂硬化剤に関して述べる。ここで言う樹脂硬化剤は、ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の1種又は2種以上を用いる。一般的に、この樹脂硬化剤の添加量は、硬化させる樹脂に対する反応当量から自ずと導き出されるものであり、特段の量的な限定を要するものではない。しかしながら、本件発明に係る樹脂組成物の場合のE成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、20重量部〜35重量部の範囲で用いることが好ましい。このE成分が20重量部未満の場合には、上記樹脂組成を考慮すると、十分な硬化状態を得ることが出来なくなり、硬化後の樹脂としてフレキシビリティを得ることが出来なくなる。一方、E成分が35重量部を超える場合には、硬化した後の樹脂層の耐吸湿特性が劣化する傾向にあり、好ましくない。
F成分のリン含有難燃剤に関して述べる。このリン含有難燃剤は、任意の添加成分であり、樹脂の硬化反応に寄与する必要はなく、単に難燃性を大幅に向上させるために用いる。このようなリン含有難燃剤としては、ホスファゼン化合物のハロゲンフリー難燃剤を用いることが好ましい。従って、このF成分は、0重量部〜7重量部の範囲で用いられる。ここで、「0重量部」と記載しているのは、F成分を用いる必要のない場合があり、任意の添加成分であることを明確にするためである。一方、F成分が7重量部を超えるようにしても、難燃性の顕著な向上は望めなくなる。
前記樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が5重量部〜50重量部、D成分が10重量部〜40重量部、E成分が20重量部〜35重量部、F成分が0重量部〜7重量部であり、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、樹脂組成物にはC成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
前記D成分は、沸点が50℃〜200℃の範囲にあるメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドの群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤に可溶な性質を備える液状ゴム成分で変成したゴム変成ポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
前記D成分であるゴム変成ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミドとゴム性樹脂とを反応させることで得られるものであることが好ましい。
前記樹脂層は前述の樹脂組成物に溶剤を加えて、樹脂固形分量が30重量%〜70重量%の範囲に調製し、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが1%〜30%の範囲にある半硬化樹脂層の形成が可能な樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いて形成されることが好ましい。
前記樹脂層は以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで10μm〜50μmの厚さの半硬化樹脂層として形成されることが好ましい。
工程a: A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が5重量部〜50重量部、D成分が10重量部〜40重量部、E成分が20重量部〜35重量部、F成分が0重量部〜7重量部の範囲において、各成分を混合して、C成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲含有する樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が30重量%〜70重量%の樹脂ワニスとする。
前記樹脂層は内層フレキシブルプリント配線板を多層化するための接着層を形成するために用いる樹脂組成物であって、以下のA成分〜E成分の各成分を含む樹脂組成物で形成されることが好ましい。
A成分: 軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂(但し、ビフェニ
ル型エポキシ樹脂を除く。)。
B成分: ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の1
種又は2種以上からなるエポキシ樹脂硬化剤。
C成分: 沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶なゴム変性ポリアミドイミ
ド樹脂。
D成分: 有機リン含有難燃剤。
E成分: ビフェニル型エポキシ樹脂。
前記樹脂層を形成するために用いられる樹脂組成物は前記A成分〜E成分の各成分に加えて、更に、F成分として、リン含有難燃性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
前記樹脂層を形成するために用いられる樹脂組成物はG成分として、エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂を更に含むことが好ましい。
前記樹脂層を形成するために用いられる樹脂組成物はH成分として、熱可塑性樹脂及び/又は合成ゴムからなる低弾性物質を更に含むことが好ましい。
前記A成分の軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上であることが好ましい。
前記A成分として、室温で液状のノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上からなる高耐熱性エポキシ樹脂を更に含む樹脂組成物を用いて前記樹脂層を形成することが好ましい。
前記樹脂層を形成するための樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜30重量部、B成分が13重量部〜35重量部、C成分が10重量部〜50重量部、D成分が3重量部〜16重量部、E成分が5重量部〜35重量部であることが好ましい。
前記樹脂組成物に溶剤を加えて、樹脂固形分量が30重量%〜70重量%の範囲に調製した樹脂ワニスであって、半硬化樹脂層とした際に、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さ55μmで測定したときのレジンフローが0%〜10%の範囲であることを特徴とする樹脂ワニスを用いて前記樹脂層を形成することが好ましい。
前記樹脂層は以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスをキャリア付銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで10μm〜80μmの厚さの半硬化樹脂層として形成されることが好ましい。
工程a: 樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜30重量部、B成分が13重量部〜35重量部、C成分が10重量部〜50重量部、D成分が3重量部〜16重量部、E成分が5重量部〜35重量部の範囲で各成分を含有する樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が30重量%〜70重量%の樹脂ワニスとする。
A成分は、軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂である。A成分は
、所謂ガラス転移温度Tgが高いエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂のうち、軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂を採用した理由は、ガラス転移温度Tgが高く、少量添加することで、高耐熱効果が得られるからである。
ここで言う「軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂」は、クレゾー
ルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上であることが好ましい。
なお、A成分には、上述の軟化点が50℃以上である固形状の高耐熱性エポキシ樹脂の他に、更に、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上からなる高耐熱性エポキシ樹脂を含むものとしても良い。このように、A成分として、更に、室温で液状のノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂のいずれか1種又は2種以上からなる高耐熱性エポキシ樹脂を含むものとすれば、ガラス転移温度Tgの更なる向上及びBステージ割れを改善する効果を高めることができる。
そして、A成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の範囲で用いることが好ましい。A成分が3重量部未満の場合には、樹脂組成物の高Tg化が図りにくい。一方、A成分が30重量部を超える場合には、硬化後の樹脂層が脆くなり、フレキシビリティが完全に損なわれるためフレキシブルプリント配線板用途として好ましくない。より好ましくは、A成分は、10重量部〜25重量部の範囲で用いることで、樹脂組成物の高Tg化と硬化後の樹脂層の良好なフレキシビリティとを安定して両立できる。
B成分は、ビフェニル型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂硬化剤である。エポキシ樹脂硬化剤の添加量は、硬化させる樹脂に対する反応当量から自ずと導き出されるものであり、特段の量的な限定を要するものではない。しかしながら、本件発明に係る樹脂組成物の場合、B成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、13重量部〜35重量部の範囲で用いることが好ましい。このB成分が13重量部未満の場合には、本件発明の樹脂組成を考慮すると、十分な硬化状態を得ることが出来なくなり、硬化後の樹脂層のフレキシビリティを得ることが出来なくなる。一方、B成分が35重量部を超える場合には、硬化後の樹脂層の耐吸湿特性が劣化する傾向にあり、好ましくない。
ビフェニル型フェノール樹脂の具体例を化25に示す。
また、フェノールアラルキル型フェノール樹脂の具体例を化26に示す。
C成分は、沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に可溶なゴム変性ポリアミドイミド樹脂である。当該C成分を配合することにより、フレキシブル性能を向上させるとともに、樹脂流れを抑制する効果が得られる。このゴム変性ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させて得られるものであり、ポリアミドイミド樹脂そのものの柔軟性を向上させる目的で行う。即ち、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂とを反応させ、ポリアミドイミド樹脂の酸成分(シクロヘキサンジカルボン酸等)の一部をゴム成分に置換するのである。ゴム成分としては、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等がある。更に、耐熱性を確保する観点からは、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性を備えた合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、ポリアミドイミド樹脂と反応して共重合体を製造するため、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。特に、カルボキシル基を有するCTBN(カルボキシ基末端ブタジエンニトリルゴム)を用いることが有用である。なお、上記ゴム成分は、1種のみを共重合させても、2種以上を共重合させても構わない。更に、ゴム成分を用いる場合には、そのゴム成分の数平均分子量が1000以上のものを用いることが、フレキシビリティの安定化の観点から好ましい。
ゴム変性ポリアミドイミド樹脂を重合させる際に、ポリアミドイミド樹脂とゴム性樹脂との溶解に使用する溶剤には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等を、1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。そして、重合反応を起こさせるには、80℃〜200℃の範囲の重合温度を採用することが好ましい。これらの重合に沸点が200℃を超える溶剤を用いた場合には、その後、用途に応じて沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤に溶媒置換することが好ましい。
ここで、沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤としては、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤が挙げられる。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しくなり、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態が得られにくくなる。一方、沸点が200℃を超える場合には、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、溶剤が乾きにくいため、良好な半硬化樹脂層が得られ難くなる。
本件発明に係る樹脂組成物で用いるゴム変性ポリアミドイミド樹脂の中で、ゴム変性ポリアミドイミド樹脂の重量を100重量%としたとき、ゴム成分の共重合量は0.8重量%以上であることが好ましい。当該共重合量が0.8重量%未満の場合には、ゴム変性ポリアミドイミド樹脂としても、本件発明に言う樹脂組成物を用いて形成した樹脂層を硬化させたときのフレキシビリティが欠如し、銅箔との密着性も低下するため好ましくない。なお、より好ましくは、当該ゴム成分の共重合量は3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上がより好ましい。経験的に共重合量が40重量%を超えても特段の問題はない。しかし、当該硬化後の樹脂層のフレキシビリティの向上効果は飽和するために資源の無駄となり好ましくない。
以上に述べてきたゴム変性ポリアミドイミド樹脂には、溶剤に可溶であるという性質が求められる。溶剤に可溶でなければ、樹脂ワニスとしての調製が困難だからである。そして、このゴム変性ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物の重量を100重量部としたとき、10重量部〜50重量部の配合割合で用いる。ゴム変性ポリアミドイミド樹脂が10重量部未満の場合には、樹脂流れの抑制効果が発揮されにくい。また、硬化後の樹脂層が脆くなり、フレキシビリティが向上させ難くなる。その結果、樹脂層のマイクロクラックが生じやすくなるといった影響が生じる。一方、50重量部を超えてゴム変性ポリアミドイミド樹脂を添加した場合、内層回路への埋め込み性が低下し、結果としてボイドが生じやすくなるため、好ましくない。
D成分は、有機リン含有難燃剤であり、難燃性を向上させるために用いる。有機リン含有難燃剤としては、リン酸エステル及び/又はホスファゼン化合物からなるリン含有難燃剤が挙げられる。このD成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜16重量部の範囲で用いることが好ましい。D成分の含有量を3重量部未満とすると、難燃性の効果が得られない。一方、D成分の含有量が16重量部を超えるようにしても、難燃性の向上が望めない。なお、D成分のより好ましい含有量は、5重量部〜14重量部である。
なお、本件発明に係る樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、リンの総含有量が0.5重量%〜5重量%の範囲となるように添加すると、難燃性が確保されるため好ましい。
E成分は、ビフェニル型エポキシ樹脂である。ビフェニル型エポキシ樹脂は、所謂ガラス転移温度Tgの向上と屈曲性の向上に寄与する。ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。このE成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、5重量部〜35重量部の範囲で用いることが好ましい。E成分の含有量を5重量部未満とすると、ガラス転移温度Tg及び屈曲性を高くする効果が得られない。一方、E成分の含有量が35重量部を超えるようにしても、高Tg化が望めない上に、屈曲性の向上が望めない。なお、E成分のより好ましい含有量は、7重量部〜25重量部である。
上記A成分〜E成分の他に、更に、F成分として、リン含有難燃性エポキシ樹脂を含む樹脂組成物とすると、難燃性を更に向上させることができる。リン含有難燃性エポキシ樹脂とは、エポキシ骨格の中にリンを含んだエポキシ樹脂の総称であり、所謂ハロゲンフリー系の難燃性エポキシ樹脂である。そして、本件出願に係る樹脂組成物のリン原子含有量を、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、F成分由来のリン原子を0.1重量%〜5重量%の範囲とできるリン含有難燃性エポキシ樹脂であれば、いずれの使用も可能である。しかしながら、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体である、分子内に2以上のエポキシ基を備えるリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いることが、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。参考のために、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドの構造式を化27に示す。
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体である、分子内に2以上のエポキシ基を備えるリン含有難燃性エポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、以下の化28又は化29に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有難燃性エポキシ樹脂としたものが好ましい。
そして、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体である、分子内に2以上のエポキシ基を備えるリン含有難燃性エポキシ樹脂を具体的に例示すると、化30,化31または化32に示す構造式を備える化合物の使用が好ましい。
ここでリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、F成分としてのリン含有難燃性エポキシ樹脂の1種類を単独で用いても、2種類以上のリン含有難燃性エポキシ樹脂を混合して用いても構わない。但し、F成分としてのリン含有難燃性エポキシ樹脂の総量を考慮して、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、F成分由来のリン原子を0.1重量%〜5重量%の範囲となるように添加することが好ましい。リン含有難燃性エポキシ樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有するリン原子量が異なる。そこで、上述のようにリン原子の含有量を規定して、F成分の添加量に代えることが可能である。但し、F成分は、通常、樹脂組成物を100重量部としたとき、5重量部〜50重量部の範囲で用いられる。F成分が5重量部未満の場合には、他の樹脂成分の配合割合を考慮すると、F成分由来のリン原子を0.1重量%以上とすることが困難になり、難燃性の向上効果を得ることが出来ない。一方、F成分が50重量部を超えるようにしても、難燃性向上効果も飽和すると同時に、硬化後の樹脂層が脆くなるため好ましくない。
上述の硬化樹脂層の「高Tg化」と「フレキシビリティ」とは、一般的に反比例する特性である。このときリン含有難燃性エポキシ樹脂は、硬化後の樹脂層のフレキシビリティの向上に寄与するもの、高Tg化に寄与するものが存在する。従って、1種類のリン含有難燃性エポキシ樹脂を用いるよりは、「高Tg化に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」と「フレキシビリティの向上に寄与するリン含有難燃性エポキシ樹脂」とをバランス良く配合して用いることで、フレキシブルプリント配線板用途で好適な樹脂組成物とすることが可能である。
本件発明に係る樹脂組成物は、更に、G成分として、エポキシ当量が200以下で、室温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上からなるエポキシ樹脂を含むものとしても良い。ここで、ビスフェノール系エポキシ樹脂を選択使用しているのは、C成分(ゴム変性ポリアミドイミド樹脂)との相性が良く、半硬化樹脂層に適度なフレキシビリティの付与が容易だからである。そして、エポキシ当量が200を超えると、樹脂が室温で半固形となり、半硬化状態でのフレキシビリティが減少するので好ましくない。更に、上述のビスフェノール系エポキシ樹脂であれば、1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。しかも、2種以上を混合して用いる場合には、その混合比に関しても特段の限定はない。
このG成分のエポキシ樹脂は、樹脂組成物を100重量部としたとき、2重量部〜15重量部の配合割合で用いることが、熱硬化性を十分に発揮し、半硬化状態において、カールと呼ばれる反り現象の発生を低減させることが可能となり、また、半硬化状態での樹脂層のフレキシビリティの更なる向上を図ることができるため好ましい。当該エポキシ樹脂が15重量部を超えると、他の樹脂成分とのバランスから難燃性が低下したり、硬化後の樹脂層が硬くなる傾向がある。しかも、C成分(ゴム変性ポリアミドイミド樹脂)の添加量を考慮すると、硬化後の樹脂層として十分な靭性が得られなくなる。
本件発明に係る樹脂組成物は、更に、H成分として、熱可塑性樹脂及び/又は合成ゴムからなる低弾性物質を含むものとしても良い。H成分を含む樹脂組成物とすることにより、樹脂組成物の半硬化状態における割れを防ぎ、且つ硬化後のフレキシビリティを向上させることができる。このH成分としての低弾性物質は、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム(アクリル酸エステル共重合体)、ポリブタジエンゴム、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、ポリエーテルサルフォン、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミドが挙げられる。これらの中から1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。特に、アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることが好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴムの中でも、カルボキシル変性体であると、エポキシ樹脂と架橋構造を取り、硬化後の樹脂層のフレキシビリティを向上させることができる。カルボキシル変性体としては、カルボキシ基末端ニトリルブタジエンゴム(CTBN)、カルボキシ基末端ブタジエンゴム(CTB)、カルボキシ変性ニトリルブタジエンゴム(C‐NBR)を用いることが好ましい。
H成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、25重量部以下の配合割合で用いることが好ましい。25重量部を超える量のH成分を加えると、ガラス転移温度Tgの低下、半田耐熱性能の低下、ピール強度の低下、熱膨張係数の増大といった問題が発生するため好ましくない。
本件発明に係る樹脂組成物は、上述のA成分〜E成分を組み合わせることにより、難燃性の向上及びガラス転移温度Tgが高くなり、また、耐折性の熱劣化を防ぐことができる。そして、従来の接着剤用樹脂組成物のような無機充填剤を加えることなく、十分な屈曲性を得ることができる。さらに、半硬化状態での割れや打ち抜き加工時の粉落ちを防ぐことができる。
本件発明に係る樹脂ワニス: 本件発明に係る樹脂ワニスは、上述の樹脂組成物に溶剤を加えて、樹脂固形分量が30重量%〜70重量%の範囲に調製したものである。そして、この樹脂ワニスにより形成する半硬化樹脂層は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して樹脂厚さを55μmとして測定したときのレジンフローが0%〜10%の範囲にあることを特徴とする。ここで言う溶剤には、上述の沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤であるメチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。上述のように良好な半硬化樹脂層を得るためである。そして、ここに示した樹脂固形分量の範囲が、銅箔の表面に塗布したときに、最も膜厚を精度の良いものに制御できる範囲である。樹脂固形分が30重量%未満の場合には、粘度が低すぎて、銅箔表面への塗布直後に流れて膜厚均一性を確保しにくい。これに対して、樹脂固形分が70重量%を超えると、粘度が高くなり、銅箔表面への薄膜形成が困難となる。
当該樹脂ワニスは、これを用いて半硬化樹脂層を形成したとき、測定したレジンフローが0%〜10%の範囲にあることが好ましい。当該レジンフローが高いと、樹脂付銅箔の樹脂層を用いて形成する絶縁層の厚さが不均一になる。しかし、本件発明に係る樹脂ワニスは、レジンフローを10%以下という低い値に抑えることができる。なお、本件発明に係る樹脂ワニスは、樹脂流れが殆ど生じないレベルが実現可能であるので、当該レジンフローの下限値を0%とした。なお、本件発明に係る樹脂ワニスのレジンフローのより好ましい範囲は0%〜5%である。
本件明細書において、レジンフローとは、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さを55μmとした樹脂付銅箔から10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態(積層体)でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm2、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときの樹脂流出重量を測定した結果から数1に基づいて算出した値である。
また、前記樹脂層は溶剤に可溶で且つ官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分を2重量部〜50重量部、沸点200℃以上のエポキシ樹脂及び沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物を50重量部以上、を含有してもよい。前記樹脂層はフッ素樹脂基材またはフッ素樹脂フィルム接着用樹脂であってもよい。また、前記ポリマー成分は、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂の群から選ばれた1種又は2種以上を混合したものであってもよい。前記沸点200℃以上のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を混合したものであってもよい。
前記アミン系エポキシ樹脂硬化剤は、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた1種又は2種以上を用いてもよい。
なお、前記フッ素樹脂基材またはフッ素樹脂フィルムとは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))、ポリアリルスルフォン、芳香族ポリスルフィドおよび芳香族ポリエーテルの中から選ばれるいずれか少なくとも1種の熱可塑性樹脂とフッ素樹脂とからなるフッ素系樹脂等を用いた基材またはフィルムであってもよい。ガラスクロス等の骨格材を含んでも含まなくとも構わない。また、このフッ素樹脂基材の厚さに関しても、特段の限定はない。
また、前記硬化剤としては、単に硬化させることのみを目的とすれば、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン等のアミン類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA等のフェノール類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のノボラック類、無水フタル酸等の酸無水物等のあらゆる硬化剤を用いることができる。これらの硬化剤はエポキシ樹脂に特に有効である。しかしながら、沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いることが、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性を顕著に向上させるという観点から最も好ましい。プレス成形温度が180℃付近であり、このプレス成形温度付近に硬化剤の沸点があると、プレス成形によりエポキシ樹脂硬化剤が沸騰するため硬化した絶縁樹脂層内に気泡が発生しやすくなる。そして、フッ素樹脂基材と金属箔との間に接着層を構成するのにアミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いると最も安定した密着性が得られる。即ち、「沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤」とは、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた一種又は二種以上を用いる場合を言う。そして、これをより具体的に言えば、4,4’−ジアミノジフェニレンサルフォン、3,3’−ジアミノジフェニレンサルフォン、4,4−ジアミノジフェニレル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]サルフォンのいずれかを用いることが好ましい。また、当該アミン系エポキシ樹脂硬化剤のエポキシ樹脂に対する添加量は、それぞれの当量から自ずと導き出されるものであるため、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。従って、本件発明では、硬化剤の添加量を特に限定していない。
また、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤を用いることも好ましい。ここで言う硬化促進剤とは、3級アミン、イミダゾール、尿素系硬化促進剤等である。本件発明では、この硬化促進剤の配合割合は、特に限定を設けていない。なぜなら、硬化促進剤は、プレス加工時の加熱条件等を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めて良いものであるからである。
そして、前記樹脂層はゴム性樹脂を含むことも好ましい。ここで言うゴム性樹脂とは、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、耐熱性を要求される場合には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、上記ポリマー成分と反応して共重合体を形成するように、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。
更に、上記高分子ポリマーの架橋剤を必要に応じて添加して用いることも好ましい。例えば、上記高分子ポリマーとして、ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合には、ウレタン樹脂を架橋材として用いる等である。
前記樹脂層の樹脂組成物の構成成分は、樹脂組成物を100重量部としたとき、エポキシ樹脂が50重量部〜80重量部、硬化剤が1重量部〜15重量部、硬化促進剤が0.01重量部〜1.0重量部、ポリマー成分が2重量部〜50重量部、架橋剤が1重量部〜5重量部、ゴム性樹脂が1重量部〜10重量部の範囲の組成を採用してもよい。この組成範囲に含まれる限り、フッ素樹脂基材と金属箔との良好な密着性を維持し、且つ、製品の密着性のバラツキが少なくなる。
前記樹脂層は5〜50重量部のエポキシ樹脂(硬化剤を含む)、50〜95重量部のポリエーテルサルホン樹脂(末端に水酸基又はアミノ基を持ち且つ溶剤に可溶なもの)、及び、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤からなる樹脂混合物を用いて形成したものまたは当該樹脂混合物を半硬化させたものであってもよい。
前記樹脂層は銅箔側から順に第1熱硬化性樹脂層と、当該第1熱硬化性樹脂層の表面に位置する第2熱硬化性樹脂層とを有する樹脂層であって、第1熱硬化性樹脂層は、配線板製造プロセスにおけるデスミア処理時の薬品に溶解しない樹脂成分で形成されたものであり、第2熱硬化性樹脂層は、配線板製造プロセスにおけるデスミア処理時の薬品に溶解し洗浄除去可能な樹脂を用いて形成したものであってもよい。前記第1熱硬化性樹脂層は、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンオキサイドのいずれか一種又は2種以上を混合した樹脂成分を用いて形成したものであってもよい。前記第2熱硬化性樹脂層は、エポキシ樹脂成分を用いて形成したものであってもよい。前記第1熱硬化性樹脂層の厚さt1( μm)は、キャリア付銅箔の粗化面粗さをRz( μm)とし、第2熱硬化性樹脂層の厚さをt2( μm)としたとき、t1は、Rz<t1<t2の条件を満たす厚さであることが好ましい。
前記樹脂層は骨格材に樹脂を含浸させたプリプレグであってもよい。前記骨格材に含浸させた樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。前記プリプレグは公知のプリプレグまたはプリント配線板製造に用いるプリプレグであってもよい。前記プリプレグは次の工程を有する製造方法により製造されたプリプレグであってもよい。1.液体状の熱硬化性樹脂を用いて、平坦なワーク平面の上に所定厚さの被膜として液体樹脂層を形成する液体樹脂被膜形成工程。2.ワーク平面上にある液体樹脂層を、そのままの状態で乾燥させることで乾燥樹脂層とする予備乾燥工程。3.ワーク平面上にある前記乾燥樹脂層の表面に、骨格材を重ね合わせ、予備加熱して圧着することで骨格材付乾燥樹脂層とする骨格材予備接着工程。4.ワーク平面上に骨格材付乾燥樹脂層を載置したまま、樹脂が再流動可能な温度で加熱し、当該骨格材に熱硬化性樹脂成分を含浸させる樹脂含浸工程。5.樹脂含浸が終了すると、熱硬化性樹脂を完全硬化させることなく、直ちに降温操作を行い、骨格材に含浸させた熱硬化性樹脂の半硬化状態を維持してプリプレグ状態となるようにする冷却工程。
前記骨格材はアラミド繊維又はガラス繊維又は全芳香族ポリエステル繊維を含んでもよい。前記骨格材はアラミド繊維又はガラス繊維又は全芳香族ポリエステル繊維の不織布若しくは織布であることが好ましい。また、前記全芳香族ポリエステル繊維は融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維であることが好ましい。前記融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維とは、所謂液晶ポリマーと称される樹脂を用いて製造される繊維であり、当該液晶ポリマーは2−ヒドロキシル−6−ナフトエ酸及びp−ヒドロキシ安息香酸の重合体を主成分とするものである。この全芳香族ポリエステル繊維は、低誘電率、低い誘電正接を持つため、電気的絶縁層の構成材として優れた性能を有し、ガラス繊維及びアラミド繊維と同様に使用することが可能なものである。
なお、前記不織布及び織布を構成する繊維は、その表面の樹脂との濡れ性を向上させるため、シランカップリング剤処理を施す事が好ましい。このときのシランカップリング剤は、使用目的に応じてアミノ系、エポキシ系等のシランカップリング剤を用いればよいのである。
また、前記プリプレグは公称厚さが70μm以下のアラミド繊維又はガラス繊維を用いた不織布、あるいは、公称厚さが30μm以下のガラスクロスからなる骨格材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグであってもよい。
これらの樹脂を例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。前記樹脂層の組成物を、溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分3wt%〜60wt%、好ましくは、10wt%〜40wt%、より好ましくは25wt%〜40wt%の樹脂液としてもよい。なお、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤を用いて溶解することが、環境的な見地より現段階では最も好ましい。
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
この樹脂層の厚みは0.1〜120μmであることが好ましい。
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。また、前記硬化樹脂層、半硬化樹脂層との総樹脂層厚みは0.1μm〜120μmであるものが好ましく、35μm〜120μmのものが実用上好ましい。そして、その場合の各厚みは、硬化樹脂層は5〜20μmで、半硬化樹脂層は15〜115μmであることが望ましい。総樹脂層厚みが120μmを超えると、薄厚の多層プリント配線板を製造することが難しくなる場合があり、35μm未満では薄厚の多層プリント配線板を形成し易くなるものの、内層の回路間における絶縁層である樹脂層が薄くなりすぎ、内層の回路間の絶縁性を不安定にする傾向が生じる場合があるためである。また、硬化樹脂層厚みが5μm未満であると、銅箔粗化面の表面粗度を考慮する必要が生じる場合がある。逆に硬化樹脂層厚みが20μmを超えると硬化済み樹脂層による効果は特に向上することがなくなる場合があり、総絶縁層厚は厚くなる。また、前記硬化樹脂層は、厚さが3μm〜30μmであってもよい。また、前記半硬化樹脂層は、厚さが7μm〜55μmであってもよい。また、前記硬化樹脂層と前記半硬化樹脂層との合計厚さは10μm〜60μmであってもよい。
また、樹脂層を有するキャリア付銅箔が極薄の多層プリント配線板を製造することに用いられる場合には、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μm、より好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜5μmとすることが、多層プリント配線板の厚みを小さくするために好ましい。なお、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μmとする場合には、樹脂層とキャリア付銅箔との密着性を向上させるため、極薄銅層の上に耐熱層および/または防錆層および/またはクロメート処理層および/またはシランカップリング処理層を設けた後に、当該耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の上に樹脂層を形成することが好ましい。
また、樹脂層が誘電体を含む場合には、樹脂層の厚みは0.1〜50μmであることが好ましく、0.5μm〜25μmであることが好ましく、1.0μm〜15μmであることがより好ましい。なお、前述の樹脂層の厚みは、任意の10点において断面観察により測定した厚みの平均値をいう。
一方、樹脂層の厚みを120μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限られず、粗化処理層が形成されていない極薄銅層を有するキャリア付銅箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記図1−B及び図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
本発明に係るキャリア付銅箔は、極薄銅層表面の色差が以下(1)〜(4)いずれか1つ以上を満たすように制御されていることが好ましい。本発明において「極薄銅層表面の色差」とは、極薄銅層の表面の色差、又は、粗化処理等の各種表面処理が施されている場合はその表面処理層表面の色差を示す。すなわち、本発明に係るキャリア付銅箔は、極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング層の表面の色差が以下(1)〜(4)いずれか1つ以上を満たすように制御されていることが好ましい。
(1)極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面のJISZ8730に基づく色差ΔLが−40以下である。
(2)極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面のJISZ8730に基づく色差ΔE*abが45以上である。
(3)極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面のJISZ8730に基づく色差Δaが20以下である。
(4)極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面のJISZ8730に基づく色差Δbが20以下。
ここで、上述の色差ΔL、Δa、Δbは、それぞれ色差計で測定され、黒/白/赤/緑/黄/青を加味し、JIS Z8730に基づくL*a*b表色系を用いて示される総合指標であり、ΔL:白黒、Δa:赤緑、Δb:黄青として表される。また、ΔE*abはこれらの色差を用いて下記式で表される。
上述の色差は、極薄銅層形成時の電流密度を高くし、メッキ液中の銅濃度を低くし、メッキ液の線流速を高くすることで調整することができる。
また上述の色差は、極薄銅層の表面に粗化処理を施して粗化処理層を設けることで調整することもできる。粗化処理層を設ける場合には銅およびニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンからなる群から選択される一種以上の元素とを含む電界液を用いて、従来よりも電流密度を高く(例えば40〜60A/dm2)し、処理時間を短く(例えば0.1〜1.3秒)することで調整することができる。極薄銅層の表面に粗化処理層を設けない場合には、Niの濃度をその他の元素の2倍以上としたメッキ浴を用いて、極薄銅層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング処理層の表面にNi合金メッキ(例えばNi−W合金メッキ、Ni−Co−P合金メッキ、Ni−Zn合金めっき)を従来よりも低電流密度(0.1〜1.3A/dm2)で処理時間を長く(20秒〜40秒)設定して処理することで達成できる。
極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差ΔLが−40以下であると、例えば、キャリア付銅箔の極薄銅層表面に回路を形成する際に、極薄銅層と回路とのコントラストが鮮明となり、その結果、視認性が良好となり回路の位置合わせを精度良く行うことができる。極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差ΔLは、好ましくは−45以下であり、より好ましくは−50以下である。
極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差ΔE*abが45以上であると、例えば、キャリア付銅箔の極薄銅層表面に回路を形成する際に、極薄銅層と回路とのコントラストが鮮明となり、その結果、視認性が良好となり回路の位置合わせを精度良く行うことができる。極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差ΔE*abは、好ましくは50以上であり、より好ましくは55以上であり、更により好ましくは60以上である。
極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差Δaが20以下であると、例えば、キャリア付銅箔の極薄銅層表面に回路を形成する際に、極薄銅層と回路とのコントラストが鮮明となり、その結果、視認性がより良好となり回路の位置合わせを精度良く行うことができる。極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差Δaは、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、更により好ましくは8以下である。
極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差Δbが20以下であると、例えば、キャリア付銅箔の極薄銅層表面に回路を形成する際に、極薄銅層と回路とのコントラストが鮮明となり、その結果、視認性がより良好となり回路の位置合わせを精度良く行うことができる。極薄銅層表面のJISZ8730に基づく色差Δbは、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、更により好ましくは8以下である。
極薄銅層または粗化処理層または耐熱層または防錆層またはクロメート処理層またはシランカップリング層の表面の色差が上記のようの制御されている場合には、回路めっきとのコントラストが鮮明となり、視認性が良好となる。従って、上述のようなプリント配線板の例えば図1−Cに示すような製造工程において、回路めっきを精度良く所定の位置に形成することが可能となる。また、上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば図4−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、図4−J及び図4−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記埋め込み樹脂は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記埋め込み樹脂の種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂などを含む樹脂や、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルムなどを好適なものとしてあげることができる。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.キャリア付銅箔の製造
銅箔キャリアとして、厚さ35μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)及び厚さ33μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製C1100)を用意した。この銅箔のシャイニー面に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続ラインでキャリア表面及び極薄銅層側について順に以下の条件で表1に記載の中間層形成処理を行った。キャリア表面側と極薄銅層側との処理工程の間には、水洗及び酸洗を行った。
(めっき条件)
・モリブデン−コバルト合金めっき
硫酸コバルト:10〜200g/L
モリブデン酸ナトリウム:5〜200g/L
クエン酸三ナトリウム:2〜240g/L
pH:2〜5
液温:10〜70℃
・モリブデン−ニッケル合金めっき
硫酸ニッケル:10〜200g/L
モリブデン酸三ナトリウム:5〜60g/L
クエン酸ナトリウム:2〜120g/L
pH:4〜7
液温:20〜60℃
・モリブデン−鉄合金めっき
硫酸鉄:10〜200g/L
モリブデン酸ナトリウム:5〜100g/L
クエン酸三ナトリウム:2〜200g/L
ほう酸:1〜50g/L
pH:2〜6
液温:10〜70℃
・Niめっき
硫酸ニッケル:250〜500g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:5〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
浴温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm2
引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、中間層の上に厚さ2〜5μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成し、キャリア付銅箔を作製した。
・極薄銅層(実施例3以外)
銅濃度:90〜120g/L
H2SO4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜70A/dm2
めっき液線流速:1.0m/s
・極薄銅層(実施例3)
銅濃度:60〜90g/L
H2SO4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:80A/dm2
めっき液線流速:4.0m/s
なお、実施例1、5、7については極薄銅層の表面に以下の粗化処理、防錆処理、クロメート処理、及び、シランカップリング処理をこの順に行った。また、実施例4については極薄銅層の表面に以下の防錆処理、クロメート処理、及び、シランカップリング処理をこの順に行った。
・粗化処理
Cu: 10〜20g/L
Cu: 10〜20g/L
Co: 5〜15g/L
Ni: 5〜15g/L
pH: 1〜4
温度: 40〜50℃
電流密度Dk : 実施例1:40A/dm2、実施例5:50A/dm2、実施例7:47A/dm2
時間: 実施例1:0.5秒、実施例5:0.8秒、実施例7:0.8秒
Cu付着量:15〜40mg/dm2
Co付着量:100〜3000μg/dm2
Ni付着量:100〜1000μg/dm2
・防錆処理(実施例1、5、7)
Zn:0〜20g/L
Ni:0〜5g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk :0〜1.7A/dm2
時間:1秒
Zn付着量:5〜250μg/dm2
Ni付着量:5〜300μg/dm2
・防錆処理(実施例4)
Zn:10g/L
Ni:35g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk :0.5A/dm2
時間:46秒
Zn付着量:150〜1500μg/dm2
Ni付着量:300〜2600μg/dm2
・クロメート処理
K2Cr2O7
(Na2Cr2O7或いはCrO3):2〜10g/L
NaOH或いはKOH:10〜50g/L
ZnO或いはZnSO47H2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度 0.05〜5A/dm2
時間:5〜30秒
Cr付着量:10〜150μg/dm2
・シランカップリング処理
ビニルトリエトキシシラン水溶液
(ビニルトリエトキシシラン濃度:0.1〜1.4wt%)
pH:4〜5
時間:5〜30秒
2.キャリア付銅箔の各種評価
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各種の評価を実施した。結果を表1及び2に示す。
<中間層の金属付着量の測定>
ニッケル付着量はサンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって測定し、モリブデン、コバルト、鉄付着量はサンプルを濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。なお、前記ニッケル、モリブデン、コバルトおよび鉄の付着量の測定は以下のようにして行った。まず、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥離した後、極薄銅層の中間層側の表面付近のみを溶解して(極薄銅層の厚みが1.4μm以上である場合には極薄銅層の中間層側の表面から0.5μm厚みのみ溶解する、極薄銅層の厚みが1.4μm未満の場合には極薄銅層の中間層側の表面から極薄銅層厚みの20%のみ溶解する。)、極薄銅層の中間層側の表面の付着量を測定する。また、極薄銅層を剥離した後に、キャリアの中間層側の表面付近のみを溶解して(表面から0.5μm厚みのみ溶解する)、キャリアの中間層側の表面の付着量を測定する。そして、極薄銅層の中間層側の表面の付着量とキャリアの中間層側の表面の付着量とを合計した値を、中間層の金属付着量とした。
<XPS分析>
<STEMによる評価>
キャリア付銅箔の断面の元素分布をSTEMによって観察したときの測定条件を以下に示す。
・装置:STEM(日立製作所社、型式HD−2000STEM)
・加速電圧:200kV
・倍率:100000〜1000000倍
・観察視野:1500nm×1500nm〜160nm×160nm
元素濃度の線分析は、キャリア/中間層/極薄銅層を介して50〜1000nm長行った。検出元素からカーボンを除外し、各元素の濃度(質量%)を分析した。
キャリア付銅箔の極薄銅層側を絶縁基板上に貼り合わせて、大気中、20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で圧着を行った後のものについても同様にSTEM評価を行った。
<ピンホール>
民生用の写真用バックライトを光源にして、目視でピンホールの数を測定した。なお、ピンホール個数はキャリア付銅箔の極薄銅層側を絶縁基板上に貼り合わせて、大気中、20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で圧着を行った後、キャリアを剥離し、絶縁基板側からバックライトを透過させて測定した。
<剥離強度>
キャリア付銅箔の極薄銅層側を絶縁基板上に貼り合わせて、大気中、20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で圧着を行った後、剥離強度は、ロードセルにて銅箔キャリア側を引っ張り、90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。また、絶縁基板上に貼り合わせる前のキャリア付銅箔も同様に剥離強度を測定しておいた。
<フクレ220℃>
キャリア付銅箔を220℃の大気加熱炉内で4時間加熱した。加熱後、光学顕微鏡で1dm2あたりのフクレの個数をカウントした。
<フクレ400℃>
キャリア付銅箔を400℃の大気加熱炉内で10分間加熱した。加熱後、光学顕微鏡で1dm2あたりのフクレの個数をカウントした。
<表面色差の測定>
HunterLab社製色差計MiniScan XE Plusを使用して、JISZ8730に準拠して、実施例に係るキャリア付銅箔の極薄銅層の表面処理をされた表面(防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理を行った場合には、当該最後に行った処理の後に)の白色との色差ΔL、Δa、Δb、ΔE*abを測定した。なお、前述の色差計では、白色板の測定値をΔE*ab=0、黒い袋で覆って暗闇で測定したときの測定値をΔE*ab=90として、色差を校正する。このうち、ΔE*abは、L*a*b表色系を用い、ΔL:白黒、Δa:赤緑、Δb:黄青として、下記式に基づいて測定した。ここで色差ΔE*abは白色をゼロ、黒色を90で定義される;
なお、銅回路表面など微小領域のJIS Z8730に基づく色差ΔL、Δa、Δb、ΔE*abは、例えば日本電色工業株式会社製の微小面分光色差計(型式:VSS400など)やスガ試験機株式会社製の微小面分光測色計(型式:SC−50μなど)など公知の測定装置を用いて測定をすることができる。
<視認性の評価>
実施例に係るキャリア付銅箔の極薄銅層上にメッキレジストを塗布した後に、電解メッキを行い、20μm×20μm角の銅メッキ部を形成した。その後、メッキレジストを除去した後に、前記銅メッキ部をCCDカメラで検出することを試みた。10回中10回検出できた場合には「◎◎」、10回中9回以上検出できた場合には「◎」、7〜8回検出できた場合には「○」、6回検出できた場合には「△」、5回以下検出できた場合には「×」とした。
(評価結果)
実施例1〜7は、いずれもピンホールが良好に抑制されており、さらに良好な剥離強度を示した。
比較例1、2は、中間層を形成しておらず、熱圧着前後で極薄銅層からキャリアを剥離することができなかった。
比較例3は、中間層にモリブデンが存在しないため、熱圧着後に極薄銅層からキャリアを剥離することができず、フクレが多発した。
比較例4は中間層のニッケルの付着量が少なく、かつ中間層にモリブデンが存在しないため、熱圧着前後で極薄銅層からキャリアを剥離することができなかった。
比較例5は中間層のモリブデンの付着量が多いため、極薄銅層のピンホールが多くなり、剥離強度が低くなり過ぎた。
比較例6は中間層のモリブデンの付着量が少ないため、熱圧着後に極薄銅層からキャリアを剥離することができず、フクレが多発した。
比較例7は中間層のコバルトの付着量が少ないため、熱圧着後に極薄銅層からキャリアを剥離することができなかった。
比較例8は中間層のニッケルの付着量が多いため、極薄銅層のピンホールが多くなり、フクレが多発し、剥離強度が低くなり過ぎた。
図5に、実施例5の基板貼り合せ後のSTEM線分析結果を示す。図6に、比較例3の基板貼り合せ後のSTEM線分析結果を示す。
なお、極薄銅層をキャリアから剥離することができた実施例、比較例については、いずれも中間層と極薄銅層との間で剥離していた。