以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1 に、本実施の形態に係る制御装置を備えた無線電力電送装置の構成を示す。
この無線電力電送装置は、電力を伝送する送電ユニット21、電力を受電する受電ユニット31、および制御装置11を備える。制御装置11は、送電ユニット21または受電ユニット31内に組み込まれていても良いし、送電ユニット21および受電ユニット31から分離して設けられても良い。
送電ユニット21は、交流電力を生成する交流電源22と、交流電源22に接続された送電部を含む。送電部は、コイル1および容量1を含む。コイル1と容量1は直列に接続されている。交流電源22には、交流電源の出力を調整する送電調整信号が制御装置11から入力される。
交流電源の出力を調整する方法は、出力される電力を変更可能な手段ならば、任意の方法でよい。例えば、送電電圧振幅、または電流振幅を送電調整信号に応じた値に変更してもよい。または、送電電力が送電調整信号で指示される値で一定となるよう制御してもよい。または、交流波形が出力される時間の割合を、送電調整信号に応じて変更してもよい。
受電ユニット31は、負荷32と、負荷32に接続された受電部を含む。受電部は、コイル2および容量2を含む。コイル2と容量2は直列に接続されている。負荷32は、電力を消費または蓄積する任意の装置でよい。負荷32には、受電ユニット31のインピーダンスを調整する負荷調整信号として、負荷32のインピーダンスを調整する負荷調整信号が、制御装置11から入力される。
負荷調整信号によりインピーダンスを調整する方法は、例えば負荷が消費、または蓄積する電力を変更する方法でもよい。負荷が、電力の消費または蓄積する装置以外にインピーダンスを可変な装置を含む場合、当該装置を調整することで、負荷のインピーダンスを変更してもよい。
負荷32が消費、または蓄積する電力の情報は、制御装置11に負荷電力情報として出力される。電力の情報とは、例えば電力そのものの値を示す情報でもよいし、電圧、または電流の情報でもよい。
送電側のコイル1および容量1と、受電側のコイル2および容量2とで、送受電部41が形成される。送受電部41において、コイル間で、磁気結合を介した電力伝送が行われる。すなわち、コイル1では、交流電源22からの交流電力に応じた磁界が発生させられ、この磁界がコイル2に結合されることで、交流電力が受電側に伝達される。伝達された電力は、負荷32に供給され、負荷32で電力が消費または蓄積される。
送電ユニット21には端子1が設けられている。端子1は、容量1の両端のうちコイル1と反対側の一端の電圧、すなわち、送受電部への入力電圧を検出するためのものである。ここでは電圧を検出しているが、後述するように電流を検出する構成も可能である。
また受電ユニット31には端子2が設けられている。端子2は、容量2の両端子のうちコイル2と反対側の一端の電圧、すなわち送受電部の出力電圧を検出するためのものである。ここでは電圧を検出しているが、後述するように電流を検出する構成も可能である。
制御装置11は、検出部1、検出部2、演算部12を含む。検出部1は、送電ユニット21の所定箇所の電圧、具体的には端子1の電圧を検出する。検出部2は、受電ユニット31の所定箇所の電圧、具体的には端子2の電圧を検出する。演算部12は、検出部1で検出した電圧と、検出部2で検出した電圧に基づき、送電ユニット21から受電ユニット31への電力の伝送効率を推定する機能を有する。伝送効率の推定値は、送電ユニット21から受電ユニット31への電力の伝送状態を表すパラメータの1つである。
図17に演算部12の機能ブロック図を示す。演算部12は、送電情報取得部13と、受電情報取得部14と、伝送状態取得部15と、調整部16を備える。
送電情報取得部13は、送電ユニット21から所定箇所の電力と、所定箇所の電圧と、所定箇所の電流とのうちの少なくとも1つを表す送電情報を取得する。所定箇所の電圧と、所定箇所の電流は、検出部1で検出した結果を用いればよい。送電電力は検出部1での検出結果から計算して求めてもよいし、送電ユニット21に、送電ユニット21内の任意の箇所の電力そのものに関する情報を制御装置11に通知する機能を設けてもよい。
受電情報取得部14は、受電ユニット31から、所定箇所の受電電力と、所定箇所の電圧と、所定箇所の電流とのうちの少なくとも1つを表す受電情報を取得する。所定箇所の電圧と、所定箇所の電流は、検出部2で検出した結果を用いればよい。受電電力は負荷32から受信する負荷電力情報を用いてもよいし、検出部2での検出結果から計算して求めてもよい。
伝送状態取得部15は、送電情報取得部13および受電情報取得部14により取得された情報に基づき、送電ユニット21から受電ユニット31への電力伝送の状態を表すパラメータを取得する。たとえば送電ユニット21から受電ユニット31への電力伝送効率の推定値と、受電ユニット31の受電電力との2つのパラメータを取得する。電力伝送効率の推定方法は後述する。受電電力は、受電情報取得部14で取得したものをそのまま用いても良い。受電電力の代わりに、送電電力を取得する構成もありうる。
インピーダンス調整部16は、伝送状態取得部15で取得したパラメータに応じて、送電ユニット21の送電電力を調整する送電調整処理、および受電ユニット31のインピーダンスを調整するインピーダンス調整処理のいずれか一方を選択して実行することで、電力伝送を制御する。送電電力を調整する場合は、調整すべき量を設定した送電調整信号を出力し、インピーダンスを調整する場合は、調整すべき量を設定したインピーダンス調整信号を出力する。
なお、検出部1,2は、制御装置11の外側に、独立した装置として、または別の任意の装置の内部に、設けられても良い。検出部1,2と演算部12間の接続は、有線であっても、無線通信を用いた手段のどちらでも良い。例えば、検出部1と演算部12が有線で接続され、検出部2と演算部12が無線通信を介して接続されてもよく、逆に、検出部1と演算部12が無線通信、検出部2と演算部12が有線で接続されてもよい。さらに、検出部1、検出部2の両方が演算部12と無線通信で接続されてもよく、両方が演算部12と有線で接続されてもよい。
なお、図1に示した構成では、容量1を交流電源22の出力側に接続し、コイル1をグラウンド端子側に接続しているが、図2(A)に示すように、この接続順を入れ替えた構成としても良い。受電側も同様の構成としても良い。
さらに、容量1、コイル1のいずれか一方、または両方を複数に分割して接続しても良い。たとえば、容量1を2つに分割する場合、図2(B)に示すように、コイル1の両側にそれぞれ容量1a,1bが接続されてもよい。
または、コイル1を2つに分割する場合、図2(C)に示すように、容量1の両側にそれぞれコイル1a,1bが接続されてもよい。この場合、当該2つのコイル1a,1bにより受電側へ電力を伝送する。なお分割数は2に限定されず、3以上でもよい。受電側も同様の構成としても良い。
以下、端子1および端子2の電圧の検出結果から、制御装置11の演算部12が、電力伝送効率を推定する動作の一例について説明する。
容量1 とコイル1 の共振周波数、および容量2 とコイル2 の共振周波数が、交流電源から出力される電力の周波数に十分に近い場合、コイル1,2間で伝送される電力の伝送効率は次式で表される。
ここで、L2 はコイル1、コイル2 のインダクタンス、k はコイル間の結合係数、Q1、Q2 はコイル1、コイル2 のQ 値、RL は負荷の抵抗値(受電ユニットのインピーダンス値)である。ω=2πfであり、fは共振周波数である。
この伝送効率は負荷抵抗値に依存し、負荷抵抗が次式を満たすとき最大値を取る。
上式(2)を満たし、伝送効率が最大値を取る場合、端子1と端子2 の電圧は
となる。
V1 は端子1 の電圧振幅、V2 は端子2 の電圧振幅を表す。電圧振幅を表す値はrms(root mean squre) 値、ピーク値など交流電圧振幅により決まる値ならいずれでもかまわない。
上式(3)の絶対値を取るとk
2Q
1Q
2 >> 1 の場合、
となり、電圧比はほぼ、
に等しくなる。
ここで、L
1、L
2 それぞれの寄生抵抗値をR
1、R
2 とすると、(4) 式は、
となる。
はコイル1 とコイル2 の寄生抵抗の比の平方根である。つまり、端子1 と端子2 の電圧比を、コイル1 とコイル2 の寄生抵抗比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗値にどの程度近いかを判定できる。言い換えれば、端子1 と端子2 の電圧を検出することで、電力伝送効率を推定することが可能となる。関連技術では伝送効率の計算のために、送電電力と受電電力を計算する必要があったが、本実施の形態ではその必要はなく、簡易に伝送効率を推定できる。
なお、容量1、容量2 それぞれの寄生抵抗成分が、コイル1、コイル2 それぞれの寄生抵抗成分に対して無視できない程度の大きさである場合、R1 は容量1、R2 は容量2 の寄生抵抗を含んだ値としても良い。
制御装置11における演算部12で行う伝送効率推定の具体的な方法としては、種々の形態が可能である。
たとえばV1とV2の比(または差)を計算し、計算した電圧比(または差)そのものを、伝送効率を表す指標としてもよい。
また、計算した電圧比と、
との比率(または差)を計算することで、電圧比がどの程度、
に近いか(すなわち伝送効率が最適となる負荷抵抗値に近いか)が分かり、これを伝送効率としてもよい。この場合、比率が1に近いほど(または差が0に近いほど)、最適な伝送効率に近いということになる。
また、V1とV2の比(または差)が取りうる範囲を複数に分割し、分割した範囲に伝送効率の良さを表すラベルを付与する。演算部12で計算したV1とV2の比(または差)がどの範囲に属するかを特定し、特定した範囲に付与されているラベルを伝送効率としてもよい。
同様に、上記電圧比と
との比率(または差)が取りうる範囲を複数に分割し、分割した範囲に伝送効率の良さを表すラベルを付与する。演算部12で計算した、電圧比と
との比率(または差)が属する範囲を特定し、特定した範囲に付与されているラベルを伝送効率としてもよい。
上述の例では、
を基準として用いて伝送効率を推定する例を示したが、実際には、R
1、R
2、L
1、L
2などのパラメータは、様々な条件で変動しうる。例えば、抵抗値の特性が温度に対して依存性を持ちうる。また、コイルに磁性体材料を用いる場合、磁性体材料が温度依存性を持ちうる。さらに、流れる電流の大きさや印加される電圧の大きさに対してコイルや容量の特性が変化することが考えられる。
これらの影響を抑えるために、R1、R2の値を複数の条件で測定し、その結果から、伝送効率を推定するための基準とする値を決定してもよい。
または伝送効率と、V1とV2の比(または差)との関係を複数条件で測定し、基準となる値を決定してもよい。決定する方法としては、例えば、最も伝送効率が低下する条件において伝送効率が最大となるV1とV2の比(または差)を選択する方法でもよく、あるいは、複数の条件での平均的な伝送効率が最大となるように、V1とV2の比(または差)を基準として選択してもよい。
また、コイルの製造時にばらつきや経年変化が生じることもありうる。これらのばらつきを考慮し、基準となる値を決定してもよい。例えば、ばらつきの範囲において平均的に伝送効率が高くなるよう値を基準として決定してもよい。
図1に示した構成例では、端子1、2の電圧を利用して伝送効率を推定したが、図3に示すように、容量1、2にかかる電圧を用いて、伝送効率を推定しても良い。この場合、制御装置11の検出部1および検出部2は、容量1、2にかかる電圧を検出する。演算部12は、容量1,2にかかる電圧を用いて、伝送効率を推定する。なお、図3では、制御装置の図示は省略している。
本例において伝送効率は、次式のように表せる。
V
1、V
2 はそれぞれ容量1、容量2にかかる電圧である。絶対値をとり、近似すると、
となり、V
1とV
2の比は、インダクタンス比と寄生抵抗の比により決まる値となる。つまり、容量1,2の電圧比を、インダクタンス比と寄生抵抗の比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗値にどの程度近いかを判定できる。具体的な推定方法は、上述した端子1,2の電圧を用いた場合と同様にして行えばよい。
図3に示した構成例では、容量1、2の電圧を利用して伝送効率を推定したが、図4に示すように、コイル1、2にかかる電圧を用いて伝送効率を推定しても良い。この場合、制御装置11の検出部1および検出部2は、コイル1、2にかかる電圧を検出する。なお、図4では、制御装置の図示は省略している。演算部12は、コイル1,2の電圧を用いて、伝送効率を推定する。
V
1、V
2 はそれぞれコイル1、コイル2にかかる電圧である。絶対値をとり、近似すると、
となる。つまり、この場合も、V
1,V
2の比は、インダクタンス比と寄生抵抗の比により決まる値となる。つまり、コイル1,2の電圧比を、インダクタンス比と寄生抵抗の比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗にどの程度近いかを判定できる。具体的な推定方法は、上述した端子1,2の電圧を用いた場合と同様にして行えばよい。
図3および図4に示した例では、電圧を用いて伝送効率を推定したが、図5に示すように容量1、2を流れる電流を用いて、伝送効率を推定することも可能である。この場合、制御装置11の検出部1は、容量1を流れる電流を検出し、検出部2は、容量2を流れる電流を検出する。演算部12は、検出部1,2により検出された容量1、2を流れる電流の値を用いて、伝送効率を推定する。なお、図5では、制御装置の図示は省略している。
本例において、伝送効率は、次式のように表せる。
I
1、I
2 はそれぞれ容量1、容量2に流れる電流である。近似すると
となり、電流比もR
1、R
2 の比により決まる値となる。つまり、容量1,2を流れる電流の比を、R
1、R
2 の比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗にどの程度近いかを判定できる。具体的な推定方法は、上述した端子1,2の電圧を用いた場合と同様にして行えばよい。
図3〜図5に示した例ではコイル1およびコイル2 に対して、容量1および容量2 が直列に接続されている場合を示したが、図6 のようにコイル1およびコイル2 に対して容量1および容量2が並列に接続されていても良い。なお、図6では、制御装置の図示は省略している。
このとき、容量2とコイル2のLC共振回路の共振周波数が、交流電源22から出力される電力の周波数に十分に近い場合、伝送効率が最適となる抵抗値の負荷抵抗32が接続されたときの端子1と端子2の電圧の関係は、下記の(12) 式のようになる。
なお、図6 の構成において、伝送効率が最適となる容量2の値は、k
2 << 1 が成り立つ場合には、容量2とコイル2 のLC共振回路が交流電源22から出力される電力の周波数で共振するときの容量2の値とほぼ一致する。このため、ここでは容量2とコイル2のLC共振回路が、交流電源22から出力される電力の周波数で共振する場合の式についてのみ示す。
ここで、V
1、V
2 はそれぞれ端子1、端子2 の電圧である。結合係数k に対してk
2 << 1 が成り立ち、Q
1、Q
2 が同程度の大きさのとき、この両辺の絶対値をとると次のように近似できる。
つまり、V1,V2の関係は、インダクタンスの比および寄生抵抗の比を用いて近似できる。つまり、端子1 と端子2 の電圧比を、インダクタンスの比および寄生抵抗の比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗にどの程度近いかを判定できる。具体的な推定方法は、上述した端子1,2の電圧を用いた場合と同様にして行えばよい。
また、図6 の構成において、コイル1、2を流れる電流を用いて、伝送効率を推定することも可能である。
このとき、伝送効率が最大となる負荷抵抗値のときにコイルを流れる電流は、
となる。I
1、I
2 はそれぞれコイル1、コイル2 を流れる電流である。これまでと同様に、近似すると次式のようになる。
この電流比も寄生抵抗R1 とR2 の比に基づく関係式で近似できる。つまり、コイル1、コイル2 を流れる電流を、寄生抵抗R1 とR2 の比に応じて決まる所定の値と比較することで、現在接続されている負荷32の抵抗が、伝送効率が最適となる負荷抵抗にどの程度近いかを判定できる。具体的な推定方法は、前述した方法と同様にして行えばよい。
同様にして、図6に示した構成において、容量1 と容量2 を流れる電流の関係も、R1 とR2 の比に基づく関係式で近似できる。詳細な説明は、上記の説明から自明なため、省略する。
図1および図6 と異なる構成として、コイル1、およびコイル2 のいずれか一方のみに直列に容量を配置し、もう一方に並列に容量を配置しても良い。いずれの場合であっても同様に、伝送効率が最大となる抵抗値の負荷が接続された場合における送電側と受電側の電圧、または電流の関係は、インダクタンス値、および寄生抵抗値の比を用いた関係式で近似できる。
なお、数式では理想的な条件での理論式を示したが、図3~図6の構成においても、前述の通り温度や電流量などにより、寄生抵抗値の比やインダクタンス値が変動する可能性や、ばらつきが生じる可能性がある。このため、これらを考慮して、図3~図6の構成における基準値を決定してもよい。
ここまでの説明により、演算部12で、検出部1,2が検出した電圧または電流に基づき、電力効率がどの程度最大となる条件に近い状態で伝送を行っているか否かを推定可能なことを示した。
ここで示した手法は電力効率の推定方法の一例であり、効率推定方法はこの手法に限定されるものではない。例えば、図17中の送電情報取得部13が送電ユニット内の任意の個所の電力を示す情報を取得し、受電情報取部14が受電ユニット内の任意の個所の電力を取得する場合、これらの比により電力効率を導出してもよい。この場合、電力効率がどの程度最大となる条件に近いかを、数式により判断してもよい。また、最大効率を予め記憶し、記憶した値との比較により判断してもよい。コイルの結合状態が大きく変化する場合には、別途コイルの結合状態を示すパラメータを取得し、このパラメータを用いた数式により判断してもよい。また、コイルの結合状態と効率の関係予めテーブルとして記憶し、テーブルとの比較により判断してもよい。
次に、演算部12において送電調整信号および負荷調整信号の値を算出する方法について説明する。
図1に示した構成において、制御装置11の演算部12は、送電調整信号および負荷調整信号を設定し、送電調整信号は交流電源22に出力し、負荷調整信号は負荷32に出力することが可能である。これにより、電圧比、および電力の双方を調整できる。
負荷調整信号により電力を調整する方法は、例えば負荷が備える電力を消費または蓄積する装置の入力が、一定電力、一定電流、一定電圧などになるように調整する。また、受電ユニット31内の別の任意の点における電力、電圧、電流を調整してもよい。もしくは、送電ユニット21から供給される電力が一定電力、一定電流、一定電圧となるように調整してもよい。
ただし、送電調整信号および負荷調整信号の2つの調整信号を同時、もしくは非同期の任意のタイミングでそれぞれ調整しうる場合、電力、もしくは電圧比の変化がどちらの調整信号によるものかが不明であるため、適切な制御が行えない可能性がある。そこで、本実施の形態においては、制御装置11が調整信号を調整する場合には、送電調整信号および負荷調整信号のうち一方のみを選択して変更する。すなわち、受電ユニットのインピーダンスを調整するインピーダンス調整処理と、送電ユニットの送電電力を調整する送電調整処理のうちの一方のみを選択して実行する。以下、この動作について詳細に述べる。
図7に、制御装置11が送電調整信号および負荷調整信号を変更する際のフローチャートの一例を示す。
図7において、制御装置11は、まず電圧比が第1の所定の範囲内か否かを判定する(ステップS11)。換言すれば、電圧比が第1の所定の範囲の上限(閾値)および下限(閾値)をそれぞれ越えているかを判定する。なお、越えているとは、上限を上回る場合、下限を下回る場合の両方を指す。
電圧比が第1の所定の範囲内でない場合、電圧比が第1の所定の範囲に近づく方向に補正されるように、負荷調整信号を変更する(ステップS12)。すなわち、第1の所定の範囲の上限を超えている場合は、上限に近づく方向に、下限を越えている場合は下限に近づく方向に補正されるように、負荷調整信号を変更する。たとえば、電圧比V 1/V 2 が第1の所定の範囲の上限よりも大きければ、負荷抵抗値を大きくすればよく、V 1/V 2 が第1の所定の範囲の下限よりも小さい場合には、負荷抵抗値を小さくすればよい。なお、これは図1に示す構成の典型的な場合について述べており、コイルと容量の接続構成や素子値の選択、負荷の条件によっては負荷抵抗値を変更する際の増減関係は逆になりうる。
電圧比が第1の所定の範囲内である場合には、受電電力が第2の所定の範囲内か否かを判定する(ステップS13)。換言すれば、受電電力が第2の所定の範囲の上限(閾値)および下限(閾値)をそれぞれ越えているかを判定する。受電電力の値は、負荷32から入力される負荷電力情報の値を用いてもよいし、受電ユニット32の所定箇所で検出する電圧および電流から取得してもよい。
受電電力が第2の所定の範囲内でない場合には、受電電力が第2の所定の範囲に近づく方向に補正されるように、送電調整信号を調整する。すなわち、第2の所定の範囲の上限を超えている場合は上限に近づく方向に、下限を越えている場合は下限に近づく方向に補正されるように、送電調整信号を変更する。たとえば、受電電力が第2の所定の範囲の下限よりも小さければ、受電電力が大きくなるよう、第2の所定の範囲の上限よりも大きければ受電電力が小さくなるよう、送電調整信号を変更する(ステップS14)。
たとえば、送電ユニットから送電される電力を増減させるよう、交流電圧の振幅を送電調整信号により変更してもよいし、送出される電力と等価的な振幅が増減するよう交流電圧の波形を送電調整信号により変更してもよい。または、交流電圧信号が出力される時間の割合を、送電調整信号により調整してもよい。
電圧比が第1の所定の範囲内で、受電電力が第2の所定の範囲内であった場合には、何もせずに終了する。
なお、第1および第2の所定の範囲(上限閾値および下限閾値)は固定でなく、動的に変更可能でもよい。この場合、外部のマネジメントシステムまたは負荷32から、各範囲の値を演算部12に通知し、演算部12は通知された値を第1および第2の所定の範囲として用いればよい。
ここで、負荷調整信号を用いた負荷のインピーダンスの制御の一例を示す。
負荷に供給すべき電力が可変である場合には、負荷が消費または蓄積する電力を、負荷調整信号により変更してもよい。
または、図14に示すように、負荷の構成として、電力消費/蓄積装置103の前段に、AC-DC変換器101およびDC-DC変換器102が配置される場合は、DC-DC変換器102の電圧変換比を、負荷調整信号により変更してもよい。
または、図15に示すように、負荷の構成として、電力消費/蓄積装置103の前段に、可変AC-AC変換器104およびAC-DC変換器105が配置される場合は、AC-AC変換器104の変換比を、負荷調整信号により変更してもよい。
これらの負荷の制御は、あくまで一例であり、本実施形態はこれらに制限されるものではない。
図8は、図7に示した動作の後に、追加の動作を行う場合の動作フローを示す。
ステップS11〜S14は図7と同様である。
ステップS13で受電電力が第2の所定の範囲内と判定された場合、次に電圧比を第1の所定の範囲よりも狭い第3の所定の範囲と比較し(ステップS15)、第3の所定の範囲内でなければ、電圧比が第3の所定の範囲に近づく方向に補正されるように、負荷調整信号を変更する(ステップS16)。第1と第3の所定の範囲の関係は、第3の所定の範囲は、第1の所定の範囲内に包含される関係にあり、第1と第3の所定の範囲の中心値が同一であってもよい。
電圧比が第3の所定の範囲内であれば、次に受電電力を第2の所定の範囲よりも狭い第4の所定の範囲と比較し (ステップS17)、第4の所定の範囲内でなければ、受電電力が第4の所定の範囲に近づく方向に補正されるように、送電調整信号を変更する(ステップS18)。第2と第4の所定の範囲の関係は、第4の所定の範囲は、第2の所定の範囲内に包含される関係にあり、第2と第4の所定の範囲の中心値が同一であってもよい。
ステップS12とステップS16における負荷調整信号の変更の方法は同一でもよく、異なってもよい。例えば、ステップS12における変更よりもステップS16の変更において負荷調整信号を変化させる幅を小さくしてもよい。この場合、ステップS16ではより高精度な調整機能が提供される。ステップS14とステップS18における送電調整信号についても同様である。
ここで、図7および図8に示した動作において、調整信号(負荷調整信号、送電調整信号、)の変更は一定幅で増減させてもよく、所定の範囲(第1〜第4所定の範囲)からの乖離の度合いに応じて、変化幅を変えて増減させてもよい。例えば、電圧比または受電電力が、所定の範囲から一定量以上乖離している場合には、一度に変更する量を大きくすることで制御動作の速度が向上する。もしくは、変化させる量の値を、所定の範囲からの乖離の度合いに応じて、数式やテーブルの形式で記憶しておき、所定の範囲からの乖離の度合いと、当該数式またはテーブルから、変化させる量を決定してもよい。
図7および図8に示したフローの動作は、一定時間毎に行ってもよい。例えば、図7および図8に示したフローの動作の終了後、システム全体の応答時間よりも長い時間の待機を行い、次の動作を開始してもよい。もしくは、任意の点の電圧、電流、電力などを監視し、前回調整後の値から一定量以上変化した場合や、一定速度以上で変化した場合に、動作を行ってもよい。
図7に示した動作では、最初に電圧比を第1の所定の範囲と比較し、電圧比が第1の所定の範囲内のときに、受電電力を第2の所定の範囲と比較した。これにより、受電電力よりも電圧比が優先して調整される。よって、この動作は、受電電力よりも伝送効率が重要な場合に好適である。
これに対して、図9に示すように、最初に受電電力を第2の所定の範囲と比較し、受電電力が第2の所定の範囲内にない場合に、電圧比が第1の所定の範囲内にあるかを判定してもよい。この動作の場合、受電電力が優先して、第2の所定の範囲内に入るように調整される。
ここで、図1に示した構成において、負荷に供給される電力は次式で表される。
この式から分かるように、負荷に供給される電力は、負荷のインピーダンスに依存して変動する。言い換えると、負荷調整信号により、受電電力、および送電電力を調整できる。なお、送受電部におけるコイルと容量の接続構成が図1と異なる場合も同様に、負荷に依存して電力が変化することを、式により表現可能である。
また、2次電池の充電のように、負荷のインピーダンスが電力に応じて変化する性質を持つ場合、送電調整信号を変更して負荷に供給される電力を変更することでも、負荷のインピーダンスを変更できる。
これらのことから、図10の動作フローに示すように、電圧比が第1の所定の範囲内であり、受電電力が第2の所定の範囲内にない場合において(ステップS21のYES、S22のNO)、送電調整信号が設定可能な範囲の上限、または下限に達している場合は(ステップS23のYES)、負荷調整信号を変更することで受電電力を調整してもよい(ステップS25)。ただし、負荷調整信号も上限、または下限に達している場合は、何もせずに処理を終了する(ステップS24のYES)。なお、送電調整信号が設定可能な範囲の上限、または下限に達していない場合は、これまでと同様に送電調整信号を変更すればよい(ステップS23のNO、S26)。
また、負荷が電力に応じてインピーダンスが変化する性質を持つ場合において、電圧比が第1の所定の範囲内にないと判定され、負荷調整信号が上限/下限に達している場合は(ステップS21のNO、S27のYES)、送電調整信号を変更することで負荷に供給する電力を変更(すなわち負荷のインピーダンスを変更)してもよい(ステップS29)。ただし、送電調整信号も上限、または下限に達している場合は、何もせずに処理を終了する(ステップS28のYES)。なお、負荷調整信号が設定可能な範囲の上限、または下限に達していない場合は、これまでと同様に負荷調整信号を変更すればよい(ステップS27のNO、S30)。
また、図7に示した動作フローでは、電圧比が第1の所定の範囲外の場合に負荷調整信号を変更し、受電電力が第2の所定の範囲外の場合に送電調整信号を変更した。これに対し、図11に示す動作フローのように、電圧比が第1の所定の範囲外の場合に(ステップS11のNO)、送電調整信号を変更し(ステップS14)、受電電力が第2の所定の範囲外の場合に(ステップS13のNO)、負荷調整信号を変更してもよい(ステップS12)。
また、図7に示した動作フローでは、送電調整信号の変更有無を判断するに当たり、受電電力の情報を用いたが、受電電力の情報に代えて、送電電力の情報を用いてもよい。この場合の動作フローを図12に示す。電圧比が第1の所定の範囲内でないと判定された場合(ステップS11)、送電電力を第5の所定の範囲と比較し(ステップS31)、送電電力が第5の所定の範囲外であれば、送電電力が第5の所定の範囲に近づく方向に補正されるように、送電調整信号を変更する(ステップS14)。図12に示した動作を繰り返し行うことで、送電電力が第5の所定の範囲内に調整される。送電電力の情報は交流電源22から制御装置11が取得してもよいし、送電ユニット内の所定の箇所の電圧と電流の検出結果から制御装置11が計算により取得してもよい。なお、第1および第5の所定の範囲は固定でなく、動的に変更可能でもよい。この場合、外部のマネジメントシステムまたは負荷32から、設定可能な範囲を演算部12に通知し、演算部12は通知された値を第1および第5の所定の範囲として用いればよい。
なお、図11に示した例と同様の変形を、図12の動作に適用することも可能である。すなわち。送電電力が第5の所定の範囲外のときに負荷調整信号を変更し、電圧比が第1の所定の範囲外のときに、送電調整信号を変更してもよい。
図13に、図7に示した動作の開始前に、受電電力が上限値を越えていないかの判定動作を追加した場合の動作フローを示す。
受電電力が上限値を越えているかを判定し(ステップS32)、上限値を超えていれば、送電調整信号を変更する(ステップS33)。変更の方法はこれまで述べた方法を用いればよい。本フローの動作を繰り返すことで、受電電力が上限値以下になるようにする。受電電力が上限値以下になったら(ステップS32のYES)、図7に示したのと同様の動作を行う(ステップS11〜S14)。
このように、伝送効率を優先して調整(ステップS11、S12)する前に、受電電力の上限値を越えているか否かを判定することで、受電電力が上限値を超えて増大するのを防ぐことができる。これにより、過電力や過電流といった、装置の破壊や停止につながるリスクを低減できる。
ここまでは、図1に示した構成での制御装置の動作を示したが、図2〜図5に示した構成を用いた場合も同様に、送電ユニットおよび受電ユニットからそれぞれ検出した電圧または電流に基づき、送電電力制御および負荷インピーダンス制御を行えばよい。
本実施形態では、負荷32のインピーダンス値を調整することで、電圧比が所定の範囲に一致または近づけるようにする例を示したが、別の方法として、インダクタンスまたは結合係数の調整によって、これを行うことも可能である。
たとえばインダクタンスの変更として、コイル中やコイル周辺の磁性体の配置を変更(磁性体の追加・除去も含む)することが可能である。コイルは、送電ユニットおよび受電ユニットの一方または両方に含まれるコイルが対象となる。
また、結合係数の変更として、送電ユニットおよび受電ユニットのコイル間の相対位置を変更することが可能である。またはインダクタンスの変更と同様に、コイル中やコイル周辺の磁性体の配置を変更(磁性体の追加・除去も含む)することが可能である。
以上、本実施形態により、伝送効率が最適となる負荷インピーダンス値に近い値にインピーダンスを調整できる。または、接続されている負荷のインピーダンス値が、伝送効率が最適となるインピーダンス値に近い値となるよう、インダクタンスまたは結合係数を調整できる。
図16は、送電側にDC 電源71とDC-AC 変換器51を配置し、受電側にAC-DC 変換器61を配置した構成例を示す。図1の構成との違いは、図1の送電側における交流電源22がDC電源71に置き換わり、DC-AC変換器51が追加されている。また、受電側にAC-DC変換器61が追加されている。図1と同じ名称の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図16に示した構成の場合、伝送効率推定に利用する電圧または電流として、DC-AC 変換部51の入力電圧、または電流と、AC-DC変換部61の出力電圧、または電流を用いることができる。
検出部1は、DC-AC 変換部51の入力電圧、または電流を検出し、検出部2は、AC-DC変換部61の出力電圧、または電流を検出する。
演算部12は、検出部1で検出した電圧または電流と、検出部2で検出した電圧または電流を用いて、図1または図5を用いて説明したのと同様にして、伝送効率を推定する。なお、DC-AC 変換器51は例えばインバータ、AC-DC 変換器61は例えば整流器により構成できる。
図6の構成により、DC電圧またはDC電流を検出することで、より容易な実施が可能となる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。