以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、各実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味し、各実施の形態相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係る介護用着衣を介護用寝巻とした事例で、図1乃至図9を参照して説明する。
本実施の形態1においては、着衣したとき最も前側に出る上前身頃UF及び着用する人の左腕の前側を覆う左前袖FLからなる左前布10Lと、着衣したとき前側であるが、上前身頃UFの背後に重なる下前身頃DF及び着用する人の右腕の前側を覆う右前袖FRからなる右前布10Rと、着用する人の背後に位置する後身頃B及び着用する人の左腕の後側を覆う左後袖BL及び着用する人の右腕の後側を覆う右後袖BRからなり、左前布10L及び右前布10Rのシルエットラインとなる後側に位置する背布20とによって介護用寝巻1の全体の概略構成を形成している。
なお、図において、左前布10L,右前布10R、背布20について、その外面側(意匠側)を表面側fcとし、表面側fcとは反対側の内面側であって着衣する人の身体側に位置する側を裏面側bcとしている。
本実施の形態1の介護用着衣の寝巻1を構成する左右1対の左前布10Lと右前布10R、及び、それらの後側に位置する背布20は、それぞれ、例えば、ガーゼ地等の綿、絹、麻等の所定寸法の布から、身頃になる部分及び袖になる部分を一体に切断して形成される。特に、ガーゼ地等は洗濯が容易で度重なる洗濯によっても丈夫で型崩れし難く、肌への当たりや肌触りがよい。布は単一材料の使用のみでなく複合化させて使用することも可能であり、また、単一の枚数でなく折り重ね等によって複数枚(複数層)のガーゼ地等の綿で形成することもできる。
図1に示すように、所定寸法の布から、左前布10L、右前布10R及び背布20の3部位に切断され、図1乃至図3で示すように、背布20に対して左前布10L及び右前布10Rの縫付けによって介護用寝巻1の袖山・肩山となる部分を形成し、また、左右の袖の袖下及び前後の身頃の脇線が面ファスナ等の接着布31、紐32等の接続具で接続される。
例えば、介護用寝巻1が長着であれば、背布20の横幅は110cm〜140cmの範囲に設定され、その長さ(身丈)は110cm〜170cmの範囲内に設定される。
詳細には、1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から、着用する人の左腕を覆う左袖の前側を形成する左前袖FLと、着用する人の前側で胴体部を覆う前身頃を形成し着衣したとき最も前側に出る上前身頃UFとで分断することなく、両者を一体に切断して左前布10Lを形成している。つまり、本実施の形態1の左前布10Lによれば、左前袖FLと上前身頃UFを別々に切断して縫製する縫目(合わせ目)はなく、左前袖FLと上前身頃UFが1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から連続的に形成されている。
同様に、本実施の形態1の右前布10Rも、着用する人の右腕を覆う右袖の前側を形成する右前袖FRと、着用する人の前側で胴体部を覆う前身頃を形成し着衣したとき上前身頃UFの背後に一部を重ねる下前身頃DFとが1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から一体に切断されてなり、右前袖FRと下前身頃DFを別々に切断して縫製する縫目(合わせ目)がなく、右前袖FRと下前身頃DFが1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から連続的に形成されている。
本実施の形態1では、左前袖FL及び上前身頃UFからなる左前布10Lと、右前袖FR及び下前身頃DFからなる右前布10Rとは表裏を逆にした対称的な形状であり、背布20に対して縫付けられた左前布10Lの上前身頃UFと右前布10Rの下前身頃DFとは、被介護者に着衣した状態で重複させることができる寸法に形成されている。また、着衣した人の首周りに位置する襟元は、上前身頃UFと下前身頃DFの重なりにより略V字状になるように、上前身頃UFと下前身頃DFにおいて着用した人の首周りに位置する所定の端部が斜めに形成されている。
左前布10Lの上前身頃UFと右前布10Rの下前身頃DFを紐37A,72Aで接続固定した状態で、肩山から下の襟元のV字の深さ(縦幅)は、例えば、10cm〜20cmとなるように設定され、特に、20cm〜30cmであると、口や鼻に気管チューブが挿管されている患者や気管切開により気管カニューレが喉元に挿管されている患者に対する着衣でも、それらチューブやカニューレが襟元に引っ掛かることもなく、首周りに窮屈さを感じさせることがない。着衣状態で襟元から介護者の手を入れて、被介護者に処置や作業を施すのも容易である。なお、襟元の形状が略U字状となるように上前身頃UFと下前身頃DFの重なり形状を形成してもよい。
本実施の形態1の背布20についても、着用する人の左腕を覆う左袖の後側を形成する左後袖BLと、着用する人の右腕を覆う右袖の後側を形成する右後袖BRと、着用する人の背後側で胴体部を覆う後身頃Bとが、1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から一体に切断されてなる。つまり、本実施の形態1の背布20によれば、左後袖BL、右後袖BR、及び後身頃Bをそれぞれ別々に切断して縫製する縫目はなく、左後袖BL、右後袖BR、及び後身頃Bが1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から連続的に形成されている。
そして、本実施の形態1の介護用寝巻1は、着用したときに身体の脇下に位置するコーナ部分、即ち、各左右の袖下(袖の下端のライン)から身頃の左右の脇線(身頃の左右の端のライン)へと連続的に繋がる部分のシルエットラインが曲線状である点に特徴を有する。
公知の介護用寝巻は和装の裁断、仕立てであるゆえ、各左右の袖下及び脇線が真っ直ぐな直線状をなし、左右の袖下及び脇線が交わるコーナ部分では、それら直線が交わる所定の角が形成されるのに対し、本実施の形態1の介護用寝巻1では、所定の袖及び身頃を一体に裁断し、袖下と脇線の繋がりに曲率を持たせている。
即ち、左の袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64LのコーナのシルエットラインがR状に湾曲カーブし、右の袖下61R,62R及びそれに連続する脇線63R,64RのコーナのシルエットラインもR状に湾曲カーブしている。
袖下と身頃の脇線が連続する曲率の半径Rは、例えば、R=10cm〜30cmの範囲内に設定され、当該範囲内であれば、ダブつくことがなくて体裁がよく、着用する人の腕の動きを邪魔することのない寸法となる。
このように、本実施の形態1の介護用寝巻1では、袖下と脇線の繋がりに曲率を持たせていることによって、袖口65側から身頃側に向かって袖の上下幅、つまり、袖山及び袖下の間の幅であって、腕が入れられる袖の筒径が拡径している。
即ち、和装でいうところの袖丈が袖口65側から身頃側に向かって長くなっている。なお、本実施の形態1の介護用寝巻1において、手が通される袖口65の開口は、袖山から袖下までの幅に相当する。つまり、腕が入れられる袖の筒径が袖口65側から身頃側に向かって径大となっている。
身頃側からすると、裾側から袖側に向かって左右の脇線間の身幅が拡径している。図3で示すように、身頃の裾側の直線領域の脇線63L,64Lから袖山・肩山41L,41Rに向かって延長する直線状の仮想線lを引き、その仮想線lにおいて袖口65の上下幅の長さmの分だけ袖山・肩山41L,41R側から差し引いた位置を示す仮想点Pよりも下位に、袖下61L,62L及び脇線63L,64Lのシルエットラインが裾側からの直線状の仮想線lから分岐する位置を示す仮想分岐点Qが存在する。好ましくは、このときの仮想点Pと仮想分岐点Qの距離長さが5cm〜15cmの範囲内に設定されることで、ダブつくことがなくて体裁がよく、着用する人の腕の動きを邪魔することのない寸法となる。右の袖下61R,62R及び脇線63R,64Rのシルエットラインについても同様である。
仮想分岐点Qと袖山・肩山41L,41Rとの間の距離長さdは、好ましくは、25〜45mの範囲内であり、距離長さdが袖口65の上下幅の長さmの1.3倍〜2.5倍の範囲内であるのが好ましい。これにより、着用する人の脇下で袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64Lに相当する布端部との間に十分な空間が形成され、着用する人の腕の動きを邪魔することなく、かつ、空気の通り道が形成されて通気が良くなる。
つまり、従来の長着の和装の裁断、仕立てでは、身頃の袖付き部分に袖が縫製され、袖丈が袖付や袖口と同等以上の長さで一定であるのに対し、本実施の形態1では、袖と身頃が一体に裁断されてなり、袖から身頃にかけてのシルエットラインが曲線状であり、袖丈に相当する袖の上下幅が袖口65側から身頃側に向かって拡がっており、腕を通す袖の筒径が袖口65側から身頃側に向かって拡径している。
このように、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左の袖下61L,62Lと脇線63L,64Lが繋がるコーナのシルエットラインが曲線状であるから、着用したときに身体の左脇下と左の袖下61L,62L及び脇線63L,64Lのシルエットラインとの間の空間が大きく設けられ、左の腕を動かしたときでも、脇下に位置する布の袖下61L,62Lから脇線63L,64Lにかけての端部が身体に当たり難く、身体との接触頻度を少なくできる。同様に、右の袖下61R,62Rと脇線63R,64Rが繋がるコーナのシルエットラインも曲線状であるから、着用したときに身体の右脇下と右の袖下61R,62R及び脇線63R,64Rのシルエットラインとの間の空間が大きく設けられ、右の腕を動かしたときでも、脇下に位置する布の袖下61L,62Lから脇線63L,64Lにかけての端部が身体に当たり難く、身体との接触頻度を少なくできる。
なお、従来の和装では、袖全体の袖丈が一定であるから、袖付部分を広く採るには全体の袖丈を大きくしなければならず、このとき袖口側も広くなることから、捲れやすかったり、ダブついて皺ができやすかったりする不都合さが生じる。
しかし、本発明のように、左の袖下61L,62Lから脇線63L,64Lへと連続的に繋がる部分のシルエットライン、また、右の袖下61R,6RLから脇線63R,64Rへと連続的に繋がる部分のシルエットラインを曲線状に形成することで、袖口65の開口幅は上述の不都合が生じない適度な袖の上下幅(開口)寸法の設計とする一方で、着用したときに身体の脇下側、即ち、腕を動かす周辺では、上下幅(開口)寸法を広く設計し、身体の脇下と袖下から脇線のシルエットラインとの間の腕が入れられる空間を広く形成することができる。
このように、左の袖下61L,62Lから脇線63L,64Lへと連続的に繋がるコーナのシルエットラインが曲線状に形成され、左前袖FL及び左後袖BLの袖口65側から上前身頃UF及び後身頃側Bへ向かって袖の筒径が拡径していることにより、身体の脇下と袖下から脇線のシルエットラインとの間の腕が入れられる空間を広く形成することができるから、着衣した人の腕の動きでも、身体の脇下側で左前袖FL及びそれに一体的に連続する上前身頃UFの布の端部(左接続部50L)や、右前袖FR及びそれに一体的に連続する下前身頃DFの布の端部(右接続部50R)が身体に当たる接触頻度が少なく、異物感を感じさせたり皮膚を刺激したりすることが少なくなる。更に、身体の脇下の位置での広い空間により空気の通り道が形成され、通気性が向上する。
ところで、上述したように、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左前布10Lが左前袖FL及び上前身頃UFを一体に切断してなり、また、右前布10Rが右前袖FR及び下前身頃DFを一体に切断してなり、更に、背布20が左後袖BL及び右後袖BR及び後身頃Bを一体に切断してなる。そして、左前袖FLの袖下61Lから上前身頃UFの脇線63Lへと連続するシルエットラインが曲線状に形成され、左後袖BLの袖下62Lから後身頃Bの脇線64Lへと連続するシルエットラインも曲線状に形成されている。また、右前袖FRの袖下61Rから下前身頃DFの脇線63Rへと連続するシルエットラインが曲線状に形成され、右後袖BRの袖下62Rから後身頃Bの脇線64Rへと連続するシルエットラインも曲線状に形成されている。
よって、左前袖FLと上前身頃UFの境界、右前袖FRと下前身頃DFの境界、左後袖BLと右後袖BRと後身頃Bの境界はそれぞれ明確に区別できるものではなく、連続的に変化しているものである。また、左前袖FLの袖下61Lと上前身頃UFの脇線63Lの境界、右前袖FRの袖下61Rと下前身頃DFの脇線63Rの境界、左後袖BLの袖下62Lと後身頃Bの脇線64Lの境界、右後袖BRの袖下62Rと後身頃Bの脇線64Rの境界についても明確に区別できるものではなく、連続的に変化しているものである。
そして、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左後袖BL及び右後袖BR及び後身頃Bが一体に裁断されてなる背布20の上辺に対して、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lの上辺を縫付けによって繋げており、また、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rの上辺についても左前布10Lとは対称的に縫付けによって繋げている。即ち、背布20の上辺の左側が左前布10Lの上辺と縫製され左の袖山・肩山41Lが形成され、背布20の上辺の右側が右前布10Rの上辺と縫製され右の袖山・肩山41Rが形成される。このように袖山・肩山41L,41Rで背布20と右前布10R及び左前布10Lとが縫製されていることにより、袖山・肩山41Lのラインが左前布10Lと背布20の合せ目となり、袖山・肩山41Rのラインが右前布10Rと背布20の合せ目となる。なお、ここでいう袖山・肩山41L,41Rは袖及び肩の上端のことである。
即ち、本実施の形態1の介護用寝巻1は、左前袖FL及び上前身頃UFからなる左前布10Lと、背布20の後身頃B及び左後袖BL側とを縫製して縫付けてなる左縫製部40L、並びに、右前袖FR及び下前身頃DFからなる右前布10Rと背布20の後身頃B及び右後袖BR側とを縫製して縫付けてなる右縫製部40Rからなる縫製部40を有する。
このように、本実施の形態1の介護用寝巻1は、着衣した人の前側に位置する左前布10L及び右前布10Rと、着衣した人の後側に位置する背布20とを縫製部40での縫合によって一体化し、身体への着用に適する形状に形成されている。
更に、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63Lと、それに対応する背布20の左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lとは、縫製で接がれることなく、接続具としての面ファスナ等の接着布31、紐32によって、接続及び分離自在となっている。つまり、左の袖下及び脇線側に相当する左接続部50Lを接着布31,紐32で接続し、その接続を解くことにより左接続部50Lが開かれる。
また、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及び下前身頃DFの脇線63Rと、それに対応する背布20の右後袖BRの袖下62R及び後身頃Bの脇線64Rとも、縫製で接がれることなく、接続具としての面ファスナ等の接着布31、紐32によって、接続及び分離自在となっている。つまり、右の袖下及び脇線側に相当する右接続部50Rを接着布31,紐32で接続し、その接続を解くことにより右接続部50Rが開かれる。
これら接着布31、紐32等の接続具の接続は、左接続部50Lや右接続部50Rを構成する。
即ち、本実施の形態1の介護用寝巻1は、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lとを、接続具としての面ファスナ等の接着布31、紐32によって接続自在とする左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及び下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及び後身頃Bの脇線64Rとを、接続具としての面ファスナ等の接着布31、紐32によって接続自在とする右接続部50Rからなる脇接続部を有する。
なお、図1乃至図6において、左袖の前側を形成する左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63L、並びに、左袖の後側を形成する左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lを接着布31,紐32で接続自在とする左接続部50Lと、右袖の前側を形成する右前袖FRの袖下61R及び下前身頃DFの脇線63R、並びに、右袖の後側を形成する右後袖BRの袖下62R及び後身頃Bの脇線64Rを接着布31,紐32で接続自在とする右接続部50Rとは、左接続部50Lと右接続部50Rが中央で線対称となり、基本的に構成を同一にしている。
そして、脇接続部を構成しているこれら左接続部50L、右接続部50Rは本来の縫製部分を縫製することなく接続している接着布31,紐32の配設個所である。
ここで、本実施の形態1において、脇接続部を構成している左接続部50L、右接続部50Rに配設する接続具は、面ファスナ等の接着布31及び紐32を用いている。
左右の袖下61L,62L,61R,62R側では、接続具として面ファスナ等の接着布31が使用され、左右の脇線63R,64R,63L,64L側では、接続具として面ファスナ等の接着布31及び紐32が併用されている。
特に、本実施の形態1では、着衣する人の前側を閉じ上前身頃UFと下前身頃DFの開きを防止する固定具として紐72Aを使用し、上前身頃UFの脇線63R側とは反対側の端部に設けた固定具としての紐72Aと対応する位置には、右接続部50Rの接続具として紐32A(以下、紐72Aと対応させる場合には裾側の紐と区別するため32Aとする)を使用することで、接続具としての紐32Aに固定具としての機能も持たせている。即ち、右接続部50Rに接続具として設けた1対の紐32Aは紐72Aとの接続も可能とし、1対の紐32Aと紐72Aをまとめて結ぶことにより、下前身頃DFの脇線63R側と後身頃Bの脇線64R側とを接続し右接続部50Rの一部を閉じると同時に、上前身頃UFと下前身頃DFの位置を固定し前身頃側を閉じる。
なお、本実施の形態1では、固定具としての紐72Aは脇線63R,63Lとは反対側で上前身頃UFの端部と下前身頃DFの端部の両方に所定位置に設けられ、下前身頃DF側でも、上前身頃UFの脇線63Lと後身頃Bの脇線64Lを接続する接続具としての紐32Aと接続自在となっている。上前身頃UFの脇線63Lと後身頃Bの脇線64Lとで接着布31,紐32が配置する間隔は両者が結合することなく開口するから、紐32Aの前後の開口から下前身頃DFの紐72Aを通して、脇線63L,64Lの外側で1対の紐32Aと紐72Aを接続してもよいし、或いは、紐32Aの前後の開口に紐32Aを通して、脇線63L,64Lの内側で紐32Aと1対の紐72Aを接続してもよい。着用する人の容態等に応じて選択できる。そして、下前身頃DF側と上前身頃UF側の両方で紐72Aと1対の紐32Aの接続固定できるから、着衣した人の前側を開け難くできる。更に、着用する人の容態、患部の位置、着用する人に接続している器具の位置等によっては、下前身頃DF側を上に、上前身頃UFを下にして着用し、前側が開けないように固定することも可能である。更に、被介護者の容態、介護処置等の状況によっては下前身頃DFの紐72A及び上前身頃UFの紐72Aの結びにより固定し着用することもできる。この場合には、上前身頃UFと下前身頃DFによる襟元のV字が深く形成される。
また、本発明を実施する場合には、上前身頃UFや下前身頃DFの端部の長さ方向において所定間隔で固定具としての紐72Aを複数個設け、それに対応する紐を脇線側に複数設けてもよい。
ここでは、上前身頃UFと下前身頃DFの接続固定は、紐32A,72Aによるものの説明をしたが、本発明を実施する場合には、上前身頃UFと下前身頃DFの接続固定の手段は紐に限定されることなく、上前身頃UFと下前身頃DFの縁部にマジックテープ(登録商標)等の面ファスナからなる接着布や、スナップボタン、ボタンとボタン穴等を設け、それらで身頃の前側が開かないように接続固定してもよい。或いは、帯紐を締めて固定してもよい。
そして、接着布31と紐32のように異種の接続具を併用すると、間違いのない接続、即ち、掛け違いの防止にも有効である。また、接続具として紐32による接続は、接着布31を接続する前に概略の身だしなみを整えることに使用するのにも好適である。接着布31は接続具として接続の着脱が容易にできるが、身体の動きにより接続が解除されやすいこともある。そこで、例えば、裾付近に配設する接続具には紐32を選択することで、強固な紐32の結び方により、着用時に足の動きにより脇線63R,64R,63L,64L側で上前身頃UF及び下前身頃DFと後身頃Bとが裾側から開かれて捲れてしまうのを防止できる。また、このような捲れが防止されると床擦れを誘発する皺の発生も防止できる。
接着布31,紐32の個数、配置間隔は任意に設定できる。例えば、左接続部50Lまたは右接続部50Rの全長に対し、5cm〜20cmの間隔で5個〜15個の接続具の配設とすることができる。なお、左接続部50Lまたは右接続部50Rにおいて、脇線側及び袖下側を接続する接着布31,紐32の列状の配置間隔の間、即ち、脇線側及び袖下側で所定間隔で配置され隣接する接着布31,紐32間は、右前布10R及び左前布10Lと背布20との非結合部分であって開口可能な開放区間53である。
特に、図1乃至図6において、接着布31,紐32の配設は、着用したときに身体の脇下に位置するコーナ部分が除かれ、汗のかきやすい脇下では袖の上下幅を広く設けて、接着布31,紐32を配設しないことによって、袖下から脇線にかけて対向する右前布10R及び左前布10Lと背布20との間に開放区間53を設けている。このように汗のかきやすい脇下に位置するコーナ部分に開放区間53が位置すると、汗等の水分の放散性が良くなり、通気がよくなる。また、脇下に開放区間53があると、そこに介護者の手を入れて、着衣した被介護者に処置、例えば、体温計の挿入等を施すことができ利便性が高い。
接続具は、図7(a)に示すように、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナ等からなる接着布31であれば、左前布10Lや右前布10Rの裏面(内面)の端部(袖下側や脇線側)に接着布31の雄側31aまたは雌側31bの一方を配設し、背布20の裏面(内面)の端部(袖下側や脇線側)に接着布31の他方の雌側31bまたは雄側31aを配設し、両者を接続するか、その接続を解除するものである。面ファスナ等の接着布31を使用すると、接続及び分離の操作が極めて容易であり、更にボタンや紐等よりも面で長い間隔を接合できる利点がある。即ち、接着布31の任意の長さの面により、例えば、身体の大きさや患部の位置、容態に応じて、接続箇所の選択が可能となり、身体の動きを妨げたり患部に違和感を生じさせたりすることのない快適な着用を可能とする。
なお、面ファスナ等の接着布31は洗濯等により糸屑が接着機構部分に絡み付き、接着力が低下する可能性があるので、洗濯時には、洗濯用の接着布を接合し、糸屑が巻き付かないようにするか、雌側31b及び雄側31aの接続状態とするのが望ましい。接着布31が疲れてきた場合でも、新製品と取り換えることが容易である。接着布31は、例えば、四角形状、円形状等のものが使用できるが、角部を面取りしたものや、円形状等の外周が曲線状のものであると、角があるものと比して、肌に当たったときでも不快感が少ない。
図7(b)に示すように、紐32による接続であれば、左前布10Lや右前布10Rの表面または裏面の端部(袖下側や脇線側)に対となる紐32の一方の紐32aを取付け、背布20の表面または裏面の端部に他方の紐32bを取付け、両者を結ぶか、その結びを解くものである。紐32の結び方により任意の強度で接続できる。また、左接続部50L、右接続部50Rにおいて所望の密度で接続できる。図7(b)では、1対の紐32を縫付けによって、左前布10L、右前布10R、背布20に取付けているが、左前布10Lや右前布10Rと背布20とに紐32を通す穴を形成し、その穴に紐32を通して結ぶことにより、取付けてもよい。
ここで、接続具として接着布31や紐32の使用について説明してきたが、本発明を実施する場合には、容易に着脱可能で、所定の接合強度を確保できれば、接着布31や紐32以外でも、例えば、1対のスナップボタン、ボタンとボタン穴等の接続手段を用いてもよく、1種の接続具で統一してもよいし、異種の接続具を併用してもよい。
例えば、図8(a)に示すように、スナップボタン33を使用し、左前布10Lや右前布10Rの裏面(内面)の端部(袖下側や脇線側)にスナップボタンの凸部33aまたは凹部33bの一方を配設し、背布20の裏面(内面)の端部(袖下側や脇線側)にスナップボタンの他方の凹部33bまたは凸部33aを配設し、両者を接続するか、その接続を解除するものとしてもよい。
また、図8(b)に示すように、4つ穴のボタン34b、即ち、貝ボタン、樹脂ボタン等とそれに対応する穴篝34aの組み合わせであってもよい。図8(b)では、穴篝34aを左前布10Lや右前布10Rの端部(袖下側や脇線側)に配設し、背布20の裏面(内面)の端部(袖下側や脇線側)にボタン34bを配設し、両者を接続するか、その接続を解除するものである。ボタン穴篝34aとして横長の穴としているが、これを縦長の篝穴としてもよい。
このように、脇接続部を構成する左接続部50Lや右接続部50Rによる接続が、接着布31、紐32、ボタン33,34であると、線ファスナのような異物感が少ない。即ち、これらの接続具では曲げにも応答できるから身体の一部を動かしたときでも違和感を感じ難い。
なお、図7及び図8において、左前布10Lや右前布10Rの端部と背布20の端部とは平行に合わせるように接着布31や紐32、ボタン33,34等の接続具を配設しているが、本発明を実施する場合には、図9に示すように接続具を環状を描くように接続してもよい。
即ち、図9(a)に示すように、背布20側に配設する接続具(図9においては接着布31)を、袖下側や脇線側の端部に布地を突設した突設部31cに配設し、このとき接着布31の雄側31aまたは雌側31bの一方を背布20の裏面(bc)側(内面側)とし、接着布31の他方の雌側31bまたは雄側31aを左前布10Lや右前布10Rの表面(fc)側(外面側)に配設する。これにより、突設部31cが環状を描くようにして接着布31を接続させることができ、接合状態で接着布31の接合面が左前布10Lや右前布10Rの表面(fc)側(外面側)に位置するから、着衣した被介護者の動きによっても、接着布31の接合面が身体に当たることなく違和感がない。
また、図9(b)に示すように、左前布10Lや右前布10Rよりも、背布20の幅を大きく形成し、接着布31の雄側31aまたは雌側31bの一方を背布20の裏面(bc)側(内面側)とし、接着布31の他方の雌側31bまたは雄側31aを左前布10Lや右前布10Rの表面(fc)側(外面側)に配設する。そして、左前布10Lや右前布10Rの端部に対し、背布20の端部を包むようにして接着布31を合わせてもよい。接合状態で接着布31の接合面が左前布10Lや右前布10Rの表面(fc)側(外面側)に位置するから、被介護者の動きによっても、接着布31の接合面が身体に当たることなく違和感がない。更に、保温性が高まり、冬場に好適である。
なお、左接続部50Lや右接続部50Rでの列状の接続において、接続具の掛け違いを防止するために、異種の接続具を隣接させることも有効であるが、例えば、対となって接続する双方にアルファベット、数字、文字、ワンポイントマーク、絵等の同一の番号、記号、符号または色等を付し、隣接する接続具とはアルファベット、数字、文字、ワンポイントマーク、絵等の番号、記号または色等を異にすることにより区別しても良い。接続具の色、または、接続具を構成する糸や布に縫製する糸の色を相違させることによって区別してもよいし、接続具の形状や構成により区別してもよい。特に、アルファベット、数字であれば、接続具の数が端の接着具をみるだけで明確になる。また、途中から接続させても、残りの数が推定できる。
例えば、図8(b)に示すように、接続具34の対となる双方で同一のものを付与した記号73,74は、テープ状の織物75にアルファベット、数字、文字、ワンポイントマーク、絵等を織り込み、右接続部50Rや左接続部50Lの長さで繰り返し表されるものを作成しておき、そのアルファベット、数字、文字、ワンポイントマーク、絵等に順列が明確なものを使用する。テープ状の織物75としたものは、左前布10Lや右前布10Rや背布20の端部に平行して縫付けるものであり端部を補強する機能、接続具の配設の補強としても機能する。記号73,74は、テープ状の織物75に限定されず、端部のパイピングとして機能する後述のバイアステープ等のパイピング布81に付しても良いし、直接、布に刺繍やステッチを施すことにより付しても良い。テープ状の織物75を1ポイント毎の文字、図形、符号等としてもよい。
このように接続具の対となる双方に同一番号、記号、符号等を付与することにより、対となる接続具の位置を特定して、ボタン、接着布、紐等の接続具の正規の対応する接続の掛け間違いを防止し、左前布10Lや右前布10Rと背布20との関係に誤りが生じないようにできる。
ところで、図1に示すように、本実施の形態1では、左前布10Lが左前袖FL及び上前身頃UFを一体に裁断してなるものであり、また、右前布10Rが右前袖FR及び下前身頃DFを一体に裁断してなるものであり、更に、背布20が左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとを一体に裁断してなるものである。通常、生地は切断するとその端部からほつれやすくなるので、その解れを防止して強度を高め、意匠性を向上させるために、パイピング処理、見返し縫い、袋縫い、折り伏せ縫い、割り伏せ縫い、本返し縫い等で生地の端部が処理される。
本実施の形態1においては、左前布10L、右前布10R及び背布20の袖口65側の端部や、着衣する人の首の周囲に位置する襟側から裾側にかけて連続する左前布10L及び右前布10Rの脇線側とは反対側の端部や、左前布10L、右前布10R及び背布20の袖下及び脇線の端部や、裾下の端部で、パイピング布81により端部を包むパイピング処理が施されており、端部を見栄えの良い処理とし、外形を整え補強する。また、端部の強度を高め、布を捲れ難くしている。パイピング処理は、例えば、細長い生地からなるパイピング布81を二つ折りにし、生地の端面を包むように生地の端面に沿って縫付けることにより行われる。
パイピング布81の材料は、公知のバイアステープ等を使用しても良いが、例えば、所定寸法の生地から左前布10L、右前布10R及び背布20を裁断したときの余剰部からバイアステープ状に作製することもできる。この場合には全体の生地の統一感が得られ、左前布10L、右前布10R及び背布20に使用する肌触りの良い生地との一体感を持たせることができる。また。生地を有効に利用できることで低コストで済む。一方、左前布10L、右前布10R及び背布20の生地とは、柄、素材、色等が相違するパイピング布81を用いて装飾的効果を増大させることもできる。
特に、本実施の形態1において、左前布10L、右前布10R及び背布20の袖下から脇線へと連続するシルエットラインのコーナ部分が曲線状に形成され、角を持たないから、パイピング処理等によって端部を処理する場合でもパイピング布81の切込み、重ねを必要とすることなく縫製が容易である。そして、端部を処理するパイピング布81の重ねによる段差を必要とすることなくパイピング布81の包み込みが可能であり、身体への当たりが少ない端部の処理が可能である。また、袖下及びそれに連続する脇線のカーブに角が存在しないことで、集中的な負荷が少ないからパイピング布81が薄くても、或いは、補強しなくても裂け難く、耐久性が高い。しかし、本発明を実施する場合には、端部の処理は、見返し縫い等の手法を用いてもよい。見返し縫いであれば、切込みによって脇線接続部のカーブ形状でも、引きつりや寄りのない仕上がりを可能とし、身体への当たりが少ない端部の処理が可能である。接続部を取付ける部位の補強にも有効である。パイピング布81との併用としてもよい。
なお、幅の広い襟芯を入れて和装でいう衿を縫製することも可能であるが、図2乃至図6において、襟元をパイピング布81でまとめたのみであると、着衣した人が寝具の上に寝ころんでいるときに、襟元が引張られ難く、皮膚への刺激、違和感も少ない。
こうして、本実施の形態1の介護用着衣としての介護用寝巻1は、左後袖BL及び右後袖BR及び後身頃Bが一体に裁断されてなる背布20に対して、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lと、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rとが縫製されて袖山・肩山41L,41Rを形成し、袖山・肩山41Lで背布20と左前布10Lとが縫製されてなる右縫製部40R、及び、袖山・肩山41RLと対称的な位置の袖山・肩山41Rで背布20と右前布10Rとが縫製されてなる左縫製部40Lからなる縫製部40を有する。
そして、左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63Lと、左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lとの左接続部50Lを接続具としての接着布31及び紐32で接続し、また、それらの接続を解除できるようになっている。同様に、右前袖FRの袖下61R及び下前身頃DFの脇線63Rと、右後袖BRの袖下62R及び後身頃Bの脇線64Rも、接続具としての接着布31及び紐32で接続し、また、それらの接続を解除できるようになっている。
したがって、左袖の袖下61L,62L及びそれに連続する上前身頃UFと後身頃Bの脇線63L,64Lは、接続具としての接着布31、紐32によって、左接続部50Lで開閉自在である。
つまり、袖山・肩山41Lで繋がっている左前袖FLと左後袖BLは、それらの袖下61L,62Lで、袖側の左接続部50Lを接続具としての接着布31で接合すると筒状に接続され、接着布31の接合を解くことで、袖下61L,62Lで左前袖FLと左後袖BLが分かれて逆U字状に下端が開放される。
また、左前袖FLに連続する上前身頃UFと左後袖BLに連続する後身頃Bも、それらの脇線63L,64Lで、身頃側の左接続部50Lを接続具としての接着布31、紐32で接続され、接着布31、紐32の接続を解くことで、脇線63L,64Lで上前身頃UFと後身頃Bが分かれて身頃の左側端部が開放される。
同様に、右袖の袖下61R,62R及びそれに連続する下前身頃DFと後身頃Bの脇線63R,64Rについても、接続具としての接着布31、紐32によって、右接続部50Rで開閉自在である。
つまり、袖山・肩山41Rで繋がっている右前袖FRと右後袖BRは、それらの袖下61R,62Rで、袖側の右接続部50Rを接続具としての接着布31で接合すると筒状に接続され、接着布31の接合を解くことで、袖下61R,62Rで右前袖FRと右後袖BRが分かれて逆U字状に下端が開放される。
また、右前袖FRに連続する下前身頃DFと右後袖BRに連続する後身頃Bも、それらの脇線63R,64Rで、身頃側の右接続部50Rを接続具としての接着布31、紐32で接続され、接着布31、紐32の接続を解くことで、脇線63R,64Rで下前身頃DFと後身頃Bが分かれて身頃の右側端部が開放される。
そして、本実施の形態1の介護用寝巻1は、左前袖FL及び上前身頃UFを一体に裁断してなる左前布10Lが袖山・肩山41Lで縫製により背布20に繋がれ、一方で、右前袖FR及び下前身頃DFを一体に裁断してなる右前布10Rも袖山・肩山41Rで縫製により背布20に繋がれ、着衣する人の前側で下前身頃DFに上前身頃UFが重ねられて、紐72Aと紐32Aの接続により着用され、脱衣時は紐72Aと紐32Aの接続を解くことにより着衣する人の前側で下前身頃DFと上前身頃UFが離れて開かれる前開きである。勿論、男女のどちらにも共用である。
次に、本実施の形態1の介護用寝巻1の使用について、図2乃至図6を用いて説明する。
本実施の形態1の介護用寝巻1は、通常の寝巻と同様、折り畳んで移動される。なお、ここで説明する着脱手順は一例であり、被介護者の状態、身体の自由がどれだけ利くかによっても違いがあり、介護者の慣れ、やり易さ等でも違いがでることがある。
被介護者が着用する場合は、例えば、寝具の上に、介護用寝巻1を拡げ、左の袖下61L,62L側及び脇線63L,64L側から、左前布10Lと背布20の間を開いて離す。また、右の袖下61R,62R側及び脇線63R,64R側から、右前布10Rと背布20の間を開いて離す。左の袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64Lが接着布31,紐32で接続されている場合には、袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64Lを接着布31,紐32で接続した左接続部50Lの接続を解き、左前布10Lと背布20を離す。同様に、右の袖下61R,62R及びそれに連続する脇線63R,64Rを接着布31,紐32で接続した右接続部50Rの接続を解き、右前布10Rと背布20を離す。
そして、図4及び図5で示すように、裾側から袖口65側までの袖下61L,62L,61R,62R側及び脇線63L,64L、63R,64R側で背布20から離した左前布10L及び右前布10Rを袖山・肩山41R,41Lよりも上に挙げる。
なお、実際の介護の現場では、図6に示すように、袖下61L,62L,61R,62R側及び脇線63L,64L、63R,64R側から背布20と分離した左前布10L及び右前布10Rを袖山・肩山41R,41Lよりも上に挙げ、それを折り畳み、左前布10Lからなる左折り畳み部L10及び右前布10Rからなる右折り畳み部R10を形成し、場所をとらない仕様とされる。即ち、左前布10L及び右前布10Rを折り畳み袖山・肩山41R,41L側に置いておく。勿論、巻き込んで形成してもよい。
こうして、上前身頃UFの裾から左前袖FLの袖口65まで連続して左接続部50Lを開くことができ、左前布10Lを上に拡げることができる。また、下前身頃DFの裾から右前袖FRの袖口65まで連続して右接続部50Rを開くことができ、右前布10Rを上に拡げることができる。背布20は何れからも引張られないから展開した状態を維持できる。
そこで、背布20の上に被介護者を平面視で十の字になるように寝かせる。被介護者を寝かせた状態で、背布20と袖山・肩山41R,41Lで繋がれており上に挙げていた左前布10L及び右前布10Rをそれぞれ下ろし、左前布10Lの左前袖FLを被介護者の左腕に被せ、また、左前布10Lの上前身頃UFを被介護者の身体の左前側に被せ、着せ掛ける。同様に、右前布10Rの右前袖FRを被介護者の右腕に被せ、また、右前布10Rの下前身頃DFを被介護者の身体の右前側に被せ、着せ掛ける。
即ち、左前袖FLと左後袖BLが袖下61L,62Lで分かれて逆U字状に開くから、その間に被介護者の左腕を入れ、そして、左前布10Lの上前身頃UFを被介護者の身体の左前側に被せて着せ掛ける。右前袖FRと右後袖BRが袖下61R,62Rで分かれて逆U字状に開くから、その間に被介護者の右腕を入れ、そして、右前布10Rの下前身頃DFを被介護者の身体の右前側に被せて着せ掛ける。
そして、この状態で、左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63Lと、左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lを接着布31、紐32で接続し、左接続部50Lの接着布31、紐32の接続具を接続状態とする。
同様に、右前袖FRの袖下61R及び下前身頃DFの脇線63Rと、右後袖BRの袖下62R及び後身頃Bの脇線64Rを接着布31、紐32で接続し、右接続部50Rの接着布31、紐32の接続具を接続状態とする。
接続具は、先に紐32の接続により概略の身だしなみを整え、次いで接着布31の接続をすることにより、被介護者の体型に沿って着衣を整え易く、皺が入り難く着崩れし難い着衣の整えが容易となる。
喩え、このときカテーテル等の医療用チューブや心電図の電極へと繋がる線が何本か身体に入っていても、チューブや線が通過する部位の前後の接着布31,紐32を固定接続し、左接続部50L及び右接続部50Rの他の接着布31,紐32を接続状態とし、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを脇線及び袖下で一体に接続できる。つまり、脇線及び袖下側で列状に配設する接着布31,紐32間の開放区間53でチューブや線を通過させることができるから、チューブ等が寝巻1の中で絡まったり引っ掛かったりする恐れがなく、チューブ等を無理に曲げる必要なく寝巻1の外に出すことができる。チューブの絡まり等による違和感、不快感を与える恐れもない。このとき、チューブ等の位置によっては所定の接着布31,紐32を固定動作しないこともできる。
そして、上前身頃UFと下前身頃DFを前合わせし、紐32Aと紐72Aの結びによって、上前身頃UFと下前身頃DFが開かれるのを防止する。被介護者の体のラインに合わせた接着布31,紐32の接続を確認し、再度、医療用チューブの通過位置を確認し、寝巻1全体の着せ掛けを完了する。この後、被介護者が好みの体形で寝ればよい。
特に、本実施の形態1の介護用着衣1によれば、縫製部40で左前布10L及び右前布10Rと背布20が縫製されて繋がれているから、被介護者の位置決め及び着衣の位置決めが簡単であり、両手が不都合な被介護者であっても、自分が着衣を身につけるのに協力できるという満足感が得られる。そして、接着布31、紐32等による接続具を用いれば必要な密度で固定できる。また、左接続部50Lまたは右接続部50Rの接続具を二人で留める場合でも、相手方の接続具の数をカウントする必要がない。
なお、背布20の上に被介護者を寝かせた状態とするのに、被介護者の左側または右側から着衣の寝巻1を被介護者の身体の下側に潜らせ寝具の上を摺動させることによって、被介護者を背布20の後身頃Bの上に配置させることができる。したがって、仰向けに寝た姿勢の状態のままで、自然体で着衣を着せることができる。
また、着衣を脱ぐ場合には、紐32Aと紐72Aの結びを解き、そして、左接続部50L及び右接続部50Rの接着布31、紐32の接続具を外し、上前身頃UFの下方(裾側)から折り畳み、上前身頃UFを左前袖FLとまとめて(折り畳んで)、また、下前身頃DFの下方(裾側)から折り畳み、下前身頃DFを右前袖FRとまとめて(折り畳んで)、被介護者の体を若干浮き上げ着衣を下方向で抜き取る。このとき、背面の合わせ目が少ないから寝具との接触抵抗も少ない。したがって、大きな力を出さなくても、被介護者の体を横に向けなくて被介護者下から容易に着衣を抜き取ることができる。
被介護者の容態や介護者等によっては介護者が被介護者の寝巻1の着脱を行う手順について、上述の態様に限定されない。例えば、寝具の上に介護者を寝かせたままで介護者の左側から着替えを行う場合、着用している寝巻1の紐32Aと紐72Aの結びを解いて、前身頃側を開放し、また、左接続部50Lの接着布31,紐32の接続を解いて、左前布10L及び背布20の左側を脱がせる。そして、着替えを行う清潔な寝巻1について、左接続部50Lの接着布31,紐32の接続を解いて開放状態とした左前布10Lと背布20の左側を介護者の左側に配置し、左前布10Lを背布20の上に挙げておき、背布20の左後袖BLを被介護者の左腕の下に潜らせて寝具の上を摺動させることで被介護者の左腕の後側に左後袖BLがくるように配置するようにする。
この状態で、背布20と袖山・肩山41R,41Lで繋がれており上に挙げていた左前布10Lを下ろし、左前布10Lの左前袖FLを被介護者の左腕に被せ、そして、左前袖FLの袖下61L及び上前身頃UFの脇線63Lと、左後袖BLの袖下62L及び後身頃Bの脇線64Lを接着布31、紐32で接続し、左接続部50Lの接着布31、紐32の接続具を接続状態とする。
次に、被介護者を右側に横向きにし、左側で脱いだ寝巻1を介護者側の背中側に押し込むようにする。このとき、新しく左側から着せた左前布10Lの上前身頃UFを被介護者の身体の左前側に被せ、寝巻1の背布20側を被介護者の背面側に着せ掛ける。また、新しく着せる寝巻1の右側は、右接続部50Rの接着布31,紐32を接続状態としておく。そして、今度は、被介護者を反対側(左側)に横向きにし、右側を脱がせる方の寝巻1の右接続部50Lの接着布31,紐32の接続を解いて、右前布10R及び背布20の右側を脱がせ、被介護者の右側から抜き取る。更に、新しく着せる寝巻1の接続状態にある右接続部50Rの接着布31,紐32の接続を解いて右前布10Rを開放し、逆U字状に開かれた右前袖FRと右後袖BRとの間に右腕をいれ、そして、右前布10Rの下前身頃DFを被介護者の身体の右前側に被せ、着せ掛ける。そして、被介護者を仰向けにし、上前身頃UFと下前身頃DFを前合わせし、紐32Aと紐72Aを結ぶ。被介護者の体のラインに合わせた接着布31,紐32の接続を確認し、再度、医療用チューブの通過位置を確認し、寝巻1全体の着せ掛けを完了する。
なお、着脱の順序は左と右が逆であってもよい。
こうして、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、左前布10L及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61L,62L及び脇線63L,64Lの左接続部50Lの接続を解くことで、また、右前布10R及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61R,62R及び脇線63R,64Rの右接続部50Rの接続を解くことで、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを分離できるため、身体が不自由な人、寝たきりの人であっても、特に、腕の自由が利かない人、上体の安静が必要な人であっても、腕を袖に通す動作をすることなく、腕を包むように左前袖FL及び左後袖BL、右前袖FR及び右後袖BRを被せることができる。そして、袖下61L,62L、61R,62Rで接続することで、腕を殆ど動かさなくても腕に袖部分を着せ、更に、脇下63L,64L、63R,64Rで接続して胴体部分に身頃部分を着せることができる。よって、被介護者に無理な体勢、負担を強いることなく、また、介護者の負担も少なく、容易に着せることができる。
また、着衣を脱ぐ際、袖から腕を引き抜く動作をしなくとも、左前布10L及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61L,62L及び脇線63L,64Lの左接続部50Lの接続を解くことで、また、右前布10R及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61R,62R及び脇線63R,64Rの右接続部50Rの接続を解くことで、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを分離して脱がせることができる。よって、被介護者に無理な体勢、負担を強いることなく、また、介護者の負担も少なく、容易に脱がせることができる。
そして、左接続部50L及び右接続部50Rの接着布31,紐32の配置間隔によって必要な密度で左前布10L及び右前布10Rと背布20とを固定できる。カテーテル等が挿管された状態の患者であっても、カテーテル等の挿管位置に拘わらず、接着布31,紐32の間隔の開放区間53でカテーテル等を引き出すことができるから、着衣を容易に着脱できる。このように、カテーテル等の医療用チューブが何本身体に入っていても、この介護用着衣1を着るのに接着布31,紐32の間隔が広く、支障になるものがないため、手術等の患者に対しても、挿管状態を維持しつつ、着衣を素早く着せることができる。よって、肌の露出を少なくして肌寒さを解消できる。また、患者が快適な状態で治療を受けることができる。勿論、接着布31,紐32の所定の位置の接続を解除して、そこでカテーテル等を通過させてもよい。更に、接着布31,紐32の所定の位置の接続を解除するのみで、身体の所望の部位を露出できるから、容易に治療、処置、必要な介護等を受けることもできる。特に、接着布31、紐32、スナップボタン33、ボタン34bとボタン穴篝34a等の接続具であれば、所定間隔の配置によって所望の位置のみ開放区間53とし、身体の所望の部位のみの露出を可能とする。したがって、肌を必要以上に露出することの抵抗感を少なくでき、患者の身体が冷えるのを防止できる。
このように、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、左前布10L、右前布10R、及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61L,62L、61R,62R及び脇線63L,64L、63R,64Rの左接続部50L及び右接続部50Rからなる脇接続部で接着布31,紐32によって接続自在であるから、袖に腕を通す動作や袖から腕を引き抜く動作、また、頭部側から着衣を被せる動作をしなくとも、そして、介護者が寝た姿勢の状態でも、着衣の着脱を容易にでき、被介護者及び介護者の着替えの負担を軽減できる。
したがって、寝たきりの患者、老人、左右の腕の動作が自信持てない身体障害者等の被介護者の着衣として好適に使用できる。
また、本実施の形態1の介護用寝巻1は、脚の膝以下まで丈のある長着であるから、ズボン等の下衣を着脱させる手間もなく、オムツ交換等の排泄介助も容易にできる。特に、上前身頃UF及び下前身頃DFの位置を固定する紐32Aと紐72Aの結びを解いて前身頃側を開かなくても左接続部50L及び右接続部50Rの接着布31,紐32の一部の接続を外すのみで、裾側から上前身頃UF及び下前身頃DFを捲り上げて、必要以上に肌を露出させることなく、オムツ交換等の排泄介助も可能である。
更に、袖下61L,62L、61R,62Rの接続を外すのみで、左前袖FL及び左後袖BLが分離し、また、右前袖FR及び右後袖BRが分離するから、例えば、注射、検査等の際でも上腕部のみを露出させやすい。
本実施の形態1の介護用寝巻1は、長着とする和装品としてそのサイズを設定でき、接着布31、紐32等の接続具の位置に体重がかかることがないので異物感がない。
特に、接続具としての接着布31や紐32は接続が容易であり、その接続も、袖下61L,62L、61R,62R及びそれに連続する脇線63L,64L、63R,64Rの左接続部50L及び右接続部50Rからなる脇接続部の接続であるから、被介護者の体勢や向きを変える必要なく、接続操作が容易にできる。
接続具としての接着布31、紐32は、裾側から袖口65側までの袖下61L,62L、61R,62R及びそれに連続する脇線63L,64L、63R,64Rの全長に亘る左接続部50L及び右接続部50Rにおいて所定間隔で配置できる。したがって、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左接続部50L及び右接続部50Rにおける接着布31,紐32の間隔で規定される左前布10L及び右前布10Rと背布20の非結合部位の開放区間53を有する。よって、カテーテル等の医療用チューブが何本か身体に入っていても開放区間53にチューブを通過させることができる。また、着衣状態で開放区間53から被介護者等の手を入れて、介護者に処置を施すことができ便利である。更に、開放区間53で空気の出入りを許容するから着衣の通気性も良くなる。
特に、従来の和装の裁断、仕立てでは、身頃の袖付き部分に袖を付け、袖付けから袖下までの部位(着物の振り、人形に相当する部位)が存在する長着において前袖及び後袖の袖下を接続具で接続する構成では、着用する人の脇下に位置する袖下で角部の端(着物の振り、人形に相当する部位の角の端)が存在するから、その角部の端から布が捲れやすい。したがって、捲れ防止のために角部に接続具を配置する必要性が高く、着用する人の脇下の位置で接続具間の間隔配置を大きくとるのに不向きであった。即ち、着用する人の脇下の位置で接続具間の開放区間53を大きくとることができなかった。
これに対し、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、袖下61L,62L、61R,62Rから脇線63L,64L、63R,64Rに向かって曲線状に連続させる設計であるから、コーナに角が存在しないことで布端部の身体への当たりが少なく、また、角の端が存在しないことで布が捲れ易いこともない。よって、着衣した人の脇下に位置する部位において接着布31,紐32間の開放区間53を大きくとることができで、通気性を良くできる。
そして、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインを曲線状に形成して、左の袖口65側から身頃側に向かって袖の上下幅を長くし、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインを曲線状に形成して、右の袖口65側から身頃側に向かって袖の上下幅を長くしているから、袖口65側は着衣した人の手の動きの邪魔となったり捲れ易くなったりしないような適当な小径で設計できるも、着衣した人の脇側では袖の上下幅が大きくて着衣した人の脇下に余裕を持たせることができる。したがって、腕の動きによっても、布の当たりが少なく、布が腕に纏わり付いたり腕を締め付けたりし難くなる。また、汗がかきやすい脇下に空気の通り道が形成され、通気性を向上させることができ、湿気による不快感、皮膚の湿気上昇による床擦れの誘発を防止できる。また、着衣状態で脇下の位置の空間が広いので、結んだ前の紐32A,72Aを解いて、前側で上前身頃UF及び下前身頃DFを開けるのみで、脇の下の汗、汚れ等を拭き取るのも容易である。当然、洗濯をしたときでも乾きやすい。
更に、本実施の形態1の介護用寝巻1では、袖から身頃にかけてのシルエットラインのコーナ部分に角が存在しないことで応力が集中しないので、コーナ部分からの引き裂けを防止でき、耐久性を高めることができる。
そして、本実施の形態1の介護用寝巻1においては、左前布10Lが左前袖FL及び上前身頃UFを一体に裁断してなるものであり、また、右前布10Rが右前袖FR及び下前身頃DFを一体に裁断してなるものであり、更に、背布20が左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとを一体に裁断してなるものであり、これら左前布10L、右前布10R及び背布20は袖山・肩山41L,41Rでのみ縫製され、袖山・肩山41L,41Rにしか合わせ目が存在せず、着衣した人の背面側において床擦れを生じさせる原因となる合わせ目が少ない。即ち合わせ目である縫目が少ないことで体圧が分散され、肌への刺激が少ない。
従来の和装の裁断、仕立てでは上下方向に長く背中心に合わせ目が存在していたことで、皺が発生し易く、また、縫代が統一せずに左右に撚れやすく、合わせ目である縫目、縫代が着衣した人の肌に対して刺激となることがあった。
これに対し、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20に対し、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10L、並びに、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rが袖山・肩山41L,41Rでのみ縫製され、着衣した人の背面側では左右の身頃を繋ぐ縫目も左右の袖と後身頃を縫製する縫目も存在しないから、皺も生じ難く、着衣した人への肌当たりも良く、かぶれや床擦れ等の肌へ刺激を軽減できる。また、縫目、縫代に皮膚が引っ掛かることによる生地の緊張、つっぱりも生じ難い。更に、アイロンをするときでも、背中心の縫代の方向を気にすることなく、皺の発生しないアイロン仕上げが容易に可能である。
特に、左前布10L、右前布10R及び背布20は袖山・肩山41L,41Rで縫製されているから、左前布10L、右前布10R及び背布20が完全に分解しないため、洗濯したときでも管理が容易であり、夜間等の暗闇でも、左前布10L、右前布10R及び背布20の組み合わせ方を考慮することなく、袖山・肩山41L,41Rの縫代位置を手で確認すれば、表裏を確認できることで、着替えが容易である。
なお、左前布10L、右前布10Rと背布20とを袖山・肩山41L,41Rで縫製するその縫目、縫代部分が、寝巻1の内側(身体側)でなく、外側にくるように縫製すると、肌への刺激がより少ないものとなる。
そして、左前布10L、右前布10R及び背布20は袖山・肩山41L,41Rで縫製されていることで、外形のラインを整え易く、着崩れによる皺の発生を防止でき、位置決めも容易である。また、袖山・肩山41L,41Rの強度を確保できる。特に、袖山・肩山41L,41の強度を確保できることで、袖口65側から引っ張られた時でも、破れ難く、耐久性が高い。即ち、介護の現場では、同じ体勢で長時間寝たきりの状態にある被介護者等に対し、床擦れの予防として、被介護者の体の向きを変えた際や被介護者の着替えを行った際に、介護者が被介護者の着衣にできた皺をのばす(なくす)ことが頻繁に行われる。このとき、例えば、背中の肩側の着衣の皺をのばす際には、着衣の袖口65側から引っ張ることから、肩山と襟の境界付近に負担が掛かり易い。しかし、本実施の形態1の介護用寝巻1では、左前布10L、右前布10R及び背布20は袖山・肩山41L,41Rで縫製された縫製部40を有することで、縫製による強度を高めることができ、肩山と襟の境界付近からの裂けを防止し、耐久性を高めることができる。
このように、本実施の形態1の介護用着衣としての介護用寝巻1は、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lと、左前布10Lと対称的に配置され、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rと、左前布10L及び右前布10Rの反対側に配置され、対称的な配置の左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20と、左前布10Lの上辺及び右前布10Rの上辺と背布20の上辺とを縫製して、左右の袖山・肩山41L,41Rを形成する縫製部40と、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接着布31,紐32で接続自在とした左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接着布31,紐32で接続自在とした右接続部50Rからなる脇接続部とを具備し、左接続部50L及び右接続部50Rからなる脇接続部は、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの接続によって筒状に接続される左袖の筒径が袖口65側から上前身頃UF及び後身頃B側へ向かって拡径し、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの接続によって筒状に接続される右袖の筒径が袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって拡径している。
本実施の形態1の介護用着衣としての介護用寝巻1によれば、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lの上辺、並びに、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rの上辺と、左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20の上辺とが縫製部40によって袖山・肩山41L,42Lで縫製されて繋がれているが、左接続部50Lによって左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとが接着布31,紐32で接続自在とされ、また、右接続部50Rによって右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rとが接着布31,紐32で接続自在とされている。
したがって、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接着布31,紐32で接続されてなる左接続部50Lの接続を解くと、左の袖下61L,62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線63L,64Lで、背布20と左前布10Lとを分離して開放できる。また、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rとを接着布31,紐32で接続されてなる右接続部50Rの接続を解くと、右の袖下61R,62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線63R,64Rで、背布20と右前布10Rとを分離して開放できる。よって、背布20の上(内面側)に介護者を配置し、その配置した介護者に右前布10Rを着せ掛け、また、左前布10Lを着せ掛け、脇線接続部を形成する左接続部50L及び右接続部50Rのそれぞれの接着布31,紐32で袖下61L,62L、61R,62R及び脇線63L,64L、63R,64Rを接続することで、袖に腕を通す動作を行うことなく、被介護者に自然体で着衣を着せることができる。また、脇線接続部を形成する左接続部50L及び右接続部50Rのそれぞれの接着布31,紐32の接続を解くと、背布20と左前布10L及び右前布10Rとを開放できるから、袖から腕を引き抜く動作を行うことなく、着衣を脱がせることができる。
このため、腕の自由がきかない患者であっても、着衣及び脱衣の負担が少なく、容易に着替えを行うことができる。
特に、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、左前布10Lが左前袖FL及び上前身頃UFを一体に裁断してなるものであり、また、右前布10Rが右前袖FR及び下前身頃DFを一体に裁断してなるものであり、更に、背布20が左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとを一体に裁断してなるものであり、これら左前布10L、右前布10R及び背布20は袖山・肩山41L,41Rでのみ縫製され、袖山・肩山41L,41Rにしか合わせ目である縫目が存在せず、着衣した人の背面側において床擦れを生じさせる原因となる合わせ目が少ない。よって、肌への刺激を少なくできる。
更に、脇線接続部を形成する左接続部50L及び右接続部50Rでは、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインを曲線状に形成し、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインを曲線状に形成し、各左右で袖口65側から身頃側に向かって袖の上下幅を径大としたことから、袖口65は着衣した人の手の動きの邪魔となったり捲れ易くなったりしないような適当な径で設計できるも、身頃側に向かって袖の上下幅を大きくして余裕を持たせ、また、コーナの角をなくして、着衣した人の脇下の位置で布の身体への当たりを少なくできる。即ち、腕の動きによっても着衣した人の左右の脇下の位置で布が身体に当たり難い。
加えて、コーナのシルエットラインを曲線状に形成し、腕が入る袖の筒径を袖口65側から身頃側に向かって径大とし、汗がかきやすい脇下に余裕を持たせて、そこに空気の通り道が形成されるから、通気性を向上させることができ、湿気による不快感、床擦れの誘発を防止できる。
特に、コーナのシルエットラインを曲線状に形成しており角の端が存在しないことで布が捲れ易いこともないから、着用した人の脇下に位置する部位において接着布31,紐32の開放区間53を大きくとることができ、通気を良くできる。更に、コーナのシルエットラインを曲線状に形成して角が存在しないことで集中的な負荷(応力集中)が少ないからコーナが裂け難い。即ち、介護者が床擦れ予防のために袖口65側から着衣を引張り、着衣の皺をのばすことが繰り返し行われる場合でも、袖から身頃に移行する(切替る)コーナ部分が裂け難く、耐久性が高い。加えて、角を持たないことでパイピング処理等によって端部を処理する場合でもパイピング布81の切込み、重ねを必要とすることなく縫製が容易である。そして、パイピング処理等で端部を処理する際でも、パイピング布81の重ねによる段差を設けることなく処理できるから、身体への当たりを少なくできる。
こうして、本実施の形態1の介護用寝巻1によれば、肌への刺激が少なく、また、脇下の位置の通気性を向上できるから、着用時の快適性を向上させることができる。
ところで、上記実施の形態1では、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10L、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10R、並びに、左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20は、左前布10Lの上辺及び右前布10Rの上辺が背布20の上辺で縫製されて左右の袖山・肩山41L,41Rを形成する縫製部40とする説明をしたが、本発明を実施する場合には、左前布10L、右前布10R及び背布20は、1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から一体に裁断されてなるものとすることもできる。
即ち、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lと、左前布10Lと対称的に配置され、右前袖FR及び下前身頃DFが一体に裁断されてなる右前布10Rと、左前布10L及び右前布10Rの反対側に配置され、対称的な配置の左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20と、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接着布31,紐32で接続自在とした左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接着布31,紐32で接続自在とした右接続部50Rからなる脇接続部とを具備し、左前布10L、右前布10R及び背布20は、一体に裁断されてなるものであり、左接続部50L及び右接続部50Rからなる脇接続部は、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの接続によって筒状に接続される左袖の筒径が袖口65側から上前身頃UF及び後身頃B側へ向かって拡径し、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの接続によって筒状に接続される右袖の筒径が袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって拡径している介護用着衣の寝巻1とすることもできる。
このように、左前布10L、右前布10R及び背布20が一体に裁断されてなる介護用着衣の寝巻1では、1枚或いは2枚以上を重ねた1単位の布から左前布10L、右前布10R及び背布20が一体に連続的に継目(縫目)のない状態で形成されるから、袖山・肩山41L,41Rに縫目(合わせ目)が存在しないものとなる。勿論、左前袖FLと上前身頃UFの間に縫目も存在せず、また、右前袖FR及び下前身頃DFの間に縫目は存在せず、更に、左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとの間にも縫目が存在しない。これら左前布10L、右前布10R及び背布20の間で接ぎ合わせた縫目が存在しないから、着衣した人に対して床擦れを生じさせる原因となる合わせ目が少なく、体圧が分散され、肌への刺激がより少ないものとなる。また、袖山・肩山41L,41Rで縫製しないから、製造も容易である。
なお、着衣した人の前側に位置する左前布10Lと着衣した人の後側に位置する背布20の切替部分(折目部分)の山が袖山・肩山41Lに相当し、また、着衣した人の前側に位置する右前布10Rと着衣した人の後側に位置する背布20の切替部分(折目部分)の山が袖山・肩山41Rに相当する。
更に、上記実施の形態1では、右腕及び左腕の不自由な被介護者、或いは手足の不自由な被介護者を前提に説明したが、右腕または左腕が不自由な人の場合には、次の変形例とすることもできる。
本実施の形態1に係る変形例1を図10に示す。変形例1に係る介護用寝巻1は、左腕のみが不自由な被介護者の介護用着衣として、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接着布31,紐32で接続自在とした左接続部50Lはそのままで、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rとを接続する右接続部50Rを縫製によって接続したものである。
即ち、変形例1の脇接続部の構成は、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接着布31,紐32で接続自在とした左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを縫製した右接続部50Rとしての右縫製部150Rからなる。
このように変形例1では、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rとを縫製してなる右縫製部150Rは、通常の形態の縫製として縫付けている。したがって、左腕のみが不自由で右腕が健常な人の介護用着衣として、健常な右腕は、袖下が縫製されている右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖の筒に通し、右半身は通常のように着せ掛けることができる。つまり、右腕の一方のみの腕を健常者と同等に対応できる。
右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rとを縫製してなる右縫製部150Rであっても、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって袖の上下幅が拡径しているから、寝た状態の姿勢のままでも右袖に腕を通しやすい。
一方、不自由な左腕側は、左接続部50Lの袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64Lの接着布31,紐32を解除すると、袖下61L,62Lで左前袖FL及左後袖BLに分かれ逆U字状に開くからその間に左腕を入れて、袖下61L,62L及びそれに連続する脇線63L,64Lの左接続部50Lの接着布31,紐32を接続状態とすることで、着せることができる。健常な右腕側の手を使用して着る場合でも容易にできる。
着衣を脱ぐ際でも、健常な右腕は通常と同様に袖から腕を引き抜くことで、脱ぐことができる。特に、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって袖の上下幅が拡径しているから、袖から手を引き出すのも容易であり、例えば、注射、検査等の際でも肩及び上腕部のみを露出させやすい。
一方、不自由な左腕側は、袖から腕を引き抜く動作をしなくとも、左前布10L及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61L,62L及び脇線63L,64Lの左接続部50Lの接続を解くことで、左前布10Lと背布20とを分離して脱がせることができる。なお、変形例1に係る介護用着衣の寝巻1においても、上前身頃UFと下前身頃DFを前合わせし、上前身頃UFと下前身頃DFの脇線63L,64L、63R,64Rに設けた紐32Aと反対側の端部に設けた紐72Aの結びによって、上前身頃UFと下前身頃DFが開かれるのを防止できる。
したがって、左腕が不都合な人であっても、自分が着衣を身に付けるのに協力できるという満足感が得られる。
なお、着衣する場合、脱衣する場合には、不自由な手を先に通したり、後に通したりでき、また、身体の自由がどれだけ利くかによっても着脱の手順に違いがでる。
このように変形例1に係る介護用寝巻1は、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lと、左前布10Lと対称的に配置され、右前袖FR及び下前身頃DFとが一体に裁断されてなる右前布10Rと、左前布10L及び右前布10Rの反対側に配置され、対称的な配置の左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20と、左前布10Lの上辺及び右前布10Rの上辺と背布20の上辺とを縫製してなり、左右の袖山・肩山41L,41Rを形成する縫製部40と、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接続する左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接続する右接続部50Rとしての右縫製部150Rからなり、右接続部50Rとしての右縫製部150Rが縫製によって接続され、左接続部50Lが接着布31,紐32で接続自在とされた脇接続部とを具備し、脇接続部は左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの袖口65側から上前身頃UF及び後身頃B側へ向かって袖の筒径(上下幅)が拡径し、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって袖の筒径が拡径している。
変形例1においても、被介護者が仰向けに寝た姿勢の状態のままで、被介護者の左または右側から着衣の寝巻1を被介護者の身体の下側に潜らせて身体の上を摺動させ、背布20の上に被介護者が配置するようにし、右縫製部150Rで縫製された右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖に右腕を通し、下前身頃DFを身体に着せ掛け、また、左前袖FLを左腕に被せ、上前身頃UFを身体に着せ掛ける。更に、左接続部50Lを接着布31,紐32で接続する。その後、紐32A,72Aを結んで前を閉じる。
したがって、被介護者が仰向けに寝ころべば、自然体で着衣を着せることができる。
更に、この種の変形例2を図11に示す。変形例2に係る介護用寝巻1は、右腕のみが不自由な被介護者の介護用着衣として、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと、背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Rを接着布31,紐32で接続自在とした右接続部50Rはそのままで、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接続する左縫製部150Lを縫製によって接続したものである。
即ち、変形例2の脇接続部の構成は、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを縫製した左接続部50Lとして左縫製部150L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接着布31,紐32で接続自在とした右接続部50Rからなる。
このように変形例2では、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを縫製してなる左縫製部150Lは、通常の形態の縫製として縫付けている。したがって、右腕のみが不自由で左腕が健常な人の介護用着衣として、健常な左腕は、袖下が縫製されている左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖の筒に通し、左半身は通常のように着せ掛けることができる。つまり、左腕の一方のみの腕を健常者と同等に対応できる。
左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを縫製してなる左縫製部150Lであっても、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの袖口65側から上前身頃UFF及び後身頃B側へ向かって袖の上下幅が拡径しているから、寝た状態の姿勢のままでも左袖に腕を通しやすい。
一方、不自由な右腕側は、右接続部50Rの袖下61R,62R及びそれに連続する脇線63R,64Rの接着布31,紐32を解除すると、袖下61R,62Rで右前袖FR及右後袖BRに分かれ逆U字状に開くからその間に右腕を入れて、袖下61R,62R及びそれに連続する脇線63R,64Rの右接続部50Rの接着布31,紐32を接続状態とすることで、着せることができる。健常な左腕側の手を使用して着る場合でも容易にできる。
着衣を脱ぐ際でも、健常な左腕は通常と同様に袖から腕を引き抜くことで、脱ぐことができる。特に、左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの袖口65側から上前身頃UF及び後身頃B側へ向かって袖の上下幅が拡径しているから、袖から手を引き出すのも容易であり、例えば、注射、検査等の際でも肩及び上腕部のみを露出させやすい。
一方、不自由な右腕側は、袖から腕を引き抜く動作をしなくとも、右前布10R及び背布20の裾側から袖口65側まで連続する袖下61R,62R及び脇線63R,64Rの右接続部50Rの接続を解くことで、右前布10Rと背布20とを分離して脱がせることができる。なお、変形例2に係る介護用着衣の寝巻1においても、上前身頃UFと下前身頃DFを前合わせし、上前身頃UFと下前身頃DFの脇線63L,63L、63R,64Rに設けた紐32Aと反対側の端部に設けた紐72Aの結びによって、上前身頃UFと下前身頃DFが開かれるのを防止できる。
したがって、右腕が不都合な人であっても、自分が着衣を身に付けるのに協力できるという満足感が得られる。
なお、着衣する場合、脱衣する場合には、不自由な手を先に通したり、後に通したりでき、また、身体の自由がどれだけ利くかによっても着脱の手順に違いがでる。
このように変形例2に係る介護用寝巻1は、左前袖FL及び上前身頃UFが一体に裁断されてなる左前布10Lと、左前布10Lと対称的に配置され、右前袖FR及び下前身頃DFとが一体に裁断されてなる右前布10Rと、左前布10L及び右前布10Rの反対側に配置され、対称的な配置の左後袖BL及び右後袖BRと後身頃Bとが一体に裁断されてなる背布20と、左前布10Lの上辺及び右前布10Rの上辺と背布20の上辺とを縫製してなり、左右の袖山・肩山41L,41Rを形成する縫製部40と、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接続する左接続部50Lとしての左縫製部150L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接続する右接続部50Rからなり、左接続部50Lとしての左縫製部150Lが縫製によって接続され、右接続部50Rが接着布31,紐32で接続自在とされた脇接続部とを具備し、脇接続部は左前袖FL及び左後袖BLの袖下61L,62Lから上前身頃UF及び後身頃Bの脇線63L,64Lへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、左前袖FL及び左後袖BLの袖口65側から上前身頃UF及び後身頃B側へ向かって袖の筒径(上下幅)が拡径し、また、右前袖FR及び右後袖BRの袖下61R,62Rから下前身頃DF及び後身頃Bの脇線63R,64Rへと連続するコーナのシルエットラインが曲線状に形成されて、右前袖FR及び右後袖BRの袖口65側から下前身頃DF及び後身頃B側へ向かって袖の筒径が拡径している。
変形例2においても、被介護者が仰向けに寝た姿勢の状態のままで、被介護者の左または右側から着衣の寝巻1を被介護者の身体の下側に潜らせて身体の上を摺動させ、背布20の上に被介護者が配置するようにし、左縫製部150Lで縫製された左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖に左腕を通し、上前身頃UFを身体に着せ掛け、また、右前袖FRを右腕に被せ、下前身頃DFを身体に着せ掛ける。更に、右接続部50Rを接着布31,紐32で接続する。その後、紐32A,72Aを結んで前を閉じる。
したがって、被介護者が仰向けに寝ころべば、自然体で着衣を着せることができる。
こうして上記変形例1、変形例2から、本発明を実施する場合には、脇接続部の構成は、左前布10Lの左前袖FLの袖下61L及びそれに連続する上前身頃UFの脇線63Lと、背布20の左後袖BLの袖下62L及びそれに連続する後身頃Bの脇線64Lとを接続する左接続部50L、並びに、右前布10Rの右前袖FRの袖下61R及びそれに連続する下前身頃DFの脇線63Rと背布20の右後袖BRの袖下62R及びそれに連続する左接続部50Lとは反対側の後身頃Bの脇線64Rとを接続する右接続部50Rからなり、左接続部50L及び右接続部50Rの一方を、縫製によって接続し、他方を接着布31,紐32で接続自在としてもよい。
また、本発明を実施する場合には、上記変形例1、変形例2に係る介護用着衣の寝巻1においても、左前布10L、右前布10R及び背布20を一体に連続的に継目(縫目)のない状態で形成してもよい。
なお、被介護者が仰向けに十の字に寝ころべば、自然体で着衣を着せることを前提に説明したが、本発明を実施する場合には、被介護者が何も手にすることなく自立したり、何かに掴って自立できる場合には、立った状態で着付けることができる。この場合には、環境温度が低くても、部分的に肌を出すことができ、風呂から出た後でも、湯冷めしないで体を拭くことができる。また、お湯で体をふく場合にも他の部分が着衣しているから余り寒さを感じない。
[実施の形態2]
上記実施の形態1では、通常の寝巻と同様、折り畳んで移動される旨説明したが、クリーニングした本実施の形態2の介護用着衣は、容易に折り畳みが解除されないようにすることができる。図12及び図13はその例である。
本実施の形態2の介護用着衣の寝巻1は、背布20の後身頃B側で左右両方の袖山・肩山41L,41Rの肩山側の両肩山または両肩山から0〜10cm低くした位置を上辺Tとし、袖口65の長さm(図3参照)以上の所定長さの右辺V、左辺Wをとり、その端部を結ぶ線を下辺Xとする布地101が縫付けられている。布地101は、本実施の形態2の介護用着衣が寝巻である場合には、その寝巻の柄が付いた布地が好ましく、左前布10L、右前布10R及び背布20と共地でも良い。所定寸法の生地から左前布10L、右前布10R及び背布20を裁断したときの余剰部で作製することもできる。勿論、パワーネット等の編目を形成した布地101としてもよいし、弾性のない編目でもよい。
この布地101の上辺Tを背布20の後身頃B側で左右両方の袖山・肩山41L,41Rの肩山側または肩山側から0〜10cm低くした位置に縫い付ける。また、下辺Xはその右辺Vの下端、左辺Wの下端を直角三角形状に縫い付ける。右辺Vの下端と左辺Wの下端が、直角を挟む直角三角形の両辺が2〜5cm程度の距離としている。
このように、本実施の形態2の介護用着衣の寝巻1は、背布20の後身頃B側に布地101の上辺Tを縫製し、また、布地101の右辺Vの下端及び左辺Wの下端を背布20の後身頃B側に縫製する。このとき布地101は下辺Xの両端が直角三角形状に縫製されており、開口は、布地101の右辺V、左辺W、下辺Xの3辺となる。
布地101の上辺Tは縫製されているから、上辺T側に布地101に収納した介護用着衣の寝巻1の一部が食み出すことがない。
そして、下辺Xの両端が直角三角形状に縫製された布地101は、当該縫製部分が下辺Xの両端に位置するから、被介護者の左右側面に位置することになる。したがって、被介護者はこれによって違和感がない。また、上辺Tについても同様である。
したがって、例えば、図13に示すように、左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖側、及び/または、右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖側を折り畳み、背布20の後身頃B側と布地101の間に収納することができる。また、上前身頃UF側及び下前身頃DF側は、後身頃B側と共に2重または3重以上に折り畳んで下辺X側から挿入し、それを布地101で保持できる。
ここで、折り畳む左袖または右袖は、片方でも、両側でも収容できる。また、上前身頃UF側及び下前身頃DF及び後身頃B側を折り畳んだもののみを収納してもよい。
このように、本実施の形態2の介護用着衣の寝巻1は、背布20の前身頃UF及び下前身頃DF側とは反対側で、即ち、背布20の後身頃B側の外面側で、布地101の上辺Tを縫製し、また、布地101の右辺Vの下端及び左辺Wの下端を後身頃Bに縫製することによって、布地101の右辺V、左辺W、下辺Xの3辺側が背布20の後身頃B側との間で開口を有し、背布20の後身頃B側と布地101の間で、左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖側や、右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖側や、上前身頃UF側及び下前身頃DF側及び後身頃B側を収納する収納部100を形成したものである。
即ち、背布20の後身頃B側であって、上前身頃UF及び下前身頃DF側とは反対側で、左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖側や、右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖側を収納でき、また、上前身頃UF側及び下前身頃DF側及び後身頃B側を共に収納できる収納部100を布地101で形成したものである。
収納部100は、左右から挿入する左袖、右袖の収容用とすることもできるし、下側から挿入する上前身頃UF及び下前身頃DF及び後身頃Bの収納用とすることもできる。
この収納部100は、嵩張らないものであり、後身頃Bに対する取付け位置が人体の体重が加わる位置にないから、使用に際して不快感が生ずることがない。
こうして、上記実施の形態2の介護用着衣の寝巻1の後身頃Bには、上前身頃UF及び下前身頃DFの反対側で、左前袖FL及び左後袖BLからなる左袖並びに右前袖FR及び右後袖BRからなる右袖、及び/または、後身頃B及び上前身頃UF及び下前身頃DFを収納する収納部100を配設したものであるから、折り畳みの際に右袖側、左袖側が移動しないように収納部100に入れて、固定することができる。また、上前身頃UF及び下前身頃DF側についても後身頃B側と共に収容することができる。
特に、クリーニング後に、右袖を収納部100に入れて、更に、左袖を収納部100に入れ、また、上前身頃UF及び下前身頃DF及び後身頃Bを畳んで収納部100で収容することにより、搬送されても袖とか身頃がとび出すことがない。
また、搬送の際には、クリーニングの後、プラスチック袋に収納するが、プラスチック袋から出しても折り畳んだ形が崩れることがない。
更に、寝たきりの被介護者では、寝具の上に同じ姿勢で長時間いることから、その背面側に汗をかきやすいが、吸水性の布地101であると汗が吸収されやすいから、湿気の上昇を防ぐことができ、着用時の快適性が増す。また、湿気の上昇が防止されるから、皮膚の炎症、床擦れ等の悪化を防止できる。
その他の構成については、上記実施の形態1とほぼ同一であるから、上記実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
[実施の形態3]
本実施の形態3に係る介護用着衣の寝巻1は、図14に示すように、汗や尿等の水分を吸収し、汗や尿等の排泄物で後身頃Bや左前布10L及び右前布10Rが汚れるのを防止するための吸水・防水シート200を背布20の後身頃Bの裏面(bc)側(内面側)に着脱自在に設けたものである。
なお、図14乃至図19において、吸水・防水シート200において身体に触れる側を表面側fcとし、その反対面側で後身頃Bの裏面bc側(内面側)と対向させる側が吸水・防水シート200の裏面bc側である。
吸水・防水シート200は、汗や尿等の水分、液体を吸収し、かつ、それらを通過させないで保持する構成であればよく、例えば、透水性(透液性)の表面シートと、防水性(不透水性、不透過性)の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に吸水体等を挟み込んだ複層構造の積層複合体が使用される。
表面に位置する透水性シートは、少なくとも垂直下方向に透過する能力があり、水分等の液体を吸収体側に導くことができるもの、例えば、合成繊維、天然繊維からなる織布、スパンボンド不織布、不織布、穿孔した開孔フィルム、紙等の使用が可能である。具体的には、例えば、ポリプロピレンポリエステル、ポリエチレン等の複合繊維または単繊維繊の材料を使用できる。また、不織布は、ピンポイントボンド、スパンボンド等のサーマルボンド不織布やスパンレース不織布等の不織布であってもよいし、所定の繊維をカーディングによりウエブ化したエアスルー不織布であってもよい。肌触り感の良いものが選択されるが、単に一重のシートではなく、肌触り感をだす等の目的に応じてタオル地のようなパイル地、即ち、織物の片面または両面に毛羽や輪奈を織り出した生地や、ガーゼ地等からなる生地、綿、麻、絹等の布シート、或いは、紙シートを重ねたシートとして使用してもよい。吸水体に液体が吸水されていても透水性シートによって濡れ感、不快感を軽減できる。
吸水体は、水分等の液体を吸収し、それを保持する材料から構成され、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維、吸収性ポリマー、脱脂綿、スポンジ等の吸水性多孔質体の材料が使用される。親水性繊維は織物または不織布の形態で使用されたり、波状に表面に襞、皺を付したシートとして使用されたりすることもある。また、吸収性ポリマーをパルプ繊維等の綿花状の親水性繊維に保持したり、更に、それらをスポンジ等の吸水性多孔質体の表裏に配置したりする複合構造、複合体であってもよい。吸収性ポリマーは、水分の吸収によってゼリー状に固まり、逆戻りを防ぐものを使用してもよい。
裏面に位置する防水性シートは、水分を通過させない透過性(浸透性)のないシートであり、液体不透過性材料であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等の高分子化合物製のフィルム等からなる合成樹脂シートや、紙シート、布シート、ゴムシート等が使用される。
これら透水性シート、吸水体及び防水性シートは、例えば、溶着によって接合され一体化され積層複合体を構成しているが、これらの機能がまとまった単層構造のものであってもよい。即ち、単数枚で吸水性及び防水性の機能を持たせたものであってもよい。
このような吸水・防水シート200は、所定の材料の選択により使い捨てとしてもよいし、繰り返しの洗濯に対しても耐えることができる布等の材料で構成してもよい。また、消臭機能を持たせても良い。
吸水・防水シート200は、例えば、50cm〜70cm(横幅)×40cm〜70cm(縦幅)の寸法で形成される。通常、後身頃Bの横幅(脇線間の長さ)を超えない長さに設定されるが、一部を延設して、後身頃Bの外面側(表面側)で接続するようにしてもよい。この吸水・防水シート200は、図14に示すように、後身頃Bの裏面(bc)側、即ち、後身頃Bの上前身頃UF及び下前身頃DF側で、着衣した人の腰、臀部の位置を中心にあてられるように配設される。
そして、本実施の形態3においては、四角形状等に形成された吸水・防水シート200の4隅に、背布20の後身頃Bに着脱自在に取付けるためのシート側取付部210を設け、一方で、背布20の後身頃Bに吸水・防水シート200のシート側取付部210に対応する身頃側取付部220を設けて、シート側取付部210と身頃側取付部220の接続により、後身頃Bの裏面(bc)側に吸水・防水シート200の取付けを可能としている。
例えば、図15に示すように、吸水・防水シート200が繰り返しの洗濯に対して耐える布等で形成する場合では、シート側取付部210及び身頃側取付部220として1対の接着布211,221の使用によって、背布20の後身頃Bの裏面(bc)側に吸水・防水シート200を着脱自在に取付けることができる。なお、使い捨てとしない布からなる吸水・防水シート200では、必要に応じてパイピング201で端部の処理がなされる。
即ち、吸水・防水シート200のシート側取付部210を面ファスナ等の接着布211の雄側または雌側の一方で構成し、後身頃Bの脇線64R側に身頃側取付部220として接着布211に対応する他方の雄側または雌側の接着布221を設ける。これら1対の接着布211,221の接合により吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けることができる。または、その接続を解除することができる。
このとき、図15に示すように、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを接続する左接続部50L、右接続部50Rの接続具としての接着布31を利用し、それと兼用することも可能である。この場合には、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを接続可能とし、かつ、吸水・防水シート200の接着布211を接合可能な程度の大きさで接着布221の面積が設定される。接着布211,221であれば着脱も極めて容易である。なお、接着布221の位置は、脇線側であり被介護者の体重が加わる箇所でないので吸水・防水シート200を取付けないときでも肌を刺激し難い位置である。
ここで、身頃側取付部220としての接着布221は、後身頃B側に直接縫付けてもよいが、例えば、図16(a)に示すように、後身頃Bの脇線64Rから外側に布地を突設した突設部221aを設け、そこに接着布221を縫付けてもよい。このとき、接着布221は、後身頃Bの脇線64Rから外側に突出した状態で、後身頃Bの裏面(bc)側と同一方向の面に取付ける。
これより、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けるときは、図16(b)に示すように、突設部221aを後身頃Bの脇線64Rより内側に折曲げ後身頃Bの裏面(bc)側に重なるように配置し、後身頃Bと突設部221aの間に吸水・防水シート200を配置する。そして、突設部221aに設けた接着布221と吸水・防水シート200の表面(fc)側に設けた接着布211を接合することで、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けることができる。
一方で、吸水・防水シート200を取付けないときは接着布221が取付けられた突設部221aを後身頃Bの脇線64Rの外側に突出させることで、吸水・防水シート200を取付けないときでも肌を刺激したり違和感を与えたりすることがない。即ち、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも、身体の肌に接合面が接触しないから異物感が少なくなる。
或いは、図16(c)に示すように、接着布221に対応する位置で上前身頃UF、下前身頃DFの表面(fc)側(外面側)に、接着布221に対応させる接着布221bを設け、吸水・防水シート200を取付けないときは、上前身頃UF、下前身頃DFと後身頃Bを接続したときに、突設部221aが環状を描くように接着布211及び接着布221bを接続してもよい。即ち、接着布221及び接着布221bで上前身頃UF、下前身頃DFと後身頃Bを接続する接着布31として機能させるようにしてもよい。なお、接着布211及び接着布221bの位置も肌を刺激したり違和感を与えたりすることがない位置である。即ち、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも、身体の肌に接合面が接触しないから異物感が少なくなる。
また、図17(a)及び図17(b)に示すように、後身頃Bの脇線64R側に身頃側取付部220として所定形状の孔222を形成してもよい。このように、身頃側取付部220として孔222を形成しておくことで、吸水・防水シート200のシート側取付部210の多種の態様に対応することができる。
例えば、図17(a)に示すように、吸水・防水シート200に突設部211aを形成し、そこに1対の面ファスナからなる接着布211を取付けることによりシート側取付部210を設ける。このような構成のシート側取付部210では、後身頃Bに設けた身頃側取付部220としての孔222にシート側取付部210の突出部211aを通して環状にし、一対の接着布211を接合させることで、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に簡単に取付けることができる。
また、図17(b)に示すように、吸水・防水シート200にシート側取付部210として1本または2本の紐213を設ける。このような構成のシート側取付部210でも、後身頃Bに設けた身頃側取付部220としての孔222に紐213を通して結ぶことで、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に簡単に取付けることができる。なお、吸水・防水シート200が使い捨てタイプのものでは、後述するように、紐213を直接的に吸水・防水シート200に取付けなくても、図19(b)に示すように、吸水・防水シート200に紐213を通すための穴213aを設け、または、図19(c)に示すように、吸水・防水シート200にナイロン製等の環状部213bを取付け、穴213aや環状部213bに紐213を通して取付けてもよい。これによれば、紐213の使い回しが可能であり、低コストでシート側取付部210を形成できる。
更に、孔222に掛けられるボタンを用いてシート側取付部210を構成してもよい。
このように身頃側取付部220を穴222で構成すると、吸水・防水シート200を取付けないときでも、肌への刺激や違和感を与えることがない。即ち、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも肌に接触したときの異物感が少ない。また、シート側取付部210の多種の構造に対応できる。
その他にも、図18(a)に示すように、防水・吸水シート200のシート側取付部210を紐213で構成し、後身頃Bの身頃側取付部220を紐223で構成して、紐213,223を結ぶことにより、防水・吸水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けてもよい。身頃側取付部220が紐223であれば、吸水・防水シート200を取付けないときでも、肌への刺激や違和感を与えることがない。即ち、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも肌に接触したときの異物感が少ない。
更に、左前布10L及び右前布10Rと背布20とを接続する左接続部50L、右接続部50Rの接続具としての紐32を身頃側取付部220として兼用してもよい。
使い捨てタイプの吸水・防水シート200では、例えば、図18(b)に示すように、吸水・防水シート200のシート側取付部210を粘着テープ212で構成し、後身頃Bの脇線64R側に身頃側取付部220として、粘着テープ212の貼付けを可能とするナイロン地224を縫い付け等によって設けることで、粘着テープ212のナイロン地224への貼付けにより、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けることができる。ナイロン地224であれば、粘着テープ212の着脱が容易であり、粘着テープ212の繰り返しの脱着によっても生地を傷め難い。更に、吸水・防水シート200を取付けないときでも、シート側取付部210がナイロン地224であるから肌を刺激したりすることもない。即ち、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも、身体の肌に接触したときの異物感が少ない。
勿論、粘着テープ212の着脱が容易で、繰り返しの脱着によっても生地を傷め難いものであれば、ポリエステル等の生地を用いてもよい。
吸水・防水シート200が使い捨てタイプのものであっても粘着テープ212であれば低コストでシート側取付部210を設けることができる。
更に、図19に示すように、後身頃Bの脇線64R側に設ける身頃側取付部220を、ナイロン製の生地で環状を形成してなる環状部225で形成してもよい。身頃側取付部220としてナイロン製生地等からなる環状部225を後身頃Bの脇線64R側に縫付けることで、例えば、図19(a)に示すように、吸水・防水シート200のシート側取付部210を紐213で構成したときに、この紐213を後身頃Bに取付けた環状部225の環に通し、紐213を結ぶことにより、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けることができる。なお、1本の紐213で結ぶようにしても2本用いてもよい。
吸水・防水シート200が使い捨てタイプのものでは、紐213を直接的に吸水・防水シート200に取付けなくても、図19(b)に示すように、吸水・防水シート200に紐213を通すための穴213aを設けたり、図19(c)に示すように、ナイロン製等の環状部213bを取付け、それに紐213を通して取付けてもよい。この場合、紐213は付属的なものとして使い回しでき、低コストでシート側取付部210を形成できる。なお、後身頃Bの脇線64Rから外側に突出させるように環状部223を設けてよい。この場合には、開放区間53から紐213を通すことで、脇線64Rの外側で紐213を結ぶようにしてもよく、脇線64Rの外側であると、着衣した人の身体の一部が移動するときでも、また寝返りをうつときでも、異物感を与えることがない。
或いは、図19(d)に示すように、後身頃Bの脇線64R側に設ける身頃側取付部220としての環状部225をナイロン製等の生地で形成していると、吸水・防水シート200のシート側取付部210を粘着テープ212で構成しても、粘着テープ212のナイロン製等の環状部225への貼付けにより、吸水・防水シート200を後身頃Bの裏面(bc)側に取付けることができる。そして、粘着テープ212の着脱が容易であり、粘着テープ212の繰り返しの脱着によっても生地を傷め難い。更に、環状部225をナイロン製等の生地で形成していると、吸水・防水シート200を取付けないときでも、肌を刺激したりすることもない。
このように、身頃側取付部210としての接着布221、穴222、紐223、ナイロン地224、環状部225等によって、後身頃Bの裏面側に対して着衣する人の背面側にあてがう吸水・防水シート200を着脱自在に取付ける取付手段を構成でき、吸水・防水シート200のシート側取付部210としての接着布211、粘着テープ212、紐213との接続により後身頃Bの裏面側に対して吸水・防水シート200を取付けることができる。また、その解除を行うことができる。なお、本発明を実施する場合には、取付手段は上記に限定されず、例えば、ドット釦、ボタン及びボタンホール、スナップボタン等であってもよい。また、上記で説明した穴と紐、穴とボタン、穴と接着布を設けた突設部等の組合せは、身頃側取付部220とシート側取付部210とで逆にしてもよい。
このようにして、本実施の形態3に係る介護用着衣の寝巻1は、後身頃Bに対して吸水・防水シート200が着脱自在に取付けられるための取付手段としての身頃側取付部220を脇線64R,64L側に有し、吸水・防水シート200には後身頃Bに対して着脱自在に取付けるためのシート側取付部210が設けられ、シート側取部210と身頃側取付部220の接続により、背布20を形成する後身頃Bの裏面(fc)側(内面側)に対して吸水・防水シート200が着脱自在に設けられるものである。
なお、図15乃至図19において、後身頃Bの右の脇線64R側に取付手段としての身頃側取付部220を設けているが、後身頃Bの左の脇線64L側も同様である。また、図14において、身頃側取付部220は後身頃Bの右の脇線64R側の2箇所、後身頃Bの左の脇線64L側の2箇所の計4箇所であるが、それ以上の数であっても良いし、それ以下の数であってもよく、吸水・防水シート200が位置ずれしない固定であればよい。
したがって、本実施の形態3に係る介護用着衣の寝巻1によれば、着衣した人が発汗したときでも、また、尿が漏れたときでも、その汗や尿が吸水・防水シート200に吸収され保水、防水により汗や尿を後身頃B側に通過せず、また、排泄物の汚れをキャッチすることができるから、汗や尿によって着衣が濡れたり汚れたりするのを防止できる。即ち、吸水・防水シート200によって汗や排泄物等の汚れから着衣を保護できる。そして、着衣した人が発汗したときでも、また、尿が漏れたときでも、着衣を着替えることなく吸水・防水シート200を清潔なものと交換するのみでよいから、少ない労力で済み、被介護者及び介護者の手間や負担を減らすことができる。吸水・防水シート200の吸収力によって床ずれの原因ともなる身体側の湿気を少なくでき、快適である。特に、寝たきりの被介護者では、寝具の上に同じ姿勢で長時間いることから、その背面側に汗をかきやすいが、上前身頃UF及び下前身頃DFの反対側で後身頃Bに吸水・防水シート200を取付けることによって、吸水・防水シート200に汗が吸収され、汗疹等の皮膚の炎症の予防策にもなり、着衣時の快適性が増す。吸水・防水シート200に汗等が吸収されるから、汗等で濡れ、汚れた着衣の寝巻1を我慢してきている必要が無くなり、吸水・防水シート200を取り替えるのみで、常に清潔な状態で着衣の寝巻1を着用できる。したがって、常に心身共に気持がよい状態で着用できる。
その他の構成については、上記実施の形態1と略同一であるから、上記実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
このように、本実施の形態3に係る介護用着衣1は、上前身頃UF及び下前身頃DFの反対側で後身頃Bに対して着衣する人の背面側にあてがう吸水・防水シート200を着脱自在に取付けるための取付手段としての身頃側取付部220が後身頃Bに設けられたものである。そして、後身頃Bの上前身頃UF及び下前身頃DFの反対側には、取付手段としての身頃側取付部220によって吸水・防水シート200が取付自在である。
したがって、取付手段としての身頃側取付部220によって後身頃Bの裏面側に対して吸水・防水シート200が取付可能であり、吸水・防水シート200の取付けによって、吸水・防水シート200が被介護者の汗や漏れた尿等の排泄物を受けることになる。即ち、吸水・防水シート200の取付けによって、被介護者の汗や漏れた尿等の排泄物で左前布10L、右前布10R及び背布20が汚れるのを防止できる。吸水・防水シート200が後身頃Bの裏面側に対して着脱自在であり、吸水・防水シート200が汚れても清潔な吸水・防水シート200と交換できるから、介護用着衣の寝巻1を着替えることなく吸水・防水シート200の取換えのみで済む。よって、被介護者及び介護者の手間や負担を減らすことができる。
また、吸水・防水シート200の取付けによって、着衣した人の背面側の汗等の水分や湿気を速やかに吸収できるから、湿気の上昇を防ぎ、皮膚の炎症や床擦れを防止できる。したがって、着用時の快適性を高めることができる。また、こまめな取替えによって清潔さを保つことができる。
そして、後身頃Bに設けた取付手段としての身頃側取付部220の取付位置が後身頃Bの脇線63L,64L,63R,64R側であり人体の体重が加わる位置にないから、吸水・防水シート200の有無に関わらず、使用に際して不快感が生ずることもない。
[実施の形態4]
本実施の形態4に係る介護用着衣の寝巻1は、図20に示すように、上前身頃UF及び下前身頃DFの内側で着衣する人の前側、主に腹部を中心に覆う伸縮性の被覆布300を取付自在に設けたものである。
被覆布300は、例えば、左前布10L、右前布10R及び背布20と共地で形成してもよいし、肌触りがよく、洗濯が容易で度重なる洗濯によっても丈夫で型崩れし難いパイル地、ガーゼ地等の綿や、木綿や、絹等で形成してもよい。被介護者の動き、大きさに対応するために伸縮性、弾性を持ったものが使用され、例えば、ゴムやパワーネット等の生地の挿入により伸縮性、弾性を持たせることができる。
この被覆布300は、例えば、50cm〜70cm(横幅)×40cm〜80cm(縦幅)の寸法で後身頃の横幅(脇線間の長さ)を超えない長さに形成され、図20に示すように、例えば、胸部より下位で着衣した人の腹部を中心に当てられるように配置される。
そして、本実施の形態4においては、四角形状等に形成された被覆布300の4隅に紐310を設け、一方で、背布20の後身頃Bの脇線64L,64R側に被覆布300の紐310に対応させる紐320を設け、紐310,320の結びによって、被覆布300を後身頃Bの脇線64L,64R側に取付けることで、被覆布300によって着衣する人の前側を覆うことができるようになっている。なお、図20において、紐310,320の接続箇所は4箇所であるが、それ以上の数であっても良いし、それ以下の数であってもよい。
このように、本実施の形態4に係る介護用着衣の寝巻1では、後身頃Bの脇線64L,64R側に被覆布300を取付けるための取付手段としての紐320を設け、被覆布300に設けた紐310との接続により、着衣した人の前側を覆うための被覆布300を取付けることができる。
これにより、着衣状態で着衣した人の動き等により裾側から上前身頃UF及び下前身頃DFが開けたときでも、着衣した人の前側が被覆布300で覆われているから、肌が露出するのを避けることができ、身体の冷え、特に腹部の冷えを防止でき、寒さを我慢する必要もない。また、着衣した人の前側が伸縮性のある被覆布300で覆われていると安心感もあり、着衣した介護者が勝手に手で接続具を解いてしまったり、上前身頃UFと下前身頃DFを開けてしまったりしたときでも、人の前側に伸縮性の被覆布300が取付けてあると、下着に触れ難く、排泄物等に触れてしまう事態を回避できる。
また、上前身頃UF及び下前身頃DFの位置を固定する紐32Aと紐72Aの結びを解いて前身頃側を開いておむつ交換等の排泄物の介助をする場合でも、着衣した人の前側を被覆布300で覆うことができ、被覆布300の一部を捲り上げるのみで必要以上に肌を露出させることなく、おむつ交換等をすることができる。即ち、排泄物の介助をする際等の肌を必要以上に露出させることへの抵抗感を少なくできる。
更に、このような被覆布300は、例えば、車いす等で移動する際に保温、冷え防止のための肩にかける羽織、ストール、ショール等との防寒用として活用することもできる。
なお、本発明を実施する場合には、被覆布300を後身頃Bの脇線64L,64R側に取付ける取付手段は、紐320に限定されず、上記実施の形態3で説明しているような接着布、穴等の構成を採用することもできる。
その他の構成については、上記実施の形態1と略同一であるから、上記実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
こうして、本実施の形態4に係る介護用着衣の寝巻1は、上前身頃UF及び下前身頃DFの下(裏面側)で着衣する人の前を覆う伸縮性の被覆布300を着脱自在に取付けるための取付手段としての紐320が後身頃Bの脇線63L,64L,63R,64R側に設けられたものである。
したがって、取付手段としての紐320によって後身頃Bの脇線63L,64L,63R,64R側で被覆布300が取付可能であり、上前身頃UF及び下前身頃DFの下で着衣する人の前を伸縮性の被覆布300で覆うことができるから、上前身頃UF及び下前身頃DFが開いたときでも肌の露出が抑えられ、また、身体が冷えるのを防止できる。更に、被介護者が不必要に下着に触れるのを防止できる。
そして、後身頃Bに設けた取付手段としての紐320の取付位置が後身頃Bの脇線63L,64L,63R,64R側であり人体の体重が加わる位置にないから、被覆布300の有無に関わらず、使用に際して不快感が生ずることもない。