JP6293095B2 - ヒューズ付き気密端子 - Google Patents

Description

本発明は気密端子に関し、気密端子の導電ピンにヒューズエレメントを架橋させることで過負荷時の安全性を向上させたヒューズ付き気密端子に関する。

密閉容器に収められた電気機器に信号や電源を供給する目的で、該容器に設けた装着孔に固定できるように構成した気密端子が使用されてきた。例えば、空調機器や冷凍機などに使用されるコンプレッサには、モータユニットのハウジングに密閉固定した気密端子を介して電源からハウジング内のモータに電力供給されている。空調機器や冷凍機などのコンプレッサは、内部にモータを有するので、軸受など摺動部の磨耗によって生じた導電性の微粒子が徐々に冷媒、冷凍機油中に蓄積してくる。この導電性微粒子が気密端子の金属ステムと電極棒とを絶縁封止するガラスの表面に付着して行くと、金属ステムと電極棒との間の絶縁抵抗が次第に低下し、甚だしい場合は短絡する危険がある。金属ステムと電極棒が短絡すると、過電流が流れて温度が異常に上昇し封着ガラスが溶融して、電極棒が金属ステムから抜け落ち、コンプレッサ内部のオイルが外部へ漏れ出して、終には発煙、発火へと至る。こうした事故を防止するために、従来から気密端子の導電ピンに通電により自己発熱する部位を設けて、過電流が流れた場合に発熱部位が溶断してモータへの通電を遮断できるようにしたヒューズ領域付き気密端子がある。例えば、特許文献１には、気密端子の導電ピンの軸中間部に断面積の小さいネック部からなるヒューズ領域を設けて導電ピン自体に電流ヒューズ機能を持たせ、過電流が負荷されたときにモータが焼損しないようヒューズ領域が溶断して通電を遮断できるようにした気密端子が提案されている。

さらに、特許文献２には、導電ピンにヒューズ領域を設けるために、ピン素材をロール成形して、ピン素材にフランジを形成しヒューズ領域を郭定する小径の溝を成形する金型構造体と、それを用いた端子ピンの製造方法が提案されている。

しかしながら、従来のヒューズ領域付き気密端子は、導電ピンの一部を細径化し通電容量を小さくしたヒューズ領域を形成しておき、過電流が印加されたときには、このヒューズ領域が抵抗発熱による赤熱状態を経て溶融し断線に至るしくみとなっている。従って、従来のヒューズ領域付き気密端子は、鋼材や銅材製の導電ピンが過電流によって赤熱して断線するまで長時間を要し、溶断温度も１０００℃を越える高温となり危険である。また、都合よく導電ピンのヒューズ領域で断線するとは限らず、実際には導電ピンに配線された配線接合部などが先に断線することもあり、断線部位が定まらない危険があった。さらに、ヒューズ溶断に一定以上の時間を要すると、ヒューズ領域に近い絶縁シール材のガラスが先に溶融し冷媒内圧により導電ピンが抜けてしまう恐れがあった。このため、従来は特許文献２にように導電ピンに抜け防止のフランジを設けたり、特許文献３に記載されるように、絶縁シール材に高融点ガラス材を用いて溶融し難くしたりするなどの措置が必要であった。しかしながら、上述した従来の気密端子は、特殊な高融点ガラス材を用いるため材料費の上昇やガラス封着工程の作業温度をより高温に設定変更する必要があり、製品コストや生産エネルギー効率の観点で必ずしも好ましいものではなかった。

特開昭６１−１３５０７４号公報 特開昭６３−０２１７７４号公報 特開平０６−０６０９２８号公報

本発明は、絶縁シールされた容器内部に溶断性のヒューズエレメントを配置することで安全性を高めたヒューズ付き気密端子を提供することを目的とする。

本発明によると、中空の筐体とこの筐体を開口する少なくとも１対の貫通孔を有するアイレットと、貫通孔に挿通した少なくとも１対の導電ピンと、この導電ピンの間を架橋して該筐体内に収容したヒューズエレメントと、導電ピンをアイレットの貫通孔に密閉封着する絶縁シール材とを備えたことを特徴とするヒューズ付き気密端子が提供される。１対の導電ピンは、例えば、銅芯スチールジャケット材などの芯材とジャケット材からなる複合金属ピンを用いてもよい。さらにピン径や芯材を互いに異なった構成にしてもよい。また、この１対の導電ピンは、互いに中心軸をずらしてアイレットに取り付けてもよい。

本発明に係るヒューズ付き気密端子は、導電ピンの間を架橋するヒューズエレメントを筐体の内部に設けて、このヒューズエレメントが異常過熱や過電流に感応して溶断し速やかに通電回路を遮断できるヒューズ付き気密端子である。ヒューズエレメントを速断性とすることで、絶縁シール材に高融点ガラスを用いることなく導電ピンを封止する絶縁材シール材の溶融抜けを防止できる。溶断動作を行うヒューズエレメントは、筐体内に配置されるため、外気や水分の侵入を防いでヒューズエレメントを保持でき、かつ溶断部を筐体内に限定できるので安全である。

本発明によると、少なくとも１対の導電ピンを互いに異なる構成にすることができる。例えば、アウターピンとインナーピンの電気抵抗を互いに違ったものにできる。電気抵抗値をアウターピン＜インナーピンとすると、インナー側をアウター側より常に通電熱量が多くなるように設計することが可能となり、絶縁材シール材の溶融抜けをインナー側のみに限定させることが容易となる。インナー側で溶融抜けが発生しても端子が２重構造（ダブルシール構造）であるので、端子を取り付けた容器内の気密性は損なわれない。従って、配線部が容器外に抜け落ちたり、内圧で端子ピンや冷媒、油脂類が外部に飛び出たりしないため安全である。

アウターピンとは、本発明に係るヒューズ付き気密端子を取り付けるハウジングの外側に配置された電源装置などの外部装置に接続される導電ピンを、インナーピンとは、該気密端子を取り付けたハウジング内に配置されるモータや制御装置などの内部装置に接続させる導電ピンをいう。なお、本発明の気密端子に付帯する筐体は上記ハウジングに属さない。

本発明に係るヒューズ付き気密端子１０の平面図を示す。 本発明に係るヒューズ付き気密端子１０を示し、図１のＡ−Ａで一部を切断した正面断面図を示す。 本発明に係るヒューズ付き気密端子１０の下面図を示す。 本発明に係るヒューズ付き気密端子２０を示し、図１のＡ−Ａ相当部で一部を切断した正面断面図を示す。 本発明に係るヒューズ付き気密端子３０を示し、図１のＡ−Ａ相当部で一部を切断した正面断面図を示す。

本発明に係るヒューズ付き気密端子は、中空の筐体とこの筐体を開口する少なくとも１対の貫通孔を有するアイレットと、貫通孔に挿通した少なくとも１対の導電ピンと、この導電ピンの間を架橋して該筐体内に収容したヒューズエレメントと、導電ピンをアイレットの貫通孔に密閉封着する絶縁シール材とを備えたことを特徴とする。

例えば、図１ないし図３に示される気密端子１０のように、キャビティ１１および貫通孔１２−１を設けた第１アイレット１３と、第１アイレット１３に係合して筐体を形成し貫通孔１２−２を設けた第２アイレット１４と、第１アイレット１３の貫通孔１２−１または第２アイレット１４の貫通孔１２−２に挿通して筐体の内側および外側に延在する少なくとも１対の導電ピン１５と、この導電ピン１５を第１アイレット１３または第２アイレット１４に密閉封着する絶縁シール材１６を備え、さらに第１アイレット１３の導電ピン１５と第２アイレット１４の導電ピン１５との間を架橋したヒューズエレメント１７を該筐体内に収容したことを特徴とする。１対の導電ピン１５は、筐体内に配置されたヒューズエレメントによって導通される。キャビティ１１は、２つのアイレットのうち、少なくとも片側のアイレットに設けられるが、図２に示すように両方のアイレットにそれぞれ形成させてもよい。

本発明のヒューズエレメントは、可溶性金属材であればよく特に限定されないが、一例として、はんだ合金、銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銀および銀合金などが好適である。第１アイレット１３および第２アイレット１４は、炭素鋼、ステンレス鋼、Ｆｅ−Ｎｉ合金などのＦｅ系金属材が好適である。導電ピン１５は、Ｆｅ−Ｃｒ合金、Ｆｅ−Ｎｉ合金などの合金材、または銅芯材に鋼材、Ｆｅ−Ｃｒ合金、Ｆｅ−Ｎｉ合金などのジャケット材を被覆した複合金属材が好適である。この導電ピンを第１アイレット１３または第２アイレット１４に密閉封着する絶縁シール材１６は、耐熱性絶縁材であればよく特に限定されないが、一例として、ソーダライムガラス、ソーダバリウムガラス、ホウ珪酸ガラスなどのガラス材またはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。

さらに、本発明に係るヒューズ付き気密端子は、ヒューズエレメント内蔵導電ピンを用いてもよい。即ち、中空の筐体とこの筐体を開口する少なくとも１対の貫通孔を有するアイレットと、貫通孔に挿通した少なくとも１対の導電ピンと、導電ピンをアイレットの貫通孔に密閉封着する絶縁シール材とを備え、導電ピンは、可溶性金属の芯材とその表面を覆ったジャケット材からなり、所定部位で前記芯材を露出させてヒューズエレメントとし、このヒューズエレメントを該筐体内に収容させてもよい。

本発明に係る実施例１のヒューズ付き気密端子１０は、図１ないし図３に示されるように、コンプレッサのモータユニットのハウジングに設けられた装着孔に固定できるように片方のアイレットにフランジを設けた気密端子であり、キャビティ１１および３つの貫通孔１２−１を設けた炭素鋼からなる第１アイレット１３と、３つの貫通孔１２−２を設け前記第１アイレット１３と接合することで筐体を形成する第２アイレット１４と、貫通孔１２−１または貫通孔１２−２に挿通して筐体の内側および外側に延在する導電ピン１５と、この導電ピン１５を第１アイレット１３または第２アイレット１４に密閉封着するホウ珪酸ガラス製の絶縁シール材１６を備え、さらに第１アイレット１３の導電ピン１５と第２アイレット１４の導電ピン１５との間を架橋した可溶性金属材からなるヒューズエレメント１７を該筐体内に収容したことを特徴とする。

キャビティ１１は、図２に示すように両方のアイレットにそれぞれ形成させる。導電ピン１５は、第１アイレット１３および第２アイレット１４に封着された上下１組で１対をなし、気密性の筐体内に配置されたヒューズエレメントによって導通される。導電ピン１５は、銅の芯材１５−１とＦｅ−Ｃｒ合金製のジャケット材１５−２からなる複合金属ピンを用いる。銅芯径は、第１アイレット１３に封着するアウターピンの銅芯径を太くし、第２アイレット１４に封着したインナーピンの銅芯径をそれより細くすることで、導電ピンの電気抵抗値をアウターピン＜インナーピンとし、インナー側の通電熱量がアウター側より大きくなるよう構成する。これにより、万一、絶縁材シール材の溶融抜けが発生しても、そのタイミングを常にインナー側のシール溶融が先になるようにして、シール抜けをケース内に止めることができる。インナー側に溶融抜けが発生しても端子が２重構造（ダブルシール構造）であるので、端子を取り付けた容器内の気密性は損なわれず、配線コードや導電ピンが冷媒、油脂類と共に容器外に抜け落ちたりしないため安全である。なお、導電ピン１５には、ピンの端部側面に図１ないし図３に示すような配線接続のための端子板１８を接合してもよい。

本発明に係る実施例２のヒューズ付き気密端子２０は、上述のヒューズ付き気密端子１０の第１アイレット１３と第２アイレット１４の貫通孔の軸位置をずらして、封着される導電ピン２５が互いに突き当らない様に構成した変形例である。図４に示されるように、キャビティ２１および３つの貫通孔２２−１を設けた炭素鋼からなる第１アイレット２３と、３つの貫通孔２２−２を設け前記第１アイレット２３と接合することで筐体を形成する第２アイレット３４と、貫通孔２２−１または貫通孔２２−２（破線で表した隠れた部分）に挿通して筐体の内側および外側に延在する導電ピン２５と、この導電ピン２５を第１アイレット２３または第２アイレット２４に密閉封着するソーダバリウムガラス製の絶縁シール材２６を備え、さらに第１アイレット２３の導電ピン２５と第２アイレット２４の導電ピン２５との間を架橋した可溶性金属材からなるヒューズエレメント２７を該筐体内に収容したことを特徴とする。

キャビティ２１は、図４に示すように両方のアイレットにそれぞれ形成させる。導電ピン２５は、第１アイレット２３および第２アイレット２４に封着された上下１組で１対をなし、気密性の筐体内に配置されたヒューズエレメントによって導通される。導電ピン２５は、銅の芯材２５−１とＦｅ−Ｃｒ合金製のジャケット材２５−２からなる複合金属ピンを用いる。銅芯径は、第１アイレット２３に封着するアウターピンの銅芯径を太くし、第２アイレット２４に封着したインナーピンの銅芯径をそれより細くすることで、導電ピンの電気抵抗値をアウターピン＜インナーピンとし、インナー側の通電熱量がアウター側より大きくなるよう構成する。これにより、万一、絶縁材シール材の溶融抜けが発生しても、そのタイミングを常にインナー側のシール溶融が先になるようにして、シール抜けをケース内に止めることができる。さらに上下の導電ピンの軸をずらし重なりを無くしたことで、インナー側で溶融抜けが発生しても、突き上げて来たインナーピンがアウターピンに接触して再導通するのを防ぐ効果がある。ヒューズ付き気密端子２０は、端子が２重構造（ダブルシール構造）であるので、端子を取り付けた容器内の気密性は損なわれず、配線コードや導電ピンが冷媒、油脂類と共に容器外に抜け落ちたりしないため安全である。導電ピン２５には、ピンの端部側面に図４に示すような配線接続のための端子板２８を接合してもよい。なお、ヒューズ付き気密端子２０の平面図並びに下面図は、第１アイレットと第２アイレットの貫通孔の軸位置を互いに６０度ずらせて構成している点を除いて図１並びに図３と同一形状であるので省略する。

本発明に係る実施例３のヒューズ付き気密端子３０は、ヒューズエレメント内蔵導電ピンを用いたもので、図５に示されるように、キャビティ３１および３つの貫通孔３２−１を設けた炭素鋼からなる第１アイレット３３と、３つの貫通孔３２−２を設け前記第１アイレット３３に接合することで筐体を形成する第２アイレット３４と、貫通孔３２−１および貫通孔３２−２を貫通して筐体の内側および外側に延在する導電ピン３５と、この導電ピン３５を第１アイレット３３または第２アイレット３４に密閉封着するホウ珪酸ガラス製の絶縁シール材３６を備え、導電ピン３５は、銅の芯材３５−１とＦｅ−Ｃｒ合金製のジャケット材３５−２からなり、所定部位で銅芯材３５−１を露出させてヒューズエレメント３７とし、このヒューズエレメント３７を該筐体内に収容させたことを特徴とする。

キャビティ３１は、図５に示すように両方のアイレットにそれぞれ形成させる。導電ピン３５は、銅の芯材３５−１とＦｅ−Ｃｒ合金製のジャケット材３５−２からなる複合金属ピンを用い、この導電ピン３５の芯材がヒューズエレメントとして機能するように所定部のジャケット材３５−２を予め除去しておき、露出した銅芯材部分をそのままヒューズエレメント３７に用いる。ヒューズエレメント３７は気密性の筐体内に配置される。この導電ピン３５には、ピンの端部側面に図５に示すような配線接続のための端子板３８を接合してもよい。さらに、実施例２の様に導電ピン３５に曲げ加工を施して上下の導電ピンの軸をずらし重なりを無くして、インナー側で溶融抜けが発生しても、突き上げて来たインナーピンがアウターピンに接触して再導通するのを防いでもよい。なお、ヒューズ付き気密端子３０の平面図並びに下面図は、図１並びに図３と同一形状であるので省略する。

本発明は大電流対応型の気密端子に有効であり、特に密閉したハウジング内に収められた電気機器に信号や電源を供給する気密端子に好適である。例えば、冷凍機、空調機器などコンプレッサのモータユニットの気密端子に用いることができる。

１０，２０，３０・・・ヒューズ付き気密端子、
１１，２１，３１・・・キャビティ、
１２−１，２２−１，３２−１・・・第１アイレットの貫通孔、
１２−２，２２−２，３２−２・・・第２アイレットの貫通孔、
１３，２３，３３・・・第１アイレット、
１４，２４，３４・・・第２アイレット、
１５，２５，３５・・・導電ピン、
１５−１，２５−１，３５−１・・・芯材、
１５−２，２５−２，３５−２・・・ジャケット材、
１６，２６，３６・・・絶縁シール材、
１７，２７，３７・・・ヒューズエレメント、
１８，２８，３８・・・端子板。

Claims (6)

1. キャビティおよび貫通孔を設けた金属製の第１アイレットと、この第１アイレットに接合して筐体を形成し貫通孔を設けた金属製の第２アイレットと、前記第１アイレットの貫通孔または前記第２アイレットの貫通孔に挿通して筐体の内側および外側に延在する導電ピンと、この導電ピンを前記第１アイレットまたは前記第２アイレットに密閉封着するガラス材の絶縁シール材とを備え、さらに前記第１アイレットの導電ピンと前記第２アイレットの導電ピンとの間を架橋したヒューズエレメントを前記筐体の気密性の前記キャビティ内に収容したことを特徴とするヒューズ付き気密端子。
2. 前記導電ピンは、金属製の芯材と金属製のジャケット材からなる複合金属材であることを特徴とする請求項１に記載のヒューズ付き気密端子。
3. 前記導電ピンは、可溶性金属の芯材と、この芯材の表面を覆った前記芯材と異なる金属製のジャケット材からなり、所定部位で前記芯材を露出させてヒューズエレメントとし、このヒューズエレメントを前記筐体の気密性の前記キャビティ内に収容させたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のヒューズ付き気密端子。
4. 前記導電ピンは、アウターピンとインナーピンの電気抵抗が互いに異なることを特徴とする請求項１ないし請求項３の何れか１つに記載のヒューズ付き気密端子。
5. 前記貫通孔の軸位置をずらして、封着される導電ピンが互いに突き当らない様に構成したことを特徴とする請求項１ないし請求項４の何れか１つに記載のヒューズ付き気密端子。
6. 前記ヒューズエレメントは、はんだ合金、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銀または銀合金の群から選択された可溶性金属材からなることを特徴とする請求項１ないし請求項５の何れか１つに記載のヒューズ付き気密端子。

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