以下、本発明の実施形態について、図面を用いて以下に詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
[A.断熱部材]
まず、図1に本発明の一実施形態である断熱部材1の概略断面図を示す。本実施形態における断熱部材1は少なくとも伝熱材層4、空気層5と前記空気層5を維持するための構造体6を含む空隙層3、真空断熱材10よりなる断熱層2をこの順に積層した構成である。
本実施形態において断熱部材1は、断熱性を有し、断熱部材1で隔てられた保冷保温用箱体30の内部と保冷保温用箱体30の外部との間で熱(冷気)が移動することを防止する機能を有する積層体である。また、本発明において「断熱性」とは、熱、冷気の伝導による伝達を抑制する性質をいう。
また、本実施形態においては、断熱層2は、図2に示すように、それ自体、断熱性を有する真空断熱材10である。すなわち、後述するように、多孔質構造の芯材11を外被材12である積層フィルム等で被覆した後内部を減圧して封止した構造物を含む層であり、断熱部材1の一構成要素を示す用語として用いている。
本実施形態の断熱部材1においては、真空断熱材10よりなる断熱層2と内容物の側に向く伝熱材層4との間に、断熱性にきわめてすぐれた空気層5と前記空気層5を維持するための構造体6を含む空隙層3が存在するため、断熱層2と伝熱材層4との間の熱移動はきわめて少ない。従って、外部からの熱もしくは冷気は、断熱層2を形成する真空断熱材10にて断熱されるとともに熱伝導性が低い空気層5によって内部に移動することが妨げられる。
また、内部の熱もしくは冷気は、内側の熱容量が小さく、熱伝導性に優れる伝熱材層4により、速やかに均一化され温度ムラを生じない。また、内部の熱もしくは冷気は、熱容量が小さな伝熱材層4に隣接する熱伝導性が低い空気層5によって外部に移動することが妨げられる。従って、従来の発泡体に輻射熱の反射体としてアルミニウム箔、或いはアルミニウム蒸着フィルムを積層した断熱部材や、単独の真空断熱材10と比較してもきわめて高い断熱性を持つものである。
また、内面の熱伝導性に優れる伝熱材層4及び連接可能な空気層5により、速やかに均一化され温度ムラを生じないため、内容物の局所的な温度の変化が長時間に及ぶことによる内容物の局所的な劣化を防ぐことが可能となる。
従って、本実施形態の断熱部材1においては、真空断熱材10よりなる断熱層2と内容物の側に向く伝熱材層4との間に、断熱性にすぐれた空気層5と前記空気層5を維持するための構造体6を含む空隙層3を有することにより、優れた断熱性能を実現できると共に、内部の熱もしくは冷気を効率的に利用できる断熱部材1を実現できる。
本実施形態の断熱部材1は、後述するように、各層の保護、もしくは断熱部材1自体の耐久性を向上する目的で、必要に応じて断熱部材1の外面、もしくは、伝熱材層4、空隙層3、断熱層2の層間に保護層を形成することができる。
また、本実施形態の断熱部材1は、後述するように必要に応じて断熱部材1の外面、もしくは、伝熱材層4、空隙層3、断熱層2の層間に輻射熱反射層を形成することができる。輻射熱反射層を設けることにより、熱伝導に加えて、輻射による断熱性の低下を防ぐことが可能となり、より一層の断熱性能の向上が可能となる。
(1)伝熱材層
本実施形態における伝熱材層4は、熱伝導性が高い物質により形成される。具体的には熱伝導率が15W・m-1・K-1〜420W・m-1・K-1である金属、合金が使用可能であり具体的には、銅、銀、金、白金、アルミニウム、鉄やステンレス、真鍮等の金属やその合金などが挙げられる。コスト面での制約を設けなければ、熱伝導率が3000W・m-1・K-1〜5500W・m-1・K-1であるカーボンナノチューブ、熱伝導率が1000W・m-1・K-1〜2000W・m-1・K-1であるダイヤモンドも使用することが可能である。
なかでも、金属材料としてアルミニウムを用いることが好ましい。本実施形態の断熱部材1を軽量なものとすることができ、加工性を良好なものとすることができるからである。
また、黒鉛シートは、優れた熱伝導性と異方性とを有するものであり、より具体的には、その面方向の熱伝導率が、90W・m-1・K-1〜1000W・m-1・K-1程度を示し、その厚さ方向の熱伝導率が、0.1W・m-1・K-1〜10W・m-1・K-1程度を示すものであり、面方向の優れた熱伝導率と厚さ方向に低い熱伝導率は、本実施形態において好適である。
伝熱材層4の厚さとしては、所望の熱伝導性を示すことができれば特に限定されず、断熱部材1の用途等に応じて適宜選択することができる。伝熱材層4の厚さとしては、例えば、黒鉛シートであれば50μm〜200μmの範囲内、なかでも80μm〜150μmの範囲内、特に100μm〜140μmの範囲内であることが好ましい。伝熱材層4の厚さが薄すぎると、面方向での熱伝導性が確保できず、速やかな熱の移動により均一化され温度ムラが生じないという伝熱材層4の目的の達成が困難となる可能性があるからであり、伝熱材層4の厚さが厚すぎると、本実施形態における断熱部材の加工性が低下する可能性があるからである。一方、アルミ箔のような金属箔の場合は5μm〜50μm、特に5μm〜9μmがコスト的にも熱容量的にも好ましく用いられる。
(2)空隙層
本実施形態における空隙層3は、空気層5と前記空気層5を維持するための構造体6から成り、また、前記構造体6は厚み方向、もしくは、平面方向に連通可能に設けられている。
空隙層3は、伝熱材層4と断熱層2の両層の間に形成され、空隙層3が空気層5により高い断熱性を得るために設けられている。従って構造体6は、材質としては、熱伝導率が高くない材料が好ましく、構造的には、伝熱材層4と断熱層2と繋ぐ断面積が少ない方が好ましい。さらに、外力によって、空気層5がつぶれるなどして損なわれない強度が要求される。また、断熱部材1を変形可能なものとする際には変形に追随して破損しない構造が求められる。
構造体6を形成する材料としては、断熱部材1の用途により求められる特性に合わせて選択すればよく、金属、合金、無機酸化物、高分子材料、未晒しパルプ等木質または草本系繊維・パルプ材料、等いずれでもよいが、軽量であり、熱伝導性が低く、柔軟である観点から高分子材料が望ましい。本構造体6は、真空による圧力を受けるわけではないので真空断熱材10の芯材11ほどの強度は要求されず、従って、芯材11に比べると低密度に形成することが可能であり、空隙層3の厚み方向での熱伝導率を小さく保つことが可能である。
本実施例において構造体6は、図3、図4、図5には記載されていないが、空気層5を支える構造体6と接合する上面、及び下面を形成する平滑なシートや板を含んでいてもよい。このような構成とすることで、断熱部材1を製造する際に構造体6が空気層5を支える構造体6が単独では脆弱であったり、変形し易かったりしても構造を維持しやすくなり、取扱が容易となる。
厚み方向に連通可能に設けられている構造とは、図4に例示されるように、空隙層3と伝熱材層4との界面から空隙層3と断熱層2との界面まで空気が移動可能な十分な大きさの一つの空気層5でつながっている構造を示している。例えば中空の円柱、中空の多角柱によって代表される構造体6である。このような構造では、中空三角柱、中空四角柱、中空六角柱を隙間なく並べた広義のハニカム構造が、伝熱材層4と断熱層2と接する面積が少ないため構造体の熱伝導を低く抑えることができ、また、非常に丈夫であることから適している。特に図4に示すように、中空の六角柱を隙間なく並べたハニカム構造は、ハニカム構造の中でも伝熱材層4と断熱層2と接する面積が最小とすることができで好適である。
平面方向に連通可能に設けられているとは、図3に例示される段ボール状構造体のように、空気が移動可能な十分な大きさの一つの空気層5が平面方向に伸びている構造を示している。このようの構造においては、段ボールで言う中芯を頂点部で接合した上で2枚以上重ねた構造としてもよい。このような材料の代表的に例として、宇部日東化成株式会社製のプラスチック中空構造板 ツインコーンなどがある。また、段ボールの外側を形成するライナー(Liner)を形成した段ボール構造を2重、3重に積層した構造としてもよい。このような構造は(b)に示したA−A断面から見るとハニカム構造を形成しており、軽量であるが丈夫な構造体とすることができる。
また、図5に示したような凹凸形状は、一見すると厚さ方向にも、面方向にも連通しているようには見えないが、構造体6自体が空気を流通可能なメッシュ状の材料から成っていれば、空気は空隙層3を自在に移動可能であり、連通している状態であると言える。
このようなメッシュ状構造体6の代表的な材料としては、例えば旭化成ホームプロダクツ株式会社製 サランネット スクリーン、サランネット ハニカム等が挙げられる。また、同製品群の中でもハニカム織り(蜂の巣織り)であり、3次元的な形状を持つサランネット ハニカムは、柔軟性を持ったまま十分な広さの空隙層3を連通可能に、且つ、堅牢、軽量に形成するのに好適である。
また、空隙層3はその内部に空気層5を有するため、空気を取り込むことができることから、断熱部材の熱、冷気の伝導をより好適に抑制することができる。また、この場合、断熱材のみを用いた場合に比べて、本実施形態の断熱部材1の厚さ方向の経時的な熱の移動を少ないものとすることができるため、保冷保温用箱体30の内部の熱、冷気をより効率よく利用することができる。
空隙層3の厚さとしては、本実施形態の断熱部材1の用途等に応じて適宜選択することができる。空隙層3の厚さとしては、例えば、0.05mm〜50mmの範囲内、なかでも0.5mm〜10mmの範囲内、特に1mm〜5mmの範囲内であることが好ましい。空隙層3の厚さが上述した範囲内であることにより、断熱層2および伝熱材層4を良好に貼り合わせることができ、生産性が良好な断熱部材1とすることができる。
(3)断熱層
本実施形態において断熱層2は図2に示すように多孔質構造の芯材11を、ガスバリア性を有する外被材12で被覆した後内部を真空状態として、上記外被材12の端部を熱溶着することで形成される真空断熱材10である。真空断熱材10の内部を真空状態とすることにより、気体の熱伝導率が低下して熱移動が遮断されるため、真空断熱材10は高い断熱性能を発揮することができる。
また、真空断熱材の断熱性能を長時間維持するためには、外被材12の内部を長期にわたって高い真空状態に保持する必要がある。そのため、外被材12には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性、芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の種々の機能が要求される。
したがって、上記外被材12は、これらの各機能特性を有する複数のフィルムを有する積層体として構成されるものが好ましい。一般的な外被材12の態様としては、熱溶着層、ガスバリア層および保護層が積層されてなるものであり、各層間は接着剤等を介して貼り合されている。
真空断熱材10は、通常用いられる、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバ、炭化コルク、羊毛断熱材などに代表される繊維系の断熱材や、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリエチレン、発泡ゴムなどに代表される発泡系断熱材と比較して、低い熱伝導率を示し、本実施形態の様な小型、軽量で且つ優れた断熱性が求められる断熱層2としての用途において好適である。
真空断熱材10の断熱原理は、熱を伝える空気をできる限り排除し、気体による熱伝導を低減することである。従って、真空断熱体の性能を長期間維持するためには、初期の内部圧力をより低圧とする必要がある。真空断熱材10の外被材12内部は、通常、5Pa以下に脱気して真空状態とされ、対流による熱伝導が極力小さくなるよう形成される。真空度が5Paより大きいと、外被材内部に残存する空気が対流して、断熱性能が低下するので好ましくない。しかしながら、工業的レベルで高真空にすることは困難であり、実用的に達成可能な真空度は13Pa程度までである。
一方で、芯材11の種類が異なると、空隙間距離が変わり、内部圧力が同じでも気体同士の衝突回数が変わり、熱伝導が異なってくる。空隙距離が小さいほど、同じ内部圧力でも気体同士の衝突回数は減少し、それに伴い気体による熱伝導が小さくなる。つまり、空隙間距離が小さい芯材11を用いるほど、内部圧力が何らかの影響で上昇しても、気体の熱伝導による熱伝導率の上昇は少なく、断熱性能の低下も少ない。
真空断熱材全体の断熱性能は芯材11等の固体による熱伝導も加わるため、一概に空隙距離が小さいものほど断熱性能が優れるとは限らないが、目的によって、使い分けをすることが可能である。
本実施形態に用いられる多孔質の芯材11としては、限定するものではないが、繊維状芯材、粉末芯材が好ましい。繊維状芯材はその特長として、断熱性能に優れ、粉末芯材は繊維状芯材よりは断熱性能が若干劣るが、圧力増加に対する断熱性能の低下率が小さく、長期信頼性に優れる。
繊維状芯材として用いられる材料は、限定するものではないが、ガラス繊維、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等が好ましく、特にガラス繊維は安価で高性能な真空断熱材10を形成するため、最も望ましい。ガラス繊維は1μm〜20μmの範囲のものが好ましく、2μm〜10μmのものが芯材11としての剛性を備え、かつ生産性と熱伝導率の面でより好ましい。
また、粉末芯材として用いられる材料は、限定するものではないが、無機粉末材料の方が、もともと粉末保持し、減圧時に粉末から発生する気体(アウトガス)が少なく、好ましい。さらに、粉末芯材が平均一次粒子径100nm以下である乾式シリカであることが好ましい。
芯材11の材料は空隙間距離が短くなる粉体材料の方が、圧力依存性に優れるため、長期信頼性を得るためには繊維系材料よりも優れている。また、固体熱伝導率が低く、粉体芯材としてはシリカ系材料が真空断熱材用の芯材11として優れている。また、粒径も平均一次粒子径が100nm以下であることで、内部圧力に対する断熱性能の低下が小さく、優れており、このようなシリカ粉末は乾式法で作られる乾式シリカが該当する。
また、乾式シリカに対してカーボンブラック1〜30質量%を混合することで、乾式シリカ粉末のみを用いた真空断熱材10よりも断熱性能は向上する。
断熱性能向上のために乾式シリカに添加する粉末として、例えばカーボンブラックや酸化チタンなどは高温域で輻射防止材として働くことが知られているが、低温域でもカーボンブラック添加により大きな断熱性能向上が見られる。この理由は定かではないが、シリカ粉末とカーボンブラックとの何らかの作用により固体熱伝導性が低減されるためと考える。
粉末状カーボン材料の添加量は、乾式シリカに対して1〜30質量%がよい。これは、添加量が少なすぎると断熱性能向上の効果がなく、多すぎると断熱性能が粉末状カーボン材料に依存するようになり断熱性能が悪化することや、減圧下でガス発生が多くなり経時的に断熱性能が悪化するからである。
また、繊維状芯材と粉末芯材を複合化したものとして、前記乾式シリカに、ガラス繊維材料を混合し、前記ガラス繊維材料が平均繊維径10μm以下で、芯材11に対する含有量が0.5〜40質量%であり、加圧して成形したものが好ましい。
乾式シリカは真空断熱材10の芯材11としては優れた性能を有するが、密度が小さいため、取扱いにくく、充填するために不織布内に一旦封止する必要があり、コストや工程数が増大する。そのため、乾式シリカを固形化して、封入することが工程上、優れる。
固形化手段として、一般的なシリカ粉末と繊維材料を混合撹拌し、加圧成形しても成形体にはならないが、平均一次粒子径が100nm以下の乾式シリカと、繊維材料とを混合、加圧成形することで、成形体を形成することができる。この要因として、粒子径の小さい粉末同士であるため分子間力が働き粉末同士が付着する、あるいは乾式であるため表面官能基が少なく相互反発が少ないため粉末同士が付着しやすいこと等が考えられ、したがって、加圧等の成形方法により成形体を作製するためには、平均一次粒子径100nm以下の乾式シリカと繊維材料を用いる必要がある。
また、ガラス繊維材料を、平均繊維径10μm以下とすることで、ガラス繊維の繊維径が小さいため比表面積が大きくなるすなわち表面エネルギーが大きくなり粉末と結びつきやすくなる、また、シリカ粉末はガラス繊維と親和性のよい組合せであるため相互に付着しやすい、あるいはそれらの相互作用によること等が考えられ、したがって、加圧等の成形方法により成形体を作製する際に、平均繊維径10μm以下のガラス繊維材料を用いることで、より強固な成形体を作製することができる。
さらに、粒子径の非常に細かい乾式シリカと繊維径の小さいガラス繊維材料を用いることにより、粉立ちのほとんどない成形体が得られる。この理由は、上記のように粒子径の小さい粉末同士の分子間力、表面官能基が少ないことによる粉末同士の付着、シリカとガラス繊維との良好な親和性、細い繊維材料の大きな表面エネルギー等が考えられる。また、上記組合せにより強固な成形体を得るとともに、弾性も有しているため可撓性をも有する成形体を得ることができる。
この理由は、平均繊維径が10μm以下の繊維を用いているため曲げ弾性が向上し、可とう性を有することができる等が考えられる。
繊維添加量が芯材11に対して0.5〜40質量%であるのは、添加量が少なすぎると成形体形状を保てないし、多すぎると断熱性能が繊維に依存するようになり断熱性能が悪化するからである。
繊維状芯材は、ランダムな方向に向いていた繊維が一方向加圧すると加圧方向と垂直な方向に配向する。通常は、密度を調整するために、バインダーを加え、加熱しながら加圧することで成形体となる。繊維状芯材は繊維方向に固体熱伝導が起こるため、従って、加圧等による配向方向と平行な向きに、固体熱伝導が伝わりやすい。反対に配向方向とは垂直な方向では繊維と繊維は点接触となり、固体熱伝導は大きく減少する。従って、断熱性能は配向方向と垂直な方向の方が高い。従って、真空断熱材10の伝熱方向に対し、繊維状芯材の配向方向と略垂直な方向に真空断熱材10を設置することで、効果的な断熱性能を発現することができる。
実際には、繊維状芯材の配向方向を真空断熱箱体の伝熱方向に対し完全な垂直にすることは、伝熱方向が一様でないこと、繊維状芯材が完全に配向しているわけではないこと等から困難なため、略垂直方向とし、略垂直方向とは、主となる伝熱方向に対し、70〜110度の角度内にあればよい。
真空断熱材10の初期断熱性能および経時断熱性能をより一層向上させる目的で、真空断熱材内に真空断熱材内の気体を吸着するための気体吸着材や、水分を吸釈するための水分吸着剤を備えることもできる。気体吸着材や水分吸着剤を備えることで、内圧差により、外被材12や熱接着部13から侵入してくる気体や水分を吸着し、真空断熱材10の内部を高い真空状態に維持することができ、長期信頼性をさらに高めることができる。
気体吸着材や水分吸着剤の吸着機構は、物理吸着、化学吸着、および吸蔵、収着等のいずれでもよいが、非蒸発型ゲッターとして作用する物質が良好である。具体的には、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイト等の物理吸着剤である。
また、化学吸着剤としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、特に、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムが効果的に作用する。また、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カルシウム、炭酸リチウム、不飽和脂肪酸、鉄化合物等も効果的に作用する。また、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム等の物質を単独、もしくは合金化したゲッター物質を適用するのがより効果的である。
さらには、このような前記ゲッター物質を少なくとも窒素、酸素、水分、二酸化炭素を吸着除去するため、種々混合して適用することも可能である。
真空断熱材10の製造方法は、まず外被材12を作製し、その後外被材12中に芯材11を挿入し内部を減圧し封止してもよく、あるいは、減圧槽中に芯材11とロール状あるいはシート状の積層フィルムからなる外被材12を設置し、ロール状あるいはシート状の外被材12を芯材11に沿わせた状態にしてから外被材12を熱溶着することにより、真空断熱材10を作製してもよく、特に指定するものではない。
本実施形態に用いられる真空断熱材10のガスバリア性を有する外被材12としては、ガスバリア性として、酸素透過度および水蒸気透過度がそれぞれ0.5cm3/m2・day以下、および、0.2g/m2・day以下であることが好ましく、0.1cm3/m2・day以下、および、0.1g/m2・day以下であることがより好ましい。
ガスバリア性を有する外被材12の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、真空断熱材外部から浸透した水蒸気や酸素は上記ガスバリア層で留まり、真空断熱材の内部まで浸透することができないため、内部の真空状態を保持することができる。
なお、上記酸素透過度は、JIS−K−7126Bに基づき、温度23℃、湿度90%RHの条件下において酸素透過度測定装置(米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN))を用いて測定した値である。
また、上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置(米国モコン(MOCON)社製、パ−マトラン(PERMATRAN))を用いて測定した値である。
さらに、真空断熱材10のガスバリア性を有する外被材12の素材には、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタニウム等の金属材料及びこれらよりなる金属箔、ガラス材料、また、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、MXD6系の結晶性ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコール、結晶性ポリエチレンテレフタレート、結晶性シンジオタクチックポリスチレン等のバリア性樹脂などが使用できる。
また、ポリビニルアルコール樹脂フィルム(PVA)、ポリアミド樹脂フィルム(PA)エチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)等の樹脂材料に、金属、酸化珪素、酸化アルミニウムなどの酸化金属、ダイヤモンドライクカーボン等からなる皮膜を形成することで、さらなるバリア性を付与し、信頼性を向上させることができる。
また、樹脂材料にアルミニウム箔積層フィルム、アルミニウム蒸着積層フィルム等の金属箔積層フィルムをインサート成形したものでも、信頼性を向上させることができる。さらに、真空断熱材10のバリア性素材には樹脂フィルムにアルミニウム等の金属箔を積層した積層フィルムを用いることが好ましい。金属箔はバリア性が非常に高く、信頼性が高い。また、箔ではなく蒸着層でも優れたバリア性を生じる。
また、金属ではなく酸化珪素、酸化アルミニウムなどの酸化金属、ダイヤモンドライクカーボン等の無機材料の蒸着でも高いバリア性を有する。また、ステンレスや鉄などの金属材料や、また、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、MXD6系の結晶性ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコール、結晶性ポリエチレンテレフタレート、結晶性シンジオタクチックポリスチレン等のバリア性樹脂を用いても良い。また、樹脂材料に、金属、酸化珪素、酸化アルミニウムなどの酸化金属、ダイヤモンドライクカーボン等からなる皮膜を形成することで、さらなるバリア性を付与し、信頼性を向上させることができる。
また真空断熱材10の外被材12は熱溶着層を有しする積層フィルムを用い、前記熱融着層が熱溶着されて、真空断熱材10が密封される構造であってもよい。熱溶着層にポリエチレンを用いると、ポリエチレンは比較的低い温度で溶着できるので、追加加熱による溶着が容易で、より低コストで真空断熱材10を提供することができる。
また、熱溶着層は芯材11に沿って前記芯材の際まで熱溶着されていることが好ましい。熱溶着層が芯材11に沿って芯材の際まで熱溶着されていると、シール性が向上し、外被材の間に芯材のない部分(ヒレ部分)を芯材11の際まで、切断することが可能となり、真空断熱材の占める面積が向上でき、真空断熱箱体の性能を向上することができる。
また、積層フィルムの最外層に保護層を有する場合は、最外層に表面保護を目的とした材料を配設することで、より確実な耐傷付き性や耐突き刺し性を発揮させてピンホール等の発生を抑制する作用を有し、長期信頼性を有する真空断熱材10を提供することができる。その中でポリエチレンテレフタレートは安価な材料であり、より低コストで真空断熱材10を提供することができる。
真空断熱材10の外被材12が積層フィルムからなる際には、公知の方法で積層することにより製造することができる。その積層方法としては、ポリエステル−イソシアネート系、ポリエーテル−イソシアネート系、ポリウレタン−イソシアネート系等の接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱可塑性樹脂をTダイより熱溶融押出しして貼り合せる押出しラミネーション法が用いられる。また、真空断熱材10の外被材12においては、印刷層を設けてもよい。
一般的な外被材12の態様としては、熱溶着層、ガスバリア層および保護層が積層されてなるものであり、各層間は接着剤等を介して貼り合されているものであることが好ましい。
図2に、本実施形態の真空断熱材10の一構成例の模式的断面図を示す。本実施形態の真空断熱材10は、真空断熱材用の外被材12の内に、芯材11が封入され、外被材12の内部が脱気されて真空状態とされてなるものである。真空断熱材10は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、一対の真空断熱材10の外被材12を、開口部となる一端を除く三方の周縁をヒートシールすることにより熱接着部13を設けて、袋状に製袋した外被材12とする。その後、この外被材12の開口部より芯材11を収容して、外被材12の内部を脱気し真空状態とすることにより外被材12を芯材11に密着させた後、開口部をヒートシールすることにより、真空断熱材10を得ることができる。ここで、外被材12の袋形状は四方シール袋、ガゼット袋、三方シール袋、ピロー袋、センターテープシール袋等の適宜形状とすることができ、特に限定されるものではない。
断熱層2を形成する真空断熱材10は、市販されているものを用いてもよく、パナソニック株式会社製の高機能真空断熱材 U−VacuaやChip−Vacua、旭ファイバーグラス株式会社製の真空断熱材 ビップエース (VIP−A)などを用いることができる。
断熱層2を形成する材料の熱伝導率としては、所望の断熱性を示すことができれば特に限定されないが、例えば、100mW・m-1・K-1以下、なかでも50mW・m-1・K-1以下、特に25mW・m-1・K-1以下であることが好ましい。
断熱層2の熱伝導率が大きいと、断熱層2が十分な断熱機能を発揮することが困難となるか
らである。
また、断熱層2を形成する材料の比熱としては、所望の断熱性を示すことができれば特に限定されないが、例えば、0.5kJ・g-1・K-1〜2.0kJ・g-1・K-1程度であり、なかでも0.8kJ・g-1・K-1〜1.5kJ・g-1・K-1の範囲内、特に1.0kJ・g-1・K-1〜1.4kJ・g-1・K-1の範囲内であることが好ましい。
断熱層2の厚さとしては、所望の断熱性を有することができれば特に限定されず、本実施形態の断熱部材1の用途等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1mm〜100mmの範囲内、なかでも5mm〜80mmの範囲内、特に8mm〜50mmの範囲内であることが好ましい。
断熱層2の厚さが厚すぎる場合は、本実施形態の断熱部材1が重くなり、保冷保温用箱体30に配置することが困難となる可能性があるからである。一方、断熱層2の厚さが薄すぎると十分な断熱性を発揮することが困難となる場合や、断熱層2が破損等し易くなる可能性があるからである。また、本実施形態においては、上述した数値範囲内において、断熱層2の厚さは薄いことがより好ましい。本実施形態の断熱部材1においては、熱伝導が極めて低い空気層5を含む空隙層3を有することにより、保冷保温用箱体30の内部から外部への熱、冷気の伝導を抑制することができるため、断熱層2の厚さを薄くした場合も、良好な断熱性を示すことができるからである。また、この場合、本実施形態の断熱部材1を軽量なものとすることができ、加工性を良好なものとすることができる。
(4)その他の構成
・輻射熱反射層
本実施形態における断熱部材1は、必要に応じて輻射熱反射層を設けることができる。
輻射熱反射層は、輻射による熱を遮断する目的で設けられる赤外線反射特性を有する層である。輻射熱反射層を設けることにより、熱伝導に加えて輻射による熱の移動を緩和することが可能となり、より優れた断熱性能を付与することが可能となる。
このような輻射熱反射層の材料としては、例えば、金属層、樹脂フィルム基材、金属蒸着膜が形成された樹脂フィルム基材(金属蒸着フィルム基材)などを挙げることができる。
金属層に用いられる金属材料としては、例えば、鉄、銅、金、白金、アルミニウム等を挙げることができる。本実施形態においては、なかでも、金属材料としてアルミニウムを用いることが好ましい。本実施形態の断熱部材1を軽量なものとすることができ、加工性を良好なものとすることができるからである。
また、樹脂フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材等の一般的な樹脂フィルム基材を用いることができるため、ここでの説明は省略する。また、金属蒸着フィルム基材に用いられる金属材料、樹脂フィルム基材については上述したものを用いることができる。また、金属蒸着フィルム基材としては、アルミニウム蒸着フィルム基材であることが好ましい。
・保護層
本実施形態における断熱部材1は、必要に応じて保護層を設けることができる。保護層は、伝熱材層4や輻射熱反射層に金属箔もしくは金属蒸着フィルム基材を使用した場合の腐食、酸化の防止、断熱部材1自体の強度の向上を目的として設けることにより、断熱部材1の耐久性を向上するものである。
保護層の材料としては、断熱部材1の用途により求められる耐久性と特性に従って適宜選択することができる。無機材料、高分子材料もしくはその混合物のいずれも使用することができる。また、その形成方法は、蒸着、塗布、貼り合わせのいずれの方法を用いることもできる。
求められる耐久性と特性は用途によって適宜選択できるとは、例えば輸送用の保冷保温箱の場合は耐水性、住宅やビルなど住空間建築物の場合には所定の通気性を満たすことである。
また、保護層の厚さとしては、伝熱材層4上に設ける場合には保護できる強度と伝熱材層が金属の場合、酸化や腐食に対する耐性を示すことができれば特に限定されないが、例えば、2μm〜50mmの範囲内、中でも10μm〜3mmの範囲内、特に20μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。保護層の厚さが厚すぎる場合、伝熱材層4まで熱や冷気が伝わりにくくなるため、伝熱材層4が機能を発現しにくくなる場合があるからである。また、本実施形態の断熱部材1の加工性が低下する可能性があるからである。また、保護層の厚さが薄すぎる場合は、強度を十分なものとすることが困難となる可能性があるからである。例えば所定の通気性のみが重要となる場合には保護層は薄いほうが好ましく、0.5μm〜5.0μmの厚みでも良い。
(5)断熱部材の形成方法
伝熱材層4、空隙層3、及び断熱層2の配置方法としては、例えば、伝熱材層4、空隙層3、及び断熱層2を接着剤等を用いて貼り合わせてもよく、伝熱材層4を接着剤を用いて空隙層3に貼り合わせ、空隙層3の伝熱材層4側とは反対側の表面と断熱層2の表面とを接着剤を用いて貼り合わせてもよい。また、断熱層2で構成される容器の一部に本実施形態の断熱部材1を適用する場合、すなわち容器成形する場合には、伝熱材層4または伝熱材層4、空隙層3および断熱層2の積層シートを金型の中へ装着してから、雌雄の金型を合わせ密閉した後、発泡樹脂を射出成形するいわゆるインサート成形法を用いてもよい。
接着剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂を主成分とする共重合体を使用することもできる。なお、これら接着剤は1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、イソシアネートまたはポリイソシアネートあるいはエポキシアクリレート等を硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂またはエポキシ系樹脂も適用し得る。
(6)用途
本実施形態の断熱部材1は、自動車、電化製品、物流関連の保冷庫、保温庫、建築物等の種々の保冷保温用箱体30に用いることができる。
[B.保冷保温用箱体]
本実施形態によれば、上述した断熱部材1が少なくとも一部に配置されていることから、保冷保温用箱体30の内部の温度をより良好に所望の温度で定温維持できる。本実施形態の保冷保温用箱体30について具体例を挙げて説明する。
図6(a)は、本実施形態の保冷保温用箱体の一例を示す分解斜視図であり、図6(b)は図6(a)のG−G断面での断面図である。図6(a)、(b)に示す保冷保温用箱体30は、身箱31と蓋箱32とを有する保冷保温用箱体30と、身箱31の内部の5つの面、及び蓋箱32の内部の1つの面に配置された断熱部材1とを有するものである。また、断熱部材1はその伝熱材層4の側が身箱31の内部側に向き、断熱層2側が身箱31の外部側を向くように配置されている。
図6(a)、(b)に示す保冷保温用箱体30は、上述した断熱部材1を有することにより、例えば、保冷剤44を入れた場合に、身箱31及び蓋箱32の内部に位置する伝熱材層4の面方向に保冷剤44の冷気を良好に伝導させることができるため、保冷保温用箱体30の側面の内部を短時間で所望の温度に均一に変化させることができ、また、保冷保温用箱体30の内部から断熱部材1の厚さ方向に冷気が逃げることを防止することができるため、保冷剤44による冷却効果を長時間維持することができる。また、保冷剤44の代わりに保温剤を用いた場合も、同様に保温剤による加熱効果を長時間維持することができる。
また、図示はしないが、保冷保温用箱体30が自動車、電化製品、建築物等の場合、これらの保冷保温用箱体30は、通常、冷暖房や加熱冷却機構等の電気エネルギーを供給することにより加熱冷却効果を発揮する加熱冷却手段とともに用いられる。
このような保冷保温用箱体30に上述した断熱部材を配置した場合は、加熱冷却手段から発生した熱、冷気を保冷保温用箱体30に配置された断熱部材1の伝熱材層4面方向に伝導させることができ、また、上述した熱、冷気が断熱部材の厚さ方向に逃げることを防止することができるため、加熱冷却手段の駆動時間、駆動出力を小さくすることができるため、その電気エネルギーを少ないものとすることができる。よって、省エネルギー化に対応した物とすることができる。
更に、保冷保温用箱体30の内面が単独の真空断熱材10よりなる場合は、輸送中の振動などにより、内容物との接触によって外被材12に損傷を生じると真空断熱材10の中の真空が保てなくなり、断熱効果が著しく低下する。しかし本実施形態における保冷保温用箱体30は、内面に伝熱材層4と空隙層3が存在しているため、内容物と真空断熱材10が直接接触することがない。また、空隙層3が、緩衝層としての働きをするため、保冷保温用箱体30の内面に物品が接触した際にも外被材12のダメージは最小限に抑えられる。従って、保冷保温用箱体30は、耐久性が高く信頼性の高い保冷保温性を有する物となる。
特に簡易な保温保冷用箱30の場合、この耐久性の向上は、別途、保温保冷用箱30の内面保護のため内箱を設けるなどの必要が無くなり、輸送コストの低減、及び輸送エネルギーの低減に貢献する。
以下、本実施形態の保冷保温用箱体30について説明する。
1.断熱部材
本実施形態に用いられる断熱部材1は、保冷保温用箱体30の一部に配置されるものである。断熱部材の配置としては、通常、保冷保温用箱体30の内部側に断熱部材1の伝熱材層4側が向くように配置される。また、断熱部材1は保冷保温用箱体30の一部に配置されていればよく、例えば、保冷保温用箱体30が箱状の場合は、箱状の保冷保温用箱体30の内部の一面に配置されてもよく、複数面に配置されてもよく、全面に配置されてもよい。また、断熱部材1が配置される面積については、本実施形態の保冷保温用箱体30に応じて適宜選択することができる。本実施形態においては、断熱部材1を広範囲に配置することが好ましい。
また、保冷保温用箱体30自体が断熱層2と同一の材料で構成されている場合は、保冷保温用箱体30の一部が本実施形態における断熱部材1と一体に形成されていてもよい。
2.保冷保温用箱体
本実施形態の保冷保温用箱体30は、上述した断熱部材1がその一部に配置されているものである。
このような保冷保温用箱体30としては、例えば、建築物、自動車、電車、船舶、飛行機、電化製品、物流関連の保温保冷手段、あるいはコンテナ、保温保冷庫、保温保冷性のある輸送箱等が挙げられるがこれに限定されない。
保冷保温用箱体が建築物である場合、上記断熱部材1は、例えば、壁材、屋根材等に用いることができる。保冷保温用箱体が自動車、電車、船舶、飛行機等である場合は、上記断熱部材1は、例えば、窓部分以外の本体部分に用いることができる。また、保冷保温用箱体30が電化製品である場合は、上記断熱部材1は、例えば、冷蔵庫の本体部分に用いることができる。また、保冷保温用箱体30が物流関連の保温保冷手段である場合は、例えば、箱状、バッグ状、シート状の種々の保温保冷手段に用いることができる。
本実施形態は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本態様の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
伝熱材層4として厚み12μmのアルミ箔(熱伝導率 200W・m-1・K-1)を用いた。また、空隙層3を形成する構造体6として塩化ビニリデン系合成樹脂の太さ600デニールの繊維を縦40本/2.54cm、横35本/2.54cmにてハニカム織り(蜂の巣織り)したメッシュ(旭化成ホームプロダクツ株式会社製 サランネット ハニカム 9600−6)で積層前の開口率45.5%のものを用いた。伝熱材層4と空隙層3を形成する構造体6とは接着剤で貼り合わせた。接着剤は、酢酸ビニル系エマルジョン(コニシ製、木工用ボンド即乾)を用いて含浸8g/m2(乾燥後の重量)となるように塗布した。
本実施例に係る真空断熱材10の外被材12として、熱溶着層、ガスバリア層および保護層が積層されてなる構成を次の手順で作製した。
第1保護層として、両面に易接着処理が施された膜厚25μmのポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製 製品名:ONM)の易接着面に、上述の配合比で調製した層間接着剤を塗布量3.5g/m2となるようにダイコーターを用いて塗布し乾燥させた。その後、第2保護層として両面を易接着処理された膜厚12μmのPETフィルム(ユニチカ株式会社製 製品名:PET)を、層間接着剤が塗布された第1保護層の表面に積層した。
次に、得られた2層フィルムのPET(第2保護層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/m2で塗布し乾燥させた。ガスバリア層として膜厚6μmのアルミニウム箔(住軽アルミ箔株式会社製 製品名:1N30)を、層間接着剤が塗布された第2保護層の表面に積層した。
続いて、得られた3層フィルムのAl箔(ガスバリア層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/m2で塗布し乾燥させた。熱溶着層として、ハイレトルト用CCPフィルム(膜厚50μm)を、層間接着剤が塗布されたガスバリア層の表面に積層し、本実施例に係る真空断熱材10の外被材12を得た。
本実施例に係る真空断熱材10の芯材11は、グラスウールボードで、140℃の乾燥炉で1時間乾燥したものを使用した。
本実施例に係る真空断熱材10は、この芯材11を製袋した外被材12中に挿入し、内部を10Paまで減圧し、開口部を熱溶着により封止することにより作製した。真空断熱材10の密度は150kg/m3としたものを用いた。
内寸が240mm×155mm、内部の高さPが150mm、側面部分の厚さ20mm、底面部分の厚さ20mm、蓋部分の厚さ20mmである輸送用真空断熱材製の身蓋箱の6つの面の内部表面と、上述した伝熱材層4と空隙層3の積層体とを、上記内部表面と空隙層3が対向するようにホットメルト接着剤(PPET2110、東亜合成)を熱溶融させて貼り合わせた。真空断熱材10の外被材12はポリアミド25μm/PET12μm/AL6μm/CCP50μmフィルムで表層はポリアミドであった。以上により保冷保温用箱体30として実施例1に係る断熱部材付箱体40を得た。
[実施例2]
伝熱材層4として厚み12μmのアルミ箔(熱伝導率200W・m-1・K-1)を用いた。また、空隙層3を形成する構造体6として塩化ビニリデン系合成樹脂の太さ1000デニールの繊維を縦20本/2.54cm、横20本/2.54cmにて平織りしたメッシュ(旭化成ホームプロダクツ株式会社製 サランネット N−20)で積層前の開口率60.0%のものを用いた。伝熱材層4と空隙層3を形成する構造体6は、接着剤で貼り合わせた。接着剤は、水性アクリル系エマルジョン(トーヨーポリマー(株)製、ルビロンエコパワー)を用いて含浸30g/m2(乾燥後の重量)となるように塗布した。
内寸が240mm×155mm、内部の高さPが150mm、側面部分の厚さ20mm、底面部分の厚さ20mm、蓋部分の厚さ20mmである輸送用の真空断熱材の身蓋箱の6つの面の内部表面と、厚み12μmのアルミ箔(熱伝導率 200W・m-1・K-1)と空隙層3を形成する構造体6を貼り合わせたものを接着剤で貼り合わせた。接着剤は、ホットメルト接着剤(PPET2110、東亜合成)を熱溶融させて貼り合わせた。以上により保冷保温用箱体30として実施例2に係る断熱部材付箱体40を得た。
[比較例1]
比較例1として内寸が240mm×155mm、内部の高さPが150mm、側面部分の厚さ20mm、底面部分の厚さ20mm、蓋部分の厚さ20mmである輸送用の真空断熱材の身蓋箱を用意した。
[比較例2]
内寸が240mm×155mm、内部の高さPが150mm、側面部分の厚さ20mm、底面部分の厚さ20mm、蓋部分の厚さ20mmである輸送用の真空断熱材の身蓋箱の6つの面の内部表面と、厚み12μmのアルミ箔(熱伝導率 200W・m-1・K-1)とを接着剤で貼り合わせた。接着剤は、ホットメルト接着剤(PPET2110、東亜合成)を熱溶融させて貼り合わせた。以上により比較例2に係る箱体を得た。
(4)評価方法
図7に示すように、断熱部材付箱体40の底面に−18℃の1.0kgの保冷剤44を(底面からの高さq=50mm)を静置し、40分後に取り出した後、断熱部材付箱体の蓋箱42の内部側表面および断熱部材付箱体の蓋箱42の内部側表面からの距離r=50mmの位置に設置された温度計45を用いて内部温度を測定した。
なお、図7は実施例における温度測定方法について説明する説明図である。また図7では、実施例1の断熱部材付箱体40を例に説明している。また、図7において説明していない符号については、図6等で説明した符号と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、実施例2及び比較例1〜2で作製された身蓋箱についても同様の測定を行った。結果を表1に示す。表1中、維持時間(時間)とは、断熱部材付箱体の内部の温度が13℃以下で維持された時間を指し、維持時間延長度は、比較例1の身蓋箱における維持時間を1.0とした場合の、実施例1〜2の断熱部材付箱体及び比較例1〜2の箱体における維持時間の比を表わしたものである。
断熱部材1に空隙層3を設けることにより、定温維持機能についての向上が確認できた。