以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施態様]
本実施形態の垂直記録媒体の構成例について説明する。
本実施形態の垂直記録媒体(垂直磁気記録媒体)は、非磁性基板上に、下地層と垂直記録層とを有することができる。そして、垂直記録層は、CoとPt、またはFeとPtを含む垂直磁性層と、磁性と誘電性とを併せ持ち、グラニュラ構造を有する誘電磁性層と、を有することができる。
また、誘電磁性層は、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子と、前記磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質とを含み、粒界構成物質は、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上とすることができる。
上述のように従来、磁性と誘電性を併せ持つ材料を用いて垂直記録媒体を作製すると、記録再生時にノイズが発生し、SNRを十分に高くすることができなかった。
そこで、本発明の発明者らがSNRを十分に高めることができなかった理由について検討を行った。
既述のように磁性と誘電性を併せ持つ材料として、マルチフェロイック材料が知られている。これらの材料はペロブスカイト等の複雑な構造を取る場合が多く、成膜が難しいため、理論的な化学量論比からのずれ、特に酸素欠損を起こしやすい。
また、磁性と誘電性を併せ持つ材料の特性発現には結晶性が重要な因子となる。しかし、磁性と誘電性を併せ持つ材料では結晶性を向上させると粒子の肥大化が著しい。このため、平滑な媒体表面が得られにくくヘッドの飛行を不安定にさせる。
そして、本発明の発明者らの検討によると、酸素欠損や、肥大化した粒子による構造上の欠陥は、磁気ヘッドを用いた情報の読み込みに際して磁気ノイズの発生原因となることが明らかとなった。
そこで本実施形態の垂直記録媒体では、誘電磁性層を酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上である粒界構成物質が粒界に偏析したグラニュラ構造とすることで、これらの問題点を解決し、もってSNRに優れた記録再生特性が得られる垂直記録媒体を提供する。
図1は本実施形態の垂直記録媒体10の一構成例を表す断面模式図である。本実施形態の垂直記録媒体10は、例えば、非磁性基板11上に下地層12、垂直記録層13が積層された構造を有することができる。垂直記録層13は既述のように垂直磁性層131、及び誘電磁性層132を有することができる。この際、垂直磁性層131と、誘電磁性層132の積層順は特に限定されるものではなく、例えば、誘電磁性層132、垂直磁性層131の順に積層されていてもよい。また、垂直磁性層131と誘電磁性層132が複数層積層されていてもよい。なお、垂直磁性層、誘電磁性層の積層順は限定されるものではなく、任意の順番に積層することができる。
さらに、本実施形態の垂直記録媒体10は、例えば図1に示したように保護層14や、密着層15、および/または軟磁性裏打ち層16等の任意の層を設けることもできる。
以下に垂直記録媒体に含むことができる各層の構成例について説明する。
(非磁性基板)
本実施形態の垂直記録媒体に使用される非磁性基板11としては、非磁性の基板であれば特に限定されず任意の基板を用いることができる。例えば、Alを主成分としたAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、アモルファスガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、サファイア、石英、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
(密着層)
図1に示したように、非磁性基板11と下地層12との間に、密着層15を設けることができる。
密着層15は、非磁性基板11の表面を平滑化して、非磁性基板11と下地層12との密着性を高めると共に、非磁性基板11からのアルカリ性イオンが下地層12に拡散して、下地層12が腐食するのを防ぐことができる。
密着層15としては例えば、非磁性金属材料を使うことができるが、アモルファス構造であることが望ましい。アモルファス構造とすることで、緻密な構造となり非磁性基板11からのアルカリ性イオンの拡散を防ぐ作用が優れる。また、表面粗さ(Ra)を低く保つことができるため、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となり好ましい。密着層15の材料としては例えば、CrTi、NiTa、AlTi合金等を好ましく用いることができる。
(軟磁性裏打ち層)
また、下地層12を形成する前に、軟磁性裏打ち層(裏打ち層)16を形成することもできる。具体的には、本実施形態の垂直記録媒体は、非磁性基板11と下地層12との間に軟磁性裏打ち層16を有することができる。軟磁性裏打ち層16は、垂直記録層13の磁化の方向をより強固に非磁性基板11と垂直な方向に固定することで、再生信号を安定化させる働きをする。軟磁性裏打ち層16は軟磁性材料から構成されることが好ましい。例えば、軟磁性裏打ち層16の材料としてはCoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNb等)、FeCo合金(FeCo、FeCoV等)、CoZr系合金(CoZr、CoZrNb等)、CoTa系合金(CoTa、CoTaZr等)等の軟磁気特性を有する材料を使用することができる。
軟磁性裏打ち層16は、アモルファス構造であることが好ましい。軟磁性裏打ち層16をアモルファス構造とすることで、表面粗さ(Ra)が大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となるためである。
軟磁性裏打ち層16の構造としては、例えば軟磁性膜単層から構成することもできるが、軟磁性膜単層の場合に限定されるものではない。例えば、2層の軟磁性膜間にRuなどの極薄い非磁性薄膜を挟み、軟磁性膜間に反強磁性結合を持たせた構造とすることもできる。
軟磁性裏打ち層16の保磁力(Hc)は特に限定されないが、100Oe以下とするのが好ましく、20Oe以下とすることがより好ましい。なお1Oeは79A/mである。軟磁性裏打ち層16の保磁力(Hc)が上記範囲にある場合、より確実に再生波形をいわゆる矩形波に保つことができ、好ましいためである。
軟磁性裏打ち層16の飽和磁束密度(Bs)は特に限定されないが、0.6T以上であることが好ましく、1T以上であることがより好ましい。軟磁性裏打ち層16の飽和磁束密度(Bs)が上記範囲にある場合、より確実に再生波形を矩形波に保つことができ好ましいためである。
また、軟磁性裏打ち層16の飽和磁束密度(Bs)と軟磁性裏打ち層16の膜厚との積(Bs・T)は15Tnm以上であることが好ましく、25Tnm以上であることがより好ましい。軟磁性裏打ち層16の飽和磁束密度と、膜厚との積(Bs・T)が上記範囲であると、より確実に再生波形をいわゆる矩形波に保つことができ、好ましいためである。
軟磁性裏打ち層16は、外部から磁界を印加しない状態で、非磁性基板11の表面と平行かつ半径方向に磁化が向いていることが好ましい。これにより軟磁性裏打ち層16の磁化方向が制約されることで、再生時におけるいわゆるスパイクノイズを抑制することができるためである。
軟磁性裏打ち層16が、外部から磁界を印加しない状態で、非磁性基板11の表面と平行かつ半径方向に磁化が向いた構造とするため、軟磁性裏打ち層16は例えば2層の軟磁性膜の間に非磁性金属膜を設けた積層構造を有することが好ましい。そして、上下の軟磁性膜間に磁気的な結合(バイアス磁界HBias)を発生させることで実現できる。
また、裏打ち層16は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、裏打ち層16が対電極の働きをするため、垂直記録層13に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積が小さくなり、記録密度を増大させることができる。
なお、裏打ち層16を絶縁体とした場合には、チャージアップにより電界によりデータを書き込む際、垂直記録層13に印加される電界の面積が広がってしまい、記録密度を低下させてしまう場合がある。このため、上述のように裏打ち層16は導電体とすることが好ましい。
(下地層)
本実施形態の垂直記録媒体においては、下地層12を設けることができる。下地層12は非磁性基板11上に設けることができ、上述のように非磁性基板11と下地層12との間には、密着層15および/または軟磁性裏打ち層16を設けることもできる。下地層12は、少なくとも直上の膜の垂直配向性を制御することができ、例えば垂直記録層13の配向性を制御することができる。
下地層12の材料としては特に限定されないが、例えばhcp構造(六方最密充填構造)を有する非磁性材料や、fcc構造(面心立方構造)を有する非磁性材料、bcc構造を有する非磁性材料、アモルファスあるいは微結晶構造を有する非磁性材料を好ましく用いることができる。
hcp構造を有する非磁性材料としては、例えばRu、Re、CoCr系合金、RuCo系合金等が挙げられる。
fcc構造を有する非磁性材料としては、例えばNi、Pt、Pd、Ti、Ni系合金(NiNb系合金、NiTa系合金、NiV系合金、NiW系合金、NiPt系合金、NiCr系合金等)、Pt系合金(PtCr系合金等)、CoPd系合金、AlTi系合金、MgO、Mg系合金等が挙げられる。
bcc構造を有する非磁性材料としては、例えばCrやCrTi、CrMo、CrV、CrMnなどのCr系合金、AlNi、AlRuなどのAl系合金等が挙げられる。
アモルファスあるいは微結晶構造を有する非磁性材料としては、例えばTa、Hf、Zrあるいはこれらを主成分とする合金、PdSi系合金、CrB系合金、CoB系合金等が挙げられる。
下地層12は単層構造に限定されるものではなく、多層構造とすることもできる。下地層12を多層構造とする場合、各層の構成は特に限定されるものではない。例えば、垂直磁性層131がCoPt系の磁性材料を含む場合、Ni系合金のようなfcc構造を有する非磁性材料の層などの上に、PtあるいはPt系合金などのfcc構造を有する非磁性材料の層を設ける構造や、RuやReなどのhcp構造を有する非磁性材料の層を設けることが好ましい。
特に下地層12を多層とし、垂直記録層13側にhcp構造を有する非磁性材料の層を設けることで垂直記録層13の垂直配向性や結晶性を特に高めることができるため、より好ましい。
また例えば、垂直磁性層131が、FePt系の磁性材料を含む場合、下地層12は、NiW系合金のようなfcc構造を有する微結晶構造の層の上に、PtあるいはPt系合金などのfcc構造を有する非磁性材料の層を配置した構造とすることができる。この場合、下地層12の結晶配向性が強くなり、垂直磁性層131のL10構造かつ(001)面配向がより強くなるため好ましい。
また、Cr系合金のようなbcc構造を有する非磁性材料を(100)面が基板面に平行となるように層を形成し、その上にRuあるいはRu系合金などのhcp構造を有する非磁性材料の層を配置した構造とすることもできる。
特に垂直記録層13側にMgOを主成分とする非磁性材料の層を設けることで垂直磁性層131のL10構造かつ(001)面配向や結晶性を特に高めることができるため、より好ましい。この場合、MgOは(100)配向面が基板面に平行であることが望ましい。垂直記録層13側にMgOを主成分とする非磁性材料の層を設けた構成例としては、例えばCr(100)層の上にMgO(100)層を積層した構成や、NiTa(100)層の上にRu(110)層、MgO(100)層の順で積層した構成などを挙げることができる。
上述した構造とすることで、垂直磁性層131のFePt系磁性材料がL10構造をとり易くなり、かつ(001)配向面が非磁性基板11の面に対してより強く平行に向くため好ましい。
下地層12の厚さは特に限定されるものではないが、5nm以上40nm以下とすることが好ましい。下地層12の厚さを上記範囲とすることで、垂直記録層13の磁化の垂直配向性が強くなり、再生信号の分解能を高めることができ、好ましい。
下地層12の厚さを5nm以上とすることにより、垂直記録層13の結晶配向性をより高め、電磁変換特性も高めることができる。
また、下地層12の厚さを40nm以下とすることにより、垂直記録層13の粒子径をより適切なサイズとすることができるため、再生信号のノイズを抑制し、分解能を十分に高めることができ、電磁変換特性を高めることができる。
また、下地層12は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、下地層12が対電極の働きをするため、垂直記録層に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、記録密度を増大させることができる。下地層12を絶縁体とした場合には、チャージアップにより、電界によりデータを書き込む際、垂直記録層に印加される電界の面積が広がってしまい、記録密度を低下させてしまう場合がある。このため、上述のように下地層12は導電体とすることが好ましい。
(垂直記録層)
本実施形態の垂直記録媒体においては、非磁性基板11上に、CoとPt、またはFeとPtを含む垂直磁性層131と、磁性と誘電性を併せ持ち、グラニュラ構造を有する誘電磁性層132と、を有することができる。
本実施形態の垂直記録層13を構成する垂直磁性層131と誘電磁性層132とは、どちらが非磁性基板11側に配置されていてもよく、その積層順は特に限定されるものではない。
例えば、誘電磁性層132を非磁性基板11側とする構成では、垂直磁性層131と再生ヘッドの距離が近くなり再生出力を大きくとることができるため高密度記録化が容易となる。
また、垂直磁性層131を、誘電磁性層132よりも非磁性基板側に配置することもできる。垂直磁性層131を非磁性基板11側とする構成では、下地層12による配向制御の効果により垂直磁性層131の結晶性及び配向性が向上し結果として電磁変換特性が向上する。さらに記録再生ヘッドに設けた電界書き込み素子と誘電磁性層132との距離が近くなり、誘電磁性層132への書き込みが容易となり、垂直記録媒体の高記録密度化が容易となるため好ましい。
(垂直磁性層)
垂直磁性層131は強磁性結晶粒子を含むことができる。強磁性結晶粒子は基板面に対して垂直方向に磁気異方性を有することができる。
強磁性結晶粒子としては、CoとPt、またはFeとPtを含むことができる。
強磁性結晶粒子としては、例えばCoとPtからなる合金を主成分として他の元素を含むことができる。または、強磁性結晶粒子はFeとPtからなる合金を主成分として他の元素を含むことができる。なお、主成分とは、例えば強磁性結晶粒子において、モル比で50%以上を含むことをいう。
以下、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子が上述したCoとPtを含む場合について記述する。
垂直磁性層131の強磁性結晶粒子は特に、非磁性基板11の垂直方向に磁化容易軸が向くような材料を含むことが好ましい。この場合、垂直磁性層131の材料としては例えば、CoPt合金、CoPtNi合金、CoPtFe合金、CoCrPt合金、CoCrPtB合金、CoCrPtCu合金、CoCrPtNi合金などを好ましく用いることができる。また、強磁性結晶粒子はCo層とPt層をそれぞれ交互に積層したいわゆるCoPt多層膜のような構造とすることもできる。さらにCo層、Pt層に加えて、Pd層やNi層やFe層を順に繰り返し積層した構造(CoPtPd積層、CoPtNi積層、CoPtFe積層、CoPtPdNi積層など)とすることもできる。
垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子がCoとPtを含む場合、強磁性結晶粒子のPtの含有量は特に限定されるものではないが、例えば8at%以上25at%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲である場合、特に高密度記録に適した電磁変換特性が得られるためである。特にPtの含有量は10at%以上22at%以下であることがより好ましい。
強磁性結晶粒子のPtの含有量が8at%以上の場合、熱によってデータの保持が不安定になる熱揺らぎの発生を特に抑制できるため好ましい。また、強磁性結晶粒子Ptの含有量が25at%以下の場合、強磁性結晶粒子中に積層欠陥が発生することを抑制し結晶性の悪化や、電磁変換特性の劣化を特に抑制できるため好ましい。
垂直磁性層131にはCo、Pt以外にさらに、Cr、Cu、B、Ta、Ni、Fe、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選択された1種類以上の元素(以下、「Cr等の元素」とも記載する)等、他の元素を添加することができる。上記元素を含むことにより、強磁性結晶粒子の微細化を促進、あるいは結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した電磁変換特性を得ることができる。
強磁性結晶粒子に上記Cr等の元素を添加する場合、強磁性結晶粒子中のCr等の元素の合計の含有量は、24at%以下であることが好ましい。これは、垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子がCoとPtとを含む系において、Cr等の元素の添加量を24at%以下とすることにより、強磁性結晶粒子中にhcp構造以外の結晶構造が形成されることをより確実に抑制できるためである。その結果、電磁変換特性の向上を図ることができる。
垂直磁性層131の強磁性結晶粒子の材料として、上記CoとPtを含む材料の他、例えばCoとPtとの規則化合金を使うこともできる。CoPtの規則化合金は、一般的なCoとPtとを含んだ磁性材料よりも磁気異方性定数(Ku)が大きく、熱揺らぎを抑制できる。このため、1ビットあたりの占有面積を小さくしなければならないより高密度な記録に適した材料である。
CoとPtとの規則化合金としては例えば、75Co25Pt<m−DO19型>、50Co50Pt<L11型、L10型>、20Co50Pt30Ni<L11型>などが挙げられる。
CoとPtとの規則化合金の場合Ptの含有量は特に限定されず、規則化合金を得る上で最適な含有量とすることが好ましい。
また、垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子は既述のように、FeとPtを含むこともでき、例えばFePt系の磁性材料を使用することもできる。以下、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子が上述したFeとPtを含む場合について記述する。
垂直磁性層131の強磁性結晶粒子は特に、非磁性基板11の垂直方向に磁気異方性が強く向くような材料を含むことが好ましい。このようなFeとPtを含む材料としては、(001)配向面が基板面に平行に配向したL10構造を有した規則化合金であることが好ましい。
垂直磁性層131の強磁性結晶粒子がFeとPtとを含む場合にはさらに、Cr、B、Cu、Sm、Nd、Tbから選択された1種類以上の元素(以下、「Cr等の元素」とも記載する)等を添加することもできる。
強磁性結晶粒子がFeとPtとを含む材料としては特に限定されるものではないが、FePt系の他、上述したCr等の元素等を添加したFePtCrやFePtB、FePtCu、FePtSm、FePtNd、FePtTb、FePtCrB、FePtCrCu、FePtBNd等を用いることができる。
上記規則化合金の製造方法は特に限定されないが、例えば上述した組成を有するターゲットにより成膜することができる。また、成膜する際、下地層12としては上述のように特に限定されないが、RuやReの他に、Cr、MgOとPtの順で形成した3層、またはTaとPtの順で形成した2層とすることでより大きい磁気異方性定数(Ku)を得ることができ好ましい。
また、FeとPtを含んだ強磁性結晶粒子中のPtの含有量は特に限定されず、規則化合金を得る上で最適な含有量とすることが好ましい。
そして、垂直磁性層131は強磁性結晶粒子が非磁性材料中に分散した構造(グラニュラ構造)を有することが好ましい。これにより、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子間の磁気的な相互作用がより減少し、また強磁性結晶粒子の肥大化を抑制することで垂直磁性層131から生じる磁気ノイズをより減少させ、結果として垂直記録媒体の記録再生における信号/ノイズ比(SNR)をより高める効果を得ることができる。
このような構造となる垂直磁性層131の材料としては、例えばCoとPtまたはFeとPtを含む強磁性結晶粒子に、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上を添加したものが挙げられる。
上述の材料により垂直磁性層131を作製した場合、垂直磁性層131は、CoとPt、またはFeとPtを含む強磁性結晶粒子と、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上を含む非磁性粒界領域とを含むこととなる。なお、非磁性粒界領域は、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料により構成されてもよい。
酸化物としては例えばSi酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、V酸化物、Nb酸化物、Zr酸化物、Al酸化物およびRu酸化物、などがあげられる。これら酸化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
これらの酸化物を添加した垂直磁性層131用の材料としては、例えばCoCrPt−Si酸化物、CoCrPt−Ti酸化物、CoCrPt−W酸化物、CoCrPt−Cr酸化物、CoCrPt−Co酸化物、CoCrPt−Ta酸化物、CoCrPt−B酸化物、CoCrPt−Ru酸化物、CoRuPt−Si酸化物、CoCrPtRu−Si酸化物、FePt−Si酸化物、FePt−Co酸化物、FePtCr−W酸化物などを挙げることができる。
また、窒化物としては例えば、Si窒化物、Ti窒化物、Cr窒化物、Ta窒化物、Nb窒化物、Zr窒化物、W窒化物、V窒化物、B窒化物、Co窒化物およびAl窒化物、などがあげられる。これら窒化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
これら窒化物を添加した垂直磁性層131用の材料としては、例えばCoCrPt−Si窒化物、CoCrPt−Ti窒化物、CoCrPt−W窒化物、CoCrPt−Cr窒化物、CoCrPt−Co窒化物、CoCrPt−Ta窒化物、CoCrPt−B窒化物、CoCrPt−V窒化物、CoRuPt−Si窒化物、CoCrPtRu−Si窒化物、FePt−Si窒化物、FePt−Zr窒化物、FePtCr−Al窒化物などを挙げることができる。
炭素系材料としては、炭素単体、炭化物(金属炭化物)が挙げられる。炭素系材料として、具体的には例えば、Cの他にSi炭化物、Ti炭化物、Cr炭化物、Co炭化物、Ta炭化物、Nb炭化物、Zr炭化物、W炭化物、V炭化物、B炭化物、Al炭化物およびRu炭化物、などがあげられる。これら炭素系材料のいずれか1種類以上を用いることができる。
なお、上述した酸化物、窒化物、炭素系材料の内、任意に選択した2種類以上を同時に添加することも可能である。
例えば、Si酸化物とCr酸化物、あるいはCr酸化物とTi酸化物とB酸化物、Ti窒化物とB窒化物、Si炭化物とW炭化物のような組み合せの他、Cr酸化物とTa窒化物、W酸化物とSi窒化物とB炭化物、Si酸化物とC、といった組み合せも可能である。
垂直磁性層131の中に酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の材料(以下、「酸化物等の添加材料」とも記載する)を添加した場合、酸化物等の添加材料の含有量は、垂直磁性層131中の酸化物等の添加材料以外の組成を一つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下が好ましい。特に、6mol%以上12mol%以下がより好ましい。酸化物等の添加材料の含有量が上記範囲にある場合、垂直磁性層を形成した際、強磁性結晶粒子の周りに酸化物等の添加材料が析出し、層全体に渡ってより均一に強磁性結晶粒子の孤立化、微細化を達成できるため好ましい。垂直磁性層131の中に存在する酸化物等の添加材料の含有量を18mol%以下とすることにより、酸化物等の添加材料が強磁性結晶粒子内に残留することや、強磁性結晶粒子の上下に酸化物等の添加材料が析出することを抑制し、垂直磁性層131の配向性や結晶性を十分に保つことができるため好ましい。また、酸化物等の添加材料の含有量を3mol%以上とすることにより、強磁性結晶粒子を十分に分離、微細化することができ、電磁変換特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、例えば3nm以上12nm以下が好ましい。また、平均粒界幅は0.3nm以上2.0nm以下であることが好ましい。
強磁性結晶粒子の平均粒径は、平面TEM観察画像を用いて算出することができ、例えば、TEMの観察画像から、200個の粒子について粒径(円相当径)を測定し、積算値50%での粒径を平均粒径とすることができる。
強磁性結晶粒子の平均粒径は、熱的な安定性を得るために上記範囲であることが好ましい。これは、強磁性結晶粒子の平均粒径を3nm以上とすることにより、熱揺らぎによる影響を抑制し、データをより確実に維持することができ好ましいためである。また、強磁性結晶粒子の平均粒径を12nm以下とすることにより、1ビットあたりの粒子数を十分に確保し、再生時のSNRを高めることができるため好ましい。
垂直記録層13に含まれる垂直磁性層131の総膜厚は特に限定されるものではないが、5nm以上25nm以下であることが好ましく、5nm以上12nm以下であることがより好ましい。
また、垂直磁性層131は、導電体であることが好ましい。これにより、データの書き込み時に電界を印加した際、垂直磁性層131が電界を引き込むことで拡散を抑える働きをするため、垂直記録層に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積が小さくなり、記録密度を増大させることができる。
ここまで垂直磁性層131について説明してきたが、本実施形態の垂直記録媒体に含まれる、垂直磁性層131は1層に限定されるものではなく、2層以上の多層構造としてもよい。
(誘電磁性層)
次に誘電磁性層132について説明する。
誘電磁性層132は上述のように磁性と誘電性を併せ持ち、グラニュラ構造とすることができる。そして、誘電磁性層132は、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子と、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質とを含むことができる。磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質は例えば、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上とすることができる。
なお、ここでいう磁性とは強磁性(硬磁性又は軟磁性)又は反磁性のことを意味している。そして、誘電磁性層132は、磁性と誘電性又は強誘電性を持っていることが好ましく、強磁性と強誘電性を持っていることがより好ましい。
誘電磁性層132が上述の構成を有することより、酸化物、窒化物、炭素系材料等の偏析により粒界層が成長し、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の肥大化抑制と粒径の均一化(径分散の減少)が生じ、また誘電磁性層132の表面が滑らかになる。これにより再生信号のノイズの低減、また記録再生ヘッドの飛行が安定してスペーシングロスの低減が可能となり、結果としてSNRに優れた記録再生特性が得られる。
磁性と誘電性とを併せ持つ粒子(以下、「誘電磁性粒子」とも記載する)の材料としては特に限定されるものではないが、誘電磁性粒子は例えば(Bi1−aXa)(Fe1−bMb)O3を含むことが好ましい。この場合、元素XはBa、Laから選ばれた1種類以上の元素、元素MはMn、Tiから選ばれた1種類以上の元素であり、置換率aはa≦0.8、置換率bはb≦0.5、かつ0.01≦a+b≦1.3を満たすことが好ましい。元素Xと元素M、置換率aとbとを係る範囲とすることにより特に好適な磁性と誘電性を併せ持つ材料を形成することができる。
BiFeO3は誘電性材料として知られているが、BiFeO3の材料のBiの一部を元素Xで、Feの一部を元素Mで置換することで、特に好適な強磁性と誘電性を発現する。この場合の置換率aを、0.8以下、置換率bを、0.5以下の範囲内とすることで、上述のように特に好適な強磁性と強誘電性を併せ持つ好適な材料を形成できる。
このような材料としては例えばBi(Fe0.95Mn0.05)O3、(Bi0.8Ba0.2)FeO3、(Bi0.5Ba0.3La0.2)FeO3、(Bi0.7La0.3)(Fe0.7Mn0.3)O3、(Bi0.5Ba0.3La0.2)(Fe0.7Mn0.1Ti0.2)O3などを挙げることができる。
また、誘電磁性層132の誘電磁性粒子としては上記材料に限定されず、例えばM−Fe−O系、M−Fe−Mn−O系、M−Co−O系、M−Ni−O系、M−Co−Fe−O系、M−Fe−Ni−O系、M−Co−Mn−O系、M−Ni−Mn−O系、M−V−O系(Mは、希土類元素、Bi、Y、アルカリ土類元素の中から選択された1種類以上の元素)等を含むこともできる。
また、誘電磁性層132は上述のように、グラニュラ構造を構成するため、誘電磁性粒子の他に、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質(以下、単に「粒界構成物質」とも記載する)として、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択される1種類以上の材料を用いるのが好ましい。
これらの粒界構成物質は、誘電磁性粒子の外に偏析しやすく、これにより誘電磁性層132を好適にグラニュラ構造とすることができる。そしてこの作用により、誘電磁性粒子との粒界が成長し、誘電磁性粒子の肥大化を抑制し、また粒径の均一化が可能となる。
本実施形態の誘電磁性層132に含まれる粒界構成物質としては、誘電磁性粒子に含まれる金属元素以外の元素の酸化物、窒化物、炭素系材料である材料が好ましい。
酸化物では、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Ru酸化物、Nb酸化物、Zr酸化物、などを挙げられる。これら酸化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
また、窒化物では、Al窒化物、B窒化物、Cr窒化物、Cu窒化物、Fe窒化物、Mg窒化物、Mo窒化物、Nb窒化物、Si窒化物、Ta窒化物、Ti窒化物、W窒化物、Y窒化物、Zr窒化物、などを挙げられる。これら窒化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
炭素系材料では、C、Si炭化物、Ti炭化物、W炭化物、Cr炭化物、Co炭化物、Ta炭化物、などが挙げられる。これら炭素系材料のいずれか1種類以上を用いることができる。
誘電磁性層132の粒界構成物質として、特にCr酸化物、B酸化物、Ta酸化物、W酸化物、Si窒化物、Ti窒化物、Cr窒化物、Ta窒化物、C、W炭化物、B炭化物から選ばれる1種類以上の材料を好適に用いることができる。
誘電磁性層132の粒界構成物質として、酸化物、窒化物、炭素系材料(以下「酸化物等」とも記載する)の含有量は、誘電磁性層132中の粒界構成物質以外の組成を一つの化合物として算出したmol総量に対して、2mol%以上18mol%以下が好ましく、3mol%以上18mol%以下であることがより好ましい。
酸化物等の粒界構成物質の含有量が上記範囲にある場合、誘電磁性層132を形成した際、誘電磁性粒子の周りに酸化物等の粒界構成物質が析出し、層全体に渡ってより均一に誘電磁性粒子の孤立化、微細化を達成できるため好ましい。誘電磁性層132の中に存在する酸化物等の粒界構成物質の含有量を18mol%以下とすることにより、酸化物等の粒界構成物質が誘電磁性粒子内に残留することや、誘電磁性粒子の上下に酸化物等の粒界構成物質が析出することを抑制し、誘電磁性層132の配向性や結晶性を十分に保つことができるため好ましい。また、酸化物等の粒界構成物質の含有量を2mol%以上とすることにより、誘電磁性粒子を十分に分離、微細化することができ、電磁変換特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
誘電磁性層132は、飽和磁化(Ms)と誘電磁性層132の膜厚(T)の積(Ms・T)が、0.01memu/cm2以上であることが好ましい。
誘電磁性層132の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば50nm以下であることが好ましい。誘電磁性層132の厚さを50nm以下とすることにより、誘電磁性層132内の誘電磁性粒子の粒径を小さくすることができ、誘電磁性層132の表面粗さRaを十分に抑制することができる。
垂直磁気記録媒体の表面形状が平滑にできることで、ヘッドの飛行高さを低くすることができ、電磁変換特性を向上させることができる。
誘電磁性層132の膜厚は20nm以下とするのがさらに好ましい。特に図1に示すように誘電磁性層132を垂直記録媒体の表層側に設けた構成とする場合、誘電磁性層132の厚さ分だけ垂直磁性層131とヘッドの再生素子との距離が離れることとなる。このため、ヘッドと垂直磁性層131との間の距離を十分短くするために誘電磁性層132の膜厚を上記範囲とすることがより好ましい。
また、誘電磁性層132の厚さの下限値は特に限定されるものではないが、例えば2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。2nm以上であれば、誘電磁性層132を形成した際、層中に結晶粒子が形成されやすくなるため好ましい。
そして、本実施形態の垂直記録媒体においては、垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性粒子とが、厚み方向に連続した柱状晶を構成するのが好ましい。このような構成を採用することで、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の結晶性を高めることが可能となり、また、粒子の肥大化を抑制することが可能となるので、SNRの優れた垂直磁性層を構成することが可能となる。
特に本実施形態の垂直記録媒体では、誘電磁性層132は粒界構成物質により粒界を形成したグラニュラ構造となっている。このため、垂直磁性層131に酸化物等を添加してグラニュラ構造とすることで、上述のように垂直磁性層131、及び誘電磁性層132にそれぞれ含まれる強磁性結晶粒子と、誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を、より構成しやすくなる。これにより、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と誘電磁性層132の誘電磁性粒子とは、結晶性や結晶配向性をより高め、また粒子の肥大化をより抑制することができる。
本実施形態の垂直記録媒体の垂直記録層13は垂直磁性層131と誘電磁性層132とを含んでおり、垂直磁性層131と、誘電磁性層132との積層により構成することができる。なお、垂直記録層13に含まれる、垂直磁性層131、誘電磁性層132の層数は特に限定されるものではない。例えば、垂直記録層13は、2層以上の垂直磁性層と、2層以上の誘電磁性層と、を積層した構造とすることもできる。また、一方を単層とし他方のみを複数層設けたような構造でも構わない。また、図1に示したように垂直記録層13を垂直磁性層131と誘電磁性層132とをそれぞれ一層ずつ含むように構成することもできる。
また、垂直磁性層131と誘電磁性層132の積層順については特に限定されるものではない。例えば、前述のように垂直磁性層131を非磁性基板11側に配置しその上面に誘電磁性層132を積層することができる。この場合、垂直磁性層131は、強磁性結晶粒子が非磁性材料中に分散したグラニュラ構造を有していることが好ましい。垂直磁性層131がかかる構造を有している場合、磁性結晶粒子及びそれを取り囲む非磁性材料それぞれの上に、誘電磁性層132の誘電磁性粒子と粒界構成物質とを容易に成長させることができる。
係る構造とすることにより、誘電磁性層132のノイズを抑えることができ、電磁変換特性が向上する。また、下地層12による配向制御の効果により垂直磁性層131中の強磁性結晶粒子の結晶性及び配向性が向上するため、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の結晶性及び配向性も向上し結果としてさらに電磁変換特性が向上する効果が得られる。
また、垂直磁性層131が非磁性基板11側にあることで、電界によりデータを書き込む際の対電極の働きをするため、垂直記録層13に印加される電界の面積を狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、記録密度を増大させることができる。
また、誘電磁性層132が表層側にあることで、誘電磁性層132の記録再生ヘッドとの物理的な距離が近くなることで記録再生ヘッドに設けた電界書き込み素子と誘電磁性層132との距離を近くできる。このため、誘電磁性層132への書き込みが容易となり、垂直記録媒体の高記録密度化が容易となる。
一方で誘電磁性層132を非磁性基板11側とすることもできる。垂直磁性層131が表層側にあることで、垂直磁性層131の記録再生ヘッドとの物理的な距離が近くなり、再生時の信号出力が大きくでき、SNRが良好な再生信号が得られる。
さらに電界によりデータを書き込む際、電界は垂直磁性層131の中を通って誘電磁性層132に印加される。この時、垂直磁性層131が表面側にあることで電界の広がり抑制することができ、さらに下地層12の対電極効果と相まって、垂直記録層に印加される電界の面積をより狭くすることができる。これにより一ビットの占有面積を小さくなり、より記録密度を増大させることができる。
なお、誘電磁性層132を非磁性基板11側に配置する場合、下地層12の垂直記録層13側にグラニュラ構造をもった配向調整層を設けることが好ましい。配向調整層上に誘電磁性層132を設ける構造では、結晶性の粒子を囲むように粒界層が形成された配向調整層により、配向調整層中の結晶性の粒子の上に誘電磁性層132の誘電磁性粒子が、配向調整層中の非晶質性の粒界層の上には誘電磁性層132の粒界構成物質が成長することができる。これにより誘電磁性粒子の結晶性や結晶配向性をより高め、また粒子の肥大化をより抑制することができる。
さらに、誘電磁性層132中の誘電磁性粒子の上に垂直磁性層131中の強磁性結晶粒子が、誘電磁性層132中の粒界構成物質の上に垂直磁性層131中の非磁性材料が成長することができる。このため、垂直記録層の粒子の肥大化を抑制し、均一性を維持することができ、結果として電磁変換特性が向上する効果が得られる。
なお、グラニュラ構造をもった配向調整層の構成は特に限定されないが、例えば下地層12を構成する材料に酸化物を添加した材料により構成することができる。
さらに、誘電磁性層132の基板側の層(例えば下地層12あるいは垂直磁性層131)に酸化物等の材料を添加することでグラニュラ構造とした膜を用いた場合、前記基板側の層に添加した酸化物等の材料と、誘電磁性層132の粒界構成物質の一部または全部が、同じ材料であることがより好ましい。
具体的には、例えば誘電磁性層132の基板側の層が垂直磁性層131の場合、垂直磁性層131の非磁性粒界領域を構成する物質と、誘電磁性層132の磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質とが、同じ材料を1種類以上含むことが好ましい。
基板側の層に添加した酸化物等の材料、及び誘電磁性層132の粒界構成物質は、各層の粒界部分に含まれることになる。このため、両者に共通の材料が含まれている場合、例えば垂直磁性層131上に誘電磁性層132を形成した場合、垂直磁性層131の粒界部分の上に、誘電磁性層132の粒界構成物質が析出して成長し易く、誘電磁性層132の粒界形成がより促進され易くなるからである。その結果、誘電磁性層132の誘電磁性粒子と垂直磁性層131の強磁性結晶粒子が柱状構造をより形成しやすくなり、また誘電磁性粒子の肥大化を抑制する効果がより高くなると考えられる。
なお、ここでは誘電磁性層132の基板側に垂直磁性層131を配置した場合を例に説明したが、上述のように誘電磁性層132の基板側の層が下地層12の場合にも同様の効果をしめす。
また基板側から順に誘電磁性層132、垂直磁性層131を積層する場合、垂直磁性層131の非磁性粒界領域を構成する物質と、誘電磁性層132の磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質とが、同じ材料を1種類以上含むことが好ましい。これは上述の説明と同様に、誘電磁性層132の粒界構成物質の上に、垂直磁性層131の粒界構成物質が析出して成長し易く、垂直磁性層131の粒界形成がより促進されやすくなるからである。
(保護層)
保護層14はヘッドと垂直記録媒体との接触によるダメージから垂直記録媒体を保護するための層である。保護層14は特に限定されるものではないが、例えばカーボン膜、SiO2膜などが用いられるが、多くの場合はカーボン膜が用いられる。なお、カーボン膜はDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)を含む。
膜の形成にはスパッタリング法、プラズマCVD法、イオンビーム法などが用いられるが、近年ではイオンビーム法が用いられることが多い。膜厚は特に限定されるものではないが、例えば1nm以上10nm以下とすることが好ましい。
以上に説明したように本実施形態の垂直記録媒体において、磁性と誘電性を併せ持つ誘電磁性層は、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子と、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上の粒界構成物質と、を含む。このため、誘電磁性層は粒界構成物質が粒界に偏析したグラニュラ構造を有することができる。
このように誘電磁性層がグラニュラ構造を有することにより、誘電磁性層のノイズが低減可能となり、SNRに優れた記録再生特性を得ることができる。
これは、誘電磁性層が上述のようにグラニュラ構造を有することにより、まず粒界層が成長し、誘電磁性層に含まれる粒子(例えば誘電磁性粒子)の肥大化抑制と粒径の均一化(径分散の減少)を図ることができる。これにより再生信号のノイズが低減される他、誘電磁性層の表面が滑らかになり、記録再生ヘッドの飛行が安定して、スペーシングロスを低減可能となる。
このため、SNRに優れた記録再生特性を有する垂直記録媒体とすることができる。
(垂直記録媒体の製造方法)
次に、本実施形態の垂直記録媒体の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の垂直記録媒体の製造方法は、非磁性基板上に、下地層と垂直記録層とを有する垂直記録媒体の製造方法に関する。
そして、垂直記録層は、CoとPt、またはFeとPtを含む垂直磁性層と、磁性と誘電性とを併せ持ち、グラニュラ構造を有する誘電磁性層と、を有することができる。
また、誘電磁性層は、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子と、前記磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質とを含み、粒界構成物質は、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上とすることができる。
なお、本実施形態の垂直記録媒体の製造方法は、例えば以下の工程を有することができる。
非磁性基板を準備する非磁性基板準備工程。
非磁性基板の少なくとも一方の面側に、少なくとも一層の下地層を形成する下地層形成工程。
非磁性基板の少なくとも一方の面側に垂直記録層を形成する垂直記録層形成工程。
そして、垂直記録層形成工程は、垂直磁性層を形成する垂直磁性層形成工程、及び、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子と、粒界構成物質と、を有する誘電磁性層を形成する誘電磁性層形成工程を有することができる。
また、上記工程に限定されるものではなく、さらに必要に応じて例えば密着層を形成する密着層形成工程や、裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程、保護層を形成する保護層形成工程等を実施することもできる。
上記した各工程について説明する。なお、本実施形態の垂直記録媒体の製造方法により、既述の垂直記録媒体を製造することができる。このため、垂直記録媒体において既に説明した内容と重複する部分について一部説明を省略する。
下地層形成工程については、例えば既述の目的組成を有するターゲットを用いてスパッタリング法により実施することができる。また、密着層15や裏打ち層を形成する場合も同様にスパッタリング法で目的組成に応じたターゲットを用いて成膜することができる。
本実施形態の垂直記録媒体の製造方法において製造する垂直記録媒体の垂直記録層13は、垂直磁性層131と、グラニュラ構造を有する誘電磁性層132と、が積層された構造を有していることが好ましい。
このため、垂直記録層形成工程では、上述のように垂直磁性層形成工程、及び誘電磁性層形成工程を実施することができる。
ここでまず、垂直磁性層形成工程では、例えば既述の目的組成を有するターゲットを用いてスパッタリング法により垂直磁性層を形成できる。なお、既述のように垂直磁性層は強磁性結晶粒子及び該強磁性結晶粒子を取り囲む非磁性粒界領域を有することが好ましい。
そして、誘電磁性層形成工程では、磁性と誘電性を併せ持つ粒子(誘電磁性粒子)と、該誘電磁性粒子を取り囲むように酸化物等の粒界構成物質による粒界が形成された構造を有する誘電磁性層を形成できる。
誘電磁性層を形成する誘電磁性層形成工程では、誘電磁性層を形成する材料として、結晶性を有する材料を好ましく用いることができる。すなわち、誘電磁性層に含まれる磁性と誘電性とを併せ持つ粒子、すなわち誘電磁性粒子の材料(以下、「誘電磁性材料」とも記載する)が結晶性を有していることが好ましい。
そして誘電磁性層を形成する誘電磁性層形成工程では、基板温度を誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度未満として誘電磁性層を形成することが好ましい。ここでいう基板温度とは、誘電磁性層132を形成する被成膜基板の温度のことを指しており、非磁性基板11上に形成された下地層12等を含む基板の温度を意味している。
また、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度とは、非晶質基板上でも誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料が結晶化する温度である。
上述のように、基板温度を誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度未満とすることで、誘電磁性粒子の周りに粒界構成物質が析出・成長し、誘電磁性層132をグラニュラ構造とすることができる。
基板温度を誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度以上とすると、誘電磁性層132に含まれる粒界構成物質の誘電磁性粒子の周りへの析出が阻害され、誘電磁性粒子の成長を抑制しきれず、グラニュラ構造を得られにくくなり、好ましくない。また、例えば垂直磁性層131の上面に誘電磁性層132を形成した場合、垂直磁性層131の非磁性粒界領域上の対応する部分に粒界構成物質の他に誘電磁性材料の結晶が生じ、誘電磁性層132がグラニュラ構造とならない場合がある。このため、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の肥大が生じ、また該非磁性粒界領域上の部分は結晶の配向が異なるためノイズの増大につながり、結果として平坦性や電磁変換特性を損ねる場合があり好ましくない。
誘電磁性層132を成膜する際の基板温度は、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度より300度低い温度以上、結晶化温度未満の範囲であることがより好ましい。さらには基板温度が、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度より300度低い温度以上、結晶化温度より50度低い温度以下の範囲であることが特に好ましい。すなわち、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜する際の非磁性基板11の基板温度をTsとした場合、Tc−300≦Ts<Tcであることがより好ましく、Tc−300≦Ts≦Tc−50であることが特に好ましい。
誘電磁性層132を成膜する際の基板温度を係る温度範囲とすることで容易に誘電磁性層132について、誘電磁性粒子を粒界構成物質が囲んだグラニュラ構造とすることができる。
誘電磁性層132を成膜する際、基板温度(Ts)を結晶化温度より300度低い温度(Tc−300)よりも低い温度とした場合、非磁性基板11に後述のようにバイアスをかけても誘電磁性層132に含まれる誘電磁性粒子の結晶性が不十分なため、誘電磁性層132に誘電特性と磁性特性が得られないため好ましくない。
また誘電磁性層132を成膜する際には、非磁性基板11にバイアスを印加することが好ましい。
基板温度が誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度未満でも、例えば垂直磁性層の強磁性結晶粒子のように高配向の部分の上面については誘電磁性層132は誘電磁性粒子を形成する場合がある。しかし、係る温度域で形成される誘電磁性粒子の結晶性は十分ではないことがある。このため、上述のように誘電磁性層132を形成する際に、非磁性基板11にバイアスを印加し、誘電磁性粒子の結晶性を高めることが好ましい。
係る条件で例えば垂直磁性層131上や、配向調整層上に、誘電磁性層132を形成することにより、容易に誘電磁性層132が、誘電磁性粒子と、該誘電磁性粒子を取り囲むように粒界構成物質領域と、を有する構造とすることができる。すなわち、誘電磁性層132を容易にグラニュラ構造を有する構造とすることができ好ましい。
非磁性基板にバイアス(Bias)を印加する場合、バイアスは交流バイアスであることが好ましく、特に高周波バイアスであることが好ましい。これは、DC(直流)バイアスの場合、誘電磁性層132のチャージアップにより非磁性基板11にバイアスを印加する効果が十分得られない場合があるためである。非磁性基板11に印加するバイアスは、周波数は特に限定されないが、実用上の観点から周波数は0.1kHz以上2.5GHz以下であることが好ましく、150kHz以上2.45GHz以下であることがより好ましい。
誘電磁性粒子の材料としては特に限定されるものではないが、誘電磁性粒子は例えば(Bi1−aXa)(Fe1−bMb)O3を含むことが好ましい。この場合、元素XはBa、Laから選ばれた1種類以上の元素、元素MはMn、Tiから選ばれた1種類以上の元素であり、置換率aはa≦0.8、置換率bはb≦0.5、かつ0.01≦a+b≦1.3を満たすことが好ましく、元素XとM、置換率aとbを係る範囲とすることにより特に好適な磁性と誘電性を併せ持つ材料を形成することができる。
誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料として例えば、Bi(FeMn)O系の材料、(BiBa)FeO系の材料、(BiBaLa)(FeMn)O系の材料、(BiBaLa)(FeMnTi)O系の材料、(BiLa)FeO系の材料を用いる場合、基板温度は300℃以上600℃未満とすることが好ましい。特に誘電磁性層に含まれる材料として上記材料を用いる場合、基板温度は300℃以上550℃以下とすることがより好ましい。
また、誘電磁性層132は上述のように、グラニュラ構造を構成するため、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子、すなわち誘電磁性粒子の材料の他に、磁性と誘電性とを併せ持つ粒子の粒界に配置された粒界構成物質として、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択される1種類以上の材料を含むことが好ましい。
これらの粒界構成物質は、誘電磁性粒子の外に偏析しやすく、これにより誘電磁性層132を好適にグラニュラ構造とすることができる。そしてこの作用により、誘電磁性粒子との粒界が成長し、誘電磁性粒子の肥大化を抑制し、また粒径の均一化が可能となる。
本実施形態の誘電磁性層132に含まれる粒界構成物質としては、誘電磁性粒子に含まれる金属元素以外の元素の酸化物、窒化物、炭素系材料である材料が好ましい。
酸化物では、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Ru酸化物、Nb酸化物、Zr酸化物、などを挙げられる。これら酸化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
また、窒化物では、Al窒化物、B窒化物、Cr窒化物、Cu窒化物、Fe窒化物、Mg窒化物、Mo窒化物、Nb窒化物、Si窒化物、Ta窒化物、Ti窒化物、W窒化物、Y窒化物、Zr窒化物、などを挙げられる。これら窒化物のいずれか1種類以上を用いることができる。
炭素系材料では、C、Si炭化物、Ti炭化物、W炭化物、Cr炭化物、Co炭化物、Ta炭化物、などが挙げられる。これら炭素系材料のいずれか1種類以上を用いることができる。
誘電磁性層132の粒界構成物質として、酸化物、窒化物、炭化物(以下「酸化物等」とも記載する)の含有量は、誘電磁性層132中の粒界構成物質以外の組成を一つの化合物として算出したmol総量に対して、2mol%以上18mol%以下が好ましく、3mol%以上18mol%以下であることがより好ましい。
酸化物等の粒界構成物質の含有量が上記範囲にある場合、誘電磁性層132を形成した際、誘電磁性粒子の周りに酸化物等の粒界構成物質が析出し、層全体に渡ってより均一に誘電磁性粒子の孤立化、微細化を達成できるため好ましい。誘電磁性層132の中に存在する酸化物等の粒界構成物質の含有量を18mol%以下とすることにより、酸化物等の粒界構成物質が誘電磁性粒子内に残留することや、誘電磁性粒子の上下に酸化物等の粒界構成物質が析出することを抑制し、誘電磁性層132の配向性や結晶性を十分に保つことができるため好ましい。また、酸化物等の粒界構成物質の含有量を2mol%以上とすることにより、誘電磁性粒子を十分に分離、微細化することができ、電磁変換特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
誘電磁性層132の粒界構成物質として、特にCr酸化物、B酸化物、Ta酸化物、W酸化物、Si窒化物、Ti窒化物、Cr窒化物、Ta窒化物、C、W炭化物、B炭化物から選ばれる1種類以上の材料を好適に用いることができる。
そして特に、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが、積層するように配置されていることが好ましい。すなわち、垂直記録層13は、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることが好ましい。また、同時に、垂直磁性層131の非磁性粒界領域と、誘電磁性層132の粒界構成物質と、が積層するように配置されていることが好ましい。
以下に垂直磁性層131上に誘電磁性層132を形成した場合を例に説明する。
この場合、垂直磁性層131に含まれる強磁性結晶粒子の上に誘電磁性層132中の誘電磁性粒子が成長することが好ましい。さらに、垂直磁性層131中の強磁性結晶粒子と誘電磁性層132中の誘電磁性粒子が柱状構造を形成することが好ましい。これにより基板面に対して垂直に印加した磁界を制御することで、垂直記録層13に特にSNRに優れた状態でデータを記録することができる。
この時、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子の格子定数と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の格子定数とを近い値とすることが好ましい。このように構成することにより、あたかも垂直磁性層131が、誘電磁性層132の配向制御層のごとく機能する。このため、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子上に誘電磁性層132の誘電磁性粒子の成長が容易となる。
発明者らの検討によると係る条件下で誘電磁性層132を形成する際、非磁性基板11にバイアスを印加することで、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度未満でも高い結晶性を有する誘電磁性層132の誘電磁性粒子を得られることが確認できた。このため、例えば垂直磁性層の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶をより確実に構成することができる。
一方で、垂直磁性層131は強磁性結晶粒子の周りに非磁性粒界領域が形成された膜であることが好ましい。非磁性粒界領域は、既述のように例えば強磁性材料に酸化物等を含有させた場合、該酸化物の析出により形成される。このため明確な結晶構造を有しない。
そして、上述のように垂直磁性層131の上に誘電磁性層132を形成した場合、垂直磁性層131の非磁性粒界領域に対応した部分には、誘電磁性層132中の粒界構成物質領域が形成され、誘電特性および磁気特性を発現しない。このような条件下では非磁性基板11に交流バイアスを印加しても、誘電磁性層132のうち、垂直磁性層131の非磁性粒界領域の上面部分には誘電磁性材料は結晶を形成しないことが実験により確かめられた。
以上のように本実施形態の垂直記録媒体の製造方法では、粒界構成物質を含んだ誘電磁性層132は、例えばグラニュラ構造を有する垂直磁性層131の上に、基板温度を誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料の結晶化温度未満として成膜することが好ましい。
さらに誘電磁性層132の成膜時に非磁性基板11に交流バイアスを印加することが好ましい。これにより、誘電磁性層132を容易に、誘電磁性粒子と、該誘電磁性粒子を取り囲む粒界構成物質と、を有する構造、すなわち、グラニュラ構造とすることができる。
またこの方法によれば、垂直磁性層131を構成する強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132を構成する誘電磁性粒子とが、厚み方向に連続した柱状晶を構成することができる。このような構成を採用することで、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の結晶性を高めることが可能となり、また、粒子の肥大化を抑制することが可能となるので、SNRの優れた表面の平滑な垂直記録層13を構成することが可能となる。
なお、ここで、垂直磁性層131上に誘電磁性層132を形成する場合を例に説明したが、誘電磁性層132は既述のように非磁性基板11側に形成することもできる。この場合、誘電磁性層132は粒界構成物質を含み、既述のような材料を使用した下地層12を使い、上述の条件で成膜を行うことにより、粒界構成物質が誘電磁性粒子を取り囲んだグラニュラ構造とすることができる。
この際、下地層12の結晶粒子が上記垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と同様の機能を果たすため、誘電磁性粒子の結晶性および配向性が良好な誘電磁性層132が得られる。
また、下地層12の表面側に酸化物等の非磁性材料を含んだグラニュラ構造の配向制御層を設けることで、誘電磁性層132の粒界構成物質が前記配向制御層の非磁性材料領域上に形成され、誘電磁性粒子の肥大化をより抑制することができる。
[第2の実施形態]
本実施形態では、第1の実施形態で説明した垂直記録媒体を備えた垂直記録再生装置について説明する。
図2は、第1の実施形態で説明した垂直記録媒体を用いた垂直記録再生装置の一例を示すものである。図2に示す垂直記録再生装置20は、第1の実施形態で説明した垂直記録媒体21と、垂直記録媒体21を回転駆動させる媒体駆動部22と、垂直記録媒体21に情報を記録再生する記録再生ヘッド23と、この記録再生ヘッド23を垂直記録媒体21に対して相対運動させるヘッド駆動部24と、記録再生信号処理系25とを備えることができる。
記録再生信号処理系25は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を記録再生ヘッド23に送り、記録再生ヘッド23からの再生信号を処理してデータを外部に送ることができるように構成することができる。
本実施形態の垂直記録再生装置20に用いる記録再生ヘッド23には記録素子と再生素子が独立して設けることができる。そして、記録素子には針状電極を用いた電界書き込み素子、再生素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子、トンネル効果を利用したTuMR素子などを用いることができる。
本実施形態の垂直記録再生装置によれば、第1の実施形態で説明した垂直記録媒体を用いているため、SNRに優れた記録再生特性を有する垂直記録再生装置とすることができる。また、例えば高記録密度電界書き込みヘッドを組み合わせて用いることにより、高記録密度の垂直記録再生装置とすることができる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、以下の手順で垂直記録媒体を形成した。なお、以下に既述のように、本実施例の垂直記録媒体においては、軟磁性裏打ち層16を含まない点、及び保護層14の上面に潤滑膜を形成した点以外は図1に示した垂直記録媒体と同様の構成とした。
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる(以下、係る組成を「50Cr−50Ti」とも記載する)ターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる(以下、係る組成を「94Ni−6W」とも記載する)ターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が8at%、Pt含有量が21at%、残部がCoからなる合金を96mol%と、Cr2O3からなる酸化物を4mol%と、を含む(以下、このような組成を「96(71Co8Cr21Pt)−4(Cr2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、チャンバー内の圧力を3Paとして垂直磁性層131を膜厚が15nmになるように成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。まず、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.92:0.08:3の化合物合金を90mol%と、Cr2O3からなる酸化物を10mol%とを含む、90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3)−10(Cr2O3)のターゲットを使い、膜厚15nmの誘電磁性層132を形成した。
なお、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、上記基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(表面粗さ)
得られた媒体の表面粗さをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.18nmであった。
(SNR特性)
垂直記録媒体の記録媒体特性の評価を、リードライトアナライザー(米国GUZIK社製 型式:RW1632)、およびスピンスタンド(米国GUZIK社製 型式:S1701MR)を用いて測定、評価した。
測定に当たっては、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数565.42MHz(1インチあたり2352キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。測定に用いた記録再生ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを、有しており、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。
記録媒体特性評価の結果、SNRは21.8dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察した。非磁性基板11と垂直な面を観察(断面TEM観察)したところ、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の結晶粒が柱状に形成しており、隣接する柱状の結晶粒を粒界部分が分割している構造を明確に観察できた。このように誘電磁性層132の誘電磁性粒子が、基板面に対して垂直方向に柱状に成長した構造を有する場合、粒子の成長状態について、表中「柱状構造」と記載する。また、組成の定性分析結果、粒界部分からはCrとOを検出した。
さらに垂直磁性層131の強磁性結晶粒子上に誘電磁性層132の誘電磁性粒子が、ほぼ同じ幅で積み重なって連続した柱状構造になっていることを確認できた。すなわち、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。特に、垂直磁性層131の1つの強磁性結晶粒子の上に、誘電磁性層132の1つの誘電磁性粒子が成長している構造を有することも確認できた。このように垂直磁性層131の1つの強磁性結晶粒子の上に、誘電磁性層132の1つの誘電磁性粒子が成長している構造を有する場合、粒子の成長状態について、表中「1by1」と記載する。
また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
次に、平面方向からの観察(平面TEM)を行ったところ、誘電磁性層132において、誘電磁性粒子を、誘電磁性層132に粒界として取り囲んだグラニュラ構造となっていることが観察できた。また、組成の定性分析結果、粒界部分からはCrとOを検出したことから粒界構成物質として添加したCr酸化物からなるものと推定できた。この平面TEM像から見積もった誘電磁性層132に含まれる誘電磁性粒子の平均粒径は、6.2nmであった。
[実施例2〜実施例15]
垂直磁性層131および誘電磁性層132の材料、膜厚を表1に記載の材料、膜厚に変更した他は、実施例1と同様に垂直記録媒体を作製した。
なお、いずれの実施例においても誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても誘電磁性層132の誘電磁性粒子が、基板面に対して垂直方向に柱状に成長した構造を有することを確認できた。また、いずれの実施例においても垂直磁性層131の1つの強磁性結晶粒子の上に、誘電磁性層132の1つの誘電磁性粒子が成長している構造を有することを確認できた。すなわち、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
[比較例1]
誘電磁性層132を以下の手順で成膜した点以外は実施例1と同様にして、垂直記録媒体を作製した。
実施例1の場合と同様にして垂直磁性層131まで形成した基板を、500℃まで加熱し、Bi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.92:0.08:3の合金である(Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3のターゲットを使い、40.6MHzのBiasを印加しながらRFマグネトロン法により膜厚15nmの誘電磁性層132を形成した。
なお、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、上記基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
誘電磁性層132上には、実施例1と同様にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直記録媒体を作製した。
得られた垂直記録媒体について、実施例1と同様にして評価を行なった。
(表面粗さ)
実施例1と同様に、得られた垂直記録媒体の表面粗さRaをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.33nmであった。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは17.4dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察した。非磁性基板11と垂直な面を観察(断面TEM観察)したところ、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の結晶粒が柱状に形成しており、隣接する柱状の結晶粒を粒界部分が分割している構造を観察できた。粒界部分は、実施例1に比して明確ではなく、粒界部分の組成の定性分析結果からはBi、Ba、Fe、Mn、Oを検出した。さらに垂直磁性層131の強磁性結晶粒子上に誘電磁性層132の誘電磁性粒子が、ほぼ同じ幅で積み重なって連続した柱状構造になっていることを確認できた。すなわち、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
次に、平面方向からの観察(平面TEM)を行ったところ、誘電磁性層132において、誘電磁性粒子を、粒界により取り囲んだグラニュラ構造となっていることが観察できた。粒界部分の厚さは、実施例1に比べて明確ではなく、粒界の厚さも薄かった。また、組成の定性分析結果、粒界部分からはBi、Ba、Fe、Mn、Oを検出したことから非晶質の誘電磁性材料からなるものと推定できた。すなわち、誘電磁性材料の一部が、垂直磁性層131中の非磁性粒界層の上で結晶化しきれなかったため粒界が形成されたと推定した。この平面TEM像から見積もった誘電磁性層132に含まれる誘電磁性粒子の平均粒径は、7.5nmであった。
[比較例2]
垂直記録層13を以下の手順で成膜した点以外は実施例1と同様にして、垂直記録媒体を作製した。
実施例1の場合と同様にして下地層12まで形成した基板に、Cr含有量が12at%、Pt含有量が16at%、B含有量が6at%、残部がCoからなる(以下、このような組成を「66Co12Cr16Pt6B」のように記載する)ターゲットを用い、チャンバー内の圧力を3Paとして垂直磁性層131を膜厚が15nmになるように成膜した。
次に基板を、450℃まで加熱し、Bi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.92:0.08:3の合金である(Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3のターゲットを使い、40.6MHzのBiasを印加しながらRFマグネトロン法により膜厚15nmの誘電磁性層132を形成した。
なお、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、上記基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
誘電磁性層132上には、実施例1と同様にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜として、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmになるように塗布して垂直記録媒体を作製した。
得られた垂直記録媒体について、実施例1と同様にして評価を行なった。
(表面粗さ)
実施例1と同様に、得られた垂直記録媒体の表面粗さRaをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.83nmであった。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは13.2dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて誘電磁性層132の微細構造を観察した。非磁性基板11と垂直な面を観察(断面TEM観察)したところ、誘電磁性層132の結晶粒は形状が不規則であり結晶粒と結晶粒の境界も明確に観察できなかった。このように誘電磁性層の誘電磁性粒子が基板面に対して垂直以外の角度で成長した粒子を含む構造の場合、粒子の成長状態について、表中「不規則形状」と記載する。
また、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と無関係に誘電磁性層132の誘電磁性粒子が形成されていることが確認できた。
次に、平面方向からの観察(平面TEM)を行ったが、誘電磁性粒子の粒界部分を明確に観測できなかった。この平面TEM像から見積もった平均粒径は、14.6nmであった。
TEMの観察結果から、誘電磁性層132はグラニュラ構造を有しておらず、強磁性結晶粒子と誘電磁性粒子が柱状構造を形成していないことを確認できた。
実施例1〜実施例15と比較例1と2の比較から、誘電磁性層132に酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上を添加した方が、優れた垂直記録媒体を得られることが確認できた。これは、酸化物、窒化物、炭素系材料から選択された1種類以上を添加した場合、これらの物質が粒界として誘電磁性粒子を分割し、誘電磁性層132がグラニュラ構造になることで、誘電磁性層132からの磁気ノイズが低減したためである。
実施例1〜実施例6の結果を比較すると、誘電磁性層132の厚さは2nm以上50nm以下の範囲が好ましいことが確認できた。さらに3nm以上20nm以下がより好ましいことが確認できた。
また、実施例14と実施例15の結果とを比較すると、垂直磁性層131の厚さは25nm以下の範囲が好ましいことが確認できた。
実施例1〜7、実施例9、10、12、14、15と実施例8、実施例11、実施例13との比較から、誘電磁性層132の誘電磁性粒子の材料として、(Bi1−aXa)(Fe1−bMb)O3、(元素XはBa、Laから選ばれた1種類以上の元素、元素MはMn、Tiから選ばれた1種類以上の元素であり、置換率aはa≦0.8、置換率bはb≦0.5、かつ0.01≦a+b≦1.3を満たす)を含むことが好ましいことが確認できた。
[実施例16〜24]
垂直磁性層131、誘電磁性層132の材料、膜厚を表2に記載の材料、膜厚に変更した点以外は、実施例1と同様にして垂直記録媒体を作成した。
なお、いずれの実施例においても誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
実施例16〜24の結果から、誘電磁性層132に粒界構成物質として種々の酸化物、窒化物を一種類以上を添加することができることが確認できた。
実施例16と17、実施例19と21の比較から、誘電磁性層132に含まれる粒界構成物質と、垂直磁性層131に添加した非磁性材料の全部もしくは一部が同じ物質である方が、特性が良好であることを確認できた。
実施例16〜24の結果から、垂直磁性層131としてCoとPtを含んだ各種の磁性材料を使用できることが確認できた。
[実施例25]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、基板温度を250℃まで加熱したのち、V含有量が20at%、残部がCrからなる(以下、係る組成を「80Cr−20V」とも記載する)ターゲット、MgOターゲットを用いて、膜厚が10nmの80Cr−20V層と、膜厚が5nmのMgO層と、をその順に成膜し、これらを下地層12とした。
次に、基板温度を450℃まで加熱した後、チャンバー内圧力を3.0Paとし、Pt含有量が50at%、残部がFeからなる合金を82mol%と、Cを18mol%と、含む(以下、係る組成を「82(50Fe50Pt)−18(C)」とも記載する)ターゲットを用いて膜厚が7nmの垂直磁性層131を成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。まず、基板を450℃まで加熱し、基板に40.6MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.5:0.5:1:3の化合物合金を88mol%と、Cを12mol%と、を含む(以下、係る組成を88((Bi0.5Ba0.5)FeO3)−12(C)とも記載する)ターゲットを使い、膜厚が20nmの誘電磁性層132を形成した。
なお、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、上記基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
得られた垂直記録媒体について、実施例1と同様にして評価を行なった。
(表面粗さ)
実施例1と同様に、得られた垂直記録媒体の表面粗さRaをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.22nmであった。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは21.1dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。誘電磁性層132の誘電磁性粒子の平均粒径は6.4nmであった。
[実施例26〜33]
垂直磁性層131、誘電磁性層132の材料、膜厚を表3に記載の材料、膜厚に変更した他は、実施例25と同様に垂直記録媒体を作成した。
なお、いずれの実施例においても誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
実施例25〜33の結果から、誘電磁性層132に粒界構成物質として種々の酸化物、窒化物、炭素系材料を一種類以上を添加することができることが確認できた。
実施例27と28の比較から、誘電磁性層132に含まれる粒界構成物質と、垂直磁性層131に添加した非磁性材料の全部もしくは一部が同じ物質である方が、特性が良好であることを確認できた。
実施例25〜33の結果から、垂直磁性層131としてFeとPtを含んだ各種の磁性材料を使用できることが確認できた。
実施例29と実施例33の比較から、垂直磁性層131の膜厚は、5nm以上が好ましいことが確認できた。
[実施例34]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、Taターゲットを用いて、膜厚が5nmのTa層を成膜した。続いて、チャンバー内圧力を7Paにしたあと、Ptターゲットを用いて、膜厚が15nmのPt層を成膜し、これらを下地層12とした。
次いで誘電磁性層132を成膜した。まず、基板を450℃まで加熱し、基板に40.6MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.65:0.35:0.9:0.1:3の化合物合金を88mol%と、B2O3からなる酸化物を12mol%とを含む、88((Bi0.65Ba0.35)(Fe0.9Mn0.1)O3)−12(B2O3)のターゲットを使い、膜厚14nmの誘電磁性層132を形成した。
なお、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、上記基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次に垂直磁性層131を成膜した。まず、基板温度を200℃以下まで冷却し、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、このような組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、チャンバー内の圧力を3Paとして垂直磁性層131を膜厚が12nmになるように成膜した。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(表面粗さ)
実施例1と同様に、得られた垂直記録媒体の表面粗さRaをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.18nmであった。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは21.3dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。誘電磁性層132の誘電磁性粒子の平均粒径は6.3nmであった。
[実施例35〜41]
下地層12、垂直磁性層131、誘電磁性層132の材料、誘電磁性層132の膜厚を表4に記載の材料、膜厚に変更した他は、実施例34と同様に垂直記録媒体を作成した。
なお、いずれの実施例においても、誘電磁性層132成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層132を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
実施例34〜41で得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
実施例34〜41の結果から、非磁性基板側に誘電磁性層132を成膜し、その上に垂直磁性層131を成膜した構成でも垂直記録媒体を作成できることが確認できた。
実施例34と36の比較から、多層とした下地層12の内、誘電磁性層132側の層に酸化物等の非磁性材料を添加した下地材料を用いるのが好ましいことが確認できた。
実施例36〜41の比較から。誘電磁性層132の粒界構成物質は、誘電磁性層132中の粒界構成物質以外の組成を一つの化合物として算出したmol総量に対して、2mol%以上18mol%以下が好ましく、3mol%以上18mol%以下であることがより好ましいことが確認できた。
[実施例42]
密着層15と下地層12の間に、裏打ち層を形成した他は、実施例1と同様にして垂直記録媒体を作成した。
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、B含有量が20at%、Co含有量が30at%、残部がFeからなる(以下、係る組成を「50Fe30Co20B」とも記載する)ターゲットを用いて膜厚20nmの50Fe30Co20B層を成膜した。次いでRuターゲット、50Fe30Co20Bターゲット用いて膜厚が0.8nmのRu層、及び膜厚が20nmの50Fe30Co20B層をそれぞれ成膜し、これらを裏打ち層とした。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる94Ni−6Wターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が8at%、Pt含有量が21at%、残部がCoからなる合金を96mol%と、Cr2O3からなる酸化物を4mol%と、を含む、96(71Co8Cr21Pt)−4(Cr2O3)ターゲットを用い、チャンバー内の圧力を3Paとして垂直磁性層131を膜厚が15nmになるように成膜した。
次いで誘電磁性層132を成膜した。まず、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.92:0.08:3の化合物合金を90mol%と、Cr2O3からなる酸化物を10mol%とを含む、90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3)−10(Cr2O3)のターゲットを使い、膜厚15nmの誘電磁性層132を形成した。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(表面粗さ)
実施例1と同様に、得られた垂直記録媒体の表面粗さRaをAFMを用いて観察したところ、表面粗さ(Ra)は0.18nmであった。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは22.0dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。誘電磁性層132の誘電磁性粒子の平均粒径は6.2nmであった。
実施例1と42の比較から、密着層15と下地層12の間に軟磁性材料からなる裏打ち層を成膜することができ、裏打ち層の効果により若干SNR特性が良好になることが確認できた。
[実施例43〜46]
誘電磁性層132の成膜時の基板温度およびBiasを表5に記載の条件に変更した他は、実施例1と同様に垂直記録媒体を作成した。
実施例43〜46で得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの実施例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層132の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、垂直磁性層131及び誘電磁性層132がグラニュラ構造を有することが確認できた。
また、別に示差操作熱量測定法で求めた誘電磁性層132中の誘電磁性粒子の材料の結晶化温度は約600℃であった。
[比較例3、4]
誘電磁性層132の成膜時の基板温度およびBiasを表5に記載の条件に変更した他は、実施例1と同様に垂直記録媒体を作成した。
比較例3、4で得られた垂直記録媒体を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
なお比較例3、4では信号の再生出力が僅かしかなく、電磁変換特性の評価を行うことができなかった。このため、表中、SNRの欄を"−"と記載した。オシロスコープによる波形解析の結果、信号が記録されていないことが確認できた。
また透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、いずれの比較例においても垂直磁性層131の強磁性結晶粒子と、その上に成膜した層(図1中の132に相当、以下132'と記載)の粒子とが厚み方向に重なった構成していたが、格子像解析から垂直磁性層の上に形成された層132'に含まれる粒子は非晶質あるいは非晶質と微結晶の混合の状態であることが確認できた。
これらの結果から、比較例3、4では垂直磁性層の上に形成された層132'に含まれる粒子が磁性と誘電性を併せ持っていないことが確認できた。
実施例1、43と比較例3、4の比較から誘電磁性層132を誘電磁性粒子材料
の結晶化温度以下で成膜する場合、Biasを印加するのが好ましいことが確認できた。おそらくBiasを印加したことで、基板表面にアルゴンイオンが入射し、基板の表面温度が上昇し、誘電磁性粒子の結晶性が増したためと思われる。
比較例3、4の結果から、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性材料が結晶性を有していない場合、誘電磁性層132中に形成された粒子は、磁性と誘電性を併せ持っていないことが確認できた。
実施例1、43、44、45、46の結果から、誘電磁性層132を製膜する際の基板温度は、誘電磁性層132に含まれる誘電磁性粒子の材料の結晶化温度より50℃〜300℃低い温度範囲での成膜が好ましいことが確認できた。
[実施例47]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる94Ni−6Wターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、係る組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)
ターゲットを用い、膜厚が8nm、組成が90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)の第1の垂直磁性層を成膜した。
次にCr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を88mol%と、Cr2O3からなる酸化物を12mol%と、を含む(以下、係る組成を「88(69Co11Cr20Pt)−12(Cr2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、膜厚が6nm、組成が88(69Co11Cr20Pt)−12(Cr2O3)の第2の垂直磁性層を成膜した。
第1の垂直磁性層、及び第2の垂直磁性層は、チャンバー内の圧力を3Paとしてそれぞれ成膜し、これらを垂直磁性層131とした。
次いで誘電磁性層132を成膜した。まず、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.92:0.08:3の化合物合金を90mol%と、Cr2O3からなる酸化物を10mol%とを含む90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3)−10(Cr2O3)のターゲットを使い、膜厚が10nm、組成が90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.92Mn0.08)O3)−10(Cr2O3)の第1の誘電磁性層を成膜した。
次いで、Bi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.5:0.5:0.5:0.5:3の化合物合金を90mol%と、Cr2O3からなる酸化物を10mol%とを含む90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.5Mn0.5)O3)−10(Cr2O3)のターゲットを使い、膜厚が5nm、組成が90((Bi0.5Ba0.5)(Fe0.5Mn0.5)O3)−10(Cr2O3)の第2の誘電磁性層を、それぞれ成膜した。第1の誘電磁性層、及び第2の誘電磁性層を誘電磁性層132とした。
なお、誘電磁性層の成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、第1の誘電磁性層、及び第2の誘電磁性層を成膜時、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは22.3dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層の強磁性結晶粒子と、第1の誘電磁性層、第2の誘電磁性層の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層、第1の誘電磁性層、及び第2の誘電磁性層がグラニュラ構造を有することが確認できた。
[実施例48]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる94Ni−6Wターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、係る組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、膜厚が8nm、組成が90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)の第1の垂直磁性層を成膜した。
次に、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.65:0.35:0.9:0.1:3の化合物合金を88mol%と、B2O3からなる酸化物を12mol%とを含む88(Bi0.65Ba0.35)(Fe0.9Mn0.1)O3)−12(B2O3)のターゲットを使い、膜厚が8nm、組成が88(Bi0.65Ba0.35)(Fe0.9Mn0.1)O3)−12(B2O3)の第1の誘電磁性層を成膜した。
次に、基板を200℃以下になるまで冷却し、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、係る組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、膜厚が8nm、組成が90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)の第2の垂直磁性層を成膜した。
次に、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Mn:Oの含有モル比が0.65:0.35:0.9:0.1:3の化合物合金を88mol%と、B2O3からなる酸化物を12mol%とを含む88((Bi0.65Ba0.35)(Fe0.9Mn0.1)O3)−12(B2O3)のターゲットを使い、膜厚が8nmの88((Bi0.65Ba0.35)(Fe0.9Mn0.1)O3)−12(B2O3)の第2の誘電磁性層を成膜した。
なお、誘電磁性層の成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、第1の誘電磁性層、及び第2の誘電磁性層を成膜時、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは21.7dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層の強磁性結晶粒子と、第1の誘電磁性層、第2の誘電磁性層の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層、第1の誘電磁性層、及び第2の誘電磁性層がグラニュラ構造を有することが確認できた。
[実施例49]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる、50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる94Ni−6Wターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、係る組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、膜厚が12nm、組成が90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)の第1の垂直磁性層を成膜した。
次に、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.75:0.25:1:3の化合物合金を89mol%と、Si3N4からなる窒化物を6mol%と、B2O3からなる酸化物を5mol%と、を含む89((Bi0.75Ba0.25)FeO3)−6(Si3N4)−5(B2O3)のターゲットを使い、膜厚が12nm、組成が89((Bi0.75Ba0.25)FeO3)−6(Si3N4)−5(B2O3)の誘電磁性層を成膜した。
なお、誘電磁性層の成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、誘電磁性層を成膜時、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次に、基板を200℃以下になるまで冷却し、Cr含有量が6at%、Pt含有量が14at%、Sm含有量が6at%、残部がCoからなる合金を92mol%と、Si3N4からなる窒化物を8mol%と、を含む92(74Co6Cr14Pt6Sm)−8(Si3N4)ターゲットを用い、膜厚が6nm、組成が92(74Co6Cr14Pt6Sm)−8(Si3N4)の第2の垂直磁性層を成膜した。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは21.3dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層、及び誘電磁性層がグラニュラ構造を有することが確認できた。
[実施例50]
非磁性基板11として、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ)を用意した。
そして、上記ガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製 型式:C−3040)の成膜チャンバー内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバー内を排気した後、Arガスを導入しチャンバー内圧力を0.8Paにした。次いで、ガラス基板上にTi含有量が50at%、残部がCrからなる50Cr−50Tiターゲットを用いて膜厚が10nmの密着層15を形成した。
次に、W含有量が6at%、残部がNiからなる、94Ni−6Wターゲット、Ruターゲットを用いて、膜厚が5nmの94Ni−6W層と、膜厚が10nmのRu層と、をその順に成膜した。さらに、チャンバー内圧力を6Paとしたあと、Ruターゲットを用いて膜厚が10nmとなるように成膜し、これらを下地層12とした。
下地層12の上に、Cr含有量が11at%、Pt含有量が20at%、残部がCoからなる合金を90mol%と、B2O3からなる酸化物を10mol%と、を含む(以下、係る組成を「90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)」のように記載する)ターゲットを用い、膜厚が12nm、組成が90(69Co11Cr20Pt)−10(B2O3)の第1の垂直磁性層を成膜した。
次に、Cr含有量が16at%、Pt含有量が16at%、B含有量が8at%、残部がCoからなる60Co16Cr16Pt8Bターゲットを用いて、膜厚が3nm、組成が60Co16Cr16Pt8Bの第2の垂直磁性層を成膜した。第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層を垂直磁性層131とした。
次に、基板を450℃まで加熱し、基板に40MHzのBiasを印加しながら、RFマグネトロン法によりBi:Ba:Fe:Oの含有モル比が0.65:0.35:1:3の化合物合金を89mol%と、SiO2からなる酸化物を11mol%と、を含む89((Bi0.65Ba0.35)FeO3)−11(SiO2)のターゲットを使い、膜厚が12nmの誘電磁性層132を成膜した。
なお、誘電磁性層の成膜時に用いた誘電磁性材料の結晶化温度をTc、誘電磁性層を成膜時の非磁性基板の基板温度をTsとした場合、誘電磁性層を成膜時、基板温度はTc−300≦Ts≦Tc−50を満たしている。
次にイオンビーム法にて保護層14としてDLC膜を膜厚が3nmとなるように形成した。
さらに保護層14の上面に、テトラオール系潤滑剤を膜厚が2nmとなるように塗布して潤滑膜を形成し、垂直記録媒体を作製した。
(SNR特性)
実施例1と同じ条件でSNR特性の評価を行った。
SNRは20.5dBであった。
(垂直記録層の粒子の成長状態の評価)
また、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)により垂直記録層13の微細構造を観察したところ、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層の強磁性結晶粒子と、誘電磁性層の誘電磁性粒子とが厚み方向に連続した柱状晶を構成していることを確認できた。また、第1の垂直磁性層、第2の垂直磁性層、及び誘電磁性層がグラニュラ構造を有することが確認できた。
実施例47〜50の結果から、垂直磁性層131と誘電磁性層132を、それぞれ複数層形成することができることを確認できた。