JP6235815B2 - 組換えヒトμ−カルパインの調製方法 - Google Patents
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Description
そのため、これらの病態の進行防止の目的でカルパインの特異的阻害剤の設計及びスクリーニングや構造解析などが活発に研究されており、これらを含めた様々な用途において、カルパイン(特にヒトのカルパイン)の大規模かつ簡便な調製法の確立が不可欠となっている。
これまで、カルパインの組換えタンパク質については、様々な発現・精製法が確立され報告されてきたが、一般的に最も簡便かつ効率的な大腸菌発現系を用いた場合では、ラットとヒトのm-カルパインについては報告があるものの(非特許文献4、5参照)、μ-カルパインについての成功例は報告されていない。
(1)ヒトμ-カルパインの活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子と、ヒトμ-カルパインの制御サブユニットタンパク質のGR領域の殆どを欠失した改変制御サブユニットタンパク質をコードする遺伝子とが、共に宿主細胞内で発現可能に導入された形質転換宿主細胞を、低温条件下で培養し、得られた培養物から組換えヒトμ-カルパインを採取することを含む、組換えヒトμ-カルパインの調製方法。
上記(1)の方法において、宿主細胞は、例えば大腸菌が挙げられ、特に大腸菌SoluBL21株が好ましい。
上記(1)の方法において、形質転換宿主細胞は、例えば、活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターと、改変制御サブユニットをコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターとが宿主細胞内に導入されたものが挙げられる。
上記(2)の細胞は、例えば、活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターと、改変制御サブユニットをコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターとが宿主細胞内に導入されたものが挙げられる。
上記(2)の細胞は、例えば、組換えヒトμ-カルパインの調製に用いられることができる。
1.本発明の概要
カルパインは、ほとんどの生物に広く存在するカルシウム依存性細胞内システインプロテアーゼであり、基質タンパク質を限定分解することで様々な細胞機能の制御に関わる。μ-カルパインは15種類のヒトカルパイン中の代表的分子種であり、m-カルパインと共に最も研究が進められている。μ-カルパインは、活性サブユニット(CAPN1)と制御サブユニット(CAPNS1)とからなるヘテロ二量体として組織普遍的に発現し、個体発生から細胞周期、細胞死、細胞接着・融合など多くの生命現象に関わるだけでなく、その活性制御不全が筋ジストロフィー、神経変性疾患など様々な病態の要因となる。そのため、特異的阻害剤の設計・検索や構造解析など様々な用途に、(特にヒトの)カルパインの大規模かつ簡便な調製法の確立は不可欠である。これまで、組換えカルパインの様々な発現・精製法が報告されたが、最も簡便かつ効率的な大腸菌発現系ではラットとヒトのm-カルパインを除き成功例がなかった。ヒト遺伝子は、人工的に変異を入れなければ大腸菌では発現できないという報告まであった(Larsen, A.K. et al., (2004) Expression of human, mouse, and rat m-calpains in Escherichia coli and in murine fibroblasts. Protein Expr. Purif. vol. 33, p. 246-255)。
本発明者は、ヒトμ-カルパインについて、既報(Meyer, S. L. et al., (1996) Biologically active monomeric and heterodimeric recombinant human calpain I produced using the baculovirus expression system., The Biochemical journal, vol. 314 (Pt 2), p. 511-519)の昆虫細胞/バキュロウイルス発現系を用いた調製法に比べて、より効率的かつ簡便で、大規模調製も可能な、大腸菌発現系を用いた調製法(発現及び精製法)を確立することに初めて成功した。
2.組換えヒトμ-カルパインの調製方法
本発明の組換えヒトμ-カルパインの調製方法は、前述のとおり、ヒトμ-カルパインの活性サブユニット(CAPN1)タンパク質をコードする遺伝子(以下、CAPN1遺伝子)と、ヒトμ-カルパインの制御サブユニット(CAPNS1)タンパク質のGR領域の殆どを欠失した改変制御サブユニット(CAPNS1ΔGR)タンパク質をコードする遺伝子(以下、CAPNS1ΔGR遺伝子)とが、共に宿主細胞内で発現可能に導入された形質転換宿主細胞を、低温条件下で培養し、得られた培養物から組換えヒトμ-カルパインを採取することを含む、調製方法である。本発明の調製方法は、後述するように、宿主細胞として大腸菌SoluBL21株を用いる場合が特に好ましい。
本発明において、ヒトμ-カルパインの活性サブユニット(CAPN1)タンパク質は、配列番号2で示されるアミノ酸配列(714アミノ酸残基)からなるタンパク質である(図1参照)。当該アミノ酸配列の情報は、例えばNCBI(GenBank)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に「Accession number:NP 001185797」として公表されている。
CAPN1タンパク質の変異体は、(i) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したタンパク質、(ii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1〜数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換したタンパク質、(iii) 配列番号2で示されるアミノ酸配列中に1〜数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が付加したタンパク質、および(iv) それらの変異が組み合わされたタンパク質であって、かつCAPNS1ΔGR(この詳細は後述する説明を参照)との共存下でタンパク質を分解する活性を有するタンパク質などが挙げられる。
また、CAPN1タンパク質の変異体としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して、約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつCAPNS1ΔGRとの共存下でタンパク質を分解する活性を有するタンパク質も挙げられる。ここで、上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
なお、上記においては、「CAPNS1ΔGRとの共存下」とする代わりに、「CAPNS1との共存下」としてもよい(以下同様)。
上記タンパク質分解活性は、公知の方法で測定することができ、例えば、CAPNS1ΔGRと共発現・精製し、カゼインとカルシウムを用いたカゼインアッセイ法(Ishiura S. et al., (1978) Studies of a calcium-activated neutral protease from chicken skeletal muscle. I. Purification and characterization., J Biochem., vol. 84, p. 225-230.)によって測定できる。
また、本発明においては、CAPN1タンパク質の変異体として、例えばCAPN1(配列番号2)の活性中心に位置する第115番目のシステイン(Cys115)をセリン(Ser)に置換した変異体(すなわちCAPN1 C115S)も、CAPN1タンパク質に含むものとする。CAPN1 C115Sは、活性が欠損している以外は構造的には野生型CAPN1と同一のものである。
本発明では、CAPNS1ΔGRタンパク質の変異体も、CAPNS1ΔGRタンパク質に含まれるものとする。
また、CAPNS1ΔGRタンパク質の変異体としては、配列番号6で表されるアミノ酸配列に対して、約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつCAPNS1との共存下でタンパク質を分解する活性を有するタンパク質も挙げられる。ここで、上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
当該活性は、公知の方法で測定することができ、例えば、CAPN1と共発現・精製し、カゼインとカルシウムを用いたカゼインアッセイ法(Ross and Schatz(1973)Anal. Biochem. 54: 304)によって測定できる。
本発明において、CAPN1遺伝子は、例えば、配列番号1で示される塩基配列を基にプライマーを設計し、ヒトゲノムライブラリーから遺伝子増幅技術により得ることができる。
ここで、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件として、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」等の条件を挙げることができる。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
また、上記以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、配列番号1で示される塩基配列のDNA又は配列番号5で示される塩基配列のDNA、あるいは配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードするDNA又は配列番号6で示されるアミノ酸配列をコードするDNAと、約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
本発明において、塩基配列の確認は、慣用の方法により配列決定することにより行うことができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463)等により行うことができる。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
本発明において、目的タンパク質であるヒトμ-カルパインの調製は、CAPN1遺伝子と改変制御サブユニットタンパク質をコードする遺伝子(CAPNS1ΔGR遺伝子)とが共に発現可能に導入された形質転換宿主細胞(形質転換体)を得、これを培養する工程と、得られる培養物から目的のタンパク質を採取する工程とを含む方法により実施することができる。
プラスミドを用いる場合は、CAPN1遺伝子と、改変制御サブユニットタンパク質をコードする遺伝子(CAPNS1ΔGR遺伝子)とが、一つのプラスミドに含まれてもよいし、それぞれ別のプラスミドに含まれてもよい。本発明はこれら遺伝子を含有するプラスミドを含む。
本発明で使用されるプラスミドは、その基本となるベクターの由来には特に限定されず、例えば、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミドなどを使用することができ、各種市販のベクターを使用することができる。
選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ロイシン合成酵素遺伝子、ウラシル合成酵素遺伝子などを挙げることができる。
宿主細胞に上記プラスミドを導入する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法などの公知の方法が挙げられる。これらの方法により、本発明の形質転換宿主細胞が提供される。
本発明の形質転換宿主細胞は、用いた宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って培養することができる。培養条件は、以下に特記する以外、目的タンパク質の生産性及び形質転換宿主細胞の生育が妨げられない条件であればよく、限定はされない。
培養に用いる培地としては、宿主細胞が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、公知の各種天然培地及び合成培地のいずれを用いてもよい。例えば、LB培地、SD培地、SCX培地、YPD培地、YPX培地などの公知の培地から適当な培地を選択し、好ましい培養条件の下で培養することができる。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられるが、液体培地で大腸菌や酵母の形質転換体を培養する場合は、振盪培養が好ましい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換え発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じて、好適なインデューサー(例えば、IPTG等)を培地に添加してもよい。
形質転換宿主細胞の培養は、本培養の前に前培養を行ってもよい。前培養は、例えば、本発明の形質転換宿主細胞を少量の培地に接種し、12〜24時間培養すればよい。本培養の培養量の0.1〜10%、好ましくは1%の前培養液を、本培養の培地に加え、本培養を開始する。本培養は、0.5〜200時間、好ましくは1〜150時間、より好ましくは3〜120時間行ってもよい。
培養後、目的タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより目的タンパク質を採取することができる。菌体又は細胞の破砕方法としては、フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、超音波処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。破砕後、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製したタンパク質溶液とすることができる。また、目的のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合は、菌体や細胞そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
形質転換宿主細胞を培養して得られた目的タンパク質の生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)等により確認することができる。
本発明により得られた組換えヒトμ-カルパインは、例えば、カルパインを標的としたヒト疾患の治療、緩和及び予防を行うための、特異的阻害剤の設計及びスクリーニング等の研究に用いることができるが、前述のとおり安定性(長期安定性)に優れたものであるため、上記設計や研究等に用いる場合、より実用的なものである。
1.発現コンストラクトの構築
CAPN1は、N末端のα-へリックス領域(N)に続き、プロテアーゼ領域(CysPc)、C2様領域(C2L)、5つのEFハンドモチーフを含む領域(PEF)で構成され、CAPNS1は、構造上フレキシブルでグリシンに富む領域(GR)とPEF領域で構成される(図1)。両サブユニットはそれぞれのPEF領域のC末端EFハンドモチーフの相互作用によって二量体を形成し、CAPNS1はCAPN2のシャペロンとして機能する。μ-カルパインは、Ca2+非存在下でCysPc領域が二つのサブ領域(PC1及びPC2)に分割され活性中心を形成しないことで不活性状態にあるが、Ca2+がPC1、PC2、C2L、PEF各領域に結合することで構造変化を起こし、活性化状態になる。
ヒトCAPN1発現用には、CAPN1 cDNAをpET24b(+)ベクターに組みこんだコンストラクト(CAPN1/pET)を、ヒトCAPNS1発現用には、CAPNS1またはCAPNS1ΔGRのcDNAをpACpET24ベクターに組み込んだコンストラクト(CAPNS1/pACpET及びCAPNS1ΔGR/pACpET)を作製した。ここで、CAPN1/pETは、CAPN1をC末端にHis-tag配列(GKLAAALEHHHHHH(配列番号7))を付加して発現するコンストラクトであり、CAPNS1ΔGR/pACpETは、CAPNS1のGR領域(CAPNS1のアミノ酸配列(配列番号4)の第1番目〜第85番目のアミノ酸)を欠損させたものである。また、pACpETベクターは、pACYC177ベクターのBamHI-HindIII間(849 bp)領域を、pET24b(+)ベクターのBglII-HindIII間(170 bp)領域に置き換えた改変ベクターである。pET24b(+)ベクターとpACpET24ベクターは異なる複製起点を有するため、同一の大腸菌細胞内で共存・複製することが可能となっている。
上記の発現コンストラクトを用い、まず小スケールで発現条件検討を行った。CAPN1/pETをCAPNS1/pACpETまたはCAPNS1ΔGR/pACpETと大腸菌BL21(DE3)株に形質転換し、終濃度1 mM isopropyl-thiogalactoside (IPTG)により発現誘導したところ、培養温度に関わらずCAPN1は大部分が不溶性であった(図2A)。そこで、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を持ついくつかの大腸菌株を用いて同様に発現条件を検討した。その結果、SoluBL21株を用いた24℃の低温培養条件においてCAPN1とCAPNS1ΔGRを共発現誘導させると、発現総量はBL21(DE3)株を用いた場合より抑制されるがCAPN1の可溶性が改善することを見出した(図2B)。一方、培養温度が18℃の場合は、CAPN1の発現量が低下し、27℃の場合は、CAPN1の可溶性が低下した(図2C)。よって、発現温度を24℃に設定して、以下の通り大量発現・精製法を確立した。
1.ヒトμ-カルパインの発現と精製
CAPN1/pETとCAPNS1ΔGR/pACpETを導入した後にグリセロール凍結保存したSoluBL21形質転換株を100 μg/mLアンピシリンと50 μg/mLカナマイシンを含むLB培地(LB/Amp/Kn)30 mLに植菌し、27℃で一晩振とう前培養した。翌日、1 LのLB/Amp/Knに対しA600が約0.1となるように前培養液を加え、27℃でA600が0.4〜0.5になるまで振とう培養した(約3時間)。その後、培養液を氷上または冷蔵庫で十分冷却した後、終濃度1 mMとなるようにIPTGを添加し、24〜25℃で20時間振とうしてタンパク質を発現誘導した。
以下の精製操作は、全て氷上または低温(4℃)室内で行った。また、各精製操作後は、溶出画分のカルパイン活性測定及びSDS-PAGE解析を行った。上記培養液を遠心して菌体を回収し、50 mLのPBSに懸濁することで菌体洗浄を行い、再び遠心回収した菌体を0.3 mM PMSFを含むTris/EGTA/DTT(20 mM Tris-Cl, pH 7.5, 1 mM EGTA, 1mM dithiothreitol(DTT)を含む緩衝液)50 mLに再懸濁した。ここで、回収した菌体を、操作の中断を目的に冷凍保管することは、1〜2日で発現タンパク質の多くが分解してしまうため、避ける。懸濁液をフレンチプレス装置に通して菌体破砕処理した後、超遠心(55,000×g, 30分)して上清画分を回収し、0.22 μmのフィルターに通して共雑物を除去した。上清画分を、4 mM Imidazoleを含む緩衝液A (20 mM Tris-Cl, pH 7.5, 0.4 M NaCl, 0.25 mM EGTA, 1 mM DTT)で平衡化したNi2+ アフィニティーカラム(カラム樹脂はRoche社製cOmplete His-tag Purification Resin)にアプライし、10カラム体積量の同緩衝液でカラムを洗浄した後、250 mM Imidazoleを含む緩衝液Aでタンパク質の分離溶出(2 ml/画分)を行った。これにより活性ピーク画分(6画分、12mL分)が得られるので、これらをプールして直ちに2 LのTED中で一晩透析しバッファー置換を行った。翌日、透析画分を回収し、遠心(20,000 x g, 20分)により夾雑物を除去した。最後に、これをTEDで平衡化したMonoQ HR 10/10陰イオン交換カラムにアプライし、5カラム体積分のTEDでカラムを洗浄した後、7カラム体積分のTEDを通す間に0〜0.5 Mの範囲での塩(NaCl)濃度勾配をかけることにより、タンパク質の分離溶出(1 ml/画分)を行った。これにより、約350 mM NaClを含む2画分(2mL分)が最終精製標品として得られた(図3A)。
得られた前記精製標品の一部をゲルろ過(HiLoad 16/10 Superdex 200)クロマトグラフィーで解析したところ1箇所の溶出ピークが得られ、算出した分配係数(Kav)により推定された分子量は理論値とよく一致した(図3B)。また、カゼイン・ザイモグラフィー(カゼインを含ませたゲルで電気泳動してプロテアーゼ活性の均一性を検証する方法)により、CAPNS1がGR領域を欠損しているために天然μ-カルパインよりも低分子量側であるが単一シグナルが検出されたことから、プロテアーゼ活性が均一な画分であることが示された(図3C)。以上から、CAPN1とCAPNS1ΔGRとがヘテロ二量体(すなわちμ-カルパイン)として精製されたことが確認された。本実施例で確立した発現・精製系により1 Lの大腸菌培養液から2.5 mgのヒトμ-カルパインが精製され、活性から算出した収率は14%であった(下記表1)。
この精製μ-カルパインと天然μ-カルパイン(ブタ由来)との、活性化に必要なCa2+濃度、比活性を同じ測定条件で比較解析したところ、ほぼ一致した。また、既報の組換えヒトm-カルパインとそのCa2+感受性を比較した結果、他の報告通り両者に特徴的なCa2+感受性を示した。これらのことから(図3C)、CAPNS1のGR領域の欠損とCAPN1に付加したHis-tagは組換えμ-カルパインの性質に影響しないこと、大腸菌発現系から得られる組換えμ-カルパインが天然μ-カルパインに代わり様々な解析に用いることが可能であることが確認された。
CAPN1(配列番号2)の活性中心に位置する第115番目のシステイン(Cys115)をセリン(Ser)に置換した変異体CAPN1 C115Sと、CAPNS1ΔGRとを、上記2.項と同様に発現させ精製した(図4A)。発現タンパク質は全くプロテアーゼ活性を示さなかったが、精製工程におけるカラムからの溶出パターンはμ-カルパインと同一であった。精製標品の一部をゲルろ過(HiLoad 16/10 Superdex 200)クロマトグラフィーで解析したところμ-カルパインと同じ位置に溶出ピークが得られたことから、CAPN1 C115SとCAPNS1ΔGRもヘテロ二量体(すなわちμ-カルパインC115S)として精製されたことが確認された(図4B)。μ-カルパインC115Sの発現・精製量はμ-カルパインよりも多く、1 Lの大腸菌培養液から約6 mgのヒトμ-カルパインC115Sが精製された(前記表1)。また、精製μ-カルパインC115Sは、Ca2+存在下で天然μ-カルパインを作用させると分解を受けるが、μ-カルパインがCa2+依存的に起こす自己消化パターンと同様のパターンを示すことから、μ-カルパインC115Sは活性が欠損している以外は構造的及び機能的に野生型μ-カルパインと同一であることが確認された(図4C)。
本実施例では、ヒトμ-カルパインを昆虫細胞発現系よりも簡便かつ効率的に発現・精製する系を確立した。これにより、μ-カルパインについての様々な解析の推進が期待され、なかでも、これまで実現困難であったμ-カルパインの構造解明に大きく道が開かれた。m-カルパインの構造は既に解明されているため、μ-カルパインとm-カルパインとの相違点を構造から説明することが可能になり、さらに特異的阻害剤の開発に繋がることも期待される。また、m-カルパインの場合、活性中心変異体m-カルパインC105Sを用いることで、野生型m-カルパインと全く同一の結晶構造が高解像度で得られたことから、本実施例で安定かつ大量に調製可能になったμ-カルパインC115Sは構造解析に有望なツールになると考えられる。
現在、カルパインを標的としたヒト疾患の治療・緩和・予防に向けた臨床及び基礎研究が進められている中で、特異的阻害剤の開発が期待されており、本実施例で確立したμ-カルパインの発現・精製法は、そこに繋がる有用なものである。
Claims (8)
- ヒトμ-カルパインの活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子と、ヒトμ-カルパインの制御サブユニットタンパク質のGR領域の殆どを欠失した改変制御サブユニットタンパク質をコードする遺伝子とが、共に宿主細胞内で発現可能に導入された形質転換宿主細胞を、18℃以上、25℃未満の低温条件下で培養し、得られた培養物から組換えヒトμ-カルパインを採取することを含む、組換えヒトμ-カルパインの調製方法であって、該宿主細胞が大腸菌である、前記方法。
- 形質転換宿主細胞の前培養を、18〜27℃で行う、請求項1記載の方法。
- 宿主細胞である大腸菌が大腸菌SoluBL21株である、請求項1又は2記載の方法。
- 形質転換宿主細胞は、活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターと、改変制御サブユニットをコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターとが宿主細胞内に導入されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- ヒトμ-カルパインの活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子と、ヒトμ-カルパインの制御サブユニットタンパク質のGR領域の殆どを欠失した改変制御サブユニットをコードする遺伝子とが、共に宿主細胞内で発現可能に導入された、形質転換宿主細胞であって、該宿主細胞が大腸菌である、前記形質転換宿主細胞。
- 宿主細胞である大腸菌が大腸菌SoluBL21株である、請求項5記載の形質転換宿主細胞。
- 活性サブユニットタンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターと、改変制御サブユニットをコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターとが宿主細胞内に導入されたものである、請求項5又は6記載の形質転換宿主細胞。
- 組換えヒトμ-カルパインの調製に用いられる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の形質転換宿主細胞。
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