組織学的に処理された試料の特定の属性(たとえば染色強度)の一貫性および制御可能性を高めることが、多くの場合望ましい。処理時間(すなわち所与の組織学的処理の継続時間)および処理温度(すなわち所与の組織学的処理が実行される温度)は、これらの属性の、全てではなくともほとんどに影響を与える、2つの変数である。本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された自動化された組織学的システムは、処理時間および/または処理温度の一貫性および/または制御可能性を促進する特徴を含む。たとえば、これらのシステムのうちの少なくともいくつかは、精確に制御された液体の分注動作および除去動作を実行可能な処理ヘッドを有する、染色機を含む。これらの染色機は、高くされた基準温度に維持され得る内部環境も有し得る。本技術の実施形態により構成されたこれらのおよび他のシステムの(たとえば品質および/または汎用性に関する)能力は、対応する従来の物の性能を大きく上回ることが期待される。さらに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成されたシステムは、処理コストの低減、廃棄物発生の低減、およびスループットの増大などの、他の望ましい向上をもたらす特徴を含み得る。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された処理液は、対応する従来の処理液とは異なっている場合がある。たとえば、本技術の特定の実施形態により選択または調合された処理液は、対応する従来の液体よりも揮発性が低い。この理由および/または他の理由のため、これらの液体は、高くされた基準温度に維持される染色機において使用するのに非常に適したものであり得る。対照的に、対応する従来の液体は、これらの染色機において使用されるときに、容認できないほど速い速度で蒸発する傾向を有する場合がある。自動化された組織学的システムにおける処理液の蒸発は、一般には望ましくない。さらに、本技術の実施形態により選択または調合された処理液は、対応する従来の処理液よりも毒性が低いものとすることができる。このことは、処理液の廃棄を容易にすること、および/または中で処理液が使用されるシステムからの有毒煙霧の放出を、低減もしくは排除することができる。少なくともいくつかの場合には、本技術の実施形態により構成された自動化された組織学的システムとともに使用される、いくつかのまたは全ての処理液は、一価アルコール(たとえばエタノール)に関して比較的低い濃度を有する。たとえば、これらの処理液は、一価アルコールに関してよりもポリオール(たとえばプロピレングリコール)に関して、より大きい体積濃度を含み得る。このことは、利点の中でもとりわけ、蒸発を低減し、試料処理の特定の側面を向上させ、処理の複雑さを低くすることができる。さらに、本技術の実施形態により選択または調合された処理液は、これらのおよび/または他の望ましい向上をもたらす他の特徴を含み得る。
本技術のいくつかの実施形態の具体的な詳細が、本明細書において図1〜図93を参照して開示される。本明細書において開示されるものに加えて、他の実施形態が本技術の範囲内にあることに留意すべきである。たとえば、本技術の実施形態は、本明細書において示されるかまたは記載される構成、構成要素、および/または手順とは異なる構成、構成要素、および/または手順を含み得る。さらに、当業者は、本技術の実施形態が、本明細書において示されるかまたは記載される構成、構成要素、および/または手順に追加して構成、構成要素、および/または手順を有し得ること、ならびにこれらのおよび他の実施形態が、本技術から逸脱することなく、本明細書において示されるかまたは記載される構成、構成要素、および/または手順のうちのいくつかを有さないことが可能であることを理解するであろう。
システムアーキテクチャの選択された例
図1は、本技術の実施形態による、自動化されたスライド処理システム2(システム2)の立面図である。システム2は、アクセスポート3、およびタッチスクリーン5の形態の入力デバイスを含み得る。使用者は、システムにスライド担持トレイ(「スライドトレイ」)を、たとえばアクセスポート3内に設置することによって、装填することができる。所与のスライドトレイは、処理されるべき試料をそれぞれ担うスライドを担うことができる。システムに装填を行う前、行っている間、または行った後で、使用者は、タッチスクリーン5を使用して、試料に対して行われるべき工程(たとえばプロトコル、レシピ等)を選択する。システム2は次いで、自動的に試料を処理し、スライドにカバースリップを付着させ、スライドトレイをアクセスポート3に戻すことができる。その後、カバースリップ付きスライド(たとえば、スライドに永久的に結合されたカバースリップを担うスライド)は、続く分析、病理学者の解釈、および/または記録保管のために、アクセスポート3から回収され得る。
図2は、内部構成要素のうちのいくつかを示す、システム2の側面立面図である。システム2は、ハウジング7、ならびにハウジング7内に配設されたモジュール(たとえば、ワークステーション)4、6、8、および10を含み得る。同じくハウジング7内において、システム2は、輸送装置12、液体供給部14、加圧装置16、および制御装置18を含み得る。ハウジング7は、概ね汚染のない内部環境を維持すること、ならびに/または、モジュール4、6、8、および10のうちの1つもしくは複数を動作させるのに好適な所望の内部温度の維持を助けることができる。試料担持スライドを保持するスライドトレイは、試料を乾燥させ、試料を染色し、スライドにカバースリップを付着させるために、モジュール4、6、8、10の間で輸送装置12によって担われる。試料は、共有される処理液の浴槽を使用することなく、スライド上で個々に処理され得る。このようにして、ディップアンドダンク方式の機械の交差汚染、処理液のキャリーオーバー、過剰な廃棄物(たとえば液体廃棄物)、一貫性のない処理液性能、および他の欠点が、低減されるかまたは回避される。さらに、試料の染色強度および/または他の処理後の属性は、高度に制御可能かつ精確に実行可能とすることができる。輸送装置12およびモジュール4、6、8、および10は、タッチスクリーン5(図1)を使用することによって使用者によって制御され得る制御装置18の、制御下に置くことができる。
モジュール4は、乾燥機の形態の加熱器装置(「乾燥機4」)とすることができ、モジュール6は染色機(「染色機6」)とすることができ、モジュール8はカバースリッパー(「カバースリッパー8」)とすることができ、モジュール10は硬化ユニットの形態の加熱器装置(「硬化ユニット10」)とすることができる。モジュールは、乾燥機4および硬化ユニット10が染色機6よりも高く位置付けられた状態で、垂直方向に積み重ねた状態で配置され得る。このことは、たとえば、乾燥機4および硬化ユニット10が熱を発生させる場合があり、この熱がハウジング7の頂部を通って放出され得るので、有用である。染色機6は、染色試薬(たとえばヘマトキシリン試薬)および対比染色試薬(たとえばエオシン試薬)などの液体を、液体供給部14から供給する、流体工学マニホールド19に接続され得る。流体工学マニホールド19は、限定するものではないが、1つまたは複数の導管、弁、オリフィス、センサ、ポンプ、フィルタ、および/または液体を制御可能に送達できる他の構成要素を含み得る。電子工学マニホールド(図示せず)は、モジュールの構成要素およびそれらの構成要素に電力を提供しかつこれらに対する制御を提供するために、制御装置18にモジュールを通信可能に結合し得る。1つの実施形態では、個々のモジュールは、流体工学マニホールド19および電気マニホールドに、それぞれ共通の接合部およびプラグを通して接続される。共通の接合部およびプラグを使用することによって可能とされる互換性は、モジュールを迅速かつ容易に追加および除去することを可能にすることができ、このことによりシステムの再構成、保守、および/または修理を容易にする。
輸送装置12は、スライドトレイをモジュールからモジュールへと、システムのスループットを向上させるような効率的な様式で、ロボット式に移動させることができる。輸送装置12は、限定するものではないが、1つまたは複数の昇降装置(たとえばレールおよび荷台組立体)、ロボット式アーム、モータ(たとえばステッパモータ、駆動モータ等)、トレイ接触部もしくはホルダ(たとえばフォーク部、クランプ等)、ならびに/またはセンサ、さらには移動をもたらすための他の構成要素を備え得る。少なくともいくつかの実施形態では、輸送装置12は、X−Y−Z輸送機構(たとえばX−−左右、Y−−前後、Z−−上下)として機能する、昇降装置および挿入装置(たとえばX−Yシャトルテーブル)を含む。輸送装置12の位置を検出するために、輸送装置12に隣接してセンサ(図示せず)が設置され得、これらのセンサは、精確なスライドトレイの位置決めを行うため輸送装置12を検知場所において精密に位置合わせするために、使用され得る。
センサは、輸送装置12上、モジュール内、およびスライドトレイ上を含め、システム2の全体にわたって様々な場所に置かれ得る。いくつかの実施形態では、システム2内における衝突、衝撃、または他の事象を検出するために、センサ(限定するものではないが、歪みゲージ、加速度計、接触センサ、光学センサ、または特定の事象を検知できる他の検知デバイスを含む)が使用され得る。センサは、制御装置18によって受信される1つまたは複数の信号を出力することができ、制御装置18は、所与の事象が使用者への通知または他の動作を必要とするかどうかを判定し得る。たとえば、想定されないスライドトレイの衝撃が検出される場合、制御装置18は、ハウジング7を開いて、スライドがトレイ上に適正に位置付けられているかどうかを判定するためトレイを目で見て検査するように、使用者に警告を発することができる。天井部13とスライドトレイおよび/またはスライドとの接触の防止を助けるために、ハウジング7の天井部13に、センサが装着され得る。
垂直方向に離間された棚24(1つが識別されている)を有する保持ステーション23は、輸送装置12に隣接してその前に位置付けられ得る。一番上の棚24は、乾燥機4の下に位置付けられ得、一番下の棚は、アクセスポート3の上方に位置付けられ得る。輸送装置12は、濡れた生物学的試料を乾燥し、生物学的試料をスライド上にベーキングし、または試料担持スライドをその他の方法で熱的に処理するために、棚24から乾燥機4へとスライドトレイをロボット式に移動させることができる。いくつかの実施形態では、乾燥機4は、試料担持スライドを、乾燥を促進する配向にこのスライドを保持しつつ、対流により加熱する。たとえばスライドトレイ内の複数の試料および/またはスライドのそれぞれの場所に起因する、試料および/またはスライド間の温度差を低減する(たとえば最小化する)目的で、試料担持スライドの実質的に均一な加熱を提供するために、大きい対流流量が使用され得る。
制御装置18は、たとえば追加の自動化された染色システムに接続され得る、実験室情報管理システムの一部とすることができる。制御装置18は、限定するものではないが、たとえばモジュールへの処理液の供給およびモジュールの動作を制御する任意の数のマイクロプロセッサを含む、1つまたは複数のプリント回路基板を含み得る。加えてまたは別法として、プリント回路基板、マイクロプロセッサ、電源、メモリ、および読み取り装置(たとえばラベル読み取り装置)は、個々のモジュールの一部とすることができ、制御装置18、または遠隔制御装置などの別の制御装置と、通信することができる。制御装置18は、システム構成要素に命令することができ、限定するものではないが、1つまたは複数の中央処理ユニット、処理デバイス、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、読み取り装置、などを一般に含み得る。情報を保存するために、制御装置18は、限定するものではないが、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、などの、1つまたは複数の記憶素子21(仮想線で示される)を含み得る。保存された情報は、加熱プログラム、染色プログラム、硬化プログラム、カバースリップ装着プログラム、最適化プログラム、試料処理プログラム(たとえば、使用者により規定された任意の動作の組および/もしくは事前に規定された動作の組)、較正プログラム、精密位置合わせ(indexing)プログラム、パージ/プライミングプログラム、または他の好適な実行可能プログラムを含み得る。試料処理プログラムは、病理学者の選好など使用者の選好に基づいて選択され得るレシピまたはプロトコルを含み得る。能力を最適化する(たとえば加熱を向上させる、過剰な処理液消費を低減する、生産性を高める、処理一貫性を向上させる、などの)ために、最適化プログラムが実行され得る。システムの処理は、たとえば、(1)処理速度を高め、(2)乾燥機4におけるおよび/もしくは硬化ユニット10における加熱サイクルの時間を低減し、(3)スループットを高め(たとえば、特定の時間の長さにおいて処理されるスライドの数を増やし)、(4)染色の一貫性および/もしくは品質を改善し、ならびに/または(5)液体廃棄物を低減するための、最適なスケジュールを判定することによって、最適化され得る。
液体供給部14は、供給容器27(1つが識別されている)を保持するためのスロットを含み得、供給容器27と関連付けられたRFIDタグを読み取り可能なRFIDアンテナを有する識別器などの、容器識別器を含み得る。供給容器27は、限定するものではないが、1つまたは複数の人間可読ラベル、機械可読ラベル(たとえばシステム2によって読み取られるべきバーコード)、または他の種類のラベルを含み得る。たとえば、供給容器27は、特定の処理液についての情報(たとえば、容器内容物情報、製造日付、使用期限、等)が暗号化された、RFIDタグを含み得る。容器の1つの例が、図90および図91と関係して検討され、液体供給部の1つの例が、図89と関係して検討される。液体供給部14は、限定するものではないが、センサ(たとえば圧力センサ、温度センサ、等)、ポンプ(たとえば空圧ポンプ)、弁、フィルタ、導管、および/または、たとえば染色機6に液体を協働して供給し得る他の流体に関する構成要素も含み得る。
加圧装置16は、液体供給部14の下方に置かれ得、複数のポンプ、圧縮機、真空デバイス(たとえば送風機)、ならびに/または流体に加圧することおよび/もしくは真空(不完全真空を含む)を提供することの可能な他のデバイスを含み得る。加圧された空気は、たとえば、染色機6のエアナイフに送達され得、また、染色機6の液体除去デバイスによって、真空レベルの圧力が使用され得る。
液体廃棄物は、導管を通って廃棄物容器32、34内へと送達され得る。この廃棄物は、システム2内で様々な発生源から発生され得る。たとえば、スライドトレイ内で収集された液体廃棄物は、除去され廃棄物容器32、34へと経路付けされ得る。この液体廃棄物を周期的に除去することは、取り回し中にスライドトレイから廃棄物がこぼれ出ないようにするために、有用であり得る。乾燥機4において、スライドトレイは、マウント用媒体(たとえば水)を収集することができ、このマウント用媒体は、スライドトレイから吸引され廃棄物容器32、34の一方へとポンプ送給され得る。染色機6において、スライドトレイは、スライドから落ちる処理液、ならびに分注器装置のノズルから意図せず滴る液体を、収集することができる。カバースリッパー8において、スライドトレイは、スライドにカバースリップを付着させるために使用されるカバースリップ液を収集することができる。マウント用媒体、処理液、カバースリップ液、および任意の他の収集された廃液は、廃棄物容器32、34にポンプ送給される。ハウジング7のドア35(図1)は、廃棄物容器32、34にアクセスしてこれを空にするために開かれ得る。
動作時に、スライドトレイは、アクセスポート3を介してシステム2内に装填され得る。ここで図2を参照すると、輸送装置12は、アクセスポート3からスライドトレイを回収し、スライドトレイを所望の場所へと輸送することができる。システム2は、特定の試料担持スライドおよび/またはスライドトレイを、使用者によって規定された任意の動作の組、事前に規定された動作の組、または他の動作の組に従って、個々に処理することができる。スライドトレイは、トレイ内のスライドが検出器(たとえば、光学センサ、カメラ、等)によって分析される場所である、取調べステーション(interrogation station)へと輸送され得る。スライドトレイは次いで、試料が乾燥されかつ/またはスライドに接着される場所である、乾燥機4へと移動され得る。いくつかの工程において、乾燥機4は、パラフィンを溶融させスライドの表面にわたって展延することによって、パラフィン包埋試料からパラフィンを除去するのを補助し得る。既にスライドにわたって展延されたより大きい表面積を有する、結果的に生じるパラフィンの薄い層は、染色機6内でスライドに付着された脱パラフィン液によって、より容易に除去され得る。試料および/またはスライドが少なくとも部分的に乾燥されると、スライドトレイは、生物学的試料が処理される場所である染色機6のうちの1つへと移動され得る。染色機6は、試料に新しい液体を個々に付着させることによって、脱パラフィン、染色、調整(たとえば溶媒入れ替え)、および他の試料処理工程を行うことができる。このことは、試料の処理後の特性に対する制御を容易にし得る。染色機6は、隣接するスライド上に飛び散ることなく、スライド上に新しい処理液を制御可能に分注することができ、スライドから処理液を制御可能に除去することができる。制御された分注/除去は、たとえばスライドトレイによって収集された液体廃棄物の体積を最小化するまたはその他の方法で制限することにより液体廃棄物の体積を低減させつつ、試料を効果的に処理するために使用され得る。示されるシステム2は、システムのスループットを高めるために3つのスライドトレイの並列処理をそれぞれ提供する、3つの染色機6を含むが、染色機6の動作に基づくシステムのスループットの不当な制限を防止するために、より大きいまたはより小さい数の染色機が使用され得る。
本明細書で使用される場合、「試薬」および「処理液」という用語は、液体または液体組成物をスライドに添加することを含む試料処理工程において使用される、任意の液体または液体組成物を指す。試薬および処理液の例は、溶液、乳剤、懸濁液、および溶媒(純粋なものまたはこれらの混合物のいずれか)を含む。これらのおよび他の例は、水性または非水性とすることができる。さらなる例は、抗体の溶液または懸濁液、核酸プローブの溶液または懸濁液、および染料分子または染色分子の溶液または懸濁液(たとえば、H&E染色溶液、パップ染色溶液、等)を含む。さらに別の例は、パラフィン包埋された生物学的試料を弁色するための溶媒および/または溶液、水性洗浄溶液、ならびに炭化水素(たとえばアルカン、イソアルカン、および、キシレンなどの芳香族化合物)を含む。さらに別の例は、生物学的試料を脱水するまたはこれに再び水分を与えるために使用される溶媒(およびこれらの混合物)を含む。染色機6は、容器27から広範な試薬および処理液を受容し得る。
本明細書で使用される「染色」の用語は、生物学的試料中の特定の分子(たとえば脂質、タンパク質、もしくは核酸)または特定の構造(たとえば正常細胞、悪性細胞、細胞基質、細胞核、ゴルジ体、もしくは細胞骨格)の、存在、場所、および/または量(たとえば濃度)を、検出および/または弁別する、生物学的試料の任意の処理を一般に指す。たとえば、染色は、生物学的試料の特定の分子または特定の細胞構造と周囲のタンパク質との間のコントラストをもたらすことができ、染色の強度は、試料中の特定の分子の量の尺度を提供し得る。染色は、明視野顕微鏡を用いてだけでなく、位相差顕微鏡、電子顕微鏡、および蛍光顕微鏡などの他の観察器具も用いて、分子、細胞構造、および有機体を観察する際に、支援を行うために使用され得る。システム2によって行われるある染色は、細胞の輪郭を可視化するために使用され得る。システム2によって行われる他の染色は、他の細胞構成要素が染色されることなくまたは相対的にほとんど染色されることなく、特定の細胞構成要素(分子または構造など)が染色されることを利用する。システム2によって行われる染色方法の種類の例は、限定するものではないが、組織化学的方法、免疫組織化学的方法、および、核酸分子間のハイブリダイゼーション反応などの、(非共有結合相互作用を含む)分子間の反応に基づく他の方法を含む。特定の染色方法は、主要な染色方法(たとえば、H&E染色、パップ染色、等)、酵素免疫組織化学的方法、および蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)などのインサイツのRNAおよびDNAハイブリダイゼーション法を含むが、これらに限定されない。
試料を処理した後、輸送装置12は、染色機6からカバースリッパー8へとスライドトレイを輸送し得る。カバースリッパー8は、スライドに溶媒を付着させることができ、事前に付着された接着剤を有するカバースリップをスライド上に設置することができる。いくつかの実施形態では、スライドトレイは、たとえば実質的に水平な位置において、複数のスライドを保持し、カバースリップは、スライドに個々に添加される。1つの実施形態では、カバースリッパー8は実質的に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0092024A1号または米国特許第7,468,161号において記載されるようなものである。米国特許出願公開第2004/0092024A1号または米国特許第7,468,161号において記載されるカバースリッパー、およびそれらの動作は、たとえば破損したカバースリップを検出すること、単一のカバースリップの拾い上げを容易にすること、カバースリッパーの設置精度を高めること、および/またはシステムのスループットを高めることよって、カバースリップの取り回しを向上させるように実施され得る。
カバースリップがスライド上に設置されると、輸送装置12は、カバースリッパー8から硬化ユニット10へとスライドトレイを輸送することができ、ここにおいて、カバースリップが(少なくとも部分的に)スライド上に硬化され、トレイが液体を収集している場合、トレイ自体が(少なくとも部分的に)乾燥される。硬化中、スライドは、カバースリップおよびスライドの表面エリアを対流の流れに曝すように、実質的に水平な位置に保持され得る。このことは、接着剤の迅速で効率的な硬化を促進し得る。所与のカバースリップの下のカバースリップ溶媒が完全には除去されない場合であっても、たとえば病理学者などの医療専門家による続く取り回し中にカバースリップを所定位置に保持する接着剤の表皮が、カバースリップの周囲に形成され得る。他の実施形態では、硬化ユニット10は、1つまたは複数の放射加熱器または伝導加熱器、ならびに対流加熱器と放射加熱器または伝導加熱器との組み合わせを含み得る。スライドにカバースリップが付けられると、スライドトレイは、回収のために硬化ユニット10からアクセスポート3へと戻るように移動され得る。
システム2は、互いに対して任意の好適な関係で配置された、任意の数のモジュールを有し得る。示される実施形態では、3つの染色機6および硬化ユニット10は、互いの実質的に直上および直下に、垂直方向に積み重ねた状態で位置付けられる。加えてまたは別法として、モジュールは、水平な構成で隣り合って配置され得る(たとえば乾燥機4が硬化ユニット10の隣に位置付けられる)。モジュールはまた、傾いた垂直方向に積み重ねて配置され得、このときワークステーションは、この傾けて積み重ねた状態において任意の中間レベルにおいて隣り合って配置されている。開示される自動化されたスライド処理システム内に含まれ得るモジュールの例は、加熱器装置(たとえば対流加熱器または放射加熱器)、読み取り装置(たとえばコード読み取り装置)、染色機モジュール、カバースリッパーモジュール、および、乾燥機と脱パラフィン装置との組み合わせ、脱パラフィン装置/染色機の組み合わせ、脱パラフィン装置/染色機/溶媒入れ替え装置の組み合わせなどの組み合わせモジュール、ならびに、単一のワークステーションにおいて1つまたは複数(たとえば2つ以上)のスライド処理工程を行い得る、他の種類のワークステーション(米国特許第7,468,161号において開示されるワークステーションを含む)を含むが、これらに限定されない。加熱器装置の例が、図3〜図14と関係して検討され、染色機の例が、図15〜図88と関係して検討される。通常動作中の人的介入を最小限にしてまたは全く行わずに、試料の自動化された処理のための任意の数の機能性を提供するために、自動化されたスライド処理システム2に、追加のモジュールが追加され得る。
スライドトレイは、任意の好適な形状を有することができ、所与のスライドトレイ内に保持されるスライドは、任意の好適な数のスライド、たとえば5つ以上のスライド、10個以上のスライド、20個以上のスライド、または30個以上のスライドを保持するのに好適な、任意の様式で配置され得る。様々な形状および保持能力のスライドトレイのいくつかの例が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,468,161号において開示されている。いくつかの実施形態では、スライドトレイは、スライドの長い寸法がトレイの長い中央軸から外向きに配設されるように、スライドトレイの中央長軸の両側に隣り合って保持される、スライドの2つの列を保持するように構成された、概ね矩形のトレイである。矩形のトレイは、液体収集用の貯蔵部を画定する、底部および側壁を有し得る。他の実施形態では、スライドトレイは、スライドの長い寸法(または長手軸)がトレイの外側縁部からトレイの中心に向けて内向きに配設される放射状の位置において、スライドを保持するように構成された、円形のスライドトレイである。さらに他の実施形態では、トレイは、2列または3列でスライドを保持するように構成された、全体に正方形のトレイとすることができる。スライドトレイの構成は、スライドの寸法、モジュールの寸法、および/または輸送装置12の構成に基づいて選択され得る。
スライドトレイは、離間された配置構成でかつ実質的に水平な位置で、試料スライドを保持し得る。全てのスライドを分離してかつ本質的に同じ平面(たとえば染色中の水平面)内に保持することは、たとえば乾燥、脱パラフィン、染色、洗浄、および溶媒入れ替え、ならびにスライド表面上に液体を分注することに関与する他の動作中の、スライドの交差汚染を制限または防止し得る。「スライドトレイ」または「トレイ」という用語は、本明細書において、スライドを担う物品への言及を容易にするために使用されるが、文脈がそうではないと明白に示さない限りは、スライドの配列を保持できる他のスライドキャリアが利用され得る。システム2は、限定するものではないが、スライド固定具(たとえばクランプ、吸引カップ、等)、スライド離間部材、トレイから液体を除去するために使用される吸引デバイス(たとえばチューブ、ノズル、等)、またはスライドを保持、操作、もしくはその他の方法で処理するための他の特徴部分を有する、様々なスライドキャリアとともに使用され得る。
「スライド」という用語は、分析のために生物学的試料が上に設置される、任意の好適な寸法の任意の基材(たとえば、全体がまたは一部がガラス、石英、プラスチック、シリコン、等で製作される基材)を、より具体的には、標準的な76.2ミリメートル(3インチ)×25.4ミリメートル(1インチ)顕微鏡スライド、または標準的な75mm×25mm顕微鏡スライドなどの、「顕微鏡スライド」を指す。スライド上に設置され得る生物学的試料の例は、限定するものではないが、細胞学的塗抹標本、(生検からなどの)薄い組織切片、および生物学的試料のアレイ、たとえば組織アレイ、DNAアレイ、RNAアレイ、タンパク質アレイ、またはこれらの任意の組み合わせを含む。したがって、1つの実施形態では、組織切片、DNA検体、RNA検体、および/またはタンパク質が、スライド上の特定の場所に設置される。
「生物学的試料」という用語は、ウイルスを含む任意の有機体から得られる(またはそれらを含む)生体分子(たとえば、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、およびこれらの組み合わせ)を含む、任意の試料(たとえば検体)を指す。生物学的試料には、組織検体(たとえば組織切片)、細胞検体(たとえば、パップスメアもしくは血液塗抹標本などの細胞学的塗抹標本、または顕微解剖によって得られる細胞の検体)、完全な有機体としての検体(たとえば酵母菌、細菌等の検体)、あるいは、細胞を溶解させそれらの構成要素を遠心分離またはそれ以外の方法で分離することによって得られるもののような細胞画分、細胞片、または細胞小器官を含めることができる。生物学的試料の他の例は、限定するものではないが、血液、血清、尿、精液、糞便、脳脊髄液、間質液、粘液、涙液、汗、膿汁、(たとえば外科生検もしくは針生検によって得られる)生検組織、乳頭吸引液、乳、膣液、唾液、スワブ(たとえば口腔スワブ)、またはこれらに由来する生体分子を包含する任意の物質を含む。
乾燥オーブンおよび硬化オーブンならびに関連する方法の選択された例
図3は、本技術の実施形態により構成されたスライドキャリア1200を保持する、閉じられた構成の乾燥機装置1100(「装置1100」)の形態の加熱器装置の、斜視断面図である。一般に、装置1100は、気体の流れを加熱することができ、この流れは、流れにわたる全体に均一な熱分散を促進するための加熱された乱流の気体流になる。乱流の気体流は、スライドキャリア1200によって担われる試料担持スライドS(1つが識別されている)にわたって流れこれを加熱する、層流の気体流へと変換され得る。試料担持スライドSは、残留したマウント用媒体(たとえば水)などのスライドSからの液体の排液を促進するように、垂直に配向され得る。試料が乾燥する間、上向きに導かれた層流の気体流は、試料にわたって流れて、たとえば重力に起因する、スライドSに対する試料の下向きの移動を、抑止、制限、または実質的に防止することができる。
装置1100は、ハウジング1122、送風機1110、および加熱器1116を含み得る。ハウジング1122は、内部空間1123を画定する、1つまたは複数の壁1119、およびドア組立体1101を有し得る。内部空間1123は、流体的に接続されてハウジング1122内に環ループ1121を形成する、背部チャンバ1142およびキャリア受容または前方チャンバ1140(「前方チャンバ1140」)へと、隔壁1112によって分割される、チャンバとすることができる。前方チャンバ1140の断面積(すなわち気体流の方向に対して概ね直角な面積)は、背部チャンバ1142の断面積未満とすることができ、この結果、相対的に高い速度の流れがスライドSを覆って移動し、同時に相対的に低い速度の流れが背部チャンバ1142に沿って流れることになる。ドア組立体1101は、試料担持スライドSを対流により加熱するために、スライドキャリア1200を、前方チャンバ1140内で垂直に配向された位置へと移動させ得る。送風機1110は、限定するものではないが、1つまたは複数のファン、ポンプ、または強制的な流れの対流のために好適な他の加圧デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、送風機1110は、循環ループ1121に沿って位置付けられ、加熱器1116に向けて気体流を導くように構成される。
加熱器1116は、循環ループ1121に沿って流れる気体の平均温度を上げるように構成され得る。気体が加熱器1116に沿って流れる際、加熱器1116は、気体流に熱エネルギーを伝達することができ、スライドSの上側列の加熱を改善するために、(隔壁1112によって分離された)スライドの上側列の反対側にある背部チャンバ1142内に位置付けられ得る。加熱器1116のそのような位置付けは、スライドの下側列上の液体の蒸発によって引き起こされる、スライドの上側列を覆って通過する気体の温度の起こり得る低減を、相殺し得る。いくつかの実施形態では、加熱器1116は、限定するものではないが、1つまたは複数の抵抗加熱器要素、および1つまたは複数の熱伝達要素(たとえばフィン、チューブ、等)を含み得る。他の実施形態では、加熱器1116は、抵抗加熱器、およびペルチェデバイスなどの非抵抗加熱器の、両方を含み得る。
装置1100は、循環ループ1121の様々な部分に沿って気体流の特性を変更するように構成された、流れ修正器を含み得る。たとえば、図3に示されるように、装置1100は、加熱器1116の下流に位置付けられた乱流促進器1118の形態の、流れ修正器を含み得る。乱流促進器1118は、1つまたは複数の邪魔板、穿孔プレート、リブ、突起、溝、および/あるいは、渦、旋回、または他の全体に乱流のもしくは無秩序な気体の動きの状態を作り出すように構成された、任意の構造を含み得る。本明細書で使用される場合、「乱流の」は、4,000よりも大きいレイノルズ数を有する気体流を指す。例として、流れの方向に対して直角な断面積の実質的な大部分(たとえば少なくとも90%、95%、または98%)に沿った乱流部分1143内の気体流の大部分は、4,000よりも大きいレイノルズ数を有する。いくつかの実施形態では、乱流促進器1118は、隔壁1112と背部壁1119との間で背部チャンバ1142にわたって延在する。他の実施形態では、乱流促進器1118は、ハウジング1122の内部表面1151および/または隔壁1112の表面に沿って位置付けられ得、循環ループ1121内へと、ただし必ずしもこれを横断することなく、延在し得る。乱流促進器1118によって作り出される乱流の気体流は、背部チャンバ1142の乱流部分1143に沿って気体の混合を誘起することができ、このことにより、たとえば循環ループ1121内の熱伝達効率を2倍または3倍にすることによって、熱伝達効率を改善する。いくつかの実施形態では、乱流促進器1118は、乱流部分1143から流出する気体が、流れにわたって実質的に均一な温度(すなわち、流れの方向に対して直角な方向において実質的に均一な温度)を有するのに十分な乱流を生成するように構成される。他の実施形態では、流れ修正器は、たとえば気体流の混合を促進するための、他の構成を有し得る。
加えて、装置1100は、乱流部分1143の下流に位置付けられた層流促進器1114の形態の、流れ修正器を含み得る。層流促進器1114は、1つもしくは複数の案内羽根、先細の流路、弓形表面、および/または、実質的に層流の気体流を作り出すように構成された任意の構造を含み得る。本明細書で使用される場合、「層流」または「実質的な層流」は、2,100未満のレイノルズ数を有する気体流を指す。循環ループ1121は、1つまたは複数の層流部分1156を有し得る。いくつかの実施形態では、流れの方向に対して直角な断面積の大部分(たとえば少なくとも60%)に沿った気体流の大部分は、2,100未満のレイノルズ数を有する。たとえば、循環ループ1121の層流促進器1114を包含する一部分(たとえば乱流部分1143と前方チャンバ1140との間)は、層流部分とすることができる。また、前方チャンバ1140の少なくとも一部分(たとえばスライドSの試料担持面と隔壁1112との間)も、層流部分とすることができる。いくつかの実施形態では、装置1100は、乱流部分および/または層流部分の少なくとも一部分において、移行気体流(たとえば2,100から4,000の間のレイノルズ数を有する気体流)を有し得る。
図3に示されるように、層流促進器1114は、加熱された気体を乱流部分1143から前方チャンバ1140へと案内するために、循環ループ1121中の屈曲部1153に位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、層流促進器1114は、屈曲部1153の周囲の水頭損失を低減し得る、複数の離間された弓形部材1145a、1145b、1145cとすることができる。弓形部材1145a〜1145cの下流に入ると、気体は、スライドSの長さに沿って(たとえば、スライドSの長手軸AS(1つが識別されている)と実質的に平行に)上向きに流れて、たとえば、スライドS上の液体を蒸発させ、試料を熱的に処理し(たとえば、試料中のワックスを溶融させ)、かつ/または試料を乾燥させることができる(このことは図6A〜図7を参照して以下でより詳細に検討される)。他の実施形態では、層流促進器1114は、循環ループ1121の比較的真っ直ぐな部位に沿ってなど、循環ループ1121に沿った任意の場所に位置付けられ得る。
いくつかの実施形態では、層流促進器1114は、気体流を加速して、比較的高速の層流を生成すること、ならびに対流による加熱の速度および/または蒸発速度を高めることもできる。たとえば、特定の実施形態では、弓形部材1145a〜1145cは、下流方向で狭くなる流路1147(1つが識別されている)を画定し得る。気体が流路1147を通って流れる際、この流れは、高速の流れを生成するように加速され得る。いくつかの実施形態では、背部チャンバ1142における流速に対する前方チャンバ1140における流速の比は、2、3、4、5、または6以上である。この比は、所望の試料加熱速度、蒸発速度などに基づいて選択され得る。
1つの例示の乾燥工程が、図4A〜図9を参照して、以下で検討される。一般に、スライドキャリア1200は、装填位置へと移動され得、この間スライドキャリア1200は、スライドSを保持する。スライドキャリア1200は、スライドキャリア1200を循環ループ1121内へと移動させるために、装填位置から処理位置へとロボット式に移動される。処理位置は、試料の乾燥を促進するために、装填位置に対して角度を付けられ得る。試料担持顕微鏡スライドSは、スライドキャリア1200が処理位置に保持されている間に加熱される。乾燥工程の詳細が、以下で検討される。
図4Aは、スライドキャリア1200(概略的に示される)が輸送装置12(概略的に示される)によってドア組立体1101上に設置される前の、開いた構成の装置1100の側面図であり、図4Bは、ドア組立体1101の拡大上面斜視図である。図3〜図4Bをまとめて参照すると、ドア組立体1101は、装置1100の前方部分1103(図4Aおよび図4B)に配設され得、ドア1102、作動デバイス1108、および運動学的装着部1104を含み得る。ドア1102は、閉じられた構成(たとえば図3)と開いた構成(たとえば図4A〜図4B)との間で移動可能である。ドア1102は、ドア1102が閉じられた構成にあるときに(循環ループ1121内の)ハウジング1122の内部部分に面する内部表面1130、およびドア1102が閉じられた構成にあるときに外向きに面する外部表面1132(図4A)を有し得る。ドア1102は、作動デバイス1108を介して、閉じられた構成と開いた構成との間で自動的に移動され得る。装置1100が(たとえば停電中に)機能停止する場合、使用者は、装置1100内の任意のスライドキャリアを回収するために、手動でドア1102を開けることができる。
作動デバイス1108は、ハウジング1122にドア1102を、枢動するように結合し得る。いくつかの実施形態では、作動デバイス1108は、装着部1111、駆動デバイス1113(図4B)、および回転可能なアーム1107(図4A)を含む。装着部1111は、駆動デバイス1113がアーム1107(図4A)を装着部1111のピン1109を中心に回転させることができるように、ハウジング1122に接続される。駆動デバイス1113は、たとえば、1つまたは複数の駆動モータ、ステッパモータ、またはアーム1107を回転させることのできる他のデバイスを含み得る。作動デバイス1108の構成は、ドア1102の所望の動きに基づいて選択され得る。
運動学的装着部1104は、ドア1102に結合され得、水平位置および(たとえば図3に示されるような)垂直に配向された位置を含む広範な位置において、スライドキャリア1200を保持し安定させるように構成された、支持部1106(1つが識別されている)を含み得る。運動学的装着部1104は、スライドキャリア1200の存在および/または位置を検出するように構成された1つまたは複数の運動学的装着部センサ1105も含み得る。いくつかの実施形態では、センサ1105は、スライドキャリア1200の存在および/または位置を検出することができ、スライドキャリア1200の移動の抑止または制限を助けることもできる。たとえば、センサ1105は、磁力を介してスライドキャリア1200の存在/位置を検出できる、磁気センサとすることができる。磁力は、運動学的装着部1104に対するスライドキャリア1200の摺動の防止を助け得る。必要であればまたは所望であれば、スライドキャリア1200を保持するために、他の種類の装着部が使用され得る。
ここで図4Aを参照すると、ドア1102が開いた構成にあるとき、ドア1120は、実質的に水平となることができ、輸送装置12からスライドキャリア1200を受容するように構成され得る。ドア組立体1101を参照した「実質的に水平な」という用語は一般に、水平から約+/−2度以内の、たとえば、水平から約+/−0.8度以内などの水平から約+/−1度以内の角度を指す。ドア1102は、これが実質的に水平であるとき、ドア1102の内部表面1130および外部表面1132が、全体にそれぞれ上におよび下に面しているような配向を有し得る。
輸送装置12は、スライドキャリア1200を装置1100近傍へと送達すると、スライドキャリア1200を運動学的装着部1104上に設置することができる。この時点で、輸送装置12および運動学的装着部1104の両方は、スライドキャリア1200と係合され得る。必要であれば、輸送装置12は、運動学的装着部センサ1105および/または輸送装置センサ(図示せず)から受信される信号に基づいて、ドア1102におよび/または運動学的装着部1104に対してスライドキャリア1200を位置付けし直すことができる。所望の位置付けが達成されると、輸送装置12は、図5に示されるように、ドア組立体1101にスライドキャリア1200を引き渡す。
ここで図5を参照すると、ドア1102は開いた構成では、スライド(まとめて「S」と呼ばれる)の最大の表面が全体に上および下に面するように、スライドキャリア1200を実質的に水平な位置に支持し得る。示される実施形態では、スライドキャリア1200は、スライドSの第1の列1201(1つが識別されている)およびスライドSの第2の列1203(1つが識別されている)を含んで示されている。他の実施形態では、しかしながら、スライドキャリア1200は、2つよりも多いまたは少ない列(たとえば、単一の列、3つの列、等)を包含することができ、かつ/または、各列は、任意の数(たとえば、1つ、5つ、10個、12個、等)のスライドを含み得る。
図6Aは、スライドキャリア1200を担うドア1102が、上向きに回転して垂直に配向され閉じられた構成となった後の、装置1100の側面断面図である。図6Bは、スライドキャリア1200を保持するドア組立体1101の一部分の、拡大側面断面図である。図6A〜図6Bをまとめて参照すると、スライドキャリア1200は、ハウジング1122内に閉じ込められ、循環ループ1121の前方チャンバ1140内で、スライドSを保持する。送風機1110は、気体(たとえば空気または他の好適な気体)を押して、加熱器1116を覆わせ、乱流促進器1118を通過させかつ/または覆わせ、層流促進器1114を通過させかつ/または覆わせ、スライドSの試料を担う面に上向きに沿わせて、スライドSおよび/またはスライドにより担われる試料上の無関係な液体を、対流により加熱する。気体が前方チャンバ1140を離れると、気体は送風機1110によって再循環され得る。示される実施形態では、気体流は、循環ループ1121を通って全体に反時計回り方向に移動する。ただし、他の実施形態では、気体流は、時計回り方向のものとすることができる。スライドSにわたる流量は、全体に均一とすることができ、1.8m/sから2.9m/sの間(たとえば2.8m/s)とすることができる。層流の気体流はスライドSから試料を押し離すことなく試料を横断して移動し得るため、比較的高い流量が使用され得る。流量が低過ぎる場合、無関係な液体がスライド上に残る場合があり、これにより試料の遊走(たとえば、2mm以上の距離の遊走)、および場合によっては汚染を可能にする。流量が高過ぎる場合、気体流は、試料の遊走を引き起こす可能性がある(たとえば、気体が試料を、2mm以上の距離をスライドを上げて押す可能性がある)か、またはいくつかの場合には、試料を損傷する可能性がある。送風機1110は、試料の遊走および/または損傷を制限または防止しつつ、目標の処理(たとえば、蒸発速度、排液速度、等)を達成するために、流量を選択的に増加または減少させることができる。
検討されるように、試料および/またはスライドの乾燥は、加熱器1116および送風機1110を使用する、対流による加熱によって達成される。一般に、循環ループ1121内の気体流の温度は、約65℃から約80℃まで(たとえば約72〜73℃)の範囲などの、所望の処理温度範囲内で維持され得る。したがって、乾燥工程中、スライドSおよび/または試料は、乾燥工程中の任意の時点において、個々のスライドSの温度が互いから5℃以内である(どのスライドも実質的に同じ温度ではない場合、全てのスライドが実質的に同じ温度である場合、またはスライドの部分集合が実質的に同じ温度である場合を含む)ように、均一に加熱される。適切な温度を達成することは、たとえば、温度が十分に低くない場合、スライドおよび/または試料が乾燥処理に割り当てられた時間内に乾燥されない可能性があるので、有利であり得る。さらに、65℃よりも大きい平均温度を有する加熱された気体流を送達することは、試料と関連付けられた任意のワックスまたは他の物質の中のおよび/またはその下の液体が蒸発するのを可能にする。
ここで図6Bを参照すると、スライドキャリア1200は、スライドキャリア1200の軸Aおよび/またはそれぞれのスライドSの長手軸AS(1つが識別されている)が水平面Hに関して角度θで配向されるように、垂直に配向され得る。本明細書で使用される場合、「垂直に配向された」は、傾斜した/角度の付いた位置および実質的に垂直な位置の両方を指す場合がある。本明細書で使用される場合、「傾斜した」または「角度の付いた」位置は、スライドキャリア1200および/またはスライドSの長手軸AS(1つが識別されている)が、70度から90度の間の(たとえば77度から84度、80度、90度、等の間の)角度θで位置付けられる、スライドキャリア1200および/またはスライドSの配向を指す。本明細書で使用される場合、「実質的に垂直な」という用語は、スライドキャリア1200および/またはスライドSの長手軸ASが、90度から約+/−2度以内(90度を含む)の、たとえば、90度から約+/−0.8度以内などの90度から約+/−1度以内の角度θで位置付けられる、スライドキャリア1200および/またはスライドSの配向を指す。いずれの位置でも、スライドの第1の列1201は、スライドの第2の列1203の垂直方向上方に、各スライドSの第1の端部(1201a、1205a)が同じスライドSの第2の端部(1201b、1205b)の垂直方向上方にあるように位置付けられる。垂直に配向されたスライドキャリア1200および/またはスライドSは、重力の効果を活用してスライドSから無関係な液体を引き離し、このことにより乾燥時間を迅速化する。したがって、本技術の方法は、従来の水平なスライド乾燥方法よりも、迅速かつ効果的である。たとえば、乾燥時間(すなわちドア1102がスライドキャリア1200を受容するときから輸送装置12がスライドキャリア1200を取り出すときまでの時間)は、2分から8分の間(たとえば、3分、4分、4.5分、5分、等)とすることができる。たとえば、1つの実施形態では、乾燥時間は4分52秒とすることができる。
上で検討されたように、乾燥中にスライドキャリア1200および/またはスライドSを垂直に配向された位置に設置することは、重力を利用して、スライドSのマウント表面上の独立した液体を、効果的に排液する。しかしながら、そのような位置は、第1のまたは上側の列1201内の試料の一部分が落ちて、第2のまたは下側の列1203内のスライドSを汚染する可能性も高める。そのような交差汚染は、続く試料の分析を損なう可能性がある。したがって、スライドキャリア1200の位置および構成は、スライドSの交差汚染を回避または制限しつつ、乾燥効率を高めるように調節され得る。たとえば、図6Bは、傾斜した位置にあるスライドキャリア1200およびスライドSを示す。スライドSのラベル端部は、スライドのマウント表面に沿って試料が摺動する場合に、ラベル(たとえば接着できるバーコードラベル)が試料の遊走を抑止または制限できるように、それらのラベル付けされていない端部よりも、低くすることができる。したがって、ラベルは、試料をスライド上に保つための物理的な障壁としての役割を果たし得る。示される実施形態では、スライドキャリア1200は、スライドSをスライドキャリア1200の表面1204から分離する1つまたは複数の離間部材1202を含み、上側スライドSおよび下側スライドSは、互いから水平方向に離間される。したがって、上側列1201から滴る液体および/または試料(概略的に「D」と描かれる)は、直接下向きにスライドキャリア1200の傾斜表面1204上へと落ちることができ、このことにより、下側スライドSの交差汚染を回避する。比較して、図7は、実質的に垂直な位置にあるスライドキャリア1200およびスライドSを示す。ここで、スライドキャリア1200は、スライドSの隣接する列の間に、1つまたは複数の障壁1602を含む。重力が試料および/またはスライドSから液体を引き離す際、液体Dは、障壁1602によって捕捉され得、このことにより下側スライドSの交差汚染を防止する。図3〜図6の装置1100は、図7に示されるような垂直な配向でスライドキャリア1200を保持するように修正され得る。
再び図6Aおよび図6Bを参照すると、周囲空気が、開口部1606を介して循環ループ1121内に入って、濡れた試料担持スライドSの液体の蒸発に起因して高くなったハウジング1122内の湿度を補償し得る。周囲空気は、ハウジング1122内の湿度レベルを制限するのを助ける比較的低い湿度を有し得、このことにより、循環ループ1121に沿った気体流の湿度を制限する。いくつかの実施形態では、ハウジング1122および/または側壁1119は、熱を保留するために実質的に封止され得るが、ドア1102の開閉中、気体および熱エネルギーは外部環境と必然的にやり取りされる。このやり取りは、内部空間1123(図6A)および/または循環ループ1121内の相対湿度が適切なレベルで平衡状態になることを可能にし、濡れた試料が導入される際に湿気の蓄積を防止する。
乾燥サイクルが完了すると、スライドキャリア1200は、図8に示されるように、実質的に水平な位置へと下向きに回転される。輸送装置12は、ドア1102に隣接して自体を位置付けることができ、続いてドア組立体1101からスライドキャリア1200を取り出す。いくつかの実施形態では、輸送装置12は、スライドキャリア1200とドア1102の内部表面1130との間の空間内へと突出し、スライドキャリア1200の下向きに面する表面に係合する、1つまたは複数の延長部を有し得る。この段階で、輸送装置12および運動学的装着部1104の両方が、スライドキャリア1200との係合を確かなものにすることができる。輸送装置12は次いで、運動学的装着部1104からスライドキャリア1200を自動的に取り出し、装置1100の直接の近傍からスライドキャリア1200を取り出すことができる。運動学的装着部センサ1105および/または輸送装置センサ(図示せず)からのフィードバックは、スライドキャリア取り出し処理を案内するのを助け得る。
図9は、スライドキャリア1200が取り出されドア1102が閉められた後、または輸送装置12からスライドキャリア1200を受容するためにドア1102が開く前のいずれかの、閉じられた構成の装置1100の側面断面図である。いずれにせよ、装置1100が閉じられた構成にありスライドキャリア1200が存在しないとき、加熱器1116は、所望の待機温度を維持するために、連続してまたは周期的に熱を発生させ得る。したがって、続くスライドキャリアが導入されるとき、装置1100が所望の動作温度に回復するための時間のずれは、より少ない。
いくつかの実施形態では、装置1100は、追加の特徴部分を含み得る。たとえば、いくつかの実施形態では、装置1100は、加熱器安全特徴部分を含み得る。たとえば、装置1100は、加熱器1116上に、加熱器1116の温度を監視し、加熱器1116が指定された温度を超える場合に加熱器1116への電力を切断する、熱センサ(図示せず)を含み得る。加えて、加熱器1116自体は、加熱器1116が指定された温度を超える場合に電力回路の経路を遮断する、スイッチ(たとえば、機械的スイッチ、電気機械的スイッチ、等)を含み得る。加熱器の温度が適切なレベル(たとえば指定された温度未満)に戻る場合、スイッチは回路を閉じることができ、このことにより、加熱器1116への電力送達を可能にする。装置1100は、堅調な乾燥を保証するための追加の特徴部分を含み得る。たとえば、装置1100は、熱を保留し適正な熱分散を維持するために、ハウジング1122および/または壁1119を取り囲む1つまたは複数の絶縁性の層を含み得る。加えて、装置1100は、乾燥を向上させるようにハウジング1122内の湿度を制限する、1つまたは複数の脱湿要素を含み得る。
図10は、本技術の実施形態による、閉じられた構成の硬化オーブン1800(「オーブン1800」)の形態の加熱器装置の、別の実施形態の斜視図である。オーブン1800は、以下で詳述されるものを除いては、図3〜図9と関係して検討された装置1100と概ね同一である。オーブン1800は、カバースリップを担うスライドを熱的に処理して、試料を保護するためにカバースリップをスライド上に硬化させるように構成される。オーブン1800は、スライドおよび/またはスライドキャリアを加熱し(存在する場合に)余分な液体を蒸発させることによって、何らかの「キャリアの乱れ」(すなわちスライドおよび/またはスライドキャリア上の独立した無関係な液体)を軽減することもできる。さらに、実質的に水平な位置は、スライド上のカバースリップの位置付けまたは設置を維持するのを助けるために(および同様にカバースリップの遊走を回避するために)、有利であり得る。オーブン1800は、1つまたは複数の壁1819(図13)およびドア組立体1801を有する、ハウジング1822を含み得る。ドア組立体1801は、カバースリップ付きスライドを実質的に水平な配向または他の好適な配向に保つように、スライドキャリアを保持し得る。ドア組立体1801の作動デバイス1808は、1つまたは複数のレール、荷台、駆動機構、または閉じられた構成(たとえば図10)と開いた構成(たとえば図11)との間でドア1802を垂直方向に移動させるために好適な他の構成要素を含み得る。
1つの例示の硬化工程が、図11〜図14を参照して、以下で検討される。一般に、スライドキャリア1200は、ドア組立体1801へと移動され、この間スライドキャリア1200は、カバースリップ付きスライドCSを保持する。スライドキャリア1200は、スライドキャリア1200を循環ループ内へと移動させるために、第1の位置(たとえば下げられた水平位置)から第2の位置(たとえば上げられた水平位置)へと、ドア組立体1801によってロボット式に移動される。カバースリップ付きスライドCSは、スライドキャリア1200が循環ループ内に入る間に加熱される。オーブン1800および硬化工程の詳細が、以下で検討される。
図11は、スライドキャリア1200(概略的に示される)が輸送装置12(概略的に示される)によってドア組立体1801上に設置される前の、開いた構成の硬化オーブン1800の斜視図である。図11に示されるように、ドア組立体1801は、オーブン1800の底部部分1803に配設され得、ドア1802および作動デバイス1808を含み得る。ドア1802は、ハウジング1822の内部部分に面する内部表面1830、および外向きに面する外部表面1832を有し得る。示される実施形態を含め、いくつかの実施形態では、運動学的装着部1804は、ドア1802によって担われ、スライドキャリア1200を保持し安定させるように構成された垂直に配向された支持部1805(1つが識別されている)を含み得る。
ドア1802が開いた構成にあるとき、ドア1802は、実質的に水平となることができ、輸送装置12からスライドキャリア1200を受容するように構成され得る。輸送装置12は、スライドキャリア1200を硬化オーブン1800近傍へと送達すると、スライドキャリア1200を運動学的装着部1804上に設置することができる。この時点で、輸送装置12および運動学的装着部1804の両方は、スライドキャリア1200と係合され得る。所望の位置付けが達成されると、輸送装置12は、図12に示されるように、ドア1802にスライドキャリア1200を引き渡す。
図13は、スライドキャリア1200を担うドア1802が閉じられた構成へと移動した後の、硬化オーブン1800の側面断面図である。スライドキャリア1200は、カバースリップおよびスライド(合わせて「カバースリップ付きスライドCS」と呼ばれる)が循環ループ1821内で層流に曝されるように、ハウジング1822内に閉じ込められる。動作時、送風機1810は、気体を押して、加熱器1816を覆わせ、垂直に配向された乱流促進器1818を通過させかつ/または覆わせ、層流促進器1814を通過させかつ/または覆わせ、カバースリップ付きスライドCSの試料を担う面に沿わせて、カバースリップ付きスライドCSを対流により加熱しかつ/または硬化させる。カバースリップ付きスライドCSにわたる流量は、全体に均一とすることができ、平均して5m/sから7m/sの間(たとえば6m/s)とすることができる。流量が低過ぎる場合、流量は、割り当てられた処理時間内で効率的にカバースリップを硬化(すなわちカバースリップによって担われる接着剤/糊を硬化)しない場合があり、かつ/または、無関係な液体が、スライドキャリア1200および/もしくはカバースリップ付きスライドCS上に残される場合がある。不十分な硬化および/または乾燥は、記録保管可能性(すなわち、試料が、まとまって張り付いてしまうことなく共通のスライド用引き出し内に直立して保管され得、少なくとも10年間染色が保留されカバースリップが試料に接着され得る)に影響を与え得る。流量が高過ぎる場合、流量は試料またはカバースリップの遊走を引き起こす、または場合によっては試料を損傷する可能性がある。したがって、流量は、試料および/またはカバースリップの遊走を制限または防止しながらの所望の硬化時間に基づいて、選択され得る。
適切な硬化温度を達成することは、たとえば、温度が指定された閾値を越えて上昇する場合、温度がカバースリップ材料の材料特性に影響を与える可能性があるので、有利であり得る。たとえば、理論に縛られることなく、上記の特定の温度を超えることは、カバースリップを試料内へと深く埋没させる可能性があり、脱染中にカバースリップを試料内に留まらせ、したがって再染色に悪影響を与えると考えられる。加えて、オーブン1800内の温度が高くなるにつれ、スライドキャリア1200の温度が高くなり、オーブン1800から出るときにスライドキャリア1200が許容できる取り回し温度でなければならないことに起因して、場合によっては「冷却」期間(またはより長い冷却期間)が必要となる。長い冷却時間はスループットに影響を与え得る。また、100℃未満の平均硬化温度を維持することは、試料および/またはスライドの燃焼または永久的な損傷を回避するために、有利であり得る。温度が十分に低くない場合、スライドおよび/または試料は、硬化処理に割り当てられた時間内に乾燥されない場合がある。硬化工程中、スライドキャリア1200は、カバースリップ付きスライドCSが対流により加熱されるように、循環ループ1821内に閉じ込められ得るかまたは位置付けられ得る。したがって、本技術の方法は、従来の水平な乾燥方法よりも、迅速かつ効果的であり得る。たとえば、硬化時間(すなわちドア1802がスライドキャリア1200を受容するときから輸送装置12がスライドキャリア1200を取り出すときまでの時間)は、2分から8分の間(たとえば、3分、4分、4.5分、5分、等)とすることができる。たとえば、1つの実施形態では、硬化時間は、4分52秒とすることができる。一般に、循環ループ1821内の気体流の平均温度は、90℃から110℃の間とすることができる。ただし、カバースリップとともに使用される他の種類の接着剤を硬化させるために、他の温度が達成され得る。
硬化サイクルが完了すると、スライドキャリア1200は、図14に示されるように、取り出しのために輸送装置12によって下げられる。輸送装置12は、ドア1802に隣接して自体を位置付け、続いてドア組立体1801からスライドキャリア1200を取り出す。いくつかの実施形態では、輸送装置12は、スライドキャリア1200とドア1802の内部表面1830との間の空間内へと突出しスライドキャリア1200の下向きに面する表面に係合する、1つまたは複数の延長部を有し得る。この段階で、輸送装置12および運動学的装着部1804の両方が、スライドキャリア1200との係合を確かなものにすることができる。輸送装置12は次いで、ドア組立体1801からスライドキャリア1200を自動的に取り出し、オーブン1800の直接の近傍から離れるようにスライドキャリア1200を輸送することができる。運動学的装着部センサおよび/または輸送装置センサ(図示せず)からのフィードバックは、スライドキャリア取り出し処理を案内するのを助け得る。
硬化オーブン1800は、堅調な硬化を保証するための追加の特徴部分を含み得る。たとえば、オーブン1800は、熱を保留し適正な熱分散を維持するために、ハウジング1822および/または側壁1819を取り囲む絶縁性の層を含み得る。ハウジング1822および/または側壁1819は、熱を保留するために実質的に封止されるが、ドア1802の開閉中、気体は外部環境と必然的にやり取りされる。このやり取りは、内部空間1823および/または循環ループ1821内の相対湿度が適切なレベルで平衡状態になることを可能にし、濡れた試料が導入される際に湿気の蓄積を防止する。
染色機におけるトレイおよびスライドの取り回しの選択された例
図15は、本技術の実施形態による開いた構成の染色機モジュール2010の等角図である。染色機モジュール2010は、トレイ取り回し装置2020、ハウジング2022、および分注器装置2024を含み得る。トレイ取り回し装置2020は、ハウジング2022の開口部2023を通して、輸送可能なトレイ(図15には示されない)の形態のスライドキャリアを移動させることができ、このトレイを分注器装置2024の下に位置付けることができる。分注器装置2024は、トレイによって担われる試料担持顕微鏡スライド上への、弁制御された加圧液体送達を提供する、4つのヘッドまたはマニホールド組立体2018a、2018b、2018c、2018d(まとめて「ヘッド組立体2018」)を含み得る。高い処理スループットを維持するために、ヘッド組立体2018は、トレイが染色機モジュール2010内に位置付けられたままである間に、パージ/プライミングされ得る。分注工程において、ヘッド組立体2018は、複数ステップの染色プロトコルを行うために、スライド上に新しい液体の所定の体積を個々に分注することができ、スライドから液体を除去することができる。スライドの処理後、トレイ取り回し装置2020は、トレイをハウジング2022から外に移動させ得る。
トレイ取り回し装置2020は、トレイホルダ輸送機構2030(「輸送機構2030」)、および運動学的装着部2040の形態のトレイホルダを含み得る。輸送機構2030は、限定するものではないが、ホームフラッグ、および運動学的装着部2040を正確に位置付けるために使用される相対エンコーダを含み得る。運動学的装着部2040は、アーム2041a、2041b、2041c(まとめて「アーム2041」)、支持部2042a、2042b、2042c(まとめて「支持部2042」)、およびセンサ2046を含み得る。いくつかの実施形態では、支持部2042は、多次元拘束(たとえば3次元拘束)を提供するための、アーム2041の自由端に接続されたマウントボールである。支持部2042がトレイと接するとき、センサ2046は、トレイの存在および/または位置を検出し得る。
輸送機構2030および運動学的装着部2040は、スライドの上側表面とヘッド組立体2018との間の間隔に影響を与えるトレイの意図されない動きを、最小化または制限し得る。大きくされた間隔は、液体の飛び散りにつながる可能性があり、一方、小さくされた間隔は、結果的にヘッド組立体2018と試料担持スライドとの間の物理的接触をもたらす場合がある。飛び散りは、全体としての処理液廃棄物の増加および試料の不十分な染色につながる可能性がある。飛び散った液体が隣接するスライド上に着地する場合、隣接するスライド上の試料は、不適正に染色される場合がある。トレイが著しい縦揺れの動き(たとえば示されるX軸を中心とした縦揺れの動き)および/または横揺れの動き(たとえば示されるY軸を中心とした横揺れの動き)を経験する場合、ヘッド組立体2018は、スライドに接触しこれらを破損する可能性があり、かつ/または試料を押し外す可能性がある。トレイの意図されない偏揺れの動き(たとえば示されるZ軸を中心とした回転)は、スライドの縁部とヘッド組立体2018との間の距離(たとえばX軸距離およびY軸距離)に影響を与える可能性があり、この結果、処理液がトレイ内に直接分注される可能性がある。処理液の所望の体積がスライド上に送達されないので、試料が十分に染色されない可能性がある。輸送機構2030および運動学的装着部2040は、トレイの意図されない動き(たとえば、縦揺れの動き、横揺れの動き、および/または偏揺れの動き)を抑止、制限、または実質的に排除して、以下、すなわち液体の飛び散り、ヘッド組立体2018と試料担持スライドとの間の物理的接触、試料の押し外し、およびスライドの位置のずれのうちの、1つまたは複数を、協働して抑止、制限、または防止し得る。全ての(または実質的に全ての)液体を直接スライド上に分注することにより、液体が効率的に使用され得、トレイは、処理全体を通して液体を実質的に含まないままとすることができる。したがって、染色機モジュール2010によって使用される処理液の体積は、従来の自動化されたスライド染色機によって使用される液体の体積を大きく下回り得る。
図16は、トレイ輸送装置2052(仮想線で概略的に示される)がトレイ2050を運動学的装着部2040上に設置した後の、染色機モジュール2010の等角図である。トレイ輸送装置2052は、センサ2046(図15)からの信号に基づいて、トレイ2050を位置付けし直すことができる。トレイ2050は、スライドの大きい表面が全体に上におよび下に面するように、スライドを実質的に水平な配向で保持し得る。「実質的に水平な」という用語は一般に、水平から約+/−3度以内の、たとえば、水平から約+/−0.8度以内などの、水平から約+/−1度以内の角度を指す。実質的に水平な、は、水平からの小さい角度、たとえば、約0.2度から約1.2度の間の角度、たとえば約0.3度から約0.8度の間の角度などの、水平から約0.1度から1.8度の間の角度の範囲も指す。特定の実施形態では、実質的に水平なスライドの上側表面が仮想水平面に対して成す角度は、その短軸に沿って約0度から約3度の間とすることができ、またこの仮想水平面に対する角度は、その長軸に沿って約0度から約2度の間とすることができ、ここでも、スライドの大きい表面は、全体に上におよび下に面する。例示されるトレイ2050は、20個のスライドを保持することができるが、2つのスライド2053、2054のみを保持しているように示されている。
図17は、トレイ2050を保持している染色機モジュール2010の底面図である。トレイ2050は、それぞれの支持部2042a、2042b、2042c(図15)と接する、受容特徴部分2092a、2092b、2092c(まとめて「受容特徴部分2092」)を含み得る。受容特徴部分2092は、湾曲した特徴部分、凹部、細長いスロット、または支持部2042と係合する他の特徴部分とすることができる。1つの実施形態では、受容特徴部分2092は、支持部2042が沿うように摺動してトレイ2050の自己水平化をもたらし、このことにより処理全体を通してトレイ2050を実質的に水平に保つことのできる、部分的に球形の表面または弓形の溝である。
輸送機構2030は、限定するものではないが、1つまたは複数のモータ2088(たとえば、駆動モータ、ステッパモータ、等)、および駆動デバイス2089を含み得る。駆動デバイス2089は、限定するものではないが、単一の軸または複数の軸に沿ったトレイ2050の並進をもたらすための、レール、荷台、延長可能なアーム、ベルト、鎖、歯車機構、またはこれらの組み合わせを含み得る。輸送機構2030は、トレイ装填/除荷位置(図16および図17に示される)から、染色機モジュール2010のチャンバ2080(図16)を伴う処理位置(図18に示される)へと、トレイ2050を移動させ得る。スライド表面とヘッド組立体2018との間の小さい間隙により、スライドがトレイ2050内で正しく位置合わせされない場合、またはトレイ2050が運動学的装着部2040上に正しく位置合わせされない場合に、干渉を行うことが可能であり、そのような干渉は、機能停止の事象をもたらす場合がある。染色機モジュール2010の機能停止の発生時、使用者は、輸送機構2030を手動で操作して、トレイ2050を手動で回収するおよび/または位置付けし直すのに好適なアクセス可能な位置に、トレイ2050を位置付けることができる。
図18は、輸送機構2030が分注器装置2024の概ね下にトレイ2050を位置付けた後の、染色機モジュール2010を示す。図19は、スライドを処理する用意のできた、分注器装置2024の等角図である。分注器装置2024およびトレイ2050は、ヘッド組立体2018の移動の経路に対してスライドを正確に位置付けるように、直交する方向に移動され得る。スライドの処理後、分注器装置2024は、トレイ2050がヘッド組立体2018に対して精密に位置合わせされる間、固定的に保持され得るかまたは移動され得る。次の4つのスライドが処理され得る。この工程は、トレイ2050によって担われる全てのスライドが処理されるまで繰り返され得る。
図19および図20を参照すると、分注器駆動機構2128(「駆動機構2128」)は、分注器装置2024を、Y軸方向(すなわち示されたY軸と平行な方向)に移動させ得る。ヘッド組立体2018の移動の経路は、ヘッド組立体2018がスライドの長さに沿って掃くように移動するように、Y軸方向に延在するスライドの長軸と位置合わせされ得る。様々な実施形態では、駆動機構2128は、限定するものではないが、単一の軸に沿った並進をもたらすための、1つまたは複数のレール、荷台、延長可能なアーム、ギア機構、またはこれらの組み合わせを含み得る。示される実施形態を含め、いくつかの実施形態では、駆動機構2128は、モータ2131および並進装置デバイス2132を含む。並進装置デバイス2132は、レール2135、およびレール2135に沿って移動可能な荷台2136(図19)を含む。分注器装置2024のフレーム2108は、ヘッド組立体2018を担うことができ、荷台2136に結合される。
ヘッド組立体2018b、2018cは、プレート2124の開口部2120の下に位置付けられたスライドに液体を付着させることができ、ヘッド組立体2018d、2018aは、プレート2124の開口部2122(図20)の下に位置付けられたスライドに液体を付着させることができる。輸送機構2030は、トレイ2050を、X軸方向(すなわち、図20において矢印2123、2125によって指示されるような、示されたX軸と平行な方向)に移動させて、スライドをヘッド組立体2018の下に連続的に位置付け得る。トレイ2050の単一軸の動きは、ヘッド組立体2018とのスライドの側方の位置合わせを容易にし得る。図21は、トレイ2050の上方に位置付けられたヘッド組立体2018c、2018dを示す。図22Aは、処理区域2170においてスライド2160の上方に位置付けられたヘッド組立体2018の詳細図である。(ホースおよび染色機モジュールの他の構成要素は、図中の特徴部分を不明瞭にするのを回避するため、示されていない)。ヘッド組立体2018は、分注器ヘッド2141、弁2143、2145、および導管2147を含み得る。図22Bは、処理区域2170に別のスライドを位置付けるように移動された、トレイ2050を示す。
図23〜図26は、顕微鏡スライドに物質を付着させる段階の図である。一般に、スライドは、ヘッド組立体2018の下に連続的に位置付けられ、これらにより個々に処理され得る。スライド処理が、単一のヘッド組立体2018と関係して検討される。ただし、複数のヘッド組立体2018が、スライドを同様の様式で同時にまたは連続的に処理し得る。図23は、2列になった、互いから離間された20個のスライドを示す。トレイ2050が実質的に水平な配向にあるとき、スライドのマウントエリアは、上向きに面し得る。しかしながら、スライドは、必要であればまたは所望であれば、他の配置構成でおよび異なる配向で保持され得る。
図22Aおよび図24を参照すると、ヘッド組立体2018は、処理区域2170(仮想線で示される)においてスライドを処理する用意ができている。分配されたディスペンス(dispense)の各々は、準静的モードなどの所望のモードでインキュベートするために、スライド2160(図22A)上の任意の試料を覆って、比較的厚い膜(または液溜まり)を形成し得る。各分注は、たとえば、表面張力によって少なくとも部分的に維持される形状を有する液溜まりを形成し得る。いくつかの実施形態では、ヘッド組立体2018は、固定的なスライド2160に沿って長さ方向に、約2.54センチメートル(1インチ)/秒から約38.1センチメートル(15インチ)/秒までの範囲内の速度で移動することができ、最大254センチメートル(100インチ)/秒2まで加速され得る。分注動作またはホーミング動作に関する液体の流れ/弁時間に適合するように、他の速度が使用され得る。たとえば、ヘッド組立体2018は、ホーム位置へのヘッド組立体2018の移動などのホーミング動作中、比較的時間をかけて(たとえば、2.54センチメートル(1インチ)/秒から5.08センチメートル(2インチ)/秒)移動され得る。他の実施形態では、スライド2160がX方向、Y方向、および/またはZ方向に移動する間に、ヘッド組立体2018は、スライド2160に沿って長さ方向に移動し得る。たとえば、スライド2160は、分注処理の間、X方向に移動されて、スライド2160を側方において、周期的にまたは連続して位置付けし直すことができる。
図25は、スライド2160の処理後のヘッド組立体2018を示す。ヘッド組立体2018は次いで、処理区域2170に位置したスライド2210を処理することができ、スライド2210の処理後、トレイ2050は、(矢印2192によって指示される)X方向に移動されて、スライド2270、2271を、処理区域2170へと移動させ得る。いくつかの実施形態では、干渉の影響の可能性を最小化するためにおよび/またはシステムのスループットを向上させるために、トレイの移動は、ヘッド組立体2018のY軸の動きが開始または完了された後で生じ得る。ヘッド組立体2018は、トレイ2050の経路から離間された干渉箇所を提供するような「安全な」位置へと移動され得、トレイ2050は、制御された液体分配を犠牲にすることなく処理時間を可能な限り短く保つように選択された速度で、移動され得る。たとえば、トレイ2050は、約12.7センチメートル(5インチ)/秒から約15.24センチメートル(6インチ)/秒の範囲内の速度で移動し得る。必要であればまたは所望であれば、他の速度が使用され得る。図22Bおよび図26は、スライド2270を処理する用意のできているヘッド組立体2018のうちの1つを示す。液溜まり2240が、スライド2160の表面上に分注されて示されている。ヘッド組立体2018の各々は、所与の4分の1部分内で、スライドを連続的に処理し得る。いくつかの実施形態では、トレイ2050は、分注工程中に移動される。たとえば、トレイ2050は、ヘッド組立体2018が液体を分注して、たとえば(上方から見られたときに)ジグザグ形状の液溜まり、蛇行した液溜まり、または他の形状の液溜まりを形成する間に、ヘッド組立体2018に対して移動され得る。トレイ2050およびヘッド組立体2018の移動は、広範な異なる形状の液溜まりを生成するように連動され得る。
図27は、トレイが示されない、図21の線27−27に沿って見た、染色機モジュール2010の図である。図28は、図27の線28−28に沿って見た、液体収集器2300の側面立面断面図、および2つのヘッド組立体2018d、2018cの正面図である。ここで図27を参照すると、液体収集器2300は、ヘッド組立体2318a、2318b、2318c、2318dからそれぞれ液体を収集するように位置付けられた、離間された貯蔵部2310a、2310b、2310c、2310d(まとめて「貯蔵部2310」)を有するトレイまたは受皿とすることができる。一方の貯蔵部2310の説明は、そうではないと示されていなければ、他方の貯蔵部2310にも等しくあてはまる。
ここで図28を参照すると、貯蔵部2310dは、排液管2314、および液体を排液管2314に導くための傾いた表面2330を含み得る。排液管2314は、1つまたは複数の導管によって、廃棄物モジュール(もしくは廃棄物容器)または他の構成要素に流体的に結合され得る。液体は、貯蔵部2310dから、連続してまたは周期的に排液され得る。いくつかの実施形態では、貯蔵部2310dは円錐形状を有する。他の実施形態では、貯蔵部2310dは円錐台形状を有するが、貯蔵部2310dは、他の構成を有し得る。ヘッド組立体2018は、たとえばパージ/プライミングサイクルを行うために、液体を直接貯蔵部2310内に分注し得る。
図29A〜図29Bは、本技術の実施形態によるパージ/プライミングサイクルの段階を示す。一般に、ヘッド組立体2018の組は、液体を、直接貯蔵部2310内に連続的に分注し得る。トレイ2050が、貯蔵部2310の約半分を曝すように位置付けられるとき、1対のヘッド組立体2018が、曝された貯蔵部2310内に液体を分注し得る。トレイ2050は、貯蔵部2310の他方の半分を曝すように移動され得る。ヘッド組立体2018の別の対は、これらの露出された貯蔵部2310内に液体を分注し得る。ヘッド組立体2018は、トレイ2050が染色機モジュール2010内に位置付けられている間、処理ライン外の時間(off−line time)、過剰な取り回し、および/またはトレイの受け渡しを最小化、制限、または回避するために、液体を連続的に分注し得る。したがって、多数のパージ/プライミングサイクルが行われる場合であっても、高いレベルのスループットが維持され得る。加えて、染色機モジュール内へとまたはそこから外にトレイを繰り返し輸送することによって引き起こされる輸送の問題が、回避され得る。パージ処理において、貯蔵部2310は、内部の連絡経路からいかなる空気の泡も除くために、液体が分注器ヘッド2141を通してポンプ送給されるときに生成される液体の液流を、ヘッド組立体2018から収集し得る。プライミング工程において、貯蔵部2310は、分注されるべき処理液でヘッド組立体2018を溢れさせるとき、いかなる過剰な液体も収集し得る。パージ/プライミング工程を行った後で、トレイ2050は、スライドをヘッド組立体の各々の下に位置付けるために、スライド処理位置に戻され得る。
図29Aおよび図29Bは、スライド処理位置にあるトレイ2050を示す。図29Bを参照すると、処理液は、トレイ2050が、垂直送達経路2380の組をヘッド組立体2018dから遮り、垂直送達経路2382の組をヘッド組立体2018cから遮る間に、4つのスライド上に送達され得る。送達経路2380は単一の点線として示されているが、各送達経路2380は、ヘッド組立体2018の1つのノズルから貯蔵部2310のうちの1つまで延在し得る。トレイ2050は、スライドによって収集されない分注された液体を収集し得る。たとえば、トレイ2050は、スライドから落ちる液体またはヘッド組立体2018から落ちる液滴(たとえば、スライドを精密に位置付けるためにトレイ2050が移動される間に落ちる液滴)を捕捉することができる。
トレイ2050は、送達経路2380を遮らないように、スライド処理位置(図29Aおよび図29B)からパージ/プライミング位置2404(図30Aおよび図30B)へと移動され得る。ヘッド組立体2018d、2018a(図30Bでは、ヘッド組立体2018aはヘッド組立体2018bの背後にある)は、遮られていない送達経路2380に沿って液体を送出し得る。貯蔵部2310a(図30A)、2310dは、液体を収集し得る。トレイ2050は、垂直送達経路2382の組を妨害しないように、パージ/プライミング位置2404(図30Aおよび図30B)から別のパージ/プライミング位置2410(図31Aおよび図31B)へと移動され得る。パージ/プライミングサイクルは、ヘッド組立体2018b、2018c(図31Bでは、ヘッド組立体2018bはヘッド組立体2018cの背後にある)によって行われ得る。いくつかの実施形態では、処理液の液流は、垂直送達経路2382に沿って送達される。
染色機における液体分注の選択された例
図32は、本技術の実施形態による分注器装置3024の等角図である。分注器装置3024は、弁制御された加圧液体送達、および、ヘッドまたはマニホールド組立体3018a、3018b、3018c、3018d(まとめて「ヘッド組立体3018」)の制御された移動を提供し得る。液体取り回しシステム3013は、分注器装置3024に液体を送達することができ、限定するものではないが、液体源3014、および管路または他の好適な液体搬送要素を含む液体搬送システム3015を含み得る。制御装置3017は、プロトコルに促された液体を処理区域(すなわちトレイの試料染色エリア)にわたって分注および分配するように、分注器装置3024に命令し得る。たとえば、顕微鏡スライドのラベルエリアを(たとえばスライドのラベルエリア上に障壁を作り出すために)流動性を有する疎水性物質で濡らすこと、特定の液体流出速度(たとえば滴下しない液体流出速度)を採用すること、特定の液体の体積(たとえば体積上限未満の液体の体積)を分注すること、トレイを目標の速度および加速度で移動させること、スライドに沿った適切な分注場所において分注すること、ならびに/または目標の分注高さ(たとえば、液体の飛び跳ね、飛び散り、跳ね返り、等を最小化もしくは制限するのに好適な高さ)から分注することによって、制御された液体分配が達成され得る。
ヘッド組立体3018aは、ヘッド組立体3018aが液体を分注する間、トレイ(図示せず)によって保持されるスライド3020の長手軸3021と実質的に平行な方向に移動し得る。図33は、液体3030を分注してスライド3020の上側表面3044上に置かれた試料3034を覆う厚く広がる膜を形成する、液体分注機構3019(「分注機構3019」)を有する、ヘッド組立体3018aの側面図である。分注器機構3019は、分注器ヘッド3141、ノズル3052、3054の配列、および分注器ヘッド3141内で共有されるマニホールドを含み得る。液体搬送システム3015の導管3059は、液体源3058(たとえば処理液をそれぞれ担う複数の容器)から分注器機構3019へと液体を送達し得る。液体は分注器ヘッド3141を通って流れ、ノズル3052を介して流出する。図33Aは、液体の液流が中を通って流れるノズル3052の、平坦なまたは面取りされていない端部を示す。図33の導管3063は、液体源3062から分注器機構3019へと液体を送達し得る。液体は分注器ヘッド3141を通って流れ、ノズル3054を介して流出する。いくつかの実施形態では、分注器ヘッド3141は、2つの別個のマニホールドから成る内部の共有されるマニホールドを有し、これらの各々は、望ましくない液体相互作用の防止のために適合しない液体を単離するように、複数の液体によって共有される。1つの実施形態では、一方のマニホールドは、ノズル3052を介して連続的に分注される最大4つの適合する液体を共有し、他方のマニホールドは、ノズル3054を介して連続的に分注される最大4つの適合する液体を共有する。
図34および図35は、ヘッド組立体3018aの、それぞれ等角図および底面図である。ノズル3052の配列の説明は、そうではないと示されるとき以外は、ノズル3054の配列にも等しくあてはまる。図35を参照すると、ノズル3052の配列は、スライド3020(仮想線で示される)に沿った試料の場所に対して幅方向に(スライド縁部からスライド縁部へと)わたる列とすることができ、ノズル3052の配列は、顕微鏡スライド3020の幅Wと概ね位置合わせされるようになっている。ノズル3052は、スライド幅Wと概ね平行である方向(矢印3060によって指示される)において、均等にまたは不均等に離間され得る。存在する場合、離間の方向とスライド幅Wとによって画定される角度は、約5度、3度、または2度未満とすることができる。ノズル3052の配列の長さLは、液体液流の全てがスライド3020の上側表面3044に向かって導かれるように、スライド幅W未満とすることができる。いくつかの実施形態では、配列長さLは、スライド幅Wの約70%、80%、90%、または95%である。ただし、液体の液流をスライド3020の内部領域に向けて導いて、液体をスライド3020の縁部から離間された状態に保つために、他の配列長さが使用され得る。分注された液体が、スライド3020の縁部の近くの位置に(たとえばスライド3020の縁部から約0.127センチメートル(0.05インチ)まで)達する場合、表面張力が、液体がスライド3020から落ちないようにするのを助け得る。ノズル3052は、全体に直線状の配置構成を成して離間される。他の実施形態では、ノズル3052は、U字形状の配置構成、V字形状の配置構成、(たとえば異なるサイズのノズル3052を用いる)のこぎり歯配置構成、または任意の所望の数のノズル3052および任意の所望のノズル幾何学形状を用いる他の好適な配置構成を成して、離間される。
図36〜図38は、本技術の実施形態による液体を分注する段階を示す。一般に、分注器機構3019は、飛び散りを最小化または制限して、試料担持顕微鏡スライド付近での適正でない処理を回避するために、飛び散らない液体流出速度で液体を送達し得る。「塗装」分注工程では、分注器機構3019は、上側表面3044に、連続した切れ目のない液体の線を生成し得る。「多ステップ」分注工程では、液体は、スライド3020に沿った特定の目標の場所で、短く噴出して分注され得る。液体の線または離散した体積が上側表面3044に沿って展延して、試料3034を液体で覆うことができる。いくつかの実施形態では、分注された液体は、集結された膜(たとえば厚い膜または液溜まり)へと動的に変形可能な、液体体積の母体または液体体積の通り道を形成し得る。スライド3020の長さに対する分注位置は液体によって変動し得るので、個々の液体特性、ならびにスライド寸法およびスライド設置(たとえばスライドキャリア/トレイ内のスライドの設置)の変動性に基づいて、長さ方向の分注位置が選択され得る。
図36および図36Aは、スライド3020のラベルエリア上方に置かれた、ノズル3052を示す。図36Aを参照すると、ノズル3052は、垂直方向に配向されて、スライド3020の上側表面3044に対して実質的に直角な、流れ経路3102を画定する。「実質的に直角な」という用語は一般に、90度から約+/−5度以内の角度を指す。たとえば、流れ経路3102と上側表面3044とによって画定される角度αは、90度から約+/−3度以内など、90度から約+/−5度以内とすることができる。スライド3020が水平である場合、流れ経路3102は、実質的に垂直な配向となり得る。「実質的に垂直な」という用語は一般に、垂直からの小さい角度、たとえば、垂直から約2度未満の角度、たとえば垂直から1度未満の角度などの、垂直から約0度から3度の間の角度の範囲を指す。ノズル3052の配向は、スライド3020上の液体との所望の液体相互作用に基づいて選択され得る。例として、ノズル3052は、たとえば、スライド3020に沿って液体を押す液体の液流を生成するために、垂直でない配向とすることができる。いくつかの実施形態では、ノズル3052は、実質的に垂直な配向とすることができ、ノズル3054は、垂直でない配向とすることができる。
図36は、スライド3020を保持するトレイ(図示せず)のスライド固定具3110(「固定具3110」)を示す。液体が固定具3110に接触する場合、液体は固定具3110に沿って毛管作用で移動する傾向を有する。この吸い上げ作用は、試料処理のために利用可能な液体を低減し、かつ/または望ましくない液体残留物の形成をもたらす場合がある。吸い上げ作用に起因する試料処理のために利用可能な液体の低減は、比較的不精確であり、試料処理の精度に悪影響を与える可能性がある。吸い上げ作用を回避するために、分注器機構3019は、続いて分注される液体が固定具3110に接触しないようにする障壁を形成するために、ラベル3026上に液体3030aを分注することができる。液体3030aは、限定するものではないが、疎水性物質、ワックス、脱パラフィン液、または他の好適な物質を備え得る。液体3030aは、後から分注された水性の液体を疎水的に退けるように選択され得る。障壁は一時的なものとすることができ、液体3030aの残留物は、最終的には蒸発する。別法として、液体3030aは、分注された後で固化して物理的障壁を形成するように選択され得る。
図37は、液体3030aから成る障壁3104を示す。障壁3104は、ラベル3026の縁部3116を覆い、ラベル3026の幅WL(図32)のほとんどに沿って延在し得る。いくつかの実施形態では、障壁3104は、幅WLの大部分に沿って延在し得る。たとえば、障壁3104は、幅WLの少なくとも約70%、80%、90%、または95%に沿って延在し得る。1つの実施形態では、ラベル3026の全体が、障壁3104によって覆われ得る。ラベル3026は、特定の試料の処理のために送達される液体の種類、順序、およびタイミングを指定するコード化された命令を有する、機械可読コード(たとえば1次元もしくは多次元バーコードまたはインフォグリフ(infoglyph)、RFIDタグ、ブラッグ回折格子、磁気ストライプ、あるいはナノバーコード)を含み得る。いくつかの実施形態では、ラベル3026は、上側表面3044に接着されたバーコードラベルである。
分注機構3019は、飛び散るような流出速度未満の流出速度(すなわち飛び散らない流出速度)で、液体3030b(たとえば染色試薬)を分注し得、この飛び散るような流出速度は、上側表面3044上で表面張力により少なくとも部分的に支持される液体の膜または液溜まりを飛び散らせる傾向を液体3030bが有することになる速度である。いくつかの実施形態では、液体3030bは、50cm/秒よりも大きい、57cm/秒よりも大きい、50cm/秒から60cm/秒までの範囲内の、54cm/秒から57cm/秒までの範囲内の、別の好適な閾値を越える、または別の好適な範囲内の、飛び散らない流出速度で送達される。対応する体積流量は、たとえば、1.1から1.2mL/秒までなど、0.9から1.4mL/秒までとすることができる。1つの実施形態では、100μLから1500μLの液体3030bが、5秒未満のうちに何ら飛び散ることなく上側表面3044に付着され得る。いくつかの実施形態では、100μLの液体3030bが、約0.1秒未満で上側表面3044上に送達され得、1500μLの液体3030bが、約1.5秒未満で上側表面3044上に送達され得る。飛び散りを最小化または制限することによって、分注された液体3030bの実質的に全てが、上側表面3044上に収集される。たとえば、分注された液体3030bの少なくとも約90体積%(たとえば少なくとも約99体積%)が、上側表面3044上に収集され得る。したがって、分注された液体3030bの約10体積%未満(たとえば約1体積%未満)が、トレイ内に落ちるかまたは隣接するスライド上に飛び散る。特定の実施形態では、分注された液体3030bの約99体積%から約99.9体積%または100体積%までが、上側表面3044上で収集される。
加えてまたは別法として、液体3030bは、トランポリン液体流出速度よりも大きい液体流出速度で送達され得る。トランポリン液体流出速度は、液流3130の少なくともかなりの部分がスライド3020上の膜または液溜まりの表面3122から跳ね返る傾向を有することになる流量である。液流3130の流出速度は、トランポリン効果を回避するには十分高いが、感知できるほどの飛び散りを回避するには十分低いものとすることができる。いくつかの実施形態では、液体3030bは、約0.6mm(0.24インチ)の内径を有するノズル3052から、約55cm/秒から約60cm/秒の範囲内の流速で流出し得る。1つの実施形態では、液体3030bは、約57cm/秒に等しい流速で、ノズル3052から流出する。液流3130の流出速度は、たとえば、ノズルの数、ノズル内径、液圧、ノズルの配向、ノズルの高さ、液体3030bの特性(たとえば、粘度、濃度、表面張力、等)、スライド3020の表面特性、および/または環境特性(たとえば、周囲の空気流、温度、湿度、等)に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのノズル3052は、顕微鏡スライドの上側表面から、約5mmから約10mmまでの範囲内の距離だけ離間される。
図38は、スライド3020の端部部分3150上に液体3030bを分注するノズル3052、およびマウント領域または染色エリアなどの処理エリア3098(図32)の長手方向の長さのほとんどを覆う液体3030bの膜を示す。分注器機構3019の速度、分注器機構3019の経路、液体の体積流量、および/または分注タイミングは、所望の液体被覆に基づいて選択され得る。分注器機構3019は、所望の被覆を維持するように、液体を連続してまたは周期的に分注しながら、スライド3020に沿って前後に移動し得る。そのような工程では、分注された液体の液流が、膜または液溜まりと接触時に連結し得る。
広範な液体を分注するために、図36〜図38の工程が使用され得る。脱パラフィン液(または他の油性の疎水性液体)で意図的に過剰に濡らすことにより、脱パラフィン液の十分な体積が、処理エリア3098(図32)において分注されて、たとえば、固定具3110(図36)に沿った意図しない液体吸い上げ作用を緩和する目的で障壁3104(図37および図38)を作り出すための、適切な液体の展延をもたらし得る。比較的大きい脱パラフィン液体積(たとえば0.92mL(+11%/−11%))が、最初にラベルおよび組織エリアを濡らすために分注され得、その次に大きい脱パラフィン体積(たとえば0.58mL(+20%/−20%))が、第2の分注(主要な脱パラフィン分注を含む)のために使用され得、比較的小さい脱パラフィン体積(たとえば0.44mL(+59%/−62%))が、追加の脱パラフィン分注のために使用され得る。脱パラフィン液の他の体積が、他の順序で分注され得る。試料3034の上方で動力学的な最低液厚さを維持するために、調整液(たとえば伝達液または架橋液)が分注され得るが、調整液の体積は、ラベルエリアへと展延しないようにするのに充分な程度に小さいものとすることができ、このことは障壁3104に影響を与え得る。いくつかの実施形態では、ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテルを備える調整液は、約0.4mL(+50%/−50%)の体積を分注するために、約54cm/秒に等しい液体流出速度で送達され得る。いくつかの実施形態では、洗浄液は、約1.0mL(+10%/−10%)、約0.9mL(+22%/−22%)、または約1.1mL(+10%/−10%)の体積を分注するために、約57cm/秒に等しい液体流出速度で送達され得る。染色試薬(たとえばヘマトキシリン試薬)の液体流出速度は、約1.05mL(+14%/−14%)の体積を分注するために、約57cm/秒に等しいものとすることができる。染色定着試薬の液体流出速度は、約1.2mL(+16%/−16%)の体積を分注するために、約57cm/秒に等しいものとすることができる。対比染色試薬(たとえばエオシン試薬)の液体流出速度は、約1.35mL(+11%/−11%)の体積を分注するために、約57cm/秒に等しいものとすることができる。他の液体流出速度は、たとえば、液体特性、スライド間の間隔、目標処理体積、目標分注時間、目標処理時間、および/または他の処理パラメータに基づいて選択され得る。
スライドの長さおよび幅の両方に沿った分注場所は、意図されない液体接触を制限または防止しつつ所望の被覆(たとえば処理エリアの完全で均一な液体被覆)を達成するために、特定のスライド境界に関して登録され得る。ヘッド組立体3018の幅、ノズルの数(たとえば、ノズル3052の数、ノズル3054の数、等)、ノズル間の間隔(たとえばノズル3052、3054の間の間隔)、トレイの移動、および分注体積は、分注された体積の展延性、およびトレイの取り回しによって影響される位置の公差に対応するように選択され得る。一般に、「塗装」分注手順または「複数ステップ」分注手順はいずれも、処理エリア全体(または、図32の処理エリア3098の面積の少なくとも約90%、95%、もしくは100%)の液体被覆を達成し得るが、塗装分注は、複数ステップ分注よりも飛び散りが少ない場合がある。これは、塗装分注は、ノズルと分注された液体との間の液体流において、切れ目が制限されている場合があるからである。塗装分注は、ヘッド組立体3018の連動された比較的高速の移動により、処理時間を低減または制限することもできる。ヘッド組立体3018の移動に適合された液体流量/弁タイミングを利用する塗装分注と対照的に、複数ステップ分注は、比較的短い弁時間の複数の分注を利用することができ、一般にヘッド組立体3018の移動速度とは無関係に実施され得る。ヘマトキシリンおよびエオシン染色に関して、均一で一貫性のある染色品質を促進するために、塗装分注手順および多ステップ分注手順の両方が使用され得る。複数ステップ分注および支援された液体移動(たとえばエアナイフに支援された液体移動)は、すすぎ(たとえばヘマトキシリンを付着させた後のすすぎ)を向上させ得る。分注および液体除去を実現するための合計時間は、所望の全体としての処理時間を達成する能力、ならびに短いインキュベーション時間(たとえば、2分、1分、30秒、20秒、等)に対応する能力に、影響を与え得る。図36〜図38と関係して検討される分注工程は、処理時間を低減するように修正され得る。たとえば、試料3034は、図36および図37と関係して検討された液体3030aを利用することなく処理され得る。分注器機構3019は最初に、ラベル3026(または固定具3110)と液体3030bとの間の物理的接触を防止するために、ラベル3026から離間された上側表面3044の領域上に、液体3030b(図37)を分注し得る。
再び図32を参照すると、制御装置3017は、限定するものではないが、(図36に関して検討された)ラベル−端部への分注手順、端部−ラベルへの分注手順、端部−ラベル−中央への分注手順、または他の分注手順を使用して、最大4つのスライドを並列に処理するように4つのヘッド組立体3018に命令するための命令を包含し得る。端部−ラベルへの分注手順では、液体はスライド3020の全長に付着され得る。端部−ラベル−中央への分注手順では、液体は、ヘッド組立体3018をスライド3020の全長に沿って移動させる間に送達され得る。液体がスライド3020の長さに沿って付着された後で、ヘッド組立体3018は、液体を分注し続けながら、スライドの中央まで戻され得る。制御装置3017は、液体収集器(たとえばパージトレイもしくはパージパン)またはスライドトレイのいずれかからの溢れを検出するセンサ、ならびに、限定するものではないが、不十分な流速(たとえば汚染に起因する低流速)、ノズル閉塞、弁タイミングの変化(たとえば、処理信頼性に影響を与える可能性のある弁タイミング)、スライド固定機構部分(たとえば、固定具3110、トレイのクリップもしくは柱体、等)に沿った吸い上げ作用、汚染(たとえば、スライド表面の僅かとは言えない汚染)、および/または染色機モジュールが流れ経路に沿った泡/エアポケットをたとえばパージサイクル、プライミングサイクル、これらの組み合わせ(たとえばパージ/プライミングサイクル)などの分注手順を使用して除去できないことを検出可能なセンサからの、1つまたは複数の信号に基づいて、処理を調節し得る。染色機モジュール3010の機能停止の発生時または液体の溢れを検知したとき、ヘッド組立体3018の全ての液体分注弁を遮断することができる。
染色機モジュール3010は、トレイ内のスライドの位置的内容とは無関係に、トレイを処理し得る。制御装置3017は、スライドがヘッド組立体3018の下にあるかどうかに関係なく、ヘッド組立体3018を移動させるための命令を実行することができる。トレイ間の一貫した処理のために、液体を分注および除去するための移動および遅延が、全てのスライド位置に関して行われ得る。ただし、染色機モジュール3010は、スライドが位置付けられる場所であるスライド位置においてのみ、液体を分注する。したがって、充填されたトレイ(すなわち、顕微鏡スライドで完全に充填されたトレイ)に関する処理時間は、部分的に充填されたトレイに関する処理時間と同じであり得る。
分注器装置3024は、様々な構成を有するヘッド組立体を有し得る。図39〜図48Cは、ヘッド組立体3018の1つの実施形態、ならびにその構成要素および機能性を示す。弁および液体構成要素が、図39〜図41と関係して全体に検討される。マニホールドおよび真空特徴部分が、図42A〜図48Cと関係して全体に検討される。図49〜図53は、別のヘッド組立体、ならびにその構成要素および機能性を示す。当業者は、染色機モジュール3010が、図39〜図53を参照して以下に記載される特徴部分のうちのいくつかを有さない、ヘッド組立体の他の実施形態を有し得ることを理解するであろう。
ここで図39〜図41を参照すると、ヘッド組立体3018は、導管3160a、3160b、3160c、3160d(まとめて「導管3160」)の配列、および導管3162a、3162b、3162c、3162d(まとめて「導管3162」)の配列を含み得る。導管3160、3162は、制御された液体分注を促進する1つまたは複数の流れ要素を含み得る。そのような流れ要素は、分注器ヘッド3141内で全体に均一な液圧を生成するように構成された、オリフィスとすることができる。いくつかの実施形態では、オリフィスは、ある場所におけるそれぞれの導管に沿った圧力降下のほとんど(たとえば合計圧力降下の少なくとも約80%)を誘起して、存在する場合、系の他の幾何学形状(たとえば、配管長さ、高さ、継手、弁、等)から誘起される圧力変動を最小化または制限し、変動の制御された/小さい液体分注を結果的にもたらすように、構成され得る。1つの実施形態では、オリフィスは、ジュエルオリフィス(jewel orifice)、およびこのジュエルオリフィスを保持するハウジングを含む。ジュエルオリフィスは、約0.3046mm(0.18インチ)の内径を有する開口部を有する、ルビーオリフィスとすることができる。異なる構成および直径を有する他のオリフィスも使用され得る。
ヘッド組立体3018は、分注器ヘッド3141における経路付け密度を高めることを可能にするように互い違いとされた、弁3170a、3170b、3170c、3170d(まとめて「弁3170」)および弁3172a、3172b、3172c、3172d(まとめて「弁3172」)を含み得るが、他の装着配置構成も使用され得る。弁3170、3172の構成は、たとえば、材料適合性、動作圧力、目標応答時間、等に基づいて選択され得る。弁3170、3172を分注器ヘッド3141に装着することによって、ヘッド組立体3018の移動に由来する「ポンプ送給」作用によってもたらされる液滴が、低減または回避される。弁3170、3172は、適切な流出速度で液体を分注するように、およびスライド上に分注する前にノズル3502、3504をプライミングするように動作され得る。たとえばヘマトキシリン沈殿物または青色染色剤の塩によって引き起こされる、ノズルの閉塞/詰まりを緩和するために、定期的なパージ/プライミングサイクルが行われ得る。単一液体分注状態では、ヘッド組立体3018は、導管3160、3162の一方のみから処理液を分注し得る。たとえば、弁3170aは、導管3160aから処理液を分注するために開いた状態とすることができ、このとき、弁3170b、3170c、3170d、および弁3172は、閉じられた状態である。処理液の分注後、弁3170aは、開いた状態から閉じられた状態へと切り替えられ得、弁3170b、3170c、3170dのうちの1つは、別の液体を分注するために、閉じられた状態から開いた状態へと切り替えられ得る。混合された液体分注状態では、複数の液体をこれらの液体が中で混合する単一のマニホールド内に送達するために、2つ以上の弁(たとえば2つ以上の弁3170または2つ以上の弁3172)が開いた状態であり得る。この混合物は、マニホールドおよびヘッド組立体3018から流れ出ることができる。いくつかの染色手順では、ヘッド組立体3018は、単一の液体分注状態と混合された液体分注状態との間で切り替えを行うことができる。
図42Aは、図41の線42A−42Aに沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。ヘッド組立体3018は、導管3160からノズル3052へと液体を分配するためのマニホールド3166、および導管3162からノズル3054へと液体を分配するためのマニホールド3164を含む。導管3160を通して送達される液体は、導管3162を通して送達される液体と適合しない場合がある。2つのマニホールド3164、3166は、望ましくない相互作用をする可能性の高い液体を、物理的に分離することができる。染色定着試薬(たとえばブルーイング)およびヘマトキシリンが互いに接触する場合、ヘマトキシリンは、比較的低い濃度であっても、沈殿し、ノズルを閉塞するかまたは詰まらせる可能性がある。染色定着試薬が特定の洗浄液または調整液に接触する場合、意図されない染色アーチファクトが生じる可能性がある。これらの問題を回避するために、染色定着試薬は、マニホールド3166を通って流れることができ、ヘマトキシリン試薬、洗浄液、および調整液は、マニホールド3164を通って流れることができる。液体の割り振り(たとえば脱パラフィン液、調整液、洗浄液、およびヘマトキシリン試薬が1つのマニホールドを共有し、一方、エオシン試薬、染色定着試薬、および染色弁色試薬が別のマニホールドを共有する)は、適切な液体を互いから分離された状態に保つだけでなく、効率的な液体入れ替えも可能にし得る。調整液、脱パラフィン液、洗浄液、およびヘマトキシリン試薬は、それぞれ導管3162a、3162b、3162c、3162dを通して送達され得る。染色定着試薬、エオシン試薬、洗浄液(たとえばブルーイングと適合性のある洗浄液)、および染色弁色試薬(たとえば酸洗浄剤)が、それぞれ導管3160a、3160b、3160c、3160dを通して送達され得る。導管3160、3162への液体の他の割り振りが、所与の染色プロトコルにおける液体の適合性に基づいて選択され得る。
図42Bは、マニホールド3166の詳細図である。図43は、図40の線43−43に沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。マニホールド3166は、分配チャンバ3186、入口3188a〜d(まとめて「入口3188」)、および出口3189を含み得る。各弁3170は、分配チャンバ3186内へと開口するそれぞれの入口3188を通る液体流を制御し得る。分配チャンバ3186のサイズ、形状、および構成は、たとえば、マニホールド3166を通る所望の液体流に基づいて選択され得る。処理液は、それぞれの入口3188を通って分配チャンバ3186内へと個々に送達され得、次いで分配チャンバ3186は、出口3189に処理液を分配する。入口の数、入口の場所、および入口の寸法(たとえば直径)は、マニホールド3166を通る所望の流れに基づいて選択され得る。
ここで図42Aおよび図42Bを参照すると、導管3059cは、液体源3058cから導管3160cへと液体(矢印によって表される)を送達し得る。液体は、導管3160cを通って流れ、弁給送通路3181cに沿って進む。弁3170cは、開いた状態では、弁出口通路3182c内へと液体を送達する。ここで図42Bを参照すると、液体は弁出口通路3182cに沿って、入口3188cを通り、分配チャンバ3186内へと流れる。液体は分配チャンバ3186、出口3189、および流路3191を通って流れ、ノズル出口3212の列を介して流出する。
図42Bに示されるように、ノズル3052は、液体流を妨げる可能性のあるバリまたは他の特徴部分を緩和するために僅かに分配チャンバ3186内へと延在することができ、全体にまたは部分的に金属(たとえば、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、プラスチック、または処理液に接触するのに好適な他の材料で作られ得、約5mmから約25mmの範囲内の長さを有し得る。たとえば、ノズル3052は、中空の金属針とすることができる。加えて、ノズル3052は、能力を向上させるための1つまたは複数の被覆を備え得る。ノズル3052の内側表面および/または外側表面は、懸滴を回避するための疎水性の被覆を含み得る。分注サイクル間の液体キャリーオーバーを低減するために、非付着性被覆(たとえばポリテトラフルオロエチレンの被覆)、低摩擦被覆、または他の種類の被覆が使用され得る。各種の液体に関して所望の流出速度/流量を達成するために、ノズル3052、3054の内径は十分に小さいものとすることができ、液体供給圧力は十分に高いものとすることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、ノズル3052、3054の内径は、0.6mm(0.24インチ)とすることができるが、所望の背圧に基づいて他の内径が選択され得る。
ノズル3052は、どこに懸滴が形成され易いかに影響を与える、製造公差に起因するある程度の公差のばらつきを有し得る。これは、懸滴が、最大の内径を有するノズル3052上に形成される傾向を有するためである。ノズル3052のうちの1つ(またはノズル3052の群)は、比較して僅かに大きい内径を有し得、このことにより、懸滴は、存在する場合、そのより大きい直径のノズル3052において促進される。いくつかの実施形態では、6つのノズル3052は、0.69mm+/−0.13mm(0.233インチ+/−0.005インチ)の内径を有し得、別のノズル3052の内径は、0.69mm+/−0.13mm(0.263インチ+/−0.005インチ)であり得、この結果、他のノズル3052の全てがそれらの公差範囲の末端にあるとしても、0.69mm(0.263インチ)の直径のノズル3052が、最も大きくなることになる。最大の内径のノズル3052は、液体流に対して最も小さい抵抗を有することになり、存在する場合、滴は、優先的にこのノズル3052の出口上に形成されることになる。いくつかの実施形態では、最大の内径のノズル3052は、懸滴がスライド上に落ちないようにするように位置付けられ得、かつ/または配向され得る。たとえば、最大の内径のノズル3052は、その出力3212がスライドから離間されるように(たとえばスライドの側部へと)角度を付けられ得る。高い流れの期間中(たとえば分注中)は、液体はスライドの上側表面上に衝突し得るが、低い流れの期間中は、最大の直径のノズル3052の出口3212における液滴はいずれも、スライドに接触することなく落ちることになり、したがってインキュベーション液と干渉しない。
図44Aは、図41の線44A−44Aに沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。図44Bは、マニホールド3164の詳細図である。図45は、図40の線45−45に沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。図44Bを参照すると、マニホールド3164は、分配チャンバ3196、入口3198a〜d(まとめて「入口3198」)、および出口3199を含み得る。各弁3172は、分配チャンバ3196内へと開口するそれぞれの入口3198を通る液体流を制御し得る。ここで図44Aおよび図44Bを参照すると、導管3162bは、弁給送通路3190bへと液体(矢印によって表される)を送達する。液体は、弁給送通路3190bに沿って弁3172bへと進み、次いで弁3172bは、弁出口通路3192b内へと液体を送達する。液体は分配チャンバ3196内へと流れ、ノズル3054を介して流出する。
図46A〜図46Fは、ヘッド組立体3018の動作の段階を示す。一般に、新しい液体に切り替えるとき、真空弁3200、3202は、マニホールド3166から液体を除去するように付勢される(即ち開かれる)。新しい液体で前の処理液を置き換えマニホールド3166を充填するために、導管3160のうちの1つに接続された弁が開口され得る。デッドレッグが最小化され得、交差汚染および/またはキャリーオーバーを抑止、制限、または実質的に排除するために、液体入れ替え工程が行われ得る。液体入れ替えのためのパージ/プライミング体積を低減するために、マニホールド3164、3166は、低流速のポケットを制限または防止する目的で液体の均一な流通を提供するように構成され得る。スライド上に長さ方向に分注すること、およびマニホールドのサイズをスライドの幅に適合させることによって、マニホールドの体積はさらに低減され得る。単一のパージ/プライミングサイクルは一般に、(1)真空を引くことおよび/または次に分注されるべき液体でマニホールドをすすぐことを含むパージ工程、ならびに(2)マニホールドおよびノズルを通して次の液体を分注することを含むプライミングサイクルを含み得る。液体入れ替えは、複数の入れ替えステップを含み得る。たとえば、ヘマトキシリンから洗浄液への入れ替えは、より効率的にマニホールドを清浄化するための待ち時間を伴う、複数の入れ替え(たとえば3つの小サイクルの入れ替え工程)を含み得る。2つの液体を連続的に分注する段階が、図46A〜図46Fと関係して検討される。
図46Aは、図40の線46−46に沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。弁3170c(図39)は、ノズル3052から液体(矢印3221によって表される)を分注するために、開いた状態とすることができる。図46Bは、液体で充填されたマニホールド3166、および閉じられた状態の弁3170の全てを示す。図46Cは、弁3200、3202を開けることによって分配チャンバ3186から排出されている液体を示す。分配チャンバ3186を空にした後で、弁3170b(図39)は、分配チャンバ3196内に別の液体を送達するために、オンにされ得る。図46Dは、点線の矢印3222で表される別の液体との、液体3221の入れ替えを示す。液体3222は、マニホールド3166が液体3222で完全に充填されるまで、弁3200、3202に向かって流れ、液体3222は、ノズル3052を通っても流れ得る。図46Eは、液体3222で充填されたノズル3052、および閉じられた弁3170の全てを示す。ノズル3052が処理されるべきスライドの上方に位置付けられると、図46Fに示されるように、液体3221を分注するために、弁3170bが開かれ得る。図46A〜図46Fと関係して記載される液体入れ替え工程は、導管3160、3162のうちの任意の1つから液体を分注するように行われ得る。
図47は、図40の線47−47に沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。ヘッド組立体3018は、真空源3240と流体連通する、真空チャンバ3230を含み得る。真空源3240は、真空チャンバ3230から流体を引き出すために、導管3250を介して真空を引くことができる。いくつかの実施形態では、真空源3240は、限定するものではないが、4L/分の流量で−2.068kPa(−0.3psi)よりも大きい真空圧を引くことのできる、1つまたは複数の加圧デバイス、ポンプ、または他の種類のデバイスを含み得るが、他の真空圧および流量が使用され得る。いくつかの実施形態では、真空は、ノズルの出口から液体を引き離して、懸滴を緩和することができる。加えてまたは別法として、たとえば、すすぎ/パージサイクル、較正手順、等を行う目的で、ヘッド組立体3018から液体を除去するために、真空が使用され得る。導管3250は、限定するものではないが、1つまたは複数の弁(たとえば、一方向弁、逆止弁、等)、コネクタ、センサ、オリフィス、および/または他の流体に関する構成要素を含み得る。
図48Aは、図41の線48−48に沿って見た、ヘッド組立体3018の断面図である。図48Bおよび図48Cは、2つの異なる排出状態にある、ヘッド組立体3018の一部分の詳細図である。図48Bに示される排出状態では、弁3202および弁3200(図47)は、マニホールド3166と真空チャンバ3230との間の液体流を可能にする。液体L1(矢印によって表される)は、ノズル3052を通して上向きに、分配チャンバ3186内へと引かれる。L1は通路3260を通って弁3200、3202内へと流れ、次いで弁3200、3202は、通路3262内へとL1を送達する。L1は通路3262、真空チャンバ3230、および導管3250(図47)を通って流れ、このことによりマニホールド3166を空にする。図48Cに示される排出状態では、弁3202は、マニホールド3164と真空チャンバ3230との間の液体流を可能にするように、開かれている。液体L2は、ノズル3054を通して上向きに、分配チャンバ3196内へと引かれる。L2は、通路3264を通って弁3202内へと流れ、次いで弁3202は、通路3262内へとL2を送達する。L2は通路3262、真空チャンバ3230、および導管3250(図47)を通って流れ、このことによりマニホールド3164を空にする。いくつかの動作のモードでは、マニホールド3164、3166の一方を空とし、他方のマニホールド3164、3166が処理液で充填される間、真空に維持することができる。したがって、任意の所与の時間において、1つの処理液のみが、分注される用意ができていることになる。真空が、懸滴または染色に悪影響を与え得る他の問題を回避または制限するために使用され得る。
2重のマニホールド3164、3166および真空チャンバ3230は、複雑さを最小化するのを助けること、ならびに、流体およびワイヤの経路付け管理の信頼性と、さらにスライドトレイの4分の1部分同士の間のおよび染色機モジュール同士の間の流れ特性の違いと、を改善することができる。マニホールド3164、3166、これらと関連付けられた弁(たとえば弁3170、3172)、ワイヤ、導管(たとえば導管3160、3162)、および流体接続部は、スライドの場所に関係なく各スライドに沿って液体を一貫して分配するように、プロトコル全体にわたりスライドに沿って複数回移動し得る。エネルギーチェーンの曲げ半径、可撓性で材料適合性のある管材、および流体に関する設計は、上記で検討したように、個々の分注導管の各々が精密絞り弁オリフィスによって画定されるような圧力降下の容積を有するように、および共有される送達導管が可能な限り小さい圧力降下を有するように、選択され得る。
図49は、本技術の実施形態によるヘッド組立体3300の等角図である。図50は、ヘッド組立体3300の頂面図である。図49および図50をまとめて参照すると、ヘッド組立体3300は、分注器機構3310および液体除去デバイス3320を含み得る。分注器機構3310は、分注器ヘッド3330、および放射状の配置構成で位置付けられた弁3340a、3340b、3340c、3340d(まとめて「弁3340」)を含む。弁3340は、導管3350a、3350b、3350c、3350d(まとめて「導管3350」)からの液体送達を制御する。分注器ヘッド3330から液体を排出するために、導管3362、3364を介して真空が引かれ得る。ここで図49および図51を参照すると、液体除去デバイス3320は、ノズル3387(図51)に流体的に結合された導管3380(図49)、およびV字形状のエアナイフ3389(図51)にそれぞれ流体的に結合された導管3382、3384(図49)を有する。導管3382、3384(図49)を介して送達される空気は、エアナイフ3389(図51)から流出する。
図52は、図50の線52−52に沿って見た、ヘッド組立体3300の断面図である。マニホールド3420は、入口3412、分配チャンバ3430、および液体分配装置デバイス3440を含む。分配チャンバ3430は、ヘッド組立体3300内の液体の体積を最小化または制限するような、比較的小さい体積を有し得る。入口3412は、分配チャンバ3430内の圧力を均等にするのを助けるために、分配チャンバ3430を中心に周方向に位置付けられ得る。弁3340bが開いた状態にあるとき、導管3350bからの液体は、通路3400、3410、および入口3412を通って流れる。液体は、分配チャンバ3430および液体分配装置デバイス3440を通って流れ、ノズル3460を介して流出する。
図53は、本技術の実施形態による液体分配装置デバイス3440の等角図である。液体分配装置デバイス3440は、導管の束3492、および流れ分離器3490を含み得る。いくつかの実施形態では、各導管3492は、流れ分離器3490の1つのマニホールド出口3432を、1つのノズルに流体的に結合する。液体分配装置デバイス3440は、他の種類のノズルに液体を分配するための他の構成を有し得る。
図54は、本技術の実施形態による、ノズル装置3500の断面図である。ノズル装置3500は、主本体3504、および主本体3504に結合されたノズル3506を含み得る。ノズル装置3500は、全体に均一な流れを生成するために、本明細書において開示されるヘッド組立体内に組み込まれ得る。液体は、ノズル3506の主通路3510およびノズル流路3512(1つが識別されている)を通って流れることができる。いくつかの実施形態では、各導管3492は、流路3512のうちの1つの中に位置付けられ得る。ただし、液体を分注するための他の構成要素および構成が使用され得る。
染色機における液体除去の選択された例
本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された自動化された組織学的システムは、分注された液体体積を、この液体体積を他の液体で置き換えることなく、精確に制御された時間に除去するように構成されている、染色機を含む。たとえば、本技術の特定の実施形態により構成された処理ヘッドは、エアナイフおよび関連付けられた真空ポートを使用して、それぞれ分注された液体体積を集める、および除去する。液体体積を分注および除去するこの様式は、洗浄、および、少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する固定的な液溜まりまたは厚い膜を使用する他の試料処理工程を、容易にし得る。別の処理液と試料を接触させる前に先に分注された処理液を操作することによって、試料を少なくとも部分的に露出することは、処理時間の一貫性および制御可能性を高めることが期待される。理論上は、また本技術の範囲を限定するものではないが、この利点は、直接の液体−液体入れ替え中に生じる処理液の不精確な希釈と関連付けられる、不精確なタイミングの低減と関連付けられ得る。別法としてまたは加えて、固定的な液体のプール内で試料を洗浄することは、流れる液体の液流内で試料が洗浄される場合に起こるであろうよりも均一かつ精確に、試料から残留物を遊離させ得る。他の機構も可能である。さらに、液体除去特徴部分は、液体廃棄物を低減することなど、異なるまたは追加の利点を有し得る。
図55は、4つのヘッド組立体4018a、4018b、4018c、4018d(まとめて「ヘッド組立体4018」)を含む分注器装置4024の等角図である。図56〜図58は、ヘッド組立体4018aによって行われる液体除去工程の段階を示す。図55〜図58をまとめて参照すると、ヘッド組立体4018aは、スライド4020の上側表面上に液体を分注するために、顕微鏡スライド4020(「スライド4020」)の上方に位置付けされ得る。液体が所望の時間の長さの間試料に接触した後で、ヘッド組立体4018aは、スライド4020に沿って(たとえば長さ方向に)液体を吹き飛ばし、不完全真空を引いて、スライド4020から収集された液体を非接触で除去することができる。たとえば、ヘッド組立体4018aは、液体を吹き飛ばし同時に不完全真空を引きながら、スライド4020に対して(矢印によって指示されるように)移動し得る。その後、追加の液体が、連続的にスライド4020に付着されまたそこから除去され得る。いくつかの場合には、続く液体の分注は、スライド4020の長さにわたるヘッド組立体4018aの同じ通過においてなど、先に分注された液体が除去されている間に始まる。他の場合には、先に分注された液体の除去は、続く液体の分注が始まるときに完了していてよい。
図56を参照すると、試料と液体4340との間の接触に関する目標の時間期間(たとえば、目標のインキュベーション時間)のほとんどまたは全体を通して、所望の液体体積(たとえば動力学的な液体体積)を維持するのに十分な液体4340の体積が、スライド4020の上側表面4044上に置かれ得る。液体4340の体積は、所定の試料処理プロトコルの間に所望の様式で、試料4034を全体的にまたは漸進的に処理するのに十分な量を提供し得る。流れ発生装置4352(たとえば、ポンプ、空気圧縮機、送風機、ファン、等)は、ヘッド組立体4018aの液体除去デバイス4330に送達される気体(たとえば、空気、窒素、または他の気体)を加圧し得る。液体除去デバイス4330は、加圧された気体を受容し、ガスカーテン4360(矢印によって表される)を生成する。ヘッド組立体4018aが、最初の位置から離れるように移動する(矢印4025によって指示される)際、ガスカーテン4360は、液体の体積4340(たとえば、液体4340の液溜まりまたは厚い膜)を、固定的なスライド4020の端部4143に向けて押し、また、液体4340を、液体除去デバイス4330の吸引要素4370に向けて付勢することもできる。
図57は、スライド端部4143、4366の間の概ね半ばの中間位置にある液体除去デバイス4330を示す。液体4340の体積は、上側表面4044のガスカーテン4360の前にある部位上に収容され、マウントエリアのガスカーテン4360の背後にある部位は、液体4340を実質的に含まないものとすることができる。吸引要素4370は、不完全真空を引いて、スライド4020から液体4340を吸引することができる。ヘッド組立体4018aは、スライド端部4143において液体4340の体積が捕らえられる際におよび/または捕らえられるまで、スライド端部4143に向かって移動し続けることができる。図58は、ガスカーテン4360によって、スライド端部4143に沿った縁部4147において捕らえられた、液体4340の体積を示す。液体4340は、吸引要素4370内に吸引され得、存在する場合、スライド4020からスライド4020を担うトレイ(図示せず)内へと落ちる液体4340の体積は、制限され得る。いくつかの実施形態では、液体4340はスライド4020から実質的に全く落ちず、実質的に全ての処理液がスライド上に保たれる。
図59、図60、および図61は、本技術の実施形態によるヘッド組立体4018aの、等角図、底面図、および正面図である。ガスナイフ4350は、吸引要素4370を部分的に取り囲むような、V字形状とすることができる。ガスナイフ4350は、空気、窒素、空気/窒素混合物、または処理液および組織試料と適合性のある他の気体などの、様々な好適な気体とともに使用され得る。したがって、「エアナイフ」という用語が、本明細書において、参照を容易にするために使用される場合があるが、文脈がそうではないと明白に示さない限りは、この用語は、任意の好適な気体から成るガスカーテンを生成できるガスナイフを指す。したがって、ガスナイフ4350は、空気カーテンを生成するための空気(たとえば、周囲空気、フィルタを通された空気、等)の気流、窒素カーテンを生成するための窒素の気流、または他の種類のガスカーテンを生成するための他の気体の気流を送出することができる。
ここで図59を参照すると、ガスナイフ4350は、側方部分4390a、4390b、および頂点部分4392を有するマニホールドを含み得る。側方部分4390a、4390bは、互いと概ね同様であり、したがって、一方の側方部分の説明は、そうではないと示されていなければ、他方の側方部分にも等しくあてはまる。側方部分4390aは、たとえばガスカーテン4360の所望の幅に基づいて選択された、いくつかの穴4400a(1つが識別されている)を有し得る。いくつかの実施形態では、側方部分4390aは、約10個から約20個の穴を有する。示される実施形態を含め、1つの実施形態では、側方部分4390aは、16個の直線状に配置された穴4400aを有する。全体に均一な実質的にV字形状のガスカーテンを生成するために、穴4400a、4400b(まとめて「穴4400」)は、全体に均一なピッチ(すなわち隣接する穴4400の中心間の距離)を有し得る。不均一なV字形状のガスカーテンを生成するために、穴4400は、不均等に離間され得る。ガスカーテンの所望の構成および形状に基づいて、穴4400の他の数、パターン、および間隔が選択され得る。
ここで図60を参照すると、角度βは、一連の穴4400aおよび一連の穴4400bによって画定され得、対応するスライド表面の幅および穴4400と吸引要素4370との間の幾何学的関係などの、幾何学的要因に基づいて選択され得る。加えてまたは別法として、角度βは、収集されるべき液体の特性(たとえば、粘度、展延性、等)に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、角度βは、約80度から約100度までの範囲内にある。1つの実施形態では、角度βは、約90度(すなわち90度+/−3度)である。他の実施形態では、角度βは、比較的粘度の低い液体の比較的大きい体積を収集するように、100度よりも大きい。さらに他の実施形態では、角度βは、比較的粘度の高い液体の小さい体積を収集するように、80度未満である。
穴4400の組の幅Whは、使用中のヘッド組立体4018aの移動の経路またはスライドの長手軸の方向のいずれかに対して概ね直角な方向において測定される。いくつかの実施形態では、幅Whは、ガスカーテン4360がスライド4020の幅の大部分にわたって延在するように選択される。たとえば、幅Whは、25mm、30mm、40mm、50mmの幅を有するスライドに関してそれぞれ、約25mm、30mm、40mm、50mm以上とすることができる。
吸引要素4370は、ヘッド組立体4018aの分注器ヘッド4141の中心線4413に概ね沿って位置付けられ得る。ただし、必要であればまたは所望であれば、吸引要素4370は他の場所に置かれ得る。吸引要素4370は、管状体4410および入口ポート4412を含み得る。管状体4410は、入口ポート4412が2つの一連の穴4400a、4400bの間に直接位置付けられるように、ガスナイフ4350から離間される。いくつかの実施形態では、入口4112は、遠位のまたは前方の穴4400a、4400b(すなわち図60において識別される2つの穴4400a、4400b)から後方に位置付けられ得、これらの穴4400a、4400bは、ガスカーテンの前縁部分を生成する。入口ポート4412は、約0.5mmから約2mmの範囲内の、約0.5mmから約4mmまでの、約3.2mmから約4mmまでの、または別の好適な範囲内の、最大幅を有する、円形の開口部を有し得る。他の実施形態では、入口ポート4412は、所望の真空レベルを達成するための非円形開口部(たとえば楕円形開口部、多角形開口部、等)を有し得る。さらに、入口ポート4412の開口部は、裾広がりまたは環状とすることができる。
図61は、穴4400a、4400b、およびガスナイフ4350の底部表面を過ぎて下向きに延在する、吸引要素4370を示す。導管4357は、真空源4353を吸引要素4370に流体的に結合する。真空源4353は、吸引要素4370を通る流量が目標の流量(たとえば30リットル/分、40リットル/分、50リットル/分)以上となるように不完全真空を引くことのできる、1つまたは複数のポンプまたは加圧デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、真空源4353は、約37リットル/分から50リットル/分までの範囲の吸引要素4370を通る流量を生成するために、約−68.94kPa(−10psi)から約−3.447kPa(−0.5psi)までの範囲(たとえば約−15.16kPa(−2.2psi)+/−約−1.378kPa(−0.2psi))の真空圧を生成する。ヘッド組立体4018aに真空圧を提供するために、他の配置構成(たとえば流体系、真空源、等)が使用され得る。
図62および図63は、スライド4020の上方に位置付けられた液体除去デバイス4330の、部分側面断面図である。ガスカーテン4360とスライド4020の上側表面4044との間の角度α(すなわち、ガスナイフの迎え角)は、限定するものではないが、作動圧力、ヘッド組立体4018aの高さ、ヘッド組立体の移動速度、および/または液体4340の特性に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、ガスカーテン4360は、スライド4020の上側表面4044に対して直角ではない。たとえば、角度αは、約70度から約80度までの範囲内とすることができる。1つの実施形態では、角度αは約75度(たとえば75度+/−2度)であり、この場合、ガスカーテン4360の前縁部分がスライド4020の遠位端部4143を越えて移動されるときでさえも、ガスカーテン4360は、スライド4020から液体4340の感知できるほどの体積を押し離すことなく、液体4340の体積を上側表面4044に沿って効果的に押すことができる。1つの実施形態では、角度αは、比較的粘度の高い液体を押すことを向上させるために、約70度(たとえば70度+/−2度)とすることができる。特性が全体に均一な液体の体積を押すために、スライド4020の幅にわたって一定の角度αが選択され得る。他の実施形態では、特性が不均一な液体の体積を押すために、変動する角度αが選択され得る。たとえば、比較的小さい角度αを画定するガスカーテンの部分は、粘度の低い液体を押すのに非常に適している場合があり、比較的大きい角度αを画定するガスカーテンの部分は、粘度の高い液体を押すのに非常に適している場合がある。スライド4020上の残留液体の分散が、ガスナイフの角度α、ならびに、スライド4020にわたるヘッド組立体の移動およびスライド4020に対するヘッド組立体の高さによって大きく影響され得るので、他の迎え角も使用され得る。
図63は、ヘッド組立体の固体構造物が液体4340の体積および/またはスライド4200に接触することなく入口ポート4412を通して上向きに液体4340を引くのに十分な不完全真空を引く、吸引要素4370を示す。ガスナイフ圧力は、過剰に濡れることを最小化または制限するのに十分な程度に低くすることができ、残留体積を目標レベルに保つ、または目標レベル未満に保つのに十分な程度に高くすることができる。入口ポート4412の高さHは、スライド4020上で比較的低い残留体積レベルを達成するように、約0.8mmから約3mmとすることができる。1つの実施形態では、高さHは、約1mmから約2mmまで(すなわち1mmから2mmまで、+/−0.5mm)の範囲にあるが、真空レベルに基づいて他の高さが選択され得る。いくつかの実施形態では、吸引要素4370を通る流量は、約3mm以下である高さHに対して、約−2.620kPa(0.38psi)から約−2.068kPa(0.3psi)までなど、約−6.894kPa(1psi)から約−1.378kPa(0.2psi)の間の動圧で、約37リットル/分から約50リットル/分までの範囲内とすることができる。ただし、粘度、表面張力、濃度などのような、流体動力学に影響を与える液体特性に基づいて、他の高さおよび圧力が使用され得る。いくつかの実施形態では、吸引要素4370は、約12mmHgから約35mmHgまでの範囲の真空レベルを生成するように構成される。真空源4353の動作は、そのような真空レベルまたは他の所望の真空レベルを達成するように調節され得る。
図64A〜図66Bは、スライド4020から液体4340を除去する段階を示す。液体4340が、所望の時間の長さの間試料4034に接触した後で、ガスナイフ4350は、スライド4020に向けて1つまたは複数の気体の気流を送達して、ガスカーテン4360を生成し得る。ガスナイフ4350は、ただ1つの気体の気流を使用してまたは2つ以上の気体の気流を使用して、ガスカーテン4360を生成するように構成され得る。液体除去デバイス4330を移動させる前、移動させる間、および/または移動させた後で、ヘッド組立体4018は、吸引要素4370を使用して、スライド4020から液体4340を、非接触で除去することができる。ガスナイフ4350がスライド4020に対して移動する際、たとえば、ガスカーテン4360は、液体4340の体積を限局し、スライド4020の長手縁部4540、4542から離れるように移動させることができ、この間、吸引要素4370は、不完全真空を引いて、スライド4020に物理的に接触することなく、スライド4020から液体4340を除去する。液体除去工程の様々な段階が、以下で検討される。
図64Aは、スライド4020に沿って位置付けられた、液体除去デバイス4330および実質的にV字形状のガスカーテン4360を示す。図64Bは、ガスカーテン4360およびスライド4020の頂面図である。図64Aおよび図64Bをまとめて参照すると、液体除去デバイス4330は、最初の位置に置かれ、上側表面4044に向けてガスカーテン4360(図64Bにおいて示される)を導く。液体4340の体積は、少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する、膜(たとえば厚い膜)または液溜まりとすることができる。ガスカーテン4360は最初の位置では、ラベル4026に沿って置かれ得る。他の実施形態では、ガスカーテン4360のほとんどまたは全ては、最初の位置では、ラベル4026のほとんどまたは全てからの液体除去を可能にするために、スライド4020のラベル端部4366を越えて置かれ得る。ただし、真空収集は、液体4340がスライドトレイの固定機構部分内に活発に引き込まれるのを防止するために、スライド4020のラベル端部4364を保持する固定機構部分(たとえば、スライド固定具、クリップ、クランプ、等)を越えたところで開始するように遅延され得る。さらに他の実施形態では、ガスカーテン4360は最初の位置では、スライド4020のマウントエリアに沿って置かれ得、真空収集は、ガスカーテン4360をスライド4020に沿って移動させる前にまたはその後で始まり得る。
ガスナイフ4350の気体消費量/流量は、約8リットル/分から約9リットル/分までの範囲内、たとえば約48.26kPa(7psi)+/−1.378kPa(0.2psi)入力ガスナイフ圧力をもたらすような約8.6リットル/分とすることができる。過度に高いガスナイフ圧力および/または流量は、除去された液体の分散の喪失(過剰な濡れ)につながる可能性があり、過度に低い圧力および/または流量は、高い残留体積につながる可能性がある。ガスナイフ4350および吸引要素4370は、長手縁部4540、4542から離れるように液体4340の体積の近位領域4580を付勢する圧力差を、協働して生成する。いくつかの実施形態では、ガスナイフ4350および吸引要素4370は、中に液体4340が集まる傾向のある収集区域4550(仮想線で示される)を少なくとも部分的に画定する、低圧領域4380(図64A)を生成する。収集区域4550は、吸引要素4370の入口ポート4412の直下に位置付けられ得る。たとえば、入口ポート4412は、収集区域4550のほとんどが入口ポート4412の概ね下に位置付けられるように、ガスカーテン4360の頂点4596(図64B)に近接して位置付けられ得る。頂点4596は、角度を付けられ得るかまたは湾曲され得る。
ここで図64Bを参照すると、ガスカーテン4360は、カーテン部分4590、4592、および頂点部位4596を有する。カーテン部分4590、4592は、約80度から約100度までの範囲内の角度ωを成して交わる仮想平面4594、4595に沿って、位置付けられ得る。頂点部位4596は、カーテン部分4590、4592が液体4340の体積の近位領域4580を限局するように、上側表面4044の中央領域4600に沿って移動され得る。液体除去デバイス4330がスライド4020に沿って長さ方向に移動する際、圧力差が、液体4340を、スライド4020の中央長手軸4021、ならびに収集区域4550に向けて付勢し得る。いくつかの実施形態では、ガスカーテン4360は、スライド4020の幅Wにわたって延在する、全体に均一なガスカーテンとすることができる。たとえば、ガスカーテン4360は、長手縁部4540、4542の間に延在する、全体に中断されない連続したガスカーテンとすることができる。
図65Aおよび図65Bは、スライド4020の長手軸4021と概ね平行な処理経路4551に沿って移動する、液体除去デバイス4330を示す。吸引要素4370は、中で液体4340の吸引(流れ)が生じ得る、収集区域4550における低圧領域を生成するための不完全真空を提供し得る。低圧領域と周囲圧力との間の圧力勾配は、ガスナイフ4350と吸引要素4370との間の気体流相互作用とともに、液体4340を、収集区域4550に向けて付勢し得る。ガスカーテン4360の背後に位置付けられた上側表面4044の領域4624は、液体4340を実質的に含まない。ただし、領域4624上に、残留液体の小さい体積が存在し得るが、スライド4020上の液体4340の合計体積のほとんどは、ガスカーテン4360とスライド4020の端部4143との間に置かれ得る。液体4340の特性(たとえば表面張力)に応じて、液体4340の体積のほとんどまたは実質的に全てが、処理経路4551に沿って移動するガスカーテン4360の前方に保たれ得る。ガスカーテン4360が遠位方向に前進する際、液体4340は、矢印4629によって指示されるように、カーテン部分4590、4592にそれぞれ沿って流れる傾向を有し、カーテン部分4590、4592は、液体4340の液溜まりの外側部分4620、4622(図65B)をそれぞれ付勢して、それぞれ長手縁部4540、4542から離れ、液体4340がスライド4020から落ちる可能性を低減し得る。有利には、ガスカーテン4360の長さ方向の移動および位置は、液体4340の体積をスライド4020上に保ちつつ、ヘッド組立体4018が比較的高い速度で移動されるのを可能にする。
スライド縁部4540、4542に対する液体除去デバイス4330の幅方向の位置は、残りの体積および残りの液体の分配に影響を与える可能性があるので、ガスナイフ4350および吸引要素4370は、ガスカーテン4360によって液体4340が吸引要素4370に向けて効果的に導かれるように、スライド4020と位置合わせされ得る。液体除去デバイス4330がスライド4020に対して移動する際、収集区域4550は、上側表面4044の中央領域4660に概ね沿って位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、ガスカーテン4360および収集区域4550は、スライド20の上方で、長手軸4021から+/−0.127センチメートル(0.05インチ)以内の中央に位置合わせされる。吸引要素4370が上側表面4044に十分近くない場合、結果として高い残留体積も生じる。したがって、収集区域4500の位置、ガスナイフ4350の高さ、吸引要素4370の高さは、所望の液体除去(残留体積の量および分散を含む)を達成するように選択され得る。
図66Aは、スライド4020の端部4143に位置付けられた、液体除去デバイス4330を示す。図66Bは、図66Aのガスカーテン4360の頂面図である。カーテン部分4590、4592は、それぞれ長手縁部4540、4542を、および縁部4147を過ぎて外向きに延在することができ、この結果、液体4340の体積は、ガスカーテン4360およびスライド縁部4147によって収容される。ガスナイフ4350および真空は、吸引要素4370がスライド4020の端部4143に達するとき、液体がスライド4020の裏側まで過剰に濡らすのを防止するためにオフにされ得、いくつかの実施形態ではまた、残留した滴(たとえば、吸引要素4370の下の上側表面4044に沿った場所における小さい残留した滴)を残す。滴のサイズは、たとえば供給圧力、流体に関する設計、ガスナイフ4350と真空との間の幾何学的関係、ならびに/または上側表面4044に対する吸引要素4370およびガスナイフ4350の高さによって規定される、ガスナイフ4350の構成ならびに真空特性によって、最小化または制限され得る。吸引要素4370が上側表面4044から遠過ぎる/これを越えている(または縁部4147から離れている)場合、液体捕捉が影響を与えられる可能性があり、いくつかの実施形態では、液体捕捉が、より高い残留体積および過剰な濡れの可能性をもたらす場合がある。したがって、吸引要素4370の端部位置は、残留体積および/または過剰な濡れの間、所望の液体除去を達成するように選択され得る。
スライド4020の遠位端部4143における入口ポート4412と上側表面4044との間の間隙を最小化または制限するために、固定された公称の垂直方向(たとえばZ軸)の傾斜が、ガスナイフに支援された真空移動軸において設計され、これにより、吸引要素4370が、ラベル端部4366においてよりもスライド端部4143において上側表面4044に近くなるようにして、ヘッド組立体4018とスライド特徴部分およびトレイ特徴部分との間の干渉を防止しつつ、比較的小さい間隙を実現する。いくつかの実施形態では、端部4143における吸引要素4370の高さは、約2mm+1mm/−0.5mm以下とすることができる。
図64A〜図66Bの液体除去工程は、液体4340の体積のほとんどまたは実質的に全てを除去するために行われ得る。いくつかの実施形態では、液体除去デバイス4330は、上側表面4044上の液体の体積の少なくとも90%を除去し得る。他の実施形態では、吸引要素4370およびガスナイフ4350は、液体4340の少なくとも95体積%、98体積%、または99体積%を、上側表面4044から協働して除去するように構成される。加えてまたは別法として、液体除去工程は、目標最大残留物体積に基づいて制御され得る。いくつかの実施形態では、液体除去デバイス4330は、液体除去後の上側表面4044上の最大残留体積が最大残留体積未満となるように、液体4340の十分な体積を除去し得る。1つの処理において、上側表面4044上の液体4340の体積は、約0.5mLから約0.9mLの処理液とすることができ、液体除去デバイス4330は、上側表面4044上の液体4340の最大残留体積が約50μL以下となるように、液体の十分な体積を除去し得る。液体除去デバイス4330は、スライド4020上の液体の最大残留体積を、脱パラフィン液、調整液(たとえば架橋液)、洗浄液、および染色弁色試薬に関しては30μL、染色試薬(たとえばヘマトキシリン試薬)、対比染色試薬(たとえばエオシン試薬)、および染色定着試薬(たとえばブルーイング)に関しては20μL、ならびに続く処理との干渉を制限または防止するためには10μLなどの、許容できる体積以下に保つように、他の液体の体積も除去し得る。たとえば、調整液の最大残留体積は、続くカバースリップ装着との干渉を防止し、取り扱い易さを向上させ、記録保管可能性要件を満たし、かつ/または望ましくない煙霧の放出を制限するのに、十分に小さく保たれ得る。
いくつかの実施形態では、ガスナイフ4350および吸引要素4370は、存在する場合にスライド4020から落ちる液体の合計体積を最大落下体積以下に保ちつつ、スライド4020から液体4340を協働して引く。落下体積は、液体除去工程の開始前のスライド4020上の液体4340の合計体積の、体積で約5%、3%、または2%に等しいものとすることができる。したがって、ガスナイフ4350および吸引要素4370は、液体4340の独立した体積(すなわち、表面4044に沿って置かれ試料4034内に組み込まれていない液体4340)の少なくとも約95%、97%、または98%を、吸引要素4370内に協働して引き込むように構成され得る。
図67〜図70は、液体4340を除去し別の液体4652を分注する段階を示す。一般に、ヘッド組立体4018aは、試料4034から液体4340の体積の少なくとも一部分を移動させかつ/または除去して、試料4034を少なくとも部分的に露出させ得る。ヘッド組立体4018aは、露出された試料4034に接触する液体4652を分注し得る。この工程は、任意の数の液体を連続的に除去および分注するように繰り返され得る。図67は、ヘッド組立体4018aが試料4034を露出し始めた後の、試料担持スライド4020を示す。分注器機構4019のノズル4052またはノズル4054が、スライド4020の上方に位置付けられると、別の液体が分注され得る。ヘッド組立体4018aは、スライド4020に沿って移動して、試料4034をさらに露出し得る。図68は、試料4034のほとんどが露出された後の、試料担持スライド4030を示す。ノズル4052は、ガスカーテン4360の背後におかれたスライド4020のマウントエリア上に、液体4652を分注しており、ガスカーテン4360は、液体4340の体積と液体4652の体積との間の接触を防止するための障壁としての役割を果たす。ヘッド組立体4018aが移動して、スライド4020に沿って液体4652を連続してまたは間欠的に分注する際、液体除去デバイス4330は、スライド4020から液体4340を連続してまたは間欠的に除去し得る。図69は、試料4034に接触する液体4652、およびスライド4020の端部4143から液体4340を引く吸引要素4370を示す。ヘッド組立体4018aがスライド4020の端部4143を過ぎて移動し続ける際、分注器機構4019は、液体4652を送達して、スライド4020のマウントエリアの所望の長さを覆うことができる。図70は、スライド4020の端部4143の概ね上方に位置付けられたノズル4052を示す。上側表面4044のマウントエリアのほとんどまたは全てが、液体4340の体積によって覆われ得る。
図67〜図70の除去および分注工程は、染色試薬、対比染色試薬、および染色定着試薬の容積を、これらの試薬を連続して流れる洗浄液で置き換えることなく除去するために使用され得る。このことは、染色品質、対比染色品質、染色制御可能性、対比染色制御可能性、および/または試料処理の他の側面を改善し得る。たとえば、染色試薬、対比染色試薬、および染色定着試薬の容積が、連続して流れる洗浄液で置き換えられるとき、生じる試料の属性(たとえば染色強度、対比染色強度、染色色相、および/または対比染色色相)の変化は、小さいものであり得る。多くの場合僅かなものであるが、入れ替え期間中の属性の変化は、不精確および/または不規則である傾向を有し得る。したがって、入れ替え期間中の属性の変化を低減または排除することが望ましい場合がある。少なくともいくつかの場合には、染色試薬、対比染色試薬、および染色定着試薬の容積を気体を用いて除去し、次いでこれらの試薬の残りの体積を洗浄液の概ね固定的な体積を用いて除去することは、入れ替え期間中の属性の変化を低減または排除するものと期待される。
図71は、直線状の(たとえば一平面の)ガスナイフ4710および吸引要素4712を有する液体除去デバイス4700の等角図である。ガスナイフ4710は、ガスカーテン4720を発生させるように構成された、複数の離間された穴を有する。示される直線状のガスカーテン4720は、ガスカーテン4720がスライド4020の縁部4540を過ぎて延在するように、スライド4020の幅Wにわたって延在する。ガスナイフ4710は、スライド4020の中心線または中央長手軸4021と概ね平行な処理経路4729に沿って移動され得る。前進するガスカーテン4720は、液体4740の体積を、スライド4020の縁部4542に近接して位置付けられる低圧の収集区域4742(仮想線で示される)に向けて付勢する傾向を有し得る。吸引要素4712は、収集区域4742において液体(たとえばまとめた液体)を引き込むように位置付けられる入口ポート4752を有する、入口ノズル4750を有する。
図72は、吸引要素4712が液体4740を吸引する間にスライド4020に沿って液体4740を押す、液体除去デバイス4770を示す。液体除去デバイス4700がスライド4020の端部4143に向かって遠位方向に前進する際、液体4740は、矢印4770によって指示されるように、ガスカーテン4720に沿って流れる傾向を有する。したがって、液体4740は、長手縁部4540から離れるように移動され得る。液体4740が縁部4147に達する場合、表面張力が、液体4740をスライド4020の上側表面4044上に保つのを助け得る。
図73は、スライド4020の隅角4780に位置付けられた入口ポート4752を示す。液体4740は、縁部4147、4542の間で捕捉される。いくつかの実施形態では、入口ポート4752の高さは、液体4740の体積を拾い上げるのを助けるように、隅角4780に接近するにつれて、減少し得る。
本技術の液体除去デバイスは、広範な異なる種類の出口およびガスナイフを有し得る。図74は、本技術の実施形態による、非直線状の(たとえば多平面状または非平面状の)ガスナイフ4810および吸引要素4814を含む液体除去デバイス4800の底面図である。ガスナイフ4810は、V字形状とすることができ、気体が中を通って流れてガスカーテンを生成する、一連の細長いスロット4820を有する。他の実施形態では、ガスナイフ4810は、U字形状のガスナイフとすることができる。細長いスロット4820の寸法(たとえば、長さ、幅、等)は、所望のガスカーテンを実現するように選択され得る。液体除去デバイスは、V字形状構成、U字形状構成、直線状の構成を含め、様々な構成の任意の数のガスナイフを有し得る。図75は、本技術の実施形態による2つのガスナイフ4842、4844を有する液体除去デバイス4840の底面図である。吸引要素4852は、ガスナイフ4842、4844の間に置かれ、吸引要素4845は、ガスナイフ4844の頂点4846に近接している。動作時、前縁のガスナイフ4844および吸引要素4845は、顕微鏡スライド上の液体の体積のほとんどを、協働して除去し得る。液体の残留体積は、後縁のガスナイフ4842および吸引要素4852を使用して、その後除去され得る。
本明細書において開示される液体除去デバイスは、顕微鏡スライドから同時にまたは連続的に液体を除去できる、複数の吸引要素を含み得る。例として、複数の吸引要素は、ガスカーテンの側部間に位置付けられ得る。吸引要素の数、位置、および間隔は、ガスカーテンの構成に基づいて選択され得る。たとえば、2つの吸引要素が、W字形状のガスカーテンを生成するW字形状のガスナイフとともに使用され得る。他の数の吸引要素が、他の構成を有するガスナイフのために利用され得る。
図76は、本技術の実施形態による2つのガスナイフ4910、4912の等角図である。図77および図78は、2つのガスナイフ4910、4912の側面図である。ここで図76を参照すると、ガスナイフ4910、4912は、液体4916(たとえば、膜、液溜まり、等)の体積を保持するための収容間隙4914を画定するガスカーテン4920、4922を、それぞれ生成するように離間される。ガスナイフ4910、4912は一緒に移動して、スライド4020に沿って液体4916の体積を並進させ得る。たとえば、ガスナイフ4910、4912は、1つまたは複数の試料4930(図77および図78において1つが識別されている)にわたって液体の体積4916を並進させるために、前後に移動し得る。図77は、1つの試料4930を部分的に覆う液体4916の体積を示し、図78は、3つの試料4930を覆う液体4916の体積を示す。ガスナイフ4910、4912の間の距離Dは、間隙4914のサイズを増加または減少させるために、増加または減少され得る。
分注器装置の具体的な実施形態およびその特徴が、例示を目的として本明細書において記載されたが、様々な特徴が明瞭さのために記載されておらず、本開示から逸脱することなく多数の修正が成され得る。本技術の実施形態により構成されたヘッド組立体、液体除去デバイス、およびこれらの構成要素が、様々な真空系、加圧気体系、および染色機モジュールとともに使用され得る。たとえば、図71〜図73と関係して検討された液体除去デバイス4700、図74および図75と関係して検討された液体除去デバイス4800、4840ならびに図76〜図78と関係して検討されたガスナイフ4910、4912は、広範な異なる種類のヘッド組立体内に組み込まれ得、様々な種類の真空系/加圧気体系等と流体連通し得る。
染色機における熱管理の選択された例
自動化された組織学的染色システムにおいて処理温度の一貫性および制御可能性の向上を実現することは、いくつかの理由により、技術的に困難であり得る。第1に、典型的な組織学実験室内の温度は、暖房および空調機器の循環動作ならびに/または他の要因に起因して、通常は経時的に変動する。第2に、自動化された組織学的染色システムは多くの場合、局所的な加熱および/または冷却を一貫性なく引き起こす他の機器(たとえば、オートクレーブ、フード、等)の近くに置かれる。第3に、温度感受性は、自動化された組織学的染色システムの多様な構成要素の間で、および多様な自動化された組織学的染色システム内で行われる多様な工程の間で、大きく変動し得る。別の考慮事項として、従来の自動化された組織学的染色システムにおいて使用される処理液は、非常に揮発性が高くなる傾向があり、したがって高温で容認できないほど速い速度で蒸発し得る。蒸発は、問題の中でもとりわけ、温度依存性の処理中の試料の一貫性のない気化冷却、試料の尚早な乾燥および関連する乾燥アーチファクト、有害な臭気、爆発リスクの上昇と関連する傾向を有するので、一般に望ましくない。一貫性のない気化冷却はさらに、一定の相対湿度において湿球温度降下が乾球温度と比例して高まるので、低温においてよりも高温において比例的にさらに問題が高まる可能性がある。比較的低い温度における問題は、とりわけ、少なくともいくつかの染色反応に関する、十分でない(たとえば容認できないほど時間のかかる)反応速度を含む。
上述の関連する技術的課題および/または本発明で述べられていない他の技術的課題のうちのいくつかまたは全ての存在を前提とすると、自動化された組織学的染色システムにおける処理温度の一貫性および制御可能性を向上させるための戦略を選択することは、些末なことではない。本技術の特定の実施形態により構成されたシステムにおいて、この戦略は、システムの染色機の内部環境を加熱して、内部環境の基準(たとえば設定点、定常状態、および/または平均)温度が、周囲温度よりも大きい範囲内にあるようにすることを含む。下げられた温度ではなく高くされた温度で試料を処理することは、たとえば、このことにより、染色および/または他の温度依存性の試料処理反応の反応速度を過度に遅らせることなく、周囲の熱的変動性(すなわち周囲の熱的「ノイズ」)から処理を十分に区別し得るため、有利であり得る。高くされた温度で試料を処理することは、少なくともいくつかの試料処理反応の反応速度を実際に改善することができ、したがって、システムのスループットを高め得る。可能性のある別の利点として、染色機の内部環境を、周囲温度よりも大きい範囲内の基準温度に維持することは、冷却を伴わずに加熱を介して達成可能であり得る。冷却システムの複雑さ、容積、電力消費、および/または他の欠点を回避することは、大きな利益となり得る。試料が高くされた温度で処理される実施形態では、蒸発および処理液の適合性に関する他の課題は、たとえば、様々な(たとえばより揮発性の低い)処理液の選択によって対処され得る。本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された自動化された組織学的染色システムと併せて使用される、この処理液および他の態様の処理液のより詳細な検討は、以下で個別の小項目において提供される。
試料処理に好適な高くされた基準温度は、想定される周囲温度の上限値に、好適な緩衝液を加えたものとして選択され得る。ほとんどの組織学実験室環境内で維持される温度は、15℃から32℃までの範囲内に収まると想定される。これらの環境内で自動化された組織学的染色システムの近くに通常置かれる機器はほとんどの場合、システムの周囲の局所温度を0℃から4℃まで上げるものと想定される。好適な緩衝液は、たとえば、1℃から14℃であり得る。少なくともいくつかの場合には、自動化された組織学的染色システムの染色機内のもしくはその近くの、特定の構成要素(たとえば弁)の信頼性は、過度に低下し始める可能性があり、かつ/または、他の好ましくない結果は、43℃、45℃、50℃、もしくは別の好適な閾値を超える温度と関連している場合がある。これらのおよび/または他の考慮事項を念頭に置き、本技術の少なくともいくつかの実施形態による試料処理(たとえば染色)は、37℃から43℃までの範囲内の基準温度で実行される。特定の実施形態では、試料処理(たとえば染色)中の染色機内の内部環境の基準温度は、約40℃である。他の実施形態では、35℃から50℃までの範囲内の他の好適な基準温度など、他の好適な基準温度が使用され得る。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成されたシステム内の染色機は、様々な種類の加熱器によって内部に関して加熱される。たとえば、特定の実施形態により構成された染色機は、主として強制対流により染色機を内部に関して加熱する、1つまたは複数の加熱器、ならびに、主として自然対流および/または熱放射により染色機を内部に関して加熱する、1つまたは複数の加熱器を含む。これらの加熱器は、同時にまたは同時にではなく動作し得る。存在するとき、それぞれの異なる加熱様式によって主として加熱する加熱器は、互いを補完し得る。たとえば、強制対流加熱器は、染色機の内部環境の温度を所望の基準温度まで比較的短時間で上昇させるのに非常に適したものであり得るが、内部環境内で使用される処理液の望ましくない蒸発を促進する傾向も有し得る。対照的に、伝導により加熱され染色機の内部環境に主として自然対流および/または熱放射によって熱を伝達するかなりの質量を有する加熱器は、所望の基準温度に達するのに比較的時間がかかる場合があるが、内部環境内で使用される処理液の望ましくない蒸発を伴うことなく、経時的に基準温度を維持するのに非常に適したものであり得る。他の相乗作用も可能である。
図79は、本技術の実施形態により構成された染色機5000の等角図である。図80〜図82は、染色機5000の内部環境5002内の構成要素を示す断面図である。特に、図80は、図79の線80−80に沿って見た側面断面図である。図81および図82は、図80の線81−81および線82−82にそれぞれ沿って見た、平面断面図である。図79〜図82をまとめて参照すると、染色機5000は、内部環境5002を画定する染色機ハウジング5004を含み得る。示される実施形態では、染色機5000は、内部環境5002内に、中間高さにおいて水平方向に配設されたプレート5006を含む。プレート5006は、内部環境5002内の過渡的な温度の不均一の大きさおよび/または頻度を調整するのに十分な容積を有する、サーマルマスとして働き得る。たとえば、プレート5006は、1センチメートルよりも大きいなど、0.5センチメートルよりも大きい均一なまたは不均一な厚さを有し得る。さらに、プレート5006は、アルミニウムなどの熱伝導性材料で製作され得る。このことは、プレート5006と内部環境5002内の気体(たとえば空気)との間の熱伝達を迅速化することができ、このことはひいては、内部環境5002内の温度の不均一の平衡化を迅速化し得る。他の実施形態では、プレート5006は、別の好適な形態、位置、および/または組成を有するサーマルマスで置換または補足され得る。さらに他の実施形態では、染色機5000は、サーマルマスを有さなくてもよい。
プレート5006は、内部環境5002を、上側領域5002aおよび下側領域5002bへと、少なくとも部分的に区画化し得る。たとえば、プレート5006は、上側領域5002aと下側領域5002bとの間の平面状の仕切りの、少なくとも50面積%を占めることができる。別法として、内部環境5002は、区画化されないか、またはプレート5006以外の区画化構造によって区画化される場合もある。染色機5000は、スライドキャリア5009が通過して下側領域5002b内へと受容され得る、入口部5008を含み得る。入口部5008は、内部環境5002から離れるように傾くのではなく、内部環境5002内へと傾くことによって開くように構成された、ドア5010を含み得る。このことは、たとえば、ドア5010が開いているときに、入口部5008のすぐ外側の受け渡し位置への側方へのスライドキャリア5009の移動を、ドア5010が遮るのを防止するために、有用であり得る。入口部5008は、ドア5010が開いているかまたは閉じられているかを検出するように構成された、ドアセンサ5011も含み得る。たとえば、ドアセンサ5011は、開いた構成および閉じられた構成においてドア5010の存在をそれぞれ検出する、2つの別個のセンサを含み得る。ドアセンサ5011は、ドアセンサ5011からの情報を使用してスライドキャリア5009のロボット式の移動を管理できる制御装置(図示せず)に、動作可能に接続され得る。
内部環境5002の内側に入ると、スライドキャリア5009は、下側領域5002b内でプレート5006の1対の開口部5012の下方に支持され得る。染色機5000は、少なくとも主として上側領域5002a内に配設された、処理ヘッド5014(たとえばヘッド組立体)を含み得る。たとえば、処理ヘッド5014は、上側領域5002aから下側領域5002b内へと、開口部5012を通ってスライドキャリア5009に向かって、たとえば、2つの処理ヘッド5014が一方の開口部5012を通り、別の2つの処理ヘッド5014が他方の開口部5012を通って、または別の好適な配置構成で、延在し得る。別法として、処理ヘッド5014は、全体が上側領域5002a内に配設され得る。プレート5006は、スライドキャリア5009に向かって下向きに面する第1の主要表面5016、および上向きに面する第2の主要表面5018を有し得る。スライドキャリア5009上のスライド5020(1つが識別されている)によって担われる試料(図示せず)は、プレート5006の第1の主要表面5016の比較的近くに存在し得る。たとえば、個々のスライド5020は、上に試料が配設される主要表面を有することができ、スライド5020の主要表面は、プレート5006の第1の主要表面5016から、2センチメートル未満、3センチメートル未満、および/または5センチメートル未満とすることができる。この近傍にある状態においては、プレート5006の温度調整効果は、これが内部環境5002の他の部分にある場合よりも、強くなり得る。
染色機5000は、1つまたは複数の内部加熱器を含み得る。これらの加熱器は、主として強制対流、自然対流、熱放射、またはこれらの組み合わせにより、染色機5000を内部に関して加熱するように、個々に構成され得る。たとえば、染色機5000は、プレート5006に動作可能に結合された1つまたは複数の伝導加熱要素5022を含み得る。示される実施形態では、染色機5000は、プレート5006の第2の主要表面5018に沿ったプレート5006の側方に離間された部分に動作可能に結合された、4つの伝導加熱要素5022(伝導加熱要素5022a〜5022dとして個々に識別されている)を含む。他の実施形態では、染色機5000は、別の好適な数、種類、および/もしくは位置の伝導加熱要素5022を含み得るか、または伝導加熱要素5022を含まない場合がある。伝導加熱要素5022は、独立的に制御され得る。たとえば、染色機5000は、プレート5006の側方に離間されたそれぞれの部分と動作可能に関連付けられた温度センサ(図示せず)を含み得る。これらの温度センサは、それぞれの伝導加熱要素5022の動作を制御するそれぞれのフィードバック制御ループへの入力を提供し得る。加えてまたは別法として、染色機5000は、内部環境5002内の空気温度を測定するように構成された、温度センサ5023を含み得る。
染色機5000は、1つまたは複数の強制対流加熱器5024をさらに含み得る。示される実施形態では、染色機5000は、下側領域5002b内に配設された、2つの強制対流加熱器5024(強制対流加熱器5024aおよび5024bとして個々に識別されている)を含む。他の実施形態では、染色機5000は、別の好適な数、種類、および/もしくは位置の強制対流加熱器5024を含み得るか、または強制対流加熱器5024を含まない場合がある。個々の強制対流加熱器5024は、加熱要素(図示せず)、加熱要素に動作可能に(たとえば伝導的に)結合されたヒートシンク5026、およびヒートシンク5026の表面にわたって気体(たとえば空気)を推進するように構成されたファン5028を含み得る。ヒートシンク5026は、熱伝導性材料(たとえばアルミニウム)から製作され得、推進された気体への熱伝達を促進するための比較的大きい表面積を有する特徴を含み得る。たとえば、ヒートシンク5026はそれぞれ、上向きに延在する円筒形のアルミニウム製ひげ状部(whisker)5029(1つが識別されている)の配列を含み得る。ファン5028は、スライドキャリア5009から側方に離間され得、対角線方向上向きに気体を吹かせるように構成され得る。たとえば、ファン5028は、水平から30度から60度など、水平から20度から70度の角度の優勢な送出方向を有するように配向され得る。この配向を有することで、ファン5028は、スライドキャリア5009とプレート5006の第1の主要表面5016との間の間隙に向けて気体を吹かせる傾向を有し得る。少なくともいくつかの場合には、この間隙を通る気体の安定した移動は、間隙内の温度均一性を向上させ得る。
図83は、本技術の実施形態による染色機5000を動作させるための方法5100を示すフローチャートである。図79〜図83をまとめて参照すると、方法5100は、動作していない状態の染色機5000から始まり得る(ブロック5012)。この状態では、染色機5000は、電力をほとんどまたは全く消費しないことが可能である。動作していない状態から、染色機5000は、暖機運転され得る(ブロック5014)。染色機5000を暖機運転することは、内部環境5002内で好適な基準温度を達成するように、伝導加熱要素5022および/または強制対流加熱器5024を操作することを含み得る。少なくともいくつかの場合には、染色機5000は、内部環境5002内で処理されることになる試料が、乾燥オーブン(図示せず)内での処理などの染色機5000の使用を含まない処理を受ける間に、暖機運転される。このことは、染色機5000が、試料の処理を遅延させることなく暖機運転されるのを可能にし得る。染色機5000が暖機運転された後で、染色機5000を使用する試料の処理が依然として必要とされない場合は、染色機5000は、待機状態に維持され得る(ブロック5106)。待機状態にある間は、内部環境5002は、空でありながら、依然として周囲温度よりも大きい範囲内の基準温度に維持され得る。いくつかの実施形態では、染色機5000は、染色機5000を含むシステムが電力投入されかつ染色機5000が使用されていないとき、常にまたはほぼ常に待機状態に維持される。このことは、たとえば、染色機5000が、比較的低い消費電力割り当てを有しつつ、依然として許容できる時間期間内で要求に応じて試料を処理する用意のできた状態にあるのを可能にするために、有用であり得る。システムが複数の染色機5000を含むとき、および他の場合には、染色機5000が利用可能な消費電力割り当ては、200ワット以下など、比較的小さい。
染色機5000内で試料を処理することは、スライドキャリア5009が内部環境5002内に導入されるときに始まり得る(ブロック5108)。スライドキャリア5009を導入することは、入口部5008を開くこと、スライドキャリア5009を内部環境5002に向けその中へと移動させる(たとえばロボット式に移動させる)こと、および次いで入口部5008を閉じることを含み得る。内部環境5002の内側に入ると、試料は処理され得る(ブロック5110)。本技術の少なくともいくつかの実施形態による試料処理の説明が、図86を参照して以下で提供される。少なくともいくつかの場合には、試料が処理された後で、スライドキャリア5009は、ある時間の期間の間、染色機5000内に保持される(ブロック5112)。これは、たとえば、染色機5000から出た後でスライドキャリア5009が送達されることになる処理ステーションが、まだ利用可能でない場合であり得る。そのような処理ステーションが利用可能になるときに、または別の好適な時間に、スライドキャリア5009は、染色機5000から取り出され得る(ブロック5114)。スライドキャリア5009を取り出すことは、入口部5008を開くこと、スライドキャリア5009を内部環境5002から外に移動させる(たとえばロボット式に移動させる)こと、および次いで入口部5008を閉じることを含み得る。その後、方法5100は、染色機5000が機能停止されるべきかどうかを判定することを含み得る。機能停止されるべきではない場合、染色機5000は、追加の試料を処理するために必要とされるまで、待機状態へと戻され得る。
方法5100の全体または好適な一部分の間、染色機5000は、伝導加熱要素5022および/または強制対流加熱器5024によってなどで、内部に関して加熱され得る。このことは、内部環境5002内の平均温度を、周囲温度、たとえば染色機5000を含むシステムの主ハウジング(図示せず)内の、染色機ハウジング5004の外部の周囲の平均環境温度よりも、高くさせる。伝導加熱要素5022および/または強制対流加熱器5024の動作は、内部環境5002内の温度を管理するように制御され得る。たとえば、伝導加熱要素5022および/または強制対流加熱器5024は、2つのモードで、漸進的に、および/または1つもしくは複数のフィードバックループを使用する別の好適な様式で、動作され得る。フィードバックループへの入力は、(たとえば温度センサ5023からの)空気温度の測定値、(たとえばプレート5006に接続された1つもしくは複数の温度センサからの)固体物質温度の測定値、ならびに/または、伝導加熱要素5022および/もしくは強制対流加熱器5024の動作に対応する他の好適な動的特性の測定値を含み得る。
いくつかの実施形態では、伝導加熱要素5022および強制対流加熱器5024は、まとまって動作する。他の実施形態では、伝導加熱要素5022はまとまって動作し、強制対流加熱器5024は、伝導加熱要素5022から独立的に、まとまって動作する。さらに他の実施形態では、個々の伝導加熱要素5022のうちの1つもしくは複数が独立的に動作し、かつ/または、個々の強制対流加熱器5024のうちの1つもしくは複数が独立的に動作する。個々の伝導加熱要素5002および/または個々の強制対流加熱器5024のうちの少なくともいくつかの独立的な動作は、内部環境5002内の温度の不均一の調整を容易にし得る。たとえば、個々の伝導加熱要素5022は、プレート5006の側方に離間された異なる部分の間で検出された温度の不均一を少なくとも部分的に補償するために、非同期的に動作され得る。別法としてまたは加えて、個々の伝導加熱要素5022および個々の強制対流加熱器5024は、ある場合には独立的に動作し、他の場合にはまとまって動作し得る。たとえば、内部環境5002内の空気温度が設定された上方閾値を上回る場合、伝導加熱要素5022および強制対流加熱器5024は、染色機5000の過熱を防止するために、全て遮断される。測定される温度が別の閾値を超えて上昇し続ける場合、染色機5000への電力は遮断され得る。このことは、たとえば、内部環境5002内の試料を熱的に損傷するリスクを低減または排除するために、有用であり得る。
図84は、方法5100中の、時間(x軸)に対する内部環境5002内の平均温度(y軸)のプロット5200である。同様に、図85は、方法5100中の、時間(x軸)に対する内部環境5002内の平均空気流速度(y軸)のプロット5300である。説明を簡潔にするため、図84および図85において、平均温度の尺度、平均空気流速度の尺度、および時間の尺度は、任意である。図79〜図85をまとめて参照すると、染色機5000が動作していないとき、平均温度は、周囲温度と同じかまたはこれに近いものであり得る。この期間中、強制対流加熱器5024はオフ状態とすることができ、平均空気流速度を低くすることができる。対照的に、暖機運転期間中、強制対流加熱器5024は積極的に動作され得、平均空気流速度が高くなり得、平均温度が上昇し得る。平均温度が待機状態に対して好適な基準温度に達するとき、伝導加熱要素5022および強制対流加熱器5024の動作は、フィードバックに基づいて制御され得る。強制対流加熱器5024のデューティサイクルまた他の同様の動作パラメータは、染色機5000が暖機運転中であるときよりも、染色機5000が待機状態にあるときの方が、低くなり得る。したがって、図85に示されるように、染色機5000が待機状態にあるときの平均空気流速度は、染色機5000が暖機運転中であるときの平均空気流速度よりも、低くなり得る。
入口部5008を通した熱損失を低減するために、ドア5010が開かれスライドキャリア5009が内部環境5002内に導入される少し前に、内部環境5002内の気体の活発な循環が、一時停止または減速され得る。たとえば、強制対流加熱器5024は、オフにされ得るかまたは比較的低いレベルで動作され得る。このことは、内部環境5002内にスライドキャリア5009が完全に導入され、ドア5010が再び閉じられるまで継続し得る。図85に示されるように、スライドキャリア5009が導入されている間の平均空気流速度は、毎秒0.1メートル未満など、比較的低くなり得る。スライドキャリア5009の導入中に強制対流加熱器5024がオフであっても、自然対流、残留強制対流、および/または他の現象が、平均空気流速度を、染色機5000が動作していないときの平均空気流速度よりも大きくさせ得る。図84に示されるように、強制対流加熱器5024からの加熱の低減により、および入口部5008を通したいくらかの熱損失により、スライドキャリア5009が導入されている間、平均温度は低下し得る。その後、スライドキャリア5009が内部環境5002内にあり試料が処理されている間、平均温度は、約40℃、または上で検討された試料処理温度の範囲のうちの1つの内の別の好適な試料処理温度など、比較的高くなり得る。試料は、処理される間、内部環境5002と少なくとも実質的に熱平衡状態となり得る。たとえば、試料が処理されている間、試料同士の間の平均温度の差は、3℃未満(たとえば2℃未満)であり得る。試料が処理されている間の平均温度および平均空気流速度のより詳細な内訳が、図87および図88を参照して以下で提供される。
処理後に内部環境5002内に試料が保持されている間、内部環境5002内の気体の活発な循環は、一時停止または減速され得る。たとえば、強制対流加熱器5024は、オフにされ得るかまたは比較的低いレベルで動作され得る。このことは、たとえば、中に試料が浸漬される液体(たとえば調整液)の不必要な蒸発を低減するために、有用であり得る。内部環境5002からスライドキャリア5009が取り出されている間、強制対流加熱器5024は、入口部5008を通した熱損失を低減するために、オフのまま、または比較的低いレベルで動作したままとすることができる。図85に示されるように、試料が保持されている間およびスライドキャリア5009が取り出されている間の、平均空気流速度は、毎秒0.1メートル未満など、比較的低いものとすることができる。図84に示されるように、強制対流加熱器5024からの加熱の低減により、試料が保持されている間、平均温度は低下し得る。その後、入口部5008を通したいくらかの熱損失により、平均温度は低下し続け得る。スライドキャリア5009が取り出され入口部5008が閉じられた後、平均温度は、追加の試料を処理するために染色機5000が必要とされるかどうかに応じて、染色機5000が動作していないときの平均温度、または染色機5000が待機状態にあるときの平均温度に向かって進行する。
図86は、方法5100(図83)の試料処理部分に対応する試料処理方法5400を示すフローチャートである。方法5400は、試料を最初に脱パラフィンすること(ブロック5402)を含み得る。次に、試料は、試料の疎水性を低減すること、および/または他の方法で染色のために試料を化学的に準備することなどによって、1回目の調整が行われ得る(ブロック5404)。試料は次いで、第1の洗浄にかけられる(ブロック5406)。第1の洗浄後、試料は染色(たとえば非免疫組織化学的に染色)され得(ブロック5408)、次いで第2の洗浄(ブロック5410)にかけられ得る。いくつかの場合には、染色は次いで、弁色されおよび退行させられ(ブロック5412)、試料は次に第3の洗浄にかけられる(ブロック5414)。第3の洗浄後、または染色の弁色および退行が行われない場合は第2の洗浄の直後に、染色が定着され得、青色化または紫色化などによって、その色相が調節され得る(ブロック5416)。試料は次いで、第4の洗浄にかけられ得る(ブロック5418)。次に、試料は対比染色され得(ブロック5420)、次いで、対比染色を弁色または退行させる役割も果たし得る、第5の洗浄にかけられ得る(ブロック5422)。最後に、試料は、試料の疎水性を高めること、および/またはその他の方法でカバースリップ装着のために試料を化学的に準備することなどによって、2回目の調整が行われ得る(ブロック5424)。
図87は、方法5400中の、時間(x軸)に対する内部環境5002内の平均温度(y軸)のプロット5500である。同様に、図88は、方法5400中の、時間(x軸)に対する内部環境5002内の平均空気流速度(y軸)のプロット5600である。説明を簡潔にするため、図87および図88において、平均温度の尺度、平均空気流速度の尺度、および時間の尺度は、任意である。図79〜図88をまとめて参照すると、脱パラフィン、第1の移送、および第1の洗浄の間、強制対流加熱器5024は積極的に動作され得、平均空気流速度が比較的高くなり得、平均温度が安定して上昇し得る。第1の洗浄が完了する時間までに、平均温度および平均空気流速度は、それぞれの基準値で安定し得る。脱パラフィン、第1の移送、および第1の洗浄が方法5400に含まれない場合(たとえば、方法5400が「染色のみ」のレシピに基づくとき)、試料は、基準温度が達せられるまで保持され得る。
染色中、内部環境5002内の気体の活発な循環は、一時停止または減速され得る。たとえば、強制対流加熱器5024は、オフにされ得るかまたは比較的低いレベルで動作され得る。このことは、たとえば、比較的長いインキュベーション中に、中に試料が浸漬される染色液の不必要な蒸発を低減するために、有用であり得る。図88に示されるように、染色中の平均空気流速度は、毎秒0.1メートル未満など、比較的低いものとすることができる。図87に示されるように、強制対流加熱器5024からの加熱の低減により、平均温度は低下し得る。第2の洗浄中、平均空気流速度は比較的高くなり得、平均温度は上昇し得る。その後、平均空気流速度および平均温度は、第2の移送まで、それぞれの基準値で安定し得る。第2の移送の間、強制対流加熱器5024の動作は、試料が保持されている間、図84および図85を参照して上記された動作に向けて移行し得る。たとえば、第2の移送の間、強制対流加熱器5024は、オフにされ得るかまたは比較的低いレベルで動作され得る。
いくつかの実施形態では、方法5400の様々な部分の間の平均温度は、染色機5000を使用して処理される試料の属性に影響を与えるように、調節可能である。たとえば、染色の直前および/または染色中の平均温度は、結果的な染色の強度を制御するように選択され得る。同様に、対比染色の直前および/または対比染色中の平均温度は、結果的な染色の強度を制御するように選択され得る。別法としてまたは加えて、これらの平均温度は、染色された試料の色バランスを制御するように、互いと関連させて選択され得る。たとえば、染色の直前および/または染色中の平均温度は、対比染色の直前および/または対比染色中の平均温度と同じとなるまたは異なるように、選択され得る。他の実施形態では、方法5400の様々な部分の間の平均温度は、平均温度は、調節不可能とすることができる。
試料が処理される際のレシピは、1つまたは複数の温度成分を有し得る。たとえば、所与のレシピは、染色用の平均温度および対比染色用の平均温度を指定し得る。レシピに従って試料が処理されるとき、伝導加熱要素5022および強制対流加熱器5024の動作は、指定された温度を達成するように制御され得る。平均温度は、使用者による試料に関する所望の属性の指示に基づいて、自動的に計算され得る。たとえば、使用者は、試料の属性(たとえば染色強度のレベル)のリストから選択することができ、システムは、適切な温度を、単独でまたは選択された属性を達成するために必要な適切な時間と関連させて、計算することができる。属性は、たとえば、染色強度、染色色相、対比染色強度、対比染色色相、および/または染色の色バランスを含み得る。他の実施形態では、平均温度は、手作業で入力され得る。システム内で実行される他の好適な動作の場合のように、制御装置(図示せず)は、処理回路(同じく図示せず)を使用して、非一時的な形態でメモリ(同じく図示せず)に保存されたコンピュータ可読命令を実行し、染色機5000内の加熱および関係する動作を制御し得る。
試料処理液の選択された例
自動化された組織学的システムを使用する試料処理は、試料と一連の液体とを接触させることを含み得る。一連の液体は、たとえば、脱パラフィン液、調整液、染色試薬、染色弁色試薬、染色定着試薬、対比染色試薬、洗浄液、およびカバースリップ液を含み得る。図86を参照すると、脱パラフィン中、中に試料が包埋されるパラフィン組成物が少なくとも部分的に除去されて、さらなる処理のために試料を曝すことができる。少なくともいくつかの場合には、脱パラフィンすることは、試料をそれぞれ担うスライド上に脱パラフィン液を繰り返し(たとえば4回、5回、6回、7回、8回、または別の好適な繰り返しの回数)分注すること、分注された脱パラフィン液を中に試料が埋め込まれるパラフィン組成物と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、脱パラフィン液が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)パラフィン組成物の一部分を可溶化すること、および次いで分注された脱パラフィン液をパラフィン組成物の可溶化された部分とともに除去すること、を含む。分注された脱パラフィン液が試料と接触している時間は、たとえば、15秒から45秒までの範囲内の時間とすることができる。特定の例では、この時間は30秒である。従来の脱パラフィン液は、少なくとも典型的には、比較的高い毒性および揮発性ならびに比較的低い引火点を有する、キシレンを含む。キシレンの従来の代替物は、リモネンおよびピネンなどのモノテルペンを含む。モノテルペンはキシレンよりも毒性の低い傾向を有するが、モノテルペンの他の特性は、キシレンの特性と非常に似ている場合がある。たとえば、モノテルペンは、比較的高い揮発性および比較的低い引火点を有し得る。
高くされた基準温度で自動化された組織学的システムの染色機を動作させることは、キシレン、モノテルペン、および他の従来の脱パラフィン液の使用を、これらの脱パラフィン液の問題のある蒸発を悪化させることなどにより、不可能にするかまたは少なくとも困難にする可能性がある。しかしながら、高くされた基準温度は、周囲温度においてパラフィン組成物の相対的な貧溶媒となるであろう、脱パラフィン液などの、異なる脱パラフィン液の使用を、容易にする可能性もある。キシレンまたはモノテルペンの代わりに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、1つまたは複数の石油蒸留物のアルカンのなどの、1つまたは複数のアルカンを含む。キシレンおよびモノテルペンなどの従来の脱パラフィン液の場合よりも、これらの脱パラフィン液の毒性および揮発性は低くすることができ、これらの脱パラフィン液の引火点は高くすることができる。これらのおよび/または他の違いにより、本技術の実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、高くされた基準温度で動作する染色機において使用するのに比較的よく適している場合がある。
高くされた基準温度で動作する染色機において使用するのに比較的よく適していることに加えて、またはその代わりに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、キシレン、モノテルペン、および他の従来の脱パラフィン液が十分には適さない他の使用にも、非常に適している。例として、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、スライドの試料担持表面上に疎水性の障壁を形成するのに非常に適している。これらの疎水性の障壁は、脱パラフィンに続く試料処理中に、より疎水性の低い(たとえば親水性の)液体の望ましくない遊走を、少なくとも部分的に阻止し得る。スライドの試料担持表面のラベルの濡れを低減するために疎水性の障壁を形成することは、図36〜38を参照して上で検討される。疎水性の障壁に関する他の使用も可能である。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、50体積%よりも大きいC9〜C18アルカン濃度、たとえば50体積%よりも大きいC10〜C16アルカン濃度を有する。アルカン濃度は、単一のアルカンまたは複数のアルカンを含み得る。さらに、アルカンは、直鎖、分岐、環状、または別の好適な形態とすることができる。本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、10体積%から30体積%のC14〜C16アルカン濃度、および70体積%から90体積%のC9〜C15アルカン濃度を有する。たとえば、本技術の特定の実施形態により選択または調合される脱パラフィン液は、20体積%のC14〜C16アルカン石油蒸留物、および80体積%のC9〜C15アルカン石油蒸留物を含む。好適なC14〜C16アルカン石油蒸留物は、たとえば、Sasol Limited(南アフリカ、ヨハネスブルク)から入手可能なLinpar(登録商標)1416Vを含む。好適なC9〜C15アルカン石油蒸留物は、たとえば、Calumet Specialty Products Partners,L.P(インディアナ州、インディアナポリス)から入手可能なDrakesol(登録商標)165を含む。本技術の実施形態により選択または調合されたこれらのおよび他の脱パラフィン液の引火点は、80℃よりも大きく、たとえば100℃よりも大きくすることができる。
テルペンを完全に含まない代わりに、本技術のいくつかの実施形態により選択または調合された脱パラフィン液は、モノテルペン(たとえばリモネンもしくはピネン)、または別の好適なテルペンを、より揮発性の低い成分とともに含む。テルペンは、たとえば、パラフィンを溶解させるのに非常に適している場合があり、また、より揮発性の低い成分は、疎水性の障壁を形成するのに非常に適している場合がある。好適なより揮発性の低い成分の例は、植物油(たとえばピーナッツ油)などの脂質を含む。本技術の特定の実施形態により選択または調合される脱パラフィン液は、80%のリモネンおよび20%の植物油を含む。少なくともいくつかの場合には、これらの脱パラフィン液は、生分解性のものとすることができる。
脱パラフィン後、試料は、染色と適合しないであろう残留した疎水性を有し得る。脱パラフィン後の試料の第1の調整は、この疎水性を低減することを含み得る。少なくともいくつかの場合には、第1の調整は、スライド上に調整液を分注すること、分注された調整液を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、調整液が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)試料を全体的にまたは漸進的に調整すること、および次いで分注された調整液を除去すること、を含む。分注された調整液が試料と接触している時間は、たとえば、5秒から15秒までの範囲内の時間とすることができる。特定の例では、この時間は10秒である。調整液は、疎水性の脱パラフィン液および水の両方に溶解可能とすることができる。
脱パラフィン後かつ染色前に試料を調整するための従来の方法は、少なくとも典型的には、試料を無水エタノールと、次いで、エタノールの濃度が減少し水の濃度が増加する、段階付けられたエタノールと水との混合物と接触させることを含む。たとえば、従来の方法は、試料を、無水エタノール、次いで95%のエタノールと5%の水との混合物、および次いで90%のエタノールと10%の水との混合物と、接触させることを含み得る。無水エタノールとの最初の接触は、脱パラフィン液を置き換える役割を果たし得る。段階付けられたエタノールと水との混合物との続く接触は、水性溶液との接触のために試料を準備する役割を果たし得る。無水エタノールとの最初の接触がなければ、残留脱パラフィン液は、そのまま残る可能性が高い。段階付けられたエタノールと水との混合物との続く接触がない場合(すなわち、試料が、無水エタノールと接触させられた後で、水性溶液と直接接触させられる場合)、繊細な試料は損傷を受ける可能性が高いであろう。
脱パラフィンされた試料を従来の方法で調整するために、無水エタノールおよび段階付けられたエタノールと水との混合物を使用することは、いくつかの理由により問題がある。キシレンおよびモノテルペンなどのエタノールは、比較的低い引火点および比較的高い揮発性を有する。これらのおよび/または他の理由により、エタノールは、問題のある蒸発を悪化させる傾向がある、高くされた基準温度での使用には、あまり適していない場合がある。問題のあるエタノールの蒸発は、周囲温度においてすら生じ得る。さらに、無水エタノールは、空気から水分を容易に吸収する。この理由により、無水エタノールの保管および使用と関連付けられたプロトコルは、手間のかかるものとなる。さらに別の欠点として、無水エタノール用のおよび様々な段階付けられたエタノールと水との混合物の各々用の、別個の配管および/または他の別個の構成要素は、自動化された組織学的システムのコスト、複雑さ、および/または容積を、かなり増加させる。
無水エタノールおよび段階付けられたエタノールと水との混合物の代わりに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合される調整液は、1つまたは複数のプロピレン系グリコールエーテル(たとえば、プロピレングリコールエーテル、ジ(プロピレングリコール)エーテル、およびトリ(プロピレングリコール)エーテル)、エチレン系グリコールエーテル(たとえば、エチレングリコールエーテル、ジ(エチレングリコール)エーテル、およびトリ(エチレングリコール)エーテル)、ならびにこれらの機能的アナログなどの、1つまたは複数のグリコールエーテルを含む。これらの調整液の引火点および揮発性は、エタノールおよび段階付けられたエタノールと水との混合物などの従来の調整液のものよりも、それぞれより高くおよびより低くすることができる。これらのおよび/または他の違いに起因して、本技術の実施形態により選択または調合される調整液は、高くされた基準温度での使用に比較的よく適している場合がある。さらに、無水アルコールに対し、本技術の実施形態により選択または調合される調整液は、より長い保存可能期間を有することができ、また特別な保管および使用要件を、存在するとしてもほとんど有さない可能性がある。
少なくともいくつかの場合には、本技術の実施形態により選択または調合される調整液は、単一の調合物として使用されるように構成される。たとえば、これらの場合では、妨げられることなく、調整液の単一の調合物の1つまたは複数の体積と試料を接触させて、脱パラフィン液(たとえばC9〜C18アルカン)の残りの量を置き換え、次いで、試料と調整液の希釈された調合物との間の接触に介入することなく、試料を水性洗浄剤と接触させることが可能であり得る。これらの試料に対する損傷のリスクは、無視できる程度であり得るか、または少なくとも、試料が無水エタノールと接触させられた直後に同じ水性溶液と接触させられた場合に考えられるリスクよりも小さい。さらに、本技術の実施形態により選択または調合される調整液を使用する試料の調整に関与する動作の数は、従来の調整液を使用する場合よりも少なくすることができる。たとえば、本技術の少なくともいくつかの実施形態による方法における試料の調整は、試料をそれぞれ担うスライド上に調整液を3回以下で繰り返し分注すること、分注された調整液を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、試料を全体的にまたは漸進的に調整すること、および次いで分注された調整液を除去すること、を含む。本技術の特定の実施形態による試料処理方法は、2回のこのような反復を含む。対照的に、典型的な従来の試料処理方法は、5回以上の対応する反復を含む。本技術の少なくともいくつかの実施形態による試料処理方法における調整と関連付けられる、比較的少ない繰り返しの回数は、試料処理スループットを高め得、かつ/または他の利益を有し得る。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された調整液は、一価アルコールに関してまたは水に関してよりもポリオールに関して、より大きい体積濃度を有する。たとえば、調整液は非水性とすることができ、50体積%超のジ(プロピレングリコール)エーテルおよび/またはトリ(プロピレングリコール)エーテルなど、50体積%超のグリコールエーテルを含み得る。特定の実施形態により選択または調合された非水性の調整液は、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルおよびジ(プロピレングリコール)プロピルエーテルの混合物を、少なくとも実質的に排他的に含む。本技術の別の実施形態により選択または調合される非水性の調整液は、ジ(プロピレングリコール)プロピルエーテルを、少なくとも実質的に排他的に含む。好適なグリコールエーテルは、たとえば、Dow Chemical Company(ミシガン州、ミッドランド)から入手可能なDOWANOL製品を含む。本技術の実施形態により選択または調合されるこれらのおよび他の調整液は、80℃よりも高いなど、70℃よりも高い引火点を有し得る。
脱パラフィンおよび調整の後で、第1の洗浄は、スライド上に洗浄液を繰り返し(たとえば2回、3回、または別の好適な繰り返しの回数)分注すること、分注された洗浄液を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、洗浄液が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)試料を全体的にまたは漸進的に洗浄すること、および次いで分注された洗浄液を除去すること、を含み得る。分注された洗浄液が試料と接触している時間は、たとえば、5秒から15秒までの範囲内の時間とすることができる。本技術の特定の実施形態による試料処理方法では、この時間は10秒である。従来、洗浄液としては、純粋な脱イオン水が使用される。対照的に、本技術の実施形態により選択または調合された洗浄液は、脱イオン水を溶媒とともに含む。溶媒は、たとえば、プロピレングリコールなどのポリオールとすることができる。たとえば、洗浄液は、40体積%から60体積%までのプロピレングリコールなど、40体積%から60体積%までのポリオールを含み得る。以下でさらに検討されるように、洗浄液中の溶媒は、第1の洗浄後に試料に接触する他の液体中に含まれる溶媒と、同じとする、同じ化学分類内とする、またはその他の様式で機能的に類似とすることができる。洗浄液中に溶媒を含むことは、これらの他の液体に試料を接触させる目的で試料を調整するために、有用であり得る。以下で検討されるように、少なくともいくつかの場合には、洗浄に加えて対比染色の弁色および退行のために、洗浄液が使用される。これらの場合では、洗浄液中の溶媒濃度は、洗浄液の対比染色の弁色および退行の能力を促進すること、および他の試料処理液との適合性を高めることの両方をもたらすように、選択され得る。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された洗浄液は、スライドの試料担持表面にわたる洗浄液の展延を促進するための、界面活性剤を含む。界面活性剤は、第1の洗浄に続く試料処理工程に対して、悪影響をほとんどまたは全く有さないように選択され得る。たとえば、界面活性剤は、望ましくない緩衝を低減または防止するように、非イオン性とすることができる。少なくともいくつかの場合には、界面活性剤は、エトキシル化アルコールおよび/またはグリコールエーテルを含む。好適なエトキシル化アルコール界面活性剤は、たとえば、Air Products and Chemicals,Inc.(ペンシルベニア州、アレンタウン)から入手可能なTOMADOL(登録商標)900、およびStepan Companyから入手可能なMerpol SH(登録商標)(イリノイ州、ノースフィールド)を含む。好適なグリコールエーテル界面活性剤は、たとえば、Dow Chemical Company(ミシガン州、ミッドランド)から入手可能なTERGITOL(登録商標)NP−9 を含む。
第1の洗浄後、試料の染色は、スライド上に染色試薬を分注すること、分注された染色試薬を試料と好適な染色インキュベーション時間の間接触したままとさせて、(たとえば、染色試薬が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)試料を染色すること、および次いで分注された染色試薬を除去すること、を含み得る。染色インキュベーション時間は、たとえば、1分から20分までの範囲内とすることができる。本技術の特定の実施形態による試料処理方法では、この染色インキュベーション時間は2分である。染色試薬は、試料の細胞核以外の構成要素の許容できない染色または他の形態の許容できない非特定的な背景染色を引き起こすことなく、試料の細胞核構成要素を十分に染色するように選択または調合され得る。染色試薬は、ヘマトキシリン/ヘマテイン、媒染剤、および溶媒を含む非免疫組織化学的な染色試薬などの、非免疫組織化学的な染色試薬とすることができる。溶媒は、ヘマテインおよびヘマテイン−媒染剤錯体を溶液中に維持する役割を果たし得る。従来の染色試薬では、溶媒は多くの場合、エタノールである。調整液と併せて上で検討されたように、高くされた基準温度で動作するように構成された染色機を含む自動化された組織学的システムなどの、自動化された組織学的システムにおけるエタノールの使用は、問題がある可能性がある。さらに、染色インキュベーションは比較的長くなる傾向を有し、このことは、エタノールの急速に蒸発する傾向の潜在的な好ましくない効果を、悪化する可能性がある。
エタノールの代わりに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された染色試薬は、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの組み合わせなどの、ポリオールを含む。たとえば、染色試薬は、10体積%から40体積%までのポリオールなど、10体積%超のポリオールを含み得る。以下で検討されるように、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された染色試薬は、媒染剤に関して比較的低い濃度を含む。このことは、20体積%よりも大きい濃度など、溶媒に関して比較的高い濃度の使用を可能にする。平均的なまたは高い媒染剤濃度を有する従来の染色試薬では、溶媒のこれらの濃度は、媒染剤が十分に溶解するのを妨げる可能性がある。
ヘマトキシリン染色の強度および選択性に影響を与え得る変数は、染色試薬のpH、染色試薬中の媒染剤の濃度、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテインの濃度、および染色インキュベーション温度を含む。それぞれ独立して、染色試薬のpH、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテインの濃度、および染色インキュベーション温度は、染色強度が増加する割合に正比例する傾向を有し、一方、染色試薬中の媒染剤の濃度は、染色強度が増加する割合に反比例する傾向を有する。一般に、染色強度が高まる際の速度は、染色選択性に反比例する。したがって、染色試薬のpH、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテインの濃度、および染色インキュベーション温度は、それぞれ独立して、染色選択性に反比例する傾向を有し、一方、染色試薬中の媒染剤の濃度は、染色選択性に正比例する傾向を有する。同じ相関性が、染色試薬のpH、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテインの濃度、および染色試薬中の媒染剤の濃度の、保存可能期間に対する効果にも当てはまり得る。
染色強度が高まる際のより大きい速度、より大きい染色選択性、およびより長い保存可能期間は全て、望ましい特性である傾向を有する。たとえば、染色強度が高まる際のより大きい速度は、試料処理スループットを向上させることができ、より長い保存可能期間は、使用者の便利さを向上させることができ、より大きい染色選択性は、染色品質を向上させ得る。これらの特徴に影響を与える変数は、独立的に考慮され得るが、これらは実際には、高度に相関している場合がある。本技術の実施形態により選択または調合された染色試薬の属性は、染色速度、染色選択性、および保存可能期間のバランスを向上させるために、染色試薬がこれらの変数間の相互関係のうちの1つまたは複数を利用するのを可能にし得る。さらに、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された染色試薬は、時間および/または温度を介した細胞核染色の色相および/または強度の調節を容易にする特性を有する。これらの染色試薬は、本技術の実施形態により構成された自動化された組織学的システムにおける、温度制御された内部環境を有する少なくともいくつかの染色機における使用に、非常に適している場合がある。
ヘマトキシリン染色中、染色強度は、平衡状態が達成されるまで、安定的に高まり得る。平衡状態において、染色試薬から試料上へのヘマテイン−媒染剤錯体の堆積速度、および試料から染色試薬中へのヘマテイン−媒染剤錯体の遊離速度は、ほぼ等しくなり得る。平衡状態における染色強度は、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテイン濃度に大きく依存する傾向を有する。比較的低いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬は、比較的低い染色強度において平衡状態に達し得る。したがって、これらの染色試薬は、長い染色インキュベーション時間の後でさえ、暗色の染色を生成することができない場合がある。このことは、比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬を使用して明色の染色を生成するための短い染色インキュベーション時間は、制御が困難に過ぎる、という従来の仮定と結び付けられて、従来からの、ヘマトキシリン染色強度の全範囲を生成するために2つ以上の異なるヘマトキシリン/ヘマテイン染色試薬の調合物を使用することを動機付けてきた。たとえば、ヘマトキシリン染色強度の全範囲を生成するための染色試薬の従来の組は、少なくとも典型的には、比較的低いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬を使用しては生成され得ない暗色の染色を生成するための、比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する1つまたは複数の染色試薬、および、比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬を使用しては生成するのが困難に過ぎると見なされる明色の染色を生成するための、比較的低いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する1つまたは複数の染色試薬を含む。
本技術の実施形態により構成された自動化された組織学的システムおよびこれらのシステムとともに使用するために選択または調合される液体の組は、単一のヘマトキシリン染色試薬調合物を使用して、ヘマトキシリン染色強度の全範囲を確実に実現する能力を有し得る。たとえば、これらのシステムを用いて実現可能な染色インキュベーション時間に対する制御は、比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬を使用して明色の染色を確実に実現することを可能にし得る。したがって、本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された染色試薬は、5から6.5グラム毎リットルまでの範囲内、5.75から6.3グラム毎リットルまでの範囲内、または別の好適な範囲内のヘマトキシリン/ヘマテイン濃度など、比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有し得る。少なくともいくつかの場合には、染色試薬のヘマトキシリン/ヘマテイン濃度は、沈殿物の形成により保存可能期間を容認できないほど減少させることなく、可能な限り高くなるように選択される。染色試薬は、ヨウ素酸ナトリウム、またはヘマトキシリンのヘマテインへの熟化を化学的に加速させるための別の好適な酸化剤を、さらに含み得る。染色試薬中のヨウ素酸ナトリウムの濃度は、たとえば、10重量%未満とすることができる。
比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬の使用は、染色インキュベーション時間を有利に低減することができ、このことにより、試料処理スループットを高め得る。この利点が比較的低いpHを有する染色試薬に関してさえ存在し得ることが、期待される。したがって、染色速度を過度に犠牲にすることなく、比較的低いpHの、染色選択性に対する期待される利益を利用することが可能であり得る。比較的高いヘマトキシリン/ヘマテイン濃度を有する染色試薬および本技術の実施形態により選択または調合された他の染色試薬のpHは、たとえば、2.4から2.6までの範囲内、2.45から2.54までの範囲内、または別の好適な範囲内とすることができる。少なくともいくつかの場合には、pHは、試料中の脂質の酸加水分解に起因する損傷などの、試料の許容できない損傷の危険を冒すことなく、可能な限り低くなるように選択される。これらの染色試薬は、緩衝されていても緩衝されていなくてもよい。緩衝されるとき、染色試薬は、フタル酸、クロロ酢酸塩、硫酸塩、グリシン、およびアラニンなどの、好適な緩衝剤を含み得る。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された染色試薬は、温度に対する感度が向上している。本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された自動化された組織学的システムの、温度制御された染色機において使用されるとき、染色インキュベーション温度が、単独で、または染色強度を制御するために染色インキュベーション時間と関連させて、使用され得る。一般に、より高い温度は、染色速度の増加および染色選択性の減少を引き起こす場合があり、より低い温度は、染色速度の減少および染色選択性の増加を引き起こす場合がある。温度は、平衡状態における染色強度にも影響を与え得る。少なくともいくつかの場合には、本技術の実施形態により選択または調合された温度依存性の染色試薬は、比較的低い媒染剤濃度を有する。平衡状態におけるこれらの染色試薬を使用する染色強度は、平衡状態におけるより高い媒染剤濃度を有する染色試薬を使用する染色強度よりも、温度に対する感受性がはるかに高い。
比較的低い媒染剤濃度を有する染色試薬を使用する染色が、染色強度の全範囲を実現するために様々な染色インキュベーション温度で平衡状態にされることが、期待される。別法として、これらの染色試薬を使用する染色は、平衡状態に達する前に停止され得、温度および時間が一緒に使用されて、染色強度の全範囲内のいくつかまたは全ての強度を実現し得る。少なくともいくつかの場合には、染色インキュベーションの温度および時間は、容易に修正され得る。したがって、使用者は、単一の染色試薬を使用し、状況に応じて、染色選択性をある程度犠牲にして染色速度に有利となるように、または染色速度をある程度犠牲にして染色選択性に有利となるように、温度を選択することが可能であり得る。本技術の実施形態により選択または調合された温度依存性の染色試薬中の好適な媒染剤の濃度は、染色試薬中のヘマトキシリン/ヘマテインの濃度の150%未満(たとえば、125%未満または100%未満)とすることができる。媒染剤は、硫酸アルミニウム水和物などのアルミニウム塩とすることができる。様々な染色色相および/または選択性を実現するために、他の金属(たとえば、鉄、銅、バナジウム、モリブデン、タングステン、インジウム、ニッケル、亜鉛、バリウム、コバルト、およびマンガン)の塩が、アルミニウム塩の代わりに使用され得る。
本技術の実施形態により選択または調合された染色試薬は、溶媒、ヘマトキシリン/ヘマテイン、緩衝剤、および媒染剤に加えて、他の好適な成分を含み得る。たとえば、染色試薬は、1つまたは複数の酸化防止剤を含み得る。たとえば、沈殿物の形成を低減し、このことにより染色試薬の保存可能期間を延ばすために、酸化防止剤が有用であり得る。存在するときは、好適な酸化防止剤はとりわけ、没食子酸およびハイドロキノンなどの、フェノール系酸化防止剤を含む。別の例として、染色試薬は、ベータシクロデキストリンまたは他の好適なシクロデキストリンなどの、1つまたは複数の安定剤を含み得る。本技術の特定の実施形態により選択または調合される染色試薬は、747mLの脱イオン水、252.7mLのエチレングリコール、6.06グラムのヘマトキシリン、0.65グラムのヨウ素酸ナトリウム、26.67グラムの硫酸アルミニウム水和物、9.32グラムのハイドロキノン、および11.35グラムのベータシクロデキストリンを含む。
染色後、試料から残留染色試薬を除去するために、およびさらなる染色を止めるのに十分な程度に試料の液体含有物のpHを高めるために、第2の洗浄が使用され得る。第2の洗浄は、第1の洗浄に関して上で検討された同じ洗浄液およびプロトコルの使用を含み得る。第2洗浄後、試料のムチンおよび他の細胞核以外の部分から、染色を少なくとも部分的に除去するために、染色弁色が行われ得る。少なくともいくつかの場合には、試料の細胞核染色を明色化するための染色退行は、染色弁色と併せて行われる。染色の弁色および退行は、スライド上に染色弁色液を分注すること、分注された染色弁色液を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、染色弁色液が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)充分な染色の弁色および退行をもたらすこと、および次いで分注された染色弁色液を除去すること、を含み得る。分注された染色弁色液が試料と接触している時間は、たとえば、30秒から120秒までの範囲内の時間とすることができる。
染色弁色液は、酸性とすることができ、脱イオン水、酸(たとえば酢酸)、および溶媒を含み得る。洗浄液および染色試薬の場合のように、溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの組み合わせなどの、ポリオールとすることができる。たとえば、染色弁色液は、10体積%から40体積%までのポリオールなど、10体積%超のポリオールを含み得る。特に比較的長い染色弁色インキュベーションと併せた、少なくともいくつかの従来の染色弁色液の使用は、試料内の構造に、形態学的な損傷を引き起こす可能性がある。本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された染色弁色液における、ポリオール溶媒の使用は、この種類の形態学的の損傷に抵抗するようにこれらの構造を調整するのを助け得る。加えてまたは別法として、本技術の実施形態により構成された染色弁色液は、試料内の構造に形態学的な損傷を引き起こす可能性をさらに低減するために、比較的低い濃度の酸を含み得る。たとえば、これらの染色弁色液のpHは、2.7よりも大きいなど、2.5よりも大きくすることができる。本技術の特定の実施形態により選択または調合される染色弁色液は、約700mLの脱イオン水、4mLの氷酢酸、および250mLのプロピレングリコールを含む。染色弁色液のpHは、たとえば、2.9から3.1までの範囲内とすることができる。
少なくともいくつかの場合には、染色の弁色および退行のために使用されることに加えて、染色弁色液は、自動化された組織学的システムの構成要素内でのヘマトキシリン含有沈殿物の形成を除去および/または低減するために使用され得る。たとえば、これらの場合では、ヘマトキシリン含有沈殿物の形成を除去および/または低減するために、染色弁色液が、導管および染色試薬を通常担うシステムの他の構成要素を通して流し込まれ得る。染色弁色液を使用することに加えてまたはこれに代えて、本技術の実施形態により構成されたシステムは、この目的および/または他の目的のために、1つまたは複数の他の清浄化液を使用し得る。本技術の特定の実施形態により選択または調合される清浄化液は、約480mLの脱イオン水、500mLのプロピレングリコール、および16.67mLの6N塩酸を含む。本技術の別の実施形態により選択または調合される清浄化液は、450mLの脱イオン水、500mLのプロピレングリコール、59グラムのクエン酸三ナトリウム二水和物、および50mLの1N塩酸を含む。
染色の弁色および退行後、試料から残留染色弁色液を除去するために、第3の洗浄が使用され得る。第3の洗浄は、第1のおよび第2の洗浄の文脈において上で検討された、同じ洗浄液およびプロトコルの使用を含み得る。第3の洗浄後、染色定着および色相調節(たとえば青色化または紫色化)は、ヘマトキシリン−媒染剤−DNA錯体を安定させ染色色相を変える傾向を有する環境に、試料を曝すことを含み得る。染色の定着および色相調節は、スライド上に染色定着試薬を分注すること、分注された染色定着試薬を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、染色定着試薬が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)充分な染色定着および色相調節をもたらすこと、ならびに次いで分注された染色定着試薬を除去すること、を含み得る。分注された染色定着試薬が試料と接触している時間は、たとえば、約30秒とすることができる。染色定着試薬は、アルカリ性溶液(たとえば緩衝アルカリ性溶液)および溶媒を含み得る。洗浄液、染色試薬、および染色弁色液の場合のように、溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの組み合わせなどの、ポリオールとすることができる。たとえば、染色定着試薬は、10体積%から60体積%までのポリオールなど、10体積%超のポリオールを含み得る。本技術の特定の実施形態により選択または調合される染色定着試薬は、約700mLの脱イオン水、12.1グラムのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、28.4mLの塩酸、および250mLのプロピレングリコールを含む。
染色定着試薬のpHは、染色の色相を変えるように選択され得る。たとえば、より高いpHを有する染色定着試薬は、より低いpHを有する染色定着試薬よりも急速な青色への退行を引き起こし得る。したがって、試料が染色定着試薬に曝される設定された時間の期間を前提とすると、染色定着試薬が比較的高いpH(たとえば9を超える)を有する場合、結果的な染色は青色であり得、一方で、染色定着試薬が比較的低いpH(たとえば8未満)を有する場合、結果的な染色は紫色であり得る。さらに、染色定着試薬に試料が曝される時間の期間が比較的長く、染色定着試薬が比較的低いpH(たとえば8未満)を有するとき、青色化の相対的レベルなどの染色色相を変えるために、染色定着および色相調節の間の温度が使用され得る。染色強度を調節するために温度を変えるという文脈において上で検討されたように、温度は、試料処理中に使用される液体の特性(たとえばpH)よりも、調節するのに便利であり得る。したがって、温度を介して色相を制御する能力は、有用な特徴であり得る。所望の青色化のレベルなどの所望の色相を達成するために、pH調節と併せて温度調節も使用され得る。
染色定着および色相調節後、試料から残留染色定着試薬を除去するために、第4の洗浄が使用され得る。第4の洗浄は、第1、第2、および第3の洗浄の文脈において上で検討された、同じ洗浄液の使用を含み得る。少なくともいくつかの場合には、第4の洗浄は、第1、第2、および第3の洗浄よりも大きい数、たとえば2回の代わりに3回の、反復を含む。第4の洗浄後、試料の対比染色は、スライド上に対比染色試薬を分注すること、分注された対比染色試薬を試料と好適な対比染色インキュベーション時間の間接触したままとさせて、(たとえば、対比染色試薬が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)試料を対比染色すること、および次いで分注された対比染色試薬を除去すること、を含み得る。対比染色インキュベーション時間は、たとえば、30秒から5分までの範囲内の時間とすることができる。本技術の特定の実施形態による試料処理方法では、この対比染色インキュベーション時間は2分である。
対比染色試薬は、試料を十分に対比染色して、細胞質組織と結合組織との間の適正な弁色が可能になるように、選択または調合され得る。さらに、対比染色試薬は、所望の染色色相をもたらすpHを有するようになど、所望の染色色相を実現するように、さらに選択または調合され得る。本技術の実施形態により選択または調合される対比染色試薬は、脱イオン水、対比染色染料(たとえばエオシン)、および対比染色染料を溶解状態に維持するための溶媒を含み得る。洗浄液、染色試薬、染色弁色液、および染色定着試薬の場合のように、溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはこれらの組み合わせなどの、ポリオールとすることができる。たとえば、対比染色試薬は、30体積%から70体積%までのポリオール、場合によっては40%から60%までのポリオールなど、30体積%超のポリオールを含み得る。本技術の特定の実施形態により選択または調合される対比染色試薬は、約500mLの脱イオン水、750ミリグラムのエオシンY、1mLの氷酢酸、および500mLのプロピレングリコールを含む。対比染色試薬は、たとえば3.65から4.25までの範囲内のpHを有し得る。このpHは、従来のエオシン対比染色試薬のpHよりも低くすることができる。たとえば、エオシンYがプロピレングリコール中でエタノール中よりも低いpH値(たとえば4未満のpH値)で遊離酸へと変わるのを、防止することが可能であり得る。本技術の他の実施形態により選択または調合される対比染色試薬は、リットルあたり5.4グラムのエオシンYの濃度など、より高い濃度のエオシンを含み得る。これらの対比染色試薬は、たとえば、所望の対比染色強度を達成するために、退行に大きく依存し得る。
対比染色後、試料から残留対比染色試薬を除去するために、第5の洗浄が使用され得る。第5の洗浄は、対比染色を弁色し退行させるためにも使用され得る。対比染色がエオシン対比染色であるとき、対比染色弁色は、試料内の筋肉細胞または上皮細胞の赤血球、コラーゲン、および細胞質を、細胞質が最も明るい色調を有し、赤血球が最も暗い色調を有し、コラーゲンが中間の色調を有する、ピンクの3つの異なる色調に染色させ得る。従来の対比染色の弁色および退行は、少なくとも典型的には、試料の脱水と併せて実行される。たとえば、従来の対比染色の弁色および退行は、少なくとも典型的には、エタノールの濃度が大きくなり水の濃度が小さくなる段階付けられたエタノールと水との混合物と試料を接触させること、および次いで無水アルコールと試料を接触させることを含む。
第5の洗浄は、第1、第2、第3、および第4の洗浄の文脈において上で検討された、同じ洗浄液の使用を含み得る。いくつかの場合には、第5の洗浄の1つまたは複数の反復の継続時間は、対比染色の弁色および退行のレベルを制御するように調節可能である。たとえば、第5の染色は、試料が約20秒間洗浄液に曝される第1の反復を含み得、これに、試料が30から80秒までの範囲内の時間の期間の間洗浄液に曝される第2の反復が続く。本技術の特定の実施形態による試料処理方法では、試料が第2の反復中に洗浄液に曝される時間の期間は、50秒である。第1の反復は主として、試料から残留対比染色試薬を除去するために機能し得る。第2の反復は主として、対比染色の変動可能な弁色および退行を可能にするために機能し得る。エオシン染色は、対比染色の弁色および退行中の蒸発と関連付けられる不均等さに対して、比較的感受性が高い傾向を有する。したがって、少なくともいくつかの場合には、第5の洗浄中に試料が洗浄液に接触する合計時間は、100秒未満である。洗浄液の対比染色の弁色および退行の能力は、その調合に影響を与え得る。たとえば、洗浄液中の50%を大きく上回る水濃度は、試料の細胞質が試料の赤血球よりも暗色となるなどの、標準的でない対比染色弁色をもたらす傾向を有し得る。洗浄液中の50%を大きく下回る水濃度は、不十分なレベルの対比染色の弁色および退行を生成する傾向を有し得る。したがって、上記のように、洗浄液は、50%+/−3%などの約50%の水濃度を有し得る。
第5の洗浄後、試料は、カバースリップ装着と適合しないであろう残留した疎水性を有する場合がある。第5の洗浄後の試料の第2の調整は、この疎水性を低減することを含み得る。少なくともいくつかの場合には、第2の調整は、スライド上に調整液を分注すること、分注された調整液を試料と好適な時間の期間の間接触したままとさせて、(たとえば、調整液が少なくとも部分的に表面張力によって維持される形状を有する液溜まりの形態である間に)試料を全体的にまたは漸進的に調整すること、および次いで分注された調整液を除去すること、を含む。分注された調整液が試料と接触している時間は、たとえば、5秒から15秒までの範囲内の時間とすることができる。特定の例では、この時間は10秒である。調整液は、第1の調整中に使用される、同じ調整液とすることができる。少なくともいくつかの場合には、試料の疎水性/親水性を変えるのに非常に適していることに加えて、調整液は、第5の洗浄とカバースリップ装着との間の時間期間中に試料を保護するのに、非常に適している。たとえば、ジ(プロピレングリコール)エーテルおよびトリ(プロピレングリコール)エーテル(たとえばトリ(プロピレングリコール)ブチルエーテル)および本技術の実施形態により選択または調合される他の調整液は、この時間期間中の組織の潜在的に破壊的な乾燥を防止するのに、キシレンよりも優れている場合がある。したがって、これらの調整液の使用は、この時間期間の長さに対する制約を低減または排除し得る。このことは、たとえば、ロックステップ式の処理管理に対する時間制約を低減するために、および/または、試料に対して追加の操作が行われ得る時間窓を提供するために、有用であり得る。
上で検討されたように、カバースリップ装着のための従来の試料の調整は、少なくとも典型的には、段階付けられたエタノールと水との混合物および続いて無水エタノールを使用して、対比染色弁色と併せて実行される。その後、試料は少なくとも典型的には、対比染色弁色を停止するために、およびカバースリップ装着用接着剤との相互作用のために試料をさらに調整するために、キシレンと接触させられる。しかしながら、第1の調整の文脈において上で検討されたように、自動化された組織学的システムにおけるエタノールおよびキシレンの使用は、特にシステムが高くされた基準温度で動作するときに、問題がある可能性がある。ジ(プロピレングリコール)エーテルおよび本技術の実施形態により選択または調合される他の調整液は、エタノールの必要性を低減または排除し得る。少なくともいくつかの場合には、調整液は、カバースリップ装着のために試料を部分的に調整し、カバースリップ装着用接着剤との相互作用のために試料をさらに調整するために、カバースリップ液が、第2の調整中に、キシレンの代わりに調整液の後で使用される。カバースリップ液は、水と不混和であるように(たとえば記録保管された試料からの染料の浸出を低減または排除するように)、および妥当な継続時間(たとえば5分)の乾燥工程中に十分に硬化するに足る揮発性を有するように、選択または調合され得る。
カバースリップ液は、モノテルペン(たとえばリモネン)などの、テルペンを含み得る。本技術の特定の実施形態により選択または調合されるカバースリップ液は、500百万分率のブチルヒドロキシトルエンなどの好適な保存剤を有する、約100%のd−リモネンを含む。カバースリップ液におけるモノテルペンの使用は、調整液におけるモノテルペンの使用よりも、はるかに問題が少ない傾向がある。たとえば、ジ(プロピレングリコール)エーテル調整液の使用に続くカバースリップ装着のための試料の準備のために十分な、モノテルペンカバースリップ液の量は、第1の調整および第2の調整の最初の段階中に使用されるジ(プロピレングリコール)エーテル調整液の量よりも、はるかに小さい場合がある。少なくともいくつかの場合には、モノテルペンカバースリップ液の利用される量は、これがその使用後に目立った有毒煙霧をもたらすことなく完全に蒸発する程度に、十分小さい。これらの場合では、液体モノテルペン廃棄物が存在しない場合があるので、特別なプロトコルが存在するとしても、システム廃液中のモノテルペンの存在に起因するこれらの液体の修正および/または取り扱いのためには、特別なプロトコルの必要性もない場合がある。
本技術の実施形態により構成された自動化された組織学的システムでは、カバースリップ液は、染色機内で、試料が染色機から出た後でカバースリッパー内で、または別の好適な場所において、試料に付着され得る。カバースリップ液の使用は、最初にスライド上にカバースリップ液を分注すること、および次いで分注されたカバースリップ液を除去することを含み得る。たとえば、カバースリップ液は、スライドの縁部の近くに分注され、エアナイフを使用してスライドにわたって掃かれ得る。このことは、スライド上に残っているどのような残留調整液も除去する役割を果たし得る。その後、カバースリップ液は、1回、2回、3回、または別の好適な回数、スライドの中央近くに分注され得、カバースリップがスライドに付着される間、所定位置に残され得る。
上で検討されたように、本技術の実施形態により選択または調合される染色試薬および対比染色試薬は、染色染料および対比染色染料をそれぞれ溶解状態に維持するための、非エタノール溶媒を含み得る。これらの溶媒が共通である、たとえば、同じである、同じ化学分類内にある、またはその他の様式で機能的に類似であることは、有利であり得る。さらに、所与の染色試薬および対比染色試薬と併せて使用される1つまたは複数の他の液体が、その染色試薬およびその対比染色試薬の共通の溶媒と、同じである、同じ化学分類内にある、またはその他の様式で機能的に類似である溶媒を含むことは、有利であり得る。共通の溶媒のこの使用は、試料処理一貫性および品質を向上させるものと期待される。この利益は、たとえば、液体が共通の溶媒を有するときに、所与の液体が先に分注された液体の残りの量を置き換える際の効率および/または一貫性の向上と関連付けられ得る。他の補足的なまたは代替の利益および機構も、可能である。
本技術の少なくともいくつかの実施形態により選択または調合された液体の組においては、染色試薬、対比染色試薬、および洗浄液は、10体積%超のポリオールを個々に含む。本技術の実施形態により選択または調合された液体の、これらのおよび他の組のうちの少なくともいくつかにおいては、染色試薬、染色弁色液、染色定着試薬、対比染色試薬、および洗浄液のうちの全て、1つを除いて全て、または2つを除いて全ては、10体積%超のプロピレングリコールなどの10体積%超の同じポリオールなど、10体積%超のポリオールを含む。本技術の少なくともいくつかの実施形態による試料処理方法では、スライドが染色機内へと(たとえば染色機の温度制御された内部環境内へと)移動された後でスライドが染色機から出る前に、スライド上に分注される全ての液体の合計は、一価アルコールに関してよりもポリオールに関して、より大きい体積濃度を有する。少なくともいくつかの場合には、分注される総液体は、一価アルコールを少なくとも実質的に含まないか、または、3%未満の体積濃度の一価アルコールを少なくとも有する。さらに、分注される総液体は、キシレンを少なくとも実質的に含まない。
比較的少ない(たとえば1つの)調整液調合物の使用、洗浄および対比染色弁色の両方に対する同じ液体の使用、比較的少ない(たとえば1つの)染色試薬調合物を用いて染色強度の全範囲を実現する能力、ならびに/または他の要因に、少なくとも部分的に起因して、本技術の実施形態による試料処理方法は、従来の試料処理方法中に使用されると考えられるよりも少ない、様々な種類の液体の使用を含み得る。同様に、本技術の実施形態により選択または調合される液体の完全な組は、含み得る構成要素となる液体が、対応する機能性を有する従来の組よりも少ない。本技術の実施形態により選択または調合される液体の組に属する液体は、それぞれ、本技術の実施形態により構成された自動化された組織学的システムの、様々な対応する供給容器内に保持され得、またそこから引き込まれ得る。これらのシステムは、流体に関して自己完結型で、より少ない供給容器、配管用の導管、および/または対応する機能性の従来のシステムに含まれる液体取り回し構成要素で、動作可能とすることができる。潜在的な利益の中でもとりわけ、このことは、本技術の少なくともいくつかの実施形態により構成された自動化された組織学的システムの、コスト、複雑さ、および/または容積を低減し得る。
処理液の選択、選択された処理液が分注される順序、各処理液に関する分注および除去の繰り返しの回数、ならびに各繰り返しに関する液体対試料の接触の継続時間(たとえばインキュベーション時間)は、所定のレシピに基づくことができる。少なくともいくつかの場合には、所与の液体体積内に浸漬された試料は、(たとえば同じ処理工程の引続く反復において)同じ処理液の、または(たとえば新しい処理工程を始めるために)異なる処理液の、別の液体体積と接触させられる前に、少なくとも部分的に露出される。上で検討されたように、このことは、少なくともいくつかの試料処理工程の能力(たとえば精度)を向上させる。いくつかの場合には、これらの向上は、退行性染色の文脈におけるよりも、進行性染色の文脈においてより明白である。したがって、本技術の実施形態による少なくともいくつかの試料処理方法においては、染色の弁色および退行の必要性が、従来の試料処理方法においてよりも、低くなり得る。
本技術の実施形態による試料処理方法は、染色機内で、スライドによって担われる試料を少なくとも脱パラフィン、染色、染色定着、対比染色、および対比染色弁色するために、所定のレシピに従って、6つ以内の異なる調合物の液体をスライド上に自動的に分注することを含み得る。方法を実行するための液体の完全な組は、脱パラフィン液、調整液、染色試薬、染色定着試薬、対比染色試薬、および洗浄液を含み得る。同様に、本技術の実施形態による試料処理方法は、染色機内で、スライドによって担われる試料を少なくとも脱パラフィン、染色、染色弁色、対比染色、および対比染色弁色するために、所定のレシピに従って、7つ以内の異なる調合物の液体をスライド上に自動的に分注することを含み得る。これらの方法を実行するための液体の完全な組は、脱パラフィン液、調整液、染色試薬、染色弁色液、染色定着試薬、対比染色試薬、および洗浄液を含み得る。本技術の実施形態により選択または調合される液体のこれらのおよび他の含まれ得る他の液体の組は、たとえば、カバースリップ液および清浄化液を含む。少なくともいくつかの場合には、本技術の実施形態により選択または調合される液体の完全な組の全ての構成要素は、希釈せず使用されるように構成される。
支援システムの選択された例
図89は、本技術の実施形態による液体供給部6100の斜視図である。液体供給部6100は、1つまたは複数のポンプ6110、フィルタ6112(1つが識別されている)、および容器ベイ6120を含み得る。容器ベイ6120は、容器を保持するための、一連の容器スロット6122(1つが識別されている)を含み得る。処理液を保持する容器は、スロット6122内に設置され、染色機6に処理液をポンプ送給する様々なポンプ6110に接続され得る。図89は、スロット6122内に位置付けられた容器6130、および別のスロット6122内に挿入される用意のできた別の容器6132を示す。容器が空であるときは、液体供給部6100は、別の容器に自動的に切り替わることができ、いくつかの実施形態では、その空の容器がシステムの作業の流れを中断することなく新しい容器で置換され得るように、使用者に警告を発し得る。脱パラフィン液および洗浄液などの、大きな量で使用される処理液は、大型液体容器または複数の容器から供給され得る。液体供給部6100の流体に関する構成要素に容器を流体的に結合するために、広範な異なる継手が使用され得る。
容器6132は、適切な構成要素内に正しい液体がポンプ送給されることを保証するための、1つまたは複数の特徴部分を含み得る。ベイ6120は、各容器から処理液情報を取得するように位置付けられた1つまたは複数の読み取り装置を含むことができ、そのような処理液情報は、バーコード、磁気素子(たとえば磁気ストリップ)、またはRFIDタグの一部とすることができる。RFIDタグが容器6132上に含まれる場合、ベイ6120は、適正な液体が適切なベイ内に導入されていることを確認するために、RFIDタグを読み取ることができる。図2および図89を参照すると、制御装置18(図2)は、(1)利用可能な処理液に基づいて染色プロトコルを決定する、(2)処理液の使用を追跡して予定される容器交換を決定する、ならびに/または(3)これら以外で、利用可能な処理液の数および種類に少なくとも部分的に基づいて、システム2の構成要素に命令するための情報を、ベイ6120から受信し得る。
図90は、本技術の実施形態による容器6132の等角分解図である。容器6132は、ハット組立体6200および受容器6202を含み得る。ハット組立体6200は、アーム6210の弓形部材6220(1つが識別されている)が受容器6202の受容特徴部分6230(たとえば貫通孔、凹部、等)内に位置付けられるときに受容器6202上にしっかりと留まっているための、アーム6210を含み得る。アーム6210は、弓形部材6220を受容特徴部分6230内へとロックされた状態に保つように、内向きに付勢され得る。使用者は、アーム6210を、弓形部材6220が受容特徴部分6230から外に移動されるまで引き離すことができ、次いでハット組立体6200を受容器6202から離れるように移動させることができる。
図91は、容器6132の部分断面図である。ハット組立体6200および受容器6202は、嵌合可能な握り6300、6302をそれぞれ有し得る。組み立てられると、使用者は、握り6300、6302を便利に把持して、容器6132を手動で輸送し得る。必要であればまたは所望であれば、他の種類の握りの配置構成も使用され得る。ハット組立体6200は、受容器6202のチャンバ6252を通って下向きに延在する管路6250(たとえば管状部材)を含み得る。管路6250の端部6254は、チャンバ6252の底部6256に少なくとも近接して、またはチャンバ6252に関する任意の他の所望の場所に、位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、端部6254は、底部6256から閾値距離(たとえば1.3cm(0.5インチ))以内に位置付けられ得る。管路6250は、端部6254が、側壁6260に隣接して置かれ、デッドボリュームを制限するために使用されるチャンバ6252のもっとも深い領域に位置付けられるように、角度の付いた部位6261を有し得る。液体は、受容器6202によって最小の液体の体積が保持されるときでさえも、管路6250を通して引かれ得る。図91に示されるように、デッドボリュームがあればこれをさらに最小化するように、受容器6202の側壁6260に近接して、チャンバ6252の相対的に深い領域が位置付けられ得る。
本明細書において開示されるシステムは、バッグインボックス容器を含む他の種類の容器も使用することができ、このバッグインボックス容器は、限定するものではないが、折り畳み可能な袋体、これらの袋体に封入されたチューブ、蓋、および箱を含む。バッグインボックス容器の非例示的な実施形態が、米国特許第7,303,725号において開示されている。
図92は、1つの実施形態による廃棄物容器の等角図である。廃棄物容器7100は、チャンバ7111内の液体廃棄物の量を検知可能な、1つまたは複数のセンサ組立体7110を含み得る。廃棄物は、給送チューブ7113を通してチャンバ7111内へと送達され得る。センサ組立体7110は、センサ7115、およびセンサ7115が垂直方向に移動する際に沿う案内ロッド7120を含み得る。廃棄物容器7100は、複数の廃棄物容器(たとえば図2の廃棄物容器32、34)の一部とすることができるか、またはシステム2内の任意の他の場所にあることができる。
図93は、本技術の1つの実施形態によるセンサ7115の断面図である。センサ7115は、チャンバ7111内に保持される廃棄物の体積を検知するために浮動することができ、フロートセンサ7142および保護シールド7144を含み得る。保護シールド7144は、粒子(たとえば染色試薬からの粒子)が、センサチャンバ7145に入らないようにすることができる。センサ7142および保護シールド7144は、ロッド7120に沿って一緒に摺動することができ、この間、保護シールド7144は、物質(たとえばセンサ7142の動作に影響を与え得る粒子)がチャンバ7145に入るのを、防止または制限する。他のセンサの構成が利用され得る。
結論
本開示は、網羅的であるようには、または本明細書において開示される厳密な形態に本技術を限定するようには、意図されていない。具体的な実施形態が、例示を目的として本明細書において開示されるが、本技術から逸脱することなく、当業者が認識するであろうような、様々な等価な修正形態が可能である。いくつかの場合には、本技術の実施形態の説明を不必要に分かりにくくするのを回避するために、よく知られている構造および機能は、詳細には示されていないかまたは記載されていない。方法のステップが、本明細書において特定の順番で提示される場合があるが、代替の実施形態では、それらのステップは、別の好適な順番を有し得る。同様に、特定の実施形態の文脈において開示される本技術のある態様が、他の実施形態において組み合わされ得るかまたは排除され得る。さらに、ある実施形態と関連付けられる利点がそれらの実施形態の文脈において開示されている場合がある一方で、他の実施形態もまたそのような利点を呈する場合があり、そのような利点または本技術の範囲に属する本明細書において開示される他の利点を、全ての実施形態が必ずしも呈する必要がある訳ではない。たとえば、本技術のある実施形態により選択または調合された処理液は、一価アルコール(たとえばエタノール)および/またはキシレンを含まないが、本技術の他の実施形態により選択または調合された処理液は、一価アルコール(たとえばエタノール)および/またはキシレンを含む場合がある。本開示および関連技術は、本明細書には明示的には示されないかまたは記載されない、様々な実施形態を包含し得る。
本技術の特定の態様は、制御装置または他のデータプロセッサによって実行されるルーチンを含む、コンピュータ実行可能命令の形態をとり得る。少なくともいくつかの実施形態では、制御装置または他のデータプロセッサは、これらのコンピュータ実行可能命令のうちの1つまたは複数を実行するように、特定的にプログラムされ、構成され、かつ/または構築される。さらに、本技術のいくつかの態様は、磁気的にもしくは光学的に読み取り可能なかつ/または取り外し可能なコンピュータディスク、ならびにネットワークにわたって電子的に分散された媒体を含む、コンピュータ可読媒体上に保存または分散されるデータ(たとえば非一時的データ)の形態をとり得る。したがって、本技術の態様に特有のデータ構造およびデータの伝送は、本技術の範囲内に包含される。本技術は、特定のステップを行うようにコンピュータ可読媒体をプログラムする方法、およびこれらのステップを実行する方法の、両方も包含する。
本明細書において開示される方法は、本技術を実施する方法(たとえば、開示されるデバイスおよびシステムを製作および使用する方法)に加えて、本技術を実施するように他人に指示する方法を含み、包含する。たとえば、特定の実施形態による方法は、スライドキャリアが複数の顕微鏡スライドを保持する間、スライドキャリアを第1の位置に位置付けることと、スライドキャリアを加熱器装置によって画定される循環ループ内へと移動させるために、第1の位置から第2の位置へとスライドキャリアをロボット式に移動させることと、スライドキャリアが第2の位置にある間、スライドを伝導により加熱することと、を含む。別の実施形態による方法は、そのような方法を指示することを含む。
本開示全体を通して、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」といった単数に関する用語は、文脈がそうではないと明白に示さない限りは、複数の言及対象を含む。同様に、「または」という単語が、2つ以上の物品のリストを参照する場合に他の物品には含まれない単一の物品のみを意味するように、明示的に限定されない限りは、そのようなリストにおける「または」の使用は、(a)リスト中の任意の単一の物品、(b)リスト中の全ての物品、または(c)リスト中の物品の任意の組み合わせ、を含むように解釈されるものとする。加えて、「備えている」などの用語は、本開示全体を通して、任意のより大きい数の同じ特徴および/または1つもしくは複数の追加的な種類の特徴が除外されない形で、少なくとも挙げられた特徴を含むことを意味するように使用される。「上側の」、「下側の」、「前方の」、「背後の」、「垂直な」、および「水平な」などの、方向に関する用語は、本明細書において、様々な要素間の関係を表現し明確にするために使用される場合がある。そのような用語は絶対的な配向を示していないことが、理解されるべきである。本明細書における「1つの実施形態」、「実施形態」、または同様の表現への言及は、その実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造、動作、または特性が、本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書におけるそのような句または表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及している訳ではない。さらに、様々な特定の特徴、構造、動作、または特性が、1つまたは複数の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされ得る。