以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る直噴エンジンの制御装置が適用されたエンジンシステム100の概略構成図である。エンジンシステム100は、車両に搭載されて、エンジン本体1を有する。
エンジン本体1は、少なくともガソリンを含有する燃料が供給されるガソリンエンジンであり、4サイクルエンジン、すなわち、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順に実施されるエンジンである。エンジン本体1は、後述するように、インジェクタ(燃料噴射装置)15により燃料を気筒10(燃焼室11)内に直接噴射可能に構成された直噴エンジンである。また、エンジン本体1は、後述するように、圧縮自着火燃焼が実現されるエンジンである。
エンジン本体1は、気筒10が形成されたシリンダブロック12とシリンダヘッド13とを有する。本実施形態では、4つの気筒10がシリンダブロック12に直列に形成されている。各気筒10内には、コンロッドを介してクランクシャフトと連結されたピストン14が往復動可能に嵌挿されている。そして、各気筒10内には、気筒10の内側面とピストン14の冠面とシリンダヘッド13とによって囲まれた燃焼室11が形成されている。
以下、ピストン14の往復動方向を上下方向といい、シリンダブロック12に対してシリンダヘッド13が配置されている側を上側という。
本実施形態では、熱効率の向上や圧縮自着火燃焼の安定化等を目的として、エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、15以上の比較的高い値に設定されている。エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、これに限定されるものではないが、15以上20以下程度の範囲が好ましい。
ピストン14および燃焼室11は、図3に示すような構成を有する。ピストン14の冠面すなわち上面の径方向中央には、シリンダヘッド13および燃焼室11の天井から離間する方向すなわち下方に凹む凹状を有するキャビティ11aが形成されている。キャビティ11aは、その上端に、燃焼室11の天井向きすなわち上向きの開口部を有している。キャビティ11aの開口部の開口面積は、キャビティ11aの内部の各高さ位置での水平方向断面の面積の最大値よりも小さく設定されている。すなわち、キャビティ11aは、その開口部から所定深さまでの範囲において、上方に至るほど内径が狭くなるように上窄まり状になっている。
シリンダヘッド13には、気筒10毎に、燃焼室11内に燃料を直接噴射するインジェクタ15が取り付けられている。インジェクタ15は、図3に示すように、その噴口がキャビティ11aの径方向中央と対向するように、燃焼室11の天井面の径方向中央から燃焼室11内に臨むように配設されている。本実施形態では、インジェクタ15は、複数の噴口を有する多噴口型であり、インジェクタ15から噴射された燃料噴霧は、燃焼室11の径方向中央から下向き放射状に広がる。インジェクタ15は、燃料供給システム(不図示)により燃料タンク(不図示)から圧送された比較的高圧の燃料を燃焼室11内に噴射する。
シリンダヘッド13には、燃焼室11内の混合気に強制点火する点火プラグ16が気筒10毎に取り付けられている。各点火プラグ16は、その先端に設けられた電極部分がインジェクタ15の噴口近傍に位置するように配置されている。
シリンダヘッド13には、気筒10毎に、気筒10内に吸気を導入するための吸気ポート17および気筒10内から排気を排出するための排気ポート18がそれぞれ形成されている。吸気ポート17および排気ポート18には、これら各ポート17,18、詳細には、シリンダヘッド13に形成されたこれら各ポート17,18の開口をそれぞれ開閉する吸気弁21および排気弁22がそれぞれ配設されている。
排気弁22は、排気弁駆動機構(内部EGR手段)23によって駆動される。排気弁駆動機構23は、排気バルブリフト可変機構(以下、排気VVL(Variable Valve Lift)という)23aと、排気位相可変機構(以下、排気VVT(Variable Valve Timing)という)23bとを含む。
排気VVL23aは、排気弁22の作動モードを図4(a)に示す通常モードと、図4(b)に示す特殊モードとに切り替える。通常モードでは、排気弁22は主に排気行程中に開弁する(開弁開始から閉弁までの期間の大部分が排気行程と重なる)。排気弁22のバルブリフトは、開弁後徐々に増大していき、最大リフトに到達すると再び徐々に減少してゼロに至る。特殊モードでは、排気弁22のバルブリフトは、通常モードと同様に、第1の開弁期間t_1中は、開弁後徐々に増大し最大リフトに到達した後再び徐々に減少していくが、そのままゼロに至ることなく、そのリフト量すなわち第1の開弁期間t_1での最大リフトよりも低いリフトを第2の開弁期間t_2維持した後ゼロに至る。排気VVL23aは、これらのモードを実現するために、カム形状が互いに異なる第1カムと第2カムとを有する。第1カムは、図4(a)に示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を1つ有する。第2カムは、図4(b)に示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を2つ有する。排気VVL23aは、第1カムと第2カムの作動状態を選択的に排気弁22に伝達するロストモーション機構を含んでおり、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を通常モードとし、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を特殊モードとする。排気VVL23aは、例えば油圧作動式である。
排気VVT23bは、クランクシャフトに対する排気カムシャフトの回転位相を変更して排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。なお、排気VVT23bは、通常モードおよび特殊モードの各モードで、それぞれ排気弁22の開弁期間を一定に維持したまま、排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。排気VVT23bは、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての説明は省略する。
排気VVT23bは、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程でも開弁するように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。また、排気VVT23bは、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、第2の開弁期間t_2中に排気上死点(図4(b)のTDC)がくるように、すなわち排気上死点における排気弁22のバルブリフトが第2の開弁期間t_2中に実現される比較的小さい値となるように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。このように、本実施形態では、排気弁22の作動状態が特殊モードとされることで、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程中にも開弁する排気二度開きが実施される。特に、本実施形態では、排気弁22は、途中で閉弁することなく排気上死点を挟んで排気行程と吸気行程において連続して開弁する。ここで、このように排気弁22を排気上死点を挟んで連続して開弁させた場合には、排気弁22とピストン14とが干渉するおそれがある。これに対して、本実施形態では、前述のように、排気上死点付近での排気弁22のバルブリフト量が小さい値に抑えられるため、排気弁22とピストン14との干渉を回避することができる。排気二度開きすなわち特殊モードは、高温の既燃ガスすなわち内部EGRガスを燃焼室11内に残留させていわゆる内部EGRを行うために実施される。具体的には、排気二度開きが実施されて吸気行程中にも排気弁22が開弁していると、排気行程で一旦排気ポート18に排出された排気が吸気行程中に燃焼室11内に逆流して排気すなわち高温の既燃ガスが燃焼室11内に残留する。
そして、本実施形態では、排気二度開きが実施された状態で、排気VVT23bにより排気弁22の閉弁時期が変更されることで、燃焼室11内の全ガス量に占める内部EGRガス量の割合である内部EGR率が変更される。具体的には、排気VVT23bは、内部EGR率を低下したい場合には、排気弁22の閉弁時期を進角させて、吸気行程のより早い段階で排気弁22を閉弁させる。このように、本実施形態では、排気VVT23bによる排気弁22の閉弁時期の変更により内部EGR率が変更されるため、内部EGR率は早期に変更される。
吸気弁21は、吸気弁駆動機構24によって駆動される。吸気弁駆動機構24は、吸気弁21の吸気弁21の開弁期間を一定に維持したまま開弁時期と閉弁時期とを変更する吸気VVT(吸気閉弁時期変更手段)24bを含む。吸気VVT24bは、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての説明は省略する。また、吸気弁駆動機構24は、さらに、吸気弁21のバルブリフトを変更可能な吸気VVL24aを含んでも良い。
各吸気ポート17には、吸気通路30が接続されている。具体的には、吸気通路30の下流端には気筒10に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート17とが接続されている。
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31、スロットル弁32、サージタンク33が配設されている。
各排気ポート18には排気通路40が接続されている。具体的には、吸気通路30と同様に、排気通路40の上流端には気筒10に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート17とが接続されている。
排気通路40には、排ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置が配設されている。本実施形態では、上流側から順に直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42とが設けられている。直キャタリスト41及びアンダーフットキャタリスト42は、三元触媒を含んでいる。
吸気通路30と排気通路40との間には、排気の一部を吸気に還流するため、すなわち、外部EGRを行うためのEGR装置(外部EGR手段)50が設けられている。EGR装置50は、EGR通路51と、EGRクーラ52とを含む。EGR通路51は、吸気通路30のうちのサージタンク33とスロットル弁32との間の部分と、排気通路40のうちの直キャタリスト41よりも上流側の部分とを接続している。EGRクーラ52は、EGR通路51を通過するガスを冷却するためのものであり、EGR通路51に介設されている。本実施形態では、EGR通路51を通過するガスは、EGRクーラ52により必ず冷却される。EGR通路51には、このEGR通路51を通過する排気の流量を調整するEGR弁53が配設されている。以下、このEGR装置50を用いて排気の一部を吸気に還流することを、外部EGRを行うといい、このEGR装置50により吸気に還流された排気を外部EGRガスという場合がある。燃焼室11内の全ガス量に占める外部EGRガス量の割合である外部EGR率は、EGR弁53の開度が変更されることで変更される。
前記各装置は、パワートレイン・コントロール・モジュール(制御手段、以下、PCMという)60によって制御される。PCM60は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。
PCM60には、図1,2に示すように、各種のセンサSW1〜SW11の検出信号が入力される。
センサSW1は、新気の流量を検出するエアフローセンサSW1である。センサSW2は、新気の温度を検出する吸気温度センサである。エアフローセンサSW1、吸気温度センサSW2は、吸気通路30のうちエアクリーナ31の下流側に配設されている。センサSW3は、外部EGRガスの温度を検出するためのEGRガス温センサである。EGRガス温センサSW3は、EGR通路51のうち吸気通路30との接続部分近傍に配置されている。センサSW4は気筒10内に流入する直前の吸気の温度を検出する吸気ポート温度センサである。吸気ポート温度センサSW4は、吸気ポート17に取り付けられている。センサSW5は、排気温度を検出する排気温センサである。センサSW6は、排気圧を検出する排気圧センサである。排気温センサSW5、排気圧センサSW6は、排気通路40のうちEGR通路51の接続部分近傍に配置されている。センサSW7は、排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサである。リニアO2センサSW7は、排気通路40のうち直キャタリスト41の上流側に配置されている。センサSW8は、排気中の酸素濃度を検出するラムダO2センサである。ラムダO2センサSW8は、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42との間に配置されている。センサSW9は、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサである。センサSW10は、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサである。センサSW11は、車両のアクセルペダル(不図示)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサである。
PCM60は、各センサSW1〜11の検出信号に基づいて種々の演算を行う。PCM60は、これらの検出信号に基づいてエンジン本体1や車両の運転条件を判定する。PCM60は、運転条件に応じてインジェクタ15、点火プラグ16、燃料供給システム、吸気VVT24b、吸気VVL24a、排気VVT23b、排気VVL23a、各種の弁(スロットル弁32、EGR弁53)のアクチュエータへ制御信号を出力して、これらを制御する。このように、本実施形態では、PCM60が、エンジン回転数、エンジン負荷等からエンジンの運転状態を判定する判定手段として機能するとともに、インジェクタ15等を制御してインジェクタ15から噴射される噴射量、噴射タイミング、噴射パターンを変更し、排気VVT23bを制御して内部EGR率や混合気の空気過剰率を変更するとともに、吸気VVT24bを制御して吸気弁21の閉弁時期IVCを変更する燃焼制御手段として機能する。
PCM60による制御内容について次に説明する。
図5は、横軸がエンジンの回転数、縦軸がエンジン負荷の制御マップである。エンジン負荷が予め設定された燃焼切替用負荷T1以上となるSI(Spark Ignition)燃焼領域で圧縮自着火燃焼を実施すると燃焼騒音が問題となるため、本エンジンシステム100では、このSI燃焼領域では、点火プラグ16による点火を行って混合気を燃焼させる火花点火燃焼を実施する。一方、燃焼騒音が小さく抑えられるエンジン負荷が燃焼切替用負荷T1未満の領域に設定されたCI(Compression Ignition)燃焼領域(圧縮自着火燃焼領域)では点火プラグ16により点火を行わずに混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼を実施する。SI燃焼領域では、圧縮行程に燃料噴射が行われ、圧縮上死点付近で点火されることで、混合気は燃焼する。一方、CI燃焼領域では、吸気行程に燃料噴射が行われ、燃料と空気とが十分に混合された混合気が、圧縮上死点付近で自着火する。
エンジン負荷が予め設定されたストイキ切替用負荷T2以上となる高負荷領域(特定高負荷領域)では、燃焼により生じるNOx量を十分に小さく抑えることが困難になる。そのため、本エンジンシステム100では、ストイキ切替用負荷T2以上の領域では、混合気の空燃比を理論空燃比にする、すなわち、混合気の空気過剰率λをλ=1にする。一方、ストイキ切替用負荷T2未満の領域では、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーンにする、すなわち、混合気の空気過剰率λをλ>1にする。
本実施形態では、ストイキ切替用負荷T2は、燃焼切替用負荷T1よりも小さく設定されている。そのため、SI燃焼領域全域に加えて、CI燃焼領域のうち高負荷側の領域である第3CI燃焼領域CI_3において、混合気の空気過剰率λはλ=1とされる。
(1)CI燃焼領域でのEGR制御
CI燃焼領域において、安定した圧縮自着火燃焼を実現するためには、混合気の温度を自着火可能な温度にまで高める必要がある。そこで、CI燃焼領域では、内部EGRを実施して高温の既燃ガスである内部EGRガスを燃焼室11内に残留させ、これにより燃焼室11内および混合気の温度を高める。具体的には、CI燃焼領域では、その全域において、排気弁22の作動状態を特殊モードとして排気二度開きを実施する。
ただし、CI燃焼領域のうちエンジン負荷がEGR切替用負荷T3よりも高い高負荷側の運転領域では、混合気の温度は十分に高く内部EGRガスを過剰に導入すると熱発生が急激に生じるすなわち熱発生率の最大値が過大となり燃焼騒音が許容範囲を超えるおそれがある。そのため、本実施形態では、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3未満の第1CI燃焼領域CI_1では内部EGRのみを実施する。一方、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された領域では、内部EGRに加えて外部EGRを実施してEGRクーラ52で冷却された外部EGRガスを導入し、混合気の温度が過剰に上昇するのを抑制する。すなわち、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された領域では、排気弁22の作動状態を特殊モードとして排気二度開きを実施するとともにEGR弁53を開弁させる。
本実施形態では、EGR切替用負荷T3は、ストイキ切替用負荷T2よりも小さい値に設定されている。従って、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつストイキ切替用負荷T2未満に設定された第2CI領域CI_2では、内部EGRおよび外部EGRが実施されるとともに混合気の空気過剰率λがλ>1のリーンとされつつ圧縮自着火燃焼が実施される。そして、エンジン負荷がストイキ切替用負荷T2以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された第3CI領域CI_3では、内部EGRおよび外部EGRが実施されるとともに混合気の空気過剰率λがλ=1とされつつ圧縮自着火燃焼が実施される。
CI燃焼領域において、内部EGR率、外部EGRガス量の混合気中の割合である外部EGR率は、エンジン負荷に応じてそれぞれ適正な値に制御される。図5のエンジン回転数NE1におけるエンジン負荷に対するガス割合の変化を図6、図7に示す。図6は、横軸をエンジン負荷とし、縦軸を燃焼室11内に導入可能なガス量の最大量を100%として内部EGRガス、外部EGRガス、新気のそれぞれの割合を示したものである。一方、図7は、横軸をエンジン負荷とし、縦軸を燃焼室11内に導入されたトータルガス量すなわち内部EGRガス量と外部EGRガス量と新気量の合計量に対するこれらガスの割合を示したものである。ここで、内部EGR率、外部EGR率は、燃焼室11内に導入されたトータルガス量に対する各EGRガスの割合であり、図7に示される値である。
図6、7に示されるように、内部EGR率は、CI燃焼領域全域においてエンジン負荷が低くなるほど高くされる。エンジン負荷が低いほど混合気の温度も低くなりやすい。そのため、このように、エンジン負荷が低いほど高温の内部EGRガスの割合を増加させれば、混合気の温度を高めて着火性を良好に確保することができる。本実施形態では、内部EGR率は燃焼切替用負荷T1で0とされ、この負荷T1から特定の負荷T10までエンジン負荷の低下に対してほぼ一定の割合で増大される。そして、この特定の負荷T10よりエンジン負荷が低い領域では、内部EGR率は高い値で一定に維持される。
外部EGR率は、外部EGRが導入されつつ混合気の空燃比がリーンとされる第3CI領域CI_3では、エンジン負荷に対してほぼ一定に維持される。第3CI領域CI_3よりもエンジン負荷の低い第2CI領域CI_2では、外部EGR率は、0から第3CI領域CI_3の外部EGR率の値に向かってエンジン負荷の増大に対して一定の割合で増大される。
(2)SI燃焼領域でのEGR制御
SI燃焼領域では、排気弁22の作動状態は通常モードとされ、内部EGRは停止される。一方、SI燃焼領域では、全負荷を除き、他の領域において外部EGRが実施される。
図7に示すように、SI燃焼領域において、外部EGR率は、エンジン負荷が高い方が小さい値となるように設定されている。本実施形態では、エンジン負荷が特定の負荷T20よりも低い領域では、エンジン負荷に対して外部EGR率は一定に維持され、この負荷T20よりもエンジン負荷が高い領域では、エンジン負荷の増大に対して一定の割合で減少される。
ここで、前述のように、SI燃焼領域では、混合気の空気過剰率λはλ=1とされ混合気の空燃比は理論空燃比に設定されている。そのため、SI燃焼領域のうち特定の負荷T20より低く外部EGR率がエンジン負荷によらずほぼ一定に維持される領域では、図6に示すように、エンジン負荷の低下に応じて、トータルガス量を低下させて新気量を負荷に応じた適正な値にする。具体的には、スロットル弁32を絞ることで新気量およびトータルガス量を低下させる。
以上の制御は、各運転条件において定常運転がなされて燃焼室11の壁面温度が安定した状態において、燃焼状態およびエンジン性能が好適な状態となるように設計されたものである。そして、エンジン負荷が低いほど燃焼室11内での発熱量が低くなり、定常運転時ではエンジン負荷が低いほど燃焼室11の壁面温度は低くなる。そのため、エンジン負荷が低い側への減速時であって、減速先の運転条件が、内部EGR率の定常運転時の値が減速前よりも高い条件の場合において、前記定常運転時の制御をそのまま実施したのでは、燃焼室11の壁面温度が減速先の運転条件における定常運転時の温度にまで即座に低下しない等により、燃焼温度が過剰になり、燃焼騒音が増大するという問題がある。特に、減速先が、圧縮自着火燃焼が実施される圧縮自着火領域である場合には、燃焼騒音が許容範囲を超える可能性が高い。
ここで、前記燃焼温度および燃焼騒音の増大を抑制する方法としては、例えば、減速時に噴射量を単純に低下させるという方法が考えられる。しかしながら、この方法では、混合気の空燃比がリーンすなわち空気過剰率が1以上になってしまう。そのため、混合気の空燃比が理論空燃比またはリッチすなわち混合気の空気過剰率が1以下に設定された領域では、空燃比が適正な値からずれることに伴い適正なエンジン性能が得られなくなる。
このことから、本発明者らは、内部EGR率がより高い運転条件への減速時であって特に混合気の空気過剰率が1以下に設定された領域での減速について検討を行い、この場合において混合気の空気過剰率を適正な値としつつ燃焼騒音を抑制できる装置を発明した。
まず、前記問題点について図8を用いて説明する。
図8は、時刻t1において、定常運転時の内部EGR率が低く混合気の空気過剰率が1以下に設定された運転条件(第1運転条件)から定常運転時の内部EGR率が高く混合気の空気過剰率が1以下であって圧縮自着火燃焼が実施される運転条件(第2運転条件)へ移行する減速時に、定常運転時の制御をそのまま実施した場合、すなわち、運転条件の変化に応じて単純に制御を切り替えた場合の各パラメータの時間変化を示したものである。図8には、減速前の運転条件が、図5に示すSI領域の点X1であって、定常運転時の混合気の空気過剰率λがλ=1に設定されるとともに、内部EGR率が0、外部EGR率が0より大きい値に設定されて、火花点火燃焼が実施される運転条件であり、減速後の運転条件が、図5に示す第3CI領域CI_3の点X2であって、定常運転時の空気過剰率λがλ=1に設定されるとともに、外部EGR率が点X1での値よりも大きく、また、内部EGR率が0より大きい値に設定されて、圧縮自着火燃焼が実施される運転条件である場合を示した。図8には、上から順に、噴射量、噴射パルス、EGR率、燃焼室の壁面温度(燃焼室壁温)、着火前温度すなわち着火前の所定タイミングにおける燃焼室内の混合気の温度、燃焼温度(燃焼時の最高温度)、エンジントルクの変化を示している。なお、図8では、EGR率の変化として、内部EGR率の変化と外部EGR率の変化とを合わせて示している。なお、噴射パルスのグラフでは、縦軸がクランク角度であって斜線をひいた部分が噴射パルスを示している。すなわち、斜線をひいた部分の進角側の縁が噴射開始タイミングであり、遅角側の縁が噴射停止タイミングであり、この部分の縦方向の長さがパルス幅を表している。そのため、この縦方向のパルス幅が大きいほど噴射量が大きいことをあらわす。
図8において、時刻t1で減速されると、噴射量は減少され、内部EGR率は増大される。前述のように、本実施形態では、内部EGR率は、排気VVT23bによる排気弁22の閉弁タイミングの変更により早期に変更される。そのため、内部EGR率は、減速後即座に増大される。燃焼室11の壁面温度は、減速後ゆるやかにしか低下していかず、減速後しばらくの間、減速先の運転条件の定常状態における適正温度(定常時温度)よりも高い温度となる。このように、燃焼室11の壁面温度が適正温度よりも高いことから、減速後において、着火前温度は、減速先の運転条件の定常状態における適正温度(定常時温度)よりも高くなる。さらに、前述のように、内部EGR率が減速直後から増加して高温の内部EGRガスが導入されるために、着火前温度は、減速前の着火前温度よりも高くなる。ここで、減速前の運転条件はエンジン負荷が高く排気温度が高い条件である。そのため、内部EGR率の増加に伴い、この高温の内部EGRガスが多量に導入されることによって、着火前温度は特に高温となる。なお、図8に示す例では、外部EGR率は、EGR弁53の駆動遅れや排気の還流遅れに伴う、トータルのEGR率(燃焼室内の全ガス量に占める外部EGRガスと内部EGRガスとを合わせた排気の割合)の適正値からのずれを、内部EGRガスを増大させることによってカバーする場合について示しており、減速直後において内部EGRガスは適正値よりも多くなり、これによっても着火前温度は高温となる。
そして、このように着火前温度が減速先の定常時温度および減速前の温度よりも高い値にまで過昇温すること、また、燃焼室の壁面温度が高く燃焼室壁面への熱損失が少なくなることに伴い、燃焼温度も過昇温する。具体的には、減速後しばらくの間、燃焼温度は、減速先の定常時温度および減速前の温度、さらには、燃焼騒音が増大する燃焼騒音上の上限温度である燃焼騒音上限温度よりも高くなり、これにより、減速後しばらくの間、燃焼騒音が許容範囲を超えて増大してしまう。
また、着火前温度の過昇温に伴う着火遅れの短縮および熱損失の低下に伴い、エンジントルクも、減速先の定常運転時のトルクすなわち目標トルク以上のトルクとなる。そのため、適正な減速感を得られないという問題も生じる。
図9に、図8に示した例における、時刻t1(減速直後)での噴射パルスおよび熱発生率を示す。図9には、図8に示した例における熱発生率を実線で示すとともに、減速先の運転条件における定常時の熱発生率すなわち適正な熱発生率を合わせて破線で示す。図9に示すように、図8に示した例では、減速直後において、熱発生率は定常時に比べて非常に急激に立ち上がるとともに非常に高い値にまで上昇しており、着火前温度が高いことから吸気行程で噴射されて予混合された混合気が圧縮上死点近傍で激しく燃焼する。そして、図9に示されるように、図8に示した例の場合すなわち、定常運転時の制御をそのまま実施した場合には、熱発生率の最大値が非常に高くなり燃焼騒音が増大するとともに、熱発生量(熱発生率の積分量)が多くなり、かつ、熱発生率の重心が進角して、適正なトルクよりも高いエンジントルクが生成される。
前記の問題を解決するべく、本エンジンシステム100では、エンジン負荷が高く内部EGR率が低く設定されているとともに混合気の空気過剰率が1以下に設定されている運転条件から、エンジン負荷が低く内部EGR率が高く設定されているとともに混合気の空気過剰率が1以下に設定された運転条件へと移行する減速時には、減速先の運転条件に対応する本来の噴射量すなわち減速先の運転条件における定常運転時の噴射量(以下、単に定常時噴射量という場合がある)よりも少ない量の燃料を圧縮上死点よりも前で噴射する第1噴射と、この第1噴射の噴射量を定常時噴射量から引いた量すなわちこれらの差分以上の量の燃料を膨張行程の前半で噴射する第2噴射とを一時的に実施する。また、本実施形態では、内部EGR率の増加を遅らせる、すなわち、内部EGR率を減速先の運転条件に対応する本来の内部EGR率すなわち減速先の運転条件における定常運転時の内部EGR率(以下、単に定常時内部EGR率という場合がある)よりも一時的に低くするとともに、この内部EGR率の遅れ処理に合わせて第2噴射の噴射量を前記差分よりも多い量とする。さらに、本実施形態では、この燃料噴射制御および内部EGR率の遅れ制御を、減速後複数サイクルにわたって実施する。このとき、第1噴射の噴射量は、定常時噴射量に向かって、減速直後からの経過サイクル数が増加するにしたがって増大させていき、第2噴射の噴射量は、0に向かって、減速直後からの経過サイクル数が増加するに従って減少させていく。また、経過サイクル数が増加するに従って、第2噴射の噴射開始タイミングは遅角させていく。なお、第1噴射の噴射開始タイミングは、定常運転時と同じタイミングとする。
本実施形態では、第1噴射の定常時噴射量に対する噴射量の低減量は、エンジン回転数、エンジン負荷、燃焼室の壁面温度および着火前温度等に基づいて、燃焼騒音が発生しない量であって、混合気の空燃比がリッチすなわち空気過剰率が1以下となるように設定される。なお、燃焼室の壁面温度および着火前温度は、エンジン冷却水温、吸気温度、排気温度等の温度と、エンジン回転数、エンジン負荷等から推定すればよい。
また、本実施形態では、内部EGR率は、減速前の定常運転時の値から減速先の定常運転時の値に向かってサイクル毎に所定値ずつ増加させることで実現する。
以上の制御が実施された際の、噴射量、EGR率、燃焼室11の壁面温度(燃焼室壁面温度)、着火前温度の時間変化を図10に示す。図10は、図8に示した例と同じ減速条件での変化であり、図5に示すSI領域の点X1から第3CI領域CI_3の点X2への減速時に、前記制御を実施した際の変化である。図10には、対応する図8の各変化を破線で示している。
図10において、時刻t1での減速に伴い、第1噴射と第2噴射とが実施される。この例では、減速先は圧縮自着火領域であり、定常時には吸気行程での一括噴射が実施される。そのため、第1噴射は、この定常運転時と同様に吸気行程で噴射される。また、内部EGR率は、遅れ処理が実施されることで、時刻t1では、ほぼ減速前の値(この例では0)とされ、定常時内部EGR率よりも十分に低い値とされる。このとき、第1噴射の噴射量は、減速先の定常時噴射量よりも少なくされ、第2噴射量は、この減少量より多い量とされる。これに伴い、総噴射量は、定常運転時の総噴射量(定常時総噴射量)よりも多くなる。なお、本実施形態では、時刻t1において、第1噴射の噴射量は、第2噴射の噴射量よりも少なくされる。
このように、内部EGR率が定常時内部EGR率よりも低い値とされる一方、総噴射量が増大されることに伴い、時刻t1において、混合気の空気過剰率λは1に維持される。すなわち、内部EGR率が低くされることで新気量は増大するが、総噴射量が増大されているため、混合気の空気過剰率λは1に維持される。
そして、前記のように、内部EGR率の増加がほぼゼロに抑えられることで、時刻t1において、着火前温度は減速前の温度とほぼ同じ程度に抑えられる。これに伴い、圧縮上死点付近において第1噴射により噴射された燃料は緩やかに燃焼し、燃焼温度は、減速前および減速先の定常運転時の温度とほぼ同じ温度であって燃焼騒音上限温度よりも低い温度に抑えられる。そして、燃焼騒音が許容範囲内に抑えられる。また、前述のように、燃焼室11の壁面温度の追従遅れに伴い燃焼室壁面への熱損失は少なくなるが、吸気行程で噴射される第1噴射の噴射量が十分に少なくされていること、および、緩やかな燃焼が実現されることで、エンジントルクは十分に小さく抑えられ減速先の定常運転時のトルクにまで低下する。
図11に、図10に示した例における、時刻t1(減速直後)での噴射パルスおよび熱発生率を示す。この図11に示すように、減速直後において、熱発生は緩やかに生じている。
ここで、前述のように、時刻t1において、吸気行程での第1噴射に加えて膨張行程で第2噴射が実施されているが、第2噴射により噴射された燃料は圧縮上死点よりも十分に遅角側のタイミングで燃焼する。そのため、燃焼温度の最大値は圧縮上死点付近で燃焼する第1噴射により生じた燃焼により決定され、この第1噴射の噴射量が小さく抑えられていることで燃焼騒音を左右する燃焼温度は低く抑えられる。また、第2噴射により噴射された燃料により生じる燃焼エネルギであって圧縮上死点よりも十分に遅角側のタイミングで生成された燃焼エネルギが有効なエンジントルクに変換される量は少ないため、前記のように、第1噴射の噴射量が少なくされることで、エンジントルクは小さく抑えられる。
時刻t1後は、第1噴射の噴射量が噴射開始タイミング一定で徐々に増加され、第2噴射の噴射量が噴射終了タイミング一定で徐々に減少され、総噴射量が徐々に減少される。また、内部EGR率が徐々に増加される。このように、総噴射量の減少と内部EGR率の増加とが同時に行われるため、時刻t1後においても混合気の空気過剰率λは1に維持される。また、内部EGR率が徐々に増加され、第1噴射の噴射量が徐々に増加されるものの、時刻t1後しばらくの間は、内部EGR率は定常時内部EGR率よりも小さい値とされ、第1噴射の噴射量は定常時噴射量よりも少ない量とされる。そのため、時刻t1後においても、燃焼室11の壁面温度が定常運転時の温度よりも高いにも関わらず、着火前温度、燃焼温度は、図8での値および燃焼騒音上限温度よりも低く抑えられ、燃焼騒音およびエンジントルクは適正な範囲とされる。また、前サイクルでの燃焼温度が低く抑えられることで、燃焼室11の壁面温度の低下および内部EGRガスの温度の低下は促進され、これによっても、着火前温度および燃焼温度は低く抑えられる。
このようにして、燃焼騒音および過剰なエンジントルクの発生が回避されつつ運転条件が低負荷側に移行される。そして、時刻t2において、燃焼室11の壁面温度が定常運転時の温度とされるのとほぼ同時期に噴射パターンおよび噴射量は定常運転時のパターン(吸気行程での一括噴射)および定常時噴射量とされ、内部EGR率は定常時内部EGR率とされる。ここで、前記のように、本制御では、燃焼温度が低く抑えられることに伴い、燃焼室11の壁面温度の低下が促進されるため、燃焼室11の壁面温度は、図8に示した場合よりも早い時刻t2にて、適正な定常時温度に低下させることができ、より早期に定常運転時の適正な制御に移行することができる。
また、前述のように、サイクル数の増加に伴って、第1噴射の噴射量が増大され、第2噴射の噴射量が減少され、内部EGR率が増大されるため、噴射パターン等を定常運転時のパターン等に移行させるまでの間、トルク変動等が生じるのを抑制しつつスムーズに定常運転時の上体に移行させることができる。
以上のように、本実施形態に係るエンジンシステム100では、混合気の空気過剰率λが1以下に設定された領域内での減速であって、内部EGR率が低い運転条件から内部EGR率が高い運転条件へ移行する減速時において、燃焼温度の過昇温を抑制して燃焼騒音の増大を抑制することができる。また、エンジントルクをより早期に減速先の値にまで低下させることができ、高い運転操作性を得ることができる。
ここで、前記実施形態では、第1噴射と第2噴射とを実施する制御および内部EGR率を定常時内部EGR率よりも低い値として内部EGR率の増加を抑制する制御を複数サイクルにわたって実施した場合について説明したが、これらの制御を減速直後のみに実施してもよい。ただし、複数サイクルにわたって実施した方が、燃焼室11の壁面温度の追従遅れが長い場合等において、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
また、前記実施形態では、第1噴射と第2噴射とを実施する制御と、内部EGR率の増加を抑制する制御とを同時に行った場合について説明したが、内部EGR率の増加を抑制する制御を省略してもよい。この場合には、内部EGR率の増加が抑制されることに伴う新気量の増大が回避されるため、第2噴射の噴射量は第1噴射の噴射量と定常時噴射量との差分と同等に設定されればよい。ただし、これら制御を同時に行った方が、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
また、前記実施形態では、SI燃焼領域からの減速時について説明したが、減速前の運転条件はこれに限らない。また、減速先もCI燃焼領域に限らない。ただし、CI燃焼領域では、燃焼室11の壁面温度の上昇に伴って燃焼騒音が許容範囲を超えやすいため、CI燃焼領域への減速時に適用されれば、効果的に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
また、前記例では、減速前後において混合気の空気過剰率λが1に設定されている場合について説明したが、減速前後において、あるいは、減速後において混合気の空気過剰率λは1未満に設定されていてもよい。この場合であっても、第2噴射量を増大させることで空気過剰率λを1未満にしつつ、エンジントルクおよび燃焼騒音を適正な範囲にすることができる。
また、前記減速時、すなわち、混合気の空気過剰率λが1以下に設定された領域内での減速であって、内部EGR率が低い運転条件から内部EGR率が高い運転条件へ移行する減速時において、吸気VVT23bにより、吸気弁21の閉弁時期IVCを減速先の運転条件に対応する本来の時期すなわち減速先の運転条件の定常運転時の時期よりも、新気量が減少するように一時的に進角、あるいは遅角してもよい。
このように吸気弁21の閉弁時期IVCを一時的に進角あるいは遅角させて新気量を減少させれば、混合気の空気過剰率λをより確実に1以下に抑えることができる。また、新気量が少なく抑えられれば、空気過剰率λを1以下に抑えつつ、燃焼室11内への噴射量を少なくして燃費性能を高めることができる。例えば、第2噴射の噴射量を吸気弁21の閉弁時期IVCを本来の時期に維持した場合よりも少なくできる。
さらに、このように混合気の空気過剰率λが1以下に設定された領域内での減速であって、内部EGR率が低い運転条件から内部EGR率が高い運転条件へ移行する減速時において、吸気VVT23bにより、吸気弁21の閉弁時期IVCを減速先の運転条件の定常運転時の時期(以下、定常時時期という場合がある)よりも進角あるいは遅角させて新気量を減少させる場合には、第2噴射を停止させてもよい。
例えば、図12に示すように、減速時において、吸気弁21の閉弁時期IVCを一時的に定常時時期よりも進角させ、第1噴射の噴射量を定常時噴射量よりも少なくし、かつ、内部EGR率の遅れ処理する一方、第2噴射を停止させてもよい。このようにしても、第1噴射の噴射量が少なくされることおよび内部EGR率の遅れ処理によって、前記実施形態と同様に、燃焼騒音の増大を抑制することができる。そして、吸気弁21の閉弁時期IVCの進角に伴う新気量の減少により、混合気の空気過剰率λを1以下に抑えることができる。
また、図12のように、時刻t1(減速直後)において、吸気弁21の閉弁時期IVCを定常時時期よりも進角側にするとともに、時刻t1後しばらくの間、定常時時期に向かって徐々に遅角させていけば、定常時時期への以降までの間トルクショック等が生じるのを回避することができるとともに、より円滑に定常時時期に移行することができる。
なお、図12において、吸気弁21の閉弁時期IVCを定常時時期よりも遅角させることで新気量を減少させるようにしてもよい。
また、時刻t1(減速直後)においてのみ、吸気弁21の閉弁時期IVCの進角あるいは遅角制御を実施してもよい。
また、吸気弁21の閉弁時期IVCの進角制御と内部EGR率の遅れ処理とを併用せず、吸気弁21の閉弁時期IVCの進角あるいは遅角と噴射量の減量制御とのみを実施してもよい。
1 エンジン(エンジン本体)
10 気筒
11 燃焼室
15 インジェクタ(燃料噴射装置)
23 排気弁駆動機構(内部EGR手段)
60 PCM(燃焼制御手段)