以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
この明細書において「粘着剤」とは、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E*(1Hz)<107dyne/cm2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50質量%以上を占める成分)をいう。
<粘着シートの適用対象>
ここに開示される粘着シートは、試料を分析するための試験片(試料分析用試験片)に用いられる。この明細書において「試験片」とは、試料を分析するために用いられる物(テストストリップともいう。)として定義される。例えば、試料をサンプリング(典型的には、収集および/または保持)する機能を有する物であり得る。ここに開示される試験片は、典型的には、分析機能を有する各種試料測定機器にセットされ得る部材(測定機器とともに用いられる部材)であり、それによって試料の分析が行われる。試験片は好適には、試料を分析する機能(例えば、化学反応を利用する等して試料からの情報(例えば成分濃度)を検出可能な状態にする機能)を有するセンサであり得る。ここで、分析対象となる試料は特に限定されず、例えば、全血、血漿、血清、唾液、尿、髄液等の生体試料が挙げられる。また試料は、各種食品類や飲料水、排水、雨水等であってもよい。試料の形態は特に限定されないが、常温で液状を呈する試料が好ましい。また、分析目的も特に限定されず、例えば、血液中のグルコース濃度など試料中の特定成分の濃度測定等であり得る。試料が血液試料の場合、分析対象物としては、上記グルコースのほか、アルブミンや乳酸、ビリルビン、コレステロール等の成分が挙げられる。ここに開示される技術における粘着シートは、生体試料(好ましくは血液試料)を分析するための試験片(以下、バイオセンサともいう。)に好ましく用いられる。
試験片を用いての試料分析は、例えば、試料を保持した試験片を試料測定機器にセットすることによって行われ得る。そのような試料測定機器は、例えば、医療や健康増進を目的とする携行可能な小サイズの測定機器(例えば生体試料測定機器)であり得る。ここに開示される試験片(例えば医療用試験片)は、上記のような生体試料測定機器に着脱自在に接続される構造(形状、サイズ等)を有するものであり得る。そのような試験片は、典型的には使い捨ての試験片(典型的にはストリップまたはチップともいう。)であり得る。上記試験片の使用態様の一例としては、複数の試験片が収容されたケースと上記測定機器とを携行し、適当なタイミングで試料分析を行い、使用済みの試験片を廃棄するような使用態様が挙げられる。以下、図面を参照して、ここに開示される粘着シートの好適な適用対象として、血中グルコース濃度測定用の試験片(バイオセンサ)について説明するが、ここに開示される技術はこれに限定されるものではない。
図1,2に示すように、試験片30は、基板40と、被覆層50と、基板40および被覆層50の間に配置された粘着シート1と、を備える。その形状は、長尺平板状と表現することができる。この実施形態では、基板40は樹脂製の基板であり、樹脂板42と樹脂板42の上に設けられた絶縁層44とから構成されている。基板は、後述の電極を形成する面が絶縁性を有する材料で構成されていればよく、全体が絶縁材料からなるものであってもよい。基板を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、フッ素樹脂等の有機材料(典型的には樹脂)、ガラス等の無機材料が例示される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
基板40の表面には、帯状の電極46a,46b,46cが所定の間隔を有するように縞状に配置されており、これによって基板40の表面に電極パターンが形成されている。これら電極46a,46b,46cは、分析対象物と試薬との反応によって生じる電流を検出するためのものである。電極の材質は導電性材料であればよく、例えばカーボン電極が好ましく用いられる。上記のように、基板40の表面には電極パターンが形成されているため、基板40の表面は凹凸を有している。この実施形態では、電極46a,46b,46cの各々の高さは凡そ10〜20μm程度であり、幅は凡そ0.5〜1.0mmの範囲内であり、各電極の間隔は凡そ0.2〜2mmの範囲内である。
粘着シート1は、両面に粘着面を有する両面粘着シートの形態を有しており、基板40と被覆層50とを接合するとともに、基板40と被覆層50との間のスペーサとしても機能する。粘着シート1にはまた、試験片30の長手方向の一端にコ字状の切欠きが設けられている。この切欠きによって形成された空間(換言すると、上記切欠きの周囲に位置する粘着シート1と、その上下を覆う基板40および被覆層50と、によって囲まれた空間)は、試験片30の長手方向の一端に開口(試料導入口)62を有するキャピラリ部60として機能する。このキャピラリ部60内において、開口62から導入された血液試料は保持される。なお、この実施形態ではキャピラリ部60の幅(切欠きの幅でもあり得る。)は凡そ1mm程度であり、キャピラリ部60の奥行きは凡そ5mm程度である。また、粘着シート1の基材15は白色に着色されている。
被覆層50の材質は特に限定されず、基板40に用いられ得る材料として例示したものと同種のものを用いればよい。あるいは、分析精度向上の観点から、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の親水性ポリマーから構成された親水性膜を用いてもよい。
試験片30は、例えば、簡潔にいうと次のようにして試料の分析に供される。すなわち、分析対象である血液試料を、試験片30の一端に位置する開口62から毛管現象によってキャピラリ部60内に導入する。キャピラリ部60内部には、試薬(例えば、グルコースと反応する酸化還元酵素および電子メディエータ)が配置されている。この試薬は、キャピラリ部60内に導入された血液試料中の分析対象物(典型的にはグルコース)と電気化学的に反応することで電流が発生する。この状態の試験片30を測定機器の試験片挿入口にセットし、上記反応により生じた電流値を当該機器内で測定することで血液試料中のグルコース濃度は算出される。試薬については、分析対象物と電気化学的に反応する、あるいは発色反応等する公知または慣用のものを、分析対象物に応じて適宜選択して用いればよく、本発明を特徴付けるものではないので、ここでは特に説明しない。
ここに開示される試験片の大きさは特に制限されず、測定機器に応じて、または必要とする試料量等によって適宜設定すればよい。例えば、長さ15〜50mm(例えば20〜40mm)程度、幅3〜15mm(例えば4〜10mm)程度、最大厚さ100〜2000μm(例えば300〜600μm)程度の試験片に対して、ここに開示される粘着シートを好ましく適用することができる。また、キャピラリ部の容積に影響する基板と被覆層との間隔(すなわちスペーサの厚さ)は、200μm以下(例えば120μm以下、典型的には70μm以下)程度であり得る。スペーサの厚さは、例えば上記実施形態の構成では、粘着シート(典型的には両面粘着シート)の総厚でもあり得る。
上記のような構成を有する試験片は、例えば、シート状の基板の表面に複数の電極パターンを形成し、両面粘着シートを介して被覆層を積層して積層構造を得た後、当該積層構造を、複数(例えば10以上)の試験片形状に打ち抜くことにより作製される。電極パターンはスクリーン印刷等の公知の手法を適宜採用して形成すればよい。また、打ち抜き加工は、公知ないし慣用の加工機を用いて行われる。したがって、試験片に用いられる粘着シートには、当該加工の際に、被着体としての電極形成基板と被覆層とに良好に密着し、試料の漏出の原因となり得る剥がれ等の不都合が生じない性能(典型的には密着性その他の粘着性能)を有することが求められる。また、糊のはみ出しや不快臭が高度に抑制されていることが望ましい。
<粘着シートの構造例>
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、例えば、図3に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート1は、基材15としてのプラスチックフィルムと、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Bおよび第二面15A(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、図3に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面である剥離ライナー21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー21の前面21Bにより、第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー21の背面21Aにより、それぞれ保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが2枚の独立した剥離ライナーによりそれぞれ保護された形態であってもよい。
ここに開示される技術は、図3に示すような基材付き両面粘着シートに好ましく適用されるほか、図4に示すような基材レスの(すなわち、基材を有しない)両面粘着シート2にも適用され得る。使用前の両面粘着シート2は、例えば図4に示すように、基材レスの粘着剤層11の第一粘着面11Aおよび第二粘着面11Bが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21,22によってそれぞれ保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー22を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー21を用い、これと粘着剤層11とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面11Bが剥離ライナー21の背面に当接して保護された形態であってもよい。
ここに開示される技術はまた、図5に示すように、基材15と該基材の第一面(非剥離面)15Aに支持された粘着剤層11とを備える片面粘着タイプの基材付き粘着シート3にも適用され得る。使用前の粘着シート3は、例えば図5に示すように、その粘着剤層11の表面(粘着面)11Aが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー21を省略し、第二面15Bが剥離面となっている基材15を用い、基材付き粘着シート3を巻回することにより第一粘着面11Aが基材15の第二面15Bに当接して保護された形態であってもよい。
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートを構成する粘着剤層の粘着面(両面粘着シートの場合、好ましくは第一粘着剤層の粘着面(第一粘着面)のみ)が、12N/20mm以上の180度剥離強度(「180度引き剥がし粘着力」、あるいは単に「粘着力」ともいう。)を示すことによって特徴づけられる。上記の粘着力を有する粘着シートは、接着面積の小さい試験片用粘着シートとして良好な密着性を発揮し得る。上記粘着力は、15N/20mm以上が好ましく、20N/20mm以上がより好ましい。特に好ましい一態様に係る粘着シートは、上記粘着力が25N/20mm以上(さらには30N/20mm以上)であり得る。試験片が携行可能な小サイズのものである場合、その接着面積はより小さくなるため、その利点はより大きい。例えば、図1,2に示す実施形態に係る試験片のように、粘着シートの一方の貼り付け対象面が、基板表面に電極が部分的に形成されているような凹凸表面である場合、接着面積はさらに小さくなるため、上記の粘着力を有する利点は特に大きい。また、上記の粘着力を有する粘着シートは、凹凸表面に対する追従性に優れたものでもあり得る。上記180度剥離強度は、23℃、50%RHの環境下にて、被着体としてのステンレス鋼板(SUS304板)の表面に2kgのローラを1往復させて圧着し、30分間放置した後、JIS Z0237に準じて引張速度300mm/分の条件で測定される。粘着力の測定は、より詳しくは、後述する実施例に記載の180度剥離強度測定方法にしたがって行われる。
ここに開示される粘着シートが両面粘着シートである場合、第二粘着剤層の粘着面(第二粘着面)の粘着力(180度剥離強度)は特に限定されない。例えば、図1,2に示す実施形態に係る試験片のように、一方の粘着面により高い密着性が求められる使用態様においては、第二粘着面の粘着力は、30N/20mm以下(例えば20N/20mm以下、典型的には15N/20mm以下)程度であってもよい。上記第二粘着面の粘着力の下限値は、3N/20mm以上(例えば5N/20mm以上、典型的には10N/20mm以上)であり得る。また、上述のような一方の粘着面により高い密着性が求められる使用態様においては、ここに開示される両面粘着シートの第二粘着面の粘着力PS2に対する第一粘着面の粘着力PS1の比(PS1/PS2)は、1.2以上(例えば1.5以上、典型的には1.8以上)であることが好ましい。上記比(PS1/PS2)の上限は特に限定されないが、通常は3.0以下(例えば2.5以下)程度であり得る。
ここに開示される粘着シートは、好ましい一態様において、該粘着シートを構成する粘着剤層の粘着面(両面粘着シートの場合、好ましくは両粘着面)につき、被着体としてのフェノール樹脂板に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて2kgのローラを1往復させて圧着し、40℃の環境下に垂下して30分間放置した後、500gの荷重を付与して同環境下に1時間放置する定荷重剥離試験において、上記荷重を付与してから粘着シートが被着体から剥がれて落下するまでの時間が1時間以上のものであり得る。当該特性と上記所定値以上の粘着力とを兼ね備える粘着シートは、粘着力と凝集力とが高度に両立した高性能の粘着シートとなり得る。さらに好ましい一態様では、上記定荷重剥離試験において、上記荷重を付与してから1時間後の粘着シートのズレ距離(mm)が3mm以下(例えば1mm以下、典型的には0.3mm以下)であり得る。上記の特性を満たす粘着シートは、優れた凝集力を有するため、糊のはみ出し(粘着成分が被着体端面からはみ出る現象)が好適に抑制されたものとなり得る。このような粘着シートは、携行可能な小サイズの試料分析用試験片に好ましく適用され得る。上記定荷重剥離試験の測定は、より詳しくは、後述する実施例に記載の40℃保持力測定方法にしたがって行われる。
ここに開示される粘着シートは、好ましい一態様において、該粘着シートを構成する粘着剤層の粘着面(両面粘着シートの場合、好ましくは両粘着面)のライナー剥離力(剥離ライナーに対する剥離強度)が1N/50mm未満(例えば0.5N/50mm以下、典型的には0.4N/50mm以下)であり得る。この特性を満たす粘着シートは剥離ライナーの除去がしやすいため、貼り付け作業性に優れる。上記剥離力が小さすぎると作業性が低下する場合があることを考慮して、ライナー剥離力は、凡そ0.01N/50mm以上であることが好ましい。ライナー剥離力の測定は、後述の実施例に記載の方法にしたがって行われる。
ここに開示される粘着シートは、好ましい一態様において、粘着シートを150℃で30分間保持したとき、該シートから放散されるトルエンの量(トルエン放散量)が当該粘着剤層1g当たり20μg以下であり得る。トルエン放散量が所定値以下に抑制された粘着シートは、アウトガス量が抑制されているため、不快臭がなく快適に使用することができる。このような粘着シートは、例えば、医療用や健康増進を目的とする生体試料(例えば血液試料)分析用試験片に特に好ましく用いられる。上記トルエン放散量は粘着剤層1g当たり10μg以下であることがより好ましく、3μg以下(例えば1μg以下、典型的には0.3μg以下)であることがさらに好ましい。上記トルエン放散量としては下記の方法で測定した値を採用すればよい。
[トルエン放散量測定]
粘着シートを1cm×1cmの大きさにカットし、剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させた後、当該粘着面をアルミホイルに貼り合わせたものを試料とする。この試料を20mLのバイアル瓶に入れて密栓した後、該バイアル瓶を150℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mLをヘッドスペースオートサンプラーによりガスクロマトグラフ(GC)測定装置に注入してトルエンの量を測定し、上記試料に含まれる粘着剤層1g当たりのトルエン放散量(μg/g)を算出する。
このとき、ガスクロマトグラフ条件は以下のとおりとする。
・キャリアガス:ヘリウム
・カラム:無極性キャピラリ―カラム
・カラム温度:昇温速度10℃/分
昇温後に維持される温度(低温)40〜300℃
・カラムヘッド圧:113kPa(40℃)
・検出器:FID(温度250℃)
なお、定量は、ガス量が既知のトルエン含有ガスを用いて検量線を作成し、その検量線に基づいて算出すればよい。具体的には、昇温開始から20分経過までに現れる各ピークの総面積をトルエン換算の検量線に基づいて質量に換算し、トルエンガスの放散量を定量すればよい。
<ベースポリマー>
ここに開示される粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤(粘着剤組成物の固形分としても把握され得る。)は、ベースポリマーとして、粘着剤の分野において公知のアクリル系、ゴム系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマーの1種または2種以上を含有するものであり得る。なかでも、粘着剤はゴム系粘着剤であることが好ましい。ゴム系粘着剤とは、ベースポリマーとして、ゴム系ポリマーを含有する粘着剤のことをいう。ゴム系ポリマーとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、再生ゴム等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術における粘着剤は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体をベースポリマーとして含有するゴム系粘着剤であることが好ましい。ここで、「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50質量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるポリマーの代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(A−B−A構造のトリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるジブロック構造の共重合体(A−B構造のジブロック体)等が挙げられる。
上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に一つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70質量%以上(より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体や放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。
ここに開示される技術におけるブロック共重合体としては、被着体に対する剥離強度の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上)のものを好ましく用いることができる。剥離強度の観点から、ジブロック体比率が70質量%以上のブロック共重合体が特に好ましい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60〜85質量%のブロック共重合体が好ましく、70〜85質量%(例えば70〜80質量%)のものがより好ましい。
ここに開示される粘着剤がゴム系粘着剤である場合、ゴム系ポリマー以外のポリマーの使用量は、ベースポリマー100質量部あたり50質量部以下とすることが適当であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下(例えば5質量部以下)である。ここに開示される技術は、上記粘着剤のベースポリマーが実質的にゴム系ポリマーのみからなる態様(例えば、ベースポリマー100質量部当たりのゴム系ポリマーの含有量が99〜100質量部である態様)で好ましく実施され得る。
<スチレン系ブロック共重合体>
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーはスチレン系ブロック共重合体である。ここで「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。また、「スチレンイソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレンイソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(トリブロック体)、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック構造の共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。「スチレンブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。
ここに開示される技術におけるスチレン系ブロック共重合体としては、例えば、上記ベースポリマーがスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様が好ましい。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70質量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70質量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95〜100質量%)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、ここに開示される技術を適用することの効果がよりよく発揮され得る。
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する剥離強度の観点から、ジブロック体比率が30質量%以上(より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、典型的には65質量%以上)のものを好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70質量%以上(例えば75質量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90質量%以下(より好ましくは85質量%以下、例えば80質量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。ここに開示される技術を適用して複数の粘着特性(剥離強度や保持力等)をバランス良く両立させる観点から、ジブロック体比率が60〜85質量%のスチレン系ブロック共重合体が好ましく、70〜85質量%(例えば70〜80質量%)のスチレン系ブロック共重合体がより好ましい。
スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(以下「ジブロック体比率」または「ジブロック比」ということがある。)は、次の方法により求められる。すなわち、スチレン系ブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー(株)製GS5000HおよびG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段づつ計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1mL/分の条件下で高速液体クロマトグラフィを行う。得られたチャートからジブロック体に対応するピーク面積を測定する。そして、全体のピーク面積に対する前記ジブロック体に対応するピーク面積の百分率を算出することにより、ジブロック体比率が求められる。
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5〜40質量%であり得る。凝集性の観点から、スチレン含有量が10質量%以上(より好ましくは10質量%超、例えば12質量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、剥離強度の観点から、スチレン含有量は35質量%以下(典型的には30質量%以下、より好ましくは25質量%以下)が好ましく、20質量%以下(典型的には20質量%未満、例えば18質量%以下)が特に好ましい。ここに開示される技術を適用することの効果(例えば、剥離強度や保持力を向上させる効果)をよりよく発揮させる観点から、スチレン含有量が12質量%以上20質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。なお、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体質量に占めるスチレン成分の質量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
<粘着付与樹脂>
ここに開示される粘着剤は、上記ベースポリマーに加えて粘着付与樹脂を含むことが好ましい。粘着付与樹脂としては、石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
石油樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)等が挙げられる。
スチレン系樹脂の例としては、スチレンの単独重合体を主成分とするもの、α−メチルスチレンの単独重合体を主成分とするもの、ビニルトルエンの単独重合体を主成分とするもの、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエンのうち2種以上をモノマー組成に含む共重合体を主成分とするもの(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体を主成分とするα−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)等が挙げられる。
クマロン・インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分としてクマロンおよびインデンを含む樹脂を用いることができる。クマロンおよびインデン以外に樹脂の骨格に含まれ得るモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が例示される。
テルペン樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性(フェノール変性、スチレン変性、水素添加変性、炭化水素変性等)したものが挙げられる。具体的には、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。
上記「テルペンフェノール樹脂」とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン−フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。上記テルペンフェノール樹脂を構成するテルペンの好適例としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペンが挙げられる。
ロジン系樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);等が挙げられる。また、ロジン誘導体樹脂の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
<高軟化点樹脂>
ここに開示される粘着剤は、上記粘着付与樹脂として、軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂(高軟化点樹脂)THを含有することが好ましい。凝集性等の観点から、高軟化点樹脂THの軟化点は、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、135℃以上(例えば140℃以上)がさらに好ましい。また、被着体に対する剥離強度等の観点から、高軟化点樹脂THの軟化点は、凡そ200℃以下が適当であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)である。
ここに開示される粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
ここに開示される粘着剤は、高軟化点樹脂THとして、例えば、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物等を用いることができる。このような高軟化点樹脂は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、高軟化点樹脂THとして1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が挙げられる。軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用することができる。軟化点が低すぎると、保持力が低下傾向となることがあり得る。軟化点が高すぎると、被着体に対する剥離強度が低下傾向となることがあり得る。
特に限定されるものではないが、好ましい一態様として、例えば、高軟化点樹脂THの25質量%以上(より好ましくは30質量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。高軟化点樹脂THの50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよく、高軟化点樹脂THの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
ここに開示される技術は、例えば、高軟化点樹脂THとして、水酸基価が80mgKOH/g以上(例えば90mgKOH/g以上)の粘着付与樹脂(高軟化点樹脂)TH1を含む態様で好ましく実施され得る。高軟化点樹脂TH1の水酸基価は、典型的には200mgKOH/g以下であり、好ましくは180mgKOH/g以下(例えば160mgKOH/g以下)である。高軟化点樹脂TH1を含む粘着剤によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。凝集性(例えば高温凝集性)と他の特性(例えば剥離強度)とをより高レベルで両立する粘着シートが実現され得る。ここに開示される技術において、高軟化点樹脂TH1は、ベースポリマーとしての上記ゴム系ポリマーと組み合わせて用いることがより好ましく、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含むベースポリマーと組み合わせて用いることが特に好ましい。
ここで、この明細書における「水酸基価」の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)〜(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B−C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の質量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
高軟化点樹脂TH1としては、上述した各種の高軟化点樹脂THのうち所定値以上の水酸基価を有するものを、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様では、高軟化点樹脂TH1として、少なくともテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好ましい。高軟化点樹脂TH1のうち50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であることが好ましく、実質的に全部(例えば95〜100質量%、さらには99〜100質量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
ここに開示される粘着剤は、高軟化点樹脂THとして、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(高軟化点樹脂)TH2を含有してもよい。高軟化点樹脂TH2は、高軟化点樹脂TH1に代えて用いてもよく、高軟化点樹脂TH1と組み合わせて用いてもよい。好ましい一態様として、水酸基価が80mgKOH/g以上の高軟化点樹脂TH1と、高軟化点樹脂TH2とを含む態様が挙げられる。なかでも、ベースポリマーとしての上記ゴム系ポリマーと、高軟化点樹脂TH1およびTH2とを組み合わせて用いることがより好ましく、ベースポリマーとしてのモノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、高軟化点樹脂TH1およびTH2とを組み合わせて用いることが特に好ましい。高軟化点樹脂TH2としては、上述した各種の高軟化点樹脂THのうち水酸基価が上記範囲にあるものを、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
ここに開示される技術は、上記粘着剤が水酸基価80mgKOH/g以上(典型的には80〜160mgKOH/g、例えば80〜140mgKOH/g)の高軟化点樹脂TH1と、水酸基価0mgKOH/g以上80mgKOH/g未満(典型的には40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満)の高軟化点樹脂TH2とを組み合わせて含む態様で好ましく実施され得る。この場合において、TH1とTH2との使用量の関係は、例えば、質量比(TH1:TH2)が1:5〜5:1の範囲となるように設定することができ、1:3〜3:1(例えば1:2〜2:1)の範囲となるように設定することが適当である。好ましい一態様として、TH1,TH2がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。
ここに開示される粘着剤は、目的や用途等に応じて、高軟化点樹脂THとして、芳香環を有しかつ水酸基価が30mgKOH/g以下である粘着付与樹脂(高軟化点樹脂)THR1を含有し得る。このことによって凝集性(例えば高温凝集性)を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂THR1は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与樹脂THR1の水酸基価は、10mgKOH/g未満であることが好ましく、5mgKOH/g未満がより好ましく、3mgKOH/g未満がさらに好ましい。例えば、水酸基価が1mgKOH/g未満であるか、あるいは水酸基が検出されない粘着付与樹脂THR1を好ましく使用し得る。
芳香環を有する粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。これらのうち、軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)かつ水酸基価30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満2)であるものを粘着付与樹脂THR1として採用することができる。
粘着付与樹脂THR1として使用し得る材料の好適例として、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂およびクマロン・インデン樹脂が挙げられる。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、C5留分の共重合割合が15質量%未満(より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)のものが好ましい。また、C9留分の共重合割合が55質量%以上(より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上)のものが好ましい。なかでも好ましい粘着付与樹脂THR1として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
粘着付与樹脂THR1の使用量は特に制限されず、粘着剤の目的や用途に応じて適宜設定することができる。凝集性(例えば高温凝集性)の観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、凝集性(例えば高温凝集性)と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。低温における粘着性能(例えば剥離強度)を考慮すると、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下(例えば25質量部以下)がより好ましい。
特に限定するものではないが、ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、凝集性(例えば高温凝集性)の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR1の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、凝集性(例えば高温凝集性)と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
ここに開示される粘着剤の他の好ましい一態様において、高軟化点樹脂THは、芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂(高軟化点樹脂)THR2を含有し得る。このことによって凝集力(例えば高温凝集力)を効果的に改善することができる。粘着付与樹脂THR2は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで粘着付与樹脂THR2がイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まないとは、これらの構造部分(すなわち、イソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格)が粘着付与樹脂THR2に占める割合が合計10質量%未満(より好ましくは8質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、例えば3質量%未満)であることをいう。上記割合が0質量%であってもよい。なお、粘着付与樹脂THR2に占めるイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格の割合は、例えばNMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
芳香環を有しかつイソプレン単位、テルペン骨格およびロジン骨格を実質的に含まない粘着付与樹脂の例としては、上述の芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。これらのうち軟化点が120℃以上(好ましくは130℃以上、例えば135℃以上)であるものを粘着付与樹脂THR2として採用することができる。なかでも好ましい粘着付与樹脂THR2として、芳香族系石油樹脂およびスチレン系樹脂(例えば、α−メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)が挙げられる。
粘着付与樹脂THR2の使用量は特に制限されず、粘着剤の目的や用途に応じて適宜設定することができる。凝集性(例えば高温凝集性)の観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、凝集性(例えば高温凝集性)と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば100質量部以下とすることができ、80質量部以下(例えば60質量部以下)が好ましい。低温における粘着性能(例えば剥離強度)の観点からは、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下(例えば25質量部以下)がより好ましい。
特に限定するものではないが、ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である態様において、該ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば0.1質量部以上とすることができ、凝集性(例えば高温凝集性)の観点から0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、ブロック共重合体中のスチレン成分1質量部に対する粘着付与樹脂THR2の使用量は、例えば10質量部以下とすることができ、凝集性(例えば高温凝集性)と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
特に限定するものではないが、粘着付与樹脂THR2としては、粘着付与樹脂THR1と同様の理由により、水酸基価が30mgKOH/g以下(好ましくは5mgKOH/g未満、例えば1mgKOH/g未満)のものを好ましく採用し得る。したがって、ここに開示される技術における粘着付与樹脂THR2としては、粘着付与樹脂THR1にも該当するものを好ましく使用し得る。同様に、ここに開示される技術における粘着付与樹脂THR1としては、粘着付与樹脂THR2にも該当するものを好ましく使用し得る。
ここに開示される粘着剤は、高軟化点樹脂THとしてテルペンフェノール樹脂を含む場合、高軟化点樹脂TH全体の25質量%以上(より好ましくは30質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であることが好ましい。高軟化点樹脂THの50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、例えば90質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよく、高軟化点樹脂THの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。例えば、高軟化点樹脂THの実質的に全部が後述するテルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂Bであってもよい。
ここに開示される粘着剤は、高軟化点樹脂THとしてテルペンフェノール樹脂を含む場合、ベースポリマー100質量部に対してテルペンフェノール樹脂を20質量部以上(好ましくは35質量部以上、例えば40質量部以上)含む態様で好ましく実施され得る。通常は、テルペンフェノール樹脂の含有量を100質量部以下(好ましくは80質量部以下、例えば70質量部以下)とすることが適当である。
ここに開示される技術において、高軟化点樹脂THを用いる場合、特に限定するものではないが、ベースポリマー100質量部に対する高軟化点樹脂THの総量(すなわち、軟化点120℃以上の粘着付与樹脂の総量)は、凝集性(例えば高温凝集性)等の観点から、例えば10質量部以上とすることができ、20質量部以上(好ましくは25質量部以上、例えば35質量部以上、典型的には40質量部以上)が好ましい。また、剥離強度や低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー100質量部に対する高軟化点樹脂THの含有量は、通常120質量部以下が適当であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下(例えば70質量部以下、典型的には60質量部以下)である。ベースポリマー100質量部に対する高軟化点樹脂THの総量を55質量部以下(例えば50質量部以下)とすることにより、より高い剥離強度が実現され得る。
ここに開示される粘着剤に含まれ得る全粘着付与樹脂のうち高軟化点樹脂THの占める割合は、特に限定されない。上記割合は、例えば30〜90質量%とすることができ、50〜80質量%が好ましい。ここに開示される技術は、粘着剤が高軟化点樹脂THを含まない態様で実施してもよい。
<低軟化点樹脂TL>
他の粘着付与樹脂を含む態様の一好適例として、軟化点120℃未満の粘着付与樹脂(低軟化点樹脂)TLを含む態様が挙げられる。かかる態様によると、例えば、より剥離強度に優れた粘着シートが実現され得る。低軟化点樹脂TLの軟化点の下限は特に制限されない。軟化点が40℃以上(典型的には60℃以上)のものを好ましく用いることができる。凝集性と剥離強度とを高レベルで両立させる観点から、軟化点が80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満の低軟化点樹脂TLを好ましく採用することができる。なかでも、軟化点が110℃以上120℃未満の低軟化点樹脂TLの使用が好ましい。また、低軟化点樹脂TLは、上述の高軟化点樹脂THと組み合わせて用いることが特に好ましい。さらに、低軟化点樹脂TLは、ベースポリマーとしての上記ゴム系ポリマーと組み合わせて用いることがより好ましく、ベースポリマーとしてのモノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と組み合わせて用いることが特に好ましい。
低軟化点樹脂TLの水酸基価や構造(例えば、芳香環の有無、イソプレン単位の有無、テルペン骨格の有無、ロジン骨格の有無等)は特に限定されない。上述した各種の粘着付与樹脂(石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、ケトン系樹脂等)であって軟化点が120℃未満のものを適宜選択して用いることができる。
ここに開示される技術は、上記粘着剤が、石油樹脂およびテルペン樹脂の少なくとも一方を低軟化点樹脂TLとして含む態様で好ましく実施され得る。例えば、低軟化点樹脂TLの主成分(すなわち、低軟化点樹脂TLのうちの50質量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせである組成、等を好ましく採用し得る。剥離強度および相溶性の観点から、低軟化点樹脂TLの主成分がテルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)である態様が好ましい。低軟化点樹脂TLの実質的に全部(例えば95質量%以上)がテルペン樹脂であってもよい。
ここに開示される粘着剤が低軟化点樹脂TLを含む場合、ベースポリマー100質量部に対する低軟化点樹脂TLの総量は特に限定されないが、例えば10質量部以上とすることができ、剥離強度の観点から15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、ベースポリマー100質量部に対する低軟化点樹脂TLの総量は、凝集性の観点から、120質量部以下が適当であり、90質量部以下が好ましく、70質量部以下(例えば60質量部以下)がより好ましい。低軟化点樹脂TLの含有量を50質量部以下(例えば40質量部以下)としてもよい。
ここに開示される粘着剤が低軟化点樹脂TLと高軟化点樹脂THとを含む場合、それらの使用量の関係は、TL:THの質量比が1:5〜3:1(より好ましくは1:5〜2:1)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、上記粘着剤が、粘着付与樹脂としてTLよりもTHを多く含む態様(例えば、TL:THの質量比が1:1.2〜1:5)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
ここに開示される粘着剤に含まれ得る全粘着付与樹脂のうち低軟化点樹脂TLの占める割合は、特に限定されない。上記割合は、例えば10〜70質量%とすることができ、20〜50質量%が好ましい。なお、ここに開示される技術は、低軟化点樹脂TLを含まない態様で実施してもよい。
<水酸基価の異なるテルペンフェノール樹脂の組合せ>
ここに開示される粘着剤は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体からなるベースポリマーと、粘着付与樹脂とを含む形態であって、上記粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂Aとテルペンフェノール樹脂Bとを少なくとも含む形態で好ましく実施され得る。ここで、テルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂Bは、テルペンフェノール樹脂Aの水酸基価AOH(mgKOH/g)とテルペンフェノール樹脂Bの水酸基価BOH(mgKOH/g)とがAOH>BOHの関係を満たすように選択されることが好ましい。かかるテルペンフェノール樹脂A,Bを組み合わせて使用することにより、例えば、粘着シートの剥離強度(特に、経時後の剥離強度)が改善され得る。
通常は、水酸基価AOHと水酸基価BOHとの差、すなわちAOH−BOHが、0より大きく200mgKOH/g以下となるように、テルペンフェノール樹脂A,Bを選択することが適当である。好ましい一態様では、AOH−BOHが5〜150mgKOH/g(典型的には10〜120mgKOH/g、より好ましくは15〜100mgKOH/g、例えば20〜80mgKOH/g以下)である。
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の水酸基価は特に限定されない。例えば、AOHおよびBOHがいずれも80mgKOH/g以上(典型的には80〜250mgKOH/g、好ましくは80〜220mgKOH/g、例えば90〜160mgKOH/g)であってもよく、AOHおよびBOHがいずれも80mgKOH/g未満(典型的には0以上80mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g未満、例えば20〜70mgKOH/g)であってもよく、AOHが80mgKOH/g以上であり、BOHが80mgKOH/g未満であってもよい。好ましい一態様では、AOHが80mgKOH/g以上(典型的には80〜160mgKOH/g、好ましくは80〜140mgKOH/g、例えば90〜120mgKOH/g)であり、BOHが80mgKOH/g未満(典型的には0以上80mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g以上80mgKOH/g未満、例えば20〜70mgKOH/g)であり、かつAOH−BOHが10mgKOH/g以上(好ましくは20mgKOH/g以上、例えば30mgKOH/g以上であり、典型的には100mgKOH/g以下)である。
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の含有量は、それぞれ、ベースポリマー100質量部に対して1質量部以上とすることができる。テルペンフェノール樹脂Aとテルペンフェノール樹脂Bとを組み合わせて用いることの効果をよりよく発揮させるためには、ベースポリマー100質量部に対するテルペンフェノール樹脂A,Bの含有量を、いずれも5質量部以上(好ましくは10質量部以上、例えば15質量部以上)とすることが適当である。また、被着体に対する剥離強度(特に、低温における剥離強度)の観点から、通常は、テルペンフェノール樹脂A,Bの合計含有量を、ベースポリマー100質量部に対して100質量部以下とすることが適当であり、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下(例えば70質量部以下)である。例えば、ベースポリマー100質量部に対するテルペンフェノール樹脂A,Bの合計含有量が15〜80質量部(典型的には25〜60質量部)である態様を好ましく採用し得る。
テルペンフェノール樹脂Aの含有量mAとテルペンフェノール樹脂Bの含有量mBとの質量比(mA:mB)は、例えば1:10〜10:1とすることができる。被着体に対する剥離強度と、定荷重剥離特性(特に、湿熱条件下での定荷重剥離特性)との兼ね合いの観点から、通常は、上記質量比(mA:mB)を1:5〜5:1とすることが適当であり、例えば1:3〜3:1とすることができる。好ましい一態様において、質量比mA/mBが0.7〜10(より好ましくは0.8〜5、典型的には0.9〜4、例えば1〜3)となるようにmA,mBを設定することができる。このような態様によると、継続的な応力に対する耐性に優れ、かつ粘着性能(例えば剥離強度)の経時安定性に優れた粘着シートが実現され得る。
テルペンフェノール樹脂A,Bの各々の軟化点は特に限定されない。例えば、テルペンフェノール樹脂A,Bの軟化点がいずれも120℃以上(典型的には120℃超、好ましくは125℃以上、例えば130℃以上であり、典型的には180℃以下)であってもよく、いずれも120℃未満であってもよい。また、テルペンフェノール樹脂A,Bのいずれか一方の軟化点が120℃以上であり、他方の軟化点が120℃未満であってもよい。好ましい一態様では、テルペンフェノール樹脂A,Bの軟化点がいずれも120℃〜170℃の範囲にある。例えば、軟化点が120℃〜170℃であって水酸基価が80〜140mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂Aと、軟化点が120℃〜170℃であって水酸基価が80mgKOH/g未満(例えば20〜70mgKOH/g)であるテルペンフェノール樹脂Bとの組合せを好ましく採用し得る。
なお、ここに開示される粘着剤は、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂Aおよびテルペンフェノール樹脂B以外のテルペンフェノール樹脂をさらに含有し得る。粘着剤が3種類以上のテルペンフェノール樹脂を含む場合には、それらのテルペンフェノール樹脂のうち質量基準の含有量が多いものから順に2種類を選択し、それらのうち水酸基価の高いほうをテルペンフェノール樹脂A、水酸基価の低いほうをテルペンフェノール樹脂Bとするものとする。また、例えば、質量基準で最も含有量の多いテルペンフェノール樹脂として、3種類のテルペンフェノール樹脂が概ね1:1:1の質量比で含まれる場合には、それらのうち最も水酸基価が高いものをテルペンフェノール樹脂Aとし、最も水酸基価が低いものをテルペンフェノール樹脂Bとするものとする。
ここに開示される技術において粘着付与樹脂を用いる場合、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂の総量は特に限定されないが、凝集性と剥離強度とをバランスよく実現する観点から、通常は20質量部以上が適当であり、30質量部以上が好ましく、40質量部以上(例えば50質量部以上)がより好ましい。また、低温特性(例えば低温剥離強度)等の観点から、ベースポリマー100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、200質量部以下が適当であり、150質量部以下が好ましく、120質量部以下(例えば100質量部以下)がより好ましい。
<イソシアネート化合物>
ここに開示される粘着剤(粘着剤層)を形成するために用いられる粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を含有し得る。かかる粘着剤組成物によると、より高性能な(例えば、耐反撥性や定荷重剥離特性に優れた)粘着シートが実現され得る。イソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。かかる多官能イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種のイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)から選択される1種または2種以上を用いることができる。かかる多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート;1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等が挙げられる。
好ましいイソシアネート化合物として、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
イソシアネート化合物を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、例えばベースポリマー100質量部に対して0質量部を超えて10質量部以下(典型的には0.01〜10質量部)とすることができる。通常は、ベースポリマー100質量部に対するイソシアネート化合物の使用量を0.1〜10質量部とすることが適当であり、0.1〜5質量部(典型的には0.3〜3質量部、例えば0.5〜1質量部)とすることが好ましい。かかる範囲でイソシアネート化合物を用いることにより、特に性能バランスに優れた粘着シートが実現され得る。
<その他成分>
ここに開示される粘着剤は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。ここに開示される粘着剤は、ポリブテン等の液状ゴムを実質的に含有しない(例えば、ベースポリマー100質量部当たりの含有量が1質量部以下であり、0質量部であってもよい。)態様で好ましく実施され得る。かかる粘着剤によると、より耐反撥性および/または定荷重剥離特性に優れた粘着シートが実現され得る。
好ましい一態様において、上記粘着剤は、ベースポリマーと粘着付与樹脂との合計量が、該粘着剤の全質量(すなわち、この粘着剤により構成される粘着剤層の質量)の90質量%以上を占める組成であり得る。例えば、ベースポリマーと粘着付与樹脂との合計量が上記粘着剤の全質量の90〜99.8質量%(典型的には、例えば95〜99.5質量%)である態様を好ましく採用し得る。
好ましい他の一態様において、上記粘着剤組成物は、キレート化合物を実質的に含まない組成であり得る。ここで、上記キレート化合物とは、例えば、アルカリ土類金属の酸化物と、該酸化物が配位可能な官能基(水酸基、メチロール基等)を有する樹脂(アルキルフェノール樹脂等)とのキレート化合物を指す。ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が、このようなキレート化合物を全く含まないか、あるいは該キレート化合物の含有割合が1質量%以下である態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より粘着力に優れた粘着シートが実現され得る。
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、上述のような組成の粘着剤(粘着成分)を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態(水分散型、典型的には水性エマルション型)の粘着剤組成物、ホットメルト型の粘着剤組成物等であり得る。塗工性および基材の選択自由度等の観点から、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。より高い粘着性能を実現する観点から、溶剤型の粘着剤組成物が特に好ましい。かかる溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、上述した各成分を有機溶媒中に含む溶液の形態に調製される。上記有機溶媒は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。特に限定するものではないが、通常は、上記溶剤型粘着剤組成物を固形分(NV)20〜65質量%(例えば25〜55質量%)に調製することが適当である。NVが低すぎると製造コストが高くなりがちであり、NVが高すぎると塗工性等の取扱性が低下することがある。
粘着剤組成物から粘着シートを得る方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗付)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、上記粘着剤組成物を剥離性のよい表面(例えば、剥離ライナーの表面、離型処理された支持基材背面等)に付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。例えば、凡そ40℃〜150℃(典型的には40℃〜120℃、例えば50℃〜120℃、さらには70℃〜100℃)程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。乾燥時間は特に限定されないが、数十秒から数分程度(例えば凡そ5分以内、好ましくは30秒〜2分程度)とすればよい。粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、目的および用途によっては点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。
特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、凡そ3μm〜150μm(典型的には5μm〜120μm、例えば7μm〜100μm)程度が適当である。ここに開示される粘着シートを携行可能な小サイズの試験片に適用する場合、粘着剤層の厚さは、2μm〜100μmとすることができ、好ましくは5μm〜75μm、より好ましくは7μm〜65μm(例えば12μm〜40μm)である。上記厚さの粘着剤層を備える粘着シートは、例えば、試験片において試料サンプリング量の決定する部材(例えばスペーサ)として機能する粘着シートとして特に好適である。粘着シートが基材付き両面粘着シートの場合、基材の両面それぞれに上記厚さの粘着剤層が設けられた構成とするとよい。また、被着体表面が凹凸を有する場合、上記凹凸への追従性を考慮して、粘着剤層(両面粘着シートの場合、少なくとも第一粘着剤層)の厚さを20μm以上(例えば30μm以上)としてもよい。
基材の一方の表面に第一粘着剤層が設けられ、該基材の他方の表面に第二粘着剤層が設けられた基材付き両面粘着シートの場合、第一粘着剤層の厚さと第二粘着剤層の厚さとは、同一であってもよく異なってもよい。第一粘着剤層の厚さを第二粘着剤層の厚さよりも大きくする場合、例えば、第二粘着剤層の厚さT2に対する第一粘着剤層の厚さT1の比(T1/T2)は1.5以上(例えば2.0以上、典型的には3.5以上)とすることができる。上記比(T1/T2)を満たす両面粘着シートは、例えばスペーサのように総厚の上限が制限されている部材として用いられる態様において、第一粘着面(第一粘着剤層の粘着面)の被着対象に対してより高い密着性が求められる場合に好ましく用いられる。そのような被着対象としては、難接着性の被着体や、接着面に凹凸を有する被着体が挙げられる。例えば、図1,2に示す試験片30では、両面粘着シート1の第一粘着面11Aの接着面積は、その被着対象面が凹凸を有するため、第二粘着面12Aの接着面積より小さい。このような構成に対して、上記比(T1/T2)を満たす両面粘着シートを適用することにより第一粘着面側の剥がれを好適に抑制することができる。上記比(T1/T2)を満たす構成の第一粘着剤層は、より大きい厚さを有するため、凹凸表面への追従性に優れたものでもあり得る。上記比(T1/T2)の上限は特に限定されないが、通常は8.0以下(例えば5.0以下)程度であり得る。第一粘着剤層、第二粘着剤層が上述の厚さを有し、かつ上記比(T1/T2)を満たす両面粘着シートが特に好ましい。
<基材>
ここに開示される技術を基材付き両面粘着シートまたは基材付き片面粘着シートに適用する場合、基材としては、例えば、PEフィルム、PPフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィン系フィルム、PETフィルム等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、PEフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。基材として、CMC等の親水性ポリマーフィルムを用いてもよい。上記プラスチックフィルム(典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。)としては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗付、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね2μm〜500μm(典型的には10μm〜200μm)程度である。ここに開示される基材付き粘着シートを、携行可能な小サイズの試験片に適用する場合には、基材の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下(例えば20μm以下)である。粘着シートに十分な剛性を付与する観点からは、基材の厚さは5μm以上(例えば10μm以上)とすることが適当である。
また、ここに開示される基材は、白色に着色されていることが好ましい。白色基材を用いることにより、汚れ等の付着物の有無の確認がしやすくなり、清潔感に優れ、衛生面においても好ましいものとなり得る。白色基材を備える粘着シートは、医療目的で用いられる試験片に好ましく用いられる。白色基材はまた、試験片にサンプリングされた試料の視認がしやすいという利点を有する。試料が血液試料の場合には、試料の視認性に特に優れる。白色の程度(白色度)は、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、87以上(例えば、87〜100)が好ましく、より好ましくは90以上(例えば、90〜100)である。L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも−10〜10(より好ましくは−5〜5、さらに好ましくは−2.5〜2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。なお、この明細書において、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(例えば、ミノルタ社製の色彩色差計、商品名「CR−200」)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JIS Z8729に規定されている。
基材を白色に着色する際に用いられる白色着色剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン等の二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等の無機系白色着色剤や、アクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、アミド系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、尿素−ホルマリン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子等の有機系白色着色剤等が挙げられる。白色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性(典型的には白色度)を付与できるように適宜調整した量とすればよい。
<粘着シートの総厚>
ここに開示される技術における粘着シートの総厚(剥離ライナーを含まない粘着シートの厚さ)は特に限定されない。例えば、20μm〜500μm程度の厚さを有する粘着シートを用いることができる。粘着シートの厚さは、30μm〜300μm(例えば40μm〜200μm、典型的には50μm〜180μm)程度であってもよい。ここに開示される粘着シートを携行可能な小サイズの試験片に適用する場合には、粘着シートの総厚は、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは80μm以下(例えば60μm以下、典型的には50μm以下)である。粘着シートの下限は特に限定されないが、良好な密着性を発揮するため、粘着シートの総厚は25μm以上(例えば40μm以上)とすることが好ましい。上記の総厚を有する粘着シートは、例えば、試験片への試料サンプリング量を規定するスペーサとして機能する粘着シートとして特に好適である。分析精度の向上にともなう試料サンプリング量の低減によく対応したものとなり得る。
<剥離ライナー>
ここに開示される剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、剥離ライナーを構成する支持体用基材(剥離処理対象)としては、各種の樹脂フィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体(例えば、紙の両面にオレフィン樹脂がラミネートされた積層構造のシート)等を適宜選択して用いることができる。剥離処理は、公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤)を用いて常法により行うことができる。例えば、両面にPE樹脂がラミネートされた上質紙をシリコーン系剥離剤で処理してなる剥離ライナーを好ましく採用し得る。また、オレフィン系樹脂(例えば、PE、PP、エチレン−プロピレン共重合体、PE/PP混合物)、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)等の低接着性の基材を、該基材の表面に剥離処理を施すことなく剥離ライナーとして用いてもよい。あるいは、かかる低接着性の基材に剥離処理を施したものを用いてもよい。剥離ライナーの厚さは、作業性等の観点から25μm〜200μm(より好ましくは60μm〜160μm)程度とすることが適当である。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<例1>
(粘着剤組成物の調製)
ベースポリマーとしてのスチレンイソプレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、テルペンフェノール樹脂40部と、テルペン樹脂30部と、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製品、製品名「コロネートL」)を固形分基準で0.75部と、老化防止剤3部と、溶媒としてのトルエンとを撹拌混合して、NV25%のゴム系粘着剤組成物を調製した。
ここで、テルペンフェノール樹脂としては、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSポリスターS145」(軟化点145℃、水酸基価100mgKOH/g)と、同社製の商品名「YSポリスターT145」(軟化点145℃、水酸基価60mgKOH/g)との二種類を、1:1の質量比で、それらの合計が40部となるように使用した。テルペン樹脂としては、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」(軟化点115℃、水酸基価1mgKOH/g未満)を使用した。老化防止剤としては、BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との質量比2:1のブレンド配合物)を使用した。
(粘着シートの作製)
基材として、白色印刷が施された厚さ13μmのPETフィルムを用意した。この基材の第一面に、上記で得たゴム系粘着剤組成物を塗付し、乾燥処理を行い、厚さ約30μmの第一粘着剤層を形成した。その第一粘着剤層に、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離ライナーを貼り合わせた。次いで、上記基材の第二面(第一面とは反対側の面)に、上記ゴム系粘着剤組成物を塗付し、乾燥処理を行い、厚さ約7μmの第二粘着剤層を形成し、第一粘着剤層の場合と同様にして剥離ライナーを貼り合わせた。このようにして、総厚約50μmの両面粘着シートを作製した。
<例2>
(粘着剤組成物の調製)
ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部および重合溶媒として酢酸エチル200部を、三つ口フラスコに投入した。窒素ガスを導入しながら2時間攪拌して重合系内の酸素を除去した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を加え、70℃に昇温して6時間重合反応を行った。このようにしてポリマー溶液(アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液)を得た。このポリマー溶液に、その固形分100部に対して25部のアクリル系オリゴマーと1部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)と0.075部のエポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製、商品名「テトラッドC」)と適当量の重合溶媒とを加え、十分に攪拌して、液状のアクリル系粘着剤組成物を調製した。
(粘着シートの作製)
基材として、白色印刷が施された厚さ13μmのPETフィルムを用意した。この基材の第一面に、上記で得たアクリル系粘着剤組成物を塗付し、乾燥処理を行い、厚さ約19μmの第一粘着剤層を形成した。その第一粘着剤層に、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離ライナーを貼り合わせた。次いで、上記基材の第二面に、第一面と同様にして厚さ約19μmの第二粘着剤層を形成し、剥離ライナーを貼り合わせた。このようにして、総厚約50μmの両面粘着シートを作製した。
[180度剥離強度]
各例に係る両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせ、これを幅20mm、長さ150mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を露出させ、該他方の粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM−1kNB」ミネベア(株)製)を使用して、JIS Z0237に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離強度(N/20mm幅)を測定した。被着体としてはステンレス鋼板(SUS304板)を使用した。測定は第一粘着剤層の粘着面(第一粘着面)と第二粘着剤層の粘着面(第二粘着面)の両面について行った。結果を表1に示す。なお、表中、第一粘着面、第二粘着面はそれぞれ第一面、第二面と略記する。
[40℃保持力]
各例に係る両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。上記測定サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのフェノール樹脂板に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて2kgのローラを1往復させて圧着した。このようにして被着体に貼り付けられた測定サンプルを40℃の環境下に垂下して30分間放置した後、該測定サンプルの自由端に500gの荷重を付与し、JIS Z0237に準じて、該荷重が付与された状態で40℃の環境下に1時間放置した後における測定サンプルの最初の貼付け位置からのズレ距離(mm)を測定した。測定は第一粘着面と第二粘着面の両面について行った。結果を表1に示す。
[ライナー剥離力]
各例に係る両面粘着シートにつき、剥離ライナーに対する剥離強度(ライナー剥離力)を測定した。すなわち、各例で得られた剥離ライナー付き両面粘着シートを幅50mm、長さ約200mmのサイズにカットして測定サンプルを用意した。これを、引張試験機を用いて、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離ライナーを引き剥がしたときの応力を測定し、その最高値を剥離強度(N/50mm幅)とした。なお、剥離強度の測定には補助板を使用した。測定は第一粘着面と第二粘着面の両面について行った。結果を表1に示す。
[加工性]
各例に係る両面粘着シートを用いて図1,2に示す試験片を作製した。具体的には、樹脂板42上にフッ素樹脂からなる樹脂層44を積層した基板40の表面に、カーボン材料からなる電極46a,46b,46cをスクリーン印刷法により形成した。この基板40の表面には、約0.5〜1.0mm幅で高さ約15μmの帯状の電極が約0.2〜2.0mm程度の間隔を有するように配置されており、これによって基板40の表面に電極パターンが形成されている。そのため、基板40の表面は、電極46a,46b,46cが凸面を構成する凹凸表面となっている。両面粘着シート1の第二粘着面に親水性ポリマーからなる被覆層50を貼り合わせ、次いで基板40表面に両面粘着シート1の第一粘着面を貼り合わせることで、試験片積層構造を作製した。これを、打ち抜き加工機を用いて図1に示す形状に加工することにより試験片30を得た。得られた試験片30を目視観察し、剥がれが認められなかった場合を“○”と評価し、剥がれが認められた場合を“×”と評価した。結果を表1に示す。
表1に示されるように、第一粘着面の粘着力(180度剥離強度)が12N/20mm以上(具体的には20N/20mm以上)の例1に係る両面粘着シートは、試験片の加工時に剥がれが生じず、加工性に優れていた。一方、第一粘着面の粘着力が12N/20mm未満の例2に係る両面粘着シートは、加工時に剥がれが認められた。より具体的には、図1において試験片30のキャピラリ部60周辺の第一粘着面11Aに剥がれが認められた。この結果から、所定値以上の粘着力を有する粘着シートは、試験片に適用可能な良好な密着性を有することがわかる。また、例1に係る両面粘着シートは、40℃保持力に優れ、ライナー剥離力は所定値以下であったことから、試料分析用試験片に用いられる粘着シートとして、良好な保持力とライナー除去性を有するものとなり得ることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。