本発明の第1実施形態の燃料タンクについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の第1実施形態の燃料タンク12が示されている。以下、図面において、車両前方方向を矢印FRで、上方向を矢印UPで、車幅方向を矢印Wでそれぞれ示す。なお、図1では、紙面の横方向を車両前後方向としているが、紙面横方向が車幅方向であってもよい。
燃料タンク12は、内部に燃料を収容可能な燃料タンク本体14を有している。燃料タンク本体14は、本実施形態では樹脂製とされている。燃料タンク本体14は、全体として、内部に燃料を収容可能な形状(たとえば図示の例では略直方体の箱状)に形成されている。特に本実施形態では、燃料タンク本体14は、図1に示す断面で、下壁14B、上壁14T、前壁14F及び後壁14Rを有する長方形状である。この断面において、下壁14B及び上壁14Tは、前壁14F及び後壁14Rに比べて長い。上壁14T及び下壁14Bは、本発明に係る対向壁14Mの例である。
燃料タンク本体14内には、構造部材16が備えられている。第1実施形態では、構造部材16は、下壁14Bから上壁14Tに向かって延出された下側補強部材18と、上壁14Tから下壁14Bに向かって延出された上側補強部材20を有している。本実施形態では、下側補強部材18及び上側補強部材20はいずれも、燃料タンク本体14を補強している。
下側補強部材18は、燃料タンク本体14の下壁14Bから斜め上方に延出された一対の縦壁18Aと、これら縦壁18Aの先端(上端)に連なる横壁18Bを有する略台形状に形成されている。下側補強部材18は、縦壁18Aの基端(下端)の取付フランジ22を有しており、この取付フランジ22によって、燃料タンク本体14の下壁14Bに、溶着やリベット等で取り付けられている。
上側補強部材20は、燃料タンク本体14の上面から斜め上方に延出された一対の縦壁20Aと、これら縦壁20Aの先端(下端)に連なる横壁20Bを有する略台形状に形成されている。上側補強部材20は、縦壁20Aの基端(上端)の取付フランジ24を有しており、この取付フランジ24によって、燃料タンク本体14の上壁14Tに、溶着やリベット等で取り付けられている。
下側補強部材18の横壁18Bと、上側補強部材20の横壁20Bとは互いに平行に対向しており、これら横壁18B、20Bの間に、上下方向に所定の間隔D1を有する第1間隙28が構成されている。
燃料タンク本体14の上壁14T及び下壁14Bが相対的に接近し、下側補強部材18及び上側補強部材20が相対的に接近すると、第1間隙28は徐々に狭くなる。そして、横壁18Bと横壁20Bとの間の第1間隙28が解消されて横壁18Bと横壁20Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの接近が阻止される。
下側補強部材18の横壁18Bからは、上方に向けて対向部材30が形成されている。対向部材30は、横壁18Bの中央から上方に延出された円柱状の支柱32と、この支柱32の先端(上端)に形成された円板状の対向板34と、を有している。
特に第1実施形態では、対向部材30は、下側補強部材18と一体成形されているか、もしくは下側補強部材18に固定されており、下側補強部材18と対向部材30とが一体化されている。
上側補強部材20の横壁20Bには、嵌合孔36及び挿入スリット38が形成されている。挿入スリット38は、嵌合孔36と、横壁18Bの外部とを連通しており、外部との連通部分は挿入開口38Kとなっている。この挿入開口38Kから支柱32を挿入スリット38に挿入し、嵌合孔36に嵌合させることができる。嵌合孔36の内径は支柱32の外径よりもわずかに大きくされており、支柱32(対向部材30)は、横壁20B(上側補強部材20)に対し相対的に上下動可能である。
対向板34は、上側補強部材20の横壁20Bと互いに平行に対向しており、所定の間隔D2をする第2間隙40が構成されている。
第2間隙40は、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bとが相対的に離間し、下側補強部材18及び上側補強部材20も相対的に離間すると、徐々に狭くなる。そして、対向板34と横壁20Bとの間の第2間隙40が解消されて対向板34と横壁20Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの離間が阻止される。
そして、第1実施形態の上記構造では、横壁20Bが本発明の「第2接触部」の例であり、対向板34が、本発明の「第2被接触部」の例となっている。したがって、第1実施形態では、上側補強部材20が本発明の「第1延出部材」の例であり、下側補強部材18が本発明の「第2延出部材」の例となっている。さらに、第1実施形態では横壁20Bが本発明の「第1接触部」の例であり(「第2接触部」を兼ねている)、横壁18Bが本発明の「第1被接触部」の例となっている。
次に、第1実施形態の燃料タンク12の作用を説明する。
燃料タンク本体14では、タンク内圧が大気圧と同程度である場合は、膨張あるいは圧縮しない。すなわち、図1に実線で示すように、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bとは大きく湾曲することはなく、略平面の状態である。このとき、図3Aに示すように、下側補強部材18の横壁18Bと、上側補強部材20の横壁20Bの間に、所定の間隔D1を有する第1間隙28が構成されている。また、対向部材30の対向板34と上側補強部材20の横壁20Bとの間には、所定の間隔D2を有する第2間隙40が構成されている。
燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧(外部の大気圧に対してタンク内圧が低い状態)になったときは、第1間隙28が徐々に狭くなりつつ、下側補強部材18と上側補強部材20とが接近する。すなわち、図1に二点鎖線14Pで示すように、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの中央部分が互いに接近する方向の湾曲が許容され、燃料タンク本体14は圧縮変形される。なお、図1では、燃料タンク本体14の変形の程度を実際よりも大きくして示している。
そして、図3Bに示すように、下側補強部材18の横壁18Bと上側補強部材20の横壁20Bとの間の第1間隙28が解消されて横壁18Bと横壁20Bとが接触すると、下側補強部材18と上側補強部材20との接近が阻止され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
このように、第1実施形態の燃料タンク12では、燃料タンク本体14の負圧時には、図1に二点鎖線14Pで示すように、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容されると共に、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。
これに対し、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧(外部の大気圧に対してタンク内圧が高い状態)になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなりつつ、下側補強部材18と上側補強部材20とが離間する。すなわち、図1に二点鎖線14Qで示すように、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの中央部分が互いに離間する方向の湾曲が許容され、燃料タンク本体14が膨張変形される。そして、図3Cに示すように、対向板34と上側補強部材20の横壁20Bとの間の第2間隙40が解消されて対向板34と横壁20Bとが接触すると、下側補強部材18と上側補強部材20との離間が阻止され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bとの湾曲も阻止される。
このように、第1実施形態の燃料タンク12では、燃料タンク本体14の正圧時には、図1に二点鎖線14Qで示すように、燃料タンク本体14の膨張変形が許容されると共に、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
第1間隙28は、下側補強部材18の横壁18Bと、上側補強部材20の横壁20Bとで構成されている。このため、この間隔D1を調整することで、燃料タンク本体14の負圧時における上壁14Tと下壁14Bの変形量を所望の変形量に調整することも可能である。
同様に、第2間隙40は、対向部材30の対向板34と下側補強部材18の横壁18Bとで構成されているので、対向部材30の形状変更等により、この間隔D2を調整できる。そしてこれにより、燃料タンク本体14の正圧時における上壁14Tと下壁14Bの変形量を所望の変形量に調整することも可能である。
なお、第1実施形態において、上記では、下側補強部材18に設けられた対向部材30が、上側補強部材20に嵌合している例を挙げたが、これとは逆に、対向部材30が上側補強部材20に設けられ、下側補強部材18に嵌合される構造でもよい。この構造では、上側補強部材20が本発明の「第2延出部材」の例であり、下側補強部材18が本発明の「第1延出部材」の例となる。そして、横壁18Bが、本発明の「第1接触部」と「第2接触部」を兼ねた例であり、横壁20Bが、本発明の「第1被接触部」の例となる。要するに、「第1接触部」と「第1被接触部」との関係は相対的であり、同様に、「第2接触部」と「第2被接触部」との関係も相対的である。
第1実施形態では、対向部材30が下側補強部材18又は上側補強部材20と一体化されているので、対向部材30が下側補強部材18及び上側補強部材20と別体である構成と比較して、部品点数が少なくなり、構造の簡素化を図ることができると共に、対向部材30の位置を安定的に維持できる。
上記では、下側補強部材18と上側補強部材20の間に第1間隙28が構成された例を挙げている。これに対し、たとえば、図4に示す第1実施形態の変形例のように、下側補強部材18を省略すると共に、上側補強部材20の横壁18Bを燃料タンク本体14の下壁14Bに接近させ、横壁18Bと下壁14Bとの間に第1間隙28が構成される例でもよい。図4に示した変形例では、対向部材30が、燃料タンク本体14の下壁14Bに直接的に設けられる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5には、第2実施形態の燃料タンク52が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第2実施形態において、燃料タンクの全体的構成は、第1実施形態の燃料タンク12(図1参照)と同様であるので、図示を省略する。
第2実施形態では、下側補強部材18と一体化された第1実施形態に係る対向部材30(図2等参照)は設けられておらず、下側補強部材18及び上側補強部材20とは別体の対向部材54を有している。
第2実施形態の対向部材54は、円柱状の支柱56と、この支柱56の両端(状態及び下端)にそれぞれ形成された円板状の支持板58及び対向板60とを有している。
第2実施形態では、下側補強部材18の横壁18Bと、上側補強部材20の横壁20Bの両方に、それぞれ嵌合孔62、64及び挿入スリット66、68が形成されている。嵌合孔62、64及び挿入スリット66、68は、横壁18B、20Bの法線方向(上下方向)に見て同一位置に同一形状で形成されている。具体的には、嵌合孔62、64の内径は支柱56の外径よりもわずかに大きくされており、支柱56(対向部材54)は、横壁18B、20Bに対し相対的に上下動可能である。
挿入スリット66、68は、嵌合孔62、64と、横壁18B、20Bの外部とを連通しており、外部との連通部分は挿入開口66K、68Kとなっている。これらの開口66K、68Kから支柱56を挿入スリット66、68に挿入し、嵌合孔62、64に嵌合させることができる。特に、第2実施形態では、挿入スリット66、68の挿入開口66K、68Kが同方向で開口されている。
第2実施形態の構造では、上側補強部材20が本発明の「第2延出部材」の例であり、下側補強部材18が本発明の「第1延出部材」の例となっている。そして、横壁18Bが、本発明の「第1接触部」と「第2接触部」を兼ねた例であり、横壁20Bが、本発明の「第1被接触部」の例となっている。
第2実施形態の燃料タンク52において、燃料タンク12のタンク内圧が大気圧と同程度である場合は、燃料タンク本体14は膨張あるいは圧縮しない。このとき、図6Aに示すように、対向部材54は重力により、支持板58が上側補強部材20の横壁20Bに接触する位置まで下がった状態で支持されている。実質的に、上側補強部材20に対向部材54が設けられた構造となっている。そして、対向板60と下側補強部材18の横壁18Bの間に第2間隙40が構成されている。
第2実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1実施形態と同様に、第1間隙28が徐々に狭くなりつつ、下側補強部材18と上側補強部材20とが接近する。これにより、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに接近する方向の湾曲が許容される。図6Bに示すように、下側補強部材18の横壁18Bと上側補強部材20の横壁20Bとの間の第1間隙28が解消されて横壁18Bと横壁20Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
第2実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなりつつ、下側補強部材18と上側補強部材20とが離間する。これにより、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が高いに離間する方向の湾曲が許容される。図6Cに示すように、対向板60と下側補強部材18の横壁18Bとの間の第2間隙40が解消されて対向板60と横壁18Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第2実施形態の燃料タンク52においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
しかも第2実施形態では、下側補強部材18及び上側補強部材20とは別体の対向部材54を、挿入スリット66、68から嵌合孔62に嵌合させる構造である。すなわち、下側補強部材18と上側補強部材20とを、横壁18B、20Bが第1間隙28を構成する位置となるよう対向させた状態で、対向部材54を嵌合孔62に嵌合させるので、嵌合作業が容易である。
特に、下側補強部材18の挿入スリット66と、上側補強部材20の挿入スリット68とで、挿入開口66K、68Kの開口方向が同じである。このため、対向部材54を挿入開口66K、68Kから嵌合孔62に向けて一方向にスライドさせるだけで、嵌合孔62に嵌合させることができる。
第2実施形態において、嵌合孔64の内径を支柱56の外径よりもわずかに小さくし、支柱56に密着して保持する(対向部材54が上側補強部材20に固定される)構造でもよい。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7には、第3実施形態の燃料タンク72が示されている。第3実施形態においても、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第3実施形態において、燃料タンクの全体的構成は、第1実施形態の燃料タンク12(図1参照)と同様であるので、図示を省略する。
第3実施形態では、燃料タンク本体14の下壁14Bから上壁14Tに向けて下側補強部材74が延出され、上壁14Tから下壁14Bに向けて上側補強部材76が延出されている。そして、横方向(車両前後方向)に見たとき、下側補強部材74と上側補強部材76とが部分的に重なる重なり部78が構成されている。
図7に示した例では、下側補強部材74は筒状に形成され、上側補強部材76も筒状に形成されている。そして、上側補強部材76が下側補強部材74の内側に入る形状である。なお、これとは逆に、下側補強部材74が上側補強部材76の内側に入る形状でもよい。さらに、下側補強部材74と上側補強部材76の少なくとも一方を板状に形成してもよい。
重なり部78では、下側補強部材74と上側補強部材76のいずれか一方に固定孔80が形成され、他方に挿入孔82が形成されている。図7に示した例では、下側補強部材74に固定孔80が形成され、上側補強部材76に挿入孔82が形成されている。下側補強部材74は筒状に形成されているので、図8Aから分かるように、固定孔80は互いに対向するように2つ形成されている。同様に、上側補強部材76も筒状に形成されているので、挿入孔82は、互いに対向するように2つ形成されている。
固定孔80及び挿入孔82には、挿入部材84が挿入されている。挿入部材84は、円柱状の挿入円柱部86と、この挿入円柱部86の一端を拡径した抜け止め円板部88及び、挿入円柱部86の他端側に設けられた抜け止めピン90を有している。
第3実施形態では、固定孔80と挿入孔82とを位置合わせした状態で、固定孔80及び挿入孔82に挿入円柱部86が挿入される。
固定孔80の内径は、挿入円柱部86の外径よりもわずかに大きく、抜け止め円板部88の外径よりも小さく設定されている。したがって、挿入円柱部86の一端側は抜け止め円板部88によって抜け止めされる。また、挿入円柱部86の他端側は、抜け止めピン90が装着されて抜け止めされる。そして、挿入部材84は、下側補強部材18に対しては上下方向に相対移動しないか、若しくは相対移動しても移動量はわずかとなるように、下側補強部材74に保持される。
挿入孔82は、上下方向に長い長円状に形成されており、挿入孔82の幅(内寸)は、挿入円柱部86の外径よりもわずかに大きい。したがって、上側補強部材76に対する挿入部材84の横ズレは抑制されている。
これに対し、挿入孔82の高さ(内寸)は、幅よりも大きく形成されている。そして、挿入孔82の上壁82Uと挿入円柱部86との間に、第1間隙28が構成されている。また、挿入孔82の下壁82Lと挿入円柱部86との間に、第2間隙40が構成されている。
第3実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に狭くなり(第2間隙40は広がり)つつ、下側補強部材74と上側補強部材76の重なり部78が広くなる。そして、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに接近する方向の湾曲が許容される。図8Bに示すように、挿入孔82の上壁82Uと挿入円柱部86との間の第1間隙28が解消されて上壁82Uと挿入円柱部86とが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
第3実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなり(第1間隙28は広がり)つつ、下側補強部材74と上側補強部材76の重なり部78が狭くなる。そして、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに離間する方向の湾曲が許容される。図8Cに示すように、挿入孔82の下壁82Lと挿入円柱部86との間の第2間隙40が解消されて下壁82Lと挿入円柱部86とが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第3実施形態の燃料タンク72においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
上記では、挿入部材84を下側補強部材74及び上側補強部材76と別体で形成した構造を挙げているが、挿入部材84が、たとえば上側補強部材76と一体化されていてもよい。挿入部材84を下側補強部材74及び上側補強部材76と別体にしておくと、一体化された構造よりも組み付けが容易である。
第3実施形態では、挿入部材84の形状(挿入円柱部86の外径)及び位置や、挿入孔82の形状(高さ)を変更することで、第1間隙28及び第2間隙40の長さを所望の長さに設定することが容易である。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図9には、第4実施形態の燃料タンク102が示されている。第4実施形態においても、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第4実施形態において、燃料タンクの全体的構成は、第1実施形態の燃料タンク12(図1参照)と同様であるので、図示を省略する。
第4実施形態では、燃料タンク本体14の下壁14Bから上壁14Tに向けて延出された下側補強部材104に、上方に向かって斜めに傾斜する傾斜壁104Aと、この傾斜壁104Aの下側で略水平な水平壁104Bとが形成されている。
これに対し、燃料タンク本体14の上壁14Tから下壁14Bに延出された上側補強部材106には、下方に向かって斜めに傾斜する傾斜壁106Aと、この傾斜壁106Aの上側で略水平な水平壁106Dとが形成されている。
上側補強部材106の先端(下端)の横壁106Cは、燃料タンク本体14の下壁14Bとの間に所定の間隔D1をあけて対向しており、第1間隙28を構成している。すなわち、第4実施形態では、横壁106Cは本発明の間隙部材の一例である。
また、水平壁104Bと水平壁106Bとは、所定の間隔D2をあけて互いに対向しており、第2間隙40を構成している。水平壁104Bと水平壁106Bとは、本発明の第2間隙部の一例である。
第4実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に解消され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに接近する方向の湾曲が許容される。そして、上側補強部材106の横壁106Cと燃料タンク本体14の下壁14Bとの間の第1間隙28が解消されて横壁106Cと下壁14Bと接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
第4実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に解消され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに離間する方向の湾曲が許容される。そして、水平壁104Bと水平壁106Dとの間の第2間隙40が解消されて水平壁104Bと水平壁106Dとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第4実施形態の燃料タンク72においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
なお、第4実施形態において、図9に示した例では、第1間隙28が、上側補強部材106の横壁106Cと、燃料タンク本体14の下壁14Bとの間に構成されている。これに代えて、たとえば、下側補強部材104の先端(上端)横壁104Cと燃料タンク本体14の上壁14Tとの間に第1間隙28が構成されるような下側補強部材104の形状であってもよい。
また、下側補強部材104及び上側補強部材106の位置及び形状によっては、横壁106Cと、下側補強部材104の取付フランジ22との間に第1間隙28が構成されていてもよい。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図10には、第5実施形態の燃料タンク112が示されている。第5実施形態においても、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第5実施形態において、燃料タンクの全体的構成は、第1実施形態の燃料タンク12(図1参照)と同様であるので、図示を省略する。
第5実施形態では、燃料タンク本体14の下壁14Bから上壁14Tに向けて下側補強部材114が延出され、上壁14Tから下壁14Bに向けて上側補強部材116が延出されている。横方向で見て下側補強部材114と上側補強部材116の間には、重なり部118が構成されている。
図10に示した例では、下側補強部材114及び上側補強部材116を円筒状とし、上側補強部材116が下側補強部材114の内側に入る形状である。これとは逆に、下側補強部材114が上側補強部材116の内側に入る形状でもよい。さらに、下側補強部材114と上側補強部材116の少なくとも一方を板状に形成してもよい。
下側補強部材114の先端(上縁114U)は、燃料タンク本体14の上壁14T又は取付フランジ22との間に所定の間隔D1をあけて対向しており、第1間隙28が構成されている。
重なり部118では、下側補強部材114と上側補強部材116のいずれか一方(図10の例では下側補強部材114)に、収容孔120が形成されている。下側補強部材114と上側補強部材116の他方(図示の例では上側補強部材116)には、収容孔120に収容される収容爪122が形成されている。
収容爪122は、燃料タンク本体14の下壁14Bに向かって斜めに傾斜する傾斜面122Aと、燃料タンク本体14の上壁14Tと略平行な対向面122Bとが形成されている。そして、対向面122Bと収容孔120の上縁120Uとの間に、第2間隙40が構成されている。
なお、図示の例では、上側補強部材116において、収容爪122の両側に撓みスリット124を設け、収容爪122が形成された周囲に、撓み部126を形成している。また、収容爪122には、前述の傾斜面122Aが形成されている。上側補強部材116を下側補強部材114に挿入するとき、傾斜面122Aが下側補強部材114に接触し、撓み部126が撓むことで、この挿入が容易になる。そして、収容爪122が収容孔120に至ると撓み部126が復元し、第2間隙40が構成される。
第5実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に解消され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに接近する方向の湾曲が許容される。そして、下側補強部材114の上縁120Uと燃料タンク本体14の上壁14T又は取付フランジ22との間の第1間隙28が解消されて、下側補強部材114の上縁120Uと燃料タンク本体14の上壁14T又は取付フランジ22とが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
第5実施形態において、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に解消され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bのそれぞれの中央部分が互いに離間する方向の湾曲が許容される。そして、収容爪122の対向面122Bと収容孔120の上縁120Uとの間の第2間隙40が解消されて対向面122Bと上縁120Uとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第5実施形態の燃料タンク112においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
なお、第5実施形態において、図10に示した例では、第1間隙28が、下側補強部材114の上縁114Uと、燃料タンク本体14の上壁14Tとの間に構成されている。これに代えて、たとえば、上側補強部材116の先端(下端)の下縁116Bと燃料タンク本体14の下壁14Bとの間に第1間隙28が構成されていてもよい。
また、下側補強部材114及び上側補強部材116の形状及び位置によっては、下側補強部材114の上縁114Uと上側補強部材116の取付フランジ22の間に第1間隙28が構成されていてもよい。
上記各実施形態では、本発明の構造部材として、1つの下側補強部材と1つの上側補強部材を有する例に挙げたが、第1間隙28及び第2間隙40を構成する構造は上記に限定されない。たとえば、さらに他の延出部材を追加し、第1間隙28と第2間隙40のいずれか一方を、追加した延出部材によって構成してもよい。
一例として、図11に示す第4実施形態の変形例では、下側補強部材104の水平壁104Bと上側補強部材106の水平壁106Bの間に第2間隙40が構成されている。
しかし、下側補強部材104の横壁104Cは燃料タンク本体14の上壁14Tから大きく離れた位置にあり、第1間隙28は構成されていない。同様に、上側補強部材106の横壁106Cも燃料タンク本体14の下壁14Bから大きく離れた位置にあり、第1間隙28は構成されていない。
第4実施形態の変形例では、燃料タンク本体14の下壁14Bから上壁14Tに向かって、さらに下側補強部材18が延出されると共に、上壁14Tから下壁14Bに向かって、さらに上側補強部材20が延出されている。そして、この下側補強部材18の横壁18Bと、上側補強部材20の横壁20Bの間に、第1間隙28が構成されている。
このように、本発明の構造部材として、2つの下側補強部材18、104を有すると共に、2つの上側補強部材20、106を有する構造として、第1間隙28及び第2間隙40を構成してもよい。
なお、第4実施形態の変形例において、たとえば上側補強部材20を設けず、下側補強部材18を上方に延長し、延長された下側補強部材18と燃料タンク本体14の上壁14Tとの間に第1間隙28が構成される構造でもよい。これとは逆に、下側補強部材18を設けず、上側補強部材20を下方に延長して、延長された上側補強部材20と燃料タンク本体14の下壁14Bとの間に第1間隙28が構成される構造でもよい。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図12には、第6実施形態の燃料タンク132が示されている。第6実施形態においても、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第6実施形態では、図12から分かるように、構造部材134が、たとえば、燃料タンク本体14における車両前後方向の中央よりも前側及び後側にオフセットされた2箇所に設けられている。
図13〜図14Dにも詳細に示すように、第6実施形態の構造部材134は、上側筒状部材136及び下側筒状部材138を有している。上側筒状部材136は、燃料タンク本体14の上壁14Tに取付フランジ24よって取り付けられている。上側筒状部材136は、下壁14Bに向かって延出されている。
上側筒状部材136の下端136Bと燃料タンク本体14の下壁14Bの間には、第1間隙28が構成されている。
また、下側筒状部材138は、燃料タンク本体14の下壁14Bに、取付フランジ22によって取り付けられている。下側筒状部材138は、上壁14Tに向かって延出されている。本実施形態では、下側筒状部材138は上側筒状部材136よりも大径であり、上側筒状部材136の外側に位置している。ただし、下側筒状部材138が上側筒状部材136よりも小径で、上側筒状部材136の内側に位置してもよい。そして、上側筒状部材136と下側筒状部材138には、水平方向(対向壁14Mが対向する方向と直交する方向)に見て重なる重なり部140、142が構成されている。
下側筒状部材138には、水平方向に貫通する収容孔144が形成されている。上側筒状部材136には、収容孔144に収容される移動片146が形成されている。そして、移動片146の上端146Aと、収容孔144の上面144Aとの間に、第2間隙40が構成されている。
上側筒状部材136と下側筒状部材138には、水平方向に貫通する貫通孔148、150が形成されている。貫通孔148、150は、図12に実線で示すように、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bにおける構造部材134の取付部分が接近したり離間したりしていない状態では、水平方向に見て一致している。
下側筒状部材138よりも車両前方側及び車両後方側には、対向部材152が配置されている。対向部材152は、図13に示すように、幅方向中央において、下側筒状部材138から離間する方向に屈曲した離間部152Aを有している。離間部152Aからは、貫通孔148、150に挿入可能な挿入ピン154が突設されている。
下側筒状部材138からは、1つの対向部材152に対し2つずつ、合計で4つの摺動片138Aが延出されている。それぞれの摺動片138Aの外面138Sは、対応する対向部材152の側壁152Bの内面152Uに接触するか、もしくはわずかな隙間をあけて対向している。これにより、対向部材152は、下側筒状部材138に対する車幅方向への移動を抑制され、車両前後方向へは移動可能となる。
摺動片138Aの延出先端には、鉤片138Kが形成されている。鉤片138Kは、対向部材152の側壁152Bに形成された収容孔152Cに収容されている。これにより、下側筒状部材138に対して、対向部材152が過度に車両前後方向に離間しないようになっている。また、対向部材152は、下側筒状部材138に対し、前後方向の所定位置に保持されている。
下側筒状部材138と対向部材152との間にはバネ部材156が配置されている。図13に示す例では、バネ部材156は挿入ピン154に巻きかけられている。このバネ部材156は、対向部材152を下側筒状部材138から離間する方向に所定のバネ力を作用させている。このため、通常状態では、挿入ピン154は貫通孔148、150に挿入されることはない。しかし、燃料タンク本体14内で流動した燃料によって、バネ部材156のバネ力に抗して対向部材152が下側筒状部材138に接近すると、図14Dに示すように、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入される。挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入されると、下側筒状部材138と上側筒状部材136の上下方向の相対移動が抑制される。
このような構成とされた第6実施形態の燃料タンク132では、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入されていない状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに接近する方向の湾曲が許容される。そして、図14Bに示すように、上側筒状部材136の下端136Bと燃料タンク本体14の下壁14Bとの間の第1間隙28が解消されて下端136Bと下壁14Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
第6実施形態において、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入されていない状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに離間する方向の湾曲が許容される。そして、図14Cに示すように、移動片146の上端146Aと収容孔144の上面144Aとの間の第2間隙40が解消されて上端146Aと上面144Aとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第6実施形態の燃料タンク132においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
さらに、第6実施形態の燃料タンク132では、燃料タンク本体14内の燃料流動の力を対向部材152が受け、バネ部材156のバネ力に抗して対向部材152が下側筒状部材138に接近し、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入される。このように、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入されることで、下側筒状部材138と上側筒状部材136の上下方向の相対移動が抑制されるので、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの変形も抑制される。
たとえば、燃料タンク本体14内の燃料が車両前方側へ移動すると、図12に一点鎖線14Rで示すように、燃料タンク本体14の前側部分では、上壁14Tと下壁14Bとが離間する方向に湾曲しようとし、後側部分では、上壁14Tと下壁14Bとが接近する方向に湾曲しようとすることがある。第6実施形態では、この燃料流動により、挿入ピン154が貫通孔148、150に挿入されると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの変形を抑制できる。
なお、上記説明から分かるように、燃料タンク本体14内の燃料流動に伴う上壁14T及び下壁14Bの想定変形量は、燃料タンク本体14の中央(図12の例では車両前後方向の中央)では少ない。したがって、燃料タンク本体14内の燃料流動に伴う上壁14T及び下壁14Bの変形を抑制する観点からは、構造部材134の位置は、燃料タンク本体14の中央を避けた位置(想定変形量が大きい位置)とすることが好ましい。ただし、構造部材134を、たとえば前壁14Fや後壁14Rに近づけすぎると、燃料流動時だけでなく、正圧時及び負圧時においても上壁14T及び下壁14Bの想定変形量が少なくなるので、前壁14Fや後壁14Rから離間した位置が好ましい。
また、構造部材134をオフセット配置する位置は、燃料タンク本体14における車両前後方向前側及び後側に限定されず、たとえば、幅方向右側及び左側でもよい。ただし、燃料タンク本体14内の燃料流動の方向が、車両の前後方向の加速度に起因することが多いことを考慮すると、少なくとも、車両前後方向前側及び後側には構造部材134を配置することが好ましい。
特に上記の例では、下側筒状部材138の車両前方側及び車両後方側に対向部材152を配置している。したがって、車両後方側への燃料流動と、車両前方側への燃料流動の双方に対応して、上壁14T及び下壁14Bの変形を抑制できる。
なお、第1延出部材及び第2延出部材として、上記では上側筒状部材136及び下側筒状部材138を挙げているが、第1延出部材及び第2延出部材は筒状に形成されている必要はなく、たとえば板状の部材であってもよい。上記したように筒状に形成すると、筒状の部材の全周で重なり部142、144を構成できる。そして、重なり部142、144において、周方向に異なる複数個所に貫通孔148、180を形成できる。
しかも、筒状の部材とすることで、平板状の部材と比較して、上下方向の剛性が高くなる。
上記では、上側筒状部材136と下側筒状部材138とに重なり部140、142が構成され、この重なり部において、第1係合部材及び第2係合部材としての貫通孔148、150が形成されている例を挙げている。ただし、重なり部がない構造であっても、たとえば、対向部材に設けた2つの被係合部のそれぞれを、上側筒状部材136と下側筒状部材138のそれぞれの係合部材に係合させることで、上側筒状部材136と下側筒状部材138の相対移動を抑制することが可能である。上記のように、貫通孔148、150に挿入ピン154を挿入すると、上側筒状部材136と下側筒状部材138の相対移動を抑制する際の確実性が高くなる。
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
図15〜図16Cには、第7実施形態の燃料タンク162が部分的に拡大して示されている。第7実施形態において、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。第7実施形態では、構造部材の位置は、たとえば、第6実施形態の燃料タンク132(図12参照)と同一の位置を採り得る。
第7実施形態の構造部材164は、上側筒状部材166及び下側筒状部材168を有している。上側筒状部材166は、燃料タンク本体14の上壁14Tに、取付フランジ24によって取り付けられている。上側筒状部材166は下壁14Bに向かって延出されており、その下端166Bと、燃料タンク本体14の下壁14Bの間には、第1間隙28が構成されている。
上側筒状部材166の上下方向の中間位置には、傾斜部材170が設けられている。傾斜部材170は、上側筒状部材166の中心に向かって次第に下方へ傾斜する(換言すれば、径方向外側の全周で上方に傾斜する)傾斜面170Sを有している。傾斜面170Sの中央は、通常状態で後述する移動球体172が位置する凹部170Hである。
下側筒状部材168は、燃料タンク本体14に下壁14Bに、取付脚部174によって取り付けられている。下側筒状部材168の下部には、対向部材176が設けられている。対向部材176の下面は対向面176Fとされている。
取付脚部174は、下側筒状部材168の周方向に一定の間隔をあけて複数(図15に示す例では3つ)形成されている。これに対し、上側筒状部材166には、取付脚部174に対応する位置に切欠178が形成されている。そして、傾斜部材170の上に対向部材176が位置するように、切欠178に取付脚部174が嵌め合わされる(図16A参照)。ここで、対向面176Fは傾斜面170Sとの間に、第2間隙40をあけて対向する。したがって、図16Aで示す断面では、傾斜面170Sと対向面176Fとは平行である。
傾斜面170Sには、移動部材としての移動球体172が支持される。移動球体172の直径は、図16Aにおいて第2間隙40を傾斜面170Sの法線方向に測った間隔D3よりもわすかに小さい程度とされる。
傾斜部材170の中央(凹部170Hの上方)には、移動球体172の直径よりも大きい許容孔180が形成されている。移動球体172が凹部170Hに位置している状態では、移動球体172の上方には許容孔180が位置しているので、図16Cに示すように、傾斜部材170と対向部材176との相対的な接近が許容される。
これに対し、移動球体172が傾斜面170S上を上昇し、図16Aに二点鎖線172Aで示すように、傾斜面170Sと対向面176Fの間(第2間隙40)に入った状態となることがある。この状態では、傾斜部材170と対向部材176とが相対的に接近しようとしても、傾斜部材170と対向部材176との間に移動球体172Aを挟んでしまうので、この接近が制限される。
このような構成とされた第7実施形態の燃料タンク162では、移動球体172が凹部170Hに位置している状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに接近する方向の湾曲が許容される。そして、図16Bに示すように、上側筒状部材166の下端166Bと燃料タンク本体14の下壁14Bとの間の第1間隙28が解消されて下端166Bと下壁14Bとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
第7実施形態において、移動球体172が凹部170Hに位置している状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに離間する方向の湾曲が許容される。そして、図16Cに示すように、傾斜面170Sと対向面176Fとの間の第2間隙40が解消されて傾斜面170Sと対向面176Fとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲も阻止される。
すなわち、第7実施形態の燃料タンク162においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
さらに、第7実施形態の燃料タンク162では、燃料タンク本体14に水平方向の加速度が作用し、移動球体172が傾斜面170S上を上昇すると、第2間隙40に入る。このように、移動球体172が第2間隙40に入ることで、下側筒状部材168と上側筒状部材166図の上下方向の離間が抑制されるので、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの離間方向の変形も抑制される。
第7実施形態において、傾斜面170Sは、凹部170Hから特定の方向、たとえば車両前方側及び車両後方側にのみ形成されていてもよい。上記したように、傾斜面170Sが凹部170Hから周方向の径方向外側の全周で上方に傾斜する形状では、燃料タンク162に作用する加速度が水平方向であれば、方向に依存することなく、移動球体172を第2間隙40に移動させることができる。
移動部材としては、上記した移動球体172に限定されないが、移動球体172では、傾斜面170Sを転がりながら上昇する。すなわち、移動部材と傾斜面170Sとの摩擦が少なくなる。このため、移動部材が傾斜面170Sを上昇するための加速度の閾値を、傾斜面17Sの傾斜角度によってコントロールしやすくなる。
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
図17〜図19には、第8実施形態の燃料タンク202が部分的に拡大して示されている。第8実施形態において、第1実施形態と同一の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。第8実施形態では、構造部材の位置は、たとえば、第6実施形態の燃料タンク132(図12参照)と同一の位置を採り得る。
第8実施形態の構造部材204は、上側筒状部材206及び下側筒状部材208を有している。上側筒状部材206は、燃料タンク本体14の上壁14Tに取付フランジ24よって取り付けられている。上側筒状部材136は、下壁14Bに向かって延出されている。
下側筒状部材208は、燃料タンク本体14の下壁14Bに、取付フランジ22によって取り付けられている。下側筒状部材208は、上壁14Tに向かって延出されている。
本実施形態では、上側筒状部材206及び下側筒状部材208は、たとえば円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。
下側筒状部材208は上側筒状部材206よりも大径であり、上側筒状部材206の外側に位置している。ただし、下側筒状部材208上側筒状部材206の内側に位置する形状でもよい。そして、上側筒状部材206と下側筒状部材208とは、水平方向(対向壁14Mが対向する方向と直交する方向)に見て重なる重なり部210、212が構成されている。
上側筒状部材206の重なり部210には、対向壁14Mの対向方向(上下方向)が長手方向とされた移動孔214が形成されている。移動孔214の下部からは、車両前方側に向かって上方に傾斜する傾斜孔216が連続している。傾斜孔216の下面は傾斜面216Sである。
これに対し、下側筒状部材208の重なり部212には、対向壁14Mの対向方向が長手方向とされた移動孔218が形成されている。移動孔218の下部からは、車両前方側に向かって上方に傾斜する対向孔220が連続している。対向孔220の上面は対向面220Fである。
燃料タンク本体14が変形していない状態で、図17及び図19から分かるように、移動孔214と移動孔218とは車幅方向に見て略一致した位置及び形状であり、傾斜孔216と対向孔220とは略一致した位置及び形状である。
移動孔214と移動孔218には、移動部材としての移動ピン222が挿入されている。移動ピン222の直径は、移動孔214、218、傾斜孔216及び対向孔220の孔幅W1よりもわすかに狭い程度とされる。移動ピン222の軸方向端部には、孔幅W1よりも広い拡径部222Wが形成され、移動孔214、218、傾斜孔216及び対向孔220から抜け止めされている。
移動ピン222は、傾斜面216Sの下部に位置している。移動ピン222と移動孔214の上面214Aとの間には第1間隙28が構成されている。移動ピン222と移動孔218の上面218Aとの間には第2間隙40が構成されている。
このような構成とされた第8実施形態の燃料タンク202では、移動ピン222が移動孔214、218の下部に位置している状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が負圧になったときは、第1間隙28が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに接近する方向の湾曲が許容される。そして、移動ピン222が移動孔214の上面214Aとの間の第1間隙28が解消されて移動ピン222と上面214Aとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
第8実施形態の燃料タンク202において、移動ピン222が移動孔214、218の下部に位置している状態で、燃料タンク本体14のタンク内圧が正圧になったときは、第2間隙40が徐々に狭くなり、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bが互いに離間する方向の湾曲が許容される。そして、移動ピン222が移動孔218の上面218Aとの間の第2間隙40が解消されて移動ピン222と上面218Aとが接触すると、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの湾曲が阻止される。
すなわち、第8実施形態の燃料タンク202においても、燃料タンク本体14の負圧時には、燃料タンク本体14の圧縮変形が許容され、この変形量は、第1間隙28が解消される一定量に制限される。また、燃料タンク本体14の正圧時には、燃料タンク本体14の膨張変形が許容され、この変形量は、第2間隙40が解消される一定量に制限される。
さらに、第8実施形態の燃料タンク202では、燃料タンク本体14に車両前方への加速度が作用し、移動ピン222が傾斜面216S上を上昇すると、移動ピン222は傾斜孔216と対向孔220とで、実質的に上下に挟まれる。このように、これにより、下側筒状部材208と上側筒状部材206の上下方向の相対移動が抑制されるので、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの離間方向の変形も抑制される。
図20には、本発明の第8実施形態の変形例の燃料タンク232が部分的に拡大して示されている。第8実施形態の変形例において、第8実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
第8実施形態の変形例では、移動孔214の下部から、車両後方側に向かって上方に傾斜する傾斜孔234が連続している。傾斜孔234の下面は傾斜面234Sである。
また、移動孔218の下部から、車両後方側に向かって上昇する対向孔236が連続している。対向孔236の上面は対向面236Fである。
傾斜孔234と対向孔236とは、燃料タンク本体14が変形していない状態で、車幅方向に見て略一致した位置及び形状である。
したがって、第8実施形態の変形例では、第8実施形態の作用効果に加えて、車両後方側への加速度が作用し、移動ピン222が傾斜孔234の傾斜面234Sを上昇した場合でも、下側筒状部材208と上側筒状部材206の上下方向の相対移動が抑制され、燃料タンク本体14の上壁14Tと下壁14Bの離間方向の変形も抑制される。
なお、第8実施形態及びその変形例において、移動部材として、移動ピン222に代えて、第7実施形態の移動球体172を用いることも可能である。移動球体172を用いた構造では、移動球体172が移動孔214、218、傾斜孔216、234及び対向孔220、236から落下しないための部材、たとえばガイド壁を設ければよい。
上記各実施形態では、本発明の「第1延出部材」及び「第2延出部材」が、「下側補強部材18」及び「上側補強部材」のいずれかにそれぞれ対応している例を挙げているが、これらの延出部材は、燃料タンク本体14を補強する部材である必要はない。
上記第1〜第6実施形態では、燃料タンク本体14の上壁14T及び下壁14Bが水平になるように設置された例を挙げたが、上壁14T及び下壁14Bが垂直に(あるいは斜めに)なるように設置されていてもよい。