本発明を実施するための形態について説明する。尚、本明細書においては、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。また、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
ソルダーレジスト組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、熱硬化性成分(D)、ペリレン系黒色着色剤(E1)、及び黒色以外の一種の着色剤(E2)を含む。このソルダーレジスト組成物から、銅板上で光硬化させてから熱硬化させることで18〜22μmの範囲内に含まれるいずれかの厚み寸法を有する被膜が形成された場合、この被膜は、L*値が40以下であり、a*値が5.1〜55の範囲内であり、b*値が−15〜15の範囲内である。
このように、ソルダーレジスト組成物が、ペリレン系黒色着色剤(E1)及び黒色以外の着色剤(E2)含むと共に、このソルダーレジスト組成物から形成された被膜が特定範囲のL*値、a*値、及びb*値を有することにより、ソルダーレジスト組成物の被膜を露光する際、この被膜を表層から深部まで十分に硬化することができる。これにより、ソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の高い解像性と高い隠蔽性とを両立させることができる。
本実施形態に係るソルダーレジスト組成物について、更に詳しく説明する。
[カルボキシル基含有樹脂(A)について]
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与することができる。
[カルボキシル基を有し、光重合性官能基を有さないカルボキシル基含有樹脂(A1)について]
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基を有し、官能基を有さないカルボキシル基含有樹脂(A1)(以下、(A1)成分ともいう)を含有することができる。
(A1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体には更にカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができ、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO、PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物はソルダーレジスト層の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
(A1)成分を得るために用いられる化合物の種類、比率等は、(A1)成分の酸価が適当な値となるように適宜選択される。(A1)成分の酸価は20〜180mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、35〜165mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
[光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A2)について]
カルボキシル基含有樹脂(A)は、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A2)(以下、(A2)成分ともいう)を含有することもできる。光重合性官能基は、例えばエチレン性不飽和基である。
(A2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種からなる群から選択される化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を、含有することができる。
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、及びエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することができる。
エポキシ化合物(a1)が、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。この重合体の合成に供されるエチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、ソルダーレジスト層の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
エチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
特にエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
エチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.4〜1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.5〜1.1モルの範囲内となる量であることが好ましい。
多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、ソルダーレジスト組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
(A2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる樹脂(第二の樹脂(b)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物も含まれていてもよい。
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物はソルダーレジスト層の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
第二の樹脂(b)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
(A2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部又は全部にエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を付加して得られる樹脂(以下、第三の樹脂(c)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基及びヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
第三の樹脂(c)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば上述の第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じでよい。
第三の樹脂(c)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
第三の樹脂(c)を得るためのエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI一BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BP」)、及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズBEI」)が挙げられる。
(A2)成分全体の重量平均分子量は、800〜100000の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、ソルダーレジスト組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
(A2)成分全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、(A2)成分全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中のカルボキシル基の残留量が低減し、被膜の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
[光重合性化合物(B)について]
光重合性化合物(B)は、ソルダーレジスト組成物に光硬化性を付与する。光重合性化合物(B)は、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
光重合性モノマーは、例えばエチレン性不飽和基を有する。光重合性モノマーは、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
光重合性モノマーが、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
光重合性プレポリマーとしては、光重合性モノマーを重合させて得られるプレポリマーに、エチレン性不飽和基を付加したプレポリマーや、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類等が挙げられる。
[光重合開始剤(C)について]
光重合開始剤(C)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。光重合開始剤(C)は、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される2種以上の成分が含まれていることが特に好ましい。
[熱硬化性成分(D)について]
熱硬化性成分(D)は、ソルダーレジスト組成物に熱硬化性を付与することができる。本実施形態では、熱硬化性成分(D)が、環状エーテル骨格を有する化合物を含むことが好ましい。この環状エーテル骨格を有する化合物は、例えば、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
エポキシ化合物は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ化合物は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物の種類は特に限定されないが、特にエポキシ化合物はフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ハイドロキノン型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学社製の品番YDC−1312)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
エポキシ化合物がトリグリシジルイソシアヌレートを含有することも好ましい。トリグリシジルイソシアヌレートとしては、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体が好ましく、或いはこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物が好ましい。
[着色剤(E)について]
本実施形態のソルダーレジスト組成物は着色剤(E)を含有する。着色剤(E)には、ペリレン系黒色着色剤(E1)、及び黒色以外の一種の着色剤(E2)が含まれている。ソルダーレジスト組成物中に、ペリレン系黒色着色剤(E1)単独ではなく、着色剤(E2)も含まれていることにより、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜を露光する際に被膜を表層から深部まで十分に硬化させることができると共に、このソルダーレジスト組成物から形成される被膜による導体配線の隠蔽性を十分に確保することができる。
特に着色剤(E)に、ペリレン系黒色着色剤(E1)及び着色剤(E2)のみが含まれていることが好ましい。このようにペリレン系黒色着色剤(E1)と着色剤(E2)とを組み合わせることにより、ソルダーレジスト組成物の光硬化性の低下を抑制することができると共に、被膜に高い隠蔽性を付与することができる。
[ペリレン系黒色着色剤(E1)について]
ペリレン系黒色着色剤(E1)は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック31、及びカラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック32からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。また、ペリレン系黒色着色剤(E1)は上記の成分以外に、カラーインデックスの番号はないが、ペリレン系の近赤外線透過黒色着色剤として知られているBASF社のLumogen Black FK 4280及びLumogen Black FK 4281のうち、少なくとも一方を含有することができる。
[黒色以外の一種の着色剤(E2)について]
着色剤(E2)は、例えば、カラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されている公知の着色剤のうち、黒色でないものであればよい。着色剤(E2)は、例えば、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、及び前記以外の色の着色剤からなる群から選択される一種の着色剤である。
着色剤(E2)は赤色着色剤であることが好ましい。ソルダーレジスト組成物がペリレン系黒色着色剤(E1)と赤色着色剤とを含有することにより、このソルダーレジスト組成物から形成される被膜を露光する際に、この被膜を表層から深部まで十分に硬化させることができると共に、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜による導体配線の隠蔽性をより確保しやすい。赤色着色剤は、例えば、アントラキノン系赤色顔料、アゾ系赤色顔料、レーキ系赤色顔料、キナクリドン系赤色顔料、及びジケトピロール系赤色顔料からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
赤色着色剤は、特にアントラキノン系赤色顔料であることが好ましい。アントラキノン系赤色顔料は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド83、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド168、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド177、及びカラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド216で表されるものが挙げられる。赤色着色剤がアントラキノン系赤色着色剤であることにより、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜による導体配線の隠蔽性を特に確保しやすい。また、分散性と耐候性に優れている。
[着色剤(E3)について]
着色剤(E)は、着色剤(E1)及び着色剤(E2)以外の着色剤(E3)を更に含有してもよい。すなわち、ソルダーレジスト組成物中に、着色剤(E3)が含まれていてもよい。
着色剤(E3)は、例えば、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、及び前記以外の色の着色剤からなる群から選択される一種以上の着色剤である。着色剤(E3)は、特に、赤色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、及び茶色着色剤からなる群から選択される一種以上の着色剤であることが好ましい。
[その他の成分について]
ソルダーレジスト組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、ソルダーレジスト組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができ0る。
ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤の割合は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、ソルダーレジスト組成物全体に対して、有機溶剤が5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜80質量%の範囲内であれば更に好ましい。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、ソルダーレジスト組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
例えば、ソルダーレジスト組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合、ソルダーレジスト組成物は、更にエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
ソルダーレジスト組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
ソルダーレジスト組成物は、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;高分子分散剤;並びに硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーからなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
ソルダーレジスト組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えばソルダーレジスト組成物は、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等を含有してもよい。
[ソルダーレジスト組成物に含まれる各成分の配合量及び調製方法について]
ソルダーレジスト組成物中の成分の量は、ソルダーレジスト組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)、光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、及び熱硬化性成分(D)の合計に対して、40〜80質量%の範囲内であれば好ましく、45〜75質量%の範囲内であればより好ましく、50〜70質量%の範囲内であれば更に好ましい。
光重合性化合物(B)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して5〜60質量%の範囲内であれば好ましく、10〜50質量%の範囲内であればより好ましく、15〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。
光重合開始剤(C)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、3〜40質量%の範囲内であればより好ましく、5〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
熱硬化性成分(D)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、5〜85質量%の範囲内であることが好ましく、10〜60質量%の範囲内であればより好ましく、15〜45質量%の範囲内であれば更に好ましい。
着色剤(E)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、0.2〜15質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲内であればより好ましく、1〜8質量%の範囲内であれば更に好ましい。ソルダーレジスト組成物に含まれる着色剤(E)がこの範囲内であることにより、このソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の解像性を確保しやすい。ソルダーレジスト組成物に含まれる着色剤(E)の含有量が多すぎると、ソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の解像性が低下してしまう。
特に、ペリレン系黒色着色剤(E1)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、0.1〜14質量%の範囲内であれば好ましく、0.5〜7質量%の範囲内であればより好ましい。
黒色以外の一種の着色剤(E2)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、0.1〜12質量%の範囲内であれば好ましく、0.5〜7質量%の範囲内であればより好ましい。特に着色剤(E2)が赤色着色剤である場合には、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.5〜7質量%の範囲内であれば好ましい。
ソルダーレジスト組成物に含まれるペリレン系黒色着色剤(E1)及び着色剤(E2)の含有量が上記の範囲内であることにより、ソルダーレジスト組成物の被膜を硬化させる際に、被膜の表層から深部まで特に十分に硬化しやすいと共に、ソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の導体配線の隠蔽性を特に向上させることができる。
また、ソルダージスト組成物中に着色剤(E3)が含まれる場合、着色剤(E3)の含有量は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、7質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上であること好ましい。
上記のようなソルダーレジスト組成物の成分となる原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト組成物が調製され得る。
このソルダーレジスト組成物を、銅板上で光硬化させてから熱硬化させることで、18〜22μmの範囲内に含まれるいずれかの厚み寸法を有する被膜を形成した場合、この被膜のL*値が40以下であり、a*値が5.1〜55の範囲内であり、且つb*値が−15〜15の範囲内である。尚、18〜22μmの範囲内の一つの厚みの被膜のL*値、a*値、及びb*値が上記の条件を備えれば、その他の厚みを有する被膜は上記の条件を備えなくてもよい。例えば、20μmの厚みの被膜が上記の条件を備えていれば、18μmの被膜が上記の条件を備えていなくてもよい。この場合、ソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層による導体配線の隠蔽性が十分に確保される。尚、被膜のL*値、a*値、及びb*値は、例えば、分光測色計によって測定することができる。この分光測色計として、例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製の型番CM−600dが挙げられる。
保存安定性等の観点から、ソルダーレジスト組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、ソルダーレジスト組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。例えば、原料のうち光重合性化合物(B)、有機溶剤の一部、及び熱硬化性成分(D)を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合し混合液を調製し、この混合液からソルダーレジスト層を形成することができる。
[被覆プリント配線板について]
本実施形態によるソルダーレジスト組成物は、例えばプリント配線板にソルダーレジスト層を形成するために適用される。これにより、被覆プリント配線板が製造される。
以下に、本実施形態によるソルダーレジスト組成物を用いてプリント配線板上にソルダーレジスト層を形成する方法の一例を、図1A〜図1Cを参照しながら説明する。本例では、光硬化性と熱硬化性とを兼ね備えるソルダーレジスト組成物からソルダーレジスト層を形成する。
まず、プリント配線板100を用意し、このプリント配線板上にソルダーレジスト組成物から塗膜1を形成する。例えばプリント配線板100の表面上にソルダーレジスト組成物を塗布して湿潤状態の塗膜(湿潤塗膜)を形成する。ソルダーレジスト組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、必要に応じてソルダーレジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、図1Aに示すように、乾燥後の塗膜1(乾燥塗膜)を得る。
尚、プリント配線板上に塗膜1を形成するにあたっては、予め適宜の支持体上にソルダーレジスト組成物を塗布してから乾燥することで塗膜1を形成し、この塗膜1をプリント配線板100に重ねてから、塗膜1とプリント配線板100に圧力をかけることで、プリント配線板100上に塗膜1を設けてもよい(ドライフィルム法)。
続いて、図1Bに示すように、塗膜1にマスク3を直接又は間接的に当てがってから、マスク3へ向けて活性エネルギー線を照射することで、マスク3を介して塗膜1を露光する。
活性エネルギー線は、ソルダーレジスト組成物の組成に応じて選択されるが、本実施形態では紫外線である。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
マスク3は、活性エネルギー線を透過させる露光部31と、活性エネルギー線を遮蔽する非露光部32とを備える。露光部31はソルダーレジスト層のパターン形状と合致する形状を有する。このマスクとして、例えばマスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。このマスク3を介して塗膜1が露光されると、塗膜1における露光部31に対応する部分には光が照射され、塗膜1における非露光部32に対応する部分には光が照射されない。
尚、露光方法として、マスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えばレーザ露光等による直接描画法が採用されてもよい。
本実施形態では、このように塗膜1を露光すると、上述の通り、塗膜1の表層から深部にわたって効率良く光硬化反応が進む。
塗膜1の露光後、プリント配線板100からマスク3を取り外してから、塗膜1に現像処理を施すことで、塗膜1における露光されていない部分を除去する。そうすると、図1Cに示すように、プリント配線板100の表面上に塗膜1の露光された部分が、ソルダーレジスト層10として残存する。
現像処理では、ソルダーレジスト組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ性溶液が挙げられる。現像液として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することもできる。これらの現像液のうち、一種のみが用いられても、複数種が併用されてもよい。現像液がアルカリ性溶液である場合、その溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
ソルダーレジスト組成物は熱硬化性成分(D)を含有するため、ソルダーレジスト層に加熱処理を施すことでソルダーレジスト層を熱硬化させることができる。加熱処理の条件は、例えば加熱温度120〜180℃の範囲内、加熱時間30〜90分間の範囲内である。これにより、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
また、ソルダーレジスト層に加熱処理を施した後、更にソルダーレジスト層に活性エネルギー線を照射してもよい。この場合、ソルダーレジスト層の光硬化反応を更に進行させることができる。これにより、ソルダーレジスト層のマイグレーション耐性が更に向上する。
上記の方法により、プリント配線板とこのプリント配線板を部分的に被覆するソルダーレジスト層とを備える被覆プリント配線板が得られる。この被覆プリント配線板におけるソルダーレジスト層は表層から深部に亘って充分に硬化されている。
このソルダーレジスト層の膜厚は、例えば、5〜60μmの範囲内であることが好ましく、10〜40μmの範囲内であることがより好ましい。この場合、ソルダーレジスト層による導体配線の隠蔽性を向上させることができる。
このソルダーレジスト層が、更に別のソルダーレジスト層(第二レジスト層)によって覆われていることも好ましい。この第二レジスト層によって、プリント配線板上のソルダーレジスト層を保護することができる。
更に、この第二レジスト層が第一の領域と、前記第一の領域よりも光透過率が高い第二の領域を含むことが好ましい。第二レジスト層が光透過率の異なる複数の領域を備えることにより、互いに色が異なる領域を形成することができる。この場合、第二レジスト層に容易にマーキングを施すことができる。例えば、第一の領域が適宜の図形、文字等の形状に形成されることにより、第一の領域によるマーキングが形成される。また、第二の領域が適宜の図形、文字等の形状に形成されることで、第二の領域によるマーキングが形成されてもよい。このため、第二レジスト層の形成と同時にマーキングを施すことができる。
以下、第二レジスト層を形成するためのソルダーレジスト組成物(以下、第二レジスト組成物という)について説明する。
第二レジスト組成物は、カルボキシル基含有樹脂(F)、光重合性化合物(G)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)、及び融点を有し且つ光重合性を有しない有機化合物(J)(以下、特定有機化合物(J)ともいう)を含有する。
上記のソルダーレジスト層及び第二レジスト層を備える被覆プリント配線板を製造するにあたっては、ソルダーレジスト組成物の乾燥塗膜(以下、第一塗膜という)上に、第二レジスト組成物を塗布して乾燥させて第二塗膜を形成し、この第二塗膜を露光し、続いて露光後の第一塗膜及び第二塗膜をアルカリ性溶液で現像し、更に現像後の第一塗膜及び第二塗膜を加熱する。これにより、ソルダーレジスト層及び第二レジスト層を備えた被覆プリント配線板が製造される。
特に、第二塗膜を露光するにあたっては、第二塗膜における第一の部分に活性エネルギー線を照射し、第二塗膜における第一の部分とは異なる第二の部分には、第一の部分よりも露光量が低くなるように活性エネルギー線を照射し、第二塗膜における第一の部分及び第二の部分とは異なる第三領域には活性エネルギー線を照射しない。
尚、第一の部分における露光量は均一であってもよく、第一の部分内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。また、第二の部分に活性エネルギー線を照射する場合、第二の部分における露光量は均一であってもよく、第二の部分内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。
特に、第二塗膜を加熱するにあたっては、第二塗膜の加熱温度が、Th≧Tm−30(但し、Th(℃)は第二塗膜の前記加熱温度、Tmは、特定有機化合物(J)の融点である)の関係を満たす。すなわち、第二塗膜を加熱する際の加熱温度が、特定有機化合物(J)の融点から30℃を減じた温度以上である。換言すれば、特定有機化合物(J)の融点が、第二塗膜を加熱する際の加熱温度に30℃を加えた温度以下である。
第二レジスト層を形成する際に、上記の条件を適用すると、第一の部分内には、気泡が形成される。一方、第二の部分内には、加熱されても気泡は形成されず、或いは、気泡は形成されるが、この気泡の割合が第一の部分よりも低くなる。このため、第二塗膜における第一の部分の硬化物(第一の領域)の光透過率が、第二の部分の硬化物(第二の領域)よりも低くなる。また、第一の領域では、第二の領域よりも光の散乱が生じやすい。
このため、第一の領域の外観色は、第二レジスト組成物に含まれる着色剤(I)の色となる。これに対して、第二の領域の外観色は、第二レジスト組成物に含まれる着色剤(I)の色とソルダーレジスト層の表面の色とが混合した色となる。この効果は、次の理由により生じると推察される。
第一の部分は、第二塗膜の露光時に活性エネルギー線が照射されているため、光重合性化合物(G)の光重合反応により生成した重合体を含んでいる。この状態で第二塗膜が加熱されると、第二塗膜内の特定有機化合物(J)が溶融することで第二塗膜が変形しようとするが、第一の部分は重合体を含有するため、特定有機化合物(J)の溶融に追随して変形しにくい。このため、第一の部分内に気泡が生じるものと、考えられる。一方、第二の部分は、光重合性化合物(G)の重合体を含まず、或いはこの重合体の割合が第一の部分よりも低い。このため、第二塗膜が加熱されると、第二の部分は、第一の部分と比べて、特定有機化合物(J)の溶融に追随して変形しやすい。このために、第二の部分内に気泡が生じず、或いは第二の部分内の気泡の割合が第一の部分よりも低くなるものと、考えられる。
尚、本実施形態では、第二塗膜を加熱する際の加熱温度が、特定有機化合物(J)の融点よりも低くても、特定有機化合物(J)の融点から30℃を減じた温度以上であれば、第一の部分内に気泡が生じる。その理由は明確には解明されていないが、第二塗膜内では特定有機化合物(J)に別の化合物が混入することで、特定有機化合物(J)の融点降下(凝固点降下)が生じるのが、理由の一つであると推察される。
露光、現像後の第二塗膜の加熱温度はTm+100≧Th≧Tm−30の関係を満たすことがより好ましい。この場合、第二レジスト組成物中の成分の熱による劣化が抑制される。
第一塗膜上に第二塗膜を形成した時点から、第二塗膜の露光が完了する時点までの間、第二塗膜の温度を、特定有機化合物(J)の融点よりも低い温度に維持することよりが好ましい。この場合、第一の領域内の気泡の割合がより高くなる。このため第一の領域と第二の領域との間の外観色の相違がより顕著になる。これは、第一の部分内の光重合性化合物(G)が重合する前に第一の部分内で特定有機化合物(J)が溶融すると、第一の部分内で特定有機化合物(J)が安定してしまい、このため第二塗膜の露光後に第一の部分を加熱しても、第一の部分が変形しにくくなるためであると、推察される。更に好ましくは、第二レジスト組成物を配線板上に配置する時点から、第二塗膜の露光が完了する時点までの間、第二塗膜の温度を、特定有機化合物(J)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度に維持する。
この第二レジスト組成物について、更に詳しく説明する。
[カルボキシル基含有樹脂(F)について]
カルボキシル基含有樹脂(F)は、第二レジスト組成物から形成される塗膜に、アルカリ性溶液による現像性を付与することができる。カルボキシル基含有樹脂(F)は、例えば、上記のソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)と同じものを使用することができる。
[光重合性化合物(G)について]
光重合性化合物(G)は、第二レジスト組成物に光硬化性を付与することができる。光重合性化合物(G)は、例えば、上記のソルダーレジスト組成物に含まれる光重合性化合物(B)と同じものを使用することができる。
[光重合開始剤(H)について]
光重合開始剤(H)は、例えば、上記のソルダーレジスト組成物に含まれる光重合開示剤(C)と同じものを使用することができる。特に、第二レジスト組成物に含まれる光重合開始剤(H)は、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される2種以上の成分が含まれていることが好ましい。
[着色剤(I)について]
着色剤(I)は、例えば、顔料、染料、及び色素からなる群から選択される一種以上の材料が含まれる。尚、着色剤とは、被膜形成用組成物から形成される被膜を着色させる物質である。着色剤は、顔料と染料のいずれも含み得る。但し、有色ではあるが被膜形成用組成物から被膜を製造する過程で加熱されることで無色化する物質は、被膜を着色させないため、着色剤(I)には含まれない。
着色剤(I)は、例えば赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、及び前記以外の色の着色剤からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
特に、着色剤(I)が緑色着色剤、あるいは青色着色剤と黄色着色剤の混合物を含むことが好ましい。これにより、第二レジスト層における第一の領域の外観色が主として緑色になると共に、第二の領域の外観色が緑色着色剤の色とソルダーレジスト層の表面の色との混合色になる。このような第一領域と第二領域とは外観色が明確に異なるため、第一の領域及び第二の領域によって形成されるマーキングが判別しやすい。特に、ソルダーレジスト組成物に含まれる着色剤(E2)が赤色顔料であって、ソルダーレジスト層の表面の色が赤みがかった黒色である場合、第二の領域の外観色は深い黒色となる。この場合、第二レジスト層の第一の領域と第二の領域とは外観色が特に明確に異なるため、第一の領域及び第二の領域によって形成されるマーキングが特に判別しやすい。
緑色着色剤は、例えば、フタロシアニン系緑色着色剤、アントラキノン系緑色着色剤、ペリレン系緑色着色剤、及び金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物からなる群から選択される一種以上の着色剤を含有することができる。緑色着色剤のより具体的な例として、ピグメントグリーン7;及びピグメントグリーン36で表される着色剤が挙げられる。
[特定有機化合物(J)について]
特定有機化合物(J)は、明確な融点を有し、この融点以上で低粘度の液体になることが好ましい。特定有機化合物(J)の融点が、100〜230℃の範囲内であることが好ましい。この場合、第二レジスト組成物が充分に露光されてから加熱されると、第二レジスト組成物の硬化物中に気泡が特に生成しやすくなり、且つ第二レジスト組成物の硬化物全体に対する気泡の割合が高くなりやすい。特定有機化合物(J)は、例えば結晶性エポキシ化合物及びジカルボン酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
結晶性エポキシ化合物は、エポキシ基を有し且つ結晶性を有するモノマー、プレポリマー及びポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。このような化合物は市販され、容易に入手可能である。例えば結晶性エポキシ化合物は、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312(ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120TE(チオエーテル型結晶性エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の品名GTR−1800(テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品名YX−4000(ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂)、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(低融点タイプ)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
ジカルボン酸は、例えばマロン酸、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
特定有機化合物(J)が、光重合開始剤(H)に含まれる化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、及びエタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾールー3−イル〕―1−(0−アセチルオキシム)が挙げられる。
[第二レジスト組成物に含まれるその他の成分について]
第二レジスト組成物はエポキシ化合物を含有していてもよい。エポキシ化合物は、例えば、特定有機化合物(J)に含まれる結晶性エポキシ化合物、及び非結晶性エポキシ化合物からなる群から選択される一種以上の成分を含有し得る。
非結晶性エポキシ化合物は、例えば、非結晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−695)、非結晶性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−775)、非結晶性のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−865)、非結晶性のビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER1001)、非結晶性のビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER4004P)、非結晶性のビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON EXA−1514)、非結晶性のビスフェノールAD型エポキシ樹脂、非結晶性の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、非結晶性のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、及び非結晶性の特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品名EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120T)、及び前記以外の非結晶性のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
第二レジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合には、第二レジスト組成物がエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。これらの化合物の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。また、硬化剤は、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を含有することもできる。
第二レジスト組成物は、更に安息香酸系又はp−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。また、第二レジスト組成物は、レーザ露光法用増感剤として7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、4,6−ジエチル−7−エチルアミノクマリン等のクマリン誘導体、その他カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
第二レジスト組成物は充填材を含有してもよい。この場合、第二塗膜の硬化収縮が低減する。充填材は、例えばシリカ、硫酸バリウム、カーボンナノチューブ、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
第二レジスト組成物は、更に必要に応じて適宜の添加剤を含有してもよい。例えば第二レジスト組成物は、シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有してもよい。
第二レジスト組成物は有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、第二レジスト組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。この有機溶剤は、例えば、上記のソルダーレジスト組成物に含まれる有機溶剤と同様のものが使用可能である。
第二レジスト組成物中の有機溶剤の割合は、第二塗膜の予備乾燥時に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥後の第二塗膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、第二レジスト組成物中の有機溶剤の割合が、5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、第二レジスト組成物の良好な塗布性が得られる。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
[第二レジスト組成物に含まれる各成分の配合量及び調製方法について]
第二レジスト組成物中の成分の量は、第二レジスト組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
カルボキシル基含有樹脂(F)は、第二レジスト組成物の固形分量に対して15〜55質量%の範囲内であれば好ましく、20〜50質量%の範囲内であればより好ましく、25〜45質量%の範囲内であれば更に好ましい。
光重合性化合物(G)は、第二レジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(F)に対して5〜60質量%の範囲内であれば好ましく、10〜50質量%の範囲内であればより好ましく、15〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。
光重合開始剤(H)は、第二レジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(F)に対して1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、3〜40質量%の範囲内であればより好ましく、5〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
着色剤(I)は、第二レジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(F)に対して0.2〜15質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲内であればより好ましい。緑色着色剤は、第二レジスト組成物の固形分量に対して0.2〜15質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲内であればより好ましい。
特定有機化合物(J)は、第二レジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(F)に対して15〜200質量%の範囲内であることが好ましく、20〜100質量%の範囲内であればより好ましく、25〜80質量%の範囲内であれば更に好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば特に好ましい。
尚、ここでいう固形分量とは、第二レジスト組成物から第二レジスト層を形成する過程で揮発する溶剤などの成分を除いた、全成分の合計量のことである。
上記のような第二レジスト組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、第二レジスト組成物が調製され得る。
保存安定性等を考慮して、第二レジスト組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。例えば、第二レジスト組成物の原料のうち、光重合性化合物(G)と、有機溶剤の一部と、特定有機化合物(J)とを予め混合して分散させることで第一剤を調製し、第二レジスト組成物の原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合することで、第二レジスト組成物を調製することができる。
以下に、本実施形態の第二レジスト組成物を用いてソルダーレジスト層上に第二レジスト層を形成する方法を、図2A〜図2Cを参照して説明する。
まず、プリント配線板100を用意し、このプリント配線板100上に、上述の方法により、ソルダーレジスト組成物から第一塗膜1を形成した後、必要に応じてソルダーレジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、湿潤塗膜を乾燥させて、乾燥後の第一塗膜1(乾燥塗膜)を得る。
次に、第一塗膜1の上に第二レジスト組成物を塗布して、図2Aに示すように第二塗膜2を形成する。第二レジスト組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。
続いて、必要に応じて第二レジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、第二塗膜2を加熱する(予備乾燥)。この場合の加熱温度は、第二レジスト組成物中の特定有機化合物(J)の融点よりも低い温度であることが好ましく、特に第二レジスト組成物中の特定有機化合物(J)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度であることが好ましい。この加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内である。
第一塗膜1上に第二塗膜2を形成するにあたっては、予め適宜の支持体上に第二レジスト組成物を塗布してから乾燥することで第二塗膜2(ドライフィルム)を形成し、このドライフィルムを第一塗膜1の上に重ねてから、ドライフィルムと第一塗膜1に圧力をかけることで、第一塗膜1の上にドライフィルムを転着させてもよい(ドライフィルム法)。この場合、予備乾燥が省略されてもよい。
あるいは、予め適宜の支持体上に第二レジスト組成物を塗布した後、第一レジスト組成物を塗布してから乾燥することで第二塗膜2と第一塗膜1の2層からなる塗膜(ドライフィルム)を形成し、このドライフィルムをプリント配線板100上に重ねてから、ドライフィルムとプリント配線板100に圧力をかけることで、プリント配線板100上にドライフィルムを転着させてもよい(ドライフィルム法)。この場合、予備乾燥が省略されてもよい。
続いて、図2Bに示すように、第二塗膜2にマスク4を直接又は間接的にあてがってから、マスク4へ向けて活性エネルギー線を照射することで、マスク4を介して第二塗膜2及び第一塗膜1を露光する。
活性エネルギー線は、ソルダーレジスト組成物及び第二レジスト組成物の組成に応じて選択されるが、本実施形態では紫外線である。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
マスク4は、互いに光透過性の程度が異なる三種類の部分を備える。例えばマスク4は、光透過性を有する部分(以下、透過性部41という)と、透過性部41よりも低い光透過性を有する部分(以下、低透過性部42という)と、光透過性を有しない部分(以下、非透過性部43という)とを備える。
このマスク4を介して第二塗膜2が露光されると、第二塗膜2における透過性部41に対応する部分(第一の部分21)には光が照射され、第二塗膜2における低透過性部42に対応する部分(第二の部分22)には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射され、第二塗膜2における非透過性部43に対応する部分(第三の部分23)には、光が照射されない。尚、第一の部分21は露光時に光が照射される部分であり、第二の部分22は露光時に第一の部分21よりも低い露光量で光が照射される部分であり、第三の部分23は露光時に光が照射されない部分であると、いうこともできる。マスク4は、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23が、第二塗膜2における所定の箇所に位置するように、設計される。
このように第二塗膜2を露光すると、第二塗膜2における第一の部分21では光重合性化合物(G)の光重合反応が進行し、第二の部分22でも、第一の部分21よりも程度が低いものの、光重合性化合物(G)の光重合反応が進行する。一方、第三の部分23では、光重合性化合物(G)の光重合反応は進行しない。
尚、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23における露光量が所望の値にコントロール可能であれば、上記のようなマスク4が用いられなくてもよい。例えば、第二塗膜2に、第三の部分23を遮蔽すると共に第一の部分21及び第二の部分22を遮蔽しないマスク(第一のマスク)を介して、光を照射し、続いて第一のマスクに、第二の部分22を遮蔽すると共に第一の部分21は遮蔽しないマスク(第二のマスク)を重ね、この第一のマスクと第二のマスクを介して、更に光を照射してもよい。この場合でも、第一の部分21には光が照射され、第二の部分22には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射され、第三の部分23には、光が照射されない。
第一の部分21の露光量に対する、第二の部分22の露光量の割合は、例えば1〜75%の範囲内であり、特に1.2〜60%の範囲内であることが好ましい。また、第一の部分21の露光量は、例えば100〜5000mJ/cm2の範囲内であり、第二の部分22の露光量は、例えば20〜500mJ/cm2の範囲内である。
第二塗膜2の露光と同時に、第一塗膜1も露光される。第一塗膜1における透過性部41及び低透過性部42に対応する部分には、光が照射されて、この部分が硬化する。一方、第一塗膜1における非透過性部43に対応する部分には、光が照射されない。
第二塗膜2及び第一塗膜1の露光後、第二塗膜2及び第一塗膜1をアルカリ性現像液で現像する。そうすると、第二塗膜2の第三の部分23がプリント配線板100上から除去されると共に、第一塗膜1における非透過性部43に対応する部分も、プリント配線板100上から除去される。第二塗膜2の第一の部分21及び第二の部分22は、プリント配線板100上に残存する。
第二塗膜2及び第一塗膜1の露光後、第二塗膜2(第一の部分21及び第二の部分22)を、加熱する。この場合の第二塗膜2の加熱温度Thは、Th≧Tm−30の関係を満たし、好ましくはTm+100≧Th≧Tm−30の関係を満たす。この式において、Th(℃)は第二塗膜2の加熱温度であり、Tm(℃)は、特定有機化合物(J)の融点である。加熱温度は、例えば100〜200℃の範囲内である。また加熱時間は20分〜5時間の範囲内である。
このように第二塗膜を加熱温度Thで加熱してから、更に150℃〜300℃の範囲内、1〜10分間の範囲内の条件で加熱しても良い。更に、第二塗膜を加熱温度Thで加熱してから、100〜5000mJ/cm2の範囲内の条件で紫外線を照射しても良い。
このように第二塗膜2が加熱されると、第一の部分21内で気泡が発生する。一方、第二の部分22内には気泡は発生せず、或いは気泡は発生するものの、その割合は第一の部分21よりも低い。また、第二レジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合、このように第二塗膜2を加熱するとエポキシ化合物の熱硬化反応が進行する。
第一の部分21及び第二の部分22の加熱後に、第一の部分21及び第二の部分22の全体に光を照射してもよい。この場合、第一の部分21及び第二の部分22内に未反応のまま残存する光重合性化合物(G)の、光重合反応が進行する。
これにより、図2Cに示すように、プリント配線板100上に、第一塗膜1の硬化物からなるソルダーレジスト層10が形成され、ソルダーレジスト層10の上に、第二塗膜2の硬化物からなる第二レジスト層20が形成される。これにより、被覆プリント配線板が得られる。
この被覆プリント配線板の第二レジスト層20は、第一の部分21の硬化物である第一の領域24と、第二の部分22の硬化物である第二の領域25とを備える。第一の領域24は気泡を含有する。一方、第二の領域25は気泡を含有せず、或いは気泡を第一の領域24よりも低い密度で含有する。このため、第一の領域24と第二の領域25との間に光透過率の差異があり、第二の領域25は第一の領域24よりも高い光透過率を有する。
第一の領域24に含まれる気泡の割合は、3〜70%の範囲内であることが好ましく、5〜60%の範囲内であれば更に好ましい。また、第一の領域24に含まれる気泡の割合に対する、第二の領域25に含まれる気泡の割合は、0〜5%の範囲内であることが好ましい。
尚、この気泡の割合は、第二レジスト層20の表面を研磨することで現れる面(すなわち、第二レジスト層20の表面に沿った第二レジスト層20の断面)における、長径0.5μm以上の気泡の面積割合である。この面積割合は、例えば第二レジスト層20の20μm2の表面積を有する面における長径0.5μm以上の気泡の面積に基づいて導出される。
これらの気泡の割合は、第一の部分21に対する露光量、及び第二の部分22に対する露光量を適宜調整することで、制御され得る。
第二レジスト層20の厚み寸法は、例えば10〜40μmの範囲内であることが好ましい。この場合、第一の領域24及び第二の領域25によって形成されるマーキングが更に判別しやすい。第二レジスト層20の厚み寸法がこの範囲内である場合、第一の領域24における気泡の割合は5〜70%の範囲内であることが好ましく、第二の領域25における気泡の割合の割合は0〜5%の範囲内であることが好ましい。
ソルダーレジスト層10上に形成されている第二レジスト層20において、第一の領域24のL*値が35以上、a*値が−15以下、且つb*値が−5〜5の範囲内であることが好ましく、第二の領域25のL*値が32以下、a*値が−10〜10の範囲内、b*値が−5〜5の範囲内であることが好ましい。この場合、第一の領域24及び第二の領域25によって形成されるマーキングが特に判別しやすい。
ソルダーレジスト層10上での第二レジスト層20の第一の領域24のL*値が35以上、a*値が−15以下、b*値が−5〜5の範囲内であり、且つ、第二の領域25のL*値が32以下、a*値が−10〜10の範囲内、b*値が−5〜5の範囲内となるためには、ソルダーレジスト組成物中の着色剤(E2)が赤色着色剤であると共に、第二レジスト組成物中の着色剤(I)が緑色着色剤であることが好ましい。この場合、着色剤(E2)の色と着色剤(I)の色とが補色の関係であることから、第二の領域25の色を深い黒色にすることが容易になる。特に、ソルダーレジスト層10のみを銅板上に設けた場合のソルダーレジスト層10のL*値が40以下、a*値が5.1〜55の範囲内、b*値が−15〜15の範囲内であることが好ましい。また、第二レジスト層20のみを銅板上に設けた場合の第二レジスト層20における第二の領域25のL*値が35以上、a*値が−100〜−15の範囲内、b*値が−20〜20の範囲内であることが好ましい。
[ソルダーレジスト層を備える被覆プリント配線板について]
実施例1〜5及び比較例1〜3で用いるカルボキシル基含有不飽和樹脂溶液を、次のようにして調製した。
まず、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機が取り付けられている四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160.1質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72.7質量部、及びジメチルベンジルアミン0.6質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。
続いて、フラスコ内の混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を投入し、加熱温度115℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の濃度65質量%溶液を得た。
また、表1に示す実施例1〜5及び比較例1〜3で用いるカルボキシル基含有不飽和樹脂溶液以外の原料の詳細は、次の通りである。
・エポキシ樹脂:1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業社製、TEPIC−HP)。
・エポキシ樹脂溶液:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品名EPICLON N−695)を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・光重合開始剤A:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)―2−モルフォリノプロパンー1−オン(BASF社製,品名Irgacure 907)。
・光重合開始剤B:2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン(DETX)。
・光重合開始剤C:2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド、BASF社製の品名Irgacure TPO。
・光重合開始剤D:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製の品名Irgacure 184。
・光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)。
・メラミン:日産化学工業株式会社製の微粉メラミン。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の品名バリエースB30。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製の品名レオロシールMT−10。
・消泡剤:信越化学工業株式会社製の品名KS−66。
・ペリレンブラックA:BASF社製の品名Paliogen Black S 0084。
・ペリレンブラックB:BASF社製の品名Lumogen Black FK 4280。
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製の品名MA7。
・アントラキノン系赤色顔料A:クラリアントジャパン株式会社製の品名HOSTAPERM SCARLET GO(カラーインデックスは、Pigment Red 168)。
・アントラキノン系赤色顔料B:BASF社製の品名Paliogen Red L 4045(カラーインデックス Pigment Red 177)。
・アゾ系赤色顔料:大日精化株式会社製の品名セイカファースト レッド 1531B。
・溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
(実施例1〜5、比較例1〜3)
これらの成分を、表1に示す割合で混合することで、ソルダーレジスト組成物を調製した。
また、線幅/線間が0.2mm/0.3mm、厚みが35μmの銅の導体配線を備える配線基板を用意した。この配線基板の表面上に、ソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法で塗布することにより湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分間加熱することで予備乾燥し、厚みが20μmである乾燥塗膜を形成した。
この乾燥塗膜に、幅25μm、50μm、75μm、及び100μmのソルダーダムが形成されるようなマスクをあてがうと共に、照射エネルギー密度が400mJ/cm2の条件で紫外線を照射して、配線基板上の乾燥塗膜を選択的に露光した。
露光後の乾燥塗膜に炭酸ナトリウム水溶液で現像処理を施して、配線基板上の乾燥塗膜における、露光によって硬化した部分を残存させ、硬化しなかった部分を除去した。
続いて、配線基板上の残存した乾燥塗膜を、150℃で60分間加熱することにより硬化させた。これにより、配線基板上に厚み40μmのソルダーダムを含むソルダーレジスト層を形成した。
(色評価)
実施例1〜5、及び比較例1〜3のソルダーレジスト層について、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、型番CM−600d)を用いて、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を測定し、下記のように判定した。
A:L*値が40以下、a*値が5.1〜55の範囲内、b*値が−15〜15の範囲内である場合
B:L*値、a*値、及びb*値のいずれか一つが、上記「A」の範囲から外れる場合
C:L*値、a*値、及びb*値のうち二つ以上が、上記「A」の範囲から外れる場合。
(剥離試験)
実施例1〜5、及び比較例1〜3のソルダーダムに対して、セロハン粘着テープを貼り付けた後、これを剥離する剥離試験(テープテスト)を行った。この剥離試験の結果、残存したソルダーダムのうち、最も線幅の細いものの幅を測定し、下記のように判定した。
A:最も細いソルダーダムの線幅が、25μmであるもの。
B:最も細いソルダーダムの線幅が、50μmであるもの。
これらの評価の結果を、下記の表1に示す。
表1によると、黒色顔料としてペリレンブラックが使用されている実施例1〜5では剥離試験が「A」と評価されている。これに対して、ソルダーレジスト組成物中に黒色顔料としてカーボンブラックが含まれている比較例3では剥離試験が「B」と評価されている。これは、実施例1〜5では、比較例3よりも、ソルダーレジスト層が深部まで十分に硬化されているためであると考えられる。
表1によると、ソルダーレジスト組成物中にペリレン系黒色顔料、及び黒色以外の顔料が含まれている実施例1〜5では、色評価が「A」と判定されている。これに対して、ソルダーレジスト組成物中にペリレンブラックのみが含まれ、黒色以外の顔料が含まれていない比較例1では、色評価が「B」と判定され、ソルダーレジスト組成物中にアントラキノン系赤色顔料のみが含まれ、ペリレンブラックが含まれていない比較例2では、低露光領域における黒発色が「C」と判定されている。これは、比較例1では黒色以外の顔料が含まれておらず、比較例2ではそもそもペリレンブラック等の黒色顔料が含まれていないため、比較例1、2のソルダーレジスト層では、所要のL*値、a*値、及びb*値を満たすことができなかったと考えられる。
[ソルダーレジスト層及び第二レジスト層を備えた被覆プリント配線板について]
実施例6〜10及び比較例4〜6で用いるカルボキシル基含有不飽和樹脂溶液を、次のようにして調製した。
まず、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機が取り付けられている四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、更に混合物を加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有不飽和樹脂の濃度65質量%溶液を得た。
また、実施例6〜10及び比較例4〜6で用いるカルボキシル基含有不飽和樹脂溶液以外の原料の詳細は、次の通りである。
・光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)。
・結晶性エポキシ化合物:1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業社製、TEPIC−HP)。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーホスフィンオキサイド、BASF社製の品名Irgacure TPO。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製の品名Irgacure 184。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の品名バリエースB30。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製の品名レオロシールMT−10。
・メラミン:日産化学工業株式会社製の微粉メラミン。
・緑色着色剤:フタロシアニングリーン。
・消泡剤:信越化学工業株式会社製の品名KS−66。
・溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
(実施例6〜10、比較例4〜6)
これらの成分を下記の表2に示す割合で混合することにより、第二レジスト組成物を調整した。
また、線幅/線間が0.2mm/0.3mm、厚みが35μmの銅の導体配線を備える配線基板を用意した。この配線基板の表面上に、実施例1〜5及び比較例1〜3で用いたソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法で塗布することにより、第一塗膜を形成した。この第一塗膜を80℃で20分間加熱することで予備乾燥し、厚みが20μmであった。
この第一塗膜の上に、第二レジスト組成物をスクリーン印刷法により塗布することで、第一塗膜上に、第二塗膜を形成した。この第二塗膜を80℃で、20分間加熱することで予備乾燥した。乾燥後の第二塗膜の厚みは40μmであった。
この第二塗膜に、幅25μm、50μm、75μm、及び100μmのソルダーダムが形成されるようなマスクをあてがうと共に、このマスクを介して紫外線を照射して、第一塗膜及び第二塗膜を選択的に露光した。この紫外線の照射にあたり、第一の部分及び第二の部分を設定し、それぞれ照射エネルギー密度が異なる二種類の紫外線を照射した。第一の部分に照射した紫外線の照射エネルギー密度は600mJ/cm2であり、第二の部分に照射した紫外線の照射エネルギー密度は70mJ/cm2である。
露光後、炭酸ナトリウム水溶液で現像処理を施して、配線基板上の第一塗膜及び第二塗膜における、露光によって硬化した部分を残存させ、硬化しなかった部分を除去した。
続いて、配線基板上に残存した第一塗膜及び第二塗膜を、150℃で60分間加熱することにより硬化させた。これにより、ソルダーレジスト層及び第二レジスト層を形成した。ソルダーレジスト層及び第二レジスト層を合わせた厚みは、60μmであった。
形成された第二レジスト層のうち、照射された紫外線の照射エネルギー密度が小さい第二の部分に対応する領域を低露光領域とし、照射された紫外線の照射エネルギー密度が大きい第一の部分に対応する領域を高露光領域とした。
(剥離試験)
実施例6〜10、及び比較例4〜6のソルダーダムに対して、セロハン粘着テープを貼り付けた後、これを剥離する剥離試験(テープテスト)を行った。この剥離試験の結果、残存したソルダーダムのうち、最も線幅の細いもの(ダム残り)を測定して、下記のように判定した。
A:最も細いソルダーダムの線幅が、50μm以上であるもの。
B:ソルダーダムが全て剥離してしまったもの。
(低露光領域の発色評価について)
実施例6〜10及び比較例4〜6の第二レジスト層における低露光領域に対応する部分について、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、型番CM−600d)を用いて、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を測定し、下記のように判定した。
A:L*値が32以下、a*値が−10〜10の範囲内、b*値が−5〜5の範囲内である場合。
B:L*値、a*値、及びb*値のいずれか一つが、上記「A」の範囲から外れる場合
C:L*値、a*値、及びb*値のうち二つ以上が、上記「A」の範囲から外れる場合。
(高露光領域の発色評価について)
実施例6〜10、及び比較例4〜6の第二レジスト層における高露光領域に対応する部分について、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、型番CM−600d)を用いて、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を測定し、下記のように判定した。
A:L*値が35以上、a*値が−15以下、b*値が−5〜5の範囲内である場合。
B:L*値、a*値、及びb*値のいずれか一つが、上記「A」の範囲から外れる場合
C:L*値、a*値、及びb*値のうち二つ以上が、上記「A」の範囲から外れる場合。
これらの評価の結果について、下記の表3に示す。
表3によると、黒色顔料としてペリレンブラックが使用されている実施例6〜10では剥離試験が「A」と評価されている。これに対して、ソルダーレジスト組成物中に黒色顔料としてカーボンブラックが含まれている比較例6では剥離試験が「B」と評価されている。
これは、ソルダーレジスト層及び第二レジスト層を一回の露光によって形成した場合に、比較例6ではソルダーレジスト層の表層から深部まで十分に硬化することができていないためであると考えられる。
表3によると、ソルダーレジスト組成物中にペリレンブラックと黒色以外の顔料が含まれている実施例6〜10では、低露光領域における黒発色、及び高露光領域における緑発色が「A」と評価されている。これに対して、ソルダーレジスト組成物中にペリレンブラックのみが含まれ、黒色以外の顔料が含まれていない比較例4では、低露光領域における黒発色が「B」と評価されている。また、ソルダーレジスト組成物中にアントラキノン系赤色顔料のみが含まれ、ペリレンブラックが含まれていない比較例5では、低露光領域における黒発色が「C」、高露光領域における緑発色が「B」と評価されている。
これは、第二レジスト層の外観色は、高露光領域では緑色、低露光領域では緑色とソルダーレジスト層の表面の色との混合色になるが、比較例4ではソルダーレジスト組成物に黒色以外の着色剤が含まれておらず、比較例5ではソルダーレジスト組成物に黒色着色剤が含まれていないため、所要のL*値、a*値、及びb*値を有する第一の領域及び第二の領域を含む第二レジスト層を形成することができていないためであると考えられる。