次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による無段変速機の制御装置を含む動力伝達装置20を搭載した自動車10の概略構成図である。同図に示す自動車10は、動力伝達装置20に加えて、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する原動機としてのエンジン(内燃機関)12や、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16等を含む。
エンジンECU14は、図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度(アクセル踏み込み量)や、車速センサ97からの車速、クランクシャフトの回転位置を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16といった他の電子制御ユニットからの信号等が入力される。エンジンECU14は、これらの信号に基づいて電子制御式のスロットルバルブ13や図示しない燃料噴射弁および点火プラグ等を制御する。
ブレーキECU16も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、ブレーキECU16には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や、車速センサ97からの車速、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14といった他の電子制御ユニットからの信号等が入力される。ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
図2は、本実施形態の自動車10に搭載された動力伝達装置20の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置20は、クランクシャフトと駆動輪DWに接続された左右のドライブシャフト59とが略平行をなすように横置きに配置されたエンジン12に接続されるトランスアクスルとして構成されている。図示するように、動力伝達装置20は、一体に結合されるコンバータハウジング22a、トランスアクスルケース22bおよびリヤカバー22cからなるトランスミッションケース22や、当該トランスミッションケース22の内部に収容される発進装置23、オイルポンプ30、前後進切換機構35、ベルト式の無段変速機(以下、適宜「CVT」という)40、ギヤ機構50、デファレンシャルギヤ(差動機構)57、更に、油圧制御装置60(図1参照)、発進装置23やCVT40を制御する制御装置としての変速用電子制御ユニット(以下、「変速用ECU」という)21等を含む。
発進装置23は、ロックアップクラッチ付きの流体式発進装置として構成されており、コンバータハウジング22aの内部に収容される。図2に示すように、発進装置23は、入力部材としてのフロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフトに接続されるポンプインペラ23pや、CVT40のインプットシャフト41に固定されるタービンランナ23t、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油(ATF)の流れを整流するステータ23s、ステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23o、ダンパ機構24、ロックアップクラッチ25等を有する。
ポンプインペラ23p、タービンランナ23tおよびステータ23sは、ポンプインペラ23pとタービンランナ23tとの回転速度差が大きいときにはステータ23sの作用によりトルクコンバータとして機能し、両者の回転速度差が小さくなると流体継手として機能する。ただし、発進装置23において、ステータ23sやワンウェイクラッチ23oを省略し、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tを流体継手のみとして機能させてもよい。ダンパ機構24は、例えば、ロックアップクラッチ25に連結される入力要素や、複数の第1弾性体を介して入力要素に連結される中間要素、複数の第2弾性体を介して中間要素に連結されると共にタービンハブに固定される出力要素等を有する。ロックアップクラッチ25は、ポンプインペラ23pとタービンランナ23t、すなわちフロントカバー18とCVT40のインプットシャフト41とを機械的に(ダンパ機構24を介して)連結するロックアップおよび当該ロックアップの解除を選択的に実行するものである。なお、ロックアップクラッチ25は、油圧式の単板摩擦クラッチとして構成されてもよく、油圧式の多板摩擦クラッチとして構成されてもよい。
オイルポンプ30は、発進装置23と前後進切換機構35の間に配置されるポンプボディ31およびポンプカバー32とからなるポンプアッセンブリや、インナーロータ(外歯ギヤ)33、アウターロータ(内歯ギヤ)34等を有する、いわゆるギヤポンプとして構成されている。ポンプボディ31およびポンプカバー32は、コンバータハウジング22aやトランスアクスルケース22bに固定される。また、インナーロータ33は、ハブを介してポンプインペラ23pに連結される。従って、エンジン12からの動力によりインナーロータ33が回転すれば、オイルポンプ30によって図示しないオイルパン(作動油貯留部)内の作動油(ATF)がストレーナ(図示省略)を介して吸引されると共に昇圧された作動油が油圧制御装置60に供給(吐出)される。
前後進切換機構35は、トランスアクスルケース22bの内部に収容され、ダブルピニオン式の遊星歯車機構36と、油圧式摩擦係合要素としてのブレーキB1およびクラッチC1とを有する。遊星歯車機構36は、CVT40のインプットシャフト41に固定されるサンギヤと、リングギヤと、サンギヤに噛合するピニオンギヤおよびリングギヤに噛合するピニオンギヤを支持すると共にCVT40のプライマリシャフト42に連結されるキャリヤとを有する。ブレーキB1は、遊星歯車機構36のリングギヤをトランスアクスルケース22bに対して回転自在に解放すると共に、油圧制御装置60から油圧が供給された際に遊星歯車機構36のリングギヤをトランスアクスルケース22bに対して回転不能に固定する。また、クラッチC1は、遊星歯車機構36のキャリヤをインプットシャフト41(サンギヤ)に対して回転自在に解放すると共に、油圧制御装置60から油圧が供給された際に遊星歯車機構36のキャリヤをインプットシャフト41に連結する。これにより、ブレーキB1を解放すると共にクラッチC1を係合させれば、インプットシャフト41に伝達された動力をそのままCVT40のプライマリシャフト42に伝達して自動車10を前進させることができる。また、ブレーキB1を係合させると共にクラッチC1を解放すれば、インプットシャフト41の回転を逆方向に変換してCVT40のプライマリシャフト42に伝達し、自動車10を後進させることができる。更に、ブレーキB1およびクラッチC1を解放すれば、インプットシャフト41とプライマリシャフト42との接続を解除することができる。
CVT40は、駆動側回転軸としてのプライマリシャフト42に設けられたプライマリプーリ43と、プライマリシャフト42と平行に配置された従動側回転軸としてのセカンダリシャフト44に設けられたセカンダリプーリ45と、プライマリプーリ43の溝とセカンダリプーリ45の溝とに掛け渡されたベルト46と、プライマリプーリ43の溝幅を変更するための油圧式アクチュエータであるプライマリシリンダ47と、セカンダリプーリ45の溝幅を変更するための油圧式アクチュエータであるセカンダリシリンダ48とを有する。プライマリプーリ43は、プライマリシャフト42と一体に形成された固定シーブ43aと、プライマリシャフト42にボールスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持される可動シーブ43bとから構成される。また、セカンダリプーリ45は、セカンダリシャフト44と一体に形成された固定シーブ45aと、セカンダリシャフト44にボールスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持されると共に圧縮ばねであるリターンスプリング49により軸方向に付勢される可動シーブ45bとから構成される。
プライマリシリンダ47は、プライマリプーリ43の可動シーブ43bの背後に形成され、セカンダリシリンダ48は、セカンダリプーリ45の可動シーブ45bの背後に形成される。プライマリシリンダ47とセカンダリシリンダ48とには、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ45との溝幅を変化させるべく油圧制御装置60から作動油が供給され、それにより、エンジン12から発進装置23および前後進切換機構35を介してプライマリシャフト42に伝達された動力を無段階に変速してセカンダリシャフト44に出力することができる。そして、セカンダリシャフト44に出力された動力は、ギヤ機構50、デファレンシャルギヤ57およびドライブシャフトを介して左右の駆動輪DWに伝達されることになる。
ギヤ機構50は、軸受を介してトランスアクスルケース22bにより回転自在に支持されるカウンタドライブギヤ51と、セカンダリシャフト44やドライブシャフト59と平行に延在すると共に軸受を介してトランスアクスルケース22bにより回転自在に支持されるカウンタシャフト52と、当該カウンタシャフト52に固定されると共にカウンタドライブギヤ51に噛合するカウンタドリブンギヤ53と、カウンタシャフト52に形成(あるいは固定)されたドライブピニオンギヤ(ファイナルドライブギヤ)54と、ドライブピニオンギヤ54に噛合すると共にデファレンシャルギヤ57に連結されるデフリングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)55とを有する。
油圧制御装置60は、エンジン12からの動力により駆動されてオイルパンからストレーナを介して作動油を吸引して吐出する上述のオイルポンプ30に接続される。油圧制御装置60は、オイルポンプ30からの油圧を調圧して、発進装置23や前後進切換機構35、CVT40等により要求される油圧を発生させたり、CVT40、ワンウェイクラッチ23o、前後進切換機構35等の所定部位や各種軸受といった潤滑対象に潤滑媒体としての作動油を供給したりする。このため、油圧制御装置60は、オイルポンプ30からの作動油を調圧してプライマリシリンダ47やセカンダリシリンダ48等に供給される油圧の元圧となるライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブや、ライン圧PLを減圧して一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ、モジュレータバルブからのモジュレータ圧Pmodを調圧してブレーキB1またはクラッチC1への油圧を生成する調圧バルブ(リニアソレノイドバルブ)、シフトレバー95(図1参照)と連動して調圧バルブからの作動油をシフトポジションに応じてブレーキB1およびクラッチC1の何れか一方に供給したり、両者に対する油圧の供給を遮断したりするマニュアルバルブを有する。
更に、油圧制御装置60は、CVT40の変速に要する油圧を生成するために、第1リニアソレノイドバルブ、第2リニアソレノイドバルブ、プライマリプーリ圧制御バルブおよびセカンダリプーリ圧制御バルブを有する。第1リニアソレノイドバルブは、例えばモジュレータ圧Pmodを調圧して信号圧としてのプライマリソレノイド圧Pslpを生成し、第2リニアソレノイドバルブは、例えばモジュレータ圧Pmodを調圧して信号圧としてのセカンダリソレノイド圧Pslsを生成する。また、プライマリプーリ圧制御バルブは、第1リニアソレノイドバルブからのプライマリソレノイド圧Pslpを信号圧としてライン圧PLを調圧し、プライマリプーリ43すなわちプライマリシリンダ47へのプライマリプーリ圧(プライマリシーブ圧)Ppを生成する。セカンダリプーリ圧制御バルブは、第2リニアソレノイドバルブからのセカンダリソレノイド圧Pslsを信号圧として用いてライン圧PLを調圧し、セカンダリプーリ45すなわちセカンダリシリンダ48へのセカンダリプーリ圧(セカンダリシーブ圧)Psを生成する。
上述のような動力伝達装置20を制御する変速ECU21も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、変速ECU21には、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度や、車速センサ97からの車速、複数のシフトポジションの中から所望のシフトポジションを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトポジションセンサ96からのシフトポジションといった各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU16からの信号が入力される。
また、変速ECU21には、図1に示すように、CVT40の入力回転数(インプットシャフト41またはプライマリシャフト42の回転速度)Ninを検出する入力回転数センサ98や、CVT40の出力回転数(セカンダリシャフト44の回転速度)Noutを検出する出力回転数センサ99、油圧制御装置60の作動油の油温Toilを検出する図示しない油温センサからの信号が入力される。変速ECU21は、上述のような入力信号に基づいて発進装置23やCVT40、すなわち油圧制御装置60を構成する上述の調圧バルブや第1および第2リニアソレノイドバルブ等を制御する。これらのバルブの制御に際して、変速ECU21は、図示しない補機バッテリから各バルブのソレノイド部に油圧指令値に応じた電流が印加されるように図示しない駆動回路を制御する。
更に、変速ECU21には、CVT40の複数の制御モードの中から所望の制御モードの選択を自動車10の運転者に許容するモード選択スイッチ100が接続されている。本実施形態において、モード選択スイッチ100は、CVT40の変速比γが無段階に変更されるノーマルモード(無段変速モード)と、変速比γがステップ的に変更される(ステップ的なアップシフトが行われる)スポーツモード(有段変速モード)との選択を運転者に許容するように構成されている。変速ECU21は、モード選択スイッチ100を介して運転者によりノーマルモード(無段変速モード)が選択されている場合には、モードフラグFmを値0に設定すると共に、モード選択スイッチ100を介して運転者によりスポーツモード(有段変速モード)が選択されている場合には、モードフラグFmを値1に設定し、設定した値を図示しないRAMに記憶させる。
次に、上述のCVT40の変速制御について説明する。図3は、運転者によりアクセルペダル91が踏み込まれている際に変速ECU21により所定時間おきに繰り返し実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3の変速制御ルーチンの開始に際して、変速ECU21は、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度(現アクセル開度)Accや、車速センサ97からの車速(現車速)V、入力回転数センサ98からの入力回転数(現入力回転数)Nin、出力回転数センサ99からの出力回転数Nout、エンジンECU14からの推定エンジントルクTe、モードフラグFmの値といった制御に必要なデータを入力する(ステップS1)。次いで、変速ECU21は、モードフラグFmが値1であるか否か、すなわち運転者によりCVT40の制御モードとしてスポーツモードが選択されているか否かを判定する(ステップS2)。
ステップS2にてモードフラグFmが値0であって運転者によりCVT40の制御モードとしてノーマルモードが選択されていると判断した場合、変速ECU21は、CVT40の目標変速比γ*の設定に用いられる変速マップとして図示しないノーマルモードマップ(無段変速制御用の変速マップ)を設定する(ステップS6)。ノーマルモードマップは、自動車10の燃費をより向上させるようにCVT40の変速比γが無段階に変更される際の車速Vに対応した入力回転数Nin(エンジン12の回転数Ne)の目標値である目標入力回転数Nin*をアクセル開度Accごとに規定するように予め作成され、変速ECU21の図示しないROMに格納されている。
また、ステップS2にてモードフラグFmが値1であって運転者によりCVT40の制御モードとしてスポーツモードが選択されていると判断した場合、変速ECU21は、CVT40の目標変速比γ*の設定に用いられる変速マップとして図4に例示するようなスポーツモードマップ(有段変速制御用の変速マップ)を設定する(ステップS3)。スポーツモードマップは、自動車10のドライバビリティーをより向上させるようにCVT40の変速比γがステップ的に変更される際(ステップ的なアップシフト、すなわち目標入力回転数Nin*を急峻に低下させる処理が行われる際)の車速Vに対応した入力回転数Nin(エンジン12の回転数Ne)の目標値である目標入力回転数Nin*をアクセル開度Accごとに規定するように予め作成され、変速ECU21の図示しないROMに格納されている。
ステップS3またはS6の処理の後、変速ECU21は、変速マップとして設定されたノーマルモードマップまたはスポーツモードマップから、適宜線形補完を行いながらステップS1にて入力したアクセル開度Accおよび車速Vに対応した目標入力回転数Nin*を導出し、導出した目標入力回転数Nin*とステップS1にて入力した出力回転数NoutとからCVT40の目標変速比γ*を設定する(ステップS4)。次いで、変速ECU21は、ステップS1にて入力した入力回転数Ninと目標入力回転数Nin*との差分等に基づいて、油圧制御装置60のプライマリプーリ圧制御バルブからのプライマリプーリ圧Ppが目標変速比γ*に応じた値になるように第1リニアソレノイドバルブを制御する(ステップS5)。また、ステップS5において、変速ECU21は、セカンダリプーリ圧制御バルブからのセカンダリプーリ圧PsによりCVT40のベルト46の滑りが抑制されるように、推定エンジントルクTe等に基づいて第2リニアソレノイドバルブを制御する。そして、変速ECU21は、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS1以降の処理を繰り返し実行する。
続いて、図4に示すCVT40のスポーツモードマップ、すなわちCVT40の変速比γをステップ的に変更する(ステップ的なアップシフトを行う)際に用いられる変速マップの作成手順について説明する。
本発明者らは、無段変速機の変速比γをステップ的に変更する(ステップ的なアップシフトを行う)ことで車両のドライバビリティーを向上させるべく鋭意研究を行い、その過程で、まず運転者による車両の加速の感じ方に着目した。本発明者らの研究によれば、車両の運転者は、車両加速度(前進方向への加速度)の実際の挙動(変化の仕方)を体感するのに加えて、エンジン音の変化といった車両の加速に伴う状態変化をも感じ取り、エンジン音の変化のような雰囲気的な要因によって加速感がより高められると考えられる。すなわち、アクセルペダルの踏み込み量に対して車両がリニアに加速していけば、運転者は自らのアクセル操作に合致した(ダイレクトな)加速が得られたと感じ(以下、このような感覚を「ダイレクト感」という)、車両の加速に伴ってエンジン音がリズミカルに変化していくと、運転者は、更に雰囲気的な加速感(以下、このような感覚を「リズム感」という)を感じると考えられる。
このような分析のもと、本発明者らは、運転者の加速意思に応じて上述のダイレクト感およびリズム感の双方を適正に提供し得るように、例えば4段から8段の変速段を有する一般的な自動変速機に比べてより細かに無段変速機の変速比γをステップ的に変更することとした。そして、本発明者らは、有段変速機における変速段数に相当する変速比γの変更ステップの数等を適正化すべく、車両が発進してから車速Vが最高車速Vmaxに達するまでの時間すなわち車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの時間t0-Vmaxが経過するまでの間の変速比γの変更ステップの数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数を例えば100段といったような極めて大きい値とした場合と、例えば4段程度の極小さい値とした場合とでダイレクト感やリズム感がどのようなものとなるかに比較・検討した。
車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの間の無段変速機の変更ステップの数を例えば4段といったような小さい値とした場合、図5Aに示すように、無段変速機の変速比γをステップ的に変更する際の変速間隔時間tbc、すなわちステップ的なアップシフトの実行間隔が長くなり、図5Bに示すように、変速間隔時間tbc内での車両加速度Gの変化量δgが極小さく(極小さい負の値に)なる。従って、変速比γの変更ステップの数を極小さい値とした場合には、運転者にある程度のダイレクト感を与えることができると考えられる。しかしながら、変更ステップの数を極小さい値とした場合、変速間隔時間tbcが長くなることで、変速比γの変更に伴ってエンジン音が変化する頻度が少なくなりすぎて却って冗長な感じを運転者に与えてしまい、上記リズム感を向上させることができないと考えられる。
また、車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの間の変速比γの変更ステップの数を例えば100段といったような極めて大きい値とした場合、図5Cに示すように、無段変速機の変速比γをステップ的に変更する際の変速間隔時間(ステップ的なアップシフトの実行間隔)tbcが極めて短くなる。従って、変更ステップの数を極めて大きい値とした場合、変速比γの変更に伴ってエンジン音が変化する頻度が多くなりすぎて却ってリズム感を損ね、いわゆるビジー感(煩わしさ)だけが強まってしまうと考えられる。
更に、アクセルペダルが踏み込まれて車両が加速していく際には車両加速度Gが車速Vの増加に伴って低下していくことになるが、本発明者らの研究によれば、変速比γの変更ステップの数を極めて大きい値として変速間隔時間tbcを極短くした場合、運転者は、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化(図5Dにおける変化量ΔG)を感じ得ず、変速比γが一旦変更されてから変速比γが複数回ステップ的に変更された段階で(変速比γが一旦変更されてから図5Dにおける時間t′が経過した時点で)、それまでの車両加速度Gの変化(図5Dにおける変化量ΔG′)を感じ取ってしまうことが判明した。従って、変速比γの変更ステップの数を必要以上に大きい値としても、一般に「ラバーバンドフィール」と呼ばれる無段変速機特有の加速感(ダイレクト感に欠ける加速感)を改善し得ず、却って運転者に失速感を与えてしまうおそれがあり、車両のドライバビリティーを向上させることができないと考えられる。
そして、本発明者らの研究によれば、人は例えば0.5秒以下の極短い時間が経過する間の車両加速度Gの変化を体感し得ず、人に車両加速度Gの変化を体感させ得る時間(以下、「加速体感時間tref」という)には下限が存在することが判明した。更に、本発明者らの研究の結果、加速体感時間trefを例えば0.6秒から2.5秒程度の値とした場合、無段変速機の変速比γをステップ的に変更し始めてから当該加速体感時間trefが経過するまでにおける車両加速度Gの変化率(勾配)δg/tref(ただし、ここでの“δg”は、変速比γの変更開始から加速体感時間trefが経過するまでの間の車両加速度Gの変化量である)を値として大きく、すなわち負の値にしないか(比較的小さい正の値にするか)、値0(フラット)に近くすることで、その間に車両が加速していることを運転者に確実に体感させて上述のダイレクト感をより向上させ得ることが見出された。
一方、運転者の加速意思に関しては、アクセル開度(アクセル踏み込み量)Accが大きい場合には、一般に運転者の加速意思が高いとみなすことが可能であり、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低い場合には、運転者の加速意思がより高いとみなすことができる。また、車速Vが高い場合には、一般に運転者の加速意思が低いとみなすことが可能であり、車速が高く、かつアクセル開度Accが小さい場合には、加速意思がより低いとみなすことができる。
上述のような研究結果を踏まえて、本発明者らは、車両の性能(最高車速Vmax、加速性能等)やエンジンの特性等を考慮しながら、全変速間隔時間tbcの中(アクセル開度Accが最大(100%)であるとき)の最短の変速間隔時間を、例えば0.6秒から2.5秒程度の範囲内で予め定められる加速体感時間tref(例えば、2秒)以上とした。更に、本発明者らは、最短の変速間隔時間を上記加速体感時間tref(例えば、2秒)以上とした上で、アクセル開度Accが一定である場合、アクセル開度Accが大きいほど(小さいほど)、CVT40の変速比γの変更ステップの数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数が多くなる(少なくなる)ように図4に示すスポーツモードマップ(有段変速制御用の変速マップ)、すなわち図4における最低変速比を示す線と最高変速比を示す線との間におけるアクセル開度Accごとの変速線(図中太線参照)を作成した。加えて、本発明者らは、次の(1)から(4)の条件を満たすように、図4における最低変速比を示す線と最高変速比を示す線との間におけるアクセル開度Accごとの変速線(図中太線参照)を作成した。
(1)図6A,6B,6Cおよび6Dに示すように、アクセル開度Accが大きいほど、変速間隔時間tbcを短くし、かつ変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを大きい値(フラット気味)にする。
(2)図6A−6Dからわかるように、時間の経過と共に車速Vが高まるほど、変速間隔時間tbcを長くし、かつ変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを小さい値(図6Bおよび6Dにおいて左下がり)にする。
(3)図6A−6Dに示すように、時間の経過と共に車速Vが高まるほど、変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量ΔG(低下量)を小さく(絶対値を小さく)する。
(4)図6A−6Dからわかるように、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低いほど、変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量(低下量)ΔGを大きく(絶対値を大きく)する。
また、スポーツモードマップの作成に際しては、上記(1)から(4)の条件を考慮しながら、人に車両加速度の変化を体感させ得る加速体感時間trefと、車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの時間t0-Vmaxとに基づいて、運転者の加速意思を表すアクセル開度Accが最大(100%)であるときに車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの間の変速比γの変更ステップの数、ステップ的なアップシフトの許容回数(最大段数)を定めた。本実施形態では、広く普及している例えば排気量が1.5L−3.0L程度のエンジンを搭載した車両に搭載される無段変速機を対象とし、このような車両の性能(最高車速Vmax、加速性能等)やエンジンの特性等を考慮して、アクセル開度Accが最大(100%)であるときの変速比γの変更ステップの数(最大段数)を24段とした。更に、本実施形態では、アクセル開度Accが70%であるときの変速比γの変更ステップの数を12段とし、アクセル開度Accが50%であるときの変速比γの変更ステップの数を9段とし、アクセル開度Accが30%であるときの変速比γの変更ステップの数を6段とした。このように、アクセル開度Accが一定である場合に、自動車10の運転者によるアクセル開度Accが大きいほどステップ的なアップシフトの許容回数を多くすることで、CVT40を搭載した車両加速度Gやエンジン音を運転者の加速意思に応じてより適正に変化させることができるので、当該自動車10のドライバビリティーをより向上させることが可能となる。
そして、図4のスポーツモードマップにおけるアクセル開度Accごとの変速線同士を比べると、より大きいアクセル開度Accに対応した変速線ほど、変速比γの変更ステップの数を多くし、車速Vが低いほど変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量ΔG(低下量)を大きくし(絶対値を大きくし)、かつ車速Vが高まるにつれて、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを緩やかに小さく(絶対値を大きく)するものとなる。また、図4のスポーツモードマップにおける各変速線は、図6A−6Dからわかるように、時間の経過と共に車速Vが高まるほど(車速Vが高いほど)、変速間隔時間tbcを長くし、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを小さい値(図6Bおよび6Dにおいて左下がり)にし、かつ変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量ΔG(低下量)を小さく(絶対値を小さく)するものとなる。
上述のようにして作成されるスポーツモードマップを用いた上述の変速制御ルーチン(ステップS1−S5)が実行されることにより、アクセルペダル91が踏み込まれてアクセル開度Accが大きくなるほど、変速間隔時間tbcが短くなると共に、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcが大きい値(フラット気味)になる。また、アクセルペダル81の踏み込みに応じて車速Vが高まるほど、変速間隔時間tbcが長くなると共に、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcが小さい値になる。
このように、アクセル開度Accが大きいほど、変速間隔時間tbc、すなわちステップ的なアップシフトの実行間隔を短くすれば、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合に、自動車10のエンジン音をよりリズミカルに変化させて、運転者が感じる雰囲気的な加速感、すなわちリズム感を向上させることができる。この結果、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合に、ステップ的なアップシフトを行う際のリズム感を向上させてCVT40を搭載した自動車10のドライバビリティーをより向上させることが可能となる。
また、アクセル開度Accが大きいほど変速間隔時間tbcを短くすると共に、車速Vが高いほど変速間隔時間tbcを長くすることで、アクセルペダル91の踏み込みに応じて自動車10が加速している際にステップ的なアップシフトの実行回数が増加するのに伴って、当該ステップ的なアップシフトの実行間隔(変速間隔時間tbc)が長くなっていく。すなわち、アクセルペダル91の踏み込みに応じて自動車10が加速して車速Vが高まっていくと、アクセルペダル91が踏み込まれていても運転者の加速意思は徐々に低下し、そのような状態でステップ的なアップシフトの実行間隔(変速間隔時間tbc)を短くすると、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。これに対して、自動車10が加速している際にステップ的なアップシフトの実行回数が増加するのに伴って変速間隔時間tbcを長くすること、すなわち加速中のステップ的なアップシフトの実行回数の増加に伴って当該ステップ的なアップシフトの実行間隔を長くすることで、エンジン音の変動を運転者の加速意思に応じたより適正なものとすることができる。これにより、自動車10が加速している際にリズム感を損なうこと、つまり、いわゆるビジー感を生じさせてしまうのを抑制することができるので、ステップ的なアップシフトを行う際のリズム感を向上させてCVT40を搭載した自動車10のドライバビリティーをより向上させることが可能となる。
更に、本実施形態では、上述のように全変速間隔時間tbcの中の最短の変速間隔時間が上述の人に車両加速度Gの変化を体感させ得る加速体感時間tref(本実施形態では、2秒以上)とされている。従って、アクセル開度Accが大きいほど、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを大きい値(フラット気味)にすることで、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合、特に、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低い運転者の加速意思がより高い場合に、変速比γの変更タイミングの間に自動車10が加速していることを運転者に確実に体感させてダイレクト感をより向上させることが可能となる。そして、全変速間隔時間tbcの中の最短の変速間隔時間を上述の人に車両加速度Gの変化を体感させ得る加速体感時間tref(本実施形態では、2秒以上)とすることで、変速比γをステップ的に変更する際のエンジン音をリズミカルに変化させるように全変速間隔時間tbcを定めつつ、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合にダイレクト感をより向上させることが可能となる。
また、自動車10の車速Vが高いほど、変速間隔時間tbcを長くすれば、車速Vが高く、運転者の加速意思が低い場合、特に、車速Vが高く、かつアクセル開度Accが小さい運転者の加速意思がより低い場合に、自動車10のエンジン音の頻繁な変動を抑制し、リズム感を損なうこと、すなわち、いわゆるビジー感を生じさせてしまうのを抑制することが可能となる。更に、車速Vが高いほど、変速間隔時間tbcにおける車両加速度Gの変化率δg/tbcを小さい値(絶対値が大きい負の値)にすれば、車速Vが高く、運転者の加速意思が低い場合、特に、車速Vが高く、かつアクセル開度Accが小さい運転者の加速意思がより低い場合に、車速Vの高まりに伴ってアクセル開度Accを小さくした運転者に自らのアクセル操作に合致した(スムースな)加速が得られたと感じさせてダイレクト感をより適正化することができる。
加えて、上述のスポーツモードマップを用いた上述の変速制御ルーチン(ステップS1−S5)が実行されることにより、車速Vが高いほど、変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量ΔG(低下量)が小さく(絶対値が小さく)なる。これにより、車速Vが高く、運転者の加速意思が低い場合、特に、車速Vが高く、かつアクセル開度Accが小さい運転者の加速意思がより低い場合に、車速Vの高まりに伴ってアクセル開度Accを小さくした運転者に自らのアクセル操作に合致した(スムースな)加速が得られたと感じさせてダイレクト感をより適正化することができる。また、スポーツモードマップを用いた変速制御ルーチン(ステップS1−S5)が実行されることにより、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低いほど、変速比γの変更の前後における車両加速度Gの変化量(低下量)ΔGが大きく(絶対値が大きく)なる。これにより、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低い運転者の加速意思がより高い場合に、車両加速度Gの変動によって運転者が感じる雰囲気的な加速感、すなわちリズム感をより一層向上させることが可能となる。
この結果、変速ECU21により制御されるCVT40を搭載する自動車10では、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合、特に、アクセル開度Accが大きく、かつ車速Vが低い運転者の加速意思がより高い場合に、CVT40の変速比γをステップ的に変更する際のリズム感やダイレクト感を向上させることが可能となる。また、自動車10では、車速Vが高く、運転者の加速意思が低い場合、車速Vが高く、かつアクセル開度Accが小さい運転者の加速意思がより低い場合に、CVT40の変速比γをステップ的に変更する際のリズム感やダイレクト感をより適正なものとすることができる。従って、変速ECU21により制御されるCVT40を搭載する自動車10では、ドライバビリティーを極めて良好に向上させることが可能となる。
また、上記実施形態において、変速ECU21には、変速比γが無段階に変更されるノーマルモード(無段変速モード)と、変速比γがステップ的に変更されるスポーツモード(有段変速モード)との選択を運転者に許容するモード選択スイッチ100が接続されており、変速ECU21は、運転者によりスポーツモードが選択されている際に、変速比γのステップ的な変更、すなわちステップ的なアップシフトを実行する。これにより、ノーマルモードのもとで変速比γを無段階に変更することにより自動車10の燃費を向上させつつ、スポーツモードのもとで変速比γをステップ的に変更することにより自動車10のドライバビリティーを向上させることが可能となる。なお、スポーツモードのもとでの走行中に、アクセルペダル91の踏み込みが一旦解除された後、アクセルペダル91が再度踏み込まれた際には、必ずしも、その際の車速Vとアクセル開度Accとから定まる目標入力回転数Nin*に応じた変速比γを目標変速比γ*とする必要はない。この場合、例えば、アクセルペダル91が再度踏み込まれた際の車速Vとアクセル開度Accとから定まる目標入力回転数Nin*等に応じた変速比よりも低速段側の変速比を目標変速比γ*としてもよい。
ここまで説明したように、自動車10に搭載されるCVT40を制御する上記実施形態に係る変速ECU21は、当該CVT40の変速比γを無段階に変更すると共に、変速比γのステップ的な変更、すなわちステップ的なアップシフトを実行するものであり、アクセル開度Accが一定である場合、当該アクセル開度Accが大きいほど、有段変速機における変速段数に相当する変速比γの変更ステップの数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数を多くする。このように、アクセル開度Accすなわち運転者によるアクセル踏み込み量が一定である場合に、アクセル開度Accが大きいほどステップ的なアップシフトの許容回数を多くすることで、車両加速度Gや自動車10のエンジン音を運転者の加速意思に応じてより適正に変化させることができるので、ダイレクト感やリズム感を両立させて自動車10のドライバビリティーを極めて良好に向上させることが可能となる。
また、上記実施形態では、人に車両加速度Gの変化を体感させ得る加速体感時間trefと、車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの時間t0-Vmaxとに基づいて、運転者の加速意思を表すアクセル開度Accが最大(100%)であるときに車速ゼロから最高車速Vmaxに達するまでの間の変速比γの変更ステップの数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数(最大段数)が定められる。これにより、自動車10の性能(最高車速、加速性能等)やエンジンの特性等に応じて、CVT40の変速比γをステップ的に変更する際の変更ステップの最大値(許容回数)をリズム感とダイレクト感とを両立させて自動車10のドライバビリティーをより向上させ得る適正な範囲内に定めることが可能となる。
なお、上記実施形態では、図3のルーチンを実行する変速ECU21が「無段変速機の制御装置」に相当し、図3のステップS1−S5の処理を実行する変速ECU21が「有段変速制御手段」に相当する。また、上記実施形態では、アクセル開度Accが最大(100%)であるときの変速比γの変更ステップの数(最大段数)すなわちステップ的なアップシフトの許容回数が24段とされているが、これに限られるものではない。すなわち、本発明者らの研究によれば、アクセル開度Accが最大(100%)であるときの変速比γの変更ステップの数(最大段数)を、12段から48段までの範囲内、より好ましくは、16段から36段までの範囲内の数値に定めれば、市場に供給されている多種多様な自動車のドライバビリティーを向上させ得ることが判明している。この場合、広く普及している一般的な自動変速機の変速段数が4段、6段、あるいは8段であることを踏まえて、アクセル開度Accが最大(100%)であるときの変更ステップの数(最大段数)を値4,6および8のすべて、あるいは何れか2つの公倍数にするとよい。
更に、上記実施形態において、上記CVT40は、ベルト式無段変速機に限られず、例えばトロイダル式無段変速機や、コーン式無段変速機等といった機械式無段変速機であってもよい。また、CVT40は、少なくとも1体の電動機(モータジェネレータ)を含む電気式無段変速機や、遊星歯車と2体の電動機(モータジェネレータ)を含む電気式無段変速機であってもよい。このような場合、入力回転数Ninの代わりにエンジン等の回転数が用いられてもよく、目標入力回転数Nin*の代わりに目標エンジン回転数が用いられてもよい。そして、CVT40の変速比γをステップ的に変更する際に用いられるパラメータとして、アクセル開度Accの代わりに、スロットルバルブ13の開度が用いられてもよい。
続いて、図7から図13を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、自動車10の運転者によりアクセルペダル91が踏み込まれている際に第2の実施形態に係る変速ECU21により予め定められた時間間隔dt(例えば、数mSec)毎に繰り返し実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図7の変速制御ルーチンの開始に際して、変速ECU21は、アクセルペダルポジションセンサ92から送信される現アクセル開度Accや、車速センサ97から送信される現車速V、入力回転数センサ98から送信される入力回転数Nin、出力回転数センサ99から送信される出力回転数Nout、エンジンECU14から送信される推定エンジントルクTe、モードフラグFm、有段アップシフト実行フラグFup、1速フラグF1、キックダウンフラグFkdおよびステップダウンフラグFsdの値といった制御に必要なデータを入力する(ステップS10)。次いで、変速ECU21は、ステップS10にて入力した現アクセル開度Accや現車速V、キックダウンフラグFkdの値に基づいて、運転者のキックダウン操作に応じてCVT40の変速比γを有段式の自動変速機と同様に変化させるキックダウンを実行する必要があるか否か(キックダウンの実行条件が成立したか否か)を判定する(ステップS20)。
ステップS20において、変速ECU21は、ステップS10にて入力した現車速Vが予め定められた閾値Vkd以上であるか否か、ステップS10にて入力した現アクセル開度Accが予め定められた閾値Akd以上であるか否か、本ルーチンの実行間隔あたりのアクセル開度の変化量ΔAcc(=Acc−前回Acc)が予め定められた閾値ΔAkd以上であるか否か、およびキックダウンフラグFkdが値1であるか否かを判定する。変速ECU21は、現車速Vが閾値Vkd以上であり、現アクセル開度Accが閾値Akd以上であり、かつアクセル開度の変化量ΔAccが閾値ΔAkd以上である場合、およびキックダウンフラグFkdが値1である場合に、キックダウンを実行する必要があると判定する(ステップS30)。また、これらの条件が満たされていない場合、変速ECU21は、ステップS30にてキックダウンを実行する必要がないと判定する。なお、いわゆるキックダウンスイッチを有する車両では、ステップS20において、キックダウンスイッチの操作状態に基づいてキックダウンを実行する必要があるか否かを判定してもよい。ステップS30にてキックダウンを実行する必要がないと判定した場合、変速ECU21は、モードフラグFmが値1であるか否か、すなわち運転者によりCVT40の制御モードとしてスポーツモードが選択されているか否かを判定する(ステップS40)。
ステップS40にてモードフラグFmが値0であって運転者によりCVT40の制御モードとしてノーマルモードが選択されていると判定した場合、変速ECU21は、有段アップシフト実行フラグFupおよびキックダウンフラグFkdをそれぞれ値0に設定する(ステップS50)。次いで、変速ECU21は、図示しないノーマルモード変速マップ(無段変速制御用の変速マップ)を用いてCVT40の入力回転数Nin(エンジン12の回転数Ne)の目標値である目標入力回転数Nin*を設定すると共に、設定した目標入力回転数Nin*とステップS10にて入力した出力回転数NoutとからCVT40の目標変速比γ*(=Nin*/Nout)を設定する(ステップS60)。
ステップS60にて用いられるノーマルモード変速マップは、自動車10の燃費をより向上させるようにCVT40の変速比γが無段階に変更される際の現車速Vに対応した目標入力回転数Nin*をアクセル開度ごとに規定するように予め作成され、変速ECU21の図示しないROMに格納されている。ステップS60において、変速ECU21は、ノーマルモード変速マップから、適宜線形補間を行いながらステップS10にて入力した現アクセル開度Accおよび現車速Vに対応した目標入力回転数Nin*を導出・設定し、設定した目標入力回転数Nin*を出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定する。
ステップS60の処理の後、変速ECU21は、ステップS10にて入力した入力回転数Ninと目標入力回転数Nin*との差分等に基づいて、油圧制御装置60のプライマリプーリ圧制御バルブからのプライマリプーリ圧Ppが目標変速比γ*に応じた値になるように第1リニアソレノイドバルブを制御する(ステップS150)。また、ステップS150において、変速ECU21は、セカンダリプーリ圧制御バルブからのセカンダリプーリ圧PsによりCVT40のベルト46の滑りが抑制されるように推定エンジントルクTe等に基づいて第2リニアソレノイドバルブを制御する。そして、変速ECU21は、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
また、ステップS40にてモードフラグFmが値1であって運転者によりCVT40の制御モードとしてスポーツモードが選択されていると判定した場合、変速ECU21は、運転者のアクセル操作に応じてCVT40の変速比γを有段式の自動変速機のようにアップシフト側(小変速比側)にステップ変化させる有段アップシフトを実行する(ステップ的なアップシフトを行う)必要があるか否か(有段アップシフトの実行条件が成立したか否か)を判定する(ステップS70)。ステップS70において、変速ECU21は、現アクセル開度Accが予め定められた開始閾値As(例えば、25%程度)以上であるか否か、アクセル開度の変化量ΔAccが値0(若しくはその近傍の値)に判定時間(例えば、数十mSec)だけ維持されたか否か、および有段アップシフト実行フラグFupが値1である場合に現アクセル開度Accが予め定められた解除閾値Ae(例えば、20%程度)未満になったか否かを判定する。変速ECU21は、現アクセル開度Accが開始閾値As以上であって変化量ΔAccが値0(若しくはその近傍の値)に上記判定時間だけ維持されていない場合、および有段アップシフト実行フラグFupが値1であって現アクセル開度Accが解除閾値Ae以上である場合に、有段アップシフトを実行する必要があると判定する(ステップS80)。また、これらの条件が満たされない場合、変速ECU21は、ステップS80にて有段アップシフトを実行する必要がないと判定する。
ステップS80にて有段アップシフトを実行する必要がないと判定した場合、変速ECU21は、上述のステップS50およびS60の処理を実行した後、ステップS60にて設定した目標入力回転数Nin*および目標変速比γ*に基づく油圧制御を実行し(ステップS150)、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。これに対して、ステップS80にて有段アップシフトを実行する必要があると判定した場合、変速ECU21は、有段アップシフト実行フラグFupを値1に設定した上で(ステップS90)、ステップS100の目標値設定処理を実行して目標入力回転数Nin*および目標変速比γ*を設定する。更に、変速ECU21は、ステップS100にて設定した目標入力回転数Nin*および目標変速比γ*に基づく油圧制御を実行し(ステップS150)、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。また、ステップS30にてキックダウンを実行する必要があると判定した場合、変速ECU21は、ステップS200の目標値設定処理を実行して目標入力回転数Nin*および目標変速比γ*を設定し、ステップS200にて設定した目標入力回転数Nin*および目標変速比γ*に基づく油圧制御を実行する(ステップS150)。この場合も、変速ECU21は、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
図8は、図7のステップS100における目標値設定処理の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、ステップS80にて有段アップシフトを実行する必要があると判定した場合、変速ECU21は、ステップS10にて入力した現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた車速域SRを現車速域SRpに設定する(ステップS102)。車速域SRは、アクセル開度ごとの車速の設定可能範囲(車速ゼロから当該アクセル開度で実現可能な最高車速までの範囲)を複数に分割することにより、アクセル開度ごとに複数定められるものである。本実施形態では、アクセル開度ごとに(例えば、アクセル開度=100%、70%、50%および30%について)複数の車速域SRを規定する図示しない車速域設定マップが予め作成されて変速ECU21の図示しないROMに格納されている。ステップS102において、変速ECU21は、当該車速域設定マップから、適宜線形補間を行いながらステップS10にて入力した現アクセル開度Accに対応した複数の車速域SRのうちの現車速Vを含むものを現車速域SRpとして設定(取得)する。
また、本実施形態の車速域設定マップにおいて、アクセル開度ごとの車速域SRの数は、アクセル開度が大きいほど多くなるように定められている。すなわち、ステップS102にて用いられる車速域設定マップでは、広く普及している例えば排気量が1.5L−3.0L程度のエンジンを搭載した車両に搭載される無段変速機を対象として、このような車両の性能(最高車速Vmax、加速性能等)やエンジンの特性等を考慮し、アクセル開度が最大(100%)であるときの車速域SRの数(車速の設定可能範囲の分割数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数)が例えば“16”(SR1からSR16までの16段)とされ、アクセル開度が70%であるときの車速域SRの数が例えば“12”(SR1からSR12までの12段)とされ、アクセル開度が50%であるときの車速域SRの数が例えば“9”(SR1からSR9までの9段)とされ、アクセル開度が30%であるときの車速域SRの数が例えば“6”(SR1からSR6までの6段)とされる。これにより、第2の実施形態においても、アクセル開度Accが一定である場合、自動車10の運転者によるアクセル開度Accが大きいほどステップ的なアップシフトの許容回数が多くなる。
現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた現車速域SRpを設定した後、変速ECU21は、ステップS10にて入力した現アクセル開度AccおよびステップS102にて設定した現車速域SRpに基づいて、CVT40の変速比γを次にアップシフト側にステップ変化させる際の入力回転数Ninの目標値である次回アップシフト回転数Ninupを設定する(ステップS104)。本実施形態では、アクセル開度ごとに(例えば、アクセル開度=100%、70%、50%および30%について)複数の車速域SRにおける次回アップシフト回転数Ninupを規定する図示しない次回アップシフト回転数設定マップが予め作成されて変速ECU21の図示しないROMに格納されている。次回アップシフト回転数設定マップは、アクセル開度ごとに、各車速域SRに対して当該車速域SRにおける想定変速比や車速等を考慮して定められた次回アップシフト回転数Ninup(一定値)を割り当てたものである。本実施形態において、次回アップシフト回転数設定マップは、エンジンのトルク特性等を考慮し、アクセル開度が大きいほど次回アップシフト回転数Ninupを大きく規定するように作成される。ステップS104において、変速ECU21は、次回アップシフト回転数設定マップから、適宜線形補間を行いながら現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した次回アップシフト回転数Ninupを導出・設定する。
続いて、変速ECU21は、1速フラグF1が値0であるか否かを判定する(ステップS106)。1速フラグF1は、有段アップシフトやキックダウンが実行されない場合や、現車速域SRpが最低車速域SR1以外である場合に値0に設定される。従って、有段アップシフトの実行開始時には、ステップS106において肯定判断(F1=0である旨の判定)がなされる。変速ECU21は、ステップS106にて1速フラグF1が値0であると判定すると、現車速域SRpが(現アクセル開度Accに拘わらず)最低車速域SR1であるか否かを判定する(ステップS108)。現車速域SRpが最低車速域SR1であると判定した場合、変速ECU21は、本ルーチンの前回実行時に設定された目標入力回転数Nin*(前回値)がステップS104にて設定した次回アップシフト回転数Ninup以上であるか(目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達したか)否かを判定する(ステップS110)。目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、ステップS112にて1速フラグF1を値1に設定した上で(ステップS112)、変速ECU21は、ステップS10にて入力した出力回転数NoutにCVT40の最大変速比γmaxを乗じた値を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS114)。更に、変速ECU21は、設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS130)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS114にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS100の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は、上述のように現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた現車速域SRpおよび次回アップシフト回転数Ninupを設定し(ステップS102,S104)、ステップS106の判定処理を実行する。上述のように、ステップS114にて目標入力回転数Nin*が設定される場合、ステップS112にて1速フラグF1が値1に設定される。従って、この場合、変速ECU21は、ステップS106にて1速フラグF1が値1であると判定し、ステップS108の処理をスキップすると共に、目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup以上であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定すると、変速ECU21は、上述のように、ステップS114にてCVT40の最大変速比γmaxと出力回転数NoutとからCVT40の目標入力回転数Nin*を設定する。
この結果、運転者によりスポーツモードが選択された状態で自動車10が発進する場合や、現車速Vが最低車速域SR1に含まれている状態で運転者によりスポーツモードが選択された場合には、図9A,9Bおよび9Cに示すように、車両発進時やスポーツモードの選択直後(図9A−9Cおける時刻t0)から、ステップS110にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup以上になった(に達した)と判定されるまで(図9A−9Cにおける時刻t1)、CVT40の目標入力回転数Nin*が最大変速比γmaxと出力回転数Noutに基づいて設定される(ステップS114)。このように、現車速域SRpが最低車速域SR1である場合に、目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで固定変速比すなわち最大変速比γmaxを用いて目標入力回転数Nin*を設定することにより、最低車速域SR1での自動車10の加速性能を良好に確保することが可能となる。
一方、ステップS114に目標入力回転数Nin*を設定した後にステップ110にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup以上であると判定した場合、変速ECU21は、1速フラグF1を値0に設定した上で(ステップS116)、本ルーチンの前回実行時における有段アップシフト実行フラグFupの値(前回値)に基づいて、有段アップシフトの実行開始時(有段アップシフトを実行する必要があると判定された後の1サイクル目)であるか否かを判定する(ステップS118)。また、ステップS100の目標値設定処理を実行し、ステップS106にて1速フラグF1が値0であると判定すると共に、ステップS108にて現車速域SRpが最低車速域SR1ではないと判定した場合、変速ECU21は、有段アップシフト実行フラグFupの前回値に基づいて有段アップシフトの実行開始時であるか否かを判定する(ステップS118)。
変速ECU21は、ステップS118にて有段アップシフト実行フラグFupの前回値が値0であって有段アップシフトの実行開始時であると判定した場合、ステップS10にて入力した現アクセル開度AccとステップS102にて設定した現車速域SRpとに基づいて上昇勾配ΔNinを設定すると共に、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに基づいて変速間隔時間tintを設定する(ステップS120)。上昇勾配ΔNinは、CVT40の変速比γをアップシフト側(小変速比側)にステップ変化させ始めた後における本ルーチンの実行間隔(時間間隔dt)あたりの入力回転数Ninの変化量(正の値)を規定するものである。変速間隔時間tintは、CVT40の変速比γをアップシフト側にステップ変化させ始めてから、次に変速比γをアップシフト側にステップ変化させるまでのおおよその時間間隔を規定するものである。
本実施形態では、アクセル開度ごとに(例えば、アクセル開度=100%、70%、50%および30%について)複数の車速域SRにおける上昇勾配ΔNinを規定する上昇勾配設定マップが予め作成されると共に、アクセル開度ごとに(例えば、アクセル開度=100%、70%、50%および30%について)複数の車速域SRにおける変速間隔時間tinを規定する変速間隔時間設定マップが予め作成され、両マップが変速ECU21の図示しないROMに格納されている。本実施形態の上昇勾配設定マップは、アクセル開度ごとに、各車速域SRに対して実験・解析を経て定められた上昇勾配ΔNinを割り当てたものであり、図10A,10B,10Cおよび10Dに示すように、上昇勾配ΔNinをアクセル開度が大きくなるにつれて大きくし、かつ車速域SRが高速側に移行するにつれて小さくするように作成される(図10A−10Dの白い三角印参照)。また、本実施形態の変速間隔時間設定マップは、アクセル開度ごとに、各車速域SRに対して実験・解析を経て定められた変速間隔時間tintを割り当てたものであり、図10A−10Dに示すように、変速間隔時間tintをアクセル開度が大きくなるにつれて短くし、かつ最低車速域SR1を除いて車速域SRが高速側に移行するにつれて長くするように作成される。
ステップS120において、変速ECU21は、上昇勾配設定マップから、適宜線形補間を行いながら現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNinを導出・設定し、変速間隔時間設定マップから、適宜線形補間を行いながら現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した変速間隔時間tintを導出・設定する。次いで、変速ECU21は、ステップS104にて設定された次回アップシフト回転数Ninupから上昇勾配ΔNinと変速間隔時間tintとの積値を減じた値を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS122)。このように、ステップS122において次回アップシフト回転数Ninup、上昇勾配ΔNinおよび変速間隔時間tintに基づいて目標入力回転数Nin*を設定することで、その時点での入力回転数Nin(現入力回転数)よりも目標入力回転数Nin*を低くすることができる。更に、変速ECU21は、設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS130)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS122にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS100の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は、上述のように現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた現車速域SRpおよび次回アップシフト回転数Ninupを設定し(ステップS102,S104)、ステップS106以降の処理を実行する。この場合、有段アップシフトの実行開始直後ではなく、かつ現車速域SRpが最低車速域SR1ではないことから、変速ECU21は、ステップS106,S108およびS118の判定処理を実行した後、目標入力回転数Nin*の前回値がステップS104にて設定した次回アップシフト回転数Ninup未満であるか(目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達したか)否かを判定する(ステップS124)。
ステップS124にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、変速ECU21は、ステップS120と同様にして、上述の上昇勾配設定マップからステップS10にて入力した現アクセル開度AccとステップS102にて設定した現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNinを導出・設定する(ステップS126)。次いで、変速ECU21は、目標入力回転数Nin*の前回値とステップS126にて設定した上昇勾配ΔNinとの和を今回の目標入力回転数Nin*に設定し(ステップS128)、設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定する(ステップS130)。更に、変速ECU21は、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS128にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS100の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は、ステップS102,S104,S106、S108およびS118の処理を実行した上で、目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であるか否かを判定する(ステップS124)。ステップS124にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、変速ECU21は、現アクセル開度Accと現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNinを設定し(ステップS126)、目標入力回転数Nin*の前回値と上昇勾配ΔNinとの和を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS128)。また、変速ECU21は、ステップS102,S104,S106,S108およびS118の処理を実行した後に、ステップS124にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS104にて設定した次回アップシフト回転数Ninup以上であると判定した場合、上述のステップS120以降の処理を実行する。そして、変速ECU21は、アクセルペダル91が踏み込まれている間、上述のステップS10以降の処理を繰り返し実行する。
この結果、図11Aおよび11Bに示すように、ステップS122にて次回アップシフト回転数Ninupから上昇勾配ΔNinと変速間隔時間tintとの積値を減じた値が目標入力回転数Nin*に設定されると(図11Aおよび11Bにおける時刻t10)、以後、ステップS124にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS104にて設定された次回アップシフト回転数Ninup以上になった(に達した)と判定されるまで(図11Aおよび11Bにおける時刻t11)、ステップS128にて目標入力回転数Nin*の前回値と現アクセル開度Accと現車速域SRpに応じた上昇勾配ΔNinとの和が目標入力回転数Nin*に時間間隔dt毎に設定されることになる。これにより、図11Aおよび11Bにおいて二点鎖線で示すように、CVT40の入力回転数Ninを比較的急峻に低下させて変速比γをアップシフト側にステップ変化させると共に、現アクセル開度Accと現車速域SRpに応じた上昇勾配ΔNinに従って高めていくことができる。
上述のように、CVT40の制御装置である変速ECU21は、有段アップシフトの実行に際して、アクセル開度ごとに車速の設定可能範囲を複数に分割して定められる複数の車速域SRの中(車速域設定マップ)から、現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた現車速域SRp、すなわち現アクセル開度Accに応じた複数の車速域SRのうちの現車速Vを含むものを予め定められた時間間隔dt毎に取得する(ステップS102)。また、変速ECU21は、少なくとも現アクセル開度Accに基づいて、変速比γを次にアップシフト側にステップ変化させる際の入力回転数Ninの目標値である次回アップシフト回転数Ninupを時間間隔dt毎に設定する(ステップS104)。更に、変速ECU21は、変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングで、その時点での入力回転数Nin(現入力回転数)よりも低くなるように目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS122)。そして、変速ECU21は、ステップS122にて目標入力回転数Nin*を設定してから、アクセル開度ごとに複数の車速域SRのそれぞれについて定められた入力回転数Ninの上昇勾配ΔNinの中(上昇勾配設定マップ)から、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNinを時間間隔dt毎に取得し(ステップS126)、目標入力回転数Nin*(前回値)が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNinに従って入力回転数Ninが変化するように目標入力回転数Nin*を時間間隔dt毎に設定する(ステップS128)。
すなわち、変速ECU21は、CVT40の入力回転数Ninが現入力回転数よりも低くなるように目標入力回転数Nin*を設定してから、当該入力回転数Ninが現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNinに従って高まるように目標入力回転数Nin*を設定する。これにより、入力回転数Ninを低下させてCVT40の変速比γをアップシフト側にステップ変化させると共に、運転者によるアクセル開度が概ね一定であって現車速域SRpが変わらない場合には、入力回転数Ninを現アクセル開度Accと現車速域SRpに応じた一定の上昇勾配ΔNinに従って高めていくことが可能となる。従って、このような場合には、変速比γをアップシフト側にステップ変化させ始めたタイミング(図11Aおよび11Bにおける時刻t10)から上記変速間隔時間tintが経過した時点(図11Aおよび11Bにおける時刻t11)で変速比γをアップシフト側にステップ変化させることができる。また、変速比γをアップシフト側にステップ変化させ始めた後にアクセル開度や現車速域SRp(現車速V)が変化しても、図11Aおよび11Bにおいて破線で示すように、上昇勾配ΔNinを現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じたものに変更し、それに従って入力回転数Ninを高めていくことができる。
この結果、CVT40の変速比γをアップシフト側にステップ変化させてから、運転者に自らの加速意思に合致した(ダイレクトな)加速が得られたと感じさせて、運転者が感じる直接的な加速感、すなわちダイレクト感をより向上させることが可能となる。従って、CVT40を搭載した自動車10における加速感やドライバビリティーをより向上させることができる。なお、上記実施形態では、ステップS122にて目標入力回転数Nin*が設定されたサイクルの次のサイクルから、入力回転数Ninを現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNinに従って高めるように目標入力回転数Nin*が設定されるが、これに限られるものではない。すなわち、ステップS122にて目標入力回転数Nin*が設定された後、目標入力回転数Nin*を低く保ち、入力回転数Ninがある程度低下した段階から、入力回転数Ninが上昇勾配ΔNinに従って高まるように目標入力回転数Nin*を設定してもよい。
また、変速ECU21は、変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングから変速比γを次にアップシフト側にステップ変化させるまでの時間としてアクセル開度ごとに複数の車速域SRのそれぞれについて定められた複数の変速間隔時間tintの中(変速間隔時間設定マップ)から、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた変速間隔時間tintを取得する(ステップS120)。そして、変速ECU21は、変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングで、ステップS104にて設定した次回アップシフト回転数Ninup、ステップS120にて取得した上昇勾配ΔNinおよび変速間隔時間tintに基づいて目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS122)。これにより、変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングで、その後に入力回転数Ninを高めていく際の上昇勾配ΔNinに応じた分だけ入力回転数Ninを低下させて、次に変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングを運転者の加速意思に応じたより適正なものとすることが可能となる。
更に、変速ECU21は、現車速域SRpが最低車速域SR1である場合、目標入力回転数Nin*(前回値)が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、予め定められた固定変速比としての最大変速比γmaxとCVT40の出力回転数Noutとに基づいて目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS114)。このように、現車速域SRpが最低車速域SR1である場合に、目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで最大変速比γmaxを用いて目標入力回転数Nin*を設定することにより、最低車速域SR1での自動車10の加速性能を良好に確保することが可能となる。
ただし、ステップS114にて用いられる固定変速比は、CVT40の最大変速比γmaxに限られるものではない。また、アクセル開度ごとの車速域SRの数が上述のものよりも更に多いような場合には、現車速域SRpが第2車速域SR2や第3車速域SR3といった低車速側の車速域SRである場合に、固定変速比を用いて目標入力回転数Nin*を設定してもよい。更に、現車速域SRpがより高速側の車速域SRで(例えば、SR16等)である場合に、固定変速比を用いて目標入力回転数Nin*を設定してもよい。これにより、当該高速側の車速域での走行中に、変速比γをアップシフト側に変化させるタイミングでの入力回転数Ninの変動を抑えて、入力回転数Ninのステップ変化に伴って、いわゆるビジー感を生じさせてしまうのを抑制することができる。
また、上記実施形態において、アクセル開度ごとの車速域SRの数は、アクセル開度が大きいほど多く定められる。このように、運転者によるアクセル開度が大きいほど変速比γの変更ステップ数を多くすること、すなわちアクセル開度Accが一定である場合に、自動車10の運転者によるアクセル開度Accが大きいほどステップ的なアップシフトの許容回数を多くすることで、変速比γをアップシフト側にステップ変化させる間隔(変速間隔時間tint)やエンジン音の変動を運転者の加速意思に応じたより適正なものとし、運転者が感じる雰囲気的な加速感、すなわちリズム感を向上させることができる。ただし、第2の実施形態においても、アクセル開度ごとの車速域SRの数は、上述のものに限られない。すなわち、本発明者らの研究によれば、アクセル開度が最大(100%)であるときの車速域SRの数(最大段数)を12段から48段までの範囲内、より好ましくは、16段から36段までの範囲内の数値に定めれば、市場に供給されている多種多様な自動車のドライバビリティーを向上させ得ることが判明している。この場合、広く普及している一般的な自動変速機の変速段数が4段、6段、あるいは8段であることを踏まえて、アクセル開度が最大(100%)であるときの変更ステップの数(最大段数)を値4,6および8のすべて、あるいは何れか2つの公倍数にしてもよい。
更に、上記実施形態において、上昇勾配ΔNinは、アクセル開度が大きくなるにつれて大きくなり、かつ車速域SRが高速側に移行するにつれて小さくなるように定められる。すなわち、アクセル開度が大きい場合には、一般に運転者の加速意思が高いとみなすことが可能であり、アクセル開度が大きく、かつ車速が低い場合には、運転者の加速意思がより高いとみなすことができる。更に、車速が高い場合には、一般に運転者の加速意思が低いとみなすことが可能であり、現車速Vが低く、かつアクセル開度が小さい場合には、加速意思がより低いとみなすことができる。従って、入力回転数Ninの上昇勾配ΔNinをアクセル開度が大きくなるにつれて大きくなり、かつ車速域SRが高速側に移行するにつれて小さくなるように定めれば、運転者の加速意思が高いほど上昇勾配ΔNinを大きくして加速感すなわちダイレクト感やリズム感を向上させると共に、運転者の加速意思が低いほど上昇勾配ΔNinを小さくして、ビジー感を生じさせてしまうのを抑制することが可能となる。
また、上記実施形態において、変速間隔時間tintは、アクセル開度が大きくなるにつれて(大きいほど)短くなり、かつ現車速域SRpが最低車速域SR1である場合を除いて車速域SRが高速側に移行するにつれて長くなるように定められる。このように、アクセル開度が大きくなるにつれて変速間隔時間tint、すなわち変速比γをアップシフト側にステップ変化させる間隔(ステップ的なアップシフトの実行間隔)を短くすれば、アクセル開度Accが大きく、運転者の加速意思が高い場合に、運転者が感じる雰囲気的な加速感、すなわちリズム感を向上させることができる。この結果、第2の実施形態においても、CVT40を搭載した自動車10のドライバビリティーをより向上させることが可能となる。そして、現車速域SRpが最低車速域SR1である場合を除いて車速域SRが高速側に移行するにつれて変速間隔時間tintを長くすれば、運転者の加速意思が低い場合に、自動車10のエンジン音等の頻繁な変動を抑制し、リズム感を損なってビジー感を生じさせてしまうのを抑制することが可能となる。
更に、アクセル開度Accが大きいほど変速間隔時間tintを短くすると共に、車速域SRが高速側に移行するほど(最低車速域SR1を除く)変速間隔時間tintを長くすることで、アクセルペダル91の踏み込みに応じて自動車10が加速している際にステップ的なアップシフトの実行回数が増加するのに伴って、当該ステップ的なアップシフトの実行間隔(変速間隔時間tint)が長くなっていく。これにより、エンジン音の変動を運転者の加速意思に応じたより適正なものとし、自動車10が加速している際にリズム感を損なうこと、つまり、いわゆるビジー感を生じさせてしまうのを抑制することができるので、ステップ的なアップシフトを行う際のリズム感を向上させてCVT40を搭載した自動車10のドライバビリティーをより向上させることが可能となる。
また、上記実施形態において、変速ECU21には、変速比γが無段階に変更されるノーマルモード(無段変速モード)と、変速比γがステップ的に変更されるスポーツモード(有段変速モード)との選択を運転者に許容するモード選択スイッチ100が接続されており、変速ECU21は、運転者によりスポーツモードが選択されている際に、変速比γをステップ的に変更する。これにより、ノーマルモードのもとで変速比γを無段階に変更することにより自動車10の燃費を向上させつつ、スポーツモードのもとで変速比γをステップ的に変更することにより自動車10のドライバビリティーを向上させることが可能となる。
引き続き、自動車10の運転者のキックダウン操作に応じてキックダウンが実行される際の目標値設定処理について説明する。図12は、図7のステップS30にてキックダウンを実行する必要があると判定された場合に実行されるステップS200における目標値設定処理の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、ステップS30にてキックダウンを実行する必要があると判定した場合、変速ECU21は、キックダウンフラグFkdを値1に設定した上で(ステップS202)、ステップS10にて入力した現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた車速域SRを上述の車速域設定マップから取得して現車速域SRpに設定し(ステップS204)、更に、上述の次回アップシフト回転数設定マップから現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した次回アップシフト回転数Ninupを導出・設定する(ステップS206)。
続いて、変速ECU21は、ステップダウンフラグFsdが値1であるか否かを判定する(ステップS208)。ステップダウンフラグFsdは、キックダウンが実行されない場合に値0に設定されるものである。従って、キックダウンの実行開始時には、ステップS208において否定判断(Fsd=0である旨の判定)がなされる。ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値0であると判定すると、変速ECU21は、本ルーチンの前回実行時におけるキックダウンフラグFkdの値(前回値)に基づいて、キックダウンの実行開始時であるか否かを判定する(ステップS214)。変速ECU21は、ステップS214にてキックダウンフラグFkdの前回値が値0であると判定した場合、ステップダウンフラグFsdを値1に設定する(ステップS216)。
ステップS216にてステップダウンフラグFsdを値1に設定した後、変速ECU21は、ステップS10にて入力した現アクセル開度AccとステップS204にて設定した現車速域SRpとに基づいて上昇勾配ΔNkdを設定すると共に、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに基づいて変速間隔時間tintを設定する(ステップS218)。上昇勾配ΔNkdは、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側(大変速比側)に変化させる際の本ルーチンの実行間隔(時間間隔dt)あたりの入力回転数Ninの変化量(正の値)を規定するものである。また、ここでの変速間隔時間tintは、基本的に、CVT40の変速比γをダウンシフト側にステップ変化させてから、次に変速比γをアップシフト側にステップ変化させるまでのおおよその時間間隔を規定するものである。
本実施形態では、アクセル開度ごとに(例えば、アクセル開度=100%、70%、50%および30%について)複数の車速域SRにおける上昇勾配ΔNkdを規定するキックダウン勾配設定マップが予め作成されて変速ECU21の図示しないROMに格納されている。本実施形態のキックダウン勾配設定マップは、アクセル開度ごとに、各車速域SRに対して実験・解析を経て定められた上昇勾配ΔNkdを割り当てたものであり、図10A−10Dに示すように、上昇勾配ΔNkdをアクセル開度が大きくなるにつれて大きくし、かつ車速域SRが高速側に移行するにつれて小さくするように作成される(図10A−10Dの黒い三角印参照)。また、図10A−10Dからわかるように、キックダウン勾配設定マップは、アクセル開度ごとの各車速域SRにおける上昇勾配ΔNkdを上述のステップS120,S126にて用いられる上昇勾配設定マップから取得される同一のアクセル開度および車速域SR(の組み合わせ)に対応した上昇勾配ΔNinよりも大きく規定するように作成される。
ステップS218において、変速ECU21は、キックダウン勾配設定マップから、適宜線形補間を行いながら現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNkdを導出・設定し、上述のステップS120,S126にて用いられる変速間隔時間設定マップから、適宜線形補間を行いながら現アクセル開度Accおよび現車速域SRpに対応した変速間隔時間tintを導出・設定する。ただし、ステップS218では、キックダウンの実行時における変速間隔時間tintを規定するように作成された専用のキックダウン変速間隔時間設定マップが用いられてもよい。次いで、変速ECU21は、ステップS206にて設定された次回アップシフト回転数Ninupから上昇勾配ΔNkdと変速間隔時間tintとの積値を減じた値を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS220)。
ステップS220にて目標入力回転数Nin*を一旦設定した後、変速ECU21は、設定した目標入力回転数Nin*がステップS10にて入力した入力回転数Nin以下であるか否かを判定する(ステップS222)。変速ECU21は、目標入力回転数Nin*が入力回転数Ninを上回っていると判定した場合、ステップS220にて設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS240)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
これに対して、ステップS222にて目標入力回転数Nin*が入力回転数Nin以下であると判定した場合、変速ECU21は、ステップダウンフラグFsdを値0に設定した上で(ステップS224)、ステップS10にて入力した入力回転数NinとステップS218にて設定した上昇勾配ΔNkdとの和を目標入力回転数Nin*に再設定する(ステップS226)。これにより、キックダウン操作がなされた際に、その時点での入力回転数Nin(現入力回転数)よりも目標入力回転数Nin*を高くすることが可能となり、変速比γがダウンシフト側に変化しなくなるのを確実に抑制することができる。ステップS226にて目標入力回転数Nin*を再設定した場合、変速ECU21は、CVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS240)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS220にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS200の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は,上述のステップS202,S204およびS206の処理を実行し、ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値1であるか否かを判定する。ここで、上述のステップS222にて目標入力回転数Nin*が入力回転数Ninを上回っていると判定されている場合、ステップダウンフラグFsdが値1に維持されていることから、ステップS208において、変速ECU21は、ステップダウンフラグFsdが値1であると判定する。そして、変速ECU21は、ステップS10にて入力したCVT40の入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致したか(当該前回値を中心とした比較的狭い範囲内に含まれているか)否かを判定する(ステップS210)。
ステップS210にてCVT40の入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致していないと判定した場合、変速ECU21は、目標入力回転数Nin*の前回値を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS228)。更に、変速ECU21は、設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS240)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS228にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS200の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は、ステップS202,S204およびS206の処理を実行し、ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値1であるか否かを判定する。この場合も、ステップダウンフラグFsdが値1に維持されていることから、変速ECU21は、ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値1であると判定し、入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致したか否かを判定する(ステップS210)。そして、ステップS210にてCVT40の入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致していないと判定した場合、変速ECU21は、目標入力回転数Nin*の前回値を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS228)。
この結果、図13A,13B,13Cおよび13Dに示すように、ステップS220にて次回アップシフト回転数Ninup、上昇勾配ΔNkdおよび変速間隔時間tintに基づいて目標入力回転数Nin*が設定されてから(図13A−13Dにおける時刻t20)、ステップS210にてCVT40の入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致したと判定されるまで(図13A−13Dにおける時刻t21)、ステップS220にて算出された値(次回アップシフト回転数Ninup−ΔNkd×tint)が継続して目標入力回転数Nin*に設定されることになる。これにより、図13A−13Dに示すように、CVT40の入力回転数Ninを比較的急峻に高めて変速比γをダウンシフト側にステップ変化させることができる。
また、ステップS202,S204、S206およびS208の処理を実行した後、ステップS210にてCVT40の入力回転数Ninが目標入力回転数Nin*の前回値に概ね一致したと判定した場合、変速ECU21は、ステップダウンフラグFsdを値0に設定し(ステップS212)、上述のステップS214の判定処理を実行する。この場合、変速ECU21は、キックダウンの実行開始時ではないことから、ステップS216以降の処理を実行せず、目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定した次回アップシフト回転数Ninup未満であるか(目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達したか)否かを判定する(ステップS230)。
ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定した次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、変速ECU21は、ステップS218と同様にして、上述のキックダウン勾配設定マップからステップS10にて入力した現アクセル開度AccとステップS204にて設定した現車速域SRpとに対応した上昇勾配ΔNkdを導出・設定する(ステップS232)。次いで、変速ECU21は、目標入力回転数Nin*の前回値とステップS232にて設定した上昇勾配ΔNkdとの和を今回の目標入力回転数Nin*に設定し(ステップS234)、設定した目標入力回転数Nin*をステップS10にて入力した出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定する(ステップS240)。更に、変速ECU21は、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
ステップS234にて目標入力回転数Nin*を設定した後にステップS200の目標値設定処理を実行する場合、変速ECU21は、ステップS202,S204およびS206の処理を実行した後、ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値1であるか否かを判定する。この場合、上述のようにステップS212にてステップダウンフラグFsdが値0に設定されており、かつキックダウンの実行開始時ではないことから、変速ECU21は、ステップS214の判定処理を実行した後、目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定した次回アップシフト回転数Ninup以上であるか否かを判定する(ステップS230)。ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、変速ECU21は、現アクセル開度Accと現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNkdを設定し(ステップS232)、目標入力回転数Nin*の前回値と上昇勾配ΔNkdとの和を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS234)。
この結果、図13A−13Dに示すように、CVT40の入力回転数NinがステップS220にて設定された目標入力回転数Nin*に従って高まり、ステップS210にて当該目標入力回転数Nin*に概ね一致したと判定されてから(図13A−13Dにおける時刻t21)、ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定された次回アップシフト回転数Ninup以上になった(に達した)と判定されるまで(図13A−13Dにおける時刻t22)、ステップS234にて目標入力回転数Nin*の前回値と上昇勾配ΔNkdとの和が目標入力回転数Nin*に設定されることになる。これにより、アクセル開度が概ね一定であって現車速域SRpが変わらない場合、CVT40の入力回転数Ninを現アクセル開度Accと現車速域SRpに応じた一定の上昇勾配ΔNkdに従って高めていくと共に、入力回転数NinがステップS220にて設定された目標入力回転数Nin*に従って高まったタイミング(図13A−13Dにおける時刻t21)から上記変速間隔時間tintが経過した時点(図13A−13Dにおける時刻t22)で変速比γをアップシフト側にステップ変化させることが可能となる。また、変速比γをダウンシフト側にステップ変化させた後にアクセル開度Accや現車速域SRp(現車速V)が変化しても上昇勾配ΔNkdを現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じたものに変更し、それに従って入力回転数Ninを高めていくことができる。
一方、S226にて目標入力回転数Nin*を再設定した後にステップS200の目標値設定処理を実行する場合も、変速ECU21は,上述のステップS202,S204およびS206の処理を実行し、ステップS208にてステップダウンフラグFsdが値1であるか否かを判定する。S226にて目標入力回転数Nin*が再設定された場合、上述のステップS222にて目標入力回転数Nin*が入力回転数Nin以下であると判定されて、ステップS224にてステップダウンフラグFsdが値0に設定されていることから、ステップS208において、変速ECU21は、ステップダウンフラグFsdが値0であると判定する。そして、変速ECU21は、ステップS210の判定処理を実行する代わりに、ステップS214の判定処理を実行する。この場合、変速ECU21は、キックダウンの実行開始時ではないことから、ステップS216以降の処理を実行せず、目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定した次回アップシフト回転数Ninup未満であるか(目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達したか)否かを判定する(ステップS230)。
ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値が次回アップシフト回転数Ninup未満であると判定した場合、変速ECU21は、現アクセル開度Accと現車速域SRpに対応した上昇勾配ΔNkdを設定し(ステップS232)、目標入力回転数Nin*の前回値と上昇勾配ΔNkdとの和を今回の目標入力回転数Nin*に設定する(ステップS234)。更に、変速ECU21は、目標入力回転数Nin*を出力回転数Noutで除することによりCVT40の目標変速比γ*を設定した上で(ステップS240)、ステップS150における油圧制御を実行し、アクセルペダル91が踏み込まれている間、ステップS10以降の処理を再度実行する。
この結果、ステップS220にて設定された目標入力回転数Nin*が入力回転数Nin以下であると判定され(ステップS222)、入力回転数Nin(現入力回転数)と上昇勾配ΔNkdとの和が目標入力回転数Nin*に再設定された場合(ステップS226)、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側に変化させるタイミングから(図13A−13Dにおける時刻t20)、ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS206にて設定された次回アップシフト回転数Ninup以上になった(に達した)と判定されるまで(図13A−13Dにおける時刻t22)、入力回転数Ninが上昇勾配ΔNkdに従って変化するように目標入力回転数Nin*が設定されることになる(ステップS226,S234、図13A−13Dにおける破線参照)。このように、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側に変化させるタイミングから目標入力回転数Nin*(前回値)が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、入力回転数Ninが現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNkdに従って高まるように目標入力回転数Nin*を設定しても、上昇勾配ΔNkdをある程度大きい値としておくことで、運転者に自らの加速意思に合致した加速が得られたと感じさせて、ダイレクト感をより向上させることができる。
変速ECU21は、ステップS202,S204,S206,S208,S214の処理を実行した後に、ステップS230にて目標入力回転数Nin*の前回値がステップS102にて設定した次回アップシフト回転数Ninup以上であると判定した場合、ステップS236にてキックダウンフラグFkdを値0に設定した上で(図13A−13Dにおける時刻t22)、図8におけるステップS120以降の処理を実行する。そして、変速ECU21は、アクセルペダル91が踏み込まれている間、上述のステップS10以降の処理を繰り返し実行する。
上述のように、CVT40の制御装置である変速ECU21は、キックダウンの実行に際して、アクセル開度ごとに車速の設定可能範囲を複数に分割して定められる複数の車速域SRの中(車速域設定マップ)から、現アクセル開度Accおよび現車速Vに応じた現車速域SRp、すなわち現アクセル開度Accに応じた複数の車速域SRのうちの現車速Vを含むものを予め定められた時間間隔dt毎に取得する(ステップS204)。また、変速ECU21は、少なくとも現アクセル開度Accに基づいて、変速比γを次にアップシフト側にステップ変化させる際の入力回転数Ninの目標値である次回アップシフト回転数Ninupを時間間隔dt毎に設定する(ステップS206)。更に、変速ECU21は、キックダウン操作がなされると、変速比γがダウンシフト側にステップ変化するようにその時点での入力回転数Nin(現入力回転数)よりも高くなるように目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS220)。そして、変速ECU21は、入力回転数NinがステップS220にて設定された目標入力回転数Nin*に従って高まってから、アクセル開度ごとに複数の車速域SRのそれぞれについて定められた入力回転数Ninの上昇勾配ΔNkdの中(キックダウン勾配設定マップ)から、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNkdを時間間隔dt毎に取得し(ステップS232)、目標入力回転数Nin*(前回値)が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNkdに従って入力回転数Ninが変化するように目標入力回転数Nin*を時間間隔dt毎に設定する(ステップS234)。
すなわち、変速ECU21は、キックダウン操作に応じて入力回転数Ninを高めて変速比γをダウンシフト側にステップ変化させてから、入力回転数Ninが現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた上昇勾配ΔNkdに従って高まるように目標入力回転数Nin*を設定する。これにより、キックダウン操作がなされてから、アクセル開度が概ね一定であって現車速域SRpが変わらない場合、入力回転数Ninを現アクセル開度Accと現車速域SRpに応じた一定の上昇勾配ΔNkdに従って高めていくことが可能となる。また、キックダウン操作がなされた後にアクセル開度や現車速域SRp(車速)が変化しても、上昇勾配ΔNkdを現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じたものに変更し、それに従って入力回転数Ninを高めていくことができる。この結果、キックダウン操作がなされてから、運転者に自らの加速意思に合致した加速が得られたと感じさせて、ダイレクト感をより向上させることが可能となる。従って、CVT40を搭載した自動車10における加速感やドライバビリティーをより向上させることができる。
更に、変速ECU21は、入力回転数NinがステップS220にて設定された目標入力回転数Nin*に従って高まったタイミングから変速比γを次にアップシフト側にステップ変化させるまでの時間としてアクセル開度ごとに複数の車速域SRのそれぞれについて定められた複数の変速間隔時間tintの中(変速間隔時間設定マップ)から、現アクセル開度Accと現車速域SRpとに応じた変速間隔時間tintを取得する(ステップS218)。そして、変速ECU21は、キックダウン操作がなされると、ステップS206にて設定した次回アップシフト回転数Ninup、ステップS218にて取得した上昇勾配ΔNkdおよび変速間隔時間tintに基づいて目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS220)。これにより、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側にステップ変化させるタイミングで、その後に入力回転数Ninを高めていく際の上昇勾配ΔNkdに応じた分だけ入力回転数Ninを高めて、次に変速比γをアップシフト側にステップ変化させるタイミングを運転者の加速意思に応じたより適正なものとすることが可能となる。
また、変速ECU21は、ステップS220にて次回アップシフト回転数Ninup、上昇勾配ΔNkdおよび変速間隔時間tintに基づいて設定した目標入力回転数Nin*が入力回転数Nin(現入力回転数)以下である場合、当該入力回転数Ninと上昇勾配ΔNkdとに基づいて目標入力回転数Nin*を再設定する(ステップS226)。更に、変速ECU21は、ステップS220にて設定した目標入力回転数Nin*が入力回転数Nin以下であると判定した場合、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側に変化させるタイミングから、目標入力回転数Nin*(前回値)が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、入力回転数Ninが上昇勾配ΔNkdに従って変化するように目標入力回転数Nin*を設定する(ステップS226,S234)。
これにより、キックダウン操作がなされた際に、CVT40の変速比γがダウンシフト側に変化しなくなるのを確実に抑制すると共に、上昇勾配ΔNkdをある程度大きい値としておくことで、キックダウン操作がなされてから、運転者に自らの加速意思に合致した加速が得られたと感じさせて、ダイレクト感をより向上させることができる。従って、CVT40が搭載される車両によっては、上昇勾配ΔNkdを充分に大きい値としておくことで、ステップS216−S228等の処理を省略し、キックダウン操作に応じて変速比γをダウンシフト側に変化させるタイミングから目標入力回転数Nin*が次回アップシフト回転数Ninupに達するまで、入力回転数Ninが上昇勾配ΔNkdに従って変化するように目標入力回転数Nin*を設定してもよい。
更に、上記実施形態において、変速間隔時間tintは、アクセル開度が大きくなるにつれて短くなり、かつ現車速域SRpが最低車速域SR1である場合を除いて車速域SRが高速側に移行するにつれて長くなるように定められる。このように、変速間隔時間tint、すなわちキックダウン操作がなされてから、次に変速比をアップシフト側にステップ変化させるまでの間隔をアクセル開度が大きくなるにつれて短くすれば、運転者の加速意思が高い場合に、運転者が感じる雰囲気的な加速感、すなわちリズム感を向上させることができる。そして、現車速域SRpが最低車速域SR1である場合を除いて車速域SRが高速側に移行するにつれて変速間隔時間tintを長くすれば、運転者の加速意思が低い場合に、自動車10のエンジン音等の頻繁な変動を抑制し、リズム感を損なってビジー感を生じさせてしまうのを抑制することが可能となる。
また、上記実施形態において、キックダウン勾配設定マップから取得される上昇勾配ΔNkdは、有段アップシフトの実行時に用いられる上昇勾配設定マップから取得される同一のアクセル開度および車速域SR(の組み合わせ)に対応した上昇勾配ΔNinよりも大きくなる。これにより、キックダウン操作がなされてから、次に変速比γをアップシフト側にステップ変化させるまでの間におけるダイレクト感やリズム感をより向上させることができる。
ここまで説明したように、第2の実施形態に係る変速ECU21も、CVT40の変速比γを無段階に変更すると共に、変速比γのステップ的な変更、すなわちステップ的なアップシフトを実行するものであり、アクセル開度Accが一定である場合、当該アクセル開度Accが大きいほど、有段変速機における変速段数に相当する変速比γの変更ステップの数、すなわちステップ的なアップシフトの許容回数を多くする。このように、アクセル開度Accすなわち運転者によるアクセル踏み込み量が一定である場合に、アクセル開度Accが大きいほどステップ的なアップシフトの許容回数を多くすることで、車両加速度Gや自動車10のエンジン音を運転者の加速意思に応じてより適正に変化させることができるので、ダイレクト感やリズム感を両立させて自動車10のドライバビリティーを極めて良好に向上させることが可能となる。
なお、第2の実施形態では、図7のルーチンを実行する変速ECU21が「無段変速機の制御装置」に相当し、図7のステップS10−S40,S70(図8のルーチン)−S100およびS150の処理を実行する変速ECU21が「有段変速制御手段」に相当する。また、第2の実施形態においても、上記CVT40は、ベルト式無段変速機に限られず、例えばトロイダル式無段変速機や、コーン式無段変速機等といった機械式無段変速機であってもよい。また、CVT40は、少なくとも1体の電動機(モータジェネレータ)を含む電気式無段変速機や、遊星歯車と2体の電動機(モータジェネレータ)を含む電気式無段変速機であってもよい。このような場合、入力回転数Ninの代わりにエンジン等の回転数が用いられてもよく、目標入力回転数Nin*の代わりに目標エンジン回転数が用いられてもよい。そして、CVT40の変速比γをステップ的に変更する際に用いられるパラメータとして、アクセル開度Accの代わりに、スロットルバルブ13の開度が用いられてもよい。
ただし、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。