第1の発明は、冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に循環させる送風機と、前記冷却器の下方に配置される除霜手段と、前記冷却器と送風機と除霜手段とを収める冷却室と、前記冷却室を背面に備える低温貯蔵室と、前記低温貯蔵室と温度帯の異なる複数の高温貯蔵室と、前記低温貯蔵室からの低温戻り冷気を冷却室へ導入する低温吸込み口と、前記複数の高温貯蔵室からの高温戻り冷気を冷却室へ導入する複数の高温吸込み口と高温戻り風路とを備える冷蔵庫において、前記低温吸込み口は前記冷却室前面に、前記複数の高温吸込み口と高温戻り風路は前記冷却室背面に設けられ、前記複数の高温貯蔵室である冷蔵室は前記低温貯蔵室の上方に配置され、前記複数の高温貯蔵室である野菜室は前記低温貯蔵室の下方に配置され、前記複数の高温吸込み口である冷蔵室吸込み口は、前記複数の高温吸込み口である野菜室吸込み口より開口面積が大きく、それぞれ前記冷却室背面に独立して併設配置され、前記低温吸込み口の下端は前記冷却器の下端より下方に配置し、前記複数の高温吸込み口の上端は前記冷却器の下端より上方に配置するとともに、前記複数の高温吸込み口の上端は前記除霜手段より上方に配置したものである。
これにより、前向きの速度が大きい冷蔵室および野菜室からの高温戻り冷気は、冷却器側へ流れやすくなるため、冷凍室からの冷凍室戻り冷気とは、上下方向にずれる。よって、高温戻り冷気と冷凍室戻り冷気の相互干渉を抑制し庫内を循環する風量を大きくすることができるため、より冷却能力を向上することができる。さらに、高温吸込み口の上端と下端の間に冷却器の下端を設け、且つ、高温吸込み口の上端は除霜手段より上方であるため、ドア開閉時等で侵入した空気中の水分や、庫内に投入された食品に付着している水分、さらに野菜室に保存されている野菜からの水分等で冷却器には、霜が付着するが、水分量の多い高温戻り冷気によって冷却器背面下部に付着した霜が成長しても冷却器底面側へと高温戻り冷気が流れるため耐着霜性能としても優れている。よって、着霜時の冷却能力の劣化も抑制することができる。
なお、最も大きな冷却効果が必要となる低温貯蔵室からの冷気を、より下方から冷却室へ戻すことで、低温戻り冷気が冷却器を通過する距離が長くなり熱交換量を増やすことで更に冷却能力を向上させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、低温吸込み口を高温吸込み口よりも下方に位置したものである。
これによって、冷却運転時において、後向きの速度が大きい低温戻り冷気と前向きの速度が大きい高温戻り冷気は、上下方向にずれることで相互干渉を抑制し庫内を循環する風量を大きくすることができるため、より冷却能力を向上することができる。また、最も大きな冷却効果が必要となる低温貯蔵室からの冷気をより下方から冷却室へ戻すことで、低温戻り冷気が冷却器を通過する距離が長くなり熱交換量を増やすことで更に冷却能力を向上させることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、高温吸込み口を、冷却器の幅寸法と略同一に配置したものである。
これによって、冷蔵庫内を循環する戻り冷気の中で、冷却器と温度差の最も大きい高温戻り冷気は、冷却器との熱交換を冷却器幅と略同一寸法で行えるため、冷却器での熱交換面積を大きく取ることができると共に、冷凍サイクル効率の向上によって省エネを図ることができる。
また、冷蔵庫を使用する中で扉の開閉頻度の高い高温貯蔵室を循環する高温戻り冷気と冷却器との熱交換量が大きくなることは、庫内を冷却する時間を減らすことができるため、冷却運転時間の短縮による冷却器への着霜量も減らすことができる。特に、高温貯蔵室は扉開閉回数が多いことで外気の水分が侵入し易いだけで無く、温度が高いため空気中に保持する絶対湿度も高いため冷却器への霜の付着量も多くなる。冷却器への着霜量を減らすことで、冷却器の除霜周期を延ばす事が可能となり、ガラス管ヒータの入力回数低減と除霜による庫内温度上昇後の庫内冷却に要する入力低減が図れ、更なる省エネを行うことができる。
また、風路の改善により冷却器の熱交換面積を大きく取れることは、冷却器に着霜させる面積を大きくすることであるため、着霜時の冷却能力の劣化も抑制することができる。これによって、冷蔵庫を運転し除霜を必要とするまでの時間を延ばす事が可能となり、ガラス管ヒータの入力回数低減と除霜による庫内温度上昇後の庫内冷却に要する入力低減が図れ、更なる省エネを行うことができる。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、除霜手段は、ガラス管ヒータとガラス管ヒータの上方に配置されたヒータカバーとを備え、高温吸込み口の下端はガラス管ヒータおよびヒータカバーより上方に位置したものである。
これによって、冷蔵庫内を循環する戻り冷気の中で、冷却器と温度差の最も大きい高温戻り冷気は、ガラス管ヒータおよびヒータカバーに循環を邪魔されること無く冷却器へと導かれる。更に、高温吸込み口の下端がガラス管ヒータおよびヒータカバーより上方に位置しているため、温度が高く高湿で絶対湿度の高い高温戻り冷気が、冷却室内で低温となっているガラス管ヒータおよびヒータカバーに着霜し、霜によって風路阻害になることも無い。また、高温戻り冷気は上方に、低温戻り冷気は下方に、上下方向にずれやすくなるため更に、相互干渉が抑制され、庫内を循環する風量を大きくすることができ、より冷却能力を向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図、図2は、本発明の実施の形態1における冷却室の縦断面図、図3は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の冷却室の詳細縦断面図である。
図1から図3において、冷蔵庫30の断熱箱体31は主に鋼板を用いた外箱32とABSなどの樹脂で成型された内箱33とで構成され、その内部には断熱材として例えば硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材34が充填、周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区分されている。
冷蔵庫30の複数の貯蔵室は、最上部に冷蔵室35、その冷蔵室35の下部に野菜室36、そして最下部に冷凍室37が配置されている。
冷蔵室35の前面開口部には冷蔵室ドア38、野菜室36の前面開口部には野菜室ドア39、冷凍室37の前面開口部には冷凍室ドア40が、それぞれの前面開口部を開閉自在に支持されている。
冷蔵室35は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、野菜室36は、3〜8℃まで設定することができる。冷凍室37は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
また、仕切壁である第一区画壁41によって野菜室36と冷凍室37とは上下に区画され、仕切壁である第二区画壁42によって冷蔵室35と野菜室36とは上下に区画されている。
次に冷却室の構成について説明する。
冷却室43は縦区画壁45によって冷凍室37と断熱区画されている。冷凍室37の背面には冷気を生成する冷却室43が設けられ、内部には代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の冷気を生成する、材質としては、アルミや銅が用いられる冷却器44が配設されている。
冷却器44は、内部を冷媒が流動する冷媒チューブ201と、所定間隔毎に配置された複数のプレートフィン202を備えている。
冷媒チューブ201は、アルミニウム製あるいはアルミニウム合金製の一本の管体を、直管部と曲管部が連続し、列(左右)方向Xおよび段(上下)方向Yにおいて複数となる
ように蛇行状に曲げ加工されたサーペンタインチューブであり、曲管部を形成する接続管を用いることなく一本の冷媒流路を形成している。そして、プレートフィン202に形成された長孔203を冷媒チューブ201の曲管部が貫通することにより、冷媒チューブ201の直管部がプレートフィン202と密着した構成となっている。
長孔203は、矩形部と円弧部とを有し、該矩形部の両側短辺に前記円弧部がそれぞれ連続して形成された長穴状に形成されている。また、円弧部には、冷媒チューブ201の直管部と密着固定するための縁立成形された円弧部カラーが設けられており、矩形部長手方向の両端にも、略垂直に縁立成形された矩形部カラーが設けられている。この矩形部カラーは、冷蔵庫背面に向かって下方に傾斜するように冷却器44が設置されている。
冷却器44の上方には、生成された冷気を強制的に送風する送風機46が配置され、冷却器44の下方には、冷却器44に付着した霜や氷を除霜するガラス管ヒータ47が設けられている。さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン48、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ49が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿50が構成されている。
ガラス管ヒータ47は、具体的にはガラス製のガラス管ヒータ59であり、特に冷媒が炭化水素系冷媒ガスである場合、防爆対応としてガラス管が2重に形成された2重ガラス管ヒータが採用されている。ガラス管ヒータ59の上方には、ガラス管ヒータ59を覆うヒータカバー60が配置され、除霜時に冷却器44から滴下した水滴が除霜によって高温になったガラス管表面に直接落ちることで、ジュージューといった音が発生しないようにガラス管径および幅と同等以上の寸法としている。
ここで、近年の冷凍サイクルの冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンが使用されている。この炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。これにより従来に比して冷媒充填量を低減でき、低コストであると共に、可燃性冷媒が万が一に漏洩した場合の漏洩量が少なくなり安全性をより向上できる。
本実施の形態では、冷媒にイソブタンを用いており、防爆対応として除霜時のガラス管ヒータ59の外郭であるガラス管表面の最大温度を規制している。そのため、ガラス管表面の温度を低減させるため、ガラス管を2重に形成された2重ガラス管ヒータを採用しているのである。このほか、ガラス管表面の温度を低減させる手段としては、ガラス管表面に放熱性の高い部材(例えばアルミフィン)を巻きつけることも出来る。このとき、ガラス管を1重とすることで、ガラス管ヒータ59の外形寸法を小さく出来る。
また、除霜時の効率を向上させる手段としては、ガラス管ヒータ59に加えて、冷却器44に密着したパイプヒータを併用しても良い。この場合、パイプヒータからの直接の伝熱によって冷却器44の除霜は効率的に行われると共に、冷却器44の周囲のドレンパン48や送風機46に付着した霜をガラス管ヒータ59で溶かすことが出来るため、除霜時間の短縮が図れ、省エネや除霜時間における庫内温度の上昇を抑制することが出来る。
なお、ガラス管ヒータ59とパイプヒータを組み合わせた場合、お互いのヒータ容量を適正化することで、ガラス管ヒータ59の容量を低くすることが可能となる。ヒータ容量を低くすると除霜時のガラス管ヒータ59の外郭の温度も低くすることが出来るため、除霜時の赤熱も抑制できる。
ドレンパン48は冷却室43の底面および背面の一部を構成している。底面は、除霜水をドレンチューブ49に集めるためにドレンチューブ49との接続部が最も低くなるよう
構成されており、ドレンチューブ49との接続部においてガラス管ヒータ47から最も離れる(距離L)ことになる。背面はドレンパン48の貯水量が確保できる高さを超える高さまで立ち上がっており、底面と背面とのなす角は緩やかな曲面で構成される。
次に、風路構成について説明する。
縦区画壁45は、冷凍室37の外殻をなす前区画壁45aと冷却室43の外殻をなす後区画壁45bとから構成される。前区画壁45aと後区画壁45bとの間の空間は各貯蔵室に向けて冷気を分岐させる分配風路51である。
前区画壁45aは、上方に冷凍室吐出口52を有し、分配風路51と冷凍室37とを連通している。下方には冷凍室37側へ突出した冷凍室戻り風路53を有し、冷凍室戻り風路53前面に設けられた入り口53aから冷却室43へ冷凍室37の戻り冷気を導入する。
分配風路51はまた、第一区画壁41内に設けられた高温吐出風路54に接続している。さらに高温吐出風路54は冷蔵室35および野菜室36と接続している。
後区画壁45bは上方に送風機46を備え、下方には冷凍室戻り風路53と冷却室43とを区画するリブ55を有する。冷凍室戻り風路53をリブ55とドレンパン48とにより囲まれた領域が冷凍室吸込み口56であり、冷凍室戻り風路53と冷却室43とを連通する。
なお、冷凍室吸込み口56の面積は、入り口53aの面積よりも大きくなるように構成される。また、ドレンチューブ49の中心を通る縦断面において、ガラス管ヒータ47とドレンチューブ49との距離Lは、同じ縦断面での冷凍室吸込み口56の高さHよりも大きくなるように構成される。また、冷却室43背面とガラス管ヒータ47との距離Bも、冷凍室吸込み口56の高さHより大きくなるように構成される。
冷凍室戻り風路53の底面は、ドレンパン48の一部により冷却室43の底面と続きで構成される。ドレンパン48は入り口53aの下端より始まり冷凍室吸込み口56下端を通りドレンチューブ49まで下向きに傾斜し、その後緩やかに上向きに転じ冷却室43の背面へと繋がる形状を有する。
冷却器44の背面に高温戻り風路57が配置されている。第一区画壁41および第二区画壁42を通り、野菜室36と冷蔵室35とにそれぞれ連通しており、冷蔵室35と野菜室36を冷却した冷気が高温戻り風路57内で合流する。高温戻り風路57は下方に冷却室43と連通する高温吸込み口58を備える。
そして、冷凍室吸込み口56は冷却室43の前面に、高温吸込み口58は冷却室43の背面に設けられ、冷凍室吸込み口56の下端は冷却器44の下端より下方に配置し、高温吸込み口58の上端は冷却器44の下端より上方に配置するとともに、高温吸込み口58の上端はガラス管ヒータ47より上方に配置している。
また、冷凍室吸込み口56は、高温吸込み口58よりも下方に位置して構成されている。
また、冷蔵室35および野菜室36からの戻り冷気の流入部分である、冷却器背面の高温吸込み口58を、冷却器の幅寸法と略同一に配置している。
また、ガラス管ヒータ47は、ガラス管ヒータ59とガラス管ヒータ59の上方に配置されたヒータカバー60とを備え、高温吸込み口58の下端はガラス管ヒータ59およびヒータカバー60より上方に位置している。
また、ガラス管ヒータ47は、ガラス管ヒータ59とガラス管ヒータ59の上方に配置されたヒータカバー60とを備え、冷凍室吸込み口56の上端はガラス管ヒータ59およびヒータカバー60より下方に位置している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷却運転時について説明する。
冷却室43の冷却器44で生成された冷気の一部は送風機46によって分配風路51内前方へ強制的に送風される。冷凍室37は冷凍室吐出口52から吐出された冷気によって冷却され、冷気は縦区画壁45の下部に設けられた冷凍室戻り風路53を介して冷凍室吸込み口56より冷却器44の下部に導かれ、冷却器44で熱交換されて、再び新鮮な冷気が送風機46によって循環を繰返す。これによって冷凍室37は冷凍室センサー(図示しない)の制御で適温に冷却される。
また分配風路51内上方に吐出された冷気は第一区画壁41内の高温吐出風路54を経て冷蔵室35や野菜室36に吐出される。循環した冷気は冷蔵室35や野菜室36内の空気や貯蔵物に含まれる湿気を帯びた空気となって、高温戻り風路57を通り高温吸込み口58から冷却器44の下部に導かれて冷却器44と熱交換して、新鮮な冷気が再び送風機によって強制的に送風される。
これによって、冷蔵室35や野菜室36は、冷却器44から離れた位置にあっても、送風機46によって冷気を強制的に循環させることで室内を設定温度に冷却することができる。
ここで、野菜室36へ冷気を導入する野菜室吐出風路(図示せず)の風路内に、冷気量を調整する開閉弁(図示せず)を設けても良い。この場合、開閉弁によって、野菜室36内の温度を緻密に制御できるため、例えば、夏場や買い物後の食品収納時の過度な扉開閉時においても庫内の温度変動を抑制し、庫内を適温に維持することが出来る。
またガラス管ヒータ47は、除霜時に、ヒータ熱で冷却室43内および高温戻り風路57内を加熱できるので、結露や凍結を改善し防止することができ信頼性を高めることができる。
ここで、吸込み風路構成について説明する。
送風機46から吐出された冷気が、冷蔵室35、野菜室36、冷凍室37の全ての貯蔵室を循環しているとき、冷却室43には冷凍室37からの戻り冷気と、冷蔵室35および野菜室36からの高温戻り冷気の2つの流れが同時に流れ込むことになる。
冷凍室37からの戻り冷気は、入り口53aから冷凍室戻り風路53を通り、冷凍室吸込み口56から冷却室43へ入る。冷蔵室35および野菜室36からの高温戻り冷気は、高温戻り風路57を通り、高温吸込み口58から冷却室43へ入る。
本実施の形態では、冷凍室吸込み口56は冷却室43前面に、高温吸込み口58は冷却室43背面に設けられ、高温吸込み口下端58bは冷却器44の下端である冷却器下端4
4bよりも下方に位置し、高温吸込み口上端58aは冷却器44の下端である冷却器下端44bよりも上方に位置し、高温吸込み口上端58aは除霜用のガラス管ヒータ59および、ガラス管ヒータ59を覆い上方のヒータカバー60よりも上方に位置している。
これにより、冷却室43内において、高温吸込み口上端58aと、高温吸込み口下端58bの間に、冷却器下端44bを配設し、高温吸込み口上端58aは除霜用のガラス管ヒータ59およびヒータカバー60よりも上方に位置されているため、前向きの速度が大きい冷蔵室35および野菜室36からの高温戻り冷気は、冷却器44側へ流れやすくなるため、冷凍室37からの冷凍室戻り冷気とは、上下方向にずれる。よって、高温戻り冷気と冷凍室戻り冷気の相互干渉を抑制し庫内を循環する風量を大きくすることができるため、より冷却能力を向上することができる。
なお、最も大きな冷却効果が必要となる低温貯蔵室からの冷気を、より下方から冷却室へ戻すことで、低温戻り冷気が冷却器を通過する距離が長くなり熱交換量を増やすことで更に冷却能力を向上させることができる。
なお、高温吸込み口上端58aと、高温吸込み口下端58bを冷却器44の下方とした場合、高温戻り風路57の風路抵抗が増加し循環風量が低下するため冷却能力が低下する。一方、高温吸込み口上端58aと、高温吸込み口下端58bを冷却器44の上方とした場合、風路抵抗が減少し循環風量が増加するが、冷却器44へ戻り冷気が流れやすくなり付着する霜によって、高温戻り風路57が閉塞する可能性があるため、本実施の形態では、高温吸込み口上端58aと、高温吸込み口下端58bの間に、冷却器下端44bを配設させることで、冷却能力と着霜耐力の両方を満足する構成としている。特に、冷却器44の最下段のパイプと最下段よりも1段上のパイプの間に高温吸込み口上端58aを配置することで冷却能力と着霜耐力の両方で最適化を図っている。
また、ドア開閉時に侵入した空気中の水分や、庫内に投入された食品に付着している水分、さらに庫内に保存されている野菜からの水分等で冷却器44には、霜が付着する。この霜が成長を遂げると冷却器44と循環冷気との間で熱交換効率が低下し庫内を十分に冷却できず、最終的に不冷もしくは鈍冷状態となる。よって、冷蔵庫では、冷却器44に付着した霜を定期的に除霜する必要があるが、本実施の形態のように、高温吸込み口上端58aと、高温吸込み口下端58bの間に、冷却器下端44bを配設することで、水分量の大きい高温戻り冷気によって冷却器背面下部に付着した霜が成長しても冷却器底面側へと高温戻り冷気が流れるため耐着霜性能として向上する。よって、着霜時の冷却能力の劣化も抑制することができる。
なお、冷却室43において、プレートフィン202の長孔203および矩形部カラー203bが冷蔵庫背面に向かって下方に傾斜するように冷却器44に設置されることで、合流した冷気は、冷却器44の背面側より鉛直上向き成分を主として突入し、突入した冷気の一部は、冷却器44のプレートフィン202および矩形部カラー203bに沿って流れ、冷却器44の前面へと誘導される。これにより、冷気が冷却器44全体を通過することで熱交換量を増加させることができるため、冷却能力を向上することができる。
また、冷却室43の底面を構成するドレンパン48の形状を、冷凍室吸込み口56からドレンチューブ49にかけて下方に傾斜した形状を有することにより、冷凍室戻り冷気は、ドレンパン48沿って下方へ流れた後背面に沿って上昇させることができるため、高温吸込み口58前方において冷凍室戻り冷気の速度が上向きとなり、高温戻り冷気とスムーズに合流でき、より風量を増やし冷却能力を向上させることができる。
また、冷凍室吸込み口56は上流側に冷凍室戻り風路53を備え、冷凍室戻り風路53
の入り口53aは冷凍室吸込み口56よりも上方に位置させているため、冷凍室吸込み口56での冷凍室戻り冷気は下向きに冷却室43に流れ込むため、よりドレンパン48に沿って流れ易くなり、より圧力損失を小さくしたまま低温戻り冷気との干渉を抑制することができる。さらに、冷凍室戻り風路53の入り口53aの面積は冷凍室吸込み口56の面積よりも小さいことにより、さらに冷凍室吸込み口56での圧力損失を低減することができる。
また、冷蔵室35および野菜室36からの戻り冷気の流入部分である、冷却器背面の高温吸込み口58を、冷却器の幅寸法と略同一に配置している。
これによって、冷蔵庫内を循環する戻り冷気の中で、冷却器44と温度差の大きい冷蔵室戻り冷気と野菜室戻り冷気が合流した高温戻り冷気は、冷却器44との熱交換を冷却器幅と略同一寸法で行えるため、冷却器44での熱交換面積を大きく取ることができると共に、冷凍サイクル効率の向上によって省エネを図ることができる。
更に、冷蔵庫の使用状態の中で、冷蔵室35と野菜室36の扉開閉回数は多い。特に近年では野菜室36に、野菜以外のペットボトルを冷却保存する実態もあり、1日の内で冷蔵室35や野菜室36の扉開閉回数は10年前に対して上昇傾向にある。よって、前述のように冷蔵室35や野菜室36の高温貯蔵室を循環する高温戻り冷気と冷却器との熱交換量が大きくなることは、庫内を冷却する時間を減らすことができるため、冷却運転時間の短縮による冷却器44への着霜量も減らすことができる。特に、高温貯蔵室は扉開閉回数が多いことで外気の水分が侵入し易いだけで無く、温度が高いため空気中に保持する絶対湿度も高いため冷却器44への霜の付着量も多くなる。冷却器44への着霜量を減らすことで、冷却器44の除霜周期を延ばす事が可能となり、ガラス管ヒータ47の入力回数低減と除霜による庫内温度上昇後の庫内冷却に要する入力低減が図れ、更なる省エネを行うことができる。
更に、冷却器44での熱交換面積を大きく取ることができることは、冷却器44に着霜させる面積を大きくすることであるため、着霜時の冷却能力の劣化も抑制することができる。これによって、冷蔵庫を運転した後、除霜を必要とするまでの時間(除霜周期)を延ばす事が可能となり、ガラス管ヒータ47の入力回数低減と除霜による庫内温度上昇後の庫内冷却に要する入力低減が図れ、更なる省エネを行うことができる。
また、高温吸込み口58の下端である高温吸込み口下端58bは除霜用のガラス管ヒータ59およびヒータカバー60よりも上方に位置してある。
これによって、冷蔵庫内を循環する戻り冷気の中で、冷却器と温度差の最も大きい高温戻り冷気は、ガラス管ヒータ59およびヒータカバー60に循環を邪魔されること無く冷却器44へと導かれる。更に、高温吸込み口下端58bがガラス管ヒータ59およびヒータカバー60の上方に位置していることは、冷蔵温度で且つ、外気や野菜から蒸散する水分により高湿で絶対湿度の高い高温戻り冷気が、冷却室内で低温となっているガラス管ヒータ59およびヒータカバー60に着霜し、霜によって風路阻害になることも無い。また、高温戻り冷気は上方に、低温戻り冷気は下方に、上下方向にずれやすくなるため更に、相互干渉が抑制され、庫内を循環する風量を大きくすることができ、より冷却能力を向上することができる。
また、冷凍室吸込み口56の上端である、冷凍室吸込み口上端56aは除霜用のガラス管ヒータ59およびヒータカバー60よりも下方に位置してある。
これによって、冷凍室戻り風路53を通り冷凍室吸込み口56を通過した冷気は、下向
きに傾斜している風路に従って流れてくるため、冷凍室吸込み口上端56aよりも下方のガラス管ヒータ59およびヒータカバー60の下を通過し易い。故に、後向きの速度を持った冷凍室戻り冷気の速度を落とすことなく冷却器44の背面より流入する高温戻り冷気と、よりスムーズに合流できる。その結果、より風量を増やし冷却能力を向上させることができる。
冷蔵庫30は3つの貯蔵室の中で外気温との温度差が大きい冷凍室37を最も冷やす必要があるため、高温吐出風路54を開閉弁(図示せず)で閉じるなどすることで、冷凍室37のみに冷気を循環させる必要がある。送風機46から吐出された冷気が冷凍室37のみを循環しているとき、冷却室43には冷凍室37からの戻り冷気のみが流れ込むことになる。
このときも冷凍室戻り冷気は、全貯蔵室に冷気が循環しているときと同様に、入り口53aから冷凍室戻り風路53を通り、冷凍室吸込み口56から冷却室43へ入り、ガラス管ヒータ47の下を通りドレンパン48に沿って背面から冷却器44へ突入する。従って、冷凍室戻り冷気は冷却器44内を対角線上に流れることができ、熱交換距離を長く取ることができるため、熱交換量を増加し冷却能力を向上させることができる。
さらに、冷却室43の前面に設置された吸込み口は冷凍室吸込み口56のみであるため冷凍室吸込み口56の幅を冷却器44の幅と同じまで広げることができる。従って、冷凍室37のみに冷気が循環しているときでも、冷却器44全体を使うことができ、冷却能力を更に向上させることができる。
また、冷凍室吸込み口56は冷凍室戻り風路53の入り口53aよりも大きいため、ここでの圧力損失も抑制することができ、さらに風量を増加させることができる。
また、一般的に冷蔵庫30の背面には、冷蔵庫内で最も低温となる冷却器44が配置されているため背面の断熱壁を介して侵入する熱量は冷蔵庫内で最大であるが、冷却室43と断熱壁の間に高温戻り風路57を構成しているため、冷蔵庫30の背面の断熱壁を介して侵入する熱量を効果的に低減することができる。
更に、冷却器44によって冷却された冷気は、熱伝達によってその周辺に広がるが、冷却器44の背面に設置された高温戻り風路57の中を冷蔵室35や野菜室36からの戻り冷気が流れる際に、冷却器44から漏れ出した冷気を吸収し、再び冷却室43へ帰還させるため、冷蔵庫30の外への冷気漏れを抑制し、消費電力量を低減することができる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の縦断面図、図5は、本発明の実施の形態2における冷却室の正面図である。
なお、実施の形態1と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、不具合がない限り実施の形態1の構成に本実施の形態を組み合わせて適用することが可能である。
図4および図5において、冷蔵庫30の複数の貯蔵室は、最上部に冷蔵室35、最下部に野菜室36、そして冷蔵室35と野菜室36の間に冷凍室37が配置されている。
また、仕切壁である第一区画壁71によって野菜室36と冷凍室37とは上下に区画され、仕切壁である第二区画壁72によって冷蔵室35と冷凍室37とは上下に区画されている。
分配風路51は、第一区画壁71内に設けられた野菜室吐出風路(図示せず)に接続し、分配風路51と野菜室36とを連通している。また第二区画壁72内に設けられた冷蔵室吐出風路85に接続し、分配風路51と冷蔵室35とを連通している。
冷却器44の背面に冷蔵室戻り風路87が配置されている。冷蔵室戻り風路87は第二区画壁72を通り冷蔵室35と冷却室43とを連通しており、冷蔵室35を冷却した冷気が流れている。冷蔵室戻り風路87は下方に冷却室43と連通する冷蔵室吸込み口88を備える。
また、冷却室43の背面は、冷蔵室吸込み口88の横に野菜室吸込み口89を有する。野菜室吸込み口89は第一区画壁71内に設けられた野菜室戻り風路90を介して野菜室36と連通している。
冷蔵室吸込み口88および野菜室吸込み口89は、冷却器44の下端近傍に設けられ、冷凍室吸込み口56よりも高い位置に構成される。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
分配風路51内上方に吐出された冷気は第二区画壁72内の冷蔵室吐出風路84を経て冷蔵室35に吐出される。冷蔵室35内を冷却した冷気は湿気を帯びた空気となって、冷蔵室戻り風路87を通り冷蔵室吸込み口88から冷却器44の下部に導かれて冷却器44と熱交換および除湿され、新鮮な冷気が再び送風機46によって強制的に送風される。
また分配風路51内側方に吐出された冷気は第一区画壁71内の野菜室吐出風路84を経て野菜室36に吐出される。野菜室36内を冷却した冷気は湿気を帯びた空気となって、野菜室戻り風路90を通り野菜室吸込み口89から冷却器44の下部に導かれて冷却器44と熱交換および除湿され、新鮮な冷気が再び送風機によって強制的に送風される。
冷蔵室35からの冷蔵室戻り冷気は、冷蔵室戻り風路87中を下向きに流れてくるが、冷蔵室戻り風路87の下面で前向きに方向転換し冷却室43の背面に設置された高温吸込み口58から冷却室43内に流れ込む。
冷蔵室吸込み口88から出てきた冷蔵室戻り冷気は、冷却室43の背面に沿って上ってきた冷凍室戻り冷気と合流する。冷蔵室戻り冷気は上向きの冷凍室戻り冷気に押され、スムーズに上向きに方向転換し、冷凍室戻り冷気と一緒に冷却器44へ突入することができる。
一方、野菜室36からの野菜室戻り冷気は、野菜室戻り風路90中を上向きに流れてくるため、野菜室吸込み口89から出てきた野菜室戻り冷気は、冷却室43の背面に沿って上ってきた冷凍室戻り冷気とスムーズに合流し、冷凍室戻り冷気と一緒に冷却器44へ突入することができる。
ここで、冷蔵室吸込み口88と野菜室吸込み口89とは横並びで構成されているため、上向きに流れる冷却室43内ではお互いが干渉することはない。
なお、風路構成により冷蔵室吸込み口88と野菜室吸込み口89とを上下に並べて構成した場合でも、全ての冷却室43内では全ての流れが上方向を向くため、干渉し合い風量を低下させることはない。
従って、全ての戻り冷気はお互いに干渉し合うことがないため、循環する風量を増やすことで冷却器44の熱交換量を増加させ、冷却能力を向上させることができる。
以上のように、本実施の形態では、冷凍室吸込み口56は冷却室43前面に、冷蔵室吸込み口88および野菜室吸込み口89は冷却室43背面に設け、冷凍室吸込み口56は冷蔵室吸込み口88および野菜室吸込み口89よりも下方に位置し、冷蔵室吸込み口上端88aと野菜室吸込み口上端89a、冷蔵室吸込み口下端88bと野菜室吸込み口下端89bの間に、冷却器下端44bを配設し、冷気冷蔵室吸込み口上端88aと野菜室吸込み口上端89aが、除霜用のガラス管ヒータ59および上方のヒータカバー60よりも上方に位置されているため、前向きの速度が大きい冷蔵室35および野菜室36からの高温戻り冷気は、冷却器44側へ流れやすくなるため、冷凍室37からの冷凍室戻り冷気とは、上下方向にずれる。よって、高温戻り冷気と冷凍室戻り冷気の相互干渉を抑制し庫内を循環する風量を大きくすることができるため、より冷却能力を向上することができる。
なお、最も大きな冷却効果が必要となる低温貯蔵室からの冷気を、より下方から冷却室へ戻すことで、低温戻り冷気が冷却器を通過する距離が長くなり熱交換量を増やすことで更に冷却能力を向上させることができる。
よって、冷蔵室戻り風路87と野菜室戻り風路90が独立した場合でも、冷却能力向上により省エネ性に優れた効果を得ることが出来る。
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の冷却室の詳細縦断面図である。
なお、実施の形態1と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、不具合がない限り実施の形態1の構成に本実施の形態を組み合わせて適用することが可能である。
図6に示すように、冷却器44の前面に冷凍室吸込み口56を配置し、背面に高温戻り風路57を配置し、高温戻り風路57の上端である高温吸込み口上端58aと、高温戻り風路57の下端である高温吸込み口下端58bの間に冷却器44の下端である冷却器下端44bを配置し、高温吸込み口上端58aは除霜用のガラス管ヒータ59および、ガラス管ヒータ59を覆い上方のヒータカバー60よりも上方に位置した構成において、ヒータカバー60は冷却器44の背面側、即ち高温戻り風路57に向かって前後方向で下側に傾けて配置してある。
これによって、高温戻り風路57を通過し、高温吸込み口58から冷却器44へと流れる冷気および、冷凍室吸込み口56を通過し、ガラス管ヒータ59の下を通った後、上向きに流れる冷凍室戻り冷気は、ヒータカバー60をガイドにして冷却器44へとスムーズに効率よく流れることとなり、冷却室43内での風路圧損を増加させることがなく冷却器44との熱交換効率の向上が図れ、冷却能力が向上する。この結果、省エネ性に優れた冷蔵庫を提供できる。
また、ヒータカバー60が冷却器44に前後方向で傾きを設けており、庫内側に対して手前側のヒータカバー60の端面を上げた構成としている。これにより、除霜時にガラス管ヒータ59に加熱された暖気は上方に上がりやすくなり、除霜効率の向上を図ることが出来る。
なお、本実施の形態のように、ヒータカバー60の端面を庫内側に上げて傾けた場合においても、冷凍室吸込み口56の上端である、冷凍室吸込み口上端56aの位置は、ガラ
ス管ヒータ59およびヒータカバー60の位置に対して下方に配置しているため、除霜時の赤熱を見えなくできるため、冷蔵庫の除霜時に冷凍室ドアを開けた場合にもガラス管ヒータ59の赤熱による使用者への不安感を与えることがない。