以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明による第1の実施形態(実施例1)は、干渉波が長遅延マルチパス波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MRC法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。本発明による第2の実施形態(実施例2)は、実施例1と同じ想定の下で、MMSE法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。本発明による第3の実施形態(実施例3)は、干渉波が長遅延マルチパス波に加えてレーダー等の外来干渉波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MRC法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。本発明による第4の実施形態(実施例4)は、実施例3と同じ想定の下で、MMSE法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。本発明による第5の実施形態(実施例5)は、実施例1と同じ想定の下で、高精度のクロック再生を実現する。
以下の実施例1〜5では、テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システムを規定するARIB STD−B33規格準拠のOFDM信号を基にして説明するが、同様の特徴を有するOFDM信号であれば前記規格に限定されない。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、前述のとおり、干渉波が長遅延マルチパス波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MRC法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。
図1は、実施例1によるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置1−1は、Nの受信系統を示すブランチ#1〜#N毎に、周波数変換部2、AGC部3、A/D(アナログ/デジタル:Analog/Digital)変換部4、直交復調部5、FFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)演算部6、CP(Continual Pilot)キャリア抽出部(パイロットキャリア抽出部)7、チャネル推定部8、MRC重み乗算部9、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリア抽出部10、部分等化部11、MER算出部12、自乗部13及びMER重み乗算部14を備え、さらに、信号加算部15及び規格化部16を備えている。Nは2以上の整数であり、各ブランチ#1〜#Nは、例えば互いに地理的に遠く離れた位置に分散配置された複数の受信アンテナを介して、OFDM信号をダイバーシチ受信するものとする。後述する実施例2〜5についても同様である。
周波数変換部2は、受信アンテナを介して受信したOFDM信号を入力し、OFDM信号の無線周波数をIF(中間周波数:Intermediate Frequency)帯に変換する。AGC部3は、周波数変換部2からIF帯のOFDM信号を入力し、OFDM信号を一定の信号レベルに増幅または減衰する。
A/D変換部4は、AGC部3からAGC後のOFDM信号を入力し、OFDM信号のアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部4のサンプリングクロックは、各ブロック#1〜#Nで共通であり、OFDM信号を送信する送信装置のクロックに同期した理想的なものであると仮定する。尚、クロック再生法については後述する実施例5にて説明する。
直交復調部5は、A/D変換部4からデジタルのOFDM信号を入力し、OFDM信号に直交復調を施す。FFT演算部6は、直交復調部5から直交復調されたOFDM信号を入力し、OFDM信号にFFT演算を施し、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。FFT演算部6によりFFTされた周波数領域の信号は、CPキャリア抽出部7、MRC重み乗算部9及びTMCCキャリア抽出部10へ出力される。
CPキャリア抽出部7は、FFT演算部6からFFT演算後の周波数領域の信号を入力し、入力した信号から、所定の周波数位置に挿入されたCPキャリアを抽出する。CPキャリアは、後述するチャネル推定部8において各サブキャリアのチャネル応答の複素振幅値を推定するために、所定の周波数位置に挿入されている。
チャネル推定部8は、CPキャリア抽出部7により受信信号から抽出されたCPキャリアを入力し、このCPキャリアの複素振幅値を、既知のCPデータで除算してCPキャリアのチャネル応答を求める。そして、チャネル推定部8は、CPキャリア間のデータキャリア部について、キャリアフィルタ等を用いて補間することで、CPキャリア以外のサブキャリアにおけるチャネル応答を推定する。
尚、キャリアフィルタは既知であるから、ここでは説明を省略する。また、CPキャリア抽出部7及びチャネル推定部8は、CPキャリアに基づいてチャネル応答を推定するようにしたが、他のパイロットキャリアに基づいてチャネル応答を推定するようにしてもよい。
MRC重み乗算部9は、FFT演算部6からFFT演算後の周波数領域の信号を入力すると共に、チャネル推定部8からチャネル応答を入力し、FFT演算後の周波数領域の信号に対し、チャネル応答の複素共役をMRC重み係数として乗算することで、MRC法に基づく重み乗算を行い、乗算結果をMRC重み乗算結果としてMER重み乗算部14に出力する。ここで、第jブランチ及び第kサブキャリアのチャネル応答の複素振幅値をhj kとすると、その複素共役hj k*がFFT演算後における第jブランチ及び第kサブキャリアの信号に乗算される。
一方で、TMCCキャリア抽出部10、部分等化部11及びMER算出部12は、FFT演算部6により周波数領域に変換された信号からTMCCキャリアを抽出し、TMCCキャリアに基づいて変調誤差比であるMERを算出する。
MERの算出には、後述するように理想信号点情報が必要であるが、理想信号点情報は、チャネル応答を推定するために用いるCPデータを除いて既知ではないため、通常は硬判定により理想信号点情報を算出してMERが推定される。変調多値数の大きいデータキャリアを用いてMERを算出する場合、硬判定結果の誤りは大きい。このため、算出されるMERの信頼度は、伝送路状態が悪い(C/N比の小さい)環境において特に低くなる。そこで、従来のダイバーシチ受信装置では、前述の特許文献5,6のように、算出したMERを、干渉信号の有無を判断するメトリックとして利用するに留まっている。
実施例1及び後述する実施例2〜5では、信頼性の高いMERを重み係数としてそのまま利用することができるようにするために、変調方式または誤り訂正符号の符号化率等の伝送パラメータ情報を送信側から受信側へ通知するために使用される制御信号伝送用のTMCCキャリアを用いてMERを算出する。
TMCCキャリアは、テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システムを規定するARIB STD−B33規格ではDBPSK変調される。このような制御信号の復調は、データの復調に先立って行われるが、制御信号の伝送に失敗するとデータの伝送も不可能となるため、劣悪な伝送路状態でも確実に復調できるように、BPSKまたはQPSK等の変調多値数の小さい方式で伝送することが一般的である。
このように、TMCCキャリアのような変調多値数の小さい制御信号は、硬判定後の理想信号点の推定精度が高くなる。しがって、このような制御信号を用いることにより、信頼度の高いMERを算出することができる。
図1において、TMCCキャリア抽出部10は、FFT演算部6からFFT演算後の周波数領域の信号を入力し、入力した信号から所定の周波数位置に挿入されたTMCCキャリアを抽出する。部分等化部11は、TMCCキャリア抽出部10からTMCCキャリアを入力すると共に、チャネル推定部8からTMCCキャリアのチャネル応答を入力し、TMCCキャリアをTMCCキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算し、TMCCキャリアのみを部分的に等化する。
テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形OFDM方式デジタル無線伝送システムを規定するARIB STD−B33規格では、TMCCキャリアはDBPSK変調される。これに対し、実施例1及び後述する実施例2〜5ではMERだけを求めればよいから、TMCCキャリアがDBPSK変調されているのではなくBPSK変調されているものとみなして、データキャリアと同様に同期検波による等化復調を行うものとする。
MER算出部12は、部分等化部11から等化後のTMCCキャリアを入力し、等化後のTMCCキャリアとその硬判定後の理想信号点との間の誤差を求め、MERを算出する。これにより、長遅延マルチパス波を受信するブランチでは、MERの値は小さくなり、長遅延マルチパス波を受信しないブランチでは、MERの値は大きくなる。
図2は、MER算出部12におけるMERの算出方法を説明する図である。図2において、IQ軸上の実線の丸は、第j番目の等化後のTMCCキャリアを示し、点線の丸は、第j番目のTMCCキャリアにおける硬判定後の理想信号点(Ij,Qj)を示す。原点から実線の丸までの間の矢印(実線の矢印)は、等化後のTMCCキャリアの受信信号ベクトルを示し、原点から点線の丸までの間の矢印(点線の矢印)は、TMCCキャリアの理想信号点のベクトルを示す。また、受信信号ベクトルから理想信号点のベクトルを減算した結果が誤差信号ベクトル(ΔIj,ΔQj)となる。
MER算出部12は、第j番目のTMCCキャリアの理想信号点(I
j,Q
j)、及び理想信号点と受信信号ベクトルとの間の誤差を表す誤差信号ベクトル(ΔI
j,ΔQ
j)から、次式によりMERを算出する。
ここで、TMCCキャリアの数は、一例として1シンボルあたり9としている。
MER算出部12により算出されたMERは、ブランチ#1〜#Nに対応したmj=m1,m2,...,mN(j=1〜N)として自乗部13へそれぞれ出力される。
尚、MER算出部12は、1シンボル単位でMERを算出するようにしたが、シンボル長に対して伝搬環境の変動スピードが遅い場合は、複数シンボル単位に、1シンボル毎に算出したMERを積算して平均化するようにしてもよい。
自乗部13は、MER算出部12からMER(mj)を入力し、MERを二乗し、MERの二乗値をMER重み乗算部14に出力する。
MER重み乗算部14は、MRC重み乗算部9の出力信号(MRC重み乗算結果)を入力すると共に、自乗部13からMERの二乗値(mj 2)を入力し、その出力信号に対し、MERの二乗値(mj 2)をMER重み係数として乗算する。MER重み乗算部14によりMRC重み乗算部9の出力信号にMERの二乗値(mj 2)が乗算された結果は、MER重みが乗算された信号として信号加算部15へ出力される。
これにより、長遅延マルチパス波を受信するブランチでは、MER重み乗算部14により出力されるMER重みが乗算された信号の振幅値は、長遅延マルチパス波を受信しないブランチよりも小さくなる。
信号加算部15は、各ブランチ#1〜#NのMER重み乗算部14からMER重みが乗算された信号を入力し、各ブランチ#1〜#NにおけるMER重みが乗算された信号をサブキャリア毎に加算する。
規格化部16は、信号加算部15からサブキャリア毎に加算された信号を入力し、加算信号を、次式の規格化係数で除算する。これにより、加算信号はサブキャリア毎に規格化され、長遅延マルチパス波を受信するブランチの信号のダイバーシチ合成比率は低くなる。
ここで、h
j kは、第jブランチの第kサブキャリアにおけるチャネル応答の複素振幅値を示し、m
j 2は、第jブランチにおけるMERの二乗値を示す。規格化係数は、チャネル応答の複素振幅値を二乗した値に対してMERの二乗値を乗算した結果を、全てのブランチ#1〜#Nにて加算したものである。
以上のように、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1によれば、TMCCキャリア抽出部10は、周波数領域の信号からTMCCキャリアを抽出し、部分等化部11は、TMCCキャリアをTMCCキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算し、TMCCキャリアのみを部分的に等化するようにした。そして、MER算出部12は、等化後のTMCCキャリアとその理想信号点との間の誤差を求めてMERを算出し、自乗部13は、MERを二乗し、MER重み乗算部14は、MRC重み乗算部9の出力信号(MRC重み乗算結果)にMERの二乗値を乗算するようにした。そして、信号加算部15は、各ブランチ#1〜#NにおけるMER重みが乗算された信号を、サブキャリア毎に加算し、規格化部16は、チャネル応答の複素振幅値及びMERの二乗値により、加算信号をサブキャリア毎に規格化するようにした。
これにより、TMCCキャリアは変調多値数の小さい制御信号であるから、硬判定後の理想信号点の推定精度は高くなり、TMCCキャリアを用いて算出されるMERの信頼度も高くなる。一方で、長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチのMERは、他のブランチのMERよりも低くなる。
したがって、各ブランチにおける信頼度の高いMERを、各ブランチの信号に対する重み係数として用いることにより、長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチの信号に対する重み係数は小さくなるから、当該ブランチの信号のダイバーシチ合成比率を低くすることができる。つまり、各ブランチにおいて雑音電力が異なる場合だけでなく、長遅延マルチパス波の干渉信号電力が異なる場合であっても、MRC法に基づいた最適なダイバーシチ合成を実現することができる。つまり、各ブランチを、ダイバーシチ合成前にその受信品質に応じてかつ簡易な構成で正確に重み付けすることができ、最適なダイバーシチ合成を実現することが可能となる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、前述のとおり、実施例1と同様に、干渉波が長遅延マルチパス波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MMSE法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。
図3は、実施例2によるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置1−2は、受信系統を示すブランチ#1〜#N毎に、周波数変換部2、AGC部3、A/D変換部4、直交復調部5、FFT演算部6、CPキャリア抽出部7、チャネル推定部8、TMCCキャリア抽出部10、部分等化部11、MER算出部12、MER重み乗算部20,21、MMSE重み算出部22、MMSE重み乗算部23及び信号加算部24を備えている。図3において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
FFT演算部6によりFFTされた周波数領域の信号は、CPキャリア抽出部7、TMCCキャリア抽出部10及びMER重み乗算部20へ出力される。また、MER算出部12により算出されたMER(mj)は、MER重み乗算部20,21へ出力される。
MER重み乗算部20は、FFT演算部6からFFT演算後の周波数領域の信号を入力すると共に、MER算出部12からMER(mj)を入力し、FFT演算後の周波数領域の信号に対し、MER(mj)をMER重み係数として乗算する。MER重み乗算部20によりFFT演算後の周波数領域の信号にMER(mj)が乗算された結果は、MER重みが乗算された信号としてMMSE重み乗算部23へ出力される。
MER重み乗算部21は、チャネル推定部8からチャネル応答を入力すると共に、MER算出部12からMER(mj)を入力し、チャネル応答の複素振幅値に対し、MER(mj)をMER重み係数として乗算する。MER重み乗算部21によりチャネル応答の複素振幅値にMER(mj)が乗算された結果は、MER重みが乗算されたチャネル応答としてMMSE重み算出部22へ出力される。
MMSE重み算出部22は、MER重み乗算部21からMER重みが乗算されたチャネル応答を入力し、チャネル応答及びMERにより、そのチャネル応答ベクトルh
k=[m
1h
1 k ... m
Nh
N k]
Tを用いて、次式にてMMSE重みベクトルw
kを算出する。kは第kサブキャリアを示し、Tはベクトルの転置を示す。
ここで、Hはベクトルの共役転置を示し、m
avgはブランチ#1〜#Nにおける平均MERを示し、IはN×Nの単位行列を示す。ブランチ#1〜#N毎のMMSE重みは、前記式(3)におけるMMSE重みベクトルの各要素である。
MMSE重み乗算部23は、MER重み乗算部20の出力信号(MER重み乗算結果)を入力すると共に、MMSE重み算出部22からMMSE重みを入力し、その出力信号に対し、MMSE重みをMMSE重み係数として乗算することで、MMSE法に基づく重み乗算を行う。MMSE重み乗算部23によりMER重み乗算部20の出力信号にMMSE重みが乗算された結果は、MMSE重みが乗算された信号として信号加算部24へ出力される。
信号加算部24は、各ブランチ#1〜#NのMMSE重み乗算部23からMMSE重みが乗算された信号を入力し、各ブランチ#1〜#NにおいてMMSE重みが乗算された信号をサブキャリア毎に加算する。
以上のように、実施例2のダイバーシチ受信装置1−2によれば、TMCCキャリア抽出部10は、周波数領域の信号からTMCCキャリアを抽出し、部分等化部11は、TMCCキャリアをTMCCキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算し、TMCCキャリアのみを部分的に等化し、MER算出部12は、等化後のTMCCキャリアとその理想信号点との間の誤差を求めてMERを算出するようにした。そして、MER重み乗算部20は、周波数領域の信号にMERを乗算し、MER重み乗算部21は、チャネル応答の複素振幅値にMERを乗算するようにした。そして、MMSE重み算出部22は、MER重みが乗算されたチャネル応答を用いてMMSE重みを算出し、MMSE重み乗算部23は、MER重み乗算部20の出力信号(MER重み乗算結果)にMMSE重みを乗算し、信号加算部24は、各ブランチ#1〜#NにおけるMMSE重みが乗算された信号を、サブキャリア毎に加算するようにした。
これにより、TMCCキャリアは変調多値数の小さい制御信号であるから、硬判定後の理想信号点の推定精度は高くなり、TMCCキャリアを用いて算出されるMERの信頼度も高くなる。一方で、長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチのMERは、他のブランチのMERよりも低くなる。
したがって、実施例1と同様に、各ブランチにおける信頼度の高いMERを、各ブランチの信号に対する重み係数として用いることにより、長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチの信号に対する重み係数は小さくなるから、当該ブランチの信号のダイバーシチ合成比率を低くすることができる。つまり、各ブランチにおいて雑音電力が異なる場合だけでなく、長遅延マルチパス波の干渉信号電力が異なる場合であっても、MMSE法に基づいた最適なダイバーシチ合成を実現することができる。つまり、各ブランチを、ダイバーシチ合成前にその受信品質に応じてかつ簡易な構成で正確に重み付けすることができ、最適なダイバーシチ合成を実現することが可能となる。
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例3は、前述のとおり、干渉波が長遅延マルチパス波に加えてレーダー等の外来干渉波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MRC法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。
図4は、干渉波がレーダー等の外来干渉波であって、外来干渉波が混入した場合の受信信号を説明する図である。図4に示すように、干渉波がレーダー等の外来干渉波である場合には、希望波であるOFDM信号に比べ、狭い帯域幅を持つ外来干渉波が同一チャンネル内に混入することが考えられる。
一方で、前述の実施例1,2においては、想定する干渉波が長遅延マルチパス波であることから、希望波に干渉を与える信号帯域幅が希望波と全く同じである。このため、キャリア本数の少ないTMCCキャリアを用いて算出したMERを、信号全体に影響する干渉成分を考慮したメトリックとし、ブランチの重み係数として利用するようにしても、ダイバーシチ合成後の品質が劣化することはない。
図4に示すように、干渉波がレーダー等の外来干渉波である場合、狭帯域な外来干渉波は、特定のキャリアだけに影響し、例えば外来干渉波がデータキャリアだけに干渉した場合、TMCCキャリアは影響を受けない。このため、前述の実施例1,2では、TMCCキャリアから算出したMERをブランチの重み係数として利用するから、外来干渉波を考慮したダイバーシチ合成を行うことができず、干渉を受けたデータキャリアの合成後の品質は著しく劣化する。
理想的にはサブキャリア毎に、そのサブキャリアに干渉する干渉成分を求めて重み付けすることが望ましいが、演算量が大幅に増大するだけでなく、変調多値数の大きいデータキャリアを用いて求めたMERの信頼度は低いことから、実施例1,2において重み係数として使用するには不十分である。
そこで、実施例3及び後述する実施例4において、実施例1,2にて想定した長遅延マルチパス波に加えて、レーダー等の外来干渉波を受信し、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合であっても、ダイバーシチ合成後の品質を劣化させることなく、良好な受信特性を実現する手法を具体的に説明する。
図5は、実施例3によるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置1−3は、受信系統を示すブランチ#1〜#N毎に、周波数変換部2、AGC部3、A/D変換部4、直交復調部5、FFT演算部6、CPキャリア抽出部7、チャネル推定部8、MRC重み乗算部9、TMCCキャリア抽出部10、部分等化部11、MER算出部12、自乗部13、MER重み乗算部14、データキャリア巡回抽出部30、部分等化部31、MER算出部32、干渉波判定部33、特定キャリアヌル化部34、信号加算部35及び規格化部36を備えている。
図1に示した実施例1のダイバーシチ受信装置1−1と、この実施例3のダイバーシチ受信装置1−3とを比較すると、実施例3のダイバーシチ受信装置1−3は、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1における周波数変換部2からMER重み乗算部14までの構成部に加え、さらに、データキャリア巡回抽出部30、部分等化部31、MER算出部32、干渉波判定部33及び特定キャリアヌル化部34を備えている点で相違する。また、実施例3のダイバーシチ受信装置1−3は、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1における信号加算部15及び規格化部16の代わりに、信号加算部35及び規格化部36を備えている点で相違する。以下、図5において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
FFT演算部6によりFFTされた周波数領域の信号は、CPキャリア抽出部7、MRC重み乗算部9、TMCCキャリア抽出部10及びデータキャリア巡回抽出部30へ出力される。
データキャリア巡回抽出部30は、FFT演算部6からFFT演算後の周波数領域の信号を入力し、データキャリアの一部である所定の周波数領域のデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアを、シンボル単位に巡回的に抽出する。抽出するデータキャリアの一部は、シンボル毎に互いに隣接したデータキャリアブロックとし、例えばそのデータキャリアブロックは、想定される外来干渉波の信号帯域幅以下の所定幅のブロックであるものとする。この場合、データキャリアブロックは、信号品質の良好なデータキャリアと、外来干渉波の干渉により信号品質が劣化したデータキャリアとを同時に含まないように構成するのが望ましい。
また、データキャリア巡回抽出部30は、あるシンボルにおいて、データキャリアブロックに含まれるデータキャリアを抽出した後、次のシンボルにおいて、直前のシンボルとは異なる周波数領域(直前のシンボルにおいて抽出対象となったデータキャリアブロックの隣の周波数領域)のデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアを抽出する。このように、データキャリア巡回抽出部30により、シンボル単位に、異なるデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアが巡回的に抽出される。
部分等化部31は、データキャリア巡回抽出部30からデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアを入力すると共に、チャネル推定部8からそのデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアのチャネル応答を入力し、データキャリアブロックに含まれるデータキャリアをそのデータキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算し、データキャリアブロックに含まれるデータキャリアのみを部分的に等化する。
MER算出部32は、部分等化部31から等化後のデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアを入力し、等化後のデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアを硬判定し、硬判定による復調結果とその理想信号点との間の誤差を求め、MERを算出する。この場合、MER算出部32は、データキャリアブロックに含まれるデータキャリアのMERを平均化したり、時間平均を求める等して、データキャリアブロック毎に1つのMERを算出する。MER算出部32により、シンボル毎に巡回的に算出されたデータキャリアブロック毎のMERは、干渉波判定部33へ出力される。
尚、MER算出部32は、1シンボル単位でMERを算出するようにしたが、シンボル長に対して伝搬環境の変動スピードが遅い場合は、複数シンボル単位に、1シンボル毎に算出したMERを積算して平均化するようにしてもよい。
干渉波判定部33は、MER算出部32によりシンボル毎に巡回的に算出されたデータキャリアブロック毎のMERを入力し、MERと予め設定された閾値とを比較する。そして、干渉波判定部33は、MERが閾値よりも小さいと判定した場合、そのデータキャリアブロックは外来干渉波の影響を受けて信号品質が劣化していると判定し、その判定情報を特定キャリアヌル化部34に出力する。一方、干渉波判定部33は、MERが閾値よりも小さくないと判定した場合、そのデータキャリアブロックは外来干渉波の影響を受けることなく信号品質が劣化していないと判定し、その判定情報を特定キャリアヌル化部34に出力する。
具体的には、干渉波判定部33は、データキャリアブロックのMERが閾値よりも小さいと判定した場合、そのデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアに対応する第jブランチの第kサブキャリアについて外来干渉波の影響を受け信号品質が劣化したことを示す判定情報として変数δj k=0を設定し、変数δj k=0を特定キャリアヌル化部34に出力する。一方、干渉波判定部33は、データキャリアブロックのMERが閾値よりも小さくないと判定した場合、そのデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアに対応する第jブランチの第kサブキャリアについて外来干渉波の影響を受けることなく信号品質が劣化していないことを示す判定情報として変数δj k=1を設定し、変数δj k=1を特定キャリアヌル化部34に出力する。
外来干渉波の影響を受けたことを示す変数δj k=0は、そのデータキャリアブロックに含まれるデータキャリアにおいて、MERの信頼性が低いことを示しており、そのMERを使用したMER重み乗算部14による出力信号であるMER重みが乗算された信号の信頼性も低いことを示している。したがって、MERの信頼性が低いことからMER重みが乗算された信号の信頼性が低いデータキャリアについては、後述する信号加算部35において加算対象から除外するため、後述する特定キャリアヌル化部34において、MER重みが乗算された信号をヌル化するようにした。
特定キャリアヌル化部34は、MER重み乗算部14からMER重みが乗算された信号を入力すると共に、干渉波判定部33から判定情報(データキャリアブロックについて外来干渉波の影響を受けているか否かを示す変数δj k=0,1)を入力する。そして、特定キャリアヌル化部34は、MER重みが乗算された信号のうち、判定情報が外来干渉波の影響を受けていることを示すデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアをヌル(ゼロ)に置き換え、信号加算部35に出力する。
具体的には、特定キャリアヌル化部34は、MER重み乗算部14から入力した信号に対し、判定情報である変数δj k=0,1を乗算する。これにより、MER重み乗算部14から入力した信号のうち、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアは、ヌル(ゼロ)の信号に置き換えて出力され、外来干渉波の影響を受けていないデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアは、何らの処理が施されないでそのまま出力される。
一般に、データキャリア巡回抽出部30、部分等化部31及びMER算出部32において、データキャリアから算出されたMERの信頼性は、データキャリアの変調多値数が大きいことから低い。このため、このMERは重み係数として利用しないで、干渉波判定部33において外来干渉波の影響を受けているか否かを判定するためにのみ利用する。そして、特定キャリアヌル化部34において外来干渉波の影響を受けているデータキャリアをヌル(ゼロ)に置き換えることで、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアをダイバーシチ合成のために用いないようにする。
信号加算部35は、各ブランチ#1〜#Nの特定キャリアヌル化部34から、MER重みが乗算され、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアがヌル(ゼロ)に置き換えられた信号を入力し、入力した各ブランチ#1〜#Nの信号をサブキャリア毎に加算する。
規格化部36は、信号加算部35からサブキャリア毎に加算した信号を入力し、加算信号を次式の規格化係数で除算する。これにより、加算信号はサブキャリア毎に規格化される。
ここで、h
j kは、第jブランチの第kサブキャリアにおけるチャネル応答の複素振幅値を示し、m
j 2は、第jブランチにおけるMERの二乗を示し、δ
j kは、第jブランチの第kサブキャリアにおいて外来干渉波の影響の有無を示す変数(0,1)である。規格化係数は、チャネル応答の複素振幅値の二乗値に対してMERの二乗値を乗算した結果を、全てのブランチ#1〜#Nにて加算した値であり、外来干渉波の影響を受けているブランチのサブキャリアについては演算から除外される。
以上のように、実施例3のダイバーシチ受信装置1−3によれば、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1と同様に、TMCCキャリアを用いてMERを算出し、MRC重み乗算部9の出力信号(MRC重み乗算結果)にMERの二乗値を乗算するようにした。そして、データキャリア巡回抽出部30は、周波数領域の信号からデータキャリアブロックをシンボル単位に巡回的に抽出し、部分等化部31は、データキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアをそのデータキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算して等化し、MER算出部32は、等化後のデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアを硬判定し、硬判定による復調結果とその理想信号点との間の誤差を求めてデータキャリアブロックのMERを算出するようにした。そして、干渉波判定部33は、データキャリアブロックのMERと予め設定された閾値とを比較することで、そのデータキャリアブロックが外来干渉波の影響を受けているか否かを判定し、特定キャリアヌル化部34は、MER重み乗算部14からのMER重みが乗算された信号に対し、干渉波判定部33により外来干渉波の影響を受けていると判定されたデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアをヌル(ゼロ)に置き換えるようにした。そして、信号加算部35は、各ブランチ#1〜#NにおけるMER重みが乗算され、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアがヌル(ゼロ)に置き換えられた信号を、サブキャリア毎に加算し、規格化部36は、チャネル応答の複素振幅値、MERの二乗値及び干渉波判定部33による判定結果により、加算信号をサブキャリア毎に規格化するようにした。
これにより、想定される外来干渉波の信号帯域幅以下の所定幅のデータキャリアブロック毎に、外来干渉波の影響を受けているか否かが判定され、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックの信号は、ヌルに置き換えられる。したがって、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックの信号は、ダイバーシチ合成の対象信号から除外される。
つまり、各ブランチにおいて雑音電力が異なる場合だけでなく、長遅延マルチパス波の干渉信号電力が異なる場合に加え、さらに、外来干渉波等の干渉信号電力が異なる場合であっても、MRC法に基づいた最適なダイバーシチ合成を実現することができる。つまり、各ブランチを、ダイバーシチ合成前にその受信品質に応じてかつ簡易な構成で正確に重み付けすることができ、最適なダイバーシチ合成を実現することが可能となる。
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。実施例4は、前述のとおり、干渉波が長遅延マルチパス波に加えてレーダー等の外来干渉波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、MMSE法に基づいてダイバーシチ合成を実現する。
図6は、実施例4によるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置1−4は、受信系統を示すブランチ#1〜#N毎に、周波数変換部2、AGC部3、A/D変換部4、直交復調部5、FFT演算部6、CPキャリア抽出部7、チャネル推定部8、TMCCキャリア抽出部10、部分等化部11、MER算出部12、MER重み乗算部20,21、MMSE重み算出部22、MMSE重み乗算部23、データキャリア巡回抽出部40、部分等化部41、MER算出部42、干渉波判定部43、特定キャリアヌル化部44及び信号加算部45を備えている。
図3に示した実施例2のダイバーシチ受信装置1−2と、この実施例4のダイバーシチ受信装置1−4とを比較すると、実施例4のダイバーシチ受信装置1−4は、実施例2のダイバーシチ受信装置1−2における周波数変換部2からMMSE重み乗算部23までの構成部に加え、さらに、データキャリア巡回抽出部40、部分等化部41、MER算出部42、干渉波判定部43及び特定キャリアヌル化部44を備えている点で相違する。また、実施例4のダイバーシチ受信装置1−4は、実施例2のダイバーシチ受信装置1−2における信号加算部24の代わりに、信号加算部45を備えている点で相違する。以下、図6において、図3と共通する部分には図3と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
FFT演算部6によりFFTされた周波数領域の信号は、CPキャリア抽出部7、TMCCキャリア抽出部10、MER重み乗算部20及びデータキャリア巡回抽出部40へ出力される。
データキャリア巡回抽出部40、部分等化部41、MER算出部42、干渉波判定部43及び特定キャリアヌル化部44は、図5に示したデータキャリア巡回抽出部30、部分等化部31、MER算出部32、干渉波判定部33及び特定キャリアヌル化部34と同様の処理をそれぞれ行う。
ここで、特定キャリアヌル化部44は、MER重み乗算部21からMER重みが乗算されたチャネル応答を入力すると共に、干渉波判定部43から判定情報(データキャリアブロックについて外来干渉波の影響を受けているか否かを示す変数δj k=0,1)を入力する。そして、特定キャリアヌル化部44は、MER重みが乗算されたチャネル応答のうち、判定情報が外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアに対応するチャネル応答をヌル(ゼロ)に置き換え、MMSE重み算出部22に出力する。
MMSE重み算出部22は、特定キャリアヌル化部44から、MER重みが乗算されたチャネル応答であって、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアに対応するチャネル応答がヌル(ゼロ)に置き換えられたチャネル応答を入力する。そして、MMSE重み算出部22は、チャネル応答及びMERにより、そのチャネル応答ベクトルhk=[m1h1 k ... mNhN k]Tを用いて、前記式(3)にてMMSE重みベクトルwkを算出する。
MMSE重み乗算部23は、MER重み乗算部20の出力信号(MER重み乗算結果)を入力すると共に、MMSE重み算出部22からMMSE重みを入力し、その出力信号に対し、MMSE重みをMMSE重み係数として乗算する。
信号加算部45は、各ブランチ#1〜#NのMMSE重み乗算部23からMMSE重みが乗算された信号を入力し、各ブランチ#1〜#NにおいてMMSE重みが乗算された信号をサブキャリア毎に加算する。
以上のように、実施例4のダイバーシチ受信装置1−4によれば、実施例2のダイバーシチ受信装置1−2と同様に、TMCCキャリアを用いてMERを算出し、FFT演算部6の出力信号である周波数領域の信号にMERを乗算し、チャネル応答にMERを乗算するようにした。そして、データキャリア巡回抽出部40は、周波数領域の信号からデータキャリアブロックをシンボル単位に巡回的に抽出し、部分等化部41は、データキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアをそのデータキャリアのチャネル応答の複素振幅値で除算して等化し、MER算出部42は、等化後のデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアを硬判定し、硬判定による復調結果とその理想信号点との間の誤差を求めてデータキャリアブロックのMERを算出するようにした。そして、干渉波判定部43は、データキャリアブロックのMERと予め設定された閾値とを比較することで、そのデータキャリアブロックが外来干渉波の影響を受けているか否かを判定し、特定キャリアヌル化部44は、MER重みが乗算されたチャネル応答に対し、干渉波判定部43により外来干渉波の影響を受けていると判定されたデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアに対応するチャネル応答をヌル(ゼロ)に置き換えるようにした。そして、MMSE重み算出部22は、MER重みが乗算され、かつ外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックに含まれる全てのデータキャリアに対応するチャネル応答をヌル(ゼロ)に置き換えられたチャネル応答を用いてMMSE重みを算出し、MMSE重み乗算部23は、MER重み乗算部20の出力信号(MER重み乗算結果)にMMSE重みを乗算し、信号加算部45は、各ブランチ#1〜#NにおけるMMSE重みが乗算された信号を、サブキャリア毎に加算するようにした。
これにより、想定される外来干渉波の信号帯域幅以下の所定幅のデータキャリアブロック毎に、外来干渉波の影響を受けているか否かが判定され、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックの信号は、ヌルに置き換えられる。したがって、外来干渉波の影響を受けているデータキャリアブロックの信号は、ダイバーシチ合成の対象信号から除外される。
つまり、各ブランチにおいて雑音電力が異なる場合だけでなく、長遅延マルチパス波の干渉信号電力が異なる場合に加え、さらに、外来干渉波等の干渉信号電力が異なる場合であっても、MMSE法に基づいた最適なダイバーシチ合成を実現することができる。つまり、各ブランチを、ダイバーシチ合成前にその受信品質に応じてかつ簡易な構成で正確に重み付けすることができ、最適なダイバーシチ合成を実現することが可能となる。
〔実施例5〕
次に、実施例5について説明する。実施例5は、前述のとおり、干渉波が長遅延マルチパス波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合を想定した例であり、高精度のクロック再生を実現する。
前述の実施例1〜4において、A/D変換部4のサンプリングクロック及び各構成部にて使用する動作クロックは各ブランチ#1〜#Nにて共通であり、送信側に同期した理想的なものであるとして説明は省略した。
しかし、映像信号の無線伝送装置では、送信装置と受信装置のクロックにオフセットが生じると、オフセット量に応じた周期でクロックスリップによる映像乱れが生じるため、受信装置側においてクロック再生が必須である。
特に、非特許文献1に記載されたマクロダイバーシチ受信システムでは、ブランチ毎に受信品質が大きく異なり、あるブランチは信号を受信するが、別のブランチは信号を受信しない状況が想定され、その受信状況も時間と共に変化する。このため、特定ブランチの受信信号だけを用いてクロックを再生したとしても、受信装置として高精度なクロック再生を実現することができない。
また、特許文献4には、ダイバーシチ受信装置のクロック再生方法について記載されているが、長遅延マルチパス波またはレーダー等の外来干渉波が、ブランチ毎に異なるレベルで混入する環境は考慮されていない。
そこで、実施例5において、干渉波が長遅延マルチパス波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合であっても、高精度のクロック再生を実現する手法を具体的に説明する。尚、実施例5に示すクロック再現手法は、実施例1を前提にしたものであるが、実施例2〜4を前提にした場合にも適用がある。つまり、干渉波がレーダー等の外来干渉波に加えレーダー等の外来干渉波であって、ブランチ毎に干渉信号電力が異なる場合についても適用がある。
図7は、実施例5によるダイバーシチ受信装置の構成を示すブロック図である。このダイバーシチ受信装置1−5は、図1に示した実施例1のダイバーシチ受信装置1−1において、クロックを再生する構成部を追加したものであり、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1の構成に加え、Nの受信系統を示すブランチ#1〜#N毎に、GI相関演算部50、クロック再生部51及びマスタークロック部54を備え、さらに、ブランチ選択部52及びマスタークロック再生部53を備えている。
GI相関演算部50は、直交復調部5から直交復調されたOFDM信号を入力し、OFDM信号のGI相関値を算出し、そのピーク位置を検出する。そして、GI相関演算部50は、検出したピーク位置の時間間隔をピーク間時間として求め、ピーク間時間をクロック再生部51に出力すると共に、検出したピーク位置に基づいてシンボルの先頭位置を検出し、その先頭位置情報をFFT演算部6に出力する。これにより、FFT演算部6は、先頭位置情報に基づいて、直交復調部5により直交復調されたOFDM信号にFFTを施して、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換することができる。
クロック再生部51は、GI相関演算部50からピーク間時間を入力し、ピーク間時間と所定の基準時間との間の誤差が0になるように、すなわち位相誤差が0になるようにクロックを再生する。そして、クロック再生部51は、再生したクロックの信号(クロック信号)をマスタークロック再生部53に出力する。
ブランチ選択部52は、各ブランチ#1〜#NのMER算出部12からMERを入力し、各ブランチ#1〜#NのMERのうち最も高いMERを選択し、選択したMERのブランチを選択するための制御信号をマスタークロック再生部53に出力する。
マスタークロック再生部53は、各ブランチ#1〜#Nのクロック再生部51からクロック信号を入力すると共に、ブランチ選択部52から制御信号を入力する。そして、マスタークロック再生部53は、各ブランチ#1〜#Nのクロック信号のうち、入力した制御信号が示すブランチのクロック信号を選択し、選択したクロック信号をマスタークロックとして再生し、各ブランチ#1〜#Nのマスタークロック部54を介して各ブランチ#1〜#NのA/D変換部4へ出力する。
これにより、A/D変換部4は、マスタークロック再生部53からのマスタークロックをサンプリングクロックとして、OFDM信号のアナログ信号をデジタル信号に変換することができる。つまり、マスタークロック再生部53からのマスタークロックを当該ダイバーシチ受信装置1−5共通のクロックとして、各ブランチ#1〜#NのA/D変換部4だけでなく各構成部においても用いることができる。
以上のように、実施例5のダイバーシチ受信装置1−5によれば、ブランチ選択部52は、各ブランチ#1〜#NのMERのうち最も高いMERを選択し、マスタークロック再生部53は、GI相関演算部50及びクロック再生部51により再生された各ブランチ#1〜#Nのクロック信号のうち、最も高いMERのブランチのクロック信号を選択し、選択したクロック信号をマスタークロックとして、各ブランチ#1〜#NのA/D変換部4等に使用させるようにした。
一般に、GIを超える長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチのMERは他のブランチのMERよりも低くなるから、ブランチ選択部52において、GIを超える長遅延マルチパス波の影響を受けるブランチは選択されることがない。そして、このようなブランチにて再生されたクロック信号はマスタークロックとして選択されることがなく、GIを超える長遅延マルチパス波の影響を受けないブランチにて再生されたクロック信号がマスタークロックとして選択されることになる。
したがって、高精度のクロック再生を実現することができるから、長遅延マルチパス波の干渉信号電力が異なる場合であっても、MRC法に基づいた最適なダイバーシチ合成を実現することができる。つまり、各ブランチを、ダイバーシチ合成前にその受信品質に応じてかつ簡易な構成で正確に重み付けすることができ、最適なダイバーシチ合成を実現することが可能となる。
以上、実施例1〜5を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1〜5に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施例1〜5において、TMCCキャリア抽出部10、部分等化部11及びMER算出部12は、TMCCキャリアを用いてMERを算出するようにしたが、本発明は、MERを算出するために用いる情報をTMCCキャリアに限定するものではなく、例えばAC(Auxiliary Channel)のような付加信号を用いるようにしてもよい。要するに、硬判定後の理想信号点の推定精度がデータキャリアよりも高い変調方式、すなわち、所定の変調多値数(データキャリアの変調多値数)よりも小さい変調方式にて変調される信号であればよい。
また、前記実施例5は、実施例1のダイバーシチ受信装置1−1においてクロック再生を実現するようにしたが、実施例2〜4のダイバーシチ受信装置1−2〜1−4においてクロック再生を実現するようにしてもよい。
また、前記実施例5において、GI相関演算部50及びクロック再生部51は、GI相関によりクロックを再生するようにしたが、本発明は、このようなクロック再生手法に限定されるものではなく、他のクロック再生手法を用いるようにしてもよい。
つまり、受信サンプル値信号と受信サンプル値信号を有効シンボル長遅延させた信号との間で自己相関演算を行い、自己相間相関結果のピーク位置と当該受信装置のシンボルまたはフレーム位置との間の位相誤差を算出し、その位相誤差が0になるようクロックを再生する、いわゆるGI相関方式を用いてクロックを再生するようにしてもよいし(特開平7−99486号公報を参照)、他のクロック再生手法を用いるようにしてもよい。これにより、受信装置側のクロックを送信装置側のクロックに追従させるようにしてもよい。
その他のクロック再生手法として、同期用のシンボルが挿入されている場合には同期シンボル信号と受信信号との間で相互相関演算を行う、いわゆる相互相関方式を用いるようにしてもよい。