ダイカスト製品を成形する金型は射出スリーブに連結している固定型とこれに対して移動可能な可動型を有している。ダイカスト製品は、この固定型と可動型との間に空間を形成し、この空間に射出スリーブから注湯された溶湯により形成される。すなわち、ダイカスト用金型としては、上述した固定型と可動型とからなる2枚型構造がほとんどである。このような金型で成形した場合には、溶湯を充填するためのランナーの形状で残っているランナー部と成形品を一体のまま金型から取出し、後に成形品とランナー部を分離する。これにより、ダイカスト製品が完成する。
これに対し、自動車用の車輪や椀方形状など、センターゲートを用いダイカスト製品を成形する金型は上記固定型と可動型との間に中間型を有する3枚型構造とすることが多い。この構造の金型では、固定型にランナーが、中間型にピンゲート(ランナーの役割として用いられる場合も含む)が設けられている。ランナーは射出シリンダの溶湯出口と連通するように設けられ、ピンゲートは中間型を貫通して設けられている。固定型と中間型とが接合した際、ランナーとピンゲートとは連通する。溶湯は中間型と可動型との間の隙間に形成された空間に注湯される。溶湯が凝固したら、まず、固定型に対して中間型及び可動型を一体として移動させる。この後露出したランナーに相当する部分であるランナー部を成形品から除去する。次に、中間型に対して可動型を移動させてピンゲート形状のまま残っているピンゲート部が付いた状態の成形品を取出す(ピンゲートの勾配が固定型で細く、製品側で太い場合がこの方法に該当し、樹脂成形品の場合はこの逆が多い)。
上記3枚型構造の金型にはランナー部を除去するまで、可動型と中間型とが離れないようにするためのロック機構(パーティングロック)によりロックされている。中間型と可動型とが離れるタイミングはパーティングロックのロック力と成形品の金型拘束力に依存し変動する。大きなロック力を必要とする金型の場合などは複数のパーティングロックを取り付けて調整する必要があった。
2枚型でも3枚型でも最終的に成形品は可動型に張付いた状態で金型から取出される。3枚型の場合、ランナー部を除去する前に中間型と可動型が僅かでも離れると成形品は可動型と共に移動しようとする。しかし成形品にはランナー部がまだ残っているので成形品の変形、割れ、ピンゲートの破断残り等が発生し、その結果、不良品の発生やマシントラブルが多発し生産性が低下する。
これまで使用しているパーティングロックは樹脂成形用金型に使用されている市販品で、バネなどの力でバーやロッドをロックする種類のものが殆どであった。このような市販品は、ダイカスト鋳造のように、5トン以上もある中間型を高温で使用する環境では耐久性、信頼性に課題がある。また、このロック機構は一定の力が掛かるまでは金型が開かない方向にロックを掛けるが、中間型と可動型を締め付ける力は作用していないので、金型への取付けによっては既にパーティング面にクリアランスが発生している場合が多い(例えとして、緩んだ状態の螺子をロックしても締結は緩んだままの状態に似ている)。これでも鋳造時は型締め力で中間型、可動型及び固定型はクリアランス無く密着しているので溶湯がパーティング面より噴出することは少ないが、型締め力を開放したとたん中間型と可動型は型開きの方向に作用し、僅かな力で開きやすくなる。
樹脂成形用金型に使用しているパーティングロックはダイカスト用の金型に使用するにはロック力が弱い。殆どのパーティングロックは型開きを抑えるためのもので、例え厳密に取り付けても中間型と可動型のパーティング面の隙間をゼロにするものではない。このようなパーティングロックを使用している限り、3枚型構造の金型で容易に不良を低減できるものではない。これら問題を解決するために固定型から中間型が型開きする際、中間型と可動型が開かないようにしたいという要望が高い。このようなパーティングロックは特許文献1のように種々の形状が提案されているが、ダイカスト鋳造品まで考慮するとそのロック力をさらに向上させる必要がある。
本発明に係るダイカスト用金型は、図1に示すようなパーティングロック2を備えている。このパーティングロック2について説明する前に、まずはダイカスト用金型1の概要について図2〜図4を参照して説明する。ダイカスト用金型1は、三枚型構造であり、固定型3と、中間型4と、可動型5とを備えている。固定型3は不動であり、溶湯を提供するためのプランジャ6が接続される。具体的には、固定型3には接続口として鋳込口7が形成されていて、この鋳込口7にプランジャ6が差し込まれる。中間型4は固定型3と接続及び離間可能であり、可動型5は中間型4と接続及び離間可能である。図2はこれら固定型3、中間型4、可動型5が互いに接続された状態を示している。
中間型4及び可動型5が接続された際に、中間型4及び可動型5との間に隙間としてキャビティ8が形成されている。このように、中間型4と可動型5とが接続された際に所望のキャビティ8が形成されるように、中間型4と可動型5は所定形状が彫り込まれている。鋳込口7からキャビティ8に向けては、固定型3及び中間型4内を通る溶湯経路9が形成されている。この溶湯経路9は、具体的には固定型3に形成されたランナー10と、中間型4を貫通するピンゲート11で形成されている。溶湯経路9は、鋳込口7からランナー10を通り(必要に応じてランナー10を分岐する分流子が形成されている場合は分流子を介する)、ランナー10からピンゲート11に通じている。そしてピンゲート11はキャビティ8に通じている。なお、図示したピンゲート11は成形品側(キャビティ8側)が太いタイプのものである。
ダイカスト鋳造を行う際、鋳造スタート信号により可動型5を固定型3の方向に移動する。この際、可動型5とともに中間型4も移動し、それぞれが接続される。それぞれの固定型3、中間型4、可動型5が完全に型締めされると、パーティングロック2によりロックされる。プランジャ6により供給されてキャビティ8に充填された溶湯が凝固したら、まずは可動型5を中間型4と共に固定型3に対して移動させる(離間させる)。そして、予めセットした位置まで移動したところで停止させる(図3の位置)。このとき、溶湯経路9の途中にあった溶湯も凝固していて、ランナー10に相当する位置にはランナー部12が露出することになる(厳密には分流子に相当する部分や鋳込口7に相当するビスケットも露出するが、便宜上ランナー部12と総称して説明する)。可動型5及び中間型4の移動は、このようなランナー部12が露出する位置まで行われ、約100mmあれば十分に露出する。なお、固定型3からはガイドレール13が突出して設けられていて、中間型4にはこのガイドレール13を受け入れ可能な孔(不図示)が設けられている。したがって中間型4はこのガイドレール13に沿って固定型3に対して接続及び離間方向に移動する。
次に図示していないゲートカッターにより、ランナー部12を切断分離する。これによりランナー部12は落下して回収される。このランナー部12の切断分離は、光電管によるランナー部12の落下とカッターの下限位置の検知で判断される。次に成形品を取り出すために可動型5をさらに移動させる。このとき、パーティングロック2によるロックは解除される。ガイドレール13はその端部に押え板14を有している。この押え板14により、中間型4の移動範囲は規制される。すなわち、可動型5とともに中間型4が一体化して固定型3から離間するように移動した際、中間型4が押え板14の位置まで来ると、中間型4もこの位置で固定される。この状態で可動型5をさらに離間させると、中間型4と可動型5とが互いに離間する。可動型5が中間型4から離間すると、成形品15が露出する。可動型5の移動は、この成形品15を取り出し可能な間隔になるまで行われる(図4の位置)。この状態で、ピンゲート11に相当する位置に形成されたピンゲート部16を掴んで成形品15を取り出す。その後、ピンゲート部16を成形品15から除去し、製品が完成する。
このような3枚型構造の金型は、製品内部に湯口が設置できることで、外周に湯口が設置できない製品に有効など、湯口設置の自由度が増すという利点がある。さらに、熱バランスがよくなり、歪が減少し寸法が安定するという利点もある。さらに、充填距離が短くなり(同心円状)、薄肉でも湯廻り不良が減少するという利点がある。さらに、製品内部の厚肉部に湯口を設置でき、ひけ巣発生を防止しやすいという利点もある。また、複数の湯口が設置できることで、1種多数個取りの製品品質を同じにすることができる。また、スライドコアが設置しやすくなるので、型設計の自由度が広がるという利点がある。
上述したように、パーティングロック2は金型同士の接続時、及び離間時にロック及びアンロックされる。図1に示すように、このパーティングロック2は中間型4と可動型5にまたがって形成されている。具体的には、パーティングロック2は可動型5から中間型4に向けて突出して形成された突出ブロック17を備えている。すなわち、中間型4にはこの突出ブロック17を受け入れ可能なスペースが設けられていて、突出ブロック17はこのスペースに収容されている(中間型4と可動型5とが接続時)。この突出ブロック17は柱形状でもよいし、長尺の直方体形状でもよい。この突出ブロック17の側面は切欠かれていて、溝部18が形成されている。一方で、中間型4はその内部を挿通可能な係合片19を有している。この係合片19は、中間型4の外側から中間型4の内部を通り、突出ブロック17に向けて延びている。
中間型4と可動型5とが接続時、係合片19の先端は溝部18に係合している。このように係合片19が溝部18に係合した状態がロック状態である。アンロック状態では、係合片19の先端は溝部18から離間している。係合片19の往復動作は油圧シリンダ20により行われる。なお、ロック状態において、中間型4と可動型5との位置関係(係合片19、より詳しくは後述するピストン部19aの位置)を予めコンピュータ等に記憶させておくことで、そこからずれがあった場合は油圧シリンダ20の不具合や係合片19又は溝部18の摩耗等を検知できる。
そして、溝部18は、可動型5に対して近い側及び遠い側の二つの側面を有している。特に、遠い側の側面18aは傾斜して形成されている。具体的には、側面18aは溝部18の上方にいくにつれて側面間の間隔が広がるような勾配を有している。係合片19の先端もこの側面18aの傾斜に合わせた形状になっている。係合片19が溝部18内に挿入される際、係合片19の先端は溝部18の遠い側の側面18aを摺動しながら係合されていく。このため、突出ブロック17は中間型4側に引張られる。結果として、パーティングロック2をロックすると、可動型5は中間型4側に引張られ、互いの接続が強固となる。これにより、中間型4と可動型5とは互いに密着する方向に力が作用されながら接合される。したがって、固定型3、中間型4、可動型5からなる3枚型構造の金型で、成形品取り出し時に中間型4と可動型5とが離れることを防止できる。なお、突出ブロック17と係合片19との関係は上記のような形状に限らず、基本構造としてクランプ式、楔式、ピンブッシュ式など多くの形状、機構が適用可能である。
一方でパーティングロック2をアンロックする場合、その後の工程で可動型5を移動させて中間型4と離間するときの力がロック力を上回ったときに自動的に解除されるのではなく、成形の工程と中間型4の位置を検知し、信号や人為的に油圧力を解除することでアンロックさせることが好ましい。
なお、アンロック時、中間型4と可動型5との間の引き合い力はロック力よりも上回った力がかかっていることが多い(ロックはマシンの型締後に行ったので)。これに対応するため、係合片19は、油圧シリンダ20と連動して往復運動するピストン部19aと、このピストン部19aの先端を範囲が規定されて摺動する先端部19bとで形成することが好ましい。先端部19bは、その摺動範囲が規定されていて(図1の矢印で示すS部分)、限界の位置までくるとダイレクトにピストン部19aに力が伝わることになる。すなわち、ピストン部19aが範囲Sを摺動中は先端部19bに何ら力は加わらない。このような先端部19bを設けることで、油圧シリンダ20にてピストン部19aを溝部18から引き抜く方向に力を加えた際、まずピストン部19aは何の抵抗を受けることもなく引き抜き方向に移動する。このとき、先端部19bは相対的に係合片19の先端側に移動するような形となる。そして先端部19bが限界まで先端位置まで来ると、ピストン部19aの引き抜き力がダイレクトに先端部19bに伝わり、係合片19は溝部18から引き抜かれる。鋳造工程を経て中間型4と可動型5とが比較的強い力で密着している場合、先端部19bと側面18aとの係合力も比較的強い力で密着していることになる。これを最初から油圧シリンダ20の力で引き抜くよりは、上述したような範囲Sだけピストン部19aが移動するストロークを形成しておくことで、ピストン部19aに勢いをつけることができ、衝撃的に引き抜くことができる。これにより、アンロックを確実なものとすることができる。
なお、本発明の金型1は、その成形方法はダイカストに限定するものではない(ダイカスト法には普通、GF法、高真空、スクイズ、PF法も含まれる)。また、溶湯材料はアルミ、マグネシウム、亜鉛である。樹脂であってもよい。また、上記例では可動型に突出ブロック17の基端があり、突出ブロック17が中間型4に向けて突出し、係合片19や油圧シリンダ20等が中間型4に形成された例を示したが、中間型4と可動型5とを逆にした構成でも本発明は同様の効果を奏する。すなわち、中間型4に突出ブロック17の基端があり、突出ブロック17が可動型5に向けて突出し、係合片19や油圧シリンダ20等が可動型5に形成されていてもよい。