以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
図1を参照して、本実施形態に係るX線発生装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るX線発生装置を示す概略構成図である。
X線発生装置1は、開放型であり、使い捨てに供される密封型と異なり、真空状態を任意に作り出すことができ、ターゲット(X線発生用ターゲット)Tや電子銃部3のカソード等の交換を可能にしている。X線発生装置1は、動作時に真空状態になり、導電性材料、例えばステンレスからなる円筒形状の筒状部5を有している。筒状部5は、下側に位置する電子銃収容部5aと上側に位置するターゲット保持部5bとからなり、ターゲット保持部5bはヒンジ(不図示)を介して電子銃収容部5aに取り付けられている。従って、ターゲット保持部5bが、ヒンジを介して横倒しになるように回動することで、電子銃収容部5aの上部を開放させることができ、電子銃収容部5a内に収容されている電子銃部3(カソード)へのアクセスを可能にする。
ターゲット保持部5b内には、集束レンズとして機能する筒状のコイル部(集束部)7と、偏向コイルとして機能する筒状のコイル部(走査部)9が設けられると共に、コイル部7,9の中心を通るよう、筒状部5の長手方向に電子通路11が延在している。電子通路11はコイル部7,9で包囲される。ターゲット保持部5bの下端にはディスク板13が蓋をするように固定され、ディスク板13の中心には、電子通路11の下端側に一致させる電子導入孔13aが形成されている。
ターゲット保持部5bの上端は円錐台に形成され、頂部には、電子通路11の上端側に位置してX線出射窓を形成する透過型のターゲットTが装着されている。ターゲットTは、接地させた状態で電子通路11の上端部を真空封止するように、図示しない着脱構造によって着脱自在に固定されているため、消耗品であるターゲットTの交換も可能になる。
電子銃収容部5aには真空ポンプ17が固定され、真空ポンプ17は筒状部5内を高真空状態にするためのものである。すなわち、X線発生装置1が真空ポンプ17を装備することによって、ターゲットTやカソード等の交換が可能になっている。
筒状部5の基端側には、電子銃部3との一体化が図られたモールド電源部19が固定されている。モールド電源部19は、電気絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)でモールド成形させたものであると共に、金属製のケース内に収容されている。
モールド電源部19内には、高電圧(例えば、−数十kV以下)を発生させるようなトランスを構成させた高圧発生部(不図示)が封入されている。モールド電源部19は、下側に位置して直方体形状をなすブロック状の電源本体部19aと、電源本体部19aから上方に向けて電子銃収容部5a内に突出する円柱状のネック部19bとからなる。高圧発生部は、電源本体部19a内に電気絶縁性の樹脂によって封入されている。ネック部19bの先端部には、電子通路11を挟むように、ターゲットTに対峙させるよう配置させた電子銃部3が装着されている。モールド電源部19の電源本体部19a内には、高圧発生部に電気的に接続させた電子放出制御部(不図示)が封入されている。電子放出制御部は、電子銃部3に接続されており、電子の放出のタイミングや管電流などを制御している。
続いて、ターゲットTについて説明する。図2は、ターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図3は、図2におけるIII−IIIでの断面構成を示す図である。なお、以降のターゲットT1,T2,T3においては、図示を容易にするため、図示上における各構成の大きさや離間距離等は、実際の数値条件と必ずしも適合しない。すなわち、各図において、各構成の寸法比率は実際のものとは異なる場合があり、実際の構成と必ずしも一致していない。
図2及び図3に示すように、ターゲットTは、基板21と、ターゲット部23と、導電層25と、目印部27と、を有しており、X線出射窓を兼ねた透過型ターゲットとなっている。基板21は、電子入射によるX線の発生が少なく、X線透過性及び放熱性に優れた電気的な絶縁材料、例えばダイヤモンドからなり、互いに対向する平面部である第1及び第2主面21a,21bを有した平板状部材である。第1主面21aが電子入射側の面、第2主面21bがX線出射側の面であって、第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aに沿った方向における基板21の厚みは、例えば300μm程度に設定されている。
ターゲット部23は、基板21の第1主面21a側に位置している。ターゲット部23は、基板21において対向方向Aに延びる孔部、具体的には第1主面21a側から有底状に形成された孔部Hに埋設されている。ターゲット部23は、基板21とは異なる材料からなる金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円柱状に形成されており、例えば対向方向Aから見た第1主面21a側の端面である電子入射面の外径(直径)D1が100nm〜2μm程度、対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)L1が500nm〜4μm程度とされている。本実施形態では、ターゲット部23の金属としてタングステンを採用し、ターゲット部23の外径D1を例えば500nm、長さL1を例えば1μmとしている。
導電層25は、基板21の第1主面21a側に形成されており、電子ビームEBによる第1主面21aの帯電を抑制すると共に、電子ビームEBに対して第1主面21aを保護する。導電層25は、例えば、遷移元素(より好ましくは第一遷移元素)を含む導電性材料からなり、例えばチタンやクロム、及びそれらの導電性化合物からなる導電性薄膜であって、ここではチタン薄膜とする。導電層25の対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)は、例えば50nm程度であり、ターゲット部23の長さL1よりも小さい。導電層25は、例えば、第1主面21a上に物理蒸着(PVD)等の蒸着によって形成する。また、導電層25として、不純物(例えば、ボロン等)をドープしたダイヤモンドを用いてもよく、この場合、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイヤモンド粒子を生成及び成長させてダイヤモンド層を形成し、形成したダイヤモンド層にボロンをドーピングして形成する。なお、本実施形態においては、導電層25はターゲット部23の電子入射面を露出するように形成されているが、覆うように形成してもよい。
目印部27は、基板21の第1主面21a側に位置し、導電層25上に配置されている。目印部27は、ターゲット部23の位置を特定する際、基準となる位置情報を発生させる部分である。目印部27は、基板21の第1及び第2主面21,21bの対向方向Aから見て、ターゲット部23と重ならないように離間して配置されている。目印部27は、ターゲット部23の中心をその中心とする仮想円Sの円周上に複数(ここでは4つ)配置されている。
目印部27は、ターゲット部23を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。仮想円周上で隣り合う目印部27同士は、等間隔とされている。一対の目印部27の対向方向は、互いに略直交している。目印部27とターゲット部23との離間距離d(目印部27とターゲット部23において対向する外縁同士間における最短距離)は、それぞれ、例えば10〜50μm程度である。なお、ターゲット部23の外径D1が離間距離dと比較して十分に小さい場合には、仮想円Sの半径を離間距離dとして近似することもできる。目印部27は、基板21とは異なる材料からなる金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円盤状に形成されている。本実施形態では、目印部27の金属として、ターゲット部23と同様に、タングステンを採用している。
目印部27は、例えば対向方向Aから見た外径(直径)D2が3〜10μm程度、対向方向Aに沿った方向の長さ(厚さ)Lが50〜500nm程度の扁平な円柱状である。本実施形態では、目印部27の外径D2を例えば5μm、長さL2を例えば200nmとしている。目印部27の外径D2は、ターゲット部23の外径D1よりも大きい(D2>D1)。すなわち、目印部27の表面積(電子入射方向から見た面積)は、ターゲット部23の表面積よりも大きい。目印部27の長さL2は、ターゲット部23の長さL1よりも短く(L2<L1)、また、導電層25の対向方向Aに沿った方向の長さよりは大きい。
再び、図1を参照する。X線発生装置1は、反射電子検出部としての反射電子検出器31と、制御部としてのコントローラ33と、ターゲット部23の機械的な移動機構となるXYステージ34と、を備えている。反射電子検出器31は、図示しない経路を介して、又は電子通路11中における、ターゲットTに向かう電子ビームEBに対して互いに影響を受けないような位置に、ターゲット部23を臨むようにターゲット保持部5bの上端側に配置されており、ターゲットTで反射された電子(反射電子)を検出する。また、吸収電子検出部として、電流検出器32を備えていてもよい。電流検出器32は、ターゲットTに電気的に接続され、ターゲットTに吸収された電子ビームEBの量を示す吸収電流を検出し、その情報を制御部であるコントローラ33に出力する。なお、電流検出部を別途設けることなく、コントローラ33が電流検出部を備えていてもよい。また、反射電子検出部と吸収電子検出部とを、両方備えていてもよいし、いずれか一方のみでもよい。また、制御部としては、単一のコントローラ33でX線発生装置1に関する制御を行ってもよいし、複数のコントローラ33を備え、それらの協働によってX線発生装置1に関する制御を行ってもよい。
コントローラ33は、X線発生装置1に関する各種の制御を行い、例えばモールド電源部19の高圧発生部及び電子放出制御部を制御する。これにより、電子銃部3とターゲットT(ターゲット部23)との間に所定の電流・電圧が印加され、電子銃部3から電子ビームEBが出射する。電子銃部3から出射された電子ビームEBは、コントローラ33により制御されたコイル部7にて適切に集束されて、ターゲットTに入射してターゲットT上に集束領域を形成する。この集束領域は、電子ビームEBのターゲットT上における照射野Eであって、電子ビームEBがターゲットT上に入射した際に電子入射形跡の生じる領域とほぼ等しい。そして、照射野Eは、図2に示すように対向方向Aに沿った、ターゲットTに垂直な方向(電子入射方向)から見て、その範囲内にターゲット部23が含まれると共に、その外縁はターゲット部23と目印部27との離間領域内に含まれている。離間領域の外縁は、上述したターゲット部23の中心と同心な仮想円Sと等しいため、照射野Eの外径(直径)EDは、ターゲット部23の外径D1よりも大きく、仮想円Sの外径(直径)SDよりも小さくされている(D1<ED<SD)。なお、照射野Eの外径EDは、例えば10〜30μm程度である。
このように、目印部27は、集束領域である照射野Eの領域外に配置されているため、目印部27によるノイズ成分が抑制された状態で所望の焦点径を持ったX線XRを取り出すことができる。換言すれば、ターゲット部23へ電子ビームEBを照射してX線を取り出す際には、コントローラ33はコイル部7を、確実にターゲット部23を含みつつ、目印部27を含まないような照射野Eとなるように制御することで、目印部27によるノイズ成分が抑制された状態で所望の焦点径を持ったX線XRを取り出すことができる。
また、コントローラ33は、反射電子検出器31が検出する反射電子(電流検出器32が検出する吸収電子)の強度をリアルタイムに監視し、ターゲットTからの反射電子(吸収電子)の強度とターゲットTにおいて設定された位置情報に基づいて、コイル部9を制御する。このとき、コイル部9は、電子銃部3からの電子ビームEBを、電子ビームEBの照射野EがターゲットT上で二次元的に走査するように偏向する。コイル部9により走査される電子ビームEBのターゲット上の走査領域(範囲)は、例えば100〜150μm程度であり、ターゲット部23及び目印部27は走査領域内に1組以上、好ましくは複数組配置される。また、電子ビームEBのターゲット上への入射領域をさらに大きく移動させたい場合には、コントローラ33の制御に基づき、XYステージ34によってターゲット部23自体をターゲット保持部5bに対して移動させてもよい。このように、コイル部9による電子ビームEBの偏向と、XYステージ34によるターゲット部23自体の移動とを組み合わせることで、ターゲット部23をより広範囲に活用することができる。
電子ビームEBを物質に照射した時、物質の原子番号に依存する量の反射電子が放出される(原子番号が大きいほど、多くの反射電子を放出する)。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21に、タングステンからなるターゲット部23と、タングステンからなる目印部27とを配置しているので、より多くの反射電子を検出した場所をターゲット部23又は目印部27と判定することができる。そこで、コントローラ33は、より多くの反射電子を得られるように電子ビームEBの偏向を制御する。
一方で、電子ビームEBを物質に照射した時には、物質の原子番号に依存する量の電子の吸収も生じる。すなわち、原子番号が大きいほど吸収電流値は小さく、原子番号が小さいほど吸収電流値は大きい。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21に、タングステンからなるターゲット部23と、タングステンからなる目印部27とを設けているので、吸収電流値が小さい場所をターゲット部23又は目印部27と判定することができる。そこで、コントローラ33は、吸収電流値がより小さくなるように電子ビームEBの偏向を制御する。なお、本実施形態においては、吸収電流はターゲット電流と等しい。
ターゲット部23の特定方法について、より詳細に説明する。コントローラ33は、コイル部9を制御し、電子ビームEBをターゲットT上で走査させて、反射電子検出器31が検出する反射電子(電流検出器32が検出する吸収電子)の強度を監視する。ターゲットTにおいて、目印部27は、ターゲット部23よりも表面積が大きいため、ターゲット部23と比較して、電子ビームEBの照射野Eに入った際の反射電子(吸収電子)の強度(強度変化)が大きい。そのため、ターゲットTにおける目印部27の位置情報がターゲット部23と比較して確実に取得され得る。
コントローラ33は、目印部27の位置情報を取得すると、目印部27が配置されている位置がターゲット部23を中心とする仮想円円周上であるとし、その仮想円の中心を求める。コントローラ33は、仮想円の中心を求めると、その中心の位置情報とターゲットTにおいて設定されているターゲット部23の位置情報、及び、反射電子(吸収電子)の強度に基づいて、ターゲット部23の位置を特定する。コントローラ33は、ターゲット部23に電子ビームEBの照射野が位置するように、コイル部9を制御する。または、目印部27の位置情報からターゲット部23の位置を予測し、目印部27を起点に速度を落として精密に再走査を行うことで、ターゲット部23の位置を特定してもよい。以上のように、X線発生装置1では、ターゲットTにおいてターゲット部23の位置が特定され、ターゲット部23に電子ビームEBを照射して所望の焦点径を持ったX線を発生させる。
また、本実施形態では、ターゲット部23及び目印部27を共にタングステンとしているが、目印部27の対向方向Aにおける長さ(厚み)は、ターゲット部23の対向方向Aにおける長さ(厚み)よりも短い。そのため、目印部27の反射電子(吸収電子)の強度は、ターゲット部23の反射電子(吸収電子)の強度よりも小さい。これにより、ターゲット部23及び目印部27を同じ材料によって形成しても、両者を区別することができる。
以上説明したように、本実施形態では、ターゲットTにおいてターゲット部23を中心とする仮想円Sの円周上に複数の目印部27が配置されている。目印部27の表面積は、ターゲット部23の表面積よりも大きい。これにより、X線発生装置1では、ターゲットTにおいて、基板21とは異なる物質の位置情報である目印部27の位置情報を確実に得ることができる。更に、目印部27は、対向方向Aから見てターゲット部23と重ならないように離間すると共に、目印部27の対向方向Aにおける長さは、ターゲット部23の対向方向Aにおける長さよりも短いため、目印部27の反射電子(吸収電子)の強度は、ターゲット部23の反射電子(吸収電子)の強度と異なり、ターゲット部23よりも低いという特性の違いを示す。これにより、X線発生装置1では、目印部27とターゲット部23とを識別することができる。そして、X線発生装置1では、目印部27を基準としてターゲット部23の位置を特定できる。したがって、X線発生装置1では、ターゲットTにおいて検出し易く、ターゲット部23との識別が可能な目印部27を備えているため、ターゲットTにおいてターゲット部23を迅速且つ的確に特定できる。
本実施形態では、目印部27の長さL2は、ターゲット部23の長さL1よりも短い。目印部27とターゲット部23とが互いに同じ原子番号の材質である場合、目印部27とターゲット部23との厚みを同等とすると、放出される反射電子量(吸収される電子量)が同等となるため、目印部27とターゲット部23とを識別し難くなる場合がある。そして、誤って目印部27に照射することで発生したX線を用いた場合、目印部27はターゲット部23と比較して表面積が大きいために、発生するX線の焦点径が異なり、所望のX線照射条件を満たさない状態で使用することになる。そのため、目印部27は、ターゲット部23と厚みを異ならせる必要がある。
また、目印部27の厚みを大きくする(例えば、ターゲット部23と同等程度になるように500nmよりも大きくする)と、以下のような不具合も生じる。すなわち、目印部27では、例えば40keV程度の電子ビームEBが照射されると、そのうちの0.3%はX線に変換され、99.7%は熱に変換される。ここで、目印部27が、基板21と底面のみで接触している場合、熱を外部に放出し難い。そのため、目印部27は、その厚みが大きい場合、電子ビームEBの照射による熱が蓄熱され、熱による破壊が生じ得る。つまり、上述したように所望のX線照射条件を満たさない上に、ターゲットTの破損も生じ得るため、例えば所望の検査結果が得られない上に、ターゲットTが使用不可能になってしまう可能性がある。対して、本実施形態では、目印部27の厚みをターゲット部23よりも小さくしているため、目印部27とターゲット部23とを確実に識別しつつ、目印部27の熱による破損を防止しているので、所望のX線照射条件を安定して得ることができる。
本実施形態では、電子ビームEBの照射野が、目印部27とターゲット部23との離間領域内に含まれている。すなわち、目印部27は、所望のX線を得るためにターゲット部23に電子ビームEBが照射されたときの集束領域外に配置されている。これにより、X線発生装置1では、ターゲット部23に電子ビームEBが照射されたときには目印部27に電子ビームEBが照射されない。したがって、X線発生装置1では、目印部27がX線に影響を及ぼすことを抑制できる。
なお、本実施形態においては、ターゲット部23が基板21の孔部Hに埋設されると共に、目印部27が対向方向Aから見てターゲット部23と重ならないように離間して配置された構造を備えている。このようなターゲット部23を用いることで、入射する電子ビームEBの照射野Eではなく、ターゲット部23の外径D1を支配的要素として、発生するX線の焦点径を決定するとともに、目印部27からのX線の影響を抑制することができる。
一方、同様の構造として、大径なターゲット部に対して、所望の焦点径領域を除いて、その周囲を電子遮蔽物で覆うことで、電子ビームに対して当該焦点径領域のみを露出させた構造(対向方向から見てターゲット部と電子遮蔽部が重なった構造)も考えられる。しかしながら、電子遮蔽物は確実に電子を遮蔽するような材料で構成する必要があることから、電子遮蔽物へ電子ビームEBが入射すれば、X線が発生する可能性が高い。このようなX線はノイズ成分になることから望ましくはないが、電子遮蔽物で焦点領域を決めているため、ノイズ成分を抑制するために焦点径領域から電子遮蔽物を離間させることもできない。よって、ターゲット部から所望の焦点径のX線を得るためには、結局、電子ビームEBの照射野E自体を焦点径に合わせて微小に絞り込む必要がある。しかしながら、電子ビームEBの照射野Eの微小化は、電子ビームEBを高度に制御する必要があり、ターゲット部の微小化と比較して非常に困難である。よって、当該構造ではX線焦点の微小化への対応は不十分であると判断される。
上記実施形態では、導電層25が基板21の第1主面21a上に配置され、導電層25上に目印部27が配置されている構成を一例に説明したが、導電層25は、例えば図4に示す構成であってもよい。図4は、他の形態に係るターゲットの断面構成を示す図である。図4に示すように、ターゲットTでは、導電層25は、基板21の第1主面21a及び目印部27上に配置されている。すなわち、目印部27は、基板21の第1主面21a上に直接配置されている。また、ターゲット部23も導電層25で覆っても良く、目印部27は導電層25に覆われていなくてもよい。
上記実施形態では、ターゲットTにおいてターゲット部23が一つ配置された構成を一例に説明したが、ターゲットTは、複数のターゲット部23を有していてもよい。図5は、他の形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図5に示すように、ターゲットTには、複数のターゲット部23が配置されており、各ターゲット部23を中心とする仮想円の円周上に複数(図5(a)では4個、図5(b)では3個)の目印部27が配置されている。目印部27は、各ターゲット部23を中心とする仮想円の円周上に位置しており、各ターゲット部23を近接配置することで、1つの目印部27が、隣接する複数のターゲット部23に対する目印部を兼ねるようにすることもできる。
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図7は、図6におけるVII−VII線での断面構成を示す図である。
図6及び図7に示すように、ターゲットT1は、基板21と、ターゲット部23と、導電層25と、目印部27と、を有している。ターゲットT1は、基板21、ターゲット部23、導電層25及び目印部27の構成は第1実施形態と同様であり、ターゲット部23及び目印部27の配置が第1実施形態と異なっている。
ターゲット部23は、ターゲットT1に複数配置されている。詳細には、目印部27は、ターゲット部23が位置する仮想円の中心に配置されており、ターゲット部23は、目印部27を中心とする仮想円の円周上に複数(ここでは6つ)配置されている。仮想円周上で隣り合うターゲット部23同士は、等間隔とされており、ターゲット部23同士の間隔は、例えば10um以上である。ターゲット部23は、目印部27を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。一対のターゲット部23の対向方向は、互いに交差している。ターゲット部23と目印部27との離間距離は、それぞれ、例えば10〜50μm程度である。
上記ターゲットT1においてターゲット部23を特定する場合、コントローラ33は、目印部27の位置情報を取得すると、目印部27を中心として所定の半径を有する仮想円を求める。コントローラ33は、仮想円を求めると、仮想円の円周上を検索し、円周上の位置情報とターゲットT1において設定されているターゲット部23の位置情報、及び反射電子(吸収電子)の強度に基づいて、ターゲット部23の位置を特定する。または、目印部27の位置情報からターゲット部23の位置を予測し、目印部27を起点に速度を落として精密に再走査を行うことで、ターゲット部23の位置を特定してもよい。
上記実施形態では、導電層25が基板21の第1主面21a上に配置され、導電層25上に目印部27が配置されている構成を一例に説明したが、導電層25は、例えば図8に示す構成であってもよい。図8は、他の形態に係るターゲットの断面構成を示す図である。図8に示すように、ターゲットT1では、導電層25は、基板21の第1主面21a及び目印部27上に配置されている。すなわち、目印部27は、基板21の第1主面21a上に直接配置されている。また、ターゲット部23も導電層25で覆っても良く、目印部27は導電層25に覆われていなくてもよい。
上記実施形態では、ターゲットT1にターゲット部23及び目印部27からなるターゲット部が一つ配置された構成を一例に説明したが、ターゲットT1において、ターゲット部は複数配置されていてもよい。図9は、他の形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図9に示すように、ターゲットT1は、複数の目印部27が配置されており、各目印部27を中心とする仮想円の円周上に複数のターゲット部23が配置されている。
上記実施形態では、第1及び第2主面21a,21bの対向方向Aから見たときに、目印部27が略円形形状を呈する構成を一例に説明したが、目印部27は他の形状であってもよい。図10は、他の形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図10に示すように、目印部27は、多角形形状を呈しており、ここでは六角形形状を呈している。目印部27の頂部(頂点)のそれぞれは、ターゲット部23が配置されている方向に向いている。言い換えれば、ターゲット部23は、目印部27の頂部の延長線上に配置されている。これにより、X線発生装置1では、目印部27の位置情報を取得した場合、目印部27の頂点の方向を走査することにより、ターゲット部23をより迅速且つ的確に特定できる。
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。図11は、第3実施形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図12は、図11におけるXII−XIIでの断面構成を示す図である。
図11及び図12に示すように、ターゲットT2は、基板21と、ターゲット部23と、導電層25と、目印部35と、を有している。ターゲットT2は、基板21、ターゲット部23、導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部35の構成が第1実施形態と異なっている。
目印部35は、導電層25上に配置されている。目印部35は、基板21の第1主面21a側の略全面に配置されており、ターゲット部23を中心とする仮想円に沿って開口部35aが形成されている。目印部35の開口部35aは、内径が10〜50μm程度である。
上記ターゲットT2においてターゲット部23を特定する場合、コントローラ33は、目印部27の開口部35aを検索し、開口部35aのエッジ(開口端)を検出する。コントローラ33は、開口部35aのエッジを検出すると、開口部35aの中心を求める。コントローラ33は、開口部35aの中心を求めると、その中心の位置情報とターゲットT2において設定されているターゲット部23の位置情報、及び反射電子(吸収電子)の強度に基づいて、ターゲット部23の位置を特定する。
上記実施形態では、導電層25が基板21の第1主面21a上に配置され、導電層25上に目印部35が配置されている構成を一例に説明したが、導電層25は、例えば図13に示す構成であってもよい。図13は、他の形態に係るターゲットの断面構成を示す図である。図13に示すように、ターゲットT2では、導電層25は、基板21の第1主面21a、ターゲット部23及び目印部35上に配置されている。すなわち、目印部35は、基板21の第1主面21a上に直接配置されている。なお、目印部35が基板21の第1主面21aの略全面を覆っている場合には、導電層25は開口部35aのみを覆っても良く、その際、ターゲット部23の電子入射面を露出させてもよい。
上記実施形態では、ターゲットT2にターゲット部23が一つ配置された構成を一例に説明したが、ターゲットT2において、ターゲット部23は複数配置されていてもよい。図14は、他の形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図14に示すように、ターゲットT2は、複数のターゲット部23が配置されており、各ターゲット部23を中心とする仮想円の円周に沿って開口部35aが形成されている。
上記実施形態では、開口部35aを略円形形状としているが、開口部は多角形形状であってもよい。
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態について説明する。図15は、第4実施形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図16は、図15におけるXVI−XVI線での断面構成を示す図である。
図15及び図16に示すように、ターゲットT3は、基板21と、ターゲット部23と、導電層25と、目印部37と、を有している。ターゲットT3は、基板21、ターゲット部23、及び導電層25の構成は第1実施形態と同様であり、目印部37の構成が第1実施形態と異なっている。
目印部37は、導電層25上に配置されている。目印部37は、基板21の第1主面21a側から見て、矩形の枠状を呈している。つまり、ターゲット部23は、目印部37に取り囲まれており、目印部37の中心に位置している。目印部37とターゲット部23との離間距離は、例えば10〜50μm程度である。目印部37の幅は、例えば3〜10μmである。
上記ターゲットT3においてターゲット部23を特定する場合、コントローラ33は、目印部37の位置情報を取得すると、目印部37の内側のエッジを検出する。コントローラ33は、目印部37の内側のエッジを検出すると、目印部37の中心を求める。コントローラ33は、目印部37の中心を求めると、その中心の位置情報とターゲットT3において設定されているターゲット部23の位置情報、及び反射電子(吸収電子)の強度に基づいて、ターゲット部23の位置を特定する。
上記実施形態では、導電層25が基板21の第1主面21a上に配置され、導電層25上に目印部37が配置されている構成を一例に説明したが、導電層25は、例えば図17に示す構成であってもよい。図17は、他の形態に係るターゲットの断面構成を示す図である。図17に示すように、ターゲットT3では、導電層25は、基板21の第1主面21a、ターゲット部23及び目印部37上に配置されている。すなわち、目印部37は、基板21の第1主面21a上に直接配置されている。また、ターゲット部23の電子入射面及び目印部27は導電層25に覆われていなくてもよい。
上記実施形態では、ターゲットT3にターゲット部23が一つ配置された構成を一例に説明したが、ターゲットT3において、ターゲット部23は複数配置されていてもよい。図18は、他の形態に係るターゲットを基板の第1主面側から見た図である。図18に示すように、ターゲットT3は、複数のターゲット部23が配置されており、各ターゲット部23を中心として枠状の目印部37が配置されている。目印部37は、図18(a)に示すように矩形形状であってもよいし、図18(b)に示すように円形形状であってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、ターゲットの反射電子や吸収電子の強度に基づいて基板、ターゲット部、及び目印部を判定しているが、ターゲットから発生したX線の強度やエネルギー帯に基づいてターゲット部、及び目印部を判定してもよい。また、走査時の電子ビームEBの径を、X線発生時の電子ビームEBの径よりも大きくしてもよい。この場合、例えばX線発生時の状態からデフォーカスすることが考えられ、走査時間の短縮が可能となる。また、走査時の電子ビームEBの強度をX線発生時よりも小さくしてもよい。この場合、走査時の電子ビームEB照射による熱等の影響を抑制することで、ターゲットTを保護することができる。また、目印部27をターゲット部23と同じく基板21に埋め込むように形成しても良いし、ターゲット部23の形状も円柱状に限らず、他の形状であってもよい。