JP6106396B2 - 殺菌水生成装置 - Google Patents
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Description
また、希薄な食塩水中で安定かつ高い塩素発生効率特性を得るために、導電性基体上に白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化タンタルの複合体からなる電極触媒層を形成させた電極を用いるのが一般的である (特開2009−052069号公報参照)。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、殺菌水生成装置の小型化、殺菌水生成能力の向上、及び殺菌水を生成するための電極の高寿命化を高いレベルで両立できる殺菌水生成装置を提供せんとするものである。
この構成に基づけば、従来一般的に用いられていた電極より酸化タンタル量を増やしたことによって酸化イリジウムの触媒層への担持力が増加し、ポールチェンジに伴って触媒層から酸化イリジウムが脱離することを防止して電極の寿命を延ばすことが可能となる。
本発明では、前記複合体は、金属換算で、酸化タンタル量を35モル%よりも多く含有し、かつ、酸化イリジウムに対してモル比で0.92〜1.85倍の酸化タンタルを含有してなり、その上で制御手段による電極への通電量を電流密度7A/dm2〜20A/dm2としたことによって、次亜塩素酸の生成量の確保と酸化イリジウムへの電荷集中による劣化促進という新たな課題をも抑制できる。酸化タンタル量を35モル%より多く、かつ、酸化イリジウムに対してモル比で0.92〜1.85倍とした電極において、電流密度を7A/dm2未満とした場合では、電気抵抗の増加により十分な次亜塩素酸生成濃度を確保することが困難となり、20A/dm2を超える量では酸化イリジウムの電荷集中による劣化の促進や脱離が顕著となる。これらの特有の構成によって、スケールの発生を抑制するためのポールチェンジを行っても酸化イリジウム脱離に伴う触媒劣化を抑制することができ、かつ酸化タンタルを増加させたことによる性能劣化や、酸化イリジウムへの電荷集中による劣化促進をも抑制できるという実用上優れた殺菌水生成装置を提供できる。
また、前記複合体はさらに白金を含有し、金属換算で、白金4モル%以上、酸化イリジウム37〜57モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル35モル%より多く53モル%以下含有してなることが更に望ましい。所定の運転条件下で耐久性を得るための好適な配合である。
また、前記制御手段は、前記電極に対して電流密度12A/dm2〜17A/dm2で通電するよう構成することが更に望ましい。十分な殺菌性能を確保しつつ、更に小型で高寿命な最適バランスとなる実用上優れた殺菌水生成装置を提供できる。
また、前記電解槽に供給される塩化物イオンを含む水は、水を循環させない流水式として構成することが更に望ましい。酸化タンタル量を増加させたことによって、先に説明した通り導電部の減少に伴った酸化イリジウムへの電荷集中が発生しやすい状態になる。このような電荷集中が発生した場合、陽極側の酸化イリジウム周辺で強い酸性雰囲気となるが、強い酸性雰囲気となった状態で陽極から陰極に変わると、酸化イリジウムの価数が減少して、触媒層への結合力が著しく低下することが推測される。
本発明では、電解槽を流水式としたことによって、電解される前の中性に近い水が電極へ供給されるため、ポールチェンジ後に陰極となった電極側の酸化イリジウム周辺で強い酸性雰囲気になることを抑制して酸化イリジウムの結合力低下を抑え、触媒層からの酸化イリジウムの脱離を抑制することができる。これによっても酸化タンタル量を増加させることによる影響を低減できる。換言すると、電解槽を水が貯留される貯水式とした場合では、陰極側の電極周辺で強い酸性雰囲気となりやすく、これが寿命の低下になる。
また、前記制御手段は、前記電極に対して4〜15秒間隔で電極の陽極と陰極を切り替えるポールチェンジを実行するように構成することが更に望ましい。これにより、ポールチェンジ後の酸化イリジウムの結合力低下が更に確実に抑制され、十分な殺菌性能を確保しつつ、更に小型で高寿命な最適バランスとなる実用上優れた殺菌水生成装置を提供できる。
まず、本実施形態の衛生洗浄装置に関し、本発明の発明者らが発見した課題について説明する。
図1は、本発明の実施形態による殺菌水生成装置を有した衛生洗浄装置に用いられる電解槽を説明するための模式図である。同図に示すように、電解槽1は、一対の電極板2、4を有し、これら電極板2、4の間に電圧を印加することにより、水を電気分解する。なお、図1(A)には、電極板2が陰極となり、電極板4が陽極となるように電圧が印加された状態が示されている。
水道水には塩化物イオンが含まれているため、水道水を電気分解することにより、陽極側の電極4では塩素が発生する。このようにして発生した塩素は水に溶解し、次亜塩素酸が発生する。このようにして、電解槽1は次亜塩素酸を含む殺菌水を生成することができる。
また、この際、陰極側の電極板2では水道水中に含まれるカルシウムイオンが炭酸カルシウム(スケール)として電極板2に付着する。このように電極板2に炭酸カルシウムが付着してしまうと、殺菌水の生成能力が低下してしまう。
そこで、本実施形態の衛生洗浄装置の電解槽1は、例えば、殺菌水の累積生成時間が所定の時間に達するなどの所定のタイミングで、図1(A)に示す状態から、図1(B)に示す状態へと電極板2、4の間に印加する電圧を反転させる、いわゆるポールチェンジを行う。図1(B)に示す状態へとポールチェンジを行うことにより、陰極として機能していた電極板2が陽極となり、陽極として機能していた電極板4が陰極となる。このため、炭酸カルシウムが付着していた電極板2において酸が生成され、この酸により炭酸カルシウムが溶解するため、電極板2に付着していた炭酸カルシウムを剥離させることができる。
図2は、図1に示す電解槽における、ポールチェンジ後の経過時間と経過時間後に電極に付着するスケール量との関係を示すグラフである。同図に示すように、ポールチェンジ後、所定時間経過すると電極から剥離するカルシウム量は大きく減少している。このことから、電極に付着したスケールは、ポールチェンジ直後に大部分が剥離してしまうことがわかる。
また、図2に示すように、電極に印加する電圧が10Vの場合には、電極に印加する電圧が5Vの場合に比べて、ポールチェンジ後に電極に付着するスケール量が約半分程度まで減少している。このことから、電極に印加する電圧が大きいほど、ポールチェンジ後、短時間の間に、より大量のスケールが剥離することがわかる。
図3は、本発明の一実施形態による衛生洗浄装置が設置された水洗大便器を示す斜視図である。同図に示すように、衛生洗浄装置100は、水洗式の洋式大便器110の便器120上に設置されて用いられる。そして、コントローラにより操作することにより、洗浄ノズル14が便器120内に進出し、洗浄水を洗浄ノズル14の先端から人体局所(おしりなど)に向けて噴出することにより、人体局所を洗浄することができる。
図4に示すように、本実施形態による殺菌洗浄時における衛生洗浄装置の流路系統10は、例えば水道管などの給水源12と洗浄ノズル14とが流路16、18により接続されており、この流路16に上記説明した電解槽1が設けられている。流路16の電解槽1の下流には分岐部20が設けられており、分岐部20から洗浄ノズル14へと延びる吐出流路18と、分岐部20から下方に向かって延びる排出流路22とに分岐している。
吐出流路18は、洗浄ノズル14の吐水口における断面積(すなわち、吐出流路18の最小流路断面積)が、排出流路22の最小流路断面積に比べて小さくなるように構成されている。これにより、吐出流路18に比べて、排出流路22の圧力損失が小さくなっている。
吐出流路18の分岐部20の下流には、制御部24に通信可能に接続されたポンプ26が設けられている。ポンプ26は、制御部24の指令に基づき吐出流路18を流れる水を加圧する。
吐出流路18のポンプ26の下流側には、制御部24に通信可能に接続された洗浄バルブ28が設けられている。洗浄バルブ28は、制御部24の指令に基づいて開閉し、吐出流路18への水の流入を制御する。
吐出流路18の洗浄バルブ28の下流側には、洗浄ノズル14が接続されており、吐出流路18を通って供給された殺菌水はこの洗浄ノズル14の吐出口から吐出される。これにより、洗浄ノズル14の胴体を殺菌洗浄することができる。
制御部24は、電解槽1を駆動させると、電解槽1の電解処理を行った時間の累計である累計電解時間Tを計測する。また、制御部24には、予め、ポールチェンジを実施するタイミングを決定するための所定の累積時間設定値TPCが設定されており、累計電解時間Tがこの累積時間設定値TPCに到達すると、電解槽1のポールチェンジを実施する。したがって、累積時間設定値TPCを短くすることで、電極板へのスケールの付着量を減らすことができる。スケールの付着量の観点からは、この累積時間設定値TPCは、例えば、電極板の間に印加する電圧が5Vの場合に60秒程度にするとよい。
また、制御部24には、予め、ポールチェンジ直後に、洗浄バルブ28を閉鎖するとともに排出バルブ30を開放する所定の排出時間設定値TOPが設定されている。この排水バルブ30を開放する排出時間設定値TOPは、図1を参照して説明したように、電極板2、4の間に印加する電圧が大きい場合には、ポールチェンジ直後から短時間でスケールが剥離するため、短くするとよく、電極板2、4の間に印加する電圧が小さい場合には、長くするとよい。
図5は、図3に示す衛生洗浄装置における殺菌洗浄中の各要素の動作を説明するための図であり、(A)は、電解槽1の電極板2、4の間に印加される電圧を示すグラフ、(B)は、制御部24により計測された電解槽1の累積電解時間を示すグラフ、(C)は、吐出流路を流れる水量を示すグラフ、(D)は、排出流路を流れる水量を示すグラフである。なお、図5(A)〜(D)のグラフは、横軸(時間軸)が一致するように記載されている。
制御部24により計測された累積電解時間が累積時間設定値TPCに達していない状態で、使用者による衛生洗浄装置の操作部(不図示)に殺菌洗浄を実施する旨の入力があると(すなわち、図5におけるt1、t3)、電解槽1を駆動するとともに、制御部24は、洗浄バルブ28を開放し、排出バルブ30を閉鎖する。これにより、図5(C)に示すように、電解槽1で生成された殺菌水は吐出流路18へ流れ込み、洗浄ノズル14の吐出口から排出され、洗浄ノズル14を殺菌洗浄することができる。そして、十分に洗浄ノズル14の殺菌洗浄が完了すると、t2、t4において殺菌洗浄を終了する。このt1〜t2及びt3〜t4の間、図5(B)に示すように、制御部24により測定される電解槽1の累計電解時間Tは増加する。
電解槽1においてポールチェンジを実施することにより、図5(A)に示すように、電極板2、4に印加される電圧が反転する。これにより、それまで陰極であった側の電極板2に付着していたスケールが剥離することとなる。これに対して、洗浄バルブ28が閉鎖されるとともに、排出バルブ30が開放されているため、殺菌電解水は排出流路22を通り便器のボウルへと排出される。これにより、スケールを含んだ殺菌水は便器のボウルへと排出され、洗浄ノズル14には流れ込まなくなるため、洗浄ノズル14の吐水口がスケールにより閉塞されることを防止できる。
そして、ポールチェンジから排出時間設定値TOP経過すると(すなわち、t=t6)、制御部24は、排出バルブ30を閉鎖するとともに、洗浄バルブ28を開放し、さらに、ポンプ26を作動させる。これにより、再び、洗浄ノズル14に殺菌水が供給され、洗浄ノズル14を殺菌洗浄することができる。
これにより、電解槽1においてより頻繁にポールチェンジを行うことが可能となり、長期的に安定して殺菌水を供給することができる。また、洗浄作用を有する殺菌水1が便器に排出されるため、便器を洗浄するための洗浄水を節水するとともに、便器自体の殺菌を行うことができる。
また、本実施形態によれば、吐出流路18が上方に向かって延びるように構成されているため、吐出流路18に比べて排出流路22の方が圧力損失が小さくなるとともに、吐出流路内18に存在する水が分岐部20に向かって逆流することとなり、吐出流路18に流れ込んだスケールを排出することができる。
さらに、本実施形態によれば、分岐部20から下方に延びるように排出流路22を設けることにより、重力により排出流路22へスケールを含む電解水が流れるのを促進することができ、吐出流路18へスケールを含む殺菌水が流れ込むのを抑止できる。
さらに、本実施形態の衛生洗浄装置では、吐出流路18に加圧ポンプ26が設けられているため、この加圧ポンプ26をポールチェンジ直後から排出時間設定値TOPの間、停止させることにより、吐出流路18に比べて排出流路22の方が圧力損失がより小さくなる。このため、排出バルブ30を開放させると、吐出流路18に比べて排出流路22に大量の殺菌水が流れ込むこととなり、吐出流路18に流れ込むスケールを含んだ殺菌水を減らすことができる。
また、上記の実施形態では、制御部24は、電解槽1のポールチェンジと同時に洗浄バルブ28を閉鎖し、排出バルブ30を開放することとしたが、これに限らず、ポールチェンジから所定時間内に電解槽1で生成された殺菌水を排出機構32により排出できればよい。すなわち、排出機構32が電解槽1から離れて設けられている場合には、ポールチェンジ後、所定時間経過してから洗浄バルブ28を閉鎖し、排出バルブ30を開放してもよい。
上記の如き電極基体41には、通常行われているように、予め前処理するのが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下、チタン基体ともいう)表面を、常法に従い、例えば、アルコール等で洗浄し及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1〜20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸、硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体41の表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体41の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお、粗面化を十分行うためにブラスト処理を併用してもよい。
ここで使用する白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物としては、いかに述べる条件下で分解してそれぞれ白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム及び酸化タンタルに転化しうる化合物が包含され、具体的には、白金化合物としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金等が挙げられ、特に塩化白金酸が好適である。また、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、硝酸イリジウム等が挙げられ、特に塩化イリジウム酸が好適である。さらに、ロジウム化合物としては、例えば、塩化ロジウム、硝酸ロジウム等が挙げられ、特に塩化ロジウムが好適である。タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられ、特にタンタルエトキシドが好適である。
低級アルコール溶液中における白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物の合計の濃度は、合計金属濃度換算で、一般に20〜200g/L、好ましくは40〜150g/Lの範囲内とすることができる。該金属濃度が20g/Lより低いと、触媒担持効率が悪くなり、また、200g/Lを超えると、触媒活性、担持強度、担持量の不均一性等の問題が生ずる可能性がある。
また、白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物の相対的使用割合は、金属換算で、白金化合物は一般に4モル%以上、好ましくは5〜10モル%、イリジウム化合物は一般に37〜57モル%、好ましくは42〜50モル%、ロジウム化合物は一般に3〜11モル%、好ましくは4〜9モル%、そしてタンタル化合物は一般に35モル%より多く53モル%以下、好ましくは42〜48モル%の範囲内とすることができる。
ここで、「白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体」とは、白金と酸化イリジウムと酸化ロジウムと酸化タンタルの4成分が相互作用を及ぼすように混合又は緊密に接触した状態にある組成物をいう。
この結果、触媒層43の酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比を0.10から1.85までとした電極板2、4による検証では、いずれの電流密度の場合でも、酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比が増加しても塩素生成量はほぼ横ばいで、0.6ppm程度か、あるいはそれを大きく上回った状態を維持することが判った。塩素生成量が0.6ppm以上であれば、結果的に衛生洗浄装置のノズルや便器の殺菌に使用される一般的な殺菌水生成装置としては、初期性能として十分な濃度の次亜塩素酸が得られることが本発明者らの検討により判明している。
また、触媒層43の酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比を0.10より小さくして作製した電極2、4では、使用前から酸化イリジウムの脱離が視認できるほど担持力が極端に弱く、十分な性能と寿命を得られるものではないことが明らかで、本検証のような通電による検証を行うまでもなく実用性が無いと判断できるものであった。これらの検証結果より、次亜塩素酸の生成能の観点からは、触媒層43の酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比は0.10から2.31までとすることが好ましいといえる。
この結果、触媒層43の酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比を0.10から1.38までの電極板2、4による検証では、酸化イリジウムに対する酸化タンタルのモル比が増加するほど耐久時間は著しく向上するという傾向があることが判った。これは、酸化タンタルの増加によって酸化イリジウムの担持力が向上し、酸化イリジウムの脱離が抑制されることで、電解性能が長時間高い状態で維持された結果と考えられる。
また、触媒層43の酸化タンタルの含有率は、42モル%から48モル%の範囲とすることが更に望ましい。十分な殺菌性能を確保しつつ、小型で高寿命な良好なバランスとできる実用上優れた殺菌水生成装置を提供できるからである。
また、電極板2、4間には、12A/dm2〜17A/dm2の電流密度で通電するよう構成することが更に望ましい。これによれば、十分な殺菌性能を確保しつつ、更に小型で高寿命な最適バランスとなる実用上優れた殺菌水生成装置を提供できるからである。電極板2、4間の触媒層43の酸化タンタルの含有率を42モル%から48モル%の範囲とし、且つ、通電の際の電流密度を12A/dm2〜17A/dm2のとすることで、塩素生成量は図7で破線で示す2.0ppmのラインを上回る高いレベルを発揮しつつも、図8において破線で示す500時間のラインを上回る耐久時間を発揮する、極めて実用性と汎用性の高い電極を得ることができる。また、これまで耐久時間を延ばすために用いられていた白金の含有量を小さくすることが可能になるため、低コスト化にも寄与する。
この結果、電極板2、4間に通電する電流密度を500A/m2〜1000A/m2(5A/dm2〜10A/dm2)のとした場合には、電流密度が増加するほど電極寿命は著しく向上するという傾向があることが判った。なお、500A/m2未満の低電流密度では、そもそも0.6ppm以上の塩素は生成されない。
一方、電極板2、4間に通電する電流密度が1000A/m2(10A/dm2)を越えると、電極寿命は逆に低下する傾向にあることが判った。これは、高電流密度となることによって酸化イリジウムの劣化が促進されたものと考えられる。
このことからも、電極板2、4間の電流密度は7A/dm2〜20A/dm2であることが好ましい。
JIS1種相当のチタン基体(t0.5mm×w100mm×l100mm)をアルコールで洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間、そして120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間浸漬した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取り出し、冷水を噴霧して急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。水洗後、400℃の大気中で1時間加熱処理して、チタン基体表面に薄い酸化チタンの層を形成させた。
次いで、ロジウム濃度100g/Lに調整した塩化ロジウムのブタノール溶液と、イリジウム濃度200g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液と、タンタル濃度200g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と、白金濃度200g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液とをPt−Ir−Rh−Taの組成比が下記表1に示すモル%となるようにそれぞれ秤量し、次いでIrの金属換算濃度が50g/Lとなるようにブタノールにて希釈して塗布液を調製した。
この溶液をピペットで0.27ml秤量し、それを該酸化チタンの層に塗布した後室温で20分間乾燥した。乾燥後、さらに550℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を6回繰り返し、該酸化チタンの層上に白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体が担持された表1に示す電極を作製した。
電極板で電気分解が行われる際の一般的なメカニズムとして、ポールチェンジを行う前に塩素を生成していた陽極側の電極板が、ポールチェンジを行うことにより陰極側へと極性が変化する。すると、陽極であった時とは異なる反応が電極表面で生じることにより、電極の劣化が促進される。具体的には、電極板の触媒層に存在する4価のイリジウムを有する酸化イリジウム(IrO2)が還元されることにより、3価のイリジウムを有する酸化イリジウム(Ir2O3)となって溶出する。通常はこの反応が触媒層の極表面から徐々に生じることにより、触媒層の極表面において触媒としての機能を果たす酸化イリジウムが段階的に溶出して減少し、塩素生成量が少なくなることで電極板の劣化が進行すると考えられる。そして、そのメカニズムを表す陰極側電極板の表面において生じる反応を式(1)に示す。また、ここでいう「極表面」とは、触媒層の最表面に位置する分子の層をいう。
IrO2+2H++2e-⇒Ir2O3+H2O ・・・(1)
一方で、本発明での実施例にあたる図11では、触媒層中の酸化タンタルを所定量増量(35モル%より多く)している。この状態を模式的に表したのが図11(A)であるが、こうすることで、酸化タンタルがチタン基体41と酸化イリジウムの間の担持力を高めるものである。
なお、先に述べたように、酸化タンタルを過多に増量させた場合(58モル%以上)には、触媒層の酸化イリジウムの多くが酸化タンタルによって被覆され、酸化イリジウムの触媒としての機能が大きく損なわれると推測される。このため、酸化タンタルを増量させるには、所定の範囲内での増量が好適である。
この図12において、酸化タンタルを多く含有させた電極板を高い電流密度の状態で通電し、ポールチェンジを行うまでの通電時間が60秒と設定された比較例について説明する。
通電時間が60秒と比較的長い場合には、電極板近傍のpHが偏るものである。このため、ポールチェンジを行う前の陽極側近傍のpHが低くなる。それが、金属を腐食させやすい環境となり、酸化イリジウムの脱離が顕著となることが考えられる。酸化イリジウムの脱離によって、残存する酸化イリジウムへの電荷集中と劣化がさらに促進されると考えられる。
そこで、本発明においては、酸化タンタルを多く含有させた電極板2、4に高い電流密度の状態で通電し、ポールチェンジを行うまでの一定の通電時間を30秒と短くした。これにより、酸化タンタルの含有量を増加させた電極板でポールチェンジを行っても、酸化イリジウムの脱離と、酸化イリジウムの脱離に伴う触媒劣化を抑制することができる。
さらにまた、ポールチェンジを行う前の陽極側近傍のpHが偏ることを防止することができ、金属が腐食しにくい環境下でポールチェンジを行うことができ、酸化タンタルを増加させたことによる性能劣化や、酸化イリジウムへの電荷が集中し続けることによる劣化促進を抑制できる。
そこで、本発明においてより好ましくはポールチェンジを行うまでの一定の通電時間を4〜15秒としたことにより、触媒総に酸化タンタルを多く含有する電極板であっても、高い塩素生成性能を確保しながらにして、酸化イリジウムへの電荷集中を抑制し、酸化イリジウムの脱離を抑制することが可能となる。
さらには、ポールチェンジを行う前の陽極側近傍のpHが小さくなり過ぎることを防止することができ、ある一定の塩素生成能力を確保しながらも、金属が腐食しにくい環境下でポールチェンジを行うことができ、酸化タンタルを増加させたことによる性能劣化や、酸化イリジウムへの電荷集中による劣化促進を抑制でき、十分な殺菌性能を確保しつつ高寿命な最適なバランスを持った殺菌水生成装置を提供することが可能となる。
2、4 電極板
10 流路系統
12 給水源
14 洗浄ノズル
16 流路
18 吐出流路
20 分岐部
22 排出流路
24 制御部
26 ポンプ
28 洗浄バルブ
30 排出バルブ
32 排出機構
41 チタン基体(電極基体)
42 中間層
43 触媒層
100 衛生洗浄装置
110 洋式便器
120 便器
Claims (7)
- 塩化物イオンを含む水を直接電解して陽極に塩素を発生させ、この塩素と水の反応により次亜塩素酸の殺菌水を生成する殺菌水生成装置において、
塩化物イオンを含む水が通過する電解槽内に設けられた、チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に触媒層を設けた電極と、
前記電極に通電し次亜塩素酸を前記電解層内に生成させる制御手段を備え、
前記電極の触媒層は、少なくとも酸化イリジウム及び酸化タンタルを含む、金属及び/又は金属酸化物の複合体として構成され、
前記複合体はさらに酸化ロジウムを含有してなり、
前記複合体は、金属換算で、酸化タンタルを35モル%よりも多く含有し、かつ、酸化イリジウムに対してモル比で0.92〜1.85倍及び酸化ロジウムに対してモル比で7〜13倍の酸化タンタルを含有してなり、
前記制御手段は、前記電極に対して電流密度7A/dm2〜20A/dm2で通電するよう構成されていることを特徴とする殺菌水生成装置。 - 塩化物イオンを含む水を直接電解して陽極に塩素を発生させ、この塩素と水の反応により次亜塩素酸の殺菌水を生成する殺菌水生成装置において、
塩化物イオンを含む水が通過する電解槽内に設けられた、チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に触媒層を設けた電極と、
前記電極に通電し次亜塩素酸を前記電解層内に生成させる制御手段を備え、
前記電極の触媒層は、少なくとも酸化イリジウム及び酸化タンタルを含む、金属及び/又は金属酸化物の複合体として構成され、
前記複合体はさらに酸化ロジウムを含有してなり、
前記複合体は、金属換算で、酸化タンタルを35モル%よりも多く含有し、かつ、酸化イリジウムに対してモル比で0.92〜1.85倍の酸化タンタルを含有してなり、
前記制御手段は、前記電極に対して電流密度7A/dm 2 〜20A/dm 2 で通電するよう構成されており、
前記複合体はさらに白金を含有し、金属換算で、白金4モル%以上、酸化イリジウム28〜38モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル35モル%より多く53モル%以下含有してなる、殺菌水生成装置。 - 前記触媒層の酸化タンタルは、42〜48モル%配合されていることを特徴とする請求項2記載の殺菌水生成装置。
- 前記制御手段は、前記電極に対して電流密度12A/dm2〜17A/dm2で通電するよう構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の殺菌水生成装置。
- 前記電解槽に供給される塩化物イオンを含む水は、水を循環させない流水式として構成されていることを特徴とする請求項4記載の殺菌水生成装置。
- 前記制御手段は、前記電極に対して30秒以内の間隔で電極の陽極と陰極とを切り替えるポールチェンジを実行するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の殺菌水生成装置。
- 前記制御手段は、前記電極に対して4〜15秒間隔で電極の極性を陽極と陰極とで切り替えるポールチェンジを実行するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の殺菌水生成装置。
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