以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下で説明する実施形態に係るエンコーダは、回転型(ロータリタイプ)や直線型(リニアタイプ)など様々なタイプのエンコーダに適用可能である。以下では、エンコーダの理解が容易になるように、回転型のエンコーダを例に挙げて説明する。他のタイプのエンコーダに適用する場合には、被測定対象を回転型のディスクから直線型のリニアスケールに変更するなど適切な変更を加えることにより可能であるので、詳しい説明は省略する。
<1.サーボシステム>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係るエンコーダを備えたサーボシステムの構成について説明する。図1に示すように、サーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。モータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMという。つまり、サーボモータSMはエンコーダ付きモータの一例に相当する。以下では、説明の便宜上、エンコーダ付きモータが、位置や速度等の目標値に追従するように制御されるサーボモータである場合について説明するが、必ずしもサーボモータに限定されるものではない。エンコーダ付きモータは、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設さえされていれば、サーボシステム以外に用いられるモータをも含むものである。
また、モータMは、例えば位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば、特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力側とは反対側に連結される。但し、必ずしも反対側に限定されるものではなく、エンコーダ100はシャフトSHの回転力出力側に連結されてもよい。エンコーダ100は、シャフトSH(回転子)の位置を検出することにより、モータMの位置(回転角度ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号(例えば後述するインクリメンタル信号)を所定の時間カウントするなどの処理により検出することが可能である。説明の便宜上、以下ではエンコーダ100が検出する物理量は位置であるとして説明する。
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいてモータMに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータMの回転を制御する。更に、制御装置CTは、上位制御装置(図示せず)から上位制御信号を取得して、当該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がモータMのシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することにより、モータMの回転を制御することが可能である。
<2.エンコーダ>
次に、本実施形態に係るエンコーダ100について説明する。図2に示すように、エンコーダ100は、ディスク110と、光学モジュール120と、制御部130とを有する。
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を以下のように定め、適宜使用する。図2において、ディスク110が光学モジュール120と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」とし、Z軸負の方向を「下」とする。但し、該方向はエンコーダ100の設置態様によって変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
(2−1.ディスク)
ディスク110は、図3に示すように円板状に形成され、ディスク中心Oが軸心AXとほぼ一致するように配置される。ディスク110は、モータMのシャフトSHに連結され、シャフトSHの回転により回転する。なお、本実施形態では、モータMの回転を測定する被測定対象の例として、円板状のディスク110を例に挙げて説明するが、例えば、シャフトSHの端面などの他の部材を被測定対象として使用することも可能である。また、図2に示す例では、ディスク110がシャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介して連結されてもよい。
図3に示すように、ディスク110は、複数のパターンSA1,SA2,SIを有する。ディスク110はモータMの駆動と共に回転するが、光学モジュール120は、ディスク110の一部に対向しつつ固定して配置される。従って、パターンSA1,SA2,SIと、光学モジュール120とは、モータMの駆動に伴い、互いに測定方向(図3に示す矢印Cの方向。以下適宜「測定方向C」と記載する。)に相対移動する。
ここで、「測定方向」とは、光学モジュール120でディスク110に形成された各パターンを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110の中心軸を中心とした円周方向に一致するが、例えば被測定対象がリニアスケールであり、可動子が固定子に対して移動する直線型のエンコーダにおいては、測定方向はリニアスケールに沿った方向となる。なお、「中心軸」とはディスク110の回転軸心であり、ディスク110とシャフトSHが同軸に連結される場合にはシャフトSHの軸心AXと一致する。
(2−2.光学検出機構)
パターンSA1,SA2,SIと光学モジュール120とによって光学検出機構が構成される。各パターンは、ディスク110の上面にディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成される。各パターンは、トラックの全周にわたって、測定方向Cに沿って並べられた複数の反射スリット(図4における斜線ハッチング部分)を有する。1つ1つの反射スリットは、光源121から照射された光を反射する。
(2−2−1.パターン)
ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の表面における光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)を塗布等により配置することで、配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
なお、ディスク110の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の表面に光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着等によって配置することにより、反射スリットが形成可能である。
パターンは、ディスク110の上面において幅方向(図3に示す矢印Rの方向。以下適宜「幅方向R」と記載する。)に3本併設される。なお、「幅方向」とは、ディスク110の半径方向、すなわち測定方向Cと略垂直な方向であり、この幅方向Rに沿った各パターンの長さが各パターンの幅に相当する。3本のパターンは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI,SA2の順に同心円状に配置される。各パターンについてより詳細に説明するために、ディスク110の光学モジュール120と対向する領域近傍の部分拡大図を図4に示す。
(2−2−1−1.アブソリュートパターン)
図4に示すように、パターンSA1,SA2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cでアブソリュートパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。これらパターンSA1,SA2が第2パターンの一例に相当する。
なお、「アブソリュートパターン」とは、後述する光学モジュール120が有する受光アレイが対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。つまり、例えば、図4に示すアブソリュートパターンの例の場合、モータMがある角度位置となっている場合に、対向した受光アレイの複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンの組み合わせが、その角度位置の絶対位置を一義に表すことになる。なお、「絶対位置」とは、ディスク110の1回転内での原点に対する角度位置をいう。原点は、ディスク110の1回転内での適宜の角度位置に設定され、この原点を基準としてアブソリュートパターンが形成される。
なお、このパターンの一例によれば、モータMの絶対位置を、受光アレイの受光素子数のビットにより、一次元的に表すようなパターンを生成できる。しかし、アブソリュートパターンは、この例に限定されるものではない。例えば、受光素子数のビットにより多次元的に表すパターンであってもよい。また、所定のビットパターン以外にも、受光素子で受光する光量や位相などの物理量が絶対位置を一義的に表すように変化するパターンや、アブソリュートパターンの符号系列が変調を施されたパターン等であってもよく、その他、様々なパターンであってもよい。
なお、本実施形態では、同様のアブソリュートパターンが、測定方向Cで例えば1ビットの1/2の長さだけオフセットされて、2本のパターンSA1,SA2として形成される。このオフセット量は、例えばパターンSIの反射スリットのピッチPの半分に相当する。仮に、このようにパターンSA1,SA2をオフセットさせた構成としない場合、次のような可能性がある。つまり、本実施形態のような一次元的なアブソリュートパターンにより絶対位置を表す場合、受光アレイPA1,PA2の各受光素子Paが反射スリットの端部近傍に対向して位置することによるビットパターンの変わり目の領域において、絶対位置の検出精度が低下する可能性がある。本実施形態では、パターンSA1,SA2をオフセットさせるので、例えば、パターンSA1による絶対位置がビットパターンの変わり目に相当する場合には、パターンSA2からの検出信号を使用して絶対位置を算出したり、その逆を行うことにより、絶対位置の検出精度を向上できる。なお、このような構成とする場合、2つの受光アレイPA1,PA2における受光量を均一にする必要があるが、本実施形態では2つの受光アレイPA1,PA2を光源121からほぼ等しい距離に配置するので、上記構成を実現できる。
なお、パターンSA1,SA2の各アブソリュートパターン同士をオフセットさせる代わりに、例えば、アブソリュートパターン同士はオフセットさせずに、パターンSA1,SA2それぞれに対応した受光アレイPA1,PA2同士をオフセットさせてもよい。
また、アブソリュートパターンは必ずしも2本形成される必要はなく、1本のみとしてもよい。但し、以下では、説明の便宜上、2本のパターンSA1,SA2が形成された場合について説明する。
(2−2−1−2.インクリメンタルパターン)
一方、パターンSIが有する複数の反射スリットは、測定方向Cでインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。このパターンSIが第1パターンの一例に相当する。
「インクリメンタルパターン」とは、図4に示すように、所定のピッチで規則的に繰り返されるパターンである。ここで、「ピッチ」とはインクリメンタルパターンを有するパターンSIにおける各反射スリットの配置間隔をいう。図4に示すように、パターンSIのピッチはPである。インクリメンタルパターンは、複数の受光素子による検出の有無それぞれをビットとして絶対位置を表すアブソリュートパターンと異なり、少なくとも1以上の受光素子による検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの位置を表す。従って、インクリメンタルパターンは、モータMの絶対位置を表すものではないが、アブソリュートパターンに比べると非常に高精度に位置を表すことが可能である。
なお、本実施形態では、パターンSA1,SA2の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さは、パターンSIの反射スリットのピッチPと一致する。その結果、パターンSA1,SA2に基づくアブソリュート信号の分解能は、パターンSIの反射スリットの数と一致する。しかしながら、最小長さは、この例に限定されるものではなく、パターンSIの反射スリットの数はアブソリュート信号の分解能と同じかそれよりも多く設定されることが望ましい。
(2−2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、図2及び図5に示すように、ディスク110と平行な一枚の基板BAとして形成される。これにより、エンコーダ100を薄型化したり、光学モジュール120の製造を容易にすることが可能である。従って、ディスク110の回転に伴い、光学モジュール120は、パターンSA1,SA2,SIに対して測定方向Cで相対移動する。なお、光学モジュール120は必ずしも一枚の基板BAとして構成される必要はなく、各構成が複数の基板として構成されてもよい。この場合、それらの基板が集約して配置されていればよい。また、光学モジュール120は基板状でなくともよい。
光学モジュール120は、図2及び図5に示すように、基板BAのディスク110と対向する面上に、光源121と、複数の受光アレイPA1,PA2,PIL,PIR,PD1,PD2とを有する。
(2−2−2−1.光源)
図3に示すように、光源121は、パターンSIと対向する位置に配置される。そして、光源121は、光学モジュール120の対向する位置を通過する3つのパターンSA1,SA2,SIの対向した部分に光を出射する。
光源121としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源121は、対向した位置を通過する3つのパターンSA1,SA2,SIにほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、パターンへの光の直進性を高める事が可能である。
(2−2−2−2.投影像の拡大率)
複数の受光アレイは、光源121の周囲に配置され、対応付けられたパターンの反射スリットで反射された光を各々受光する複数の受光素子(図5のドットハッチング部分)を有する。複数の受光素子は、図5に示すように、測定方向Cに沿って並べられる。
なお、光源121から出射される光は拡散光である。従って、光学モジュール120上に投影されるパターンの像は、光路長に応じた所定の拡大率εだけ拡大されたものとなる。つまり、図4及び図5に示すように、パターンSA1,SA2,SIそれぞれの幅方向Rの長さをWSA1,WSA2,WSIとし、それらの反射光が光学モジュール120に投影された形状の幅方向Rの長さをWPA1,WPA2,WPIとすると、WPA1,WPA2,WPIは、WSA1,WSA2,WSIのε倍の長さとなる。なお、本実施形態では、図5に示すように、各受光アレイの受光素子の幅方向Rの長さは、各スリットが光学モジュール120に投影された形状とほぼ等しく設定されている例を示している。しかし、受光素子の幅方向Rの長さは、必ずしもこの例に限定されるものではない。
同様に、光学モジュール120における測定方向Cも、ディスク110における測定方向Cが光学モジュール120に投影された形状、つまり拡大率εの影響を受けた形状となる。理解が容易になるように、図2に示すように光源121の位置における測定方向Cを例に挙げて、具体的に説明する。ディスク110における測定方向Cは、軸心AXを中心とした円状になる。これに対して、光学モジュール120に投影された測定方向Cの中心は、光源121が配置されたディスク110の面内位置である光学中心Opから距離εLだけ離隔した位置となる。距離εLは、軸心AXと光学中心Opとの間の距離Lが拡大率εで拡大された距離である。この位置を図2では、概念的に測定中心Osとして示している。従って、光学モジュール120における測定方向Cは、光学中心Opから当該光学中心Opと軸心AXとが乗るライン上を軸心AX方向に距離εL離れた測定中心Osを中心とし、距離εLを半径とするライン上となる。
図4及び図5では、ディスク110及び光学モジュール120の各々における測定方向Cの対応関係を、円弧状のラインLcd,Lcpで表す。図4に示すラインLcdは、ディスク110上の測定方向Cに沿った線を表す一方、図5に示すラインLcpは、基板BA上の測定方向Cに沿った線(ラインLcdが光学モジュール120上に投影された線)を表す。
図2に示すように、光学モジュール120とディスク110との間のギャップ長をGとし、光源121の基板BAからの突出量をΔdとした場合、拡大率εは、下記(式1)で示される。
ε=(2G−Δd)/(G−Δd) …(式1)
(2−2−2−3.アブソリュート用、インクリメンタル用の受光アレイ)
1つ1つの受光素子としては、例えばフォトダイオードを使用することができる。但し、フォトダイオードに限定されるものではなく、光源121から出射された光を受光して電気信号に変換可能なものであれば、特に限定されるものではない。
本実施形態における受光アレイは、3本のパターンSA1,SA2,SIに対応して配置される。受光アレイPA1は、パターンSA1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPA2は、パターンSA2で反射した光を受光するように構成される。また、受光アレイPIL,PIR及び受光アレイPD1,PD2は、パターンSIで反射した光を受光するように構成される。受光アレイPIL,PD1と受光アレイPIR,PD2とは途中で分割されているが、同一トラックに対応する。このように、1つのパターンに対応した受光アレイは1つに限らず、複数であってもよい。
光源121と、受光アレイPA1,PA2と、受光アレイPIL,PIRとは、図5に示す位置関係に配置される。アブソリュートパターンに対応する受光アレイPA1,PA2は、幅方向Rにおいて光源121を間に挟んで配置される。この例では、受光アレイPA1は内周側、受光アレイPA2は外周側に配置される。本実施形態では、受光アレイPA1,PA2と光源121との距離は略等しくなっている。そして、受光アレイPA1,PA2が有する複数の受光素子Paは、それぞれ測定方向C(ラインLcp)に沿って一定のピッチで並べられる。受光アレイPA1,PA2では、それぞれパターンSA1,SA2からの反射光が受光されることにより、受光素子数のビットパターンを有するアブソリュート信号が生成される。
インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPIL,PIRは、測定方向Cにおいて光源121を間に挟んで配置される。具体的には、受光アレイPIL,PIRは、光源121を含むY軸に平行な線を対称軸として線対称となるように配置され、受光アレイPA1,PA2の各々は、上記対称軸を中心に線対称な形状となっている。光源121は、測定方向Cに1トラックとして配置された受光アレイPIL,PIRの間に配置される。
本実施形態ではアブソリュートパターンとして一次元的なパターンを例示しているので、それに対応した受光アレイPA1,PA2は、対応付けられたパターンSA1,SA2の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数(本実施形態では例えば9)の受光素子Paを有する。この複数の受光素子Paでは、上述のとおり、1つ1つの受光又は非受光がビットとして扱われ、9ビットの絶対位置を表す。従って、複数の受光素子Paそれぞれが受光する受光信号は、制御部130が備える位置データ生成部131(図2参照)において相互に独立して取り扱われて、シリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置が、これらの受光信号の組み合わせから復号される。この受光アレイPA1,PA2の受光信号を、「アブソリュート信号」という。このアブソリュート信号が位置データに関わる第2受光信号の一例に相当し、これを出力する受光素子Paが第2受光素子の一例に相当し、複数の受光素子Paを備えた受光アレイPA1,PA2が第2受光部の一例に相当する。なお、本実施形態とは異なるアブソリュートパターンが使用される場合には、受光アレイPA1,PA2は、そのパターンに対応した構成となる。
受光アレイPIL,PIRは、対応付けられたパターンSIの反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数の受光素子Piを有する。
本実施形態では、パターンSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P。)中に、合計4個の受光素子Piのセット(図5に「SET」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子Piのセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。そして、インクリメンタルパターンは、1ピッチ毎に反射スリットが繰り返し形成されるので、各受光素子Piは、ディスク110が回転する場合、1ピッチで1周期(電気角で360°という。)の周期信号を生成する。そして、1ピッチに相当する1セット中に4つの受光素子Piが配置されるので、1セット内の相隣接する受光素子同士は、相互に90°の位相差を有する周期信号であるインクリメンタル相信号を出力することになる。各インクリメンタル相信号をA+相信号、B+相信号(A+相信号に対する位相差が90°)、A−相信号(A+相信号に対する位相差が180°)、B−相信号(B+相信号に対する位相差が180°)と呼ぶ。
インクリメンタルパターンは1ピッチ中の位置を表すので、1セット中の各位相の信号と、それと対応した他のセット中の各位相の信号とは、同様に変化する値となる。従って、同一位相の信号は、複数のセットにわたって加算される。従って、図5に示す受光アレイPIの多数の受光素子Piからは、位相が90°ずつずれる4つの信号が検出されることとなる。従って、受光アレイPIL,PIRから位相が90°ずつずれる4つの信号がそれぞれ生成される。この4つの信号を、「インクリメンタル信号」という。このインクリメンタル信号が、位置データに関わる第3受光信号の一例に相当し、これを出力する受光素子Piが第3受光素子の一例に相当し、複数の受光素子Piを備えた受光アレイPIL,PIRが第3受光部の一例に相当する。
なお、本実施形態では、インクリメンタルパターンの1ピッチに相当する1セットには受光素子Piが4つ含まれ、受光アレイPIL及び受光アレイPIRのそれぞれが同様の構成のセットを有する場合を一例として説明するが、例えば1セットに2つの受光素子Piが含まれる等、1セット中の受光素子数は特に限定されるものではない。また、受光アレイPIL,PIRが各々異なる位相の受光信号を取得するように構成されてもよい。
(2−2−2−4.光量調整用の受光アレイ)
上述のように、受光アレイPA1,PA2では、複数の受光素子Paそれぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる性質上、受光アレイPA1,PA2での受光量が変動すると絶対位置の誤検出が生じやすくなるので、受光量は一定であることが望ましい。しかし、この受光量は、光学モジュール120とディスク110との間のギャップ(ギャップ長G)の変動等によって変動する場合がある。また、光源121として例えばLEDを用いる場合には、発光量が温度変化によって変動する性質があることから、エンコーダ100の周囲温度の変動によっても受光量が変動する場合がある。
そこで、本実施形態では、図5に示すように、光学モジュール120は、各々複数の受光素子Pdを備えた2つの光量調整用の受光アレイPD1,PD2を有する。受光アレイPD1,PD2はそれぞれ、光源121から出射されパターンSIで反射された光を受光して受光信号を出力する複数の受光素子Pdを備える。複数の受光素子Pdは、測定方向Cに沿ってパターンSIに対応したピッチで並べられ、各受光素子Pdが出力する受光信号は相互に位相差を有する。
なお、受光アレイPD1,PD2の構成態様は、上記に限定されるものではない。各受光素子Pdが相互に位相差を有する受光信号を出力可能であれば、それぞれが必ずしも分離されている必要はなく、例えばその一部又は全部が接続された構成でもよい。但し、以下では、説明の便宜上、各受光素子Pdが分離配置された場合について説明する。
また、受光アレイPD1,PD2の各々は、光源121(詳細には光源121の光軸。以下同様。)から該受光アレイPD1,PD2の各々の中心位置cb1,cb2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、等しくなる位置に配置される。なお、ここでいう「等しくなる」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「等しくなる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に等しくなる」という意味である。言い換えれば、受光アレイPD1,PD2と受光アレイPA1,PA2とは、各々の中心位置cb1,cb2及び中心位置ca1,ca2が、光源121を中心とする仮想的な円VCにほぼ沿うように配置される。
なお、中心位置cb1,cb2は、受光アレイPD1,PD2の実質的な中心位置であればよい。ここでいう「実質的な中心位置」とは、例えば、受光アレイPD1,PD2それぞれが有する複数の受光素子Pdを1つの塊として見た場合の平面図形(言い換えれば、複数の受光素子Pdの最も外側に位置する周縁を結んだ略四角形状の輪郭を有する平面図形)の重心位置、あるいはその図形の上記中心位置等となる。受光アレイPA1,PA2の中心位置ca1,ca2も同様である。受光アレイPA1,PA2それぞれが有する複数の受光素子Paを1つの塊として見た場合の平面図形(言い換えれば、複数の受光素子Paの最も外側に位置する周縁を結んだ略扇形状の輪郭を有する平面図形)の重心位置、あるいはその図形の上記中心位置等となる。
なお、受光アレイPD1,PD2の配置態様は、上記に限定されるものではない。つまり、受光アレイPD1,PD2の各々は、光源121から中心位置cb1,cb2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、異なる位置に配置されてもよい。但し、以下では、説明の便宜上、各受光アレイPA1,PA2,PD1,PD2の中心位置が光源121から等距離に配置された場合について説明する。
複数の受光素子Pdは、基板BA上に設けられた配線141によって出力端子140に接続されている。配線141は、一端が分岐されて受光アレイPD1,PD2を構成する複数の受光素子Pdの各々に接続され、他端が1つの出力端子140に接続されている。この配線141により、各受光素子Pdから出力された相互に位相差を有する複数の受光信号が加算される。なお、配線141が加算部の一例に相当する。
なお、配線141は図5に示す例に限定されるものではない。例えば、出力端子140を2つ設け、一端が分岐されて受光アレイPD1の受光素子Pdの各々に接続され、他端が一方の出力端子140に接続された配線141と、一端が分岐されて受光アレイPD2の受光素子Pdの各々に接続され、他端が他方の出力端子140に接続された配線141との、2つの配線141を設けてもよい。但しこの場合、出力端子が余分に必要となるので、図5に示す構成が好ましい。
なお、各受光素子Pdの受光信号の加算態様は、上記に限定されるものではない。例えば、複数の受光素子Pdの一部を接続して受光素子内で受光信号を加算するようにしてもよいし(後述の図9参照)、各受光素子Pdからの相互に位相差を有する複数の受光信号を個別に出力して回路側の信号処理によって加算してもよい(後述の図10、図11参照)。但し、以下では、説明の便宜上、配線141により各受光素子Pdの受光信号を加算する場合について説明する。
また、複数の受光素子Pdは、測定方向Cに沿って受光アレイPIL,PIRの複数の受光素子Piと同じピッチで並べられる。つまり、受光素子Pdは、パターンSIを受光アレイPD1,PD2上に投影した像の配置ピッチ(ε×P)中に4つ並べられている。そして、受光アレイPD1,PD2の各々は、測定方向Cの長さが、上記配置ピッチ(ε×P)の整数倍となるように形成される。この例では、受光アレイPD1,PD2の各々の測定方向Cの長さは配置ピッチ(ε×P)の1倍であり、つまり受光アレイPD1,PD2は各々4つの受光素子Pdを有している。
なお、受光アレイPD1,PD2の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、受光素子Pdを受光素子Piと異なるピッチで配置してもよいし、受光アレイPD1,PD2の測定方向Cの長さを上記配置ピッチ(ε×P)の2倍以上、あるいは、整数倍以外としてもよい。また例えば、2つの受光アレイPD1,PD2の測定方向Cの長さの合計が上記配置ピッチの整数倍となるようにしてもよい。また、受光アレイPD1,PD2の各々の受光素子Pdの数は4に限定されるものではない。但し、以下では、説明の便宜上、受光アレイPD1,PD2が上記構成態様である場合について説明する。
また、受光アレイPD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRに対し測定方向Cに沿った位置に配置されている。つまり、受光アレイPD1,PD2と受光アレイPIL,PIRとは、パターンSIに対応した同一トラック上に配置されている。そして、受光アレイPD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRの測定方向Cにおける両側に、光源121の光軸を通り測定方向Cと略垂直な幅方向Rに平行な線を対称軸として線対称となるように配置される。また、受光アレイPD1,PD2は、測定方向Cの寸法(ε×P)及び幅方向Rの寸法(WPI)が互いに等しく、略同一形状となるように形成される。
なお、受光アレイPD1,PD2の構成態様は、上記に限定されるものではない。例えば、受光アレイPD1,PD2と受光アレイPIL,PIRとが別々のトラックとなるように配置されてもよいし、受光アレイPD1,PD2のいずれか一方を受光アレイPIL,PIRの測定方向Cにおける片側に配置してもよい。また、受光アレイPD1,PD2を互いに異なる形状としてもよい。また、図5では、受光アレイPD1,PD2の幅方向Rの長さが受光アレイPIL,PIRとほぼ等しく設定されている例を示しているが、受光アレイPD1,PD2の幅方向Rの長さはこの例に限定されるものではない。但し、以下では、説明の便宜上、受光アレイPD1,PD2が上記構成態様である場合について説明する。
上記構成により、受光アレイPD1,PD2は、パターンSIからの反射光を受光して受光アレイPA1,PA2で受光する光量を調整するための信号を出力する。具体的には、受光アレイPD1,PD2の各々の4つの受光素子Pdは、受光アレイPIL,PIRの受光素子Piと同様に、相互に90°の位相差を有する受光信号を生成する。これらの受光信号が第1受光信号の一例に相当し、これを出力する受光素子Pdが第1受光素子の一例に相当し、複数の受光素子Pdを備えた受光アレイPD1,PD2が第1受光部の一例に相当する。そして、8つの受光素子Pdが配線141によって出力端子140に並列接続されているので、90°ずつ位相がずれた8(2組×4)の周期信号が重畳され加算された受光信号が出力端子140に出力される。以下適宜、この受光信号を「光量調整信号」という。
(2−3.制御部)
図2に示すように、制御部130は、位置データ生成部131と、発光量調整部132とを有する。位置データ生成部131は、モータMの絶対位置を測定するタイミングにおいて、光学モジュール120から、第1絶対位置を表すビットパターンをそれぞれ備えた2つのアブソリュート信号と、位相が90°ずつずれる4つの信号を含むインクリメンタル信号とを取得する。そして、位置データ生成部131は、取得した信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの第2絶対位置を算出し、算出した第2絶対位置を表す位置データを制御装置CTに出力する。
なお、位置データ生成部131による位置データの生成方法は、様々な方法が使用可能であり、特に限定されるものではない。ここでは、インクリメンタル信号とアブソリュート信号とから絶対位置を算出し位置データを生成する場合を例にとって説明する。
位置データ生成部131は、受光アレイPA1,PA2からのアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換する。そして、予め定められたビットデータと絶対位置との対応関係に基づいて、第1絶対位置を特定する。つまり、ここでいう「第1絶対位置」とは、インクリメンタル信号を重畳する前の低分解能である絶対位置である。一方、受光アレイPIL,PIRからの4つの位相それぞれのインクリメンタル信号のうち、180°位相差のインクリメンタル信号同士を相互に減算する。このように180°位相差のある信号を減算することで、1ピッチ内の反射スリットの製造誤差や測定誤差などを相殺可能である。上述のように減算された結果の信号を、ここでは「第1インクリメンタル信号」及び「第2インクリメンタル信号」という。この第1インクリメンタル信号及び第2インクリメンタル信号は相互に電気角で90°の位相差を有する(単に「A相信号」、「B相信号」などという。)。そこで、この2つの信号から、位置データ生成部131は、1ピッチ内の位置を特定する。この1ピッチ内の位置の特定方法は、特に限定されない。例えば、周期信号であるインクリメンタル信号が正弦波信号である場合には、上記特定方法の例として、A相及びB相の2つの正弦波信号の除算結果をarctan演算することにより電気角φを算出する方法がある。あるいは、トラッキング回路を用いて2つの正弦波信号を電気角φに変換する方法もある。あるいは、予め作成されたテーブルにおいてA相及びB相の信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法もある。なおこの際、位置データ生成部131は、好ましくは、A相及びB相の2つの正弦波信号を各検出信号毎にアナログ−デジタル変換する。
位置データ生成部131は、アブソリュート信号に基づいて特定された第1絶対位置に、インクリメンタル信号に基づいて特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、アブソリュート信号に基づく第1絶対位置よりも高分解能な第2絶対位置を算出することができる。位置データ生成部131は、このようにして算出した第2絶対位置を逓倍処理して分解能をさらに向上させた後、高精度な絶対位置を表す位置データとして制御装置CTに出力する。
発光量調整部132は、2つの受光アレイPD1,PD2から出力される光量調整信号に基づいて光源121の発光量を調整する。具体的には、発光量調整部132は、2つの受光アレイPD1,PD2が出力する光量調整信号に基づき、受光量が減少した場合には、図示しない光源121の電流回路を制御し、光源121の電流を増加させて発光量を増大させる。一方、受光量が増大した場合には、光源121の電流を減少させて発光量を減少させる。これにより、発光量調整部132は、受光アレイPA1,PA2の受光量を略一定となるように調整する。
このような制御部130は、エンコーダ100に備えられたCPU901(後述の図11参照)が実行するプログラムと、エンコーダ100に備えられた制御回路907(後述の図11参照)と、エンコーダ100に備えられたASICやFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路909(後述の図11参照)と、の少なくともいずれかにより実装される。
なお、以上において、配線141及び発光量調整部132が、発光量調整手段の一例に相当すると共に、発光量調整装置の一例に相当する。
<3.本実施形態による効果の例>
以上説明したように、本実施形態のエンコーダ100は、測定方向Cに沿ってインクリメンタルパターンを有するように形成されたパターンSIと、パターンSIに光を出射するように構成された光源121と、光源121から出射されパターンSIで反射された光に基づく相互に位相差を有する複数の受光信号を加算する配線141と、加算された受光信号(光量調整信号)に基づいて、光源121の発光量を調整する発光量調整部132と、を有する。
受光信号は、光源121から出射されインクリメンタルパターンを有するパターンSIで反射された光に基づく信号であることから、周期的に振幅が変動する信号となる。このため、相互に位相差を有する複数の受光信号を加算することにより、加算された受光信号(光量調整信号)の振幅を略一定とすることが可能である。その結果、光量調整信号に基づいて光源121の発光量を調整することにより、光量フィードバック制御を精度良く行うことができる。したがって、エンコーダ100の検出精度を向上できる。
本実施形態による効果の一例を、図6に示す比較例と比較しつつ説明する。図6に示すように、比較例の光学モジュール120’では、光量調整用に2つの受光素子PD1’,PD2’が設けられている。この受光素子PD1’,PD2’の各々は、上記実施形態における受光アレイPD1,PD2のように受光素子が複数に分かれておらず、測定方向Cに沿ってパターンSIに対応したピッチ(ε×P)の長さを有する単一の受光素子として形成されている。受光素子PD1’,PD2’は、1つの配線142によって出力端子140に接続されている。その他の構成は上記実施形態と同様であり、図6において図5と同様の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7は、上記比較例におけるインクリメンタル相信号及び光量調整信号の一例を表す波形図である。なお、図に示す光量調整信号は、受光素子PD1’,PD2’から出力される信号を加算したものである。比較例の受光素子PD1’,PD2’は、測定方向Cの長さがピッチ(ε×P)の整数倍(この例では1倍)であることから、理論的には受光素子PD1’,PD2’から出力される受光信号は一定となる。しかし、光量調整用の受光部を単一の受光素子PD1’,PD2’として形成すると、図7に示すように、光量調整信号にリップル(脈動)が生じる。これは、受光素子PD1’,PD2’と受光アレイPIL,PIRとの間でクロストークが生じたり、周囲部品による散乱光や迷光等が受光素子PD1’,PD2’に入射すること等に起因するものと考えられる。
図8は、上記実施形態におけるインクリメンタル相信号及び光量調整信号の一例を表す波形図である。なお、図に示す光量調整信号は、受光素子PD1,PD2から出力される信号を加算したものである。本実施形態では、インクリメンタルパターンの反射光に基づく相互に位相差を有する複数の受光信号を加算することにより、上述した受光アレイPIL,PIRとの間に生じるクロストークや、周囲部品による散乱光や迷光等の影響を低減することが可能となり、図8に示すように、加算された受光信号(光量調整信号)の振幅を略一定とすることができる。
また、本実施形態において、受光アレイPD1,PD2が、測定方向Cに沿ってパターンSIに対応したピッチPで並べられた、光源121から出射されパターンSIを反射された光を受光して光量調整信号を出力するように構成された複数の受光素子Pdを備える構成とした場合には、次のような効果を得る。
上記構成により、受光アレイPD1,PD2を、複数の受光素子Pdの相互間に隙間を設けた構成とすることができる。この隙間により、上述した受光アレイPIL,PIRとの間に生じるクロストークや、周囲部品による散乱光や迷光等の影響を低減する効果をさらに高めることができ、光量調整信号のリップル(脈動)をさらに低減できる。
また、本実施形態において、受光アレイPD1,PD2を、光源121の光軸から受光アレイPA1,PA2の実質的な中心位置ca1,ca2までの距離が、上記光軸から受光アレイPD1,PD2の実質的な中心位置cb1,cb2までの距離と、実質的に等しくなる位置に配置した場合には、次のような効果を得る。
上記構成により、ギャップGの変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とを、ほぼ等しくすることができる。また、温度の変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とをほぼ等しくすることができる。これにより、ギャップ長Gの変動やエンコーダ100の周囲温度の変動が生じた場合でも、光量調整信号に基づいて光源121への電流制御を行い発光量を調整することにより、受光アレイPA1,PA2での受光量を精度良く一定に保持することができる。その結果、位置データの検出精度を高めることができるので、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
また、本実施形態において、一端が複数の受光素子Pdの各々に接続され、他端が1つの出力端子140に接続された配線141を用いて、複数の受光素子Pdから出力される相互に位相差を有する複数の受光信号を加算する場合には、受光信号を加算する回路や信号処理が不要となり、簡易な構成とすることができる。
また、本実施形態において、複数の受光素子Pdを、測定方向Cに沿って複数の受光素子Piと同じピッチで並べた場合には、次のような効果を得る。上記構成により、光量調整用の受光アレイPD1,PD2とインクリメンタル用の受光アレイPIL,PIRとを同じ構成とすることができるので、受光アレイPD1,PD2と受光アレイPIL,PIRを兼用することが可能となり、エンコーダ100の小型化やコスト削減等に資する。
また、本実施形態において、受光アレイPD1,PD2を、受光アレイPIL,PIRに対し測定方向Cに沿った位置に配置した場合には、次のような効果を得る。上記構成により、受光アレイPD1,PD2と受光アレイPIL,PIRをパターンSIに対応した同じトラック上に配置することができる。これにより、ディスク110及び光学モジュール120において光量調整用のトラックを別途設けなくて済むので、エンコーダ100を小型化できる。
また、本実施形態において、受光アレイPD1,PD2を、受光アレイPIL,PIRの測定方向Cにおける両側に、光源121の光軸を通り幅方向Rに平行な線を対称軸として線対称となるように配置した場合には、次のような効果を得る。
仮に、受光アレイPD1,PD2を非対称に配置した場合、光源121からの距離に応じて光量が減少する光量分布の特性により、両側の受光アレイPD1,PD2における受光量にアンバランスが生じる。この受光量のアンバランスは、両側の受光アレイPD1,PD2の光量調整信号を加算した信号におけるリップルの原因となる。これに対し、上記のように受光アレイPD1,PD2を線対称に配置することにより、両側の受光アレイPD1,PD2を光源121から等しい距離に配置することができる。これにより、上記受光量のアンバランスを低減でき、受光アレイPD1,PD2のリップルを低減できる効果をさらに高めることができる。
また、本実施形態において、2つの受光アレイPD1,PD2を、測定方向Cの寸法及び幅方向Rの寸法が互いに等しくなるように形成した場合には、2つの受光アレイPD1,PD2における受光量を略等しくすることができるので、上記リップル低減効果をさらに高めることができる。
また、本実施形態において、受光アレイPD1,PD2を、測定方向Cの長さがパターンSIを受光アレイPD1,PD2上に投影した像の配置ピッチεPの整数倍となるように形成した場合には、次のような効果を得る。
上記構成により、パターンSIと受光アレイPD1,PD2との相対回転に関わりなく、受光アレイPD1,PD2における受光量を略一定とすることが可能となり、光量調整信号を光量調整に用いることが容易となる。また、整数倍を可能な範囲で大きな値とすることで、受光アレイPD1,PD2の受光量を増大できる。
<4.変形例>
以上、添付図面を参照しながら一実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
(4−1.複数の受光素子の一部を接続する場合)
上記実施形態では、光量調整用の受光アレイPD1,PD2を構成する複数の受光素子Pdが分離されており、配線141により各受光素子Pdからの複数の受光信号が加算される場合を一例として説明したが、受光信号の加算態様はこれに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、受光アレイPD3,PD4の各々を構成する複数の受光素子Pdを1つの基部Pdbにより接続してもよい。この例では、受光アレイPD3,PD4の各々において、複数の受光素子Pdは幅方向外周側を基部Pdbにより接続されており、受光アレイPD3,PD4はそれぞれ櫛歯状に形成されている。
基部Pdbは、1つの配線143によって出力端子140に接続される。つまり、基部Pdbが加算部として機能し、複数の受光素子Pdの受光信号が基部Pdbで加算されて、出力端子140に出力される。なお、その他の構成は上記実施形態と同様であり、図9において図5と同様の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
上記構成をとる場合、上記実施形態と同様の効果の他、配線143を簡素化できるという効果を得る。
(4−2.複数の受光信号を回路側の信号処理によって加算する場合)
本変形例は、インクリメンタル用の受光アレイPIL,PIRが光量調整用の受光アレイPD1,PD2を兼ねた例である。すなわち、受光アレイPIL,PIRの各受光素子Piからの位相の異なる複数の受光信号を光学モジュール120より位相ごとに個別に出力し、制御部130の発光量調整部132において信号処理等により加算するものである。
図10に示すように、本変形例では、受光アレイPIL,PIRの複数の受光素子Pi(受光アレイPD1,PD2の受光素子Pdでもある)は、前述のように相互に90°の位相差を有する4つの受光信号を生成するので、位相が等しい受光素子Pi同士が、各配線144a〜144dによって対応する出力端子140a〜140dに各々接続されている。これにより、各受光素子Piからの相互に位相差を有する4つの受光信号は個別に出力端子140a〜140dに出力される。各出力端子140a〜140dからの受光信号は、発光量調整部132に個別に入力される。
上記構成により、本変形例は、前述のA+相信号、B+相信号、A−相信号、B−相信号を、位置データ算出用のインクリメンタル信号と光量調整信号の両方に使用する、とも言うことができる。
次に、図11を参照しつつ、発光量調整部132が実行する本変形例に係るエンコーダ100の発光量調整方法に関する制御手順の一例について説明する。
図11に示すように、ステップS10において、発光量調整部132は、光源121から出射されパターンSIで反射された光に基づく相互に位相差を有する複数の受光信号を加算する。具体的には、発光量調整部132は、受光アレイPIL,PIRの各受光素子Pi(受光アレイPD1,PD2の各受光素子Pdでもある)から出力された相互に位相差を有する4つの受光信号を加算し、光量調整信号を生成する。
次に、ステップS20において、発光量調整部132は、加算された受光信号(光量調整信号)に基づいて光源121の発光量を調整する。具体的には、発光量調整部132は、光量調整信号に基づいて、受光量が減少した場合には光源121の電流を増加させて発光量を増大させ、受光量が増大した場合には光源121の電流を減少させて発光量を減少させる。
なお、本変形例においては発光量調整部132が加算部の一例及び発光量調整手段の一例に相当する。このような発光量調整部132は、エンコーダ100に備えられたCPU901(後述の図11参照)が実行するプログラムと、エンコーダ100に備えられた制御回路907(後述の図11参照)と、エンコーダ100に備えられたASICやFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路909(後述の図11参照)と、の少なくともいずれかにより実装される。
なお、上記では発光量調整部132がステップS10及びステップS20の両方の処理を実行するようにしたが、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、更に細分化された2以上の処理部により処理されてもよい。例えば、発光量調整部132とは別の加算部によりステップS10の処理が実行されてもよい。
(4−3.その他)
上記実施形態では、受光アレイPD1,PD2から出力される光量調整信号に基づいて光源121の発光量を調整する場合を一例として説明するが、光量調整信号を用いて絶対位置の誤検出の低減を図る手法は、これに限定されるものではない。例えば、位置データ生成部がしきい値変更部(図示省略)を有する構成としてもよい。前述のように、位置データ生成部131は、受光アレイPA1,PA2からのアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換するが、しきい値変更部は、このアブソリュート信号を2値化する際のしきい値を光量調整信号に基づいて変更する。このようにしても、絶対位置の誤検出の低減を図ることが可能である。また、例えば、位置データ生成部131が出力信号調整部(図示省略)を有する構成としてもよい。この出力信号調整部は、受光アレイPA1,PA2から出力されるアブソリュート信号を2値化する前に、該アブソリュート信号の振幅等を光量調整信号に基づいて調整する。このようにしても、絶対位置の誤検出の低減を図ることが可能である。
また、以上では、受光アレイPA1,PA2等がそれぞれ9個の受光素子を有し、アブソリュート信号が9ビットの絶対位置を表す場合を説明したが、受光素子の数は9以外でもよく、アブソリュート信号のビット数も9に限定されない。また、受光アレイPIL,PIR等の受光素子の数も、上記実施形態の数に特に限定されるものではない。
また、以上では、光源121と受光アレイPA1,PA2等がディスク110のパターンに対し同じ側に配置された、いわゆる反射型エンコーダである場合を例にとって説明したが、これに限定されない。すなわち、光源121と受光アレイPA1,PA2等がディスク110を挟んで反対側に配置された、いわゆる透過型エンコーダであってもよい。この場合、ディスク110に形成される各パターンは、トラックの全周にわたって、測定方向Cに沿って並べられた複数の透過スリットを有する。1つ1つの透過スリットは、光源121から照射された光を透過する。
また、上記実施形態では、エンコーダ100がモータMに直接連結される場合について説明したが、例えば減速機や回転方向変換機等の他の機構を介して連結されてもよい。
<5.エンコーダの構成例>
以下、図11を参照しつつ、以上説明した各実施形態や各変形例に係る上記制御部130等による処理を実現するエンコーダ100の構成例について説明する。
図11に示すように、エンコーダ100は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、電気回路等の制御回路907と、ASICやFPGAの特定の用途向けに構築された専用集積回路909と、入力装置913と、出力装置915と、ストレージ装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介して相互に信号を伝達可能に接続されている。
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ストレージ装置917等の記録装置に記録しておくことができる。
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体925に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらのリムーバブル記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
そして、CPU901が、上記記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記制御部130等による処理を実現可能である。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更に、CPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、更に、CPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置やリムーバブル記録媒体925に記録させてもよい。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。