以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる施設に構築されたシステムの全体の概略構成を示した図である。本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムは、企業内で使用する電力を制御することによって、電力プロバイダから要求された産業用デマンドレスポンス(iDR)を実行するためのシステムである。図1には、本社10および産業用施設として生産工場20を備える企業1と、顧客30や電力プロバイダ40との関係、および企業1の内部において動作する各種のシステム(ソフトウェアシステムも含む)と設備との関係を示している。なお、図1には、生産工場において製品を生産する生産部門と、それぞれの設備で使用するエネルギーを供給するエネルギー部門とが設置されている場合を示している。
なお、需要家である生産工場20に電力を供給する電力プロバイダ40には、電力を発電する発電会社、電力を送配する送配電会社、電力を小売りする小売会社など、様々な形態の事業者が想定されるが、以下の説明においては、説明を容易にするため、需要家(生産工場20)に電力を供給する形態に関わらず、「電力プロバイダ40」という。また、以下の説明においては、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムによる各種の情報(データ、信号)の送受信において、「電力プロバイダ40」とは、その電力プロバイダ40に備えたサーバ装置を意味することがある。
図1において企業1は、上述したように、本社10と生産工場20とを備えている。また、本社10は、受発注システム11を備えている。また、生産工場20は、生産計画立案システム21と、生産実行システム22と、エネルギー部門23と、生産部門24と、デマンドレスポンス(DR)応答判断システム25と、生産計画修正案実施判断システム26とを備えている。なお、本社10は、生産工場20と異なる位置に設置されていても、生産工場20内に設置されていてもよい。また、生産工場20が複数あり、それらの消費する電力を加算し、電力プロバイダ40とデマンドレスポンスの契約を取り交わす場合でもよい。
本社10は、顧客30からの製品の注文を、受発注システム11によって受け付ける。受発注システム11は、顧客30から注文を受けた(受注した)製品を指定された納期までに生産すべく、製品の生産指示を生産工場20に指示する。このとき、受発注システム11は、生産する製品の品名、数量、納期など、生産工場20が製品を生産する際に必要となる情報を、生産工場20に備えた生産計画立案システム21に送信する。
生産工場20は、本社10から送信されてきた顧客30の注文に関する情報に基づいて、製品を生産する。生産工場20では、受発注システム11から顧客30の注文に関する情報が送信されてくると、まず、生産計画立案システム21が、受発注システム11から送信されてきた情報に基づいて、指示された製品を生産するための生産計画を立案する。そして、生産計画立案システム21は、立案した生産計画の情報と共に、製品の生産実行指示を、生産実行システム22に送信する。
続いて、生産実行システム22は、生産計画立案システム21から送信されてきた生産計画および実行指示に応じて、指定された製品を生産すべく、生産部門24に備えた生産設備制御システム241に個々の生産設備の運転指示を含む生産指示を送信する。また、この生産計画に従い、エネルギー部門23に備えたエネルギー制御システム231にエネルギー供給計画とその実行指示を送信する。その後、生産実行システム22は、エネルギー制御システム231および生産設備制御システム241のそれぞれから、製品を生産している途中の段階(工程の移行)や生産の完了などの実績情報を逐次収集し、生産の実行を管理する。
エネルギー部門23には、エネルギー制御システム231と、エネルギー設備として、受配電設備232、エネルギー変換設備233、およびエネルギー蓄積設備234とが設置されている。エネルギー制御システム231は、生産実行システム22から送信されてきたエネルギーの供給計画に基づいて、受配電設備232、エネルギー変換設備233、およびエネルギー蓄積設備234のそれぞれを制御し、製品を生産する際に必要な種類および量のエネルギーの生産部門24への供給を制御する。エネルギーの供給計画は、自動的に作成され、自動的に制御される場合を示したが、部分的に人間により作成、制御されてもよい。
受配電設備232は、電力プロバイダ40から電力エネルギーを購入し、生産工場20内のそれぞれの設備に配電・供給する設備である。受配電設備232は、エネルギー制御システム231からの制御に応じて、購入した電力エネルギーを、生産部門24に供給する。また、受配電設備232は、例えば、事務部門や管理部門など、生産工場20内の様々な部門に設置された照明や空調などの設備にも電力エネルギーを供給する。
エネルギー変換設備233は、電力以外のエネルギー(以下、「非電力エネルギー」という)を生産部門24内に供給する設備である。ここで、非電力エネルギーとは、例えば、天然ガスや重油などの燃料や、それらの燃料をボイラーによって燃焼して発生させた蒸気や冷温水などの熱エネルギーなどである。なお、エネルギー変換設備233には、例えば、蒸気でタービンを駆動することによって蒸気を電力に変換する蒸気発電機など、非電力エネルギーを電力エネルギーに変換する設備、すなわち、自家発電設備も含まれる。エネルギー変換設備233によって非電力エネルギーから変換された電力エネルギーは、受配電設備232を介して、生産部門24に供給することもできる。
エネルギー蓄積設備234は、エネルギーを貯蔵し、貯蔵したエネルギーを必要なときに需要先に供給する機能を持つ。エネルギー蓄積設備234は、例えば、蓄電池や蓄熱槽などの設備を備えている。このエネルギー蓄積設備234に貯蔵されたエネルギーを生産工場20内に供給することによって、生産工場20内で使用されるエネルギーの不足分を補ったり、短時間の大きな変動を抑制したりする。なお、エネルギー蓄積設備234は、エネルギーを蓄積する際に、エネルギーを元の形態で蓄積する場合もあるが、力学的、機械的、化学的、熱力学的、あるいは電気的などの各種のエネルギーに変換してから蓄積する場合もある。
受配電設備232は、生産工場20内のそれぞれの設備に電力エネルギーを配電・供給する際、上述したように、電力プロバイダ40から購入した電力エネルギーを配電・供給のみではなく、エネルギー変換設備233が非電力エネルギーを変換した電力エネルギーや、エネルギー蓄積設備234に貯蔵されていた電力エネルギーを配電・供給することもできる。このとき、受配電設備232は、エネルギー変換設備233やエネルギー蓄積設備234から供給された電力エネルギーを、電力プロバイダ40から購入した電力エネルギーに加えて配電・供給することもできる。つまり、電力プロバイダ40から購入する電力エネルギーの量を少なくし、不足分の電力エネルギーをエネルギー変換設備233やエネルギー蓄積設備234から供給された電力エネルギーで補って、生産工場20内のそれぞれの設備に配電・供給することができる。
また、受配電設備232は、電力プロバイダ40から電力エネルギーを購入するのみではなく、エネルギー変換設備233が変換した電力エネルギーや、エネルギー蓄積設備234に貯蔵されていた電力エネルギーを、電力プロバイダ40に販売(売電)することもできる。つまり、受配電設備232は、生産工場20内のそれぞれの設備において使用されない(余剰となる)電力エネルギーを電力プロバイダ40に販売(売電)することもできる。なお、電力プロバイダ40への電力エネルギーの販売(売電)は、受配電設備232と異なる売電設備(不図示)が行う構成であってもよい。
生産部門24には、生産設備制御システム241と、複数の生産設備(生産設備242−1および生産設備242−2)とが設置されている。生産設備制御システム241は、生産実行システム22から送信されてきた個々の生産設備への運転指示を含む生産指示に基づいて、製品の生産に用いる生産設備の運転(稼働)を制御する。この生産設備の運転(稼働)に必要なエネルギーは、エネルギー部門23から供給される。
生産設備242−1および生産設備242−2は、エネルギー部門23から供給された電力エネルギーおよび非電力エネルギーを使用して製品を生産(製造)する設備である。つまり、生産工場20において生産設備242−1および生産設備242−2は、生産活動の現場であり、それぞれのエネルギーを最も多く消費する最終の消費者に相当する。ここで、生産設備とは、例えば、石油や薬品などの液体状の製品あるいは半製品を生産する連続生産プロセスや、材料(原材料)を機械などで加工して部品(半製品)を作り、部品を組み立てて最終製品を製造するディスクリート生産用の製造設備など、様々な形態の設備である。なお、図1においては、生産設備242−1および生産設備242−2の2つの生産設備が生産部門24内に設置されている場合を示しているが、生産部門24に設置される生産設備は、1つであってもよく、また、さらに多くの生産設備が設置されていてもよい。
このような企業1に対して、電力プロバイダ40は、電力事情が逼迫した際などに、産業用デマンドレスポンス(iDR)の実行を要求することがある。このとき、電力プロバイダ40に備えたデマンドレスポンス(DR)取引サーバ41は、デマンドレスポンスの要求を表すDR要求信号と、デマンドレスポンスにおける料金情報とを、企業1の本社10に送信してくる。このDR要求信号には、デマンドレスポンスにおいて電力プロバイダ40が要求する時間毎の電力の抑制量を指定する情報が含まれえる。また、料金情報には、電力プロバイダ40が供給する電力の時間毎の価格を表す電力価格の変更計画の情報が含まれえる。例えば、時間帯毎の電力の単価の情報や、生産工場20がデマンドレスポンスを実行して電力を削減した場合、いわゆる、ネガワット創出を行った場合に支払われる対価(インセンティブ)の情報、生産工場20がデマンドレスポンスを実行しなかったことによるペナルティ(罰則)の金額の情報などが含まれえる。
企業1では、電力プロバイダ40から送信されてきたDR要求信号および料金情報を、本社10に備えた受発注システム11が受信する。受発注システム11は、受信したDR要求信号および料金情報のデータを、生産工場20に送信する。生産工場20では、受発注システム11から送信されてきたDR要求信号および料金情報のデータを、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムが受信する。本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムは、デマンドレスポンス応答判断システム25を含んで構成される。デマンドレスポンスの対応として生産計画を修正することが可能な場合には、生産計画修正案実施判断システム26を含んで構成される。以下の説明においては、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムが、デマンドレスポンス応答判断システム25と生産計画修正案実施判断システム26との両方を含んで構成される場合について説明する。
本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムは、電力プロバイダ40から産業用デマンドレスポンス(iDR)の要求があった場合に、要求されたデマンドレスポンスを実現することができるか否か、すなわち、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)か否かを判断するシステムである。なお、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムは、さらにその判断結果に合わせて電力プロバイダ40に回答すると共に、デマンドレスポンスに対応する処理を実行させる指示を、例えば、生産実行システム22に送信するシステムであってもよい。
より具体的には、産業用デマンドレスポンス実現システムは、受発注システム11から送信されてきたDR要求信号および料金情報のデータに基づいて、DR要求信号に応じたデマンドレスポンスを実現することができるか否か、すなわち、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)か否かを判断する。
なお、図1においては、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムに含まれるデマンドレスポンス応答判断システム25および生産計画修正案実施判断システム26は、生産工場20内の他のシステムと独立して配置されている場合を示している。しかし、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムの構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25の機能や、生産計画修正案実施判断システム26の機能が、生産計画立案システム21において動作する生産計画を立案するためのアプリケーションソフトウェアに、アドオンソフトウェアやマクロプログラムの機能として組み込まれ(追加され)、生産計画立案システム21内で動作する構成であってもよい。このとき、デマンドレスポンス応答判断システム25の機能や、生産計画修正案実施判断システム26の機能を実行するアドオンソフトウェアやマクロプログラムは、企業1に設置されたそれぞれのシステムによって読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
産業用デマンドレスポンス実現システムにおけるデマンドレスポンスの実現可否の判断では、まず、デマンドレスポンス応答判断システム25が、生産工場20内のそれぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。この判断の結果、それぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができないと判断された場合には、現在の生産計画を変更することによってデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。このとき、産業用デマンドレスポンス実現システムでは、生産計画修正案実施判断システム26が、生産計画を変更したことに伴う生産工場20の得失を算出し、変更した生産計画の実施の可否判断を行う。そして、産業用デマンドレスポンス実現システムは、判断した結果を受発注システム11に送信する。このとき、産業用デマンドレスポンス実現システムは、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の量(抑制量)の情報も、受発注システム11に送信する。
受発注システム11は、産業用デマンドレスポンス実現システムに含まれるデマンドレスポンス応答判断システム25から送信されてきた、デマンドレスポンスの実現可否の判断結果および電力の抑制量の情報に基づいて、電力プロバイダ40から送信されてきたDR要求信号に対するDR応答信号と需要情報とを、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する。このDR応答信号には、要求されたデマンドレスポンスを受け入れる(承諾する)か否かの判断結果を表す情報が含まれている。また、需要情報には、デマンドレスポンスの要求に応じて削減することができる電力の抑制量や電力を抑制することができる時間帯などの情報が含まれている。
なお、DR応答信号や需要情報などは、受発注システム11から電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する構成に限定されるものではなく、例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25など、産業用デマンドレスポンス実現システムが直接あるいは何らかのシステムを介在して、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する構成であってもよい。なお、この構成の場合には、以下の説明における受発注システム11を電力プロバイダ40に読み替える。
以下に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムについてより詳しく説明する。まず、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる生産工場20内の設備の一例について説明する。図2は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる産業用施設における設備構成の一例を示した図である。図2には、図1に示した生産工場20内に設置されたそれぞれの設備と、それぞれの設備に電力エネルギーや非電力エネルギーを供給するエネルギー部門23とを併せて示している。
生産設備242−1〜生産設備242−3は、生産部門24に設置され、エネルギー部門23から供給された電力エネルギーと非電力エネルギーとを使用して製品を生産(製造)する設備である。より具体的には、生産設備242−1は、原材料を加工して製品Aまたは製品Bを製造する製造設備である。また、生産設備242−2は、原材料を加工して製品Cを製造するための中間製品C1を製造する製造設備である。また、生産設備242−3は、中間製品C1を加工して製品Cを製造する製造設備である。生産設備242−2と生産設備242−3との間には、生産設備242−2が製造した中間製品C1を、生産設備242−3が製品Cを製造するために加工するまで貯蔵しておく、例えば、貯蔵タンクなどの貯蔵設備(不図示)が設置されている。
照明設備243−1および照明設備243−2は、エネルギー部門23から供給された電力エネルギーを使用して点灯する、生産工場20内に設置された照明設備である。空調設備244−1および空調設備244−2は、エネルギー部門23から供給された電力エネルギーを使用して稼働する、生産工場20内に設置された空調設備である。照明設備243−1、照明設備243−2、空調設備244−1、および空調設備244−2には、生産工場20における製品の生産には直接的に関係しない設備も含まれる。製品の生産には直接的に関係しない設備は、短期間であれば、生産工場20の操業に影響を及ぼすことなく、部分的に停止あるいは能力を抑制して稼働させることができる。以下の説明においては、照明設備243−2および空調設備244−2が、部分的に停止あるいは能力を抑制して稼働させることができる設備であるものとして説明する。
図3は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる産業用施設に設置されたそれぞれの設備におけるデマンドレスポンス対応能力一覧表の一例を示した図である。デマンドレスポンス対応能力一覧表は、稼働する際に使用する電力と、デマンドレスポンスに対応する際の条件とが、それぞれの設備毎にまとめられた表である。
図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、「名称」の欄には、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備の名称が示されている。
また、デマンドレスポンス対応能力一覧表において、「常時対応設備」の欄には、部分的に停止あるいは能力を抑制することによってデマンドレスポンスの要求に常に応じることができる設備に関する情報が示されている。より具体的には、「常時対応設備」の欄には、デマンドレスポンスに対応するように制御する、つまり、電力を抑制させる際の「優先度」と、デマンドレスポンスに対応することができるようになるまでの時間を表す「対応時間(分)」との情報が示されている。
また、デマンドレスポンス対応能力一覧表において、「生産計画要変更設備」の欄には、生産計画を変更することによってデマンドレスポンスの要求に応じることができる設備に関する情報が示されている。この「生産計画要変更設備」の欄は、生産計画を変更する方法によって、「時間移動可能設備」と、「工程組み換え必要設備」とに分けられている。「時間移動可能設備」の欄に示された設備は、例えば、貯蔵タンクなどの貯蔵設備を備え、製品を生産する前後の工程に影響を及ぼさない範囲で運転する時間を変更(移動)することによってデマンドレスポンスに対応することができる設備である。このため、「時間移動可能設備」の欄には、デマンドレスポンスに対応することができるまでの時間を表す「対応時間(分)」と、現在の生産計画で予定されている起動までの時間を表す「計画起動時間(分)」と、この設備の起動を遅延させることができる最大の時間を表す「最大遅延時間(分)」との情報が示されている。この時間移動可能設備は、製品を生産する順番(時間)や生産する製品の種類(銘柄)を組み替えることはできないが、「工程組み換え必要設備」の欄に示された設備よりも容易にデマンドレスポンスに対応することができる。また、「工程組み換え必要設備」の欄に示された設備は、製品を生産する際の順番(時間)や生産する製品の種類(銘柄)を組み替えることによってデマンドレスポンスに対応することができる設備である。「工程組み換え必要設備」の欄には、製品を生産する際の順番(時間)やその種類(銘柄)を組み替えることができる工程組み換え必要設備であることを表す「チェック」マークが示されている。この工程組み換え必要設備は、運転(稼働)する時間帯を移動させて容易にデマンドレスポンスに対応することはできないが、製品を生産する順番(時間)や種類(銘柄)を組み換えることによって生産計画を変更するため、時間移動可能設備よりも大きな量あるいは長い時間のデマンドレスポンスに対応することができる。
また、デマンドレスポンス対応能力一覧表において、「稼働時電力消費(MW)」の欄には、それぞれの設備が稼働する際に消費する電力の情報が示されている。この「稼働時電力消費(MW)」の欄は、それぞれの設備の運転状態によって、「通常消費」、「最小消費」、「最大消費」、および「現在消費」のそれぞれに分けられている。「通常消費」の欄には、それぞれの設備が通常の稼働において消費する電力が示され、この電力の消費量は、製品を生産するそれぞれの工程の電力消費の平均値に相当する。「最小消費」の欄および「最大消費」の欄には、それぞれの設備において消費する最小または最大の電力が示され、この電力の消費量のそれぞれは、製品を生産する際に電力を最も消費しない運転状態の電力消費、または電力を最も消費する運転状態の電力消費に相当する。「現在消費」の欄には、現在の運転状態で消費している電力エネルギーが示されている。このため、現在実行している運転状態によっては、例えば、生産設備242−2のように、「現在消費」の欄に示された電力の消費量が、「通常消費」の欄に示された電力の消費量よりも大きくなることがある。
例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、生産設備242−1は、生産する製品または半製品の種類(銘柄)とその生産の順番(時間)、生産量などを変更することによってデマンドレスポンスに応じることができる設備である。例えば、製品Aの代わりに製品Bを生産したり、製品Cの後に製品Dを製造していたのを逆の順番にしたり、一度に多くの製品を作り置きしたりして、デマンドレスポンスに応じる。デマンドレスポンス対応能力一覧表では、生産設備242−1が製造する製品の種類を組み替えるように制御することによって、通常で1.5(MW)、最小で0.5(MW)、最大で2.2(MW)の電力を抑制することができることを表している。なお、以下の説明においては、「生産する製品または半製品の種類(銘柄)や、その生産の順番(時間)、生産量などを変更する」ことを「工程を組み換える」という。
また、例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、生産設備242−2は、製品を生産する際の工程を組み替える、つまり、例えば、貯蔵タンクなどに製造した中間製品C1を貯蔵することによって、中間製品C1を加工して製品Cを製造する生産設備242−3に影響を及ぼすことなく、デマンドレスポンスに応じることができる設備である。デマンドレスポンス対応能力一覧表では、生産設備242−2の生産工程を組み替えるように制御することによって、通常で3.5(MW)、最小で0.1(MW)、最大で4.5(MW)の電力を抑制することができることを表している。
また、例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、生産設備242−3は、起動する時間を移動させる、つまり、起動する時間を遅らせることによってデマンドレスポンスに応じることができる設備である。デマンドレスポンス対応能力一覧表では、生産設備242−3は、210(分)後からデマンドレスポンスに応じることができ、現在の生産計画では220(分)後から起動する予定を、最大で300(分)後から起動するように変更する、つまり、起動を開始する時間を最大に遅らせることによって、90(分)の間、デマンドレスポンスに応じた電力の抑制をすることができることを表している。そして、このときの電力の抑制量は、常に0.9(MW)であることを表している。
また、例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、照明設備243−2は、デマンドレスポンスの要求に常に応じることができる設備であり、デマンドレスポンスに対応するように制御した際には、3(分)後にデマンドレスポンスに対応した運転状態に変更することができる、つまり、部分的に停止あるいは能力を抑制することができることを表している。そして、このときの電力の抑制量は、常に0.2(MW)の電力を抑制することができることを表している。なお、対応時間(分)=3(分)には、例えば、照明設備243−2をデマンドレスポンスに対応するように制御する際に、照明設備243−2を利用している部門に対してアナウンスなどを行うために要する時間が含まれている。また、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、照明設備243−2と空調設備244−2とは共にデマンドレスポンスの要求に常に応じることができる設備であるが、デマンドレスポンス対応能力一覧表の「優先度」の欄では、デマンドレスポンスに対応するように制御する際の優先度が、照明設備243−2の方が高い。従って、デマンドレスポンスによって要求された抑制量の電力の抑制が、優先度が高い照明設備243−2を制御することによって達成することができる場合には、優先度が低い空調設備244−2をデマンドレスポンスに対応するように制御しなくてもよいことになる。
なお、例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表において、照明設備243−1と空調設備244−1とは共に、いずれの項目にも属していない。これは、照明設備243−1および空調設備244−1は、デマンドレスポンスに対応することができない設備であることを表している。
生産工場20に設置されたそれぞれの設備は、デマンドレスポンス対応能力一覧表によって、常時対応設備、時間移動可能設備、工程組み換え必要設備、またはその他の設備のいずれかに分けられ、それぞれの設備がデマンドレスポンスに対応した際に抑制することができる電力が示される。そして、デマンドレスポンス対応能力一覧表は、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスを受け入れるか否かを判断する際に、産業用デマンドレスポンス実現システムによって参照される。つまり、産業用デマンドレスポンス実現システムは、デマンドレスポンス対応能力一覧表を参照することによって、デマンドレスポンスに対応する際に抑制する設備を特定し、抑制することができる電力の値を、それぞれの設備毎に算出することができる。
例えば、電力プロバイダ40から、10分後から30分の間、0.5MWの電力を抑制するデマンドレスポンスが要求された場合を考える。この場合、産業用デマンドレスポンス実現システムは、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表を参照して電力の抑制量を算出することにより、照明設備243−2および空調設備244−2を停止させることで、照明設備243−2による0.2(MW)と、空調設備244−2による0.6(MW)とを合わせた0.8(MW)の電力の抑制が可能であることがわかる。
また、例えば、電力プロバイダ40から、240分後から30分の間、1.5MWの電力を抑制するデマンドレスポンスが要求された場合を考える。この場合にも、産業用デマンドレスポンス実現システムは、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表を参照して電力の抑制量を算出することにより、生産設備242−3の起動を開始する時間を50分間遅らせることで、0.9(MW)の電力の抑制が可能であることがわかる。そして、産業用デマンドレスポンス実現システムは、生産設備242−3による電力の抑制量と、照明設備243−2および空調設備244−2による電力の抑制量と合わせて、1.7(MW)の電力の抑制が可能であることがわかる。
また、例えば、電力プロバイダ40から、600分後から1時間の間、2.0MWの電力を抑制するデマンドレスポンスが要求された場合を考える。この場合、産業用デマンドレスポンス実現システムは、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表を参照することにより、「工程組み換え必要設備」の欄に示された設備によって工程の組み替えを行わないとデマンドレスポンスに対応することができない、すなわち、生産計画の変更が必要であることがわかる。
なお、デマンドレスポンス対応能力一覧表は、例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25が定期的に更新することによって、常に最新の情報が示されるようにメンテナンスされている。このとき、「時間移動可能設備」の欄および「工程組み換え必要設備」の欄に示されるそれぞれの情報は、例えば、生産実行システム22や、エネルギー制御システム231、生産設備制御システム241から定期的(例えば、1分間隔など)に収集した情報に基づいて更新される。なお、生産設備によっては、常に「工程組み換え必要設備」の欄に示されるように固定的な設定にしてもよい。また、生産設備によっては、運転を停止した後に十分な停止期間を確保しておくことによって、常に「時間移動可能設備」の欄に示されるようにしてもよい。また、デマンドレスポンス対応能力一覧表は、生産工場20に設置された全ての設備に1対1で対応させてもよいが、多くの電力を消費する設備に関する情報のみに絞ったり、あるいは多くの電力を消費する一つの設備が複数の装置や機器で構成されている場合には、その装置や機器の単位に分解して階層的に設備に関する情報を管理してもよい。なお、デマンドレスポンス応答判断システム25がデマンドレスポンス対応能力一覧表を更新する動作に関する詳細な説明は、後述する。
図4は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる産業用施設に設置された設備におけるエネルギー消費特性表の一例を示した図である。エネルギー消費特性表は、生産設備が製品を生産する際に要する時間、次に行う工程、およびエネルギー消費量が、それぞれの工程毎にまとめられた表である。図4には、図2に示した生産設備242−1のエネルギー消費特性表の一例を示している。
図4に示したエネルギー消費特性表において、「運転状態」の欄には、生産設備242−1が製品を製造する際のそれぞれの工程の名称が示されている。
また、エネルギー消費特性表において、「稼働時間(分)」の欄には、それぞれの工程における稼働時間が示されている。
また、エネルギー消費特性表において、「次工程」の欄には、それぞれの工程が終了した後に実行される次の工程が示されている。
また、エネルギー消費特性表において、「エネルギー消費量」の欄には、それぞれの工程において使用するエネルギーの消費量が示されている。生産設備242−1は、電力と、非電力エネルギーとして蒸気を使用する生産設備であるため、エネルギー消費特性表には、それぞれのエネルギーの消費特性が示されている。より具体的には、電力エネルギーEeの単位時間当たりの消費量(電力)が「電力エネルギーEe(MWh/h)」の欄に、非電力エネルギーである蒸気エネルギーEsの単位時間当たりの消費量が「蒸気エネルギーEs(GJ/h)」の欄にそれぞれ示されている。また、蒸気エネルギーEsの消費量に関しては、蒸気を電力エネルギーに換算したときの単位時間当たりの消費量が「蒸気エネルギーEs(MWh/h)」の欄に示されている。
なお、それぞれのエネルギー消費量は、経過時間に比例する場合や、生産量(処理量)に比例する場合があるが、エネルギー消費特性表においては、この場合を計算式で表している。このため、エネルギー消費特性表の「備考」の欄に、エネルギー消費量の計算式に含まれる変数が表す意味と単位とを示している。なお、図4に示したエネルギー消費特性表においては、電力エネルギーEeおよび蒸気エネルギーEsの単位を(MWh/h)としている。これは、単位時間(h)あたりの電力エネルギーの量(MWh)、すなわち、デマンドレスポンスで着目する電力(MW)を表すためである。
例えば、図4に示したエネルギー消費特性表において、起動開始(Start up)は、この運転状態に要する時間が10(分)であり、次の工程が準備中(Stand by)であり、この運転状態において単位時間あたり0.05(MWh/h)の一定の電力エネルギーEeと、時間の経過と共に増加する18+54t(GJ/h)=5+15t(MWh/h)の蒸気エネルギーEsとを使用することを表している。ここで、「変数t」は時間(分)であり、起動開始(Start up)の運転状態において蒸気エネルギーは1分あたり54(GJ/h)=15(MWh/h)の割合で増大することを表している。すなわち、起動開始(Start up)の運転状態においては、最初は18(GJ/h)=5(MWh/h)の蒸気エネルギーを消費し、10分後には558(GJ/h)=155(MWh/h)の蒸気エネルギーを消費することを表している。
また、例えば、図4に示したエネルギー消費特性表において、製品B製造(Operation B)は、この運転状態に要する時間が455(分)であり、次の工程が搬出(Carry out)であり、この運転状態において単位時間あたり35P+0.05(MWh/h)の電力エネルギーEeと、234P+684(GJ/h)=65P+190(MWh/h)の蒸気エネルギーEsとを使用することを表している。ここで、「変数P」は生産量(トン)であるため、製品B製造(Operation B)の運転状態において、例えば、10トンの製品Bを製造する場合には、電力エネルギーEeを、単位時間あたり350.05(MWh/h)使用し、蒸気エネルギーEsを、単位時間あたり3024(GJ/h)=840(MWh/h)使用することを表している。
生産工場20に設置されたそれぞれの設備は、エネルギー消費特性表によって、それぞれの運転状態毎に消費するエネルギーが示される。そして、エネルギー消費特性表は、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスを受け入れた場合に抑制することができる電力を算出する際に、産業用デマンドレスポンス実現システムによって参照される。つまり、産業用デマンドレスポンス実現システムは、エネルギー消費特性表を参照することによって、それぞれの設備がデマンドレスポンスに対応する際に抑制することができるエネルギー量を、運転状態毎に算出することができる。
なお、エネルギー消費特性表は、生産実行システム22や生産設備制御システム241から定期的(例えば、1分間隔など)に収集した情報に基づいて、生産工場20におけるエネルギー管理を目的として作成、更新される表であり、例えば、生産工場20に備えたエネルギー管理システムが作成する。しかし、エネルギー消費特性表を、例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25や生産計画修正案実施判断システム26が作成、更新する構成にしてもよい。このとき、エネルギー消費特性表は、生産工場20に設置されたそれぞれの設備毎に作成してもよいし、例えば、生産工場20に設置された施設や製造ラインなど、予め定めた設備の単位毎に作成してもよい。また、同じ生産設備によって異なる銘柄の製品を生産する場合において、銘柄毎にエネルギー消費特性が大きく異なるなどの理由で区別が必要である場合には、この生産設備におけるそれぞれの工程を細分化して、生産する製品の銘柄毎にエネルギー消費特性表を作成してもよい。
また、エネルギー消費特性表をデマンドレスポンス応答判断システム25や生産計画修正案実施判断システム26が更新する場合、エネルギー消費特性表に示された電力エネルギーEeや蒸気エネルギーEsの数値、あるいはその計算式によって導かれる推定値と、それぞれの設備における実際のエネルギー消費量、すなわち、エネルギー消費量の実績値との差が大きく、予め定めた閾値を超えたときなどには、例えば、生産工場20の管理者に警告を発して、エネルギー消費の計算式を変更させるようにしてもよい。また、デマンドレスポンス応答判断システム25や生産計画修正案実施判断システム26が、実績値に基づいてエネルギー消費の計算式を更新してもよい。
次に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムの動作について説明する。上述したように、産業用デマンドレスポンス実現システムは、まず、生産工場20内のそれぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断し、それぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができないと判断された場合に、現在の生産計画を変更することによってデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。
<第1の処理手順>
図5は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおける第1の処理手順を示したフローチャートである。産業用デマンドレスポンス実現システムは、電力プロバイダ40からデマンドレスポンスの要求があり、受発注システム11からDR要求信号および料金情報のデータが送信されてくると、図5に示した第1の処理手順によるデマンドレスポンスの実現可否の判断処理(以下、「第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理」という)を開始する。
第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、まず、デマンドレスポンス応答判断システム25は、受発注システム11から送信されてきたDR要求信号に含まれる電力の抑制量の情報を確認する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、図3に示したようなデマンドレスポンス対応能力一覧表を参照して、要求されている電力の抑制を、生産工場20内に設置された常時対応設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する(ステップS100)。
なお、デマンドレスポンス対応能力一覧表は、上述したように、例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25が定期的に更新することによって、常に最新の情報が示されるように更新(メンテナンス)される。このとき、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産実行システム22や、エネルギー制御システム231、生産設備制御システム241にアクセスすることによって、生産設備が実行中あるいは実行する予定の動作プログラムや制御パラメータの情報を取得して、「時間移動可能設備」の欄や「工程組み換え必要設備」の欄に示される情報を更新する。なお、デマンドレスポンス応答判断システム25がデマンドレスポンス対応能力一覧表を更新する動作に関する詳細な説明は、後述する。
ステップS100の判断によって、常時対応設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができると判断した場合(ステップS100の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、常時対応設備を管理しているシステム(不図示)に、常時対応設備の指定時刻から指定時間の停止または能力抑制を指示する(ステップS110)。続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する(ステップS120)。
このステップS110〜ステップS120の処理により、例えば、図3のデマンドレスポンス対応能力一覧表に示されている照明設備243−2および空調設備244−2の停止を指示した場合、常時対応設備を管理しているシステム(不図示)は、指定時刻から指定時間だけ照明設備243−2および空調設備244−2を停止または能力抑制させる。ただし、指定時刻より対応時間(分)=3分だけ前に、常時対応設備を利用している部門に対してアナウンスの放送をするなどの必要な準備を開始する。これにより、照明設備243−2による0.2(MW)と、空調設備244−2による0.6(MW)とを合わせた、0.8(MW)の電力を抑制することができる。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、0.8(MW)の電力を抑制することを表す情報とを、受発注システム11に送信する。これにより、受発注システム11は、デマンドレスポンス応答判断システム25から送信されてきた情報に基づいて、要求されたデマンドレスポンスを受け入れる(承諾する)ことを表すDR応答信号と、0.8(MW)の電力を抑制することを表す需要情報とを、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する。
なお、常時対応設備の運転状態を変更するのみで要求されたデマンドレスポンスを実現することができれば、生産工場20において生産する製品の品質や納期に関するリスクは最も少ない。
一方、ステップS100の判断によって、常時対応設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができないと判断した場合(ステップS100の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、常時対応設備の運転状態の変更に加えて時間移動可能設備を稼働させる時間帯を移動させる生産計画の変更によって、デマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する(ステップS130)。
ステップS130の判断によって、常時対応設備の運転状態の変更と、時間移動可能設備の稼働時間の移動とによってデマンドレスポンスを実現することができると判断した場合(ステップS130の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産実行システム22に、時間移動可能設備の稼働時間を移動する(遅らせる)指示を出力する。このとき、デマンドレスポンス応答判断システム25は、時間移動可能設備の稼働を遅らせる時間の情報も併せて生産実行システム22に出力する(ステップS140)。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS110において常時対応設備に指定時刻から指定時間の停止または能力抑制の指示を出力し、続くステップS120においてデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する。
このステップS140の処理により、例えば、図3のデマンドレスポンス対応能力一覧表に示されている生産設備242−3の稼働時間を最大遅延時間(分)=300(分)に移動する(遅らせる)指示を出力した場合、生産実行システム22は、生産設備242−3を稼働させる時間帯を300(分)遅らせる。つまり、生産実行システム22は、エネルギー部門23に備えたエネルギー制御システム231に送信するエネルギー供給指示や、生産部門24に備えた生産設備制御システム241に送信する生産指示を、300(分)遅らせる。また、ステップS110〜ステップS120の処理により、常時対応設備を管理しているシステム(不図示)は、対応時間(分)=3(分)後に照明設備243−2および空調設備244−2を停止させる。これにより、生産設備242−3による0.9(MW)と、照明設備243−2および空調設備244−2による0.8(MW)とを合わせた、1.7(MW)の電力を抑制することができる。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、1.7(MW)の電力を抑制することを表す情報とを、受発注システム11に送信する。これにより、受発注システム11は、デマンドレスポンス応答判断システム25から送信されてきた情報に基づいて、要求されたデマンドレスポンスを受け入れる(承諾する)ことを表すDR応答信号と、1.7(MW)の電力を抑制することを表す需要情報とを、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する。
なお、生産計画を変更することによって要求されたデマンドレスポンスを実現する場合には、常時対応設備のみで要求されたデマンドレスポンスを実現する場合よりも、生産工場20において生産する製品の品質や納期に関するリスクが多くなる。しかし、生産計画の変更の中でも、時間移動可能設備を稼働させる時間帯を移動させる生産計画の変更の方が、工程を組み換える生産計画の変更よりも大幅にリスクは少ない。
なお、時間移動可能設備が稼働する時間帯を移動させるような生産計画の変更を行った場合、デマンドレスポンス応答判断システム25は、同じ時間移動可能設備が稼働する時間帯がさらに移動させられてしまわないように、デマンドレスポンス対応能力一覧表を用いて更新管理してもよい。この場合、例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表の「時間移動可能設備」の欄内に「OK」マークを示さないようにしてもよいし、状態を固定(ロック)して、ステップS130の処理における判断の対象から外す(除外する)ことを表す新たな「チェック」マークを付与してもよい。なお、「OK」マークを示さないようにしたり、状態を固定(ロック)したりして、稼働する時間帯がさらに移動されてしまわないように変更した時間移動可能設備は、この時間移動可能設備の当該時間帯の運転が終了した後に、元の状態に戻す。ただし、緊急の場合を考えると、稼働する時間帯がさらに移動させられてしまわないように変更した時間移動可能設備を、例えば、生産工場20の管理者がすぐに元の状態に戻すことができる仕組みを備えていることが望ましい。
一方、ステップS130の判断によって、常時対応設備の運転状態の変更と、時間移動可能設備の稼働時間の移動とによってデマンドレスポンスを実現することができないと判断した場合(ステップS130の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、生産計画の変更が可能であるか否かを確認する(ステップS150)。より具体的には、図3のデマンドレスポンス対応能力一覧表の「工程組み換え必要設備」の欄に、生産する製品または半製品の種類(銘柄)や、その生産の順番(時間)、生産量などを変更する、つまり、工程を組み替えることができる設備であることを表す「チェック」マークが示されている生産設備があるか否かを確認する。
そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS150の確認によって、生産計画の変更が可能である、つまり、「工程組み換え必要設備」の欄に「チェック」マークが示されている生産設備があることが確認された場合(ステップS150の“YES”)、製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替えた生産計画の立案を、例えば、生産計画立案システム21に指示する。
デマンドレスポンス応答判断システム25から出力された、製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替えた生産計画の立案の指示により、生産計画立案システム21は、図4に示したようなエネルギー消費特性表を参照して、現在の生産計画を修正した新たな生産計画(以下、「修正生産計画」という)を立案する。そして、生産計画立案システム21は、立案した修正生産計画を、生産計画修正案実施判断システム26に出力する。生産計画修正案実施判断システム26は、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに基づいて、生産計画立案システム21から出力された修正生産計画を実施した場合の得失を算出し、算出した得失の情報に基づいて、修正生産計画が実施すべき生産計画であるか否かを判断する。そして、生産計画修正案実施判断システム26は、修正生産計画に対する判断結果を、生産計画立案システム21を介してデマンドレスポンス応答判断システム25に出力する。なお、生産計画修正案実施判断システム26の構成および動作に関する詳細な説明は、後述する。
その後、デマンドレスポンス応答判断システム25は、生産計画立案システム21を介して生産計画修正案実施判断システム26から出力された修正生産計画に対する判断結果が、予め定めた条件を満足する生産計画であるか否か、すなわち、生産工場20において採用することができる生産計画であるか否かを確認することによって、製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替える生産計画の変更によってデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する(ステップS160)。
ステップS160の判断によって、生産計画の変更によってデマンドレスポンスを実現することができると判断した場合(ステップS160の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産計画立案システム21を介して生産実行システム22に、修正生産計画に基づいた製品の生産、つまり、現在の生産計画の修正生産計画への変更の指示を出力する(ステップS170)。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS110において常時対応設備に停止の指示を出力し、続くステップS120においてデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する。
一方、ステップS150の判断によって、生産計画の変更が可能でないと判断した場合(ステップS150の“NO”)、またはステップS160の判断によって、生産計画の変更によってデマンドレスポンスを実現することができないと判断した場合(ステップS160の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25における第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理は、ステップS180に進む。ステップS180の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れることができない、つまり、デマンドレスポンスの要求を拒否することを表す情報を、受発注システム11に送信する。これにより、受発注システム11は、デマンドレスポンス応答判断システム25から送信されてきた情報に基づいて、要求されたデマンドレスポンスの要求を受け入れることができないことを表すDR応答信号を、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する。
なお、第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理のステップS180の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、生産計画の変更を伴わすに抑制することができる電力の抑制量の情報を受発注システム11に送信し、デマンドレスポンスの要求に全て対応することはできないが、要求された電力の抑制量の一部を抑制することができることを示してもよい。例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25は、図3のデマンドレスポンス対応能力一覧表に基づいて、照明設備243−2および空調設備244−2を停止することによって0.8(MW)の電力を抑制することができ、生産設備242−3の稼働時間を移動する(遅らせる)ことによって0.9(MW)の電力を抑制することができることを表す情報を、受発注システム11に送信してもよい。つまり、デマンドレスポンス応答判断システム25は、受発注システム11を介して、0.8(MW)の電力、またはさらに0.9(MW)の電力を抑制することができることを表す需要情報を、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信してもよい。
なお、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表では、生産設備242−3、照明設備243−2、および空調設備244−2において、「通常消費」、「最小消費」、「最大消費」、および「現在消費」のそれぞれの欄の情報が同じ値である場合を示しているが、それぞれの設備における電力の消費量は、通常、最小、最大、現在の項目毎に異なる場合もある。このため、要求された電力の抑制量の一部を抑制することができることを表す情報を受発注システム11に送信する場合には、例えば、「最小消費」の欄の情報を用いて算出した電力の消費量の情報を送信することが望ましい。これは、「最小消費」の欄の情報は、それぞれの設備において最低限消費する電力の消費量を表している情報であるからである。なお、ここでは「最小消費」の欄の情報を用いて算出した電力の消費量の情報を送信することが望ましいとしたが、他の項目の情報を用いて抑制することができる電力の消費量を算出してもよい。この場合、どの項目の情報を使用して算出した値であるかを表す情報も受発注システム11に送信するようにすればよい。
このように、産業用デマンドレスポンス実現システムにおける第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、デマンドレスポンス対応能力一覧表を参照して、生産工場20内に設置された常時対応設備の運転状態を変更するのみで、要求されたデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。そして、生産工場20内に設置された常時対応設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができないと判断された場合に、時間移動可能設備、さらには工程組み換え必要設備に対する生産計画を変更して、要求されたデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。つまり、産業用デマンドレスポンス実現システムにおける第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、生産工場20において生産する製品の品質や納期に関するリスクや生産計画の変更に伴うリスクを考慮して、要求されたデマンドレスポンスを実施すべきか否かを判断する。
なお、図5に示した第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、判断した結果に応じた指示を対応する設備や生産計画立案システム21に出力した後に、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する処理手順を説明した。しかし、設備や生産計画立案システム21への指示の出力と、受発注システム11への情報の送信とは、逆の順番であってもよい。つまり、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを受発注システム11に送信した後に、判断した結果に応じた指示を対応する設備や生産計画立案システム21に出力する処理手順であってもよい。
なお、図5に示した第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、要求されたデマンドレスポンスを実現することができるかということに注目して処理を行う場合について説明した。しかし、電力プロバイダ40から送信されてくるデマンドレスポンスの要求には、電力を抑制する時間が指定されている。このため、産業用デマンドレスポンス実現システムにおけるデマンドレスポンスの実現可否の判断処理では、電力の抑制量に加えて、時間を考慮する必要もある。
<第2の処理手順>
図6は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおける第2の処理手順を示したフローチャートである。産業用デマンドレスポンス実現システムは、電力プロバイダ40からデマンドレスポンスの要求があり、受発注システム11からDR要求信号および料金情報のデータが送信されてくると、デマンドレスポンスの要求によって指定された時間の情報を取得し、図6に示した第2の処理手順によるデマンドレスポンスの実現可否の判断処理(以下、「第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理」という)を開始する。
第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、まず、デマンドレスポンス応答判断システム25は、受発注システム11から送信されてきたDR要求信号に含まれる電力の抑制量の情報と、電力の抑制が指定されている時刻(以下、「DR指定時刻」という)を取得し、現在の時刻との差分を、指定時間Xとする。また、デマンドレスポンス応答判断システム25は、図3に示したようなデマンドレスポンス対応能力一覧表から、それぞれの設備がデマンドレスポンスに対応することができる時間(「対応時間(分)」の欄の情報)を取得し、デマンドレスポンスに対応するために少なくとも確保が必要な時間を、対応可能時間Aとする。また、デマンドレスポンス応答判断システム25は、新たな生産計画(修正生産計画)を立案する場合に要する時間を、生産計画立案時間Bとする。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、指定時間Xと、対応可能時間Aおよび生産計画立案時間Bとを比較する(ステップS200)。
ステップS200の判断によって、指定時間Xが、最も早くデマンドレスポンスに対応することができる設備(図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表では、「常時対応設備」の欄に示された設備)における対応可能時間Aよりも短い(指定時間X<対応可能時間A)場合、ステップS210に進む。ここで、対応可能時間Aには、デマンドレスポンスへの対応に関わるコンピュータの処理時間や、それぞれの設備がデマンドレスポンスに対応した運転状態になるまでに要する最大の時間が加算された時間であり、例えば、常時対応設備を利用している部門に対してアナウンスなどを行うために要する時間も含まれている。ステップS210の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、指定時間Xまでにデマンドレスポンスを実現することができる設備がないため、デマンドレスポンスの要求を受け入れることができない、つまり、デマンドレスポンスの要求を拒否することを表す情報を、受発注システム11に送信する。これにより、受発注システム11は、デマンドレスポンス応答判断システム25から送信されてきた情報に基づいて、要求されたデマンドレスポンスの要求を受け入れることができないことを表すDR応答信号を、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信する。
なお、第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理のステップS210の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、最も早くデマンドレスポンスに対応することができる時刻および抑制することができる電力の抑制量の情報を受発注システム11に送信し、指定時間までにデマンドレスポンスの要求に対応することはできないが、要求された電力の抑制に対応することができることを示してもよい。例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25は、図3のデマンドレスポンス対応能力一覧表に基づいて、3(分)後であれば、常時対応設備を停止または能力抑制することによって0.8(MW)の電力を抑制することができ、210(分)後であれば、時間移動可能設備の稼働時間を移動する(遅らせる)ことによって、さらに0.9(MW)の電力を抑制することができることを表す情報を、受発注システム11に送信してもよい。つまり、デマンドレスポンス応答判断システム25は、受発注システム11を介して、3(分)後であれば0.8(MW)の電力を抑制することができ、210(分)後であればさらに0.9(MW)の電力を抑制することができることを表す需要情報を、電力プロバイダ40のデマンドレスポンス取引サーバ41に送信してもよい。
また、ステップS200の判断によって、指定時間Xが、対応可能時間A以上であり、仮に修正生産計画を立案する場合に要する生産計画立案時間Bよりも短い(対応可能時間A≦指定時間X<生産計画立案時間B)場合、ステップS220に進む。ステップS220の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、時間移動可能設備は指定時間Xでのデマンドレスポンスに適合することができるか否か、つまり、時間移動可能設備を稼働させる時間帯を移動させる生産計画の変更によって、デマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する(ステップS220)。
ステップS220の判断によって、時間移動可能設備は指定時間Xでのデマンドレスポンスに適合することができると判断した場合(ステップS220の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産実行システム22に、時間移動可能設備の稼働時間を移動する(遅らせる)指示を出力する。このとき、デマンドレスポンス応答判断システム25は、時間移動可能設備の稼働を遅らせる時間の情報も併せて生産実行システム22に出力する(ステップS221)。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25における第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理は、ステップS222に進む。
一方、ステップS220の判断によって、時間移動可能設備は指定時間Xでのデマンドレスポンスに適合することができないと判断した場合(ステップS220の“NO”)も、デマンドレスポンス応答判断システム25における第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理は、ステップS222に進む。
ステップS221の処理によって生産実行システム22に時間移動可能設備の稼働時間を移動する(遅らせる)指示を出力した後、またはステップS220の判断によって、時間移動可能設備は指定時間Xでのデマンドレスポンスに適合することができないと判断した場合、ステップS222において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、常時対応設備を管理しているシステム(不図示)に、DR指定時刻から常時対応設備を停止または能力抑制する指示を出力する。続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する(ステップS223)。
また、ステップS200の判断によって、指定時間Xが、生産計画立案時間B以上である(生産計画立案時間B≦指定時間X)場合、ステップS230に進む。ステップS230の処理において、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産計画立案システム21に、修正生産計画の立案を指示する。これにより、生産計画立案システム21は、図4に示したようなエネルギー消費特性表を参照して、修正生産計画を立案し、立案した修正生産計画を、生産計画修正案実施判断システム26に出力する(ステップS230)。
続いて、生産計画修正案実施判断システム26は、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに基づいて、生産計画立案システム21から出力された修正生産計画を実施した場合の得失を算出し、算出した得失の情報に基づいて、修正生産計画が実施することができる生産計画であるか否かを判断する。そして、生産計画修正案実施判断システム26は、修正生産計画に対する判断結果を、生産計画立案システム21を介してデマンドレスポンス応答判断システム25に出力する(ステップS231)。なお、生産計画修正案実施判断システム26の構成および動作に関する詳細な説明は、後述する。
続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、生産計画立案システム21を介して生産計画修正案実施判断システム26から出力された修正生産計画の得失が、予め定めた得失を満足するものであるか否か、例えば、予め定めた得失の閾値の範囲内であるか否かを判断する(ステップS232)。つまり、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS232において、修正生産計画が実施可能な生産計画であるか否かを判断する。
ステップS232の判断によって、修正生産計画の得失が予め定めた得失を満足すると判断した場合(ステップS232の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産計画立案システム21を介して生産実行システム22に、修正生産計画に基づいた製品の生産、つまり、現在の生産計画の修正生産計画への変更の指示を出力する(ステップS234)。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS222においてDR指定時刻から常時対応設備を停止または能力抑制する指示を出力し、続くステップS223においてデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する。
一方、ステップS232の判断によって、修正生産計画の得失が予め定めた得失を満足しないと判断した場合(ステップS232の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、現在の時刻で指定時間Xを更新し、さらに別の修正生産計画の立案を指示するか否か、すなわち、修正生産計画の立案をリトライするか否かを判断する(ステップS233)。
ステップS233の判断によって、修正生産計画の立案をリトライすると判断した場合(ステップS233の“YES”)、すなわち、更新した指定時間Xが、生産計画立案時間B以上である(生産計画立案時間B≦更新した指定時間X)場合、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS230に戻って、ステップS230〜ステップS232の処理を繰り返す。なお、デマンドレスポンス応答判断システム25における第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理においては、ステップS233の判断に応じてステップS230に戻ってステップS230〜ステップS232の処理を繰り返す回数を予め定めておいてもよい。
一方、ステップS233の判断によって、修正生産計画の立案をリトライしないと判断した場合(ステップS233の“NO”)、すなわち、更新した指定時間Xが、生産計画立案時間Bよりも短い(生産計画立案時間B>更新した指定時間X)場合、デマンドレスポンス応答判断システム25における第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理は、ステップS222に進む。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS222においてDR指定時刻から常時対応設備を停止または能力抑制する指示を出力し、続くステップS223においてデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する。
このように、産業用デマンドレスポンス実現システムにおける第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理では、デマンドレスポンス対応能力一覧表を参照して、電力プロバイダ40から指定された時間に、要求されたデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。
なお、産業用デマンドレスポンス実現システムにおいては、第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理の考え方と、第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理の考え方とを合わせた考え方に基づいて、デマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断してもよい。つまり、要求された抑制量のデマンドレスポンスを実現することができるかということに注目した判断と、指定された時間にデマンドレスポンスを実現することができるかということに注目した判断とを組み合わせて、最終的なデマンドレスポンスの実現可否の判断をするようにしてもよい。
なお、図6に示した第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理でも、設備や生産計画立案システム21に指示を出力した後に、受発注システム11に情報を送信する処理手順を説明したが、図5に示した第1のデマンドレスポンス実現可否判断処理と同様に、受発注システム11に情報を送信した後に、判断した結果に応じた指示を対応する設備や生産計画立案システム21に出力する処理手順であってもよい。
次に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおいてデマンドレスポンスを実現する場合の一例について説明する。まず、産業用デマンドレスポンス実現システムが判断する生産計画について説明する。図7は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおいて実現の可否を判断する生産計画の一例を示した図である。図7(a)には、現在の生産計画と、この現在の生産計画に基づいたそれぞれの設備の使用計画(使用設備計画)と、この使用設備計画において消費する電力の実績値および予測値のグラフとの一例を示している。また、図7(b)には、修正生産計画に基づいた使用設備計画と、電力の実績値および予測値のグラフとの一例を示している。なお、図7(a)および図7(b)のそれぞれに示した電力の実績値および予測値のグラフには、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスにおける、時間毎の電力の消費量の要求値(抑制要求を100%反映した場合の消費量)も併せて示している。
図7(a)の中段に示した使用設備計画は、現在の生産計画(図7(a)の上段参照)に基づいて示したそれぞれの設備の使用計画、つまり、それぞれの設備が稼働している期間を表した図である。この使用設備計画を見ることによって、それぞれの生産設備が生産する製品の銘柄と、稼働している期間、つまり、どのタイミングで製品を生産し、次に製品を生産するまでどれくらいの空き時間があるかの概略を確認することができる。そして、使用設備計画に示された空き時間の範囲でそれぞれの設備を稼働させる時間帯を移動させる、つまり、製品を生産する前後の工程に影響を及ぼさない範囲で移動させることによって、電力プロバイダ40から指定された時間に、要求されたデマンドレスポンスを容易に実現することができる。つまり、この使用設備計画に基づいて指定された時間に生産設備の空き時間を作り出すように生産計画を変更することができれば、生産計画の全体に影響を及ぼしてしまう可能性がある工程の組み換えによって生産計画を変更するよりも、少ないリスクでデマンドレスポンスに対応することができる。
例えば、現在の生産計画では、図7(a)の下段に示した電力の実績値および予測値のグラフにおいて、電力プロバイダ40から要求されたデマンドレスポンスにおける時間毎の電力の抑制量(DR要求)を比較すると、1月30日の12時から15時までの領域Dで示された期間で、デマンドレスポンスの要求を満足していないことがわかる。そこで、デマンドレスポンス応答判断システム25は、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において、図3に示したようなデマンドレスポンス対応能力一覧表を参照し、図7(b)の上段の使用設備計画に示した時間移動Mのように、生産設備242−3の稼働時間を移動する(遅らせる)。これにより、生産計画を変更した後は、図7(b)の下段に示した電力の実績値および予測値のグラフのように、現在の生産計画と同じ時間帯の領域Dで示された期間においても、デマンドレスポンスの要求を満足するようになる。
なお、図7(b)では、時間移動可能設備である生産設備242−3の稼働時間を移動する(遅らせる)ことによってデマンドレスポンスの要求を満足させるようにした一例を示したが、工程組み換え必要設備の工程を組み換えることによって生産計画を変更した場合でも、図7(b)の下段に示した電力の実績値および予測値のグラフと同様に、デマンドレスポンスの要求を満足させる結果を得ることができる。
なお、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において、時間移動可能設備を稼働させる時間帯を移動する場合、使用設備計画に示されたような、それぞれの設備における見かけの空き時間を確認するだけではなく、移動する予定の時間移動可能設備の前段または後段に位置するそれぞれの設備との関係も考慮して、時間移動可能設備を稼働させる時間帯の移動可否の判断をすることが望ましい。ここで、考慮する前段または後段に位置する設備との関係には、例えば、製品を生産するための材料の供給の関係、いわゆる、サプライチェーンの関係などがある。また、例えば、それぞれの設備の保守(例えば、洗浄)、点検など、製品の生産以外に設備を使用する状態の有無や、これに要する時間も考慮する。
例えば、サプライチェーンの関係であれば、時間移動可能設備に十分な空き時間がある場合であっても、この時間移動可能設備の前段に位置している設備から供給される原材料を貯蔵しておく設備がなければ、稼働時間を最大限に移動する(遅らせる)ことはできない。また、この時間移動可能設備に供給する原材料を貯蔵しておく設備がある場合でも、貯蔵設備に貯蔵することができる量以上に原材料を貯蔵させることはできないため、稼働時間を移動する(遅らせる)ことができる時間にも制約がある。また、例えば、時間移動可能設備が製造した中間製品を貯蔵しておく設備がある場合においても、この時間移動可能設備の後段に位置している設備が貯蔵されている中間製品を全て消費してしまう前に運転(稼働)しなければ、後段に位置している設備の運転(稼働)を停止せざるを得ないため、全ての空き時間を稼働時間の移動のために使用することはできない。このため、デマンドレスポンス応答判断システム25は、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において時間移動可能設備の稼働時間を移動させる(遅らせる)場合に、このようなサプライチェーンに関係する制約も考慮して、稼働を遅らせる時間を決定する。
また、例えば、設備の保守、点検などの関係であれば、保守や点検は、設備の使用頻度や、稼働時間の累積、特定の製品を製造した後など、様々な条件によって制約が発生する。そして、時間移動可能設備が保守や点検などを行っている場合には、製品を生産するために運転(稼働)することはできない。このため、デマンドレスポンス応答判断システム25は、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において時間移動可能設備の稼働時間を移動させる(遅らせる)場合に、このような設備の保守や点検などに関係する制約も考慮して、稼働を遅らせる時間を決定する。
ただし、設備の保守、点検などが予定されている時間移動可能設備に関しては、稼働時間を移動する(遅らせる)対象の設備として扱わないようにすることによって対応することもできる。この場合には、例えば、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において空き時間を探索する対象の時間移動可能設備に含めないようにしてもよい。また、例えば、空き時間がある場合でも、デマンドレスポンス対応能力一覧表に時間移動可能設備として示さない(例えば、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表の「時間移動可能設備」の欄内に「OK」マークを示さない)ようにしてもよいし、状態を固定(ロック)して空き時間を探索する時間移動可能設備の対象から外す(除外する)ことを表す「チェック」マークを付与してもよい。
産業用デマンドレスポンス実現システムでは、移動する予定の時間移動可能設備に対して、前段または後段に位置するそれぞれの設備との上述したような関係も考慮して、稼働時間を移動する(遅らせる)ことが可能であるか否かを判断し、稼働時間を移動させる(遅らせる)場合の最大の時間や、デマンドレスポンスに対応することができる時刻などを算出して、受発注システム11に送信する。
ここで、前段または後段に位置するそれぞれの設備との関係を考慮して、時間移動可能設備の稼働時間を移動する(遅らせる)場合の一例について説明する。図8は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおいて生産計画を変更する一例を示した図である。図8には、生産工場20において製品Cを製造する経路(図2参照)において、サプライチェーンに関係する制約を考慮して時間移動可能設備である生産設備242−3の稼働時間を移動する(遅らせる)場合の一例を示している。図8(a)には、製品Cを製造する設備構成を示し、図8(b)には、生産設備242−2と生産設備242−3とがそれぞれ製品を製造する際の仕様およびそれぞれの生産設備におけるサプライチェーンの関係から発生する制約を示し、図8(c)には、現在の生産計画(現生産計画)と修正生産計画とのそれぞれの使用設備計画を示している。
図8(a)において、生産設備242−2は、原材料を加工して中間製品C1を製造し、製造した中間製品C1をC1タンク245−2に貯蔵する。また、生産設備242−3は、C1タンク245−2に貯蔵されている中間製品C1を加工して製品Cを製造し、製造した製品CをC2タンク245−3に貯蔵する。このときの生産設備242−2における製品の製造に関する仕様は、「時間あたりの中間製品C1の生産量Aが3(トン/h)」、「C1タンク245−2の貯蔵容量Bが2(トン)」であり、生産設備242−3における製品の製造に関する仕様は、「時間あたりの中間製品C1の消費量Cが2(トン/h)」、「C2タンク245−3の貯蔵容量Dが2(トン)」であるものとする(図8(b)参照)。このため、生産設備242−2および生産設備242−3のそれぞれにおける製品の製造に関する仕様から、図8(b)に示したように、「生産設備242−3の遅延時間は生産設備242−2の貯蔵容量、すなわち、C1タンク245−2の貯蔵容量B=2(トン)で補われること」、「生産設備242−3の稼働時間の移動によって、生産設備242−2の貯蔵容量、すなわち、C1タンク245−2の貯蔵容量B=2(トン)を超えないこと」などの制約が発生する。
デマンドレスポンス応答判断システム25は、第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理において、図8(c)に示したように、現生産計画の使用設備計画に示された時間移動可能設備である生産設備242−3の稼働時間を、修正生産計画の使用設備計画に示された稼働時間に移動させる(遅らせる)際に、図8(b)に示したような制約を考慮して、運転(稼働)を遅らせる時間を決定する。より具体的には、生産設備242−2と生産設備242−3との間のサプライチェーンにおいてバッファとなるC1タンク245−2に貯蔵する中間製品C1がなくならないように考え、C1タンク245−2の貯蔵容量Bを生産設備242−3における時間あたりの中間製品C1の消費量Cで除算した値(貯蔵容量B/消費量C)を、生産設備242−3の稼働時間を移動させる(遅らせる)最大の時間として算出する。すなわち、貯蔵容量B/消費量C=2(トン)/2(トン/h)=1(h)を、生産設備242−3の稼働時間を移動させる(遅らせる)最大の時間として算出する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、算出した最大の時間よりも少ない時間を生産設備242−3の時間移動M(M<B/C)に決定する。すなわち、1時間よりも短い時間(M<1)を、生産設備242−3の運転(稼働)を遅らせる時間に決定する。
これにより、時間移動可能設備である生産設備242−3の稼働時間を移動した(遅らせた)場合でも、生産設備242−2と生産設備242−3との間のサプライチェーンの関係によって、生産設備242−2の運転(稼働)を制限することなく、つまり、製品を生産する前後の工程に影響を及ぼさない範囲で、容易に少ないリスクでデマンドレスポンスに対応することができる。
なお、サプライチェーンの関係や設備の保守、点検などの情報は、例えば、生産実行システム22や、エネルギー制御システム231、生産設備制御システム241にアクセスすることによって、生産設備が実行中あるいは実行する予定の動作プログラムや制御パラメータの情報から得ることができる。動作プログラムや制御パラメータから取得する情報としては、例えば、原材料を貯蔵させておくこと可能な貯蔵可能量、それぞれの設備における単位時間あたりの原材料の使用量、それぞれの設備における累積の稼働時間など、それぞれの設備における現在の情報(以下、「設備現在情報」という)がある。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、上述したように、動作プログラムや制御パラメータの情報から取得した設備現在情報に基づいて、デマンドレスポンス対応能力一覧表を更新(メンテナンス)する。
ここで、デマンドレスポンス応答判断システム25によるデマンドレスポンス対応能力一覧表の更新方法について説明する。図9は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおいてデマンドレスポンス対応能力一覧表を更新する処理手順を示したフローチャートである。デマンドレスポンス応答判断システム25は、定期的、あるいは第1または第2のデマンドレスポンス実現可否判断処理を開始する前に、デマンドレスポンス対応能力一覧表を更新する処理(以下、「デマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理」という)を行う。
デマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理では、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されているそれぞれの設備を順次更新する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されている全ての設備の情報の更新が完了したか否か、すなわち、デマンドレスポンス対応能力一覧表の更新が完了したか否かを確認する(ステップS300)。
ステップS300の確認によって、デマンドレスポンス対応能力一覧表の更新が完了した場合(ステップS300の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理を完了する。一方、ステップS300の確認によって、デマンドレスポンス対応能力一覧表の更新が完了していない場合(ステップS300の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、更新が完了していない最初の設備から設備現在情報を取得する(ステップS310)。例えば、設備現在情報を取得した設備が現在使用している電力の消費量(現在消費)や、空き時間を探索する時間移動可能設備の対象から外された(除外された)固定(ロック)の状態であるか否かを表す情報などを取得する。
続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産実行システム22から現在の生産計画(現生産計画)における使用設備計画を取得する(ステップS320)。その後、デマンドレスポンス応答判断システム25は、取得した使用設備計画に基づいて、設備現在情報を取得した最初の設備について、前段および後段に位置するそれぞれの設備との依存関係を確認する(ステップS330)。なお、このステップS330の処理では、設備への入力(例えば、生産設備に供給される原材料)の種類が1種類以下で、この設備の出力(例えば、生産設備が生産する製品や中間製品)の種類が1種類以下である場合、デマンドレスポンス応答判断システム25は、この設備の依存関係は「シンプル依存である」とし、稼働時間を移動する(遅らせる)対象の時間移動可能設備であると判定する。一方、その他の場合、つまり、設備への入力または設備の出力の種類が複数である場合には、デマンドレスポンス応答判断システム25は、この設備の依存関係は「シンプル依存ではない」とし、稼働時間を移動する(遅らせる)対象ではない工程組み換え必要設備であると判定する。これは、設備への入力または設備の出力の種類が複数であるということは、この設備の前段や後段に位置する設備との間に多くの依存関係があり、一般的に稼働時間の移動可否の判断が困難である、つまり、容易に稼働時間を移動することができないと考えられるからである。
ステップS330における依存関係の確認の結果、設備現在情報を取得した最初の設備がシンプル依存ではないことが確認された場合(ステップS330の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、この設備を工程組み換え必要設備として、デマンドレスポンス対応能力一覧表に登録する(ステップS340)。より具体的には、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されているこの設備の「生産計画要変更設備」の欄内の「工程組み換え必要設備」の欄に、「チェック」マークを示す。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS300に戻って、デマンドレスポンス対応能力一覧表の更新が完了したか否かを確認し、デマンドレスポンス対応能力一覧表の更新が完了していない場合(ステップS300の“NO”)には、更新が完了していない次の設備に対するデマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理を繰り返す。
一方、ステップS330における依存関係の確認の結果、設備現在情報を取得した最初の設備がシンプル依存であることが確認された場合(ステップS330の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、この設備を時間移動可能設備として、デマンドレスポンス対応能力一覧表に仮登録する(ステップS350)。より具体的には、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されているこの設備の「生産計画要変更設備」の欄内の「時間移動可能設備」の欄に、「OK」マークに代わる、つまり、仮登録を表すマーク(例えば、「仮」マーク)を示す。そして、使用設備計画を時系列に確認し、「対応時間(分)」の欄、「計画起動時間(分)」の欄、および「最大遅延時間(分)」の欄の情報(以下、まとめて示す場合には、「時間移動情報」という)を示す。なお、図3に示したデマンドレスポンス対応能力一覧表においては、時間移動可能設備である生産設備242−3の時間移動情報のそれぞれに、1つの時間のみが示されているが、複数の時間を示してもよい。
続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、時間移動可能設備として仮登録した最初の設備について、稼働時間の移動に関する全ての制約に対する確認が完了したか否かを確認する(ステップS360)。
ステップS360の確認の結果、全ての制約に対する確認が完了していない場合(ステップS360の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、時間移動可能設備として仮登録した最初の設備に対する稼働時間の移動に関する制約を、例えば、この設備から取得する(ステップS370)。
続いて、デマンドレスポンス応答判断システム25は、使用設備計画に基づいて、この設備の見かけの空き時間が、取得した稼働時間の移動に関する制約の条件を満足する状態であるか否か、つまり、制約の条件に照らし合わせても、見かけの空き時間の全ての時間を、稼働時間を移動する時間として利用することができるか否かを確認する(ステップS380)。
ステップS380の確認の結果、空き時間が制約の条件を満足する状態である場合(ステップS380の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS360に戻って、稼働時間の移動に関する全ての制約に対する確認が完了したか否かを確認し、全ての制約に対する確認が完了していない場合(ステップS360の“NO”)には、空き時間が制約の条件を満足する状態であるか否かの確認の処理を繰り返す。
一方、ステップS380の確認の結果、空き時間が制約の条件を満足する状態でない場合(ステップS380の“NO”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、仮登録した時間移動可能設備の時間移動情報を、稼働時間の移動に関する制約の条件を満足する状態に修正(補正)する(ステップS385)。例えば、見かけの空き時間の期間を制約の条件に合わせて短くすることによって、見かけの空き時間の全ての時間を稼働時間の移動のために利用することができる状態に修正(補正)する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、ステップS360に戻って、稼働時間の移動に関する全ての制約に対する確認が完了したか否かを確認や、空き時間が制約の条件を満足する状態であるか否かの確認の処理を繰り返す。
そして、ステップS360の確認の結果、全ての制約に対する確認が完了した場合(ステップS360の“YES”)、デマンドレスポンス応答判断システム25は、現在の時間移動可能設備の情報、つまり、ステップS385において仮登録した時間移動情報、またはステップS385において修正(補正)した時間移動情報を確定する(ステップS390)。より具体的には、デマンドレスポンス対応能力一覧表に時間移動可能設備として仮登録した最初の設備の時間移動情報、または稼働時間の移動に関する制約の条件を満足する状態の値に修正(補正)した時間移動情報が確定した情報であることを表すために、「時間移動可能設備」の欄に示した仮登録を表すマークを、「OK」マークに変更する。
このように、産業用デマンドレスポンス実現システムにおけるデマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理では、デマンドレスポンス応答判断システム25が、定期的、あるいはデマンドレスポンス実現可否判断の処理を開始する前に、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されたそれぞれの設備について、稼働時間の移動に関する全ての制約の条件に適合するか否かを確認する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、確認した結果に応じて、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示されているそれぞれの設備の情報を順次更新する。これにより、デマンドレスポンス対応能力一覧表には、前段または後段に位置するそれぞれの設備との関係の制約や、設備の保守や点検などに関係する制約などの様々な制約の条件を満足する(条件がクリアされた)設備のみが、時間移動可能設備として示されることになる。しかも、デマンドレスポンス対応能力一覧表には、常に最新の情報が示される。このことにより、産業用デマンドレスポンス実現システムでは、製品を生産する前後の工程に影響を及ぼすことなく、時間移動可能設備を稼働させる時間帯を移動させる生産計画の変更を容易に行うことができ、少ないリスクでデマンドレスポンスに対応することができる。
なお、時間移動情報が同じ時間移動可能設備をデマンドレスポンス対応能力一覧表に複数登録する場合には、例えば、登録した順や、通常消費の値の大きい順など、予め定めた条件によって優先度を設定して登録してもよい。これにより、デマンドレスポンス応答判断システム25は、優先度が高い時間移動可能設備から順に稼働時間を移動する(遅らせる)ことができ、デマンドレスポンスの要求を満足させるために時間帯を移動させる時間移動可能設備の数を少なくすることができる。
また、産業用デマンドレスポンス実現システムでは、更新したデマンドレスポンス対応能力一覧表に基づいた電力の抑制可能量を、例えば、デマンドレスポンス応答判断システム25に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。図10は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおいて抑制することができる電力の値を表示する一例を示した図である。図10には、抑制することができる電力の値(抑制可能電力)を縦軸にし、時間を横軸にしたグラフにすることによって、抑制可能電力の変化を時間軸方向に可視化した場合の一例を示している。これにより、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備によって抑制することができる抑制可能電力の大きさを時間帯毎に確認することができる。
それぞれの時間帯における抑制可能電力の大きさは、デマンドレスポンス応答判断システム25がデマンドレスポンス対応能力一覧表更新処理において更新したデマンドレスポンス対応能力一覧表に基づいて算出することができる。より具体的には、デマンドレスポンス対応能力一覧表に示された常時対応設備および時間移動可能設備における「最小消費」の欄の情報を時間帯毎に加算することによって、それぞれの時間帯における抑制可能電力の大きさを算出することができる。なお、図4に示したようなエネルギー消費特性表を用いて電力の消費を予測することができる場合には、「最小消費」という悲観的な数値予測でなく、より高い精度で抑制可能電力を予測することができる。従って、可視化する抑制可能電力は、「最小消費」の欄の情報を時間帯毎に加算して得た大きさのみではなく、「通常消費」の欄、「最大消費」の欄、および「現在消費」の欄のそれぞれの情報を時間帯毎に加算し、通常、最小、最大、現在の項目毎に、それぞれの時間帯における抑制可能電力を可視化してもよい。
なお、図10に示した表示の一例では、例えば、時間移動可能設備である生産設備242−3に対応する抑制可能電力が3つの時間帯に示されている。これは、生産設備242−3の稼働時間を移動できる時間帯が3つあることを示している。この場合、デマンドレスポンス対応能力一覧表に時間移動可能設備として登録された生産設備242−3に対応する時間移動情報も3つある。
なお、生産工場20のエネルギー部門23には、上述したように、エネルギー変換設備233やエネルギー蓄積設備234が設置されている。このため、生産工場20では、エネルギー変換設備233が非電力エネルギーを変換した電力エネルギーや、エネルギー蓄積設備234に蓄積した電力エネルギーを、生産設備に供給することができる。このため、産業用デマンドレスポンス実現システムにおいて、これらの電力、つまり、電力プロバイダ40から購入しておらず、デマンドレスポンスによって抑制する対象となっていない電力を可視化し、図10に示した表示の一例に重畳して表示手段などに表示させてもよい。
このように電力の抑制可能量を可視化することによって、例えば、生産工場20の管理者は、デマンドレスポンスを実現することができるか否かを視覚的に確認することもできる。産業用デマンドレスポンス実現システムは、電力の抑制可能量を可視化することによって、例えば、生産工場20の管理者が、要求されたデマンドレスポンスの実現を最終的に判断する場合などにおいて、正しい判断を下すための支援を行うことができる。
次に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを構成する生産計画修正案実施判断システム26について説明する。生産計画修正案実施判断システム26は、デマンドレスポンス応答判断システム25によるデマンドレスポンス実現可否判断処理によって、要求されたデマンドレスポンスを実現するためには製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替える生産計画の変更が必要であると判断された場合に起動される。そして、生産計画修正案実施判断システム26は、生産計画立案システム21から出力された修正生産計画での生産工場20の得失を算出し、修正生産計画の実施の可否判断を行う。
このとき、生産計画修正案実施判断システム26は、現在の生産計画(現生産計画)、修正生産計画、生産工場20における製品の生産に関する制約、生産工場20内のそれぞれの設備における工程毎のエネルギー消費特性、および受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータ、つまり、電力プロバイダ40から送信されてきた料金情報のデータに基づいて、修正生産計画における得失を算出する。そして、生産計画修正案実施判断システム26は、算出した得失に基づいて、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かを判断する。すなわち、修正生産計画が、生産工場20において採用して実施することができる生産計画であるか否かを判断する。生産計画修正案実施判断システム26は、判断した結果を生産計画立案システム21に出力する。
図11は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムに備えた生産計画修正案実施判断システム26の概略構成を示した図である。生産計画修正案実施判断システム26は、生産エネルギー消費予測部261と、用益計画変更得失計算部262と、生産計画変更得失計算部263と、得失加算部264と、リスク考慮得失補正部265と、リスク減算部266と、比較部267と、計画変更可否判断部268とを備えている。なお、図11には、生産計画修正案実施判断システム26に関係する生産工場20内のシステムも併せて示している。また、図11には、生産計画修正案実施判断システム26に備えたそれぞれの構成要素における処理において用いられる情報や、それぞれの構成要素が出力する情報も併せて示している。
生産エネルギー消費予測部261は、現生産計画、および生産計画立案システム21が立案した修正生産計画のそれぞれについて、図4に示したようなそれぞれの設備におけるエネルギー消費特性表に基づいて、生産工場20内のそれぞれの設備における電力の消費量の予測値を算出する。ここで生産エネルギー消費予測部261が算出した電力の消費量の予測値は、現在以降にそれぞれの設備によって消費される電力の予測値である。そして、生産エネルギー消費予測部261は、算出した電力の消費量の予測値を、用益計画変更得失計算部262に出力する。
なお、エネルギー消費特性表に示されているそれぞれの設備とその運転状態は、さらに複数の機器や運転の状態、すなわち、段階(フェーズ)に細分化できる場合もある。例えば、生産設備242−1という大きな単位は、フィードポンプやヒーター、かくはん機など複数の機器に分解でき、また、製品AやBの製法に従い、これらの機器が定められたフェーズで段階的に動作する。この場合、それぞれの運転状態において実際に使用するエネルギーの消費量は、エネルギー消費特性表に示されているようにそれぞれの運転状態で一定の量ではなく、細分化されて実行されるそれぞれのフェーズに応じてエネルギーの消費量が変動する。つまり、生産設備におけるそれぞれのフェーズで使用されるエネルギーの消費量は、エネルギー消費特性表に示されたそれぞれの運転状態の「エネルギー消費量」の欄に示されたそれぞれのエネルギーの消費量の値または計算式によって示された一定の値でない場合がある。必要であれば、エネルギー消費特性表に、細分化されたそれぞれのフェーズ毎のエネルギー消費特性を追加する。なお、生産エネルギー消費予測部261は、例えば、細分化されたそれぞれのフェーズ毎に示されたエネルギーの消費量を平均化するなど、工程全体のエネルギー消費量にまとめてから、それぞれの設備における簡略した電力の消費量を算出するようにしてもよい。
なお、生産エネルギー消費予測部261がそれぞれの設備における電力の消費量を算出する際にどれくらいまで詳細な電力の消費量を算出するかは、それぞれの運転状態毎のエネルギー消費量や、要求されたデマンドレスポンスにおける時間毎の電力の抑制量に応じて決定することが望ましい。
なお、生産エネルギー消費予測部261が算出した電力の消費量の予測値は、例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。このとき、生産エネルギー消費予測部261は、現生産計画について算出した電力の消費量の予測値と、修正生産計画について算出した電力の消費量の予測値とを区別して表示するようにしてもよいし、それぞれの電力の消費量の予測値の差分を算出して表示するようにしてもよい。図11には、生産エネルギー消費予測部261が算出した電力の消費量の予測値を、予測確認情報として生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段表示させた状態の一例も示している。これにより、例えば、生産工場20の管理者は、生産エネルギー消費予測部261が算出した電力の消費量の予測値を、視覚的に確認することができる。
用益計画変更得失計算部262は、生産エネルギー消費予測部261から出力された現生産計画および修正生産計画のそれぞれの電力の消費量の予測値と、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータとに基づいて、現生産計画を修正生産計画に変更したことによる用益計画の変更に伴う得失を算出する。より具体的には、用益計画変更得失計算部262は、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに含まれる時間帯毎の電力の単価情報、インセンティブ情報、およびペナルティ情報に基づいて、現生産計画および修正生産計画のそれぞれにおける時間毎の用益を算出する。そして、用益計画変更得失計算部262は、デマンドレスポンスが要求されている期間における現生産計画での用益と修正生産計画での用益との差分を得失として算出する。そして、用益計画変更得失計算部262は、算出した得失(以下、「用益計画変更得失」という)を、得失加算部264に出力する。
なお、生産工場20において、電力プロバイダ40から購入した電力の代わりに、エネルギー変換設備233が非電力エネルギーを変換した電力エネルギーや、エネルギー蓄積設備234に蓄積した電力エネルギーを生産設備に供給して用いた場合には、これらの電力のコストも、用益計画変更得失計算部262が用益計画の変更に伴う得失を算出する際に含める。
生産計画変更得失計算部263は、現生産計画、および生産計画立案システム21が立案した修正生産計画のそれぞれについて、現生産計画を修正生産計画に変更したことに伴う得失を、生産工場20における制約に基づいて算出する。例えば、生産計画変更得失計算部263は、生産計画を変更することによって製品Bの納期を4時間遅らせた場合の損失を算出する。
ここで、生産工場20における制約には、生産工場20において製品を生産する際の品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)の制約(以下、「QCD制約」という)、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備の運転(稼働)に関する制約(以下、「設備制約」という)、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備において製品を生産する際の安全条件に関する制約(以下「安全制約」という)などがある。生産計画変更得失計算部263は、現生産計画および修正生産計画のそれぞれの使用設備計画に基づいて、生産工場20におけるそれぞれの制約の内容を確認し、使用設備計画が変更されたことによって対象となる制約を選択する。そして、生産計画変更得失計算部263は、選択した対象となる制約において発生する費用の合計を、得失として算出する。そして、生産計画変更得失計算部263は、算出した得失(以下、「生産計画変更得失」という)を、得失加算部264に出力する。
得失加算部264は、用益計画変更得失計算部262から出力された用益計画変更得失と、生産計画変更得失計算部263から出力された生産計画変更得失とを加算し、加算した結果の得失(以下、「計画変更得失」という)を、リスク減算部266に出力する。
リスク考慮得失補正部265は、予め列挙されている(リストアップされている)、生産工場20におけるQCD、安全、環境などの項目に対するリスクの情報に基づいて、現生産計画を修正生産計画に変更したことによって発生するリスクに関する得失を算出する。より具体的には、リスク考慮得失補正部265は、それぞれの設備におけるサプライチェーンの関係や設備の保守、点検などの依存関係によるリスクが予めリストアップされて一覧表としてまとめられているリスク一覧表に含まれるリスクの要因のそれぞれを確認し、現生産計画を修正生産計画に変更したことによって対象となるリスクを選択する。そして、リスク考慮得失補正部265は、選択した対象となるリスクが発生した場合の損失の合計を、得失として算出する。そして、リスク考慮得失補正部265は、算出した得失(以下、「リスク考慮得失」という)を、リスク減算部266に出力する。
なお、リスク考慮得失補正部265が判断した対象となるリスクは、例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。このとき、リスク考慮得失補正部265は、対象として選択したリスクと、選択していないリスクとを区別して表示するようにしてもよい。図11には、リスク考慮得失補正部265が選択したリスクを、危険度情報として生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段表示させた状態の一例も示している。これにより、例えば、生産工場20の管理者は、リスク考慮得失補正部265が選択したリスクを、視覚的に確認することができる。
リスク減算部266は、得失加算部264から出力された計画変更得失から、リスク考慮得失補正部265から出力されたリスク考慮得失を減算することによって、計画変更得失をリスク考慮得失で補正し、補正した結果の得失(以下、「デマンドレスポンス対応得失」という)を、比較部267に出力する。
比較部267は、予め設定された、デマンドレスポンスに対応するか否かを判断するための得失の閾値(以下、「デマンドレスポンス対応判断閾値」という)と、リスク減算部266から出力されたデマンドレスポンス対応得失とを比較し、比較した結果を表す情報を、計画変更可否判断部268に出力する。例えば、比較部267は、デマンドレスポンス対応得失の値とデマンドレスポンス対応判断閾値との差分を算出した結果を、比較結果として計画変更可否判断部268に出力する。
なお、比較部267が比較した結果の情報は、例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。図11には、比較部267が比較した結果の情報を、得失比較結果情報として生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段表示させた状態の一例も示している。これにより、例えば、生産工場20の管理者は、比較部267が比較した結果の情報を、視覚的に確認することができる。
計画変更可否判断部268は、比較部267から入力されたデマンドレスポンス対応判断閾値とデマンドレスポンス対応得失との比較結果に基づいて、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かを判断する。そして、計画変更可否判断部268は、判断した結果を、生産計画立案システム21に出力する。なお、計画変更可否判断部268は、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かの判断を、自動で行うか手動で行うか切り替えることができる。このため、計画変更可否判断部268は、切り替えスイッチSW1を備えている。
切り替えスイッチSW1が自動で判断を行う方に設定されている場合には、計画変更可否判断部268は、比較部267から出力された比較結果を表す情報に基づいて、自動で判断を行い、判断結果を生産計画立案システム21に出力する。なお、このときの計画変更可否判断部268による判断方法としては、例えば、デマンドレスポンス対応判断閾値とデマンドレスポンス対応得失との比較の結果がプラスである場合には生産計画を修正生産計画に変更すると判断し、比較の結果がマイナスである場合には生産計画を修正生産計画に変更しないと判断する方法が考えられる。つまり、デマンドレスポンス対応得失がデマンドレスポンス対応判断閾値を超えている場合に生産計画を修正生産計画に変更すると判断し、デマンドレスポンス対応得失がデマンドレスポンス対応判断閾値以下である場合に生産計画を修正生産計画に変更しないと判断する。
一方、切り替えスイッチSW1が手動で判断を行う方に設定されている場合には、例えば、比較部267から出力された比較結果が問題ないことが確認された際に生産工場20の管理者によって押下される指示スイッチSW2から指示信号が出力されると、計画変更可否判断部268は、現生産計画を修正生産計画に変更すると判断し、判断結果を生産計画立案システム21に出力する。つまり、生産工場20の管理者による承認によって、現生産計画を修正生産計画に変更すると判断した判断結果を生産計画立案システム21に出力する。
このような構成によって、生産計画修正案実施判断システム26は、現生産計画を修正生産計画に変更したことに伴う得失を算出し、算出した得失の情報に基づいて、実際に現生産計画を修正生産計画に変更するか否かを判断する。つまり、生産計画修正案実施判断システム26は、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画が実施することができる生産計画であるか否かを判断する。
次に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを構成する生産計画修正案実施判断システム26の動作について説明する。上述したように、生産計画修正案実施判断システム26は、デマンドレスポンス応答判断システム25によるデマンドレスポンス実現可否判断処理によって、製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替える生産計画の変更が必要であると判断された場合に起動され、生産計画立案システム21から出力された修正生産計画での生産工場20の得失を算出して、修正生産計画が実施することができる生産計画であるか否かを判断する。
図12は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムに備えた生産計画修正案実施判断システム26における処理手順を示したフローチャートである。生産計画修正案実施判断システム26は起動され、生産計画立案システム21から修正生産計画が出力されると、図12に示した処理手順による修正生産計画の実施の可否判断の処理(以下、「修正生産計画実施可否判断処理」という)を開始する。
修正生産計画実施可否判断処理では、まず、生産エネルギー消費予測部261が、図4に示したようなそれぞれの設備におけるエネルギー消費特性表に基づいて、現生産計画における電力の消費量を予測する。そして、生産エネルギー消費予測部261は、現生産計画の電力の消費量の予測値を、用益計画変更得失計算部262に出力する(ステップS400)。
続いて、生産エネルギー消費予測部261は、エネルギー消費特性表に基づいて、修正生産計画における電力の消費量を予測する。そして、生産エネルギー消費予測部261は、修正生産計画の電力の消費量の予測値を、用益計画変更得失計算部262に出力する(ステップS410)。
続いて、用益計画変更得失計算部262は、生産エネルギー消費予測部261から出力された現生産計画と修正生産計画とのそれぞれの電力の消費量の予測値と、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに含まれる時間帯毎の電力の単価情報、インセンティブ情報、およびペナルティ情報に基づいて、現生産計画と修正生産計画とのそれぞれの用益を時間毎に算出する(ステップS420)。そして、用益計画変更得失計算部262は、現生産計画での用益と修正生産計画での用益との差分を算出し、用益計画変更得失として得失加算部264に出力する(ステップS430)。
また、生産計画変更得失計算部263は、現生産計画および修正生産計画のそれぞれの使用設備計画に基づいて、QCD制約、設備制約、安全制約などの生産工場20における制約の中から対象となる制約を判断し、対象となる制約によって発生する費用の合計を、それぞれの生産計画に対して算出する。そして、生産計画変更得失計算部263は、現生産計画において対象となる制約によって発生する費用の合計と修正生産計画において対象となる制約によって発生する費用の合計との差分を算出し、生産計画変更得失として得失加算部264に出力する(ステップS440)。
続いて、得失加算部264は、用益計画変更得失計算部262から出力された用益計画変更得失と、生産計画変更得失計算部263から出力された生産計画変更得失とを加算した計画変更得失を、リスク減算部266に出力する(ステップS450)。
また、リスク考慮得失補正部265は、現生産計画を修正生産計画に変更したことによって対象となるリスクを、リスク発生確率テーブルに含まれるリスクの要因の中から選択し、選択したリスクを回避するためのリスク考慮得失を算出してリスク減算部266に出力する。そして、リスク減算部266は、得失加算部264から出力された計画変更得失を、リスク考慮得失補正部265から出力されたリスク考慮得失で補正したデマンドレスポンス対応得失を、比較部267に出力する(ステップS460)。
続いて、比較部267は、デマンドレスポンス対応判断閾値と、リスク減算部266から出力されたデマンドレスポンス対応得失との差分を算出し、比較結果として計画変更可否判断部268に出力する(ステップS470)。
続いて、計画変更可否判断部268は、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かの判断を自動で行うか否かを確認する(ステップS480)。ステップS480における判断方法の確認の結果、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かの判断を自動で行うことが確認された場合(ステップS480の“YES”)、計画変更可否判断部268は、比較部267から出力された比較結果に基づいて、デマンドレスポンス対応得失がデマンドレスポンス対応判断閾値を超えているか否かを確認する(ステップS490)。つまり、ステップS470において比較部267が算出したデマンドレスポンス対応判断閾値とデマンドレスポンス対応得失との差分である比較結果がプラスであるかマイナスであるかを確認する。
ステップS490における比較結果の確認の結果、比較部267から出力された比較結果がプラスである、つまり、デマンドレスポンス対応得失がデマンドレスポンス対応判断閾値を超えていることが確認された場合(ステップS490の“NO”)、計画変更可否判断部268は、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画が、実施することができる生産計画であることを生産計画立案システム21に通知する(ステップS500)。
これにより、生産計画立案システム21は、生産工場20において実施することができる新たな生産計画、つまり、修正生産計画があることを表す情報を、デマンドレスポンス応答判断システム25に送信する。これにより、デマンドレスポンス応答判断システム25は、例えば、生産計画立案システム21を介して生産実行システム22に、修正生産計画に基づいた製品の生産、つまり、現在の生産計画の修正生産計画への変更を指示し、さらに常時対応設備を停止または能力抑制を指示する。そして、デマンドレスポンス応答判断システム25は、デマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)ことを表す情報と、デマンドレスポンスに応じて抑制することができる電力の抑制量の情報とを、受発注システム11に送信する(図5のステップS170〜ステップS120または図6のステップS234〜ステップS223参照)。
一方、ステップS490における比較結果の確認の結果、比較部267から出力された比較結果がマイナスである、つまり、デマンドレスポンス対応得失がデマンドレスポンス対応判断閾値以下であることが確認された場合(ステップS490の“YES”)、計画変更可否判断部268は、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画が、実施することができる生産計画ではないことを生産計画立案システム21に通知する(ステップS510)。
これにより、生産計画立案システム21は、生産工場20において実施することができる修正生産計画がないことを表す情報を、デマンドレスポンス応答判断システム25に送信する。これにより、デマンドレスポンス応答判断システム25は、生産計画立案システム21にさらに別の修正生産計画の立案を指示する(図6のステップS233参照)か、デマンドレスポンスの要求を拒否することを表す情報、または要求された電力の抑制量の一部を抑制することができることを表す情報を受発注システム11に送信する処理(図5のステップS150〜ステップS180または図6のステップS233〜ステップS223参照)のいずれかを行う。
一方、ステップS480における判断方法の確認の結果、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かの判断を自動で行わない、すなわち、手動で行うことが確認された場合(ステップS480の“NO”)、計画変更可否判断部268は、例えば、生産工場20の管理者など、生産計画の変更を判断する判断者に、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画を実施するか否かの判断を行わせるための情報を提供する。このとき、判断者に提供する情報を、例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。図11では、生産エネルギー消費予測部261が算出した電力の消費量の予測値(予測確認情報)、リスク考慮得失補正部265が判断した対象となるリスク(危険度情報)、比較部267が比較した結果(得失比較結果情報)を、可視化して提供する場合を示している。なお、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画を実施するか否かの判断を行わせるための情報を提供する際に、計画変更可否判断部268が自動で判断した結果を、例えば、キャラクターのマークなどで可視化して提供してもよい。
続いて、計画変更可否判断部268は、生産計画変更の指示が入力されたか否かを確認する(ステップS530)。このステップS530における生産計画変更の指示が入力されたか否かの確認は、例えば、予め定めた期間内に指示スイッチSW2から指示信号が出力された否かによって確認することができる。なお、例えば、生産計画の変更を判断する判断者が複数いる場合(例えば、企業1内の各部門の部門長など)には、全ての判断者から生産計画変更の指示が入力された、つまり、複数の判断者によって修正生産計画が承認されたときに、修正生産計画の実施が指示されたと判断する。なお、この判断は、例えば、複数の判断者の多数決によって行ってもよい。
ステップS530における生産計画変更の指示入力の確認の結果、生産計画変更の指示が入力されたことが確認された場合、つまり、修正生産計画が承認された場合(ステップS530の“YES”)、計画変更可否判断部268は、ステップS500において、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画が、実施することができる生産計画であることを生産計画立案システム21に通知する。
一方、ステップS530における生産計画変更の指示入力の確認の結果、生産計画変更の指示が入力されていないことが確認された場合、つまり、修正生産計画が承認されなかった場合(ステップS530の“NO”)、計画変更可否判断部268は、ステップS510において、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画が、実施することができる生産計画ではないことを生産計画立案システム21に通知する。
このように、生産計画修正案実施判断システム26は、現生産計画と修正生産計画とのそれぞれの生産計画における電力の消費量の予測と、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータと、生産工場20における制約およびリスクとに基づいて修正生産計画における得失を算出する。そして、生産計画修正案実施判断システム26は、算出した得失に基づいて、修正生産計画が実施することができる生産計画であるか否か、すなわち、生産工場20において採用することができる生産計画であるか否かを判断する。これにより、要求されたデマンドレスポンスに応じるために工程組み換え必要設備の工程を組み換えることによって生産計画を変更した場合でも、生産工場20において生産する製品の品質や納期に関するリスクが少ない、つまり、生産工場20の収益に対するリスクが少ない(損失が少ない)修正生産計画に変更することができる。
次に、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを構成する生産計画修正案実施判断システム26に備えたそれぞれの構成要素における動作の一例について説明する。なお、以下の説明においては、図7(a)の中段に示した使用設備計画となる生産計画が現生産計画であり、図7(b)の上段に示した使用設備計画となる生産計画が、生産計画立案システム21が立案した修正生産計画として生産計画修正案実施判断システム26に入力されたものとして説明する。
まず、生産エネルギー消費予測部261が、詳細な電力の消費量を算出する場合の一例について説明する。図13は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおけるエネルギー消費量の算出方法の一例を示した図である。図13には、現在の生産計画(現生産計画)と、この現生産計画における使用設備計画との一例を上段に示している。また、図13には、使用設備計画において生産設備242−1が製品Aを製造するために稼働される1月30日の9時から17時までの期間のそれぞれの工程を中段に示し、この期間における時間毎のエネルギー消費量のグラフの一例を下段に示している。
図13の中段に示したように、生産設備242−1が製品Aを製造する場合、その工程は、準備中(Stand by:STBY)の工程の後、搬入(Carry in:CIN)の工程から始まり、製品A製造(Operation A:OPA)、搬出(Carry out:COT)の順に工程が進んで終了し、再び準備中(Stand by:STBY)の工程となる。
生産エネルギー消費予測部261は、生産設備242−1におけるそれぞれの工程のエネルギー消費量を、図4に示したエネルギー消費特性表に基づいて算出する。より具体的には、図13の中段に示したように、例えば、製品A製造(Operation A:OPA)工程における電力エネルギーEeの消費量は、エネルギー消費特性表に示された単位時間あたりの消費量の式「25P+0.05(MWh/h)」の変数Pに、図13の上段に示した現生産計画に示されたこの期間に生産する製品Aの生産量「P=100(トン)」を代入して算出する。同様に、製品A製造(Operation A:OPA)工程における蒸気エネルギーEsの消費量も、エネルギー消費特性表に示された単位時間あたりの消費量の式「180P+540(GJ/h)=50P+150(MWh/h)」の変数Pに、現生産計画に示された製品Aの生産量「P=100(トン)」を代入して算出する。これにより、図13の下段の上部に示したような、簡略計算のエネルギー消費量のグラフを得ることができる。
しかし、上述したように、それぞれの工程が複数のフェーズに細分化されて実行される場合には、生産エネルギー消費予測部261は、細分化されたそれぞれのフェーズ毎にエネルギー消費量が示されているエネルギー消費特性表に基づいて、詳細なエネルギー消費量を算出する。これにより、図13の下段の下部に示したような、詳細計算のエネルギー消費量のグラフを得ることができる。図13の下段の下部に示した詳細計算のエネルギー消費量のグラフは、製品A製造(Operation A:OPA)工程が、例えば、第1フェーズ(昇温)、第2フェーズ(保持)、第3フェーズ(焼きなまし)、第4フェーズ(仕上げ)などのフェーズに細分化されて実行される場合におけるエネルギー消費量のグラフの一例を示している。生産エネルギー消費予測部261が詳細なエネルギー消費量を算出することにより、生産計画修正案実施判断システム26は、より詳細に生産工場20における得失を算出することができる。つまり、一定の値で示されたエネルギー消費量に基づいて算出することによりそれぞれの工程の期間におけるエネルギー消費量が一定の値として表される簡略計算のエネルギー消費量のグラフよりも、それぞれの工程において細分化されたそれぞれのフェーズ毎にエネルギー消費量が表される詳細計算のエネルギー消費量のグラフの方が、少ない誤差で要求されたデマンドレスポンスの実現可否判断をすることができる。これは、要求されたデマンドレスポンスにおける時間毎の電力の抑制量が、要求された期間において使用する電力の消費量と同程度である場合に有利である。
生産エネルギー消費予測部261は、算出した電力の消費量の予測値を、例えば、図7(a)の下段および図7(b)の下段に示した電力の消費量の実績値および予測値のグラフと同様の形式で用益計画変更得失計算部262に出力する。
続いて、用益計画変更得失計算部262が得失を算出する処理の一例について説明する。図14は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおける用益計画の変更に伴う得失の算出処理の一例を示した図である。図14は、用益計画変更得失計算部262が得失を算出する処理(以下、「用益計画得失計算処理」という)を模式的に示している。なお、図14の1段目に示したグラフは、現生産計画に基づいて算出した電力の消費量の時間毎の実績値および予測値のグラフの一例であり、図14の2段目に示したグラフは、修正生産計画に基づいて算出した電力の消費量の時間毎の実績値および予測値のグラフの一例である。また、図14の3段目に示したグラフは、電力の消費量の時間毎の単価情報のグラフの一例である。また、図14の4段目に示したグラフは、現生産計画および修正生産計画における電力の消費量の実績値および予測値に対するインセンティブおよびペナルティを含めた電力の価格(コスト)を表すグラフの一例であり、図14の5段目に示したグラフは、現生産計画および修正生産計画における予め定めた期間における電力の積算価格(コスト)を表すグラフの一例である。
図14の1段目および2段目に示した電力の消費量の時間毎の実績値および予測値のグラフのそれぞれは、生産エネルギー消費予測部261から出力された現生産計画および修正生産計画のそれぞれの電力の消費量の予測値である。なお、図14においては、要求されたデマンドレスポンスにおける時間毎の電力の抑制量(DR要求)も併せて示している。また、図14の3段目に示した電力の時間毎の単価情報のグラフは、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに含まれる時間帯毎の電力の単価情報をグラフに表したものである。
図14の1段目および2段目に示した電力の消費量の時間毎の実績値および予測値のグラフに併記したDR要求のように、デマンドレスポンスにおける電力の抑制量は、時々刻々と変動する。このDR要求に応じて、電力の単価も変動する。このため、電力の消費量がDR要求で示された電力の抑制量よりも少ない場合には、電力の価格を安く抑えることができ、場合によってはインセンティブを得ることができる。一方、DR要求で示された電力の抑制量を超えて電力を消費するとペナルティが課せられる。
そこで、用益計画変更得失計算部262における用益計画得失計算処理では、まず、現生産計画および修正生産計画のそれぞれの電力の消費量の予測値に、電力の単価情報を時間毎に乗算することによって、それぞれの生産計画における時間毎に電力の価格を算出する。そして、用益計画変更得失計算部262における用益計画得失計算処理では、算出したそれぞれの生産計画における時間毎の電力の価格を、DR要求に基づいて、受発注システム11から送信されてきた料金情報のデータに含まれる時間帯毎のインセンティブ情報およびペナルティ情報で補正する。これにより、現生産計画と修正生産計画とのそれぞれについて、インセンティブおよびペナルティが加味した電力の価格(以下、「電力コスト」という)を算出することができる。より具体的には、図14の4段目に示したような、インセンティブおよびペナルティが加味された電力コストのグラフを、現生産計画および修正生産計画のそれぞれについて得ることができる。なお、ここで算出する電力コストは、時間毎の電力の価格、つまり、時間毎の瞬時値である。
ところで、図14に示した一例では、図14の1段目に示したように、1月30日の12時から15時までの領域Dで示された期間においてデマンドレスポンスの要求を満足していない。このため、図14の4段目に示した電力コストのグラフを見てわかるように、現生産計画におけるインセンティブおよびペナルティが加味された電力コストの瞬時値は、この期間が突出して高くなっている。
その後、用益計画変更得失計算部262における用益計画得失計算処理では、図14の4段目に示した電力コスト(瞬時値)を、予め定めた期間分だけ積算する。これにより、図14の5段目に示したような、電力コスト(積算値)のグラフを、現生産計画および修正生産計画のそれぞれについて得ることができる。図14の5段目に示した電力コスト(積算値)のグラフには、1週間分の電力コスト(瞬時値)を積算した場合の一例を示している。この図14の5段目に示した電力コスト(積算値)のグラフから、積算した1週間の電力コストが、現生産計画では41,000ドルであり、修正生産計画では31,000ドルであることがわかる。そして、現生産計画を修正生産計画に変更することによって、生産工場20は、41,000(ドル)−31,000(ドル)=10,000(ドル)の利益を得られることがわかる。この予め定めた期間における現生産計画の電力コスト(積算値)と修正生産計画の電力コスト(積算値)との差分が、用益計画の変更に伴う得失である。
従って、用益計画変更得失計算部262は、現生産計画と修正生産計画とのそれぞれの電力コスト(積算値)の差分による利益=10,000(ドル)を、用益計画変更得失として得失加算部264に出力する。
なお、用益計画変更得失計算部262は、用益計画得失計算処理によって算出したそれぞれの情報を、例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた表示手段などに表示することによって可視化してもよい。例えば、図14の4段目に示したような電力コスト(瞬時値)のグラフや、図14の5段目に示したような電力コスト(積算値)のグラフを表示するようにしてもよい。このとき、用益計画変更得失計算部262は、図14の1段目および2段目に示した電力の消費量の時間毎の実績値および予測値のグラフに、電力コスト(瞬時値)や電力コスト(積算値)のグラフを重畳して表示するようにしてもよい。また、産業用デマンドレスポンス実現システムの全体として、例えば、図10に示した抑制可能電力の変化を時間軸方向に可視化したグラフに、電力コスト(瞬時値)や電力コスト(積算値)のグラフを重畳して表示するようにしてもよい。さらに、生産工場20において、電力プロバイダ40から購入した電力の代わりに、エネルギー変換設備233が非電力エネルギーを変換した電力エネルギーや、エネルギー蓄積設備234に蓄積した電力エネルギーを生産設備に供給して用いた場合には、これらの電力エネルギーも重畳して表示するようにしてもよい。これにより、例えば、生産工場20の管理者は、生産工場20の全体で抑制することができる電力や電力コストを視覚的に確認することができる。
続いて、生産計画変更得失計算部263が得失を算出する方法の一例について説明する。生産計画変更得失計算部263は、現生産計画および修正生産計画のそれぞれの使用設備計画に基づいて、現生産計画から修正生産計画への変更に伴う使用設備計画の変更が、予め定められた生産工場20におけるそれぞれの制約が対象となるか否かを確認する。そして、生産計画変更得失計算部263は、対象となった制約によって費用が発生するか否かをそれぞれ判断し、費用が発生すると判断したそれぞれの制約において発生する費用の合計を算出する。より具体的には、生産計画変更得失計算部263は、それぞれの制約の内容を確認し、現生産計画における使用設備計画が修正生産計画における使用設備計画に変更されたことによって費用が発生する可能性がある対象となる制約を選択する。その後、生産計画変更得失計算部263は、選択した制約によって費用が発生するか否かを判断し、発生する費用の合計を算出する。
さらに具体的には、生産計画変更得失計算部263がQCD制約に関する得失を算出する場合、QCD制約に含まれる生産する製品の品質に関する余裕度、コストに関する余裕度、納期に関する余裕度と、生産計画の管理基準と、現生産計画および修正生産計画との三者を比較する。また、生産計画変更得失計算部263が設備制約に関する得失を算出する場合、設備制約に含まれる設備の稼働条件、すなわち、ある設備である製品を作る直前には3時間の運転準備が必要であるなどの制約と、生産計画の管理基準と、現生産計画および修正生産計画との三者を比較する。また、生産計画変更得失計算部263が安全制約に関する得失を算出する場合、安全制約に含まれる生産工程の安全条件、すなわち、ある設備を停止する場合には前段に位置する設備を停止しておく必要があるなどの条件と、生産計画の管理基準と、現生産計画および修正生産計画との三者を比較する。そして、生産計画変更得失計算部263は、生産計画の管理基準に対する余裕度を、予め定めたテーブルなどによって金銭に換算して得失を算出する。例えば、ある製品の納期に関する余裕度が8時間以下である場合には予め定めた数式、8時間以上である場合には固定値というように作成されたテーブルに基づいて金銭に換算して得失を算出する。
図15は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムにおける生産計画の変更に伴う得失の算出方法の一例を示した図である。図15には、生産工場20における制約の一例を上段に示し、現生産計画と修正生産計画とにおける使用設備計画を下段に示している。より具体的には、図15の上段に生産工場20における安全制約、QCD制約、および設備制約のそれぞれの制約の内容の一例を示し、素15の下段に現生産計画における使用設備計画と修正生産計画における使用設備計画とを比較して示している。
図15には、現生産計画の使用設備計画と修正生産計画の使用設備計画との差から、安全制約には費用が発生する可能性がある制約はなく、QCD制約および設備制約のそれぞれにおいて、費用が発生する可能性がある制約を1つずつ選択した場合を示している。より具体的には、図15の下段の使用設備計画に示した時間移動Mのように、生産設備242−3の稼働時間を移動する(遅らせる)変更によって、QCD制約の価格(Cost)に関する2つ目の制約L1における「Bランク顧客の納期変更のペナルティ」との記載が、費用が発生する可能性がある対象となる制約であると判断し、制約L1を選択した場合を示している。また、図15の下段の使用設備計画に示した領域Oにおいて生産設備242−2と生産設備242−3とのそれぞれが共に運転(稼働)されている時間帯が存在することから、設備制約の生産設備242−3に関する2つ目の制約L2における「設備E2と同時に運転した場合」との記載が、費用が発生する可能性がある対象となる制約であると判断し、制約L2を選択した場合を示している。
そして、図15には、選択した制約によって費用が発生するか否かを判断し、費用が発生すると判断した制約の費用の合計を算出する。より具体的には、図15において、選択した制約L1は、「Bランク顧客の納期変更のペナルティは、8時間以下はゼロ、1日超過で契約金額の0.5%」であるが、現生産計画から修正生産計画に変更したことによって生産設備242−3の稼働時間を移動した(遅らせた)時間は6時間であるため、この制約L1による費用は発生しない、つまり、この制約L1によって発生する費用は0(ドル)であると判断する。また、図15において、選択した制約L2は、「設備242−2と同時に運転した場合、別途、総合点検(4時間)が必要。点検費用は昼間400ドル/夜間600ドル。」であるため、総合点検(4時間)が必要であると判断し、この総合点検を夜間、すなわち、1月31日の午前3時以降に実行する場合の600(ドル)が制約L2によって発生する費用である判断する。なお、制約L2によって発生する費用=600(ドル)は、生産計画を変更することによって必要となった総合点検を行うための費用であるため、生産工場20にとっては損失である。従って、生産工場20における得失としては「−600(ドル)」となる。
これにより、生産計画変更得失計算部263は、制約L1によって発生する費用(損失)=0(ドル)と、制約L2によって発生する費用(損失)=−600(ドル)とを加算した費用(損失)=−600(ドル)を、生産計画変更得失として得失加算部264に出力する。
従って、得失加算部264は、用益計画変更得失計算部262から出力された用益計画変更得失=10,000(ドル)と、生産計画変更得失計算部263から出力された生産計画変更得失=−600(ドル)とを加算した計画変更得失=9,400(ドル)を、リスク減算部266に出力する。
続いて、リスク考慮得失補正部265が得失を算出する方法の一例について説明する。生産工場20におけるQCD、安全、環境などの項目に対するリスクの情報は、上述したように、予めリスク一覧表にリストアップされている。図16は、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システムを利用して稼働させる産業用施設におけるリスク一覧表の一例を示した図である。
図16に示したリスク一覧表において、「設備」の欄には、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備の名称が示されている。また、リスク一覧表において、「リスク要因」の欄には、生産工場20内に設置されたそれぞれの設備を運転(稼働)することによる部品の損傷や設備の経年変化などによる部品の品質不良など、それぞれの設備に対するリスクの要因が示されている。そして、リスク一覧表の「損失」の欄には、リスク要因が発生した場合の損失額(ドル)が示され、「確率」の欄には、リスク要因が発生する確率が示されている。また、リスク一覧表の「平均損失額」の欄には、「損失」の欄に示された損失額(ドル)と「確率」の欄に示された確率とを乗算することによって求めた平均の損失額(ドル)が示されている。また、リスク一覧表の「対象」の欄は、リスク考慮得失補正部265が選択したことを表す「チェック」マークが示される欄である。
リスク考慮得失補正部265は、リスク一覧表に示されたそれぞれのリスク要因を確認し、現生産計画を修正生産計画に変更したことによって発生する可能性がある対象となるリスクを選択する。その後、リスク考慮得失補正部265は、選択したリスクが発生した場合の損失を、「平均損失額」の欄に示された損失額を合計することによって算出する。
図16に示したリスク一覧表では、ボイラーに関するリスク要因「急速な負荷変動によるA装置の故障」と、生産設備242−2に関するリスク要因「長期間の連続稼働によるB部品の損傷による故障」とが、現生産計画を修正生産計画に変更したことによって発生する可能性がある対象となるリスクとして選択されている場合を示している。そして、リスク考慮得失補正部265が選択したリスク要因に対応する平均損失額を合計した損失額(500(ドル)+2,500(ドル)=3,000(ドル))が、現生産計画を修正生産計画に変更したことによってリスクが発生した場合の損失額として、「合計」の欄に示されている場合を示している。
これにより、リスク考慮得失補正部265は、リスク一覧表の「合計」の欄に示された損失額=3,000(ドル)を、リスク考慮得失としてリスク減算部266に出力する。
従って、リスク減算部266は、得失加算部264から出力された計画変更得失=9,400(ドル)から、リスク考慮得失補正部265から出力されたリスク考慮得失=3,000(ドル)を減算したデマンドレスポンス対応得失=6,400(ドル)を、比較部267に出力する。
これにより、比較部267は、予め設定されたデマンドレスポンス対応判断閾値と、リスク減算部266から出力されたデマンドレスポンス対応得失=6,400(ドル)とを比較した結果を表す情報を計画変更可否判断部268に出力する。そして、計画変更可否判断部268は、比較部267から入力された比較結果に基づいて、現生産計画を修正生産計画に変更するか否かを判断する。例えば、比較部267から出力された比較結果がプラスである場合には現生産計画を修正生産計画に変更すると判断し、比較部267から出力された比較結果がマイナスである場合には現生産計画を修正生産計画に変更しないと判断する(図12のステップS490参照)。
なお、生産計画修正案実施判断システム26は、リスク考慮得失補正部265とリスク減算部266とを備えない構成であってもよい。つまり、生産計画修正案実施判断システム26は、計画変更得失をリスク考慮得失で補正しない構成であってもよい。この場合、得失加算部264が出力した計画変更得失が、比較部267に直接入力される構成となり、比較部267は、予め設定されたデマンドレスポンス対応判断閾値と、得失加算部264から出力された計画変更得失=9,400(ドル)とを比較した結果を表す情報を計画変更可否判断部268に出力することになる。
上記に述べたとおり、本発明を実施するための形態によれば、産業用デマンドレスポンス実現システムを構成するデマンドレスポンス応答判断システムが、電力プロバイダから産業用デマンドレスポンス(iDR)の要求があった場合に、まず、生産工場内のそれぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができるか否かを判断する。これにより、本発明を実施するための形態では、生産計画の全体に影響を及ぼしてしまう可能性がある工程の組み換えによって生産計画を変更するよりも、容易に少ないリスクでデマンドレスポンスに対応することができるか否かを判断することができる。
また、本発明を実施するための形態によれば、産業用デマンドレスポンス実現システムを構成するデマンドレスポンス応答判断システムが、生産工場内のそれぞれの設備の運転状態を変更するのみでデマンドレスポンスを実現することができないと判断された場合に、製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替える新たな生産計画の立案を指示する。そして、本発明を実施するための形態では、産業用デマンドレスポンス実現システムを構成する生産計画修正案実施判断システムが、現在の生産計画を新たに立案された生産計画に変更したことに伴う生産工場の得失を算出し、新たな生産計画によって要求されたデマンドレスポンスを実現することができるか否か、すなわち、電力プロバイダから要求されたデマンドレスポンスの要求を受け入れる(承諾する)か否かを判断する。これにより、本発明を実施するための形態では、要求されたデマンドレスポンスに応じるために製品を生産する際の工程や生産する製品の種類を組み替える新たな生産計画に変更する場合でも、生産工場において生産する製品の品質や納期に関するリスクが少ない、つまり、生産工場の収益に対するリスクが少ない(損失が少ない)新たな生産計画に変更することができる。
そして、本発明を実施するための形態によれば、生産工場(企業)において生産する製品または中間製品のQCDを確保した上で、さらに生産工場における安全性や環境性などのリスクを回避した状態で、産業用デマンドレスポンス(iDR)によって電力プロバイダから要求された抑制量の電力の抑制を実現することができる。
なお、本発明を実施するための形態では、デマンドレスポンス応答判断システム25から出力された生産計画の変更の指示に応じて、生産計画立案システム21が修正生産計画を立案する場合について説明した。このとき、生産計画立案システム21は、産業用デマンドレスポンス実現システムが算出する情報を参照していなかった。しかし、生産計画立案システム21が修正生産計画を立案する際には、例えば、生産計画修正案実施判断システム26が算出したそれぞれの情報が修正生産計画の立案に有効に役立つと考えられる。例えば、生産計画修正案実施判断システム26に備えた生産エネルギー消費予測部261が算出する現生産計画における電力の消費量の予測値や、用益計画変更得失計算部262が算出する現生産計画における電力コストなどは、製品を生産する際のコストを考慮した修正生産計画の立案に有効に役立つと考えられる。これは、そもそも生産計画立案システム21は、生産工場20におけるQCD、安全、環境を考慮して生産計画を立案する必要があるが、デマンドレスポンスの要求がされた場合には、さらに要求されたデマンドレスポンスにおける電力エネルギーの抑制も満足する必要があるからである。このため、産業用デマンドレスポンス実現システムは、修正生産計画の立案を指示する際に、現生産計画における電力の消費量の予測値や電力コストなど、修正生産計画を立案するために有効な情報を、生産計画立案システム21に出力する構成にしてもよい。これにより、生産計画立案システム21は、生産する製品の銘柄の変更や、製品の生産の中止、つまり、生産設備の運転(稼働)停止なども含めて修正生産計画の立案をすることができ、現生産計画をここで立案された修正生産計画に変更することによって、さらに大きくエネルギー消費を抑制することもできる。また、逆に、生産計画立案システム21は、デマンドレスポンスを実行する時間帯に電力プロバイダ40から供給される安価な電力エネルギーを用いて製品の生産量を増大(増産)させることによって、生産工場20の利益を確保するような修正生産計画の立案をすることもできる。
なお、本発明を実施するための形態では、デマンドレスポンス応答判断システム25から出力された1回の生産計画の変更の指示に応じて、生産計画立案システム21が1つの修正生産計画を立案する場合について説明した。このため、生産計画修正案実施判断システム26は、生産計画立案システム21から出力された1つの修正生産計画の実施の可否判断を行う場合について説明した。しかし、生産計画立案システム21が1回の生産計画の変更の指示に応じて立案する修正生産計画の数は、本発明を実施するための形態で説明した数に限定されるものではなく、生産計画立案システム21は、複数の修正生産計画を同時に立案してもよい。従って、生産計画修正案実施判断システム26も、生産計画立案システム21から出力された複数の修正生産計画のそれぞれについて、実施の可否判断を行ってもよい。なお、生産計画修正案実施判断システム26が複数の修正生産計画について実施の可否判断を行う場合でも、その考え方は同様である。
なお、例えば、図1に示した産業用デマンドレスポンス実現システム、または産業用デマンドレスポンス実現システムを構成するデマンドレスポンス応答判断システム25や生産計画修正案実施判断システム26などの各構成要素による処理を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の産業用デマンドレスポンス実現システム、または産業用デマンドレスポンス実現システムを構成するデマンドレスポンス応答判断システム25や生産計画修正案実施判断システム26に係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。