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JP6094805B2 - 二次電池 - Google Patents

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JP6094805B2 JP2013082458A JP2013082458A JP6094805B2 JP 6094805 B2 JP6094805 B2 JP 6094805B2 JP 2013082458 A JP2013082458 A JP 2013082458A JP 2013082458 A JP2013082458 A JP 2013082458A JP 6094805 B2 JP6094805 B2 JP 6094805B2
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Description

本発明は、二次電池に関する。詳しくは、樹脂基材の表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータを備える二次電池に関する。
近年、リチウム二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられている。この種のリチウム二次電池の一つの典型的な構成では、正極と、負極と、正極と負極との間に介在する多孔質のセパレータとを備える。セパレータは、正極と負極との接触に伴う短絡を防止するとともに、該セパレータの空孔内に電解液を含浸させることにより、両電極間のイオン伝導パスを形成する役割を担っている。この種のセパレータに関する従来技術として特許文献1および2が開示されている。
従来から、セパレータとしては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等からなる多孔質の樹脂基材が用いられている。上記セパレータは多孔質であるため、温度が高くなると熱収縮が起こる。これを利用してシャットダウン機能が働く。しかし、熱収縮の程度が大きいと、破膜等による局所的な短絡が発生し、そこから更に短絡が拡大するおそれがある。そこで、樹脂基材が熱収縮した場合でも正極と負極が直接接触するのを阻むべく、樹脂基材の表面に多孔質絶縁層を形成することが提案されている。多孔質絶縁層は、例えばアルミナ等の無機フィラーとバインダを適当な媒体に分散させた水系の塗料を樹脂基材の表面に塗布し、これを熱風乾燥機等に通過させて乾燥することにより形成されている。
国際公開第2009/038229号 特開2001−068088号公報
上記多孔質絶縁層が形成される樹脂基材は、一般に極性官能基を実質的に有しないため疎水性であって、その表面は水をはじく性質(すなわち撥水性)を示す。このような疎水性の樹脂基材に水系の塗料を付与すると、上記樹脂基材の該水系塗料に対する濡れ性が低いため、付与された水系塗料の厚さ(ひいては乾燥後に得られる多孔質絶縁層の厚さ)が場所によって不均一になりがちである。また、上記水系塗料が樹脂基材に馴染みにくいため、乾燥後に得られる多孔質絶縁層の樹脂基材への密着性が不足し、該多孔質絶縁層が部分的に樹脂基材から浮き上がったりさらには剥落したりしやすい、等の不都合が生じがちである。
かかる問題に対処すべく、本発明者は、樹脂基材の親水性を高める処理(改質処理)を行い、しかる後に水系塗料を付与することを検討している。すなわち、樹脂基材に対して親水性を高める処理(例えばコロナ放電処理)を施すことにより、該樹脂基材の水系塗料に対する濡れ性が改善される。このことにより、該塗料を樹脂基材上に均一に塗布することができ、また樹脂基材との密着性(結着性)のよい多孔質絶縁層を形成することができる。しかしながら、樹脂基材に対して親水性を高める処理を施すと、該樹脂基材を構成する繊維部が損傷を受けるため、樹脂基材に微小な欠損が生じたり、樹脂基材の空隙が拡大したりする場合があり得る。このような開孔度の増大は、樹脂基材の液保持性を低下させ、ひいては電池性能を低下させる要因となり得る。本発明は上記課題を解決するものである。
本発明によると、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等のリチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池)を製造する方法が提供される。その方法は、多孔質の樹脂基材を用意(製造、購入等)することを含む。また、上記樹脂基材の表面に、該樹脂基材の表面を改質して親水性を高める親水化処理(典型的には、水酸基、カルボキシル基等のような酸素(O)を含む極性官能基を上記樹脂基材に導入する処理)を施すことを含む。さらに、上記樹脂基材の親水性表面に、無機フィラーとフィブリル化されたポリマー(以下、「フィブリル化ポリマー」とも略称する。)と水系媒体とを含む塗料を付与(塗布、乾燥等)することにより、上記樹脂基材の表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータを得ることを含む。この製造方法は、また、上記セパレータを用いて二次電池を構築することを含む。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、上記「親水化処理」とは、当該処理を施すことにより処理前よりも樹脂基材の親水性を高めることをいう。
本発明に係る製造方法では、上記樹脂基材を用意した後、その樹脂基材に親水化処理を施すことにより該樹脂基材の水系塗料に対する「濡れ性」を向上させたうえで、その親水化処理された樹脂基材(親水化表面)に水系塗料を付与する。このことによって、樹脂基材に対する密着性の良い多孔質絶縁層を備えたセパレータを得ることができる。さらに、上記塗料はフィブリル化ポリマーを含んでいるので、該塗料を樹脂基材に付与した際、該塗料の少なくとも一部は樹脂基材内に浸み込み、該塗料に含まれるフィブリル化ポリマーが樹脂基材を構成する繊維部の表面を被覆する。このことによって、親水化処理に起因して生じた樹脂基材の微小な欠損を充填し、樹脂基材の空隙の拡大化を防止することができる。したがって、本発明によれば、樹脂基材の空隙の拡大化を抑えつつ該樹脂基材の水系塗料に対する濡れ性を高めることができ、これにより電解液保持性が高く且つ多孔質絶縁層が剥がれ難い、品質安定性に優れたセパレータを得ることができる。かかるセパレータを用いて構築された二次電池は、例えば容量劣化が生じ難く、耐久性に優れたものであり得る。
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記親水化処理は、上記樹脂基材に親水性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基等のような酸素(O)を含む極性官能基)を導入する処理である。このことによって、上記樹脂基材の親水性をより効果的に向上させることができる。
ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記親水化処理は、コロナ放電処理である。このことによって、水酸基やカルボキシル基等の親水性向上効果の高い極性官能基をより効率よく(例えば、より高密度に)導入することができる。したがって、上記樹脂基材の親水性をより効果的に向上させることができる。
本発明によると、また、正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に介在するセパレータとを備えた二次電池が提供される。上記セパレータは、多孔質の樹脂基材と、該樹脂基材の表面に形成された多孔質絶縁層とを備える。上記樹脂基材は、親水性官能基(例えば酸素原子を含む極性官能基)が存在する親水性表面を有する。そして、上記多孔質絶縁層は、無機フィラーと、フィブリル化されたポリマーとを含有する。親水性官能基の存在によって、一般に撥水性を有する樹脂基材の表面に親水性を付与することができる。これにより、多孔質絶縁層を形成するための水系塗料(典型的には粉末状の無機フィラー等を水系媒体に分散させたスラリー状塗料)を樹脂基材に付与した際に該水系塗料が樹脂基材に馴染み易くなる。そのため、乾燥後に得られた多孔質絶縁層が樹脂基材から浮き上がったり、剥落したりする事態を回避することができる。さらに、上記塗料はフィブリル化ポリマーを含んでいるので、親水化処理に起因して生じた樹脂基材の微小な欠損を充填し、樹脂基材の空隙の拡大化を防止することができる。したがって、本発明によれば、高入出力特性を維持しつつ、多孔質絶縁層と樹脂基材との密着性(接合強度)が良好なセパレータを備えた二次電池を提供することができる。
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、上記フィブリル化されたポリマーは、繊維長1μm〜10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体を構成しており、該集合体の外表部にフィブリル繊維が突出している。かかる構成によると、親水化処理に起因して生じた樹脂基材の微小な欠損をより効率よく充填することができる。
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、上記集合体の外表部に突出したフィブリル繊維の平均繊維径が0.05μm〜0.5μmである。フィブリル繊維の平均繊維径が上記範囲内であると、ピンホールや凝集塊(ダマ)がない好適な多孔質絶縁層を形成することができる。また、水系塗料を樹脂基材に付与した際、フィブリル化ポリマーが樹脂基材内に浸み込みやすくなるので、樹脂基材の欠損を確実に補填できる。
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、上記多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたときに、上記フィブリル化されたポリマーの含有量が0.3質量%〜5質量%である。フィブリル化ポリマーの含有量が上記範囲内であると、ピンホールや凝集塊(ダマ)がない好適な多孔質絶縁層を形成することができる。また、水系塗料を樹脂基材に付与した際、フィブリル化ポリマーが樹脂基材内に浸み込みやすくなるので、樹脂基材の欠損を確実に補填できる。
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、上記多孔質絶縁層は、上記正極または上記負極に対向している対向部位と、上記正極および上記負極の何れにも対向していない非対向部位とを有する。そして、上記フィブリル化されたポリマーは、上記多孔質絶縁層のうち、上記非対向部位の全域に選択的に配置されている。この場合、二次電池の入出力特性がさらに向上し得る。
図1は、本発明の一実施形態に係るセパレータの製造フローを示す図である。 図2は、ファブリル化されたポリマーを模式的に示す図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るセパレータの断面を模式的に示す図である。 図4は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す外観図である。 図5は、図4のV−V断面を示す断面図である。 図6は、リチウムイオン二次電池の捲回電極体を示す図である。 図7は、図6中のVII−VII断面を示す断面図である。 図8は、サンプル15のフィブリル化CMCの配置領域を説明するための断面図である。 図9は、サンプル16のフィブリル化CMCの配置領域を説明するための断面図である。 図10は、二次電池を搭載した車両を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極活物質の製造方法、電極合材層形成用組成物の調製方法、電解質の構成および製法、リチウム二次電池その他の電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるセパレータ製造方法は、親水化処理が施された多孔質の樹脂基材の表面に、無機フィラーを含有する水系の塗料を付与して多孔質絶縁層を形成するものであればよく、使用する樹脂基材の組成(材質)や形状に特に制限はない。上記樹脂基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系の樹脂を好適に用いることができる。PE系樹脂としては、エチレンの単独重合体が好ましく用いられる。また、PE系樹脂は、エチレンから誘導される繰り返し単位を50質量%以上含有する樹脂であって、エチレンと共重合可能なα‐オレフィンを重合した共重合体、あるいはエチレンと共重合可能な少なくとも一種のモノマーを重合した共重合体であってもよい。α‐オレフィンとして、プロピレン等が例示される。他のモノマーとして共役ジエン(例えばブタジエン)、アクリル酸等が例示される。
また、樹脂基材は、シャットダウン温度が120℃〜140℃(典型的には、125℃〜135℃)程度のPEから構成されることが好ましい。上記シャットダウン温度は、電池の耐熱温度(例えば、約200℃以上)よりも十分に低い。かかるPEとしては、一般に高密度ポリエチレン、あるいは直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等と称されるポリオレフィンが例示される。あるいは中密度、低密度の各種の分岐ポリエチレンを用いてもよい。また、必要に応じて、各種可塑剤、酸化防止剤等の添加剤を含有することもできる。
樹脂基材の構造は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。例えば、PP層と、PP層上に積層されたPE層と、PE層上に積層されたPP層との3層構造の樹脂基材の使用が好ましい。この場合、多孔質絶縁層は、樹脂基材の表面に現れたPP層上に積層することができる。多層構造の樹脂シートの層数は3に限られず、2であってもよく、4以上であってもよい。
ここに開示されるいずれかの方法により製造されたセパレータは、種々の形態の二次電池(例えばリチウム二次電池)に備えられるセパレータとして好ましく利用され得る。上記セパレータ製造方法において使用する樹脂基材の形状は、得られたセパレータを用いて構築される二次電池の形状(例えば直方体状、扁平形状、円筒状)等に応じて異なり得るため特に制限はなく、例えばシート状、板状等の種々の形態であり得る。本発明の方法により得られたセパレータを用いて構築される二次電池の好ましい一態様として、捲回型の電極体を備える二次電池(例えばリチウム二次電池)が挙げられる。この態様において、長尺シート状の樹脂基材が好ましく使用され得る。なお、種々の形状の基材自体の作製は、二次電池の製造分野において従来公知の集電体の作製と同様にして行うことができ、本発明を特徴付けるものではない。
特に限定することを意図したものではないが、以下では主としてPP層とPE層とPP層との3層構造のシート状樹脂基材を用いてリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)用のセパレータを製造する場合を例として、図1に示すフローチャートを参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
図1に示すように、ここに開示されるリチウム二次電池用セパレータの製造方法では、樹脂基材として例えば厚さ10μm〜30μm程度の樹脂シートを用意する(ステップS10)。かかる樹脂基材は製造してもよいし、市販されている樹脂基材(既成品)を購入して使用してもよい。
樹脂基材の厚みは特に限定されないが、例えば10μm〜30μm程度であることが好ましく、16μm〜20μm程度であることがより好ましい。樹脂基材の厚みが大きすぎると、セパレータのイオン伝導性が低下するおそれがある。一方、樹脂基材の厚みが小さすぎると、破膜が生じるおそれがある。樹脂基材の厚みは、SEMにより撮影した画像を画像解析することによって求めることができる。
また、樹脂基材の多孔度は、概ね30%〜70%程度であることが好ましく、例えば40%〜60%程度であることがより好ましい。樹脂基材の多孔度が大きすぎると、強度が不足し、過充電時等に破膜が起こりやすくなるおそれがある。一方、樹脂基材の多孔度が小さすぎると、樹脂基材に保持可能な電解液量が少なくなり、このセパレータを用いて構築される電池の入出力特性が低下する場合がある。なお、樹脂基材の多孔度は、樹脂基材の見掛けの体積をVとし、その質量をWとし、樹脂基材を構成する材料の真密度(空孔を含まない材料の実体積によって質量Wを割った値)をρとした場合に、(1−W/ρ)×100により把握することができる。
かかる樹脂基材は、一般に極性官能基を実質的に有しないため疎水性であって、その表面は水をはじく性質(すなわち撥水性)を示す。このような疎水性の樹脂シートに水系の塗料(多孔質絶縁層を形成するための塗料)を付与すると、上記樹脂シートの該水系塗料に対する濡れ性が低いため、付与された水系塗料の厚さ(ひいては乾燥後に得られる多孔質絶縁層の厚さ)が場所によって不均一になりがちである。また、上記水系塗料が樹脂シートに馴染みにくいため、乾燥後に得られる多孔質絶縁層の樹脂シートへの密着性が不足し、該多孔質絶縁層が部分的に樹脂シートから浮き上がったり剥落しやすくなったりすることがある。本発明の製造方法によると、かかる疎水性の樹脂基材(典型的には、少なくとも該樹脂基材の表面)の親水性を高める処理(改質処理)を行い、しかる後に水系の塗料を付与することにより、均一で密着性のよい(接合強度の高い)多孔質絶縁層を備えたリチウム二次電池用セパレータが得られる。このようなセパレータによると、より安定した性能のリチウム二次電池が構築され得る。
すなわち図1に示すように、本発明に係る製造方法では、上記用意した樹脂基材の表面に、該樹脂基材の表面を改質して親水性を高める親水化処理を施す(ステップS20)。かかる親水化処理の典型例として、上記樹脂基材に極性官能基を導入する処理を好ましく採用することができる。上記極性官能基の好適例として、酸素原子(O)を含む極性官能基(水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケト基等)が挙げられる。特に、水酸基およびカルボキシル基から選択される少なくとも一種を導入可能な親水化処理を行うことが効果的である。上記酸素原子を含む極性官能基を導入する親水化処理は、酸素原子を含む化学種(例えば、酸素ガス(O)、オゾン(O)、酸化物イオン(O2−)、酸素ラジカル、酸素プラズマ等)を上記樹脂基材に供給することを含む処理であり得る。かかる化学種は、例えば、上記樹脂基材に対してコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等を適用する(典型的には、酸素を含む雰囲気下で上記処理を行う)ことによって該樹脂基材に供給され得る。また、ここに開示される技術では、上記酸素原子を含む極性官能基を導入する処理として、上記樹脂基材にオゾンを供給する処理(オゾン処理)を好ましく採用することができる。かかるオゾンの供給は、例えば、酸素ガス(O)を含む雰囲気下でコロナ放電処理を施してOからOを発生させることにより好ましく行うことができる。
ここで上述した樹脂基材に対して親水性を高める処理(例えばコロナ放電処理)では、樹脂基材自体に大きな負荷が加わるため、樹脂基材を構成する繊維部が損傷を受け、樹脂基材に微小な欠損が生じたり、樹脂基材の空隙が拡大したりする場合があり得る。このような空隙が拡大した樹脂基材をそのままセパレータとして使用すると、該セパレータの電解液保持性が低くなり、該セパレータを用いて構築された電池の特性が低下しがちである。そこで、本発明の製造方法によると、上記水系塗料に樹脂基材の微小な欠損を充填する充填材として機能するフィブリル化ポリマーを添加したうえで該塗料を付与する。
すなわち、本発明に係る製造方法では、上記樹脂基材の親水性表面に、無機フィラーとフィブリル化ポリマーと水系媒体とを含む塗料を付与する(ステップS30)。これにより、樹脂基材の表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータを得る(ステップS40)。
フィブリル化ポリマーとしては、上記塗料の増粘剤として機能し、かつフィブリル化できる繊維状のポリマーであれば特に制限されない。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)等のセルロース系のポリマー繊維を好ましく用いることができる。あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリマー繊維を用いてもよい。上述したポリマー繊維はそれぞれ単独であるいは適宜組み合わせて使用することができる。
ここで開示されるフィブリル化ポリマー10の好適例として、図2に示すように、繊維長1μm〜10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体(基幹部分)14を構成しており、該集合体14の外表部にフィブリル繊維12が突出しているものが挙げられる。上記集合体14の外表部に突出したフィブリル繊維12の平均繊維径dとしては、概ね0.05μ以上が適当であり、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.2μm以上である。フィブリル繊維12の繊維径dが小さすぎると、塗料に混入した気泡が乾燥時まで抜けきらず、乾燥後に得られた多孔質絶縁層にピンホールが生じる要因になり得る。その一方で、フィブリル繊維12の繊維径dが大きすぎると、セルロース系繊維同士が凝集してダマが生じやすくなる。また、フィブリル化ポリマーが樹脂基材内に浸み難くなるので、樹脂基材の欠損を確実に補填できない場合があり得る。欠損を確実に補填する観点からは、フィブリル繊維12の平均繊維径dは概ね0.5μm以下が適当であり、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下である。フィブリル繊維12の繊維径dは、例えば多孔質絶縁層のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)画像で、任意に選択した少なくとも10個以上のフィブリル化ポリマーを抽出し、それらの繊維径の凡その平均値(算術平均値)で評価するとよい。
特に限定されるものではないが、フィブリル化ポリマー10の塊状集合体14(基幹部分)のサイズは、概ね3μm〜20μm程度にすることが適当であり、例えば3μm〜10μm(例えば5μm程度)にすることがより好ましい。また、集合体14を構成するセルロース系繊維の繊維長としては、概ね0.5μm〜10μmにすることが適当であり、例えば1μm〜5μmにすることがより好ましい。例えば、集合体14のサイズが3μm〜20μm程度であり、かつ繊維長が0.5μm〜10μm程度のものを好適に使用することができる。
上記ポリマーをフィブリル化する方法としては、例えば、ポリマーの凝集物(塊状)をジェットミル、回転ミル、磨砕機(例えばマスコロイダー)、リファイナー、高圧ホモジナイザー等を用いて粉砕する方法が挙げられる。これらを使用してポリマーに機械的な剪断力および圧縮力を加えることにより、ポリマーが主として繊維軸と平行な方向に引き裂かれ、ほぐされて表面に微細繊維(フィブリル繊維)が発現する。かかる粉砕の条件は、使用する装置によっても異なり得るが、例えばジェットミルを用いる場合、粉砕圧力0.1MPa〜2MPa、粉砕回数1回〜5回の条件を採用するとよい。かかる粉砕は乾式で行ってもよいし、湿式で行ってもよい。
無機フィラーを構成する材料としては、使用する樹脂基材よりも融点が高い無機材料を用いることが好ましい。さらに、電気絶縁性が高く、かつ電極と接触した状態で使用しても電気化学的に安定である(酸化還元されない)無機材料であることが好ましい。そのような条件を満たす無機材料の一種または二種以上を特に制限なく使用することができる。かかる無機材料としては、例えば、周期表の第2族(マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属)、第4族(チタン等の遷移金属)、第5族(バナジウム、ニオブ等の遷移金属)、第8族(鉄、ルテニウム等の遷移金属)、第9族(コバルト等の遷移金属)、12族(亜鉛等の卑金属)、13族(アルミニウム、インジウム等の卑金属)及び14族(半金属元素であるケイ素、若しくはスズ等の卑金属)に属するいずれかの金属の金属酸化物を用いることができる。典型例として、アルミナ、ベーマイト、マグネシア、チタニア、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化インジウム、シリカ、ムライト、酸化スズおよび酸化カルシウム、等の金属酸化物が例示される。これらの金属酸化物は、使用する樹脂基材よりも融点が高く、かつ、電気化学的に安定であるため、本発明の目的に適した無機フィラーとして好適に使用し得る。これらの無機フィラーは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機フィラーの形状(外形)は特に制限されない。機械的強度、製造容易性等の観点から、通常は、略球形の無機フィラーを好ましく使用し得る。また、無機フィラーのサイズ(平均粒径:D50径)は、樹脂基材の平均細孔径よりも大きいことが好ましい。例えば、平均粒径が凡そ0.1μm〜3μmの無機フィラーの使用が好ましく、より好ましくは凡そ0.2μm〜2μmであり、特に好ましくは0.2μm〜1.8μmある。無機フィラーの平均粒径は当該分野で公知の方法、例えばレーザ回折散乱法に基づく測定によって求めることができる。このような無機フィラー粉末の調製方法自体は本発明を何ら特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。
上記塗料は、上述のようなフィブリル化ポリマーおよび無機フィラー粉末と必要に応じて使用される他の多孔質絶縁層形成成分とを水系媒体中で混合することにより調製され得る。これにより、上記水系媒体および必要に応じて使用される他の多孔質絶縁層形成成分を含む水系媒体に上記フィブリル化ポリマーおよび無機フィラー粉末が分散した水系の塗料が得られる。ここで「水系媒体」とは、水または水を主体とする混合媒体を指す概念である。かかる混合媒体を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。
上記塗料は、フィブリル化ポリマー、無機フィラー粉末および水系媒体の他に、一種または二種以上の材料(上記「他の多孔質絶縁層形成成分」)を必要に応じて含有することができる。そのような材料の代表例としてバインダが挙げられる。上記バインダとしては、水系媒体に分散または溶解するポリマーを用いることができる。水系媒体に分散または溶解するポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーを1種類で重合した単独重合体が好ましく用いられる。また、アクリル系樹脂は、2種以上の上記モノマーを重合した共重合体であってもよい。さらに、上記単独重合体及び共重合体の2種類以上を混合したものであってもよい。上述したアクリル系樹脂のほかに、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる。これらポリマーは、一種のみを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。バインダの形態は特に制限されず、粒子状(粉末状)のものをそのまま用いてもよく、溶液状あるいはエマルション状に調製したものを用いてもよい。二種以上のバインダを、それぞれ異なる形態で用いてもよい。
特に限定するものではないが、塗料の固形分濃度(不揮発分、すなわち多孔質絶縁層形成成分の割合)は、例えば凡そ10質量%〜60質量%程度であり得る。該固形分(すなわち多孔質絶縁層形成成分)に占める無機フィラーの含有割合は、少なくとも凡そ80質量%であることが好ましく、例えば凡そ85質量%〜99質量%であり得る。通常は、この割合を凡そ90質量%〜98質量%程度(好ましくは95質量%〜98質量%)とすることが適当である。また、該固形分(すなわち多孔質絶縁層形成成分)に占めるフィブリル化ポリマーの含有割合(多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたとき)は、0.3質量%以上であることが適当であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。フィブリル化ポリマーの含有量が少なすぎると、フィブリル化ポリマーを添加したことによる空隙充填効果が十分に得られないことがある。一方、フィブリル化ポリマーの含有量が多すぎると、セルロース系繊維同士が凝集してダマが生じ、多孔質絶縁層の面質が低下するとともに、過剰な繊維分が抵抗として働くため、容量劣化が生じることがある。フィブリル化ポリマーの含有量が5質量%以下であることが適当であり、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。バインダを含む組成では、例えば、バインダを1質量%〜5質量%の割合で含む組成とすることができる。
上記無機フィラー、フィブリル化ポリマーおよびバインダを水系媒体に混合させる操作は、ボールミル、ホモディスパー、ロボミクス(登録商標)、ディスパーミル(登録商標)、クレアミックス(登録商標)、フィルミックス(登録商標)、超音波分散機などの適当な混練機を用いて行うとよい。
このような塗料を樹脂基材の表面に塗布する操作は、従来の一般的な塗布手段を特に限定することなく使用することができる。例えば、適当な塗布装置(グラビアコーター、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、ディップコート等)を使用して、上記樹脂基材の親水性表面の上から所定量の塗料を均一な厚さにコーティングすることにより塗布され得る。該塗料の塗布量(樹脂基材の単位面積当たりの塗布量)は特に限定されず、セパレータおよび電池の形状や用途に応じて適宜異なり得る。例えば、上述のような捲回型の電極体(捲回電極体)を備えるリチウム二次電池の構築に使用されるシート状のセパレータを作製する場合には、シート状の樹脂基材の表面に上記塗料を、固形分換算の塗布量(すなわち、乾燥後の質量)が例えば凡そ0.2mg/cm〜0.5mg/cm程度となるように塗布するとよい。その後、適当な乾燥手段で塗布物を乾燥(典型的には樹脂基材の融点よりも低い温度、例えば110℃以下、例えば30〜80℃)することによって、塗料中の溶媒を除去するとよい。これにより、樹脂基材の表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータが得られる。
特に限定されるものではないが、多孔質絶縁層の厚みとしては、通常は0.5μm〜25μmであり、好ましくは1μm〜20μmであり、さらに好ましくは3μm〜15μmである。また、多孔質絶縁層の多孔度としては、通常は40%以上であり、特に好ましくは50%以上であり得る。多孔度の上限値としては特に限定されないが、概ね70%以下であり、好ましくは65%以下である。
ここに開示されるセパレータ製造方法を適用して好ましく製造されるリチウム二次電池用のシート状セパレータの断面構造を図3に模式的に示す。このセパレータシート70は、多孔質の樹脂基材72と、該樹脂基材72の表面に形成された多孔質絶縁層74とを備えている。樹脂基材72は、親水性官能基が存在する親水性表面72aを有している。多孔質絶縁層74は、無機フィラーと、フィブリル化されたポリマーとを含有している。この多孔質絶縁層74は、無機フィラーとフィブリル化ポリマーと水系媒体とを含む水系の塗料を、樹脂基材72の親水性表面72aに塗布し、乾燥させて形成されたものである。
ここで、樹脂基材72には親水化処理(例えば、水酸基やカルボキシル基のような親水性の高い極性官能基を導入する改質処理)が施されているので、該樹脂基材72の水系塗料に対する濡れ性が改善されている。このことによって、該塗料を樹脂基材72上に均一に塗布することができ、また樹脂基材72との密着性(結着性)のよい多孔質絶縁層74を形成することができる。さらに、上記塗料はフィブリル化ポリマーを含んでいるので、該塗料を樹脂基材72に塗布した際、該塗料の少なくとも一部は樹脂基材72内に浸み込み、該塗料に含まれるフィブリル化ポリマーが樹脂基材72を構成する繊維部(特に損傷を受けた欠損部)の表面を被覆する。このことによって、親水化処理に起因して生じた樹脂基材72の微小な欠損を充填し、樹脂基材72の空隙の拡大を防止することができる。したがって、本発明によれば、樹脂基材72の空隙の拡大化を抑えつつ該樹脂基材72の水系塗料に対する濡れ性を高めることができ、これにより電解液保持性が高く且つ多孔質絶縁層74が剥がれ難い、品質安定性に優れたセパレータ70を得ることができる。
本発明の方法により提供されるセパレータは、上記のように電解液保持性が高く、品質安定性に優れることから、種々の形態の二次電池の構成要素または該電池に内蔵される電極体の構成要素として好ましく利用され得る。例えば、ここに開示されるいずれかの方法により製造されたセパレータと、該セパレータを間に挟んで対向するように配置された正極および負極とを備えるリチウム二次電池の構成要素として好ましく使用され得る。かかる電池を構成する外容器の構造(例えば金属製の筐体やラミネートフィルム構造物)やサイズ、あるいは正負極集電体を主構成要素とする電極体の構造(例えば捲回構造や積層構造)等について特に制限はない。
以下、本発明の方法を適用して製造されたシート状セパレータ70(図3参照)を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の一実施形態につき、図4〜図7に示す模式図を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100を模式的に示す斜視図である。図5は、図4中のV−V線に沿う断面図である。図6は、捲回電極体20の構成を説明するための図である。図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図4〜図7に示すように、本質的に、長尺な正極集電体32上に正極活物質層34を備える正極シート(正極)30と、長尺な負極集電体52上に負極活物質層54を備える負極シート(負極)50と、上記正極シート30と上記負極シート50との間に介在する2枚のセパレータ70とを、重ね合わせて捲回した捲回電極体20を備える。また、リチウムイオン二次電池100は、この電極体20と適切な非水系の電解液とを収容する電池ケース80(典型的には扁平な直方体形状)を備える。
≪電池ケース80≫
電池ケース80は、一端(電池100の通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体84と、鉛直方向の上面に設けられ、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ矩形状プレート部材からなる蓋体82とから構成される。
電池ケース80の材質は、従来の密閉型電池で使用されるものと同じであればよく、特に制限はない。軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成された電池ケース80が好ましく、このような金属製材料としてアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等が例示される。本実施形態に係る電池ケース80(ケース本体84および蓋体82)はアルミニウム若しくはアルミニウムを主体とする合金によって構成されている。
図4に示すように、蓋体82には外部接続用の正極端子40および負極端子60が形成されている。蓋体82の両端子40、60の間には、電池ケース80の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように構成された薄肉の安全弁88と、注液口86が形成されている。なお、図4では、当該注液口86が注液後に封止材87によって封止されている。
≪捲回電極体20≫
捲回電極体20は、図6に示すように、長尺なシート状正極(正極シート30)と、該正極シート30と同様の長尺シート状負極(負極シート50)とを計二枚の長尺シート状セパレータ(セパレータ70,70)とを備えている。
≪正極シート30≫
正極シート30は、図6および図7に示すように、帯状の正極集電体32と正極活物質層34とを備えている。正極集電体32には、例えば、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、正極集電体32として、厚さが凡そ15μmの帯状のアルミニウム箔が用いられている。正極シート30は、正極集電体32の長手方向に直交する幅方向の一方の端部には、正極活物質層34が形成されずに正極集電体32が露出している未塗工部33を設けている。また、他方の端部には実質的に未塗工部33が設けられないように正極活物質層34が形成されている。図示例では、正極活物質層34は、正極集電体32に設定された未塗工部33を除いて、正極集電体32の両面に保持されている。正極活物質層34には、正極活物質や導電材やバインダが含まれている。
正極活物質には、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられる物質を使用することができる。正極活物質の例を挙げると、LiNiCoMnO(リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物)、LiNiO(ニッケル酸リチウム)、LiCoO(コバルト酸リチウム)、LiMn(マンガン酸リチウム)、LiFePO(リン酸鉄リチウム)などのリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。ここで、LiMnは、例えば、スピネル構造を有している。また、LiNiOやLiCoOは層状の岩塩構造を有している。また、LiFePOは、例えば、オリビン構造を有している。オリビン構造のLiFePOには、例えば、ナノメートルオーダーの粒子がある。また、オリビン構造のLiFePOは、さらにカーボン膜で被覆することができる。
例えば、正極活物質に、導電材としてアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の粉末状カーボン材料を混合することができる。また、正極活物質と導電材の他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダを添加することができる。これらを適当な分散媒体に分散させて混練することによって、正極合剤(ペースト)を調製することができる。正極活物質層34は、この正極合剤を正極集電体32に塗布し、乾燥させ、予め定められた厚さにプレスすることによって形成されている。
≪負極シート50≫
負極シート50は、図6および図7に示すように、帯状の負極集電体52と負極活物質層54とを備えている。負極集電体52には、例えば、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、負極集電体52には、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極シート50は、負極集電体52の長手方向に直交する幅方向の一方の端部には、負極活物質層54が形成されずに負極集電体52が露出している未塗工部53を設けている。また、他方の端部には実質的に未塗工部53が設けられないように負極活物質層54が形成されている。負極活物質層54は、負極集電体52に設定された未塗工部53を除いて、負極集電体52の両面に保持されている。負極活物質層54には、負極活物質や増粘剤やバインダなどが含まれている。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボンなどの炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物などが挙げられる。
また、かかる負極活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダを添加することができる。さらに、負極活物質やバインダの他に、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の増粘剤を添加することができる。そして、正極と同様、これらの負極活物質層構成成分を適当な分散媒体に分散させて混練することによって、負極合剤(ペースト)を調製することができる。負極活物質層54は、この負極合剤を負極集電体52に塗布し、乾燥させ、予め定められた厚さにプレスすることによって形成されている。
≪セパレータ70≫
セパレータ70は、図5〜図7に示すように、正極シート30と負極シート50とを隔てる部材である。セパレータ70は、前述のように、多孔質の樹脂基材72と、該樹脂基材72の表面に形成された多孔質絶縁層74とを備えている。この例では、多孔質絶縁層74は、樹脂基材72の表裏のうち負極活物質層54と対向する面の側に形成されている。この例では、図6に示すように、負極活物質層54の幅mは、正極活物質層34の幅lよりも少し広い。さらにセパレータ70の幅nは、負極活物質層54の幅mよりも少し広い。
≪捲回電極体20≫
捲回電極体20は、正極活物質層34と負極活物質層54との間にセパレータ70を介在させつつ、正極シート30と負極シート50とを重ね、かつ、捲回した電極体である。この実施形態では、図3に示すように、正極シート30と負極シート50と2枚のセパレータ70は、長さ方向を揃えて、正極シート30、セパレータ70、負極シート50、セパレータ70の順で重ねられている。この実施形態では、セパレータ70が介在した状態ではあるが、負極活物質層54は正極活物質層34を覆うように重ねられている。さらに、負極集電体52と正極集電体32とは、集電性を高める目的で、互いの未塗工部33、53が捲回電極体20の幅方向で反対側に突出するように、重ねられている。重ねられたシート材(例えば、正極シート30)は、幅方向に設定された捲回軸周りに捲回されている。
捲回電極体20は、電池ケース80(この例では、蓋体82)に取り付けられた正極端子40および負極端子60に取り付けられている。捲回電極体20は、捲回軸に直交する一の方向において扁平に押し曲げられた状態で電池ケース80に収納されている。また、捲回電極体20は、捲回軸方向が水平方向となるように電池ケース80に収容されている。捲回電極体20は、セパレータ70の幅方向において、正極シート30の未塗工部33と負極シート50の未塗工部53とが互いに反対側にはみ出ている。このうち、一方の正極端子40は、正極集電体32の未塗工部33に固定されており、他方の負極端子60は、負極集電体52の未塗工部53に固定されている。かかる捲回電極体20は、ケース本体84の扁平な内部空間に収容される。ケース本体84は、捲回電極体20が収容された後、蓋体82によって塞がれる。
≪非水電解液≫
非水電解液としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。一例として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)にLiPFを約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。
≪試験評価≫
本発明者は、かかるセパレータシート70の作用効果を評価するべく試験をした。以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
≪フィブリル化CMC≫
カルボキシメチルセルロース(CMC:繊維長1.2μm)の凝集物(塊状)をPJMジェットミル機(日本ニューマチック工業株式会社製;粉砕圧力0.9MPa、粉砕回数1回)及びスーパーマスコロイダー機(増幸産業株式会社製;回転数3000rpm、砥石間のクリアランス5μm)を用いて粉砕処理することでフィブリル化されたCMCを作製した。その際、CMCに加わる剪断力および圧縮力を適当に変化させて粉砕し、MDS−1型気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製)で分級し、フィブリル繊維の繊維径d(図2)が異なるフィブリル化CMCを得た。
≪セパレータ≫
無機フィラーとしてのアルミナ粉末(D50径:0.2μm)と、上記ファブリル化CMCと、バインダとしてのアクリル系樹脂とを、それらの材料の質量比が固形分比で96:1:3となるように水と混合し、スラリー状の塗料を調製した。また、多孔質の樹脂シート(厚み20μmのPP/PE/PPの三層構造のものを使用した。)を用意し、一般的なコロナ放電処理装置を使用して該樹脂シートの表面に大気中にてコロナ放電を発生させ、樹脂シートの親水化処理を行った。かかる親水化処理後の樹脂シートの表面に、上記塗料をグラビアロールにより塗布して乾燥することにより、樹脂シートの表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータを得た。
≪サンプル1〜6≫
サンプル1〜6では、フィブリル化CMCのフィブリル繊維径d(図2)が異なる。また、サンプル1〜6は、かかるフィブリル繊維径dを除き、同じ構成にした。
≪サンプル7〜10≫
サンプル1、7〜10では、フィブリル化CMCの含有量が異なる。また、サンプル1、7〜10は、かかるフィブリル化CMCの含有量を除き、同じ構成にした。
≪サンプル11〜14≫
サンプル1、11〜14では、多孔質絶縁層の厚みが異なる。また、サンプル1、11〜14では、多孔質絶縁層の厚みを除き、同じ構成にした。
≪サンプル15、16≫
サンプル1、15、16では、フィブリル化CMCの配置領域が異なる。また、サンプル1、15、16では、フィブリル化CMCの配置領域を除き、同じ構成にした。具体的には、図8および図9に示すように、多孔質絶縁層74は、負極シート50に対向している対向部位と、負極シートに対向していない非対向部位とを有する。サンプル1では、フィブリル化CMCは、多孔質絶縁層74の全域に配置した。一方、サンプル15では、図8に示すように、フィブリル化CMCは、多孔質絶縁層74の負極シート50に対向していない部位(非対向部位)の全域R1に選択的に配置した。また、サンプル16では、図9に示すように、フィブリル化CMCは、多孔質絶縁層74の負極シート50に対向していない部位(非対向部位)の一部R2に選択的に配置した。R1の幅と、R2の幅との差は1mmとした。
≪サンプル17≫
サンプル17では、樹脂シートに対してコロナ放電処理を行わずにセパレータを作製した。それ以外はサンプル2と同じ構成にした。
≪サンプル18≫
サンプル18では、フィブリル化されていないCMC(非フィブリル化CMC)を添加した塗料を用いてセパレータを作製した。それ以外はサンプル2と同じ構成にした。
≪サンプル19〜21≫
サンプル19〜21では、フィブリル化されていないCMC(非フィブリル化CMC)を添加した塗料を用い、かつ、樹脂シートに対してコロナ放電処理を行わずにセパレータを作製した。また、樹脂シートに対する塗料の濡れ性を高めるために、塗料に分散剤としてのレオコール(ライオン株式会社製)を添加した。それ以外はサンプル2と同じ構成にした。
≪ピンホールの測定≫
各サンプルのセパレータについて、多孔質絶縁の表面をSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)で観察し、セパレータ1000cmあたりに生じた凝集塊と、直径0.5mm以上のピンホールの個数を測定した。
≪正極シート≫
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末(D50径:5.7μm)とAB(導電材)とPVdF(バインダ)とを、これらの材料の質量比が100:5:2となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合して、正極活物質層形成用ペーストを調製した。この正極活物質層形成用ペーストを厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に帯状に塗布して乾燥することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が設けられた正極シートを作製した。正極活物質層形成用ペーストの塗布量は、片面あたり約15mg/cm(固形分基準)となるように調節した。正極シートの厚みは170μm、長さは4500mm、正極活物質層の塗工幅は94mmとした。
≪負極シート≫
負極活物質としての黒鉛粉末(D50径:25μm)と、CMC(増粘剤)と、SBR(バインダ)とを、これらの材料の質量比が100:1:1となるように水と混合して負極活物質層形成用ペーストを調製した。この負極活物質層形成用ペーストを厚み14μmの長尺状の銅箔(負極集電体)の両面に塗布して乾燥することにより、負極集電体の両面に負極活物質層が設けられた負極シートを作製した。負極シートの厚みは154μm、長さは4700mm、負極活物質層の塗工幅は100mmとした。
≪リチウムイオン二次電池≫
上記正極シートおよび負極シートを2枚のセパレータを介して捲回することによって捲回体を作製し、この捲回体を横方向から平板にて4kN/cmの圧力にて2分間プレスして押し潰すことによって扁平状の捲回電極体を作製した。その際、正極シートと負極シートとの間に挟まれたセパレータは、該セパレータの片面に形成された多孔質絶縁層が負極シートと対向するように配置した。このようにして得られた捲回電極体を非水電解質(非水電解液)とともに電池ケース(ここでは角型を使用した。)に収容し、電池ケースの開口部を気密に封口した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比率において、3:4:3で配合し、LiPFを1モル溶解させたものを使用した。電解液には、過充電時にガスを発生させるガス発生剤として、シクロヘキシルベンゼン(CHB)1質量%およびビフェニル(BP)1質量%を添加した。
≪初期容量の測定≫
各サンプルのセパレータを用いて構築された試験用リチウムイオン二次電池のそれぞれを、25℃の温度条件にて、電流値1Cで電圧4.1Vまで充電した。5分間の休止後、かかる充電後の電池を、25℃において、電流値1Cで電圧3.0Vまで放電した。そして、5分間の休止後、電流値1Cで電圧4.1Vまで充電し、その後、定電圧方式で電流値が0.1Cに減少するまで充電した。かかる充電後の電池を、25℃において、電流値1Cで電圧3.0Vまで放電し、その後、定電圧方式で電流値が0.1Cに減少するまで放電した。このときの放電容量を初期容量(定格容量)とした。ここで、試験用リチウムイオン二次電池の初期容量は24Ahとした。
≪サイクル後容量維持率≫
各サンプルの試験用リチウムイオン二次電池のそれぞれに対し、2CでCC充放電を繰り返す充放電パターンを付与し、サイクル試験を行った。具体的には、約50℃の環境下において、2Cの定電流充電によって4.1Vまで充電を行い、2Cの定電流放電によって3.0Vまで放電を行う充放電サイクルを1000回連続して繰り返した。そして、充放電サイクル試験後における容量と、初期容量とから容量維持率を算出した。ここで、充放電サイクル試験後における容量は、「初期容量の測定」と同様にして行った。容量維持率は、「充放電サイクル試験後の電池容量/初期容量」×100により求めた。ここでは各サンプルの電池5個に対して上記試験を実施し、その平均値を算出した。
≪0℃パルスサイクル後容量維持率≫
各サンプルの試験用リチウムイオン二次電池のそれぞれに対し、初期容量の凡そ50%の充電状態(SOC50%)に調整した後、0℃の温度条件下において、20Cで10秒間のCC放電と20Cで10秒間のCC充電とを行う充放電サイクルを50000回連続して繰り返した。そして、0℃パルスサイクル後の電池容量を、初期容量と同じ条件で測定し、[(0℃パルスサイクル後の電池容量)/(初期容量)]×100(%)から、0℃パルスサイクル後容量維持率を求めた。
≪高温保存試験≫
各サンプルの試験用リチウムイオン二次電池のそれぞれに対し、初期容量の凡そ100%の充電状態(SOC100%)に調整した後、60℃の恒温槽に収容し、100日間の高温エージングを行った。そして、高温保存後の電池容量を、初期容量と同じ条件で測定し、[(高温保存後の電池容量)/(初期容量)]×100(%)から、高温保存後容量維持率を求めた。ここでは各サンプルの電池50個に対して上記試験を実施し、その平均値を算出した。
≪過充電試験≫
各サンプルの試験用リチウムイオン二次電池のそれぞれに対し、過充電試験を行った。過充電試験は、室温(約25℃)環境雰囲気下において、48Aの定電流(2C相当)で充電上限電圧20Vに達するまで充電した。その際、電池ケースの側面に熱電対を取り付け、電池の表面温度を計測するとともに電池電圧を計測した。かかる充電の途中でセパレータのシャットダウンが起こり、通電不可となった場合は、その後の5分間の電池の挙動を観察した。
≪各サンプルの評価≫
各サンプルについて、上記試験の結果を表1および表2に示す。表1は、各サンプルについて、構成を纏めた表である。表2は、各サンプルについて、評価を纏めた表である。
Figure 0006094805
Figure 0006094805
表1および表2に示すように、サンプル1〜16では、多孔質絶縁層にフィブリル化CMCが含まれている。これらのサンプル1〜16については、60℃で100日間保存した高温保存試験後における容量維持率は概ね70%以上と良好であり、非フィブリル化CMCを用いたサンプル18に比べて、極めて高い耐久性能を示した。このように、多孔質絶縁層にフィブリル化CMCを含有させることによって、リチウムイオン二次電池は、高温保存後の容量維持率が格段に向上する。
サンプル1〜5では、多孔質絶縁層に含まれるフィブリル化CMCのフィブリルの平均繊維径d(図2)が0.5μm以下である。これらのサンプル1〜5では、高温保存試験後における容量維持率が97%以上と格段に良好な結果が得られ、サンプル6(平均繊維径d:0.7μm)よりも耐久性に優れるものであった。サンプル6では、フィブリル繊維径dが大きいため、セパレータの樹脂基材への繊維充填が進まず、電池特性が低下したものと解される。また、サンプル6では、フィブリル繊維径dが大きいため、CMCがうまく分散せず、CMC同士の凝集が生じ、面質の低下(凝集塊およびピンホールの数の増大)を招いた。これらの結果から、フィブリル化CMCのフィブリル繊維径dは0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。
また、サンプル2〜5では、多孔質絶縁層に含まれるフィブリル化CMCのフィブリルの平均繊維径dが0.05μm以上である。これらのサンプル2〜5では、サンプル1(平均繊維径d:0.03μm)よりも、凝集塊およびピンホールの数をさらに減らすことができた。サンプル1では、フィブリル繊維径dが小さいため、塗料に混入した気泡が乾燥時まで抜けきらず、ピンホールとなり、面質の低下を招いたと考えられる。この結果から、フィブリル化CMCのフィブリル繊維径dは0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることが特に好ましい。
サンプル2、8〜10では、多孔質絶縁層に含まれるフィブリル化CMCの添加量が、0.3質量%以上に設定されている。かかるサンプル2、8〜10は、高温保存試験後における容量維持率が97%以上と格段に良好な結果が得られ、サンプル7(フィブリル化CMCの添加量:0.2質量%)よりも耐久性に優れるものであった。サンプル7では、フィブリル化CMCの添加量が少ないため、該フィブリル化CMCを用いたことによる性能向上効果が低下したものと解される。この結果から、フィブリル化CMCの添加量は、0.3質量%以上にすることが適当であり、好ましくは0.5質量%以上(さらには1質量%以上)である。
サンプル2、7〜9では、多孔質絶縁層に含まれるフィブリル化CMCの添加量が、5質量%以下に設定されている。かかるサンプル2、7〜9は、サイクル後容量維持率が90%以上と格段に良好な結果が得られ、サンプル10(フィブリル化CMCの添加量:7質量%)よりも耐久性に優れるものであった。サンプル10では、フィブリル化CMCの添加量が多いため、CMCがうまく分散せず、CMC同士の凝集が生じ、面質が低下するとともに、過剰な繊維分が抵抗として働くため、サイクル後の電池容量の低下を招いたものと解される。この結果から、フィブリル化CMCの添加量は、5質量%以下にすることが適当であり、好ましくは3質量%以下(さらには2質量%以下)である。
サンプル2、12〜14では、フィブリル化CMCを含む多孔質絶縁層の厚みが、0.8μm以上に設定されている。かかるサンプル2、12〜14は、高温保存試験後における容量維持率が97%以上と格段に良好な結果が得られ、サンプル11(多孔質絶縁層の厚み:0.5μm)よりも耐久性に優れるものであった。サンプル11では、フィブリル化CMCを含む多孔質絶縁層の厚みが小さいため、該フィブリル化CMCを用いたことによる性能向上効果が低下したものと解される。この結果から、多孔質絶縁層の厚みは、0.8μm以上にすることが適当であり、好ましくは1μm以上(さらには3μm以上、特には5μm以上)である。
サンプル2、11〜13では、多孔質絶縁層の厚みが、15μm以下に設定されている。かかるサンプル2、11〜13は、サイクル後容量維持率が90%以上と格段に良好な結果が得られ、サンプル14(多孔質絶縁層の厚み:17μm)よりも耐久性に優れるものであった。サンプル14では、多孔質絶縁層の厚みが大きいため、フィブリル化CMCの繊維分が過剰となり、サイクル後の電池容量の低下を招いたものと解される。この結果から、多孔質絶縁層の厚みは、15μm以下にすることが適当であり、好ましくは12μm以下(さらには10μm以下、特には8μm以下)である。
サンプル15では、フィブリル化CMCは、多孔質絶縁層の負極シートと対向していない部位(非対向部位)の全域R1(図8)に選択的に配置されている。かかるサンプル15は、高温保存後における容量維持率が97%以上と格段に良好な結果が得られ、フィブリル化CMCを多孔質絶縁層の全域に配置したサンプル2と同程度に耐久性に優れるものであった。一方、サンプル16では、フィブリル化CMCは、多孔質絶縁層の負極シートと対向していない部位(非対向部位)の一部R2(図9)に選択的に配置されている。かかるサンプル16は、サンプル15に比べて、高温保存後における容量維持率が低くなった。この結果から、フィブリル化CMCは、少なくとも多孔質絶縁層の負極シートと対向していない部位(非対向部位)の全域に配置することが好ましい。
なお、サンプル17では、樹脂シートに対してコロナ放電処理を行っていない。かかるサンプル17では、樹脂シートと塗料との濡れ性が悪く、塗布後にムラやはじけが発生したため、コロナ放電処理を行ったサンプル1〜16に比べてピンホール数が大幅に増大した。また、電池反応も不均一となり、電池特性(サイクル後容量維持率)の低下を招いた。サンプル19〜21では、樹脂シートに対してコロナ放電処理を行うかわりに、塗料に分散剤を添加している。これらのサンプル19〜20では、高温保存後の容量維持率および0℃容量維持率が低下傾向になった。サンプル19〜20では、コロナ放電処理を行うかわりに分散剤を添加することで、樹脂シートと塗料との濡れ性は改善されたものの、分散剤のもつ親水基の影響により水分との反応が生じ、その結果、電池特性の低下を招いたものと推測される。
なお、ここでは詳細なデータは省略するが、多孔質絶縁層にフィブリル化CMCが含まれているサンプル2〜5、8、9、12、13、15では、上記過充電試験において、20Vに到達する前にセパレータのシャットダウンが起こり通電不可となったので、ここで過充電試験を終了した。これらの電池では、上記通電不可となった時点で電池温度が徐々に低下した。一方、多孔質絶縁層に非フィブリル化CMCが含まれているサンプル18についても、上記過充電試験において、20Vに到達する前にセパレータのシャットダウンが起こり通電不可となったので、ここで過充電試験を終了した。ただし、シャットダウンが起こったときのサンプル18の電池温度は、サンプル2〜5、8、9、12、13、15のシャットダウンが起こったときの電池温度に比べて高くなっていた。また、サンプル18では、上記シャットダウンにより通電不可となった後も電池温度が上昇し続けた。以上の結果から、多孔質絶縁層にフィブリル化CMCが含まれていることにより、過充電時のセパレータのシャットダウン機能を適切に発揮し得ることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
ここまでは二次電池の典型例としてリチウムイオン二次電池について説明したが、この形態の二次電池に限定されない。例えば、リチウムイオン以外の金属イオン(例えばナトリウムイオン)を電荷担体とする非水電解液型二次電池や、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池であってもよく、また、上述した電極体を備えるリチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ(物理電池)であってもよい。
ここに開示される技術により提供される二次電池は、上述したように、高温保存後の容量維持率が向上するので、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用し得る。従って本発明は、図10に模式的に示すように、かかる二次電池100(典型的には複数直列接続してなる組電池)を電源として備える車両1(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)を提供する。
1 車両
10 フィブリル化ポリマー
12 フィブリル繊維
14 塊状集合体
20 捲回電極体
30 正極シート
32 正極集電体
34 正極活物質層
50 負極シート
52 負極集電体
54 負極活物質層
70 セパレータ
72 樹脂基材
72a 親水性表面
74 多孔質絶縁層
100 二次電池

Claims (8)

  1. 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータとを備えた二次電池であって、
    前記セパレータは、多孔質の樹脂基材と、該樹脂基材の表面に形成された多孔質絶縁層とを備え、
    前記樹脂基材は、親水性官能基が存在する親水性表面を有し、
    前記多孔質絶縁層は、無機フィラーと、フィブリル化されたポリマーとを含有し、
    前記フィブリル化されたポリマーは、繊維長1μm〜10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体を構成しており、該集合体の外表部にフィブリル繊維が突出しており、
    前記集合体の外表部に突出したフィブリル繊維の平均繊維径が0.05μm〜0.5μmであり、
    前記多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたときに、前記フィブリル化されたポリマーの含有量が0.3質量%〜5質量%である、二次電池。
  2. 前記親水性官能基は、酸素原子を含む極性官能基である、請求項1に記載の二次電池。
  3. 前記多孔質絶縁層は、前記正極または前記負極に対向している対向部位と、前記正極および前記負極の何れにも対向していない非対向部位とを有し、
    前記フィブリル化されたポリマーは、前記多孔質絶縁層のうち、前記非対向部位の全域に選択的に配置されている、請求項1または2に記載の二次電池。
  4. 多孔質の樹脂基材を用意すること;
    前記樹脂基材の表面に、該樹脂基材の表面を改質して親水性を高める親水化処理を施すこと、
    前記樹脂基材の親水性表面に、無機フィラーとフィブリル化されたポリマーと水系媒体とを含む塗料を付与することにより、前記樹脂基材の表面に多孔質絶縁層が形成されたセパレータを得ること;および、
    前記セパレータを用いて二次電池を構築すること;
    を包含し、
    前記フィブリル化されたポリマーは、繊維長1μm〜10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体を構成しており、該集合体の外表部にフィブリル繊維が突出しており、
    前記集合体の外表部に突出したフィブリル繊維の平均繊維径が0.05μm〜0.5μmであり、
    前記多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたときに、前記フィブリル化されたポリマーの含有量が0.3質量%〜5質量%である、二次電池の製造方法。
  5. 前記親水化処理は、前記樹脂基材に親水性官能基を導入する処理である、請求項に記載の製造方法。
  6. 前記親水化処理は、前記樹脂基材に酸素原子を含む極性官能基を導入する処理である、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記親水化処理は、コロナ放電処理である、請求項の何れか一つに記載の製造方法。
  8. 多孔質の樹脂基材と、
    前記樹脂基材の表面に形成された多孔質絶縁層と
    を備え、
    前記樹脂基材は、親水性官能基が存在する親水性表面を有し、
    前記多孔質絶縁層は、無機フィラーと、フィブリル化されたポリマーとを含有し、
    前記フィブリル化されたポリマーは、繊維長1μm〜10μmのセルロース系繊維が凝集した塊状集合体を構成しており、該集合体の外表部にフィブリル繊維が突出しており、
    前記集合体の外表部に突出したフィブリル繊維の平均繊維径が0.05μm〜0.5μmであり、
    前記多孔質絶縁層の全質量を100質量%としたときに、前記フィブリル化されたポリマーの含有量が0.3質量%〜5質量%である、二次電池用セパレータ。
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