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JP6088180B2 - スクリーニング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧料等に好適な、新規な作用機序を有する美白剤及びそのスクリーニング方法、該美白剤を含有する美白用組成物、並びに前記美白用組成物の製造方法に関するものである。尚、本発明の説明において、化粧料との用語は、医薬部外品を含むものとする。
皮膚、毛髪等の色素細胞(メラノサイト)により産生されるメラニン(Melanine)は、生体のフェノール性化合物が酸化・重合し生成する黒褐色の高分子色素である。メラニンは、生体必須アミノ酸のチロシンが、チロシナーゼ等の生体酵素の働きによりドーパ、ドーパキノンに変換され、ドーパクロム、インドールキノン等の中間物質を経由した後、更に自動酸化及び重合反応し生合成される(例えば、非特許文献1を参照)。この様に複雑な生合成経路を経て産生されるメラニンには、黒褐色の真性メラニン(eumelanin)、橙赤色の亜メラニン(pheomelanin)の2種類のメラニンの存在が報告され、紫外線暴露等による細胞核のDNA損傷を防ぐなどの生体保護に重要な役割を果たしていることが知られている。また、メラニンは、色素細胞のメラノソ−ム内において合成・蓄積された後、メラノソームの成熟に伴い細胞膜に輸送され、樹状突起(デンドライト)を介し角化細胞(ケラチノサイト)に移送される。さらに、色素細胞よりメラニンを受け取った角化細胞(ケラチノサイト)は、角質細胞へと変化しながら皮膚表面に移動し、最終的に垢となって皮膚表面から剥がれ落ちることによりメラニンを体外に排出する。このため、メラニン合成から排出に至る一連の過程におけるメラニン産生亢進、移送障害、過剰又は不均一な蓄積、排出障害等は、日焼けをはじめ、しみ、くすみ等の色素沈着が関与する肌トラブルの原因と深く関連すると考えられ、その作用機序の解明に注目が集まっている。
一方、紫外線暴露等の生体に対する刺激により、皮膚をはじめとする生体組織に反応性に富むスーパオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素等の活性酸素が発生することは広く知られている。生体組織に発生した活性酸素は、蛋白質、核酸等の生体構成成分と容易に反応し、生体組織及び細胞等の損傷を与え、生体機能の発現に重大な障害を引き起こす。この様な活性酸素が原因となる生体組織の損傷の内、皮膚の損傷としては、コラーゲンをはじめとする細胞外マトリックス成分の分解、変性又は架橋等によるシワ形成などの皮膚形状変化や、肌の弾力性の低下等の皮膚構造変化などの皮膚老化現象がよく知られている(例えば、特許文献1を参照)。さらに、生体内に生じた活性酸素は、脂質と反応し過酸化脂質を産生し、免疫過剰反応と相まって皮膚角質層の保湿機能を低下させアトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の原因のひとつとなることも報告されている(例えば、特許文献2を参照)。また、活性酸素と色素沈着との関連性、特に、活性酸素とメラニン産生との関連性に関しては、活性酸素が、ドーパ、ドーパキノン等のメラニン生合成の中間体産生を促進しメラニン産生を亢進することが報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。このため、従来の抗酸化剤、活性酸素消去剤等は、活性酸素濃度を低下させメラニン生合成中間体のドーパ、ドーパキノン等の産生を抑制することにより最終生成物のメラニン産生を抑制することを期待した美白剤であった。
特開2012−067104号公報 特開2009−227654号公報
化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望、薬事日報社、武田克之ほか、P144〜148、第6節 美白化粧品 メラニン色素の制御と美白剤の開発、フレグランスジャーナル臨時増刊号、No14、156−161(1995)
本発明は、上記の様な状況を鑑みてなされたものであり、従来の美白剤の作用機序に着目するだけでは見出すことが困難な、新規な作用機序を有する美白剤、詳しくは、過酸化脂質及びメラニンにより合成される脂化メラニンの産生を抑制する作用を有する美白剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、皮膚をはじめとする生体組織に発生する活性酸素及び生体構成成分の脂質より産生する過酸化脂質が、メラニン生合成過程に存在することにより脂質化されたメラニン(脂化メラニン)が生成することを見出した。また、本発明者が見出した脂化メラニンは、従来知られている真性メラニン、亜メラニン等のメラニンとはその性質が異なることを明らかにした。具体的には、脂化メラニンと従来のメラニンの色調の違いを比較したところ、脂化メラニンの色調が濃い(黒い)ことが確認された。これまでの活性酸素とメラニン産生に関する研究によれば、活性酸素により色素細胞が活性化し、メラニン産生が亢進されることは報告されている。しかしながら、本発明者の知る限り、活性酸素及び脂質により生成した過酸化脂質が、(生)合成過程のメラニンと反応し脂化メラニンが産生することは知られていなかった。さらに、産生した脂化メラニンが、日焼け等の皮膚の黒化、しみ、くすみ等の皮膚色素沈着症状の発生及び悪化に関与していること、並びに、その色調の濃さのため、見た目の色素沈着症状をより悪化させていることも知られていなかった。かかる事実によれば、脂化メラニン産生抑制作用を有する成分には、見た目の皮膚黒化、日焼け、しみ、くすみ等の色素沈着症状を予防又は改善する効果が期待出来る。一方、過酸化脂質がメラニン生合成過程に存在することにより生成する脂化メラニンは、本発明者により見出されたものであるため、従来、皮膚をはじめとする生体組織に脂化メラニンが産生することは明らかにされていなかった。故に、脂化メラニン産生抑制作用を指標とした美白剤をスクリーニングする方法、脂化メラニン産生抑制作用により美白効果を発揮する成分(美白剤)、該成分(美白剤)を含有する美白用組成物、及びその製造方法に関する検討も行われてこなかったと言える。従って、脂化メラニン産生抑制作用を有する成分は、新たな作用機序を有する美白剤となり得る。
本発明者は、さらに鋭意努力を重ね、新規な作用機序を有する美白剤、即ち、脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤を精度よく、効率的にスクリーニングする方法を確立した。本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とする美白剤のスクリーニング方法によれば、新規な作用機序を有し、優れた美白効果が期待出来る美白剤を精度よく、効率的にスクリーニングすることが出来る。尚、本発明には、脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤、脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤をスクリーニングする方法のほか、脂化メラニン産生抑制作用を有する成分を含有する美白用組成物、及び前記の美白剤のスクリーニング方法を利用した美白用組成物を設計する方法も本発明の範疇に含まれる。即ち、本発明は、以下に示した通りである。
<1> 脂化メラニン産生抑制作用を指標とする、美白剤のスクリーニング方法。
<2> 脂化メラニン産生抑制作用を評価する工程を含む美白剤のスクリーニング方法であって、被験物質を添加した場合、及び被験物質を添加しない場合の脂化メラニン産生抑制作用を評価し、該作用を指標とし美白剤を選択する、<1>に記載の美白剤のスクリーニング方法。
<3> 脂化メラニン産生抑制作用の評価が、脂化メラニン産生量、脂化メラニン分解量、過酸化脂質産生量より選択される1種又は2種以上の比較である、<1>又は<2>に記載の美白剤のスクリーニング方法。
<4> <1>〜<3>の何れかに記載の美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤を含有する、美白用組成物。
<5> 皮膚外用剤である、<4>に記載の美白用組成物。
<6> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)である、<4>又は<5>に記載の美白用組成物。
<7> 脂化メラニン産生抑制剤よりなる、美白剤。
<8> 脂化メラニン産生抑制剤が、脂化メラニン産生抑制作用、脂化メラニン分解促進作用、過酸化脂質産生抑制作用より選択される1種又は2種以上の作用を有する、<7>に記載の美白剤。
<9> <7>又は<8>に記載の美白剤を含有する皮膚外用剤。
<10> <1>〜<3>の何れかに記載の美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤を含有する美白用組成物の設計方法。
本発明によれば、脂化メラニン産生抑制作用に基づく新規な作用機序を有する美白剤を提供することが出来る。
メラニン及び脂化メラニン懸濁液の吸光度測定による脂化メラニン産生状況を比較検討した結果を示した図である。 メラニン及び脂化メラニン懸濁液の目視観察による色調の差を検討した結果を示した図である。 PAS染色による脂化メラニン産生状況を比較検討した結果を示した図である。 吸光度測定(TBARS測定による過酸化脂質定量)による脂化メラニン産生状況を比較検討した結果を示した図である。 蛍光色素による脂化メラニンの可視化検討の結果を示した図である。 PAS染色による色素細胞の過酸化脂質産生状況を検討した結果を示した図である。 本発明の美白剤(ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出(アーティチョークエキス))の脂化メラニン産生抑制作用を吸光度測定により評価した結果を示した図である。 本発明の美白剤(ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出(アーティチョーク))の脂化メラニン分解促進作用を吸光度測定により評価した結果を示した図である。 本発明の美白剤(ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出(アーティチョーク))の細胞内過酸化脂質産生抑制作用をPAS染色により評価した結果を示した図である。
以下、本発明の実施の形態に関し詳細に説明するが、本発明は、これらの内容に限定されるものではない。
<本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とする美白剤のスクリーニング方法>
本発明の美白剤のスクリーニング方法は、脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択することを特徴とする。また、本発明の美白剤のスクリーニング方法としては、脂化メラニン産生抑制作用を評価する工程を含む美白剤のスクリーニング方法であって、被験物質を添加した場合、及び被験物質を添加しない場合の脂化メラニン産生抑制作用を評価し、該作用を指標とし美白剤を選択することを特徴とする美白剤のスクリーニング方法であることが好ましい。本発明の美白剤のスクリーニング方法において、美白剤を選択する指標となる脂化メラニン産生抑制作用としては、(生)合成過程のメラニンに過酸化脂質が働き掛け産生される脂質化されたメラニン(脂化メラニン)の産生を抑制する作用であれば特段の限定なく適用することが出来る。また、本発明の脂化メラニン産生抑制作用としては、脂化メラニンの産生を抑制する作用のほか、産生した脂化メラニンの分解を促進する作用、更には、脂化メラニン産生と深く関連する過酸化脂質の産生を抑制する作用などが好適に例示出来る。また、本発明の脂化メラニン産生抑制作用の評価は、脂化メラニン産生抑制作用、脂化メラニン分解促進作用、過酸化脂質産生抑制作用などの脂化メラニン産生抑制作用を評価可能な物理量を測定し、その測定値又は該測定値より算出される値を比較することにより評価することが出来る。前記脂化メラニン産生抑制作用を評価可能な物理量としては、脂化メラニン産生抑制作用を評価可能な物理量であれば特段の限定なく適用することが出来、好ましいものを挙げれば、脂化メラニン量(脂化メラニン産生量、脂化メラニン分解量)のほか、脂化メラニン産生と深く関連する過酸化脂質量などの物理量が好適に例示出来る。
本発明における脂化メラニンは、生体組織に発生した活性酸素又は生体酸化酵素等と生体構成成分の脂質により産生される過酸化脂質が、(生)合成過程にあるメラニンと反応し生成される脂質化されたメラニンの総称を意味し、必ずしも単一の化学物質として認識されるものではない。従来、ヒトを含む動物、植物、原生動物などの色素細胞により産生されるメラニンとしては、真性メラニン(ユウメラニン、Eumelanin)、亜メラニン(フェオメラニン、Pheomelanin)等が報告されている。本発明の脂化メラニン産生に関与するメラニンとしては、動物、植物、原生動物などの色素細胞により産生されるメラニンであれば特段の限定なく適用出来、より好ましくは、真性メラニンが、さらに好ましくは、ヒト色素細胞より産生される真性メラニンが好適に例示出来る。一方、本発明の脂化メラニン産生に関与する脂質としては、動物、植物、原生動物などに含まれる脂質であり、活性酸素、酸化酵素等との反応により過酸化脂質を生成する脂質であれば特段の限定なく適用することが出来る。また、過酸化脂質とは、脂質過酸化物の総称であり、分子内にパーオキシド(peroxide)結合を有する脂質を意味する。前記の脂化メラニンを産生する脂質の内、特に好ましいものとしては、中性脂肪の不飽和脂肪酸、リン脂質、コレステロールエステル等の脂質が好適に例示出来る。かかる脂質は、生体中に含有される脂質であり、過酸化脂質を形成した後、(生)合成過程のメラニンと反応し色調の濃い脂化メラニンを産生する。また、本発明の脂化メラニンは、皮膚の黒化、日焼け、しみ、くすみ等の色素沈着症状と密接に関係し、色素沈着症状の発生・悪化の原因となるほか、見た目の色素沈着症状の悪化にも深く関連する。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法における具体的な工程を以下に挙げる。
(1) 被験物質を添加し、脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定する。比較対照として、被験物質を添加しない場合の脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定する。
(2) 測定した脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量又は該測定値より算出される値)を比較し、被験物質の脂化メラニン産生抑制作用を評価する。
(3) 評価した被験物質の脂化メラニン産生抑制作用を、予め設定した基準に基づいて判定し、被験物質を判別する。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法における上記(1)の工程は、脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定することが出来る評価系であれば特段の限定なく適用することが出来る。また、本工程(1)において測定される脂化メラニン産生抑制作用としては、脂化メラニンの産生を抑制する作用であれば特段の限定なく適用することが出来、具体的には、脂化メラニン産生抑制作用、脂化メラニン分解促進作用のほか、脂化メラニン産生量に深く関連する過酸化脂質の産生抑制作用などが好適に例示出来る。さらに、本工程(1)において測定される脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量としては、脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量であれば特段の限定なく適用することが出来、かかる物理量としては、脂化メラニン量(脂化メラニン産生又は分解量)のほか、過酸化脂質量等が好適に例示出来る。また、前記の脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量の測定は、1種を測定することに限定されず、複数種類の脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量を測定することが出来る。
上記(2)の工程は、上記(1)の工程において測定された脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)に関する測定値又は該測定値を基に任意の処理方法により算出される数値を比較することにより、被験物質の脂化メラニン産生抑制作用を評価することが出来る。また、前記の脂化メラニン産生抑制作用の評価は、脂化メラニン産生抑制作用に関する測定値又は該測定値より算出される値の1種を比較することに限定されず、複数種類の脂化メラニン産生抑制作用に関する測定値又は該測定値より算出される値を基に評価することが出来る。
さらに、上記(3)の工程の判定に用いる基準も特に限定されず、目的に応じ適宜設定することが出来る。上記(3)の工程における判断基準(指標)としては、例えば、被験物質に脂化メラニン産生抑制作用があると評価された場合に美白剤として選択され得ると判断するほか、脂化メラニン産生抑制作用に関し事前に評価基準を設けておき、その基準を超えた場合、該被験物質を美白剤として選択する等もこれに含まれる。さらに、複数の被験物質に関し脂化メラニン産生抑制作用を評価し、これらの作用を相対的に比較することにより、脂化メラニン産生抑制作用が高い被験物質が、より優れた美白剤であると判断することなどが挙げられる。係る工程を経て選択された美白剤には、優れた美白効果が期待出来る。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定する評価系は、脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定することが出来る評価系であれば特段の限定なく適用することが出来る。本発明の脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)を測定することが出来る評価系としては、生体、細胞又は組織等を生体由来の材料を用いることなく脂化メラニン産生系を化学的に構築した脂化メラニン産生抑制作用評価系のほか、生体、組織又はメラニン産生能を有する細胞等を利用し、脂化メラニン産生系を再現した脂化メラニン産生抑制作用評価系などが好適に例示出来る。また、前記の脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量)の測定が可能な評価系の内、細胞を利用した評価系を用いる場合の細胞に関しては、メラニン産生能を有する細胞であれば特段の限定なく適用出来、好ましくは、色素細胞(メラノサイト)を、より好ましくは、正常ヒト成人表皮メラノサイトを用いることが好ましい。また、前記の化学的な脂化メラニン産生抑制作用評価系、又は、生体、組織、細胞等を用いた生物学的な脂化メラニン産生抑制評価系においては、脂化メラニン量(脂化メラニン産生量、脂化メラニン分解量)のほか、過酸化脂質量などの脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量を測定し、その測定値又は該測定値より算出される値を比較することにより脂化メラニン産生抑制作用を評価することが出来る。前記の過酸化脂質量は、脂化メラニン産生量と密接な関係にあり、その産生量は、脂化メラニン産生量をよく反映する。このため、過酸化脂質量を測定することにより精度よく脂化メラニン産生量を推定することが出来る。本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法において、美白剤として選択される成分としては、前記(1)〜(3)の工程を経て美白剤として選択される成分であれば特段の限定なく適用することが出来る。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法の内、特に好ましいものとしては、後述する実施例1〜3に記載の美白剤のスクリーニング方法が好適に例示出来る。ここで後述する実施例1〜3に記載の美白剤のスクリーニング方法において美白剤として選択される成分に関し述べる。実施例1に記載の美白剤のスクリーニング方法において脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン産生抑制作用)を測定及び評価し、該作用を指標とし選択される美白剤としては、被験物質を添加した場合(被験物質添加群)、及び被験物質を添加しない場合(コントロール群、PBS添加群)の405(nm)波長における吸光度測定により、コントロール群の吸光度に比較し、被験物質添加群の吸光度に低下が認められる成分、より好ましくは、10%以上の吸光度の低下が認められる成分が、さらに好ましくは、統計的な有意差を持って吸光度の低下が認められる成分が好適に例示出来る。また、実施例2に記載の美白剤のスクリーニング方法において脂化メラニン産生抑制作用(脂化メラニン分解促進作用)を測定及び評価し、該作用を指標とし選択される美白剤としては、被験物質を添加した場合(被験物質添加群)、及び被験物質を添加しない場合(コントロール群、PBS添加群)の405(nm)波長における吸光度測定により、コントロール群の吸光度に比較し、被験物質添加群の吸光度に低下が認められる成分、より好ましくは、15%以上の吸光度の低下が認められる成分が、さらに好ましくは、統計的な有意差を持って吸光度の低下が認められる成分が好適に例示出来る。さらに、実施例3に記載の美白剤のスクリーニング方法において脂化メラニン産生抑制作用(細胞内の過酸化脂質産生抑制作用)を測定及び評価し、該作用を指標とし選択される美白剤としては、被験物質を添加した場合(被験物質添加群)、及び被験物質を添加しない場合(コントロール群、過酸化水素添加及び被験物質非添加群)の蛍光像における過酸化脂質による蛍光発色の比較により、被験物質添加群の蛍光像における過酸化脂質による蛍光発色が弱くなっている成分が好適に例示出来る。かかる蛍光発色の違いは、目視観察により比較することが出来る。また、前記の蛍光発色の差を機器等により定量的に解析する場合には、前記の蛍光発色の低下が10%以上、より好ましくは、統計的な有意差を持って蛍光発色の強度が低下している成分が好適に例示出来る。
前述の脂化メラニン産生抑制作用を測定及び評価するための脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量の内、脂化メラニン量(脂化メラニン産生量、脂化メラニン分解量)を測定する方法に関し述べる。本発明における脂化メラニン量を測定する方法としては、脂化メラニン量を測定可能な方法であれば特段の限定なく適用することが出来る。脂化メラニン量を測定する方法としては、例えば、脂化メラニン又は脂化メラニンを適宜処理したその誘導体を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析方法により脂化メラニン量を測定又は定量する方法のほか、脂化メラニンに特徴的な吸光波長を利用し吸光度を測定することにより脂化メラニン量を測定又は定量する方法、評価系より適切な方法により過酸化脂質を除去した後、過酸化脂質を定量する試薬(脂化メラニン構造中のヒドロペルオキシ構造を認識する)を用い機器等により脂化メラニン量を測定、定量する方法又は目視観察により確認する方法、評価系より適切な方法により過酸化脂質を除去した後、蛍光色素等により可視化された脂化メラニンを機器等により測定、定量する方法又は目視により観察する方法、産生された脂化メラニンの色調を目視観察により比較する方法等が好適に例示出来る。前述の脂化メラニン量を測定、定量又は観察する方法を用いることにより、脂化メラニン量を測定、定量又は確認することが可能となり、かかる方法により測定、定量又は観察された脂化メラニン量を比較することにより、被験物質の脂化メラニン産生抑制作用、脂化メラニン分解促進作用を評価することが出来る。前記の脂化メラニン量を測定又は定量する方法の内、脂化メラニンに特徴的な吸光波長を利用し吸光度測定により試料中の脂化メラニン量を測定する方法は、測定感度及び精度に優れる。脂化メラニンに特異的な波長を利用し吸光度を測定することにより脂化メラニン量を測定する方法としては、後述する試験例1(図1)に記載の方法が好適に例示出来る。また、脂化メラニン量を測定する場合の吸光度の測定波長は、脂化メラニンに特徴的な波長であり、脂化メラニン量を測定することが出来る波長であれば特段の限定なく適用することが出来、好ましくは、340〜800(nm)、より好ましくは、400〜500(nm)、さらに好ましくは、405(nm)の波長を選択し、脂化メラニン量を測定又は定量することが好ましい。また、脂化メラニン量を測定又は定量する方法としては、前記の機器測定による方法のほかに、目視観察により脂化メラニン量を比較する方法が存在する。この様な目視観察による測定方法としては、試験例1(図2)に記載の方法が好適に例示出来る。脂化メラニンは、通常のメラニンに比較し、その色調が濃い(黒い)ため、目視により容易にその産生を判断することが出来る。目視観察により脂化メラニン量を比較する方法は、機器等を用いる必要がないため、簡便に脂化メラニン量を比較することが出来る。さらに、本発明における脂化メラニン量を測定又は定量する方法の内、評価系より適切な方法により過酸化脂質を除去した後、過酸化脂質量を測定する試薬を用い、機器測定又は目視観察により脂化メラニン量を測定、定量又は観察する方法に関し述べる。脂化メラニンは、その化学構造中に過酸化脂質と同様にヒドロペルオキシド構造を有するため、過酸化脂質を検出する試薬に反応する。評価系に過酸化脂質及び脂化メラニンが共に存在する場合には、前記試薬により脂化メラニン量を測定又は定量することは困難であるが、評価系から適切な方法により過酸化脂質を除去することが出来れば、過酸化脂質量を測定又は定量する試薬を用い、脂化メラニン量を測定、定量又は観察することが出来る。評価系より過酸化脂質を除去する方法としては、例えば、メタノール等の脂質及び過酸化脂質を溶解する溶媒により洗浄し評価系より脂質及び過酸化脂質を除去した後、過酸化脂質量を測定する試薬を用い、脂化メラニン量を測定する方法が好適に例示出来る。また、過酸化脂質量を測定する試薬を用いた脂化メラニン量を測定する方法としては、過ヨウ素酸及びシッフ塩基を用いるPAS染色(Periodic acid-Schiff stain)のほか、脂質過酸化物の分解物であるマロンジアルデヒド(MDA:Malondialdehyde)等のチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の吸光度を測定し脂化メラニン量を測定する方法、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP:Diphenyl−1−pyrenylphosphine)、BODIPY(Boron-dipyrromethene)などの蛍光試薬及び脂化メラニンにより生じる蛍光性の酸化物の蛍光を測定し脂化メラニン量を測定する方法等が挙げられる。また、本発明の評価系より適切な方法により過酸化脂質を除去した後、過酸化脂質量を測定する試薬を用い機器測定又は目視観察により脂化メラニン量を測定、定量又は観察する方法の内、好ましい測定方法としては、後述する試験例2又は3に記載の測定又は定量方法が好適に例示出来る。また、前記の評価系より適切な方法により過酸化脂質を除去した後、過酸化脂質量を測定する試薬(蛍光試薬等)を用い、目視観察により脂化メラニン量を比較する方法は、機器等を用いる必要がないため、簡便に脂化メラニン量を比較することが出来る。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を測定及び評価するための脂化メラニン産生抑制作用に係る物理量を測定する方法としては、前述の脂化メラニン量を測定する方法のほか、脂化メラニン量と密接な関係にある過酸化脂質量を測定又は定量する評価方法が存在する。脂化メラニンは、生体構成成分の脂質と、活性酸素又は酸化酵素などによる酸化反応の結果生じる過酸化脂質が、(生)合成過程のメラニンと反応し生成する。また、過酸化脂質は、脂化メラニン産生過程における重要中間物質であるため、過酸化脂質量は、脂化メラニン産生量と深い関係にあり、色素細胞又はメラノソームなどのメラニン合成が行われる部位の過酸化脂質量の増加は、脂化メラニン産生量の増加に繋がる。このため、色素細胞などのメラニン合成に関与する場所における過酸化脂質量を測定、定量又は目視観察することにより脂化メラニン産生量を精度よく推定することが可能であり、これにより脂化メラニン産生抑制作用を測定及び評価することが出来る。本発明における過酸化脂質量を測定、定量又は観察する方法としては、前述の過酸化脂質量を測定する試薬を用いた過酸化脂質量の測定又は定量方法が好適に例示出来、過酸化脂質に特徴的な吸光波長を利用し吸光度を測定する方法、過酸化脂質のヒドロペルオキシ構造を認識し反応する試薬を用い機器測定又は目視観察により過酸化脂質量を測定、定量又は観察する方法、PAS染色による過酸化脂質量を測定又は観察する方法、過酸化脂質の分解物であるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の吸光度を測定し過酸化脂質量を測定する方法、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(DPPP:Diphenyl−1−pyrenylphosphine)及び過酸化脂質により生じる蛍光性の酸化物の蛍光を測定し過酸化脂質量を測定する方法等が好適に例示出来る。また、過酸化脂質量を簡便に測定(定量)するための測定キットも市販されており、例えば、PAS染色キット(武藤化学株式会社)、MDA測定キット(TBARS法、日研ザイル株式会社)等を利用することにより簡便に過酸化脂質量を測定することが出来る。さらに、前述の過酸化脂質量を測定する方法の内、特に、リン脂質を定量する方法としては、前述の方法のほか、試料に硫酸及び過マンガン酸塩を加え沸騰水浴中で加熱し、構成成分であるリン酸を生じさせた後、これにモリブデン過アンモニウム及び還元剤を加え、その際生じるモリブデン青による呈色反応を吸光度により計測する過マンガン酸塩灰化法、試料中のリン脂質にホスホリパーゼDを作用させ、構成成分であるコリンを遊離させた後、生成したコリンにコリンオキシダーゼを作用させてベタインと過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素がペルオキシダーゼの存在下でフェノールと4−アミノアンチピリンを定量的に酸化縮合させた際に生じる赤色キノン色素による呈色状態を吸光度により計測するコリンオキシダーゼ・フェノール法、特開平05−066199号等に記載の吸光度を測定する方法が好適に例示出来る。
以下に、脂化メラニン産生状況に関する検討、メラニン及び脂化メラニンの色調比較に関する検討結果を示す。
<製造例1: 過酸化脂質溶液の調製方法>
1(w/v)%レシノール SH50水溶液(日本サーファクタント工業株式会社)を90℃、10分間加熱した後、室温に戻し、リポキシゲナーゼ(ナカライテスク株式会社)を最終濃度1(mg/mL)となるように添加し、37℃で一晩振とうする。反応液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、上清を回収し過酸化脂質溶液として使用した。
<試験例1: 脂化メラニン懸濁液の調製方法、メラニン及び脂化メラニンの色調比較試験>
下記の表1に記載の成分を含む脂化メラニン反応液を調製し、室温で24時間静置した後、遠心分離(20000g、10分間)した。上清を除去した後、沈殿物をPBS(タカラバイオ株式会社)1(mL)にて懸濁し、脂化メラニン懸濁液を調製した。また、比較対照として表1に記載の成分中、「過酸化脂質」を「PBS(タカラバイオ株式会社)」に置換したメラニン反応液を調製した後、同様の操作を行うことによりメラニン懸濁液(対照群)を調製した。前記のメラニン懸濁液及び脂化メラニン懸濁液100(μL)を96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーで405(nm)の吸光度を測定し脂化メラニン産生状況を比較した。前記吸光度の波長は、脂化メラニンに特徴的な波長であるため、該波長を測定することにより脂化メラニン産生状況を確認することが出来る。結果を図1に示す。尚、図1の縦軸の吸光度比は、メラニン懸濁液(対照群)の吸光度の値を「1」とした場合の相対値で示した。また、図2は、メラニン懸濁液及び脂化メラニン懸濁液の色調を目視観察により比較した図である。
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表1に記載の成分の内、「過酸化脂質」を「PBS」に置換したメラニン反応液を調製し、室温にて24時間静置することにより、L−DOPAを基質としチロシナーゼ酵素による酵素反応を経由しメラニンが産生する。一方、表1に記載の成分を含む脂化メラニン反応液を調製し、室温にて24時間静置することにより、脂化メラニン懸濁液中に脂化メラニンが産生する。図1に示す結果の通り、メラニンの黒褐色化程度の評価に用いる波長405(nm)の吸光度測定において、脂化メラニン懸濁液は、メラニン懸濁液と比較し高い吸光度を示した。かかる吸光度の違いは、脂化メラニン懸濁液中における脂化メラニン産生によるものである。また、脂化メラニン懸濁液の色調は、メラニン懸濁液の色調に比較し濃いことが確認された。さらに、図2に示す結果より、目視観察によるメラニン懸濁液及び脂化メラニン懸濁液の色調比較においても、脂化メラニン懸濁液は、メラニン懸濁液と比較し色調が暗かった(より黒色化の程度が高かった)。図1及び図2の結果より、メラニン(生)合成過程に過酸化脂質が共存することにより脂化メラニンが産生することが確認された。また、産生された脂化メラニン懸濁液の色調は、メラニン懸濁液の色調と比較し濃い(より黒色化の程度が高い)ことが分かった。
<試験例2: メラニン及び過酸化脂質による脂化メラニン産生に関する検討1>
以下の手順に従い、メラニン及び過酸化脂質による脂化メラニン産生機構に関する検討を行った。即ち、試験例1の表1に記載の成分より調製した脂化メラニン反応液、表1に記載の成分中の「過酸化脂質」を「PBS(タカラバイオ株式会社)」に置換したメラニン反応液(1)、前記メラニン反応液(1)を24時間室温にて静置したメラニン溶液に過酸化脂質を加え24時間室温にて静置したメラニン反応液(2)を調製した。各溶液を遠心分離(20000g、10分間)し、上清を除去した後、メタノール(和光純薬工業株式会社)を加え、数回ピペッティングし沈殿物中の脂質及び過酸化脂質を除去した。メタノールによる脂質及び過酸化脂質の除去を数回繰り返した後、沈殿物中の脂化メラニン量を測定した。前述のメタノールを用いたピペッティング操作により、沈殿物中の脂質及び過酸化脂質は除去されている。このため、沈殿物中のヒドロペルオキシ構造を有する物質を測定し脂化メラニン量を測定することが出来る。前記操作に引き続き、PAS染色キット(武藤化学株式会社)又はMAD測定キット(日研ザイル株式会社)を利用し、沈殿物中の脂化メラニンを測定した。
1)PAS染色キットによる脂化メラニン産生に関する検討
脂化メラニン反応液、メラニン反応液(1)、及びメラニン反応液(2)より得られた各沈殿物に1%過ヨウ素酸水溶液を添加し、室温にて10分間静置した。水洗後、シッフ試薬を添加し、室温にて静置した後、脂化メラニン産生状況を各溶液の色調を目視観察することにより比較した。結果を図3に示す。
2)MAD(マロンジアルデヒド)測定キットによる脂化メラニン産生に関する検討
前記沈殿物に濃水酸化ナトリウム水溶液 1(mL)を添加し懸濁した後、遠心し上清を回収しチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)を測定した。10(μL)BHT溶液をエッペンチューブに分注し、サンプル250(μL)を添加し、更に、酸試薬250(μL)を添加した。ボルテックスにより撹拌した後、60℃にて60分間インキュベートし、遠心分離(10000g、3分間)した。上清100(μL)を96穴プレートに移した後、マロンジアルデヒド等のチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)をマイクロプレートリーダーにて532(nm)の吸光度を測定した。結果を図4に示す。尚、図4の縦軸の吸光度比は、前記メラニン反応液(1)より得られる沈殿物の吸光度の測定値を「1」とした場合の比率として表す。
図3は、メラニン反応液(1)、メラニン反応液(2)、脂化メラニン反応液の各反応液より得られた沈殿物中に含まれる脂化メラニンをPAS染色キット(武藤化学株式会社)により染色した染色像である。前述のメタノールによるピペッティング操作により沈殿物中の脂質及び過酸化脂質は除去されているため、PAS染色キットにより染色される物質は、ヒドロペルオキシ構造を有する脂化メラニンのみと考えられる。このため、沈殿物に含まれる脂化メラニン量が多い場合には、染色度合いが高く(発色が強く)なり、溶液及び沈殿物の色調が赤紫色に近くなる。図3の結果によれば、メラニン反応液(1)及びメラニン反応液(2)より得られた溶液及び沈殿物をPAS染色した溶液及び沈殿物の色調は、メラニンに起因する茶色であるのに対し、脂化メラニン反応液より得られる溶液及び沈殿物をPAS染色した溶液又は沈殿物の色調は、赤紫色であり、脂化メラニンの産生が確認された。
図4は、メラニン反応液(1)、メラニン反応液(2)、脂化メラニン反応液の各反応液より得られた沈殿物中の脂化メラニンを過酸化脂質測定キット(MDA測定キット、日研ザイル株式会社)により測定した結果を示す。前述のメタノールを用いたピペッティング操作により沈殿物中の脂質及び過酸化脂質は除去されているため、過酸化脂質測定キットを利用した吸光度測定により脂化メラニンのみを測定することが出来る。また、沈殿物中の脂化メラニン量が多い場合には、チオンバルビツール酸反応性物質(TBARS)量が増加し、波長532(nm)の吸光度が高くなる。図4の結果によれば、脂化メラニン反応液より得られた沈殿物の吸光度は、メラニン反応液(1)及びメラニン反応液(2)より得られた沈殿物の吸光度に比較し高かった。このことにより、脂化メラニン反応液より得られる沈殿物中には、メラニン反応液(1)及びメラニン反応液(2)より得られる沈殿物中に比較し、多くの脂化メラニンが含まれていることが明らかとなった。
図3及び図4の結果より、メラニン(生)合成過程に過酸化脂質が共存する場合には、脂化メラニンが産生することが確認された。一方、既に生成が完了したメラニンに過酸化脂質を共存させても脂化メラニンの産生は認められなかった。かかる試験結果は、メラニン(生)合成過程に過酸化脂質が共存する場合にのみ脂化メラニンが産生することを示しており、既に生成が完了したメラニンに過酸化脂質を作用させても脂化メラニンは生成しない脂化メラニンの産生機構を示している。
<試験例3: メラニン及び過酸化脂質による脂化メラニン産生に関する検討2>
メラニン合成過程に過酸化脂質を共存させることにより産生される脂化メラニンを、蛍光検出により確認する方法を検討した。即ち、試験例1に記載の手順に従い、メラニン反応液及び脂化メラニン反応液を調製し、室温にて24時間静置した後、遠心分離(20000g、10分間)した。上清を除去した後、メタノール(和光純薬工業株式会社)を加え、数回ピペッティングし、沈殿物中の脂質及び過酸化脂質を除去した。メタノールによる脂質及び過酸化脂質の除去操作を再度繰り返した後、沈殿物をPBS(タカラバイオ株式会社) 1(mL)にて懸濁し、メラニン懸濁液及び脂化メラニン懸濁液を調製した。前記の各懸濁液100(μL)に対し0.01(mg/mL)ジフェニル−1−ピレニルホスフィン(同仁化学研究所、DPPP:Dipheny−1−pyrenylphosphine)を50(μL)添加し、室温で5分間インキュベーションした。ブラックライト(照射波長:365(nm))照射下で肉眼観察することにより脂化メラニン産生を確認した。結果を図5に示す。
図5の結果より、メラニン懸濁液にDPPPを添加した場合には、脂化メラニンが産生していないため、ブラックライト照射による蛍光は認められなかった。一方、脂化メラニン懸濁液にDPPPを添加した場合には、ブラックライト照射により蛍光発色が認められた。脂化メラニン懸濁液は、メタノールを用いたピペッティング操作により過酸化脂質が除去されているため、ヒドロペロキシ構造を有する脂化メラニンとDPPP試薬が反応することにより生成した蛍光物質により発光が認められる。図5の結果より、脂質及び過酸化脂質を評価系より適切に除去した条件下、DPPP試薬等の脂化メラニンと反応し蛍光を発する試薬を用いることにより、脂化メラニンの存在を目視観察により測定出来ることが分かった。また、本試験系においては、目視観察により脂化メラニン産生を確認したが、蛍光検出器等の機器を用い定量的に脂化メラニン量を測定、定量することも出来る。
<試験例4: 細胞内における過酸化脂質産生の確認試験>
脂化メラニンは、メラニン合成過程に過酸化脂質が共存することにより産生する。また、脂化メラニン産生量は、メラニン(生)合成過程に共存する過酸化脂質と深く関連する。このため、メラニン産生能を有する色素細胞において、紫外線暴露などの要因で発生する活性酸素より生成される過酸化脂質(量)を測定又は観察することにより、生体組織・細胞における脂化メラニン産生抑制作用を評価することが出来る。本試験においては、酸化ストレス条件として過酸化水素(H)を添加し、色素細胞における過酸化脂質量変化を測定した。以下の手順に従い、細胞内の過酸化脂質産生状況を確認した。即ち、表皮メラノサイト基礎培地(Medium 254培地、GIBCO社、以下254培地と記載)を用い、正常ヒト成人表皮メラノサイト(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を2.0×104(cells/well)の密度で8穴チャンバースライドへ播種し、254培地を用い、24時間培養した。培地を除去後、PBS(タカラバイオ株式会社)にて洗浄し、BODIPY 581/591を含む培地(最終濃度:5mM)を1(mL/well)添加し、37℃、30分間インキュベーションした。培地を除去しPBSで洗浄した後、過酸化水素(最終濃度:0及び0.5mM)を含む培地を添加した。蛍光顕微鏡(励起波長:488nm、蛍光波長:520nm)により、細胞内過酸化脂質量変化を目視観察した。結果を図6に示す。
図6の左図は、過酸化水素(0mM)添加、右図は、過酸化水素(5mM)添加時のメラノサイトにおける過酸化脂質産生状況の蛍光像を示す。過酸化水素(5mM)添加により酸化ストレス環境下にあるメラノサイト(右図)は、過酸化水素が添加されていないメラノサイト(左図)に比較し、蛍光強度が強く(明るく)、過酸化脂質の産生が促進されていることが分かる。このことは、活性酸素による酸化ストレス状態にある色素細胞、即ち、メラニン(生)合成が行われる色素細胞又はメラノソームなどにおいて酸化ストレスにより過酸化脂質の産生量が増加していることを示している。このため、活性酸素の発生量が多い日焼け、しみ、くすみ等の皮膚部位においては、過酸化脂質の産生が促進され、脂化メラニンが産生されやすい環境にあることが分かった。
前述の試験結果により、過酸化脂質がメラニン(生)合成過程に共存することにより脂化メラニンが産生し、日焼け、しみ、くすみ等の色素沈着症状の発生と深く関連することが明らかになった。また、脂化メラニン産生抑制作用は、前述の機器測定又は目視観察等により適切に比較及び評価出来ることが分かった。
本発明の美白剤のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、単純な化学物質のほか、動植物由来の抽出物等の混合物等であってもよい。また、動植物由来の抽出物とは、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、精製物の溶媒除去物等の総称を意味するものである。植物由来の抽出物としては、自生若しくは育成された植物を用い作製された抽出物、漢方生薬原料等として販売されるものを用い作製された抽出物、市販されている抽出物等が好適に挙げられる。抽出操作に用いる植物部位としては、特段の限定はなく、植物の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用すること出来る。また、かかる植物部位を予め粉砕或いは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することが出来る。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
本発明の美白剤のスクリーニング方法における被験物質の添加量(複数回添加する場合には総量)は、過酸化脂質及び(生)合成過程にあるメラニン量などの脂化メラニン産生条件、細胞の種類、培養条件等に応じ適宜設定されるべきものである。本発明の美白剤のスクリーニング方法における被験物質の添加量(複数回添加する場合には総量)としては、例えば、培地中に最終濃度として通常0.0001(v/v)%以上、好ましくは0.0005(v/v)%以上、より好ましくは0.001(v/v)%以上になるように添加するものであり、通常50(v/v)%以下、好ましくは30(v/v)%以下、より好ましくは20(v/v)%以下になるように添加するものである。
前述の通り、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法により新規な作用機序を有する美白剤が精度よく効率的に選択される。また、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤は、組成物に含有することにより、通常の日焼けのほか、しみ、くすみ等の色素沈着症状の発生・悪化に対する予防又は改善効果(美白効果)を発揮する。さらに、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤には、既に形成された日焼け、しみ、くすみ等による色素沈着を薄くする又は元の状態に戻す(近づける)作用のほか、形成過程にある色素沈着を予防する作用が期待出来る。このため、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する成分をスクリーニングする方法は、新規な作用機序を有し優れた美白効果が期待出来る美白剤を選択するために活用することが出来る。さらに、前述の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤、脂化メラニン産生抑制作用を指標とする美白剤のスクリーニング方法のほか、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とする美白剤のスクリーニング方法により選択される美白剤を含有する美白用組成物(以下、「本発明の美白用組成物」と略す場合がある。)、及び本発明の美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤を美白用組成物に配合する工程を含む美白用組成物の製造方法(以下、「本発明の美白用組成物の製造方法」と略す場合がある。)も、本発明の一態様である。以下、本発明の美白用組成物及び本発明の美白用組成物の製造方法について詳細に説明する。また、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤は、新規作用機序を有する美白剤であるため、単独で使用しても美白効果を発揮するが、従来の美白剤と併用することにより美白効果が増強し、相加又は相乗的な効果が期待出来る。
<本発明の美白剤を含有する美白用組成物及びその製造方法>
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤は、組成物に含有することにより優れた美白効果が期待出来る。本発明の美白用組成物が有する美白効果としては、通常の日焼けに加え、しみ、くすみ等の色素沈着症状に関し、既に形成された色素沈着症状を薄くする又は元の状態に戻す色素沈着改善効果のほか、今後形成される又は形成過程にある色素沈着症状を予防する効果などが好適に例示出来る。本発明の美白用組成物に含有する美白剤は、単純な化学物質、動植物由来の抽出物等の混合組成物等の何れであってもよい。動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。植物由来の抽出物は、自生若しくは育成された植物より得られる抽出物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物(丸善製薬株式会社等)が好適に例示出来る。抽出操作は、植物部位は全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用すること出来、予めこれらを粉砕或いは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどの多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示出来る。
本発明の美白用組成物及び本発明の美白用組成物の製造方法は、前述した美白剤のスクリーニング方法によって選択された美白剤を配合するものであれば、美白剤の含有量やその他の構成については特に限定されず、調製方法も特に限定されない。但し、美白用組成物における美白剤の含有量は、通常0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%である。これは、本発明の美白剤の含有量が少なすぎると、目的とする効果が低下する傾向にあり、多すぎても効果が頭打ちになる傾向があり、この系の自由度を損なう場合があるためである。また、本発明の美白用組成物に含有させる美白剤の種類は、1種類に限定されず、2種類以上を選択し含有させてもよい。
本発明の美白用組成物の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチトールやソルビトールなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示出来る。経皮投与組成物であれば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ−ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ−ル、ステアリルアルコール、オクチルドデカノ−ル等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコ−ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。製造は、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
本発明の美白用組成物としては、医薬品、化粧品、食品、飲料などの形態が好適に例示出来る。また、本発明の美白用組成物は、日常的な摂取を主要な使用形態するため、食品、化粧品等の形態であることが好ましい。さらに、本発明の美白用組成物の投与経路は、経口投与、経皮投与等の何れの投与経路も可能であるが、皮膚における美白効果を目的とするため、皮膚への貯留性、標的部位への到達効率等に優れる、経皮投与を採用することが好ましい。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とし美白剤を選択する美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤は、美白用組成物に配合し化粧料等として活用することが出来る。
本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤としては、ミカン科ミカン属ユズ、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミ(アーティチョーク)より得られる植物抽出物が好適に例示出来る。また、かかる植物抽出物は、前記方法により抽出することも出来るし、市販の抽出物を購入し使用することも出来る。後述する実施例に記載のスクリーニング方法に使用した植物抽出物は、市販の植物抽出物を購入し利用した。ミカン科ミカン属ユズは、中国を原産地とし、日本においては、東北以南で広く栽培されている柑橘類の常緑小高木である。また、ユズの果汁は、日本料理等の調味料として食用に使用されるほか、血行促進作用等が知られている。市販のミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物としては、例えば、一丸ファルコス株式会社より販売されるミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(商品名:ユズセラミドB)が好適に挙げられる。また、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミ(アーティチョーク)は、地中海沿岸を原産地とする多年草である。キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミは、日本においては主に観賞用として栽培されるほか、一部、食用として利用される。市販のキク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物としては、例えば、一丸ファルコス株式会社より購入出来るキク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物(商品名:バイオベネフィティ)が好適に挙げられる。
以下に、本発明に関し、実施例を挙げ更に詳しく説明を加えるが、本発明がかかる実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
<試験例5: 本発明の美白剤のスクリーニング方法1>
前述の製造例1及び試験例1に記載の方法に従いメラニン反応液及び脂化メラニン反応液を調整した直後、それぞれ各反応液1(mL)に対し被験物質10(μL)(最終濃度:1(v/v)%)又はPBS(コントロール群、タカラバイオ株式会社)10(μL)を添加した。その後、各溶液を室温で3日間静置し、溶液100(μL)を96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーで405nmの吸光度を測定した。結果を図7に示す。図7の縦軸の吸光度比(被験物質の脂化メラニン産生抑制作用)は、PBSを添加したメラニン反応液及び脂化メラニン反応液の吸光度の差を「1」とした場合の相対値で示した。
図7の結果より、被験物質のミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)及びキク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物(アーティチョークエキス)は、波長405(nm)の吸光度測定において、コントロール群に比較し顕著な吸光度の低下が認められた。また、両被験物質が示した吸光度の低下は、統計的に有意な差を持っていた。従い、ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物、キク科チョウセンザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物は、脂化メラニン産生抑制作用を有し、本発明の美白剤として選択することが出来る。
<試験例6: 本発明の美白剤のスクリーニング方法2>
前述の製造例1及び試験例1に記載の方法に従いメラニン反応液及び脂化メラニン反応液を調製し、室温にて24時間静置した後、それぞれ各溶液に被験物質10(μL)(最終濃度:1(v/v)%)又はPBS(コントロール群、タカラバイオ株式会社)10(μL)を添加した。その後、各溶液を室温にて3日間静置し、溶液100(μL)を96穴プレートに移し、マイクロプレートリーダーにて波長405(nm)の吸光度を測定した。結果を図8に示す。尚、図8の縦軸の吸光度比(被験物質の脂化メラニン分解促進作用)は、PBSを添加したメラニン反応液及び脂化メラニン反応液の吸光度の差を「1」とした場合の相対値で示した。
図8の結果より、被験物質のミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)及びキク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物(アーティチョークエキス)は、コントロール群に比較し波長405(nm)の吸光度測定において顕著な吸光度の低下を示し、両被験物質共に優れた脂化メラニン分解促進作用が認められた。従い、ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物、キク科チョウセンザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物は、脂化メラニン分解促進作用を有し、本発明の美白剤として選択することが出来る。
<試験例7: 本発明の美白剤のスクリーニング方法3>
脂化メラニンは、メラニン(生)合成過程に過酸化脂質が共存することにより生成する。このため、以下の方法に従い、細胞内の過酸化脂質量を測定することにより脂化メラニン産生抑制作用を評価した。表皮メラノサイト基礎培地(Medium 254培地、GIBCO社、以下254培地と記載)を用い、正常ヒト成人表皮メラノサイト(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を2.0×10(cells/well)の密度で8穴チャンバースライドへ播種し、24時間培養した。培地を除去後PBSで洗浄し、BODIPY 581/591を含む培地(最終濃度:5mM)を1mL/well添加し、37℃、30分間インキュベーションした。254培地を除去しPBSで洗浄した後、H2O2(最終濃度:0.5mM)及び被験物質(10μL、最終濃度:1(v/v%)を含む培地を添加した。また、H2O2(最終濃度:0.5mM)添加後、被験物質を添加しないものを比較対象(コントロール群)とした。蛍光顕微鏡で目視観察し(励起波長:488nm、蛍光波長:520nm)、細胞内過酸化脂質量変化を可視化した。結果を図9に示す。
図9の結果より、左側のコントロール群の蛍光像には、強い蛍光が認められ、細胞内に過酸化脂質が産生していることが確認された。一方、中央のキク科チョウセンアザミ属チョウセンンアザミより得られる植物抽出物(アーティチョーク)及び右側のミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド抽出物)の蛍光像の蛍光強度は、コントロール群に比較し弱く、コントロール群に比較し過酸化脂質の産生が抑制されていることが分かる。図9の結果より、被験物質のミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(ユズセラミド)及びキク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物(アーティチョークエキス)は、コントロール群に比較し蛍光強度の低下(過酸化脂質産生抑制作用)が認められ、両被験物質には、優れた脂化メラニン産生抑制作用を有することが確認された。従い、ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物、キク科チョウセンザミ属チョウセンアザミより得られる植物抽出物は、本発明の美白剤として選択することが出来る。
<製造例2: 本発明の美白剤を含有する美白用組成物の製造方法1(皮膚外用剤)>
以下の手順に従い、本発明の脂化メラニン産生抑制作用を指標とする美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤を含有する美白用組成物(皮膚外用剤)を作製した。即ち、表2の処方成分(A)に記載の各成分を合わせ、室温下に溶解した。一方、処方成分(B)に記載された各成分を室温下に溶解し、(B)を(A)に記載された処方成分の混合物に加え可溶化し、本発明の美白剤を含有する美白用組成物(皮膚外用剤)を作製した。尚、表2の処方成分中、「本発明の美白剤」としては、ミカン科ミカン属ユズより得られる植物抽出物(皮膚外用剤1)、キク科チョウセンアザミ属チョウセンアザミ(アーティチョーク)より得られる植物抽出物(皮膚外用剤2)を使用した。また、表2の処方成分中、「本発明の美白剤」を「水」に置換した比較例1も作製した。
Figure 0006088180
<試験例8: 本発明の美白用組成物の美白効果試験>
実施例4に記載の方法に従い製造された本発明の美白用組成物(皮膚外用剤1及び2)及び比較例1に関し、以下の手順に従い色素沈着抑制作用を評価した。自由意思で参加したパネラ−の上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を合計4ケ所設けた。設けた部位に最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を1日1回、3日連続して3回照射した。試験1日目の紫外線照射終了時(一回目照射終了後)より、1日2回35日連続して皮膚外用剤1及び2、比較例1を50μL塗布した。4部位のうち1部位は無処置部位とした。35回の塗布終了24時間後に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、処理部位のL*値と無処理部位L*値の差(ΔL*値)(△L*値=処理部位のL*値−無処理部位L*値)を算出した。L*値は、色素沈着の程度が強いほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きいほど、色素沈着が改善されたと判断することが出来る。結果を表3に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤1及び2は、比較例1に比べ高い値を示し、優れた色素沈着改善効果(美白効果)を有することが分かる。これは、皮膚外用剤1及び2に含有される本発明の脂化メラニン産生抑制作用を有する美白剤による美白効果である。
Figure 0006088180
<製造例3: 本発明の美白剤を含有する美白用組成物の製造方法2(食品)>
以下の手順に従い、本発明の美白剤のスクリーニング方法により選択された美白剤を含有する美白用組成物(食品)を作製した。即ち、表4に記載の処方成分を10質量部の水と共に転動相造粒(不二パウダニル株式会社製「ニューマルメライザー」)し、打錠して錠剤状の健康食品を得た。尚、表中の数値の単位は質量部を表す。
Figure 0006088180
本発明は、食品、医薬品、化粧料等に応用出来る。

Claims (5)

  1. 脂化メラニン産生抑制作用を指標とし、
    前記脂化メラニン産生抑制作用が、脂化メラニン産生量及び/又は脂化メラニン分解量で表される、美白剤のスクリーニング方法。
  2. 脂化メラニン産生抑制作用を評価する工程を含み、
    前記工程は、評価系に被験物質を添加した場合、及び被験物質を添加しない場合の脂化メラニン産生抑制作用を比較することにより行われ、
    被験物質を添加した場合の前記作用が、被験物質を添加しない場合よりも高い場合に、該被験物質を美白剤として選択する、請求項1に記載の美白剤のスクリーニング方法。
  3. 請求項1又は2に記載の美白剤のスクリーニング方法を行う工程、及び前記工程により選択された美白剤を含有させることを含む、美白用組成物の設計方法。
  4. 前記美白用組成物が皮膚外用剤である、請求項に記載の設計方法。
  5. 前記美白用組成物が化粧料(但し、医薬部外品を含む)である、請求項又はに記載の設計方法。
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