[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、本発明を、病院における放射線科部門で取り扱われる情報を統括的に管理するシステムである放射線情報システムに適用した場合を例示する。
図1は、本発明の実施形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS」(Radiology Information System)という。)100の構成を示す図である。
RIS100は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS」(Hospital Information System)という。)の一部を構成する。
RIS100は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」という。)140、RISサーバ150、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」という。)104を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク102に各々接続されて構成されている。なお、RIS100は、同じ病院内に設けられたHISの一部を構成しており、病院内ネットワーク102には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示せず)も接続されている。
端末装置140は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧、放射線画像の撮影依頼や撮影予約を行うためのものである。各端末装置140は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ150と病院内ネットワーク102を介して相互通信に接続されている。
RISサーバ150は、各端末装置140からの撮影依頼を受け付け、撮影システム104における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース150Aを含んで構成されている。
データベース150Aは、患者(被写体)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム104で用いられる、後述する電子カセッテ40の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ40に関する情報、および電子カセッテ40を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ40を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
撮影システム104は、RISサーバ150からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム104は、放射線源121(図9も参照。)から曝射条件に従った線量のX線等の放射線X(図7も参照。)を患者(被写体)に照射する放射線発生装置120を備えている。また、撮影システム104は、患者(被写体)の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器20(図7も参照。)を内蔵する電子カセッテ40と、電子カセッテ40に内蔵されているバッテリを充電するクレードル130と、電子カセッテ40および放射線発生装置120を制御するコンソール110と、を備えている。
コンソール110は、RISサーバ150からデータベース150Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD(Hard Disk Drive)116(図9参照。)に記憶し、必要に応じて当該情報を用いて、電子カセッテ40および放射線発生装置120の制御を行う。
図2は、本発明の実施形態に係る撮影システム104を構成する各装置の放射線撮影室180における配置状態を例示した図である。
図2に示すように、放射線撮影室180には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台160と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台164とが設置されている。立位台160の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の患者(被写体)の撮影位置170とされる。臥位台164の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の患者(被写体)の撮影位置172とされている。
立位台160には電子カセッテ40を保持する保持部162が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40が保持部162に保持される。同様に、臥位台164には電子カセッテ40を保持する保持部166が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ40が保持部166に保持される。
また、放射線撮影室180には、放射線源121を、水平な軸回り(図2の矢印a方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印b方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印c方向)に移動可能に支持する支持移動機構124が設けられている。これにより、単一の放射線源121を用いて立位および臥位での放射線撮影が可能となっている。
クレードル130は、電子カセッテ40を収納可能な収容部130Aを有する。電子カセッテ40は、未使用時にはクレードル130の収容部130Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われる。
撮影システム104において、放射線発生装置120とコンソール110との間、および電子カセッテ40とコンソール110との間で、無線通信によって各種情報の送受信が行われる。
電子カセッテ40は、立位台160の保持部162や臥位台164の保持部166で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、腕部,脚部等を撮影する際には、保持部に保持されていない状態で使用される。
次に、電子カセッテ40に内蔵される放射線検出器20の構成について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る放射線検出器20の3画素部分の構成を概略的に示す断面図である。
図3に示すように、放射線検出器20は、基板1上に、信号出力部14、センサ部13、透明絶縁膜7を順に形成することによりTFT基板30を形成し、TFT基板30上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ8を貼り付けることにより形成される。信号出力部14およびセンサ部13により画素が構成されている。
シンチレータ8は、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して形成されており、入射する放射線を光に変換して発光する蛍光体を含む。すなわち、シンチレータ8は、患者(被写体)を透過した放射線を吸収して発光する。
シンチレータ8が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線検出器20によってモノクロ撮影を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
放射線としてX線を用いて撮像する場合、シンチレータ8に用いる蛍光体としては、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが400nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
センサ部13は、上部電極6、下部電極2、およびこれらの電極間に設けられた光電変換膜4を含んで構成されている。光電変換膜4は、シンチレータ8が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
上部電極6は、シンチレータ8により生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ8の発光波長に対して透明な導電性材料で構成されることが好ましい。具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;TransparentConducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割されていてもよい。
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8から発せられた光を吸収し、吸収した光の量に応じた電荷を発生する。有機光電変換材料を含む光電変換膜4は、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8による発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることが殆どない。従って、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ8の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ8の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ8から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ8の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
下部電極2下方の基板1の表面には信号出力部14が形成されている。図4には、信号出力部14の構成が概略的に示されている。
図4に示すように、信号出力部14は、下部電極2に移動した電荷を蓄積するキャパシタ9と、キャパシタ9に蓄積された電荷を後述するデータ配線36(図5参照)に読み出す電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)10を含んでいる。キャパシタ9および薄膜トランジスタ10は、平面視において下部電極2と重なるように配置されている。すなわち、各画素において信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有する。なお、放射線検出器20(画素)の面積を小さくするために、キャパシタ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
キャパシタ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をキャパシタ9に移動させることができる。
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。
活性層17は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層17を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
活性層17を構成する非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。
活性層17を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
また、活性層17をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ10のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低い薄膜トランジスタ10を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層17を形成する場合、活性層17に極微量の金属性不純物を混入するだけで、薄膜トランジスタ10の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
ここで、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板や、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
一方、アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板を形成してもよい。
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ高強度、高弾性、低熱膨張である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
図5は、放射線検出器20を構成するTFT基板30の構成を示す平面図である。図5に示すように、TFT基板30には、各々がセンサ部13、キャパシタ9および薄膜トランジスタ10を含んで構成される複数の画素32が一定方向(図5の行方向)、および一定方向に対する交差方向(図5の列方向)に2次元状に配列されている。
TFT基板30には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオンオフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が設けられている。センサ部13の各々には、図示しないバイアス線を介してバイアス電圧が供給されている。
TFT基板30は、平板状で、かつ平面視において外縁に4辺を有する四辺形状、より具体的には、矩形状に形成されている。
TFT基板30は、放射線の照射の有無を検出するために用いられる画素32と、放射線画像を撮影するための画素32とを含んでいる。以下では、放射線を検出するための画素32を放射線検出用画素32Aといい、残りの画素32を放射線画像撮影用画素32Bという。本実施形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出用画素32Aを用いて放射線の照射開始を検出している。
放射線検出用画素32Aを構成するキャパシタ9と薄膜トランジスタ10との接続部は、直接読出配線38が接続されている。放射線検出用画素32Aにより得られた放射線検出用の画素情報は、この直接読出配線38を介して後述する第2信号処理部55(図9、図10参照。)に伝送され、第2信号処理部55によって放射線の照射開始を検出するための処理がなされる。
なお、放射線検出用画素32Aは、TFT基板30上において、均一に分布するように配置されていてもよい。また、一例として図6に示すように、撮影領域の中央部を含む一部領域(本実施の形態では、放射線検出器20の撮影領域の中央部を中心とする矩形領域)20Aにおいて放射線検出用画素32Aを比較的低密度で配置し、その周辺の領域において、比較的高密度で配置してもよい。放射線検出用画素32Aをこのように配置することで、撮影時において放射線検出用画素32Aが撮影対象部位と重ならない露出部分の面積を大きくすることができるので、放射線の照射開始の検出をより的確に行うことが可能となる。
TFT基板30において、撮影領域内に配置された放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を得ることができない。このため、TFT基板30では、放射線検出用画素32Aが撮影領域内に分散するように配置され、コンソール110により、放射線検出用画素32Aの配置位置における放射線画像の画素情報を、放射線検出用画素32Aの周囲に位置する放射線画像撮影用画素32Bにより得られた画素情報を用いて補間する欠陥画素補正処理が実行される。
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、電子カセッテ40は、放射線を透過させる材料からなる筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ40は、手術室等で使用される場合、血液や雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ40を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ40を繰り返し続けて使用することができる。
筐体41の内部には、種々の部品を収容する空間Aが形成されており、空間A内には、放射線Xが照射される筐体41の照射面側から、患者(被写体)を透過した放射線Xを検出する放射線検出器20、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板43が順に配設されている。
放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線を検出可能な撮影領域41Aとされている。筐体41の撮影領域41Aを有する面が電子カセッテ40における天板41Bとされており、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20が、TFT基板30が天板41B側となるように配置され、天板41Bの筐体41における内側の面(天板41Bの放射線が入射される面の反対側の面)に貼り付けられている。
一方、図7に示すように、筐体41の内部の一端側には、放射線検出器20と重ならない位置(撮影領域41Aの範囲外)に、後述するカセッテ制御部58や電源部70(共に図9参照。)を収容するケース42が配置されている。
筐体41は、電子カセッテ40全体の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。
複合材料としては、例えば、強化繊維樹脂を含む材料が用いられ、強化繊維樹脂には、カーボンやセルロース等が含まれる。具体的には、複合材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のもの、または発泡材の表面にCFRPをコーティングしたもの等が用いられる。なお、本実施の形態では、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のものが用いられている。これにより、筐体41をカーボン単体で構成した場合と比較して、筐体41の強度(剛性)を高めることができる。
図8は、電子カセッテ40の構成を示す断面図である。図8に示すように、筐体41の内部には、天板41Bと対向する背面部41Cの内面に支持体44が配置されている。放射線検出器20および鉛板43は、支持体44と天板41Bとの間にこの順で並んで配置されている。支持体44は、軽量化の観点、寸法偏差を吸収する観点から、例えば、発泡材で構成されており、鉛板43を支持する。
図8に示すように、天板41Bの内面には、放射線検出器20のTFT基板30を剥離可能に接着する接着部材80が設けられている。接着部材80としては、例えば、両面テープが用いられる。この場合、両面テープは、一方の接着面の接着力が他方の接着面の接着力よりも強くなるように形成されている。
具体的には、接着力の弱い面(弱接着面)は、180°ピール接着力で1.0N/cm以下に設定されている。そして、接着力の強い面(強接着面)が天板41Bに接し、弱接着面がTFT基板30に接する。これにより、ねじ等の固定部材等によって放射線検出器20を天板41Bに固定する場合と比べて電子カセッテ40の厚みを薄くすることができる。また、衝撃や荷重で天板41Bが変形しても、放射線検出器20は剛性の高い天板41Bの変形に追従するため、大きな曲率(緩やかな曲がり)しか発生せず、局所的な低曲率で放射線検出器20が破損する可能性が低くなる。さらに、放射線検出器20が天板41Bの剛性の向上に寄与する。
このように、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20を筐体41の天板41Bの内部に貼り付けているため、筐体41が、天板41B側と背面部41C側とで2つに分離可能とされている。放射線検出器20を天板41Bに貼り付けたり、天板41Bから剥離したりする際には、筐体41を天板41B側と背面部41C側とで2つに分離した状態とされる。
なお、本実施の形態では、放射線検出器20の天板41Bへの接着をクリーンルーム等で行わなくてもよい。なぜなら、放射線検出器20および天板41Bの間に放射線を吸収する金属片等の異物が混入した場合に、放射線検出器20を天板41Bから剥離して異物を除去できるからである。
図9は、本実施の形態に係る撮影システム104の電気系の要部構成を示す図である。図9に示すように、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20を構成するTFT基板30の隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52が配置され、他辺側に第1信号処理部54が配置されている。放射線検出器20を構成するTFT基板30の個々のゲート配線34はゲート線ドライバ52に接続され、TFT基板30の個々のデータ配線36は第1信号処理部54に接続されている。
また、筐体41の内部には、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60と、電源部70を備えている。
TFT基板30の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52からゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて第1信号処理部54に入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得される。
第1信号処理部54は、図示しないチャージアンプ、サンプルホールド回路、マルチプレクサおよびA/D変換器を含んで構成されている。チャージアンプは、個々のデータ配線36を介してセンサ部13から読み出された電荷の量に応じた電圧レベルを有する電気信号に生成する。チャージアンプによって生成された電気信号の信号レベルはサンプルホールド回路に保持される。サンプルホールド回路の各々の出力端子には、共通のマルチプレクサに接続される。マルチプレクサは、サンプルホールド回路で保持された信号レベルをシリアルデータに変換してこれをA/D(アナログ/デジタル)変換器に供給する。A/D変換器は、マルチプレクサから供給されるアナログの電気信号をデジタル信号である画像データに変換する。
第1信号処理部54には画像メモリ56が接続されており、第1信号処理部54のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。
カセッテ制御部58は、電子カセッテ40全体の動作を統括的に制御する。カセッテ制御部58は、マイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えている。カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。
無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、外部機器との間での無線通信による各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線画像の撮影に関する制御を行うコンソール110などの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソール110等との間で各種情報の送受信が可能とされている。
電子カセッテ40には電源部70が設けられており、各種回路や各素子(ゲート線ドライバ52、第1信号処理部54、第2信号処理部55、画像メモリ56、無線通信部60、カセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図9では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
第2信号処理部55は、TFT基板30を間に挟んでゲート線ドライバ52の反対側に配置されている。第2信号処理部55は、放射線検出用画素32Aの各々に接続された直接読出配線38が接続されている。放射線検出用画素32Aにより得られた放射線検出用の画素情報は、この直接読出配線38を介して第2信号処理部55に伝送される。第2信号処理部55は、放射線検出用画素32Aから供給される画素情報に基づいて放射線の照射開始を検出するための処理を行う。
図10は、第2信号処理部55の構成を示す図である。図10に示すように、第2信号処理部55は、直接読出配線38の各々に接続されたチャージアンプ92を含んでいる。チャージアンプ92は、反転入力端子が直接読出配線38に接続され、非反転入力端子が接地電位に接続されたオペアンプ(演算増幅回路)92Aと、オペアンプ92Aの反転入力端子に一方の端子が接続され、オペアンプ92Aの出力端子に他方の端子が接続されたキャパシタ92Bと、キャパシタ92Bに並列接続されたリセットスイッチ92Cとを含んでいる。
放射線検出用画素32Aの各々において生成された電荷は、直接読出配線38を介してチャージアンプ92のキャパシタ92Bに蓄積される。チャージアンプ92は、放射線検出用画素32Aから供給され、キャパシタ92Bに蓄積された電荷の量に応じた信号レベルを有する電気信号を生成し、これをサンプルホールド回路93に供給する。チャージアンプ92から出力される電気信号は、カセッテ制御部58から供給される制御信号に応じてリセットスイッチ92Cがオン状態となることによりリセットされる。
サンプルホールド回路93は、カセッテ制御部58から供給される制御信号に応じてチャージアンプ92から供給される電気信号の信号レベルを保持し、その保持している信号レベルをA/D変換器94に供給する。すなわち、サンプルホールド回路93は、カセッテ制御部58から供給される制御信号に応じて所定のサンプリング周期でチャージアンプ92から出力される電気信号の信号レベルをサンプリングする。
A/D変換器94は、サンプルホールド回路93から順次供給される電気信号の信号レベルをデジタル信号に変換し、これによって得られたデジタル値を加算処理部95に供給する。
加算処理部95は、A/D変換器94の各々から供給されるデジタル信号値を合算し、これによって得られた合算値をコンパレータ99およびノイズ情報生成部96に供給する。すなわち、加算処理部95は、放射線検出用画素32Aの各々で生じた電荷の量の総和に応じた信号値を上記サンプリング周期毎に生成する。なお、チャージアンプのリセット周期と、サンプルホールド回路93のサンプリング周期と、A/D変換器94および加算処理部95の動作は互いに同期している。
コンパレータ99は、加算処理部95から出力される信号値と、閾値生成部98から出力される閾値とを比較し、加算処理部95から出力される信号値が閾値を超えた場合にハイレベルの出力信号を生成する。コンパレータ99の出力端子は、カセッテ制御部58に接続されている。カセッテ制御部58は、コンパレータ99からハイレベルの信号を受信すると、放射線源121から放射線の曝射が開始されたものと判断する。
閾値生成部98は、コンパレータ99による比較処理に供される閾値を生成する。閾値生成部98から出力される閾値は、閾値制御部97によって導出された値に設定される。
ここで、放射線検出用画素32Aは、放射線源121から出射された放射線の照射線量に応じた信号電荷を生成する他、放射線の入射の有無に関わらず暗電荷を生成する。これにより、放射線検出用画素32Aに接続された直接読出配線38には暗電荷に起因するノイズ成分が混入する。また、電子カセッテ40が磁場、電波、振動等の外部ノイズ源の影響が及ぶノイズ環境に設置された場合、直接読出配線38には、外部ノイズ源に起因するノイズ成分が混入する場合もある。放射線源121から放射線が出射されていない非照射状態において、第2信号処理部55を駆動することにより、図11に示すように、暗電荷や外部ノイズ源に起因するノイズのレベルのサンプリング値が、サンプリング周期毎に加算処理部95から出力されることとなる。
ノイズ情報生成部96は、マイクロコンピュータを含んで構成され、CPU、ROMおよびRAMを備えている(いずれも図示せず)。ノイズ情報生成部96は、放射線源121から放射線が出射される前の非照射状態において加算処理部95からサンプリング周期毎に逐次供給される信号値をノイズレベルのサンプリング値として収集して、サンプリング値の統計値をノイズの状態を示すノイズ情報として生成する。
ノイズ情報生成部96は、放射線の非照射状態において加算処理部95から逐次供給される信号値(ノイズレベルのサンプリング値)から、図12に例示するようなヒストグラムを生成する。図12において横軸は、ノイズレベルの階級であり、縦軸は頻度である。ノイズ情報生成部96は、このようなヒストグラムを生成した上で、サンプリングした値について、最大値Amax、最小値Amin、平均値μ、分散σ2、標準偏差σを含む統計値を上述したノイズ情報として生成する。
なお、本実施形態において、ノイズ情報生成部96は、放射線の照射開始が検出されるまでノイズレベルのサンプリングを継続させ、ヒストグラムおよびノイズ情報の生成に供するサンプリング数を累積させる。ノイズ情報生成部96は、これに伴って新たなサンプリング値が加わる度にヒストグラムおよびノイズ情報を逐次更新する。
また、第2信号処理部55は、放射線の照射開始が検出されるまでの間、無制限にノイズレベルをサンプリングするのではなく、ノイズレベルのサンプリングの開始から所定時間が経過するまでの一定期間内においてノイズレベルのサンプリングを行ってもよい。ノイズ情報生成部96は、当該期間においてサンプリングされたサンプリング値に基づいてヒストグラムおよびノイズ情報を生成する。
また、第2信号処理部55におけるノイズレベルのサンプリングの開始時点と終了時点を、手動により設定することとしてもよい。例えば、ノイズレベルのサンプリングの開始時点および終了時点をカセッテ制御部58に通知するためのサンプリングスタートボタンおよびサンプリングストップボタン(いずれも図示せず)が電子カセッテ40に設けられていてもよい。この場合、撮影者がサンプリングスタートボタンを押下すると、カセッテ制御部58は第2信号処理部55に制御信号を供給してノイズレベルのサンプリングを開始させる。一方、撮影者がサンプリングストップボタンを押下すると、カセッテ制御部58は第2信号処理部55に制御信号を供給してノイズレベルのサンプリングを終了させる。ノイズ情報生成部96は、サンプリングスタートボタンが押下されてからサンプリングストップボタンが押下されるまでの間に取得したサンプリング値に基づいてヒストグラムおよびノイズ情報を生成する。なお、ノイズレベルのサンプリングの開始時点と終了時点をリモートコントローラ(図示せず)を用いて指示することとしてもよい。
このように、ノイズレベルのサンプリング期間を制限することにより、電子カセッテ40における消費電力を削減する効果が期待できる。
また、ノイズ情報生成部96は、所定のサンプリング数nについてヒストグラムおよびノイズ情報を生成してもよい。この場合、ノイズ情報生成部96は、加算処理部95から新たなサンプリング値が供給される毎にヒストグラムおよびノイズ情報を更新してもよいし、加算処理部95から新たなn個のサンプリング値が供給された時点でヒストグラムおよびノイズ情報を更新してもよい。
閾値制御部97は、マイクロコンピュータを含んで構成され、CPU、ROMおよびRAMを備えている(いずれも図示せず)。閾値制御部97は、ノイズ情報生成部96によって生成されたノイズ情報に基づいて、コンパレータ99による放射線の照射開始の判定を行うための閾値を導出する。閾値制御部97は、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、より高い閾値を導出する。閾値制御部97は、ノイズレベルのばらつきの大きさを示すばらつき指標値として、サンプリング値の最小値Aminと最大値Amaxの差分値を使用してもよいし、分散σ2または標準偏差σを使用してもよい。閾値制御部97は、これらのばらつき指標値が大きいほど、より高い閾値を導出し、放射線の照射開始の検出感度を低く設定する。
本実施形態において、閾値制御部97は、ノイズ情報生成部96によって生成されたノイズ情報からノイズレベルの平均値μおよび標準偏差σを抽出して、μ+mσ(mは1以上の値)を閾値として導出する。ノイズレベルの分布が正規分布に従う場合、仮にm=4とした場合(すなわち閾値はμ+4σ)、放射線の非照射状態において加算処理部95から順次出力される信号値のうちの99.9937%が閾値以下に収まることになり、ノイズによる放射線の照射開始の誤検出をほぼ完全に防止することができる。
閾値制御部97は、上記のようにして導出した閾値となるように閾値生成部98の閾値を制御する。ノイズ情報生成部96によってヒストグラムおよびノイズ情報が更新されると、閾値制御部97はこれに応じて新たな閾値を導出する。すなわち、閾値制御部97は、最新のノイズ情報に基づいて閾値を導出することにより、ノイズの発生状況に応じて閾値を適応的に変化させる。
図9に示すように、コンソール110は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ111と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル112と、を備えている。
また、本実施の形態に係るコンソール110は、装置全体の動作を司るCPU113と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM114と、各種データを一時的に記憶するRAM115と、各種データを記憶して保持するHDD116と、ディスプレイ111への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ117と、操作パネル112に対する操作状態を検出する操作入力検出部118と、を備えている。また、コンソール110は、無線通信により、放射線発生装置120との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行うと共に、電子カセッテ40との間で画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部119を備えている。
CPU113、ROM114、RAM115、HDD116、ディスプレイドライバ117、操作入力検出部118、および無線通信部119は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU113は、ROM114、RAM115、HDD116へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ117を介したディスプレイ111への各種情報の表示の制御、および無線通信部119を介した放射線発生装置120および電子カセッテ40との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU113は、操作入力検出部118を介して操作パネル112に対するユーザの操作状態を把握することができる。
また、第2信号処理部55のノイズ情報生成部96において生成されたヒストグラムおよびノイズ情報は、無線通信部119を介してコンソール110に送信され、ディスプレイ111に表示されるようになっている。
放射線発生装置120は、放射線源121と、コンソール110との間で曝射条件等の各種情報を送受信する無線通信部123と、受信した曝射条件に基づいて放射線源121を制御する制御部122と、を備えている。
制御部122もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール110から受信する曝射条件には管電圧、管電流、曝射時間等の情報が含まれている。制御部122は、受信した曝射条件に基づいて放射線源121から放射線Xを照射させる。
次に、本実施の形態に係る撮影システム104の作用を説明する。
まず、図13を参照して、放射線画像の撮影を行う際のコンソール110の作用を説明する。なお、図13は、操作パネル112を介して放射線画像撮影を実行する旨の指示入力が行われた際にコンソール110のCPU113によって実行される放射線画像撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。当該プログラムはROM114の所定領域に予め記憶されている。
図13のステップ300では、CUP113は、予め定められた初期情報入力画面をディスプレイ111により表示させるようにディスプレイドライバ117を制御し、次のステップ302にて所定情報の入力待ちを行う。
図14には、上記ステップ300の処理によってディスプレイ111により表示される初期情報入力画面の一例が示されている。図13に示すように、本実施の形態に係る初期情報入力画面では、これから放射線画像の撮影を行う患者(被写体)の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および撮影時の放射線Xの曝射条件(本実施の形態では、放射線Xを曝射する際の管電流、管電圧および曝射時間)の入力を促すメッセージと、これらの情報の入力領域が表示される。
図14に示す初期情報入力画面がディスプレイ111に表示されると、撮影者は、撮影対象とする患者(被写体)の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および曝射条件を、各々対応する入力領域に操作パネル112を介して入力する。
そして、撮影者は、患者(被写体)と共に放射線撮影室180に入室し、撮影時の姿勢が立位または臥位である場合は、対応する立位台160の保持部162または臥位台164の保持部166に電子カセッテ40を保持させると共に放射線源121を対応する位置に位置決めした後、患者(被写体)を所定の撮影位置に位置(ポジショニング)させる。これに対し、撮影対象部位が腕部、脚部等の電子カセッテ40を保持部に保持させない状態で放射線画像の撮影を行う場合に、撮影者は、撮影対象部位を撮影可能な状態に患者(被写体)、電子カセッテ40、および放射線源121を位置決め(ポジショニング)する。
その後、撮影者は、放射線撮影室180を退室し、上記初期情報入力画面の下端近傍に表示されている終了ボタンを、操作パネル112を介して指定する。撮影者によって終了ボタンが指定されると、上記ステップ302が肯定判定となってステップ304に移行する。
ステップ304では、CPU113は、上記初期情報入力画面において入力された情報(以下、「初期情報」という。)を電子カセッテ40に無線通信部119を介して送信した後、次のステップ306にて、上記初期情報に含まれる曝射条件を放射線発生装置120へ無線通信部119を介して送信することにより曝射条件を設定する。これに応じて放射線発生装置120の制御部122は、受信した曝射条件での曝射準備を行う。
次のステップ308では、CPU113は、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置120および電子カセッテ40へ無線通信部119を介して送信する。
これに応じて、放射線源121は、放射線発生装置120がコンソール110から受信した曝射条件に応じた管電圧および管電流での放射線Xの出射を開始する。放射線源121から出射された放射線Xは、患者(被写体)を透過した後に電子カセッテ40に到達する。
一方、電子カセッテ40のカセッテ制御部58は、上記曝射開始を指示する指示情報を受信すると、放射線検出用画素32Aによって検出された放射線の線量が、放射線の照射が開始されたことを検出するための値として予め定められた閾値以上となるまで待機する。電子カセッテ40は、放射線検出用画素32Aによって検出された放射線の線量が上記の閾値以上となったものと判定すると放射線画像の撮影動作を開始する。電子カセッテ40は、放射線の照射開始から所定の蓄積時間が経過した後、放射線の撮影動作を終了し、撮影によって得られた画像データをコンソール110に送信する。
そこで、次のステップ310では、CPU113は、上記画像データが電子カセッテ40から受信されるまで待機し、次のステップ312にて、受信した画像データに対し、前述した欠陥画素補正処理を施した後、シェーディング補正等の各種の補正を行う画像処理を実行する。
次のステップ314では、CPU113は、上記画像処理が行われた画像データ(以下、「補正画像データ」という。)をHDD116に記憶し、次のステップ316にて、補正画像データにより示される放射線画像を、確認等を行うためにディスプレイ111によって表示させるようにディスプレイドライバ117を制御する。
次のステップ318では、CPU113は、補正画像データをRISサーバ150へ病院内ネットワーク102を介して送信し、その後に本放射線画像撮影処理プログラムを終了する。なお、RISサーバ150へ送信された補正画像データはデータベース150Aに格納され、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
次に、図15を参照して、コンソール110から上記初期情報を受信した際の電子カセッテ40の作用を説明する。図15は、初期情報を受信した際に電子カセッテ40のカセッテ制御部58のCPU58Aにより実行されるカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。カセッテ撮影処理プログラムはカセッテ制御部58の記憶部58Cの所定領域に予め記憶されている。
ステップ400では、CPU58Aは、コンソール110からの前述した曝射開始を指示する指示情報の受信待ちを行う。CPU58Aは、上記指示情報を受信すると、処理をステップ402に移行させる。
ステップ402では、CPU58Aは、第2信号処理部55を起動させるべく第2信号処理部55に対して制御信号を供給する。これにより、第2信号処理部55の各構成部が起動する。この時点では、放射線源121からは放射線が出射されていないので、各放射線検出用画素32Aのセンサ部13に蓄積された暗電荷によるノイズ成分および直接読出配線38に混入した外部ノイズ源からのノイズ成分のみが第2信号処理部55によって読み出される。第2信号処理部55のチャージアンプ92、サンプルホールド回路93、A/D変換器94および加算処理部95が互いに同期して動作することにより、各直接読出配線38に現れるノイズ成分のレベルは、所定のサンプリング周期でデジタル値に変換され、加算処理される。加算処理部95にて逐次生成される合算値は、ノイズレベルのサンプリング値としてノイズ情報生成部96に供給される。
ノイズ情報生成部96は、第2信号処理部55が起動すると、自身の記憶領域に格納されたノイズ情報生成処理プログラムを実行する。図16は、かかるノイズ情報生成処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。ステップ450では、ノイズ情報生成部96は、加算処理部95において生成されるノイズレベルのサンプリング値を順次取り込む。ステップ451では、ノイズ情報生成部96は、取り込んだ複数のノイズレベルのサンプリング値についてヒストグラムを生成する。ステップ452では、ノイズ情報生成部96は、取り込んだ複数のノイズレベルのサンプリング値の最大値Amax、最小値Amin、平均値μ、分散σ2、標準偏差σ等の統計値をノイズ情報として生成する。生成されたノイズ情報は、順次閾値制御部97に供給される。ステップ453では、ノイズ情報生成部96は、コンパレータ99の出力に基づいて放射の照射が開始されたか否かを判断する。ステップ453において、ノイズ情報生成部96は、放射線の照射が開始されていないものと判断した場合には、処理をステップ450に戻し、新たなノイズレベルのサンプリング値の取り込みを行いヒストグラムおよびノイズ情報を更新させる。一方、ステップ453において、ノイズ情報生成部96は、放射線の照射が開始されたものと判断した場合には、本ルーチンを終了させる。
閾値制御部97は、第2信号処理部55が起動すると、自身の記憶領域に格納された閾値設定処理プログラムを実行する。図17は、かかる閾値設定処理プログラムにおける処理の流れを示すフローチャートである。ステップ460では、閾値制御部97は、ノイズ情報生成部96において生成されるノイズ情報を取り込む。ステップ461では、閾値制御部97は、取り込んだノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきに応じた閾値を導出する。より具体的には、閾値制御部97は、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、より高い閾値を導出し、放射線の照射開始の検出感度を低下させる。本実施形態において、閾値制御部97は、ノイズ情報生成部96によって生成されたノイズ情報から平均値μおよび標準偏差σを抽出し、μ+mσを閾値として導出する(mは1以上の値)。ステップ462では、閾値制御部97は閾値生成部98の出力値を先のステップ461で導出した値に設定する。これにより、閾値生成部98は、閾値制御部97にて導出された閾値を生成し、生成した閾値をコンパレータ99の一方の入力に供給する。ステップ463では、閾値制御部97は、コンパレータ99の出力に基づいて放射の照射が開始されたか否かを判断する。ステップ463において、閾値制御部97は、放射線の照射が開始されていないものと判断した場合には、処理をステップ460に戻し、更新されたノイズ情報の取り込みを行う。一方、ステップ463において、閾値制御部97は、放射線の照射が開始されたものと判断した場合には、本ルーチンを終了させる。
このようにノイズ情報生成部96は、放射線の照射が開始されるまでの間、加算処理部95から新たな信号値を取得する毎にヒストグラムおよびノイズ情報を更新する。閾値制御部97は、更新された最新のノイズ情報に基づいて、新たな閾値を導出し、閾値生成部98は、閾値制御部97において新たに導出された閾値を生成する。すなわち、閾値生成部98において生成される閾値は、刻々と変化するノイズのレベル変動に追従するように制御される。かかる制御は、放射線の照射開始が検出されるまで継続される。なお、ノイズ情報生成部96は、放射線の照射が開始されるまでの間、ノイズレベルを無制限にサンプリングするのではなく、所定のサンプリング数nについてヒストグラムおよびノイズ情報を生成してもよい。この場合、ノイズ情報生成部96は、加算処理部95から新たなサンプリング値が供給される毎にヒストグラムおよびノイズ情報を更新してもよいし、加算処理部95から新たなn個のサンプリング値が供給された時点でヒストグラムおよびノイズ情報を更新してもよい。
このように、メインルーチンのステップ402では、第2信号処理部55が起動されることにより放射線源121からの放射線の非照射状態の下で、放射線の照射開始を検出するための閾値の設定が行われる。
次のステップ404では、CPU58Aは、第2信号処理部55のコンパレータ99の出力がハイレベルとなるまで待機する。この間第2信号処理部55では、上述したノイズレベルのばらつきに応じた閾値調整を行いつつ放射線の照射開始の検出動作を継続する。放射線源121から放射線が出射されると、閾値生成部98において生成される閾値よりも大きい値の信号値が加算処理部95からコンパレータ99に入力される。これによりコンパレータ99は、ハイレベルの出力信号を生成し、これをカセッテ制御部58のCPU58Aに供給する。CPU58Aは、コンパレータ99からハイレベルの出力信号を受信すると、放射線源121から放射線の曝射が開始されたものとみなしてステップ406に移行する。なお、CPU58Aは、放射線の照射開始を検出するまでの間、所定期間毎に放射線画像撮影用画素32Bに蓄積された暗電荷を放出するためのリセット動作を実施するべく制御信号をゲート線ドライバ52に供給してもよい。かかる制御信号を受信したゲート線ドライバ52は、ゲート配線34に順次駆動信号を供給し、薄膜トランジスタ10を1ラインずつオンさせる。これにより、放射線画像撮影用画素32Bに蓄積された暗電荷がデータ配線36に放出され、各画素のリセットが行われる。
次のステップ406では、CPU58Aは、ゲート線ドライバ52に全ての薄膜トランジスタ10をオフ状態とすべく制御信号を供給する。これにより、放射線画像撮影用画素32Bでは、放射線の照射に応じて発生した電荷の蓄積が開始され、放射線画像の撮影動作に移行する。
次のステップ408では、CPU58Aは、蓄積動作に移行してから所定の蓄積時間が経過したか否かを判断する。CPU58Aは、蓄積動作に移行後、所定の蓄積時間が経過したと判断すると、処理をステップ410に移行する。
次のステップ410では、CPU58Aは、ゲート線ドライバ52に制御信号を供給することによりゲート線ドライバ52から1ラインずつ順に各ゲート配線34にオン信号を出力させ、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンさせる。これにより、各放射線画像撮影用画素32Bのキャパシタ9に蓄積された電荷が各データ配線36に読み出され、第1信号処理部54でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ56に記憶される。
次のステップ412では、CPU58Aは、画像メモリ56に記憶された画像データを読み出し、読み出した画像データを無線通信部60を介してコンソール110に送信した後、本カセッテ撮影処理プログラムを終了する。
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40において、図8に示すように、TFT基板30側から放射線Xが照射されるように放射線検出器20が配置されている。
ここで、放射線検出器20は、図18に示すように、シンチレータ8が形成された側から放射線が照射されて、放射線の入射面とは反対側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)とされた場合、シンチレータ8の同図上面側(TFT基板30との接合面とは反対側)でより強く発光する。一方、TFT基板30側から放射線が照射されて、放射線の入射面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)とされた場合、TFT基板30を透過した放射線がシンチレータ8に入射してシンチレータ8のTFT基板30との接合面側がより強く発光する。TFT基板30に設けられた各センサ部13には、シンチレータ8で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板30に対するシンチレータ8の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
また、放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板30を透過してシンチレータ8に到達するが、このように、TFT基板30の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、放射線がTFT基板30を透過する表面読取方式(ISS)の場合でも、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
また、本実施の形態によれば、図8に示すように、放射線検出器20をTFT基板30が天板41B側となるように筐体41内の天板41Bに貼り付けているが、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体の剛性が高いため、筐体41の天板41Bを薄く形成することができる。また、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体が可撓性を有するため、撮影領域41Aに衝撃が加わった場合でも放射線検出器20が破損しづらい。
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態に係る電子カセッテ40は、放射線検出用画素32Aのセンサ部13で生じた電荷量に応じた電気信号の信号レベルが第2信号処理部55における閾値生成部98によって生成された閾値よりも大となった場合に、放射線の照射開始を検出する。第2信号処理部55は、放射線の非照射状態において放射線検出用画素32Aから電荷の読み出し処理を行うことにより、直接読出配線38等の検出系に混入するノイズのレベルのサンプリングを行う。ノイズ情報生成部96は、ノイズレベルのサンプリング値からノイズレベルの最大値Amax、最小値Amin、平均値μ、分散σ2、標準偏差σ等の統計値をノイズ情報として生成する。閾値制御部97は、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、より高い閾値を設定し、放射線の照射開始の検出感度を低下させる。閾値をより高く設定することにより、ノイズによる放射線の照射開始の誤検出が生じにくくなる方向に作用する。
このように、本実施形態に係る電子カセッテ40では、実測されたノイズレベルのばらつきが大きい程、放射線の照射開始の検出感度を低下させる。すなわち、電磁波や振動等の外部ノイズ源からの影響が及ぶノイズ環境下では、混入するノイズのレベルは大きく変動することが想定されるが、実測されたノイズレベルのばらつきに応じた閾値設定を行うことで、例えば、比較的高い頻度で発生する小、中レベルのノイズのみならず、比較的低い頻度で発生する高レベルのノイズによる誤検出も効果的に防止することができる。このように、本実施形態に係る電子カセッテ40によれば、外来ノイズの影響が及ぶノイズ環境下においても、放射線の照射開始の誤検出を防止することができる。
なお、上記の実施形態では、閾値制御部97は、ノイズレベルのばらつきに応じた閾値としてμ+mσを導出する場合を例示したが、これに限定されるものではない。ノイズ情報生成部96は、以下のように閾値を導出してもよい。
ノイズ情報生成部96が最初のn個のサンプリング値の最大値Amax1と、次のn個のサンプリング値の最大値Amax2(Amax1<Amax2)をノイズ情報として閾値制御部97に供給する。閾値制御部97はAmax1とAmax2の差分値D(D=Amax2−Amax1)をノイズレベルのばらつき指標値として使用して、例えば、閾値としてAmax2+k・|D|を導出することとしてもよい。ここでkは1以上の値である。このように、実測されたノイズレベルの最大値Amax2にノイズレベルのばらつきに応じた値k・|D|を加算した値を閾値として設定することにより、最大レベルのノイズに対する誤検出をほぼ完全に防止することができる。
また、閾値制御部97は、ノイズレベルの標準偏差σまたは分散σ2等のばらつき指標値と閾値とを対応付けた参照テーブル(図示せず)を参照することにより閾値を導出することとしてもよい。この場合、標準偏差σまたは分散σ2の値が大きくなる程、より高い閾値が導出されるように参照テーブルが構築され、参照テーブルは、閾値制御部97の記憶領域に予め格納される。
[第2の実施形態]
以下に、本発明の第2の実施形態に係る電子カセッテについて説明する。上記した第1の実施形態に係る電子カセッテ40は、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきの程度に応じて放射線の照射開始の判定を行うための閾値を調整することにより放射線の照射開始の検出感度を調整するものであった。これに対して、第2の実施形態に係る電子カセッテでは、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきの程度に応じてチャージアンプのゲインを調整することにより放射線の照射開始の検出感度を調整するものである。
図19は、本発明の第2の実施形態に係る第2信号処理部55Aの構成を示す図である。以下において、本実施形態に係る第2信号処理部55Aが上記した第1の実施形態に係る第2信号処理部55と相違する部分について説明する。なお、第2信号処理部55Aが上記した第1の実施形態に係る第2信号処理部55と共通する部分には、同一の参照符号を付すことによりその説明を省略する。また、第2信号処理部55A以外の構成部分についても第1の実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
第2信号処理部55Aは、ゲイン調整が可能なチャージアンプ92´を有する。ゲイン調整を可能とするための構成としてチャージアンプ92´にはスイッチ92Dおよびキャパシタ92Eからなる直列回路と、スイッチ92Fおよびキャパシタ92Gからなる直列回路が、キャパシタ92Bに並列に接続されている。スイッチ92Dおよびスイッチ92Fのオンオフは、ゲイン制御部97Aから供給される制御信号によって切り替えられる。スイッチ92Dおよびスイッチ92Fのオンオフによってオペアンプ92Aの入出力端子間に接続される合成容量値が変化し、これによってチャージアンプ92´のゲインが変化する。より具体的には合成容量値が大きくなる程(すなわち、キャパシタの接続数が増える程)、ゲインは小さくなる方向に変化する。なお、本実施形態では、スイッチとキャパシタからなる直列回路を2つ設け、ゲイン調整を3段階で行う場合を例示しているが、ゲインの調整範囲や調整ステップ数に応じてスイッチとキャパシタからなる直列回路の数を適宜増減することが可能である。
ゲイン制御部97Aは、ノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、各チャージアンプ92´のゲインが小さくなるようにスイッチ92Dおよび92Fのオンオフを制御する。ゲイン制御部97Aは、ノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報からノイズレベルのばらつき指標値として例えば標準偏差σを取得する。ゲイン制御部97Aは自身に備える記憶領域に図20に示すような、標準偏差σの範囲と、チャージアンプ92´を構成するスイッチ92Dおよび92Fのオンオフの状態を対応付けた参照テーブル500を有している。参照テーブル500は、標準偏差σの値が大きくなる程、チャージアンプ92´のゲインが小さくなるように、標準偏差σとスイッチ92Dおよび92Fの駆動状態との対応付けがなされている。ゲイン制御部97Aは、参照テーブル500を検索することによりノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報に含まれる標準偏差σに対応するスイッチ92Dおよび92Fの駆動状態を導出する。そして、ゲイン制御部97Aは、導出した駆動状態となるようにチャージアンプ92´に対して制御信号を供給してスイッチ92Dおよび92Fを切り替えることにより、チャージアンプ92´のゲインを制御する。
なお、ノイズ情報生成部96は、ヒストグラムおよびノイズ情報を、第1の実施形態の場合と同様、逐次更新させる。ノイズ情報が更新されるとゲイン制御部97Aはこれに応じて新たなゲイン設定を導出する。すなわち、ゲイン制御部97Aは、最新のノイズ情報に基づいてゲイン設定を導出することにより、ノイズの発生状況に応じてゲイン設定を適応的に変化させる。
本実施形態に係る第2信号処理部55Aでは、第1の実施形態の場合と同様、放射線の非照射状態において放射線検出用画素32Aから電荷の読み出し処理を行うことにより、直接読出配線38等の検出系に混入するノイズのレベルのサンプリングを行う。ノイズ情報生成部96は、ノイズレベルのサンプリング値からノイズレベルの最大値Amax、最小値Amin、平均値μ、分散σ2、標準偏差σ等の統計値をノイズ情報として生成する。ゲイン制御部97Aは、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、チャージアンプ92´のゲインが小さくなるように制御することにより、放射線の照射開始の検出感度を低下させる。チャージアンプ92´は、直接読出配線38を流れる信号電荷とともに直接読出配線38に混入するノイズレベルをも増幅する。従ってチャージアンプ92´のゲインを小さくすることにより、コンパレータ99に入力されるノイズレベルを小さくすることができるので、ノイズによる放射線の照射開始の誤検出が生じにくくなる方向に作用する。
このように、本実施形態に係る電子カセッテにおいては、上記した第1の実施形態に係る電子カセッテ40と同様、ノイズレベルのサンプリング値のばらつきが大きくなる程、放射線の照射開始の検出感度を低下させる。すなわち、電磁波や振動等の外部ノイズ源からの影響が及ぶノイズ環境下では、混入するノイズのレベルは大きく変動することが想定されるが、実測されたノイズレベルのばらつきの大きさに応じたチャージアンプ92´のゲイン設定を行うことで、発生頻度の比較的低い高レベルのノイズによる誤検出も効果的に防止することができる。このように、本実施形態に係る電子カセッテによれば、外来ノイズの影響が及ぶノイズ環境下においても、放射線の照射開始の誤検出を防止することができる。
なお、本実施形態では、ノイズレベルの標準偏差σに応じてチャージアンプ92´のゲイン設定を行う場合を例示したが、標準偏差σ以外の他のばらつき指標値(例えば分散σ2や最大値Amaxと最小値Aminの差分値など)に応じてチャージアンプ92´のゲイン設定を行うこととしてもよい。
[第3の実施形態]
以下に、本発明の第3の実施形態に係る電子カセッテについて説明する。上記した第1の実施形態に係る電子カセッテ40は、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきの程度に応じて放射線の照射開始の判定を行うための閾値を調整することにより放射線の照射開始の検出感度を調整するものであった。これに対して、第3の実施形態に係る電子カセッテでは、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきの程度に応じてチャージアンプ92における電荷蓄積時間を調整することにより放射線の照射開始の検出感度を調整するものである。
図21は、本発明の第3の実施形態に係る第2信号処理部55Bの構成を示す図である。以下において、本実施形態に係る第2信号処理部55Bが上記した第1の実施形態に係る第2信号処理部55と相違する部分について説明する。なお、第2信号処理部55Bが上記した第1の実施形態に係る第2信号処理部55と共通する部分には、同一の参照符号を付すことによりその説明を省略する。また、第2信号処理部55B以外の構成部分については、第1の実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
蓄積時間制御部97Bは、ノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、チャージアンプ92における電荷蓄積時間が長くなるようにリセットスイッチ92Cの駆動タイミングを制御する。蓄積時間制御部97Bは、ノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報からノイズレベルのばらつき指標値として例えば標準偏差σを取得する。蓄積時間制御部97Bは自身に備える記憶領域に図22に示すような、標準偏差σの範囲と、チャージアンプ92の電荷蓄積時間とを対応付けた参照テーブル501を有している。参照テーブル501は、標準偏差σの値が大きくなる程、チャージアンプ92における電荷蓄積時間が長くなるように、標準偏差σと電荷蓄積時間との対応付けがなされている。蓄積時間制御部97Bは、参照テーブル501を検索することによりノイズ情報生成部96から供給されるノイズ情報に含まれる標準偏差σに対応する電荷蓄積時間を導出する。そして、蓄積時間制御部97Bは、導出した電荷蓄積時間となるようにチャージアンプ92に対して制御信号を供給してリセットスイッチ92Cのオンオフのタイミングを制御することにより、チャージアンプ92における電荷蓄積時間(すなわち、リセット周期)を制御する。
なお、ノイズ情報生成部96は、ヒストグラムおよびノイズ情報を第1の実施形態の場合と同様、逐次更新させる。ノイズ情報が更新されると蓄積時間制御部97Bはこれに応じて新たな電荷蓄積時間を導出する。すなわち、蓄積時間制御部97Bは、最新のノイズ情報に基づいて電荷蓄積時間を導出することにより、ノイズの発生状況に応じて電荷蓄積時間を適応的に変化させる。
本実施形態に係る第2信号処理部55Bでは、第1の実施形態の場合と同様、放射線の非照射状態において放射線検出用画素32Aから電荷の読み出し処理を行うことにより、直接読出配線38等の検出系に混入するノイズのレベルのサンプリングを行う。ノイズ情報生成部96は、ノイズレベルのサンプリング値からノイズレベルの最大値Amax、最小値Amin、平均値s、分散σ2、標準偏差σを含む統計値をノイズ情報として生成する。蓄積時間制御部97Bは、ノイズ情報によって示されるノイズレベルのばらつきが大きい程、チャージアンプ92における電荷蓄積時間を長くして放射線の照射開始の検出感度が高くなるように制御する。
チャージアンプ92は、キャパシタ92Bに蓄積された電荷量に応じた信号レベルの電気信号を生成する。従って、電荷蓄積時間が長くなる程、キャパシタ92Bに蓄積される電荷量は多くなり、チャージアンプ92から出力される電気信号の信号レベルは大きくなる。すなわち、チャージアンプ92における電荷蓄積時間を長くなる程、放射線検出用画素32Aにおいて生じた信号電荷に基づく信号レベルをノイズレベルに対して大きくすることができる。つまり、チャージアンプ92の電荷蓄積時間が長くなる程、SN比が向上し、放射線の照射開始の検出感度が向上する。このように、チャージアンプ92の蓄積時間を長くすることにより、ノイズレベルに対する信号レベルを高めることができるので、ノイズによる放射線の照射開始の誤検出が生じにくくなる方向に作用する。
このように、本実施形態に係る電子カセッテにおいては、ノイズレベルのサンプリング値のばらつきが大きくなる程チャージアンプ92における電荷蓄積時間を長くすることにより放射線の照射開始の検出感度を高く設定する。すなわち、電磁波や振動等の外部ノイズ源からの影響が及ぶノイズ環境下では、混入するノイズのレベルは大きく変動することが想定されるが、実測されたノイズレベルのばらつきに応じたチャージアンプ92の電荷蓄積時間の設定を行うことで、発生頻度の比較的低い高レベルのノイズによる誤検出も効果的に防止することができる。このように、本実施形態に係る電子カセッテによれば、外来ノイズの影響が及ぶノイズ環境下においても、放射線の照射開始の誤検出を防止することができる。
なお、本実施形態では、ノイズレベルの標準偏差σに応じてチャージアンプ92の電荷蓄積時間を設定する場合を例示したが、標準偏差σ以外の他のばらつき指標値(例えば分散σ2や最大値Amaxと最小値Aminの差分値など)に応じてチャージアンプ92の電荷蓄積時間の設定を行うこととしてもよい。
また、上記の各実施形態では、放射線検出用画素32Aにより得られた放射線検出用の画素情報を直接読出配線38を介して第2信号処理部55、55A、55Bに伝送し、第2信号処理部55、55A、55Bによって放射線の照射開始を検出する場合を例示したが、このような構成に限定されるものではない。例えば図23に示すように、薄膜トランジスタ10のソースとドレインを短絡することにより、放射線検出用画素32Aにより得られた画素情報をデータ配線36に読み出すこととしてもよい。このような構成の場合、上記各実施形態における第1信号処理部54の機能(放射線画像撮影用画素32Bから画素情報を読み出して放射線画像を生成する機能)と、第2信号処理部55、55A、55Bの機能(放射線の照射開始を検出する機能、ノイズ情報を生成する機能、ノイズ情報に応じて検出感度を設定する機能)は、信号処理部54Aに統合される。
また、上記の各実施形態では、放射線検出器20に設けられた画素32の一部を放射線検出用画素32Aとして用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線検出用画素32Aを、画素32とは別層として放射線検出器20に積層する形態としてもよい。この場合、欠陥画素が生じることがないため、上記実施の形態に比較して、放射線画像の品質を向上させることができる。
また、上記実施の形態では、一例として図24(A)に示すように、放射線検出用画素32Aとして放射線画像撮影用画素32Bの一部を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図24(B)に示すように、放射線検出用画素32Aを、放射線画像撮影用画素32Bの間隙に設ける形態としてもよい。この場合、放射線検出用画素32Aが設けられた位置に対応する放射線画像撮影用画素32Bの面積が小さくなるため、画素の感度は低減するものの、画素も放射線画像の検出用として用いることができるため、放射線画像の品質を向上させることができる。
また、放射線検出用のセンサとして必ずしも放射線検出器20の画素を適用する必要はなく、例えば、放射線検出器20における各画素列の間や周辺部等の予め定められた位置に、放射線が照射されることによって電荷が発生する、放射線検出用の専用のセンサを設けておき、センサによって放射線の照射開始を検出する構成としてもよい。この場合、上記センサは、必ずしも放射線検出器20に設ける必要はなく、放射線検出器20とは別体として配置してもよい。
また、上記実施の形態では、放射線検出用画素32Aを放射線画像撮影用画素32Bとは別に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放射線検出用画素32Aを設けることなく、放射線画像撮影用画素32Bを、放射線を検出したか否かを判定するためのセンサとして適用する形態、すなわち、センサを放射線画像撮影用画素32Bと共用する形態としてもよい。この場合、センサを新たに設ける必要がなくなり、本発明を容易に実現することができる。
また、上記実施の形態では、センサ部13が、シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部13として有機光電変換材料を含まずに構成されたものを適用する形態としてもよい。例えば、センサ部13にアモルファスセレン等の半導体を使用し、放射線を電荷に直接変換する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40の筐体41の内部にカセッテ制御部58や電源部70を収容するケース42と放射線検出器20とを重ならないように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、放射線検出器20とカセッテ制御部58や電源部70を重なるように配置してもよい。
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40とコンソール110との間、放射線発生装置120とコンソール110との間で、無線にて通信を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、これらの少なくとも一方を有線にて通信を行う形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、放射線としてX線を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、γ線等の他の放射線を適用する形態としてもよい。
その他、上記実施の形態で説明したRIS100の構成(図1参照。)、放射線撮影室の構成(図2参照。)、電子カセッテ40の構成(図3〜図8参照。)、撮影システム104の構成(図9参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
さらに、上記実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図13、図15参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
また、上記各実施形態において示された、放射線の照射開始を検出する際の検出感度を調整するための各種の制御は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、第1の実施形態において示された閾値を調整する制御と、第2の実施形態において示されたチャージアンプ92のゲインを調整する制御を組み合わせて実施することも可能である。
なお、上記の実施形態では、ノイズのレベルのばらつきの程度に応じて、検出感度を制御する場合について説明したが、検出のアルゴリズムを変更してもよい。