JP6047923B2 - 可変ピッチプロペラ制御装置および可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶ならびに可変ピッチプロペラ制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、船舶推進装置において、主機の燃料消費効率を最適に保つことができるように、ガバナ制御とプロペラピッチ制御手段等を総合的に制御する構成が記載されている。
特許文献3には、波浪等の影響によるプロペラ流入速度の変動に合わせて効率の高い回転数で主機を運転して燃費の向上を図ることを目的として、プロペラ流入速度把握手段と、主機の回転数を制御する回転数制御手段と、プロペラ流入速度の変動に合わせて目標回転数の修正を行う修正手段とを備え、修正手段は、プロペラ流入速度の変動に対して、効率線図上、効率が低下しない経路に沿って制御ポイントの移動を図り目標回転数を修正する舶用エンジン制御システムが記載されている。
特許文献4には、海象に合わせたガバナ制御を行い、主機の燃料消費を抑えることを目的として、主機の制御を複数の制御モードの下で行う制御手段と、主機の制御における制御量を検出する制御量検出手段と、船速および航海領域の波浪情報を用いて推定される制御量の変動量と、検出された制御量とに基づいて制御モードの選択を行うモード選択手段とを備えた主機制御システムが記載されている。
そこで、本発明は、CPP翼角制御において、CPP翼角の駆動における指令値に対する応答遅れを考慮することにより、特に波浪中における負荷変動の抑制による主機トラブルの減少や、最適制御理論等に基づくエネルギー消費量抑制等を実現することができる、可変ピッチプロペラ制御装置、当該装置を搭載した船舶および可変ピッチプロペラ制御方法を提供することを目的としている。
上記の構成により、プロペラ流入速度予測手段による予測結果を用いて可変ピッチプロペラを制御して、可変ピッチプロペラのCPP翼角制御における応答遅れによる影響を抑制することができる。
上記の構成により、リアルタイム計測手段により得られた計測結果に基づいて予測された流入速度を用いて、可変ピッチプロペラの応答遅れを考慮した制御を行うことができる。
請求項4に記載の本発明は、請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記リアルタイム計測手段は、前記駆動軸のスラスト計測が可能な軸馬力計であることを特徴とする。
上記の構成により、軸馬力計により駆動軸のトルク計測、スラスト(推力)計測のリアルタイム計測により得られた計測結果に基づいて流入速度を予測することができる。
上記の構成により、可変ピッチプロペラの単独性能曲線と主機の回転数とピッチ角とを利用して、可変ピッチプロペラへの水の流入速度を容易に予測することができる。
上記の構成により、相対水位計測手段および/または入射波計測手段により計測された波と、船体運動計測手段により計測された船体運動とから、プロペラ流入速度の変動に関する情報を得ることができる。
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記ピッチ角の制御の前後において前記船体の速度が一定に保たれるように制御したことを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記船体の速度は、海象を考慮したものであることを特徴とする。
上記の構成により、CPP翼角制御における応答遅れの影響をふまえた上、エネルギー消費量が最小となるように制御することができる。船体の速度を下げれば、通常、エネルギー消費量をも下げることができるが、船体の速度を一定に保つ必要がある場合、この条件下において応答遅れの影響をふまえた上で、主機のエネルギー消費量が最小となるよう制御を行うこともできる。なお、「船体の速度を一定に保つ」とは、CPP翼角の制御の前後において、速度を厳密に一定に維持すること、あるいは目標とする速度の周辺で平均的に維持することをいう。
請求項11に記載の本発明は、請求項10に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記運転条件設定手段で前記軸トルクの目標値を設定し、前記軸トルクの目標値に近づけるように平滑化をおこなったことを特徴とする。
請求項12に記載の本発明は、請求項1から請求項6のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記制御手段は、前記駆動軸のスラストの変動を平滑化するように前記可変ピッチプロペラを制御したことを特徴とする。
請求項13に記載の本発明は、請求項12に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記運転条件設定手段で前記スラストの目標値を設定し、前記スラストの目標値に近づけるように平滑化をおこなったことを特徴とする。
上記の構成により、軸トルクまたはスラストの変動を抑制するように制御して、主機負荷変動を抑制することができる。
請求項15に記載の本発明は、請求項14に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記包絡線は、ピッチ角毎に求めた前記可変ピッチプロペラのプロペラ単独性能曲線群について、プロペラ効率がプロペラ前進定数に対して最大となるピッチ角を結んだ包絡線であることを特徴とする。
上記のようにピッチ角を制御することにより、可変ピッチプロペラのプロペラ効率を最大化することができる。
上記の構成により、上述した可変ピッチプロペラ制御装置同様の作用を船舶として奏することができる。
上記の構成により、予測ステップにおいて得られた予測結果を用いて可変ピッチプロペラを制御することにより、翼角制御における応答遅れによる影響を抑制することができる。
請求項19に記載の本発明は、請求項18に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記リアルタイム計測結果に基づく予測は、時系列解析手法または周波数解析手法に基づいておこなったことを特徴とする。
請求項20に記載の本発明は、請求項19に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記時系列解析手法は、時系列モデルおよび前記時系列モデルのモデル同定法によって構成されていることを特徴とする。
請求項21に記載の本発明は、請求項20に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記モデル同定法は、バーグ(Burg)法、ユールウォーカー(Yule Walker)法、ハウスホルダー(House Holder)法、パルコ(PARCOR)法、カルマンフィルタのいずれかから選択されたことを特徴とする。
請求項22に記載の本発明は、請求項19に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記周波数解析手法は、高速フーリエ変換法および逆高速フーリエ変換法によって構成されていることを特徴とする。
上記の構成により、予測ステップにおける水の流入速度を精度良く予測することができる。
請求項24に記載の本発明は、請求項23に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記エネルギー消費量が最小となる制御において、前記ピッチ角を制御する制御方法は、制御の前後において船体の速度を一定に保った上で、前記エネルギー消費量が最小となることを目的とした最適制御理論によって得られる制御解に基づくことを特徴とする。
請求項25に記載の本発明は、請求項24に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記制御解は、船体運動モデルと主機応答モデルとプロペラトルクモデルが前記制御解の導出過程において考慮されていることを特徴とする。
請求項26に記載の本発明は、請求項25に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記船体運動モデルは、船体抵抗、操縦運動による流体力、プロペラ推力、舵力、波浪外力を外力項として含むことを特徴とする。
請求項27に記載の本発明は、請求項25または請求項26に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記主機応答モデルは、前記主機の調速モデル、前記主機のトルク発生機構、前記駆動軸の応答モデルを含むことを特徴とする。
請求項28に記載の本発明は、請求項27に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記エネルギー消費量は、前記調速モデルの中に組み込まれ、前記制御解の計算時に評価される変数であることを特徴とする。
上記の構成により、主機の負荷変動の抑制やエネルギー消費量の抑制やエネルギー消費量を最小とすることができる。
また、相対水位計測手段および/または入射波計測手段と、船体運動計測手段による計測結果から得られた、可変ピッチプロペラへの入射波に関する情報を用いれば、流入速度の予測精度をさらに向上させることが可能となる。
また、最適制御理論等に基づいて主機のエネルギー消費量が最小となるように可変ピッチプロペラのピッチ角を制御すれば、エネルギー消費量を最小となるように抑制することが可能となる。
また、ピッチ角の制御の前後において船体の速度を一定に保ったり、船体の速度を海象を考慮して制御することにより、船体の運航の実態に基づいた上で主機のエネルギー消費量が最小となるよう制御を行うことができる。また、制御手段により、軸トルクまたはスラストの変動を平滑化して主機負荷変動を抑制すれば、主機の負荷変動を抑制し、主機トラブルを減少することが可能となる。
また、プロペラ効率が最大となる包絡線に沿うように可変ピッチプロペラのピッチ角を制御すれば、例えば、プロペラ前進定数が変わってもエネルギー消費量をさらに小さく抑制することができる。
本発明の船舶は、本発明の可変ピッチプロペラ制御装置を搭載しているから、船舶として上述した可変ピッチプロペラ制御装置と同様の効果を奏することが可能である。
本発明の可変ピッチプロペラ制御方法は、CPP翼角制御における応答遅れの影響を抑制し、上述した本発明の可変ピッチプロペラ制御装置と同様の効果を奏することが可能である。
既存例の一つとして自動船速調整機能を用いた制御法が挙げられる。これは設定した船速を保持するようにCPP翼角ならびに主機回転数を自動調整する制御法である。
また、他の既存例として、自動負荷制御機能を用いた制御法が挙げられる。これは主機が負荷状態となれば、CPP翼角を調整して主機への負荷を減ずる制御方法である。この制御法では、燃料投入量と主機回転数の計測値を用いてフィードバックを行う。
本発明を可変ピッチプロペラ制御装置として実施する形態について、図面を参酌しつつ以下に説明する。
図1は、本形態に係る可変ピッチプロペラ制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、可変ピッチプロペラ制御装置10は、主機11、主機11により駆動軸12を介して駆動される可変ピッチプロペラ13、運転条件設定手段14、プロペラ流入速度予測手段15、制御手段16および軸馬力計(リアルタイム計測手段)17を備えている。
そこで、本実施形態の可変ピッチプロペラ制御装置10は、運転条件設定手段14により設定された運転条件と、プロペラ流入速度予測手段15により予測された可変ピッチプロペラ13への水の流入速度の予測結果に基づいて、可変ピッチプロペラ13を制御する。これにより、可変ピッチプロペラ13の応答遅れを抑制し、主機11トラブルの減少、エネルギー消費量抑制等を実現することが可能となる。
本実施形態の可変ピッチプロペラ制御装置10のプロペラ流入速度計測システムでは、プロペラ流入速度予測手段15において、軸馬力計17により計測された軸トルク、主機11の回転数とギア比から求めた可変ピッチプロペラ13の回転数または運転条件設定手段14により設定された回転数、プロペラピッチ角の計測値または運転条件設定手段14により設定されたピッチ角、この3つからトルク一致法を用いて、可変ピッチプロペラ13へのプロペラ流入速度をリアルタイムで算出して計測を行う。
KQm=Qpm/ρnm 2DP 5 …(1)
JP=f(KQm,P) …(2)
uPm=JP・nmDP …(3)
式(1)〜(3)において、
ρ:流体密度、
Qpm:軸トルク計測値、
nm:回転数計測値、
DP:プロペラ直径、
JP:プロペラ前進定数、
KQm:プロペラトルク無次元値、
P:プロペラピッチ角、
uPm:プロペラ流入速度計測値、とする。
図2はプロペラオープンテストにより得られた特性としての単独性能曲線の一例を示すグラフであり、(a)の縦軸(Kt)はスラスト常数と呼ばれるプロペラスラストの無次元値を示しており、(b)の縦軸(KQ)はトルク常数と呼ばれるプロペラトルクの無次元値を示している。(a)(b)のいずれも横軸はプロペラ前進定数(JP)を示している。
図2に示すようにプロペラオープンテストから得られた単独性能曲線として、可変ピッチプロペラ13のピッチ角ごとの特性が得られる。トルク一致法を用いる上で、可変ピッチプロペラ13のトルク単独性能は、予めその前進定数JPとプロペラピッチ角Pで整理して関数化しておくとよい。(2)式はJPとプロペラピッチ角で整理されたKQmからJPを導出したことを示している。
可変ピッチプロペラ制御装置10では、上述したプロペラ流入速度計測システムとともに、プロペラ流入速度予測手段15においてプロペラ流入速度予測システムを構成している。このプロペラ流入速度予測システムでは流入速度の計測データに時系列解析手法を適応してリアルタイムで予測計算をおこなっている。
具体的には、自己回帰(AR、Auto regressive)モデルとBurg法を組み合わせた未来予測を用いている。ここで、Burg法は自己回帰モデル内の係数類を同定する手法であり、ユールウォーカー(Yule Walker)法、ハウスホルダー(House Holder)法、パルコ(PARCOR)法、カルマンフィルタを代替手法として選択することもできる。また、時系列解析手法の代替手法として、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、FFT)/逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform、IFFT)を応用した周波数解析手法を使用することもできる。
上述した検証により、上記遅延時間と上記時間遅れを合計した時間が1.5秒であり、図3(a)に示したとおり予測先時間2.5秒の予測精度が良好であることを、検証済みである。このことから、例えば、予測先時間を1.5秒以上2.5秒以下の範囲内とすれば、翼角制御における応答遅れによる影響を十分に抑制することできる。
可変ピッチプロペラ制御装置10では、運転条件設定手段14とプロペラ流入速度予測手段15と制御手段16によりCPP翼角制御システムを構成している。このCPP翼角制御システムではプロペラ流入速度の予測値に基づいて下記のような翼角制御を行う。
制御手段16は、運転条件設定手段14により設定された軸トルク値の周辺でトルク変動を抑制する制御を行う。通常、プロペラトルクは、プロペラ流入速度、回転数、ピッチ角によって(4)式のように推定される。ここで、駆動軸12の軸トルクと可変ピッチプロペラ13のプロペラトルクは等しいとして、設定トルク値、プロペラ流入速度予測手段15により予測値として得られたプロペラ流入速度、および回転数の予測値を与えて(4)式を整理すれば、(5)式に示すように設定トルク値を常に保つ目標ピッチ角(CPP翼角)をリアルタイムで求めることができる。なお、可変ピッチプロペラ13の回転数は、予測値ではなく、過去の測定値の平均値など、運転条件設定手段14で設定した値を用いても良い。制御手段16は、この目標ピッチ角を用いて可変ピッチプロペラ13のCPP翼角を制御する。
Qp=ρnp 2Dp 5・KQ[uP,np,P] …(4)
Pset=g(QPset,uPpredicted,nPpredicted) …(5)
ただし、式(4)(5)において、
ρ:流体密度、
Qp:プロペラトルク、
np:プロペラ回転数、
Dp:プロペラ直径、
KQ:プロペラトルク単独性能、
uP:プロペラ流入速度、
P:プロペラピッチ角、
Pset:プロペラピッチ角目標値、
QPset:軸トルク設定値、
uPpredicted:プロペラ流入速度予測値、
nPpredicted:プロペラ回転数予測値、とする。
上述したように、制御手段16は、目標値として設定された軸トルクの周辺で、駆動軸12の変動を平滑化するように可変ピッチプロペラ13を制御する。この制御の効果で、主機11の負荷変動を抑制し、トラブルの発生を未然に防ぐことが可能となる。
制御手段16は、上述した軸トルクの代わりに目標値としてスラスト値を用いることとしてもよい。この場合、設定したスラスト値の周辺でスラスト変動を抑制する制御を行う。目標値としてスラスト値を用いる場合も、軸トルクについて説明した手法と同様である。このため、詳細についての説明は割愛する。
制御手段16により、駆動軸12の軸トルクまたはスラストの変動を平滑化することにより、トルク変動抑制制御と同様に主機トラブルの発生を未然に防ぐことが可能となる。
可変ピッチプロペラ制御装置10に搭載する可変ピッチプロペラ13のプロペラオープンテストからプロペラ前進定数Jpに対してプロペラ効率が最大となる包絡線を用意する。そして、制御手段16は、流入速度の予測値から算出した前進定数に基づいてプロペラピッチ角が常に包絡線上に存在するように制御する。これにより、可変ピッチプロペラ13のプロペラ効率が最大となる制御を実現することができる。
制御手段16が、流入速度の予測結果に基づいて前進定数を算出し可変ピッチプロペラ13のプロペラ効率が最大となる包絡線に沿うように、可変ピッチプロペラ13のピッチ角(CPP翼角)を制御することにより、プロペラ効率を最大とすることができる。
制御手段16は、波浪中の主機応答、トルク変動、船体運動等を状態方程式としてモデル化し、燃料消費量を最小とする目的関数を設定することで定式化された最適制御問題を解くことで導出されたプロペラピッチ角の制御解に基づいて翼角制御を行う。これにより、主機11のエネルギー消費量が最小となるように可変ピッチプロペラ13のピッチ角を制御することができる。
相対水位計測手段19は、その位置から水面までの距離を測るものであり、例えば、超音波式、電磁波式のものが挙げられる。相対水位計測手段19により、水面の高さの変化を測定することができる。このため、その測定結果に基づいて可変ピッチプロペラ13に入射する波を評価することができる。
入射波計測手段20は、海面を直接計測することにより、船体18に入射する波を直接計測するものである。
船体運動計測手段21は、船体18の運動を計測するものであり、例えば、ジャイロや加速度計を用いることができる。
本発明は、下記の(1)〜(3)のフロー(工程)を備えた可変ピッチプロペラ制御方法、およびこのフローを実施する可変ピッチプロペラ制御装置として実施することができる(図1参照)。
(1)軸馬力計17から駆動軸12の軸トルク、主機11とギア比よりプロペラ回転数、可変ピッチプロペラ13よりプロペラピッチ角、これらの計測値や設定値からトルク一致法により可変ピッチプロペラ13へのプロペラ流入速度を計測する。
(2)計測データに時系列解析を施すことで、可変ピッチプロペラ13の駆動系応答遅れ分と計測データフィルタリングによる時間遅れ分の合計時間先(合計時間に等しい時間だけ離れた未来の時点)のプロペラ流入速度を予測する。
(3)プロペラ流入速度の予測値を用いて可変ピッチプロペラ13の翼角制御を行う。
この手法を用いることで、出会い波(可変ピッチプロペラ13に流入する波)や船体運動によって時々刻々変動する水の流入速度に対応した可変ピッチプロペラ13の制御を行うことが可能となる。
図5は、本実施形態の可変ピッチプロペラ制御方法に係るフローチャートである。同図に示すように、本実施形態の可変ピッチプロペラ制御方法は、設定ステップS1と、予測ステップS2と、制御ステップS3とを備えている。
「時系列解析手法」の構成要素として、時系列モデルおよび時系列モデルのモデル同定法を挙げることができる。「時系列モデル」とは、ある時間の点における状態量変位について、その時間点における入力情報、過去に計測された状態量変位などの他の時間点における状態量変位とその変位に係る係数、これらの要素から説明するモデルをいう。また「時系列モデルのモデル同定法」とは、時系列モデルを構成する係数を同定するための手法である。そして、将来の予測は同定された時系列モデルにおいて設定した予測時間先の状態量変位を求めることで行う。
「周波数解析手法」としては、高速フーリエ変換法ならびに逆高速フーリエ変換法によって構成されている手法が挙げられる。
制御ステップS3における可変ピッチプロペラ13の制御としては、具体的には、主機11のエネルギー消費量が最小となる制御、駆動軸12の軸トルク変動を平滑化する制御、駆動軸12のスラスト変動を平滑化する制御、可変ピッチプロペラ13のプロペラ効率が最大となる包絡線(図4参照)に沿うように可変ピッチプロペラ13のピッチ角を制御する制御等を用いることができる。
本発明における、「最適制御理論」とは、(1)対象とする制御系についてモデル方程式、制約条件などの定式化を行い、(2)入力条件に対して、設定された目的関数を最大限満足するような制御指令量を制御解として導出する制御理論をいう。
ここで、主機11の応答モデルは、主機11の調速モデル、主機11のトルク発生機構、および駆動軸12の回転体としての力学モデルを含むものが挙げられる。そして、エネルギー消費量は、調速モデルの中に組み込まれ、制御解の計算時に評価される変数である。なお、主機11がエンジンである場合、その調速モデルはガバナの応答モデルとなる。
また、船体18の運動モデルとしては、船体18の船体抵抗、操縦運動による流体力、プロペラ推力、舵力、波浪外力を外力項として含むものが挙げられる。
11 主機
12 駆動軸
13 可変ピッチプロペラ
14 運転条件設定手段
15 プロペラ流入速度予測手段
16 制御手段
17 軸馬力計(リアルタイム計測手段)
18 船体
19 相対水位計測手段
20 入射波計測手段
21 船体運動計測手段
Claims (28)
- 船体を駆動する原動機としての主機と、
前記主機により駆動軸を介して駆動される可変ピッチプロペラと、
前記可変ピッチプロペラの運転条件を設定する運転条件設定手段と、
前記可変ピッチプロペラへの水の流入速度を、リアルタイムで求めたリアルタイム流入速度に基づいて少なくとも前記可変ピッチプロペラの駆動系の時間遅れを考慮して設定した予測先時間における予測流入速度として予測するプロペラ流入速度予測手段と、
前記運転条件設定手段により設定された運転条件と前記プロペラ流入速度予測手段で予測した前記予測流入速度に基づいて前記可変ピッチプロペラを制御する制御手段を備えたことを特徴とする可変ピッチプロペラ制御装置。 - 前記プロペラ流入速度予測手段による前記予測流入速度の予測は、前記流入速度をリアルタイムで計測するために設けたリアルタイム計測手段の計測結果に基づく予測であることを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記リアルタイム計測手段は、前記駆動軸のトルク計測が可能な軸馬力計であることを特徴とする請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記リアルタイム計測手段は、前記駆動軸のスラスト計測が可能な軸馬力計であることを特徴とする請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記予測流入速度の予測に当たって、前記可変ピッチプロペラの単独性能曲線と前記主機の回転数と前記可変ピッチプロペラのピッチ角を利用したことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記船体にさらに相対水位計測手段および/または入射波計測手段と船体運動計測手段を備え、
前記予測流入速度の予測に当たって前記相対水位計測手段および/または前記入射波計測手段と前記船体運動計測手段の計測結果を利用したことを特徴とする請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。 - 前記制御手段は、前記主機のエネルギー消費量が最小となるように前記可変ピッチプロペラのピッチ角を制御したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記ピッチ角の制御の前後において前記船体の速度が一定に保たれるように制御したことを特徴とする請求項7に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記船体の速度は、海象を考慮したものであることを特徴とする請求項8に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記制御手段は、前記駆動軸の軸トルクの変動を平滑化するように前記可変ピッチプロペラを制御したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記運転条件設定手段で前記軸トルクの目標値を設定し、前記軸トルクの目標値に近づけるように平滑化をおこなったことを特徴とする請求項10に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記制御手段は、前記駆動軸のスラストの変動を平滑化するように前記可変ピッチプロペラを制御したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記運転条件設定手段で前記スラストの目標値を設定し、前記スラストの目標値に近づけるように平滑化をおこなったことを特徴とする請求項12に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記制御手段は、前記予測流入速度の予測結果に基づいて前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率が最大となる包絡線に沿うように前記可変ピッチプロペラのピッチ角を制御したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 前記包絡線は、ピッチ角毎に求めた前記可変ピッチプロペラのプロペラ単独性能曲線群について、プロペラ効率がプロペラ前進定数に対して最大となるピッチ角を結んだ包絡線であることを特徴とする請求項14に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
- 請求項1から請求項15のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置を搭載したものであることを特徴とする船舶。
- 船体を駆動する原動機としての主機により駆動軸を介して駆動される可変ピッチプロペラの運転条件を設定する設定ステップと、
前記可変ピッチプロペラへの水の流入速度を、リアルタイムで求めたリアルタイム流入速度に基づいて少なくとも前記可変ピッチプロペラの駆動系の時間遅れを考慮して設定した予測先時間における予測流入速度として予測する予測ステップと、
前記設定ステップにおいて設定された運転条件と前記予測ステップで予測した前記予測流入速度に基づいて前記可変ピッチプロペラを制御する制御ステップを備えたことを特徴とする可変ピッチプロペラ制御方法。 - 前記予測ステップにおける水の前記予測流入速度の予測は、前記可変ピッチプロペラへの水の前記流入速度のリアルタイム計測結果に基づく予測であることを特徴とする請求項17に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記リアルタイム計測結果に基づく予測は、時系列解析手法または周波数解析手法に基づいておこなったことを特徴とする請求項18に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記時系列解析手法は、時系列モデルおよび前記時系列モデルのモデル同定法によって
構成されていることを特徴とする請求項19に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。 - 前記モデル同定法は、バーグ(Burg)法、ユールウォーカー(Yule Walker)法、ハウスホルダー(House Holder)法、パルコ(PARCOR)法、カルマンフィルタのいずれかから選択されたことを特徴とする請求項20に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記周波数解析手法は、高速フーリエ変換法および逆高速フーリエ変換法によって構成されていることを特徴とする請求項19に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記制御ステップにおける前記可変ピッチプロペラの制御は、前記主機のエネルギー消費量が最小となる制御、前記駆動軸の軸トルク変動を平滑化する制御、前記駆動軸のスラスト変動を平滑化する制御、前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率が最大となる包絡線に沿うように前記可変ピッチプロペラのピッチ角を制御する制御のうちから選択されることを特徴とする請求項17から請求項22のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記エネルギー消費量が最小となる制御において、前記ピッチ角を制御する制御方法は、制御の前後において船体の速度を一定に保った上で、前記エネルギー消費量が最小となることを目的とした最適制御理論によって得られる制御解に基づくことを特徴とする請求項23に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記制御解は、船体運動モデルと主機応答モデルとプロペラトルクモデルが前記最適制御解の導出過程において考慮されていることを特徴とする請求項24に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記船体運動モデルは、船体抵抗、操縦運動による流体力、プロペラ推力、舵力、波浪外力を外力項として含むことを特徴とする請求項25に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記主機応答モデルは、前記主機の調速モデル、前記主機のトルク発生機構、前記駆動軸の応答モデルを含むことを特徴とする請求項25または請求項26に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
- 前記エネルギー消費量は、前記調速モデルの中に組み込まれ、前記制御解の計算時に評価される変数であることを特徴とする請求項27に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
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