以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
本実施形態に係る樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体である。主として式(1)の繰り返し単位から構成される樹脂は、一般にポリイミド樹脂と称される。主として式(2)の繰り返し単位から構成される樹脂は、一般にポリアミド酸樹脂と称される。本明細書において、式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、「ポリイミド系樹脂」と称される。
式(1)及び(2)中、Rは、ポリイミド系樹脂の合成のために用いられたジアミン又はジイソシアネートの残基を示し、mは1〜30の整数を示す。好ましくは、ノルボルナン環に直接結合するケイ素原子はいずれもノルボルナン環に対してエキソ配置し、ノルボルナン環に結合するイミド環はいずれもノルボルナン環に対してエキソ配置している。同一分子中の複数のRは、同一でも異なっていてもよい。Rは、後述するジアミン又はジイソシアネートからアミノ基又はイソシアネート基を除いた部分に相当する構造する残基であり得る。mは、好ましくは1〜20、さらに好ましくは、1〜10である。
式(1)に示すシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂は、例えば、下記式(3)に示すシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させ、脱水閉環することによって合成することができる。また、式(2)に示すシロキサン骨格を有するポリアミド酸樹脂は、例えば、下記式(3)に示すシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって合成することができる。
式(3)中、mは1〜30の整数を示す。
ポリイミド系樹脂の原料となる酸二無水物の全てが式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物であることが好ましいが、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物と他のテトラカルボン酸二無水物を1種、若しくは2種以上を併用することができる。このように、式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物と他のテトラカルボン酸二無水物を併用することで、望ましいTgや弾性率等の樹脂物性を制御できるという効果が得られる。
式(3)で示されるシロキサン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物と併用できるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、ピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,10,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(別名「4,4’−ヘキサフルオロプロピリデン酸二無水物」)、2,2,−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物等を例示することができる。上記テトラカルボン酸二無水物のうちの1種、又は2種以上を併用して使用することができる。
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物のうち、式(3)の化合物の割合は、特に制限を受けることはないが、50質量%以上が好ましく、75%質量以上がより好ましい。式(3)のテトラカルボン酸二無水物の割合が50質量%より少ないと、流動性を高める効果が小さくなる傾向がある。
また、ポリイミド系樹脂を合成するために用いることのできるジアミンとして、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、又は、下記一般式(6)で表されるジアミノポリシロキサン等が挙げられる。式(6)において、nは好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10である。
更に、ジアミンは、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、三井化学ファイン株式会社製のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン[商品名:ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2001,EDR−148等]、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。上記のジアミンのうち1種を単独で、若しくは2種以上を混合して使用することができる。
本実施形態に係るポリイミド系樹脂を単独で接着剤として用いることで様々な基材に対する十分な接着性、耐熱性、流動性を与えるが、かかるポリイミド系樹脂を成分の一つとして接着組成物を構成することで、接着組成物に十分な流動性、接着性を与えることができる。
ポリイミド系樹脂の重量平均分子量は、特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5000〜250000が好ましく、10000〜150000がより好ましい。重量平均分子量が5000未満では、フィルム状の接着剤とした場合にフィルム形成性が低下する傾向があり、また、250000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
本実施形態の接着剤組成物が含有する導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン粒子などが挙げられる。また、導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核体とし、この核体に上記金属、金属粒子、カーボン等を被覆したものであってもよい。また、導電性粒子としては、銅からなる金属粒子に銀を被覆したものであってもよい。これらの導電性粒子を使用すると、、加熱加圧により変形性を有するので回路部材同士を接続する際に、導電性粒子と電極との接触面積が増加し、接続信頼性に一層優れる回路接続構造体が得られる。また、導電性粒子としては、上記導電性粒子の表面を絶縁性粒子により被覆したものや、ハイブリダイゼーション等の方法により上記導電性粒子の表面に絶縁性物質からなる絶縁層が設けられたものを用いることもできる。このような導電粒子を用いることで、隣接する導電性粒子同士の接触による短絡が生じにくくなる。
また、導電性粒子は核体の中核部の表面上に形成される核側突起部が存在するものを用いた場合にさらに接続信頼性が向上するので好ましい。このような核体は、中核部の表面に中核部よりも小さな径を有する核側突起部を複数個吸着させることにより形成することができる。なお、このような導電性粒子の平均粒径とは、突起部を含めた導電性粒子全体の粒径である。
導電性粒子の平均粒径は、良好な分散性及び導電性を得る観点から、1〜10μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると回路の電気的接続が十分に得られず、10μmを超えると導電性粒子が十分に分散せず凝集してしまう、という問題が生じる傾向がある。
一方、前記突起部の高さは50〜500nmであることが好ましく、75〜300nm以下であることがより好ましい。また、隣接する突起部間の距離が1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。突起部の高さが50nmより低い場合や、隣接する突起部間の距離が1000nmより大きい場合には、電気的接続に対する突起の効果が薄れていく傾向がある。例えば対向配置された一対の回路部材(第一及び第二の回路部材)同士を接続する場合に、突起部の高さが500nmより大きい場合は導電性粒子と第一及び第二の回路部材の電極部との接触面積が小さくなるため接続抵抗値が高くなる傾向がある。なお、導電性粒子の突起部の高さH及び隣接する突起部間の距離は、電子顕微鏡により測定することができる。
また、これらの導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、回路電極間の絶縁性を向上させることができる。導電性粒子の表面を高分子樹脂などで被覆した粒子は、それ単独で又は他の導電性粒子と混合して用いることができる。
本実施形態の接着剤組成物は、このような導電性粒子を含有するため異方導電性接着剤組成物として好適に用いることができる。
導電性粒子の含有量は、接着剤組成物の全体積を基準として0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この含有量が0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路電極間の短絡が生じやすくなる傾向がある。なお、導電性粒子の含有量は、23℃での硬化前の接着剤組成物の各成分の体積をもとに決定される。なお、各成分の体積は、比重を利用して質量を体積に換算することで求めることができる。また、体積を測定しようとする成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらすことができる適当な溶媒(水、アルコール等)をメスシリンダー等に入れ、そこへ測定対象の成分を投入して増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
本実施形態の接着剤組成物は、上記ポリイミド系樹脂を有する限り、その他の成分を含んでいてもよいが、良好な転写性及び十分な流動性を得るという観点から、上記ポリイミド系樹脂は、接着剤組成物の全量を基準として、1〜60質量%であることが好ましく、2.5〜50質量%であることがより好ましい。含有量が1質量%未満では回路部材への転写性が悪化する傾向があり、60質量%を超えると流動性が低下する恐れがある。
本実施形態の接着剤組成物は、さらにエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤とを含有する組成物(以下、「第1組成物」という。)との、ラジカル重合性物質と、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とを含有する組成物(以下、「第2組成物」)との、又は第1組成物及び第2組成物との混合組成物であることが好ましい。これにより、接着強度をより向上させ、信頼性試験後においても安定した性能を維持することができる。
第1組成物が含有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
第1組成物が含有する潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく、このような潜在性硬化剤としては、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、速硬化性において優れ、化学当量的な考慮が不要である点からは、アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤が好ましい。
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変成物も使用することができる。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等が挙げられる。
アニオン重合型の触媒型硬化剤として第3級アミン類やイミダゾール類を配合した場合、エポキシ樹脂は160℃〜200℃程度の中温で数10秒〜数時間程度の加熱により硬化する。このため、可使時間(ポットライフ)が比較的長くなるので好ましい。カチオン重合型の触媒型硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩等がある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系又はポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
第2組成物が含有するラジカル重合性物質は、特に制限無く公知のものを使用することができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマーいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して用いてもよい。
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記ラジカル重合性物質に加え、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等を併用してもよい。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施形態の接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物として、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を少なくとも1種類含むことが好ましい。
さらに、本実施形態の接着剤組成物に、ラジカル重合性化合物として、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の他に、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、4,4‘−ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)へキサン等が挙げられる。
また、上記ラジカル重合性物質に下記式(20)〜(22)で表される、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を併用することが好ましい。この場合、金属等の無機物表面に対する接着強度が向上するため、回路電極同士の接着に好適である。
式(20)中、R
4は(メタ)アクリロイルオキシ基を、R
5は水素原子又はメチル基を、w及びxは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R
4同士、R
5同士、w同士及びx同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(21)中、R
6は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、y及びzは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R
6同士、y同士及びz同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
式(22)中、R
7は(メタ)アクリロイルオキシ基を、R
8は水素原子又はメチル基を、a及びbは各々独立に1〜8の整数を示す。
その他具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル等が挙げられる。
また、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることによっても得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等がある。これらは1種を単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の含有量は、ラジカル重合性物質と必要により配合するフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.01〜50質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
第2組成物が含有する、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤(ラジカル重合開始剤)とは、加熱により分解して遊離ラジカルを発生する硬化剤であり、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。ただし、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1000の過酸化物が好ましい。ここで、「1分間半減期温度」とは、半減期が1分となる温度をいい、「半減期」とは、化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
ラジカル重合開始剤として具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3−メチルベンゾイルパーオキサイド、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
また、ラジカル重合開始剤として、波長150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年)、p17〜p35に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が光照射に対する感度が高いためより好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いる他に、上記過酸化物やアゾ化合物と混合して用いてもよい。
また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、ラジカル重合開始剤中に含有される塩素イオンや有機酸の量は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。また、作製した接着剤組成物の安定性が向上することから、室温、常圧下で24時間の開放放置後に20質量%以上の質量保持率を有するラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
第2組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することもできる。このような安定化剤としては、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が好ましい。
安定化剤の添加量は、接着剤組成物全量を基準として、0.01〜15質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。この添加量が0.01質量%未満の場合には、添加効果が十分に得られない傾向があり、15質量部を超える場合には、重合反応が阻害される傾向がある。
本実施形態に係る接着剤組成物は、上述のポリイミド系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を更に含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選らばれる1種以上である。これら熱可塑性樹脂とポリイミド系樹脂とを組み合わせることで、接着剤のTgや接着性、耐熱性を調節できる。
熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、重量平均分子量が5,000〜200,000が好ましく、10,000〜150,000がより好ましい。重量平均分子量が、5,000未満では、フィルム形成性が低下する傾向があり、200,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
熱可塑性樹脂の含有量は、上記ポリイミド系樹脂との質量の総和が接着剤全量を基準として15〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が15質量%より少ない場合、フィルム形成性が低下する傾向があり、70質量%より多い場合、十分な流動性を確保することが困難となる傾向がある。
本実施形態の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤や密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。かかる接着助剤として具体的には、下記一般式(23)で表される化合物が好ましい。これらの接着助剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
式(23)中、R
9、R
10及びR
11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、又は、アリール基を示し、R
12は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基又はグリシジル基を示し、cは1〜10の整数を示す。
本実施形態の接着剤組成物には、応力緩和及び接着性向上を目的として、ゴム成分を添加してもよい。ゴム成分として具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
上記ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましい。これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、本実施形態では特に制限のない公知の有機、もしくは無機微粒子を用いることができる。無機微粒子として具体的には、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ−アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子などに代表される金属酸化物微粒子の他、窒化物微粒子などが挙げられる。
有機微粒子としては、具体的にはシリコーン微粒子、メタクリレート−ブタジエン−スチレン微粒子、アクリル−シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子などが挙げられる。これらは均一な構造でもコア−シェル型構造となっていてもよい。
本実施形態で用いる有機、もしくは無機微粒子の含有量は接着剤組成物全量を基準としての5〜30質量%の範囲であることが好ましく、10〜20質量%の範囲であることがより好ましい。無機微粒子の配合量が5質量%未満では相対する電極間の電気的接続を維持できなくなる傾向があり、30質量%を超えると流動性が低下する傾向がある。
本実施形態の接着剤組成物は、上記ポリイミド系樹脂と、上記第1組成物や第2組成物、安定化剤等の添加成分を溶解・分散できる溶剤とを共に又は溶剤を用いずに混合して製造できる。導電性粒子は、上記溶解・分散過程の中で適宜添加すればよい。
本実施形態の接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
図1は、本発明の接着剤組成物からなるフィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す接着シート100は、支持基材8と、支持基材8上に剥離可能に積層されたフィルム状接着剤組成物40とを備える。フィルム状接着剤組成物40は、絶縁性の接着剤成分5と、接着剤成分5内に分散した導電粒子7とを含む。
支持基材8は、接着剤組成物をフィルム状に保つことができるものであれば、その形状や素材は任意である。具体的には、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)又は不織布等を支持基材として用いることができる。
このフィルム状接着剤組成物40によれば、取り扱いが容易であり、被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。また、接着シート100は、2種以上の層からなる多層構成を有していてもよい。また、フィルム状接着剤組成物40は上記導電性粒子7を含有するため、異方導電性フィルムとして好適に用いることができる。
本実施形態のフィルム状接着剤組成物40は、通常、加熱及び加圧を併用して被着体同士を接着させることができる。加熱温度は、100〜250℃の温度であることが好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜10MPaであることが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。本実施形態のフィルム状接着剤組成物40によれば、例えば、150〜200℃、1MPaの条件にて、15秒間の短時間の加熱及び加圧でも被着体同士を十分に接着させることが可能である。
また、本実施形態のフィルム状接着剤組成物40は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
以下、本実施形態のフィルム状接着剤組成物40を異方導電性フィルムとして使用し、回路基板の主面上に回路電極が形成された回路部材同士を被着体として接続する場合の一例について説明する。すなわち、異方導電性フィルムを、回路基板上の相対する回路電極間に配置し、加熱加圧することにより、対向する回路電極間の電気的接続と回路基板間の接着とを行い、回路部材同士を接続することができる。ここで、回路電極を形成する回路基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物からなる基板、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物からなる基板、ガラス/エポキシ等の無機物と有機物とを組み合わせた基板等を用いることができる。
図2は、本発明の回路接続構造体(回路部材の接続構造)の一実施形態を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造は、相互に対向する第一の回路部材20及び第二の回路部材30を備えており、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。
第一の回路部材20は、回路基板(第一の回路基板)21と、回路基板21の主面21a上に形成される回路電極(第一の回路電極)22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層が形成されていてもよい。
一方、第二の回路部材30は、回路基板(第二の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第二の回路電極)32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層が形成されていてもよい。
第一及び第二の回路部材20,30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITOやIZO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル基板を有するフレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ケイ素(SiO2)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
回路接続部材10は、本実施形態のフィルム状接着剤組成物40の硬化物からなるものである。この回路接続部材10は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する回路電極22と回路電極32との間のみならず、主面21a,31a同士間にも配置されている。回路部材の接続構造においては、回路電極22,32が、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。即ち、導電性粒子7が回路電極22,32の双方に直接接触している。
ここで、導電性粒子7は、先に説明した導電性粒子であり、絶縁性物質11は、本実施形態の接着剤組成物又はフィルム状接着剤を構成する絶縁性の各成分の硬化物である。
この回路部材の接続構造においては、上述したように、対向する回路電極22と回路電極32とが導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、回路電極22,32間の接続抵抗が十分に低減される。従って、回路電極22,32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。
回路接続部材10は、本実施形態の接着剤組成物又はフィルム状接着剤の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(良好な接着強度や接続抵抗)を維持することができる。
次に、図3を参照しながら、上述した回路部材の接続構造の製造方法の一例について説明する。まず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状接着剤組成物40とを用意する(図3(a)参照)。フィルム状接着剤組成物40は、接着剤組成物(回路接続材料)をフィルム状に成形してなるものであり、導電性粒子7と接着剤成分5とを含有する。
フィルム状接着剤組成物40の厚さは、8〜50μmであることが好ましい。フィルム状接着剤組成物40の厚さが8μm未満では、回路電極22,32間に接着剤組成物が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、回路電極22,32間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路電極22,32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
次に、フィルム状接着剤組成物40を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状接着剤組成物40が支持体上に付着している場合には、フィルム状接着剤組成物40側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20上に載せる。このとき、フィルム状接着剤組成物40はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状接着剤組成物40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
そして、フィルム状接着剤組成物40を、図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状接着剤組成物40を第一の回路部材20に仮接続する(図3(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状接着剤組成物40中の接着剤組成物が硬化しない温度よりも低い温度とする。
続いて、図3(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状接着剤組成物40上に載せる。なお、フィルム状接着剤組成物40が支持体上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状接着剤組成物40上に載せる。
そして、フィルム状接着剤組成物40を加熱しながら、図3(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20,30を介して加圧する。このときの加熱温度は、重合反応が開始可能な温度とする。こうして、フィルム状接着剤組成物40が硬化処理されて本接続が行われ、図2に示すような回路部材の接続構造が得られる。
ここで、接続条件は先に述べた通り、加熱温度100〜250℃、圧力0.1〜10MPa、接続時間0.5秒〜120秒間であることが好ましい。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
上記のようにして回路部材の接続構造を製造することにより、得られる回路部材の接続構造において、導電性粒子7を対向する回路電極22,32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22,32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
また、フィルム状接着剤組成物40の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤成分5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続される。すなわち、得られる回路部材の接続構造においては、回路接続部材10が本実施形態の接着剤組成物の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなるとともに、電気的に接続した回路電極間の接続抵抗を十分に低減することができる。また、高温高湿環境下に長期間おかれた場合であっても、接着強度の低下及び接続抵抗の増大を十分に抑制することができる。
なお、上記加圧における圧力は、圧着面積あたりの荷重として算出することができる。ここでいう圧着面積とは、フィルム状接着剤組成物40と回路基板21,31上の回路電極22,32が重なる部分のうち、加熱加圧される部分の面積という。
まず、圧着面積の求め方を説明する。図4は、接続する回路部材の模式平面図である。図4(a)に示されるように、第一の回路電極22は、第一の回路基板21の主面21a上に複数並設されている。この第一の回路電極22は、幅xにわたって並設されており、一本あたりの長さyを有するものである、第一の回路基板21は、第一の回路電極22の上に、第一の回路電極22の全体を覆うようにフィルム状接着剤組成物40が載せられた後、第二の回路基板31との接続に供される。
図4(b)及び(c)に示されるように、第二の回路基板31が、その主面上に設けられた第二の回路電極が第一の回路電極22と対向するようにフィルム状接着剤組成物40の上に載せる。第一及び第二の回路電極22,32が重なる領域(以下「電極対向領域」という。)のうち、加熱加圧がその全ての部分について行われる場合(図4(b)の50aの領域が加熱加圧される場合)は、圧着面積は、電極対向領域の幅xと長さy1との積で求められる。一方、電極対向部分のうち、加熱加圧がその一部について行われる場合(図4(c)の50bの領域が加熱加圧される場合)は、圧着面積は、電極対向領域の幅xと、電極対向領域における加熱加圧が行われた部分の長さy2との積で求められる。
圧力は次のようにして求めることができる。例えば、電極対向領域の幅が30mm、この幅に垂直な方向の長さが2mmである回路基板に対して、6kgfの加圧荷重をかけたとする。
加熱加圧が電極対向領域の全ての部分について行われる場合(図4(b)の場合)、加熱加圧される部分の総面積は電極対向領域の面積と等しくなり、圧力は、
圧力=加圧荷重(kgf)/電極対向領域の面積xy1(cm2)=6kgf/0.6cm2=10kgf/cm2(≒1.0MPa)として求められる。
一方、加熱加圧が電極対向領域の一部について行われる場合(図4(c)の場合)、例えばy2が1mmである場合、圧力は、
圧力=加圧荷重(kgf)/電極対向領域における加熱加圧が行われた部分の面積xy2(cm2)=6kgf/0.3cm2=20kgf/cm2(≒2.0MPa)として求められる。
また、上記関係式を用いれば、反対に、目標圧力を達成するための加圧荷重を求めることもできる。
例えば、上記構成を有する回路基板及び回路電極において、電極対向領域における圧力を1.0MPa(≒10kgf/cm2)とするには、加圧装置に設定する加圧荷重は次に示す計算により求め、対応する圧着ヘッドにその加圧荷重がかかるようにすればよい。
図4(b)の場合では、
目標圧力=1.0MPa(10kgf/cm2)
加熱加圧される部分の総面積(=電極対向領域の面積)=xy1=3.0cm×0.2cm=0.6cm2
加圧荷重=(加熱加圧される部分の総面積)×(目標圧力)=0.6cm2×10kgf/cm2=6kgf
として求めることができる。
一方、図4(c)の場合では、
目標圧力=1.0MPa(10kgf/cm2)
加熱加圧される部分の総面積=xy2=3.0cm×0.1cm=0.3cm2
加圧荷重=(加熱加圧される部分の総面積)×(目標圧力)=0.3cm2×10kgf/cm2=3kgf
として求めることができる。
なお、例えば図4(b)の場合において、接続部が複数(例えば10個)存在し、各部分を同時に加圧する場合、加圧力は次のようになる。
目標圧力=1.0MPa(10kgf/cm2)
加熱加圧される部分の総面積=xy1×10(個)=3.0cm×0.2cm×10=6cm2
加圧荷重=(加熱加圧される部分の総面積)×(目標圧力)=6cm2×10kgf/cm2=60kgf
このように、本実施形態においては圧力(MPa)と加圧荷重(kgf)とを相互に換算しながら、回路接続における圧力を設定することができる。なお、加熱加圧時に回路基板が熱膨張した結果、対向電極の位置ずれが生じる場合が起こりうるが、本実施形態では加熱加圧前の状態で上記場合分けを行って圧力を算出することとし、位置ずれが生じた場合の圧力は、位置ずれが生じなかった場合と同様の計算方法にて行うものとする。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の接着剤組成物は、フィンガー電極、バスバー電極等の電極が設けられた太陽電池セルと、タブ線と、を接続するために用いることができる。すなわち、本発明の回路接続構造体は、電極を有する太陽電池セルと、タブ線と、当該電極及びタブ線が対向配置された状態で電気的に接続されるように太陽電池セル及びタブ線を接着する接続部材とを備え、該接続部材が上記接着剤組成物の硬化物からなる太陽電池モジュールであってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリイミド樹脂の合成>
1.式(3)に示されるシロキサン骨格を有する酸二無水物を用いたポリイミド樹脂(PI−1)の合成
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、シロキサン骨格を有する酸二無水物5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸二無水物24.0mmolと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物24.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)140gとを加えて調製した反応液を、室温(25℃)で30分間攪拌した。次いで、ジアミンである1,4−ビスアミノプロピルピペラジン21.0mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン21.0mmol及びポリオキシプロピレンジアミン6.0mmolを加えた。その後、反応液を180℃まで昇温し、ディーンスターク還流冷却器により水とNMPの混合物を除去しながら1時間還流を行い、式(1)で示されるシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂(以下「PI−1」という。)のNMP溶液を得た。PI−1のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−1を得た。得られたPI−1の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で51000であった。また、UBM社製、広域動的粘弾性測定装置E-4000 を用いて、昇温速度10℃/分、引張り法の条件で測定し、tanδの最大値をガラス転移温度として測定した。測定の結果、ガラス転移温度は118℃であった。PI−1をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
2.式(3)のシロキサン骨格を有する酸二無水物を用いたポリイミド樹脂(PI−2)の合成
PI−1の合成と同じ装置に、シロキサン骨格を有する酸二無水物5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸二無水物30.0mmolと、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物30.0mmol、N−メチル−2−ピロリドン181g、ジアミンである1,4−ビスアミノプロピルピペラジン26.25mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン26.25mmol及びポリオキシプロピレンジアミン7.50mmolを用いた他はPI−1と同様の手順によって、式(1)で示されるシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂(以下「PI−2」という。)のNMP溶液を得た。PI−2のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−2を得た。得られたPI−2の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で44000であった。また、ガラス転移温度は98℃であった。PI−2をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
3.シロキサン骨格を有する酸二無水物を用いないポリイミド樹脂(PI−3)の合成
PI−1の合成と同じ装置に、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物52.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100g、ジアミンである1,4−ビスアミノプロピルピペラジン22.75mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン22.75mmol及びポリオキシプロピレンジアミン6.5mmolを用いた他はPI−1と同様の手順によって、シロキサン骨格を含有しないポリイミド樹脂(以下「PI−3」という。)のNMP溶液を得た。PI−3のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−3を得た。得られたPI−3の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で59000であった。ガラス転移温度は196℃であった。PI−3をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
4.式(3)に示されるものとは異なるシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂(PI−4)の合成
PI−1の合成と同じ装置に、一般式(1)の構造を有さず、シロキサン骨格を有する酸二無水物であるX−22−2290AS(信越化学製商品名)27.0mmolと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物27.0mmol、N−メチル−2−ピロリドン120g、ジアミンである1,4−ビスアミノプロピルピペラジン23.63mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン23.63mmol及びポリオキシプロピレンジアミン6.75mmolを用いた他はPI−1と同様の手順によって、式(3)に示されるものとは異なるシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂(以下「PI−4」という。)のNMP溶液を得た。PI−5のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−4を得た。得られたPI−4の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で53000であった。ガラス転移温度は72℃であった。PI−4をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
<エポキシ樹脂の配合>
また、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(マイクロカプセル化されたアミン系硬化剤)と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、ナフタレン型エポキシ樹脂とを、質量比34:49:17で含有する液状の硬化剤含有エポキシ樹脂(エポキシ当量:202)を用意した。
<フェノキシ樹脂の合成>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、分子内にフルオレン環構造を有するフェノール化合物(4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジフェニール)とからフェノキシ樹脂を合成し、この樹脂を質量比でトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
<アクリルゴムの合成>
還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた2000mLのセパラブルフラスコに、脱イオン水500g、ブチルアクリレート40g、エチルアクリレート30g、アクリロニトリル30g、グリシジルメタクリレート3gを加え窒素気流下、室温で1時間撹拌後、70℃まで加熱しそのまま3時間撹拌し、さらに90℃まで加熱して3時間撹拌した。得られた固体を回収後水洗、乾燥させることでピペラジン骨格を有さないアクリルゴム2を得た。質量比でトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解することで、固形分15質量%のアクリルゴム2の溶液とした。得られたアクリルゴム2の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、800000であった。
<ウレタンアクリレートの合成>
重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート131部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.5部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.0部を攪拌しながら50℃に加熱して混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート222部を滴下し更に攪拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を行った。イソシアネート基の反応率が99%以上になったことを確認後、反応温度を下げて重量平均分子量8500のウレタンアクリレートを得た。
<導電性粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面上に、厚さ0.2μmになるようにニッケルからなる層を設け、更にこのニッケルからなる層の表面上に、厚さ0.04μmになるように金からなる層を設けた。こうして平均粒径5μmの導電性粒子を作製した。
<実施例及び比較例>
(実施例1)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−1/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=20g/30g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作製した。この接着剤組成物含有液に対して導電性粒子を3体積%分散させて接着剤組成物含有液を調製した。
そして、この接着剤組成物含有液を、片面を表面処理(離型処理)した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃3分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚み16μmのフィルム状接着剤組成物(実施例1)を得た。
(実施例2)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−1/フェノキシ樹脂/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=10g/20g/20g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(実施例2)を得た。
(実施例3)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−1/ウレタンアクリレート/リン酸エステル型アクリレート/t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネート(日油株式会社製、商品名パーキュアHO)=30g/70g/3g/5gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作製した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(実施例3)を得た。
(実施例4)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−1/フェノキシ樹脂/ウレタンアクリレート/リン酸エステル型アクリレート/t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネート=15g/15g/70g/3g/5gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(実施例4)を得た。
(実施例5)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−1/フェノキシ樹脂/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=0.5g/29.5g/20g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(実施例5)を得た。
(実施例6)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−2/フェノキシ樹脂/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=10g/20g/20g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(実施例5)を得た。
(比較例1)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−3/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=30g/20g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(比較例1)を得た。
(比較例2)
上記材料を固形分質量で、ポリイミド樹脂PI−4/アクリルゴム/硬化剤含有エポキシ樹脂=30g/20g/50gの割合で配合し、接着剤組成物含有液を作成した。そのほかは実施例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物(比較例2)を得た。
<転写性評価>
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたフィルム状接着剤組成物の、回路部材への転写性を、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、70℃の温度にて1MPaで2秒間及び80℃の温度にて1MPaで5秒間の、2つの加熱加圧条件で調べた。なお、該回路部材として厚さ0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)を用いた。その結果、今回作製したすべてのフィルムはピペラジン骨格を有するポリイミド樹脂を含有しているため、いずれの条件においても問題なく転写することができた。
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたフィルム状接着剤組成物を、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、70℃の温度にて1MPaで2秒間で厚さ0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)に転写した。ライン幅25μm、ピッチ50μm及び厚さ18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて190℃の温度にて3MPaで15秒間の加熱加圧を行った。これにより、幅2mmにわたりFPC基板とITO基板とをフィルム状接着剤組成物の硬化物により接続した接続体(回路接続構造体)を作製した。また、同様のFPCとITOガラスを用いて160℃の温度にて1MPaで10秒間の加熱圧着を行った。
<接続抵抗及び接着力の測定>
得られた接続体の隣接回路間の抵抗値(接続抵抗)を、マルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。次にこの接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
また、得られた接続体を85℃、相対湿度85%RHの高温高湿試験装置内に250時間放置したのち、上記と同様に接続抵抗及び接着力を測定した。
以上の結果を表1及び表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜6は3MPa及び1MPa接続のいずれにおいても接続抵抗及び接着力はともに良好な値を示した。一方、式(3)に示されるシロキサン骨格を有していないポリイミド樹脂を用いた比較例1及び比較例2では、1MPa接続時に接続抵抗が高くなった。また、高温高湿試験後の接続抵抗は、比較例1における1MPa接続、並びに、比較例2における3MPa及び1MPa接続において、その上昇が顕著であった。