≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る立体物検出装置1を搭載した車両の概略構成図である。本実施形態に係る立体物検出装置1は、自車両V1が車線変更する際に接触の可能性がある隣接車線に存在する他車両(以下、隣接車両V2ともいう)を検出することを目的とする。本実施形態に係る立体物検出装置1は、図1に示すように、カメラ10と、車速センサ20と、計算機30とを備える。
カメラ10は、図1に示すように、自車両V1の後方における高さhの箇所において、光軸が水平から下向きに角度θとなるように車両V1に取り付けられている。カメラ10は、この位置から自車両V1の周囲環境のうちの所定領域を撮像する。車速センサ20は、自車両V1の走行速度を検出するものであって、例えば車輪に回転数を検知する車輪速センサで検出した車輪速から車速度を算出する。計算機30は、自車両後方の隣接車線に存在する隣接車両の検出を行う。
図2は、図1の自車両V1の走行状態を示す平面図である。同図に示すように、カメラ10は、所定の画角aで車両後方側を撮像する。このとき、カメラ10の画角aは、自車両V1が走行する車線に加えて、その左右の車線(隣接車線)についても撮像可能な画角に設定されている。
図3は、図1の計算機30の詳細を示すブロック図である。なお、図3においては、接続関係を明確とするためにカメラ10、車速センサ20についても図示する。
図3に示すように、計算機30は、視点変換部31と、位置合わせ部32と、差分波形生成部33と、立体物検出部34と、差分車速算出部35と、ヘッドライト検出部36と、ヘッドライト車速算出部37と、速度差算出部38と、閾値変更部39とを備える。以下に、それぞれの構成について説明する。
視点変換部31は、カメラ10による撮像にて得られた所定領域の撮像画像データを入力し、入力した撮像画像データを鳥瞰視される状態の鳥瞰画像データに視点変換する。鳥瞰視される状態とは、上空から例えば鉛直下向きに見下ろす仮想カメラの視点から見た状態である。この視点変換は、例えば特開2008−219063号公報に記載されるようにして実行することができる。撮像画像データを鳥瞰視画像データに視点変換するのは、立体物に特有の鉛直エッジは鳥瞰視画像データへの視点変換により特定の定点を通る直線群に変換されるという原理に基づき、これを利用すれば平面物と立体物とを識別できるからである。
位置合わせ部32は、視点変換部31の視点変換により得られた鳥瞰視画像データを順次入力し、入力した異なる時刻の鳥瞰視画像データの位置を合わせる。図4は、位置合わせ部32の処理の概要を説明するための図であり、(a)は自車両V1の移動状態を示す平面図、(b)は位置合わせの概要を示す画像である。
図4(a)に示すように、現時刻の自車両V1がP1に位置し、一時刻前の自車両V1がP1’に位置していたとする。また、自車両V1の後側方向に隣接車両V2が位置して自車両V1と並走状態にあり、現時刻の隣接車両V2がP2に位置し、一時刻前の隣接車両V2がP2’に位置していたとする。さらに、自車両V1は、一時刻で距離d移動したものとする。なお、一時刻前とは、現時刻から予め定められた時間(例えば1制御周期)だけ過去の時刻であってもよいし、任意の時間だけ過去の時刻であってもよい。
このような状態において、現時刻における鳥瞰視画像PBtは図4(b)に示すようになる。この鳥瞰視画像PBtでは、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、隣接車両V2(位置P2)については倒れ込みが発生する。また、一時刻前における鳥瞰視画像PBt−1についても同様に、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、隣接車両V2(位置P2’)については倒れ込みが発生する。既述したとおり、立体物の鉛直エッジ(厳密な意味の鉛直エッジ以外にも路面から三次元空間に立ち上がったエッジを含む)は、鳥瞰視画像データへの視点変換処理によって倒れ込み方向に沿った直線群として現れるのに対し、路面上の平面画像は鉛直エッジを含まないので、視点変換してもそのような倒れ込みが生じないからである。
位置合わせ部32は、上記のような鳥瞰視画像PBt,PBt−1の位置合わせをデータ上で実行する。この際、位置合わせ部32は、一時刻前における鳥瞰画像PBt−1をオフセットさせ、現時刻における鳥瞰視画像PBtと位置を一致させる。図4(b)の左側の画像と中央の画像は、移動距離d’だけオフセットした状態を示す。このオフセット量d’は、図4(a)に示した自車両V1の実際の移動距離dに対応する鳥瞰視画像データ上の移動量であり、車速センサ20からの信号と一時刻前から現時刻までの時間に基づいて決定される。
なお、本実施形態において、位置合わせ部32は、異なる時刻の鳥瞰視画像の位置を鳥瞰視上で位置合わせし、その位置合わせされた鳥瞰視画像を得るが、この「位置合わせ」処理は、検出対象の種別や要求される検出精度に応じた精度で行うことができる。たとえば、同一時刻及び同一位置を基準に位置を合わせるといった厳密な位置合わせ処理であってもよいし、各鳥瞰視画像の座標を把握するという程度の緩い位置合わせ処理であってもよい。
また、位置合わせ後において位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の差分をとり、差分画像PDtのデータを生成する。ここで、本実施形態において、位置合わせ部32は、照度環境の変化に対応するために、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化し、当該絶対値が所定の差分閾値th以上であるときに、差分画像PDtの画素値を「1」とし、絶対値が所定の差分閾値th未満であるときに、差分画像PDtの画素値を「0」とすることで、図4(b)の右側に示すような差分画像PDtのデータを生成することができる。なお、本実施形態において、差分閾値thは、後述する閾値変更部39により変更され、閾値変更部39により差分閾値thが変更された場合に、閾値変更部39により変更された差分閾値thを用いて、差分画像PDtの画素値が検出される。
そして、差分波形生成部33は、図4(b)に示す差分画像PDtのデータに基づいて、差分波形を生成する。具体的には、差分波形生成部33は、自車両V1の左右後方に設定された検出領域において、差分波形を生成する。
ここで、本例の立体物検出装置1は、自車両V1が車線変更する際に接触の可能性がある隣接車両V2について移動距離を算出することを目的とするものである。このため、本例では、図2に示すように、自車両V1の左右後方に矩形状の検出領域A1,A2が設定される。なお、このような検出領域A1,A2は、自車両V1に対する相対位置から設定してもよいし、白線の位置を基準に設定してもよい。白線の位置を基準に設定する場合に、立体物検出装置1は、例えば既存の白線認識技術等を利用するとよい。
また、本例では、図2に示すように、設定した検出領域A1,A2の自車両V1側における辺(走行方向に沿う辺)が接地線L1,L2として認識される。一般に接地線は立体物が地面に接触する線を意味するが、本実施形態では地面に接触する線でなく上記の如くに設定される。なおこの場合であっても、経験上、本実施形態に係る接地線と、本来の隣接車両V2の位置から求められる接地線との差は大きくなり過ぎず、実用上は問題が無い。
図5は、差分波形生成部33による差分波形の生成の様子を示す概略図である。図5に示すように、差分波形生成部33は、位置合わせ部32で算出した差分画像PDt(図4(b)の右図)のうち検出領域A1,A2に相当する部分から、差分波形DWtを生成する。この際、差分波形生成部33は、視点変換により立体物が倒れ込む方向に沿って、差分波形DWtを生成する。なお、図5に示す例では、便宜上検出領域A1のみを用いて説明するが、検出領域A2についても同様の手順で差分波形DWtを生成する。
具体的に説明すると、まず差分波形生成部33は、差分画像PDtのデータ上において立体物が倒れ込む方向上の線Laを定義する。そして、差分波形生成部33は、線La上において所定の差分を示す差分画素DPの数をカウントする。本実施形態では、所定の差分を示す差分画素DPは、差分画像PDtの画素値が「0」「1」で表現されており、「1」を示す画素が、差分画素DPとしてカウントされる。
差分波形生成部33は、差分画素DPの数をカウントした後、線Laと接地線L1との交点CPを求める。そして、差分波形生成部33は、交点CPとカウント数とを対応付け、交点CPの位置に基づいて横軸位置、すなわち図5右図の上下方向軸における位置を決定するとともに、カウント数から縦軸位置、すなわち図5右図の左右方向軸における位置を決定し、交点CPにおけるカウント数としてプロットする。
以下同様に、差分波形生成部33は、立体物が倒れ込む方向上の線Lb,Lc…を定義して、差分画素DPの数をカウントし、各交点CPの位置に基づいて横軸位置を決定し、カウント数(差分画素DPの数)から縦軸位置を決定しプロットする。差分波形生成部33は、上記を順次繰り返して度数分布化することで、図5右図に示すように差分波形DWtを生成する。
ここで、差分画像PDtのデータ上における差分画素PDは、異なる時刻の画像において変化があった画素であり、言い換えれば立体物が存在した箇所であるといえる。このため、立体物が存在した箇所において、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントして度数分布化することで差分波形DWtを生成することとなる。特に、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントすることから、立体物に対して高さ方向の情報から差分波形DWtを生成することとなる。
なお、図5左図に示すように、立体物が倒れ込む方向上の線Laと線Lbとは検出領域A1と重複する距離が異なっている。このため、検出領域A1が差分画素DPで満たされているとすると、線Lb上よりも線La上の方が差分画素DPの数が多くなる。このため、差分波形生成部33は、差分画素DPのカウント数から縦軸位置を決定する場合に、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbと検出領域A1とが重複する距離に基づいて正規化する。具体例を挙げると、図5左図において線La上の差分画素DPは6つあり、線Lb上の差分画素DPは5つである。このため、図5においてカウント数から縦軸位置を決定するにあたり、差分波形生成部33は、カウント数を重複距離で除算するなどして正規化する。これにより、差分波形DWtに示すように、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbに対応する差分波形DWtの値はほぼ同じとなっている。
立体物検出部34は、差分波形生成部33により生成された差分波形DWtに基づいて、検出領域A1,A2に存在している立体物の検出を行う。ここで、図6は、立体物検出部34による立体物の検出方法を説明するための図であり、差分波形DWtおよび立体物を検出するための閾値αの一例を示している。立体物検出部34は、図6に示すように、生成した差分波形DWtのピークが、当該差分波形DWtのピーク位置に対応する所定の閾値α以上であるか否かを判断することで、検出領域A1,A2に立体物が存在するか否かを判断する。そして、立体物検出部34は、差分波形DWtのピークが所定の閾値α未満である場合には、検出領域A1,A2に立体物が存在しないと判断し、一方、差分波形DWtのピークが所定の閾値α以上である場合には、検出領域A1,A2に立体物が存在すると判断する。さらに、本実施形態において、立体物検出部34は、後述する差分車速算出部35により検出された立体物の移動速度に基づいて、検出した立体物が、隣接車線に存在する隣接車両V2であるか否かを判断する。
差分車速算出部35は、現時刻における差分波形DWtと一時刻前の差分波形DWt−1との対比により、立体物の移動速度(自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速)を差分車速として算出する。すなわち、差分車速算出部35は、差分波形DWt,DWt−1の時間変化から隣接車両V2の相対車速を差分車速として算出する。
詳細に説明すると、差分車速算出部35は、図7に示すように差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtn(nは2以上の任意の整数)に分割する。図7は、差分車速算出部35によって分割される小領域DWt1〜DWtnを示す図である。小領域DWt1〜DWtnは、例えば図7に示すように、互いに重複するようにして分割される。例えば小領域DWt1と小領域DWt2とは重複し、小領域DWt2と小領域DWt3とは重複する。
次いで、差分車速算出部35は、小領域DWt1〜DWtn毎にオフセット量(差分波形の横軸方向(図7の上下方向)の移動量)を求める。ここで、オフセット量は、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとの差(横軸方向の距離)から求められる。この際、差分車速算出部35は、小領域DWt1〜DWtn毎に、一時刻前における差分波形DWt−1を横軸方向に移動させた際に、現時刻における差分波形DWtとの誤差が最小となる位置(横軸方向の位置)を判定し、差分波形DWt−1の元の位置と誤差が最小となる位置との横軸方向の移動量をオフセット量として求める。そして、差分車速算出部35は、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量をカウントしてヒストグラム化する。
図8は、差分車速算出部35により得られるヒストグラムの一例を示す図である。図8に示すように、各小領域DWt1〜DWtnと一時刻前における差分波形DWt−1との誤差が最小となる移動量であるオフセット量には、多少のバラつきが生じる。このため、差分車速算出部35は、バラつきを含んだオフセット量をヒストグラム化し、ヒストグラムから移動距離を算出する。この際、差分車速算出部35は、ヒストグラムの極大値から立体物(隣接車両V2)の移動距離を算出する。すなわち、図8に示す例において、差分車速算出部35は、ヒストグラムの極大値を示すオフセット量を移動距離τ*と算出する。このように、本実施形態では、オフセット量にバラつきがあったとしても、その極大値から、より正確性の高い移動距離を算出することが可能となる。なお、移動距離τ*は、自車両に対する立体物(隣接車両V2)の相対移動距離である。このため、差分車速算出部35は、絶対移動距離を算出する場合には、得られた移動距離τ*と車速センサ20からの信号とに基づいて、絶対移動距離を算出することとなる。
このように、本実施形態では、異なる時刻に生成された差分波形DWtの誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から立体物(隣接車両V2)の移動距離を算出することで、波形という1次元の情報のオフセット量から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出にあたり計算コストを抑制することができる。また、異なる時刻に生成された差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割することで、立体物のそれぞれの箇所を表わした波形を複数得ることができ、これにより、立体物のそれぞれの箇所毎にオフセット量を求めることができ、複数のオフセット量から移動距離を求めることができるため、移動距離の算出精度を向上させることができる。また、本実施形態では、高さ方向の情報を含む差分波形DWtの時間変化から立体物の移動距離を算出することで、単に1点の移動のみに着目するような場合と比較して、時間変化前の検出箇所と時間変化後の検出箇所とが高さ方向の情報を含んで特定されるため立体物において同じ箇所となり易く、同じ箇所の時間変化から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出精度を向上させることができる。
なお、ヒストグラム化にあたり差分車速算出部35は、複数の小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けをし、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量を重みに応じてカウントしてヒストグラム化してもよい。図9は、差分車速算出部35による重み付けを示す図である。
図9に示すように、小領域DWm(mは1以上n−1以下の整数)は平坦となっている。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が小さくなっている。差分車速算出部35は、このような小領域DWmについて重みを小さくする。平坦な小領域DWmについては、特徴がなくオフセット量の算出にあたり誤差が大きくなる可能性が高いからである。
一方、小領域DWm+k(kはn−m以下の整数)は起伏に富んでいる。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が大きくなっている。差分車速算出部35は、このような小領域DWmについて重みを大きくする。起伏に富む小領域DWm+kについては、特徴的でありオフセット量の算出を正確に行える可能性が高いからである。このように重み付けすることにより、移動距離の算出精度を向上することができる。
なお、移動距離の算出精度を向上するために上記実施形態では差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割したが、移動距離の算出精度がさほど要求されない場合は小領域DWt1〜DWtnに分割しなくてもよい。この場合に、差分車速算出部35は、差分波形DWtと差分波形DWt−1との誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から移動距離を算出することとなる。すなわち、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとのオフセット量を求める方法は上記内容に限定されない。
なお、本実施形態において差分車速算出部35は、自車両V1(カメラ10)の移動速度を求め、求めた移動速度から静止物についてのオフセット量を求める。静止物のオフセット量を求めた後、差分車速算出部35は、ヒストグラムの極大値のうち静止物に該当するオフセット量を無視したうえで、立体物の移動距離を算出する。
図10は、差分車速算出部35により得られるヒストグラムの他の例を示す図である。カメラ10の画角内に立体物の他に静止物が存在する場合に、得られるヒストグラムには2つの極大値τ1,τ2が現れる。この場合、2つの極大値τ1,τ2のうち、いずれか一方は静止物のオフセット量である。このため、差分車速算出部35は、移動速度から静止物についてのオフセット量を求め、そのオフセット量に該当する極大値について無視し、残り一方の極大値を採用して立体物の移動距離を算出する。これにより、静止物により立体物の移動距離の算出精度が低下してしまう事態を防止することができる。
なお、静止物に該当するオフセット量を無視したとしても、極大値が複数存在する場合、カメラ10の画角内に立体物が複数台存在すると想定される。しかし、検出領域A1,A2内に複数の立体物が存在することは極めて稀である。このため、差分車速算出部35は、移動距離の算出を中止する。これにより、本実施形態では、極大値が複数あるような誤った移動距離を算出してしまう事態を防止することができる。
ヘッドライト検出部36は、カメラ10により撮像された撮像画像に基づいて、自車両V1の後方を走行する隣接車両V2のヘッドライトを検出する。具体的には、ヘッドライト検出部36は、撮像画像に基づいて、隣接車両V2のヘッドライトと判断できる光源を検出することで、該光源を、隣接車両V2のヘッドライトとして検出する。本実施形態では、ヘッドライト検出部36は、周辺との明るさの差が所定値以上であり、かつ、所定以上の大きさである画像領域を、隣接車両V2のヘッドライトの候補領域として検出する。さらに、ヘッドライト検出部36は、隣接車両V2のヘッドライトと街灯などの光源とを区別するために、自車両V1から候補領域までの車幅方向における距離や、カメラ10から候補領域までの後方距離などに基づいて、複数の隣接車両V2のヘッドライトの候補領域の中から、隣接車両V2のヘッドライトに対応する画像領域を特定することで、隣接車両V2のヘッドライトを検出する。
ヘッドライト車速算出部37は、ヘッドライト検出部36により検出された隣接車両V2のヘッドライトに基づいて、自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速をヘッドライト車速として算出する。具体的には、ヘッドライト車速算出部37は、異なる時刻に検出された隣接車両V2のヘッドライトの位置の変化に基づいて、所定時間におけるヘッドライトの移動距離を算出し、算出したヘッドライトの移動距離を時間微分することで、隣接車両V2のヘッドライトの相対車速をヘッドライト車速として算出する。
速度差算出部38は、下記の数式1に示すように、ヘッドライト車速算出部37により算出されたヘッドライト車速VELhlと、差分車速算出部35により算出された差分車速VELsaとの差を、自車両V1の車速VELv1で正規化し、正規化したヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、速度差評価値VELdifとして算出する。
さらに、速度差算出部38は、隣接車両V2のヘッドライトが検出される度に、上記の数式1に基づいて、速度差評価値VELdifを繰り返し算出し、所定台数分(たとえば10台分)の隣接車両V2について算出した速度差評価値VELdifに基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する。
閾値変更部39は、レンズに付着した雨滴などの異物や、隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを防止するために、速度差評価値の平均値VELdifaveに基づいて、レンズに雨滴などの異物が付着している度合いを、レンズ状態判定値として算出し、算出したレンズ状態判定値に応じて、差分画像から立体物を検出するための差分閾値thを変更する。
ここで、図11は、レンズに雨滴が付着してる場面において撮像された撮像画像の一例を示す図である。また、図12(A)は、検出領域内に隣接車両V2が存在しているが、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着していない場面で生成された差分波形DWtの一例を示す図であり、図12(B)は、検出領域内に隣接車両V2が存在していないが、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着している場面で生成された差分波形DWtの一例を示す図である。さらに、図12(C)は、図11に示す検出領域A1のように、検出領域内に隣接車両V2が存在しており、かつ、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着している場面で生成された差分波形DWtの一例を示す図である。
たとえば、検出領域内に隣接車両V2が存在しているが、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着していない場面では、図12(A)に示すように、隣接車両V2に起因する差分波形DWtが生成される。一方、検出領域内に隣接車両V2が存在していない場合でも、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着している場合には、図12(B)に示すように、雨滴などの異物に起因する差分波形DWtが生成されてしまう。
そのため、図11に示す検出領域A1のように、検出領域内に隣接車両V2が存在しており、かつ、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着している場合では、図12(C)に示すように、レンズに付着した雨滴などの異物による差分が差分波形DWtに含まれてしまい、隣接車両V2に起因する差分波形DWtを適切に生成できない場合がある。さらに、検出領域内に隣接車両V2が存在しており、かつ、該検出領域に対応する位置に雨滴が付着している場合では、レンズに付着した雨滴などの異物により、隣接車両V2の像が歪んだり、ぼやけてしまい、隣接車両V2の像を適切に撮像することができない場合があり、このような場合に、図12(C)に示すように、隣接車両V2に起因する差分波形DWtを生成することは困難となる。このように、レンズに雨滴などの異物が付着している場合には、隣接車両V2の像の変化による差分が差分波形DWtに反映されず、差分波形DWtに基づいて算出された差分車速と、隣接車両V2の実際の相対車速とに誤差が生じてしまう場合がある。
ここで、図13(A)は、レンズに異物が付着している場合に算出された差分車速と、レンズに異物が付着していない場合に算出された差分車速との一例を示す図である。たとえば、レンズに異物が付着していない場合では、隣接車両V2の像を適切に撮像することができるため、隣接車両V2に起因する差分波形DWtが生成され、差分波形DWtに基づいて、隣接車両V2の相対車速(差分車速)を適切に算出することができる。そのため、図13(A)に示すように、レンズに異物が付着していない場合においては、隣接車両V2の実際の相対車速と差分車速との誤差は小さくなる。これに対して、レンズに雨滴などの異物が付着している場合には、隣接車両V2の像を適切に撮像することができないため、雨滴などの異物により隣接車両V2に起因する差分波形DWtを適切に生成することができず、図13(A)に示すように、差分波形DWtに基づいて、隣接車両V2の相対車速(差分車速)を適切に算出することができない場合がある。そのため、レンズに異物が付着している場合においては、隣接車両V2の実際の相対車速と差分車速との誤差が大きくなってしまう場合がある。
これに対して、輝度の高いヘッドライトの光の像は雨滴などの異物の影響が小さく、レンズに雨滴などの異物が付着している場合でも、隣接車両V2のヘッドライトに基づいて、隣接車両V2の相対車速(ヘッドライト車速)を適切に算出することができる。ここで、図13(B)は、レンズに異物が付着している場合に算出されたヘッドライト車速と、レンズに異物が付着していない場合に算出されたヘッドライト車速との一例を示す図である。図13(B)に示すように、レンズに雨滴などの異物が付着している場合においても、差分車速と比べて、隣接車両V2のヘッドライトに基づいて算出されたヘッドライト車速は、隣接車両V2の実際の相対車速との誤差は小さくなる。
すなわち、レンズに雨滴などの異物が付着していない場合では、図14(A)に示すように、ヘッドライト車速と差分車速との差は小さくなるが、レンズに雨滴などの異物が付着している場合には、差分波形DWtに基づいて算出された差分車速に誤差が生じる場合があり、これにより、図14(B)に示すように、ヘッドライト車速と差分車速との差は大きくなる。本実施形態において、閾値変更部39は、このようなヘッドライト車速と差分車速との差に基づいて、レンズに雨滴などの異物が付着しているか否かを判断する。すなわち、閾値変更部39は、ヘッドライト車速と差分車速との差が大きい場合には、レンズに雨滴などの異物が付着しているものと判断し、一方、ヘッドライト車速と差分車速との差が小さい場合には、レンズに雨滴などの異物が付着していないものと判断する。なお、図14(A)は、レンズに雨滴などの異物が付着していない場合におけるヘッドライト車速と差分車速との一例を示す図であり、図14(B)は、レンズに雨滴などの異物が付着している場合におけるヘッドライト車速と差分車速との一例を示す図である。
より具体的には、閾値変更部39は、図15に示すように、速度差算出部38により算出された、ヘッドライト車速と差分車速との差に基づく速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに雨滴などの異物が付着しており、レンズが汚れているものと判断し、レンズに雨滴などの異物が付着している度合いを示すレンズ状態判定値を高く算出する。なお、図15は、速度差評価値の平均値VELdifaveと、レンズ状態判定値との関係の一例を示す図である。
そして、閾値変更部39は、図16に示すように、レンズ状態判定値が高いほど、レンズに雨滴などの異物が付着しているものと判断し、レンズに付着した雨滴などの異物や、隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを防止するために、立体物(隣接車両V2)を検出するための差分閾値thを高い値に変更する。なお、図16は、レンズ状態判定値と差分閾値thとの関係の一例を示す図である。
なお、閾値変更部39は、レンズ状態判定値を算出する際に、雨天であるか否かを判断し、雨天であると判断された場合には、図15に示すように、レンズに雨滴などの異物が付着していると判定され易くなるように、速度差評価値の平均値VELdifaveとレンズ状態判定値との関係を変更する。これにより、レンズに雨滴などの異物が付着し易い雨天時において、レンズに雨滴などの異物が付着していると判定され易くなり、レンズに雨滴などの異物が付着しているか否かをより適切に判定することができる。なお、雨天であるか否かの判断方法は特に限定されないが、閾値変更部39は、たとえば、雨滴センサやワイパーの動作状況に基づいて、雨天であるか否かを判断することができる。たとえば、閾値変更部39は、雨滴センサに、赤外光をレンズに向けて照射させて、照射した赤外光が雨滴により減衰した減衰量を検出させることで、レンズ表面における雨滴量を検出させることができ、該検出の結果、雨滴量が一定量以上である場合に、雨天であると判断することができる。また、閾値変更部39は、ワイパーの動作強度が一定強度以上である場合に、雨天であると判断することもできる。
また、カメラ10のレンズに付着する異物は、雨滴に限定されず、たとえば、雨滴が乾燥した後の水垢や、泥水なども含まれる。すなわち、閾値変更部39は、レンズに水垢や泥水などの異物が付着している場合も、このような異物による隣接車両V2の誤検出を防止するために、レンズの汚れ度合いをレンズ状態判定値として算出し、算出したレンズ状態判定値に基づいて差分閾値thを変更することができる。なお、閾値変更部39は、たとえば、隣接車両V2のヘッドライトを検出した後に、一定時間以上、隣接車両V2に起因するエッジを一定量以上検出できない場合に、カメラ10のレンズに水垢が付着していると判断することができる。
次に、本実施形態に係る隣接車両検出処理について説明する。図17は、第1実施形態の隣接車両検出処理を示すフローチャートである。図17に示すように、まず、計算機30により、カメラ10から撮像画像のデータの取得が行われ(ステップS101)、視点変換部31により、取得した撮像画像のデータに基づいて、鳥瞰視画像PBtのデータが生成される(ステップS102)。
次いで、位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBtのデータと、一時刻前の鳥瞰視画像PBt−1のデータとを位置合わせをし、差分画像PDtのデータを生成する(ステップS103)。具体的には、位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化し、当該絶対値が所定の差分閾値th以上であるときに、差分画像PDtの画素値を「1」とし、絶対値が所定の差分閾値th未満であるときに、差分画像PDtの画素値を「0」とする。なお、差分画像PDtの画素値を算出するための差分閾値thは、立体物の検出を抑制するために、後述する閾値変更処理において変更される場合があり、差分閾値thが変更された場合には、変更された差分閾値thが、このステップS103で用いられることとなる。その後、差分波形生成部33は、差分画像PDtのデータから、画素値が「1」の差分画素DPの数をカウントして、差分波形DWtを生成する(ステップS104)。
そして、立体物検出部34は、差分波形DWtのピークが所定の閾値α以上であるか否かを判断する(ステップS105)。差分波形DWtのピークが閾値α以上でない場合、すなわち差分が殆どない場合には、撮像画像内には立体物が存在しないと考えられる。このため、差分波形DWtのピークが閾値α以上でないと判断した場合には(ステップS105=No)、立体物検出部34は、立体物が存在せず隣接車両V2が存在しないと判断する(ステップS114)。そして、ステップS101に戻り、図17に示す処理を繰り返す。
一方、差分波形DWtのピークが閾値α以上であると判断した場合には(ステップS105=Yes)、立体物検出部34により、隣接車線に立体物が存在すると判断され、ステップS106に進み、差分車速算出部35により、差分波形DWtが、複数の小領域DWt1〜DWtnに分割される。次いで、差分車速算出部35は、小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けを行い(ステップS107)、小領域DWt1〜DWtn毎のオフセット量を算出し(ステップS108)、重みを加味してヒストグラムを生成する(ステップS109)。
そして、差分車速算出部35は、ヒストグラムに基づいて自車両V1に対する立体物の移動距離である相対移動距離を算出する(ステップS110)。次に、差分車速算出部35は、相対移動距離から立体物の絶対移動速度を算出する(ステップS111)。このとき、差分車速算出部35は、相対移動距離を時間微分して相対移動速度を算出するとともに、車速センサ20で検出された自車速を加算して、絶対移動速度を算出する。
その後、立体物検出部34は、立体物の絶対移動速度が10km/h以上、且つ、自車両V1に対する立体物の相対移動速度が+60km/h以下であるか否かを判断する(ステップS112)。双方を満たす場合には(ステップS112=Yes)、立体物検出部34は、検出した立体物は隣接車線に存在する隣接車両V2であり、隣接車線に隣接車両V2が存在すると判断する(ステップS113)。そして、図17に示す処理を終了する。一方、いずれか一方でも満たさない場合には(ステップS112=No)、立体物検出部34は、隣接車線に隣接車両V2が存在しないと判断する(ステップS114)。そして、ステップS101に戻り、図17に示す処理を繰り返す。
なお、本実施形態では自車両V1の左右後方を検出領域A1,A2とし、自車両V1が車線変更した場合に接触する可能性があるか否かに重点を置いている。このため、ステップS112の処理が実行されている。すなわち、本実施形態にけるシステムを高速道路で作動させることを前提とすると、隣接車両V2の速度が10km/h未満である場合、たとえ隣接車両V2が存在したとしても、車線変更する際には自車両V1の遠く後方に位置するため問題となることが少ない。同様に、隣接車両V2の自車両V1に対する相対移動速度が+60km/hを超える場合(すなわち、隣接車両V2が自車両V1の速度よりも60km/hより大きな速度で移動している場合)、車線変更する際には自車両V1の前方に移動しているため問題となることが少ない。このため、ステップS112では車線変更の際に問題となる隣接車両V2を判断しているともいえる。
また、ステップS112において隣接車両V2の絶対移動速度が10km/h以上、且つ、隣接車両V2の自車両V1に対する相対移動速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、以下の効果がある。例えば、カメラ10の取り付け誤差によっては、静止物の絶対移動速度を数km/hであると検出してしまう場合があり得る。よって、10km/h以上であるかを判断することにより、静止物を隣接車両V2であると判断してしまう可能性を低減することができる。また、ノイズによっては隣接車両V2の自車両V1に対する相対速度を+60km/hを超える速度に検出してしまうことがあり得る。よって、相対速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、ノイズによる誤検出の可能性を低減できる。
さらに、ステップS112の処理に代えて、隣接車両V2の絶対移動速度がマイナスでないことや、0km/hでないことを判断してもよい。また、本実施形態では自車両V1が車線変更した場合に接触する可能性がある否かに重点を置いているため、ステップS113において隣接車両V2が検出された場合に、自車両の運転者に警告音を発したり、所定の表示装置により警告相当の表示を行ったりしてもよい。
次に、図18を参照して、第1実施形態に係る閾値変更処理について説明する。図18は、第1実施形態に係る閾値変更処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する閾値変更処理は、図17に示す隣接車両検出処理と並行して行われ、この閾値変更処理により設定された差分閾値thが、図17に示す隣接車両検出処理における差分閾値thとして適用されることとなる。
図18に示すように、まず、ステップS201では、ヘッドライト検出部36により、隣接車両V2のヘッドライトの検出が行われる。具体的には、ヘッドライト検出部36は、周辺との明るさの差が所定値以上であり、かつ、所定以上の大きさである画像領域を、隣接車両V2のヘッドライトの光源に対応する候補領域として検出する。さらに、ヘッドライト検出部36は、隣接車両V2のヘッドライトと、街灯などの光源とを区別するために、自車両V1から候補領域までの車幅方向における距離や、カメラ10から候補領域までの後方距離に基づいて、複数の候補領域の中から、隣接車両V2のヘッドライトに対応する画像領域を特定することで、隣接車両V2のヘッドライトを検出する。
そして、ステップS202では、閾値変更部39により、ステップS201で隣接車両V2のヘッドライトが検出されたか否かの判断が行われる。隣接車両V2のヘッドライトが検出された場合には、ステップS203に進み、隣接車両V2のヘッドライトが検出されなかった場合には、ステップS201に戻り、再度、隣接車両V2のヘッドライトの検出が繰り返される。
ステップS203では、ヘッドライト車速算出部37により、隣接車両V2のヘッドライト車速の算出が行われる。たとえば、ヘッドライト車速算出部37は、ステップS201で検出された隣接車両V2のヘッドライトの位置の変化に基づいて、所定時間におけるヘッドライトの移動距離を、隣接車両V2の移動距離として算出し、算出した隣接車両V2の移動距離を時間微分することで、自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速をヘッドライト車速VELhlとして算出する。
続くステップS204では、速度差算出部38により、差分車速の取得が行われる。たとえば、速度差算出部38は、図17に示す隣接車両検出処理において算出された差分車速を、差分車速算出部35から取得する。
そして、ステップS205では、速度差算出部38により、上記の数式1に従って、ステップS203で算出したヘッドライト車速VELhlと、ステップS204で取得した差分車速VELsaとに基づいて、速度差評価値VELdifの算出が行われる。具体的には、速度差算出部38は、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、自車両V1の車速VELv1で正規化し、正規化したヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、速度差評価値VELdifとして算出する。なお、ステップS205で算出された速度差評価値VELdifは、計算機30のメモリ(不図示)に記憶される。
ステップS206では、速度差算出部38により、ステップS205で算出された速度差評価値の平均値VELdifaveが算出される。本実施形態では、隣接車両V2のヘッドライトが検出される度に、ステップS205の速度差評価値VELdifが算出され、算出された速度差評価値VELdifが、計算機30のメモリ(不図示)に記憶される。このステップS206において、速度差算出部38は、メモリに記憶された所定台数分(たとえば10台分)の速度差評価値VELdifaveに基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する。
ステップS207では、閾値変更部39により、ステップS206で算出された速度差評価値の平均値VELdifaveに基づいて、レンズに付着した雨滴などの異物によるレンズの汚れの度合いが、レンズ状態判定値として算出される。具体的には、閾値変更部39は、図15に示すように、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差に基づく速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに雨滴などの異物が付着しているものと判断し、レンズ状態判定値を高く算出する。また、閾値変更部39は、雨天であるか否かを判断し、雨天であると判断された場合には、図15に示すように、レンズ状態判定値が高く算出されるように、速度差評価値の平均値VELdifaveとレンズ状態判定値との関係を変更する。
ステップS208では、閾値変更部39により、ステップS207で算出されたレンズ状態判定値に基づいて、差分閾値thを変更する処理が行われる。具体的には、閾値変更部39は、図16に示すように、レンズ状態判定値が高いほど、レンズに雨滴などの異物が付着してレンズが汚れており、隣接車両V2の誤検出が起こり易いものと判断して、立体物(隣接車両V2)を検出するための差分閾値thを高い値に変更する。これにより、レンズ状態判定値が高く、レンズが汚れている場合には、図17に示す隣接車両検出処理において、変更された差分閾値thを用いて立体物の検出が行われるため、立体物の検出が抑制されることとなり、その結果、雨滴などの異物や、隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを有効に防止することができる。
なお、本実施形態は、レンズにおける雨滴などの異物の付着により、差分波形DWtに基づいて、自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速を算出することが困難であることに鑑みて、隣接車両V2のヘッドライトを検出し、隣接車両V2のヘッドライトに基づいて、隣接車両V2の相対車速を推定するものである。そのため、図18に示す閾値変更処理を、隣接車両V2がヘッドライトを点灯する条件下、たとえば、夜間のみに行う構成とすることができる。これにより、昼間において、隣接車両V2を検出する際の演算負荷を軽減することができる。なお、閾値変更部39は、たとえば、カメラ10により撮像した撮像画像全体の輝度が所定値以下である場合に、夜間であると判断することができる。また、閾値変更部39は、照度計や時刻に基づいて、夜間であるか否かを判断することもできる。
また、上述した閾値変更処理を、レンズに雨滴などの異物が付着する可能性の高い雨天時のみに行う構成とすることもできる。この場合、閾値変更部39は、上述したように、雨滴センサの検出結果やワイパーの動作状況に基づいて、雨天時であるか否かを判断することができる。
以上のように、第1実施形態では、差分波形DWtに基づいて、隣接車両V2の相対車速を差分車速VELsaとして算出するとともに、隣接車両V2のヘッドライトを検出し、隣接車両V2のヘッドライトに基づいて、隣接車両V2の相対速度をヘッドライト車速VELhlとして算出する。そして、差分車速VELsaとヘッドライト車速EVLhlとの差に基づいて、速度差評価値VELdifを算出し、算出した速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに付着した雨滴などの異物によるレンズの汚れの度合い(レンズ状態判定値)が高いものと判断して、立体物を検出するための差分閾値thを高い値に変更する。これにより、第1実施形態では、レンズに雨滴などの異物が付着している場合でも、レンズに付着した雨滴などの異物や、隣接車線に存在する隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを有効に防止することができる。
また、本実施形態では、上記の数1に示すように、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を正規化して、速度差評価値VELdifを算出することで、隣接車両V2の相対車速にかかわらず、レンズの汚れ度合い(レンズ状態判定値)を適切に判定することができる。また、本実施形態では、所定台数分の速度差評価値の平均値を求め、該速度差評価値の平均値に基づいてレンズ状態判定値を算出することで、レンズの汚れ度合い(レンズ状態判定値)をより適切に判定することができる。
《第2実施形態》
続いて、第2実施形態に係る立体物検出装置1aについて説明する。第2実施形態に係る立体物検出装置1aは、図19に示すように、第1実施形態の計算機30に代えて、計算機30aを備えており、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。ここで、図19は、第2実施形態に係る計算機30aの詳細を示すブロック図である。
第2実施形態に係る立体物検出装置1aは、図19に示すように、カメラ10と計算機30aとを備えており、計算機30aは、視点変換部31、輝度差算出部40、エッジ線検出部41、エッジ波形生成部42、エッジ車速算出部43、立体物検出部34a、ヘッドライト検出部36、ヘッドライト車速算出部37、速度差算出部38a、および閾値変更部39aから構成されている。以下に、第2実施形態に係る立体物検出装置1aの各構成について説明する。なお、視点変換部31、ヘッドライト検出部36、ヘッドライト車速算出部37については、第1実施形態と同様の構成であるため、その説明は省略する。
図20は、図19のカメラ10の撮像範囲等を示す図であり、図20(a)は平面図、図20(b)は、自車両V1から後側方における実空間上の斜視図を示す。図20(a)に示すように、カメラ10は所定の画角aとされ、この所定の画角aに含まれる自車両V1から後側方を撮像する。カメラ10の画角aは、図2に示す場合と同様に、カメラ10の撮像範囲に自車両V1が走行する車線に加えて、隣接する車線も含まれるように設定されている。
本例の検出領域A1,A2は、平面視(鳥瞰視された状態)において台形状とされ、これら検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状は、距離d1〜d4に基づいて決定される。なお、同図に示す例の検出領域A1,A2は台形状に限らず、図2に示すように鳥瞰視された状態で矩形など他の形状であってもよい。
ここで、距離d1は、自車両V1から接地線L1,L2までの距離である。接地線L1,L2は、自車両V1が走行する車線に隣接する車線に存在する立体物が地面に接触する線を意味する。本実施形態においては、自車両V1の後側方において自車両V1の車線に隣接する左右の車線を走行する隣接車両V2等(2輪車等を含む)を検出することが目的である。このため、自車両V1から白線Wまでの距離d11及び白線Wから隣接車両V2が走行すると予測される位置までの距離d12から、隣接車両V2の接地線L1,L2となる位置である距離d1を略固定的に決定しておくことができる。
また、距離d1については、固定的に決定されている場合に限らず、可変としてもよい。この場合に、計算機30aは、白線認識等の技術により自車両V1に対する白線Wの位置を認識し、認識した白線Wの位置に基づいて距離d11を決定する。これにより、距離d1は、決定された距離d11を用いて可変的に設定される。以下の本実施形態においては、隣接車両V2が走行する位置(白線Wからの距離d12)及び自車両V1が走行する位置(白線Wからの距離d11)は大凡決まっていることから、距離d1は固定的に決定されているものとする。
距離d2は、自車両V1の後端部から車両進行方向に伸びる距離である。この距離d2は、検出領域A1,A2が少なくともカメラ10の画角a内に収まるように決定されている。特に本実施形態において、距離d2は、画角aに区分される範囲に接するよう設定されている。距離d3は、検出領域A1,A2の車両進行方向における長さを示す距離である。この距離d3は、検出対象となる立体物の大きさに基づいて決定される。本実施形態においては、検出対象が隣接車両V2等であるため、距離d3は、隣接車両V2を含む長さに設定される。
距離d4は、図20(b)に示すように、実空間において隣接車両V2等のタイヤを含むように設定された高さを示す距離である。距離d4は、鳥瞰視画像においては図20(a)に示す長さとされる。なお、距離d4は、鳥瞰視画像において左右の隣接車線よりも更に隣接する車線(すなわち2車線隣りの隣隣接車線)を含まない長さとすることもできる。自車両V1の車線から2車線隣の車線を含んでしまうと、自車両V1が走行している車線である自車線の左右の隣接車線に隣接車両V2が存在するのか、2車線隣りの隣隣接車線に隣隣接車両が存在するのかについて、区別が付かなくなってしまうためである。
以上のように、距離d1〜距離d4が決定され、これにより検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状が決定される。具体的に説明すると、距離d1により、台形をなす検出領域A1,A2の上辺b1の位置が決定される。距離d2により、上辺b1の始点位置C1が決定される。距離d3により、上辺b1の終点位置C2が決定される。カメラ10から始点位置C1に向かって伸びる直線L3により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b2が決定される。同様に、カメラ10から終点位置C2に向かって伸びる直線L4により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b3が決定される。距離d4により、台形をなす検出領域A1,A2の下辺b4の位置が決定される。このように、各辺b1〜b4により囲まれる領域が検出領域A1,A2とされる。この検出領域A1,A2は、図20(b)に示すように、自車両V1から後側方における実空間上では真四角(長方形)となる。
輝度差算出部40は、鳥瞰視画像に含まれる立体物のエッジを検出するために、視点変換部31により視点変換された鳥瞰視画像データに対して、輝度差の算出を行う。輝度差算出部40は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置ごとに、当該各位置の近傍の2つの画素間の輝度差を算出する。輝度差算出部40は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線を1本だけ設定する手法と、鉛直仮想線を2本設定する手法との何れかによって輝度差を算出することができる。
ここでは、鉛直仮想線を2本設定する具体的な手法について説明する。輝度差算出部40は、視点変換された鳥瞰視画像に対して、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第1鉛直仮想線と、第1鉛直仮想線と異なり実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第2鉛直仮想線とを設定する。輝度差算出部40は、第1鉛直仮想線上の点と第2鉛直仮想線上の点との輝度差を、第1鉛直仮想線及び第2鉛直仮想線に沿って連続的に求める。以下、この輝度差算出部40の動作について詳細に説明する。
輝度差算出部40は、図21(a)に示すように、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第1鉛直仮想線La(以下、注目線Laという)を設定する。また輝度差算出部40は、注目線Laと異なり、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第2鉛直仮想線Lr(以下、参照線Lrという)を設定する。ここで参照線Lrは、実空間における所定距離だけ注目線Laから離間する位置に設定される。なお、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する線とは、鳥瞰視画像においてはカメラ10の位置Psから放射状に広がる線となる。この放射状に広がる線は、鳥瞰視に変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿う線である。
輝度差算出部40は、注目線La上に注目点Pa(第1鉛直仮想線上の点)を設定する。また輝度差算出部40は、参照線Lr上に参照点Pr(第2鉛直板想線上の点)を設定する。これら注目線La、注目点Pa、参照線Lr、参照点Prは、実空間上において図21(b)に示す関係となる。図21(b)から明らかなように、注目線La及び参照線Lrは、実空間上において鉛直方向に伸びた線であり、注目点Paと参照点Prとは、実空間上において略同じ高さに設定される点である。なお、注目点Paと参照点Prとは必ずしも厳密に同じ高さである必要はなく、注目点Paと参照点Prとが同じ高さとみなせる程度の誤差は許容される。
輝度差算出部40は、注目点Paと参照点Prとの輝度差を求める。仮に、注目点Paと参照点Prとの輝度差が大きいと、注目点Paと参照点Prとの間にエッジが存在すると考えられる。特に、第2実施形態では、検出領域A1,A2に存在する立体物を検出するために、鳥瞰視画像に対して実空間において鉛直方向に伸びる線分として鉛直仮想線を設定しているため、注目線Laと参照線Lrとの輝度差が高い場合には、注目線Laの設定箇所に立体物のエッジがある可能性が高い。このため、図19に示すエッジ線検出部41は、注目点Paと参照点Prとの輝度差に基づいてエッジ線を検出する。
この点をより詳細に説明する。図22は、輝度差算出部40の詳細動作を示す図であり、図22(a)は鳥瞰視された状態の鳥瞰視画像を示し、図22(b)は、図22(a)に示した鳥瞰視画像の一部B1を拡大した図である。なお図22についても検出領域A1のみを図示して説明するが、検出領域A2についても同様の手順で輝度差を算出する。
カメラ10が撮像した撮像画像内に隣接車両V2が映っていた場合に、図22(a)に示すように、鳥瞰視画像内の検出領域A1に隣接車両V2が現れる。図22(b)に図22(a)中の領域B1の拡大図を示すように、鳥瞰視画像上において、隣接車両V2のタイヤのゴム部分上に注目線Laが設定されていたとする。この状態において、輝度差算出部40は、先ず参照線Lrを設定する。参照線Lrは、注目線Laから実空間上において所定の距離だけ離れた位置に、鉛直方向に沿って設定される。具体的には、本実施形態に係る立体物検出装置1aにおいて、参照線Lrは、注目線Laから実空間上において10cmだけ離れた位置に設定される。これにより、参照線Lrは、鳥瞰視画像上において、例えば隣接車両V2のタイヤのゴムから10cm相当だけ離れた隣接車両V2のタイヤのホイール上に設定される。
次に、輝度差算出部40は、注目線La上に複数の注目点Pa1〜PaNを設定する。図22(b)においては、説明の便宜上、6つの注目点Pa1〜Pa6(以下、任意の点を示す場合には単に注目点Paiという)を設定している。なお、注目線La上に設定する注目点Paの数は任意でよい。以下の説明では、N個の注目点Paが注目線La上に設定されたものとして説明する。
次に、輝度差算出部40は、実空間上において各注目点Pa1〜PaNと同じ高さとなるように各参照点Pr1〜PrNを設定する。そして、輝度差算出部40は、同じ高さ同士の注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。これにより、輝度差算出部40は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置(1〜N)ごとに、2つの画素の輝度差を算出する。輝度差算出部40は、例えば第1注目点Pa1とは、第1参照点Pr1との間で輝度差を算出し、第2注目点Pa2とは、第2参照点Pr2との間で輝度差を算出することとなる。これにより、輝度差算出部40は、注目線La及び参照線Lrに沿って、連続的に輝度差を求める。すなわち、輝度差算出部40は、第3〜第N注目点Pa3〜PaNと第3〜第N参照点Pr3〜PrNとの輝度差を順次求めていくこととなる。
輝度差算出部40は、検出領域A1内において注目線Laをずらしながら、上記の参照線Lrの設定、注目点Pa及び参照点Prの設定、輝度差の算出といった処理を繰り返し実行する。すなわち、輝度差算出部40は、注目線La及び参照線Lrのそれぞれを、実空間上において接地線L1の延在方向に同一距離だけ位置を変えながら上記の処理を繰り返し実行する。輝度差算出部40は、例えば、前回処理において参照線Lrとなっていた線を注目線Laに設定し、この注目線Laに対して参照線Lrを設定して、順次輝度差を求めていくことになる。
このように、第2実施形態では、実空間上で略同じ高さとなる注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとから輝度差を求めることで、鉛直方向に伸びるエッジが存在する場合における輝度差を明確に検出することができる。また、実空間において鉛直方向に伸びる鉛直仮想線同士の輝度比較を行うために、鳥瞰視画像に変換することによって立体物が路面からの高さに応じて引き伸ばされてしまっても、立体物の検出処理が影響されることはなく、立体物の検出精度を向上させることができる。
図19に戻り、エッジ線検出部41は、輝度差算出部40により算出された連続的な輝度差から、エッジ線を検出する。例えば、図22(b)に示す場合、第1注目点Pa1と第1参照点Pr1とは、同じタイヤ部分に位置するために、輝度差は、小さい。一方、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6はタイヤのゴム部分に位置し、第2〜第6参照点Pr2〜Pr6はタイヤのホイール部分に位置する。したがって、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との輝度差は大きくなる。このため、エッジ線検出部41は、輝度差が大きい第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との間にエッジ線が存在することを検出することができる。
具体的には、エッジ線検出部41は、エッジ線を検出するにあたり、先ず下記式1に従って、i番目の注目点Pai(座標(xi,yi))とi番目の参照点Pri(座標(xi’,yi’))との輝度差から、i番目の注目点Paiに属性付けを行う。
[式1]
I(xi,yi)>I(xi’,yi’)+tのとき
s(xi,yi)=1
I(xi,yi)<I(xi’,yi’)−tのとき
s(xi,yi)=−1
上記以外のとき
s(xi,yi)=0
上記式1において、tはエッジ閾値を示し、I(xi,yi)はi番目の注目点Paiの輝度値を示し、I(xi’,yi’)はi番目の参照点Priの輝度値を示す。上記数式1によれば、注目点Paiの輝度値が、参照点Priに閾値tを加えた輝度値よりも高い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘1’となる。一方、注目点Paiの輝度値が、参照点Priから輝度閾値tを減じた輝度値よりも低い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘−1’となる。注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値とがそれ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘0’となる。なお、本実施形態において、エッジ閾値tは、後述する閾値変更部39aにより変更される場合があり、閾値変更部39aによりエッジ閾値tが変更された場合には、閾値変更部39aにより変更されたエッジ閾値tを用いて、注目点Paiの属性s(xi,yi)が検出される。
次にエッジ線検出部41は、下記式2に基づいて、注目線Laに沿った属性sの連続性c(xi,yi)から、注目線Laがエッジ線であるか否かを判定する。
[式2]
s(xi,yi)=s(xi+1,yi+1)のとき(且つ0=0を除く)、
c(xi,yi)=1
上記以外のとき、
c(xi,yi)=0
注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じである場合には、連続性c(xi,yi)は‘1’となる。注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じではない場合には、連続性c(xi,yi)は‘0’となる。
次にエッジ線検出部41は、注目線La上の全ての注目点Paの連続性cについて総和を求める。エッジ線検出部41は、求めた連続性cの総和を注目点Paの数Nで割ることにより、連続性cを正規化する。そして、エッジ線検出部41は、正規化した値が閾値θを超えた場合に、注目線Laをエッジ線と判断する。なお、閾値θは、予め実験等によって設定された値である。
すなわち、エッジ線検出部41は、下記式3に基づいて注目線Laがエッジ線であるか否かを判断する。そして、エッジ線検出部41は、検出領域A1上に描かれた注目線Laの全てについてエッジ線であるか否かを判断する。
[式3]
Σc(xi,yi)/N>θ
このように、第2実施形態では、注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとの輝度差に基づいて注目点Paに属性付けを行い、注目線Laに沿った属性の連続性cに基づいて当該注目線Laがエッジ線であるかを判断するので、輝度の高い領域と輝度の低い領域との境界をエッジ線として検出し、人間の自然な感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。この効果について詳細に説明する。図23は、エッジ線検出部41の処理を説明する画像例を示す図である。この画像例は、輝度の高い領域と輝度の低い領域とが繰り返される縞模様を示す第1縞模様101と、輝度の低い領域と輝度の高い領域とが繰り返される縞模様を示す第2縞模様102とが隣接した画像である。また、この画像例は、第1縞模様101の輝度が高い領域と第2縞模様102の輝度の低い領域とが隣接すると共に、第1縞模様101の輝度が低い領域と第2縞模様102の輝度が高い領域とが隣接している。この第1縞模様101と第2縞模様102との境界に位置する部位103は、人間の感覚によってはエッジとは知覚されない傾向にある。
これに対し、輝度の低い領域と輝度が高い領域とが隣接しているために、輝度差のみでエッジを検出すると、当該部位103はエッジとして認識されてしまう。しかし、エッジ線検出部41は、部位103における輝度差に加えて、当該輝度差の属性に連続性がある場合にのみ部位103をエッジ線として判定するので、エッジ線検出部41は、人間の感覚としてエッジ線として認識しない部位103をエッジ線として認識してしまう誤判定を抑制でき、人間の感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。
図19に戻り、立体物検出部34aは、エッジ線検出部41により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。上述したように、本実施形態に係る立体物検出装置1aは、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出する。鉛直方向に伸びるエッジ線が多く検出されるということは、検出領域A1,A2に立体物が存在する可能性が高いということである。このため、立体物検出部34aは、エッジ線検出部41により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。具体的には、立体物検出部34aは、エッジ線検出部41により検出されたエッジ線の量が、所定の閾値β以上であるか否かを判断し、エッジ線の量が所定の閾値β以上である場合には、エッジ線検出部41により検出されたエッジ線は、立体物のエッジ線であるものと判断する。
さらに、立体物検出部34aは、立体物を検出するに先立って、エッジ線検出部41により検出されたエッジ線が正しいものであるか否かを判定する。立体物検出部34aは、エッジ線上の鳥瞰視画像のエッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb以上である否かを判定する。エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値tb以上である場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものと判断する。一方、エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値tb未満である場合には、当該エッジ線が正しいものと判定する。なお、この閾値tbは、実験等により予め設定された値である。
図24は、エッジ線の輝度分布を示す図であり、図24(a)は検出領域A1に立体物としての隣接車両V2が存在した場合のエッジ線及び輝度分布を示し、図24(b)は検出領域A1に立体物が存在しない場合のエッジ線及び輝度分布を示す。
図24(a)に示すように、鳥瞰視画像において隣接車両V2のタイヤゴム部分に設定された注目線Laがエッジ線であると判断されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化はなだらかなものとなる。これは、カメラ10により撮像された画像が鳥瞰視画像に視点変換されたことにより、隣接車両のタイヤが鳥瞰視画像内で引き延ばされたことによる。一方、図24(b)に示すように、鳥瞰視画像において路面に描かれた「50」という白色文字部分に設定された注目線Laがエッジ線であると誤判定されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化は起伏の大きいものとなる。これは、エッジ線上に、白色文字における輝度が高い部分と、路面等の輝度が低い部分とが混在しているからである。
以上のような注目線La上の輝度分布の相違に基づいて、立体物検出部34aは、エッジ線が誤判定により検出されたものか否かを判定する。たとえば、カメラ10により取得された撮像画像を鳥瞰視画像に変換した場合、当該撮像画像に含まれる立体物は、引き伸ばされた状態で鳥瞰視画像に現れる傾向がある。上述したように、隣接車両V2のタイヤが引き伸ばされた場合に、タイヤという1つの部位が引き伸ばされるため、引き伸ばされた方向における鳥瞰視画像の輝度変化は小さい傾向となる。これに対し、路面に描かれた文字等をエッジ線として誤判定した場合に、鳥瞰視画像には、文字部分といった輝度が高い領域と路面部分といった輝度が低い領域とが混合されて含まれる。この場合に、鳥瞰視画像において、引き伸ばされた方向の輝度変化は大きくなる傾向がある。そのため、立体物検出部34aは、エッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb以上である場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものであり、当該エッジ線は、立体物に起因するものではないと判断する。これにより、路面上の「50」といった白色文字や路肩の雑草等がエッジ線として判定されてしまい、立体物の検出精度が低下することを抑制する。一方、立体物検出部34aは、エッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb未満である場合には、当該エッジ線は、立体物のエッジ線であると判断し、立体物が存在するものと判断する。
具体的には、立体物検出部34aは、下記式4,5の何れかにより、エッジ線の輝度変化を算出する。このエッジ線の輝度変化は、実空間上における鉛直方向の評価値に相当する。下記式4は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の二乗の合計値によって輝度分布を評価する。下記式5は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の絶対値の合計値よって輝度分布を評価する。
[式4]
鉛直相当方向の評価値=Σ[{I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)}2]
[式5]
鉛直相当方向の評価値=Σ|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|
なお、上記式5に限らず、下記式6のように、閾値t2を用いて隣接する輝度値の属性bを二値化して、当該二値化した属性bを全ての注目点Paについて総和してもよい。
[式6]
鉛直相当方向の評価値=Σb(xi,yi)
但し、|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|>t2のとき、
b(xi,yi)=1
上記以外のとき、
b(xi,yi)=0
注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値との輝度差の絶対値が閾値t2よりも大きい場合、当該注目点Pa(xi,yi)の属性b(xi,yi)は‘1’となる。それ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性b(xi,yi)は‘0’となる。この閾値t2は、注目線Laが同じ立体物上にないことを判定するために実験等によって予め設定されている。そして、立体物検出部34aは、注目線La上の全注目点Paについての属性bを総和して、鉛直相当方向の評価値を求めることで、エッジ線が立体物に起因するものであり、立体物が存在するか否かを判定する。
図19に戻り、エッジ波形生成部42は、検出領域A1,A2に相当する部分から検出されたエッジ線に基づいて、一次元のエッジ波形EWtを生成する。たとえば、エッジ波形生成部42は、第1実施形態における差分波形DWtの生成と同様に、エッジ線に対応する画素数を、視点変換により立体物が倒れ込む方向に沿ってカウントして度数分布化することで、一次元のエッジ波形EDtを生成することができる。
エッジ車速算出部43は、第1実施形態の差分車速算出部35と同様に、現在の時刻におけるエッジ波形EWtと一時刻前のエッジ波形EWt−1とに基づいて、立体物の移動速度(自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速)をエッジ車速として算出する。すなわち、エッジ車速算出部43は、エッジ波形EWt,EWt−1の時間変化から、所定時間における立体物の移動距離を算出し、算出した立体物の移動距離を時間微分することで、自車両V1に対する立体物の相対移動速度(自車両V1に対する隣接車両V2の相対車速)をエッジ車速として算出する。
速度差算出部38aは、下記の数式2に示すように、ヘッドライト車速算出部37により算出されたヘッドライト車速VELhlと、エッジ車速算出部43により算出されたエッジ車速VELedとの差を、自車両V1の車速VELv1で正規化し、正規化したヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの差を、速度差評価値VELdifとして算出する。
また、速度差算出部38aは、隣接車両V2のヘッドライトが検出される度に、上記の数式2に基づいて、速度差評価値VELdifを繰り返し算出することで、所定台数分の隣接車両V2について算出した速度差評価値VELdifに基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する。
閾値変更部39aは、速度差算出部38aにより算出された速度差評価値の平均値VELdifaveに基づいて、レンズに雨滴などの異物が付着している度合いをレンズ状態判定値として算出し、算出したレンズ状態判定値に基づいて、立体物を検出するためのエッジ閾値tを変更する。具体的には、閾値変更部39aは、第1実施形態と同様に、速度差評価値の平均値VELdifaveが高いほど、レンズに雨滴などの異物が付着しているものと判断し、レンズ状態判定値を高く算出する。そして、閾値変更部39aは、隣接車両V2の誤検出を防止するために、レンズ状態判定値が高いほど、隣接車両V2を検出するためのエッジ閾値tを高い値に変更する。
次に、第2実施形態に係る隣接車両検出方法について説明する。図25は、第2実施形態に係る隣接車両検出方法の詳細を示すフローチャートである。なお、図25においては、便宜上、検出領域A1を対象とする処理について説明するが、検出領域A2についても同様の処理が実行される。
ステップS301では、カメラ10により、画角a及び取付位置によって特定された所定領域の撮像が行われ、計算機30aにより、カメラ10により撮像された撮像画像Pの画像データが取得される。次に視点変換部31は、ステップS302において、取得した画像データについて視点変換を行い、鳥瞰視画像データを生成する。
次に輝度差算出部40は、ステップS303において、検出領域A1上に注目線Laを設定する。このとき、輝度差算出部40は、実空間上において鉛直方向に伸びる線に相当する線を注目線Laとして設定する。次に輝度差算出部40は、ステップS304において、検出領域A1上に参照線Lrを設定する。このとき、輝度差算出部40は、実空間上において鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、注目線Laと実空間上において所定距離離れた線を参照線Lrとして設定する。
次に輝度差算出部40は、ステップS305において、注目線La上に複数の注目点Paを設定する。この際に、輝度差算出部40は、エッジ線検出部41によるエッジ検出時に問題とならない程度の数の注目点Paを設定する。また、輝度差算出部40は、ステップS306において、実空間上において注目点Paと参照点Prとが略同じ高さとなるように、参照点Prを設定する。これにより、注目点Paと参照点Prとが略水平方向に並ぶこととなり、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出しやすくなる。
次に輝度差算出部40は、ステップS307において、実空間上において同じ高さとなる注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。そして、エッジ線検出部41は、輝度差算出部40により算出された輝度差に基づいて、上記式1に従って、各注目点Paの属性sを算出する。なお、本実施形態では、隣接車両V2のエッジを検出するためのエッジ閾値tを用いて、各注目点Paの属性sが算出される。このエッジ閾値tは、立体物の検出を抑制するために、後述する閾値変更処理において変更される場合があり、エッジ閾値tが変更された場合には、変更されたエッジ閾値が、このステップS307で用いられることとなる。
次にエッジ線検出部41は、ステップS308において、上記式2に従って、各注目点Paの属性sの連続性cを算出する。そして、エッジ線検出部41は、ステップS309において、上記式3に従って、連続性cの総和を正規化した値が閾値θより大きいか否かを判定する。そして、正規化した値が閾値θよりも大きいと判断した場合(ステップS309=Yes)、エッジ線検出部41は、ステップS310において、当該注目線Laをエッジ線として検出する。そして、処理はステップS311に移行する。正規化した値が閾値θより大きくないと判断した場合(ステップS309=No)、エッジ線検出部41は、当該注目線Laをエッジ線として検出せず、処理はステップS311に移行する。
ステップS311において、計算機30aは、検出領域A1上に設定可能な注目線Laの全てについて上記のステップS303〜ステップS310の処理を実行したか否かを判断する。全ての注目線Laについて上記処理をしていないと判断した場合(ステップS311=No)、ステップS303に処理を戻して、新たに注目線Laを設定して、ステップS311までの処理を繰り返す。一方、全ての注目線Laについて上記処理をしたと判断した場合(ステップS311=Yes)、処理はステップS312に移行する。
ステップS312において、立体物検出部34aは、ステップS310において検出された各エッジ線について、当該エッジ線に沿った輝度変化を算出する。立体物検出部34aは、上記式4,5,6の何れかの式に従って、エッジ線の輝度変化を算出する。次に立体物検出部34aは、ステップS313において、エッジ線のうち、輝度変化が所定の閾値tb以上のエッジ線を除外する。すなわち、輝度変化の大きいエッジ線は正しいエッジ線ではないと判定し、エッジ線を立体物の検出には使用しない。これは、上述したように、検出領域A1に含まれる路面上の文字や路肩の雑草等がエッジ線として検出されてしまうことを抑制するためである。したがって、所定の閾値tbとは、予め実験等によって求められた、路面上の文字や路肩の雑草等によって発生する輝度変化に基づいて設定された値となる。一方、立体物検出部34aは、エッジ線のうち、輝度変化が所定の閾値tb未満であるエッジ線を、立体物のエッジ線と判断し、これにより、隣接車両に存在する立体物を検出する。
次いで、ステップS314では、立体物検出部34aにより、エッジ線の量が、所定の閾値β以上であるか否かの判断が行われる。ここで、閾値βは、予め実験等によって求めておいて設定された値であり、たとえば、検出対象の立体物として四輪車を設定した場合に、当該閾値βは、予め実験等によって検出領域A1内において出現した四輪車のエッジ線の数に基づいて設定される。エッジ線の量が閾値β以上であると判定された場合(ステップS314=Yes)、立体物検出部34aは、検出領域A1内に立体物が存在するものと判断し、ステップS315に進み、隣接車両が存在すると判定される。一方、エッジ線の量が閾値β以上ではないと判定された場合(ステップS314=No)、立体物検出部34aは、検出領域A1内に立体物が存在しないものと判断し、ステップS316に進み、検出領域A1内に隣接車両が存在しないと判定される。
続いて、図26を参照して、第2実施形態に係る閾値変更処理について説明する。なお、第2実施形態に係る閾値変更処理も、第1実施形態と同様に、図25に示す隣接車両検出処理と並行して行われる。また、第2実施形態に係る閾値変更処理は、レンズに雨滴などの異物が付着している場合に、隣接車両V2の誤検出を適切に防止するために、立体物を検出するためのエッジ閾値tを変更するものである。そのため、この閾値変更処理において変更されたエッジ閾値tは、図25に示す隣接車両検出処理において、立体物のエッジを検出する際に用いられることとなる。
図26に示すように、第2実施形態に係る閾値変更処理のステップS401〜S403では、第1実施形態のステップS201〜S203と同様に、隣接車両V2のヘッドライトの検出が行われ(ステップS401)、隣接車両V2のヘッドライトが検出されか否かの判断が行われる(ステップS402)。そして、隣接車両V2のヘッドライトが検出された場合には(ステップS402=Yes)、隣接車両V2のヘッドライト車速の検出が行われ(ステップS403)、一方、隣接車両V2のヘッドライトが検出されない場合には(ステップS402=No)、ステップS401に戻り、隣接車両V2のヘッドライトの検出が繰り返される。
さらに、ステップS404では、エッジ波形生成部42により、エッジ波形EWtが生成され、その後、エッジ車速算出部43により、異なる時刻に生成されたエッジ波形EWt,EWt−1に基づいて、自車両V2に対する隣接車両V2の相対車速が、エッジ車速VELedとして算出される。
そして、ステップS405では、速度差算出部38aにより、上記の数式2に従って、ステップS403で算出したヘッドライト車速VELhlと、ステップS404で算出したエッジ車速VELedとに基づいて、速度差評価値VELdifの算出が行われる。具体的には、速度差算出部38aは、ヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの差を、自車両V1の車速VELv1で正規化し、正規化したヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの差を、速度差評価値VELdifとして算出する。そして、ステップS406では、速度差算出部38aにより、ステップS405で算出した速度差評価値VELdifに基づいて、計算機30のメモリに記憶された所定台数分(たとえば10台分)の速度差評価値VELdifaveに基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveの算出が行われる。
ステップS407では、閾値変更部39aにより、ステップS406で算出された速度差評価値の平均値VELdifaveに基づいて、レンズに付着した雨滴などの異物によるレンズの汚れの度合いが、レンズ状態判定値として算出される。
そして、ステップS408では、閾値変更部39aにより、ステップS407で算出したレンズ状態判定値に基づいて、エッジ閾値tの変更が行われる。具体的には、閾値変更部39aは、レンズ状態判定値が高いほど、雨滴などの異物がレンズに付着し、レンズが汚れているものと判断し、隣接車両V2の誤検出を防止するために、立体物(隣接車両V2)を検出するためのエッジ閾値tを高い値に変更する。
以上のように、第2実施形態では、隣接車両V2のヘッドライトを検出し、隣接車両V2のヘッドライトに基づいて、隣接車両V2の相対速度をヘッドライト車速VELhlとして算出するとともに、撮像画像から検出したエッジに基づいてエッジ波形EWtを生成し、生成したエッジ波形EWtに基づいて、隣接車両V2の相対車速をエッジ車速VELedとして算出する。そして、エッジ車速VELedとヘッドライト車速EVLhlとの差に基づいて、速度差評価値VELdifを算出し、算出した速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに付着した雨滴などの異物によるレンズの汚れの度合い(レンズ状態判定値)が高いものと判断して、立体物を検出するためのエッジ閾値tを高い値に変更する。これにより、第2実施形態においても、レンズに雨滴などの異物が付着している場合でも、レンズに付着した雨滴などの異物や、隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを有効に防止することができる。
≪第3実施形態≫
続いて、第3実施形態に係る立体物検出装置1bについて説明する。第3実施形態に係る立体物検出装置1bは、図27に示すように、第1実施形態の計算機30に代えて、計算機30bを備えており、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。なお、図27は、第3実施形態に係る計算機30bの詳細を示すブロック図である。
第3実施形態では、図27に示すように、第1実施形態の閾値変更部39に代えて、異物検出部44を備えている。異物検出部44は、カメラ10により撮像された撮像画像に基づいて、レンズに付着する泥などの異物を検出するものである。以下においては、図28Aおよび図28Bを参照して、異物検出部44による異物の検出方法を説明する。なお、図28Aおよび図28Bは、異物検出部44による異物の検出方法を説明するための図である。
具体的には、異物検出部44は、まず、図28Aに示すように、差分波形生成部33により所定の第1タイミングt1で生成された差分波形DWtに対して、高周波成分を遮断又は減衰させるためのローパスフィルタ(ハイカットフィルタ)処理を実行する。このように、差分波形DWtに対してローパスフィルタ処理を行うことで、差分波形DWtを平滑化、平均化することができる。すなわち、差分波形DWtに対してローパスフィルタ処理を行うことで、差分波形DWtにおいて、ノイズと判断できる小さい極大値を除去し、比較的大きな変化を示す極大値を顕在化させて、取得した画像情報の特徴を抽出することができる。その結果、レンズに付着した異物の存在に起因する差分波形DWtの極大値を顕在化させ、異物に対応する画像情報の特徴を抽出することができる。
さらに、異物検出部44は、図28Bに示すように、ローパスフィルタ処理後の差分波形DWtの極大値を、基準度数として算出し、この基準度数に基づいて、異物を判断するための判断範囲を設定する。たとえば、異物検出部44は、基準度数に所定の余裕値を加算した値から、基準度数から所定の余裕値を減算した値までの範囲を、判断範囲として設定する。なお、基準度数は、ローパスフィルタ処理後の差分波形DWtの極大値に限定されず、たとえば、差分波形DWtの極大値よりも所定値だけ大きい値など、ローパスフィルタ処理後の差分波形DWtの極大値に基づいて算出することができる。
そして、異物検出部44は、図28Bに示すように、第1のタイミングt1よりも後の一又は複数の第2のタイミングt2で新たに生成された差分波形DWtの極大値を、評価度数として取得し、鳥瞰視画像上の位置が共通する評価度数と基準度数との差分が、判断範囲内であると判断される回数をカウントアップする。そして、異物検出部44は、予め定義した所定の観察時間内において、上記の異物検出処理を繰り返し、カウントアップされた回数が所定回数tc以上となった場合に、そのカウントアップの結果を導いた評価度数に対応する画素を含む画像を、レンズに付着した異物であると判断する。
このように、異物検出部44は、鳥瞰視画像上で評価度数と基準度数との差分が、判断範囲内であると判断される回数をカウントアップすることで、レンズに付着した泥など、レンズに固着して移動しない異物を検出することが可能となる。
さらに、本実施形態において、異物検出部44は、速度差算出部38により算出された速度差評価値の平均値VELdifaveに基づいて、レンズに付着している異物の検出を行う。具体的には、異物検出部44は、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに異物が付着している可能性が高いものと判断し、レンズに付着している異物を検出し易くなるように、異物を検出するための判定回数tcを低く変更する。これにより、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きく、レンズが汚れている度合い(レンズ状態判定値)が大きいほど、異物が検出し易くなり、異物検出部44による異物の検出をより高い精度で行うことができる。
そして、異物検出部44による異物の検出結果は、図27に示す立体物検出部34bに送信され、立体物検出部34bによる隣接車両V2の検出に用いられる。具体的には、立体物検出部34bは、異物検出部44によりレンズに付着した異物が検出された場合に、異物が検出された画像領域に対応する差分波形DWtを隣接車両V2の検出対象から除外することで、検出領域A1,A2のうち異物が存在する領域において、立体物の検出を抑制する。これにより、レンズに異物が付着している場合に、レンズに付着した異物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。
なお、上述した異物検出部44の処理は、エッジ情報に基づいても行うことができる。異物検出部44は、一又は複数の第1のタイミングで立体物検出部33により生成されたエッジ線の情報を含むエッジ情報から第1極大値を抽出するとともに、この第1極大値に基づいて基準エッジ長さを取得する。エッジ線の情報には所定閾値以上の輝度差を示し、所定の連続性を有するエッジの長さの情報(画素の数を含む)をふくむ。また、異物検出部44は、第1のタイミングよりも後の一又は複数の第2のタイミングで新たに生成されたエッジ情報から鳥瞰視画像上において第1極大値に対応する第2極大値を抽出するとともに、この第2極大値に基づいて評価エッジ長さを取得する。そして、評価エッジ長さと基準エッジ長さとの差分の経時的変化に基づいて、レンズに異物が付着しているか否かを検出する。「経時的変化」の意義は、差分波形情報に基づく処理における「経時的変化」の意義と共通する。
異物検出部44は、評価エッジ長さと基準エッジ長さとの差分の経時的変化の度合が所定の判断範囲以内であると判断された場合には、評価エッジ長さに対応する画素を含む画像がレンズに付着した異物に起因する画像であると判断し、レンズに異物が付着していることを検出する。
具体的に、異物検出部44は、第1のタイミングで生成されたエッジ線の情報を含むエッジ情報に少なくともバンドパスフィルタを用いた信号処理を行い、この信号処理後の「基準エッジ情報の極大値」に基づいて「基準エッジ長さ」を取得する。そして、第1のタイミングよりも後の一又は複数の第2のタイミングで新たに生成されたエッジ情報の極大値に基づいて「評価エッジ長さ」を取得し、鳥瞰視画像上の位置が共通する評価エッジ長さと基準エッジ長さとの差分が「所定の判断範囲」内であると判断される回数に基づいて、評価エッジ長さに対応する画素を含む画像がレンズに付着した異物に起因する画像であると判断する。この判断は、予め定義した所定の評価時間内において行うことができる。バンドパスフィルタとしてローパスフィルタを利用できる点及びその作用・効果、異物の検出状態に応じてバンドパスフィルタの遮断・減衰周波数帯を変更できる点及びその作用・効果は、上述の説明と共通するので、その説明を援用する。エッジ情報に基づく異物検出処理における「基準エッジ情報」は上述した「基準差分波形情報」に対応し、同「基準エッジ長さ」は上述の「基準値」に対応し、同「評価エッジ長さ」は上述の「評価対象値」に、同「評価エッジ長さ」を評価するための「所定の判断範囲」は上述の基準波形情報を用いた処理における「評価対象値」を評価するための「所定の判断範囲」に対応する。
以上のように、第3実施形態に示す立体物検出装置1bでは、レンズに付着する異物を検出する異物検出部44を備え、ヘッドライト車速と差分車速との差に基づく速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズが汚れているものと判断し、異物検出部44により異物が検出され易いように、異物を検出するための所定回数tcを低く変更する。これにより、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きく、レンズが汚れている度合い(レンズ状態判定値)が大きいほど、異物を検出し易くすることができる。このように、第3実施形態では、レンズ状態に応じて異物の検出を高い精度で行うことが可能となる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した第1実施形態および第2実施形態においては、隣接車両V2の誤検出を防止するために、レンズ状態判定値が高いほど、差分閾値thまたはエッジ閾値tを高い値に変更する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、隣接車両V2の誤検出を防止するために、レンズ状態判定値が高いほど、立体物(隣接車両V2)を検出するための閾値αまたは閾値βを高い値に変更する構成としてもよい。また同様に、隣接車両V2の誤検出を防止するために、レンズ状態判定値が高いほど、エッジ線を検出するための閾値θ、閾値t2を高い値に変更する構成としてもよい。さらに、隣接車両V2の誤検出を防止するために、閾値tbを低い値に変更する構成としてもよい。
たとえば、上述した実施形態においては、レンズに雨滴などの異物が付着している度合いを示すレンズ状態判定値が高いほど、差分閾値thまたはエッジ閾値tを高い値に変更する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、レンズ状態判定値が高いほど、立体物を検出するための閾値α、閾値βを高い値に変更する構成としてもよし、エッジ線を検出するための閾値θ、閾値t2を高い値に変更する構成としてもよい。これにより、レンズに雨滴などの異物が付着している場合には、立体物の検出が抑制されるため、レンズに付着した雨滴などの異物や隣接車線内に存在する隣接車両V2以外の立体物を隣接車両V2として誤検出してしまうことを有効に防止することができる。また、レンズ状態判定値が高いほど、カメラ10から出力される画素値(または輝度値)を低くする構成としてもよい。この場合、差分画素DPやエッジが検出され難くなるため、立体物(隣接車両V2)の検出が抑制され、隣接車両V2の誤検出を有効に防止することが可能となる。
さらに、上述した実施形態では、立体物の移動速度が所定の条件を満たす場合に、立体物を隣接車両V2として検出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、レンズ状態判定値が高いほど上記の条件を厳しくすることで、隣接車両V2の検出を抑制する構成としてもよい。たとえば、上述した実施形態では、立体物の絶対移動速度が10km/h以上、かつ、自車両V1に対する立体物の相対移動速度が+60km/h以下である場合に、立体物を隣接車両V2と判断しているが、レンズ状態判定値が高い場合には、たとえば、立体物の絶対移動速度が20km/h以上、かつ、自車両V1に対する立体物の相対移動速度が+50km/h以下である場合に、立体物は隣接車両V2であると判断することができる。
また、上述した第1実施形態では、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとに基づいて速度差評価値VELdifを算出する際に、上記の数式1に示すように、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、自車両V1の車速VELv1で正規化する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、下記の数式3に示すように、速度差評価値VELdifを算出する際に、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、ヘッドライト車速VELhlで正規化する構成としてもよい。あるいは、下記の数式4に示すように、速度差評価値VELdifを算出する際に、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差を、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの平均値で正規化する構成としてもよい。同様に、上述した第2実施形態においても、速度差評価値VELdifを算出する際に、ヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの差を、ヘッドライト車速VELhlで正規化する構成としてもよいし、ヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの平均値で正規化する構成としてもよい。
さらに、上述した実施形態に加えて、速度差評価値VELdifを算出する際に、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれているか否かを判断し、該判断結果に応じて、速度差評価値VELdifを算出する構成としてもよい。たとえば、差分車速またはヘッドライト車速VELhlが正の値であるか負の値であるかを判断することで、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれているか否かを判断し、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれていると判断された場合には、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いていると判断された場合よりも、速度差評価値VELdifを低い値で算出する構成としてもよい。たとえば、街灯などの静止物は移動しないため、自車両V1に対する静止物の相対移動速度は0以下となる一方、自車両V1よりも相対移動速度の速い立体物は、隣接車両V2である可能性が高いものと判断できる。すなわち、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いている場合と比べて、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれている場合には、隣接車両V2を誤検出している可能性が低いため、速度差評価値VELdifを低い値で算出し、差分閾値thを高くし過ぎないことで、隣接車両V2を適切に検出することが可能となる。同様に、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いていると判断された場合にのみ、速度差評価値VELdifを算出して、差分閾値thを変更する構成としてもよい。
さらに、上述した実施形態では、速度差評価値VELdifを繰り返し算出することで、所定台数分の速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する構成を例示したが、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する際に、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いている場面であるか、あるいは、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれている場面であるかを判断し、該判断結果に応じて速度差評価値VELdifの重み付けを行う構成としてもよい。具体的には、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いている場面で得られた速度差評価値VELdifよりも、自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれている場面で得られた速度差評価値VELdifの重み付けを大きくして、重み付けした所定台数分(たとえば、直近の10台分)の速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する構成としてもよい。自車両V1が隣接車両V2に追い抜かれている場面では、隣接車両V2を誤検出している可能性が低いため、自車両V1が隣接車両V2を追い抜いている場面と比べて、速度差評価値VELdifを低い値で算出することで、隣接車両V2を適切に検出することができる。
さらに、上述した第3実施形態では、ヘッドライト車速VELhlと差分車速VELsaとの差に基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、差分車速VELsaに代えて、エッジ車速VELedを用いて速度差評価値VELdifを算出し、ヘッドライト車速VELhlとエッジ車速VELedとの差に基づいて、速度差評価値の平均値VELdifaveを算出する構成としてもよい。この場合も、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上述した第3実施形態では、異物検出部44によりレンズに付着した異物が検出された場合に、異物が検出された領域を隣接車両V2の検出対象から除外する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、異物検出部44によりレンズに付着した異物が検出された場合に、検出された異物を隣接車両V2として誤検出しないように、検出領域A1,A2のうち異物が検出された領域の差分閾値thやエッジ閾値tなどを高い値に変更する構成としてもよい。
さらに、上述した第3実施形態では、図28Bに示すように、鳥瞰視画像上の位置が共通する評価度数と基準度数との差分が、判断範囲内であると判断される回数をカウントアップし、カウントアップされた回数が所定回数tc以上となった場合に、そのカウントアップの結果を導いた評価度数に対応する画素を含む画像を、レンズに付着した異物であると判断する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、鳥瞰視画像上の位置が共通する評価度数と基準度数との差分に応じた判定値をカウントアップし、カウントアップされた判定値の積算値が所定閾値以上となった場合に、そのカウントアップの結果を導いた評価度数に対応する画素を含む画像を、レンズに付着した異物であると判断する構成としてもよい。この場合、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、鳥瞰視画像上の位置が共通する評価度数と基準度数との差分に応じた判定値を大きく算出し、あるいは、カウントアップされた判定値の積算値を判定するための所定閾値を小さくすることで、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、異物検出部44により異物が検出され易くする構成とすることができる。
さらに、上述した実施形態に加えて、雨滴センサやワイパーの動作状況に基づいてレンズに付着している雨滴を検出する際に、速度差評価値の平均値VELdifaveが大きいほど、レンズに雨滴が付着していると判定し易くする構成としてもよい。
なお、上述した実施形態のカメラ10は本発明の撮像手段に相当し、視点変換部31は本発明の画像変換手段に相当し、位置合わせ部32、差分波形生成部33、輝度差算出部40、エッジ線検出部41、エッジ車速算出部43、および立体物検出部34,34aは本発明の立体物検出手段に相当し、立体物検出部34,34aは本発明の立体物判断手段に相当し、ヘッドライト検出部36は本発明の光源検出手段に相当し、ヘッドライト車速算出部37は本発明の第2移動速度演算手段に相当し、速度差算出部38,38aおよび閾値変更部39は本発明の制御手段および判断手段に相当し、異物検出部44は本発明の異物検出手段に相当する。