以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を備えた実装構造体を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2が実装された配線基板3とを含んでいる。
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電材料からなるバンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料により形成されている。電子部品2の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。また、電子部品2の主面方向(XY平面方向)および厚み方向(Z方向)への熱膨張率は、例えば2ppm/℃以上7ppm/℃以下である。なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いて、JIS K7197−1991に準じた測定方法により測定される。以下、各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
配線基板3は、電子部品2を支持するとともに、電子部品2を駆動もしくは制御するための電源や信号を電子部品2へ供給する機能を有するものである。この配線基板3は、コア基板5と、コア基板5の上下面に形成された一対のビルドアップ層6とを含んでいる。
コア基板5は、配線基板3の剛性を高めつつ一対のビルドアップ層6間の導通を図るものである。このコア基板5は、ビルドアップ層6を支持する基体7と、基体7を厚み方向に貫通したスルーホール内に配された筒状のスルーホール導体8と、スルーホール導体8に取り囲まれた柱状の絶縁体9とを含んでいる。
基体7は、配線基板3を高剛性かつ低熱膨張率とするものである。この基体7は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂と樹脂に被覆されたガラスクロス等の基材と樹脂中に分散した酸化ケイ素等からなるフィラー粒子とを含む。基体7の厚みは、例えば0.04mm以上2mm以下である。
スルーホール導体8は、一対のビルドアップ層6同士を電気的に接続するものである。このスルーホール導体8は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料によって形成することができる。
絶縁体9は、スルーホール導体8に取り囲まれた空間を埋めるものである。この絶縁体9は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
一方、コア基板5の上下面には、上述した如く、一対のビルドアップ層6が形成されている。一対のビルドアップ層6のうち、一方のビルドアップ層6は、バンプ4を介して電子部品2と接続し、他方のビルドアップ層6は、例えば半田ボール(図示せず)を介して外部回路と接続する。
ビルドアップ層6は、基体7上に積層された複数の絶縁層10と、基体7上または絶縁層10上に部分的に配された複数の導電層11と、絶縁層10を厚み方向に貫通した複数のビア導体12とを含んでいる。
絶縁層10は、厚み方向または主面方向に離れた導電層11同士の絶縁部材や主面方向に離れたビア導体12同士の絶縁部材として機能するものである。絶縁層10の詳細については後述する。
導電層11は、厚み方向または主面方向に互いに離れて回路パターンをなしており、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線等の配線として機能するものである。導電層11は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料からなる。また、導電層11の厚みは、3μm以上20μm以下であり、導電層11の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下である。また、導電層11のヤング率は、例えば70GPa以上150以下GPaである。なお、導電層11のヤング率は、MTS社製ナノインデンターXPを用いて、ISO14577−1:2002に準じた方法で測定される。以下、各部材のヤング率は、導電層11と同様に測定される。
ビア導体12は、厚み方向に互いに離れた導電層11同士を電気的に接続するものである。このビア導体12は、導電層11と同様の材料からなり、同様の特性を有する。また、ビア導体12は、コア基板5に向って径が細くなる柱状に形成されている。ビア導体12の幅は、例えば10μm以上75μm以下である。
次に、絶縁層10について詳細に説明する。
絶縁層10は、コア基板5と反対側に配された第1絶縁層13と、コア基板5側に配された第2絶縁層14とを含んでいる。第1絶縁層13のコア基板5と反対側の一主面の一部には、導電層11が配されており、第1絶縁層13の一主面の他の部分には、隣接する絶縁層10の第2絶縁層14の一部が配されている。
第1絶縁層13は、コア基板5と反対側の一主面の一部に導電層11が配されており、導電層11の支持部材として機能するものである。第1絶縁層13の厚みは、例えば3μm以上30μm以下である。第1絶縁層13のヤング率は、例えば10GPa以上100GPa以下である。また、第1絶縁層13の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下である。
第1絶縁層13は、図1(b)ないし図2(b)に示すように、一部が互いに接続したジルコニアからなる複数の第1粒子15と、第1粒子15を挟んで互いに離れた、平均粒径が第1粒子15よりも大きい、無機絶縁材料からなる複数の第2粒子16と、第2粒子16同士の間に配された、平均粒径が第1粒子15よりも大きく第2粒子16よりも小さい、無機絶縁材料からなる複数の第3粒子17と、第1粒子15同士の間隙Gに配された樹脂部18とを有する。第1粒子15、第2粒子16および第3粒子17は、第1絶縁層13において無機絶縁部19を構成している。
第1粒子15は、一部で互いに接続することによって、間隙Gが形成された多孔質体を構成しており、3次元網目状構造をなしている。本実施形態においては、第1粒子15同士の接続部20は、括れ状であり、ネック構造をなしている。ジルコニアからなる第1粒子15は、ジルコニアを主成分として90質量%以上含んでいればよく、不純物を含んでいても構わない。第1粒子15は、例えば球状である。第1粒子15の平均粒径は、20nm以下であることが望ましく、さらには1nm以上20nm以下であることが望ましい。また、第1粒子15の各方向への熱膨張率は、8ppm/℃以上12ppm/℃以下であり、第1粒子15のヤング率は、180GPa以上220GPa以下である。また、無機絶縁部19における第1粒子15の含有割合は、例えば5体積%以上40体積%以下である。
なお、第1粒子15の平均粒径は、配線基板3の厚み方向への断面において、各粒子の粒径の平均値を算出することによって測定することができる。また、無機絶縁部19における第1粒子15の含有割合は、配線基板3の厚み方向への断面において、無機絶縁部1
9において第1粒子15が占める面積の割合を含有割合(体積%)とみなすことによって測定することができる。以下、各部材の平均粒径および含有割合は、第1粒子15と同様に測定される。
第2粒子16は、例えば、酸化ケイ素またはコージェライト等の無機絶縁材料からなり、中でも酸化ケイ素からなることが望ましい。酸化ケイ素からなる第2粒子16は、酸化ケイ素を主成分として90質量%以上含んでいればよく、不純物を含んでいても構わない。第2粒子16は、例えば球状である。第2粒子16の平均粒径は、0.5μm以上5μm以下であることが望ましい。また、第2粒子16の各方向への熱膨張率は、0ppm/℃以上10ppm/℃以下であり、第2粒子16のヤング率は、10GPa以上50GPa以下である。また、無機絶縁部19における第2粒子16の含有割合は、例えば50体積%以上90体積%以下である。
第3粒子17は、酸化ケイ素からなることが望ましい。酸化ケイ素からなる第3粒子17は、酸化ケイ素を主成分として90質量%以上含んでいればよく、不純物を含んでいても構わない。第3粒子17は、例えば球状である。第3粒子17の平均粒径は、30nm以上100nm以下であることが望ましく、さらには、30nm以上60nm以下であることが望ましい。また、第3粒子17の熱膨張率およびヤング率は、第2粒子16と同様である。また、無機絶縁部19における第3粒子17の含有割合は、例えば5体積%以上45体積%以下である。
間隙Gは、開気孔であり、第1絶縁層13の他主面に開口を有する。また、第1粒子15が多孔質体を構成しており、3次元網目状構造をなしていることから、間隙Gの少なくとも一部は、第1絶縁層13の厚み方向への断面において、第1粒子15に取り囲まれている。この間隙Gには、第2絶縁層14の一部が入り込んでなる樹脂部18が配されている。なお、第1絶縁層13における樹脂部18の含有割合は、例えば10体積%以上50体積%以下である。
第2絶縁層14は、絶縁層10において接着部材として機能するものである。また、第2絶縁層14は、その一部がコア基板5側に配された導電層11同士の間に配されており、主面方向に離れた導電層11同士の絶縁部材として機能するものである。また、第2絶縁層14は、第1絶縁層13よりもヤング率が小さく弾性変形しやすいため、配線基板3におけるクラックの発生を抑制するものである。第2絶縁層14の厚みは、例えば3μm以上30μm以下である。第2絶縁層14のヤング率は、例えば0.2GPa以上20GPa以下である。第2絶縁層14の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下である。
この第2絶縁層14は、図1(b)に示すように、樹脂21と樹脂21中に分散した複数のフィラー粒子22とを含んでいる。
樹脂21は、第2絶縁層14において接着部材として機能するものである。この樹脂21は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂またはポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。樹脂21のヤング率は、例えば0.1GPa以上5GPa以下である。樹脂21の厚み方向および主面方向への熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下である。
フィラー粒子22は、第2絶縁層14を低熱膨張率かつ高剛性とするものである。このフィラー粒子22は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウム等の無機絶縁材料からなる。フィラー粒子22の平均
粒径は、例えば0.5μm以上5μm以下である。フィラー粒子22の熱膨張率は、例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下である。第2絶縁層14におけるフィラー粒子22の含有割合は、例えば3体積%以上60体積%以下である。
ここで、本実施形態において、第1絶縁層13は、図1(b)ないし図2(b)に示すように、一部が互いに接続したジルコニアからなる複数の第1粒子15と、第1粒子15同士の間隙Gに配された樹脂部18とを有する。
その結果、樹脂部18よりも低熱膨張率かつ高ヤング率であるジルコニアからなる複数の第1粒子15同士が一部で互いに接続して拘束しあうことから、後述する第2絶縁層14で樹脂21中に分散したフィラー粒子22のように流動しないため、第1絶縁層13を低熱膨張率かつ高剛性とすることができ、ひいては配線基板3を低熱膨張率かつ高剛性とすることができる。
したがって、配線基板3を低熱膨張率とすることによって、配線基板3と電子部品2との熱膨張率の差を低減して配線基板3に加わる熱応力を低減するとともに、配線基板3を高剛性とすることによって、熱応力に対して配線基板3を反りにくくすることができる。それ故、電子部品2の実装時や作動時における配線基板3の反りを低減し、配線基板3と電子部品2との接続信頼性を高めることができるため、電気的信頼性に優れた実装構造体1を得ることができる。また、電子部品2の実装時における配線基板3の反りを低減することによって、電子部品2に配線基板3を実装する際の不良を低減することができる。
また、複数の第1粒子15は、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料よりも高ヤング率であるジルコニアから構成されているため、第1絶縁層13を高剛性とすることができる。その結果、熱応力や機械的な応力が第1絶縁層13に加わった際に、第1絶縁層13におけるクラックの発生を低減し、このクラックに起因した導電層11の断線を抑制することができる。
一方、第1粒子15よりも弾性変形しやすい樹脂部18が第1粒子15同士の間隙Gに配されていることから、第1絶縁層13に加わった応力が緩和されるため、第1絶縁層13におけるクラックの発生を抑制できる。
また、本実施形態の配線基板3は、図1(b)ないし図2(b)に示すように、第1絶縁層14を厚み方向に貫通したビア孔V(貫通孔)の内壁に接しているとともに導電層11に接続したビア導体12(貫通導体)を備え、ビア孔Vの内壁には、第1粒子15が露出している。その結果、ビア孔Vの内壁に露出した第1粒子15が例えば酸化ケイ素等と比較して耐薬品性の高いジルコニアからなるため、ビア導体12を形成する際の薬品に起因した第1粒子15同士の接続部20の破壊を抑制し、接続部20を強固なものとすることができる。また、ビア孔Vの内壁は、露出した第1粒子15の一部からなる複数の第1凸部23を有する。
また、ビア孔Vの内壁は、露出した第2粒子16の一部からなる複数の第2凸部24を有する。その結果、アンカー効果によってビア孔Vの内壁とビア導体12との接着強度を高めることができる。また、第1粒子15の耐薬品性が高いため、第1粒子15同士の接続部20を強固にすることによって、ビア孔Vの内壁と第2凸部24との接着強度を高めることができ、上述したアンカー効果を高めることができる。
また、ビア孔Vの内壁は、露出した第3粒子17の一部からなる複数の第3凸部25を有する。その結果、アンカー効果によってビア孔Vの内壁とビア導体12との接着強度を高めることができる。また、第1粒子15の耐薬品性が高いため、第1粒子15同士の接
続部20を強固にすることによって、ビア孔Vの内壁と第3凸部25との接着強度を高めることができ、上述したアンカー効果を高めることができる。
また、導電層11は、第1絶縁層13の一主面に接しており、第1絶縁層13の一主面には、第1粒子15が露出している。その結果、第1絶縁層13の一主面に露出した第1粒子15が例えば酸化ケイ素等と比較して耐薬品性の高いジルコニアからなるため、導電層11を形成する際の薬品に起因した第1粒子15同士の接続部20の破壊を抑制することができる。それ故、第1絶縁層13の一主面と導電層11との接着強度を高めることができるため、第1絶縁層13の一主面と導電層11との剥離に起因した導電層11の断線を低減することができる。
また、本実施形態の配線基板3は、樹脂21と樹脂21中に分散したフィラー粒子22とを有し、第1絶縁層13の他主面側に配された第2絶縁層14を備え、樹脂部18は、第2絶縁層14の一部が入り込んでなる。その結果、上述した如く樹脂部18によって第1絶縁層13におけるクラックの発生を抑制することができる。さらに、第2絶縁層14の一部が第1絶縁層13の間隙Gに入り込んでいるため、アンカー効果によって、第1絶縁層13と第2絶縁層14との接着強度を高めることができる。したがって、第1絶縁層13と第2絶縁層14との剥離を抑制することができるため、電子部品2の実装時や作動時に配線基板3に熱が加わった際に、配線基板3内部に含まれる水分がこの剥離した箇所で膨張することを抑制し、剥離部分におけるこの膨張に起因したクラックの発生を抑制することができる。それ故、このクラックに起因した導電層11の断線やイオンマイグレーションによる短絡を抑制することができる。
また、第1絶縁層13は、第1粒子15を挟んで互いに離れた、平均粒径が第1粒子15よりも大きい、無機絶縁材料からなる複数の第2粒子16を有する。その結果、第2粒子16の平均粒径が大きいことから、第1絶縁層13に生じたクラックが第2粒子16を迂回するためのエネルギーを増加させるため、クラックの伸長を抑制することができる。また、複数の第2粒子16は、一般的に樹脂材料等と比較して硬度の高い無機絶縁材料からなるため、クラックの伸長をより抑制することができる。
また、第2粒子16は、酸化ケイ素からなることが望ましい。その結果、酸化ケイ素はジルコニアと比較して低誘電正接、低誘電率であることから、配線基板3の信号伝送特性を高めることができる。また、酸化ケイ素はジルコニアと比較して低熱膨張率であることから、配線基板3を低熱膨張率とすることができる。
また、第1絶縁層13は、第2粒子16同士の間に配された、平均粒径が第1粒子15よりも大きく第2粒子16よりも小さい、無機絶縁材料からなる複数の第3粒子17を有する。その結果、平均粒径が第2粒子16よりも小さい第3粒子17を第2粒子16同士の間に配することができる。さらに、第3粒子17の平均粒径が第1粒子15の平均粒径よりも大きいことから、第1絶縁層13に生じたクラックが第3粒子17を迂回するためのエネルギーを増加させるため、第2粒子16同士の間におけるクラックの伸長を抑制することができる。また、第3粒子17は、無機絶縁材料からなるため、クラックの伸長をより抑制することができる。
また、第3粒子17は、酸化ケイ素からなることが望ましい。その結果、配線基板3の信号伝送特性を高めるとともに、配線基板3を低熱膨張率とすることができる。
この第3粒子17は、一部で互いに接続していることが望ましい。その結果、一般的に樹脂材料よりも低熱膨張率かつ高ヤング率である無機絶縁材料からなる複数の第3粒子17同士が一部で互いに接続して拘束しあうことから、第1絶縁層13をより低熱膨張率かつ高剛性とすることができる。
第1粒子15の平均粒径は、20nm以下であることが望ましい。その結果、第1粒子15の平均粒径が微小であるため、第1絶縁層13を緻密なものとして高剛性かつ低熱膨張率とすることができるとともに、後述するように、第1絶縁層13を作製する際に第1粒子15同士を容易に接続することができる。
第2粒子16の平均粒径は、0.5μm以上5μm以下であることが望ましい。その結果、第2粒子16の平均粒径が大きいため、第1絶縁層13におけるクラックの伸長をより抑制することができる。
第3粒子17の平均粒径は、30nm以上100nm以下であることが望ましい。その結果、第3粒子17を第2粒子16同士の間に良好に配することができるとともに、第2粒子16同士の間におけるクラックの伸長をより抑制することができる。また、第3粒子17の平均粒径が100nm以下であることから、後述するように、第1絶縁層13を作製する際に第2粒子16同士を容易に接続することができる。
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3ないし図9を参照しつつ説明する。
(1)図3(a)に示すように、コア基板5を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
プリプレグを硬化させてなる基体7と基体7の上下に配された銅等の金属箔とからなる積層板を準備する。次に、サンドブラスト加工、レーザー加工またはドリル加工を用いて、積層板にスルーホールを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等を用いて、スルーホール内に導電材料を被着させてスルーホール導体8を形成する。次に、スルーホール導体8の内側に未硬化樹脂を充填して硬化させることによって、絶縁体9を形成する。次に、例えば無電解めっき法、電解めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等を用いて、絶縁体9上に導電材料を被着させた後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法等を用いて、基体7上の金属箔および導電材料をパターニングして導電層11を形成する。その結果、コア基板5を作製することができる。
(2)図3(b)ないし図7(b)に示すように、例えば銅箔等の金属箔からなる支持体26と、支持体26上に配された第1絶縁層13と、第1絶縁層13上に配された未硬化の樹脂層前駆体27とを含む積層シート28を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
まず、図3(b)ないし図4(b)に示すように、第1粒子15、第2粒子16、第3粒子17、および粒子15〜17(第1粒子15ないし第3粒子17)が分散した溶剤29を有するスラリー30を準備し、スラリー30を支持体26の一主面に塗布する。次に、図5(a)および図5(b)に示すように、スラリー30から溶剤26を蒸発させて、支持体26上に粒子15〜17を残存させて、粒子15〜17からなる粉末層31を形成する。この残存した粒子15〜17は、近接箇所で互いに接触している。次に、図6(a)および図6(b)に示すように、残存した粒子15〜17を加熱して、隣接する第1粒子15同士を近接箇所で接続させることによって、無機絶縁部19を形成する。次に、図7(a)および図7(b)に示すように、第1絶縁層13上に樹脂層前駆体27を積層し、積層された第1絶縁層13および樹脂層前駆体27を厚み方向に加熱加圧することによって、樹脂層前駆体27の一部を間隙G内に充填する。その結果、積層シート28を作製することができる。
スラリー30における溶剤26の含有割合は、例えば50%体積以上90体積%以下である。溶剤26は、例えばメタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミドまたはこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤等を用いることができる。
溶剤26を蒸発させる際におけるスラリー30の乾燥は、例えば加熱および風乾により行なわれる。乾燥温度は、例えば、20℃以上溶剤26の沸点未満であり、乾燥時間は、例えば20秒以上30分以下である。
ここで、本実施形態においては、平均粒径が第1粒子15よりも大きい第2粒子16によって、スラリー30における粒子15〜17の隙間を低減できるため、溶剤26を蒸発させて形成する粉末層31の収縮を低減できる。したがって、主面方向へ大きく収縮しやすい平板状である粉末層31の収縮を低減することで、粉末層31における厚み方向に沿ったクラックの発生を低減することができる。また、粉末層31にクラックが生じたとしても、第1粒子15よりも平均粒径の大きい第2粒子16によってクラックの伸長を抑制することができる。
また、本実施形態においては、平均粒径が第1粒子15よりも大きく第2粒子16よりも小さい第3粒子17が、第2粒子16同士の間に配されるため、スラリー30の第2粒子16同士の間における粒子15〜17の隙間をさらに低減し、粉末層31の第2粒子16同士の間における収縮を低減することができる。その結果、粉末層31の第2粒子16同士の間におけるクラックの発生を低減することができる。また、粉末層31の第2粒子16同士の間にクラックが生じたとしても、第1粒子15よりも平均粒径の大きい第3粒子17によってクラックの伸長を抑制することができる。
第1粒子15同士を接続させる際の加熱温度は、100℃以上250℃以下であることが望ましい。また、加熱時間は、0.5時間以上24時間以下であることが望ましい。
ここで、本実施形態において、第1粒子15の平均粒径が20nm以下と微小であると、加熱温度が100℃以上250℃以下と低温であっても、第1粒子15同士を接続することができる。これは、第1粒子15が微小であることから、第1粒子15の原子、特に表面の原子が活発に運動するため、このような低温下でも第1粒子15同士が強固に接続すると推測される。なお、第1粒子15同士を接続することができる温度は、例えば第1粒子15の平均粒径を20nm以下に設定した場合は150℃程度であり、第1粒子15の平均粒径をさらに小さくすることによってさらに低い温度とすることができる。
また、このように低温で加熱することによって、第1粒子15の粒子形状を保持しつつ、第1粒子15同士を近接領域のみで接続することができる。その結果、接続部20においてネック構造を形成するとともに、開気孔の間隙Gを容易に形成することができる。また、このように低温で加熱することによって、第1粒子15同士の接続に加わる熱応力を低減し、熱応力によるクラックの発生を抑制することができる。
また、第3粒子17においても、平均粒径が100nm以下と微小であると、このような低温であっても、第3粒子17同士を接続することができる。これは、第1粒子15と同様の理由によると推測される。このように第3粒子17同士を接続させるために、第3粒子17としては酸化ケイ素からなるものを用いることが望ましい。なお、第3粒子17同士を接続することができる温度は、例えば、第3粒子17の平均粒径を100nm以下
に設定した場合は250℃程度である。
積層された第1絶縁層13および樹脂層前駆体27を加熱加圧する際の加圧圧力は、例えば0.5MPa以上2MPa以下であり、加圧時間は、例えば60秒以上10分以下であり、加熱温度は、例えば80℃以上140℃以下である。なお、この加熱温度は、樹脂層前駆体27の硬化開始温度未満であるため、樹脂層前駆体27を未硬化の状態で維持することができる。
(3)図8(a)および図8(b)に示すように、コア基板5上に積層シート28を積層して絶縁層10を形成し、絶縁層10に導電層11およびビア導体12を形成する。具体的には、例えば以下のように行なう。
まず、図8(a)に示すように、樹脂層前駆体27をコア基板5に接しつつ、コア基板5上に積層シート28を積層し、積層されたコア基板5および積層シート28を厚み方向に加熱加圧することによって、コア基板5に積層シート28を接着させた後、樹脂層前駆体27の硬化開始温度以上、熱分解温度未満の温度で加熱することによって樹脂層前駆体27を硬化させて第2絶縁層14とする。この際、間隙Gに入り込んでいた樹脂層前駆体27の一部が間隙Gに配された樹脂部18となる。次に、図8(b)に示すように、例えば塩化第二鉄溶液または塩化銅溶液等のエッチング液および洗浄液等の第1薬品を用いたエッチング法によって、第1絶縁層13から支持体15を化学的に剥離した後、レーザー加工等によって、絶縁層10を厚み方向に貫通するとともに導電層11を露出したビア孔Vを形成する。次に、過マンガン酸溶液等のデスミア液等の第2薬品を用いた湿式デスミア法によって、レーザー加工等によってビア孔内に生じたスミア(樹脂の残渣)を除去する(デスミア処理)。次に、無電解めっき法および電気めっき法を用いたセミアディティブ法によって、絶縁層10上に所望のパターンの導電層11を形成するとともに、ビア孔V内にビア導体12を形成する。このセミアディティブ法においては、例えば塩化第二鉄溶液または塩化銅溶液等のエッチング液およびめっき液等の第3薬品が用いられる。
なお、積層されたコア基板5および積層シート28を加熱加圧する際の各条件は、工程(2)の加熱加圧と同様である。
ところで、第1薬品ないし第3薬品による処理を行なうと、第1絶縁層13の第1主面またはビア孔Vの内壁に露出した第1粒子15に第1薬品ないし第3薬品が触れる。仮に、この第1薬品ないし第3薬品が第1粒子15を溶解すると、第1粒子15同士の接続部20が破壊され、第1絶縁層13の第1主面から導電層11が剥離しやすくなり、また、ビア孔Vの内壁からビア導体12が剥離しやすくなる。特に第2薬品は様々な材料を溶解しやすい。
一方、本実施形態においては、第1粒子15が耐薬品性の高いジルコニアからなるため、第1薬品ないし第3薬品による第1粒子15の溶解を抑制することができるため、第1粒子15同士の接続部20の破壊を抑制し、接続部20を強固なものとすることができる。
また、本実施形態においては、レーザー加工によってビア孔Vを形成しているため、ビア孔Vの内壁に粒子15〜17の一部を突出させて、第1凸部23ないし第3凸部25を形成することができる。
このようなレーザー加工の条件としては、例えば、以下の条件を用いることができる。炭酸ガスレーザー(波長:10.6μm)を用いる場合には、レーザー光の1パルス(シ
ョット)当たりのエネルギーを例えば20mJ(ミリジュール)以上100mJ以下とし、
レーザー光のパルス幅を例えば10μs(マイクロ秒)以上200μs以下とし、レーザー光のショット数を例えば1以上5以下とすればよい。
また、YAGレーザー(波長:355nm)を用いる場合には、1パルス(ショット)当たりのエネルギーを例えば20μJ(マイクロジュール)以上100μJ以下とし、レーザー光のパルス幅を例えば5ns(ナノ秒)以上200ns以下とし、レーザー光のショット数を例えば3以上20以下とすればよい。
(4)図9(a)および図9(b)に示すように、絶縁層10上に積層シート28を積層してさらに絶縁層10を形成し、この絶縁層10に導電層11およびビア導体12を形成することによって、コア基板5上にビルドアップ層6を形成し、配線基板3を作製する。具体的には、例えば以下のように行なう。
まず、図9(a)に示すように、樹脂層前駆体27を絶縁層10に接しつつ、絶縁層10上に積層シート28を積層し、積層された絶縁層10および積層シート28を厚み方向に加熱加圧することによって、絶縁層10に積層シート28を接着させた後、樹脂層前駆体27を硬化開始温度以上、熱分解温度未満の温度で加熱することによって、樹脂層前駆体27を硬化させて第2絶縁層14とする。その結果、絶縁層10上にさらに絶縁層10を形成することができる。次に、図9(b)に示すように、工程(3)と同様の方法で、新たに形成した絶縁層10に導電層11およびビア導体12を形成する。なお、本工程を繰り返すことによって、ビルドアップ層6をより多層化することができる。
(5)配線基板3に対してバンプ4を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1(a)に示した実装構造体1を作製する。なお、電子部品2は、ワイヤボンディングによって配線基板3と電気的に接続してもよいし、あるいは、配線基板3に内蔵させてもよい。
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
例えば、上述した本発明の実施形態においては、本発明に係る絶縁材料を配線基板3の第1絶縁層13として用いた構成を例に説明したが、本発明に係る絶縁材料は一部が互いに接続したジルコニアからなる複数の第1粒子15と第1粒子15同士の間隙Gに配された樹脂部18とを備えていれば、他の用途に用いても構わない。例えば、本発明に係る絶縁材料を磁性材料として用いてもよい。この場合、上述した第2粒子16の代わりにフェライト等の磁性材料からなる第4粒子16を用いればよい。第4粒子の構成は、例えば第2粒子16と同様の構成とすることができ、第4粒子以外の構成は、例えば第1絶縁層13と同様の構成とすることができる。
また、上述した本発明の実施形態においては、配線基板3の例としてコア基板5およびビルドアップ層6からなるビルドアップ多層基板を挙げたが、配線基板3としては、ビルドアップ多層基板以外にも、例えばコアレス基板等の他の構成の基板も含まれる。
また、上述した本発明の実施形態においては、第1絶縁層13をビルドアップ層6に適用した構成を例に説明したが、第1絶縁層13を基体7に適用しても構わない。この場合、スルーホール(貫通孔)の内壁の構造は、上述したビア孔Vの内壁の構造と同様であっても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、1つのビルドアップ層6が絶縁層10を2層含む構成を例に説明したが、1つのビルドアップ層6は絶縁層10を3層以上含んで
いても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、第1絶縁層13の一主面に導電層11が接した構成を例に説明したが、第1絶縁層13の一主面と導電層11との間に樹脂層等が介在されていても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、無機絶縁部19が第1粒子15ないし第3粒子17を含む構成を例に説明したが、無機絶縁部19は、少なくとも第1粒子15を含んでいればよく、第2粒子16または第3粒子17を含んでいなくてもよいし、他の粒子を含んでいてもよい。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(2)において金属箔からなる支持体26を用いた構成を例に説明したが、PETフィルム等の樹脂シートからなる支持体16を用いても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(2)において溶剤26の蒸発と残存した粒子15〜17の加熱とを別々に行なった構成を例に説明したが、これらを同時に行なっても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(2)において支持体26を化学的に剥離した構成を例に説明したが、支持体26を機械的に剥離しても構わない。
また、上述した本発明の実施形態においては、工程(3)においてセミアディティブ法を用いて導電層11およびビア導体12を形成した構成を例に説明したが、サブトラクティブ法やフルアディティブ法によって導電層11およびビア導体12を形成してもよい。