以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、代表的な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
さらに、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態1)
一実施の形態である半導体装置の製造工程について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態1の半導体装置の製造工程は、半導体基板(以下「ウェハ」とも称する。)の主面上に形成されたレジスト膜を、EUV光を露光光として用いてパターン露光する露光工程を含む。
<露光装置>
初めに、実施の形態1の半導体装置の製造工程に含まれる露光工程を行うための露光装置について説明する。この露光装置は、半導体基板の主面上に形成されたレジスト膜を、EUV光を露光光として用いてパターン露光する露光装置である。
図1は、実施の形態1の露光装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、露光装置1は、露光機構部1aを有する。露光機構部1aには、EUV光源2が設けられている。EUV光源2から発せられた中心波長13.5nmのEUV光である露光光2aは、多層膜反射鏡からなる反射型照明光学系3を介して、露光機構部1aの内部に保持されているEUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1に入射する(照射される)。EUVマスクMSK1は、露光用パターンが形成されたパターン面(表面、第1主面)PS1、および、パターン面(表面、第1主面)PS1とは反対側の裏面(第2主面)PS2を有する。
EUVマスクMSK1は、マスクステージ(保持部)4に保持されている。具体的には、EUVマスクMSK1は、その裏面(第2主面)PS2が、マスクステージ(保持部)4に設けられた静電チャック4aの下面(表面)4bと接触した状態で、静電チャック4aに静電吸着されることで、マスクステージ(保持部)4に保持されている。
EUV光は、波長が非常に短いために、マスク用基板に吸収されてしまい、透過することができない。そのため、EUVマスクとして、露光光を透過する透過型マスクを使用することはできない。したがって、EUVマスクMSK1として、パターン面(表面、第1主面)PS1に多層反射膜(図示は省略)および吸収体パターンABSを含む露光用パターンが形成されており、露光光としてのEUV光を反射する反射型マスクが使用される。EUVマスクMSK1の詳細な構造については、後述する図3を用いて説明する。
パターン面(表面、第1主面)PS1に入射した(照射された)露光光2aがパターン面(表面、第1主面)PS1で反射される。そして、パターン面(表面、第1主面)PS1で反射された反射光2bは、多層膜反射鏡からなる縮小投影光学系5を通過して、露光機構部1aの内部に保持されているウェハ21上に縮小投影され、ウェハ21上に形成されたレジスト膜(図示は省略)をパターン露光する。すなわち、ウェハ21上に、EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1に形成された露光用パターンを転写する(パターン転写)。ウェハ21は、移動可能に設けられたウェハステージ6により保持されており、ウェハステージ6の移動とパターン転写の繰返しにより、ウェハ21の所望の領域にパターンを多数転写する。
<EUVマスク>
次に、本実施の形態1におけるEUVマスクの概要および構成を、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、実施の形態1のEUVマスクの表面を模式的に示す平面図である。図3は、実施の形態1のEUVマスクの一部を示す要部断面図である。図4は、接触角の測定方法と接触角について説明するための図である。
前述したように、EUV光の波長領域(例えば13.5nm)では、EUVマスクとして、露光光を透過する透過型マスクを使用することはできない。したがって、EUVマスクMSK1として、図3に示すように、パターン面(表面、第1主面)PS1に多層反射膜(反射膜)MLが形成され、多層反射膜(反射膜)ML上に吸収体パターンABSが形成されており、露光光としてのEUV光を反射する反射型マスクが使用される。
図2に示すように、EUVマスクMSK1の中央部には、半導体集積回路装置の回路パターンが描かれたデバイスパターンエリアMDEを有する。また、EUVマスクMSK1の周辺部にはEUVマスクの位置合せのためのマークやウェハアライメントマークなどを含むアライメントマークエリアMA1、MA2、MA3、MA4が配置されている。
図3に示すように、EUVマスクMSK1は、パターン面(表面、第1主面)PS1、パターン面(表面、第1主面)PS1とは反対側の裏面(第2主面)PS2、および、パターン面(表面、第1主面)PS1と裏面(第2主面)PS2との間に配置された側面SS1を有する。
EUVマスクMSK1は、例えば石英ガラスまたは低熱膨張ガラスその他の低熱膨張材(Low Thermal Expansion Material:LTEM)からなるマスク基体(マスク用基板)MSを有する。EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1側では、マスク基体(マスク用基板)MS上に、多層反射膜(反射膜)MLが形成されている。多層反射膜(反射膜)MLは、例えばモリブデン(Mo)およびシリコン(Si)を交互に積層した構造を有しており、露光光であるEUV光を反射する。多層反射膜(反射膜)MLとして、通常40ペアの多層膜が用いられるが、さらに50ペア、60ペアの多層膜が積層された膜が用いられることもある。なお、マスク基体(マスク用基板)MS上に、多層反射膜(反射膜)MLが形成された状態を、多層膜マスクブランクと称する。
EUVマスクMSK1は、多層反射膜(反射膜)ML上に(すなわち多層膜マスクブランク上に)形成された吸収体パターンABSを有する。吸収体パターンABSは、露光光であるEUV光を吸収する吸収体膜AFが所望のパターンを有するように配置されたものである。したがって、EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1に形成された露光用パターンは、パターン面(表面、第1主面)PS1に形成された多層反射膜(反射膜)ML、および、多層反射膜(反射膜)ML上に形成された吸収体パターンABSを含む。吸収体パターンABSの材料としては、例えばタンタル(Ta)、ホウ窒化タンタル(TaBN)または窒化タンタル(TaN)などのEUV光に対する反射率が低い材料が用いられる。
また、EUVマスクMSK1では、多層反射膜(反射膜)ML上には、キャッピング層CAPが形成されている。キャッピング層CAPの材料としては、例えばSi、ルテニウム(Ru)またはクロム(Cr)などが用いられる。
キャッピング層CAP上には、バッファ層BUFを介して前述した吸収体パターンABSが形成されている。バッファ層BUFは、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)による修正技術を用いた加工が行われる際に、多層反射膜(反射膜)MLに損傷(ダメージ)が加えられないようにするか、または、多層反射膜(反射膜)MLに異物(パーティクル)が付着して汚染されないようにする保護膜である。ただし、図3に示すように、パターン面(表面、第1主面)PS1であって、吸収体パターンABSが除去された領域では、FIBによる加工の後、最終的には、バッファ層BUFは除去される。バッファ層BUFの材料としては、Crまたは窒化クロム(CrN)などが用いられる。また、FIBによる修正技術に代え、電子ビーム(Electron Beam:EB)による修正技術などが用いられる場合には、バッファ層BUFを省くこともできる。
吸収体パターンABSの上面は酸化処理が施されている(図示は省略)。これにより、例えば250nmや193nm付近の波長を有する欠陥検査光に対する反射率が抑えられ、パターン欠陥検査を高感度で行うことができる。
一方、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2には、すなわち、マスク基体(マスク用基板)MSの裏面(第2主面)PS2には、導電膜CFが形成されている。EUVマスクMSK1は、マスクステージ(保持部)4(図1参照)の静電チャック4a(図1参照)が導電膜CFを静電吸着することで、マスクステージ(保持部)4により保持される。
本実施の形態1では、EUVマスクMSK1は、側面SS1が撥水性(疎水性)を有しており、EUVマスクMSK1のマスク裏面洗浄工程(後述する図8参照)において、例えば水(純水)からなる洗浄液(リンス液)を撥水する。
図3に示すEUVマスクMSK1では、マスク基体(マスク用基板)MSの側面SS1には、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP1が形成されている。一方、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2には、導電膜CFが形成されており、撥水性(疎水性)を有していない。したがって、EUVマスクMSK1の側面表面部(側面部)REP1の撥水性が、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2の撥水性よりも高い。このような構造により、EUVマスクMSK1のマスク裏面洗浄工程(後述する図8参照)において、裏面(第2主面)PS2に供給される洗浄液(リンス液)が、側面SS1に回り込むことを防止または抑制することができる。
撥水性は、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)に対する接触角で定義される。接触角は、図4に示すように、EUVマスクMSK1の側面SS1が水平になるように、EUVマスクMSK1を配置し、側面SS1にマイクロシリンジなどで洗浄液(リンス液)を滴下して液滴DRPを形成し、側面SS1の表面における液滴DRPの接触角Θを測定することにより求める。液滴DRPの体積が大きすぎると自重により変形する。したがって、液滴DRPの体積は、好適には、角度が正確に測定できる下限値以上であって、かつ、なるべく小さい値である。自重により変形しない範囲としては、液滴DRPの体積は、例えば50μL以下である。角度Θは、例えば拡大鏡を備えた分度器により測定することができるが、角度Θを測定する方法としては、上記した方法に限られず、その他の各種の方法を用いることができる。
前述したように、液滴DRPとしては、例えば水(純水)からなる液滴を用いるが、水(純水)からなる液滴に代え、各種の洗浄液またはオゾン水などからなる液滴を用いることもできる。ただし、水(純水)以外の各種の洗浄液またはオゾン水の界面エネルギーは水(純水)の界面エネルギーと異なる。そのため、水(純水)以外の各種の洗浄液またはオゾン水からなる液滴を用いて測定した接触角は、好適には、水(純水)以外の各種の洗浄液またはオゾン水の界面エネルギーと、水(純水)の界面エネルギーとを比較換算することにより、補正される。
また、本実施の形態1では、好適には、EUVマスクMSK1の側面SS1の撥水性が、EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性よりも高い。
EUVマスクMSK1では、パターン面(表面、第1主面)PS1に、パターン面(表面、第1主面)PS1への異物の付着を防止するペリクルが貼られておらず、いわゆるペリクルレスマスクとして用いられる場合がある(ペリクルレス運用)。このようなペリクルレス運用においては、パターン面(表面、第1主面)PS1に付着した異物(パーティクル)を除去するために、洗浄液(リンス液)を用いたウェット洗浄を行う必要がある。また、EUV光を露光光として露光を行う際に、カーボンの付着による汚染(いわゆる露光コンタミ)が発生するため、必要に応じて洗浄工程を行うが、この洗浄工程として、洗浄液(リンス液)を用いたウェット洗浄を行うことがある。
パターン面(第1主面)PS1の撥水性が、側面SS1の撥水性と等しいか、側面SS1の撥水性よりも高いときは、上記したウェット洗浄において、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)が吸収体パターンABSの各パターンの間に容易に入らない。
EUVリソグラフィを用いて形成されるパターンのピッチは、例えばハーフピッチ(hp)が22nm以下である。したがって、例えば縮小倍率が4倍であるマスク(4xマスク)上では、吸収体パターンABSの間の部分であるスペース部(開口部)SPCの幅寸法W1は88nm以下であり、吸収体パターンABSの厚さ寸法は50nm以上である。また、吸収体パターンABSおよびバッファ層BUFのそれぞれの厚さ寸法の合計をスペース部(開口部)SPCの高さ寸法T1であると定義すると、スペース部(開口部)SPCの高さ寸法T1は、スペース部(開口部)SPCの幅寸法W1である88nmよりも大きくなることがある。すなわち、スペース部(開口部)SPCの幅寸法W1に対する高さ寸法T1の比であるアスペクト比が、1よりも大きくなることがある。このような場合、洗浄液(リンス液)が、吸収体パターンABSの各パターンの間に、さらに入りにくくなり、ウェット洗浄の洗浄能力が低下し、ウェット洗浄を行ってもパターン面(表面、第1主面)PS1に付着していた異物(パーティクル)が除去されない問題(いわゆる取り残し)が発生する。
しかし、本実施の形態1では、EUVマスクMSK1の側面SS1の撥水性が、EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性に比べて高い。言い換えれば、スペース部(開口部)SPCの底面および側壁における撥水性は、側面SS1における撥水性よりも低い。そのため、スペース部(開口部)SPCの幅寸法W1に対する高さ寸法T1の比であるアスペクト比が高い場合でも、スペース部(開口部)SPCの内部に洗浄液(リンス液)が容易に入ることができる。したがって、裏面(第2主面)PS2を洗浄する際には、洗浄液(リンス液)がパターン面(表面、第1主面)PS1に回り込むことを防止しつつ、パターン面(表面、第1主面)PS1を洗浄する洗浄工程を行う際には、パターン面(表面、第1主面)PS1を洗浄する洗浄能力が低下することを防止または抑制することができる。
このような側面表面部(側面部)REP1が撥水性を有するEUVマスクMSK1を製造する方法として、以下のような方法を用いることができる。例えば、マスク基体(マスク用基板)MSを用意した後、多層反射膜(反射膜)MLを形成する前に、フッ素端末処理、すなわち、マスク基体(マスク用基板)MSを構成する分子の末端基のフッ素置換処理などのフッ素化処理を行う。具体的には、−CF3基を有するパーフルオロアルキル基含有シランをシランカップリング剤として用いてフッ素化処理を行う。これにより、マスク基体(マスク用基板)MSが例えば石英ガラスからなる場合、マスク基体(マスク用基板)MSの側面のシラノール基と、シランカップリング剤であるパーフルオロアルキル基含有シランとがシロキサン結合を形成し、CF3を有するパーフルオロアルキル基となるフッ素端末処理が行われる。
このようなフッ素端末処理を行う際、200℃程度の温度で熱処理を行って、シロキサン結合を形成する反応を促進させることが好適である。また、パーフルオロアルキル基含有シランのパーフルオロアルキル基を、イソシアネート基またはクロル基などの反応性の高い末端基をもつパーフルオロアルキル基とすることが好適である。
また、予め、マスク基体(マスク用基板)MSの側面を、数nm〜数100nm程度の深さの凹凸を有するように、いわゆる粗面処理をしておくことが好適である。これにより、側面表面部(側面部)REP1の撥水性がより高まり、また、マスク基体(マスク用基板)MSの側面において、シラノール基と、フッ素を含む末端基を有するパーフルオロアルキル基とが結合しやすくなり、側面表面部(側面部)REP1の耐久性が向上する。さらに、フッ素を含む末端基を有するものに比べ撥水性が低下するものの、実用上十分な撥水性が得られるシランカップリング剤として、シリカベースのもの、例えばポリジメチルシリコーン、または、末端をトリアルコキシ基に変えたポリジメチルシリコーンなども用いることができる。
あるいは、EUVマスクMSK1については、フッ素樹脂や撥水性膜を側面に接着するか、またはコーティングすることなどにより、側面表面部(側面部)REP1を形成することもできる。フッ素樹脂自体は接着されにくい材料であるが、ポリドーパミン溶液などを密着強化剤とすることで、マスク基体(マスク用基板)MSに容易に接着することができる。このときも、マスク基体(マスク用基板)MSの側面を、数nm〜数100nm程度の深さの凹凸を有するように、粗面処理しておくことが好適である。これにより、フッ素樹脂や撥水性膜の、マスク基体(マスク用基板)MSの側面への接着力が高まり、また、側面表面部(側面部)REP1の撥水性もより高まる。また、フッ素樹脂からなる板を、マスク基体(マスク用基板)MSの側面に、ビスやフック留めなどの方法で、機械的に取り付けることもできる。
上述したフッ素化処理などにより側面を撥水化する撥水化処理については、マスク基体(マスク用基板)MSを用意した後、多層反射膜(反射膜)MLを形成する前に、行うことができる。また、マスク基体(マスク用基板)MS上に吸収体膜AFまで成膜した後、吸収体膜AFをパターン加工する前に、撥水化処理を行うこともできる。マスク基体(マスク用基板)MSに多層反射膜(反射膜)MLを形成する前に撥水化処理を行う場合、それよりも後の工程において、撥水化処理が既に終わっているため、マスク基体(マスク用基板)MSを容易に取り扱うことができる。また、吸収体膜AFをパターン加工して吸収体パターンABSを形成した後で、上述した撥水化処理を行う場合、撥水化処理前に、プラズマを用いるエッチング工程、および、有機化合物を容易に溶解可能な溶剤を用いた洗浄工程が終わっている。そのため、撥水化処理された側面表面部(側面部)REP1の撥水性が、これらのエッチング工程または洗浄工程により低下することを防止または抑制することができる。
<EUVマスクの変形例>
図5〜図7は、実施の形態1のEUVマスクの変形例の一部を示す要部断面図である。図5は、マスク基体(マスク用基板)MSから吸収体パターンABS(吸収体膜AF)に亘り、側面SS1の撥水化処理が施されている変形例である。図6は、マスク基体(マスク用基板)MSからキャッピング層CAPまでは、側面SS1の撥水化処理が施されているが、吸収体パターンABS(吸収体膜AF)は側面の撥水化処理が施されていない変形例である。図7は、マスク基体(マスク用基板)MS4の材料自体が、撥水性を有する変形例である。なお、図5〜図7のEUVマスクのうち図3のEUVマスクの部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図5の断面図は、EUVマスクの変形例としてのEUVマスクMSK2の断面構造を示すものである。図5に示すEUVマスクMSK2では、マスク基体(マスク用基板)MSの側面、多層反射膜(反射膜)MLの側面、キャッピング層CAPの側面、バッファ層BUFの側面および吸収体膜AFからなる吸収体パターンABSの側面を含め、EUVマスクMSK2全体の側面SS1が、撥水化処理されている。
このようなEUVマスクMSK2については、吸収体膜AFまで形成されたマスクブランクが製造された後、吸収体パターンABSを形成する前に、側面SS1の撥水化処理を行い、側面SS1に側面表面部(側面部)REP2を形成することで、EUVマスクMSK2を製造することができる。吸収体膜AFを形成した後、吸収体パターンABSを形成する前に、側面SS1の撥水化処理を行う場合、吸収体パターンABSを形成する工程以後の工程において、側面SS1の撥水化処理が既に終了しているため、EUVマスクMSK2の取り扱いが容易になる。さらに、吸収体膜AFを形成し、ブランク品質検査を行った後、側面SS1の撥水化処理を行うことになるため、ブランク欠陥品に対して側面SS1の撥水化処理を行うことがなく、生産性を向上させることができる。
あるいは、吸収体パターンABSを形成した後で、側面SS1の撥水化処理を行い、側面SS1に側面表面部(側面部)REP2を形成することで、EUVマスクMSK2を製造することもできる。吸収体膜AFをパターン加工して吸収体パターンABSを形成した後で、側面SS1の撥水化処理を行う場合、撥水化処理の前に、プラズマを用いるエッチング工程、および、有機化合物を容易に溶解可能な溶剤を用いた洗浄工程が終わっている。そのため、側面SS1が撥水処理されることで形成される側面表面部(側面部)REP2の撥水性が、これらのエッチング工程または洗浄工程により低下することを防止または抑制することができる。
EUVマスクMSK2についても、EUVマスクMSK1(図3参照)と同様に、フッ素化処理、または、フッ素樹脂や撥水性膜を側面に接着するか、またはコーティングすることなどにより、側面表面部(側面部)REP2を形成することができる。EUVマスクMSK2のフッ素化処理については、マスク基体(マスク用基板)MS、多層反射膜(反射膜)ML、キャッピング層CAP、バッファ層BUF、吸収体パターンABS(吸収体膜AF)など互いに異なる材料に対してフッ素化処理を行うことになるため、各層の撥水性が互いに異なるおそれがある。しかし、このような場合、EUVマスクMSK2を構成する各部分のうち最も厚さが厚い部分であるマスク基体(マスク用基板)MSの側面、あるいは、マスク基体(マスク用基板)MSの次に厚い部分である多層反射膜(反射膜)MLの側面において、十分な撥水性が確保されていればよい。
図6の断面図は、EUVマスクの他の変形例としてのEUVマスクMSK3の断面構造を示すものである。図6に示すEUVマスクMSK3では、マスク基体(マスク用基板)MSの側面、多層反射膜(反射膜)MLの側面およびキャッピング層CAPの側面を含め、EUVマスクMSK3の側面SS1が、撥水化処理されている。
EUVマスクMSK3は、例えばブライトフィールドマスクであり、フィールド部の外部またはデバイスパターンエリアMDE(図2参照)の外部である周辺部で、吸収体パターンABSが形成されておらず、最表層が、多層反射膜(反射膜)MLの表面に形成されたキャッピング層CAPである。このような場合には、マスク基体(マスク用基板)MSの側面、多層反射膜(反射膜)MLの側面およびキャッピング層CAPの側面が、撥水化処理される。
EUVマスクMSK3についても、EUVマスクMSK2(図5参照)と同様に、吸収体膜AFまで形成されたマスクブランクが製造された後、吸収体パターンABSを形成する前に、側面SS1の撥水化処理を行い、側面SS1に側面表面部(側面部)REP3を形成する。これにより、吸収体パターンABSを形成する工程以後の工程において、側面SS1の撥水化処理が既に終了しているため、EUVマスクMSK3の取り扱いが容易になる。また、ブランク欠陥品に対してこの側面SS1の撥水化処理を行うことがなく、生産性を向上させることができる。
図7の断面図は、EUVマスクのさらに他の変形例としてのEUVマスクMSK4の断面構造を示すものである。図7に示すEUVマスクMSK4では、マスク基体(マスク用基板)として、マスク基体(マスク用基板)自体が撥水性を有するマスク基体(マスク用基板)MS4を用いる。
このようなマスク基体(マスク用基板)自体が撥水性を有するマスク基体(マスク用基板)MS4の材料として、カーボンやフッ素などを添加するか、または、カーボンやフッ素などを分子結合させたことで、撥水性が付与された材料を用いる。マスク基体(マスク用基板)MS4自体が撥水性を有するため、マスク基体(マスク用基板)MS4の側面SS1が、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP4となる。なお、マスク基体(マスク用基板)MS4の材料は、好適には、撥水性が付与された場合であっても、撥水性が付与されていない場合と同様に、熱膨張率が低い材料である。
EUVマスクMSK4については、マスク基体(マスク用基板)の材料を変更するだけで足りるため、マスクブランクの製造工程およびEUVマスクの製造工程において追加される工程の数が少なく、また、既存の工程や設備をそのまま流用することができる。
以上、図5〜図7を用いてEUVマスクの変形例を説明したが、側面が撥水性を有していればよいので、EUVマスクとして、図5〜図7を用いて説明した変形例におけるEUVマスクが有する構造以外の種々の構造を有するものを用いることができる。また、側面を撥水化処理する方法としても、図5〜図7を用いて説明した変形例において説明した方法以外の種々の方法を行うことができる。
なお、EUVマスクにおいて、撥水性を有する部分は、側面SS1のみに限定されず、裏面(第2主面)PS2またはパターン面(表面、第1主面)PS1であって、側面SS1の近傍に位置する部分、すなわち、周縁の部分も撥水性を有していてもよい。また、マスク基体(マスク用基板)MSの側面の全面が撥水性を有していなくてもよく、マスク基体(マスク用基板)MSの側面に、マスク基体(マスク用基板)MSの外周を全周に亘り囲むように撥水性を有する部分(撥水帯)が形成されたものでもよい。ただし、形成された撥水帯が、後述するマスク裏面洗浄工程において、洗浄液(リンス液)をパターン面(第1主面)PS1に回り込むことを防止する防水壁として機能することが好ましい。
<マスク裏面洗浄工程>
続いて、EUVマスクの裏面を洗浄するマスク裏面洗浄工程について説明する。図8は、実施の形態1のマスク裏面洗浄工程を行うための洗浄装置の構成を模式的に示す断面図である。図9および図10は、実施の形態1のマスク裏面洗浄工程を行うための洗浄装置の構成を模式的に示す平面図である。図8は、図9のA−A線に沿った断面図であり、図10のB−B線に沿った断面図でもある。なお、図10では、図9において、撥水性プレート14を外した状態を図示している。
なお、図8では、EUVマスクとして、図6を用いて説明したEUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2を洗浄する場合を図示している。また、図8では、理解を簡単にするために、EUVマスクMSK3のうち、キャッピング層CAP(図6参照)、バッファ層BUF(図6参照)および導電膜CF(図6参照)の図示を省略している。
洗浄装置10は、スピナー11、マスク押さえピン12、駆動装置13、撥水性プレート14および落下防止爪15を有する。
なお、以下では、一例としてEUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2を洗浄する場合について、説明する。
スピナー11は、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2が上向きの状態、すなわち、パターン面(表面、第1主面)PS1が下向きの状態で、EUVマスクMSK3を水平に保持する。また、スピナー11は、EUVマスクMSK3を保持した状態で、回転可能に設けられている。スピナー11には、平面視におけるEUVマスクMSK3の平面形状に対応して、マスク押さえピン12が設けられており、スピナー11は、マスク押さえピン12によりEUVマスクMSK3を両側方から挟むことで、EUVマスクMSK3を保持する。四角形状の平面形状を有するEUVマスクMSK3は4側面を有するため、マスク押さえピン12も、EUVマスクMSK3の平面形状に対応し、平面視において、図10に示すように、保持されるEUVマスクMSK3を4側方から囲むように、設けられている。
スピナー11には、駆動装置13が設けられており、マスク押さえピン12は、駆動装置13により、保持されるEUVマスクMSK3に向かって押し出される(前進する)か、または、引っ込む(後退する)ようになっている。マスク裏面洗浄工程を実施するときは、駆動装置13によりマスク押さえピン12が押し出される(前進する)ことで、EUVマスクMSK3を挟んで保持する。また、マスク裏面洗浄工程が終了したときは、駆動装置13によりマスク押さえピン12が引っ込む(後退する)ことで、EUVマスクMSK3を洗浄装置10から取り外して搬出することができる。
撥水性プレート14は、スピナー11に保持されているEUVマスクMSK3の周囲を囲むように設けられている。また、撥水性プレート14は、撥水性プレート14の上面14aが、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2と同一の水平面を構成するように、設けられている。撥水性プレート14は、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)がEUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2に供給されたときに、供給された洗浄液(リンス液)がEUVマスクMSK3のパターン面(表面、第1主面)PS1に回り込むことを防止するためのものである。したがって、撥水性プレート14は、好適には、例えばフッ素樹脂などの撥水性が高い材料により構成されている。
図9に示すように、EUVマスクMSK3と撥水性プレート14との間隔をd1とする。このとき、間隔d1は、側面表面部(側面部)REP3および撥水性プレート14における洗浄液(リンス液)に対する接触角にもよるが、例えば1mm程度以下、好適には例えば200μm程度とすることができる。このような場合、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)の表面張力により、EUVマスクMSK3と撥水性プレート14との隙間に洗浄液が侵入することを防止することができ、EUVマスクMSK3のパターン面(表面、第1主面)PS1に洗浄液が回り込むことを防止することができる。
撥水性プレート14の平面視における外形形状は、好適には、円形形状である。これにより、EUVマスクMSK3を回転させながら裏面(第2主面)PS2に洗浄液(リンス液)を供給するときに、撥水性プレート14の外周からの洗浄液(リンス液)の水切りがよくなり、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2を均一に洗浄し、乾燥することができる。
洗浄装置10は、好適には、停電時や用力低下時にEUVマスクMSK3の落下を防止する落下防止爪15を有する。
また、洗浄装置10は、スピナー11に設けられたマスク押さえピン12によりEUVマスクMSK3の側面を挟んで保持するものであり、パターン面(表面、第1主面)PS1と接触して保持するものではない。このような保持方法を採用することにより、ペリクルPERが装着可能なEUVマスクMSK3についても、ペリクルPERが装着されたままEUVマスクMSK3をスピナー11により保持することができる。そのため、マスク裏面洗浄工程を行う際に、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物が付着することを防止できる。あるいは、ペリクルPERに代え、例えば、二重ポッドの内蓋が装着可能なEUVマスクMSK3についても、その内蓋が装着されたままEUVマスクMSK3をスピナー11により保持することができる。この場合も、ペリクルPERが装着されたままEUVマスクMSK3を保持する場合と同様に、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物が付着することを防止できる。
また、洗浄装置10は、好適には、スピナー11に保持されているEUVマスクMSK3の上方に設けられたブラシ16を有する。ブラシ16は、スピナー11に保持されているEUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2に接触可能に設けられており、マスク裏面洗浄工程において、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2に付着している異物を剥がして除去する。
このような洗浄装置10において、パターン面(表面、第1主面)PS1が下向きになり、裏面(第2主面)PS2が上向きになるように、マスク押さえピン12を用いてEUVマスクMSK3をスピナー11により保持する。そして、EUVマスクMSK3をスピナー11により回転させながら、EUVマスクMSK3の上方から、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2に、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)17を、例えばノズル(図示は省略)により供給する。そして、EUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2に供給された洗浄液(リンス液)17が、遠心力によりEUVマスクMSK3の外周に向かって流れることで、裏面(第2主面)PS2に付着した異物18を除去する。このとき、洗浄液(リンス液)17とブラシ16とを併用し、異物18を剥がして除去することで、異物18が除去される除去率を向上させることができる。
マスク裏面洗浄工程におけるスピナー11の回転数は、EUVマスクMSK3の形状、寸法にもよるが、好適には、例えば1秒あたり数10回転から1500回転程度とすることができる。
EUVマスクMSK3の側面表面部(側面部)REP3の撥水性については、高ければ高いほどよいが、好適には、水(純水)に対する接触角が70°以上である。水(純水)に対する接触角が70°以上の場合、マスク裏面洗浄工程において、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)がEUVマスクMSK3のパターン面(表面、第1主面)PS1側に回り込むことを確実に防止できる。ただし、洗浄液(リンス液)を吐出する際の圧力が増加した場合、および、EUVマスクMSK3と撥水性プレート14との間隔d1が、EUVマスクMSK3の位置ずれや寸法公差に起因して増大した場合を考慮すると、より好適には、水(純水)に対する接触角は90°以上である。また、洗浄液(リンス液)を吐出する際の圧力がさらに増加した場合、および、EUVマスクMSK3と撥水性プレート14との間隔d1がさらに増大した場合を考慮すると、さらに好適には、水(純水)に対する接触角は110°以上である。
なお、上記したマスク裏面洗浄工程の説明では、一例としてEUVマスクMSK3の裏面(第2主面)PS2を洗浄する場合について説明した。しかし、EUVマスクMSK1(図3参照)、EUVマスクMSK2(図5参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)の裏面(第2主面)PS2を洗浄する場合も、マスク裏面洗浄工程において、洗浄液(リンス液)がEUVマスクのパターン面(表面、第1主面)PS1に回り込むことを防止できる。また、EUVマスクMSK1(図3参照)、EUVマスクMSK2(図5参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)の裏面(第2主面)PS2を洗浄する場合も、洗浄液(リンス液)17とブラシ16とを併用し、異物18を剥がして除去することで、異物18が除去される除去率を向上させることができる。
<露光工程>
続いて、上記したマスク裏面洗浄工程が含まれており、露光装置1(図1参照)を用いてウェハを露光する露光工程について、図11を参照しながら説明する。図11は、実施の形態1の露光工程の一部を示すフロー図である。
まず、露光光としてEUV光を用いてパターン露光を行うためのEUVマスクMSK1(図3参照)を用意し(ステップS11)、用意されたEUVマスクMSK1を、露光装置1のマスクストッカー(図示は省略)に移して保管しておく(ステップS12)。
図3に示したように、EUVマスクMSK1は、露光用パターンが形成されたパターン面(表面、第1主面)PS1、パターン面(表面、第1主面)PS1とは反対側の裏面(第2主面)PS2、およびパターン面(表面、第1主面)PS1と裏面(第2主面)PS2との間に配置された側面SS1を有する。また、EUVマスクMSK1は、前述したように、EUVマスクMSK1の側面SS1が撥水性を有している。さらに、EUVマスクMSK1は、前述したようなマスク裏面洗浄工程を行って、裏面(第2主面)PS2が洗浄されたものである。
なお、以下では、EUVマスクMSK1を用いる例について説明するが、EUVマスクMSK1に代え、EUVマスクMSK2(図5参照)、EUVマスクMSK3(図6参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)を用いることもできる。
次いで、EUVマスクMSK1(図3参照)を保持する(マスク保持工程、ステップS13)。このマスク保持工程(ステップS13)では、マスクストッカー(図示は省略)に保管されたEUVマスクMSK1を、マスク搬送装置(図示は省略)により、露光装置1(図1参照)の露光機構部1a(図1参照)に搬送する。そして、図1に示したように、搬送されたEUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2が静電チャック4aの下面(表面)4bと接触した状態で、EUVマスクMSK1を静電チャック4aにより静電吸着する。このような方法により、マスクステージ(保持部)4によりEUVマスクMSK1を保持する。
次いで、EUV露光を行う(EUV露光工程、ステップS14)。このEUV露光工程(ステップS14)では、図1に示したように、マスクステージ(保持部)4にEUVマスクMSK1が保持された状態で、露光機構部1aのウェハステージ6により、レジスト膜が形成されたウェハ21を保持し、保持されたウェハ21に対して、EUVマスクMSK1を用いて、パターン露光を行う。パターン露光が行われたウェハ21が、ウェハステージ6から搬出された後、ウェハステージ6により次のウェハ21を保持し、保持された次のウェハ21に対して、パターン露光を行う。このようにして、予め決定された複数のウェハ21に対して連続してパターン露光が行われる。なお、ウェハ21に形成されたレジスト膜にパターン露光を行う工程の詳細については、後述する図13を用いて説明する。
このようにして予め決定された複数のウェハ21に対して連続してパターン露光を行った後、EUVマスクMSK1を搬出する(マスク搬出工程、ステップS15)。このマスク搬出工程(ステップS15)では、マスクステージ(保持部)4の静電チャック4aによるEUVマスクMSK1の静電吸着を停止し、静電吸着が停止されたEUVマスクMSK1を、マスクステージ(保持部)4から取り外して搬出する。
次いで、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2を洗浄する(マスク裏面洗浄工程、ステップS16)。このマスク裏面洗浄工程(ステップS16)では、図8に示したように、洗浄装置10を用いてEUVマスクMSK1の裏面を洗浄する。マスクステージ(保持部)4に保持する際またはマスクステージ(保持部)4から搬出する際にEUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着した異物18は、図8に示したように、パターン面(表面、第1主面)PS1に付着することなく、容易に除去される。
次に、EUVマスクMSK1のパターン面(表面、第1主面)PS1の異物検査を行って、異物検査での検出値が許容範囲内か否かを判定する(異物検査工程、ステップS17)。この異物検査工程(ステップS17)における異物検査により検出される異物は、EUV露光工程(ステップS14)の際に発生したものであり、大部分は、カーボン(炭素)を含むものであるが、一部は、例えばパターン面(表面、第1主面)PS1で酸化膜が成長して発生する膜や異物を含むものである。
この異物検査工程(ステップS17)における異物検査での検出値が許容範囲内でなかったとき、すなわち、検出値が許容範囲の上限値を超えたときは、クリーニングを行う(クリーニング工程、ステップS18)。このクリーニング工程(ステップS18)として、遠紫外線(Deep Ultra Violet:DUV)とオゾンガスの併用などにより異物を酸化して除去する方法、原子状水素などにより異物を還元して除去する方法、または、洗浄液(リンス液)によりクリーニングを行うウェットクリーニング方法を用いることができる。また、さらに、このクリーニング工程(ステップS18)として、上記した方法を併用することができる。一方、この異物検査での検出値が許容範囲内であったとき、すなわち、検出値が許容範囲の上限値以下であったときは、クリーニングを行わなくてもよい。
なお、異物検査工程(ステップS17)およびクリーニング工程(ステップS18)については、マスク搬出工程を行った後、毎回必ず行うものでなくてもよい。すなわち、異物検査工程(ステップS17)およびクリーニング工程(ステップS18)については、オプション工程として含まれるものであってもよい。
次いで、次の露光予定があるかを判定する(露光予定判定工程、ステップS19)。そして、次の露光予定があるときは、EUVマスクMSK1を、露光装置1(図1参照)のマスクストッカー(図示を省略)に移して保管しておく(ステップS12)。一方、次の露光予定がないときは、終了となる。
<半導体装置の製造工程>
続いて、上記した露光工程を含む半導体装置の製造工程について、図12〜図16を参照しながら説明する。図12〜図16は、実施の形態1の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
なお、図13では、理解を簡単にするために、EUVマスクMSK1のうち、キャッピング層CAP(図3参照)、バッファ層BUF(図3参照)および導電膜CF(図3参照)の図示を省略している。
以下では、ウェハの主面上に被加工膜(被エッチング膜)が形成されており、その被加工膜(被エッチング膜)を、所望のパターンに加工する(エッチングする)例について、説明する。
まず、ウェハの主面に形成された被加工膜(被エッチング膜)上に、レジスト膜(フォトレジスト膜)を形成する(レジスト膜形成工程)。このレジスト膜形成工程では、まず、図12に示すように、ウェハ21の主面21aに被加工膜(被エッチング膜)22が形成されたウェハ21を用意する。そして、被加工膜(被エッチング膜)22上にレジスト(フォトレジスト)を塗布し、熱処理することで、レジスト膜(フォトレジスト膜)23を形成する。図12に示すように、EUVリソグラフィでは、レジスト膜(フォトレジスト膜)23と被加工膜22の間に、反射防止膜などを形成しておく必要はない。しかし、レジスト膜(フォトレジスト膜)23と被加工膜(被エッチング膜)22との間には、レジスト膜(フォトレジスト膜)23と被加工膜(被エッチング膜)22との密着力を強化してレジストパターン倒れを防止するための密着強化膜(図示は省略)を形成しておくことも可能である。または、レジスト膜(フォトレジスト膜)23と被加工膜(被エッチング膜)22の間には、レジスト膜(フォトレジスト膜)23のエッチング耐性不足を補うためのハードマスク(図示は省略)を形成しておくことも可能である。
次いで、EUV光を露光光として、レジスト膜(フォトレジスト膜)を露光する(EUV露光工程)。このEUV露光工程は、図11を用いて説明したEUV露光工程(図11のステップS14)と同様に行うことができる。具体的には、図13に示すように、パターン面(表面、第1主面)PS1に形成された多層反射膜(反射膜)MLと吸収体パターンABSとを含む露光用パターンを有するEUVマスクMSK1に露光光2aを入射する(照射する)。多層反射膜(反射膜)MLに入射された(照射された)露光光2aは、多層反射膜(反射膜)MLで反射されて反射光2bとなる。一方、吸収体パターンABSに入射された(照射された)露光光2aは吸収体パターンABSに吸収されるため、反射されない。その結果、多層反射膜(反射膜)MLで反射された反射光2bを、縮小投影光学系5(図1参照)を介してレジスト膜(フォトレジスト膜)23に照射する。これにより、レジスト膜(フォトレジスト膜)23を、多層反射膜(反射膜)MLと吸収体パターンABSとを含む露光用パターンを用いてパターン露光する。
なお、前述したように、EUVマスクとして、EUVマスクMSK1に代え、EUVマスクMSK2(図5参照)、EUVマスクMSK3(図6参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)を用いることもできる。
次いで、パターン露光されたレジスト膜(フォトレジスト膜)を現像する(現像工程)。この現像工程では、パターン露光されたレジスト膜(フォトレジスト膜)23(図13参照)を現像することで、図14に示すように、EUVマスクMSK1(図13参照)の吸収体パターンABS(図13参照)を含む露光用パターンが転写されたレジストパターン23aを形成する。
次いで、被加工膜(被エッチング膜)をエッチングする(エッチング工程)。このエッチング工程では、レジストパターン23aをエッチング用マスクとして用いて、被加工膜(被エッチング膜)22(図14参照)を加工する(エッチングする)。これにより、図15に示すように、ウェハ21上に、被加工膜(被エッチング膜)22(図14参照)からなり、EUVマスクMSK1(図13参照)の吸収体パターンABS(図13参照)を含む露光用パターンが転写されたパターン22aを形成する。その後、図16に示すように、例えばアッシングなどによりレジストパターン23aを除去する。
<異物の付着について>
図17は、比較例のEUVマスクの一部を示す要部断面図である。図18〜図20は、比較例のEUVマスクにおいて、裏面に異物が付着したときに露光用パターンの位置ずれが発生することを説明するための断面図である。図21は、EUVマスクを洗浄する際に、異物がさらに付着することを説明するための断面図である。
なお、図19および図20では、理解を簡単にするために、EUVマスクMSK0のうち、マスク基体(マスク用基板)MSのみを図示し、多層反射膜(反射膜)ML(図17参照)、キャッピング層CAP(図17参照)、バッファ層BUF(図17参照)、吸収体パターンABS(図17参照)および導電膜CF(図17参照)の図示を省略している。また、図19および図20では、理解を簡単にするために、静電チャック4a(図18参照)の図示を省略し、静電チャック4aの下面(表面)4bの位置を二点鎖線により図示している。さらに、図21では、理解を簡単にするために、EUVマスクMSK0のうち、キャッピング層CAP(図3参照)、バッファ層BUF(図3参照)および導電膜CF(図3参照)の図示を省略している。
図17に示すように、比較例のEUVマスクMSK0のパターン面(表面、第1主面)PS1、裏面(第2主面)PS2は、それぞれEUVマスクMSK1(図3参照)のパターン面(表面、第1主面)PS1、裏面(第2主面)PS2に相当する。また、図17に示すように、比較例のEUVマスクMSK0のマスク基体(マスク用基板)MS、多層反射膜(反射膜)ML、キャッピング層CAP、バッファ層BUFは、それぞれEUVマスクMSK1(図3参照)のマスク基体(マスク用基板)MS、多層反射膜(反射膜)ML、キャッピング層CAP、バッファ層BUFに相当する。さらに、図17に示すように、比較例のEUVマスクMSK0の吸収体パターンABSは、EUVマスクMSK1(図3参照)の吸収体パターンABSに相当し、EUVマスクMSK1(図3参照)の吸収体パターンABSと同様に、吸収体膜AFからなる。
一方、図17に示すように、比較例のEUVマスクMSK0の側面SS1には、EUVマスクMSK1(図3参照)の側面SS1(図3参照)には形成されている側面表面部(側面部)REP1(図3参照)が、形成されていない。
EUVマスクMSK0では、図18に示すように、EUVマスクMSK0の裏面PS2に異物18が付着した状態で、EUVマスクMSK0を静電チャック4aにより静電吸着すると、静電チャック4aの下面(表面)4bとEUVマスクMSK0の裏面PS2との間に異物18が挟まれる。そして、静電チャック4aの下面(表面)4bとEUVマスクMSK0の裏面PS2との間に異物18が挟まれると、その異物18の近傍では、図19および図20に示すように、EUVマスクMSK0が変形する。その変形は、OPD(Out-of-Plane Distortion)およびIPD(In Plane Distortion)と呼ばれている。
OPDが発生したときは、図19に示すように、EUVマスクMSK0の下面であるパターン面(表面)PS1の高さ位置がΔzだけ変化し、その高さ位置の変化Δzにより、転写されるパターンに、水平方向に沿って位置ずれが発生する。ここで、EUVマスクMSK0のパターン面(表面)PS1に入射された(照射された)露光光2aがパターン面(表面)PS1で反射された反射光2bが、パターン面(表面)PS1に垂直な方向となす角度をθとする。そして、転写されるパターンに、OPDにより水平方向に沿って発生する位置ずれをOPD0とするとき、OPD0は、下記式(1)
OPD0=θ・Δz (1)
により表される。
また、IPDが発生したときは、図20に示すように、EUVマスクMSK0が局所的に水平面から角度φだけ傾斜し、その局所的な傾斜により、転写されるパターンに、水平方向に沿って位置ずれが発生する。ここで、EUVマスクMSK0の厚さをtとし、転写されるパターンに、IPDにより水平方向に沿って発生する位置ずれをIPD0とするとき、IPD0は、下記式(2)
IPD0=t・φ (2)
により表される。
EUV光は、波長が非常に短く、例えば石英ガラスなどからなるマスク基体(マスク用基板)MSに吸収される。そのため、前述したように、EUVリソグラフィでは、EUVマスクMSK0として透過型マスクではなく反射型マスクが用いられ、光学系として透過光学系ではなく反射光学系が用いられる。また、パターン面(表面)PS1で反射された反射光2bが、パターン面(表面)PS1に露光光2aを入射する入射光学系に遮られることを防止するために、EUVマスクMSK0のパターン面(表面)PS1に垂直な方向に対して例えば6°(すなわちθ=6°)程度斜めから露光光2aを入射(斜入射)する。そのため、EUVマスクMSK0のパターン面(表面)PS1の高さ位置が変化すると、図19および上記式(1)に示したように、露光によりウェハに形成されたレジスト膜に転写されるパターンに位置ずれが発生する。
静電チャック4aの表面部材は、絶縁性および剛性が要求されるため、例えばセラミックスまたは石英などからなる。しかし、セラミックスおよび石英は脆いため、静電チャック4aによりEUVマスクMSK0を保持する動作と、静電チャック4aからEUVマスクMSK0を搬出する動作とを繰り返した場合、表面部材が欠けることで、異物18が大量に発生する。発生する異物18の個数を、露光後に搬出されたEUVマスクMSK0の裏面PS2全体に付着している異物18の個数で評価した場合、何も対策を行わないときは、100万個程度であり、対策を行っても数100個程度である。
上記したOPDまたはIPDにより転写されるパターンに位置ずれを発生させる、すなわち、転写欠陥を発生させると判断されるような異物18の大きさ(直径)の下限値は、転写されるパターンの最小寸法にもよるが、現状では例えば20〜100nm程度である。また、数100個程度の異物18が付着したEUVマスクMSK0を静電チャック4aにより静電吸着すると、EUVマスクMSK0の裏面PS2と静電チャック4aの下面(表面)4bとの間に、上記の転写欠陥を発生させると判断されるような大きさ(例えば20〜100nm程度)の異物18が挟まれる。その結果、転写されるパターンに位置ずれが発生し、製造される半導体デバイスの回路パターンの形状精度が低下するなどして、半導体装置の性能を低下させるという問題がある。
また、EUVマスクMSK0を静電チャック4aにより静電吸着した状態で一定以上の時間が経過すると、静電吸着を停止した後も、裏面PS2が静電チャック4aの下面(表面)4bに固着され、EUVマスクMSK0を容易に静電チャック4aから取り外すことができなくなる。このような場合、EUVマスクMSK0を静電チャック4aから取り外すために、EUVマスクMSK0の裏面PS2をピン等で押す必要があり、その際に、裏面PS2に傷が付いて異物18が発生し、発生した異物18が裏面PS2に付着することがある。このような場合にも、再びEUVマスクMSK0が静電チャック4aにより静電吸着される際に、EUVマスクMSK0の裏面PS2と静電チャック4aの下面(表面)4bとの間に上記した異物18が挟まれるという問題がある。
さらに、EUVマスクMSK0のパターン面(表面)PS1に、パターン面(表面)PS1への異物18の付着を防止するペリクルが貼られておらず、EUVマスクMSK0がいわゆるペリクルレスマスクとして用いられる場合がある。このような場合、EUVマスクMSK0がマスク搬送装置のアームに接触した状態でEUVマスクMSK0を搬送する際、または、EUVマスクMSK0を静電チャック4aにより保持するかまたは静電チャック4aから取り外して搬出する際に異物18が発生する。そして、発生した異物18がEUVマスクMSK0のパターン面(表面)PS1に付着し、付着した異物18に起因して、レジスト膜に転写されるパターンに転写欠陥が生じる。
このような異物18を除去するためには、EUVマスクMSK0の裏面PS2を洗浄する方法、または、EUVマスクMSK0全体を洗浄する方法が考えられる。
EUVマスクMSK0の裏面PS2を洗浄する方法として、例えば、EUVマスクMSK0の側面SS1を保持し、裏面PS2に処理液(洗浄液)を接触させ、処理液(洗浄液)に向けて気体を吐出して処理液(洗浄液)をEUVマスクMSK0から分離させる方法がある。しかし、このような方法では、裏面PS2に付着している異物18を処理液(洗浄液)のみにより洗浄することになるため、裏面PS2から異物18を容易に除去することができない。
一方、EUVマスクMSK0全体を洗浄する方法として、例えばSPM(Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)洗浄など、図21に示すように、貯留槽19に貯留されている洗浄液17aにEUVマスクMSK0を浸漬することで異物を洗浄する方法(バッチ式ウェット洗浄)がある。しかし、裏面PS2に異物18が付着した状態でバッチ式ウェット洗浄を行った場合、図21に示すように、EUVマスクMSK0の裏面PS2から除去された異物18の一部は洗浄液17aに拡散するが、EUVマスクMSK0の裏面PS2から除去された異物18の大部分は洗浄液17aの表面17bに浮遊する。そのため、洗浄液17aからEUVマスクMSK0を引き上げる際に、EUVマスクMSK0の裏面PS2およびパターン面(表面)PS1に異物18が付着する。例えば、裏面PS2に100万個程度の異物18が付着したEUVマスクMSK0に対してバッチ式ウェット洗浄を行った場合、貯留槽19の大きさにもよるが、洗浄液17aからEUVマスクMSK0を引き上げる際に、パターン面(表面)PS1に例えば1000個程度の異物18が付着することがある。
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態1では、図3に示したように、EUVマスクMSK1の側面SS1には、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP1が形成されている。また、側面表面部(側面部)REP1が形成されていることで、側面SS1の撥水性が、裏面(第2主面)PS2の撥水性よりも高い。
そのため、EUVマスクMSK1に対してマスク裏面洗浄工程(図8参照)を行う際に、裏面(第2主面)PS2に供給される洗浄液(リンス液)17(図8参照)が、側面SS1に回り込むことを防止または抑制することができる。あるいは、裏面(第2主面)PS2に供給される洗浄液(リンス液)17が、側面SS1に回り込むことを防止または抑制しつつ、裏面(第2主面)PS2に吐出する洗浄液(リンス液)17の圧力を増加させることができる。したがって、バッチ式ウェット洗浄を行う場合に比べ、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物18(図8参照)が付着することを防止または抑制でき、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着した異物18を容易に除去することができ、製造される半導体デバイスの回路パターンの形状精度を向上させ、半導体装置の性能を向上させることができる。
また、好適には、EUVマスクMSK1のマスク裏面洗浄工程(図8参照)を行う際に、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着している異物18を、ブラシ16(図8参照)を用いて除去する。洗浄液17(図8参照)とブラシ16とを併用して洗浄することで、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着している異物18をブラシ16により裏面(第2主面)PS2から剥がし、剥がれた異物18を洗浄液17によりEUVマスクMSK1の外周側へ流すことができる。そのため、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着している異物18を容易に除去することができ、製造される半導体デバイスの回路パターンの形状精度をより向上させ、半導体装置の性能をより向上させることができる。
また、マスク裏面洗浄工程(図8参照)を行うことで、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2をピン等で押して静電チャック4aから取り外した場合であっても、裏面(第2主面)PS2に付着している異物18を確実に除去することができる。そして、マスク裏面洗浄工程(図8参照)を行うことで、図21に示したバッチ式ウェット洗浄によりEUVマスクを洗浄する場合に比較して、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物18が付着することを容易に防止できる。
さらに、本実施の形態1では、側面SS1の撥水性が、パターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性よりも高い。言い換えれば、スペース部(開口部)SPC(図3参照)の底面および側壁における撥水性は、側面SS1の撥水性よりも低い。そのため、スペース部(開口部)SPC(図3参照)の幅寸法W1(図3参照)に対する高さ寸法T1(図3参照)の比であるアスペクト比が高い場合でも、スペース部(開口部)SPCの内部に洗浄液(リンス液)が容易に入ることができる。
したがって、裏面(第2主面)PS2を洗浄する際には、洗浄液(リンス液)がパターン面(表面、第1主面)PS1に回り込むことを防止しつつ、パターン面(表面、第1主面)PS1を洗浄する洗浄工程を行う際には、パターン面(表面、第1主面)PS1を洗浄する洗浄能力が低下することを防止または抑制することができる。そのため、製造される半導体デバイスの回路パターンの欠陥低減、形状精度をさらに一層向上させ、半導体装置の性能をさらに一層向上させることができる。
また、EUVマスクMSK1をペリクルレスマスクとして用いた場合であっても、パターン面(表面、第1主面)PS1に付着している異物18を確実に除去することができる。
一方、図5に示したように、EUVマスクMSK2の側面SS1には、側面表面部(側面部)REP2が形成されており、側面SS1の撥水性が、裏面(第2主面)PS2の撥水性よりも、パターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性よりも高い。そのため、EUVマスクMSK2も、上記したEUVマスクMSK1(図3参照)が有する効果と同様の効果を有する。加えて、EUVマスクMSK2については、EUVマスクMSK1(図3参照)と比較した場合、図5を用いて前述したように、ブランク欠陥品に対して側面SS1の撥水化処理を行うことがなく、生産性を向上させることができる等の優れた効果を有する。
また、図6に示したように、EUVマスクMSK3の周辺部では、吸収体パターンABSが形成されていないものの、EUVマスクMSK3の側面SS1には、側面表面部(側面部)REP3が形成されており、側面SS1の撥水性が、裏面(第2主面)PS2の撥水性よりも、パターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性よりも高い。そのため、EUVマスクMSK3も、上記したEUVマスクMSK1(図3参照)が有する効果と同様の効果を有する。加えて、EUVマスクMSK3については、EUVマスクMSK1(図3参照)と比較した場合、図6を用いて前述したように、ブランク欠陥品に対して側面SS1の撥水化処理を行うことがなく、生産性を向上させることができる等の優れた効果を有する。
さらに、図7に示したように、EUVマスクMSK4は、そのマスク基体(マスク用基板)MS4自体が撥水性を有する材料からなるため、側面SS1の撥水性が、裏面(第2主面)PS2の撥水性よりも、パターン面(表面、第1主面)PS1の撥水性よりも高い。そのため、EUVマスクMSK4も、上記したEUVマスクMSK1(図3参照)が有する効果と同様の効果を有する。加えて、EUVマスクMSK4については、EUVマスクMSK1(図3参照)と比較した場合、図7を用いて前述したように、マスクブランク製造工程およびマスク製造工程において追加される工程の数が少なく、また、既存の工程や設備をそのまま流用することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の半導体装置の製造工程について説明する。前述した実施の形態1では、EUVマスクを用いた露光工程を含む半導体装置の製造工程について説明した。それに対して、実施の形態2では、実施の形態1で説明したEUVマスクを用いた露光工程を含む半導体装置の製造工程を、NANDゲート回路の製造工程に適用した例について説明する。
図22および図23は、実施の形態2の半導体装置であるNANDゲート回路を示す図である。図22は、2入力NANDゲート回路NDのシンボル図である。図23は、2入力NANDゲート回路の回路図である。実施の形態2の半導体装置である2入力NANDゲート回路NDは、図22および図23に示すI1およびI2の2入力を有し、図23に示すように、出力Fを有する。
図24は、実施の形態2の半導体装置であるNANDゲート回路のレイアウトを示す図である。図25〜図30は、実施の形態2の半導体装置の製造工程で用いるマスクを説明するための平面図である。
図24において、一点鎖線で囲まれた部分は単位セル110である。単位セル110は、図40などを用いて後述するが、p型ウェル領域PWの表面のn+型拡散層111n上に形成された2個のnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qnを有している。また、単位セル110は、図40などを用いて後述するが、n型ウェル領域NWの表面のp+型拡散層111p上に形成された2個のpチャネル型MISFETQpを有している。なお、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpは、図23の回路図にも示されている。
上記2入力NANDゲート回路NDを作製するために、図1に示したように、EUV光源2、反射型照明光学系3、マスクステージ4、縮小投影光学系5、ウェハステージ6を有する露光機構部1aを備えた露光装置1を準備する。また、図25〜図30のそれぞれに示すようなマスクM1〜M6を順次用いてウェハへのパターン転写を繰り返す。このうち、比較的大きなサイズのパターンが形成されたマスクM1〜M3は、通常のフォトリソグラフィ用マスクである。一方、微細で、かつ高い寸法精度が要求されるパターンが形成されたマスクM4〜M6は、EUVリソグラフィ用マスク(EUVマスク)である。
図25に示すマスクM1において、符号101aは透過領域を示し、符号102aは吸収領域を示している。図26に示すマスクM2において、符号101bは透過領域を示し、符号102bは吸収領域を示している。図27に示すマスクM3において、符号101cは透過領域を示し、符号102cは吸収領域を示している。
図28に示すマスクM4において、符号101dは反射領域を示し、符号102dは吸収領域を示している。図29に示すマスクM5において、符号101eは反射領域を示し、符号102eは吸収領域を示している。図30に示すマスクM6において、符号101fは反射領域を示し、符号102fは吸収領域を示している。
本実施の形態2では、マスクM4、M5、M6として、実施の形態1で説明したEUVマスクMSK1(図3参照)を用いることができる。このとき、マスクM4、M5、M6のそれぞれの反射領域101d、101e、101fは、例えば図3を用いて説明した多層反射膜(反射膜)MLからなる。また、マスクM4、M5、M6のそれぞれの吸収領域102d、102e、102fは、例えば図3を用いて説明した吸収体パターンABSからなる。
なお、実施の形態1と同様に、EUVマスクMSK1(図3参照)に代え、EUVマスクMSK2(図5参照)、EUVマスクMSK3(図6参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)を用いることもできる。
次に、本実施の形態2の半導体装置の製造工程の具体的な工程について説明する。はじめに、nチャネル型MISFETQn(図40参照)およびpチャネル型MISFETQp(図40参照)を形成するまでの工程について、図31〜図40を参照しながら説明する。図31〜図40は、実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。なお、図31〜図40は、図24のC−C線に沿った断面図である。
まず、図31に示すように、p型の単結晶シリコンからなるウェハW(以下「半導体基板S」として説明する。)上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜115を酸化法によって形成した後、絶縁膜115上に窒化シリコン膜116をCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって堆積する。その後、窒化シリコン膜116上にレジスト(フォトレジスト)を塗布し、熱処理することで、レジスト膜(フォトレジスト膜)117を形成する。
次に、図32に示すように、図25に示すパターンが形成されたマスクM1を用いてレジスト膜(フォトレジスト膜)117に露光処理および現像処理を施すことにより、窒化シリコン膜116上にレジストパターン117aを形成する。なお、吸収領域102aは、遮光膜であり、例えばCrからなる。
次に、レジストパターン117a(図32参照)をマスクとして窒化シリコン膜116および絶縁膜115をドライエッチングした後、レジストパターン117aを除去する。続いて、窒化シリコン膜116をマスクとして半導体基板Sの表面をドライエッチングすることにより、図33に示すように、溝118を形成する。
次に、図34に示すように、半導体基板S上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜119をCVD法によって堆積する。次に、絶縁膜119を化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法により平坦化し、続いて、窒化シリコン膜116および絶縁膜115を除去することにより、図35に示すように、半導体基板Sの表面に素子分離溝SGを形成する。ここでは、素子分離溝SGによって素子分離を行ったが、これに限定されるものではなく、例えばLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法で形成したフィールド絶縁膜によって素子分離を行ってもよい。
次に、図36に示すように、半導体基板S上に形成したレジスト膜(フォトレジスト膜)に、図26に示すパターンが形成されたマスクM2を用いて露光処理および現像処理を施すことにより、レジストパターン117bを形成する。続いて、レジストパターン117bで覆われていない領域の半導体基板Sに例えばリンまたはヒ素をイオン注入することによって、n型ウェル領域NWを形成する。なお、吸収領域102bは、遮光膜であり、例えばCrからなる。
次に、レジストパターン117bを除去した後、図37に示すように、半導体基板S上に形成したレジスト膜(フォトレジスト膜)に、図27に示すパターンが形成されたマスクM3を用いて露光処理および現像処理を施すことにより、レジストパターン117cを形成する。続いて、レジストパターン117cで覆われていない領域の半導体基板Sに例えばホウ素をイオン注入することによって、p型ウェル領域PWを形成する。なお、吸収領域102cは、遮光膜であり、例えばCrからなる。
次に、図38に示すように、半導体基板Sの表面に例えば酸化シリコンなどからなる膜厚2nm程度の絶縁膜120を形成した後、絶縁膜120上に例えば多結晶シリコン膜とタングステン膜との積層膜からなる導電膜112をCVD法により堆積する。
次に、図28に示すパターンが形成されたマスクM4を用意し、図39に示すように、導電膜112上に形成したレジスト膜(フォトレジスト膜)に露光処理した後、現像処理を施すことにより、レジストパターン117dを形成する。続いて、レジストパターン117dをマスクとして導電膜112および絶縁膜120をドライエッチングする。これにより、nチャネル型MISFETQn(図40参照)を構成するゲート電極112Aおよびゲート絶縁膜120A、ならびに、pチャネル型MISFETQp(図40参照)を構成するゲート電極112Aおよびゲート絶縁膜120Aを形成する。反射領域101dは、例えば図3を用いて説明した多層反射膜(反射膜)MLからなる。また、吸収領域102dは、例えば図3を用いて説明した吸収体パターンABSからなる。
上記図38および図39に示す工程には、実施の形態1において図12〜図15を用いて説明した半導体装置の製造工程を適用することができる。すなわち、図12に示したように、被加工膜(被エッチング膜)22(図38の絶縁膜120および導電膜112に相当)上に、レジスト膜(フォトレジスト膜)23を形成する。次いで、図13に示したように、露光光2aがEUVマスクMSK1(図39のマスクM4に相当)のパターン面(表面、第1主面)PS1で反射された反射光2bを、縮小投影光学系5(図1参照)を介してレジスト膜(フォトレジスト膜)23に照射することで、レジスト膜(フォトレジスト膜)23をパターン露光する。次いで、図14に示したように、パターン露光されたレジスト膜(フォトレジスト膜)23を現像することで、EUVマスクMSK1の吸収体パターンABSを含む露光用パターンが転写されたレジストパターン23a(図39のレジストパターン117dに相当)を形成する。次いで、レジストパターン23aをエッチング用マスクとして用いて、被加工膜(被エッチング膜)22を加工する(エッチングする)。これにより、図15に示すように、EUVマスクMSK1の吸収体パターンABSを含む露光用パターンが転写されたパターン22a(図39のゲート電極112Aおよびゲート絶縁膜120Aに相当)を形成する。
EUVマスクMSK1の側面SS1には、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP1が形成されており(図3参照)、EUVマスクMSK1は、マスク裏面洗浄工程(図8参照)が行われたものである。したがって、マスク裏面洗浄工程(図8参照)を行う際に、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物が付着することを防止または抑制でき、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着した異物を容易に除去することができる。そのため、形成されるゲート電極112Aおよびゲート絶縁膜120Aの形状精度を向上させることができる。
次に、レジストパターン117dを除去した後、図40に示すように、p型ウェル領域PWに例えばリンまたはヒ素をイオン注入することによって、nチャネル型MISFETQnのソース、ドレインを構成するn+型拡散層111nを、ゲート電極112A(図39参照)に対して自己整合的に形成する。また、n型ウェル領域NWに例えばホウ素をイオン注入することによって、pチャネル型MISFETQpのソース、ドレインを構成するp+型拡散層111pを、ゲート電極112A(図39参照)に対して自己整合的に形成する。ここまでの工程で、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpが完成する。
次に、配線形成工程について、図41〜図46を参照しながら説明する。図41〜図46は、実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。なお、図41〜図46も、図31〜図40と同様に、図24のC−C線に沿った断面図である。
まず、図41に示すように、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpの上部に、例えば酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜121aをCVD法により堆積する。
次に、図29に示すパターンが形成されたマスクM5を用意し、図42に示すように、層間絶縁膜121a上に形成したレジスト膜(フォトレジスト膜)に露光処理した後、現像処理を施すことにより、レジストパターン117eを形成する。続いて、レジストパターン117eをマスクとして層間絶縁膜121aをドライエッチングすることにより、n+型拡散層111nおよびp+型拡散層111pの上部において、層間絶縁膜121aにコンタクトホールCNTを形成する。反射領域101eは、例えば図3を用いて説明した多層反射膜(反射膜)MLからなる。また、吸収領域102eは、例えば図3を用いて説明した吸収体パターンABSからなる。
上記図42に示す工程にも、図39に示した工程と同様に、実施の形態1において図12〜図15を用いて説明した半導体装置の製造工程を適用することができる。また、EUVマスクMSK1の側面SS1には、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP1が形成されており(図3参照)、EUVマスクMSK1は、マスク裏面洗浄工程(図8参照)が行われたものである。したがって、マスク裏面洗浄工程(図8参照)を行う際に、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物が付着することを防止または抑制でき、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着した異物を容易に除去することができる。そのため、形成されるコンタクトホールCNTの形状精度を向上させることができる。
次に、レジストパターン117eを除去した後、図43に示すように、コンタクトホールCNTの内部に、例えばタングステン(W)、タングステン合金または銅(Cu)などからなる金属膜を埋め込み、続いて金属膜の表面をCMP法で平坦化する。これにより、コンタクトホールCNTの内部に金属プラグ113を形成する。
次に、図44に示すように、層間絶縁膜121a上に、例えば酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜121bをCVD法で堆積する。続いて、図30に示すパターンが形成されたマスクM6を用意し、層間絶縁膜121b上に形成されたレジスト膜(フォトレジスト膜)に露光処理した後、現像処理を施すことにより、レジストパターン117fを形成する。続いて、レジストパターン117fをマスクとして層間絶縁膜121bをドライエッチングする。反射領域101fは、例えば図3を用いて説明した多層反射膜(反射膜)MLからなる。また、吸収領域102fは、例えば図3を用いて説明した吸収体パターンABSからなる。
上記図44に示す工程にも、図42に示した工程と同様に、実施の形態1において図12〜図15を用いて説明した半導体装置の製造工程を適用することができる。また、EUVマスクMSK1の側面SS1には、撥水性を有する側面表面部(側面部)REP1が形成されており(図3参照)、EUVマスクMSK1は、マスク裏面洗浄工程(図8参照)が行われたものである。したがって、マスク裏面洗浄工程(図8参照)を行う際に、パターン面(表面、第1主面)PS1に異物が付着することを防止または抑制でき、EUVマスクMSK1の裏面(第2主面)PS2に付着した異物を容易に除去することができる。そのため、層間絶縁膜121bをドライエッチングして形成されるパターンの形状精度を向上させることができる。
次に、レジストパターン117fを除去した後、図45に示すように、例えば銅などからなる金属膜をスパッタリング法で堆積し、続いてこの金属膜の表面をCMP法で平坦化することにより、配線114A、114B、114Cを形成する。
次に、図46に示すように、配線114A、114B、114Cの上部に、例えば酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜121cをCVD法で堆積した後、図25〜図30を用いて説明したEUVマスクとは異なる別のEUVマスクを用いて配線114Cの上部の層間絶縁膜121cにスルーホールVIAを形成する。その後、スルーホールVIAを通じて配線114Cに接続される第2層配線122を形成することにより、2入力NANDゲートが完成する。なお、マスクM5、M6に形成された開口パターンの形状や位置を変更することによって、NORゲート回路等、他の回路を形成することもできる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3の半導体装置の製造工程について説明する。前述した実施の形態1では、EUVマスクを用いた露光工程を含む半導体装置の製造工程について説明した。それに対して、実施の形態3では、実施の形態1で説明したEUVマスクを用いた露光工程を含む半導体装置の製造工程を、複数製品、複数ロットの半導体集積回路装置の製造工程に適用した例について説明する。
図47は、実施の形態3の半導体装置の製造工程の一部を示すフロー図である。
まず、露光装置1(図1参照)において、製品Aの第1ロットのα層用のEUVマスクM21を、マスクステージ4(図1参照)により保持し、保持されたEUVマスクM21を用いて、製品Aの第1ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM21をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS21)。
このステップS21の具体的な工程については、EUVマスクMSK1と同様に、側面SS1が撥水性を有するEUVマスクM21を用い、実施の形態1で図11のステップS13〜ステップS15として説明した工程を行う。つまり、マスクストッカー(図示は省略)に保管されたEUVマスクM21を搬送し、搬送されたEUVマスクM21の裏面(第2主面)PS2を静電チャック4a(図1参照)の下面(表面)4bに吸着させることで、EUVマスクM21をマスクステージ4により保持する(図11のステップS13)。次いで、マスクステージ4にEUVマスクM21が保持された状態で、ウェハステージ6によりウェハ21を保持し、保持されたウェハ21に対して、EUVマスクM21を用いてパターン露光を行う(図11のステップS14)。次いで、マスクステージ4からEUVマスクM21を搬出する(図11のステップS15)。
次いで、露光装置1において、ステップS21の工程と同様に、製品Bの第1ロットのα層用のEUVマスクM22を、マスクステージ4により保持し、保持されたEUVマスクM22を用いて、製品Bの第1ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM22をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS22)。
一方、洗浄装置10(図8参照)において、ステップS21の工程で使用された製品Aのα層用のEUVマスクM21に対して、マスク裏面洗浄工程を行う(ステップS31)。具体的には、実施の形態1で図8を用いて説明した洗浄装置10において、パターン面(表面、第1主面)PS1が下向きになり、裏面(第2主面)PS2が上向きになるように、マスク押さえピン12によりEUVマスクM21をスピナー11により保持する。そして、EUVマスクM21をスピナー11で回転させながら、EUVマスクM21の裏面(第2主面)PS2に、例えば水(純水)などからなる洗浄液(リンス液)17を供給し、好適には、ブラシ16を併用することで、裏面(第2主面)PS2に付着している異物を除去する。
また、洗浄装置10において、ステップS22の工程で使用された製品Bのα層用のEUVマスクM22に対して、ステップS31の工程と同様に、マスク裏面洗浄工程を行う(ステップS32)。
一方、露光装置1において、ステップS22の工程の後、ステップS22の工程と同様に、製品Aの第1ロットのβ層用のEUVマスクM23を、マスクステージ4により保持し、保持されたEUVマスクM23を用いて、製品Aの第1ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM23をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS23)。
次いで、露光装置1において、ステップS23の工程と同様に、製品Bの第1ロットのβ層用のEUVマスクM24を、マスクステージ4により保持し、保持されたEUVマスクM24を用いて、製品Bの第1ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM24をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS24)。
一方、洗浄装置10において、ステップS32の工程の後、ステップS32の工程と同様に、ステップS23の工程で使用された製品Aのβ層用のEUVマスクM23に対して、マスク裏面洗浄工程を行う(ステップS33)。
ここで、露光装置1で露光に使用されたEUVマスクについては、マスクステージ4から搬出した後、裏面(第2主面)PS2の異物検査を行い、異物検査における検出値が許容範囲内でなかったときにのみ、マスク裏面洗浄工程を行うようにしてもよい。図47には、ステップS24の工程の後、ステップS24の工程で使用された製品Bの第1ロットのβ層用のEUVマスクM24について、裏面(第2主面)PS2の異物検査での検出値が許容範囲内であったため、裏面洗浄を行わない例を示している。
次いで、露光装置1において、ステップS24の工程と同様に、製品Aの第2ロットのα層用のEUVマスクM25を、マスクステージ4により保持し、保持されたEUVマスクM25を用いて、製品Aの第2ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM25をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS25)。このステップS25では、EUVマスクM25として、ステップS31のマスク裏面洗浄工程が行われたEUVマスクM21が用いられる。次いで、洗浄装置10において、ステップS25の工程で使用された製品Aのα層用のEUVマスクM25に対して、ステップS33の工程と同様に、マスク裏面洗浄工程を行う(ステップS34)。
次いで、露光装置1において、ステップS25の工程と同様に、製品Aの第1ロットのγ層用のEUVマスクM26を、マスクステージ4により保持し、保持されたEUVマスクM26を用いて、製品Aの第1ロットの複数のウェハに対して露光を行う。そして、露光が終了した後、EUVマスクM26をマスクステージ4から搬出し、マスクストッカーに保管する(ステップS26)。
その後、露光装置1において、ステップS26の工程と同様の工程を、製品Bの第1ロットのγ層用のEUVマスクM27(ステップS27)、製品Bの第2ロットのα層用のEUVマスクM28(ステップS28)、製品Bの第2ロットのβ層用のEUVマスクM29(ステップS29)を用いて、順次行う。このとき、ステップS28では、EUVマスクM28として、ステップS32のマスク裏面洗浄工程が行われたEUVマスクM22が用いられる。
また、洗浄装置10において、ステップS34と同様の工程を、製品Aのγ層用のEUVマスクM26(ステップS35)、製品Bのγ層用のEUVマスクM27(ステップS36)、製品Bのβ層用のEUVマスクM29(ステップS37)について、順次行う。また、図47では、ステップS28の工程の後、ステップS28の工程で使用された製品Bのα層用のEUVマスクM28(EUVマスクM22と同一)について、マスクステージ4から取り外した後、裏面(第2主面)PS2の異物検査での検出値が許容範囲内であったため、マスク裏面洗浄工程を行わない例を示している。
例えばステップS31のマスク裏面洗浄工程が行われたEUVマスクM21がステップS25の工程においてEUVマスクM25として用いられるように、洗浄装置10を用いてマスク裏面洗浄工程が施されたEUVマスクは、露光装置1において、再度露光に用いられる。また、本実施の形態3で用いられるEUVマスクM21〜M29として、実施の形態1で説明したEUVマスクMSK1(図3参照)、EUVマスクMSK2(図5参照)、EUVマスクMSK3(図6参照)またはEUVマスクMSK4(図7参照)を用いることができる。したがって、同一の製品および同一の層であって、異なるロット番号に対するEUV露光工程の間(例えばステップS21およびステップS25の間)に、マスク裏面洗浄工程(例えばステップS31)を都度行うことにより、OPDまたはIPDの発生を防止または抑制し、転写されるパターンに位置ずれが発生することを防止または抑制することができる。そのため、製造される半導体装置の歩留まりを高めることができ、結果として、半導体装置の性能を向上させることができる。
また、マスク裏面洗浄工程(例えばステップS31)を行うことで、EUVマスクの裏面PS2に付着した異物を略完全に除去することができる。そのため、マスクステージ4(図1参照)によりEUVマスクを保持する動作と、マスクステージ4からEUVマスクを搬出する動作とを繰り返した場合でも、EUVマスクの裏面(第2主面)PS2に累積的に付着している異物の数が少なくなる。したがって、図47において、ステップS24の工程で使用された製品Bのβ層用のEUVマスクM24について例示して説明したように、マスクステージ4から搬出した後、必ずマスク裏面洗浄工程を行わなくてもよい。そのため、製造される半導体装置の歩留まりを確保しつつ、生産性を向上させ、製造コストを低減することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、側面において撥水性を有するマスクを、EUVリソグラフィ工程を行うためのEUVマスクに適用する例について説明した。しかし、側面において撥水性を有するマスクは、EUVマスクに適用される例に限定されるものではなく、例えば、EUVリソグラフィ工程以外のフォトリソグラフィ工程を行うための反射型マスクその他のフォトマスクであって、裏面がマスクステージの表面に接触した状態で保持されるフォトマスクにも適用可能である。
また、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、側面において撥水性を有するマスクを、裏面に導電膜が形成されており、マスクステージの静電チャックが導電膜を静電吸着することで、マスクステージに保持されるマスクに適用する例について説明した。しかし、側面において撥水性を有するマスクは、静電吸着により保持されるマスクに適用する例に限定されるものではなく、例えば、反射型マスクその他のフォトマスクであって、裏面に導電膜が形成されておらず、裏面がマスクステージに接触した状態でマスクステージに保持されるフォトマスクにも適用可能である。