以下、図1〜図9を参照して、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印INは車両幅方向内方を示している。また、本実施形態では、車両用シート10の前方向、上方向および幅方向は、車両の前方向、上方向および幅方向と一致している。
<実施形態の構成>
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、シート本体12と、シート調整装置14とによって構成されている。シート本体12は、シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレーム16と、シートバックの骨格を構成するシートバックフレーム18とを有している。これらのシートクッションフレーム16及びシートバックフレーム18には、それぞれ図示しないシートパッドが取り付けられると共に、各シートパッドの表面が図示しないシート表皮によって覆われる構成になっている。
シートクッションフレーム16の後端部とシートバックフレーム18の下端部とは、角度調整機構としてのリクライニング機構20(第1の被調整機構)を介して連結されている。このリクライニング機構20は、従来周知のものであり、ロック解除レバー22がロック解除方向(図1の矢印A方向)に回転されることによりロックが解除され、シートクッションフレーム16に対するシートバックフレーム18の相対角度(リクライニング角度)を多段階に調整可能となる。
また、シートクッションフレーム16とシートバックフレーム18との間には、シートバックフレーム18を前傾方向へ付勢するリターンスプリング24が掛け渡されている。このため、リクライニング機構20のロック解除状態でシートバックフレーム18に負荷を掛けない場合には、シートバックフレーム18がシートクッションフレーム16に対して所定位置まで前傾するようになっている。一方、リクライニング機構20のロック解除状態においてシートバックフレーム18に所定値以上の後ろ向き荷重を作用させると、シートバックフレーム18がシートクッションフレーム16に対して後傾するようになっている。そして、任意の傾斜角でロック解除レバー22の操作力を解除すると、リクライニング機構20がロック状態に復帰し、シートバックフレーム18が傾倒不能に拘束される。
また、シートクッションフレーム16は、高さ調整機構としてのリフタ機構26(第3の被調整機構)を介してロアフレーム28に連結されている。このリフタ機構26は、従来周知のものであり、シートクッションフレーム16とロアフレーム28とに回転自在に連結された前側リンク30と後側リンク32(図1以外では図示省略)とを備えている。これらの前側リンク30及び後側リンク32は、シートクッションフレーム16及びロアフレーム28と共に4節リンクを構成している。
また、リフタ機構26は、従来周知のポンプ式リフタ装置34(図3、図5、図6参照)を備えている。このポンプ式リフタ装置34は、シートクッションフレーム16における車両幅方向外側の側面に取り付けられており、図5及び図6に示されるように、軸線方向がシート幅方向に沿った入力軸36を備えている。この入力軸36が回転されると、当該入力軸36の回転力がシートクッションフレーム16に取り付けられたピニオン33及びリフタギヤ35(図5及び図6参照)を介して後側リンク32に伝達されるようになっている。これにより、後側リンク32及び前側リンク30が回動して、ロアフレーム28に対するシートクッションフレーム16の配置高さが調整されるようになっている。この場合、入力軸36が回転方向一側(図3及び図4の矢印B方向)へ回転されると、シートクッションフレーム16が上方へ変位し、入力軸36が回転方向他側(図3及び図4の矢印C方向)へ回転されると、シートクッションフレーム16が下方へ変位する。
図1及び図2に示されるように、ロアフレーム28の下方には、前後位置調整機構としてのスライド機構38(第2の被調整機構)の構成部材であるスライドレール40が配置されている。このスライド機構38は、従来周知のものであり、ロアフレーム28の下端部に固定されたアッパレール42が、車体フロアに固定されたロアレール44によってシート前後方向にスライド可能に支持されている。このスライド機構38には、ロアレール44に対するアッパレール42のスライドをロック(規制)する図示しないロック機構が設けられている。このロック機構は、ロアフレーム28に軸支されたロック解除レバー46がロック解除方向(図1の矢印D方向)に回転されることにより、上記ロックを解除するようになっている。これにより、ロアレール44に対するアッパレール42のスライド、すなわち車体フロアに対する本車両用シート10の前後位置調整が可能な状態になる。
次に、シート調整装置14について説明する。
図3〜図6に示されるように、シート調整装置14は、操作力伝達機構としての噛合いクラッチ機構48を備えている。この噛合いクラッチ機構48は、前述したポンプ式リフタ装置34のシート幅方向外方側に配設されており、プレート50を有している。プレート50は、金属材料によって円板状に形成されており、ポンプ式リフタ装置34の入力軸36と同軸的に配置されている。このプレート50の中央部におけるポンプ式リフタ装置34側の面には、図示しない凹状の被嵌合部が形成されており、当該被嵌合部には、ポンプ式リフタ装置34の入力軸36に設けられた凸状の嵌合部52が嵌合している。上記被嵌合部及び嵌合部52は、シート幅方向から見て三又状に形成されており、これにより、入力軸36に対するプレート50の相対回転が規制されている。
プレート50を介してポンプ式リフタ機構26とは反対側には、噛合いクラッチ機構48の構成部材である第2操作力伝達部材としての内側クラッチ部材54が配置されている。この内側クラッチ部材54は、樹脂材料によって円板状に形成されており、ポンプ式リフタ装置34の入力軸36と同軸的に配置されている。この内側クラッチ部材54の外周部におけるプレート50側の面には、プレート50側へ突出した複数(ここでは3つ)の凸部56が設けられている。これらの凸部56は、内側クラッチ部材54の周方向において等間隔に並んで配置されており、プレート50の外周部に形成された複数(ここでは3つ)の切欠部59に嵌合している。これにより、プレート50に対する内側クラッチ部材54の相対回転が規制されており、内側クラッチ部材54は、プレート50を介して入力軸36と一体回転可能に連結されている。また、内側クラッチ部材54の外周部におけるプレート50とは反対側の面には、クラッチ歯58が形成されている。このクラッチ歯58は、内側クラッチ部材54の周方向に等間隔に並んで配置された複数の歯によって構成されており、内側クラッチ部材54の外周部の全周にわたって設けられている。
内側プレート50を介してプレート50とは反対側には、噛合いクラッチ機構48の構成部材であるケース60が配置されている。このケース60は、樹脂材料によってシート幅方向内側へ開口した有底円筒状に形成されており、ケース60の底壁62はシート幅方向に対して直交する方向に沿って配置されると共に、ケース60の側壁63はシート幅方向に沿って同径で延伸されている。そして、このケース60は、ポンプ式リフタ装置34と同軸的に配置されている。図5及び図6に示されるように、ケース60の底壁62の中央部には、内側クラッチ部材54側へ突出した支持部64が一体かつ同軸的に設けられている。この支持部64は、シート幅方向外側が開口した有底円筒状に形成されており、底壁部分には円形の貫通孔64Aが形成されている。この貫通孔64Aには、円筒状のカラー66が同軸的に挿入されている。
このカラー66の軸線方向一端側(シート幅方向内側)は、内側クラッチ部材54の中央部に形成された円形の貫通孔、プレート50の中央部に形成された円形の貫通孔に挿入されており、カラー66の軸線方向一端部が入力軸36の軸線方向一端面(シート幅方向外側の端部)に当接している。このカラー66の内側には、シート幅方向外側からボルト68が挿入されており、当該ボルト68の先端側が入力軸36に形成された雌ねじ部に螺合している。これにより、カラー66が入力軸36に締結固定されると共に、当該ボルト68の頭部によって入力軸36に対する支持部64(すなわちケース60)のシート幅方向外側への移動が制限されている。また、支持部64の底壁と入力軸36との間には、内側クラッチ部材54の中央側及びプレート50の中央側が挟まれている。これにより、入力軸36に対するプレート50及び内側クラッチ部材54の軸線方向移動が制限されると共に、入力軸36に対するケース60のシート幅方向内側への移動が制限されている。但し、カラー66は、入力軸36に対するケース60の相対回転がボルト68によって規制されないように長さ寸法が設定されており、ケース60は、入力軸36に対して相対回転自在とされている。これにより、ケース60(噛合いクラッチ機構48)が、入力軸36を介してシートクッションフレーム16(シート本体12)に回転可能に設けられて、入力軸36の軸回りに回転方向一側(図3及び図4に示す矢印B方向)及び回転方向他側(図3及び図4に示す矢印C方向)に回転可能に構成されている。
このケース60の底壁62におけるシート幅方向外側の面には、シート幅方向外側へ突出した複数(ここでは3つ)の筒状部70が設けられている。これらの筒状部70は、円筒状に形成され、ケース60の周方向に等間隔に並んで配置されており、これらの筒状部70の内側を介してケース60の底壁62の一側(シート幅方向内側)と他側(シート幅方向外側)とが連通している。これらの筒状部70は、後述する移動クラッチ部材72に設けられた複数の棒状部80に対応している。また、ケース60の底壁62における上記複数の筒状部70の間には、図示しない金属製のナットがインサート成形によって埋め込まれている。これらのナットは、後述する操作レバー118に対応している。
上述したケース60の内側には、噛合いクラッチ機構48の構成部材である連結部材としての移動クラッチ部材72が収容されている。移動クラッチ部材72は、樹脂材料によって軸線方向寸法が短い円筒状に形成されており、内側にケース60の支持部64が挿入されている。支持部64の外周面及び移動クラッチ部材72の内周面には、互いに係合する外周側スプライン部74(図5参照)及び内周側スプライン部76(図3及び図4参照)がそれぞれ形成されている。つまり、支持部64の外周面に軸線方向に沿って形成された断面凹凸状の外周側スプライン部74と、移動クラッチ部材72の内周面に軸線方向に沿って形成された断面凹凸状の内周側スプライン部76とが摺動可能に係合することにより、移動クラッチ部材72がケース60に対して一体回転可能でかつ軸線方向に移動自在に装着されている。
この移動クラッチ部材72には、シート幅方向内側へ開口した環状溝が形成されており、当該環状溝内には、噛合いクラッチ機構48の構成部材である金属製の圧縮コイルスプリング78が収容されている。この圧縮コイルスプリング78は、移動クラッチ部材72と同軸的に配置されており、軸線方向一端部が内側クラッチ部材54に当接すると共に、軸線方向他端部が上記環状溝の底面に当接している。これにより、移動クラッチ部材72は、シート幅方向外側へ向けて付勢されており、通常はシート幅方向外側の端面がケース60の底壁62に当接した状態に保持されている。
上述の移動クラッチ部材72は、軸線方向一端側(シート幅方向内側)が大径部とされ、軸線方向他端側(シート幅方向外側)が小径部とされている。小径部のシート幅方向外側の端面には、シート幅方向外側へ向けて突出した複数(ここでは3つ)の棒状部80が設けられている。これらの棒状部80は、円柱状に形成されており、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で移動クラッチ部材72の周方向に等間隔に並んで配置されている。これらの棒状部80は、前述したケース60の底壁62に設けられた複数の筒状部70に挿入されており、先端側が筒状部70よりもシート幅方向外側へ突出している。これらの棒状部80は、後述する切替部材136に対応している。
また、移動クラッチ部材72の上記大径部におけるシート幅方向内側の面には、移動クラッチ部材72の全周にわたってクラッチ歯82が形成されている。このクラッチ歯82は、移動クラッチ部材72の周方向に等間隔に並んだ複数の歯によって構成されており、内側クラッチ部材54のクラッチ歯58に対して噛合い可能とされている。クラッチ歯58とクラッチ歯82とが噛み合った状態では、内側クラッチ部材54と移動クラッチ部材72とが一体回転可能に連結される。但し、通常は圧縮コイルスプリング78の付勢力によって移動クラッチ部材72が内側クラッチ部材54から離間する位置に保持されており、クラッチ歯58とクラッチ歯82との噛合いが解除されている。
また、移動クラッチ部材72の上記大径部におけるシート幅方向外側の面には、移動クラッチ部材72の全周にわたってクラッチ歯84が形成されている。このクラッチ歯84は、移動クラッチ部材72の周方向に等間隔に並んで複数の歯によって構成されており、後述する第1操作力伝達部材としての外側クラッチ部材86に対応している。
外側クラッチ部材86は、噛合いクラッチ機構48の構成部材であり、リング状に形成された本体部88を備えている。本体部88の外周部には、径方向外側に突出した一対の凸部が設けられており、これらの凸部がケース60の側壁63の内周面に形成された凹溝に嵌入している。これにより、本体部88は、ケース60に対して軸線方向移動不能で且つ所定範囲相対回転可能に連結されている。この本体部88の内側には、移動クラッチ部材72の前記小径部が回転自在に挿入されており、外側クラッチ部材86は、移動クラッチ部材72に対して相対回転自在とされている。この本体部88の軸線方向一端面(シート幅方向内側の端面)には、本体部88の全周にわたってクラッチ歯90が形成されている。このクラッチ歯90は、本体部88の周方向に等間隔に並んだ複数の歯によって構成されており、移動クラッチ部材72のクラッチ歯84に対して噛合い可能とされている。このクラッチ歯90は、移動クラッチ部材72が圧縮コイルスプリング78の付勢力によってシート幅方向外側へ付勢されていることにより、通常はクラッチ歯84と噛み合っている。このように、このクラッチ歯84とクラッチ歯車90とが噛み合った状態では、移動クラッチ部材72と外側クラッチ部材86とが一体回転可能に連結されるようになっている。
但し、移動クラッチ部材72が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗してシート幅方向内側へ変位すると、外側クラッチ部材86のクラッチ歯90と移動クラッチ部材72のクラッチ歯84との噛合いが解除されると共に、移動クラッチ部材72のクラッチ歯82と内側クラッチ部材54のクラッチ歯58とが噛み合うようになっている。この状態では、前述したように、移動クラッチ部材72と内側クラッチ部材54とが一体回転可能に連結される。
さらに、上述の外側クラッチ部材86には、図3及び図4に示されるように、本体部88の半径方向外側へ突出した連結部92が設けられている。この連結部92は、ケース60の側壁63の一部に形成された切欠を介してケース60の外側へ突出しており、シート後方斜め下方へ向けて延びている。この連結部92は、リンク部材94及びワイヤ96に対応している。
ワイヤ96は、一端部が前述したスライド機構38のロック解除レバー46に係止されており、他端部が上記連結部92に係止されている。このため、連結部92がシート後方側へ変位する方向(図3及び図4の矢印C方向)に外側クラッチ部材86が回転すると、外側クラッチ部材86の回転力がワイヤ96を介してロック解除レバー46に伝達され、ロック解除レバー46がロック解除方向へ回転される。これにより、スライド機構38のロックが解除される。
一方、リンク部材94は、板金材料によって長尺状に形成されている。このリンク部材94の長手方向一端部は、図1及び図2に示されるように、前述したリクライニング機構20のロック解除レバー22の先端部に対して、シート幅方向に沿った連結軸95を介して回転自在に連結されている。リンク部材94の長手方向他端側には、シート幅方向外側へ開口したビード部98が形成されている。このビード部98は、リンク部材94の長手方向に沿って延在している。このビード部98は、連結部92に設けられた凸部100(図4参照)に対応している。
凸部100は、連結部92の先端部(下端部)からシート幅方向内側へ向けて突出しており、ビード部98の内側に挿入されている。また、連結部92の基端側からは、L字状の腕部102が延びており、当該腕部102がリンク部材94のシート幅方向内側面に当接している。これにより、連結部92がリンク部材94に対してビード部98に沿った範囲内で相対移動可能に連結されている。また、このリンク部材94の長手方向他端部には、シート幅方向外側へ延びる当接片104が設けられており、当該当接片104が連結部92に対してシート前方側から対向している。
このため、外側クラッチ部材86が回転方向一側(図3及び図4の矢印B方向)へ回転した際には、連結部92が、シート前方側へ変位して当接片104と当接することにより、リンク部材94がシート前方側へ引っ張られる。これにより、外側クラッチ部材86の回転力がリンク部材94を介してロック解除レバー22に伝達され、ロック解除レバー22がロック解除方向へ回転される。これにより、リクライニング機構20のロックが解除される。なおこの場合、連結部92とロック解除レバー46との間でワイヤ96が撓むことにより、外側クラッチ部材86の回転力がロック解除レバー46には伝達されないようになっている。
一方、外側クラッチ部材86が回転方向他側(図3及び図4の矢印C方向)へ回転した際には、連結部92がシート後方側へ変位して、前述したように、外側クラッチ部材86の回転力がワイヤ96を介してスライド機構38のロック解除レバー22に伝達される。この場合、凸部100がビード部98の後端側(上端側)へ移動することにより、連結部92がリンク部材94に対してシート後方側へ相対移動する。これにより、外側クラッチ部材86の回転力がリンク部材94を介してリクライニング機構20のロック解除レバー22に伝達されないようになっている。
上述した噛合いクラッチ機構48は、荷重伝達部材としてのカバー106によって覆われている。このカバー106は、筒部107と固定部としての一対のフランジ部108とを含んで構成されている。
筒部107は、シート幅方向内側へ開口された略有底円筒状に形成されると共に、ポンプ式リフタ装置34に同軸上に配置されている。筒部107の側壁110は、筒部107の底壁114からシート幅方向中間部へ同径でシート幅方向に延伸されると共に、シート幅方向中間部からシート幅方向内側へ向かうに従い拡径に延伸されている。つまり、側壁110では、底壁114よりもシートクッションフレーム16側の方が外形の幅が広く設定されている。そして、筒部107の内側には、噛合いクラッチ機構48が配置されている。これにより、筒部107の側壁110とケース60の側壁63とが平行に配置されて、筒部107の底壁114とケース60の底壁62とが平行に配置されており、筒部107の側壁110及び底壁114とケース60の外周部との間には僅かな隙間が設けられている。
一対のフランジ部108は、筒部107の開口部におけるシート前側部分及びシート後側部分からそれぞれ筒部107の径方向外側へ延設されると共に、シート幅方向に対して直交する方向に沿って配置されている。このフランジ部108は、図示しない複数のボルト及びナットによって、シートクッションフレーム16における車両幅方向外方側の側面に締結固定されている。また、筒部107の側壁110とフランジ部108との間には、複数の補強用リブ112が掛け渡されており、これにより、筒部107の径方向の荷重に対してカバー106が補強されている。
さらに、このカバー106の底壁114の中央部には、円形の貫通孔が同軸的に形成されており、当該貫通孔を介してケース60の底壁62がカバー106のシート幅方向外側へ露出している。カバー106の底壁114におけるシート幅方向外側の面には、前後一対の規制突起116が設けられている。これらの規制突起116は、底壁114の貫通孔を介して互いに反対側に配置されており、シート幅方向外側へ向けて突出している。これらの規制突起116は、後述する切替部材136に対応している。
カバー106のシート幅方向外側には、操作部材としての操作レバー118が配置されている。この操作レバー118は、シート調整装置14を構成しており、レバー本体120と、蓋部122と備えている。レバー本体120は、樹脂材料によって長尺状に形成されており、シート幅方向外方側が開口した軸線方向寸法が短い略有底円筒状の基部124と、基部124の外周部からシート前方側へ延出されたアーム部126とによって構成されている。アーム部126は、シート幅方向外方側が開口した断面略U字状に形成されている。一方、蓋部122は、樹脂材料によって長尺な板状に形成されてレバー本体120の開口側(シート幅方向外側)に装着されており、レバー本体120の開口部を閉塞している。
この操作レバー118は、基部124の底壁128を貫通した複数(ここでは3つ)の図示しないネジが、噛合いクラッチ機構48のケース60の底壁62に埋め込まれた図示しないナットに螺合することにより、ケース60に締結固定されている。また、ケース60の底壁62に設けられた複数の凸部が基部124の底壁128に形成された凹部に嵌合している。このため、操作レバー118は、ケース60と一体で入力軸36の軸線回りに回転するようになっている。また、基部124の底壁128には、前述したケース60の複数の筒状部70を挿通させるための貫通孔が形成されており、各筒状部70を貫通した複数の棒状部80の先端側が操作レバー118内(基部124内)に突出している。さらに、基部124の底壁128には、前後一対の円弧孔130が形成されている。これらの円弧孔130は、操作レバー118の回転中心を中心とする円弧状に形成されている。これらの円弧孔130には、前述したカバー106の一対の規制突起116が挿通されており、各規制突起116の先端側が操作レバー118内(基部124内)に突出している。
この操作レバー118と前述したカバー106との間には、付勢部材としての捩りコイルスプリング132が配置されている。この捩りコイルスプリング132は、図5及び図6に示されるように、基部124の底壁128に形成された環状溝内に収容されており、捩り方向一端部に形成された一端側係止部が基部124に係止されると共に、捩り方向他端部に形成された他端側係止部がカバー106の底壁114に設けられた係止部134に係止されている。これにより、操作レバー118は、通常は捩りコイルスプリング132の付勢力によって図1及び図2に示される中立位置に保持されており、アーム部126が中立位置よりも上側へ持ち上げられた際、及び中立位置よりも下側へ押し下げられた際には、捩りコイルスプリング132が弾性変形するようになっている。このため、アーム部126に持ち上げ力又は押し下げ力が作用しなくなると、操作レバー118が捩りコイルスプリング132の付勢力によって中立位置へと復帰する。
また、操作レバー118の内側には、切替部材136が収容されている。切替部材136は、樹脂材料によって長尺状に形成されており、操作レバー118の長手方向に沿って配置されている。この切替部材136は、レバー本体120及びカバー106に設けられた図示しない複数の支持部と係合しており、操作レバー118に対して長手方向にスライド可能に支持されている。この切替部材136は、長手方向一端側が棒状のロッド部138とされ、長手方向他端側が板状のプレート部140とされており、ロッド部138とプレート部140との間には、長尺矩形枠状のスプリング収容部142が設けられている。さらに、ロッド部138の先端部(シート前方側の端部:スプリング収容部142とは反対側の端部)には、円柱状の操作ボタン部146が設けられている。この操作ボタン部146は、アーム部126の先端部(シート前方側の端部)に形成された円形の開口に挿通されてアーム部126よりもシート前方側へ突出している。
また、ロッド部138は、アーム部126に沿って延在しており、アーム部126の基端部付近にスプリング収容部142が配置されている。このスプリング収容部142内には、圧縮コイルスプリング148が設けられている。圧縮コイルスプリング148は、軸線方向が操作レバー118の長手方向に沿う状態で配置されている。この圧縮コイルスプリング148の軸線方向一端部は、スプリング収容部142内におけるロッド部138側の端部に設けられた円柱状の位置決め部149が内側に嵌合することにより、スプリング収容部142に係止されている。また、圧縮コイルスプリング148の軸線方向他端部は、アーム部126の底壁から延出されてスプリング収容部142内に挿入された突片151に押し当てられている。これにより、切替部材136は、操作レバー118の前端側へ向けて付勢されている。このため、切替部材136は、通常は図1、図2、図7及び図8に示される非操作位置に保持されており、操作ボタン部146が操作レバー118側へ押し込まれることにより、図9に示される操作位置へと移動される構成になっている。なお、操作ボタン部146に作用する押し込み力が開放されると、切替部材136は圧縮コイルスプリング148の付勢力によって非操作位置へと復帰する。
一方、切替部材136のプレート部140は、板厚方向がシート幅方向に沿う状態で基部124内に収容されている。図5及び図6に示されるように、プレート部140のシート幅方向内側の面には、複数の傾斜突起150が設けられている。これらの傾斜突起150は、前述した移動クラッチ部材72の複数の棒状部80における先端部と対向する位置に配置されている。これらの傾斜突起150は、複数の棒状部80側(シート幅方向内側)の端部が平坦な平坦面150Aとされると共に、シート後方側の側面が傾斜面150Bとされている。傾斜面150Bは、平坦面150Aに連続しており、シート後方側へ向かうに従いシート幅方向外側へ向かうように傾斜している。
図5に示されるように、切替部材136が非操作位置に位置する状態では、上記複数の傾斜突起150が複数の棒状部80に対してシート前方側にずれた位置に配置される。この状態では、移動クラッチ部材72が圧縮コイルスプリング78の付勢力によって内側クラッチ部材54から離間する位置に保持されており、移動クラッチ部材72のクラッチ歯84と外側クラッチ部材86のクラッチ歯90とが噛み合っている。
一方、図6に示されるように、切替部材136が操作位置へとスライドされると、複数の棒状部80の先端が複数の傾斜突起150の傾斜面150Bによってシート幅方向内側へ押されて平坦面150Aに乗り上げることにより、移動クラッチ部材72が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗してシート幅方向内側へ移動される。これにより、移動クラッチ部材72のクラッチ歯84と外側クラッチ部材86のクラッチ歯90との噛合いが解除される一方、移動クラッチ部材72のクラッチ歯82と内側クラッチ部材54のクラッチ歯58とが噛み合うようになっている。
また、上述のプレート部140の前端部及び後端部には、それぞれ上下一対の規制片152が設けられている。これらの規制片152は、シート幅方向内側へ突出しており、前述した前後一対の規制突起116に対応している。つまり、切替部材136が非操作位置と操作位置との間で移動される際には、規制突起116の上側及び下側を上下一対の規制片152が通過する。このため、切替部材136が非操作位置と操作位置との間に位置する状態では、上下一対の規制片152が規制突起116と係合する(当る)ことにより、中立位置からの操作レバー118の回転が規制される構成になっている。また、操作レバー118が中立位置の上側又は下側へ操作された状態(操作途中の状態も含む)では、上下一対の規制片152のうちの一方が規制突起116と当たることにより、非操作位置から操作位置への切替部材136の移動、又は操作位置から非操作位置への切替部材136の移動が規制されるようになっている。
ここで、操作レバー118のアーム部126に回転方向一側又は回転方向他側以外の荷重(例えば、シート幅方向の荷重)が仮に作用した際には、操作レバー118に上下方向を軸とした図5及び図6に示す矢印E方向又は矢印F方向の回転モーメントが作用する。このため、操作レバー118及びケース60(噛合いクラッチ機構48)が、ケース60の貫通孔64Aを中心にして図5に示す矢印G方向又は矢印H方向へ揺動(移動)して、この揺動量が基準値以上になる際には、ケース60の底壁62及び側壁63が、それぞれカバー106の底壁114及び側壁110に当接されるように構成されている。
<実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、操作レバー118がシートクッションフレーム16に回転可能に取り付けられている。この操作レバー118は、シート本体12に着座した乗員がアーム部126を把持して上側(回転方向一側)又は下側(回転方向他側)に操作することができる。また、この操作レバー118には、アーム部126の先端から突出した操作ボタン部146を備える切替部材136が取り付けられており、アーム部126を把持した乗員が親指等で操作ボタン部146を押圧操作することにより、切替部材136が非操作位置から操作位置へと移動される。
切替部材136が非操作位置に位置する状態(非操作状態)では、移動クラッチ部材72のクラッチ歯84と外側クラッチ部材86のクラッチ歯90とが噛み合うことにより、移動クラッチ部材72と外側クラッチ部材86とが一体回転可能に連結されている。この非操作状態において、操作レバー118のアーム部126が、図7に二点鎖線で示されるように中立位置の上側(回転方向一側)へ操作されると、その操作力がケース60に伝達され、ケース60、移動クラッチ部材72及び外側クラッチ部材86が図3及び図4の矢印B方向へ回転される。この操作力(回転力)は、リンク部材94を介してリクライニング機構20のロック解除レバー22に伝達され、ロック解除レバー22がロック解除方向に回転される。これにより、リクライニング機構20のロックが解除され、シートバックのリクライニング角度を調整可能な状態になる。
また、上記非操作状態において、操作レバー118のアーム部126が、図8に二点鎖線で示されるように中立位置の下側(回転方向他側)へ操作されると、その操作力がケース60に伝達され、ケース60、移動クラッチ部材72及び外側クラッチ部材86が図3及び図4の矢印C方向へ回転される。この操作力(回転力)は、ワイヤ96を介してスライド機構38のロック解除レバー46に伝達され、ロック解除レバー46がロック解除方向に回転される。これにより、スライド機構38のロックが解除され、車両用シート10の前後位置を調整可能な状態になる。
一方、乗員が操作ボタン部146を押圧操作することにより、切替部材136が操作位置へと移動された状態(操作状態)では、移動クラッチ部材72の複数の棒状部80が切替部材136の複数の傾斜突起150に押されることにより、移動クラッチ部材72がシート幅方向内側へ移動する。これにより、移動クラッチ部材72のクラッチ歯84と外側クラッチ部材86のクラッチ歯90との噛合いが解除されると共に、移動クラッチ部材72のクラッチ歯82と内側クラッチ部材54のクラッチ歯58とが噛み合う。これにより、移動クラッチ部材72と内側クラッチ部材54とが一体回転可能に連結される。この操作状態において、操作レバー118のアーム部126が、図9に二点鎖線で示されるように中立位置の上側(回転方向一側)へ操作されると、その操作力がケース60、移動クラッチ部材72、内側クラッチ部材54及びプレート50を介してポンプ式リフタ装置34(リフタ機構26)の入力軸36に伝達される。これにより、入力軸36が図3及び図4の矢印B方向へ回転されると共に、当該入力軸36の回転力がピニオン33及びリフタギヤ35介して後側リンク32に伝達され、シートクッションフレーム16がロアフレーム28に対して上方へ変位する(シート高さが高く調整される)。なお、図9ではシートクッションフレーム16がロアフレーム28に対して変位した状態については図示を省略している。
また、上記操作状態において、操作レバー118のアーム部126が、図9に一点鎖線で示されるように中立位置の下側(回転方向他側)へ操作されると、その操作力がケース60、移動クラッチ部材72、内側クラッチ部材54及びプレート50を介してポンプ式リフタ装置34の入力軸36に伝達される。これにより、入力軸36が図3及び図4の矢印C方向へ回転されると共に、当該入力軸36の回転力がピニオン33及びリフタギヤ35を介して後側リンク32に伝達され、シートクッションフレーム16がロアフレーム28に対して下方へ変位する(シート高さが低く調整される)。
このように、本車両用シート10では、1つの操作レバー118によって、リクライニング機構20、スライド機構38、及びリフタ機構26を調整し又は調整可能な状態にすることができる。しかも、操作レバー118のアーム部126の操作方向が上側及び下側のみであり、単純であるため、操作性の向上及びスペースの有効利用を図ることができる。特に、車両用シートと車体側部(サイドドア等)との間のスペースを広く確保することが困難な小型車などにも適用可能な点で好適である。
ところで、ケース60は、貫通孔64Aの部位において、ボルト68(カラー66)によって回転可能に支持されており、操作レバー118がケース60に一体回転可能に固定されている。このため、操作レバー118のアーム部126に回転方向一側又は回転方向他側以外の荷重(例えば、シート幅方向の荷重)が仮に作用した際には、操作レバー118に上下方向(入力軸36と直交する方向)を軸とした図5及び図6に示す矢印E方向又は矢印F方向の回転モーメントが作用する。このため、操作レバー118及びケース60(噛合いクラッチ機構48)が、ケース60の貫通孔64Aを中心に図5に示す矢印G方向又は矢印H方向へ揺動(移動)する。
ここで、クッションフレーム16には、カバー106が締結固定されている。そして、操作レバー118に回転方向以外の荷重が付与されて、ケース60(噛合いクラッチ機構48)の揺動(移動)量が基準値以上になる際には、ケース60の底壁62がカバー106の筒部107の底壁114に当接すると共に、ケース60の側壁63が筒部107の側壁110に当接する。このため、ケース60(噛合いクラッチ機構48)へ付与(入力)される荷重がカバー106に分散されて、クッションフレーム16に伝達される。これにより、該荷重がケース60の貫通孔64Aの部位に集中することを抑制できる。
しかも、この際には、ケース60が筒部107に当接されることで、ケース60(噛合いクラッチ機構48)がカバー106に保持される状態になる。このため、ケース60(噛合いクラッチ機構48)の基準値以上の揺動(移動)を抑制でき、ひいては操作レバー118の揺動(移動)を抑制できる。これにより、操作レバー118からケース60(噛合いクラッチ機構48)へ過度の荷重が付与(入力)されることも抑制できる。
また、ケース60が、貫通孔64Aの部位において入力軸36に直交する軸回りに揺動して、ケース60の底壁62が筒部107の底壁114に当接する際には、ケース60の底壁62の径方向外側部分が筒部107の底壁114に当接される。このため、入力軸36の軸線と交差する方向(図5の矢印G方向及び矢印H方向参照)の荷重が、ケース60から筒部107の底壁114に作用する。そして、カバー106の筒部107の側壁110は、シート幅方向中間部からシート幅方向内側へ向かうに従い拡径に延伸されている。これにより、筒部107の底壁114に作用する荷重の方向と側壁110の延設方向とが略一致されるため、側壁110の延設方向に沿って筒部107が該荷重を受けることができる。しかも、筒部107が該荷重を引張荷重として受けることができる。したがって、筒部107の変形を抑制しつつ、カバー106がクッションフレーム16に荷重を伝達できるため、該荷重がケース60の貫通孔64Aの部位に集中することを効果的に抑制できる。
さらに、カバー106が、フランジ部108おいてクッションフレーム16に締結固定されており、フランジ部108は、筒部107の径方向外側に設けられている。このため、ケース60(噛合いクラッチ機構48)からの荷重が作用する筒部107の径方向外側においてカバー106を固定できるため、カバー106が該荷重を安定して受けることができる。
また、カバー106の筒部107の側壁110とフランジ部108との間には、補強用リブ112が一体的に架け渡されている。これにより、ケース60の側壁63から筒部107の側壁110へ作用する荷重を補強用リブ112によっても受けることができる。このため、該荷重に対して筒部107の変形を抑制しつつ、該荷重をシートクッションフレーム16へ伝達できる。
さらに、カバー106の筒部107は、略有底円筒形状に形成されており、筒部107は、ケース60の外周部の略全体を覆っている。これにより、例えば、移動クラッチ部材72等に塗布されるグリスがカバー106の外部へ飛散することを抑制できる。
また、カバー106の筒部107の底壁114には、規制突起116が設けられている。このため、ケース60からの荷重をシートクッションフレーム16に伝達するカバー106を利用して、切替部材136の回転を規制することができる。つまり、カバー106に荷重伝達機能と切替部材136の回転規制機能とを付与できる。
なお、本実施の形態では、操作レバー118に回動方向以外の荷重が付与されて、ケース60(噛合いクラッチ機構48)の揺動(移動)量が基準値以上になる際に、ケース60の底壁62及び側壁63がカバー106の筒部107に当接するように構成されている。これに替えて、ケース60(噛合いクラッチ機構48)の揺動(移動)量が基準値以上になる際に、ケース60の底壁62又は側壁63がカバー106の筒部107に当接するように構成してもよい。そして、ケース60の底壁62がカバー106の筒部107に当接するように構成する場合には、カバー106の側壁110を底壁114からシート幅方向内側へ向けて拡径なるように形成してもよい。
また、ケース60(噛合いクラッチ機構48)の揺動(移動)量が基準値以上になる際に、操作レバー119の基部124がカバー106の筒部の底壁114に当接されるように構成してもよい。これにより、荷重がケース60の貫通孔64Aの部位に集中することを一層抑制できる。
さらに、本実施の形態では、車両用シート10がリフタ機構26を備えているが、リフタ機構26を省略してもよい。この場合には、例えば、ケース60をシートクッションフレーム16に直接軸支するように構成すると共に、操作レバー118の切替部材136及び噛合いクラッチ機構48の内側クラッチ部材54を省略してもよい。