以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用アンダーカバー10の部分断面図である。この車両用アンダーカバー10は、例えば、自動車(図示せず)のフロア下面を覆うように設けられるものである。車両用アンダーカバー10には、図示しないが、車両への取付部が複数設けられている。取付部としては、例えば、車両側に螺合するボルトやビス等が挿通する貫通孔からなる取付孔で構成することができる。また、車両用アンダーカバー10が取り付けられる車両としては、乗用自動車が好ましい。
車両用アンダーカバー10は、フロア下面に沿うように加熱成形された芯材11と、芯材11の路面側の面(下面)に積層された路面側スパンボンド不織布12及び路面側ニードルパンチ不織布13と、芯材11のフロア側の面(上面)に積層されたフロア側スパンボンド不織布14及びフロアニードルパンチ不織布15とを備えている。路面側スパンボンド不織布12及び路面側ニードルパンチ不織布13は、芯材11と一体成形され、また、フロア側スパンボンド不織布14及びフロア側ニードルパンチ不織布15も芯材11と一体成形されている。
芯材11は、第1芯層11aと第2芯層11bとを積層してなるものである。第1芯層11aと第2芯層11bは、それぞれ熱可塑性樹脂、強化繊維及び加熱膨張性粒子を分散含有するスタンパブルシートからなり、このスタンパブルシート中の加熱膨張性粒子が発泡した膨張貼合部材で構成されている。第1芯層11aを構成する部材と、第2芯層11bを構成する部材とは、詳細は後述するが、これら部材の製造時における流れ方向が互いに交差するように積層されている。
路面側スパンボンド不織布12は、スパンボンド法、即ち、溶かした原料樹脂をノズルの先から直接噴出させて連続した長い繊維を得て、これを用いて不織布としたものである。この路面側スパンボンド不織布12は、詳細は後述するが、第2芯層11bに接着されて一体のスタンパブルシートとして製造されている。
路面側ニードルパンチ不織布13は、ニードルパンチ法、即ち、繊維が集積したものを、上下動する針で繰り返し突き刺して繊維同士を絡ませることによって不織布としたものである。路面側ニードルパンチ不織布13は、メルト繊維だけを構成繊維とする場合、或いはメルト繊維と非メルト繊維とを構成繊維として含み、これら2種類の繊維を混合して構成されている場合とがある。路面側ニードルパンチ不織布13は、路面側スパンボンド不織布12に貼合わされている。
なお、フロア側スパンボンド不織布14は、詳細は後述するが、第1芯層11aに接着されて一体のスタンパブルシートとして製造されている。フロア側ニードルパンチ不織布15は路面側ニードルパンチ不織布13と同様に形成されている。フロア側ニードルパンチ不織布15は、フロア側スパンボンド不織布14に貼合わされている。
次に、本発明に係るアンダーカバーの製造工程について、図2〜図4に基づいて説明する。原反であるウェブ、ウェブから製造したスタンパブルシート、スタンパブルシートに各不織布を積層した積層部材、この積層部材を加熱圧縮して貼りあわせた貼合部材、貼合部材中のスタンパブルシートを膨張させた膨張貼合部材及び膨張貼合部材を成形して形成したアンダーカバーについて説明する。
簡単に説明すると、本発明のウェブは強化繊維、熱可塑性樹脂および加熱膨張性粒子からなり、抄造法で製造されている。このウェブを加熱、加圧し、冷却して平板形状で長尺状のスタンパブルシートに製造しておく。このスタンパブルシートは、加熱、冷却により溶融固化した熱可塑性樹脂がマトリックスを構成し、その中に強化繊維と加熱膨張性粒子(未膨張状態)が分散した構造となっている。この製造工程で、スパンボンド不織布がスタンパブルシートの一方の表面に一体に形成されている。ウェブをスタンパブルシートに製造する装置は従来から用いられているものであり、スパンボンド不織布がスタンパブルシートの少なくとも一方の表面に一体に形成されることもあれば、スパンボンド不織布がスタンパブルシートのどちらの表面にも形成されない場合もある。従って、本発明では、スパンボンド不織布がスタンパブルシートの少なくとも一方の表面に一体に形成されたものも、スパンボンド不織布がスタンパブルシートの一方の表面に一体に形成されてないものも含めてスタンパブルシートと称して用いる。
ウェブをスタンパブルシートに製造する装置において、この装置にウェブを導入してスタンパブルシートを取り出す方向を流れ方向と称し、スタンパブルシートの流れ方向をMD方向(Machine Direction)といい、従って、スタンパブルシートの長手方向がMD方向となる。一方、スタンパブルシートの幅方向は、CD方向(Cross Machine Direction)となる。繊維を含む材料をスタンパブルシートに成形する場合には、大多数の繊維の延びる方向がMD方向となり、MD方向の引張強度はCD方向の引張強度に比べて高くなる。
本実施形態のアンダーカバーの製造方法を図2及び図3に基づいて、詳細に説明する。本実施形態では、芯材11の第1芯層11aを構成するスタンパブルシート1のMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシート1のMD方向とは略直交するように、両スタンパブルシート1,1を重ね合わせる。この実施形態では、図2(a)及び図3(a)に示すように、スタンパブルシート1,1は、それぞれスタンパブルシート部1a,1aの一方の表面に、スパンボンド不織布1b、1bを一体に形成している。そして、スパンボンド不織布1bを有する表面側を外側にしてスタンパブルシート部1a,1a同士を合わせて重ねて、2枚のスタンパブルシート1,1が重ねられた積層部材2aを製造する。そして更にこの積層部材2aの両外側にニードルパンチ不織布1cを重ねて、図2(b)及び図3(b)に示すように、積層部材2bを製造する。このように重ねられた積層部材2bが、図2(c)に示すように、ホットプレス機20で加熱・圧縮されて、それぞれが貼合わされた平板状の貼合部材2cが形成される。
詳しくは、ホットプレス機20は、下型21と上型22と上型駆動装置23とを備えている。下型21と上型22との表面は略平坦となっている。また、これら表面は加熱されるようになっている。上型駆動装置23は上型22を上下動させて下型21に接離する方向に駆動するように構成されている。下型21の表面に、積層部材2bを載置し、上型駆動装置23により上型22を下降させて積層部材2bを厚み方向にプレスするとともに加熱する。これにより、路面側ニードルパンチ不織布1cが路面側スパンボンド不織布1bに強固に接着し、フロア側ニードルパンチ不織布1cがフロア側スパンボンド不織布1bに強固に接着された平板状の貼合部材2cが形成される。この時に、路面側ニードルパンチ不織布1c及びフロア側ニードルパンチ不織布1cのメルト繊維が溶融し、非メルト繊維が溶融せずに残り、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布15の層が形成される。
その後、図2(d)に示すように、上型駆動装置23により上型22を上昇させて貼合部材2cの圧縮状態を開放する。それによって、この貼合部材2c内の加熱膨張性粒子53がホットプレス機20で加熱された際の加熱温度で発泡・膨張を始め、図3(c)に示すように、膨張した貼合部材2dが形成される。この時に、スタンパブルシート部1a、1aが芯材11a,11bとして形成される。
スタンパブルシート1と不織布12,13,14,15とを重ねて、ホットプレス機20で加熱・圧縮する際の熱可塑性樹脂、強化繊維及び加熱膨張性粒子について、図4を用いて模式的に説明する。図4(a)は、スタンパブルシート1を製造した際の強化繊維51、熱可塑性樹脂52および加熱膨張性粒子53の分散状態を模式的に示したものである。51が棒状の強化繊維を示し、52が強化繊維51を互いに接着している熱可塑性樹脂を示し、53は強化繊維51間に分散している球状の加熱膨張性粒子(未膨張状態)を示す。図4(b)は、ホットプレス機20で加熱・圧縮した場合の強化繊維51、熱可塑性樹脂52および加熱膨張性粒子53の分散状態を模式的に示す。強化繊維51及び加熱膨張性粒子(未膨張状態)53は殆ど変化してないが、熱可塑性樹脂52は押し潰されて表面積が拡大している。それによって、強化繊維51同士が熱可塑性樹脂52で接着される面積が多くなり、接着強度が増加している。即ち、ホットプレス機20で、加熱・圧縮して、スタンパブルシート1内の熱可塑性樹脂52を押し潰して表面積を拡大して強化繊維51同士の接合力を高め、且つ各不織布12,13,14,15とスタンパブルシート1とを強力に密着させた後、この加熱温度でスタンパブルシート1を加熱することで、スタンパブルシート1中の加熱膨張性粒子53を膨張させる。このように、ホットプレス機20で、スタンパブルシート1と不織布12,13,14,15とを重ねて加熱・圧縮することで、スタンパブルシート内の熱可塑性樹脂52を押し潰して表面積を拡大して強化繊維51同士の接合力を高めると同時に不織布12,13,14,15とスタンパブルシート1とを強力に密着させることができる。特に、ホットプレス機20でスタンパブルシート1全体を加熱できるので、ホットプレス機20を開放した際にも、スタンパブルシート1全体がほぼ均一に且つ短時間で加熱されており、加熱膨張性粒子53が均一に膨張分散することができる。
次に、加熱膨張性粒子53の発泡状態について、図5を用いて模式的に説明する。図5(a)は、加熱膨張性粒子53が未発泡状態のスタンパブルシート1を表したものであり、図中の白抜きの三角形は熱可塑性樹脂52を示し、線は強化繊維51を示し、白抜きの小円は加熱膨張性粒子53(未発泡)を示している。スタンパブルシート1を加熱プレス装置20で加熱した後、加熱プレス装置20を開放すると、図5(b)に示すように、加熱膨張性粒子53が発泡して、大きな気泡53(図5(b)中の白抜きの円で示す)が形成される。後述するが、これを成形装置30で成形すると、図5(c)に示すように、気泡53が密になる。
次に、ホットプレス機20で加熱・圧縮してからホットプレス機20を開放して、加熱膨張性粒子53を発泡させた後、図2(e)に示すように、成形装置30で膨張貼合部材2dをアンダーカバー形状に成形する。詳しくは、成形装置30は、下型31と上型32と上型駆動装置33とを備えている。上型駆動装置33は上型32を上下動させて下型31に接離する方向に駆動するように構成されている。膨張貼合部材2dを成形装置30の下型31に載置し、上型駆動装置33により上型32を下降させて貼合部材2dを厚み方向にコールドプレス成形することでアンダーカバー10が得られる(図1参照)。特に、前の工程で、殆どの加熱膨張性粒子53が大きく膨張しており、成形装置30で成形すると、図5(c)に示すように、加熱膨張性粒子53の気泡が潰れるのではなく、密になり、強度向上になっている。
次に、本発明のウェブ、スタンパブルシートおよびスタンパブルシート中の強化繊維、熱可塑性樹脂および加熱膨張性粒子、不織布中のメルト繊維及び非メルト繊維について説明する。
本発明で用いる強化繊維は、無機繊維、有機繊維のいずれを用いてもよく、これらを複合または混合した繊維を用いてもよい。使用できる繊維としては、例えば、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ステンレス繊維やその他の金属繊維および鉱物繊維などを、また、有機繊維としては、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、麻等の天然繊維などを挙げることができる。また、これらの1種または2種以上を組み合わせても使用してもよい。なお、アンダーカバーに高い補強効果を付与する観点からは、有機繊維よりも無機繊維の方が好ましく、中でも、強度を重視する場合には、炭素繊維を用いることが好ましい。一方、コストの面からは、ガラス繊維を用いることが好ましく、また、焼却しても残渣が残らないというサーマルリサイクルの観点からは、有機繊維が好ましい。
上記強化繊維の平均直径は、スタンパブルシートの補強効果と膨張性を十分確保する観点からは、φ3〜50μmであることが好ましい。より好ましくはφ3〜30μmである。上記範囲の平均直径の強化繊維を用いることで、抄造時の加熱膨張性粒子の歩留りを向上することもできる。なお、強化繊維のスプリングバックと加熱膨張性粒子の膨張性の相乗効果による膨張量の増大を期待する場合には、平均直径がφ100〜1000μmの強化繊維とその繊維間を充填する役割を果たす平均直径がφ3〜50μmの強化繊維を混合したものを用いてもよい。また、強化繊維の平均長さは、補強効果、膨張性、成形性を十分確保するという観点からは、3〜100mmの範囲のものであることが好ましい。また、ウェブを抄造する工程の前段階で、熱可塑性樹脂と強化繊維とをより均一に分散させる観点からは、強化繊維の平均長さは3〜50mmの範囲であることがより好ましい。なお、上記平均直径や平均長さは、使用する前の強化繊維またはウェブ、スタンパブルシート、アンダーカバーの強化繊維の直径と長さを、顕微鏡等を用いて50本程度測定して得た値を平均したものである。なお、強化繊維は、ウェブ、スタンパブルシート、アンダーカバーを600℃程度の温度で焼成後、顕微鏡等を用いて観察してもよい。
本発明で用いる上記強化繊維は、カップリング剤あるいは収束剤による表面処理が施されたものであることが好ましい。特に、強化繊維と熱可塑性樹脂との濡れ性や接着性を向上するためには、シランカップリング剤による処理を施すことが好ましい。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系、メタクリルシラン系、クロロシラン系、メルカプトシラン系等のカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤による強化繊維の表面処理は、強化繊維を攪拌しながらシランカップリング剤溶液を噴霧する方法や、カップリング剤溶液中に強化繊維を浸漬する方法など、公知の方法で行うことができる。なお、上記シランカップリング剤の処理量は、処理する強化繊維の質量に対して0.001〜0.3mass%であることが好ましい。0.001mass%未満では、シランカップリング剤の効果が小さく、強化繊維と熱可塑性樹脂の十分な接着強度が得られず、一方、0.3mass%を超えると、シランカップリング剤の効果が飽和するからである。より好ましくは0.005〜0.2mass%の範囲である。
また、本発明で用いる強化繊維は、スタンパブルシートの強度と膨張性を高めるために、単繊維に解繊したものであることが望ましく、そのためには、上記強化繊維を水溶性の収束剤によって処理することが好ましい。この収束剤としては、ポリエチレンオキシド系やポリビニルアルコール系の水溶性樹脂などを用いることができる。収束剤の処理量は、処理する強化繊維の質量に対して、2mass%以下、好ましくは1mass%以下とすることが望ましい。2mass%を超えると、抄造工程での繊維の解繊が難しくなるからである。なお、処理量の下限は0.05mass%程度である。処理量が少なすぎると、ハンドリング性が悪くなる。
次に、本発明において用いる熱可塑性樹脂について説明する。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタールなど、あるいはエチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、EPM、EPDMなどの熱可塑性エラストマーなどを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂は、強度、剛性および成形性に優れている点で好ましく、特にポリプロピレンは、これらの特性のバランスに優れ、低価格であることからより好ましい。さらに、ポリプロピレンの中でも、JIS K 6921−2:1997に規定された条件で測定されたMFR(メルトフローレイト、但し、230℃、21.17N)が、l〜200g/10分の範囲のものが好ましく、10〜150g/10分の範囲のものがより好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂と強化繊維との接着性を向上するために、熱可塑性樹脂を不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物などの酸、エポキシ化合物など、種々の化合物で変性処理したものを未変性の熱可塑性樹脂と併用することができる。変性処理は、例えば、ポリプロピレンに、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸などをグラフト共重合することにより行うことができる。変性処理したものとしては、特に強度向上の点からは、分子内に酸無水物基、カルボキシル基などの変性基を有するものが好ましい。
熱可塑性樹脂は、その形状としては、粉末やペレット、フレークなどの粒子状のもの、もしくは繊維状のものを用いることができる。ウェブのハンドリング性や加熱膨張性粒子の歩留りを向上させる観点、ならびに、スタンパブルシートを製造する際、溶融した熱可塑性樹脂と強化繊維とを十分に絡ませ、強度と剛性を向上させる観点からは、繊維状のものを粒子状のものと併用することが好ましい。ここで、粒子状のものを用いる場合には、平均粒子径が、φ100〜2000μmのものを用いることが好ましく、スタンパブルシート中に均一分散させる観点からは、φ100〜1000μmのものがより好ましい。一方、繊維状のものを併用する場合には、平均直径がφ1〜50μm、平均長さが1〜50mmのものを用いることが好ましく、泡液中で均一分散させる観点からは、平均長さが1〜30mmのものがより好ましい。
次に、本発明において用いる加熱膨張性粒子について説明する。
本発明で用いる加熱膨張性粒子とは、ある温度以上に加熱されたときに、軟化したシェルがコアの気化膨張する圧力によって膨張する特性を有するものである。本発明は、ウェブ、スタンパブルシートおよびその膨張貼合部材を構成する材料として、この加熱膨張性粒子を用いるところに大きな特徴がある。この加熱膨張性粒子を用いることで、強化繊維のスプリングバック作用単独の場合よりも、より大きな膨張量を確保できるので、より低密度化が可能となり、軽量で剛性のある膨張貼合部材を得ることができる。
本発明では、加熱膨張性粒子として公知のものを使用できるが、特に、コアが液状の炭化水素で、これを、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂からなるシェルで内包したコアシェル型の加熱膨張性粒子が好ましい。通常、コアに用いられる炭化水素は、シェルの熱可塑性樹脂の軟化点よりも低沸点のものが使用され、例えば、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の沸点が150℃以下の炭化水素類やエーテル類を挙げることができる。また、シェルを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフクレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等、公知の熱可塑性樹脂を挙げることができる。特に好ましいものとしては、コアがイソブタン、ペンタン、ヘキサン等の液状の炭化水素からなり、シェルがアクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性樹脂からなる加熱膨張性粒子がある。
加熱膨張性粒子の平均直径は、加熱膨張前でφ5〜200μmであることが好ましく、より好ましくはφ10μm以上φ100μm未満、さらに好ましくはφ20μm以上φ100μm以下である。膨張前の粒子径がφ5μm未満であると、抄造時に強化繊維の隙間を通過して脱落し易く、歩留りが低下する。一方、φ200μm超であると、膨張後の加熱膨張性粒子の大きさが大き過ぎて膨張成形品の厚みが不均一となったり、表面品質の悪化を招いたりするからである。なお、加熱膨張性粒子は、膨張したときの平均直径がφ10〜2000μmとなるものであることが好ましく、より好ましくはφ20〜1000μmのものである。膨張後の加熱膨張性粒子の平均直径が小さ過ぎると、スタンパブルシートを膨張させるのに必要な加熱膨張性粒子の量(数)が多量となる。一方、膨張後の平均直径が大き過ぎると、膨張成形品の表面に凹凸が生じ、表面性状を悪化させる。なお、上記膨張後の加熱膨張性粒子の平均直径は、膨張成形品中の加熱膨張性粒子を、光学顕微鏡などで50個程度観察し、測定した直径を平均した値のことである。
上述したように、加熱膨張性粒子は、ある温度以上に加熱されると、軟化したシェルがコアの気化膨張する圧力によって膨張を開始する。本発明では、この温度を膨張開始温度と言い、加熱膨張性粒子を10℃/分で昇温したときに、加熱膨張性粒子の粒子径が急激に大きくなり始める温度で定義する。本発明が用いる加熱膨張性粒子は、膨張開始温度は120℃以上のものが好ましく、130〜230℃のものがより好ましい。膨張開始温度が120℃未満では、加熱膨張性粒子自体の耐熱性に劣り、また、抄造したウェブの乾燥温度を極端に低くする必要があり、乾燥に長時間を要するため好ましくない。一方、膨張開始温度が230℃を超えると、膨張させるための加熱温度が高温となり過ぎ、熱可塑性樹脂の劣化を招く可能性があるからである。
上記加熱膨張性粒子の膨張開始温度は、マトリックスを構成する熱可塑性樹脂の融点との差が小さい方が好ましい。加熱膨張性粒子の膨張開始温度が、熱可塑性樹脂の融点よりも低過ぎると、熱可塑性樹脂が溶融して強化繊維の周りに流動し、付着する前に加熱膨張性粒子が膨張し過ぎることになり好ましくない。一方、膨張開始温度が高すぎると、十分な膨張厚みを得るためには高温に加熱する必要があり、熱可塑性樹脂を劣化させる可能性があるからである。したがって、加熱膨張性粒子の膨張開始温度とマトリックスを構成する熱可塑性樹脂の融点との差は、±30℃以内であることが好ましい。
また、上記加熱膨張性粒子は、最大膨張温度が、熱可塑性樹脂の融点よりも高いことが好ましく、その温度差は50℃以内であることがより好ましい。ここで上記最大膨張温度とは、加熱膨張性粒子を10℃/分で昇温したときに、加熱膨張性粒子の粒径が最大となる温度のことである。最大膨張温度が熱可塑性樹脂の融点よりも高すぎると、十分な膨張性を得るためには、高い温度に加熱する必要があり、熱可塑性樹脂を劣化させるおそれがあるからである。
次に、本発明のウェブの目付量、および、ウェブ、スタンパブルシート、アンダーカバーを構成する強化繊維、熱可塑性樹脂および加熱膨張性粒子の配合率について説明する。
先ず、本発明のウェブ等の目付量は、100〜2000g/m2の範囲であることが好ましい。ウェブの目付量が100g/m2未満では、アンダーカバーとしたときに、十分な厚みが得られず、剛性も低下するからであり、一方、2000g/m2超では、膨張成形品の軽量化が困難となるからである。より好ましい目付量は500〜1000g/m2の範囲である。
次に、本発明のウェブ等を構成する強化繊維と熱可塑性樹脂の配合率は、用いる強化繊維と熱可塑性樹脂の比重や、他の添加剤や着色剤の含有量によっても異なるが、曲げ強度(座屈強度)や曲げ弾性率(弾性勾配)などの機械的強度が高いアンダーカバーを得るためには、強化繊維/熱可塑性樹脂が質量比で3/97〜60/40の範囲であることが好ましい。
また、本発明のウェブ等を構成する加熱膨張性粒子の含有量は、強化繊維と熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましい。1質量部未満では、膨張性の向上効果が現れず、一方、40質量部を超えると、膨張性の向上効果が大きくなり過ぎ、内装部材の内部だけでなく表面層までもが低密度化し、剛性や耐座屈性が低下する。
なお、本発明のウェブ等は、上記した熱可塑性樹脂、強化繊維、加熱膨張性粒子の他に、酸化防止剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、難燃剤、カーボンブラックなどの添加剤や着色剤、有機結合剤等を要求に応じて含有させることができる。また、上記の添加剤や着色剤は、例えば、強化繊維や熱可塑性樹脂に予めコーティングしておいたり、混合時に配合したり、ウェブにスプレーなどで噴霧して添加することによって含有させてもよい。
本発明のニードルパンチ不織布(メルト繊維及び非メルト繊維)について説明する。路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維とは、芯材11をホットプレス機20で加熱する時の温度よりも融点が低く、ホットプレス機20で加熱・圧縮する時に溶融する繊維であり、ポリプロピレン樹脂、低融点PET(ポリエチレン‐テレフタラート)、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂等が好ましい。特に、融点が、100〜230℃の低融点PET樹脂は、ホットプレス機で加熱した時に表面が溶融しても、全体としての流動性は低いままで維持される傾向にあり、全面を覆い難くて通気性を確保し易いので、好ましく、特に110℃以上で、ホットプレス機で加熱温度以下が好ましい。このメルト繊維は、上記加熱時に溶融することで、接着機能を発揮するだけでなく、フィルム状になり、着氷剥離力の値を低くするとともに、耐チッピング性を高める効果を有する。特に、このメルト繊維は、別のフィルムを貼り合せるのではなく、不織布内部でフィルムの機能を果たすものであり、接着するなどの工程や接着剤は不要であり、その上に多孔質のフィルム状なっているので、吸音性等の騒音防止機能にも優れる。このメルト繊維の平均直径は、4〜7dtex、平均長さは30〜70mmとすることが、要求性能上から好ましい。
この実施形態では、ニードルパンチ不織布としたが、これに限られるものではなく、スパンポンド不織布や他のフリース結合方法で得られる不織布でも良い。なお、特に、ニードルパンチ不織布にすると、成形性(伸び)が良く且つメルト繊維の配合量を調整し易い。
非メルト繊維とは、芯材11の加熱成形時の温度よりも融点が高く、芯材11の加熱成形時に溶融しない繊維であり、例えば、融点が240〜260℃程度の一般のPET樹脂の繊維とすることが好ましい。特に、メルト繊維と同じ繊維とするほうが相性的にも好ましい。
本発明では、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量は、少なすぎると着氷剥離力の値が高くなって着氷した氷が剥離し難くなり、耐チッピング性も回数が少なくなって性能が悪くなる。逆に多すぎると、吸音性等の防音性能が悪くなる。従って、目付量は100〜500g/m2とすることが好ましく、特に150〜250g/m2とすることが好ましい。
路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量は、少なすぎるとメルトによる被膜が十分に形成されず、不織布の感触が残って着氷剥離力の値が高くて剥離し難くなる。なお、メルト繊維の含有量は、着氷剥離力や耐チッピング性の性能上からは100重量%でも良いが、メルト繊維だけになると、不織布の全体がメルト化する傾向となり、不織布のクッション性が悪くなる傾向になる。その場合には、不織布の目付量を増やすとか加熱温度や加熱時間を調整することで全体のメルト化を少なくする等の工夫を行うことで対応可能であるが、メルト繊維に非メルト繊維を加えることでも対応可能である。メルト繊維と非メルト繊維の配合割合としては、メルト繊維含有量40〜100重量%、特に60〜80重量%とすることが好ましい。即ち、非メルト繊維は0〜60重量%、特に20〜40重量%とすることが好ましい。
フロア側スパンボンド不織布14及びフロア側ニードルパンチ不織布15は、路面側スパンボンド不織布12及び路面側ニードルパンチ不織布13と同じものである。
なお、フロア側ニードルパンチ不織布は、ホットプレス機で加熱する際に、芯材の熱可塑性樹脂が染み出て、金型に付着し離型性が悪くなるのを防止できると共に、スパンボンド不織布や芯材との接着性に優れるものであれば良く、上記実施形態のものに限られるものではなく、ニードルパンチ不織布以外の不織布でも良い。ただ、同じ材料にすればコスト的に有利である。
本実施形態では、スパンボンド不織布は、スタンパブルシートの製造過程で芯材と一体に設けられるのであって、本発明の狙いとする性能上からすれば、省略することが可能であるが、製造コスト上では設けることが有効である。なお、スパンボンド不織布を設ける場合には、その目付量は、12〜100g/m2が実用的な範囲である。
次に、本発明に係るウェブ、スタンパブルシートおよびアンダーカバーを製造する方法について説明する。
本発明に係るウェブの製造方法は、分散液である微小気泡を含む界面活性剤含有水性媒体中に、強化繊維、熱可塑性樹脂および加熱膨張性粒子を分散させた泡液を抄造して製造する。上記原料を泡液ではなく、増粘剤や凝集剤を含まない水中に分散、混合しても良い。なお、泡液を使用すると、泡の表面に強化繊維、熱可塑性樹脂、加熱膨張性粒子が保持され、泡液中に均一に分散するため、分散液の輸送中にも分離が起こらないメリットを有する。本発明におけるウェブの製造は、強化繊維、熱可塑性樹脂、加熱膨張性粒子を含む分散液(泡液)を、抄紙スクリーンのような多孔性支持体上に注ぎ、多孔性支持体の下方から吸引して脱泡し、分散液中の固形分を多孔性支持体上に堆積させることにより行われる。
上記泡抄造法で用いる界面活性剤としては、アニオン系、ノ二オン系、カチオン系の何れを用いてもよい。特に、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、やし油脂肪酸ジエタノールアミド等は、強化繊維と熱可塑性樹脂を主成分とする原料を、媒体中に均一に分散させる効果の点において優れているので、好適に用いることができる。
上記泡抄造して得られたウェブは、加熱膨張性粒子が最大膨張しない条件下(温度と時間)で乾燥する。すなわち、ウェブ中の加熱膨張性粒子を乾燥の段階で最大膨張させてしまうと、ウェブのハンドリング性が低下するだけでなく、スタンパブルシートを製造する際の圧縮時に加熱膨張性粒子が潰れてしまうため、その後、内装部材を製造する際のスタンパブルシートの膨張性が不十分となる場合があるからである。
加熱膨張性粒子が最大膨張するには、ある一定の熱量が必要である。したがって、加熱膨張性粒子を最大膨張させないためには、乾燥時の投入熱量がその一定の熱量未満となるよう、加熱温度と時間を制御する必要がある。具体的には、乾燥のための加熱温度は、最大膨張温度から30℃以下とし、加熱時間は、加熱温度が最大膨張温度以下のときは、{2×(最大膨張温度−膨張開始温度)}分以内とし、加熱温度が最大膨張温度よりも高いときは、{300/(加熱温度−最大膨張温度)}分以内かつ{2×(最大膨張温度−膨張開始温度)}分以内とすることが好ましい。
なお、上記泡抄造して得たウェブに、有機結合剤を含むエマルジョンや水溶液をスプレー噴霧あるいはロールコーターで塗布し、その反対面側から真空吸引等で含浸させた場合には、ウェブを乾燥したときに強化繊維、熱可塑性樹脂、加熱膨張性粒子が効率的に付着するため、歩留りが向上するだけでなく、ハンドリング性が向上し、生産効率も向上するので好ましい。
次に、本発明の平板状のスタンパブルシートの製造方法について説明する。
本発明のスタンパブルシートは、上記泡抄造により得たウェブを、熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上でかつ加熱膨張性粒子が最大膨張をしない条件下(温度と時間)で加熱し、加圧した後、冷却固化することにより、熱可塑性樹脂を溶融させてマトリックスを形成させ、分散している強化繊維と加熱膨張性粒子とを溶融固化した熱可塑性樹脂により十分に接着、結合させることにより製造する。ここで、上記最大膨張をしない条件(温度と時間)とは、前述した条件と同じである。熱可塑性樹脂の融点以上とする理由は、融点未満では、熱可塑性樹脂が強化繊維と加熱膨張性粒子とに十分に融着せず、必要な強度が得られないからであり、一方、加熱膨張性粒子が最大膨張しない条件下で加熱するのは、この加熱工程で加熱膨張性粒子を最大膨張させてしまうと、スタンパブルシートのハンドリング性が低下するだけでなく、スタンパブルシート製造時の圧縮により加熱膨張性粒子が潰れてしまい、その後の膨張成形品の製造に必要な膨張性が得られない場合があるからである。
ウェブを加熱し、熱可塑性樹脂を溶融させてから加圧してスタンパブルシートを製造する際の加圧条件は、スタンパブルシートの比重が0.3以上となるよう圧縮することが好ましい。0.3未満では、熱可塑性樹脂の流動性が不十分であり、マトリックスである熱可塑性樹脂の中に強化繊維と加熱膨張性粒子が分散した構造が形成できないからである。より好ましくは比重0.4以上である。ただし、圧縮しすぎると、強化繊維を折損したり、シート目付が小さくなる(シート面積が大きくなって厚みが薄くなる)可能性があるので、空隙率がゼロとなる圧力以下で圧縮することが好ましい。
なお、本発明のスタンパブルシートの製造方法においては、上記ウェブの加圧は、熱可塑性樹脂を溶融させた後で行ってもよく、加熱と加圧を同時に行ってもよい。加圧方法は、バッチ式の間欠プレス法、テフロン(登録商標)やスチールのベルトを用いた連続プレス法、ロールプレス法等があるが、いずれの方法を用いてもよい。スタンパブルシートのハンドリング性を高めるためには、熱可塑性樹脂が溶融している間に、加圧し、その後、除荷して膨張させ、加圧時よりも厚い状態で冷却してもよい。さらに、ウェブの乾燥と加熱を同時に行い、引き続き加圧を行う方法が、製造効率もよく経済的である。
この製造方法において、ホットプレス機の加熱・圧縮の条件を説明する。
加熱温度条件は、スタンパブルシート内の熱可塑性樹脂の軟化温度もしくは融点および加熱膨張性粒子の膨張開始温度以上に加熱し、上記熱可塑性樹脂を軟化または溶融させることが必要であるが、温度が低すぎると、スタンパブルシート内の熱可塑性樹脂の軟化ないし溶融が不十分となり、スタンパブルシートと不織布との貼合せ強度が不足する。また、スタンパブルシートの加熱が不十分となり、加熱膨張性粒子が思ったように膨張されない。逆に、加熱温度が高すぎると、スタンパブルシート内の熱可塑性樹脂が溶融し過ぎて、強化繊維間からの移動が大きくなり、強化繊維同士の接合力が不十分となる。また、不織布の表面の平滑度が損なわれる可能性が高くなり、好ましくない。
また、加熱温度が高すぎると、スタンパブルシートの加熱し過ぎとなり、加熱膨張性粒子が破損する。従って、ホットプレス機の加熱温度は、160〜220℃とすることが好ましい。
ホットプレス機での積層部材の圧縮条件は、積層部材を圧縮しすぎると、加熱膨張性粒子が潰れ過ぎてしまい、その後の膨張貼合部材の製造に必要な膨張性が得られなくなる。また、スタンパブルシート中の強化繊維同士を接着している熱可塑性樹脂が移動し過ぎて、強化繊維との接着力が不足する可能性が出てくる。逆に、積層部材の圧縮が不十分であると、熱可塑性樹脂を押し潰して表面積を拡大することが十分にできず、強化繊維との接触面積を増加できない。その結果、強化繊維と熱可塑性樹脂との接着力を十分に確保できずに剛性が不足する。
従って、圧縮時のスタンパブルシートの制御を、圧縮する前後の圧縮率や比重等で求めることも可能である。しかし、実際のホットプレス機の作業管理では、比重や圧縮率でなく、ホットプレス機の間隔を決めて管理することが簡単であり、このような管理で行われることが多い。そのために、アンダーカバーでは、圧縮時のホットプレス機の間隔を0.7〜2.5mm、特に1.0〜1.7mmに設定している。実際の数値は、素材とそれぞれの厚さで、上記範囲の中で適切な厚さを経験的に求めて、加圧時の厚さを制御するようにすることが、管理しやすい。
圧縮時間は、スタンパブルシートや不織布の素材の組成や厚さなどによって多少差異は有るが、時間が長すぎると、スタンパブルシート中の溶融した熱可塑性樹脂が染み出して、不織布の表面に出て平滑性が損なわれ、逆に、時間が短すぎると、熱可塑性樹脂の軟化や溶融が不十分となり、接着性が劣る。そのために、圧縮時間は、5〜30秒、特に7〜20秒とすることが好ましい。
次に、上記車両用アンダーカバー10を使用する場合について説明する。車両用アンダーカバー10の路面側の面には、路面側ニードルパンチ不織布13が積層されているので、タイヤのパターンノイズ等の騒音はニードルパンチ不織布13を透過して芯材11に吸音される。
また、路面側ニードルパンチ不織布13の中のメルト繊維が溶融しているので、ニードルパンチ不織布13の路面側の面が平滑化される。これにより、ニードルパンチ不織布13の路面側の面に水が付着した場合に水が染み込みにくくなり、しかも、その水が凍結してもニードルパンチ不織布13の繊維に絡みにくくなる。従って、車両用アンダーカバー10の路面側の面に着氷した場合に、その氷が剥離し易くなる。
さらに、路面側ニードルパンチ不織布13はクッション性を持っているので、タイヤが跳ね上げた小石等がアンダーカバー10に衝突した場合にその衝撃が路面側ニードルパンチ不織布13により吸収される。これにより、アンダーカバー10が破損し難くなる。
以上説明したように、この実施形態によれば、アンダーカバー10の芯材11の路面側の面に、芯材11の加熱成形時の温度で溶融するメルト繊維を含む路面側ニードルパンチ不織布13を積層したので、路面側の吸音性能を高めて騒音低減効果を向上できるとともに、着氷剥離力を低くでき、しかも、耐チッピング性を高めることができる。
尚、上記実施形態では、芯材11のフロア側にフロア側スパンボンド不織布14、路面側に路面側スパンボンド不織布14、12を設けているが、これらのスパンボンド不織布152の一方あるいは両方共省略してもよい。また、芯材11のフロア側にフロア側ニードルパンチ不織布15を設けているが、省略してもよい。
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について説明する。
スタンパブルシート(第1芯層11a及び第2芯層11b)
熱可塑性樹脂:ポリプロピレン粒子(重量平均分子量200,000、MFR65g/10分、平均粒子径φ500μm、融点165℃)
強化繊維:ガラス繊維(長さ25mm、平均直径13μm)
加熱膨張性粒子:コア部 炭化水素
シェル部 アクリルニトリル共重合体
平均粒子径 φ70μm
膨張開始温度 155℃
最大膨張温度 176℃
目付量:それぞれ400g/m2
第1芯層11aを構成するスタンパブルシートのMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシートのMD方向とが略直交するように、両スタンパブルシートを重ね合わせている。また、コールドプレス機で成形後のアンダーカバー10の板厚は、7mmである。尚、プレス成形せずに自由状態で発泡させると、板厚は20mm程度になるように加熱膨張性粒子の混合量を設定した。
不織布(路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布15)
目付量:200g/m2
メルト繊維:融点130℃のPET繊維(平均繊維長さ:30〜70mm、
平均繊維径:4〜7dtex)、70重量%
非メルト繊維:融点250℃のPET繊維(平均繊維長さ:30〜70mm、
平均繊維径:4〜7dtex)、30重量%
路面側スパンボンド不織布12及びフロア側スパンボンド不織布14
目付量:15g/m2
ホットプレス機の条件
圧縮時の上型と下型の間隔:1.5mm
加熱温度:190℃
圧縮時間:15秒
コールドプレス機
圧縮時間:30秒
上述の条件で通常に知られているように、スパンボンド不織布が一方の表面に一体に設けられたスタンパブルシートを用意する。このスタンパブルシートをスパンボンド不織布が一体に設けられた表面側を外側にして重ね、このスタンパブル不織布の両外側にニードルパンチ不織布を重ねて積層部材を製造する。この積層部材を上記条件でホットプレス機で加熱・圧縮した後、ホットプレス機を開放して、加熱膨張性粒子を膨張・発泡させてから、コールドプレス機でアンダーカバー形状に成形した。
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について説明する。
実施例2が、実施例1と異なる点は、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートのMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシートのMD方向とが一致するように、両スタンパブルシートを重ね合わせている点であり、他は実施例1と同じである。
(実施例3)
以下、本発明の実施例3について説明する。
実施例3が、実施例1と異なる点は、芯材11を1層構造とする点であって、この芯材11を構成するスタンパブルシートの目付量は、800g/m2 とする点であり、他は実施例1と同じである。
(実施例4)
実施例4の芯材11は、実施例1と同じである。
路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量をそれぞれ40重量%とし、非メルト繊維をそれぞれ60重量%として、この含有量を実施例1と変更したものである。
この実施例4及び以下の実施例5〜13は、着氷剥離力及び耐チッピング性を比較するために、実施例1の素材を使用し、且つ不織布のメルト繊維の含有量を変更して試験したものである。
(実施例5)
実施例5の芯材11は、実施例1と同じである。
路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれのメルト繊維の含有量をそれぞれ60重量%として、この含有量を実施例1と同じにした。
(実施例6)
実施例6の芯材11は、実施例1と同じである。
路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれのメルト繊維の含有量をそれぞれ70重量%として、この含有量を実施例1と同じにした。
(実施例7)
実施例7の芯材11は、実施例1と同じである。
路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれのメルト繊維の含有量をそれぞれ80重量%として、この含有量を実施例1と同じにした。
(実施例8)
実施例8の芯材11は、実施例1と同じである。
路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれのメルト繊維の含有量をそれぞれ100重量%として、非メルト繊維を全く含まないものに実施例1と変更したものである。
(実施例9)
実施例9は、実施例6を基本として、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれの目付量を100g/m2に変更して、目付量の変化が及ぼす影響を調べた。
(実施例10)
実施例10は、実施例6を基本として、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれの目付量を300g/m2に変更して、目付量の変化が及ぼす影響を調べた。
(実施例11)
実施例11は、実施例6を基本として、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれの目付量を400g/m2に変更して、目付量の変化が及ぼす影響を調べた。
(実施例12)
実施例12は、実施例6を基本として、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれの目付量を500g/m2に変更して、目付量の変化が及ぼす影響を調べた。
(実施例13)
実施例13は、実施例6を基本として、路面側ニードルパンチ不織布13及びフロア側ニードルパンチ不織布13それぞれの目付量を600g/m2に変更して、目付量の変化が及ぼす影響を調べた。
(比較例1)
比較例1の芯材は、実施例1と基本的に同じ材料を用いているが、成形方法が実施例1とは大きく異なり、製造方法の差異に伴って、できた製品にも差異がある。製品としての差異は、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートと第2芯層11bを構成するスタンパブルシートの方向を同じMD方向とした点、及びニードルパンチ不織布が融点250℃の非メルト繊維が100重量%である点である。
比較例1の芯材の成形について図6に基づいて説明する。すなわち、比較例1では、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートと第2芯層11bを構成するスタンパブルシートに不織布を積層した状態でホットプレス機を用いて加熱・圧縮して積層部材間の各層間を接着させ、その後コールドプレス機でコールドプレスして、加熱膨脹性粒子の発泡を抑制する。そのために、この積層部材では、図6(a)に示すように、このホットプレス及びコールドプレスの時に、一部の加熱膨張性粒子が小さく発泡し(図6(a)中の白抜きの小円53aで示す)、一部の加熱膨張性粒子はホットプレス機やコールドプレス機によって押し潰されて加熱膨張性粒子が発泡できない状態になる(図6(a)に黒円53bで示す)。その後、図6(b)に示すように、加熱ヒータ等で再度加熱して加熱膨張性粒子を発泡・膨張させる。この場合には、加熱ヒータ等で再度加熱すると、図6(b)に示すように、残存している加熱膨張性粒子53aが発泡して気泡を形成するものの、前工程の加熱・圧縮及び冷却・圧縮で発泡できなくなった加熱膨張性粒子53bが役に立たない状態で残存している。ここで「役に立たない状態」と説明したのは、加熱膨張性粒子が少し膨張した後に潰れたものや膨張せずに潰れてしまう等の理由によって、再度加熱しても膨張しなくなったもののことである。その状態から、本実施形態と同様な成形装置30でアンダーカバー形状に成形する。そのために、比較例1では、図6(c)に示すように、本実施例の図5(c)に比べて発泡した加熱膨張性粒子(気泡)が疎になって圧縮成形される。また、比較例1の芯材11の路面側には、従来例と同様なフィルムが設けられている。さらに、比較例1の芯材11については、製造方法の特性上で、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートのMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシートのMD方向とが一致するように、両スタンパブルシートを重ね合わせている。ニードルパンチ不織布の目付量を120g/m2とし、目付量を60g/m2の保護フィルムを使用した。
(比較例2)
また、比較例2が比較例1と異なる点は、芯材11を構成するスタンパブルシートを1層構造とし、その目付量を800g/m2とした点であって、他は成形方法も含めて比較例1と同じである。
(比較例3)
比較例3は、比較例1を基準にしており、異なる点は、保護フィルムを省略した点である。
(比較例4)
比較例4は、比較例1を基準にしており、異なる点は、ニードルパンチ不織布の目付量を140g/m2とし、目付量を60g/m2の保護フィルムを設けた点である。
次に、実施例及び比較例について、各種の試験方法及びその結果を説明する。
(引張強度:N、曲げ強度:N/50mm、弾性勾配:N/cmの比較)
実施例1〜3及び比較例1及び2の引張強度、曲げ強度、弾性勾配は図7の表に示すとおりとなった。尚、図7の「縦」とは車両に取り付けた状態で車両前後方向のことであり、MD方向と一致している。また、「横」とは車両に取り付けた状態で車幅方向のことであり、CD方向と一致している。さらに、曲げ強度欄の「路面」とは路面側(下側)へ曲げた場合であり、「車両」とは車両側(上側)へ曲げた場合である。なお、発泡厚みとは、ホットプレス機で加熱して、プレス型を解放して発泡させた状態の厚みであり、成形板厚とは、コールドプレス機で成形した後の厚みである。
実施例1と比較例1、2との引張強度、曲げ強度、弾性勾配を比較すると、これら3項目の全てで実施例1の方が高い数値であることが分かる。つまり、実施例1の車両用アンダーカバー10は、比較例1、2のものに比べて高剛性である。実施例1では、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートのMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシートのMD方向とが略直交しているので、例えば引張強度の項目で、縦方向と横方向との値に大きな差が見られない。これにより、芯材11全体として見たときに、縦方向及び横方向の強度の差が殆ど生じなくなり、アンダーカバー10を車両に取り付けるための取付部分の破損が起こりにくくなる。
また、実施例1では、第1芯層11a及び第1芯層12aを構成するスタンパブルシートがそれぞれ一方の表面にスパンボンド不織布を一体に形成しているので、スタンパブルシート内の強化繊維が、スパンボンド不織布を一体に形成した表面側が密になり他方の表面側で疎になる傾向にある。そのために、実施例1では、2つの芯材11a、11bをそれぞれスパンボンド不織布を一体に形成した表面側を外側にして、他方の表面同士を合わせて重ねている。この合わせ方にすることによって、路面側とフロア側とでの強度差を極力抑え、成形品の反りを引き起こし難くしている。
実施例2の引張強度、曲げ強度、弾性勾配は図6の表に示すとおりとなった。すなわち、実施例1と比較して、実施例2では、引張強度、曲げ強度及び弾性勾配の項目で横方向よりも縦方向の方が高い値になった。つまり、第1芯層11aを構成するスタンパブルシートのMD方向と、第2芯層11bを構成するスタンパブルシートのMD方向とが共にアンダーカバー10の縦方向となっているので、縦方向と横方向との差が大きくなっている。
また、実施例2と比較例1や2との引張強度、曲げ強度、弾性勾配を比較すると、これら3項目の全てで実施例2の方が高い数値であることが分かる。つまり、実施例2の車両用アンダーカバー10は、比較例1のものに比べて高剛性である。
また、図8に示すように、比較例1の芯材11を構成するスタンパブルシートの目付量を多くすると、おおよそ比例して引張強度が高まっていく。例えば、比較例1の芯材11を構成するスタンパブルシートの目付量を第1芯層11a及び第2芯層11bの合計で800g/m2にすると引張強度は350Nくらいになり、合計で1000g/m2にすると引張強度は450Nくらいになる。それに対して、実施例2の芯材11は、第1芯層11aと第2芯層11bの合計の目付量が800g/m2にであって、この引張強度は図7に示すように平均で475Nである。従って、図8に示すように、実施例2は、比較例1の芯材11の目付量を約1000g/m2にしたときの引張強度に相当する。別の言い方をすると、本実施例2では、比較例1と同じ引張強度を得るのに、目付量を少なくでき、軽量化できると言える。
実施例3の引張強度、曲げ強度、弾性勾配は図7の表に示すとおりであり、引張強度、曲げ強度、弾性勾配の3項目の全てで比較例1、2よりも実施例3の方が高い数値であることが分かる。つまり、実施例3の車両用アンダーカバー10は、比較例1や2のものに比べて高剛性である。
(着氷剥離試験の試験方法)
図9は、着氷力測定装置200を模式的に示している。この測定装置200は、平板状の鉄製固定基板201と略U字型の鉄製押さえ部材202とでサンプルSを挟持し、ステンレス製リング部材204内でサンプルSに付着した氷205を押し部材203でせん断するのに必要なせん断力を測定する装置とされている。リング部材204には、内径50mm、外形55mm、高さ40mmのSUS304製の部材を用いた。試験は、路面側ニードルパンチ不織布の表面の所定範囲に予め水を滲み込ませたサンプルSにリング部材204を載置し、リング部材204内に水を入れて凍らせた。そして、サンプルSを固定基板201と押さえ部材202とで挟持し、ボルト206で固定した。押し部材203をリング部材204に向けて10mm/minの速度で下降させ、押し部材203に加わる最大の力、すなわち、サンプルSに付着した氷205のせん断力を測定した。以上の測定を、実施例4〜13、比較例3,4から作成したサンプルについて行った。
(耐チッピング試験)
耐チッピング性とは、耐チッピング性試験に基づいて得られた値である。耐チッピング性試験は、直径が3〜7mm程度の小石を500g使用して行う試験である。詳しくは、車両用アンダーカバー10のサンプルを略鉛直に立てた状態で固定しておく。そして、このサンプルにおける路面側ニードルパンチ不織布13の表面から500mm離れたところから、小石500gを0.6MPaの圧縮空気によって路面側ニードルパンチ不織布13の表面に向けて射出させる。これが1回であり、路面側ニードルパンチ不織布13が破損するまで行い、その回数を測定した。以上の測定を、実施例4〜13、比較例3,4から作成したサンプルについて行った。
図10に着氷剥離力の値と耐チッピング性を測定した結果を示す。実施例4では、着氷剥離力の値が40Nであり、また、耐チッピング性が115回である。実施例5では、着氷剥離力の値が30Nであり、また、耐チッピング性が110回である。実施例6では、着氷剥離力の値が28Nであり、また、耐チッピング性が110回である。実施例7では、着氷剥離力の値が25Nであり、また、耐チッピング性が100回である。実施例8では、着氷剥離力の値が22Nであり、また、耐チッピング性が85回である。実施例9では、着氷剥離力の値が32Nであり、また、耐チッピング性が95回である。実施例10では、着氷剥離力の値が23Nであり、また、耐チッピング性が130回である。実施例11では、着氷剥離力の値が22Nであり、また、耐チッピング性が150回である。実施例12では、着氷剥離力の値が21Nであり、また、耐チッピング性が160回である。実施例13では、着氷剥離力の値が21Nであり、また、耐チッピング性が175回である。それに対して比較例3では、着氷剥離力の値が48Nであり、また、耐チッピング性が60回である。比較例4では、着氷剥離力の値が27Nであり、また、耐チッピング性が125回である。即ち、実施例4〜13では、着氷剥離力の値が40N以下であり、優れた着氷剥離性能を有し、耐チッピング性が80回以上であり、優れた耐チッピング性を示す。それに対して、比較例3では、着氷剥離力の値及び耐チッピング性でも、上記数値を満足できず、不十分な値であった。また、比較例4は、着氷剥離力の値及び耐チッピング性でも、本実施例と同様優れた値を示すが、サンプル10個の平均であるので平均的に良い値となったが、アンダーカバー全体でみると、部分的にはフィルムが薄くなっていたり、不織布のザラザラの感触が判るものも見られ、安定した性能がアンダーカバー全体で得られるものではなかった。その上、別にフィルムを介在させる必要性があるために、組み立て性に劣り、コストアップにもなっている。また、後で述べるが、吸音性等の騒音防止の性能上では、良い結果が得られなかった。
なお、図10に示すように、実施例4〜13において、メルト繊維を増やすと着氷剥離力の値が低くなり、氷が剥離し易くなった。その理由は、メルト繊維の含有量が増えると、芯材11の加熱成形時におけるメルト繊維の溶融によって路面側ニードルパンチ不織布13の路面側の面の平滑性が向上し、着氷した場合に氷がより一層剥離し易くなるからだと思われる。一方、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量が増加すると、芯材11の加熱成形時におけるメルト繊維の溶融によってニードルパンチ不織布13に繊維として残る部分が減少することになり、クッション性が低下していき、耐チッピング性が徐々に落ちていく結果となったと思われる。しかし、耐チッピング性は少し落ちる傾向になるが、満足できる範囲内であり、メルト繊維の含有量を増加しても問題なかった。
以上のように、着氷剥離力と耐チッピング性とは、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量によってそれぞれ調整できる。実施例4〜13の結果から判断すると、着氷剥離力の値の観点からは、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量が60重量%以上とすることが好ましく、また、耐チッピング性の観点からは、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維の含有量が80重量%以下とすることが好ましい結果となった。この結果からすると、メルト繊維の含有量60〜80%が特に好ましいと判断できる。
また、図10に示すように、実施例6とそれを基準として路面側ニードルパンチ不織布13の目付量を変化した実施例9〜13の6つの実施例で相対的に比較すると、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量が少なくなると、着氷、耐チッピング性とも僅かに悪くなり、目付量が多くなると、着氷、チッピング性とも僅かに良くなる傾向が見られた。しかし実用上ではどちらも問題ない値であった。実用的な範囲としては、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量を100〜500g/m2とするのが好ましく、特に、150〜250g/m2とするのが好ましい。
また、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量及びメルト繊維含有量を変化させることで騒音の吸音特性が変化する。このことを図11及び図12に基づいて説明する。
図11は、実施例において、JIS A 1409に準ずる残響室法吸音率と、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量との関係、及び比較例1の残響室法吸音率を示すグラフである。本実施例において、a1がメルト繊維70重量%、a2がメルト繊維100重量%の1〜2kHzの帯域の平均吸音率、b1がメルト繊維70重量%、b2がメルト繊維100重量%の500〜800Hzの帯域の平均吸音率を示し、h1が比較例1(ニードルパンチ不織布の目付量:120g/m2+保護フィルムの目付量:60g/m2)の500〜800Hzの帯域の平均吸音率、h2が1〜2kHzの帯域の平均吸音率を示す。本実施例において、単純に路面側ニードルパンチ不織布13の目付量を減らすと、1〜2kHzの帯域の吸音率が僅かに向上し、500〜800Hzの帯域の吸音率が僅かに低下する。一方、単純に路面側ニードルパンチ不織布13の目付量を増やすと、1〜2kHzの帯域の吸音率が徐々に低下し、500〜800Hzの帯域の吸音率が徐々に向上する。即ち、どんな周波数帯の吸音率を優先するかによって、目付量を調整すれば良いことが判る。ただし、比較例1の吸音率は、1〜2kHz平均では38.9%であり、500〜800kHzの平均の吸音率では50%であった。なお、図11に示すように、不織布の目付量が500g/m2を超えると、1〜2kHzの平均吸音率が急激の悪化する傾向にあり、実施例13のように不織布の目付量が600g/m2になると、500〜800kHzの平均の吸音率が50%以下になると共に重量も重くなるので、好ましくない。逆に、100g/m2よりも少なくなると、500〜800kHzの平均吸音率が40%以下になるので好ましくない。従って、吸音特性を重要視する場合には、目付量を100〜500g/m2とすることが好ましい。
図12は、JIS A 1409に準ずる残響室法吸音率と、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維含有量との関係、及び比較例1の残響室法吸音率を示すグラフである。実施例6でメルト繊維量を変化させた場合と比較例1とで比較した。本実施例において、a1が1〜2kHzの帯域の平均吸音率でメルト繊維を変更した場合、b1が500〜800Hzの帯域の平均吸音率でメルト繊維を変更した場合を示し、h1が比較例1(メルト繊維無し)の500〜800Hzの帯域の平均吸音率、h2が1〜2kHzの帯域の平均吸音率を示す。比較例1の吸音率は、1〜2kHz平均では38.9%であり、500〜800Hzの平均では50%であった。それに対して、本実施例では、路面側ニードルパンチ不織布13のメルト繊維含有量を増やすと、1〜2kHzの帯域の平均吸音率はほとんど影響なく、ほぼ70%以上であり、500〜800Hzの帯域の平均吸音率は徐々に上がる。しかし、メルト含有量が40%未満では、500〜800Hzの帯域の平均吸音率45%程度であり、安定して40%以上の平均吸音率を確保する上からは、メルト含有量は40%以上とすることが好ましい。
なお、図11及び図12の結果からして、パターンノイズ(1〜2kHzの平均吸音率)を効果的に低減する場合、例えば、1〜2kHzの平均吸音率を70%以上にする場合には、不織布中のメルト繊維は40〜100%で、不織布の目付量は100〜200g/m2とすることが好ましい。
従って、路面側ニードルパンチ不織布13の目付量及びメルト繊維含有量を変更することで、1〜2kHzの帯域の吸音率を向上させたり、500〜800Hzの帯域の吸音率を向上させることが可能になるので、車両用アンダーカバー10の吸音特性を、車両に適した吸音特性とすることができる。
また、更に、実施例1と比較例1について、実際に車両に取り付けた場合を想定して、アンダーカバーをアンダーボディに密着して取り付けた場合、隙間(エアギャップ)を空けて取り付けた場合について、吸音率を比較した。その結果を図13に示す。
車両用アンダーカバー10のフロア側に空気層が無い場合(エアギャップ0mm)の実施例をJ1、比較例をH1とし、エアギャップが20mmの場合の実施例をJ2、比較例をH2とし、エアギャップが80mmの実施例の場合をJ3、比較例をH3として図13に示す。図13に示すように、路面側にフィルムを有する従来工法の比較例1のH1,H2,H3と裏面側のニードルパンチ不織布13にメルト繊維を設けてフィルムを無くした実施例1のJ1,J2、J3とを比較すると、エアギャップがゼロでもエアギャップを設けた場合でも、実施例1のほうがパターンノイズ(1〜2kHz)で高い吸音率を得ることができた。その上、実施例1のJ1,J2、J3では、特にエアギャップが広い方が1kHz以上の帯域の騒音低減効果が高くなり、車室の静粛性を高めることができる。即ち、アンダーカバーが実際に車両に装着された場合には、エアギャップが存在することが多いので、エアギャップを設けたほうが良い結果になるのは、良い傾向であり実用性に優れる。
また、図1に示す本実施形態の変形例を図14に基づいて説明する。図14は、本実施形態の図3(b)に相当する。変形例では、本実施形態と異なる点だけを説明し、共通点は省略する。
本実施形態では、芯材1(11)は、第1芯層1a(11a)と第2芯層1a(11b)とを積層してなるものであったが、図14の変形例では、第1芯層1a(11a)と第2芯層1a(11b)とを、一部だけで重ねて、大半は第1芯層1(11a)と第2芯層1a(11b)とにして、軽量化したものである。第1芯層1a(11a)と第2芯層1a(11b)とが重なった部分が、重なってない部分に比較して相対的に性能上で良い結果を有するので、より高い性能が求められる部分にこの重ね部分を設けるようにすると好ましい。例えば、重なる部分を、アンダーカバーを車体に取り付ける部分に設けるようにすると好ましい。
なお、この変形例では、第1芯層1a(11a)のフロア側の面(上面)にフロア側スパンボンド不織布1b(14)が接着されて一体のスタンパブルシートとして製造されおり、第2芯層1a(11b)の路面側の面(下面)に路面側スパンボンド不織布1b(12)が接着されて一体のスタンパブルシートとして製造されているので、このスタンパブルシートを一部重ねるようにして、これらに重ねられるニードルパンチ不織布1c、1c(13、15)を、スタンパブルシートが重なった部分と重なってない部分との両方を1枚のシートで覆うようにして製造した。
なお、芯材だけのスタンパブルシートで重ねるようにしても良く、逆にニードルパンチ不織布を一体に設けた後で部分的に重ねるようにしても良い。
2枚のスタンパブルシートの一部を重ねる時に、図14に示すように、フロア側スパンボンド不織布1b(14)を設けてない側と路面側スパンボンド不織布1b(12)が設けられてない側を向い合せにして第1芯層1a(11a)と第2芯層1a(11b)とを重ねるようにしても良いが、第1芯層1a(11a)をフロア側スパンボンド不織布1b(14)を路面側にして第2芯層1a(11b)に重ねるようにすると、第1芯層1a(11a)の路面側スパンボンド不織布1b(12)及び第2芯層1a(11a)のフロア側スパンボンド不織布1b(14)が路面側に並ぶので、その上にニードルパンチ不織布を積層することで、同じような構成とすることができるので、好都合である。
また、本実施形態のものを2つ用意して、この変形例のように部分的に重ねるようにしても良く、また、芯材を2層にしたものと1層にしたもので部分的に重ねるようにすることが可能である。場合によっては、重なる部分を1ヶ所でなく複数ヶ所に形成しても良い。
なお、重ねる場合には、芯材の製造時における流れ方向が互いに交差するように積層しても良く、同じ方向でも良い。
尚、本発明では芯材11を構成する層は1層と2層を示したが、3層以上であってもよい。