フード本体5に対する締結ナット6の連結構造は、フード本体5の端部の内周面に周溝7が形成され、この周溝7に対して上記締結ナット6に設けられた突条8が嵌め合わされたものである。この突条8は、上記締結ナット6の端部に設けられており、当該締結ナット6の周方向に沿って延びている。突状8は、上記周溝7に対して嵌合し摺動することができる。
上記周溝7は、フード本体5に加工されるため、フード本体5の肉厚は一定以上の寸法が確保されなければならない。そのため、従来のスクリュータイプのリールシートでは、その重量及び外径が大きくならざるを得なかった。その結果、釣竿の重量も増加して釣竿の操作性が低下していた。
また、リールシートは、釣人が釣竿を把持する部分でもあり、釣竿のグリップとして機能するから、釣竿の操作性向上のために従来から小径化の要請があった。ところが、前述のような構造では、フード本体5の薄肉化による軽量化及び小径化は困難であった。
さらに、フード本体5の肉厚が大きくなると、シート本体2とフード本体5との境界に大きな段差が形成される。そのため、ユーザーがリールシート1を握った際に手のひらに上記段差が当たり違和感を感じるという不都合もあった。
加えて、フード本体5への上記周溝7の加工は、一般に容易ではない。すなわち、上記周溝7が切削加工される際に、フード本体5が変形することがある。つまり、フード本体5の断面形状が円から楕円に変形する。フード本体5が変形すれば、これに締結ナット6が嵌め合わされたときに当該締結ナット6の滑らかな回転が妨げられ、ユーザーにとって操作感が悪く商品として完成度の低いものとなる。
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その主目的は、軽量且つ堅牢であり、しかもユーザーが握り易く且つ釣竿の操作性を向上させることができるリールシートを提供することである。
(1) 第1の発明に係るリールシートは、軸方向一端側に固定フードが形成された筒状のシート本体と、当該シート本体の軸方向他端側に上記固定フードに対向した状態で上記軸方向に沿ってスライドする可動フードユニットとを備えている。この可動フードユニットは、上記シート本体を周方向に囲繞し、当該シート本体との間に釣用リールの脚が挿入される隙間を形成する保持リングと、上記軸方向に沿うスライドが許容され且つ上記軸方向を中心とする回転が規制された状態で上記シート本体に外嵌されたベースリング及び当該ベースリングの上記軸方向一端部に片持ち状に突設され、上記保持リングを貫通して当該保持リングと上記シート本体との間に挿入される平板状パッド部を有するフード本体と、上記シート本体に外嵌螺合され且つ上記フード本体に対して上記軸方向を中心とする回転が許容された状態で当該フード本体の上記軸方向他端部に連結された操作ナットとを備える。上記フード本体及び操作ナットは樹脂からなり、上記保持リングは金属からなる。
この構成によれば、リールの脚がシート本体上に載置される。この脚の一端側が固定フード内に挿入され、当該脚の他端側が可動フードユニット内に挿入される。具体的には、当該脚の他端側は、シート本体とフード本体の平板状パッド部との間に挿入される。これにより、上記脚は、固定フード及び可動フードユニットによって挟持される。
釣人が操作ナットを回転させると、当該操作ナットは軸方向に沿って固定フードに接離する。この操作ナットにフード本体が前述のように連結されているから、操作ナットと共にフード本体がシート本体に対して回転規制された状態で固定フードに接離する。具体的には、フード本体のベースリングがシート本体に係合し且つ上記軸方向に沿ってスライドする。
このベースリングに突設された平板状パッド部の外側を囲繞するように保持リングが配置されている。換言すれば、保持リングによって平板状パッド部が補強されている。上記脚の他端側は、シート本体と平板状パッド部との間に挿入され、上記操作ナットが締め付けられることによって当該平板状パッド部によって押圧され固定される。この脚の他端側に作用する押圧力の反力が平板状パッド部に反作用として負荷される。保持リングによって平板状パッド部が補強されているから、平板状パッド部及び保持リングは、大きく変形することなく協働して上記脚の他端側を確実に固定する。
保持リングは平板状パッド部の補強部材として機能するから、保持リングとフード本体とが組み合わされた部位の剛性は高くなる。つまり、従来のリールシートでは、保持リングのみによってリールの脚が固定されていたため、保持リングの剛性が確保されるために、そのサイズ及び肉厚が大きくならざるを得なかった。しかし、この発明では、保持リングとフード本体とが協働して上記脚を固定するから、保持リングの小型化及び薄肉化が可能となる。しかも、保持リングが金属(典型的にはステンレス鋼)から構成されるので、その肉厚はきわめて小さくすることが可能である。加えて、上記フード本体及び操作ナットが樹脂から構成されるので、可動フードユニット及びリールシートの軽量化が図られる。
(2) 上記ベースリングの内周面に上記シート本体と係合するキーが設けられてもよい。このキーは、径方向内側に突設され且つ上記軸方向に延びるように形成される。他方、上記シート本体の外周面に上記軸方向他端から一端側に延びるスライド溝が形成され、上記キーは、上記スライド溝にスライド自在に嵌合されるのが好ましい。
この構成では、上記キーがシート本体と係合することによってシート本体に対するフード本体の回転が簡単且つ確実に規制される。しかも、上記キーは、上記ベースリングの内周面に設けられ、このキーが嵌合するスライド溝は、上記シート本体の外周面に形成されているから、当該回転規制を行うための構造が設けられても、フード本体の外径及び保持リングの外径が大きくなることはない。
(3) 上記スライド溝の幅は、上記軸方向他端側に向かって漸次大きくなっているのが好ましい。
前述のようにリールの脚がフード本体内に挿入され、操作ナットが締め付けられると、上記押圧力の反力は、上記平板状パッド部を跳ね上げる向きに作用する。このため、上記キーが同向きに傾斜し、上記スライド溝の壁面に押し付けられる傾向にある。しかし、スライド溝の幅が前述のように拡大されているので、上記キーは滑らかに上記スライド溝に沿って移動することができる。すなわち、リールの脚が強固に固定される場合であっても、操作ナットは滑らかに操作される。
(4) 上記キーは、上記保持リングと上記操作ナットとを連結する連結具を兼ねているのが好ましい。この場合、上記キーは、上記ベースリングから上記軸方向他端側に突出する真直部及び当該真直部の上記軸方向他端部に連続し、上記ベースリングの径方向外方に向かって屈曲した屈曲部を備えるのが好ましい。
この構成では、上記キーが操作ナットと係合する。この場合、キーの真直部が操作ナットの内側に進入し、キーの屈曲部が操作ナットの内面に係合する。このように、上記キーが操作ナットに対して内側から外側に向かって屈曲して係合するから、当該キーが上記連結具を兼ねる構造であっても、保持リング及び操作ナットの外径が大きくなることはない。
(5) 上記操作ナットの内周面に上記屈曲部が嵌合する周溝が形成されているのが好ましい。
この構成では、上記キーの屈曲部が上記周溝に嵌合する。これにより、操作ナットは、きわめて簡単な構造でフード本体に連結され且つ当該フード本体に対して相対的に回転自在となる。
(6) 上記キーは、ベースリングの周方向に沿って均等に4箇所に設けられているのが好ましい。
操作ナットが操作されて、リールの脚が前述のようにシート本体に固定される場合のほか、実釣においてはヒットした魚が大型である場合には、釣人による釣竿の操作に起因して可動フードユニットにはさまざまな方向に外力が作用する。すなわち、上記フード本体にさまざまな方向に負荷がかかり、上記キーが変形する傾向にある。しかし、上記キーが前述のように均等に4箇所に設けられることにより、あらゆる方向に負荷がかかった場合であっても、いずれかのキーが確実に上記スライド溝と嵌合し、且つ操作ナットの周溝と嵌合する。これにより、操作ナットが緩んだり、操作ナットとフード本体との連結が外れたりすることが防止される。
(7) 上記キーは、上記ベースリングから上記軸方向一端側に突出する第2真直部及び当該第2真直部の上記軸方向一端部に連続し、上記ベースリングの径方向外方に向かって屈曲した第2屈曲部を有していてもよい。その場合、当該第2屈曲部が上記保持リングの内側に係合しているのが好ましい。
この構成では、上記キーの第2真直部が保持リングの内側に進入し、キーの第2屈曲部が保持リングの内面に係合する。このように、上記キーが保持リングに対して内側から外側に向かって屈曲して係合するから、保持リングとフード本体との組み付けがより確実なものとなり、剛性がさらに向上する。しかも、上記キーが保持リングの内側から係合するので、保持リングの外径が大きくなることもない。
(8) また、第2の発明に係る可動フードユニットは、軸方向一端側に固定フードが形成された筒状のシート本体を有するリールシートに適用され、上記シート本体の軸方向他端側に装着されて上記固定フードに対向した状態で上記軸方向に沿ってスライドするものである。この可動フードユニットは、上記シート本体を周方向に囲繞し、当該シート本体との間に釣用リールの脚が挿入される隙間を形成する保持リングと、上記軸方向に沿うスライドが許容され且つ上記軸方向を中心とする回転が規制された状態で上記シート本体に外嵌されたベースリング及び当該ベースリングの上記軸方向一端部に片持ち状に突設され、上記保持リングを貫通して当該保持リングと上記シート本体との間に挿入される平板状パッド部を有するフード本体と、上記シート本体に外嵌螺合され且つ上記フード本体に対して上記軸方向を中心とする回転が許容された状態で当該フード本体の上記軸方向他端部に連結された操作ナットとを備える。上記フード本体及び操作ナットは樹脂からなり、上記保持リングは金属からなる。
当該第2の発明では、シート本体上に載置されたリールの脚の一端側が固定フード内に挿入され、当該脚の他端側が可動フードユニット内に挿入される。具体的には、当該脚の他端側は、シート本体とフード本体の平板状パッド部との間に挿入される。これにより、上記脚は、固定フード及び可動フードユニットによって挟持される。
操作ナットが回転すると、当該操作ナットは軸方向に沿って固定フードに接離する。この操作ナットにフード本体が前述のように連結されているから、操作ナットと共にフード本体がシート本体に対して回転規制された状態で固定フードに接離する。具体的には、フード本体のベースリングがシート本体に係合し且つ上記軸方向に沿ってスライドする。
このベースリングに突設された平板状パッド部の外側を囲繞するように保持リングが配置されている。換言すれば、保持リングによって平板状パッド部が補強されている。上記脚の他端側は、シート本体と平板状パッド部との間に挿入され、上記操作ナットが締め付けられることによって当該平板状パッド部によって押圧され固定される。この脚の他端側に作用する押圧力の反力が平板状パッド部に反作用として負荷される。保持リングによって平板状パッド部が補強されているから、平板状パッド部及び保持リングは、大きく変形することなく協働して上記脚の他端側を確実に固定する。
保持リングは平板状パッド部の補強部材として機能するから、保持リングとフード本体とが組み合わされた部位の剛性は高くなる。つまり、従来の可動フードユニットでは、保持リングのみによってリールの脚が固定されていたため、保持リングの剛性が確保されるために、そのサイズ及び肉厚が大きくならざるを得なかった。しかし、この発明では、保持リングとフード本体とが協働して上記脚を固定するから、保持リングの小型化及び薄肉化が可能となる。しかも、保持リングが金属(典型的にはステンレス鋼)から構成されるので、その肉厚はきわめて小さくすることが可能である。加えて、上記フード本体及び操作ナットが樹脂から構成されるので、可動フードユニットの軽量化が図られる。
(9) 上記ベースリングの内周面に上記シート本体と係合するキーが設けられ、当該キーは、径方向内側に突設され且つ上記軸方向に延びているのが好ましい。
この構成では、上記キーがシート本体と係合することによってシート本体に対するフード本体の回転が簡単且つ確実に規制される。しかも、上記キーは、上記ベースリングの内周面に設けられ、このキーが嵌合するスライド溝は、上記シート本体の外周面に形成されているから、当該回転規制を行うための構造が設けられても、フード本体の外径及び保持リングの外径が大きくなることはない。
(10)上記キーは、上記保持リングと上記操作ナットとを連結する連結具を兼ねているのが好ましい。この場合、上記キーは、上記ベースリングから上記軸方向他端側に突出する真直部及び当該真直部の上記軸方向他端部に連続し、上記ベースリングの径方向外方に向かって屈曲した屈曲部を備えているのが好ましい。
この構成では、上記キーが操作ナットと係合する。この場合、キーの真直部が操作ナットの内側に進入し、キーの屈曲部が操作ナットの内面に係合する。このように、上記キーが操作ナットに対して内側から外側に向かって屈曲して係合するから、当該キーが上記連結具を兼ねる構造であっても、保持リング及び操作ナットの外径が大きくなることはない。
(11)上記操作ナットの内周面に上記屈曲部が嵌合する周溝が形成されているのが好ましい。
この構成では、上記キーの屈曲部が上記周溝に嵌合する。これにより、操作ナットは、きわめて簡単な構造でフード本体に連結され且つ当該フード本体に対して相対的に回転自在となる。
(12)上記キーは、ベースリングの周方向に沿って均等に4箇所に設けられているのが好ましい。
操作ナットが操作されて、リールの脚が前述のようにシート本体に固定される場合のほか、実釣においてはヒットした魚が大型である場合には、釣人による釣竿の操作に起因して可動フードユニットにはさまざまな方向に外力が作用する。すなわち、上記フード本体にさまざまな方向に負荷がかかり、上記キーが変形する傾向にある。しかし、上記キーが前述のように均等に4箇所に設けられることにより、あらゆる方向に負荷がかかった場合であっても、いずれかのキーが確実に上記スライド溝と嵌合し、且つ操作ナットの周溝と嵌合する。これにより、操作ナットが緩んだり、操作ナットとフード本体との連結が外れたりすることが防止される。
(13)上記キーは、上記ベースリングから上記軸方向一端側に突出する第2真直部及び当該第2真直部の上記軸方向一端部に連続し、上記ベースリングの径方向外方に向かって屈曲した第2屈曲部を有していてもよい。その場合、当該第2屈曲部が上記保持リングの内側に係合しているのが好ましい。
この構成では、上記キーの第2真直部が保持リングの内側に進入し、キーの第2屈曲部が保持リングの内面に係合する。このように、上記キーが保持リングに対して内側から外側に向かって屈曲して係合するから、保持リングとフード本体との組み付けがより確実なものとなり、剛性がさらに向上する。しかも、上記キーが保持リングの内側から係合するので、保持リング及の外径が大きくなることもない。
本発明によれば、保持リングの小型化、薄肉化及び軽量化が可能となるから、可動フードユニット及びリールシートの外径が小さくなり、釣人にとって握りやすく、操作性が向上する。しかも、フード本体及び操作ナットが樹脂から構成されるので、可動フードユニット及びリールシートが大幅に軽量化され、ひいては釣竿の操作性が大きく向上する。
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係るリールシートの一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
1.全体構成及び特徴点
図1は、本発明の一実施形態に係るリールシート10の外観斜視図である。図2及び図3は、このリールシート10の使用状態における正面図及び断面図である。つまり、図2が示すように、リールシート10は、いわゆるスピニングリールが装着されることを前提として構成されており、通常の使用状態では、リールが装着されるシート面28は下向きとなる。なお、図1は、リールシート10の構造を詳細に示すためにシート面28が上に向いた状態で図示している。
このリールシート10は、同図が示すように全体として円筒状を呈し、釣竿を構成するブランク11に装着される。すなわち、ブランク11がリールシート10に挿通され、ブランク11の所定位置にリールシート10が固定される。このリールシート10は、いわゆるスクリュータイプであり、固定フード12及び可動フードユニット13を有する。釣人が操作ナット14を操作することによって、可動フードユニット13は、固定フード12に対して軸方向15に沿って接離することができ、固定フード12と協働してリールの脚を挟持固定する。
本実施形態に係るリールシート10の特徴とするところは、可動フードユニット13の構造である。具体的には、可動フードユニット13が三つの部材、すなわち金属製の保持リング16並びに樹脂製のフード本体17及び上記操作ナット14から構成されている点(特徴点1)、フード本体17は、ベースリング18及びこれに片持ち状に突設されたパッド部19(特許請求の範囲に記載された「平板状パッド部」に相当)を有し、これらが一体的に形成されている点(特徴点2)、ベースリング18の内側にキー20〜23が設けられており(図6参照)、これらキー20〜23を介してフード本体17と保持リング16及び操作ナット14とが連結されている点(特徴点3)、及び上記キー20〜23が嵌合するスライド溝24〜27がシート本体25に形成されており(図4参照)、これらは周方向に沿って均等に配置されている点(特徴点4)である。
この構造では、リールの脚は固定フード11及び保持リング16に挿入され保持されるが、図1及び図6が示すように、ベースリング18に設けられたパッド部19を保持リング16が外側から囲繞しているから、リールの脚を保持する部位(すなわちパッド部19と保持リング16とが組み付けられた部位)の剛性が非常に高くなる。その結果、保持リング16の小型化、薄肉化及び軽量化が可能となる。また、これに対応してフード本体17及び操作ナット14の小型化、特に小径化が可能となる。これにより、可動フードユニット13及びリールシート10は、その剛性が確保されたまま小径化及び軽量化が図られ、後述のような効果が奏される。以下、詳述される。
2.リールシートの構造
前述のように、このリールシート10の内側にブランク11が挿通されている(図1参照)。このブランク11は、細長円筒状に形成されている。本実施形態では、ブランク11は、既知の要領で構成される。たとえば、カーボン繊維強化樹脂シート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これがマンドレルの周囲に巻回される。この状態でプリプレグが所定温度にて所定時間だけ加熱され、その後マンドレルが引き抜かれることによって、円筒状のブランク11が焼成される。リールシート10がブランク11の所定位置に固定されることにより、当該位置に当該釣竿のグリップが形成される。つまり、このリールシート10は、リールを釣竿に固定すると共に、実釣において釣人が当該釣竿を把持するグリップとしても機能する。
図1ないし図3が示すように、リールシート10は、シート本体29と、可動フードユニット13とを備えている。このシート本体29は、実釣において釣人が把持する部材である。可動フードユニット13は、上記操作ナット14を備えており、この操作ナット14は、シート本体29に螺合している(図3参照)。前述のように、釣人が操作ナット14を回転操作することによって当該操作ナット14が軸方向15に沿ってスライドする。これにより、可動フードユニット13が固定フード12に対して接近し又は離反する。
3.シート本体
図4は、シート本体29の外観図であり、(b)が正面図、(a)及び(c)がそれぞれ平面図及び底面図である。また、図5は、シート本体29の拡大右側面図である。
シート本体29は、樹脂(典型的にはナイロン)からなり、一般に金型を用いた射出成形により形成される。シート本体29は、所定の肉厚の円筒状に形成された主体部31と、この主体部31に設けられた固定フード12とを有する。固定フード12は、主体部31と一体的に形成されている。主体部31の上面にシート面28が形成されている。このシート面28はリールの脚が載置される面であり、平坦面に形成されている。図2及び図3が示すように、主体部31の背面30(上記シート面28の反対側の面)は、外側に膨らんだ滑らかな曲面である。これにより、釣人がシート本体29を握りやすくなっている。もっとも、主体部31に上記曲面が形成されていなくてもよい。
主体部31の中央側面部に段差部32が形成されている。この段差部32は、主体部31の中央側面部が切り込まれ、いわゆる肉抜加工が施されることにより形成されている。この段差部32は、図1及び図2が示すように、細長の楕円形状を呈しており、図2において固定フード12の近傍から可動フードユニット13側へ右上がりの傾斜となるように形成されている。具体的には、この段差部32は、主体部31の中央側面部の軸方向15の一端側(左側)から他端側(右側)に向かって漸次上方へ延びている。この段差部32は、主体部31の左右両側に対称に設けられている。そして、このように主体部31の中央側面部が肉抜加工されることにより、主体部31に貫通孔33が形成されている。この貫通孔33の形状は、上記段差部32の形状に対応して細長の楕円形状である。
上記段差部32及び貫通孔33が肉抜加工によって前述のような形状に仕上げられているから、釣人が主体部31を握った際に手のひら及び指が接触する部位の外形形状は小さくなる。したがって、釣人にとってリールシート10は握りやすくなる。また、肉抜加工が施されることにより、リールシート10が軽量化される。さらに、握った際にに中指又は人差し指の指先の腹部が上記貫通孔33の位置に配置されるから、ブランク11に指先が接触し、いわゆる釣竿の感度が向上する。
図4が示すように、主体部31の軸方向15の他端側に雄ねじ34が形成されている。上記操作ナット14(図1及び図2参照)は、この雄ねじ34と螺合している。操作ナット14が回転されると、当該操作ナット14は、主体部31に対して相対的に軸方向15に沿ってスライドする。主体部31の軸方向15の他端側にスライド溝24〜27が形成されている。各スライド溝24〜27は、主体部31の外周面を削ることにより形成されている。各スライド溝24〜27は、同図が示すように軸方向15に沿って真直に延びている。各スライド溝24〜27が形成されることにより、雄ねじ34が切りかかれている。
本実施形態では、4つのスライド溝24〜27が形成されており、主体部31の周方向に均等(位相差90°)に配置されている。もっとも、4つのスライド溝24〜27が設けられる必要はなく、他の数でもよい。スライド溝24〜27の幅Wは、キー20〜23の外形寸法に対応されており、キー20〜23とスライド溝24〜27との間に所定のクリアランスが形成されている。なお、スライド溝24〜27の幅Wは、軸方向15について一定ではなく、軸方向15の他端側(図4において右側)に向かって漸次大きくなっていてもよい。
後に詳述されるが、可動フードユニット13のベースリング18がスライド溝24〜27と嵌合し、これにより、操作ナット14が回転されたときのフード本体17の回転規制がなされている。4つのスライド溝24〜27が設けられることによる作用効果については後述される。
固定フード12は、主体部31の軸方向15の一端側に形成されている。この固定フード12は、いわゆるドーム状に形成されており、シート面28の軸方向15の一端側部分を覆っている。固定フード12の内壁面形状は、所定の曲面に形成されている。これにより、リールの脚がシート面28上に載置された状態で、当該脚の一方側部分が固定フード12内へ挿入されると、当該脚の一方側部分は、シート面28と固定フード12の内壁面によって囲繞され、保持されるようになっている。
4.可動フードユニット
図6は、可動フードユニット13の分解斜視図である。ただし、同図は可動フードユニット13の構造を詳細に示すために、図1と同様に実際の使用状態と上下を反転させた状態を図示している。
可動フードユニット13は、フード本体17と、保持リング16と、操作ナット14とを備えている。フード本体17の軸方向15の一端側に保持リング16が配置され、軸方向15の他端側に操作ナット14が嵌合される。これにより、これらが一体となってシート本体29に係合する(図1参照)。
図7〜図12は、それぞれ、フード本体17の拡大正面図、拡大断面図、拡大底面図、拡大平面図、拡大右側面図及び拡大左側面図である。
<フード本体>
フード本体17は、ベースリング18とパッド部19とを備えている。フード本体17は、樹脂(典型的にはナイロン)による射出成形により形成されており、ベースリング18は、パッド部19と一体的に成形されている。ベースリング18は円環状に形成されている。ベースリング18の軸方向15の一端側にパッド部19が設けられている。図8が示すように、パッド部19は、ベースリング18の一端面37に連続して軸方向15の一端側に突出しており、ベースリング18に対していわゆる片持ち状に設けられている。パッド部19は、リールの脚の他端側が挿入され、当接する部材である。このため、パッド部19の内壁面35は円弧状に形成されており、リールの脚の外面に沿ってパッド部19が均等に接触するようになっている。
ベースリング18の内周面36にキー20〜23が設けられている。これらキー20〜23も樹脂からなり、ベースリング18と一体的に形成されている。各キー20〜23は、上記シート本体29に形成されたスライド溝24〜27(図4参照)と嵌合する。このため、各キー20〜23は、ベースリング18の周方向に沿って均等(位相差90°)に配置されている。各キー20〜23は、全体として細長矩形の板状に形成されている。ただし、各キー20〜23の端部(軸方向15の他端部)は略L字状に屈曲されている。
すなわち、キー20〜23は、真直部38及び屈曲部39を有する。真直部38は、図8が示すように一定の肉厚を有し、当該肉厚寸法の分だけベースリング18の径方向内側に突出している。また、真直部38は、ベースリング18の端面から軸方向15の他端側(図中右側)に真っ直ぐに延び、ベースリング18の他端面40から突出している。屈曲部39は、真直部38に連続し、ベースリング18の径方向外方に向かって延びている。つまり、キー20〜23の端部は鈎状に形成されており、後述される操作ナット14に係合するようになっている。
なお、真直部38の内周面41は、円弧状に形成されている。この内周面41の曲率半径は、シート本体29の外径(雄ねじ34が形成された部分の外径:図4参照)に対応されている。したがって、フード本体17は、がたつきを生じさせることなくシート本体29と嵌合する。
キー22は、図7及び図8が示すように第2の鈎部を備えている。すなわち、キー22の軸方向15の一端側の端部(図中左側の端部)に、真直部42(特許請求の範囲に記載された「第2真直部」に相当)及び屈曲部43(特許請求の範囲に記載された「第2屈曲部」に相当)が形成されている。具体的には、キー22の図中左側の端部に連続して真直部42が延設されている。この真直部42は、ベースリング18の径方向内側に突出し、軸方向15の一端側に延びている。この真直部42に連続して屈曲部43が設けられており、この屈曲部43は、ベースリング18の径方向外方に向かって延びている。後述されるが、この屈曲部43は、保持リング16に係合するようになっている。つまり、上記キー20〜23は、保持リング16と操作ナット14とを連結する連結具として機能している。
なお、上記真直部42及び屈曲部43は省略されてもよい。また、本実施形態では、キー20〜23は上記シート本体29のスライド溝24〜27に対応したものであるから、スライド溝の数に応じてキーの数が変更され得る。
パッド部19は、前述のようにベースリング18の一端面37に片持ち状に支持されている。パッド部19の先端にはフランジ44が形成されており、このフランジ44によって段差部45が設けられている。また、パッド部19とベースリング18との境界部分にも段差部46が設けられている。段差部45及び段差部46が設けられることにより、パッド部19の外周面47が当該段差分だけ削られた状態となっている。この段差寸法は、保持リング16の肉厚寸法に対応しており、後述のように、パッド部19の外周面47に保持リング16が当接されると、保持リング16とベースリング18とが滑らかに連続し、両者の境界に段差が形成されることはない。
<操作ナット>
図13〜図15は、それぞれ、操作ナット14の正面図、断面図及び右側面図である。なお、図14では、操作ナット14の内部構造が詳細に示されている。
操作ナット14は、円筒状に形成されている。この操作ナット14は、フード本体17と同様に樹脂(典型的にはナイロン)による射出成形により形成されている。操作ナット14の内周面48に雌ねじ49が形成されている。この雌ねじ49は、シート本体29の雄ねじ34と螺合するようになっている。したがって、操作ナット14がシート本体29の外側に嵌め合わされ、上記雄ねじ34と雌ねじ49が螺合すれば、操作ナット14が回転されることによって、当該操作ナット14が軸方向15に沿って移動する。
また、操作ナット14の内周面に周溝50が形成されている。この周溝50は、図14が示すように、操作ナット14の軸方向15の一端側端部に設けられている。上記フード本体17に設けられたキー20〜23は、上記周溝50と嵌合するようになっている。このため、周溝50の内壁面の形状は、キー20〜23の屈曲部39の外形形状に対応しており、両者はがたつきを生じさせることなく嵌め合わされる。ただし、両者は所定のはめあいにて嵌合しており、キー20〜23は、操作ナット14の周方向に沿って周溝50内をスライドすることができる。つまり、フード本体17に対して操作ナット14は、軸方向15を中心として自由に回転することができるようになっている。
操作ナット14の外径は、フード本体17のベースリング18の外径に対応している。したがって、上記キー20〜23が上記周溝50と嵌合した状態で、操作ナット14の外周面とベースリング18の外周面とは滑らかに連続し、両者の境界に段差が形成されることはない。
操作ナット14の外周面51に溝52が形成されている。この溝52は、操作ナット14の端面53から軸方向15に延びている。この溝52が設けられることにより、操作ナット14が操作される際の滑り止めとして機能する。本実施形態では、7つの溝52が設けられているが、溝52の数は特に限定されるものではないし、省略されてもよい。
<保持リング>
図16〜図20は、それぞれ、保持リング16の正面図、断面図、平面図、底面図及び右側面図である。
保持リング16は、金属(典型的にはステンレス鋼)からなり、環状に形成されている。図17が示すように、保持リング16の肉厚寸法tは小さく設定されており、このため、保持リング16は軽量化が図られている。なお、上記肉厚寸法tは、フード本体17の上記段差部45、46の寸法に対応されており、本実施形態では、0.5mmに設定されている。
保持リング16の一端面54は傾斜している。すなわち、軸方向15に対して交差しており、図16において上縁寸法Aよりも下縁寸法Bが小さく設定されている。この下縁寸法Bは、フード本体17のパッド部19の長さに対応しており、且つ保持リング16の下縁部分56は、上記パッド部19の形状に合わせて湾曲されている。また、保持リング16の上縁部分55に貫通孔57が形成されている。この貫通孔57の内周面形状は、フード本体17の屈曲部43(図7及び図8参照)の外形形状に対応している。
保持リング16は、パッド部19に嵌め合わされる。すなわち、保持リング16がパッド部19の外側に嵌め合わされ、下縁部56の内面がパッド部19の外周面47と当接する。上記下縁部分56が上記パッド部19の形状に合わせて湾曲しているから、両者はがたつきを生じさせることなく嵌合する。また、この下縁部分56が湾曲しているので、シート本体29との間にリールの脚が挿入される隙間58(図3参照)が形成される。
保持リング16がパッド部19に外嵌されると、上記屈曲部43(図7及び図8参照)が上記貫通孔57と嵌合し、保持リング16が確実にパッド部19に対して位置決めされる。なお、上記屈曲部43が省略される場合は、上記貫通孔57も省略される。保持リング16の肉厚寸法tがフード本体17の上記段差部45、46の寸法に対応しているから、保持リング16とフード本体17との間に段差等が生じることがなく、両者の外周面は滑らかに連続する。
5.リールシートの組立要領と使用態様
図6が示すように、フード本体17の軸方向15の他端側に操作ナット14が嵌め込まれる。このとき、フード本体17に設けられたキー20〜23が操作ナット14に設けられた周溝50(図14参照)と嵌合し、操作ナット14がフード本体17に対して回動可能な状態で連結される。また、フード本体17の軸方向15の一端側に保持リング16が被せられる。保持リング16はフード本体17のパッド部19と嵌合し、且つ屈曲部43が貫通孔57に嵌合するから、フード本体17に対して保持リング16が確実に位置決めされる。この状態で、保持リング16、フード本体17及び操作ナット14が互いに組み付けられ、図1が示すようにこれらの外周面が軸方向15に沿って滑らかに連続する。
保持リング16、フード本体17及び操作ナット14が組み合わされた状態で、フード本体17の一端面54側からシート本体29の端部(軸方向15の他端側)に挿入される(図1〜図3参照)。これにより、保持リング16は、シート本体29を周方向に囲繞し、シート本体29のシート面28との間に上記隙間58を形成する。また、図3、図4及び図6が示すように、フード本体17のキー20〜23がシート本体29のスライド溝24〜27に嵌合し、フード本体17及び保持リング16のいわゆる回り止めがなされる。さらに、操作ナット14は、シート本体29の雄ねじ34に螺合する。したがって、操作ナット14が回転されると、可動フードユニット13全体がシート本体29に対してスライドし、固定フード12に対して接離する。
リールの装着は、次の要領で行われる。
リールの脚がシート本体29のシート面28に載置され、操作ナット14がねじ込まれると、可動フードユニット13が軸方向15に沿って固定フード12に接近し、リールの脚は、固定フード12とフード本体17及び保持リング16とによって挟持固定される。リールの脚の他端側は、シート面28とパッド部19との間の隙間58(図3参照)に挿入され、操作ナット14が締め付けられることによって、当該脚はパッド部19によって押圧固定される。このとき、当該脚に作用する押圧力の反力がパッド部19に反作用として負荷される。
前述のように、保持リング16がパッド部19外側を囲繞しており、これにより、パッド部19が保持リング16によって補強されている。したがって、保持リング16とフード本体29とが組み合わされた部位の剛性は高くなり、パッド部19及び保持リング17は大きく変形することなく、上記脚は、確実に固定される。
つまり、従来のリールシートでは、保持リングのみによってリールの脚が固定されていたため、保持リングの剛性が確保されるために、そのサイズ及び肉厚が大きくならざるを得なかった。しかし、本実施形態に係るリールシート10では、保持リング16とフード本体29とが協働して上記脚を固定するから、保持リング16の小型化及び薄肉化が可能である。加えて、フード本体16及び操作ナット14が樹脂から構成されるので、可動フードユニット13及びリールシート10全体の軽量化が図られる。
本実施形態に係るリールシート10では、保持リング16の小型化、薄肉化及び軽量化が可能となるから、可動フードユニット13及びリールシート10の外径が小さくなり、釣人にとって握りやすく、操作性が向上する。しかも、可動フードユニット13及びリールシート10全体が大幅に軽量化され得るので、釣竿の操作性も大きく向上する。
本実施形態では、ベースリング18に設けられたキー20〜23がシート本体29と係合することによってフード本体17の回り止めが簡単な構造で確実に規制されている。しかも、キー20〜23は、ベースリング18の内周面36に設けられ(図6参照)、このキー20〜23が嵌合するスライド溝24〜27は、シート本体29の外周面を切り欠いて形成されている。したがって、かかる回転規制のための構造が設けられても、フード本体17の外径及び保持リング16の外径が大きくなることはなく、釣人にとって握りやすいリールシート10のデザインが可能である。
また、操作ナット14が締め付けられると、上記押圧力の反力は、パッド部19を跳ね上げる向きに作用する。このため、上記キー20〜23が傾いて、スライド溝24〜27の壁面に押し付けられる傾向にある。しかし、仮に上記スライド溝24〜27の幅Wが、軸方向15の他端側に向かって漸次大きくなっているならば、上記キー20〜23はきわめて滑らかにスライド溝24〜27に沿って移動することができる。すなわち、リールの脚が強固に固定される場合であっても、操作ナット14は滑らかに操作される。なお、スライド溝24〜27の幅Wが前述のように変化していなくても、キー20〜23が円滑にスライドするためにキー20〜23とスライド溝24〜27との間に所定のクリアランスが形成されていればよいことは勿論である。
さらに、本実施形態では、上記キー20〜23が操作ナット14と係合したとき、キー20〜23の真直部38が操作ナット14の内側に進入し、キー20〜23の屈曲部39が操作ナット14の周溝50に嵌合する。このように、上記キー20〜23がベースリング18の内周面36に設けられ且つ操作ナット14に対して内側から外側に向かって係合するから、キー20〜23が設けられていても保持リング16及び操作ナット14の外径が大きくなることはないという利点がある。
ところで、操作ナット14が操作されて、リールの脚が前述のようにシート本体29に固定される場合や、実釣においてヒットした魚が大型である場合には、可動フードユニット13にさまざまな方向に外力が作用する。すなわち、フード本体17にさまざまな方向に負荷がかかり、キー20〜23が変形する傾向にある。しかし、キー20〜23が前述のように均等に4箇所に設けられることにより、あらゆる方向に負荷がかかった場合であっても、いずれかのキー20〜23が確実にシート本体29のスライド溝24〜27と嵌合し、且つ操作ナット14の周溝50と嵌合する。これにより、本実施形態では、操作ナット14が緩んだり、操作ナット14とフード本体17との連結が外れたりすることが防止される。
加えて、本実施形態では、キー22に設けられた真直部42及び屈曲部43によって保持リング16とフード本体17との組み付けがより確実なものとなり、剛性がさらに向上するという利点がある。しかも、当該キー22が保持リング16の内側から係合するので、保持リング16外径が大きくなることもない。