JP5894914B2 - 腫瘍細胞の作製方法 - Google Patents
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Description
ヒトの肺上皮細胞の不死化および癌化については、複数の研究グループが研究を行っている(非特許文献5〜7)。これらの研究では、レトロウィルスを用いた遺伝子操作により、大部分のヒト非小細胞肺がんに認められる3種類の遺伝子変化、即ち、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の導入並びに、pRB経路及びp53経路の不活化、が検討されている。テロメラーゼの高発現は殆どの肺がんに共通して観察され(非特許文献8)、p53の機能喪失は、約50%の非小細胞肺がんで観察され、また、プロモーター領域のメチル化又はホモ接合型欠失によるp16タンパク質の発現不全が約70%の非小細胞肺がんで観察されている(非特許文献9)。
しかしながら、このような研究が進められているにも関わらず、現時点において、実際に肺がん患者から採取される肺がん組織と病理学的に高い類似性を示す肺がん細胞を人工的に作製できたという報告は殆ど存在しない。
現時点において、がん細胞の研究及び抗がん剤の開発には、がん患者から採取したがん細胞株を使用しているが、患者から採取されたがん細胞株の殆どは、不特定の遺伝子損傷を有するために、細胞株間で遺伝子異常の状態にばらつきがある。従って、このような細胞を特定の分子又はシグナル経路の研究に用いた場合、得られた実験結果を異なる細胞株に応用することができない。また、このような細胞は、不特定の遺伝子損傷を有するため、がん化に対する個々の遺伝子の貢献を評価するための実験には適さない。
Meuwissen,R.et al.,(2005).Genes Dev.19,643−664 Herbst,R.S.et al.,(2008).Lung cancer.N.Engl.J.Med.359,1367−1380 Akagi,T.(2004).Trends Mol.Med.10,542−548 Zhao,J.J.et al.,(2004).Trends Mol.Med.10,344−350 Lundberg,A.S.et al.,(2002).Oncogene 21,4577−4586 Ramirez,R.D.et al.,(2004).Cancer Res.64,9027−9034 Sato,M.et al.,(2006).Cancer Res.66,2116−2128 Sekido,Y.et al.,(2003).Annu.Rev.Med.54,73−87 Herbst,R.S.et al.,(2008).Lung cancer.N.Engl.J.Med.359,1367−1380
本発明者らは、細気道上皮細胞に遺伝子操作を施すことにより、前記細胞を完全に腫瘍化させることに成功した。このようにして得られた腫瘍化細胞は、正常細胞に遺伝子操作を行って腫瘍化させたものであるため、遺伝子状態が特定されている。本発明者らがこれらの細胞を詳細に観察したところ、導入した遺伝子要素の組合せに応じて、分化型又は未分化型のヒト肺がん細胞の組織学的特徴を示すことが判明した。さらに未分化型および分化型ヒト肺癌の癌幹細胞の性質を持つ細胞の作製にも成功した。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、c−Myc遺伝子、v−Src遺伝子、KRAS変異遺伝子、BCL2遺伝子、PIK3CA変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子及びLKB1変異遺伝子、TP63遺伝子及びEGFR変異遺伝子から選択される1又は複数の遺伝子である、前記方法。
[2] 前記がん関連遺伝子が、c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子との組み合わせである、前記[1]に記載の方法。
[3] 前記がん関連遺伝子が、c−Myc遺伝子とKRAS変異遺伝子とBCL2遺伝子との組み合わせである、前記[1]に記載の方法。
[4] 前記腫瘍細胞が、未分化型がん細胞である、前記[2]又は[3]に記載の方法。
[5] 前記腫瘍細胞が、がん幹細胞である、前記[4]に記載の方法。
[6] 前記がん関連遺伝子が、c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子であり、前記c−Myc遺伝子が前記不死化細気道上皮細胞内で誘導発現される、前記[1]に記載の方法。
[7] 前記腫瘍細胞が、低分化型肺がん細胞である、前記[6]に記載の方法。
[8] 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子と、PIK3CA変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子又はLKB1変異遺伝子から選ばれるいずれか1つの遺伝子との組み合わせである、前記[1]に記載の方法。
[9] 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子との組み合わせである、前記[8]に記載の方法。
[10] 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子とTP63遺伝子との組み合わせである、前記[8]に記載の方法。
[11] 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とPIK3CA変異遺伝子との組み合わせである、前記[8]に記載の方法。
[12] 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とLKB1変異遺伝子との組み合わせである、前記[8]に記載の方法。
[13] 前記がん関連遺伝子が、EGFR変異遺伝子とCyclin D1遺伝子との組み合わせである、前記[1]に記載の方法。
[14] 前記腫瘍細胞が、分化型肺がん細胞である、前記[8]〜[13]に記載の方法。
[15] 前記腫瘍細胞が、分化型肺がんのがん幹細胞である前記[9]に記載の方法。
[16] 前記不死化細気道上皮細胞が、哺乳類または霊長類の細胞である、前記[8]〜[15]に記載の方法。
[17] 前記不死化細気道上皮細胞が、ヒトの細胞である、前記[8]〜[15]に記載の方法。
[18] 前記[1]〜[17]のいずれか1項に記載の方法により製造された腫瘍細胞。
[19] 前記[15]に記載の腫瘍細胞が移植された担癌モデル動物。
[20] 以下の工程を含む、腫瘍の治療剤のスクリーニング方法。
(a)前記[18]に記載の腫瘍細胞に由来するサンプルと候補物質とを接触させる工程
(b)腫瘍細胞の増殖阻害効果を検出する工程
本発明の方法により作製される腫瘍細胞は、正常細胞に遺伝子操作を行って腫瘍化させたものであるため、遺伝子状態が特定されている。従って、本発明により、肺がんの発達における個々の遺伝子の貢献の評価に非常に有用なモデルシステムが提供される。また、本発明の方法により作製される腫瘍細胞のうち、がん関連遺伝子のみを導入することによって作製された細胞は、がん細胞の特性を忠実に表現した細胞であり、抗がん剤等の開発に非常に有効であると期待される。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2010年5月31日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2010−125256号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。
1.腫瘍細胞の作製方法
本発明は、不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法を提供する。
好ましくは、本発明の方法は、前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、c−Myc遺伝子、v−Src遺伝子、KRAS変異遺伝子、BCL2遺伝子、PIK3CA変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子、LKB1変異遺伝子、TP63遺伝子及びEGFR変異遺伝子から選択される1又は複数の遺伝子であることを特徴とする。
がん関連遺伝子
本発明の方法において使用する、「がん関連遺伝子」とは、正常細胞内で発現させた場合に、前記細胞を腫瘍化又はがん化させることが可能な遺伝子、あるいは正常細胞内で発現させた場合に、前記細胞を腫瘍化又はがん化させることが可能な遺伝子の発現制御に関連する遺伝子を意味する。がん関連遺伝子の具体例としては、myelocytomatosis oncogene(c−Myc)遺伝子、v−Src遺伝子、RAS遺伝子、B−cell leukemia/lymphoma 2(BCL2)遺伝子、phosphatidyl inositol 3−kinase catalytic subunit(PIK3CA)遺伝子、Cyclin D1遺伝子、Liver Kinase B1(LKB1)遺伝子、c−Ab1遺伝子、c−Sis遺伝子、epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子、platelet−derived growth factor receptor(PDGFR)遺伝子、vascular endothelial growth factor receptor(VEGFR)遺伝子,HER2/neu遺伝子、Rafキナーゼ遺伝子、サイクリン依存性キナーゼ遺伝子、Tumor protein p63(TP63)遺伝子及びこれらの変異遺伝子等が挙げられる。
本発明においては、c−Myc遺伝子、v−Src遺伝子、RAS遺伝子、BCL2遺伝子、PIK3CA遺伝子、Cyclin D1遺伝子、LKB1遺伝子、EGFR遺伝子、TP63遺伝子並びにこれらの変異遺伝子及びスプライシングアイソフォームを好適に用いることができる。
本発明においては、がん関連遺伝子の種別は特に問わないが、好ましくは哺乳類のがん関連遺伝子であり、より好ましくは霊長類のがん関連遺伝子であり、さらに好ましくは、ヒトのがん関連遺伝子である。
「c−Myc遺伝子」は、種々の遺伝子の発現調節及びDNA複製に関与するDNA結合因子、即ち転写因子をコードする遺伝子であり、c−Myc遺伝子の発現異常は、種々のがんとの関連性が示唆されている(Dominguez−Sola,D.et al.,(2007),Nature,448,445−451)。
「v−Src遺伝子」は、レトロウィルスの一種であるRous sarcoma virusに由来するがん関連遺伝子であり、その配列はMayer BJ et al.(J Virol.,(1986),60,(3),858−67)に記載されている。
「RAS遺伝子」は、細胞の分化及び増殖に関与するシグナルを伝達する低分子GTPアーゼをコードする遺伝子であり、これらのシグナル伝達の異常により細胞ががん化することが知られている(Goodsell,D.S.,(1999),Oncologist,4,(3),263−264)。また、非小細胞肺がんの20−30%でRAS遺伝子の変異が報告されている(Aviel−Ronenv,S.et al.,(2006),Clin Lung Cancer,1,30−38)。本発明において、RAS遺伝子は、好ましくは、KRAS変異遺伝子である。本発明において、KRAS変異遺伝子は、野生型KRAS遺伝子が変異したKRAS遺伝子であり、例えば、12番目のグリシン残基がバリン残基に置換した変異体KRASV12(配列番号6)をコードする遺伝子が挙げられる。KRASV12をコードする遺伝子の詳細については、Sato,M.et al.(Cancer Res.(2006),,66,(4),2116−2128)に記載されている。
「BCL2遺伝子」は、アポトーシス抑制活性を持つがん関連遺伝子であり、メラノーマ、前立腺がん、乳がん及び肺がんとの関連性が示唆されている(Chao,D.T.,Korsmeyer,S.J.,(1998),Annu.Rev.Immunol,16,395−419)。
「PIK3CA遺伝子」は、クラスI型のPI 3−kinase catalytic subunitをコードする遺伝子であり、乳がん、大腸がん及び肺がんとの関連が報告されている((Nature Reviews Cancer,(2005),5,921−929、Sci Transl Med,(2010),2,26−25)。また、PIK3CA遺伝子は、子宮頸がんの発達においてがん関連遺伝子として機能することが示唆されている(Ma,Y.Y.et al.,(2000),Oncogene,19,(23),2739−2744)。本発明において、PIK3CA遺伝子は、好ましくはPIK3CA変異遺伝子である。PIK3CA変異遺伝子は、野生型が変異したPIK3CA遺伝子であり、例えば、、1047番目のヒスチジン残基がアルギニンで置換されたPIK3CAH1047R変異タンパク質(配列番号10)をコードする遺伝子が挙げられる。
「Cyclin D1遺伝子」は、細胞周期調節因子をコードする遺伝子であり、Cyclin D1遺伝子の過剰発現は、副甲状腺腺腫、乳がん、前立腺がん、大腸がん、リンパ腫、メラノーマ及び肺がんの発達に関与している(Morgan,D.O.,(2008),Cell,135,764−794、Lung Cancer,(2007),55,1−14)。
「LKB1遺伝子」は、Liver Kinase B1をコードする遺伝子であり、LKB1遺伝子の変異と肺がん、子宮頸がん、乳がん、精巣がん、膵がん及び皮膚がんの発達との関連性が示唆されている(Katajisto,P.et al.,(2007),Biochem.Biophys.Acta,1775,(1),63−75)。本発明においては、LKB1遺伝子は、好ましくはLKB1変異遺伝子である。LKB1変異遺伝子は、野生型が変異したLKB1遺伝子であり、例えば、LKB1のドミナントネガティブ型変異体(LKB1−DN)をコードする遺伝子を好適に使用することができる。ドミナントネガティブ型LKB1変異体の例としては、194番目のアスパラギン酸がアラニンで置換されたLKB1D194A(配列番号16)が挙げられる。
「EGFR遺伝子」は、上皮成長因子受容体をコードする遺伝子であり、EGFR遺伝子の発現上昇は肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、脳腫瘍など多くのがんで認められる。また、肺腺がんではEGFR遺伝子の変異が高率で見つかることも知られている。(Sharma SV et al.,(2007),Nat Rev Cancer,7,(3),169−81)。本発明において、EGFR遺伝子は、好ましくは、EGFR変異遺伝子である。EGFR変異遺伝子は、野生型が変異したEGFR遺伝子であり、例えば、790番目のスレオニン残基がメチオニン残基で、858番目のロイシン残基がアルギニン残基で置換されたEGFRT790M L858R変異タンパク質(配列番号18)をコードする遺伝子が挙げられる。
「TP63遺伝子」は、TP53がん抑制遺伝子の類縁遺伝子であるが、がんを抑制する場合も促進する場合もあることが知られている。頭頸部、肺、食道など様々な臓器由来の扁平上皮がんでTP63遺伝子の発現上昇が報告されている。(Deyoung MP et al.,(2007),Oncogene,26,5169−5183)。本発明においてTP63遺伝子は、好ましくはTP63のスプライシングアイソフォームをコードする遺伝子である。TP63のスプライシングアイソフォームをコードする遺伝子として、例えば、N末端側のトランス活性化ドメインを欠損したTP63のスプライシングアイソフォーム(配列番号20)をコードするTP63ΔN遺伝子が挙げられる。
ヒトのc−Myc、BCL2及びCyclin D1遺伝子の各ヌクレオチド配列は、NCBIデータベースに下記のAccession Numberで登録されている。KRASV12、PIK3CAH1047R及びLKB1D194A遺伝子の各ヌクレオチド配列の詳細は、NCBIデータベースに下記のAccession Numberで登録されている野生型の遺伝子配列並びにMcCoy,M.S.et al(Mol.Cell.Biol.,(1984),4,1577−1582)、Samuels,Y et al(Science,(2004),304,554)、及びScott、K.D.et al(Cancer Res,(2007),67,5622−5627)を参照することができる。
本発明において、「不死化細気道上皮細胞」とは、細気道上皮細胞に由来する不死化細胞であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、哺乳類の細気道上皮細胞に由来する細胞であり、より好ましくは、霊長類の細気道上皮細胞に由来する細胞であり、さらに好ましくは、ヒトの細気道上皮細胞に由来する不死化細胞である。これらの細気道上皮細胞に由来する不死化細胞のうち、さらに好ましくは、正常な細気道上皮細胞に由来する不死化細胞である。ここで、「正常」とは、健康な状態、即ち、検出可能な疾患又は異常を有しない状態を意味する。
不死化ヒト細気道上皮細胞
本発明において、「不死化ヒト細気道上皮細胞」とは、ヒトの細気道上皮細胞に由来する不死化細胞であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、正常ヒト細気道上皮細胞に由来する不死化細胞である。「正常ヒト細気道上皮細胞」とは、健常人のヒトの細気道上皮細胞などを意味するものであり、例えば、検出可能な疾患又は異常を有しない状態にあるヒトの細気道上皮細胞である。
上述の不死化細気道上皮細胞または不死化ヒト細気道上皮細胞は、正常な細気道上皮細胞または正常ヒト細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理のいずれか又はその組み合わせを施すことにより作製することができるが、処理(1)〜(3)の全てを施すことが好ましい。なお、処理(1)〜(3)の処理の順番は特に問わない。
(1)テロメラーゼ遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ遺伝子の強制発現
(3)アポトーシス誘導タンパク質の機能喪失
操作(1)について:テロメラーゼは、真核生物の染色体末端の特異的反復配列を伸張させる酵素であり、テロメラーゼは、それぞれ異なる遺伝子座にコードされるテロメア逆転写酵素、テロメアRNAコンポーネント(TERC)、ジスケリン及びテロメラーゼ関連タンパク質1(TEP1)等のサブユニットから構成される。操作(1)において強制発現させるテロメラーゼ遺伝子としては、テロメア逆転写酵素、TERC、ジスケリン及びTEP1をコードする各遺伝子が挙げられるが、本発明においては、特にテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子(以下、TERT遺伝子という)を好適に用いることができる。
操作(2)について:サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期の回転に関与し、そのファミリーは、CDK1〜13から構成される。操作(2)において強制発現させるサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)遺伝子は、CDK1〜13のいずれをコードする遺伝子であってもよいが、好ましくは、CDK4をコードする遺伝子(Cdk4遺伝子)を用いることができる。CDK4は、Cyclin D1の結合パートナーであり、Cdk4遺伝子の変異が各種腫瘍内で検出されている(Zuo,L.et al.,(1996),Nature Genet.12,97−99)。
操作(3)について:アポトーシス誘導タンパク質の例としては、p53、カスパーゼ−3、−8〜10、12等が挙げられる。操作(3)において機能喪失させるタンパク質は、p53、カスパーゼ−3、−8〜10、12のいずれのタンパク質であってもよいが、本発明においては、好ましくは、p53である。p53の機能を喪失させる方法としては、p53タンパク質の中和抗体の添加、前記抗体をコードする遺伝子の細胞導入、p53をコードする遺伝子であるTP53遺伝子のノックアウト、RNA干渉によるノックダウン、ドミナントネガティブ型TP53遺伝子の強制発現等が挙げられる。
TP53遺伝子のRNA干渉によるノックダウンの報告例として、Sato M et al(Cancer Res,(2006),66,2116−2128)が挙げられる。Sato M et alは、TP53遺伝子のRNA干渉によるノックダウンを行ってヒト気管上皮細胞を不死化させている。
なお、上記の処理(1)〜(3)において、強制発現する遺伝子および機能消失するタンパク質の種別は特に問わないが、好ましくは哺乳類の遺伝子またはタンパク質であり、より好ましくは霊長類の遺伝子またはタンパク質であり、さらに好ましくは、ヒトの遺伝子またはタンパク質である。
本発明において、特に好適に使用できる不死化細気道上皮細胞は、正常な細気道上皮細胞(以下、SAE細胞という)に、TERT遺伝子(以下、TERT遺伝子という)及びCdk4遺伝子を強制発現させ、かつp53の機能を損失させることにより不死化能を獲得した細胞である。より好適な例としては、SAE細胞に、TERT遺伝子、Cdk4遺伝子、及びドミナントネガティブ型TP53遺伝子を導入して強制発現させることにより不死化能を獲得した細胞である。
さらに好適に使用できる不死化ヒト細気道上皮細胞は、正常なヒト細気道上皮細胞(以下、HSAE細胞という)に、hTERT遺伝子及びCdk4遺伝子を強制発現させ、かつp53の機能を損失させることにより不死化能を獲得した細胞である。より好適な例としては、HSAE細胞に、hTERT遺伝子、Cdk4遺伝子、及びドミナントネガティブ型TP53遺伝子を導入して強制発現させることにより不死化能を獲得した細胞(以下、HSAE/4T53細胞という)である。hTERT遺伝子及びCdk4遺伝子及びTP53遺伝子のヌクレオチド配列は、NCBIに以下のAccession Numberで登録されている。ドミナントネガティブ型TP53遺伝子のヌクレオチド配列はShaulian,E.et al(Mol.Cell.Biol,(1992),12,5581)を参照することができる。
HSAE細胞は、ヒトから採取したものを用いてもよく、あるいは市販の細胞(Lonza社:Walkersville,MD,USA)を用いてもよい。
正常な細気道上皮細胞または正常なヒト細気道上皮細胞への遺伝子導入の方法は、以下で述べる不死化ヒト細気道上皮細胞への遺伝子導入の方法と同様である。
遺伝子導入方法
本発明において、がん関連遺伝子を不死化ヒト細気道上皮細胞に導入する場合、がん関連遺伝子を適切な発現カセットとして発現ベクターに挿入し、該ベクターで不死化ヒト細気道上皮細胞を形質転換すればよい。適切な発現カセットは、少なくとも以下の(i)〜(iii)を構成要素として含む。
(i)不死化ヒト細気道上皮細胞で転写可能なプロモーター;
(ii)該プロモーターに結合したがん関連遺伝子;及び
(iii)RNA分子の転写終結及びポリアデニル化シグナルをコードする配列
不死化ヒト細気道上皮細胞で転写可能なプロモーターの例としては、CMV、CAG、LTR、EF−1a、SV40プロモーター等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記発現ベクターは、前記発現カセットの他に、形質転換された不死化ヒト細気道上皮細胞をセレクションするための選択マーカー発現カセットを有していてもよい。選択マーカーの例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等のポジティブセレクションマーカー、LacZ、GFP(Green Fluorescence Protein)及びルシフェラーゼ遺伝子などの発現レポーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−TK)、ジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)等のネガティブセレクションマーカー等が挙げられるが、これらに限定されない。
形質転換された不死化ヒト細気道上皮細胞は、上記マーカーにより容易に選択することができる。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子をマーカーとして導入した細胞であれば、G418を加えた培地中で培養することにより、一次セレクションを行うことができる。また、ターゲティングベクターがGFP等の蛍光タンパク質の遺伝子をマーカーとして含む場合には、薬剤耐性によるセレクションに加えて、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)等を用いた蛍光タンパク質発現細胞のソーティングを行ってもよい。
不死化ヒト細気道上皮細胞へのがん関連遺伝子の導入に使用可能な発現ベクターは、例えば細胞へ遺伝子導入可能な既存の発現ベクターが挙げられ、市販されているものを用いてもよい。発現ベクターの例としてpEGFP−C1TM(Clontech)、pCMV−HATM(Clontech)、pMSCVpuroTM(Clontech)、pEF−DEST51 TM(Invitrogen)、pCEP4TM(Invitrogen)、ViraPower II Lentiviral Gateway SystemTM(Invitrogen)等が挙げられる。発現ベクターは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、ウィルス感染等、公知の遺伝子導入法により不死化ヒト細気道上皮細胞へ導入することができる。遺伝子導入法の詳細については、「Sambrook & Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual Vol.3,Cold Spring Harbor,Laboratory Press 2001」等を参照することができる。
2.腫瘍細胞
本発明において「腫瘍細胞」とは、in vivoで自立的に過剰増殖する細胞を意味する。腫瘍細胞の例としては、(1)骨肉腫や軟部組織肉腫等の肉腫、(2)乳がん腫、肺がん腫、膀胱がん腫、甲状腺がん腫、前立腺がん腫、結腸がん腫、結腸直腸がん腫、膵臓がん腫、胃がん腫、肝臓がん腫、子宮がん腫、子宮頸がん腫、卵巣がん腫等のがん腫、(3)ホジキンや非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、(4)神経芽細胞腫、(5)メラノーマ、(6)ミエローマ、(7)ウィルムス腫瘍、(8)急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)等の白血病、(9)グリオーマ、(10)網膜芽細胞腫等に含まれる細胞が挙げられる。
「腫瘍細胞」の例としては、分化の程度の観点から、分化型がん細胞及び未分化型がん細胞を挙げることもできる。本発明のある実施態様では、腫瘍細胞の好ましい形態は、未分化型がん細胞及び分化型肺がん細胞が挙げられる。分化型肺がん細胞は、さらに低分化型肺がん細胞及び分化型肺がん細胞に分類することができる。低分化型肺がん細胞の例としては、大細胞がん様細胞が挙げられる。一方、分化型肺がん細胞の例としては、扁平上皮がん細胞及び腺がん細胞が挙げられる。
細胞の腫瘍化の確認は、不死化ヒト細気道上皮細胞または不死化ヒト細気道上皮細胞にがん関連遺伝子を導入して、前記細胞を数日培養した後に、前記細胞を適切なモデル動物に皮下注射して腫瘍塊形成を観察することにより行うことができる。
モデル動物の例としては、ヒトを除く哺乳動物が好ましく、特に免疫抑制された哺乳動物が好ましい。免疫抑制された哺乳動物の例としては、ヌードラット、ヌードマウス及びスキッドマウスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
細胞の腫瘍化を確認するための別の方法としては、がん関連遺伝子を導入した不死化ヒト細気道上皮細胞をソフトアガー上で培養し、そのコロニー形成を観察する方法(ソフトアガーコロニー形成アッセイ)が挙げられる。具体的には、不死化ヒト細気道上皮細胞を一定の細胞濃度に調製した上でソフトアガー培地に播種し、細胞増殖速度を観察する方法である。ソフトアガーコロニー形成アッセイの詳細については、Tanaka,S.et al.(Proc.natl.Acad.Sci.USA,(1997),94,2356−2361)を参照できる。
腫瘍細胞の種類
本発明の方法では、導入するがん関連遺伝子の組み合わせにより、未分化型がん細胞、低分化型肺がん細胞又は分化型肺がん細胞のいずれかを選択的に作製することができる。
未分化型がん細胞
本発明の方法において、以下の(A)又は(B)に示す遺伝子の組み合わせを不死化ヒト細気道上皮細胞に導入することにより、未分化型のがん細胞を作製することができる。
(A)c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子
(B)c−Myc遺伝子、KRAS変異遺伝子およびBCL2遺伝子
本方法においては、c−Myc遺伝子の代わりにN−Myc遺伝子又はL−Myc遺伝子を用いてもよく、KRAS遺伝子の代わりにHRAS遺伝子又はNRAS遺伝子を用いてもよく、あるいはBCL2遺伝子の代わりにBCL−Xを用いてもよい。
上記の遺伝子の組み合わせにより作製された未分化型がん細胞(以下、「本発明の未分化型がん細胞」)は、免疫組織化学的分析において、大部分の細胞が、上皮細胞マーカーであるサイトケラチン(抗体のクローン名はAE1/AE3)について陰性または弱陽性であり、かつ間葉系マーカー(VIMENTIN)について陽性である(図1C、図5)。但し、AE1/AE3で陽性かつVIMENTINで陰性の細胞が一部に含まれていてもよい(図1C)。
また、本発明の未分化型がん細胞は、高い造腫瘍能を有することを特徴とする(図2、図4)。
上記(A)の遺伝子の組み合わせにより作製された未分化型がん細胞は、図1Bに示すように、NCl−H460ヒト非小細胞肺癌細胞(ATCC HTB−177)と比べて約2倍高い造腫瘍能を有し、免疫不全マウスの皮下に僅か10個の細胞を接種させた場合であっても腫瘍組織を形成することが可能である(図2A)。この結果より、本発明の(A)の遺伝子の組み合わせにより作製された未分化型がん細胞は、非常に強いtumor−initiating能を有するという、がん幹細胞の特徴のひとつを有するものといえる。
上記(B)の遺伝子の組み合わせにより作製された未分化型がん細胞は、、80%の高効率でヌードマウスに腫瘍を形成することが可能であり、高い腫瘍形成能を有している(図4)。
低分化型肺がん細胞
本発明の方法において、以下の(C)に示す遺伝子の組み合わせを不死化ヒト細気道上皮細胞に導入し、c−Myc遺伝子を誘導発現させることにより、低分化型の肺がん細胞を作製することができる。
(C)誘導性c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子
ここで、「誘導性c−Myc遺伝子」とは、外的刺激により誘導発現が可能なc−Myc遺伝子又はその発現系を意味する。「誘導性c−Myc遺伝子」は、前記「c−Myc遺伝子」に含まれるものとする。また、「誘導発現」とは、発現誘導系により遺伝子発現を制御することを意味する。誘導発現は、(C)に示す遺伝子を不死化ヒト細気道上皮細胞に導入した後から開始すればよいが、好ましくは、不死化ヒト細気道上皮細胞に導入した後から腫瘍形成が確認されるまでの期間で行われる。
発現誘導系は、目的遺伝子(c−Myc遺伝子)の発現を人為的に制御できるものであれば特に限定されないが、具体例としては、デキサメタゾン及びmouse mammary tumor virus(MMTV)プロモーターを用いた発現誘導系、テトラサイクリン又はドキシサイクリン等及びテトラサイクリン応答性プロモーターを用いた発現誘導系(Tet−onシステム)、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄等の金属イオンとメタロチオネインプロモーターを用いた発現誘導系、並びにヒートショックプロテインプロモーターを用いた発現誘導系が挙げられる。
c−Myc遺伝子を強制発現させ、腫瘍形成が確認された時点で、c−Myc遺伝子の発現を抑制する系(例えば、Tet−offシステム)又はc−Mycタンパク質を分解する系(Auxin−based degron system:Nishimura,K.et al.,Nature Methods,vol.6,No.12,December(2009))を用いて、c−Mycの機能を破壊してもよい。好適には、Tet−onシステムを用いることができ、感度の観点からドキシサイクリンを添加することが好ましい。
なお、本方法においては、c−Myc遺伝子の代わりにN−Myc遺伝子又はL−Myc遺伝子を用いてもよい。
上記の遺伝子の組み合わせにより作製された低分化型の肺がん細胞(以下、「本発明の低分化型の肺がん細胞」)は、上皮細胞マーカーであるサイトケラチン(抗体のクローン名はAE1/AE3)が陽性であり、大細胞癌様の形態学的特徴を示す(図3C)。
分化型肺がん細胞
本発明の方法において、以下の(D)〜(H)のいずれかに示す遺伝子の組み合わせを不死化ヒト細気道上皮細胞に導入することにより、分化型肺がん細胞を作製することができる。
(D)KRAS変異遺伝子とPIK3CA変異遺伝子
(E)KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子
(F)KRAS変異遺伝子とLKB1変異遺伝子
(G)KRAS変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子およびTP63遺伝子
(H)Cyclin D1遺伝子とEGFR変異遺伝子
本方法においては、KRAS遺伝子の代わりにHRAS遺伝子又はNRAS遺伝子を用いてもよく、あるいはCyclin D1遺伝子の代わりにCyclin D2遺伝子又はCyclin D3遺伝子を用いてもよい。
上記の遺伝子の組み合わせにより作製された分化型肺がん細胞(以下、「本発明の分化型肺がん細胞」)は、いずれも非常に高い造腫瘍能を有することを特徴とする(図4)。
本発明の分化型肺がん細胞のうち、(D)又は(H)の組み合わせで作製された細胞は、扁平上皮様細胞及び腺がん様細胞が混在した形態を示し、一方、(E)又は(F)の組み合わせで作製された分化型肺がん細胞は、それぞれ腺がん様細胞の形態を示す。(G)の組み合わせで作製された細胞は、扁平上皮様細胞の形態を示す。
また、免疫組織化学的分析において、(D)、(E)又は(F)のいずれの組み合わせで作製された分化型肺がん細胞も、AE1/AE3及びp63について陽性である(図6)。また、(H)の組み合わせで作製された分化型肺がん細胞は、AE1/AE3について陽性であり(図11C)、かつAlcian Blue染色で陽性である(図11B)。
本発明の腫瘍細胞は、いずれも腫瘍発生率及び増殖能が高く、モデル動物に移植して腫瘍形成させた場合、がん関連遺伝子を導入する前の細気道上皮細胞が属する動物種で形成される腫瘍組織と病理学的に酷似した腫瘍を形成する。たとえばヒトの細気道上皮細胞を用いた場合にはがん患者から採取されたがん組織、特に、肺がん組織と病理学的に酷似した腫瘍を形成する。従って、本発明の腫瘍細胞は、肺がん細胞のリプログラミング、分化、生物学的機構の研究、肺がん治療のターゲット分子の同定、並びに抗癌剤のスクリーニングといった多種多様な肺がん研究に非常に有用である。
3.担癌モデル動物
本発明において「担癌モデル動物」とは、前記腫瘍細胞をヒトを除くモデル動物に移植して腫瘍塊が形成された動物を意味する。
モデル動物の例としては、ヒトを除く哺乳動物が好ましく、マウス、ラット、ブタ、イヌ、サル、ハムスター、ウサギなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなモデル動物のうち、特に免疫抑制された哺乳動物が好ましい。免疫抑制された哺乳動物は、通常の哺乳動物にシクロスポリン等の免疫抑制剤を投与することにより作製することもできるが、好ましくは、遺伝的バックグラウンドにより先天的に免疫が抑制された哺乳動物が好ましい。先天的に免疫が抑制された哺乳動物の例としては、ヌードラット、ヌードマウス及びスキッドマウスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
モデル動物への前記腫瘍細胞の移植方法は特に限定されない。移植されるモデル動物に応じて従来から利用されている方法を適宜選択すればよい。マウス以外に移植した事例として例えば、Genetic induction of tumorigenesis in Swine Oncogene 26,1038−1045(11 September 2006)等を参照できる。また、移植の際に使用する腫瘍細胞はモデル動物に移植した際に腫瘍塊を形成させる限り、モデル動物と同じ種であってもよいし、異なる種であってもよい。
移植した腫瘍細胞の再摘出の容易性の観点からは、皮下注射又は腹腔内注射による移植が好ましく、一方で、解剖学的な観点からは、同所移植が好ましい。
4.抗腫瘍剤のスクリーニング方法
本発明は、以下の工程を含む、腫瘍の治療剤のスクリーニング方法を提供する。
(a)本発明の腫瘍細胞に由来するサンプルと候補物質とを接触させる工程
(b)腫瘍細胞の増殖阻害効果を検出する工程
「腫瘍細胞に由来するサンプル」とは、腫瘍細胞または腫瘍組織あるいはこれらをスクリーニング方法の工程で使用しやすいように適宜調整したサンプルを意味する。
「腫瘍細胞に由来するサンプルと候補物質とを接触させる」とは、該候補物質が、腫瘍細胞表面の分子と相互作用を生じさせる程度に接近するか、該分子と結合するか、又は該腫瘍細胞内に取り込まれる条件を調整することを意味する。腫瘍細胞が、培養細胞である場合、該細胞が接している培養培地に該候補物質を一定濃度以上で添加することにより、該細胞と候補物質とを接触させることができる。一方、腫瘍細胞が動物体内に移植されている場合、該動物に候補物質を一定量で投与することにより、該腫瘍細胞と候補物質とを接触させることができる。この場合、投与経路は、候補物質の投与に一般的に採用されている経路であれば、特に限定はされないが、具体例としては、経口、舌下、経鼻、経肺、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射、外科的移植が挙げられ、好ましくは経口投与、腹腔内注射及び静脈内注射である。
候補物質の例としては、既に抗腫瘍効果が確認されている薬剤及び抗腫瘍作用を潜在的に有する化合物、ポリペプチド、核酸、抗体及び低分子化合物等が挙げられる。このような候補物質の具体例としては、代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU))、葉酸代謝拮抗薬(例えば、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ阻害薬であるスルファジアジン及びスルファメトキサゾール、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬(DHFR阻害薬)であるメソトレキセート、トリメトプリム、ピリメタミン)、ピリミジン代謝阻害薬(例えば、チミジル酸シンターゼ阻害薬である5−FU、フルシトシン(5−FC))、プリン代謝阻害薬(例えば、IMPDH阻害薬である6−メルカプトプリン及びそのプロドラッグであるアザチオプリン)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)阻害薬)(例えば、ペントスタチン)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬(リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬であるヒドロキシウレア)、ヌクレオチドアナログ(プリンアナログであるチオグアニン、リン酸フルダラビン及びクラドリビン、ピリミジンアナログであるシタラビン及びゲムシタビン)、L−アスパラギナーゼ、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタードであるシクロホスファミド、メルファラン及びチオテパ、白金製剤であるシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン、ニトロソウレアであるダカルバシン、プロカルバシン及びラニムスチン)抗腫瘍性構成物質(ザルコマイシン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン)、トポイソメラーゼ阻害剤(イリノテカン、ノギテカン、ドキソルビシン、エトポシド、レボフロキサシン、シプロフロキサシン)、微小管重合阻害剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン)、コルヒチン、微小管脱重合阻害薬(パクリタキセル、ドセタキセル)、分子標的剤(トラスツズマブ、リツキシマブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、エルロチニブ)、デキサメサゾン等のステロイド薬、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤及びタモキシフェン並びにこれらの組合せが挙げられるが、以上に限定されるものではない。
腫瘍細胞の増殖阻害効果については、同一の細胞数を同一の細胞密度で培養ディッシュに播種した同一条件の培養系、あるいは同一の細胞数を同一の細胞密度で移植した同一系統の移植モデル動物を2系用意し、一方の系(サンプル)の細胞に前記候補物質を接触させ、他方の系(コントロール)の細胞には前記候補物質を接触させずに、両系の腫瘍細胞の増殖を観察し、一定期間経過後に前記2系のそれぞれに含まれる腫瘍細胞数を測定し、比較することで増殖阻害効果を確認することができる。
本発明の腫瘍細胞を培養細胞の形態でスクリーニングに用いる場合、上記サンプル細胞に候補物質を接触させた後に、サンプル細胞の細胞数とコントロール細胞の細胞数とをセルカウンター等で測定し、それぞれの細胞数を比較して腫瘍増殖効果を確認することができる。
本発明の腫瘍細胞をモデル動物に移植した形態でスクリーニングに用いる場合、サンプル系のモデル動物に候補物質を投与した後に、サンプル系及びコントロール系の動物から腫瘍組織を取り出し、該サンプル系及びコントロール系の腫瘍組織に含まれる細胞数を測定及び比較することができる。あるいは、前記腫瘍組織を取り出して、該腫瘍組織の体積をサンプル系とコントロール系の間で比較して、腫瘍増殖効果を確認することもできる。腫瘍の体積は、以下の式により求めることができる。
腫瘍体積=ab2/2 (a:横幅、b:長さ)
あるいは、サンプル系及びコントロール系の動物に候補物質を投与した後に、腫瘍細胞の移植箇所に対し、計測可能な腫瘍塊が形成された割合をサンプル系とコントロール系の間で比較して、腫瘍増殖効果を確認することもできる。
モデル動物は、項目「2.腫瘍細胞」で述べたモデル動物と同様である。モデル動物への移植方法は特に限定されないが、移植した腫瘍細胞の再摘出の容易性から、皮下注射又は腹腔内注射が好ましい。
サンプル系の腫瘍細胞の増加率が、コントロール系の腫瘍細胞の増加率よりも小さい場合には、用いた候補物質は、抗腫瘍効果を有するものと判断することができる。あるいは、本発明の腫瘍細胞に関し、既に一定の条件下での増加率について複数のデータが存在する場合には、そのデータを統計処理して得られる平均値、標準偏差等から導き出される基準値と比較して判断してもよい。
腫瘍の増加率の平均値、標準偏差等は、種々の統計方法によって得ることができるが、具体的には、培養細胞であれば、播種した時点の初期細胞数及び細胞密度をパラメーターとし、あるいは移植細胞であれば使用したモデル動物の移植時の体重及び移植した腫瘍細胞の細胞数をパラメーターとして、IBM SSPS Statistics 18(SSPS)等の統計解析ソフトでtwo−way ANOVA解析することにより求めることができる。本発明の方法の実施により得られた腫瘍細胞の増加率を新たなデータとして統計解析用の母集団に加えて母数を大きくすることにより、さらに解析の精度を向上させることができる。
本発明の腫瘍細胞は、患者から採取された肺がん細胞と病理学的に酷似した特徴を示すことから、本発明のスクリーニング方法で腫瘍細胞の増加抑制効果が確認された抗腫瘍剤は、実際にがん患者、特に肺がん患者の治療に用いた場合にも抗腫瘍効果を奏すると期待される。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
レトロウィルスベクター及びレトロウィルス媒介性遺伝子導入
表1に示した遺伝子のうち、v−Src(配列番号1)、KRASV12(配列番号5)に関しては、pCX4purベクター(GenBank#:AB086386)に組み込んだ。c−Myc(配列番号3)、PIK3CAH1047R(配列番号11)、Cyclin D1(配列番号13)及びLKB1D194A(配列番号15)は、pCX4bleoベクター(GenBank#:AB086388)に組み込んだ。BCL2(配列番号7)は、pCX4redExベクター(GenBank#:AB296084)に組み込んだ。EGFRT790M L858R遺伝子(配列番号17)は、pCX4purベクター(GenBank Accession No.AB086386)に組み込んだ。TP63ΔN遺伝子(配列番号19)は、pCX4hygベクター(GenBank Accession No.AB086387)に組み込んだ。表2に示した遺伝子のうち、hTERT(配列番号21)はpCX4neoベクター(GenBank#:AB086385)に組み込んだ。CDK4(配列番号23)はpCX4bsrベクター(GenBank#:AB086384)に組み込んだ。ドミナントネガティブTP53(配列番号25)はpCX4.1hisDベクター(GenBank#:AB086389)に組み込んだ。また、誘導性c−Myc遺伝子用に、テトラサイクリンによって発現を制御可能なpT−REx誘導発現ベクター(Invitrogen社)にc−Myc遺伝子を組み込んだ誘導発現ベクターも調製した。上記のレトロウイルス発現用のベクター並びにpGPおよびpE−ecoプラスミド(Takara Bio社、Shiga,Japan)を293T細胞(ATCC、Manassas,USA)に導入することで、ウイルスを作製した。その後に、Ecotropic receptor(Eco VR)を発現させたHSAE細胞にレトロウイルスを感染させた。上記ウィルスベクターに感染した細胞は、blasticidin S、G418、puromycin、zeocine、L−Histidinolの存在下で2週間培養することによりセレクションを行った。いずれの薬剤でセレクションを行う場合でも、培養細胞は、感染細胞のポリクローナルな増殖集団から選択した。
細胞培養
19歳の白人女性に由来する正常ヒト細気道上皮細胞をLonza社(Walkersville,MD,USA)から購入した。これらの細胞を、コラーゲンコーティングしたディッシュ上で、Lonza社から提供された種々の増殖因子を添加した血清不含SAGM medium(SAGM Bullet Kit;Lonza)中にて培養した。細胞は、湿潤インキュベーター内で低酸素環境下(3% O2及び5% CO2)で37℃にて維持した。
異種移植片増殖実験
マウスを用いて異種移植片増殖実験を行った。具体的には、各がん関連遺伝子が導入された1x106個のHSAE/4T53細胞またはHSAE細胞を含む細胞懸濁液(single−cell−suspension)を、50% MATRIGELTM(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)に懸濁し、週齢6又は7のメスの胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)または、NOD−SCIDマウス(チャールズリバー社)のわき腹に皮下注射した。ノギスを用いて腫瘍の寸法を測定し、以下の式に基づいて腫瘍の体積を計算し、造腫瘍能として見積もった。
腫瘍体積=ab2/2 (a:横幅、b:長さ)
また、各がん関連遺伝子が導入されたHSAE/4T53細胞またはHSAE細胞の移植箇所に対し、計測可能な腫瘍塊が形成された割合を腫瘍発生率として算出し、造腫瘍能として見積もった。
組織学的分析及び免疫組織化学染色
異種移植片をホルマリン固定及びパラフィン包埋した後に切片化し、通常のプロトコルに従ってヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を行った。先の文献(Sasai,K.et al.,(2008).Am.J.Surg.Pathol.32,1220−1227)の記載に従い、以下の抗体を用いて免疫組織化学染色を行った:multi−cytokeratins(AE1/AE3;Dako,Glostrup,Denmark)、p63(4A4;Dako)、TTF−1(8G7G3/1;Dako)、p53(DO7;Novocastra)、VIMENTIN(V9;Nichirei,Tokyo,Japan)。具体的には、以下の手順で免疫組織化学染色を行った。厚さ4μmの組織切片をキシレンで脱パラフィン化した後にエタノールで脱水した。圧力鍋にて、10mMクエン酸バッファー(pH6.0)中で2分間加熱することにより、抗原を賦活させた。0.01% Tween20含有リン酸干渉生理食塩水(PBST)で組織切片を再水和させ、0.3%過酸化水素とインキュベートさせることで、内在性のペロキシダーゼを不活化させた。組織切片を、適切な希釈濃度の1次抗体で4℃にて一晩インキュベートし、PBSTで洗浄した後、室温にてEnvision Dual Link solution(Dako,Glostrup,Denmark)で30分間インキュベートした。次に、ジアミノベンジジン(Dako)で切片を処理して抗原抗体反応部位を可視化させ、ヘマトキシリン処理を90秒間行って核染色を行った。組織切片のスライドをEntellan Neu reagent(Merck,Whitehouse Station,NJ)でマウントした後にカバーガラスで封入し、観察に供した。
Alcian Blue染色は、異種移植片をホルマリン固定及びパラフィン包埋した後に切片化し、当該切片に対して、先の文献(Steedman,H.F.,Quarterly Journal of Microscopic Science,Vol 91,p477−479(1950))の記載に従い、行った。
イムノブロット法
タンパク質の測定、SDS−PAGE及びイムノブロッティングは、先の文献(Akagi,T.et al.,(2002).Mol.Cell Biol.22,7015−7023)の記載に従って行った。免疫反応陽性タンパク質のシグナルは、SuperSignal WestFemto reagent(Pierce,Rockford,IL,USA)を用いてケミルミネセンスにより可視化した。抗c−Mycモノクローナル抗体は、Invitrogen社(Carlsbad,CA,USA)より入手した。
限界希釈法によるクローニング
シングル細胞由来の細胞クローンの調製は、先の文献(Quintana E et al.,Nature.2008 Dec 4;456(7222):593−8)の記載に従って行った。
実験結果
[1] v−Src遺伝子及びc−Myc遺伝子の導入によるがん細胞の作製
HSAE/4T53細胞にc−Myc遺伝子とv−Src遺伝子を導入して作製した4T53MS細胞を1x106個ずつ胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行った。4T53MS細胞が移植されたマウスでは、腫瘍塊の形成が認められた(図1A)。4T53MS細胞は、非常に高い造腫瘍能を有していた。造腫瘍能が高いことで知られているNCl−H460肺がん細胞と比較しても、約2倍高い造腫瘍能を有していた(図1B)。また、この腫瘍塊を取り出して、組織切片を調製し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を行ったところ、分化度の非常に低く、分化形態を示さない癌組織像が示された。また、免疫染色の結果も、肺の上皮マーカーであるp63染色陰性であり、上皮細胞マーカーであるサイトケラチン(抗体のクローン名はAE1/AE3)染色でも陰性であった。一方で、間葉系細胞のマーカーであるVIMENTINは強陽性であった。以上より、4T53MS細胞由来の腫瘍は未分化癌の性質を呈すると結論づけた(図1C)。なお、v−Srcまたはc−Mycの一方のみをHSAE/4T53細胞に遺伝子導入して得られた細胞(それぞれ4T53Sおよび4T53M細胞という)では、造腫瘍能が認められなかった。
上記、4T53MS細胞は、造腫瘍能が非常に強く、それぞれ1x106,1x104,1x103または1x102個の皮下移植によっても、100%の確率でNOD−SCIDにおいて腫瘍形成が認められた(図2A)。更に、僅か10個の細胞移植によっても、50%の確率で腫瘍形成が可能であることが分かった(図2A、図2B)。よって、4T53MS細胞は、非常に高い造腫瘍能及び複数の系統の腫瘍細胞に分化するという特徴を有することから、癌幹細胞が有する特徴を持っていることが示された。
誘導性c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子をHSAE/4T53細胞に導入して作製した4T53mS細胞をドキシサイクリン(DOX)処理することによって、in vitroの実験系でc−Myc発現を誘導した(図3A)。DOX存在下で培養した4T53mS細胞をヌードマウスの皮下に移植し、DOXを投与し続け、腫瘍形成が見られた時点で、DOX投与を停止した(図3B)。(C)得られた腫瘍組織をサイトケラチンで染色すると、強陽性の腫瘍細胞と、陰性の間質細胞とに明瞭に区別された。しかしながら、腺癌・扁平上皮癌などにみられる特徴的な像は示さず、低分化型の大細胞癌様の腫瘍であることが判明した(図3C)。
[2] ヒト由来遺伝子の導入によるがん細胞の作製
c−Myc及びKRASV12の両方を遺伝子導入して得られた4T53RM細胞を胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行った。4T53RM細胞は、造腫瘍能を有していた。ただし、腫瘍発生率は38%であった(図4)。この4T53RM細胞に、BCL2を導入した4T53RMB細胞を胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行った。4T53RMB細胞は、80%の高効率でヌードマウスに腫瘍を形成するようになった。
組織学的検査では、4T53RM細胞由来及び4T53RMB細胞由来の腫瘍の両者において、扁平上皮がん又は腺がん等の特徴を示さない組織像が観察された。これらの腫瘍は、免疫染色の結果、サイトケラチンについては弱い陽性反応しか示さなかったが(AE1/AE3:図5)、VIMENTINについては強い陽性反応を示したことから、未分化癌と診断された。
HSAE/4T53細胞にKRASV12遺伝子を導入して4T53R細胞を作製し、4T53R細胞に、PIK3CAH1047R、Cyclin−D1、LKB1D194Aのいずれかの遺伝子導入し、それぞれ4T53RP、4T53RD、4T53RL細胞を樹立した。胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に4T53R、4T53RP、4T53RD、4T53RL細胞を皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行ったところ、4T53R細胞では造腫瘍能は見られなかったが、4T53RP、4T53RD、4T53RL細胞では高い腫瘍発生率が観察された(ぞれぞれ100%、100%、83%:図4)。
4T53RP、4T53RD又は4T53RL細胞由来の腫瘍(異種移植片)の組織学的解析を行ったところ、実際のヒト肺がん組織に類似した組織像を示すことが判明した。4T53RP由来腫瘍では、腺がん様領域と扁平上皮癌様領域の両方を含む組織像が観察された(図6:H&E)。一方、4T53RD及び4T53RL由来の腫瘍(異種移植片)は、環形成が認められ、腫瘍間質を豊富に含むことから、ヒト肺腺癌に類似した形態を有することが判明した(図6:H&E)。いずれの腫瘍組織とも、上皮細胞マーカーであるサイトケラチン強陽性の細胞から構成されていた(図6:AE1/AE3)。また、肺上皮細胞のマーカーであるp63染色も陽性であった(図6:p63)。これらのマーカー発現は、4T53RP、4T53RD、4T53RL細胞由来の腫瘍がヒト肺腺癌に類似した分化型腫瘍であることを示している。なお、4T53RP細胞由来腫瘍については、扁平上皮癌様の領域をも含むことから、ヒト肺腺癌および扁平上皮癌の混在型(adenosquamous cell carcinoma)であるものと診断された。
[3] 肺腺癌の癌幹細胞の性質を持った細胞の作製
KRASV12及びCyclinD1の両方の遺伝子をHSAE/4T53細胞に導入して作製した4T53RD細胞由来の癌組織は、肺腺がんに類似したヘテロな細胞集団から成る腺構造を形成するが、このことは4T53RD細胞が複数の種類の細胞に分化する能力がある幹細胞の性質を持っている可能性を示唆している。
この可能性を証明する目的で、4T53RD細胞を限界希釈法によってクローニングし、シングル細胞由来の細胞クローンを複数得た。この細胞クローンをNOD−SCIDマウスに皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行ったところ、シングル細胞由来の4T53RD細胞クローンも、腫瘍塊を形成し、親株の4T53RD細胞と同様にヒト肺腺癌に類似した形態の腫瘍を形成した(図8A)。
マウスの気道上皮は、図8Bに示すようにp63を発現する基底細胞、TTF1を発現するクララ細胞、粘液を産生するゴブレット細胞、繊毛細胞など複数の細胞集団から構成されている。
シングル細胞由来の4T53RD細胞クローンが移植されて形成された腫瘍組織は免疫組織化学染色の結果、マウス由来の基質と接している辺縁部にはp63陽性の基底細胞が存在するが、その内側で腺構造を形成している部分はp63が陰性で、クララ細胞で発現するTTF1陽性細胞や、alcian blueで染色される粘液を産生する細胞が存在していた(図8A)。最近、Rock JR.et al.(Proc Natl Acad Sci U S A.2009 Aug 4;106(31):12771−5)によりp63陽性の基底細胞が気管支において幹細胞として機能することが示されたことを考慮すると、この結果は、シングル細胞由来の4T53RD細胞クローンによってできた腫瘍では、p63陽性の細胞が内側に向かって増殖しながらクララ細胞や粘液を分泌する腺細胞に分化してヘテロな細胞集団から成る癌組織を形成したと考えられる。
また、4T53RD細胞クローンは、強い造腫瘍能を有しており、1x104、1x103、1x102、1x101個の細胞の皮下移植によって、それぞれ、100、80、60、13%の確立でNOD−SCIDマウスにおいて腫瘍形成が認められた(図9)。
これらの結果より、4T53RD細胞は、▲1▼1つ細胞からin vivoで腫瘍を形成する過程において複数種類の細胞へと分化していく能力を有するとともに、▲2▼少ない細胞数でも腫瘍を形成することができる。という癌幹細胞がもつ2つの性質をそなえていることが示された。
[4] 肺扁平上皮癌の性質を持った細胞の作製
KRASV12、Cyclin D1及びTP63ΔN牧の遺伝子をHSAE/4T53細胞に導入して作製した4T53RDΔNp63細胞を胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に皮下移植し、形成された腫瘍組織について組織学的分析及び免疫組織化学染色を行った。
KRASV12及びCyclin D1の両遺伝子をHSAE/4T53細胞に導入して作製した4T53RD細胞は、ヒト肺腺癌に類似した形態の腫瘍を形成する(図10A)のに対し、KRASV12及びCyclin D1に加えてさらにTP63ΔN遺伝子を導入して作製した細胞は、組織学的解析により、扁平上皮癌様の腫瘍組織(Squamous cell carcinoma)を形成することが示された(図10B)。
[5] EGFR変異遺伝子とCyclin D1による分化型肺がん細胞の作製
EGFRT790M L858R及びCyclin D1の両遺伝子をHSAE/4T53細胞に導入して作製した4T53ED細胞を胸腺欠損ヌードマウス(BALB/c nu/nu;Japan SLC,Hamamatsu,Japan)に皮下移植し、形成された腫瘍組織について異種移植片増殖実験、組織学的分析及び免疫組織化学染色を行った。
4T53 ED細胞は、100%の腫瘍発生率を示し(図4)、高い造腫瘍能を有することが判明した。また、4T53 ED細胞由来の腫瘍組織は、扁平上皮様細胞が主要で、一部、腺がん様細胞が混在した形態の特殊なタイプの分化型の腫瘍組織を形成した。(図11A〜図11C)。
以上の結果が示すように、不死化ヒト細気道上皮細胞(HSAE/4T53細胞)に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞の分化の程度を調節することが可能である。すなわち、図7に示すとおり、「c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子(4T53MS細胞)」または「c−Myc遺伝子、KRAS変異遺伝子およびBCL2遺伝子(4T53RMB細胞)」の組み合わせで遺伝子を導入することにより未分化癌モデルを作製することが可能である。また、「誘導性c−Myc遺伝子とv−Src遺伝子(4T53mS細胞)」の組み合わせで遺伝子を導入し、c−Myc遺伝子を誘導発現させることにより、ヒト肺大細胞癌に類似する低分化型の肺癌モデルを樹立することがが可能である。さらに、「KRAS変異遺伝子とPIK3CA変異遺伝子(4T53RP細胞)」、「KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子(4T53RD細胞)」、「KRAS変異遺伝子とLKB1変異遺伝子(4T53RL細胞)」、「KRAS変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子およびTP63遺伝子(4T53RDΔNp63細胞)」又は「EGFR変異遺伝子とCyclin D1遺伝子(4T53ED細胞)」のいずれかの組み合わせで遺伝子を導入することにより、腺癌若しくは扁平上皮癌(又はその混合型)に類似したヒト肺癌モデルを作製可能である。
[配列表]
Claims (18)
- 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメア逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、c-Myc遺伝子とv-Src遺伝子との組み合わせである、前記方法。 - 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメア逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、c-Myc遺伝子とKRAS変異遺伝子とBCL2遺伝子との組み合わせである、前記方法。 - 前記腫瘍細胞が、未分化型がん細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記腫瘍細胞が、がん幹細胞である、請求項3に記載の方法。
- 前記c-Myc遺伝子が前記不死化ヒト細気道上皮細胞内で誘導発現される、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記腫瘍細胞が、低分化型肺がん細胞である、請求項5に記載の方法。
- 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメア逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子と、PIK3CA変異遺伝子、Cyclin D1遺伝子及びLKB1変異遺伝子から選ばれるいずれか1つの遺伝子との組み合わせである、前記方法。 - 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子との組み合わせである、請求項7に記載の方法。
- 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメア逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とCyclin D1遺伝子とTP63遺伝子との組み合わせである、前記方法。 - 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とPIK3CA変異遺伝子との組み合わせである、請求項7に記載の方法。
- 前記がん関連遺伝子が、KRAS変異遺伝子とLKB1変異遺伝子との組み合わせである、請求項7に記載の方法。
- 不死化細気道上皮細胞に、がん関連遺伝子を導入することにより、腫瘍細胞を作製する方法であって、
前記不死化細気道上皮細胞が、正常細気道上皮細胞に以下の(1)〜(3)の処理を施すことにより作製されたものであり、
(1)テロメア逆転写酵素遺伝子の強制発現
(2)サイクリン依存性キナーゼ4遺伝子の強制発現
(3)p53の機能喪失
前記がん関連遺伝子が、EGFR変異遺伝子とCyclin D1遺伝子との組み合わせである、前記方法。 - 前記腫瘍細胞が、分化型肺がん細胞である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記腫瘍細胞が、分化型肺がんのがん幹細胞である請求項8に記載の方法。
- 不死化細気道上皮細胞が哺乳類または霊長類の細胞である、請求項7〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法により製造された腫瘍細胞。
- 請求項16に記載の腫瘍細胞が移植された非ヒト担癌モデル動物。
- 以下の工程を含む、腫瘍の治療剤のスクリーニング方法。
(a)請求項16に記載の腫瘍細胞に由来するサンプルと候補物質とを接触させる工程
(b)腫瘍細胞の増殖阻害効果を検出する工程
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