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JP5877988B2 - 蛍光タンパク質を用いた分子認識センサー、分子放出複合体及びその合成 - Google Patents

蛍光タンパク質を用いた分子認識センサー、分子放出複合体及びその合成 Download PDF

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JP5877988B2
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Description

本発明は、分子認識センサー、あるいは、分子放出複合体として機能し得る、修飾された蛍光タンパク質に関する。より具体的には、シクロデキストリンが結合した蛍光タンパク質、及び、該蛍光タンパク質を製造する方法に関する。
細胞内における様々な現象、例えば、シグナル伝達に関与する因子群の離合集散、特定のタンパク質や小分子の細胞内局在の動態などは、時々刻々と変化しているが、このような変化が、疾患の発生などの異常な状態についてのメルクマールとして重要な意味を持つことがある。細胞内に存在する様々な小器官や細胞内因子などの動態をモニターする手段として、蛍光標識による追跡観察などが、古くから有効な方法として用いられてきた。特に、タンパク質性の蛍光因子である緑色蛍光タンパク質(GFP)は、その発見以来、遺伝子工学的手法による修飾が可能であるとの利点と、蛍光を発するという特徴を生かすことにより、機能的分子センサーとして利用されてきた。緑色蛍光タンパク質には、様々な色変異体が存在するため、異なる蛍光波長の色変異体使用することで、種々の生命現象を同時に観察することができる。また、他の蛍光色素(例えば、量子ドット)などと組み合わせることで、共鳴エネルギー移動を生じさせる事によりFRETやFLIMなどの蛍光変化を利用した細胞内現象の観察も可能であることから、現在においても、利用性の高い分子ツールとなっている。
生体内(臓器、組織、細胞、細胞内小器官等)の現象をモニターするにことにより、特定の疾患の原因となるような生体内変動が見出された場合には、生体内の変動領域に対し、薬剤などを正確に送達する必要が生じる。このような場合に、標的指向性薬物送達システム(DDS:Drug Delivery System)を利用した薬剤投与方法が有効な場合がある。標的指向性薬物送達システムにおける担体には、送達するべき細胞あるいは生体内の特定領域を特異的に認識するための部分と薬剤を包接するための部分の両方が必要である。特定領域を特異的に認識するための部分としては、例えば、特定領域に存在するタンパク質等に対する抗体や、該タンパク質に対するレセプターなどが利用され、一方、薬剤を包接するための部分としては、シクロデキストリンなどの利用が考えられる。シクロデキストリン(CD:Cyclodextrin)は、D−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合した、環状オリゴ糖で、環の外側は親水性を、環の内側は疎水性を示す。そのため、シクロデキストリンの環の内側には、疎水性物質を包接させることができる。このような特性に着目し、DDSのキャリアとしてのシクロデキストリンの有効利用について、さかんに研究開発が進められている。
以上のような蛍光タンパク質とシクロデキストリンの特徴をうまく利用したセンサー分子の開発が、現在、多く手がけられている。例えば、蛍光特性を有する蛍光タンパク質と疎水性物質が包接可能なシクロデキストリンとの超分子複合体などについて、生体内の状況をモニターするセンサーとして、又は、薬剤の送達に利用可能なDDSキャリアとしてその利用性が検討されている。このような超分子の作製方法として、例えば、蛍光タンパク質のアミド結合を介してCDを結合させる方法が開示されている(非特許文献1)。この方法は、蛍光タンパク質のC末端部にインテインを融合させた融合体を発現させ、チオールの存在下での切断によって生じるチオエステル部分に、予めシステイン修飾を施したCDを結合させる方法である。この方法によれば、蛍光タンパク質の目的部位にCDを結合させることは可能であるが、CDの修飾の他、蛍光タンパク質についてはインテインを利用してチオエステル部分を作出するなどの修飾が必要であり、煩雑な工程が必要とされる。また、GFPのC末端フラグメント(アミノ酸残基214−230)切り出した後、このフラグメントにCD等を結合させた後、N端部分側のGFP再結合させることで、CDで修飾したGFPを作出する方法も開示されている(非特許文献2)。この方法においても、GFPの修飾方法が、汎用性に乏しく、かつ、効率が悪いといった問題が存在している。
Zhangら,Angew.Chem.Int.Ed.,2007 46:1798−1802 Sakamotoら,J.Am.Chem.Soc.,2008 130:9574−9582
上述のように、従来の蛍光タンパク質をCDで部位特異的かつ化学量論的に修飾する方法は、工程が煩雑であること、汎用性に乏しいなどの問題点が存在していた。部位特異的かつ化学量論的でない場合、超分子複合体として機能しないケースが多い。
そこで、本発明は、蛍光タンパク質に部位特異的かつ化学量論的にCDを結合させるための簡便 かつ、効率的な方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、修飾により蛍光タンパク質が変性することなく、CDが安定に結合した超分子複合体の提供を目的とする。
本出願の発明者らは、蛍光タンパク質に対し、CDを容易に結合させる方法について鋭意検討した結果、蛍光タンパク質のアミノ酸配列中に存在するシステイン残基を介して、CDを結合させることで、簡易、迅速にCD−蛍光タンパク質からなる超分子複合体の調製が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下の(1)〜(8)である。
(1)所望のアミノ酸位置にシステイン残基を保持する蛍光タンパク質と、システイン残基と結合性を有するシクロデキストリン誘導体を反応させ、蛍光タンパク質とシクロデキストリン若しくはシクロデキストリン誘導体の複合体を作製する方法。
(2)前記システイン残基が、野生型の蛍光タンパク質のアミノ酸配列上に存在しないものであることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記蛍光タンパク質が、前記所望のアミノ酸位置以外に存在するシステイン残基をシステイン以外のアミノ酸に置換したものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記蛍光タンパク質が、GFP又はその誘導体であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記所望のアミノ酸位置が、蛍光タンパク質のC末端領域、N末端領域、又はC末端若しくはN末端領域近傍のループ領域に存在することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記システイン残基と結合性を有するシクロデキストリン誘導体が、ヨウ化シクロデキストリン、マレイミドシクロデキストリン、ハロアセトアミドシクロデキストリン、ブロモメチルシクロデキストリン、チオサルフェイトシクロデキストリン、システイニルシクロデキストリン、トシルシクロデキストリンのいずれかであることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の方法により作製される蛍光タンパク質及びシクロデキストリン若しくはシクロデキストリン誘導体との複合体。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の方法を実施するためのキット。
本発明で開示される方法によれば、簡易、かつ、迅速に蛍光タンパク質とCDの超分子複合体を作製することが可能となる。
βCDを結合させたGFP変異体について、ポリアクリルアミド電気泳動を行った結果。レーン1は、CDの結合処理を行っていないGFP変異体、レーン2及びレーン3は、各々、反応産物を遠心により分離する過程で生じた1回目及び2回目の上清、レーン4は、最終的に沈殿に回収したCD結合処理を行ったGFP変異体の電気泳動結果を示す。矢印は、GFP変異体のダイマー及びモノマーのバンドを示す。 βCDを結合させたGFP変異体のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。MALDI−TOF MS分析によって生じたGFP変異体の切断位置を3種類の斜線(/,//,///)と添字(1,2など)を用いて表した。一本斜線はN末端領域の欠損を生じさせる切断部位を示す。二本斜線は大きなループ領域に検出された切断部位を示す。三本斜線はC末端領域の欠損を生じさせる切断部位を示す。また、最初の太文字は、βバレル構造へのN末端側の付加領域を、二番目の太文字は6番目と7番目のβストランド間に存在する大きなループ領域を示し、三番目の太文字はβバレル構造へのC末端側の付加領域を示している。従って、例えば、図3Aに示されるN2C3は、/及び///の位置で切断され、C及びN末領域を欠失したGFP変異体部分を示し、N8L7は、/及び//の位置で切断されたGFP変異体のループ部分を示す。また、下線部分は、GFP変異体の精製のために使用したタグ配列である。*はCDを結合させたシステイン残基を示す。 βCDを結合させていないGFP変異体(A)及びβCDを結合させたGFP変異体(B)の質量分析(MALDI−TOF MS)の結果を示す。
本発明の実施形態の1つは、所望のアミノ酸位置にシステイン残基を保持する蛍光タンパク質と、システイン残基のチオール基と結合するシクロデキストリン誘導体を反応させ、蛍光タンパク質とシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体の複合体を作製する方法である。
本発明で使用される「蛍光タンパク質」とは、蛍光を発する能力を有するタンパク質であれば如何なるものであってもよく、例えば、クラゲ由来、サンゴ由来、あるいは、イソギンチャクモドキ由来の蛍光タンパク質(例えば、配列番号5など)を挙げることができる。特に、クラゲ由来の蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)(例えば、配列番号1又は配列番号2)及びその誘導体を挙げることができ、誘導体には、例えば、BFP(例えば、配列番号3)、CFP、YFP(例えば、配列番号4)、RFPなどが含まれる(なお、本明細書中においては、BFP、CFP、YFP、RFPにつき、GFPの「色変異体」と称する場合もある)。また、各種蛍光タンパク質及びその誘導体には、それらのホモログも含まれる。ここで、ホモログとは、各蛍光タンパク質のアミノ酸配列(例えば、緑色蛍光タンパク質の場合には、配列番号1など)と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質のことである。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質」とは、該蛍光タンパク質のアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、蛍光を発するタンパク質のことである。
あるいは、蛍光タンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質としては、該蛍光タンパク質のアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換され、欠失され、若しくは挿入されたアミノ酸配列からなり、かつ、蛍光を発するタンパク質のことである。
また、本発明の「蛍光タンパク質」は、遺伝子工学的に、あるいは、化学的に何らかの要素が付加されることで、修飾を受けていてもよい。例えば、N末端領域あるいはC末端領域に、任意の蛍光分子が結合されていてもよく、あるいは、細胞内のタンパク質や構造体と特異的に結合する要素(例えば、抗体や酵素、結合認識領域など)が結合されていてもよい。
本発明で使用される「シクロデキストリン」とは、D−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ等の一種である。シクロデキストリンを構成するD−グルコースの数は、形成されるシクロデキストリンが環状構造をとり、その空孔に物質(例えば、疎水性化合物)を包接することができる数であれば特に限定されず、その結果、「シクロデキストリン」には、シクロデキストリンの多量体も含まれる。このようなシクロデキストリンとしては、例えば、グルコースが6個結合しているα−シクロデキストリン、グルコースが7個結合しているβ−シクロデキストリン、グルコースが8個結合しているγ−シクロデキストリンなどを挙げることができる。また、「シクロデキストリン誘導体」としては、システイン残基のチオール基と好適に反応して結合し、また、タンパク質を変性させない様な温和な条件で結合反応が進む、例えば、ヨウ化シクロデキストリン、マレイミドシクロデキストリン、ハロアセトアミドシクロデキストリン、ブロモメチルシクロデキストリン、チオサルフェイトシクロデキストリン、システイニルシクロデキストリン、トシルシクロデキストリンなどが好ましい。また、これらの誘導体の他、グルコースを他の糖に変更したもの、グルコシド結合の位置がα(1→4)以外のもの、あるいは、糖に何らかの修飾が施されているものであっても、環状構造をとり、その空孔に物質を包接することができるものであれば、本発明のシクロデキストリン誘導体として使用することができる。また、「システイン残基のチオール基と好適に反応」するシクロデキストリンとは、上述のヨウ化シクロデキストリン、マレイミドシクロデキストリンなどのシクロデキストリン誘導体であってもよい。
本発明の蛍光タンパク質とシクロデキストリンの複合体を作製する方法は、蛍光タンパク質のアミノ酸配列中に存在するシステイン残基に特異的にシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を結合する点に特徴を有し、これにより、簡便、安価、かつ、効率的な蛍光タンパク質−シクロデキストリン超分子複合体を作製することが可能となる。ここで、蛍光タンパク質のアミノ酸配列中に存在する「システイン残基」は、野生型の蛍光タンパク質中に存在するシステイン残基であってもよく、また、遺伝子工学的手法等により、所望のアミノ酸位置特異的に導入されたシステイン残基であってもよい。新たなシステイン残基の導入は、既存の任意のアミノ酸との置換による方法、あるいは、所望の位置への挿入による方法のいずれであってもよい。蛍光タンパク質の所望のアミノ酸位置にシステイン残基を導入する方法は、通例の遺伝子工学的手法などを使用することで、当業者であれば容易に実施することができる。
新たにシステイン残基を導入する場合、蛍光タンパク質上の導入位置は、蛍光タンパク質の蛍光発生能力を低減若しくは消失させるような影響を及ぼさない位置であれば、いずれの箇所であってもよく、また、導入する部位の数も特に限定されない。システインを導入する位置は、蛍光タンパク質−シクロデキストリン複合体の使用目的に応じて、当業者において適宜選択することができる。たとえば、シクロデキストリンを薬剤等の運搬キャリアとして使用する場合には、蛍光タンパク質の蛍光発生能力を低減若しくは消失させない位置であれば、いずれの箇所でもよく、このような箇所としては、限定はしないが、蛍光タンパク質の構造に影響を与えない箇所、例えば、GFP(及びその色変異体)を蛍光タンパク質として使用する場合には、βバレル構造領域以外の箇所が好ましいと考えられる。また、本発明の蛍光タンパク質−シクロデキストリン複合体において、蛍光タンパク質とシクロデキストリンに包接させた蛍光色素などとの間で共鳴エネルギー移動を生じさせ、その蛍光強度の変化を追跡することで、分子センサーとして使用する場合、蛍光タンパク質がGFP(又はその色変異体)であれば、例えば、N末端領域(例えば、アミノ酸位置:10アミノ酸程度のコア部分から突出した部分であればいずれの領域でもよい)若しくはC末端領域(例えば、アミノ酸位置:10アミノ酸程度のコア部分から突出した部分であればいずれの領域でもよい)、あるいは、N末端若しくはC末端領域に隣接するループ領域などに蛍光色素を包接したシクロデキストリンを結合させるのが好ましい。
本発明の他の実施形態は、本発明の方法により調製される、蛍光タンパク質とシクロデキストリン超分子複合体である。本発明の蛍光タンパク質−シクロデキストリン複合体は、様々な用途に使用することができる。例えば、シクロデキストリン中に予め包接しておいた蛍光分子と蛍光タンパク質との間で生じるFRETやFLIMの変化などをモニターすることで、該複合体分子が存在している細胞内領域の環境変動などを観察するためのセンター分子として使用することができる。具体的には、細胞内のある領域における標的分子の存在状況(存在量、存在濃度など)を観察する目的で使用する場合、該標的分子(例えば、ステロイドホルモンなどの疎水性分子など)がシクロデキストリンに包接されている蛍光分子と交換されることで、蛍光タンパク質−蛍光分子間で生じていたFRETやFLIMに変動が生じることが予想される。このFRETやFLIMの変動をモニターすれば、標的分子の存在状態を確認することが可能となる。また、蛍光タンパク質−シクロデキストリン複合体は、薬剤などを生体内の特定の部位に送達するためのデリバリー分子として使用することも可能である。例えば、送達すべき薬剤を蛍光標識しておき、薬剤がデリバリーされるべき領域でシクロデキストリンから放出されることで生じるFRETやFLIMの変化をモニターしながら、確実な薬剤の送達を可能ならしめるような分子が考えられる。あるいは、薬剤を蛍光標識しなくてもよく、該薬剤が目的の部位に送達されると、蛍光タンパク質の蛍光が目的の部位に集積することになるため、蛍光タンパク質からの蛍光の集積の有無を確認することで、薬剤の送達が行われたかどうか確認することができる。
シクロデキストリンに包接される分子は、特に限定されるものではなく、使用するシクロデキストリンの空孔の大きさ等に応じて、任意に選択することが可能である。ただ、既存のシクロデキストリンを使用する場合、その空孔領域は疎水性であることから、包接される分子は疎水性であることが望ましい。シクロデキストリンの空孔に包接可能な典型的な分子としては、例えば、コレステロール、プロスタグランジン、イソフラボン、カロテノイド、ステロイド、DNAやRNAなどの核酸及びこれらの誘導体の他、イブプロフェン、インドメタシン、アンチヒスタミン、プレドニゾロン、及びこれらに誘導体を挙げることができるが、これらの限定されるものではない。
さらに、本発明には、本発明の方法を実施するために使用可能なキットが含まれる。本発明のキットには、例えば、所望の位置に所望の数のシステイン残基が導入された蛍光タンパク質、システイン残基との結合に適したシクロデキストリン又はその誘導体の他、蛍光タンパク質とシクロデキストリンを結合させる上で必要なその他の試薬が含まれる。この場合、キットには、使用説明書などが添付されていてもよく、また、試薬などの構成成分は、その活性の低下を防ぐような工夫が施された容器中に収納されていることが望ましい。
キットに添付される使用説明書は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
さらに、本発明のキットには、前述の蛍光タンパク質の代わりに、該蛍光タンパク質を任意の宿主細胞内で発現させるための発現ベクター、宿主細胞、その他発現操作に必要な試薬等が含まれていてもよい。
以下に実施例を示し本発明についてより具体的に説明を行うが、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。
1.方法
1−1.蛍光タンパク質を発現させるためのプラスミドの構築
本実施例では、蛍光タンパク質としてGFP(緑色蛍光タンパク質)を使用した。今回使用したGFPは、既に発明者らが報告した方法に従って調製を行った(Biochim.Biophys.Acta 1679 (2004) 222-229;Biochem. Biophys. Res. Commun. 330 (2005) 454-460)。このように調製したGFPは、配列番号1にそのアミノ酸配列を示す。配列番号1において、C末領域の251番目のアミノ酸をシステインに置換しており、その他の元々存在していたシステイン(60番目)を他のアミノ酸(セリン)に置換した。
1−2.プラスミドの単離
まず、発現させるGFP変異体をコードするDNAを含むpUV5casS52tag(Biophys. Res. Commun. 330 (2005) 454-460)を、大腸菌BL21(DE3)株(Merck Biosciences社)に導入し、形質転換された大腸菌を常法に従って単離した。コロニーとして単離した大腸菌を37℃のLB培地(75μg/ml アンピシリンを含む)中で12時間培養した。培養液の一部を10倍に希釈し、アンピシリン(75μg/ml)を含むLB培地中、28℃にて、48時間培養した。培養した大腸菌を回収し、溶解試薬(B−PER;Thermo Fisher Scientific社)で溶解後、溶解物を17,000×gで15分間遠心し、上清を回収した。得られた上清をNi+2−NTAカラム(Qiagen社)にかけ、常法に従い、目的タンパク質の精製を行った。カラムから回収したタンパク質は、PBS中で再構成させた後、純度とオリゴマー化の状態をSDS−PAGE(但し、サンプルの熱処理は行わない)により確認した。
1−3.βシクロデキストリン(CD)のGFPへの結合
500mM 6−iodo−β−cyclodextrin(6−I−β−CD)溶液(DMSO中)の一部と4μMのタンパク質溶液を混合し、37℃にて、24時間インキュベートした。反応産物はこの過程において結晶化するため、上清と沈殿物を17,000×gで数分間遠心し、分離した。得られた沈殿は、10%DMSOを含むPBSで2度洗浄した。洗浄した沈殿は、得られたGFP−CD複合体の蛍光特性がCD結合前のGFPの蛍光特性と同等であることを確認するため、1/10に希釈したPBS中に、およそ、1μMとなるように溶解した。
1−4.MALDI−TOF−MS分析
修飾又は修飾していないGFP変異体をPBSに溶解し、その濃度が〜20mM程度になるように、遠心式濃縮限外濾過膜(Microcon YM-10;Millipore社 アミコンウルトラ(Amicon Ultra)-0.5 mL 遠心式フィルターMillipore社)を使用して調製した。濃縮したタンパク質をC4レジン(ZipTip C4;Milipore)で脱塩後、マトリックスプレート(10mg/mL シナピン酸)上にスポットし、マススペクトロメーター(AXIMA-CFR;Shimazu Bioteck社)を用いて分析を行った。
2.結果
2−1.βCDを結合させたGFPの調製
まず、βCDを結合させる過程で得られる中間産物及び最終産物をポリアクリルアミドの電気泳動により解析した。上清中に含まれる反応産物(図1、レーン2)、反応混合物の再構成沈殿物(図1、レーン4)、及び、修飾処理を行っていないGFP(図1、レーン1)について、SDS−PAGEを行った。SDS−PAGEは、サンプルを処理する際に熱処理を行わず、半変性条件(分子の移動が確認できる程度のSDSを含む条件)で泳動を行った。その結果、βCDと反応させた結果得られた産物は(図1、レーン4)、典型的なGFP変異体の移動度より、若干大きめの移動度を示し、これはまた、GFP変異体のポリマー化した移動度とも異なり、βCDによる修飾が行われていることを示していた。
2.MALDI−TOF MSによる解析
得られたCD結合GFP変異体と非修飾のGFP変異体を、プロテアーゼ処理せずに、MALDI−TOF MSで質量分析を行った。質量分析の結果、大きく分けて3種類のピークを検出した(図3A及びB)。最も小さいm/s値領域に検出されたピークは、GFP変異体のN末端領域に由来するものである(例えば、図3AのN12L5、N15L9、図3BのN5L1、N8L7など)。次に、約25,000〜30,000のm/s値領域に検出されたピークは、欠損部分が少なく、ほぼ無傷のGFP変異体から得られたピークであり、N末端又はC末端領域を若干欠いたGFP変異体のピークに相当する。また、最も大きいm/s値領域に検出されたピークは、様々な組合わせで二量体化した無傷のGFP変異体、あるいは、N末端やC末端を若干欠いたGFP変異体に由来するものである。
CDの結合処理を行っていないGFP変異体(図3A)については、m/s値25789.61に位置するメインピーク(/と///で切断されたGFPに相当する(図2の説明を参照のこと))及び26140.65に位置するピーク(/と///で切断されたGFPに相当する)が、ほぼ無傷なGFP変異体に由来するピークである。これらのメインピークに近接するピークについては、図2の挿入図に示したが、多くの切断部位は、βバレル構造への付加領域に位置しているため、これらのピークはβバレル構造を維持する部分に由来すると考えられる。m/s値13141.15(N12L5)及び12974.40(N15L9)に位置するピークは、最も大きなループ内で分割されたN末端側の部分に相当する。また、m/s値52204.34に位置するピークは、βバレル構造を維持したままの欠損GFP、あるいは、無傷のGFPのホモ/ヘテロダイマー構造に由来する。その他のピークについては、表1を参照のこと。
また、βCDを結合させたGFPに由来するピークについて、同様に割当を行った(図3B)。m/s値29181.84及び28267.99に位置するピークは、CDの結合処理を行わなかったGFPの場合と同様、ほぼ無傷なGFP変異体に由来するピークである。ここで、CDの結合処理をしていないGFP変異体由来のピークでm/s値26140.65に位置するピーク(N2C4)と、CDの結合処理をしたGFP変異体由来のピークでm/s値26140.65に位置するピーク(N2C3)を比較してみる。N2C3m/s値(28267.99)は、N2C4m/s値(26140.65)よりもVDGTCLYのペプチドに相当する分子量の想定フラグメントイオン(約878 880.1)とβCDの誘導体の分子量から反応の際の水素分子を除いた(約1,260 1243.9)分とMSの際の誤差分だけ増加している。従って、本発明の方法により、配列番号1で示されるアミノ酸配列を持つGFP変異体の251番目のシステインにβCDが結合されたことが確認された。
本発明により、蛍光タンパク質とシクロデキストリンの複合体を容易に調製することが可能になる。調製された複合体は、細胞内の分子センターあるいは薬剤のデリバリー分子としての利用が期待できる。

Claims (3)

  1. 所望のアミノ酸位置にシステイン残基を保持する蛍光タンパク質と、システイン残基と結合性を有するシクロデキストリン誘導体を反応させ、蛍光タンパク質とシクロデキストリン若しくはシクロデキストリン誘導体の複合体を作製する方法であって、
    該蛍光タンパク質がGFP、BFP、CFP、YFP若しくはRFP、又は、GFP、BFP、CFP、YFP若しくはRFPのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、蛍光を発するタンパク質であり、
    該所望のアミノ酸位置が、βバレル構造領域以外の箇所であり、及び、
    該シクロデキストリン誘導体がヨウ化シクロデキストリン、マレイミドシクロデキストリン、ハロアセトアミドシクロデキストリン、ブロモメチルシクロデキストリン、チオサルフェイトシクロデキストリン、システイニルシクロデキストリン、トシルシクロデキストリンのいずれかである、
    方法。
  2. 前記システイン残基が、野生型の蛍光タンパク質のアミノ酸配列上に存在しないものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記蛍光タンパク質が、前記所望のアミノ酸位置以外に存在するシステイン残基をシステイン以外のアミノ酸に置換したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
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