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JP5862268B2 - 重合体、成形体及び重合体の製造方法 - Google Patents

重合体、成形体及び重合体の製造方法 Download PDF

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JP5862268B2 JP2011275132A JP2011275132A JP5862268B2 JP 5862268 B2 JP5862268 B2 JP 5862268B2 JP 2011275132 A JP2011275132 A JP 2011275132A JP 2011275132 A JP2011275132 A JP 2011275132A JP 5862268 B2 JP5862268 B2 JP 5862268B2
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Description

本発明は、重合体、成形体及び重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性及び成形性に優れる環状オレフィンポリマー系の結晶性の開環重合体水素化物と、その製造方法と、その重合体を用いてなる成形体に関する。
例えば特許文献1に記載されるようなジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、いわゆる環状オレフィンポリマーの一種であり、透明性、低複屈折性、成形加工性などに優れることから、光学用途をはじめとして、種々の用途に適用できる材料として用いられている。
特許文献1に記載されたものもそうであるように、ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、アタクチックな構造を有する非晶性の重合体として得られることが一般的である。しかし、アタクチックな構造を有する非晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、その用途によっては、耐熱性、機械強度、耐溶剤性などが不十分となる場合があるものである。そこで、それらの性能を改良する手法として、ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物に立体規則性を有させることにより、結晶性を付与することが提案されている。
例えば、非特許文献1には、ビフェノキシ基が2つ配位した、タングステン又はモリブデンの錯体を重合触媒として用いることにより、メソ・ダイアッドの割合が50%を超える、すなわち、アイソタクチック構造を有する、結晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物が得られることが開示されている。また、特許文献2及び特許文献3には、窒素原子上に特定構造の置換基を有するイミド基を持つタングステン錯体を重合触媒として用いることにより、ラセモ・ダイアッドの割合が51%以上の、すなわち、シンジオタクチック構造を有する、結晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物が得られることが開示されている。
また、連鎖移動剤に関して、特許文献4や特許文献5には、ルテニウムの錯体を触媒とした開環メタセシス重合反応時の連鎖移動剤として、種々記載されている中に、アルキルシラン系化合物も記載されている。しかし、タングステンの錯体では重合が進行しないものや、十分に連鎖移動をせずに分子量をうまく調整できないものも含めて記載されている。
特開平11−124429号公報 特開2005−89744号公報 特開2006−52333号公報 特開平11−158256号公報 特開平11−209460号公報
高分子学会予稿集,2002年、第8巻、p.1629−1630
例えば特許文献2や特許文献3に記載されるような結晶性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は耐熱性に優れる重合体であるが、本発明者が検討したところ、結晶化速度と強度のバランスが優れず、金型から成形体を離型する際に変形を起こすものが出る(成形安定性が低い)ことが明らかとなった。成形安定性が低いと、種々の成形体として適用することが困難となるので、用途の幅を広げる観点から、その改良が望まれるといえる。
そこで、本発明は、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物について、元来の特長である高耐熱性と結晶化速度を維持しつつ、成形安定性を改良することにより、耐熱性及び成形性に優れる、環状オレフィンポリマー系の結晶性の開環重合体水素化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、ジシクロペンタジエンの開環重合体を得るにあたり、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の存在下でジシクロペンタジエンを開環重合させた上で、それにより得られる開環重合体に水素添加を行って結晶性の重合体を得ることにより、高耐熱性などの結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が元来有する特長を備えながら、成形性にも優れる重合体が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、下記の式(1)で表される繰り返し単位を主たる構成単位として含んでなる重合体鎖を有し、その重合体鎖の末端にアルキルシリル基を含有する基が結合されてなる、重量平均分子量が10,000〜100,000である、結晶性を有する重合体が提供される。
Figure 0005862268
上記重合体は、重合体鎖の末端が、トリアルキルシリル基であることが好ましい。
上記の重合体は、上記重合体鎖において、式(1)で表される繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合が60%以上又は30%以下であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の重合体を溶融成形してなる成形体が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の重合体の製造方法であって、下記の式(2)で表される金属化合物又は下記の式(3)で表される金属化合物を重合触媒として用い、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の存在下で、ジシクロペンタジエンを開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法が提供される。
M(NR)X4−a(OR・L (2)
(式(2)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rは3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は−CHで表される基であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
Figure 0005862268
(式(3)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rはアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びR14は、それぞれ独立にアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R13は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R14のうち2個以上が結合して環構造を形成していてもよい。Yは電子供与性の中性配位子であり、pは0〜2の整数である。)
本発明によれば、耐熱性及び成形性に優れる、環状オレフィンポリマー系の結晶性の開環重合体水素化物が提供される。
本発明の重合体は、下記の式(1)で表される繰り返し単位を主たる構成単位として含んでなる重合体鎖を有し、その重合体鎖の末端にアルキルシリル基を含有する基が結合されてなる、重量平均分子量が10,000〜100,000である、結晶性を有する重合体である。
Figure 0005862268
式(1)で表される繰り返し単位は、ジシクロペンタジエンを開環重合して得られる繰り返し単位の全ての炭素−炭素二重結合を水素化することにより得ることができる繰り返し単位である。本発明の重合体を構成する重合体鎖における該繰り返し単位の含有量は、該繰り返し単位が重合体鎖の主たる構成単位となり、目的の重合体が結晶性を有するものとなる限りにおいて特に限定されないが、重合体鎖の全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。この繰り返し単位の含有量が少なすぎると、重合体の耐熱性が不十分となるおそれがある。
本発明の重合体を構成する重合体鎖は、式(1)で表される繰り返し単位のみからなるものであってよいが、式(1)で表される繰り返し単位が主たる構成単位となり、目的の重合体が結晶性を有するものとなる限りにおいて、他の繰り返し単位を含むものであってもよい。本発明の重合体を構成する重合体鎖に含有されうる式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、ジシクロペンタジエンを開環重合することにより得られる繰り返し単位(全ての炭素−炭素二重結合が水素化されていないもの)、ジシクロペンタジエンを開環重合して得られる繰り返し単位の炭素−炭素二重結合の一部を水素化することにより得ることができる繰り返し単位、及びジシクロペンタジエン以外の単量体に由来する繰り返し単位を挙げることができる。
本発明の重合体を構成する重合体鎖における、式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の含有量が多すぎると、重合体の耐熱性が不十分となるおそれある。
本発明の重合体を構成する重合体鎖の立体規則性の有無は、重合体が結晶性を有するものとなる限りにおいて特に限定されるものではないが、重合体に結晶性に付与して耐熱性に優れたものとする観点からは、立体規則性を有するものである(すなわち、アタクチック構造以外である)ことが好ましい。より具体的には、式(1)で表される繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合が、60%以上又は30%以下であることが好ましく、65%以上又は25%以下であることがより好ましく、70%以上又は20%以下であることが特に好ましい。なお、ラセモ・ダイアッドの割合が50%を超える場合は、重合体鎖がシンジオタクチック規則性を有しているといえ、ラセモ・ダイアッドの割合が50%未満である場合は、重合体鎖がアイソタクチック規則性を有しているといえる。重合体鎖の立体規則性が高い重合体ほど(すなわち、ラセモ・ダイアッドの割合が50%から遠ざかるほど)、高い融点を有する耐熱性に優れた重合体となる。なお、式(1)で表される繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトル分析で測定し、定量することができる。具体的な定量の方法としては、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定する方法を挙げることができる。
本発明の重合体は、以上述べたような式(1)で表される繰り返し単位を主たる構成単位として含んでなる重合体鎖の末端に、アルキルシリル基を含有する基が結合されてなるものである。本発明の重合体は、連鎖移動剤にアルキルシリル基を有する化合物を使用し、分子量分布を制御することで強度が向上し、成形安定性が高まる。また、官能基であるアルキルシリル基が導入されても、重合体鎖が示す結晶性へ悪影響を与え難いので、優れた耐熱性をも兼ね備えるものとなる。アルキルシリル基を含有する基は、ケイ素−炭素結合を含有する基であれば特に限定されず、例えば、アルキルシリル基を含有する炭素数1〜20の基を挙げることができる。特に好ましく用いられるアルキルシリル基を含有する基としては、下記の式(4)で表される重合体鎖末端構造に含まれるアルキルシリル含有基を挙げることができる。
hpDCPD−A−〔SiR(OX)3−n (4)
(式(4)中、hpDCPDは式(1)で表される繰り返し単位を主たる構成単位として含んでなる重合体鎖を表し、Aは炭素数1〜20の(m+1)価の炭化水素基を表す。Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rで表される基が複数個存在する場合は、それらは互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数6〜20のアリール基から選択される基を表し、Xで表される基が複数個存在する場合は、それらは互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
式(4)において、nは2又は3であることがより好ましく、また、mは1であることがより好ましい。また、式(4)において、Aで表される炭化水素基として、特に好ましいものとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基を挙げることができ、そのなかでも、メチレン基が特に好ましい。さらに、式(4)において、Rで表される炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基が好ましく、また、Xで表される基としては、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基が好ましく、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基が好ましい。
また、上記の式(4)で表される重合体鎖末端構造に含まれるアルキルシリル基のなかでも、特に好ましいものとして、トリアルキルシリル基を挙げることができる。また、その特に好ましいアルキルシリル基を含有する重合体鎖末端に結合する基の具体例として、2−トリメチルシリルエチル基、2−トリエチルシリルエチル基を挙げることができる。これらのアルキルシリル基含有基は、本発明の重合体の重合体鎖末端において、1種のみが単独で存在していてもよいし、2種以上が混在していてもよい。
本発明の重合体は、一方の重合体鎖末端(片末端)のみにアルキルシリル基を含有する基が結合された重合体鎖からなるものであっても、両方の重合体鎖末端(両末端)にアルキルシリル基を含有する基が結合された重合体鎖からなるものであってもよく、また、これらが混在したものであってもよい。さらに、これらと、アルキルシリル基を含有する基が結合されていない重合体鎖が混在していてもよい。
また、本発明の重合体において、重合体鎖末端に対するアルキルシリル基を含有する基の導入量は、特に限定されないが、重合体の耐熱性と成形性のバランスを特に良好にする観点からは、重合体鎖1本あたりに含まれるアルキルシリル基の数(少なくとも1つの酸素原子が結合したケイ素原子の数)が、0.4〜4.0個であることが好ましく、0.5〜2.0個であることが好ましい。なお、本発明において、重合体鎖1本あたりに含まれるオキシシリル基の数は、H−NMRスペクトル測定及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。具体的には、H−NMRスペクトル測定による重合体鎖中に存在する炭素−炭素二重結合のプロトンに由来するピークの積分値(あるいは飽和炭化水素のプロトンに由来するピークの積分値)及びアルキルシリル基を含有する基に由来するピークの積分値、並びにGPC測定による数平均分子量(Mn)を比較することにより求めることができる。
本発明の重合体は、その重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値として、10,000〜100,000である必要があり、15,000〜80,000であることが好ましく、20,000〜60,000であることがより好ましい。本発明の重合体は、このような重量平均分子量を有することにより、耐熱性と成形加工性とのバランスに優れたものとなる。なお、本発明の重合体は、溶剤に溶解しがたい性質を有することから、一般的な条件のGPC測定を適用することは困難であるが、高温での測定が可能なGPC装置を用い、高温条件下(例え
ば、200℃以上)で測定を行うことにより、GPC測定を行うことが可能である。
本発明の重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.5〜4.0であり、好ましくは2.0〜3.0である。
本発明の重合体は、結晶性を有するものであればよく、すなわち、常温(23℃)を超える融点を有するものであればよい。但し、重合体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、240℃以上の融点を有するものであることが好ましく、245〜300℃の融点を有するものであることが好ましい。
本発明の重合体を得る方法は、結晶性を有する目的の構造の重合体が得られる方法である限りにおいて特に限定されるものではないが、以下に述べる本発明の重合体の製造方法が好適である。すなわち、本発明の重合体の製造方法は、上記した本発明の重合体の製造方法であって、下記の式(2)で表される金属化合物又は下記の式(3)で表される金属化合物を重合触媒として用い、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の存在下で、ジシクロペンタジエンを開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法である。
本発明の重合体の製造方法では、開環メタセシス重合させる単量体としてジシクロペンタジエンを用いる。ジシクロペンタジエンには、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、最終的に得られる重合体の結晶性を高め、耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが
より好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
本発明の重合体の製造方法では、本発明の効果を失わない範囲(具体的には、全モノマー重量に対して、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下)において、単量体として用いるジシクロペンタジエンにジシクロペンタジエン以外の単量体を含ませてもよい。ジシクロペンタジエン以外の単量体としては、ジシクロペンタジエン以外のノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、及び環状ジエン、並びにこれらの誘導体を挙げることができる。
本発明の重合体の製造方法で用いる重合触媒は、下記の式(2)で表される金属化合物又は下記の式(3)で表される遷移金属化合物である。式(2)で表される金属化合物を用いることにより、得られる開環重合体の重合体鎖にシンジオタクチック規則性を付与することが可能となり、また、式(3)で表される金属化合物を用いることにより、得られる開環重合体にアイソタクチック規則性を付与することが可能となる。
M(NR)X4−a(OR・L (2)
(式(2)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rは3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は−CHで表される基であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
Figure 0005862268
(式(3)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rはアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びR14は、それぞれ独立にアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R13は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R14のうち2個以上が結合して環構造を形成していてもよい。Yは電子供与性の中性配位子であり、pは0〜2の整数である。)
式(2)で表される金属化合物を構成する金属原子(式(2)中のM)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデン又はタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
式(2)で表される金属化合物は、金属イミド結合を含んでなるものである。金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基(式(2)中のR)は、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は−CH(但し、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)で表される基である。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基;などが挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、無置換フェニル基や、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基などの二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基などの三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基などの置換基を有していてもよい2−ナフチル基;を挙げることができる。
式(2)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(2)中のR)として用いられ得る、−CHで表される基において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基を表す。このRで表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
式(2)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(2)中のR)として用いられ得る、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びこれらの基の水素原子が他の置換基に置き換わってなるアリール基などが挙げられる。また、このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
式(2)で表される金属化合物において、Rで表される基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの炭素数が1〜20のアルキル基が特に好適に用いられる。
式(2)で表される金属化合物は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を1分子あたり3個又は4個有してなる。すなわち、式(2)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、式(2)で表される金属化合物においてXで表される基は互いに結合していてもよい。
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
式(2)で表される金属化合物は、1分子あたり、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(2)中のR)は、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このRで表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のRで表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
式(2)で表される金属化合物は、1分子あたり、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(2)中のL)としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジンなどのアミン類;を挙げることができる。これらのなかでも、エーテル類が特に好適に用いられる。
本発明の重合体の製造方法で用いる重合触媒として、特に好適に用いられる式(2)で表される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(2)中のMがタングステン原子で、かつ、Rがフェニル基である化合物)を挙げることができ、そのなかでも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体が特に好適である。
式(2)で表される金属化合物は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、又は一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、及び必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合することなど(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された式(2)で表される金属化合物は、結晶化などにより精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま重合触媒として使用することもできる。
式(3)で表される金属化合物を構成する金属原子(式(3)中のM)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデン又はタングステンが好適に用いられ、モリブデンが特に好適に用いられる。
式(3)で表される金属化合物は、式(3)に示されるとおり、金属原子に配位したビフェノキシ構造を有する配位子を含んでなるものである。このビフェノキシ構造を有する配位子では、ビフェノキシ構造を形成する炭素原子の3位と3’位の基(式(3)中のR及びR14)がアルキル基又はアリール基である必要がある。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基を挙げることができる。そのなかでも、式(3)中のR及びR14で表される基として特に好ましいとものとして、分岐状のアルキル基又はフェニル基を挙げることができる。ビフェノキシ構造を有する配位子におけるその他の炭素原子上の基(式(3)中のR〜R13)は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基である。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。さらに、この式(3)中のR〜R14で表される基は、その2個以上が結合して、脂環構造や芳香環構造などの環構造を形成していてもよい。式(3)で表される金属化合物が有するビフェノキシ構造を有する配位子を構成する基として特に好ましい基としては、5,5’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ジ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオキシ基、5,5’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ジ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオキシ基、5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−3,3’−ジ−t−ブチル−1,1’−ビ−2−ナフトキシ基、3,3’−ジフェニル−[2,2’−ビナフタレン]−1,1’−ジオキシ基を挙げることができる。
式(3)で表される金属化合物は、金属イミド結合をも含んでなるものである。金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基(式(3)中のR)は、アルキル基及びアリール基から選択される基である。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基又は2、3、4、5、6位のいずれかに置換基を有する一〜五置換フェニル基から選択される。
式(3)で表される金属化合物は、さらに、金属原子に配位したカルベン配位子をも含んでなるものである。カルベン配位子を構成するカルベン炭素原子上の置換基(式(3)中のR及びR)は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基である。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基又は2、3、4、5、6位のいずれかに置換基を有する一〜五置換フェニル基から選択される。
式(3)で表される金属化合物は、1分子あたり、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(3)中のY)の具体例としては、式(2)で表される金属化合物について、式(2)中のLの具体例として挙げたものが挙げられる。
式(3)で表される金属化合物として、特に好ましく用いられるものとしては、下記の式(5)又は式(6)で表される金属化合物を挙げることができる。
Figure 0005862268
Figure 0005862268
重合触媒として用いる式(2)又は式(3)で表される金属化合物の使用量は、(金属化合物:用いる単量体全体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000でとなる量で用いる。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
なお、式(2)で表される金属化合物を重合触媒として用いるにあたっては、その金属化合物を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点からはその金属化合物と有機金属還元剤とを併用することが好ましい。用いられ得る有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族の有機金属化合物を挙げることができる。そのなかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミドなどを挙げることができる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシドなどを挙げることができる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。有機金属還元剤の使用量は、式(2)で表される金属化合物に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
本発明の重合体の製造方法では、上記したような金属化合物を重合触媒として用いて、ジシクロペンタジエンを開環メタセシス重合させるにあたり、その重合反応系にエチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物を存在させる。このように、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物を存在させることにより、重合体の成長末端とエチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物のエチレン性不飽和基との間で連鎖移動反応が起こり、重合体鎖末端にアルキルシリル基を含有する基を導入することができる。この時用いられる、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物は、分子内にエチレン性不飽和基及びアルキルシリル基を少なくとも1つずつ含有する化合物であれば、特に限定されない。
エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の具体例としては、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、スチリルエチルトリメチルシラン、スチリルトリメチルシラン、10−ウンデセニルトリメチルシラン、ビニルトリエチルシラン、アリルトリエチルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、アリルジエチルエトキシシランなどの末端オレフィン基を有するアルキルシラン化合物や、1,4−ビス(トリメチルシリル)−2−ブテン、1,6−ビス(トリメチルシリル)−3−ヘキセンなどのアルキルシリル基を炭素−炭素二重結合の両側に含有する内部オレフィン化合物を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物として、末端オレフィン基を有するアルキルシラン化合物を用いる場合には、一方の重合体鎖末端(片末端)のみにアルキルシリル基が導入され、アルキルシリル基を炭素−炭素二重結合の両側に含有する内部オレフィン化合物を用いる場合には、両方の重合体鎖末端(両末端)にアルキルシリル基が導入される。
エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物は、開環重合反応系において連鎖移動剤として働き、分子量調整剤としての機能を果たすことができる。したがって、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の使用量は、その化合物が発揮する分子量調整剤としての機能の強さと目的とするジシクロペンタジエン開環重合体の分子量とを勘案して決定すればよい。具体的な使用量としては、特に限定されるものではないが、重合反応に用いる単量体1モルあたり、通常0.1〜50モルの範囲で選択され、好ましくは0.2〜20モルの範囲で選択される。なお、分子量調整剤としては、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物のみを単独で用いることができるが、必要に応じて、アルキルシリル基を有しないエチレン性不飽和基を有する化合物を併用してもよい。アルキルシリル基を有しないエチレン性不飽和基を有する化合物は、分子量調整剤として働くが、重合体鎖末端にアルキルシリル基を導入させないので、このような化合物を併用することにより、重合体鎖末端へのアルキルシリル基の導入率を低くしたい場合であっても、所望の分子量の重合体を得ることができる。
本発明の重合体の製造方法では、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物として、アルキルシリル基のケイ素原子に直接結合したビニル基を有するものを用いることが特に好ましい。このようなエチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物を用いることにより、他のエチレン性不飽和基を有するオキシシラン化合物を用いる場合よりも該化合物の使用量を少なくすることが可能となり、その結果として、得られる開環重合体の重合体鎖の立体規則性を高くすることができる。したがって、最終的に得られる重合体(開環重合体水素化物)の耐熱性が特に高くなるといえる。このアルキルシリル基のケイ素原子に直接結合したビニル基を有するアルキルシラン化合物として、特に好ましく用いられるものとしては、ビニルトリメチルシラン及びビニルトリエチルシランを挙げることができる。
開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、生じる開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族
炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。これらの溶媒のなかでも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましく用いられる。
開環重合反応は、単量体と、式(2)又は式(3)で表される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始することができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、式(2)で表される金属化合物を重合触媒として用い、有機金属還元剤を併用する場合には、式(2)で表される金属化合物と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と式(2)で表される金属化合物との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に式(2)で表される金属化合物を添加して混合してもよい。
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、重合触媒の安定化、重合反応の速度及び重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテートなどのエステル類;アセトニトリルベンゾニトリルなどのニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロ
ピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリンなどのアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジンなどのピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類;などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物以外の分子量調整剤を添加してもよい。この分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。
重合温度は特に制限はないが、通常、−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
上述したような式(2)で表される金属化合物を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件で単量体の開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を得ることができ、また、上述したような式(3)で表される金属化合物を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件で単量体の開環重合反応を行うことにより、アイソタクチック立体規則性を有する開環重合体を得ることができる。水素化反応の条件を後述するような適切な条件に設定すれば、水素化反応で開環重合体のタクチシチーが変化することはないので、これらの立体規則性を有する開環重合体を水素化反応に供することにより、その立体規則性が維持され、その立体規則性を有することに基づいて結晶性を有する、開環重合体水素化物である目的の重合体を得ることができる。なお、開環重共合体の立体規則性の度合いは、重合触媒の種類を選択することなどにより、調節することが可能である。
水素化反応に供する開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算で10,000〜100,000である必要があり、15,000〜80,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性と耐熱性とのバランスに優れた重合体を得ることができる。開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量などを調節することにより、調節することができる。
水素化反応に供する開環重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.5〜4.0であり、好ましくは2.0〜3.0である。このような分子量分布を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性に優れた重合体を得ることができる。開環重合体の分子量分布は、重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
開環重合体の水素化反応(重合体主鎖中及びジシクロペンタジエンに由来する繰り返し単位中に存在する二重結合の水素化)は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどの貴金属錯体触媒を挙げることができる。
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの触媒系が挙げられる。
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。水素化反応後は、常法に従って目的の重合体を回収すればよく、重合体の回収にあたっては、ろ過などの手法により、触媒残渣を除去することができる。
開環重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。水素化率が高くなるほど、最終的に得られる重合体の耐熱性が良好なものとなる。
例えば以上のようにして得ることができる本発明の重合体は、耐熱性を有し、成形安定性を高度に改良されたものであるので、種々の用途の材料として好適に使用することができる。本発明の重合体の利用形態は特に限定されるものではないが、成形安定性を高度に改良されていることから、種々の成形方法に適用できる。
本発明の重合体を成形する方法は、特に限定されないが、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形などの溶融成形法が好適である。また、成形体を得るにあたっては、必要に応じて、各種の添加剤を重合体に配合してもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、滑剤を挙げることができる。
このようにして得られる成形体に、硬化性樹脂を塗布し、硬化させて複合体を得ることができる。硬化性樹脂の例としては、硬化性シリコーン樹脂、硬化性エポキシ樹脂、硬化性エポキシシリコーン混成樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。これらのなかでも、硬化性シリコーン樹脂、又は硬化性エポキシ樹脂が特に好適である。硬化性樹脂の硬化方式も特に限定されず、熱硬化性、光硬化性などのいずれの方式であってもよいが、熱硬化性樹脂が特に好適である。
本発明の重合体の成形体から得られる複合体の用途は特に限定されるものではないが、重合体の成形体を光反射体とし、硬化性樹脂を封止剤として、LEDを構成するために特に好適に用いられる。この場合、重合体に、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化ジルコニウム、バライト、炭酸バリウム、白亜、沈降性炭酸カルシウム、石コウ、炭酸マグネシウム、アルミナ、クレー、滑石粉、珪藻土などの白色顔料を添加することにより、光反射性を向上させることができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)開環重合体水素化物の分子量(重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム SSC−7100(センシュー科学社製)で、GPC3506カラム(センシュー科学社製)を用い、1−クロロナフタレンを溶媒として210℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(3)重合体鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数
水素化前の開環重合体についてH−NMRを測定することにより得られる、アルキルシリル基に由来するピーク面積及びジシクロペンタジエンを開環重合してなる繰り返し単位に由来するピーク面積に基づき、全繰り返し単位に対するアルキルシリル基含有量を求めた後、数平均分子量から計算した。
(4)開環重合体の水素化率
H−NMR測定に基づいて求めた。
(5)開環重合体水素化物の融点、ガラス転移温度、融解熱
示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温して測定した。
(6)開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、メソ/ラセモ・ダイアッド比を求めた。
(7)(ΔHm−ΔHc)/ΔHm
示差走査熱量計を用いて、成形体10mgをJIS K 7122に準じて、加熱速度を10℃/分で昇温した時のサーモグラムから、結晶融解熱量ΔHm(J/g)と結晶化熱量ΔHc(J/g)を求め、算出した。該数値の最大値は1.0であり、数値が大きいほど結晶化が進行していることを意味しており、0.9より小さいものでは、充分に結晶化が進行しておらず、寸法安定性が低下したり、耐熱性が不充分となり好ましくない。この観点から、該数値が、0.9以上のものは寸法安定性に優れており、0.6以上0.9未満のものは寸法安定性にやや劣り、0.6より小さいものは寸法安定性に劣る、と判定できる。
(8)成形安定性試験
小型射出成形機(Micro Injection Moulding Machine 10cc、DSM Xplore社製)で成形温度290℃、射出圧力0.7MPa、金型内保持時間10秒、金型温度130℃の条件で、縦70mm、横30mm、厚さ3mmの平板を成形した。樹脂板を金型から離型する際に、変形のないものを○、変形が見られるものを×とした。
(9)耐熱長期安定性試験
成形した平板について、オーブンを用いた180℃×10時間の熱処理を行った後、成形体の寸法変形を確認した。変形のなかったものを○、0.2mm以上の反りが見られたものを△、0.5mm以上の反りが見られたものを×とした。
〔実施例1〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の70%シクロヘキサン溶液143部(ジシクロペンタジエンの量として100部)とビニルトリメチルシラン0.91部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン166部を加え、続いて、ジエチルアルミニウムエトキシドの19%n−ヘキサン溶液0.62部を加えて攪拌した。次いで、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.15部を5部のトルエンに溶解した溶液を加えて、40℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下50℃で12時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は98部(収率98%)であった。また、得られた開環重合体については、分子量とH−NMRの測定を行った。次いで、得られた開環重合体50部とシクロヘキサン280部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.026部をトルエン10部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4.4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して、結晶性の開環重合体水素化物を得た。得られた水素化物については、分子量、13C−NMR、示差走査熱量の測定を行った。
それぞれの測定の結果から、開環重合体の水素化率は実質的に100%(水素化されていない炭素−炭素二重結合が検出限界以下の含有率)であり、また、開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合体鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱を求めた。
環状オレフィン開環重合体水素化物100部、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)0.8部を混合後、小型混練機(Micro15Compounder、DSM Xplore製)を用い290℃、100RPMの条件で2分間混練してペレット化した。その後、小型射出成形機(Micro Injection Moulding Machine 10cc、DSM Xplore社製)で成形温度290℃、射出圧力0.7MPa、金型内保持時間10秒、金型温度を130℃の条件で、縦70mm、横30mm、厚さ3mmの平板を成形した。それぞれの成形板の破片を、示差走査熱量計を用いて(ΔHm−ΔHc)/ΔHmを求め、耐熱長期安定性試験を行い変形ないことを確認した。それぞれの評価結果は、表1にまとめて示した。
〔実施例2〕
開環重合反応において、ビニルトリメチルシランを0.91部に代えて、1.02部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応及び水素化反応を行って、結晶性の開環重合体水素化物を得た。開環重合体水素化物の収量は、97部(収率97%)であった。得られた開環重合体及び結晶性の開環重合体水素化物は、実施例1と同様に成形し、試験を行った。開環重合体の分子量、開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱、成形性、(ΔHm−ΔHc)/ΔHm、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔実施例3〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の70%シクロヘキサン溶液143部(ジシクロペンタジエンの量として100部)とビニルトリメチルシラン1.02部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン166部を加えて攪拌した。上記の式(5)で表されるモリブデン錯体0.11部を5部のトルエンに溶解した溶液を加えて、50℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下50℃で12時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は97部(収率97%)であった。また、得られた開環重合体については、分子量とH−NMRの測定を行った。次いで、得られた開環重合体50部とシクロヘキサン280部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.026部をトルエン10部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4.4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して、結晶性の開環重合体水素化物を得た。得られた開環重合体及び結晶性の開環重合体水素化物は、実施例1と同様に成形し、試験を行った。開環重合体水素化物の分子量、開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱、成形性、(ΔHm−ΔHc)/ΔHm、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例1〕
開環重合反応において、ビニルトリメチルシラン0.91部に代えて、1−ヘキセン5.7部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応及び水素化反応を行って、結晶性の開環重合体水素化物を得た。開環重合体の収量は、96部(収率96%)であった。得られた開環重合体及び結晶性の開環重合体水素化物については、実施例1と同様の測定及び試験を行った。開環重合体水素化物の分子量、開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱、成形性、(ΔHm−ΔHc)/ΔHm、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例2〕
開環重合反応において、ビニルトリメチルシラン0.91部に代えて、1−ヘキセン4.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応及び水素化反応を行って、結晶性の開環重合体水素化物を得た。開環重合体の収量は、97部(収率97%)であった。得られた開環重合体及び結晶性の開環重合体水素化物については、実施例1と同様の測定及び試験を行った。開環重合体水素化物の分子量、開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱、成形性、(ΔHm−ΔHc)/ΔHm、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例3〕
開環重合反応において、ビニルトリメチルシラン0.91部に代えて、1−ヘキセン3.5部を用いたこと以外は、実施例1と同様に開環重合反応及び水素化反応を行って、結晶性の開環重合体水素化物を得た。開環重合体の収量は、98部(収率98%)であった。得られた開環重合体及び結晶性の開環重合体水素化物については、実施例1と同様の測定及び試験を行った。開環重合体の分子量、結晶性の開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、融点、及び融解熱、成形性、(ΔHm−ΔHc)/ΔHm、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
〔比較例4〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の70%シクロヘキサン溶液143部(ジシクロペンタジエンの量として100部)とビニルトリメチルシラン1.02部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン166部を加えて攪拌した。次いで、下記の式(7)で表されるルテニウム錯体0.063部を5部のトルエンに溶解した溶液を加えて、50℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下50℃で12時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は98部(収率98%)であった。また、得られた開環重合体については、分子量とH−NMRの測定を行った。次いで、得られた開環重合体50部とシクロヘキサン280部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.026部をトルエン10部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4.4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、80℃で12時間減圧乾燥して、重合体を得た。開環重合体の分子量、結晶性の開環重合体水素化物の分子量、開環重合体の重合鎖1本当たりのアルキルシリル基の個数、並びに開環重合体水素化物のメソ/ラセモ・ダイアッド比、ガラス転移温度、耐熱長期安定性試験の結果は表1にまとめて示した。
なお、得られた重合体(開環重合体水素化物)は、結晶性を有さないものであったので、示差走査熱量の測定においてガラス転移温度を求めたところ、そのガラス転移温度は98℃であり、耐熱性が低く変形した。
Figure 0005862268
Figure 0005862268
表1に示した結果からわかるように、本発明の重合体(実施例1〜3)は、高い融点及び大きな融解熱を示し、かつ、高い結晶化速度を有することから、耐熱性及び成形安定性に優れるものであるといえる。一方、重合体鎖末端にアルキルシリル基を含有する基が結合されていない結晶性の開環重合体水素化物(比較例1・2・3)は、結晶化速度が足りず、成形安定性が悪く離型時の変形が発生した。また、重合体鎖末端にアルキルシリル基を含有する基が結合されているものの、結晶性を有さない重合体(比較例4)は、比較的に低いガラス転移温度を示したことから、耐熱性が劣る。

Claims (4)

  1. 下記の式(1)で表される繰り返し単位を主たる構成単位として含んでなる重合体鎖を有し、
    前記重合体鎖において、式(1)で表される繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合が60%以上又は30%以下であり、
    その重合体鎖の末端にアルキルシリル基を含有する基が結合されてなる、重量平均分子量が10,000〜100,000である、結晶性を有する重合体。
    Figure 0005862268
  2. 前記重合体の末端が、トリアルキルシリル基である、請求項1に記載の重合体。
  3. 請求項1又は2に記載の重合体を溶融成形してなる成形体。
  4. 請求項1又は2に記載の重合体の製造方法であって、
    下記の式(2)で表される金属化合物又は下記の式(3)で表される金属化合物を重合触媒として用い、エチレン性不飽和基を有するアルキルシラン化合物の存在下で、ジシクロペンタジエンを開環メタセシス重合した後、得られる開環重合体の炭素−炭素二重結合を水素化させる、重合体の製造方法。
    Figure 0005862268
    (式(2)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rは3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は−CHで表される基であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
    Figure 0005862268
    (式(3)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rはアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R及びR14は、それぞれ独立にアルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R13は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基及びアリール基から選択される基であり、R〜R14のうち2個以上が結合して環構造を形成していてもよい。Yは電子供与性の中性配位子であり、pは0〜2の整数である。)
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