本発明に係る冷蔵庫の実施形態を、図1〜図9を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の冷蔵庫の正面外形図である。図2は冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるX−X断面図である。図3は本実施形態の冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を表す図である。図4は本実施形態の冷蔵庫における放熱パイプの配設位置を表す図である。また、図5は図2中に示した領域A近傍の拡大図であって、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の横仕切部近傍の構成を表す要部拡大断面図である。
図1に示すように本実施形態の冷蔵庫1は上方から、冷蔵室2、製氷室3及び上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6を備えている。なお、製氷室3と上段冷凍室4は、冷蔵室2と下段冷凍室5との間に左右に並べて設けている。冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は、前方側に左右に分割された観音開き型の冷蔵室扉2a、2bを備えている。製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。また、各扉の貯蔵室側の面には、各扉の外縁に沿うようにシール部材70(図5参照)を設けており、各扉の閉鎖時、貯蔵室内への外気の侵入、及び貯蔵室からの冷気漏れを抑制する。
また、本実施形態の冷蔵庫1は、各貯蔵室に設けた扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示せず)と、各扉が開放していると判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知するアラーム(図示せず)と、冷蔵室2の温度設定や上段冷凍室4や下段冷凍室5の温度設定をする温度設定器等(図示せず)を備えている。
図2に示すように、本実施形態の冷蔵庫1の庫外と庫内は、外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、本実施形態の冷蔵庫1は複数の真空断熱材25を実装している。
本実施形態の冷蔵庫1は、上側断熱仕切壁51により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが断熱壁を介して隔てられ、下側断熱仕切壁52により、下段冷凍室5と野菜室6とが断熱的に隔てられている。また、図1中に破線で示すように、下段冷凍室5の上部には、横仕切部53を備えている。横仕切部53は、製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5とを上下方向に仕切っている。また、横仕切部53の上部には、製氷室3と上段冷凍室4との間を左右方向に仕切る
縦仕切部54を備えている。
横仕切部53は、下側断熱仕切壁52前面及び左右側壁前面とともに、下段冷凍室扉5aの貯蔵室側の面に設けたシール部材70を受けて、下段冷凍室5と下段冷凍室扉5aとの間での気体の移動を抑制する。また、製氷室扉3a及び上段冷凍室扉4aの貯蔵室側の面に設けたシール部材70は、横仕切部53、縦仕切部54、上側断熱仕切壁51及び冷蔵庫1の左右側壁前面と接することで、各貯蔵室と各扉との間での気体の移動をそれぞれ抑制する(詳細構造は後述)。
なお、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、いずれも冷凍温度帯なので、横仕切部53及び縦仕切部54は、各扉のシール部材を受けるために、少なくとも冷蔵庫の前側にあればよい(図2参照)。すなわち、冷凍温度帯の各貯蔵室間で気体の移動があってもよく、断熱区画しない場合であってもよい。一方、上段冷凍室4を温度切替室とする場合は、断熱区画する必要があるため、横仕切部53及び縦仕切部54は、冷蔵庫1の前側から後壁まで延在させる。
本実施形態の冷蔵庫1は、冷蔵室扉2a、2bの貯蔵室内側に、複数の扉ポケット32を備えている(図2参照)。また、冷蔵室2内には複数の棚90を備えている。冷蔵室2は棚90によって縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉と一体に前後方向に移動する収納容器3b、4b、5b、6bを備えている。製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3b、4b、5b、6bが引き出せるようになっている。
図2及び図3に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、冷却手段として蒸発器7を備えている。蒸発器7(一例として、フィンチューブ型熱交換器)は、下段冷凍室5の略背部に備えられた蒸発器収納室8内に設けられている。また、蒸発器収納室8内であって蒸発器7の上方に、送風手段として庫内送風機9(一例として、プロペラファン)を備えている。
蒸発器7と熱交換して冷やされた空気(以下、蒸発器7で熱交換した低温の空気を「冷気」と称する)は、庫内送風機9によって、冷蔵室送風ダクト11、野菜室送風ダクト(図示せず)、上段冷凍室送風ダクト16を介して、冷蔵室2、野菜室6、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5の各貯蔵室へそれぞれ送られる。各貯蔵室への送風は、冷蔵室2への送風量を制御する冷蔵室ダンパ80と、野菜室6への送風量を制御する野菜室ダンパ(図示せず)と、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5)への送風量を制御する冷凍室ダンパ81とにより制御される。
冷蔵室ダンパ80が開状態で冷蔵室2への送風が行われる場合、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に流入する。冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室2の下部に設けられた冷蔵室戻り口(図示しない)から蒸発器収納室8の側方に配設された冷蔵室戻りダクト(図示しない)を経て、蒸発器収納室8の下部に戻る。
野菜室ダンパが開状態で野菜室6への送風が行われる場合、冷気は、野菜室送風ダクト(図示しない)を経て野菜室吹き出し口(図示しない)から野菜室6に流入する。野菜室6を冷却した冷気は、下側断熱仕切壁52の下部前方に設けられた野菜室戻りダクト入口18bから野菜室戻りダクト18を経て、野菜室戻りダクト出口18aから蒸発器収納室8の下部に戻る。
本実施形態の冷蔵庫1は、図2に示すように、蒸発器収納室8前方には、各貯蔵室と蒸発器収納室8との間を仕切る仕切部材13を備えている。仕切部材13には、吹き出し口3c、4c、5cが形成されており、冷凍室ダンパ81が開状態の場合、冷気は、図示しない製氷室送風ダクト、上段冷凍室送風ダクト16、下段冷凍室送風ダクト12を経て吹き出し口3c、4c、5cから上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3へ流入する。仕切部材13には、下段冷凍室5の奥下部の位置に冷凍室戻り口17が設けられており、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5)を冷却した冷気は、冷凍室戻り口17を介して蒸発器収納室8に流入する。なお、冷凍室戻り口17は蒸発器7の幅とほぼ等しい幅寸法である。
一般に、周囲温度に対して低温の冷気は、上方から下方に向かう下降流を形成する。よって、貯蔵室の上方により多くの冷気を供給することで、下降流の作用で貯蔵室内を良好に冷却できる。本実施形態では、冷凍室ダンパ81を設けているが、これを庫内送風機9の上方に設置することで、庫内送風機9からの送風をスムーズに製氷室3や上段冷凍室4に送風できるように配慮している。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5が連通した構成とすれば、下降流による冷却効果を高めることができる。
図2に示すとおり、蒸発器収納室8の下方には、除霜ヒータ22が備えられている。蒸発器7及びその周辺の蒸発器収納室8の壁に成長した霜は、除霜ヒータ22に通電して加熱することで溶かされる。霜が融解することで生じた除霜水は、図2に示す蒸発器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して機械室19に配された蒸発皿21に達する。蒸発皿21内の除霜水は、機械室19内に配設される圧縮機24及び凝縮器61(図2中に図示せず)の発熱により蒸発する。
次に、本実施形態における冷凍サイクルについて、図3〜図5、及び、適宜図2を参照しながら説明する。本実施形態の冷蔵庫1は、図3に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機24と、圧縮機24から送られた冷媒を放熱する放熱手段60と、放熱手段60から送られた冷媒を減圧する減圧手段であるキャピラリチューブ43と、キャピラリチューブ43から送られた冷媒が蒸発して空気を冷却する冷却手段である蒸発器7を備えており、これらを冷媒が流れる管で順次接続することで冷凍サイクルを構成している。
圧縮機24は、図2に示すように、冷蔵庫1の下部後方に設けた機械室19に配設されている。
図3に示すように、放熱手段60は、機械室19(図2参照)内に配設された凝縮器61(一例としてフィンチューブ型熱交換器)及び放熱パイプ62、64から成る。機械室19内には庫外送風機26が配設されており(図2中には図示せず)、庫外送風機26を駆動することで、凝縮器61の放熱を促進することができるようになっている。
放熱パイプ62(図4中に点線で図示)は、断熱箱体10の両側面、背面及び天井面の外箱1aと内箱1bとの間であって、外箱1a面に接するように配設されている。外箱1aは鋼板製であり外箱1a外表面から庫外空気に良好に放熱がなされる。
また、放熱パイプ64は、断熱箱体10の開口部前縁面を加熱するように図4中に破線で示すように前縁面の内部前方に配設されており、断熱箱体10の上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52、横仕切部53及び縦仕切部54を加熱できるようになっている。これらの仕切壁(仕切部)は、貯蔵室に接しているため低温であるが、前方部は各貯蔵室の開口縁となるので、外気に接触しやすく、結露が生じ易い箇所となる。
機械室19内には放熱性能制御手段としての三方弁65が配設されている(図2、図4中には不図示)。放熱パイプ62の出口配管は機械室19に入り(図4参照)、三方弁65の入口配管に接続されている。三方弁65は、入口1箇所(65a)出口2箇所(65b、65c)で形成されており、入口65aから流入した冷媒を出口65bに流す状態(以下「状態A」という)と、入口65aから流入した冷媒を出口65cに流す状態(以下「状態B」という)を切換制御可能な電動弁である。三方弁65の出口配管は放熱パイプ64の入口配管に、三方弁65の出口配管はバイパスパイプ63の入口配管に、それぞれ接続される(図3参照)。
放熱パイプ64の出口配管には逆止弁67が配設されている(図3参照)。放熱パイプ64の出口配管と、バイパスパイプ63の出口配管は機械室内の合流管(図示せず)に接続され合流する。合流管の出口配管にはドライヤ41が配設されており、ドライヤの出口配管は、冷媒流量調整手段としての二方弁66の入口配管に接続される。なお、ドライヤ41、二方弁66は機械室19内に設置されている。二方弁66の出口配管は、キャピラリチューブ43に接続される。また、ドライヤ41は、冷媒中の水分を乾燥吸湿するためのものであり、管内が凍結して詰まり、冷媒が循環しなくなることを防ぐ。
また、蒸発器7から圧縮機24に向かう管68の一部である管68a部は、キャピラリチューブ43と近接又は接触させており、キャピラリチューブ43内の熱が、管68a内の冷媒に移動するようにしてある(図3参照)。また、結露防止用の放熱パイプ64は、図4に示すように、特に温度差が大きくなる冷凍温度帯の貯蔵室の前方開口縁に重点的に配設されている。
図5は図2中に示した領域A近傍の拡大図である。図5に示すように、横仕切部53は前面に熱伝導部材53a(一例として、鋼板のような金属板)を備えており、横仕切部53内部には断熱材53b(一例として、スチロフォーム、ウレタンのような発泡断熱材)が配設されている。放熱パイプ64は断熱材53bと鋼板53aの間に配設され、図示しない熱伝導性緩衝材を介して鋼板53aに密着させている。横仕切部53内部には仕切部温度センサ38が鋼板53aに密着するように配設されている。また、上段冷凍室扉4a及び下段冷凍室扉5a内側の横仕切部53と対向する面には、内部にマグネットが実装されたシール部材70が備えられている。各扉の閉鎖時には、マグネットの吸着作用によって、貯蔵室内への外気の侵入、及び貯蔵室からの冷気漏れを抑制する。なお、本実施形態の冷蔵庫1は、上段冷凍室扉4aと下段冷凍室扉5a間の上下方向寸法(隙間幅)L1が10mm以下となるようにしており、本実施形態の冷蔵庫1はL1=7mmである。また、横仕切部53の前面である鋼板53a表面から冷凍室扉前縁までの奥行き寸法(隙間奥行き)L2はL1の3倍以上としており、本実施形態の冷蔵庫1はL2=40mmである。なお、ここでは横仕切部53近傍の構成を説明したが、縦仕切部54、上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52についても、類似の構成となっており、扉間の隙間幅L1は10mm以下、扉間の隙間奥行きL2は、L1の3倍以上である30mm以上としている。
冷蔵庫1は、図2に示すように、蒸発器7の上部に、蒸発器7に取り付けられた蒸発器温度センサ35、冷蔵室2に冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5に冷凍室温度センサ34をそれぞれ備えており、それぞれ蒸発器7の温度、冷蔵室2の温度、下段冷凍室5の温度を検知する。
更に、冷蔵庫1は、設置された周囲環境の温度及び湿度(外気温度、外気湿度)を検知する検知手段である外気温度センサ36と外気湿度センサ37、放熱パイプ64が配設された断熱箱体10の前方開口縁温度を検知する仕切部温度センサ38を備えている。また、野菜室6にも野菜室温度センサ33aを備えている。なお、冷蔵室温度センサ33、野菜室温度センサ33a、冷凍室温度センサ34は、各貯蔵室への吹き出し冷気が直接当たらない場所に設置することで、検知精度を高めている。
制御装置として、冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されている(図2参照)。制御基板31は、前記した外気温度センサ36、外気湿度センサ37、蒸発器温度センサ35、冷蔵室温度センサ33、野菜室温度センサ33a、冷凍室温度センサ34、仕切部温度センサ38、各貯蔵室扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ、冷蔵室扉2aに設けられた温度設定器、省電力モード設定器等と接続する。前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON/OFFや、三方弁65、二方弁66、冷蔵室ダンパ80、野菜室ダンパ及び冷凍室ダンパ81を個別に稼働する図示しないそれぞれのアクチュエータの制御、庫内送風機9及び庫外送風機26のON/OFF制御や回転速度制御、前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。なお、温度設定器や省電力モード設定器は、使用者が手動で操作して設定変更可能な機械式スイッチ、電気式スイッチ、静電容量式スイッチ等、公知の操作手段を用いることができる。
次に、本実施形態の冷蔵庫1の制御について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は本実施形態の冷蔵庫1の冷却運転中の制御を表す制御フローチャート、図7は本実施形態の冷蔵庫1の三方弁切換制御を実施した際の横仕切部表面温度の変化と制御状態を表すタイムチャートである。なお、制御は制御装置、すなわち制御基板31(図2参照)のCPUがROMに格納されたプログラムを実行することによって行われる。
図6に示すように、冷蔵庫1は電源投入により圧縮機が稼働して冷却運転を開始する(図6における「スタート」)。冷却運転は、圧縮機24を駆動して蒸発器7で熱交換した冷気を、庫内送風機9を駆動して各貯蔵室へ送風する運転である。
このとき、初期状態として、三方弁65は前述の状態A(入口65aから流入した冷媒を出口65bから放熱パイプ64に流す状態(図3参照))となる。続いて、外気温度センサ36、外気湿度センサ37検知情報に基づいて、三方弁切換制御のモードiの条件が成立しているか否かを判定する(ステップS101)。本実施形態の冷蔵庫1は、「外気温度35℃以下」、「外気湿度80%以下」、且つ「省電力モードOFF」の場合に、三方弁切換制御のモードiの条件が成立する。なお、省電力モードのON/OFFは、冷蔵室扉2aに設けられた省電力モード設定器によって設定される。三方弁切換制御のモードiの条件が成立しなかった場合(No)、続いて、三方弁切換制御のモードiiの条件が成立しているか否かを判定する(ステップS102)。本実施形態の冷蔵庫1は、「外気温度40℃以下」、「外気湿度85%以下」、且つ「省電力モードON」の場合に三方弁切換制御のモードiiの条件が成立する。
なお、モードiは、安定運転時の仕切部表面の時間平均温度を露点温度以上とする制御モードであり、モードiiは、安定運転時の仕切部表面の時間平均温度を露点温度以下とする制御モードであり、使用者が省電力モード設定器によって設定可能である。詳細は後述する。
三方弁切換制御のモードiiの条件が成立しなかった場合(No)、続いて、圧縮機OFFの条件が成立しているか否かを判定する(ステップS103)。本実施形態の冷蔵庫1では、冷凍室温度センサ34、冷蔵室温度センサ33、野菜室温度センサ33aが検知する温度が、それぞれ所定温度以下になっている場合に圧縮機OFFの条件が成立する。なお、圧縮機OFFの条件が成立する温度は、冷蔵室扉2aに設けられた温度設定器の設定に基づいて算出される。本実施形態の冷蔵庫1は、温度設定器によって「強(貯蔵室温度低め)」「中(標準)」「弱(貯蔵室温度高め)」の選択が可能となっており、温度を例えば、「中」設定とした場合の圧縮機OFFの条件は、「冷凍室温度−21℃以下、冷蔵室温度5℃以下、野菜室温度5℃以下」となる。
圧縮機OFFの条件が成立しなかった場合(No)、再びステップS101の判定に戻り、圧縮機OFFの条件が成立した場合(Yes)、三方弁65を状態Aとする(ステップS104)。状態Aの継続時間がt1に達した後に(ステップS105)、二方弁66を閉状態として(ステップS106)圧縮機がOFF状態となる(ステップS107)。このように圧縮機停止時に二方弁66を閉状態とすることで、放熱手段60内の高温高圧冷媒が、キャピラリチューブ43を介して蒸発器7に流入して熱負荷となることを防止できるので、省エネルギー性能が高くなる。なお、本実施形態の冷蔵庫1ではt1=15分である。
続いて、圧縮機ONの条件が成立するか否かを判定する(ステップS108)。本実施形態の冷蔵庫1は、冷凍室温度センサ34検知温度が所定温度に上昇した場合に圧縮機ONの条件が成立する。例えば、温度設定器によって「中」設定とした場合の圧縮機ONの条件は、「冷凍室温度−19℃以上」となる。なお、本実施形態の冷蔵庫1は圧縮機ONの条件は冷凍室温度によって判定しているが、これは、本実施形態の冷蔵庫1は、圧縮機OFF中にも冷蔵室2及び野菜室6の冷却を行うことができるためである。具体的には、圧縮機OFF中に冷蔵室2及び野菜室6は、冷凍室ダンパ81を閉状態、冷蔵室ダンパ80と野菜室ダンパを開状態として、庫内送風機9を稼働させ、冷却器7に付着した霜の冷熱によって冷却する。なお、冷蔵室温度センサ33、野菜室温度センサ33aの検知温度に基づいて、冷蔵室ダンパ80あるいは野菜室ダンパの一方を閉状態として、冷蔵室2あるいは野菜室6の何れか一方のみ冷却する場合もある。
圧縮機ONの条件が成立した場合(Yes)、続いて二方弁66を開状態として(ステップS109)、圧縮機を通常の冷却運転時よりも高回転で稼働して冷却運転を再開し(ステップS110)、t2経過後(本実施形態の冷蔵庫1ではt2=30秒)(ステップS111)、圧縮機回転数を通常の冷却運転時の回転数まで低減する(ステップS112)。なお、ステップS110とステップS112において制御される圧縮機回転数は、外気温度センサ36の検知温度に基づいて設定されるが、例えば外気温が30℃の場合には、ステップS110において圧縮機は2500r/minとなり、ステップS112において1600r/minに回転数が低減される。
次にステップS101、または、ステップS102において、三方弁切換制御のモードiの条件、または、モードiiの条件が成立した場合について説明する。
ステップS101においてモードiの条件が成立した場合(Yes)、続いて、モードiにおける三方弁を状態Aから状態Bへ切換える切換条件が成立するか否かが判定される(ステップS201)。本実施形態の冷蔵庫1は、「状態Aの継続時間がt3経過」、または、「圧縮機が停止状態から起動後の経過時間がt3経過」によって状態Aから状態Bへの切換条件が成立する。なお、t3は外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温度及び湿度に基づいて算出される。ステップS201において、状態Aから状態Bへの切換条件が成立しなかった場合(No)、続いて、ステップS202の判定に移り、ステップS201が成立した場合(Yes)、三方弁を状態Bに切り換えた後に(ステップS204)、ステップS202の判定に移る。
ステップS202では、モードiにおける三方弁を状態Bから状態Aへ切換える切換条件が成立するか否かが判定される。本実施形態の冷蔵庫1は、「状態Bの継続時間がt4経過」、「扉の開動作(扉センサによる検知)」、または、「仕切部温度センサ38検知温度が下限温度Tmin1到達」の何れかの条件が成立した場合に状態Bから状態Aへの切換条件が成立する。なお、t4は外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温度及び湿度に基づいて算出され、低温低湿であるほど、前述のt3に対して相対的にt4の比率が長くなる。例えば、本実施形態の冷蔵庫1は、外気温度30℃で外気湿度70%の場合、t3=20分でt4=10分となり、外気温度15℃で外気湿度55%の場合、t3=20分でt4=20分となる。また、Tmin1は、外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温湿度に基づいて算出される露点温度Tdewに対して、Tmin1=Tdew−5[℃]としている。
ステップS202において、状態Bから状態Aへの切換条件が成立しなかった場合(No)、続いてステップS203の判定に移り、ステップS202が成立した場合(Yes)、ステップS205で三方弁を状態Aに切り換えた後に、ステップS203の判定に移る。
ステップS203では、圧縮機OFFの条件が成立しているか否かを判定する。なお、ステップS203における圧縮機OFFの条件はステップS103と同様である。ステップS203において圧縮機OFFの条件が成立した場合(Yes)、ステップS104に移行し、ステップS203が成立しなかった場合(No)、ステップS201の判定に戻る。
ステップS102においてモードiiの条件が成立した場合(Yes)、続いて、モードiiにおける状態Aから状態Bへの切換条件が成立するか否かが判定される(ステップS301)。本実施形態の冷蔵庫1は、「状態Aの継続時間がt5経過」、または、「圧縮機が停止状態から起動後の経過時間がt5経過」によって状態Aから状態Bへの切換条件が成立する。なお、t5は外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温湿度に基づいて算出される。ステップS301において、三方弁を状態Aから状態Bへ切換える切換条件が成立しなかった場合(No)、続いて、ステップS302の判定に移り、ステップS301が成立した場合(Yes)、三方弁を状態Bに切り換えた後に(ステップS304)、ステップS302の判定に移る。
ステップS302では、モードiiにおける三方弁を状態Bから状態Aへ切換える切換条件が成立するか否かが判定される。本実施形態の冷蔵庫1は、「状態Bの継続時間がt6経過」、「扉の開動作(扉センサによる検知)」、または「仕切部温度センサ38検知温度が下限温度Tmin2到達」の何れかの条件が成立した場合に状態Bから状態Aへの切換条件が成立する。なお、t6は外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温湿度に基づいて算出され、低温低湿であるほど、前述のt5に対して相対的にt6の比率が長くなる。例えば、本実施形態の冷蔵庫1は、外気温度30℃で外気湿度70%の場合、t5=15分でt6=20分となり、外気温度15℃で外気湿度55%の場合、t5=20分でt6=40分となる。また、Tmin2は、外気温度センサ36及び外気湿度センサ37が検知する温湿度に基づいて算出される露点温度Tdewに対して、Tmin2=Tdew−8[℃]としている。
ステップS302において、状態Bから状態Aへの切換条件が成立しなかった場合(No)、続いて、ステップS303の判定に移り、ステップS302が成立した場合(Yes)、三方弁を状態Aに切り換えた後に(ステップS305)、ステップS303の判定に移る。
ステップS303では、圧縮機OFFの条件が成立しているか否かを判定する。なお、ステップS303における圧縮機OFFの条件はステップS103と同様である。ステップS303において圧縮機OFFの条件が成立した場合(Yes)、ステップS104に移行し、ステップS303が成立しなかった場合(No)、ステップS301の判定に戻る。
次に、本実施形態の冷蔵庫1を省電力モードに設定した状態で、温度30℃、相対湿度70%の環境に設置して、安定運転状態となった場合(詳細はJISC9801:2006に準拠)の、横仕切部53表面(鋼板53a表面)の温度変化と、三方弁65、二方弁66、圧縮機24の制御状態について、図7を参照しながら説明する。なお、安定運転状態とは、外気温変動や扉開閉といった負荷変動要因がなく、安定的に貯蔵室内をほぼ一定の温度範囲に冷却している状態を指す。
図7に示すように、経過時間taにおいて、図示しない冷凍室温度(冷凍室温度センサ34検知温度)が所定温度(−19℃)に達したため圧縮機ON条件が成立し(図6におけるステップS108がYes)、二方弁66が開状態となり(図6におけるステップS109)、圧縮機24が起動している(図6におけるステップS110)。なお、経過時間taにおいては、それまで圧縮機24が停止しており、横仕切部53に配設された放熱パイプ64に高温冷媒が流れないため、横仕切部53の温度は低下し、外気温湿度に基づく露点温度(ここでは23.9℃が露点温度)を下回った状態となっている。
経過時間taにおいて、三方弁65は状態Aに制御されているので、圧縮機の稼働によって高温冷媒が放熱パイプ64に流入して横仕切部53表面が加熱され、横仕切部表面温度が上昇し、経過時間tbにおいて露点温度に達している。なお圧縮機24は、起動後30秒間は高回転(本実施形態の冷蔵庫1では2400r/min)に制御されるので(図6におけるステップS110、ステップS111)、低温になっていた横仕切部53表面が速やかに加熱される。なお、ここでは、省電力モードに設定してあり、外気温湿度が30℃、70%の環境下に冷蔵庫1を設置しているので、モードiiの切換条件が成立して、三方弁切換制御はモードiiが選択される(図6のステップS102)。モードiiでは、圧縮機起動後の経過時間が所定時間t5(=15分)に到達した場合に三方弁状態Aから状態Bへの切換条件が成立する(図6におけるステップS301)。ここでは、経過時間tcで三方弁状態Aから状態Bへの切換条件が成立して、三方弁が状態Bに切り換わっている(図6におけるステップS304)。
三方弁が状態Bに切り換わったことで、放熱パイプ64内に高温冷媒が流れなくなるため、横仕切部表面温度は低下し、経過時間tdにおいて、露点温度に達している。続いて、モードiiでは、状態Bの継続時間がt6に到達した場合に三方弁65の状態Bから状態Aへの切換条件が成立する(図6におけるステップS302)。ここでは、経過時間teで三方弁65の状態Bから状態Aへの切換条件が成立して、三方弁が状態Aに切り換わっている(図6におけるステップS305)。
三方弁が状態Aに切り換わったことで、放熱パイプ64内に高温冷媒が流れ、横仕切部53は加熱され、横仕切部表面温度は再び上昇し、経過時間tfにおいて、露点温度に達している。
続いて、モードiiでは、状態Aの継続時間がt5に到達した場合に三方弁65の状態Aから状態Bへの切換条件が成立する(図6におけるステップS301)。ここでは、経過時間tgで三方弁65の状態Aから状態Bへの切換条件が成立して、三方弁が状態Bに切り換わっている(図6におけるステップS304)。以後圧縮機OFF条件(図6におけるステップS303)が成立するまで以上の三方弁切換制御が実施される。
経過時間tiで、圧縮機OFF条件が成立し、具体的には、図示しない冷凍室温度(冷凍室温度センサ34検知温度)、冷蔵室温度(冷凍室温度センサ34検知温度)、野菜室温度(野菜室温度センサ33a検知温度)がそれぞれ冷凍室温度−19℃、冷蔵室温度が4℃、野菜室温度が5℃)となる。続いて、三方弁が状態Aに制御されている(図6におけるステップS104)。状態Aの継続時間がt1(=15分)となった経過時間tiにおいて(図6におけるステップS105)、二方弁66が閉状態となり(図6におけるステップS106)、圧縮機24が停止している(図6におけるステップS107)。続いて、経過時間tjにおいて、再び圧縮機ON条件が成立し、圧縮機24が稼働している。以後安定運転状態では同様の制御が行われる。なお、図7中に示すとおりモードiiの切換制御によって安定運転状態における横仕切部表面の時間平均温度は露点温度以下で、本実施形態の冷蔵庫1では22℃(露点温度23.9℃)に制御されている。また、モードiiによる三方弁切換制御中の横仕切部表面温度の最高温度は、露点温度以上(本実施形態の冷蔵庫1では26℃)で、最低温度は、露点温度以下(本実施形態の冷蔵庫1では19℃)となっている。さらに、最低温度は下限温度(Tmin2)以上を維持している。
ちなみに、本実施形態の冷蔵庫1において省電力モード設定を解除した状態で、温度30℃、相対湿度70%の環境に設置して、安定運転状態となった場合には、モードiによる切換制御が実施され、横仕切部表面の時間平均温度は露点温度以上(本実施形態の冷蔵庫1では24.3℃(露点温度23.9℃))となる。
以上で、本実施形態の冷蔵庫の構造と、制御方法の説明をしたが、次に、本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
本実施形態の冷蔵庫1は、扉間の隙間の奥に位置し、扉閉鎖時に扉を受けて庫外と庫内間の通気を防止する仕切部(上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52、横仕切部53、縦仕切部54)と仕切部を加熱する加熱手段(放熱パイプ64)を備えており、仕切部を加熱する加熱手段の加熱量を制御することで、安定運転状態における仕切部表面温度の時間平均値を外気温湿度に対する露点温度以下にしている。すなわち、前方に開口が形成された断熱箱体と、前記開口を開閉する複数の扉と、前記複数の扉間の隙間の背方にて前記扉閉鎖時に前記扉と接して庫内外の空気の流通を阻止する仕切部と、前記仕切部を加熱する加熱手段と、前記断熱箱体の周囲空気の温度及び湿度を検知する検知手段とを備え、前記仕切部表面温度の時間平均値が露点温度以下となるように前記加熱手段を制御する。これにより、仕切部表面から庫内に流入する熱量を抑制でき、冷蔵庫の省エネルギー性能をより向上させることができる。
本実施形態の冷蔵庫1は、扉間の隙間の奥に位置し、扉閉鎖時に扉を受けて庫外と庫内間の通気を防止する仕切部(上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52、横仕切部53、縦仕切部54)と仕切部を加熱する加熱手段(放熱パイプ64)を備えており、仕切部を加熱する加熱手段の加熱量を制御することで、安定運転状態における仕切部表面温度が外気温湿度に対する露点温度以上となる時間より、露点温度以下となる時間の方が長くなるようにしている。すなわち、前方に開口が形成された断熱箱体と、前記開口を開閉する複数の扉と、前記複数の扉間の隙間の背方にて前記扉閉鎖時に前記扉と接して庫内外の空気の流通を阻止する仕切部と、前記仕切部を加熱する加熱手段と、前記断熱箱体の周囲空気の温度及び湿度を検知する検知手段とを備え、前記仕切部表面温度が露点温度以上となる時間より露点温度以下となる時間を長くするように、前記加熱手段を制御する。これにより、仕切部表面から庫内に流入する熱量を抑制でき、冷蔵庫の省エネルギー性能をより向上させることができる。
本実施形態の冷蔵庫1は、仕切部(上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52、横仕切部53、縦仕切部54)の前方の扉間の隙間幅寸法(図5におけるL1)より、扉前縁から仕切部表面に至る隙間奥行き寸法(図5におけるL2)の方が大きくなるようにしている。これにより、仕切部を露点温度以下として省エネルギー性能を高めつつ、結露が成長し難い冷蔵庫とすることができる。理由を以下で説明する。
結露は、外気中の水蒸気が、露点温度以下の壁面に向けて対流と拡散によって移動して凝縮する現象(物質移動現象)であるが、特に対流が露点温度以下の壁面近傍で生じると、壁面近傍の水蒸気濃度の勾配(水蒸気分圧の勾配)が急勾配になり、物質移動が積極的に生じるようになる。そのために、対流が生じると、露点温度を下回る壁面上には短時間で結露が成長し、流下するレベルに至ってしまう。密度差により生じる自然対流は物質移動の促進度合いは比較的小さいが、例えば、冷蔵庫の前を人が通過した場合などには強制対流、つまり扉間隙間の前方で生じた強制対流が誘起する流れが隙間内部に生じた場合は、物質移動が促進され、短時間で結露が成長してしまう場合がある。
そこで、本実施形態の冷蔵庫1では、扉間の隙間幅寸法より、扉前縁から仕切部表面に至る隙間奥行き寸法の方が大きくなるようにして、仕切部温度を露点温度以下としていても、扉の前方で生じた強制対流の影響を十分小さく抑えることができるようにしている。これにより、結露が成長し難い状態を保つことができる。
本実施形態の冷蔵庫1は、仕切部である上側断熱仕切壁51、下側断熱仕切壁52、横仕切部53、縦仕切部54の前方の扉間の隙間幅寸法(図5におけるL1)を10mm以下として、扉前縁から仕切部表面に至る隙間奥行き寸法(図5におけるL2)を隙間幅寸法の3倍以上確保している。強制対流に比べて影響の度合いは小さくなるが、自然対流も物質移動促進に寄与する。自然対流は狭空間で生じ難いので、扉間の隙間幅寸法を10mm以下とすることで、十分小さく抑えることができ、さらに、隙間幅寸法の3倍以上の隙間奥行き寸法を確保することで、扉の前方で生じた強制対流の影響も十分小さく抑えることができる。これにより、水蒸気の移動は主として拡散による移動となり、対流が生じている場合に比べて物質移動が十分小さく抑えられる。したがって、仕切部を露点温度以下としても、より結露が成長し難い冷蔵庫とすることができる。
本実施形態の冷蔵庫1は、仕切部に配設した加熱手段の加熱量を制御して、仕切部表面温度を外気温湿度の露点温度以上の状態と、露点温度以下の状態を交互に繰り返すようにして、仕切部の時間平均温度を露点温度以下に制御している。これにより、仕切部を露点温度以下としても、結露が成長し難い冷蔵庫とすることができる。図8を参照しながら以下で理由を説明する。
図8(a)は、仕切部表面温度が露点温度以下となっている場合に扉間の隙間を水蒸気が拡散する様子を表す模式図、図8(b)は、仕切部表面温度が露点温度以上となっている場合に扉間隙間を水蒸気が拡散する様子を表す模式図である。図8(a)に示すように、仕切部の表面温度が露点温度以下に低下した場合、仕切部表面の極近傍の水蒸気は凝縮して仕切部表面に微小水滴が生じる。このとき、仕切部表面近傍は仕切部表面の温度に基づく飽和の水蒸気分圧Pwとなり、外気湿度に基づく水蒸気分圧に対する勾配が形成される。この水蒸気分圧Pwの差が水蒸気分子の拡散の駆動力となる。一方で、扉間の隙間内の全圧P(=Pw+Pa)は一定に保たれるので、空気の分圧Paは水蒸気分圧Pwが低下する分だけ上昇する。
したがって、空気は水蒸気と圧力勾配が逆向きになり庫外に向けて拡散しようするために、仕切部表面に向かおうとする水蒸気の拡散を妨げるように作用する。この作用により、初期段階で微小水滴が生じたとしても、その後の水蒸気の移動が空気によって妨げられ水蒸気の拡散抵抗が大きくなるので、仕切部表面温度が露点温度以下であっても結露は成長し難い状態となる。
次に、図8(a)の状態から、図8(b)に示す露点温度以上の状態に加熱した場合、仕切部表面には微小水滴があるため飽和しており、仕切部表面の水蒸気分圧Pwは、仕切部表面温度に基づく圧力となる。表面温度が露点温度をわずかに上回る程度であっても、外気の水蒸気分圧Pwに対して高く、さらに、空気の拡散方向と、水蒸気の拡散方向が一致するため、水蒸気の拡散が促進される(水蒸気の拡散抵抗が小さくなる)。
したがって、仕切部に配設した加熱手段の加熱量を制御して、仕切部表面温度を外気温湿度の露点温度以上の状態と、露点温度以下の状態を交互に繰り返すようにして、仕切部の時間平均温度を露点温度以下に制御すると、露点温度を下回った場合には、拡散抵抗が大きくなることで結露が成長し難くなり、露点温度を上回った場合には、拡散抵抗が小さくなることで、庫外への水蒸気の排出が積極的に行われるようになるため、仕切部の時間平均温度を露点温度以下に制御して省エネルギー性能を十分高めているにも関わらず、実質的にはほぼ結露の成長がない冷蔵庫とすることができる。
なお、本実施形態の冷蔵庫1では、安定運転状態における仕切部表面温度の時間平均値を外気温湿度に対する露点温度以下にするための切換制御のタイミングを、時間によって定めているが(t5及びt6)、例えば、仕切部温度センサ38の検知温度に基づいて、切換制御のタイミングを定めても良い。
本実施形態の冷蔵庫1は、加熱量の調節が可能な仕切部表面の加熱手段を備え、加熱手段の背面側には断熱材を配設し、加熱量が大きい状態、つまり放熱パイプ64内に高温冷媒が流れている状態、加熱量が小さい状態、つまり放熱パイプ64内に高温冷媒が流れない状態をそれぞれ定常状態に至る前に交互に切換制御するようにして、仕切部表面の温度を制御している。これにより、加熱手段の加熱によって庫内に流入する熱量を抑制できる。理由を図9と適宜図5を参照しながら説明する。
図9は仕切部の表面と庫内に接する面(面の位置は図5参照)の温度変化を表す図である。図9のtAにおいては、仕切部の表面と庫内に接する面の何れも温度が低い状態にある。続いて加熱手段である放熱パイプ64によって加熱状態とすることで、仕切部の表面温度は素早く温度上昇している。このとき仕切部の庫内に接する面の温度は、背面側に配設した断熱材53bの熱容量のために緩やかに温度が上昇する。次に、tBにおいて、仕切部の庫内に接する面の温度が定常状態に至る前に放熱パイプ64内に高温冷媒が流れない非加熱状態に切り換えている。これにより、断熱材53bの放熱パイプ64に近い部分の温度は上昇しても、仕切部の庫内に接する面近傍は十分に温度上昇していない状態となる。tBからtCまでは非加熱状態であり、非加熱状態では仕切部の庫内に接する面から断熱材53bが冷却されて温度が低下し、次第に仕切部の表面の温度も低下する。以上のように、仕切部の庫内に接する面の温度が定常状態に至る前に加熱状態から非加熱状態に切り換えることで、仕切部の庫内に接する面は比較的低温に保たれ、仕切部の表面を加熱する際に庫内に流入する熱量を抑制することができ、省エネルギー性能の高い冷蔵庫とすることができる。また、断熱材53bにより、仕切部表面の温度降下が緩やかになるため、非加熱状態を加熱状態より長くしても結露が生じ難い冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫1は、安定運転状態における仕切部表面の時間平均温度を露点温度以上とする制御モード(モードi)と、露点温度以下とする制御モード(モードii)を備えており、モード設定手段によって、モードを選択できるようにしている。これにより、同じ温湿度環境下であっても一段と省エネルギー性能を向上させる制御を選択可能となるので、例えば、電力供給量の不足が懸念される時間帯においては、消費電力を低減して省エネルギー性能を向上させたモードを選択するといったことが可能となる。さらに、ユーザーの設定が可能とすることによって、省エネルギー性能が高いモードである本実施形態の冷蔵庫1のモードiiの効果と、結露というリスクを正しく理解した上で、省エネルギー性能の向上を望む場合に使用することができるようになる。
本実施形態の冷蔵庫1は、冷凍サイクルの放熱手段60の一部である放熱パイプ64を仕切部の加熱手段として用いている。すなわち、前記放熱手段は、庫外への放熱を行う第一の放熱手段(凝縮器61、放熱パイプ62)と、前記仕切部を加熱する第二の放熱手段(放熱パイプ64)を備え、前記圧縮機により圧縮された冷媒を、前記第一の放熱手段及び前記第二の放熱手段に順次流す第一の冷媒流路)と、前記第一の放熱手段に冷媒を流通させた後に、第一の放熱手段の出口から前記第二の放熱手段の出口にバイパスさせる第二の冷媒流路(バイパスパイプ63)と、前記第一の冷媒流路と前記第二の冷媒流路を切り換える流路切換手段(三方弁65)とを備え、前記流路切換手段によって前記第二の放熱手段の放熱量を制御する。これにより、加熱手段としてヒータを採用する場合に比べて、冷凍サイクルのヒートポンプ作用により加熱に必要なエネルギーを高い成績係数(加熱エネルギー/加熱エネルギーを得るための消費電力)で得ることができるため、省エネルギー性能に優れた冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫1は、圧縮機起動時の回転数を所定時間だけ高回転としている。圧縮機稼働状態においては、三方弁を高温冷媒がバイパスパイプ63を流れる状態Bに切り換えると仕切部の温度が下がり、高温冷媒が放熱パイプ64を流れる状態Aに切り換えると、放熱パイプ62内の高温冷媒が素早く放熱パイプ64内に流入するので、短時間で仕切部を加熱できる。一方、圧縮機停止状態においても、放熱パイプ64内に高温冷媒は流れないため、仕切部温度は状態Bと同様に低下する。この状態から圧縮機が起動する場合、圧縮機が送り出す高温冷媒で、放熱パイプ64内が十分満たされるのに時間遅れが生じる。したがって、本実施形態の冷蔵庫1では、圧縮機停止状態から圧縮機が起動する際に、仕切部の温度上昇が緩慢になることを防止し、放熱パイプ64による良好な加熱状態を素早く得るために、圧縮機起動時の回転数を所定時間だけ高回転としている。例えば本実施形態の冷蔵庫1では30秒間2500r/minで圧縮機を駆動した後に1600r/minに回転数を低減している。すなわち、圧縮機の回転数は、起動時の所定時間第一の回転速度とした後、該第一の回転速度よりも遅い第二の回転速度とする。これにより、圧縮機起動後に放熱パイプによる加熱が不足し難くなり、省エネルギー性能が高く、結露が成長し難い冷蔵庫となる。
本実施形態の冷蔵庫1は、仕切部の温度が下限温度に到達した場合、放熱パイプ64内に高温冷媒が流れるように制御している。これにより、例えば、仕切部と扉の間に食品残渣等が挟まり貯蔵室から庫外に冷気が漏れるといったことによって、仕切部温度が低温になり易くなった場合であっても、過度に仕切部温度が低下して結露が成長することを抑制できる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、外気温度センサ36、外気湿度センサ37は、外気温湿度を検知することができる配設位置であればどこに設置しても良い。また、仕切部温度センサ38は仕切部温度が検知できるように設置していれば、横仕切部53の内部に設置していなくても良い。すなわち、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。