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JP5817330B2 - 分離膜および分離膜エレメント - Google Patents

分離膜および分離膜エレメント Download PDF

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Description

本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜および分離膜エレメントに関する。
液体、気体等の流体に含まれる成分を分離する方法としては、様々なものがある。例えば海水、かん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術を例にとると、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜には、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントは、分離膜の一方の面に原流体を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、各種形状からなる分離膜素子を多数束ねて膜面積を大きくし、単位エレメントあたりで多くの透過流体を得ることができるように構成されており、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種エレメントが製造されている。
例えば、逆浸透ろ過に用いられる流体分離膜エレメントを例にとると、その分離膜エレメント部材は、原流体を分離膜表面へ供給する供給側流路材、原流体に含まれる成分を分離する分離膜、及び分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材からなる部材を中心管の周りに巻き付けたスパイラル型分離膜エレメントが、原流体に圧力を付与し、透過流体を多く取り出す点で広く用いられている。
スパイラル型逆浸透分離膜エレメントの部材としては、供給側流路材では供給側流体の流路を形成させるために主に高分子製のネットが使用され、分離膜としては、ポリアミドなどの架橋高分子からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子からなる多孔性樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子からなる不織布がそれぞれ供給側から透過側にかけて積層された複合半透膜が使用され、透過側流路材では膜の落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給側流路材よりも間隔が細かいトリコットと呼ばれる織物部材が使用されている。
近年、分離膜エレメントに造水コストの低減への高まりから、膜エレメントの高性能化のニーズが求められている。分離膜エレメントの分離性能、単位時間あたりの透過流体量を大きくする観点から、各流路部材、分離膜、エレメント部材の性能向上方法が提案されてきた。例えば、特許文献1では凹凸賦形されたシート状物を透過側流路材として使用する方法、特許文献2では、基材を使用せず、供給側表面に凹凸を形成させ、内部に中空通路を有する平膜を使用する方法、特許文献3および4では、凹凸を有する多孔性支持体と分離活性層とを備えるシート状複合半透膜を用い、ネットなどの供給側流路材やトリコットなどの透過側流路材を用いない方法が提案されている。また、特許文献5では、平膜の表面に一定方向に複数の溝を設けた平膜を積層し、集水管の外周にスパイラル状に巻回したスパイラル型膜エレメントを有するスパイラル型分離膜モジュールが開示されている。
特開2006−247453号公報 特開平11−114381号公報 特開2010−99590号公報 特開2010−125418号公報 特開昭63−69503号号公報
しかし、上記した分離膜エレメントは、性能向上、特に長期間にわたり運転を行った際の安定性能の点では、十分とは言えず、例えば特許文献1で記載される、凹凸賦形されたシート状物を透過側流路材として使用する方法では透過側の流動抵抗を軽減するのみであり、かつシート表面の抵抗があるため、流動抵抗低減効果が十分とは言えない。
特許文献2で記載される、基材を使用せず、供給側表面に凹凸を形成させ、内部に中空通路を有する平膜を使用する方法では、膜表面と平行な方向に延びる中空通路を平膜内に有するため、表面の凹凸の高さを大きくすることが困難かつ凹凸形状が限定され(実施例では段差0.15mmの溝)、また透過側流路の形状も限定されるため、供給側、透過側の流動抵抗低減効果が十分とは言えない。
特許文献3および4で記載される、凹凸を有する多孔性支持体と分離活性層とを備えるシート状複合半透膜を用い、ネットなどの供給側流路材やトリコットなどの透過側流路材を用いない方法では、平膜評価用のセルを用いた場合の膜性能のみの記述があるものの、実際に分離膜エレメントを構成した場合の性能は開示されておらず、実際に圧力をかけて分離膜エレメントを運転した場合、供給側流路、透過側流路の断面積が変化しやすく初期だけでなく長期間にわたり運転を実施した際に性能が変化しやすい傾向にある。
特許文献5で記載される、平膜の表面に一定方向に複数の溝を設けた平膜を積層し、集水管の外周にスパイラル状に巻回したスパイラル型膜エレメントを有するスパイラル型分離膜モジュールとする方法では、このスパイラル型膜エレメントでは溝が形成された2枚の平膜を積層することによって平膜間に透過流体流路が形成されており、透過流体流路材および原流体流路材が省略されている。それにより、単位容積当たりの有効膜面積が大きくなり、かつ小型化および低コスト化が図られている。しかしながら、溝の形状が分離膜に供給水を均一に供給するには不適であり、膜面での乱流効果(攪拌効果)が小さくなって濃度分極等による分離性能の低下が生じ易くなるという問題があった。
そこで、本発明は、分離膜エレメントにおける分離除去性能向上、単位時間あたりの透過流体量の増加などの分離膜エレメント性能向上、安定性能に有効な分離膜エレメントを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
(1)平坦な基材と、前記基材上に設けられた多孔性樹脂層及び分離機能層とを備える分離膜であって、
前記分離機能層側の表面に、分岐部及び合流部を有し、かつ深さが100μm以上2000μm以下の溝を備える分離膜。
(2)平坦な基材と、前記基材上に設けられた多孔性樹脂層及び分離機能層とを備える分離膜であって、
前記分離機能層側の表面に、100μm以上2000μm以下の溝を有し、分離膜の供給側表面の全ての溝が連続している分離膜。
(3)前記溝の模様が網形である(1)または(2)に記載の分離膜。
(4)前記分離機能層が、前記多孔性樹脂層上に設けられる(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜を備える分離膜エレメント。
(6)前記基材が長繊維不織布である(1)〜(5)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
本発明によれば、膜表面積増大により造水量が増加すると共に、基材が平坦であることで供給側に、高効率かつ高低差変化がほとんどない安定した流路を確保できる。さらに、膜面での乱流効果も十分得られ、局所的な流動の不均一も生じにくく、その結果、分離成分の除去性能と高い透過性能を有する高性能、高効率分離膜および分離膜エレメントを得ることができる。
分離膜の供給側表面の溝の模様が網代文様である場合の模式図である。 分離膜の供給側表面の溝の模様が網形である場合の模式図である。 分離膜の供給側表面の溝の模様が直線状縞形である場合の模式図である。 分離膜の一例を示す断面図である。 分離膜エレメントの一例を示す一部展開斜視図である。
1.分離膜
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
(分離膜の構造の概要)
分離膜とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得るものであれば限定されないが、分離膜は、基材と、多孔性樹脂層と、分離機能層とを備えることができる。また、分離膜は、分離機能層側の表面に溝を有する。
(基材)
基材を設けることで、強度、寸法安定性、及び凹凸形成能に優れた分離膜が得られる。
基材としては、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることができる。基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性樹脂層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じたりすることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、分離膜の連続製膜においては、製膜方向に対し張力がかけられることからも、基材にはより寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性樹脂層とは反対側の表層における繊維が、多孔性樹脂層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、分離膜に凹凸を付与する際の、多孔性樹脂層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、分離膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。より具体的に、該長繊維不織布の、多孔性樹脂層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましく、また、多孔性樹脂層側表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
分離膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性樹脂層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性樹脂層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性樹脂層側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
ここで、繊維配向度とは、不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、該サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維について、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°とし、不織布の幅方向(横方向)を90°としたときの角度を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度として求める。
(多孔性樹脂層)
多孔性樹脂層として、分離膜としての性能を保持しつつ支持機能を有する膜を用いることができる。
多孔性樹脂層に使用される材料やその形状は特に限定されない。多孔性樹脂層としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが使用され、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
多孔性樹脂層としては、分離膜に機械的強度を与え、イオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離膜のような分離性能を有さないものであれば、孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは供給側表面(基材とは逆側の表面)からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、供給側表面で原子間力顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて表面から測定された細孔の投影面積円相当径が1nm以上100nm以下であるような多孔性支持層が好ましく使用される。特に界面重合反応性、分離機能層の保持性の点で3〜50nmの投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性樹脂層の厚みは特に限定されないが、分離膜の強度、分離膜の高低差を形成させる点、供給側流路の形態安定性の点で、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下である。
多孔性樹脂層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から多孔性樹脂層の膜厚や表面の投影面積円相当径を決定する。多孔性樹脂層の厚みおよび孔径は平均値である。具体的には、多孔性樹脂層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で20箇所において厚みを測定することで得られる平均値である。また、孔径は、200個の孔の各投影面積円相当径の平均値である。
(分離機能層)
分離機能層は、原流体を透過流体と濃縮流体とに分離することができればよい。
分離機能層としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で、多孔性樹脂層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなる分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いることができる。このとき、多孔性樹脂層は、支持層として機能する。また、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリスルホン膜のような多孔性樹脂層であって、分離機能と支持体機能との両方を有する膜を用いることもできる。つまり、分離機能と多孔性支持機能とが、単一の層で実現されてもよい。また、分離機能層と多孔性支持層とが別の層として設けられる場合、分離機能層と基材との間には、多孔性樹脂層(多孔性支持層)以外の層が設けられていてもよい。
分離機能層の厚みとしては限定されないが、分離性能と透過性能の点で5〜3000nmであることが好ましい。特に逆浸透膜、正浸透膜、ナノろ過膜では5〜300nmであることが好ましい。
分離機能層の厚みは、これまでの分離膜の膜厚測定法に準じて、分離膜を樹脂による包埋後に、超薄切片を作製し、染色などの処理を行った後に、透過型電子顕微鏡により観察することで測定することができる。具体的には、分離機能層がひだ構造を有する場合、多孔性樹脂層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で、20個のひだについて測定し、その平均値から求めることができる。
分離機能層がポリアミドで構成される場合について詳述する。ポリアミド膜は、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
さらに、分離機能層を成形性、耐薬品性の点でSi元素などを有する有機−無機ハイブリッド構造とした分離膜も使用することができる。有機無機ハイブリッド膜としては、特に限定されないが、例えば、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物、ならびに(B)前記ケイ素化合物以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いた、(A)のケイ素化合物の加水分解性基の縮合ならびに(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合物が使用できる。
まず(A)のエチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物について説明する。
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
またケイ素原子に直接結合している加水分解性基が水酸基に変化するなどのプロセスを経て、ケイ素化合物同士がシロキサン結合で結ばれるという縮合反応が生じ、高分子となる。加水分解性基としてはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基などの官能基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2〜4、さらには3のものである。カルボキシ基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基である。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく使用される。
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっているケイ素化合物も使用できる。また2以上のケイ素化合物が、加水分解性基の一部が加水分解、縮合し架橋しない程度に高分子量化したものも使用できる。
ケイ素化合物(A)としては下記一般式(a)で表されるものであることが好ましい。
Si(R1)(R2)(R3)4−m−n ・・・(a)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。R3はHまたはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R1、R2、R3それぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で説明したとおりである。
R2は加水分解性基であるが、これらは上で説明したとおりである。R3となるアルキル基の炭素数としては1〜10のものが好ましく、さらに1〜2のものが好ましい。
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が粘性を持つことからアルコキシ基が好ましく用いられる。
このようなケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
(A)のケイ素化合物の他、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有するケイ素化合物を併せて使用することもできる。このようなケイ素化合物は、一般式(a)では「m≧1」と定義されているが、一般式(a)においてmがゼロである化合物が例示される。このようなものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
次に(A)のケイ素化合物以外のものであって、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)について説明する。
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。このような化合物としてはエチレン、プロピレン、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
また、この化合物は、分離膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸基を有するアルカリ可溶性の化合物であることが好ましい。
好ましい酸の構造としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、2つ以上の酸を含有し得るが、中でも1個〜2個の酸基を含有する化合物が、好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でカルボン酸基を有する化合物としては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
分離機能層を形成するために、(A)のケイ素化合物以外に、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物、および重合開始剤を含んだ反応液を用いることができる。具体的には、分離機能層は、の反応液を多孔性樹脂層上に塗布し、さらに加水分解性基を縮合することに加えて、エチレン性不飽和基の重合によって、これら化合物を高分子量化することで形成可能である。(A)のケイ素化合物を単独で縮合させた場合、ケイ素原子に架橋鎖の結合が集中し、ケイ素原子周辺とケイ素原子から離れた部分との密度差が大きくなるため、分離機能層中の孔径が不均一となる場合がある。一方、(A)のケイ素化合物自身の高分子量化および架橋に加え、(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を共重合させることで、加水分解性基の縮合による架橋点とエチレン性不飽和基の重合による架橋点が適度に分散される。このように適度に架橋点を分散させることで、均一な孔径を有する分離機能層が構成され、透水性能と除去性能のバランスが取れた分離膜を得ることができる。また、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、高分子量化していることで、分離膜使用時に溶出しにくくなるので、膜性能低下を引き起こしにくい。
分離機能層において、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し10重量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。ここで、反応液に含有される固形分とは、反応液に含有される全成分のうち、溶媒および縮合反応で生成する水やアルコールなどの留去成分を除いた、得られる分離膜に最終的に分離機能層として含まれる成分のことを指す。(A)のケイ素化合物量が少ないと、架橋度が不足する傾向があるので、膜ろ過時に分離機能層が溶出し分離性能が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。
(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量部〜80重量部である。(B)の化合物の含有量がこれらの範囲にあるとき、得られる分離機能層は架橋度が高くなるため、分離機能層が溶出することなく安定に膜ろ過ができる。
(溝)
分離膜の供給側表面、つまり分離機能層側の表面には、溝が設けられる。分離膜の表面が高低差を有することによって分離膜表面の表面積が増加し、単位膜面積当たりの造水量が増加する。
分離膜の供給側表面に設けられる溝の模様としては、流路の流動抵抗を少なくし、かつ分離膜エレメントに流体を供給、透過させた際の流路を安定化させることが重要であり、溝の形状が流路を妨げないものであれば特に限定されず目的に応じて選定できる。
そのような構造の例として、溝は、かつ分岐部及び合流部を有することができる。分岐部とは、そこを通る流体が2つ以上の経路に分かれて流れるように形成された部分であり、合流部とは、2つ以上の溝を流れた流体が混ざり合うように形成された箇所である。分岐部および合流部は、1か所から少なくとも3方向に溝が延びる構成であると言い換えられる。また、分離膜の供給側表面の全ての溝が連続していてもよい。溝は、液体が移動可能に形成されている、ともいえる。
分離膜が分岐部分及び合流部分を備えることで、分離膜の供給側表面を流れる流体に対する乱流効果(つまり撹拌効果)が得られる。分離膜に流体を均一に供給できると、膜面での乱流効果(攪拌効果)が大きくなり、濃度分極等による分離性能の低下が生じにくくなる。ただし、模様が波状縞形、直線状縞形[図3]であれば、膜面での乱流効果(攪拌効果)が小さく、濃度分極等が生じて分離性能の低下を誘起してしまう。このような観点から、溝形状が網形である場合、溝とリーフ幅方向が成す最も小さい角度は3°から80°が良く、5°から30°が特に好ましい。ここで、リーフ幅方向とはエレメントの集水管の長さ方向に垂直な方向である。
分離膜の供給側表面に設けられる溝の具体的な模様としては、例えば網代文様(あじろもんよう)[図1]、その他種々の縞模様や網形[図2]を挙げることができ、あるいはその組み合わせでも良いが、網形であると、分離膜に流体を均一に供給できるため好ましい。
溝の立体的には表面の形をそのまま深さ方向に賦形したもの、広がる形で賦形したもの、狭める形で賦形したものが用いられる。つまり、分離膜の溝の断面形状において、溝の幅は、供給側表面から透過側表面(基材側の表面)に向かって、徐々に狭くなってもよいし、徐々に広くなってもよいし、一定であってもよい。また、溝の壁の形状は、向かい合う壁に向かって凸形状であってもよいし、凹形状であってもよいし、凹形状と凸形状との組み合わせであってもよい。
分離膜の高低差、すなわち基材に塗布する多孔性樹脂の溝深さは分離特性や水透過性能が要求される条件を満足するように、コーターのクリアランスを調整することによって自由に調整することができる。分離膜の溝深さがある程度浅いことで、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜リーフ数が多くなるという利点があると共に、分離機能層としてポリアミドを用いる場合では、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合を実施することが容易となり、性能の良い分離機能層を形成することができる。一方、溝深さがある程度深いことで、流路の流動抵抗が小さくなり、分離特性や水透過性能が向上するという利点がある。つまり、溝深さが深いことで、エレメントの造水能力が向上し、造水量を増加させるための運転コストを低減することができる。従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、分離膜においては、溝深さは100μm以上2000μm以下であることが好ましく、300μm以上1000μm以下であってもよい。
分離膜の供給側表面の溝深さは、市販の形状測定システム、すなわちキーエンス製高精度形状測定システムKS−1000などで測定することができる。測定を溝深さのある任意の箇所について実施し、各深さの値を総和した値を測定総箇所の数で割ることで、溝深さを求めることができる。
同様の理由から溝幅は0.2mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm以上3mm以下であり、ピッチは溝幅の10分の1から50倍の間で適宜設計すると良い。溝幅とは溝深さが存在する表面で沈下している部位のことであり、ピッチとは、溝深さが存在する表面における突出部分の頂点から近接する突出部分の頂点までの水平距離のことである。
膜表面上部からの観察面積(2次元面積)に対する、分離膜の供給側表面に存在する溝深さの中心線よりも表面上部方向に高い位置を有する凸面積の比率は、分離特性や水透過性能が要求される条件を満足するように自由に調整できる。この比率が高すぎると流動抵抗が大きくなりすぎて、エレメント化しても造水量が小さくなってしまう。一方、比率が低すぎると流動抵抗は小さくなるが流動の均一化が困難となり、濃度分極が生じてエレメントの性能が低下してしまう。このような観点から、比率は、膜表面上部からの観察面積(2次元面積)に対して、5%〜95%であることが好ましく、流動抵抗と流路安定性の点で10〜60%であることが特に好ましい。
「平坦な基材」とは、少なくとも多孔性樹脂層側とは逆の表面(つまり透過側表面)が平坦であればよく、両面が平坦であってもよい。
なお、「平坦」とは、後述の溝に相当する凹凸が形成されていないことを意味する。つまり、微視的に凹凸が存在することは許容される。具体的には、「平坦」とは、高低差が300μm未満であること、さらには100μm未満であることを含む。
エンボスで溝が形成された場合には、分離膜全体の厚みが略均一であり、透過側表面の凸部が供給側の凹部(つまり溝)に対応する。
これに対して、平坦な基材を備える分離膜では、分離機能層側の表面、つまり分離側表面に溝が形成されているので、分離膜全体を見ると、基材側表面(つまり透過側表面)が平坦であり、かつ、図4に示すように、溝部分における分離膜の厚みが他の部分での厚みよりも小さいことで、溝が形成されている。このような構成によると、エンボス形成された溝と比較すると、深さ方向における溝の形状が安定するので、分離膜使用時に圧力が印加されても、溝の形状を維持することができる。多孔性樹脂層は機械的強度が比較的高いので、特に、図4に示すように、多孔性樹脂層の厚みの変化によって溝が形成されていることで、より形状が安定な溝を確保することができる。
(分離膜の構造の具体例)
分離膜のより具体的な構造について、以下に説明する。なお、以下に説明する分離膜の各層の組成及び形状、溝の形状等については、既に説明したいずれの構成も適用可能である。
図1及び図4に示すように、分離膜1は、平坦な基材2と、基材2上に設けられた多孔性樹脂層3と、多孔性樹脂層3上に設けられた分離機能層4とを備える。分離膜1は、分離機能層4側の表面に設けられた溝5を備える。2つの溝5の間は凸部と見なすことができる。この凸部を「島部」と称することがあり、符号“6”を付す。
基材2の両面は平滑であり、多孔性樹脂層3は、分離機能層4側、つまり原流体が供給される側(供給側)の面に凹凸が形成されている。この凹凸に沿って分離機能層4が形成されているので、分離膜1の分離機能層側の表面、つまり供給側の面に、溝5が形成される。
図1の分離膜11において、溝51は網代文様を構成する。図1では、溝の三叉部分または溝が交差する箇所(つまり十字部分)に符号“510”を付す。これらの箇所は、分岐部および合流部のいずれともなりうるので、特に区別しないときには、「分岐部」と称する。分離膜11は、図2の島部62を横断するようにさらに溝が設けられている構成である、ともいえる。つまり、図1の島部61は、略直線の溝51に沿って、十字部分と隣の十字部分との間に、溝で分割された複数の島部61が設けられている。なお、本明細書において、「複数の溝」とは、複数の溝が互いに分離されていなければならない、という意ではない。図1では、直線状かつ互いに平行な溝群と、これらの溝群に含まれる溝に平行な溝群とが互いに交差するように設けられ、かつその隣り合う交差部分の間に、さらに溝が設けられる。よって、図1では、すべての溝が連続している。
図2の分離膜12は、平行な直線状の複数の溝と、それらの溝に交差し、互いに平行な複数の溝とを備える。図2では、溝の交差する箇所に符号“520”を付す。これらの箇所は、分岐部および合流部のいずれともなりうるので、特に区別しないときには、「分岐部」と称する。図2に示される各分岐部520からは、4方向に溝52が延びる。特に、図2では、溝52は互いに直行している。また、図2の分離膜12は、複数の島部62が、1つの連続な溝52に沿って配置されている構成である、ともいえる。なお、図2において、互いに平行な溝群が互いに交差するように配置されているので、すべての溝は連続している。図2の形態については断面形状の説明は省略するが、図4に示す断面が適用可能である。
なお、図1および図2では島部は矩形であるが、島部は、角の丸い形状、楕円(真円を含む)、および他の形状であってもよい。
図3の分離膜101においては、複数の直線状の溝105が、互いに平行に配置されている。つまり、分離膜101は、溝の分岐を有さない。言い換えると、分離膜101では、全ての溝105は、互いに分離するように配置されており、連続していない。
分離膜11及び12では、分岐部510における溝51の分岐角度、及び分岐部520における溝52の分岐角度は略90°である。リーフ幅方向は複数の溝51及び52のうちの一部と平行であってもよく、そのとき、他の溝51及び52に対してリーフ幅方向は垂直である。また、リーフ幅方向は、例えば図1及び図2に示すx軸又はy軸に平行であってもよい。そのとき、複数の溝51及び52の全ての長手方向は、リーフ幅方向に対して平行又は垂直な方向からはずれる。
2.分離膜の製造方法
上述の分離膜を製造する方法について、以下に説明する。
(多孔性樹脂層の形成)
多孔性樹脂層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
多孔性樹脂層は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って、上述した形態を得るためにポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒を調整し、製造することができる。例えば、所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることが出来る。この時、凝固液と接触する表面部分などは溶媒のDMFが迅速に揮散するとともにポリスルホンの凝固が急速に進行し、DMFの存在した部分を核とする微細な連通孔が生成される。
また、上記の表面部分から基材側へ向かう内部においては、DMFの揮散とポリスルホンの凝固は表面に比べて緩慢に進行するので、DMFが凝集して大きな核を形成しやすく、したがって、生成する連通孔が大径化する。勿論、上記の核生成の条件は、膜表面からの距離によって徐々に変化するので、明確な境界のない、滑らかな孔径分布を有する樹脂層が形成される。この形成工程において用いるポリスルホン樹脂溶液の温度及びポリスルホンの濃度、塗布を行う雰囲気の相対湿度、塗布してから凝固液に浸漬するまでの時間、並びに凝固液の温度及び組成等を調節することにより、平均空隙率と平均孔径とが制御されたポリスルホン膜を得ることができる。
このように、基材へ樹脂溶液をキャストした後、非溶媒中に浸漬させて樹脂を凝固させる方法は、非溶媒誘起相分離と呼ばれる。
非溶媒誘起相分離とは、高分子溶液中に高分子の非溶媒が流入することにより、高分子溶液が高分子濃厚相と高分子希薄相とに相分離する現象である。最終的に、高分子濃厚相を多孔性樹脂の壁とし、高分子希薄相を多孔性樹脂の孔として利用することになる。一般に、常温で高分子を溶解できる良溶媒が高分子溶液の調製に使用され、高分子を溶解しない非溶媒を凝固に使用する。
非溶媒誘起相分離における樹脂の良溶媒としては、例えば、樹脂としてポリスルホンを使用する場合、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
非溶媒誘起相分離による多孔性樹脂の製造時には、上述したように、樹脂の非溶媒を製膜原液に接触させて相分離を生じさせる。ここで、非溶媒に良溶媒を少量混和させて非溶媒誘起相分離を遅延させる方法や、低温の非溶媒を用いることにより非溶媒誘起相分離を遅延させる方法も分離膜に所望の細孔径や細孔数を付与するために採用されうる。
樹脂の非溶媒としては、樹脂としてポリスルホンを使用する場合、水やメタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。特に水やエタノールが好ましく、これらの混合溶液であってもよい。
(分離機能層の形成)
次に、分離機能層を多孔性樹脂層上に形成する方法について説明する。
分離機能層は、上述した(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程をこの順に行うことで形成可能である。エチレン不飽和基を重合させる工程において、加水分解性基が同時に縮合してもよい。
まず、(A)および(B)を含有する反応液を多孔性樹脂層に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有する溶液であるが、かかる溶媒は多孔性樹脂層を破壊せず、(A)および(B)、および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。この反応液には、(A)のケイ素化合物のモル数に対して1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量の水を無機酸または有機酸と共に添加して、(A)のケイ素化合物の加水分解を促すことが好ましい。
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。また、溶媒の添加量は、反応液全体に対して50〜99重量%が好ましく、さらには80〜99重量%が好ましい。溶剤の添加量が99重量%以下であると膜中に欠点が生じにくく、50重量%以上であることで良好な透水性を有する分離膜が得られる傾向がある。
多孔性樹脂層と反応液との接触は、多孔性樹脂層面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの塗布装置を用いて多孔性樹脂層にコーティングする方法があげられる。また多孔性樹脂層を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
浸漬させる場合、多孔性樹脂層と反応液との接触時間は、0.5〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を多孔性樹脂層に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の多孔性樹脂層を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
ケイ素の加水分解性基を縮合させる工程は、多孔性樹脂層上に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、多孔性樹脂層が溶融し分離膜としての性能が低下する温度より低いことが要求される。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記反応温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに、縮合反応が適切に進行することで分離機能層が細孔を有するように、加熱条件および湿度条件を選定することができる。
(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは赤外線、紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも赤外線照射や紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に赤外線または紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的にこの波長域の光のみを発生する必要はなく、これらの波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御などのしやすさの点から、これらの電磁波の強度がその他の波長域の電磁波に比べ高いことが好ましい。
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも高効率で低波長の紫外線が薄膜形成性が高い。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマレーザーランプにより発生させることができる。分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがあり、電磁波による重合であれば電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化されてもよい。
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤とは特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸))、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
過酸化物およびα−ジケトンは、開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系もまた好ましい。
次いで、これを約100〜200℃で加熱処理すると重縮合反応が起こり、多孔性樹脂層表面にシランカップリング剤由来の分離機能層が形成された分離膜を得ることができる。加熱温度は多孔性樹脂層の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり多孔性樹脂層の細孔が閉塞するため、分離膜の造水量が低下する。一方低すぎた場合には、重縮合反応が不十分となり機能層の溶出により除去率が低下するようになる。
なお上記の製造方法において、シランカップリング剤とエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物とを高分子量化する工程は、シランカップリング剤の重縮合工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、同時に行っても良い。
このようにして得られた分離膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
(溝の形成)
分離膜の製造方法は、分離膜の供給側面に溝を形成することを含んでいてもよい。
特に、図1に示すように、多孔性樹脂に溝を形成する場合には、基材へ樹脂溶液をキャストした後、非溶媒誘起相分離の直前に、所定の形状に凸または溝を有したコーターなどで処理することで、溝を形成付与することができる。
ここで、基材が長繊維不織布である場合、凸または溝を有したコーターで樹脂溶液を基材へ押し込む部分が生じる。そうすると、樹脂溶液の基材への含浸が加速され、得られた分離膜のろ過抵抗が大きくなってしまう。基材が長繊維不織布であるならば、上述した理由により含浸が加速されることを抑制できる。
凸または溝を有したコーターの使用方法は特に限定されないが、膜幅よりも幅が長いコーターでトラバース塗布することが好ましく、この場合、コーター汚れによって多孔性樹脂の表面が擦過されることを防ぐことができる。コーターは、所定の形状の凸または溝を有したロールコーター、ダイコーターあるいはスプレーコーターなどを用いて実施することができる。いずれのコーターにおいても樹脂溶液を連続塗布した直後に、駆動装置によりコーターを基材幅方向に沿って左右に往復運動、すなわちトラバース移動させることで、多孔性樹脂の供給側に溝を有する膜を製造できる。コーター幅を膜幅よりも長くすると、膜に接していない際に洗浄することができる。
トラバース条件は製膜速度や分離膜表面に付与する溝の模様や深さに応じて適宜設定できる。
上述した方法で分離膜の表面に溝が形成されていると、樹脂の機械的強度が高いために、溝を形成した後に加圧ろ過を実施しても溝の形状がほとんど変化しない。そうすると、エレメントにした場合に供給側の流路材を必要とすることなく、高効率かつ安定な流路を確保することができる。
特に分離機能層がポリアミドで構成される場合、このような方法で溝を形成した後に分離機能層を設けると、分離機能層を設けてから溝を形成する場合に比べて膜破壊が生じにくく、さらに成形プロセスを省略できるのでプロセスを簡略化できる。
3.分離膜エレメント
分離膜エレメントは、原流体を集水管と、集水管の周囲に巻囲された分離膜とを備える。
分離膜エレメントの具体例を図4に示す。図4に示すように、分離膜エレメント31は、集水管33、分離膜36、トリコット37、ネット38、第1端板40、第2端板42等を備える。分離膜エレメントは、第1端板40側から供給された原流体71を、透過流体73と濃縮流体74とに分離して、第1端板40側から透過流体73及び濃縮流体74を排出する。
集水管33は、その中を透過流体が流れるように構成された集水管の一例である。集水管の材質、形状、大きさ等は特に限定されない。一例として、集水管33は、複数の孔34が設けられた側面を有する円筒状の部材である。
分離膜36としては、上記1.欄で説明した分離膜を好適に用いることができる。トリコット37は、透過側流路材の一例であり、ネット38は供給側流路材の一例である。分離膜36は、供給側表面が互いに対向するように、また透過側表面が互いに対向するように、積層されている。トリコット37は分離膜36の透過側表面の間に配置され、ネット38は分離膜36の供給側表面の間に配置される。分離膜36、トリコット37及びネット38は、積層された状態で、集水管33の周囲に巻囲されている。
第1端板40側から供給された原流体71は、ネット38によって形成された流路を通って分離膜エレメント31中を流れ、分離膜36に供給される。分離膜36によって分離された透過流体は、トリコット37によって形成された流路を通って集水管33へ流れ、回収される。濃縮流体74は、ネット38によって形成された流路を通って、第2端板42側へと流れる。
なお、ネット38は省略可能である。つまり、供給側流路材を設けなくても、分離膜36の供給側表面に設けられた溝によって、流路を確保することができる。
4.分離膜エレメントの製造方法
次に、分離膜エレメントの製造方法について説明する。
スパイラル型分離膜エレメントは分離膜、および、必要に応じて供給側流路材および/または透過側流路材の積層体の単数または複数が、有孔の中空状集水管の周りに巻きつけられたものである。本発明の分離膜エレメントの製造方法は限定されないが、ポリアミド分離機能層を多孔性樹脂、基材に積層し、分離膜を得た後に成形、透過側流路材を配置してエレメントを製造する代表的な方法について述べる。
良溶媒に樹脂を溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストして、ただちに所定の凸または溝を有したロールコーターでトラバースしながら純水中に浸漬して多孔性樹脂と基材を複合させる。その後、多孔性樹脂に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去した後、多官能酸ハロゲン化物含有溶液を塗布し、ポリアミド分離機能層を形成させる。有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性樹脂を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。さらに、必要に応じて分離性能、透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリ、亜硝酸などの化学処理を施し、さらにモノマー等を洗浄し分離膜の連続シートを作製する。
該シートを用い、従来のエレメント製作装置を用いて、リーフ数26枚、リーフ有効面積37mの8インチエレメントを作製する。エレメント作製方法をしては、参考文献(特公昭44−14216、特公平4−11928、特開平11−226366)に記載される方法を用いることができる。
このように製造される本発明の分離膜エレメントは、さらに、直列または並列に接続して圧力容器に収納した分離膜モジュールとすることもできる。
分離膜エレメントの一形態において、溝を構成するリーフ同士を、1枚のリーフの溝が隣接する別のリーフの溝は、本発明の効果を損なわない範囲で整合させて良く、一方のリーフの溝ともう一方のリーフの溝が供給水側の流路を構成することになる。
また、上記の分離膜エレメント、モジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が脱塩率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、膜エレメントの供給流路、透過流路の保持性を考慮すると、膜モジュールに被処理水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上5MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩脱塩率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る膜エレメントによって処理される流体は特に限定されないが、水処理に使用する場合、供給水としては、海水、かん水、廃水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(造水量)
供給水(かん水)の膜エレメント透過水量について、膜エレメントあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。なお、1時間後の測定値と8時間後の測定値が1m/日以上あった場合に付記した。
(脱塩率(TDS脱塩率))
TDS脱塩率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}として算出した。
なお、1時間後の測定値と8時間後の測定値で0.1%以上の変化をした場合に、その結果を付記した。
(分離膜の溝深さ)
キーエンス製高精度形状測定システムKS−1000を用い、分離膜の供給側表面5cm×5cmの測定結果から平均の溝深さを解析した。溝深さのある箇所を100箇所任意に選択して測定し、各深さの値を総和した値を測定総箇所の数で割って求めた。
(分離膜の溝深さ変化率)
加圧運転前後の分離膜の溝深さを測定し、溝深さ変化率(%)=100×{1−(加圧運転後の分離膜の溝深さ/加圧運転前の分離膜の溝深さ)}とした。
(実施例1、比較例1)
ポリエステル繊維からなり、抄紙法で得られた不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm/sec)上にポリスルホンの20.0重量%、ジメチルホルムアミド(N,N−ジメチルホルムアミド)溶液を室温(25℃)でキャストし、ただちに網形の凸を有したロールコーターでトラバースしながら純水中に浸漬して、5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン支持層からなる多孔性樹脂ロールを作製した。得られた多孔性樹脂の特徴を表1にまとめた。
その後、多孔性樹脂ロールを巻きだし、ポリスルホン表面に、m−PDAの1.8重量%、ε−カプロラクタム4.5重量%水溶液を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持層表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含む25℃のn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、80℃の熱水で洗浄して分離膜ロールを得た。そして、折り畳み断裁加工により分離膜のリーフ状物を分離膜エレメントでの有効面積が37mになるように、幅930mmで26枚のリーフ状物を作製した。
ここで、分離膜表面における高い箇所の最も高いところから近接する高い箇所の最も高い箇所までの水平距離を200個についてカウントし、その平均値をピッチとした。
その後、トリコット(厚み:300μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を透過側流路材として用い、透過側流路材の端部を集水管に巻き付けながら26枚のリーフ状物をスパイラル状に巻き付けた分離膜エレメントを作製し、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカット、端板取りつけ、フィラメントワインディングを行い、8インチエレメントを作製した。該エレメントを圧力容器に入れて、供給水500mg/L食塩、運転圧力0.7MPa、運転温度25℃、pH7で運転(回収率15%)した際の性能を表1にまとめた。多孔性樹脂に溝を設けずに、ネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を供給側流路材、トリコット(厚み:300μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を透過側流路材として用いた比較例1に比べて、大幅に造水量が増えることがわかった。
Figure 0005817330
(実施例2〜7)
実施例2では、溝深さを1400μmになるようにした以外は実施例1と同条件にしたところ、実施例1と比べて脱塩率がやや低下するものの造水量が高くなる結果となった。
実施例3では、溝深さを250μmになるようにした以外は実施例1と同条件にしたところ、実施例1と比べて造水量がやや低下するものの脱塩率が高くなる結果となった。
実施例4では、ロールコーターの凸形状を変更することで多孔性樹脂の柄を網代文様にした以外は実施例1と同条件にしたところ、実施例1と比べて脱塩率がやや低下するが造水量が高くなる結果となった。
実施例5では、多孔性樹脂に用いる樹脂をポリエーテルスルホンに変更した以外は実施例1と同条件にしたところ、実施例1とほぼ同等の結果となった。
実施例6では、基材をポリエステル長繊維からなる不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm/sec、繊維配向度:多孔性支持層側表層40°、多孔性支持層とは反対側の表層20°)に変更した以外は実施例1と同条件にしたところ、実施例1よりやや造水量が高くなる結果となった。
(比較例2)
比較例2では、供給水側流路材を使用しなかったところ、エレメント内で分離膜のずれが起こり、流路断面を一部狭くし、膜が傷ついたため、実施例1〜5と比べて大きく脱塩率、造水量が悪化した。
(比較例3)
多孔性樹脂の溝深さを本願発明の範囲より高くした結果、m−PDAおよびε−カプロラクタムを適切に塗布できず、複合半透膜を得ることができなかった。
(比較例4)
多孔性樹脂の溝形状を直線状縞形にしたところ、分離膜に供給水を均一に供給できず、実施例1〜5と比べて造水量および脱塩率が低下した。
(比較例5)
多孔性樹脂の溝深さを本願発明の範囲より低くした結果、十分な流路を確保できず実施例1〜5と比べて造水量が低下した。
(比較例6)
比較例6では、菱形のエンボス成形を行い、熱処理をせずに流路材を使用しなかったところ、エレメント内で分離膜のずれが起こり、流路断面を一部狭くし、膜が傷ついたため、実施例1〜5と比べて脱塩率、造水量が悪化した。
以上のように、本願発明により得られる分離膜エレメントは、高造水性能、安定運転、優れた除去性能を有している。
本願発明の分離膜エレメントは、特に、かん水や海水の脱塩に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 両面が平坦な基材と、前記基材上に設けられた多孔性樹脂層及び分離機能層とを備える分離膜であって、
    前記分離機能層側の表面に、分岐部及び合流部を有し、かつ深さが100μm以上2000μm以下である液体が移動可能な溝を備え
    前記溝は、多孔性樹脂層の厚みの変化によって形成されており、
    前記多孔性樹脂層を構成する樹脂が前記基材に含浸している
    分離膜。
  2. 前記溝の形状が網形である請求項1に記載の分離膜。
  3. 前記分離機能層が、前記多孔性樹脂層上に設けられる請求項1または2に記載の分離膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜を備える分離膜エレメント。
  5. 前記基材が長繊維不織布である請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜エレメント。
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