本発明は、ASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片に関する。
本発明におけるASCT2としては、特に種を限定するものではないが、好ましくは哺乳動物が挙げられ、具体的にはヒトが挙げられる。
ASCT2のアミノ酸配列情報は、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの公知のデータベースから取得することができる。
例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するヒトASCT2(NCBIアクセション番号:NP_005619)、または配列番号86で示されるマウスASCT2(NCBIアクセション番号:NP_033227)などが挙げられる。
本発明におけるASCT2としては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号2で示されるアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつASCT2の機能を有するポリペプチドが挙げられる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列と好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつASCT2の機能を有するポリペプチドも本発明のASCT2に包含される。
配列番号2で示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)]などを用いて、例えば配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより得ることができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個〜数十個、例えば、1〜20個、より好ましくは1個〜数個、例えば、1〜5個のアミノ酸である。
ASCT2をコードする遺伝子としては、例えば、配列番号1で示される塩基配列が挙げられる。
配列番号1で示される塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなり、かつASCT2の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子も本発明のASCT2をコードする遺伝子に包含される。
また、配列番号1で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつASCT2の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子も本発明のASCT2をコードする遺伝子に包含される。
さらに、配列番号1で示される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなり、かつASCT2の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子なども本発明のASCT2をコードする遺伝子に包含される。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号1で示される塩基配列を有するDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法、またはDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAを意味する。
具体的には、ハイブリダイズしたコロニーまたはプラーク由来のDNA、または該配列を有するPCR産物またはオリゴDNAを固定化したフィルターまたはスライドガラスを用いて、0.7〜1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University,(1995)]を行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターまたはスライドグラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
ハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号1で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
真核生物の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も、本発明のASCT2をコードする遺伝子に包含される。
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよい。
塩基配列については、BLAST[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
また、アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acids Res.,25,3389(1997)、Genome Res.,7,649(1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.html]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、−E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、−q(Penalty for nucleotide mismatch)が−3、−r(reward for nucleotide match)が1、−e(expect value)が10、−W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、−y[Dropoff(X)for blast extensions in bits]がblastn の場合は20、blastn以外のプログラムでは7、−X(X dropoff value for gapped alignment in bits)が15および−Z(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastn の場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/blastcgihelp.html)。
配列番号2で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができる。例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。
また、上記の方法で作製されるポリペプチドまたはDNAに基づいて、上記と同様の方法により、配列番号2で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
さらに、配列番号2で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチド、または配列番号2で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法およびt−ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明におけるASCT2の細胞外領域としては、例えば、配列番号2で示される該ポリペプチドのアミノ酸配列を公知の膜貫通領域予測プログラムSOSUI(http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/sosuiframe0.html)、TMHMM ver.2(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM−2.0/)またはExPASy Proteomics Server(http://Ca.expasy.org/)などを用いて予測された領域などが挙げられる。
具体的には、ExPASy Proteomics Serverにおいて予測される細胞外ドメインである74〜98番目、154〜224番目、287〜305番目、357〜376番目、および420〜425番目の5つの領域が挙げられる。
または、文献[J.Biol.Chemistry,271,18657(1996)]または[J.Virology,73,4470(1999)]で予測されている細胞外ドメインである65〜88番目、152〜224番目、288〜306番目、361〜380番目、および447〜451番目の5つの領域が挙げられる。
本発明において、ASCT2の5つの細胞外領域をN末側から順にEL1領域、EL2領域、EL3領域、EL4領域およびEL5領域と表す。例えば、配列番号2で示されるASCT2ポリペプチドのアミノ酸配列におけるEL2領域は、154〜224番目または152〜224番目である。
本発明のモノクローナル抗体は、ASCT2の細胞外領域に結合するが、ASCT2の細胞外領域のうち、EL1〜EL5領域から選ばれる少なくとも1つの領域に結合することが好ましく、ASCT2の細胞外領域のうち、少なくともEL2領域に結合することがより好ましい。
本発明におけるASCT2の細胞外領域の天然型立体構造としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するASCT2の細胞外領域が天然状態でとりうる立体構造と同等の立体構造を有していればいずれの構造でもよい。
本発明の抗体または該抗体断片が、ASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合することは、固相サンドイッチ法などを用いたラジオイムノアッセイ、または酵素免疫測定法(ELISA)などを用いたASCT2を発現した細胞に対する公知の免疫学的検出法、好ましくは蛍光細胞染色法などの特定の抗原を発現した細胞と特定抗原に対する抗体の結合性を調べることができる方法により確認することができる。
例えば、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いる蛍光抗体染色法[Cancer Immunol.Immunother.,36,373(1993)]、フローサイトメトリーを用いる蛍光細胞染色法、またはBiacoreシステム(ジーイーヘルスケア社製)などを用いた表面プラズモン共鳴などの方法が挙げられる。
また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
ASCT2を発現した細胞としては、ASCT2を発現していればいずれの細胞でもよく、例えばヒト体内に天然に存在する細胞、ヒト体内に天然に存在する細胞から樹立された細胞株、または遺伝子組換え技術により得られた細胞などが挙げられる。
ヒト体内に天然に存在する細胞としては、癌患者体内において該ポリペプチドが発現している細胞が挙げられ、例えば、バイオプシーなどで得られた腫瘍細胞のうちで該ASCT2が発現している細胞などが挙げられる。
ヒト体内に天然に存在する細胞から樹立された細胞株としては、上記の癌患者から得られた該ASCT2が発現している細胞を株化して得られた細胞株のうち、該ASCT2を発現している細胞株が挙げられる。
例えば、ヒトから樹立された細胞株である多発性骨髄腫細胞株KMS−11[ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)番号:JCRB1179]またはRPMI8226(HSRRB番号:JCRB0034)などが挙げられる。
遺伝子組換え技術により得られた細胞としては、具体的には、例えば、該ASCT2をコードするcDNAを含む発現ベクターを昆虫細胞または動物細胞などに導入することにより得られる、該ASCT2が発現した細胞などが挙げられる。
本発明におけるモノクローナル抗体としては、例えば、ハイブリドーマにより生産される抗体、または抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により生産される遺伝子組換え抗体を挙げることができる。
ハイブリドーマは、例えば、上記のASCT2を発現した細胞などを抗原として調製し、該抗原を免疫した動物より抗原特異性を有する抗体生産細胞を誘導する。さらに、該抗体生産細胞と骨髄腫細胞とを融合させることにより、調製することができる。
前記ハイブリドーマを培養するか、または該ハイブリドーマ細胞を動物に投与して該動物を腹水癌化させ、該培養液または腹水を分離、精製することにより抗ASCT2抗体を取得することができる。
抗原を免疫する動物としてはハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができるが、好ましくはマウス、ラット、ハムスターまたはラビットなどを用いる。
また、このような動物から抗体産生能を有する細胞を取得し、該細胞にin vitroで免疫を施した後に、骨髄腫細胞と融合して作製したハイブリドーマが生産する抗体なども本発明の抗体に包含される。
本発明のハイブリドーマにより生産されるモノクローナル抗体の具体例としては、ハイブリドーマKM3998により生産された抗体KM3998、ハイブリドーマKM4000により生産された抗体KM4000、ハイブリドーマKM4001により生産された抗体KM4001、ハイブリドーマKM4008により生産された抗体KM4008、ハイブリドーマKM4012により生産された抗体KM4012およびハイブリドーマKM4018により生産された抗体KM4018などが挙げられる。
ハイブリドーマKM4008およびKM4012は平成20年5月1日付でブダペスト条約に基づき独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−10962およびFERM BP−10963として寄託されている(国際公開第2010/008075号)。
さらに、上述のハイブリドーマより生産された抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体も本発明のモノクローナル抗体に包含される。
本発明において遺伝子組換え抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれぞれの抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。
遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。遺伝子組換え抗体としては、例えば、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものが挙げられる。
本発明の遺伝子組換え抗体としては、具体的には、以下の(1)〜(3)の抗体が挙げられる。
(1)抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)の相補性決定領域(Complementarity Determining Region;以下、CDRと表記する)1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号26、27および28で表されるアミノ酸配列を含み、および/または、抗体の軽鎖可変領域(以下、VLと記す)のCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号29、30、31で表されるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体
(2)抗体のVHのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号32、33および34で表されるアミノ酸配列を含み、および/または、VLのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号35、36および37で表されるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体
(3)抗体のVHのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号49、50および51で表されるアミノ酸配列を含み、および/または、抗体のVLのCDR1、CDR2およびCDR3がそれぞれ配列番号52、53および54で表されるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)および軽鎖定常領域(以下、CLと記す)とからなる抗体をいう。
本発明のヒト型キメラ抗体は、ASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものを用いる。さらに、hIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3およびhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。
また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体としては、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)抗体のVHが、配列番号19で表されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが、配列番号21で表されるアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体
(2)抗体のVHが、配列番号23で表されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが、配列番号25で表されるアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体
(3)抗体のVHが、配列番号46で表されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが、配列番号48で表されるアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体
本発明のヒト型キメラ抗体としては、具体的には、例えばヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018などが挙げられる。
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいい、ヒト型CDR移植抗体、再構成抗体(reshaped−antibody)などともいう。
本発明のヒト化抗体は、次のようにして製造することができる。ASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク(以下、FRと記す)に移植した可変領域(以下、V領域と記す)をコードするcDNAを構築する。該cDNAをヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築する。該発現ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、本発明のヒト化抗体を製造することができる。
ヒト化抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列は、ヒト抗体由来のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることができる。
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはSequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)などに記載の、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列などを用いる。
ヒト化抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好ましい。さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3およびhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。
また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト化抗体としては、具体的には、以下の(a)抗体のVHおよび(b)抗体のVLの少なくとも一方を含むヒト化抗体が好ましい。なお、以下の(a)および(b)において、導入される改変の数に制限はない。
(a)配列番号71で表されるアミノ酸配列、または配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のVal、9番目のSer、20番目のVal、30番目のSer、38番目のArg、46番目のGlu、86番目のLeu、93番目のVal、95番目のTyrおよび116番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(b)配列番号72で表されるアミノ酸配列、または配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のPro、15番目のVal、38番目のGln、43番目のAla、44番目のPro、71番目のPheおよび87番目のTyrから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
本発明のヒト化抗体に含まれるVHとしては、以下の(1)〜(3)が好ましい。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSer、20番目のVal、38番目のArg、46番目のGlu、93番目のVal、95番目のTyrおよび116番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のVal、46番目のGlu、95番目のTyrおよび116番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGlu、および95番目のTyrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
前記VHのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
前記VHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の1〜10個の改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
10個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
9個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
8個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(45)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(22)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(23)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(24)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(25)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(26)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(27)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(28)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(29)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(30)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(31)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(32)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(33)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(34)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(35)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(36)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(37)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(38)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(39)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(40)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(41)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(42)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(43)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(44)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(45)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
7個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、以下の(1)〜(19)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
6個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
5個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(6)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
4個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
3個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(35)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、38番目のArgをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、46番目のGluをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、46番目のGluをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、38番目のArgをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(22)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、46番目のGluをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(23)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(24)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(25)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(26)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(27)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(28)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(29)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(30)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(31)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(32)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(33)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(34)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(35)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
2個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(45)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および9番目のSerをProに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および20番目のValをIleに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および30番目のSerをThrに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および20番目のValをIleに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および30番目のSerをThrに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および30番目のSerをThrに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(22)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(23)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(24)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(25)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(26)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(27)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(28)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(29)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(30)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(31)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(32)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(33)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(34)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(35)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(36)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、および86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(37)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(38)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(39)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(40)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の86番目のLeuをValに、および93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(41)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の86番目のLeuをValに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(42)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の86番目のLeuをValに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(43)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の93番目のValをThrに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(44)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の93番目のValをThrに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(45)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
1個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の2番目のValをIleに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の9番目のSerをProに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の20番目のValをIleに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の30番目のSerをThrに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の46番目のGluをLysに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の86番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の93番目のValをThrに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号71で表されるアミノ酸配列中の116番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
本発明のヒト化抗体に含まれるVLについては、以下の(1)および(2)が好ましい。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のVal、43番目のAla、44番目のPro、71番目のPhe、および87番目のTyrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のVal、71番目のPheおよび87番目のTyrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
前記VLのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
前記VLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の1〜7個の改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
7個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
6個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
5個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(21)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、38番目のGlnをArgに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、および44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
4個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(4)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
3個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(13)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、43番目のAlaをThrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の43番目のAlaをThrに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
2個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(21)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および15番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および38番目のGlnをArgに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および43番目のAlaをThrに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および38番目のGlnをArgに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および43番目のAlaをThrに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、および43番目のAlaをThrに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、および44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の43番目のAlaをThrに、および44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の43番目のAlaをThrに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の43番目のAlaをThrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の44番目のProをValに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の44番目のProをValに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
1個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の8番目のProをThrに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の38番目のGlnをArgに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の43番目のAlaをThrに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の44番目のProをValに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号72で表されるアミノ酸配列中の87番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列
また、本発明のヒト化抗体の具体例としては、以下の(1)〜(10)の抗体が挙げられる。
(1)配列番号71で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むヒト化抗体
(2)配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(3)配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(4)配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(5)配列番号82で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号72で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(6)配列番号71で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(7)配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(8)配列番号78で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(9)配列番号80で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
(10)配列番号82で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLの少なくとも一方を含むを含むヒト化抗体
これらの中でも、配列番号76で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むヒト化抗体、並びに配列番号82で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHおよび配列番号84で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むヒト化抗体が好ましい。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的および発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども本発明のヒト抗体に包含される。
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養上清中より該抗体を精製することができる。
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。
前記ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法を用い、ヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を産生蓄積させることにより作製できる。
上述のモノクローナル抗体または該抗体断片を構成するアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつ上述の抗体または該抗体断片と同様な活性を有するモノクローナル抗体または該抗体断片も、本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片に包含される。
欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning 2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)]などの周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
上記の抗体のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、次のことを示す。即ち、同一配列中の任意、かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味する。また、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じる場合もあり、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型いずれの場合もある。
天然型アミノ酸残基としては、例えば、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンおよびL−システインなどが挙げられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明において、抗体断片としては、例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv、diabody、dsFvおよびCDRを含むペプチドなどが挙げられる。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素であるパパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、ASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体をパパインで処理して得ることができる。
また、抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することもできる。
F(ab’)2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を蛋白質分解酵素であるペプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有する断片である。
本発明のF(ab’)2は、ASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体をペプシンで処理して得ることができる。また、下記のFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合させ、作製することもできる。
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のFab’は、本発明のASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するF(ab’)2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することもできる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のscFvは、本発明のASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。本発明のdiabodyは、本発明のASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基は既知の方法[Protein Engineering,7,697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvは、本発明のASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のASCT2の細胞外領域の立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法、またはtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明のモノクローナル抗体には、本発明のASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質、または抗体医薬などを化学的または遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
本発明における、抗体の誘導体は、本発明のASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片のH鎖またはL鎖のN末端側またはC末端側、抗体または該抗体断片中の適当な置換基または側鎖、さらにはモノクローナル抗体または該抗体断片中の糖鎖などに、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、免疫賦活剤、蛋白質または抗体医薬などを化学的手法[抗体工学入門,地人書館(1994)]により結合させることにより製造することができる。
また、本発明における、抗体の誘導体は、本発明のASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質または抗体医薬をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させる遺伝子工学的手法より製造することができる。
放射性同位元素としては、例えば、131I、125I、90Y、64Cu、199Tc、77Lu、または211Atなどが挙げられる。放射性同位元素は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性同位元素をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。
キレート剤としては、例えば、1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)などが挙げられる。
低分子の薬剤としては、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤、またはキナーゼ阻害剤などの抗癌剤[臨床腫瘍学,癌と化学療法社(1996)]、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、またはクレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤[炎症と抗炎症療法,医歯薬出版株式会社(1982)]などが挙げられる。
抗癌剤としては、例えば、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT−11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS−like tyrosine kinase 3(Flt3)阻害剤、vascular endothelial growth facotr receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤、イレッサ、タルセバなどのepidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール−トランスレチノイン酸、サリドマイド、レナリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、D−ペニシラミン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、アザチオプリン、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、ベキサロテン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、イファスファミド、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミン、メトトレキセート、マイタンシノイド、またはその誘導体などが挙げられる。
低分子の薬剤と抗体とを結合させる方法としては、例えば、グルタールアルデヒドを介して薬剤と抗体のアミノ基間を結合させる方法、または水溶性カルボジイミドを介して薬剤のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
高分子の薬剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、またはヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどが挙げられる。これらの高分子化合物を抗体または抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的または生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失または抗体産生の抑制、などの効果が期待される[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。
PEGと抗体を結合させる方法としては、例えば、PEG化修飾試薬と反応させる方法などが挙げられる[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。
PEG化修飾試薬としては、例えば、リジンのε−アミノ基への修飾剤(日本国特開昭61−178926号公報)、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基への修飾剤(日本国特開昭56−23587号公報)、またはアルギニンのグアニジノ基への修飾剤(日本国特開平2−117920号公報)などが挙げられる。
免疫賦活剤としては、イムノアジュバントとして知られている天然物でもよく、具体例としては、免疫を亢進する薬剤が、β(1→3)グルカン(レンチナン、シゾフィラン)、またはαガラクトシルセラミド(KRN7000)などが挙げられる。
蛋白質としては、例えば、NK細胞、マクロファージおよび好中球などの免疫担当細胞を活性化するサイトカインまたは増殖因子、並びに毒素蛋白質などが挙げられる。
サイトカインまたは増殖因子としては、例えば、インターフェロン(以下、INFと記す)−α、INF−β、INF−γ、インターロイキン(以下、ILと記す)−2、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21、IL−23、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、またはマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)などが挙げられる。
毒素蛋白質としては、例えば、リシン、ジフテリアトキシン、またはONTAKなどが挙げられ、毒性を調節するためにタンパク質に変異を導入したタンパク毒素も含まれる。
抗体医薬としては、例えば、抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原、腫瘍の病態形成に関わる抗原または免疫機能を調節する抗原、病変部位の血管新生に関与する抗原に対する抗体が挙げられる。
抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原としては、例えば、Cluster of differentiation(以下、CDと記載する)19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80(B7.1)、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86(B7.2)、human leukocyte antigen(HLA)−Class II、またはEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)などが挙げられる。
腫瘍の病態形成に関わる抗原または免疫機能を調節する抗体の抗原としては、例えば、CD4、CD40、CD40リガンド、B7ファミリー分子(CD80、CD86、CD274、B7−DC、B7−H2、B7−H3、またはB7−H4)、B7ファミリー分子のリガンド(CD28、CTLA−4、ICOS、PD−1、またはBTLA)、OX−40、OX−40リガンド、CD137、tumor necrosis factor(TNF)受容体ファミリー分子(DR4、DR5、TNFR1、またはTNFR2)、TNF−related apoptosis−inducing ligand receptor(TRAIL)ファミリー分子、TRAILファミリー分子の受容体ファミリー(TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3、またはTRAIL−R4)、receptor activator of nuclear factor kappa B ligand(RANK)、RANKリガンド、CD25、葉酸受容体4、サイトカイン[IL−1α、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−13、transforming growth factor(TGF)β、またはTNFαなど]、これらのサイトカインの受容体、ケモカイン(SLC、ELC、I−309、TARC、MDC、またはCTACKなど)、またはこれらのケモカインの受容体が挙げられる。
病変部位の血管新生を阻害する抗体の抗原としては、例えば、vascular endothelial growth factor(VEGF)、Angiopoietin、fibroblast growth factor(FGF)、EGF、platelet−derived growth factor(PDGF)、insulin−like growth factor(IGF)、erythropoietin(EPO)、TGFβ、IL−8、Ephilin、SDF−1、またはこれらの受容体などが挙げられる。
蛋白質または抗体医薬との融合抗体は、モノクローナル抗体または抗体断片をコードするcDNAに蛋白質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
上記抗体の誘導体を検出方法、定量方法、検出用試薬、定量用試薬または診断薬として使用する場合に、本発明のASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片に結合する薬剤としては、通常の免疫学的検出または測定法で用いられる標識体が挙げられる。
標識体としては、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびルシフェラーゼなどの酵素、アクリジニウムエステルおよびロフィンなどの発光物質並びにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光物質などが挙げられる。
また、本発明には、ASCT2によるアミノ酸の細胞内取り込みを阻害するモノクローナル抗体および該抗体断片が包含される。
本発明の抗体または該抗体断片の、ASCT2によるアミノ酸の細胞内取り込みを阻害する活性を評価する方法としては、例えば、ASCT2を発現している正常細胞や癌細胞に、抗体または該抗体断片を反応させ、グルタミン依存的な増殖が阻害されることを、生細胞数測定試薬など用いて評価する方法[J.Surgical Research,90,149(2000)]およびASCT2を発現している正常細胞や癌細胞に、抗体または該抗体断片を反応させ、放射性物質で標識したアラニンなどのアミノ酸の取り込みが阻害されることを、シンチレーションカウンターなどの機器を用いて評価する方法[J.Biol.Chem.,271,14883(1996)]などが挙げられる。
さらに、本発明には、補体結合細胞傷害(CDC)活性、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性などの細胞傷害活性を有するモノクローナル抗体および該抗体断片が包含される。
本発明の抗体または該抗体断片の抗原陽性培養細胞株に対するCDC活性、またはADCC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol.Immunother.,36,373(1993)]により評価することができる。
さらに、本発明には、アポトーシス誘導活性を有するモノクローナル抗体および該抗体断片が包含される。
また、本発明には、マウスASCT2に結合せず、かつヒトASCT2に結合するモノクローナル抗体および該抗体断片が包含される。
さらに、本発明には、ヒトASCT2の細胞外領域のうち、少なくともEL2領域に結合するモノクローナル抗体および該抗体断片が包含される。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列のうち154番目、159〜160番目、163〜171番目、173〜174番目、177番目、188番目、204〜205番目、207番目、210〜212番目、または214〜223番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸に結合するモノクローナル抗体および該抗体断片が含まれる。
本発明の抗体または該抗体断片の結合特異性を評価する方法としては、公知のエピトープ解析法を用いることができる。例えば、アミノ酸配列情報に従って、適当な箇所をマウスASCT2の配列に置換した、ヒト/マウスキメラASCT2に対する結合活性を測定することにより評価することができる。
また、本発明は、ASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片を有効成分として含有するASCT2が関与する疾患の治療薬に関する。
ASCT2が関与する疾患としては、ASCT2が発現している細胞が関与する疾患であればいかなるものでもよく、例えば、癌が挙げられる。
癌としては、例えば、血液癌、乳癌、子宮癌、大腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌などが挙げられる。これらの中でも、血液癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌および前立腺癌が好ましい。
血液癌としては、例えば、骨髄性白血病、リンパ性白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫などが挙げられる。
本発明の治療剤は、上述した本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を有効成分として含有する。
本発明の抗体または該抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、またはこれらの誘導体のみを含むものであってもよい。通常は、薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが好ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、経口投与、並びに口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与が挙げられる。これらの中でも静脈内投与が好ましい。
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏およびテープ剤などが挙げられる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、および体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
さらに、本発明は、ASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片を用いるASCT2の免疫学的検出または測定方法、ASCT2が発現する細胞の免疫学的検出または測定方法に関する。
また、本発明は、ASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片を有効成分として含有する、ASCT2の免疫学的検出用または測定用試薬およびASCT2が関与する疾患の診断薬に関する。
本発明においてASCT2の量を検出または測定する方法としては、任意の公知の方法が挙げられる。例えば、免疫学的検出および測定方法などが挙げられる。
免疫学的検出または測定方法とは、標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。免疫学的検出または測定方法としては、例えば、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、ウェスタンブロット法および物理化学的手法などが挙げられる。
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いてASCT2が発現した細胞を検出または測定することにより、上記のASCT2が関連する疾患を診断することができる。
ASCT2が発現している細胞の検出には、公知の免疫学的検出法を用いることができる。免疫学的検出法としては、例えば、免疫沈降法、蛍光細胞染色法、免疫組織染色法および免疫組織染色法などが、好ましく用いられる。また、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などの蛍光抗体染色法なども用いることができる。
本発明においてASCT2を検出または測定する対象となる生体試料としては、例えば、組織細胞、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液および培養液など、ASCT2が発現した細胞を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。
本発明のモノクローナル抗体若しくは該抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する診断薬は、目的の診断法に応じて、抗原抗体反応を行なうための試薬、該反応の検出用試薬を含んでもよい。
抗原抗体反応を行なうための試薬としては、例えば、緩衝剤および塩などが挙げられる。検出用試薬としては、例えば、該モノクローナル抗体および該抗体断片、これらの誘導体を認識する標識された二次抗体、並びに標識に対応した基質などの通常の免疫学的検出または測定法に用いられる試薬が挙げられる。
以下に、本発明の抗体の製造方法、疾患の治療方法、および疾患の診断方法について、具体的に説明する。
1.モノクローナル抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるASCT2またはASCT2を発現させた細胞は、ASCT2全長またはその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞などに導入することにより、得ることができる。
また、ASCT2を多量に発現している各種ヒト腫瘍培養細胞、ヒト組織などからASCT2を精製し、得ることが出来る。また、該腫瘍培養細胞、または該組織などをそのまま抗原として用いることもできる。
さらに、Fmoc法およびtBoc法などの化学合成法によりASCT2の部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
本発明で用いられるASCT2は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)やCurrent Protocols In Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987−1997)などに記載された方法などを用い、例えば以下の方法により、該ASCT2をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
まず、ASCT2をコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。
次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ASCT2を生産する形質転換体を得ることができる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製または染色体中への組込みが可能で、ASCT2をコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。
宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞、または動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、組換えベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ASCT2をコードする部分を含むDNA、および転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。
また、前記組換えベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
前記組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
また、前記ASCT2をコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするASCT2の生産率を向上させることができる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233―2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58−110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)]、pBluescript II SK(−)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP−400)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP−6798)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pTerm2(米国特許第4686191号明細書、米国特許第4939094号明細書、米国5160735号明細書)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J.Bacteriol.,172,2392(1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)およびpME18SFL3などが挙げられる。
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターおよびT7プロモーターなどの、大腸菌またはファージなどに由来するプロモーターが挙げられる。
また、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、またはlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなども用いることができる。
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL1−Blue、大腸菌XL2−Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49および大腸菌DH5αなどが挙げられる。
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)、Gene,17,107(1982)、Molecular&General Genetics,168,111(1979)]が挙げられる。
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107 [日本国特開平3−22979号公報;Cytotechnology,3,133(1990)]、pAS3−3(日本国特開平2−227075号公報)、pCDM8[Nature,329,840(1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochemistry,101,1307(1987)]、pAGE210、pME18SFL3、またはpKANTEX93(国際公開第97/10354号)などが挙げられる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、並びにモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーターおよびエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、例えば、ヒトの細胞であるNamalwa細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞およびHBT5637(日本国特開昭63−000299号公報)などが挙げられる。
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2−227075号公報)、またはリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)]などが挙げられる。
以上のようにして得られるASCT2をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物、または動物細胞などの由来の形質転換体を培地に培養し、培養物中に該ASCT2を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、ASCT2を製造することができる。該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖または糖鎖が付加されたASCT2を得ることができる。
誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドなどを培地に添加してもよい。また、例えば、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology,8,396(1959)]および199培地[Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,73,1(1950)]、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地並びにこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下などの条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
ASCT2をコードする遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、分泌生産または融合蛋白質発現などの方法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]を用いることができる。
ASCT2の生産方法としては、例えば、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、または宿主細胞外膜上に生産させる方法がある。使用する宿主細胞、または生産させるASCT2の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
ASCT2が宿主細胞内または宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.,264,17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]、日本国特開平05−336963号公報、または国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、ASCT2を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2−227075号公報)を利用してASCT2の生産量を上昇させることもできる。
得られたASCT2は、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。
ASCT2が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、またはダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の蛋白質の単離精製法を用い、精製標品を得ることができる。
単離精製法としては、例えば、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロースおよびフェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法並びに等電点電気泳動などの電気泳動法などが挙げられる。これらの手法は単独または組み合わせて用いてもよい。
ASCT2が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該ASCT2の不溶体を回収する。回収した該ASCT2の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該ASCT2を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
ASCT2またはその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該ASCT2またはその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
また、本発明において用いられるASCT2は、Fmoc法、またはtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル−ベガ社製、パーセプチブ社製、または島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラットまたはハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また、免疫原性が低く上記の動物で充分な抗体価の上昇が認められない場合には、ASCT2ノックアウトマウスを被免疫動物として用いることもできる。
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。
抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)またはKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
抗原の投与は、1回目の投与の後、1〜2週間おきに5〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
抗原の最終投与後3〜7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用いる。該株化細胞としては、例えば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology,18,1(1978)]、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)[European J.Immunology,6,511(1976)]、SP2/0−Ag14(SP−2)[Nature,276,269(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunology,123,1548(1979)]およびP3−X63−Ag8(X63)[Nature,256,495(1975)]などが挙げられる。
該骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2−メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、および8−アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimum Essential Medium(MEM)培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000)、MEM培地およびジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。
さらに1〜2分間毎にMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、融合用抗体産生細胞にHAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、およびアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、ASCT2を含む抗原に反応し、ASCT2を含まない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目はHT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。
10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムまたはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBS添加を添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、5%ダイゴGF21を添加したHybridoma SFM培地に懸濁し、3〜7日間培養する。得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA−カラムまたはプロテインG−カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法および280nmでの吸光度より算出する。
(6)モノクローナル抗体の選択
モノクローナル抗体の選択は以下に示す酵素免疫測定法によるバインディングアッセイ、およびアミノ酸の細胞内取り込み阻害アッセイにより行う。
(6−a)バインディングアッセイ
抗原としては、(1)で得られるASCT2をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞などに導入して得られた遺伝子導入細胞、リコンビナント蛋白質、またはヒト組織から得た精製ポリペプチド若しくは部分ペプチドなどを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSAまたはKLHなどのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
抗原を96ウェルプレートなどのプレートに分注し、固相化した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製モノクローナル抗体などの被験物質を分注し、反応させる。PBSまたはPBS−Tweenなどで、よく洗浄した後、第2抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質または放射線化合物などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。PBS−Tweenでよく洗浄した後、第2抗体の標識物質に応じた反応を行ない、免疫原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を選択する。
(6−b)アミノ酸の細胞内取り込み阻害アッセイ
評価細胞として、(1)で得られた、ASCT2をコードするcDNAを含む発現ベクターを動物細胞などに導入した遺伝子導入細胞、またはASCT2を発現している正常細胞若しくは癌細胞を用いる。
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片のASCT2によるアミノ酸の細胞内取り込みの阻害活性を評価する方法としては、例えば、ASCT2を発現している正常細胞や癌細胞にモノクローナル抗体または該抗体断片を反応させ、グルタミン依存的な増殖が阻害されることを、生細胞数測定試薬などを用いて評価する方法[J.Surgical Research,90,149(2000)]、およびASCT2を発現している正常細胞や癌細胞にモノクローナル抗体または該抗体断片を反応させ、放射性物質で標識したアラニンなどのアミノ酸の取り込みが阻害されることを、シンチレーションカウンターなどの機器を用いて評価する方法[J.Biol.Chem.,271,14883(1996)]などが挙げられる。
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体の作製方法を示す。
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCHおよびκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol.,3,133(1990)]、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)〕、pHSG274[Gene,27,223(1984)]、pKCR[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78,1527(1981)]、pSG1bd2−4[Cytotechnol.,4,173(1990)]およびpSE1UK1Sed1−3[Cytotechnol.,13,79(1993)]などが挙げられる。
動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターとエンハンサーとしては、例えば、SV40の初期プロモーター[J.Biochem.,101,1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem.Biophys.Res.Commun.,149,960(1987)〕および免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell,41,479(1985)]とエンハンサー[Cell,33,717(1983)]などが挙げられる。
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖およびL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol.Methods,167,271(1994)]を用いるが、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。
タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターとしては、例えば、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)およびpEE18[Hybridoma,17,559(1998)]などが挙げられる。
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVH及びVLをコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージまたはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。
前記ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VHまたはVLをコードするcDNAを有する組換えファージまたは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。
組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびラビットなどが挙げられるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol.,154,3(1987)]、またはRNA easy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]、またはOligo−dT30<Super> mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation Kit(インビトロジェン社製)、またはQuickPrep mRNA Purification Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
cDNAの合成およびcDNAライブラリーの作製には、公知の方法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1,John Wiley&Sons(1987−1997)]、またはSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)若しくはZAP−cDNA Synthesis Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。
例えば、ZAP Express[Strategies,5,58(1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research,17,9494(1989)]、λZAPII(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach,I,49(1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λExCell、pT7T3−18U(ファルマシア社製)、pcD2[Mol.Cell.Biol.,3,280(1983)]、またはpUC18[Gene,33,103(1985)]などを用いる。
ファージまたはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリーを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。
例えば、XL1−Blue MRF’[Strategies,5,81(1992)]、C600[Genetics,39,440(1954)]、Y1088、Y1090[Science,222,778(1983)]、NM522[J.Mol.Biol.,166,1(1983)]、K802[J.Mol.Biol.,16,118(1966)]、またはJM105[Gene,38,275(1985)]などを用いる。
cDNAライブラリーからの非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープ若しくは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、またはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]などを用いる。
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAまたはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction法[以下、PCR法と表記する、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1,John Wiley&Sons(1987−1997)]を行うことよりVHまたはVLをコードするcDNAを調製することもできる。
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。
塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)]などの反応を行った後、A.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定できる。更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。
また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することによって見出すことができる。
また、得られたVHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS−PROTまたはPIR−Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]などの相同性検索を行い、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCHまたはCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVHおよびVLのcDNAを作製する。作製されたVHおよびVLのcDNAを、(1)で得られるヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
また、非ヒト抗体VHまたはVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
(4)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
非ヒト抗体のVHまたはVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVHまたはVLのフレームワーク領域(以下、FRと表記する)のアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]などを用いる。
抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
次に、選択したヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率及び合成可能なDNAの長さから、好ましくはH鎖、L鎖とも6本の合成DNAを設計する。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト化抗体発現用ベクターに容易にヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをクローニングすることができる。
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、非ヒト抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY,9,266(1991)]。
ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、および抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J.Mol.Biol.,112,535(1977)]またはコンピューターモデリング[Protein Engineering,7,1501(1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築および解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有する改変ヒト化抗体を取得できる。
ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
例えば、(4)および(5)で得られるヒト化抗体のVHまたはVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)および(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、またはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、COS−7細胞[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CRL1651]を用いる[Methods in Nucleic Acids Res.,CRC press,283(1991)]。
COS−7細胞への発現ベクターの導入には、例えば、DEAE−デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res.,CRC press(1991)]、またはリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)]などを用いる。
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性は、酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル,講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の所得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)および(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2−257891号公報、Cytotechnology,3,133(1990)]などを用いる。
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。
例えば、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)]、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics,12,55(1986)]、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC番号:CRL1662)などを用いる。
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素などの蛋白質若しくはN−グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などの蛋白質、または細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質などの活性が低下または欠失した宿主細胞、例えばα1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)などを用いることもできる。
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2−257891号公報)。
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)、Hybridoma−SFM培地(インビトロジェン社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、形質転換株は、DHFR増幅系(日本国特開平2−257891号公報)などを利用して遺伝子組換え抗体の発現量を上昇させることができる。
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA−カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]。また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過などの蛋白質の精製で用いられる方法を組み合わすこともできる。
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖または抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature,227,680(1970)]、またはウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
3.精製モノクローナル抗体または該抗体断片の活性評価
精製した本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
ASCT2発現細胞株に対する結合活性は、前述の1.(6a)記載のバインディングアッセイを用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol.Immunother.,36,373(1993)]またはBiacoreシステムなどを用いた表面プラズモン共鳴法などを用いて測定できる。
ASCT2によるアミノ酸の細胞内取り込みを阻害する活性は、前述の1−(6b)記載の方法などによって測定する。
また、抗原陽性培養細胞株に対するCDC活性、またはADCC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol.Immunother.,36,373(1993)]により測定する。
4.本発明の抗ASCT2モノクローナル抗体または該抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明のASCT2の細胞外領域の天然型立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体または該抗体断片は、ASCT2が関与する疾患の治療に用いることができる。
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、またはこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
投与経路としては、経口投与、並びに口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与が挙げられる。
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏およびテープ剤などが挙げられる。
経口投与に適当な製剤は、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、または顆粒剤などである。
乳剤またはシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトールおよび果糖などの糖類、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油および大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、並びにストロベリーフレーバーおよびペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖およびマンニトールなどの賦形剤、デンプンおよびアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤並びにグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、座剤および噴霧剤などが挙げられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、またはその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて製造する。
噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。
担体としては、例えば、乳糖またはグリセリンなどを用いる。また、エアロゾルまたはドライパウダーとして製造することもできる。
さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
5.本発明の抗ASCT2モノクローナル抗体または該抗体断片を用いた疾患の診断方法
本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を用いて、ASCT2またはASCT2が発現した細胞を検出または測定することにより、ASCT2が関連する疾患を診断することができる。
ASCT2が関連する疾患の一つである癌の診断は、例えば、以下のようにASCT2の検出または測定して行うことができる。
まず、複数の健常者の生体から採取した生体試料について、本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片、またはこれらの誘導体を用い、下記の免疫学的手法を用いて、ASCT2の検出または測定を行い、健常者の生体試料中のASCT2の存在量を調べる。
次に、被験者の生体試料中についても同様にASCT2の存在量を調べ、その存在量を健常者の存在量と比較する。被験者の該ポリペプチドの存在量が健常者と比較して増加している場合には、癌が陽性であると診断される。
免疫学的手法とは、標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。例えば、放射性物質標識免疫抗体法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、ウェスタンブロット法および物理化学的手法などが挙げられる。
放射性物質標識免疫抗体法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させる。さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する。
酵素免疫測定法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させる。さらに標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する。例えばサンドイッチELISA法などを用いる。
酵素免疫測定法で用いる標識体としては、公知[酵素免疫測定法,医学書院(1987)]の酵素標識を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識およびビオチン標識などが挙げられる。
サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、検出または測定対象である抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。
該ELISA法では、検出または測定したい抗原を認識する抗体または抗体断片であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、第1の抗体または抗体断片を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させる。次に第2の抗体または抗体断片をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素、またはビオチンなどで標識しておく。
上記の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水、または眼液などを反応させる。その後、標識したモノクローナル抗体または抗体断片を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプル中の抗原濃度を算出する。
サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、Fab、Fab’、またはF(ab)2などの抗体フラグメントを用いてもよい。
サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体または抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体または抗体断片との組み合わせでもよい。
蛍光免疫測定法は、文献[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、単クローン抗体実験マニュアル,講談社サイエンティフィック(1987)]などに記載された方法で測定する。
蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、公知[蛍光抗体法,ソフトサイエンス社(1983)]の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITC、またはRITCなどを用いる。
発光免疫測定法は文献[生物発光と化学発光 臨床検査42,廣川書店(1998)]などに記載された方法で測定する。発光免疫測定法で用いる標識体としては、公知の発光体標識が挙げられ、アクリジニウムエステル、またはロフィンなどを用いる。
ウェスタンブロット法は、次のように行う。抗原または抗原を発現した細胞などをSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)−PAGE[Antibodies−A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]で分画する。その後、該ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜またはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体または抗体断片を反応させる。さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識、またはビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体または結合断片を反応させる。その後、該標識を可視化することによって測定する。
一例を以下に示す。配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現している細胞や組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として0.1〜30μgをSDS−PAGE法により泳動する。泳動されたタンパク質をPVDF膜にトランスファーし1〜10%BSAを含むPBS(以下、BSA−PBSと表記する)に室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。
ここで本発明のモノクローナル抗体を反応させ、0.05〜0.1%のTween−20を含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。Tween−PBSで洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャム社製)などを用いてモノクローナル抗体が結合したバンドを検出することにより、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する。
ウェスタンブロッティングでの検出に用いられる抗体としては、天然型の立体構造を保持していないポリペプチドに結合できる抗体が用いられる。
物理化学的手法は、例えば、抗原であるASCT2と本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。
この他に物理化学的手法としては、例えば、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法およびラテックス免疫比濁法[臨床検査法提要,金原出版(1998)]などが挙げられる。
ラテックス免疫比濁法は、抗体または抗原を感作させた粒径0.1〜1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原または抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度または積分球濁度として検出することにより被験サンプル中の抗原濃度などを測定する。
一方、ASCT2が発現している細胞の検出または測定は、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、好ましくは免疫沈降法、免疫細胞染色法、免疫組織染色法または蛍光抗体染色法などを用いる。
免疫沈降法は、ASCT2を発現した細胞などを本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片と反応させた後、プロテインG−セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる。または以下のような方法によっても行なうことができる。
ELISA用96ウェルプレートに上述した本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片を固相化した後、BSA−PBSによりブロッキングする。抗体が、例えばハイブリドーマ培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリン、抗ラットイムノグロブリン、プロテイン−Aまたはプロテイン−GなどをあらかじめELISA用96ウェルプレートに固相化し、BSA−PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ培養上清を分注して結合させる。
次に、BSA−PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、ASCT2を発現している細胞や組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS−PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウェスタンブロッティングにより検出する。
免疫細胞染色法または免疫組織染色法は、抗原を発現した細胞または組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理した後、本発明のモノクローナル抗体と反応させ、さらにFITCなどの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体またはその結合断片と反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡する方法である。
また、蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フロ−サイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice,Third edition,Academic Press(1996)、単クローン抗体実験マニュアル,講談社サイエンティフィック(1987)]により検出を行うことができる。
特に、ASCT2の細胞外領域に結合する、本発明のモノクローナル抗体または該抗体断片は、蛍光抗体染色法により天然型の立体構造を保持して発現している細胞の検出ができる。
また、蛍光抗体染色法のうち、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いた場合には、形成された抗体−抗原複合体と、抗体−抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体または抗原とを分離することなく、抗原量または抗体量を測定できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
各種細胞株、ゼノグラフト、および正常組織におけるASCT2遺伝子の発現解析
(1)SCIDマウスに皮下移植したゼノグラフトの作製と腫瘍塊の調製
以下に示した方法により、ヒト癌細胞株をSCIDマウスに皮下移植し、ゼノグラフトを作製した。得られた該ゼノグラフトより腫瘍塊を摘出し、調製した。
ヒト膵臓癌細胞株[ASPC−1(ATCC番号:CRL−1682)、CaPan−1(ATCC番号:HTB−79)、PANC−1(ATCC番号:CRL−1469)]、ヒト大腸癌細胞株[Colo205(理研セルバンク番号:RCB2127)、HT−29(ATCC番号:HTB−38)、LS180(ATCC番号:CCL−187)、SW1116(ATCC番号:CCL−233)、WiDr(ATCC番号:CCL−218)]由来の細胞を約1×108個/mLの濃度となるようにPBSに懸濁し、それぞれの細胞懸濁液100μLをFox CHASE C.B−17/Icr−scidJclマウス(雄、5週齢、日本クレア社製)4匹ずつの腹側部皮下に移植した。
各細胞は10%の非働化牛胎児血清(インビトロジェン社製)を含むRPMI1640培地(インビトロジェン社製)に懸濁し継代培養したものを用い、培養は37℃にてCO2インキュベーター内で行った。得られたゼノグラフトは、それぞれxASPC1、xCaPan1、xPANC1、xColo205、xHT29、xLS180、xSW1116、xWiDrとした。
腫瘍移植後、経日的にノギスによる腫瘍径の測定を行い、長径が1cm程度に到達した個体を順次麻酔下で脱血死せしめた後に、腫瘍塊の摘出を行った。各腫瘍塊は4つに切り分けた後、液体窒素を用いて急速凍結し、−80℃フリーザー内で保存した。
(2)全RNAの抽出とポリA(+)RNAの精製
細胞株および(1)で作製したゼノグラフトの腫瘍塊より、以下に示した方法により全RNAを抽出し、ポリA(+)RNAを精製した。
細胞株としては、血液癌由来細胞株{KG−1(ATCC番号:CCL−246)、THP−1(ATCC番号:TIB−202)、HL−60(ATCC番号:CCL−240)[以上、急性骨髄性白血病(AML)由来細胞株]、CCRF−CEM(ATCC番号:CCL−119)、CCRF−SB(ATCC番号:CCL−120)、Jurkat(ATCC番号:TIB−152)、HSB−2(ATCC番号:CCL−120)、HPB−ALL(理研セルバンク番号:RCB1935)[以上、急性リンパ性白血病(ALL)由来細胞株]、K−562(ATCC番号:CCL−243)、KU812(ATCC番号:CRL−2099)[以上、慢性骨髄性白血病(CML)由来細胞株]、KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)、ARH−77(ATCC番号:CRL−1621)、IM−9(ATCC番号:CCL−159)、RPMI8226(HSRRB番号:JCRB0034)、U266B1(ATCC番号:TIB−196)、MC/CAR(ATCC番号:CRL−8083)[以上、多発性骨髄腫(MM)由来細胞株]、HS−Sultan(ATCC番号:CRL−1484)、Daudi(ATCC番号:CCL−213)、Raji(ATCC番号:CCL−86)、Ramos(ATCC番号:CRL−1596)[以上、バーキット型リンパ腫(BL)由来細胞株]、U−937(ATCC番号:CRL−1593.2)、ML−1(DSMZ番号;ACC464)[以上、組織球性リンパ腫(HS)由来細胞株]}、肺癌由来細胞株[PC−14(理研セルバンク番号:RCB0446)、PC−7(免疫生物研究所社 製品番号:37011)、PC−9(免疫生物研究所社 製品番号:37012)、PC−1(免疫生物研究所社 製品番号:37008)(以上、非小細胞肺癌)、Lu−139(理研セルバンク番号:RCB0469)、NCI−H69(ATCC番号:HTB−119)、RERF−LC−MA(HSRRB番号:JCRB0812)、SBC−5(HSRRB番号:JCRB0819)(以上、小細胞肺癌)]、胃癌由来細胞株[Kato III(理研セルバンク番号:RCB2088)、MKN−74(HSRRB番号:JCRB0255)、NUGC−4(理研セルバンク番号:RCB1939)、AZ−521(HSRRB番号:JCRB0061)]、大腸癌由来細胞株{Colo205(理研セルバンク番号:RCB2127)、HT−29(ATCC番号:HTB−38)、LS174T[European Collection of Cell Cultures(ECACC)番号:87060401]、LS180(ATCC番号:CCL187)、SW1116(ATCC番号:CCL−233)}、膵臓癌由来細胞株[ASPC−1(ATCC番号:CRL−1682)、BXPC−3(ATCC番号:CRL−1687)、CaPan−1(ATCC番号:HTB−79)]、悪性黒色腫(メラノーマ)由来細胞株[G−361(ATCC番号:CRL−1424)、HMV−1(理研セルバンク番号:RCB0004)、SK−MEL−28(ATCC番号:HTB−72)]、正常肺由来線維芽細胞[MRC−5(ATCC番号:CCL−171)]を用いた。
細胞株からの全RNAの抽出は以下のようにして行った。接着系細胞株の場合には、アスピレーターを用いて培地を除き、適当量のPBSで洗浄した後、シリコン製のヘラを使って細胞を回収した。これに培養プレート10cm2分の細胞あたり1mLのTRIzol Reagent(インビトロジェン社製)を添加し、十分に懸濁して細胞を破砕した。さらに、得られた細胞破砕液を18G注射針に10回通し、ゲノムDNAを寸断した。
浮遊系細胞株の場合には、冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF15R、ローター:T11A21)を用いて1500rpmで5分間遠心分離し、デカンテーションにより培地を除いた後、細胞をPBSに懸濁し、再度、冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF15R、ローター:T11A21)を用いて1500rpmで5分間遠心分離して細胞を回収した。
得られた細胞に、1×107個の細胞あたり1mLのTRIzol Reagent(インビトロジェン社製)を加え、十分に懸濁して細胞を破砕した。さらに、得られた細胞破砕液を18G注射針に10回通し、ゲノムDNAを寸断した。
(1)で調製したゼノグラフトの腫瘍塊の破砕および全RNA抽出は以下のようにして行った。凍結した腫瘍塊をTRIzol Reagent(インビトロジェン社製)10mLに投入し、直ちにポリトロン ホモジナイザー(キネマチカ社製、PT2100)を用いて30000rpmで15秒間破砕した。
得られた細胞破砕液を、冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF15R、ローター:T11A21)を用いて11000rpmで10分間遠心分離し、沈殿を取らないように注意しながら、上清を新しいチューブに移した。得られた上清にクロロホルム2mLを加え、15秒間激しく振とうし、室温で2〜3分間静置後、冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF7D2、ローター:RT3S3)にて4℃、3000rpmで90分間遠心分離した。
上清を新しいチューブに移し、イソプロパノール5mLを加え、緩やかに混和し、室温で10分間静置後、冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF15R、ローター:T11A21)にて11000rpmで10分間遠心分離し、上清を除いた後、75%エタノール水溶液10mLを加えて混和し、さらに冷却遠心機(日立工機社製、Himac CF15R、ローター:T11A21)にて11000rpmで5分間遠心し、沈殿を得た。
得られた沈殿を適当量のRNase−free waterにて溶解し、全RNAサンプルとした。全RNAサンプルは吸光光度計にて濃度測定を行い、A260/A280の比が1.7以上になっていることを確認した。A260/A280の比が1.7未満の場合には、さらにRNeasy kit(キアゲン社製)を用いて精製を行った。
得られた全RNAサンプル400μgを、MicroPoly(A)Pure Kit(アンビオン社製)を用い、添付説明書に従い、ポリA(+)RNAを精製した。
(3)cDNAの合成
(2)で得られたポリA(+)RNAまたは市販の組織由来のmRNAより、SuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(インビトロジェン社製)を用い、cDNAを合成した。
ヒトの正常組織(肝臓、肺、全脳、心臓、胃、脾臓、脊髄、小腸、骨格筋、子宮、気道、甲状腺、胸腺、精巣、唾液腺、前立腺、胎盤、リンパ節、膵臓、大腸、血液、または腎臓)由来のmRNAは市販mRNA(クロンテック社製)を使用した。
またヒトの臨床癌組織(肺癌、胃癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、子宮癌、乳癌、または食道癌)由来のmRNAも市販RNA(バイオチェイン社製)を使用した。
(2)で得られたポリA(+)RNAまたは市販の組織由来のmRNA(1μg)に対してdNTP混合溶液(10mmol/L、1μL)、およびOligo(dT)12−18(0.5μg/μL、1μL)を添加し、DEPC水を加え全量を7μLにした。
65℃で5分間加熱変性後、氷上で急冷し、1分間以上静置した後、10×RT Buffer(2μL)、塩化マグネシウム(25mmol/L、4μL)、DTT(0.1mol/L、2μL)、およびRNaseOUT Recombinant Ribonuclease Inhibitor(1μL)を添加し、42℃で2分間保温した。
さらにSuperscriptII RT(1μL)を加え、42℃、50分間の逆転写反応を行い、続いて70℃、15分間加熱して酵素を失活させた。この後、反応液にE.coli RNase H(1μL)を加え、37℃、20分間反応した後、DEPC水を加え全量を1mLとした。
以下、リアルタイムPCRの反応系には、これをさらに5倍希釈した溶液10μLを用いた。
(4)リアルタイムPCR法(定量PCR法、Q−PCR法)による細胞株、ゼノグラフトの腫瘍塊および正常組織におけるASCT2遺伝子のmRNA発現量の定量
(3)で得られたcDNA10μL[ポリA(+)RNA量として2ngに相当]に、配列番号1より設計した配列番号3で示される配列からなるASCT2遺伝子のcDNA検出用フォワードプライマー(Fw#1)および配列番号4で示される配列からなるASCT2遺伝子のcDNA検出用リバースプライマー(Rv#1)(いずれもプロリゴ社製)をそれぞれ終濃度が300nmol/Lとなるように加え、さらに10×R−PCR buffer(Mg2+ free)(タカラバイオ社製、2μL)、Mg2+ solution(250mmol/L、0.2μL)、dNTP混合物(10mmol/L、0.6μL)、Ex Taq R−PCR(以上、タカラバイオ社製、0.2μL)、およびSYBR Green I(ベーエムエー社製、製品原液を2500倍希釈したもの、1μL)を添加し、DEPC水を加え全量を20μLとした。
PCR反応は、最初に94℃で5分間かけてTaq DNAポリメラーゼを活性化および鋳型DNAを変性し、この後、94℃で30秒間の変性工程、65℃で30秒間のアニーリング工程、次いで72℃で30秒間のDNA伸長反応工程の3工程を1サイクルとして、これを計45サイクル行うことにより実施した。
増幅産物にインターカレートしたSYBR Green Iが発する蛍光強度をPRISM7700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて測定し、上記PRISM7700付属のソフトウエアであるSequence detector ver.1.7aによりデータ解析を行った。
リアルタイムPCR反応によって得られたシグナルが目的の増幅断片であるかどうかは、反応終了後の反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、主な増幅断片のサイズによって判断した。なお、上記リアルタイムPCR反応は、96ウェルのPCRプレートを用いて行った。
PCRプレートの各ウェルの検体には、上記cDNAを含む反応液の他、陰性コントロール(滅菌水)、およびQiagen Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)で精製したASCT2の部分断片をコードするプラスミドHCHON2001712[Homo sapiens cDNA FLJ43232 fis、日本DNAデータバンク(DDBJ)アクセッション番号:AK125222]を用いて作製した検量線作製用標品(1×10〜1×106コピー/ウェル)を配置して行った。
ASCT2の標準配列であるNM_005628(配列番号1、GenBankアクセッション番号:NM_005628)と検量線作製用の鋳型として用いたプラスミドHCHON2001712の全長配列のアライメントを図1(A)〜(D)に示す。NM_005628とHCHON2001712の全長配列の間には相違箇所があるが、ASCT2の発現量測定に用いた配列番号3で示される配列からなるcDNA検出用フォワードプライマー(Fw#1)および配列番号4で示される配列からなるcDNA検出用リバースプライマー(Rv#1)は、いずれもNM_005628とHCHON2001712の配列が完全に一致する部分を用いて設計した。
このようにして得られた細胞株、ゼノグラフトの腫瘍塊および正常組織におけるASCT2遺伝子のmRNA発現量の結果を図2(A)〜(B)に示す。mRNA発現量は、ポリA(+)RNA2ngあたりのASCT2発現分子数、および正常組織で最も発現が高かった気道でのASCT2遺伝子発現量を1とした場合の相対比で示す。
図2(A)〜(B)に示すように、血液癌由来細胞株のKG−1(AML由来細胞株)、HSB−2(ALL由来細胞株)、K−562(CML由来細胞株)、KMS−11、ARH−77(以上、MM由来細胞株)で正常気道の10倍以上、Jurkat(ALL由来細胞株)、IM−9、RPMI8226(以上、MM由来細胞株)、HS−Sultan(BL由来細胞株)、ML−1(HL由来細胞株)で5倍以上、THP−1(AML由来細胞株)、CCRF−CEM(ALL由来細胞株)、KU812(CML由来細胞株)、Raji(BL由来細胞株)、U−937(HS由来細胞株)並びに胃癌組織、食道癌組織で2倍以上の発現亢進が認められた。
[実施例2]
ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株の造成
以下に示した方法により、配列番号5記載の遺伝子配列および配列番号6記載のアミノ酸配列を含むプラスミドpCR4−SLC1A5−myc/Hisを取得し、このプラスミドを用いてヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株を取得した。
配列番号7から10の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)に、10×Ex Taq buffer(10μL)、dNTP混合液(2mmol/L、10μL)、およびEx Taq polymerase(以上、タカラバイオ社製、1μL)を添加し、さらに滅菌水を加え全量100μLとした。
実施例1(C)記載の方法と同様にして、96℃で2分間の反応後、96℃で1分間、60℃で1分間、および72℃で1分間の3工程を1サイクルとして、計35サイクル行うPCR反応を行い、ヒトASCT2遺伝子の翻訳開始点の塩基を1とした時の1位から370位の遺伝子配列(以下、N−SLC1A5と表記する)を合成した。
反応産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約0.4kbの増幅断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社製)を用いてpCR4 TOPOベクターにクローニングした(以下、pCR4−N−SLC1A5と表記する)。
次に、ヒトASCT2遺伝子を含むプラスミドHCHON2001712(DDBJアクセッション番号:AK125222)10ngを鋳型として、配列番号11および配列番号12記載の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)、10×Ex Taq buffer(10μL)、dNTP混合液(2mmol/L、10μL)、およびEx Taq polymerase(以上、タカラバイオ社製、1μL)を添加し、さらに滅菌水を加え全量100μLとした。
上記と同様の反応条件でPCR反応を行い、ヒトASCT2遺伝子の365位から1623位の遺伝子配列のC末端にmyc/Hisが付加された融合蛋白質をコードする遺伝子配列(以下、C−SLC1A5−myc/Hisと表記する)を合成した。反応産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約1.2kbの増幅断片をQIAquickGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。
得られた抽出断片を鋳型として、配列番号11および配列番号13記載の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)、10×Ex Taq buffer(10μL)、dNTP混合液(2mmol/L、10μL)、およびEx Taq polymerase(以上、タカラバイオ社製、1μL)を添加し、さらに滅菌水を加え全量100μLとした。上記と同様の反応条件でPCR反応を行い、C−SLC1A5−Myc/HisのC末端にNotIおよびSpeI制限酵素サイトを付加した。
得られた反応産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約1.2kbの増幅断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出し、TOPO TA cloning kit(インビトロジェン社製)を用いてpCR4 TOPOベクターにクローニングした(以下、pCR4−C−SLC1A5−myc/Hisと表記する)。得られた遺伝子配列は、配列番号1記載の配列と翻訳開始点の塩基を1とした時の1455番目のTがCに置換していたが、アミノ酸変異は認められなかった。
得られたpCR4−N−SLC1A5をBssHII(タカラバイオ社製)とSpeI(タカラバイオ社製)で消化し、アガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約4.4kbの遺伝子断片をQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。
同様に、得られたpCR4−C−SLC1A5−myc/HisをBssHII(タカラバイオ社製)とSpeI(タカラバイオ社製)で消化し、約1.4kbの遺伝子断片を抽出した。それぞれの抽出断片をLigation high(東洋紡績社製)を用いて連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。
得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機PI−50(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、配列番号5記載の遺伝子配列および配列番号6記載のアミノ酸配列を含むプラスミドpCR4−SLC1A5−myc/Hisを取得した。
得られたpCR4−SLC1A5−myc/HisをEcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化し、上記と同様に遺伝子断片を抽出し、ヒトASCT2遺伝子のC末端にmyc/Hisが付加された融合蛋白質をコードする遺伝子配列(以下、SLC1A5−myc/Hisと表記する)を含む断片を取得した。
得られたSLC1A5−myc/Hisを含む断片を、予めEcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化したpKANTEX93ベクター(WO97/10354)に連結し、上記と同様にして、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、形質転換体を得た後、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現プラスミドpKANTEX−SLC1A5−myc/Hisを取得した。
pKANTEX−SLC1A5−myc/Hisは、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]により、以下のようにしてCHO/DG44細胞[Somatic Cell and Molecular Genetics,12,555(1986)]へ導入した。
細胞は、10%FBS(ライフテクノロジーズ社製)およびゲンタマイシン(ナカライテスク社製、50μg/mL)を添加したIMDM培地(インビトロジェン社製)(以下、A3倍地と表記する)に、1×HT supplement(インビトロジェン社製)を添加した培地で継代したものを用いた。
CHO/DG44細胞を塩化カリウム(137nmol/L)、塩化ナトリウム(2.7nmol/L)、リン酸一水素二ナトリウム(8.1mmol/L)、リン酸二水素一ナトリウム(1.5nmol/L)および塩化マグネシウム(4mmol/L)を含む緩衝液(以下、K−PBSと表記する)に懸濁して8×106個/mLとし、得られた細胞懸濁液(200μL、細胞数として1.6×106個)を発現プラスミドpKANTEX−SLC1A5−myc/His(10μg)と混和した。
得られた混和液をキュベット(電極間距離2mm)に移し、GenePulserII(バイオラッド社製)を用いてパルス電圧0.35kV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。キュベットを氷上で静置後、キュベット中の細胞懸濁液を、A3培地を含む細胞培養用容器に懸濁し、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養した。
4日間培養後、G418(ナカライテスク社製、0.5mg/mL)を添加したA3培地に培地交換し、培養を続けた。途中培地交換と継代を行い、遺伝子導入より約2週間後に、G418に耐性を有する形質転換細胞株を取得した。
得られたG418に耐性形質転換細胞を10mLあたり5個の細胞数となるようにG418(ナカライテスク社製、0.5mg/mL)を添加したA3培地で希釈し、希釈した細胞懸濁液を96ウェルプレートに100μLずつ分注し、段階的にメソトレキセート濃度を上昇させて処理することにより、ASCT2−myc/Hisを高発現するクローンを選択し、ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株を取得した。
得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞(1×105〜5×105個)を、70%エタノール−PBS(1mL)に懸濁して氷温中で30分間固定した。96ウェルU字プレートに1×106〜5×106細胞/ウェルとなるように分注し、1500rpm、5分間遠心分離した後、上清を除いて1%BSA−PBSで氷温中30分間ブロッキングした。
遠心分離により上清を除いて、1次抗体として抗myc抗体PL14(医学生物学研究所製)、抗His抗体(キアゲン社製)およびマウスIgG1アイソタイプコントロール(ダコ社製)を、最終濃度がそれぞれ1.0、0.1および0.1μg/mLとなるように1%BSA−PBSで希釈し、100μL/ウェルずつ分注し、氷温中で60分間反応させた。
1%BSA−PBSで1回洗浄し、2次抗体として1%BSA−PBSで50倍希釈したFITC標識抗マウスイムノグロブリンG(H+L)(ダコ社製)を100μL/ウェル加えて氷温中、遮光下で30分間反応させた。
再び1%BSA−PBSで1回洗浄し、PBSに懸濁してフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)で蛍光強度を測定した。結果を図3に示す。
図3に示すように、抗myc抗体および抗His抗体に高い反応性が検出されたことから、目的のヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株が造成されていることが確認された。
[実施例3]
ASCT2のN末部分ペプチドに対するモノクローナル抗体の作製
(1)免疫原の調製
キャリア蛋白質との結合の為、配列番号14記載のヒトASCT2のN末部分配列(N末端から数えて2番目から16番目までのアミノ酸)のC末端にCysを付加したN末部分ペプチドを、自動合成機(PSSM−8、島津製作所社製)を用いて合成した。
免疫原性を高める目的で以下の方法でKLH(和光純薬社製)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち、KLHをPBSに溶解して10mg/mLに調製し、1/10容量のN−(m−マレイミドベンゾイルオキシ)スクシンイミド(MBS、ナカライテスク社製、25mg/mL)を滴下した後30分間撹拌し、反応させた。
反応液を予めPBSで平衡化したゲルろ過カラム(セファデックスG−25カラム、ジーイーヘルスケア社製)に通塔し、未反応のMBSを除き、KLH−MBSを得た。Cysを付加したヒトASCT2のN末部分ペプチド(1mg)をリン酸ナトリウムバッファー(0.1mol/L、pH7.0)に溶解し、KLH−MBS(2.5mg)を添加し、室温で3時間、攪拌反応させた。反応後、PBSで透析し、免疫原としてのヒトASCT2のN末ペプチド−KLHコンジュゲートを得た。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
(1)で得られたヒトASCT2のN末ペプチド−KLHコンジュゲート(100μg)をアルミニウムゲル(2mg)および百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製、1×109細胞)とともに4週令雌SDラット(日本エスエルシー社製)に投与し、更に初回投与2週間後よりコンジュゲート(100μg)を1週間に1回、計4回投与した。尾静脈より採血し、ヒトASCT2部分ペプチドに対する反応性を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、1200rpm、5分間遠心分離(CR5B、日立製作所社製)した。得られた沈殿画分にトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)を添加し、1〜2分間処理することにより赤血球を除去した。沈殿画分として得られた細胞画分をMEM培地で3回洗浄し、抗体産生細胞を調製した。
(3)酵素免疫測定法
アッセイ用の抗原として、配列番号14記載のCysを付加したヒトASCT2のN末部分ペプチドを以下の方法でサイログロブリン(以下、THYと表記する)とのコンジュゲートを作製した。コンジュゲートの作製方法は(1)と同様であるが、MBSの代わりにスクシンイミジル 4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC、シグマ社)を用いた。
96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、得られたヒトASCT2のN末ペプチド−THYコンジュゲート(10μg/mL、50μL/ウェル)を分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。未吸着のコンジュゲートを洗浄後、1%BSA−PBS(100μL/ウェル)を加え、室温1時間反応し、残っている活性基をブロックした。未反応のBSA−PBSを洗浄後、1次抗体として抗血清または培養上清などの被験物質を50μL/ウェル分注し2時間反応させた。0.05%tween−PBSで洗浄後、2次抗体として希釈したペルオキシダーゼ標識抗ラットイムノグロブリン(ダコ社、50μL/ウェル)を加え、室温で1時間反応させた。
0.05%tween−PBSで洗浄後、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム(ABTS)基質液[ABTS(和光純薬社製、1mmol/L)、クエン酸バッファー(0.1mol/L、pH4.2)、過酸化水素(0.1%)]を加え発色させた。サンプル波長415nm、リファレンス波長490nmにおける吸光度(OD415−OD490)をプレートリーダー(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用いて測定した。
(4)マウス骨髄腫細胞の調製
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3−U1[P3X63Ag8U.1、ATCC番号:CRL−1597、European Journal of Immunology,6,511(1976)]を、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)にグルタミン(1.5mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10−5mol/L)、ゲンタマイシン(10μg/ml)およびFBS(10%)を添加した培地(以下、正常培地と表記する)で培養し、細胞融合時に必要な細胞数(2×107個以上)を確保し、細胞融合に親株として供した。
(5)ハイブリドーマの作製
(2)で得られた抗体産生細胞と(4)で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、1200rpm、5分間遠心分離(CR5B、日立製作所社製)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら37℃でPEG−1000(1g)、MEM培地(インビトロジェン社製、1mL)およびジメチルスルホキシド(0.35mL)の混液を1×108個の抗体産生細胞あたり0.5mL加えた。
前記懸濁液に1〜2分間毎にMEM培地(1mL)を数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにした。900rpm、5分間遠心分離(CR5B、日立製作所社製)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吸出しでゆるやかに細胞を、正常培地にHAT Media Supplement(インビトロジェン社製)を添加した培地(以下、HAT培地と表記する、100mL)中に懸濁した。
得られた懸濁液を96ウェル培養用プレートに200μL/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。培養後の培養上清を用いて(3)に記載の酵素免疫測定を行い、ヒトASCT2のN末部分ペプチドに特異的に反応するウェルを選択した。選択したウェルに含まれる細胞から限界希釈法によるクローニングを2回繰り返して、ASCT2のN末部分ペプチドに対するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマKM3842を取得した。KM3842の抗体クラスのサブクラスタイピングは、サブクラスタイピングキット(エービーディー セロテック社製)を用いて、ラットIgG2aと決定した。
(6)精製モノクローナル抗体の取得
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(Balb/c、日本エスエルシー社製)に(5)で得られたハイブリドーマ(5×106〜20×106個/匹)をそれぞれ腹腔内に注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから、腹水(1〜8mL/匹)を採取し、3000rpm、5分間遠心分離(CR5B、日立製作所社製)して固形分を除去した後、カプリル酸沈殿法[Antibodies−A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]により精製し、KM3842精製抗体を取得した。
[実施例4]
ASCT2のN末部分ペプチドに対するモノクローナル精製抗体の反応性検討
ASCT2のN末部分ペプチドに対するモノクローナル抗体KM3842の反応性を実施例3(3)に記載の酵素免疫測定法により検討した。1次抗体として、実施例3(6)で得られたKM3842精製抗体を1%BSA−PBSにて10、1、0.1、0.01、0.001、および0.0001μg/mLにそれぞれ希釈したものを用いた。測定の結果、図4に示すように、KM3842はASCT2のN末部分ペプチドに対し、特異的な反応性を示した。
[実施例5]
ASCT2の細胞外領域に対するモノクローナル抗体の作製
(1)免疫原の調製
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株を10%FBS含有IMDM培地(インビトロジェン社)で2〜3日培養し、0.02%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(ナカライテスク社製)を用いて剥離した。免疫動物1匹あたり6×106〜1×107個の細胞数となるようPBSに懸濁した。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
(1)で得られた細胞懸濁液を百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製、1×109細胞)とともに、6週令雄BXSBマウス(日本エスエルシー社製、3匹/1群)または4週令雌SDラット(日本エスエルシー社製、3匹/1群)に投与した。投与1週間後より、毎週1回、計4回投与し、投与後、該マウスの眼底または該ラットの尾静脈より部分採血した。
前記血中抗体価を以下に示すセルベースアッセイシステム(ABI 8200 セルラーディテクションシステム、アプライドバイオシステムズ社製)またはフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)を用いた蛍光細胞染色法により測定した。十分な抗体価を示したマウスまたはラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
実施例3(B)と同様に、得られた脾臓から抗体産生細胞を調製した。
(3)蛍光細胞染色法−1(セルベースアッセイシステム)
アッセイ用の細胞には、実施例2で得られたACST2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株とベクター導入CHO細胞を用いた。それぞれの細胞を10%FBS含有IMDM培地(インビトロジェン社製)で2〜3日培養し、トリプシン−EDTA溶液(インビトロジェン社製)で剥離した細胞をIMDM培地に懸濁し、ABI 8200用黒色96ウェルプレートに1ウェルあたり1×104個の細胞(100μL)を播種し、1晩培養した。
前記プレートに1次抗体として抗血清または培養上清などの被検物質(10μL/ウェル)で分注し、2次抗体として、ALEXA647標識抗マウスイムノグロブリンG(H+L)またはALEXA647標識抗ラットイムノグロブリンG(H+L)(共にインビトロジェン社製、100μL/ウェル)を加えて遮光下で4時間放置した。
レーザー光(633nmHe/Ne)で励起される650〜685nmの蛍光をABI 8200 セルラーディテクションシステム(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて測定した。
(4)蛍光細胞染色法−2(フローサイトメーター)
アッセイ用の細胞には、実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株とベクター導入CHO細胞株を用いた。それぞれの細胞を10%FBS含有IMDM培地(インビトロジェン社製)で2〜3日培養した。
0.02%EDTA溶液(ナカライテスク社製)で剥離した細胞をPBSで洗浄し、さらに抗体の非特異的な吸着を避けるために1%BSA−PBSを用いて氷温中20分間ブロッキングした。96ウェルU字プレートに1ウェルあたり5×105個の細胞(50μL)を播種し、1800rpm、2分間遠心分離(05PR−22、日立工機社製)した後、上清を除いた。
1次抗体として抗血清または培養上清などの被検物質を50μL/ウェルで加え、氷温中で30分間反応させた。PBSを用いた遠心分離法で3回洗浄した後、2次抗体としてALEXA488標識抗マウスイムノグロブリンG(G+L)またはALEXA488標識抗ラットイムノグロブリンG(G+L)(共にインビトロジェン社製、50μL/ウェル)を加えて氷温中、遮光下で30分間反応させた。
再びPBSを用いて遠心分離法で3回洗浄し、PBSに懸濁し、レーザー光(488nmAr)で励起される510〜530nmの蛍光をフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
(5)ハイブリドーマの作製
実施例3(5)と同様に、(2)で得られた抗体産生細胞と実施例3(4)で得られた骨髄腫細胞との細胞融合を行った。
次に、細胞融合により得られた細胞をHAT培地に懸濁した。得られた細胞懸濁液を96ウェル培養用プレートに200μL/ウェルで分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で8〜10日間培養した。
培養後の培養上清の反応性を(3)および(4)に記載の蛍光細胞染色法により確認し、ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株と反応し、かつベクター導入CHO細胞に反応しないウェルを選択した。選択したウェルに含まれる細胞から限界希釈法によるクローニングを2回繰り返し、ASCT2の細胞外領域に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマKM3998、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018を取得した。
得られたハイブリドーマのうち、マウスモノクローナル抗体のサブクラス決定は以下の方法により行った。
96ウェルのEIA用プレート(グライナー社製)に、抗マウス イムノグロブリン・ウサギポリクローナル抗体(ダコ社、10μg/mL、50μL/ウェル)を分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。未吸着のコンジュゲートを洗浄後、1%BSA−PBS(100μL/ウェル)を加え、室温1時間反応し、残っている活性基をブロックした。
未反応のBSA−PBSを洗浄後、被験物質を50μL/ウェル分注し2時間反応させた。0.05%tween−PBSで洗浄後、2次抗体として希釈したサブクラス特異的ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン(インビトロジェン社、50μL/ウェル)を加え、室温で1時間反応させた。
0.05%tween−PBSで洗浄後、実施例3(3)で用いたABTS基質液を加え、発色させ、サンプル波長415nm、リファレンス波長490nmにおける吸光度(OD415−OD490)をプレートリーダー(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用いて測定した。
上記方法でサブクラス決定ができなかったマウスモノクローナル抗体は、マウスラットモノクローナルアイソタイピングキット(大日本住友製薬社製)を用いて行った。また、ラットモノクローナル抗体のサブクラスはラットモノクローナルアイソタイピングキット(大日本住友製薬社製)を用いて決定した。
各ハイブリドーマの動物種と抗体クラス一覧を表1に示す。
(6)精製モノクローナル抗体の取得−1
KM3998の精製抗体は、以下の方法により取得した。
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(Balb/c、日本エスエルシー社製)に(5)で得られたハイブリドーマ(5×106〜20×106個/匹)をそれぞれ腹腔内に注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。
腹水のたまったマウスから、腹水(1〜8mL/匹)を採取し、フィルトレーション[ポール社製、5μm、ポリエーテルサルフォン(PES)膜]により固形分を除去した後、カプリル酸沈殿法[Antibodies−A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]により精製した。
(7)精製モノクローナル抗体の取得−2
KM4000、KM4001、KM4008、KM4012またはKM4018の精製抗体は、それぞれ以下の方法により取得した。
(5)で得られた各ハイブリドーマを10%FBS添加RPMI1640で5%CO2インキュベーター中、37℃で培養した。細胞数が5×107細胞となったところで1200rpm、5分間遠心分離(CR5B、日立製作所社製)を行い、上清を除いた。
得られた細胞を、5%ダイゴGF21(和光純薬製)を添加したHybridoma SFM培地(ギブコ社製)に懸濁して1×105個/mLの細胞数、500mLとなるよう調製し、5%CO2インキュベーター中、37℃で3日間培養した。得られた細胞懸濁液を1500rpm、5分間遠心分離し、得られた上清をボトルトップフィルター(コーニング社製、0.2μm、PES膜)を用いてフィルトレーションした。
KM4000、KM4001、KM4008およびKM4012については、プロテインA結合レジン(ミリポア社製)を、KM4018についてはプロテインG結合レジン(ミリポア社製)を用いて精製を行った。それぞれのレジンを1mLミニカラムにパッキングし、10mLの平衡化緩衝液を通塔して平衡化した。
平衡化緩衝液としてプロテインA結合レジンはグリシン(1mol/L)−塩化ナトリウム(0.15mol/L)(pH8.6)を、プロテインG結合レジンはグリシン(0.5mol/L)−PBS(pH7.4)を用いた。フィルトレーション処理して得られた培養上清を、流速約100mL/時間でカラムに通塔後、平衡化緩衝液10mLでカラムを洗浄した。
次にクエン酸バッファー(0.1mol/L、pH3.0)を用いてカラムに吸着している抗体を溶出した。溶出された抗体は、あらかじめトリス(2mol/L、pH8.0)を80μL入れておいたチューブに500μLずつ分取した。
各チューブのOD280nmを、紫外可視分光光度計(UV−1600、島津製作所社製)を用いて測定し、タンパク質が検出された画分を回収した。PBSにて4℃で終夜透析した後、フィルトレーション(ポール社製、0.2μm、PES膜)し、OD280nmより抗体濃度を算出した[OD280nm測定値(A)/1.4=タンパク質濃度(mg/mL)]。
[実施例6]
ASCT2の細胞外領域に対するモノクローナル精製抗体の反応性検討
(1)蛍光細胞染色法(フローサイトメーター)
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、ベクター導入CHO細胞、および多発性骨髄腫細胞株KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)をそれぞれ5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜4日間培養した。
ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞とベクター導入CHO細胞は、0.02%EDTA溶液(ナカライテスク社製)で剥離し、PBS、0.02%EDTAおよび0.05%アジ化ナトリウムの混合溶液で洗浄した。さらに抗体の非特異的な吸着を避けるためにヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞とベクター導入CHO細胞は、1%BSA−PBSを用いて、また、KMS−11はヒトIgG(シグマ社、100μg/mL)を用いて、氷温中、30分間ブロッキングした。
96ウェルU字プレートに1ウェルあたり1×105〜5×105個の細胞(100μL)を播種し、1500rpm、5分間遠心分離(05PR−22、日立工機社製)した後、上清を除いた。
1次抗体として被検物質である精製抗体およびラットIgG2a−UNLB(陰性対照、ベックマン・コールター社製)またはKM511{陰性対照、抗G−CSF誘導体抗体、[Agric.Biol.Chem.,53,1095(1989)]、マウスIgG1}を最終濃度が10μg/mLとなるように1%BSA−PBS、0.02%EDTAおよび0.05%アジ化ナトリウムの混合溶液(以下、希釈用溶液Aと表記する)で希釈し、100μL/ウェルで加え、氷温中で60分間反応させた。
希釈用溶液Aで2回洗浄した後、2次抗体として希釈用溶液Aで希釈したALEXA488標識抗マウスイムノグロブリンG(G+L)(インビトロジェン社製、100μL/ウェル)またはALEXA488標識抗ラットイムノグロブリンG(G+L)(インビトロジェン社製、100μL/ウェル)、またはFITC標識抗マウスkappa−chain抗体(サウザンバイオテック社製、100μL/ウェル)またはFITC標識抗ラットkappa−chain抗体(サウザンバイオテック社製、100μL/ウェル)を加えて氷温中、遮光下で30分間反応させた。
再び希釈用溶液Aで3回洗浄し、PBSに懸濁してフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)で蛍光強度を測定した。測定の結果を図5および図6に示す。
図5に示すように、KM3998はヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞およびASCT2mRNAを発現しているKMS−11に強い結合性を示したが、ベクター導入CHO細胞には全く結合性を示さなかった。また、陰性対照抗体ラットIgG2a−UNLBはいずれの細胞に対しても結合性を示さなかった。この結果から、KM3998はASCT2発現細胞に特異的な結合性を有することが示された。
また、図6に示すように、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018はヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞およびASCT2mRNAを発現しているKMS−11に強い結合性(平均蛍光強度)を示したが、ベクター導入CHO細胞には全く結合性を示さなかった。
また、陰性対照抗体ラットIgG2a−UNLBおよびKM511はいずれの細胞に対しても結合性を示さなかった。この結果から、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012、KM4018はASCT2発現細胞に特異的な結合性を有することが示された。
(2)ウェスタンブロッティング
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、ベクター導入CHO細胞、多発性骨髄腫細胞株KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)および大腸癌細胞株WiDr(ATCC番号:CCL−218)に、トリス−塩酸(50mmol/L、pH7.2)、1%TritonX100、塩化ナトリウム(150mmol/L)、塩化マグネシウム(2mmol/L)、塩化カルシウム(2mmol/L)、0.1%アジ化ナトリウム、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF、5μmol/L)、N−エチルマレイミド(50mmol/L)、ロイペプチン(1mg/ml)およびジチオトレイトール(0.1mmol/L)の混合溶液(以下、細胞溶解用緩衝液Aと表記する)を、それぞれ5×107個の細胞あたり1mL添加し、4℃、2時間放置後、遠心分離して得られた上清を細胞溶解液として用いた。
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(PAGEL、アトー社製)を用いて1レーンあたり5×104個の細胞分の各細胞溶解液を分画し、PVDF膜(ミリポア社製)に転写した。転写した該PVDF膜を10%BSA−PBSでブロッキングした。
その後、一次抗体として、被検物質である精製抗体、実施例3で得られたKM3842(陽性対照)、ラットIgG2a−UNLB(陰性対照、ベックマン・コールター社製)およびKM511(陰性対照)を、それぞれ10μg/mLとなるように1%BSA−PBSで希釈し、4℃で1晩反応させた。
得られたPVDF膜を0.1%Tween−PBS(以下、PBSTと表記する)でよく洗浄し、2次抗体としてペルオキシターゼ標識抗マウスイムノグロブリンG(H+L)(ザイメット社製)またはペルオキシターゼ標識抗ラットイムノグロブリンG(H+L)(ダコ社製)を室温で1時間反応させた。
再び該PVDF膜をPBSTでよく洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いて、抗体が結合したバンドを検出した。
その結果、KM3842はヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、ASCT2mRNAを発現しているKMS−11細胞およびWiDr細胞でASCT2の分子量に相当する分子量75kDa付近にバンドを検出した。一方、KM3998、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018はASCT2を検出できなかった。また、ベクター導入CHO細胞では、いずれの抗体の反応性も認められなかった。
上記、フローサイトメーターおよびウェスタンブロッティングの結果から、KM3998、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018のASCT2に対する結合活性はASCT2のSDS変性により失われたと考えられ、KM3998、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018はASCT2の天然型立体構造を認識して結合する抗体であることが示された。
(3)免疫沈降法
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、およびベクター導入CHO細胞に、トリス−塩酸(50mmol/L、pH7.5)、1%TritonX100、塩化ナトリウム(150mmol/L)、EDTA(5mmol/L)、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、Protease inhibitor cocktail(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)およびPhosphatase inhibitor cocktail(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)の混合溶液(以下、細胞溶解用緩衝液Bと表記する)を、それぞれ2×107個の細胞あたり1mL添加した。
4℃にて30分間攪拌後、遠心分離(CF15D、日立工機社製)を行った。得られた上清の蛋白濃度をプロテインアッセイ試薬(バイオ・ラッド社製)により測定し、細胞溶解用緩衝液Bで蛋白濃度を5mg/mLに調製し、細胞溶解液として使用した。
被検物質である精製抗体、実施例3で得られたKM3842(陽性対照)、ラットIgG2a−UNLB(陰性対照、ベックマン・コールター社製)およびKM511(陰性対照)をそれぞれ2μgと得られた細胞溶解液1mgを4℃にて1時間混和させた。
プロテインG−セファロースビーズ(アマシャム社製、30μL)またはプロテインA−セファロースビーズ(アマシャム社製、30μL)を0.1%BSA−PBST(300μL)にて30分間以上前処理した後、遠心分離により上清を取り除き、トリス−塩酸(50mmol/L、pH7.5)、1%TritonX100、塩化ナトリウム(150mmol/L)、EDTA(5mmol/L)およびProtease inhibitor cocktail(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)の混合溶液(以下、ビーズ洗浄用緩衝液と表記する)(90μL)に懸濁した。
ビーズ懸濁液に、抗体と細胞溶解液との混合溶液(100μL)を加え、4℃にて2時間混和させた後、遠心分離によりビーズを回収した。回収したビーズはビーズ洗浄用緩衝液で3〜5回洗浄後、2%SDS、トリス−塩酸(62mmol/L、pH6.8)および10%グリセロールの混合溶液(以下、SDS−PAGE用サンプルバッファーと表記する)にて溶解し、得られた溶液を以下のイムノブロットにより解析した。
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動により分画し、PVDF膜(ミリポア社製)に転写した。得られた該PVDF膜を5%スキムミルク−PBSTでブロッキングした後、一次抗体として、実施例3で得られたKM3842(陽性対照、3.5μg/mL)を室温にて2時間反応させた。
得られた該PVDF膜をPBSTでよく洗浄し、ペルオキシターゼ標識抗ラットイムノグロブリンG(H+L)(ダコ社製)を室温にて1時間反応させた。再び該PVDF膜をPBSTでよく洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いて、抗体が結合したバンドを検出した。
KM4000、KM4001、KM4008、KM4012、KM4018と陽性対照抗体KM3842で分子量75kDa付近にバンドが検出された。その結果、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018は免疫沈降反応によるASCT2の検出が可能な抗体であり、ASCT2の立体構造を認識する抗体であることが示された。
(4)ASCT2を介したアミノ酸の細胞内取り込み阻害活性
10%非働化透析牛胎児血清(以下dFBS、インビトロジェン社製)を添加したDoulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM、インビトロジェン社製)(以下、グルタミン不含培地と表記する)で2×104個/mLの細胞数に調製したヒト大腸癌細胞株WiDr(ATCC番号:CCL−218)を96ウェルプレートに100μLずつ播種し、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養した。
最終濃度が31.6〜0.03μg/mLとなるようにPBSで希釈調製した被検物質である精製抗体、ラットIgG2a−UNLB(陰性対照、ベックマン・コールター社製)、KM511(陰性対照)およびグルタミン競合アミノ酸混合液[AST混合液、アラニン、セリン、スレオニン(いずれもシグマ社製、各3.3mmol/L)の混合液]を20μL/ウェル加えた。
さらに、最終濃度0.2mmol/Lとなるようにグルタミン不含培地で調製したグルタミン溶液(インビトロジェン社製)を20μL/ウェル加えた。コントロールのウェルおよびブランクプレートのウェルには、PBS(20μL/ウェル)と上記グルタミン溶液(20μL/ウェル)を添加した。ブランクプレート以外は、抗体添加後、5%CO2インキュベーター中、37℃で72時間培養した。
グルタミン不含培地で50%に希釈した{4−[3−(4−ヨードフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−2H−5−テトラゾリオ]−1,3−ベンゼン ジスルフォネート}(以下、WST−1試薬、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を20μL/ウェル加え、さらに37℃で2時間インキュベートした。
マイクロプレート分光光度計(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用い、450nm(対照波長650nm)の吸光度を測定した。抗体非添加のコントロールのウェルの吸光度を100%、ブランクプレートのウェルの吸光度を0%として、抗体を添加したウェルの相対増殖率(%)を算出した。
測定の結果を図7および図8に示す。
図7に示すように、KM3998は高濃度で若干細胞増殖を抑制したが、その効果はグルタミン競合アミノ酸混合液の効果に比べて低く、KM3998のASCT2に対する中和活性は低いことが示された。
また、図8に示すように、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018はいずれも抗体濃度依存的に細胞増殖を強力に抑制した。その結果、KM4000、KM4001、KM4008、KM4012およびKM4018は、グルタミンを細胞内に取り込むASCT2の機能を強力に中和することにより、癌細胞の増殖を顕著に抑制する活性を有することが示された。
[実施例7]
抗ASCT2モノクローナル抗体の可変領域をコードするcDNAの単離、解析
(1)抗ASCT2モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞からのmRNAの調製
実施例5(5)で得られたハイブリドーマKM4008、KM4012およびKM4018(それぞれ5×107個の細胞)より、RNeasy Maxi Kit(キアゲン社製)およびOligotex−dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)を用いて、添付説明書の方法に従い、約6μgのmRNAを調製した。
(2)抗ASCT2モノクローナル抗体のH鎖およびL鎖可変領域の遺伝子クローニング
(1)で取得したKM4008、KM4012およびKM4018のmRNAの0.6μgから、BD SMART RACE cDNA Amplification Kit(ビーディー バイオサイエンシズ社製)を用いて、添付説明書の方法に従い、それぞれ5’側にキット添付のBD SMART II A Oligonucleotide配列を有するcDNAを取得した。
得られたcDNAを鋳型として、キット添付のユニバーサルプライマーAmixと、配列番号15、16で示したマウスIg(γ)特異的プライマー(mG3a2またはmG2ba1)または配列番号43で示したラットIg(γ)特異的プライマー(rG2a)を用いてPCR反応を行い、VHのcDNA断片を増幅した。
またIg(γ)特異的プライマーの代わりに配列番号17で示したマウスIg(κ)特異的プライマー(mKa1)または配列番号44で示したラットIg(κ)特異的プライマー(rKa2)を用いてPCR反応を行い、VLのcDNA断片を増幅した。
ラットIg(κ)特異的プライマー(rKa2)でのPCR反応は、94℃で5分間加熱後、94℃で15秒間、68℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを40回行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。
それ以外のPCR反応は94℃で5分間加熱後、94℃で15秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを5回、94℃で15秒間、72℃で3分間30秒間からなる反応サイクルを5回、94℃で15秒間、68℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを30回それぞれ行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。
PCR反応はPTC−200 DNA Engine(バイオ・ラッド社製)を用いて行った。得られたPCR産物はH鎖が約700bp、L鎖が約800bpのサイズであった。
得られたPCR産物の塩基配列を決定するため、アガロースゲル電気泳動で分離し、PCR産物をGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。得られた抽出断片を、TOPO TA cloning kitを(インビトロジェン社製)用いてpCR4 TOPOベクターに連結し、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。
得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機PI−50(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(ピーイー バイオシステムズ社製)を用い、添付説明書に従って反応後、DNAシーケンサーABI PRISM3700(ピーイー・バイオシステムズ社製)により塩基配列を解析した。
その結果、cDNAの5’末端に開始コドンと推定されるATG配列が存在する、完全長のKM4008のH鎖cDNAを含むプラスミド08H2b10、KM4008のL鎖cDNAを含むプラスミド08La4、KM4012のH鎖cDNAを含むプラスミド12Ha5、KM4012のL鎖cDNAを含むプラスミド12La4、KM4018のH鎖cDNAを含むプラスミド18rHa1およびKM4018のL鎖cDNAを含むプラスミド18Lb3が得られた。
得られたKM4008のH鎖cDNAを含むプラスミド08H2b10に含まれていたVHの全塩基配列を配列番号18、該プラスミド08H2b10に含まれていたVHの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VHの全アミノ酸配列を配列番号19、KM4008のL鎖cDNAを含むプラスミド08La4に含まれていたVLの全塩基配列を配列番号20、該プラスミド08La4に含まれていたVLの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VLの全アミノ酸配列を配列番号21、KM4012のH鎖cDNAを含むプラスミド12Ha5に含まれていたVHの全塩基配列を配列番号22、該プラスミド12Ha5に含まれていたVHの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VHの全アミノ酸配列を配列番号23、KM4012のL鎖cDNAを含むプラスミド12La4に含まれていたVLの全塩基配列を配列番号24、および該プラスミド12La4に含まれていたVLの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VLの全アミノ酸配列を配列番号25、KM4018のH鎖cDNAを含むプラスミド18rHa1に含まれていたVHの全塩基配列を配列番号45、該プラスミド18rHa1に含まれていたVHの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VHの全アミノ酸配列を配列番号46、KM4018のL鎖cDNAを含むプラスミド18Lb3に含まれていたVLの全塩基配列を配列番号47、該プラスミド18Lb3に含まれていたVLの全塩基配列から推定されたシグナル配列を含んだ分泌型VLの全アミノ酸配列を配列番号48としてそれぞれ示した。
(3)抗ASCT2モノクローナル抗体のV領域のアミノ酸配列の解析
実施例5(7)で得られたKM4008、KM4012、KM4018の精製モノクローナル抗体におけるH鎖およびL鎖のN末端アミノ酸配列に関して、プロテインシーケンサー(PPSQ−10、島津製作所社製)を用いて解析し、約20残基を決定した。得られた結果と(2)で得られた各抗体の塩基配列から推定されたアミノ酸配列の比較を行った結果、各配列の一致が確認され、(2)で得られた塩基配列が目的抗体の塩基配列であることが確認された。
また、既知のマウス抗体、またはラット抗体のアミノ酸配列データ[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]との比較から、単離したそれぞれのcDNAは分泌シグナル配列を含む抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012およびKM4018をコードする完全長cDNAであり、KM4008のH鎖については配列番号19に記載のアミノ酸配列の1〜19番目、KM4008のL鎖については配列番号21に記載のアミノ酸配列の1〜20番目、KM4012のH鎖については配列番号23に記載のアミノ酸配列の1〜19番目、KM4012のL鎖については配列番号25に記載のアミノ酸配列の1〜20番目、KM4018のH鎖については配列番号46に記載のアミノ酸配列の1〜19番目、KM4018のL鎖については配列番号48に記載のアミノ酸配列の1〜20番目が、それぞれ分泌シグナル配列であることが明らかとなった。
次に、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012、KM4018のVHおよびVLのアミノ酸配列を用いて、既存の蛋白質のアミノ酸配列データベースに対してblastp法[Nucleic Acids Res.,25,3389(1997)]により検索した。その結果、VHおよびVLは共に完全に一致するアミノ酸配列は検索されず、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012、KM4018のVHおよびVLは共に新規なアミノ酸配列を有していることが確認された。
また、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012、KM4018のVHおよびVLのCDR配列を、既知の抗体のアミノ酸配列と比較することにより同定した。抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008のVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号26、配列番号27および配列番号28、VLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号29、配列番号30および配列番号31、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4012のVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号32、配列番号33および配列番号34、VLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号35、配列番号36および配列番号37、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4018のVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号49、配列番号50および配列番号51、VLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号52、配列番号53および配列番号54に、それぞれ示した。
[実施例8]
抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の作製
(1)抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4008_93の構築
ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93(WO97/10354)と実施例7(2)で得られたKM4008のH鎖cDNAを含むプラスミド08H2b10およびKM4008のL鎖cDNAを含む08La4を用いて抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4008_93を以下のようにして構築した。
実施例2と同様に、PCR反応を行った。プラスミド08H2b10(100ng)を鋳型として、配列番号38および配列番号39記載の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)、10×Ex Taq buffer(5μL)、dNTP混合液(2.5mmol/L、4μL)、およびEx Taq polymerase(以上、タカラバイオ社製、1μL)を添加し、さらに滅菌水を加え全量50μLとした。PCR反応は96℃で2分間変性処理後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間のサイクルを30サイクル、更に72℃で5分間の反応条件で行い、pKANTEX93に挿入するための制限酵素認識配列が付加されたKM4008のVHをコードする遺伝子断片を増幅した。
また、プラスミド08La4(100ng)を鋳型として、配列番号40および配列番号41記載の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)、10×Ex Taq buffer(5μL)、dNTP混合液(2.5mmol/L、4μL)、およびEx Taq polymerase(以上、タカラバイオ社製、1μL)より、上述と同様のPCR反応を行い、pKANTEX93に挿入するための制限酵素認識配列が付加されたKM4008のVLをコードする遺伝子断片を増幅した。
得られたそれぞれの反応産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約0.5kbpの増幅断片をGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。得られた遺伝子断片を、TOPO TA cloning kitを(インビトロジェン社製)用いてpCR4 TOPOベクターに連結し、実施例7(2)と同様にして大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、KM4008のVHをコードする塩基配列を含むプラスミド08VH3と、KM4008のVLをコードする塩基配列を含むプラスミド08VL6を取得した。
得られたプラスミド08VH3を制限酵素Apa I(タカラバイオ社製)およびNot I(タカラバイオ社製)で、プラスミド08VL6を制限酵素EcoR I(タカラバイオ社製)およびBsiW I(タカラバイオ社製)でそれぞれ消化した後、アガロースゲル電気泳動で分離した。得られた約0.5kbpの遺伝子断片をGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。
プラスミド08VL6を消化して得られた断片を、同じくEcoR I(タカラバイオ社製)およびBsiW I(タカラバイオ社製)で消化したpKANTEX93ベクターに連結し、実施例7(2)と同様にして大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いてKM4008のVLが挿入されたpKANTEX93ベクターを取得した。
得られたKM4008のVLが挿入されたpKANTEX93ベクターをApa I(タカラバイオ社製)およびNot I(タカラバイオ社製)で消化した後、上述のプラスミド08VH3を消化して得られた断片と連結して、実施例7(2)と同様にして大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて、KM4008のVHおよびVLが挿入された抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4008_93を取得した。
(2)抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4012_93の構築
(1)と同様にして、ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93(WO97/10354)と実施例7(2)で得られたKM4012のH鎖cDNAを含むプラスミド12Ha5およびKM4012のL鎖cDNAを含むプラスミド12La4より、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4012_93を構築した。
プラスミド12Ha5およびプラスミド12La4を鋳型として、配列番号38および配列番号42に記載の塩基配列を有するVH増幅用のプライマーおよび配列番号40および配列番号41に記載の塩基配列を有するVL増幅用のプライマーを用いて、PCR反応を行い、遺伝子断片を増幅した。得られたそれぞれの反応産物を分離、抽出し、pCR4 TOPOベクターに連結した後、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、KM4012のVHをコードする塩基配列を含むプラスミド12VH1と、KM4012のVLをコードする塩基配列を含むプラスミド12VL11を取得した。
得られたプラスミド12VH1およびプラスミド12VL11をそれぞれ制限酵素にて消化した後、分離、抽出し、プラスミド12VH1およびプラスミド12VL11の断片を取得した。得られたそれぞれの断片と、制限酵素にて消化したpKANTEX93ベクターに連結した後、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、KM4012のVHおよびVLが挿入された抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4012_93を取得した。
(3)抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4018_93の構築
(1)と同様にして、ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93(WO97/10354)と実施例7(2)で得られたKM4018のH鎖cDNAを含むプラスミド18rHa1およびKM4018のL鎖cDNAを含むプラスミド18Lb3より、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4018_93を構築した。
プラスミド18rHa1およびプラスミド18Lb3を鋳型として、配列番号55よび配列番号56に記載の塩基配列を有するVH増幅用のプライマーおよび配列番号57および配列番号58に記載の塩基配列を有するVL増幅用のプライマーを用いて、PCR反応を行い、遺伝子断片を増幅した。
得られたそれぞれの反応産物を分離、抽出し、pCR4 TOPOベクターに連結した後、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、KM4018のVHをコードする塩基配列を含むプラスミド18VH5と、KM4018のVLをコードする塩基配列を含むプラスミド18V2L1を取得した。
得られたプラスミド18VH5およびプラスミド18V2L1をそれぞれ制限酵素にて消化した後、分離、抽出し、プラスミド18VH5およびプラスミド18V2L1の断片を取得した。得られたそれぞれの断片と、制限酵素にて消化したpKANTEX93ベクターに連結した後、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、KM4018のVHおよびVLが挿入された抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4018_93を取得した。
(4)抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の動物細胞での発現
上記(1)で得られた抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4008_93を用いて抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の動物細胞での発現を、常法[Antibody Engineering,A Practical Guide,W.H.Freeman and Company(1992)]により行った。
また、同様にして抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4012_93、または抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターcKM4018_93を用いて、それぞれ抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の動物細胞での発現を行い、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体を産生する形質転換株を取得した。
(5)精製抗体の取得
上記(4)で得られた形質転換株を、それぞれ通常の培養法で培養した後、細胞懸濁液を回収し、3000rpm、4℃の条件で15分間の遠心分離を行って培養上清を回収した後、培養上清は0.22μm孔径MillexGVフィルター(ミリポア社製)を用いて濾過滅菌した。得られた培養上清よりProteinA High−capacityレジン(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012、cKM4018(以下cKM4008、cKM4012、cKM4018と表記する)を精製した。
得られたcKM4008、cKM4012、cKM4018の精製標品の精製度および発現分子サイズを、グラジュエントゲル(アトー社製、カタログ番号:E−T520L)を用いて、添付の説明書に従い、SDS−PAGEにより確認した。精製した抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の泳動パターンは、非還元条件下では分子量150〜200キロダルトン(以下、kDaと表記する)付近に1本のバンドが、還元条件下では約50kDaと約25kDaの2本のバンドが認められた。
このような泳動パターンは、IgGクラスの抗体を、同様な条件下でSDS−PAGEを行った結果[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14(1988)、Monoclonal Antibodies−Principles and Practice,Academic Press Limited(1996)]と一致している。
従って、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018が正しい構造の抗体分子として発現されていることが確認された。
[実施例9]
抗ASCT2ヒト型キメラ抗体の反応性検討
(1)蛍光細胞染色法(フローサイトメーター)
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、および多発性骨髄腫細胞株OPM−2(DSMZ番号:ACC50)をそれぞれ5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜4日間培養した。ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞は、0.02%EDTA溶液(ナカライテスク社製)で剥離し、抗体の非特異的な吸着を避けるために1%BSA−PBSを用いて氷温中、30分間ブロッキングした。
96ウェルU字プレートに1ウェルあたり1×105〜5×105個の細胞(100μL)を播種し、1500rpm、5分間遠心分離(05PR−22、日立工機社製)した後、上清を除いた。1次抗体として被検物質である精製抗体を最終濃度が0.001μg/mLから10μg/mLとなるように1%BSA−PBSで希釈し、100μL/ウェルで加え、氷温中で60分間反応させた。
1%BSA−PBSで洗浄した後、2次抗体として1%BSA−PBSで希釈したFITC標識抗ヒトイムノグロブリンG(H+L)(ジャクソン・ラボラトリーズ社製)を加えて氷温中、遮光下で30分間反応させた。1%BSA−PBSで洗浄し、PBSに懸濁してフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)で蛍光強度を測定した。測定の結果を図9に示す。
図9に示すように、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018はそれぞれヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞強い結合性を示した。また、多発性骨髄腫細胞株であるOPM−2に強い反応性を示すことが明らかとなった。
(2)ADCC活性
標的細胞には多発性骨髄腫細胞株KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)を用い、FBS(インビトロジェン社)を5%含むフェノールレッド不含RPMI1640培地(インビトロジェン社)(以下、ADCC活性測定用培地)で細胞濃度を2×105細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
エフェクター細胞溶液の調製にはLymphoprep(ニコメッド社製)を用い、添付の使用説明書に従い、健常人末梢血から単核球(PBMC)画分を分離した。分離したPBMC画分は、ADCC活性測定用培地で2回遠心分離して洗浄後、細胞濃度を2×106細胞/mLに調製し、エフェクター細胞溶液とした。
標的細胞溶液を、96ウェルU字底プレート(ファルコン社製)に50μL(1×104細胞/ウェル)分注し、次いでエフェクター細胞溶液を50μL(エフェクター細胞と標的細胞の比は10:1)を添加した。
更に、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012またはcKM4018をADCC活性測定用培地で希釈し、各最終濃度0.01ng/mL〜1000ng/mLとなるように加えて全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を、LDH−Cytotoxic Test(和光純薬社製)を用い、添付の説明書に従い、吸光度を測定することで検出した。
標的細胞自然遊離の吸光度は、エフェクター細胞溶液および抗体溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用いて、また、エフェクター細胞自然遊離の吸光度データは、標的細胞溶液および抗体溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用いて、上記と同様の操作を行うことで取得した。
標的細胞全遊離の吸光度は、抗体溶液およびエフェクター細胞溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用い、反応終了の45分前に20μLの9%Triton X−100溶液を添加して反応させ、上記と同様の操作を行うことで取得した。ADCC活性は以下の計算式により求めた。
(式)
ADCC活性(%)=[(検体の吸光度)−(エフェクター細胞・標的細胞自然遊離の吸光度)]/[(標的細胞全遊離の吸光度)−(標的細胞自然遊離の吸光度)]×100
測定の結果を図10に示す。図10に示すように、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018は、抗体濃度依存的にASCT2を発現する細胞に対してADCC活性を有することが明らかとなった。
(3)CDC活性
標的細胞には実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、および大腸癌細胞株Colo205(ATCC番号:CCL−222)を用い、0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離し、CDC測定用培地として作製した1.4% BSA(インビトロジェン社製)、50μg/mL Gentamicin(ナカライテスク社製)を含むRPMI1640培地(インビトロジェン社製)で洗浄後、同培地で2×105細胞/mLに懸濁し、標的細胞溶液とした。
ヒト補体血清(シグマ社製、S2257−5ML)を脱イオン水5mLにて溶解し、等量のCDC測定用培地を加えて2倍に希釈し、ヒト補体溶液とした。96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに補体溶液を50μL分注した。
次いで標的細胞溶液を50μL加え、さらにCDC用培地で希釈した各抗体溶液を50μL添加して、全量を150μLとし、37℃、5%CO2条件下で2時間反応させた。
各ウェルにWST−1試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を15μLずつ添加してプレートミキサーで攪拌し、37℃、5%CO2条件下で2時間反応させ、マイクロプレート分光光度計(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用い、450nm(対照波長650nm)の吸光度を測定した。
補体溶液50μL、CDC用培地100μLを加えたウェルをブランクとして、また標的細胞、補体溶液、CDC用培地を各50μLずつ加えたウェル(抗体非添加)の吸光度を測定し、CDC活性は以下の計算式により算出した。
(式)
CDC活性(%)={1−[(抗体添加サンプル吸光度)−(ブランク吸光度)]/[(抗体非添加吸光度)−(ブランク吸光度)]×100}
測定の結果を図11に示す。図11に示すように、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018は、抗体濃度依存的にASCT2発現細胞に対しCDC活性を有することが明らかとなった。また、大腸癌細胞株Colo205に対してもCDC活性を有することが明らかとなった。
(4)ASCT2を介したアミノ酸の細胞内取り込み阻害活性
10%dFBS(インビトロジェン社製)を添加したDMEM(インビトロジェン社製)(以下、グルタミン不含培地と表記する)で1×104個/mLの細胞数に調製したヒト大腸癌細胞株WiDr(ATCC番号:CCL−218)を96ウェルプレートに100μLずつ播種し、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養した。
最終濃度が10〜0.01μg/mLとなるようにPBSで希釈調製した被検物質である抗ASCT2ヒト型キメラ抗体、KM511(陰性対照)およびグルタミン競合アミノ酸混合液[AST混合液、アラニン、セリン、スレオニン(いずれもシグマ社製、各3.3mmol/L)の混合液]を20μL/ウェル加え、さらに、最終濃度0.2mmol/Lとなるようにグルタミン不含培地で調製したグルタミン溶液(インビトロジェン社製)を20μL/ウェル加えた。
コントロールのウェルおよびブランクプレートのウェルには、PBS(20μL/ウェル)と上記グルタミン溶液(20μL/ウェル)を添加した。ブランクプレート以外は、抗体添加後、5%CO2インキュベーター中、37℃で72時間培養した。
グルタミン不含培地で50%に希釈したWST−1試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を20μL/ウェル加え、さらに37℃で2時間インキュベートした。
マイクロプレート分光光度計(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用い、450nm(対照波長650nm)の吸光度を測定した。抗体非添加のコントロールのウェルの吸光度を100%、ブランクプレートのウェルの吸光度を0%として、抗体を添加したウェルの相対増殖率(%)を算出した。
測定の結果を図12に示す。図12に示すように、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、cKM4012およびcKM4018はいずれも抗体濃度依存的に細胞増殖を強力に抑制した。その結果、cKM4008、cKM4012およびcKM4018は、グルタミンを細胞内に取り込むASCT2の機能を強力に中和することにより、癌細胞の増殖を顕著に抑制する活性を有することが示された。
[実施例10]
マウスASCT2−myc/His遺伝子導入細胞株(以下、マウスASCT2/CHOと表記)の造成
以下に示した方法により、配列番号59記載の遺伝子配列および配列番号60記載のアミノ酸配列を含むプラスミドpBluescriptII SK(−)−Mouse_ASCT2−myc/Hisを取得し、このプラスミドを用いてマウスASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株を取得した。
マウスASCT2遺伝子クローン(Clone ID:4192790、オープンバイオシステムズ社)の大腸菌液10μLをアンピシリン含有LB培地50mLに植菌し、一晩撹拌培養後に遠心分離(CR2DGII、日立工機社製、6000rpm、10分間)により菌体を回収し、プラスミド抽出キット(キアゲン社)を用いてマウスASCT2遺伝子を含むプラスミドを取得した。
前記プラスミドを鋳型として100ng、10×KOD緩衝液I(10 μL)、dNTP混合液(2mmol/L、5μL)、MgCl2(25mmol/L、4μL)、配列番号61および配列番号62記載の塩基配列を有するプライマー(10μmol/L、それぞれ1μL)、KOD polymerase(東洋紡績社製、1μL)、ジメチルスルホキシド(5μL)を含む総量100μLからなる溶液を、96℃で3分間の反応後、95℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1.5分間の3工程を1サイクルとして、計35サイクル、72℃で7分間反応させた。
反応産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、得られた約1.7kbの増幅断片をQIAquickGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。得られた抽出断片を、EcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化し、QIAquickGel Extraction Kitを用いて再抽出した。
EcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化したpBluescriptII SK(−)ベクターに、Ligation high(東洋紡績社製)を用いて連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。
得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機PI−50(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、配列番号59記載の遺伝子配列および配列番号60記載のアミノ酸配列を含むプラスミドpBluescriptII SK(−)−Mouse_ASCT2−myc/Hisを取得した。
得られたpBluescriptII SK(−)−Mouse_ASCT2−myc/HisをEcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化し、上記と同様に遺伝子断片を抽出し、予めEcoRIとKpnIで消化したpKANTEX93ベクター(WO97/10354)に連結した。
上記と同様にして、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、形質転換体を得た後、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現プラスミドpKANTEX−Mouse_ASCT2−myc/Hisを取得した。
pKANTEX−Mouse_ASCT2−myc/Hisは、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]により、以下のようにしてCHO/DG44細胞[Somatic Cell and Molecular Genetics,12,555(1986)]へ導入した。細胞は、10%dFBS(インビトロジェン社製)およびゲンタマイシン(ナカライテスク社製、50μg/mL)を添加したIMDM培地(インビトロジェン社製)(以下、A4倍地と表記する)に、1×HT supplement(インビトロジェン社製)を添加した培地で継代したものを用いた。
CHO/DG44細胞を塩化カリウム(137nmol/L)、塩化ナトリウム(2.7nmol/L)、リン酸一水素二ナトリウム(8.1mmol/L)、リン酸二水素一ナトリウム(1.5nmol/L)および塩化マグネシウム(4mmol/L)を含む緩衝液(以下、K−PBSと表記する)に懸濁して8×106個/mLとし、得られた細胞懸濁液(200μL、細胞数として1.6×106個)を発現プラスミドpKANTEX−Mouse_ASCT2−myc/His(10μg)と混和した。
得られた混和液をキュベット(電極間距離2mm)に移し、GenePulserII(バイオラッド社製)を用いてパルス電圧0.35kV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。キュベットを氷上で静置後、キュベット中の細胞懸濁液を、A4培地を含む細胞培養用容器に懸濁し、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養した。
4日間培養後、G418(ナカライテスク社製、0.5mg/mL)を添加したA4培地に培地交換し、培養を続けた。途中培地交換と継代を行い、遺伝子導入より約2週間後に、G418に耐性を有する形質転換細胞株を取得した。
得られたG418に耐性形質転換細胞を1mLあたり5個の細胞数となるようにG418(ナカライテスク社製、0.5mg/mL)を添加したA4培地で希釈し、希釈した細胞懸濁液を96ウェルプレートに100μLずつ分注し、段階的にメソトレキセート濃度を上昇させて処理することにより、マウスASCT2−myc/Hisを高発現するクローンを選択し、マウスASCT2/CHOを取得した。
[実施例11]
マウス/ヒトキメラASCT2−myc/His遺伝子導入細胞株(以下、マウス/ヒトキメラASCT2/CHOと表記)の造成
ヒトとマウスのASCT2蛋白質の模式図を図13に示す。図13中のマウスASCT2蛋白質の模式図において、黒色で示した部分(マウスASCT2の細胞外領域において、ヒトの74番目、79番目、84番目、87番目、90番目、154番目、159番目、160番目、163〜171番目、173番目、174番目、177番目、188番目、204番目、205番目、207番目、210〜212番目、214〜223番目、287番目、293番目、296番目、297番目、300番目、301番目および367番目に相当するアミノ酸)がヒトとマウスで異なるアミノ酸である。
ASCT2の細胞外領域において、ヒトとマウスで異なるアミノ酸はEL1では5箇所、EL2ではヒトとマウスでは大きく異なり、EL3では6箇所、EL4では1箇所である。EL1、EL2およびEL3については、各領域を含むドメインをその近傍に位置する制限酵素サイトで切り出し、組み換えによりマウス置換体を得るため、QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)を用いたサイレント変異の導入により、ヒトASCT2遺伝子についてはEL3後方のNcoIサイトを消失し、BamIIIサイトを導入した。
また、マウスASCT2遺伝子についてはEL2中のNcoIサイトを消失した。1箇所のアミノ酸の相違であるEL4については、変異導入によりヒトASCT2遺伝子をマウス型に置換した。各変異体のC末端側にmyc/Hisタグを融合させた蛋白質の遺伝子を以下のようにして作成し、CHO細胞に導入した。
(1)変異ヒトASCT2遺伝子の構築
実施例2で作製したpCR4−SLC1A5−myc/Hisを鋳型とし、配列番号63および配列番号64記載の塩基配列を有するプライマー(0.1μg/mL、2.5μL)とQuikChange Site−Directed Mutagenesis Kitに添付の10×reaction buffer(5μL)、dNTP混合液(1μL)を含む総量50μLからなる溶液にPfuTubo DNA polymerase(1μL)を加えた。
95℃で30秒間の反応後、95℃で30秒間、55℃で1分間、68℃で5分間の3工程を1サイクルとして、計18サイクルからなるPCR反応を行い、反応終了後に1μLのDnpIを加えて37℃で1時間反応させた。
反応産物2μLを用いてQuikChange Site−Directed Mutagenesis Kitに添付の大腸菌XL1−Blue株(ストラタジーン社製)を形質転換した。得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機PI−50(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、プラスミドpCR4−hNco1KO_ASCT2−myc/Hisを取得した。
前記プラスミドを鋳型とし、配列番号65および配列番号66記載の塩基配列を有するプライマー(0.1μg/mL、2.5μL)を用い、上記と同様の方法でプラスミドpCR4−hBam3KI_ASCT2−myc/Hisを取得した。
取得したプラスミドをEcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化し、QIAquickGel Extraction Kitを用いて抽出し、予めEcoRIとKpnIで消化したpBluescriptII SK(−)ベクター(ストラタジーン社製)に、Ligation high(東洋紡績社製)を用いて連結した。
その後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、上記と同様の方法で、プラスミドpBluescriptII SK(−)hBam3KI_ASCT2−myc/Hisを取得した。
(2)変異マウスASCT2遺伝子の構築
実施例10で作製したpBluescriptII SK(−)−Mouse_ASCT2−myc/Hisを鋳型とし、配列番号67および配列番号68記載の塩基配列を有するプライマーを用い、実施例11(1)と同様の方法で、プラスミドpBluescriptII SK(−)−mNcoKO_ASCT2−myc/Hisを取得した。
(3)マウス/ヒトキメラASCT2/CHOの造成
(1)および(2)で得たプラスミドでdam−の大腸菌株(カタログ番号:C2925、ニューイングランドバイオラボ社製)を再度形質転換して取得したプラスミドを、EcoRI(タカラバイオ社製)およびBclI(FbaIと同一、タカラバイオ社製)で消化した。ヒトASCT2遺伝子を含むプラスミドをベクターとし、マウスASCT2遺伝子をインサートとして連結させ、大腸菌DH5α株を形質転換した。
EL1がマウス型に置換したプラスミドpBluescriptII SK(−)−mEL1_ASCT2−myc/Hisを取得した。同様に、BclIおよびNcoIサイトでの組み換えで、EL2がマウス型に置換したプラスミドpBluescriptII SK(−)−mEL2_ASCT2−myc/Hisを、NcoIおよびBamIIIサイトでの組み換えで、EL3がマウス型に置換したプラスミドpBluescriptII SK(−)−mEL3_ASCT2−myc/Hisを取得した。
(1)で取得したpBluescriptII SK(−)hBam3KI_ASCT2−myc/Hisを鋳型とし、配列番号69および配列番号70記載の塩基配列を有するプライマーを用い、実施例11(1)と同様の方法で、EL4がマウス型に置換したプラスミドpBluescriptII SK(−)−mEL4_ASCT2−myc/Hisを取得した。
得られたpBluescriptII SK(−)−mEL1_ASCT2−myc/His、pBluescriptII SK(−)−mEL2_ASCT2−myc/His、pBluescriptII SK(−)−mEL3_ASCT2−myc/HisおよびpBluescriptII SK(−)−mEL4_ASCT2−myc/HisをEcoRI(タカラバイオ社製)とKpnI(タカラバイオ社製)で消化した。
上記と同様に遺伝子断片を抽出し、予めEcoRIとKpnIで消化したpKANTEX93ベクター(WO97/10354)に連結し、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、形質転換体を得た。その後、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて発現プラスミドpKANTEX−mEL1_ASCT2−myc/His、pKANTEX−mEL2_ASCT2−myc/His、pKANTEX−mEL3_ASCT2−myc/HisおよびpKANTEX−mEL4_ASCT2−myc/Hisをそれぞれ取得した。
pKANTEX−mEL1_ASCT2−myc/His、pKANTEX−mEL2_ASCT2−myc/His、pKANTEX−mEL3_ASCT2−myc/HisおよびpKANTEX−mEL4_ASCT2−myc/Hisはエレクトロポレーション法により、実施例10と同様の方法でCHO/DG44細胞へ導入した。
マウスEL1型ASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株(以下、mEL1/CHOと表記)、マウスEL2型ASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株(以下、mEL2/CHOと表記)、マウスEL3型ASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株(以下、mEL3/CHOと表記)およびマウスEL4型ASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞株(以下、mEL4/CHOと表記)をそれぞれ取得した。
[実施例12]
マウスASCT2/CHOおよびマウス/ヒトキメラASCT2/CHOに対する抗ASCT2モノクローナル抗体の反応性
実施例10および実施例11で作製したマウスASCT2/CHOおよびマウス/ヒトキメラASCT2/CHO細胞を用い、実施例9(1)と同様の方法で、2次抗体としてFITC標識抗マウスイムノグロブリンG(H+L)(ダコ社製)またはALEXA488標識抗ラットイムノグロブリンG(G+L)(インビトロジェン社製)を用いて、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012およびKM4018の反応性を測定した。
測定の結果を表2に示す。表2において、反応性ありを+印で、反応性なしを−印で、反応性低下を±印でそれぞれ示す。表2に示すように、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008、KM4012およびKM4018は何れもマウスASCT2には反応しなかった。
また、KM4008およびKM4012では、mEL2/CHOに対して反応性の低下が認められた。一方、KM4018では、mEL2/CHOに対しては反応せず、mEL1/CHOおよびmEL3/CHOに対して反応性の低下が認められた。
以上の結果から、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4008およびKM4012はEL2を、抗ASCT2モノクローナル抗体KM4018はEL1、EL2およびEL3からなる立体構造を認識し結合することが明らかとなった。
[実施例13]
抗ASCT2ヒト化抗体の作製
(1)抗ASCT2ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列の設計
抗ASCT2ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
初めに、実施例7(3)で得られた、配列番号26〜28でそれぞれ表されるKM4008VHのCDR1〜3のアミノ酸配列を移植するためのヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列を選択した。配列解析システムとしてGCG Package(ジェネティック・コンピューター・グループ社製)を用いて、既存の蛋白質のアミノ酸データベースをBLASTP法[Nucleic Acid Res.,25,3389(1997)]によりKM4008と相同性の高いヒト抗体を検索した。
相同性スコアと実際のアミノ酸配列の相同性を比較したところ、SWISSPROTデータベースアクセッションナンバー:BAC01342、immunoglobulin heavy chain VHDJ region(以下、BAC01342と表記)が77.0%を示し、最も相同性の高いヒト抗体であったため、この抗体のFRのアミノ酸配列を選択した。
以上のようにして決定したヒト抗体のFRのアミノ酸配列の適切な位置に配列番号26〜28で示したKM4008のVHのCDRのアミノ酸配列を移植した。このようにして、配列番号71で表される抗ASCT2ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0を設計した。
次に、抗ASCT2ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
実施例7(3)で得られた、配列番号29〜31でそれぞれ表されるKM4008VLのCDR1〜3のアミノ酸配列を移植するためのヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列を選択した。
カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループ(HSG I〜IV)に分類し、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]。そこで、ヒト抗体のVLのサブグループI〜IVの共通配列のFRのアミノ酸配列とKM4008のVLのFRのアミノ酸配列との相同性検索を実施した。
相同性を検索した結果、HSGI、HSGII、HSGIII、およびHSGIVの相同性はそれぞれ77.5%、60.0%、63.8%、および68.8%であった。従って、KM4008VLのFRのアミノ酸配列はサブグループIと最も高い相同性を有していた。
以上の結果から、ヒト抗体のVLのサブグループIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置にKM4008のVLのCDRのアミノ酸配列を移植した。しかし、配列番号21で表されるKM4008のVLのアミノ酸配列中の124番目のLeuは、カバットらが挙げるヒト抗体FRのアミノ酸配列の相当する部位において、最も使用される頻度が高いアミノ酸残基ではないが、比較的高い頻度で使用されるアミノ酸残基であるため、上記のKM4008のアミノ酸配列で認められるアミノ酸残基を用いることとした。
このようにして、配列番号72で表される抗ASCT2ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列LV0を設計した。
上記で設計した抗ASCT2ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0およびVLのアミノ酸配列LV0は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に抗ASCT2マウスモノクローナル抗体KM4008のCDRのアミノ酸配列のみを移植した配列である。
しかし、一般に、ヒト化抗体を作製する場合には、単なるヒト抗体のFRへのマウス抗体のCDRのアミノ酸配列の移植のみでは結合活性が低下してしまうことが多い。
このため、結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とマウス抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。
そこで、本実施例でも、結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定した。
まず、上記で設計した抗ASCT2ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0およびVLのアミノ酸配列LV0よりなる抗体V領域(以下、HV0LV0と表す)の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。
三次元構造座標作製および三次元構造の表示には、Discovery Studio(アクセルリス社製)を添付の使用説明書に従い、用いた。また、抗ASCT2マウスモノクローナル抗体KM4008のV領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。
更に、HV0LV0のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、KM4008と異なっているアミノ酸残基を選択し、KM4008のアミノ酸残基へ改変したアミノ酸配列を作製し、同様に三次元構造モデルを構築した。これら作製したKM4008、HV0LV0および改変体のV領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
その結果、HV0LV0のFRのアミノ酸残基の中で抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基として、HV0では2番目のVal、9番目のSer、20番目のVal、30番目のSer、38番目のArg、46番目のGlu、86番目のLeu、93番目のVal、95番目のTyr、および116番目のValを、LV0では8番目のPro、15番目のVal、38番目のGln、43番目のAla、44番目のPro、71番目のPhe、および87番目のTyrをそれぞれ選択した。
これらの選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列をKM4008の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ改変し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHおよびVLを設計した。
具体的には、VHについては、配列番号71で表されるアミノ酸配列の2番目のValをIleに、9番目のSerをProに、20番目のValをIleに、30番目のSerをThrに、38番目のArgをLysに、46番目のGluをLysに、86番目のLeuをValに、93番目のValをThrに、95番目のTyrをPheに、および116番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
また、VLについては、配列番号72で表されるアミノ酸配列の8番目のProをThrに、15番目のValをLeuに、38番目のGlnをArgに、43番目のAlaをThrに、44番目のProをValに、71番目のPheをTyrに、および87番目のTyrをPheに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
その結果、HV0LV0のFRに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を改変した抗ASCT2ヒト化抗体の抗体V領域として、HV0LV3、HV2LV0、HV2LV3、HV4LV0、HV4LV3、HV7LV0、HV7LV3、HV10LV0、およびHV10LV3をそれぞれ設計した。H鎖可変領域HV2、HV4,HV7,HV10およびL鎖可変領域LV3のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号76、78、80、82および84に示した。
(2)抗ASCT2ヒト化抗体の作製
抗ASCT2ヒト化抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードするDNAは、KM4008のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNAで用いられているコドンを利用し、アミノ酸改変を行う場合は、哺乳動物細胞で高頻度で使用されるコドンを用いて、作製した。
抗ASCT2ヒト化抗体のHV0およびLV0のアミノ酸配列をコードするDNA配列を配列番号73、74にぞれぞれ示し、またアミノ酸改変を行った可変領域HV2、HV4、HV7、HV10、およびLV3のアミノ酸配列をコードするDNA配列を、配列番号75、77、79、81、および83にそれぞれ示した。
これらDNA配列を用いて、以下の方法にてヒト化抗体の発現ベクターの構築およびヒト化抗体の発現をそれぞれ行った。
[実施例14]
抗ASCT2ヒト化抗体の作製
(1)抗ASCT2ヒト型キメラ抗体発現ベクターKM4008HV2LV3_93の構築
ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93(WO97/10354)と配列番号87および配列番号88の合成遺伝子を用いて抗ASCT2ヒト化抗体発現ベクターKM4008HV2LV3_93を以下のようにして構築した。
配列番号87の合成遺伝子を制限酵素Apa I(タカラバイオ社製)およびNot I(タカラバイオ社製)で、配列番号88の合成遺伝子を制限酵素EcoR I(タカラバイオ社製)およびBsiW I(タカラバイオ社製)でそれぞれ消化した後、アガロースゲル電気泳動で分離した。得られた約0.5kbpの遺伝子断片をGel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて抽出した。
配列番号88の合成遺伝子を消化して得られた断片を、同じくEcoR I(タカラバイオ社製)およびBsiW I(タカラバイオ社製)で消化したpKANTEX93ベクターに連結し、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて配列番号88の合成遺伝子が挿入されたpKANTEX93ベクターを取得した。
得られた配列番号88の合成遺伝子が挿入されたpKANTEX93ベクターをApa I(タカラバイオ社製)およびNot I(タカラバイオ社製)で消化した後、上述の配列番号87の合成遺伝子を消化して得られた断片と連結し、大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド抽出キット(キアゲン社製)を用いて、配列番号87および配列番号88の合成遺伝子が挿入された抗ASCT2ヒト化抗体発現ベクターKM4008HV2LV3_93を取得した。
(2)抗ASCT2ヒト化抗体発現ベクターKM4008HV10LV3_93の構築
(1)と同様にして、ヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93(国際公開第97/10354)と配列番号88および配列番号89の合成遺伝子より、抗ASCT2ヒト化抗体発現ベクターKM4008HV10LV3_93を構築した。
(3)抗ASCT2ヒト化抗体の動物細胞での発現
上記(1)および(2)で得られた抗ASCT2ヒト化抗体発現ベクターKM4008HV2LV3_93およびKM4008HV10LV3_93を用いて抗ASCT2ヒト化抗体の動物細胞での発現を、常法[Antibody Engineering,A Practical Guide,W.H.Freeman and Company(1992)]により行い、抗ASCT2ヒト化抗体を産生する形質転換株を取得した。
(4)精製抗体の取得
上記(3)で得られた形質転換株を、それぞれ通常の培養法で培養した後、細胞懸濁液を回収し、3000rpm、4℃の条件で15分間の遠心分離を行って培養上清を回収した後、培養上清は0.22μm孔径MillexGVフィルター(ミリポア社製)を用いて濾過滅菌した。
得られた培養上清よりProteinA High−capacityレジン(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗ASCT2ヒト化抗体KM4008HV2LV3、KM4008HV10LV3(以下HV2LV3、HV10LV3と表記する)を精製した。
得られたHV2LV3、HV10LV3の精製標品の精製度および発現分子サイズを、グラジュエントゲル(アトー社製、カタログ番号:E−T520L)を用いて、添付の説明書に従い、SDS−PAGEにより確認した。
精製した抗ASCT2ヒト化抗体の泳動パターンは、非還元条件下では分子量150〜200キロダルトン(以下、kDaと表記する)付近に1本のバンドが、還元条件下では約50kDaと約25kDaの2本のバンドが認められた。
このような泳動パターンは、IgGクラスの抗体を、同様な条件下でSDS−PAGEを行った結果[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14(1988)、Monoclonal Antibodies−Principles and Practice,Academic Press Limited(1996)]と一致している。
従って、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3およびHV10LV3が正しい構造の抗体分子として発現されていることが確認された。
[実施例15]
抗ASCT2ヒト化抗体の反応性検討
(1)蛍光細胞染色法(フローサイトメーター)
実施例2で得られたヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞、および多発性骨髄腫細胞株KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)をそれぞれ5%CO2インキュベーター中、37℃で3〜4日間培養した。細胞は0.02%EDTA溶液(ナカライテスク社製)で剥離し、抗体の非特異的な吸着を避けるために1%BSA−PBSを用いて氷温中、30分間ブロッキングした。
96ウェルU字プレートに1ウェルあたり1×105〜5×105個の細胞(100μL)を播種し、1500rpm、5分間遠心分離(05PR−22、日立工機社製)した後、上清を除いた。
1次抗体として被検物質である精製抗体を最終濃度が0.001μg/mLから10μg/mLとなるように1%BSA−PBSで希釈し、100μL/ウェルで加え、氷温中で60分間反応させた。
1%BSA−PBSで洗浄した後、2次抗体として1%BSA−PBSで希釈したFITC標識抗ヒトイムノグロブリンG(H+L)(ジャクソン・ラボラトリーズ社製)を加えて氷温中、遮光下で30分間反応させた。
1%BSA−PBSで洗浄し、PBSに懸濁してフローサイトメーター(Cytomics FC500 MPL、ベックマン・コールター社製)で蛍光強度を測定した。
測定の結果を図14に示す。図14に示すように、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3およびHV10LV3は、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008と同様に、ヒトASCT2−myc/His遺伝子導入CHO細胞に強い結合性を示した。
また、多発性骨髄腫細胞株であるKMS−11にも強い反応性を示すことが明らかとなった。
(2)ADCC活性
標的細胞には多発性骨髄腫細胞株KMS−11(HSRRB番号:JCRB1179)および小細胞肺癌株SBC−3(HSRRB番号:JCRB0818)を用い、FBS(インビトロジェン社)を5%含むフェノールレッド不含RPMI1640培地(インビトロジェン社)(以下、ADCC活性測定用培地)で細胞濃度を2×105細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
エフェクター細胞溶液の調製にはLymphoprep(ニコメッド社製)を用い、添付の使用説明書に従い、健常人末梢血から単核球(PBMC)画分を分離した。分離したPBMC画分は、ADCC活性測定用培地で2回遠心分離して洗浄後、細胞濃度を2×106細胞/mLに調製し、エフェクター細胞溶液とした。
標的細胞溶液を、96ウェルU字底プレート(ファルコン社製)に50μL(1×104細胞/ウェル)分注し、次いでエフェクター細胞溶液を50μL(エフェクター細胞と標的細胞の比は10:1)を添加した。
更に、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3、HV10LV3または抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008をADCC活性測定用培地で希釈し、各最終濃度0.01ng/mL〜1000ng/mLとなるように加えて全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。
反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を、LDH−Cytotoxic Test(和光純薬社製)を用い、添付の説明書に従い、吸光度を測定することで検出した。
標的細胞自然遊離の吸光度は、エフェクター細胞溶液および抗体溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用いて、また、エフェクター細胞自然遊離の吸光度データは、標的細胞溶液および抗体溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用いて、上記と同様の操作を行うことで取得した。
標的細胞全遊離の吸光度は、抗体溶液およびエフェクター細胞溶液の代わりにADCC活性測定用培地を用い、反応終了の45分前に20μLの9%Triton X−100溶液を添加して反応させ、上記と同様の操作を行うことで取得した。ADCC活性は以下の計算式により求めた。
(式)
ADCC活性(%)=[(検体の吸光度)−(エフェクター細胞・標的細胞自然遊離の吸光度)]/[(標的細胞全遊離の吸光度)−(標的細胞自然遊離の吸光度)]×100
測定の結果を図15に示す。図15に示すように、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3およびHV10LV3は、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008と同様に、抗体濃度依存的にASCT2を発現する細胞に対してADCC活性を有することが明らかとなった。
(3)CDC活性
標的細胞には大腸癌細胞株Colo205(ATCC番号:CCL−222)を用い、0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離し、CDC測定用培地として作製した1.4% BSA(インビトロジェン社製)、50μg/mL Gentamicin(ナカライテスク社製)を含むRPMI1640培地(インビトロジェン社製)で洗浄後、同培地で2×105細胞/mLに懸濁し、標的細胞溶液とした。
ヒト補体血清(シグマ社製、S1764−1ML)を脱イオン水1mLにて溶解し、等量のCDC測定用培地を加えて2倍に希釈し、ヒト補体溶液とした。
96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに補体溶液を50μL分注した。次いで標的細胞溶液を50μL加え、さらにCDC用培地で希釈した各抗体溶液を50μL添加して、全量を150μLとし、37℃、5%CO2条件下で2時間反応させた。
各ウェルにWST−1試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を15μLずつ添加してプレートミキサーで攪拌し、37℃、5%CO2条件下で2時間反応させ、マイクロプレート分光光度計(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用い、450nm(対照波長650nm)の吸光度を測定した。
補体溶液50μL、CDC用培地100μLを加えたウェルをブランクとして、また標的細胞、補体溶液、CDC用培地を各50μLずつ加えたウェル(抗体非添加)の吸光度を測定し、CDC活性は以下の計算式により算出した。
(式)
CDC活性(%)={1−[(抗体添加サンプル吸光度)−(ブランク吸光度)]/[(抗体非添加吸光度)−(ブランク吸光度)]×100}
測定の結果を図16に示す。図16に示すように、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3およびHV10LV3は、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008と同様に、抗体濃度依存的に大腸癌細胞株Colo205に対しCDC活性を有することが明らかとなった。
(4)ASCT2を介したアミノ酸の細胞内取り込み阻害活性
10%dFBS(インビトロジェン社製)を添加したDMEM(インビトロジェン社製)(以下、グルタミン不含培地と表記する)で1×104個/mLの細胞数に調製したヒト大腸癌細胞株WiDr(ATCC番号:CCL−218)を96ウェルプレートに100μLずつ播種し、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間培養した。
最終濃度が10〜0.01μg/mLとなるようにPBSで希釈調製した被検物質である抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3、HV10LV3、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008、KM511[陰性対照、抗G−CSF誘導体抗体、Agric.Biol.Chem.,53,1095(1989)、マウスIgG1]およびグルタミン競合アミノ酸混合液[AST混合液、アラニン、セリン、スレオニン(いずれもシグマ社製、各3.3mmol/L)の混合液]を20μL/ウェル加えた。さらに、最終濃度0.2mmol/Lとなるようにグルタミン不含培地で調製したグルタミン溶液(インビトロジェン社製)を20μL/ウェル加えた。
コントロールのウェルおよびブランクプレートのウェルには、PBS(20μL/ウェル)と上記グルタミン溶液(20μL/ウェル)を添加した。ブランクプレート以外は、抗体添加後、5%CO2インキュベーター中、37℃で72時間培養した。
グルタミン不含培地で50%に希釈したWST−1試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を20μL/ウェル加え、さらに37℃で2時間インキュベートした。
マイクロプレート分光光度計(Emax microplate reader、モレキュラー・デバイス社)を用い、450nm(対照波長650nm)の吸光度を測定した。抗体非添加のコントロールのウェルの吸光度を100%、ブランクプレートのウェルの吸光度を0%として、抗体を添加したウェルの相対増殖率(%)を算出した。
測定の結果を図17に示す。図17に示すように、抗ASCT2ヒト化抗体HV2LV3およびHV10LV3は、抗ASCT2ヒト型キメラ抗体cKM4008と同様に、抗体濃度依存的に細胞増殖を強力に抑制した。その結果、HV2LV3およびHV10LV3は、グルタミンを細胞内に取り込むASCT2の機能を強力に中和することにより、癌細胞の増殖を顕著に抑制する活性を有することが示された。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2010年1月15日付けで出願された米国仮出願(61/295297号)に基づいており、その全体が引用により援用される。